説明

吸収性物品

【課題】少なくとも前記吸収性物品の前側部分及び後側部分におけるフラップ部の外形が凸状曲線部と凹状曲線部との組合せからなる波状形状線とされる吸収性物品において、体の前側と後側とで異なる体の体型に沿うとともに、体の動きに追従してフィットし易くするとともに、装着感を良好とする。
【解決手段】波状形状線10は、生理用ナプキン1の幅方向中央部に中央凸状曲線部11を有するとともに、その両側に対称配置で凹状曲線部12と凸状曲線部13とを有する形状線とされ、前記前側部分の中央凸状曲線部11は、前記後側部分の中央凸状曲線部11に対して相対的に大きな曲率半径R及び弧長Lで形成されている。すなわち、前側部分の中央凸状曲線部11の曲率半径Rf>後側部分の中央凸状曲線部11の曲率半径Rb、前側部分の中央凸状曲線部11の弧長Lf>後側部分の中央凸状曲線部11の弧長Lb、の関係になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体の前側と後側で異なる体の形にフィットさせるとともに、装着状態でのズレやヨレを防止するとともに、前後部においてフラップのめくれを防止したズレ止め粘着剤パターンとした吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、下記特許文献1において、図14に示されるように、透液性表面シート51と不透液性裏面シート52との間に吸収体53が介在されるとともに、周囲に吸収体53の存在しないフラップ部Fが形成された吸収性物品において、少なくとも前記吸収性物品50の前側部分及び後側部分における前記フラップ部Fの外形が、該フラップ部Fの外形線に対する接線の向きを連続的に変化させた凸状曲線54、55と凹状曲線56との組合せからなる波状形状線57とされ、且つこれら前側部分及び後側部分において、前記吸収体53の幅が漸次狭まる山状の傾斜線53aとされるとともに、この傾斜線53aに沿って前記波状の形状線57が形成され、前記フラップ部Fの外形は、前記吸収性物品50の中央先端部では相対的に大きな曲率半径の凸状曲線54とされ、両側の前記傾斜線53aに沿って形成された前記波状の形状線部分57では相対的に小さな曲率半径の凹状曲線56と凸状曲線55との組合せとしている吸収性物品50が開示されている。この吸収性物品によれば、前後端部の製品外形を凹凸を組み合わせた形状とすることにより、フラップ部にシワやヨレが発生しづらくなるなどの効果を有する。
【0003】
一方で、不透液性裏面シートの外面に塗布されるズレ止め粘着剤層は、塗布パターンが製品外形に沿ってはおらず、吸収性物品の長手方向に沿う複数条のズレ止め粘着剤層とされているため、前記波状外形線の特に凸状曲線部分にめくれや折れが生じたりすることがあった。
【0004】
このような問題に対して、下記特許文献2では、図15に示されるように、裏面シート61の非肌当接面に設けた粘着部62a〜62dを介して下着に取り付けられる縦長の吸収性物品60であって、前記粘着部62a〜62dは、前記吸収性物品60の長手方向前後端部及び長手方向両側部それぞれに設けられており、前記吸収性物品60の中央部から前記吸収性物品60の長手方向前方の両角及び後方の両角に向かって延びる所定幅の帯域及び該中央部は、前記粘着部が存在しない非粘着部63となっており、前記粘着部62a〜62dそれぞれの外縁は、前記吸収性物品60の外縁から10mm以内であって、該外縁に沿って存在するようにした吸収性物品が開示されている。この吸収性物品の場合は、粘着部62a〜62dの外縁が吸収性物品60の外縁に近接するとともに、外縁に沿って形成されており、めくれ防止に大きく寄与し得るようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4522444号公報
【特許文献2】特開2010−115337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に係る吸収性物品の場合、装着者の身体は体液排出部位を境に前側部分と後側部分とでは、大きく体型が異なるにも拘わらず、これを考慮せず、前部の波状形状線と後部の波状形状線とをほぼ同じ形状で形成していたため、フィット性や装着感が十分でないなどの問題があった。
【0007】
また、上記特許文献2に係るズレ止め粘着剤パターンの場合は、裏面シートの大部分の面積をズレ止め粘着剤によってショーツに粘着させることになるため、そのまま特許文献1に係る吸収性物品の適用したのでは、吸収性物品が体の動きに拘束され装着時に違和感を感じるようになる。
【0008】
そこで本発明の第1の課題は、少なくとも前記吸収性物品の前側部分及び後側部分におけるフラップ部の外形が凸状曲線部と凹状曲線部との組合せからなる波状形状線とされる吸収性物品において、体の前側と後側とで異なる体の体型に沿うとともに、体の動きに追従してフィットし易くするとともに、装着感を良好とすることにある。
【0009】
次いで、第2の課題は、体の動きに追従させることで装着状態での違和感を軽減できるとともに、前側部分及び後側部分のフラップ部におけるめくれや折れを無くすことが可能なズレ止め粘着剤層パターンとした吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、周囲に吸収体の存在しないフラップ部が形成され、少なくとも前記吸収性物品の前側部分及び後側部分における前記フラップ部の外形が凸状曲線部と凹状曲線部との組合せからなる波状形状線とされる吸収性物品において、
前記波状形状線は、吸収性物品の幅方向中央部に中央凸状曲線部を有するとともに、その両側に対称配置で凹状曲線部と凸状曲線部とを有する形状線とされ、
前記前側部分の中央凸状曲線部は、前記後側部分の中央凸状曲線部に対して相対的に大きな曲率半径及び弧長で形成されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0011】
上記請求項1記載の発明では、前記波状形状線は、吸収性物品の幅方向中央部に中央凸状曲線部を有するとともに、その両側に対称配置で凹状曲線部と凸状曲線部とを有する形状線とされ、前記前側部分の中央凸状曲線部は、前記後側部分の中央凸状曲線部に対して相対的に大きな曲率半径及び弧長で形成されている。
【0012】
従って、前記前側部分では相対的に大きな中央凸状曲線部としてあるため、恥骨への当りが柔らかくなるとともに、恥骨側に折れて感じる違和感が軽減できるようになる。一方、前記後側部分では相対的に小さな中央凸状曲線部としてあるため、お尻の谷間に食い込み易くなる。以上より、体の体型に合わせて前後部の波状形状線を変えた本吸収性物品の場合は、体の体型に沿うとともに、体の動きに追従し易くなる。また、装着時の違和感を軽減することが可能となる。
【0013】
請求項2に係る本発明として、前記不透液性裏面シートの外面に設けられるズレ止め粘着剤層は、前記各凸状曲線部に対応する位置に吸収性物品の長手方向に沿って形成された複数条の帯状ズレ止め粘着剤層とされ、各帯状ズレ止め粘着剤層の前後端部は前記凸状曲線部に近接している請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0014】
上記請求項2記載の発明では、ズレ止め粘着剤層を前記各凸状曲線部に対応する位置に吸収性物品の長手方向に沿って形成された複数条の帯状ズレ止め粘着剤層とし、各帯状ズレ止め粘着剤層の前後端部を前記凸状曲線部に近接させるようにしている。従って、前記ズレ止め粘着剤層を幅方向に間隔を空けた帯状のズレ止め粘着剤層とすることで、吸収性物品が体の動きに拘束されずに体の動きに追従させることで装着状態時の違和感を軽減できるようになる。また、各帯状ズレ止め粘着剤層の前後端部は前記凸状曲線部に近接させることで、前側部分及び後側部分における凸状曲線部のめくれや折れを防止できるようになる。
【0015】
請求項3に係る本発明として、前記凸状曲線部の両側の起点同士を繋いだ仮想線が、前記帯状ズレ止め粘着剤層に交差するように各帯状ズレ止め粘着剤層の前後端部を前記凸状曲線部に近接させている請求項2記載の吸収性物品が提供される。
【0016】
上記請求項3記載の発明は、前記凸状曲線部の両側の起点同士を繋いだ仮想線が、前記帯状ズレ止め粘着剤層に交差するように各帯状ズレ止め粘着剤層の前後端部を前記凸状曲線部に近接させるようにしている。すなわち、帯状ズレ止め粘着剤層の端部を凸状曲線部内に侵入させるように近接させることで、凸状曲線部でめくれや折れを確実に防止することが可能となる。
【0017】
請求項4に係る本発明として、前記帯状ズレ止め粘着剤層は、中間部で1又は複数に分断された間欠線状に形成されている請求項2,3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0018】
上記請求項4記載の発明は、前記帯状ズレ止め粘着剤層を中間部で1又は複数に分断された間欠線状に形成するようにしたものである。間欠線状に分断することで、更に体の動きに拘束され難くなるとともに、通気性を維持することが可能となる。
【0019】
請求項5に係る本発明として、前記帯状ズレ止め粘着剤層は体液排出部位で前後方向に分断され、前記体液排出部位よりも前側に位置する帯状ズレ止め粘着剤層は前記前側部分の波状形状線の凸状曲線部に対応する位置に配置され、前記体液排出部位よりも後側に位置する帯状ズレ止め粘着剤層は前記後側部分の波状形状線の凸状曲線部に対応する位置に配置されている請求項2〜4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
上記請求項5記載の発明は、吸収性物品の前側部分に形成された波状形状線と後側部分に形成された波状形状線との間で、側部の凸状曲線部の幅方向位置が異なっている本発明の場合には、一方(前側部分又は後側部分)の凸状曲線部に合わせて帯状ズレ止め粘着剤層を配置すると、他方(後側部分又は前側部分)の凸状曲線部との位置が微妙にずれることになるため、前記帯状ズレ止め粘着剤層を体液排出部位で前後方向に分断し、前記体液排出部位よりも前側に位置する帯状ズレ止め粘着剤層は前記前側部分の波状形状線の凸状曲線部に対応する位置に配置し、前記体液排出部位よりも後側に位置する帯状ズレ止め粘着剤層は前記後側部分の波状形状線の凸状曲線部に対応する位置に配置するようにしたものである。従って、前後部それぞれに配置された各帯状ズレ止め粘着剤層が凸状曲線部に対応して配置されるようになり、凸状曲線部のめくれや折れを確実に防止できるようになる。
【0021】
請求項6に係る本発明として、前記帯状ズレ止め粘着剤層は、前記各凸状曲線部の弧長に比例させて幅寸法を設定してある請求項2〜5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0022】
上記請求項6記載の発明では、前記帯状ズレ止め粘着剤層は、前記各凸状曲線部の弧長に比例させて幅寸法を設定するものである。すなわち、各凸状曲線部の大きさに比例した帯状ズレ止め粘着剤層の幅とすることによりめくれや折れを確実に防止できるようになる。
【0023】
請求項7に係る本発明として、前記帯状ズレ止め粘着剤層の前端部及び後端部は、前記凸状曲線部に沿った曲線形状とされる請求項2〜6いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0024】
上記請求項7記載の発明は、帯状ズレ止め粘着剤層の両端部を凸状曲線部に沿った形状とすることにより、より効果的に凸状曲線部のめくれや折れを防止できるようになる。
【0025】
請求項8に係る本発明として、前記帯状ズレ止め粘着剤層の前端部及び後端部は矩形状とされ、この矩形状端部から吸収性物品の長手方向に隣接した位置に、前記凸状曲線部に沿った曲線形状部分を有するドット状のズレ止め粘着剤層を配置している請求項2〜6いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0026】
上記請求項8記載の発明は、前記帯状ズレ止め粘着剤層の前端部及び後端部は矩形状としたままで、矩形状端部から吸収性物品の長手方向に隣接した位置に、前記凸状曲線部に沿った曲線形状部分を有するドット状のズレ止め粘着剤層を配置することにより、ズレ止め粘着剤層の端部を凸状曲線部に沿ったパターンとしたものである。
【発明の効果】
【0027】
以上詳説のとおり、請求項1記載の発明によれば、体の前側と後側とで異なる体の体型に沿うとともに、体の動きに追従してフィットし易くなるとともに、装着感を良好とすることが可能となる。
【0028】
また、請求項2〜7記載の発明では、体の動きに追従させることで装着状態での違和感を軽減できるとともに、前側部分及び後側部分のフラップ部におけるめくれや折れを無くすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る生理用ナプキン例の一部破断展開図である。
【図2】その裏面図である。
【図3】図1のIII−III線矢視図である。
【図4】生理用ナプキン1に対する脚の位置を示すショーツ展開図である。
【図5】図4の生理用ナプキン1の前側部分の拡大図である。
【図6】ショーツの動きに伴うシワの方向を説明するショーツ展開図である。
【図7】図6の生理用ナプキン1の前側部分の拡大図である。
【図8】ズレ止め粘着剤層8を示す裏面図である。
【図9】ズレ止め粘着剤層8の他例(その1)を示す裏面図である。
【図10】ズレ止め粘着剤層8の他例(その2)を示す裏面図である。
【図11】ズレ止め粘着剤層8の他例(その3)を示す裏面図である。
【図12】ズレ止め粘着剤層8の他例(その4)を示す裏面図である。
【図13】ズレ止め粘着剤層8の他例(その5)を示す裏面図である。
【図14】特許文献1に係る生理用ナプキンを示す平面図である。
【図15】特許文献2に係る従来のパンティライナーを示す裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0031】
〔生理用ナプキン1の構造〕
前記生理用ナプキン1は、図1に示されるように、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介在された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、この吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞するクレープ紙5と、表面両側部にそれぞれ長手方向に沿って形成されたサイド不織布7,7とから構成されている。前記吸収体4の周囲において、その上下端縁部では、前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、外周に吸収体4の存在しないフラップ部Fが形成されている。
【0032】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シートなどの少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他にポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。特に本発明では、後段で詳述するフラップ部FとショーツSとの一体性を実現するために、不透液性裏面シート2としては、フィルムなどの柔軟性の高い素材を用いることが好ましい。
【0033】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。
【0034】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばフラッフ状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。本例のように、吸収体4を囲繞するクレープ紙5を設ける場合には、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間にクレープ紙5が介在することになり、吸収性に優れる前記クレープ紙5によって体液を速やかに拡散させるとともに、これら経血等の逆戻りを防止するようになる。特に本発明では、後段で詳述するように、ナプキン装着時の違和感を低減することを目的の一つとしているため、吸収体4の厚みは、約0.5〜5mmの範囲内とすることが好ましく、吸収体4の製造方法は、柔軟性に富むように積繊パルプ、エアレイド吸収体とすることが好ましい。なお、図示しないが、吸収体4は、排血口対応部が膨出した中高構造としても良い。
【0035】
一方、本生理用ナプキン1の表面がわ両側部にはそれぞれ、長手方向に沿ってかつナプキン1のほぼ全長に亘ってサイド不織布7,7が設けられ、このサイド不織布7,7の一部が側方に延在されるとともに、同じく側方に延在された不透液性裏面シート2の一部とによりウイング状フラップW、Wが形成されている。
【0036】
前記サイド不織布7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いることが望ましい。また、前記ウイング状フラップW、Wにおける経血等の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるようにすることが望ましい。
【0037】
本発明では特に、生理用ナプキン1の少なくとも前側部分及び後側部分におけるフラップ部Fの外形が、該フラップ部Fの外形線に対する接線の向きを連続的に変化させた凸状曲線部11,13と凹状曲線部12の組合せからなる波状形状線10とされ、ナプキン1の前側部分及び後側部分において、吸収体の形状は、両側の漸次幅が狭まる直線状の傾斜線4a、4aと、中央部においてこれら傾斜線4a、4a同士を結合する円弧状線4bとにより画成されるとともに、これら傾斜線4a、4a及び円弧状線4bに沿って前記波状形状線10が形成されている。
【0038】
更に詳細には図5に示されるように、前記生理用ナプキン1の前側部分及び後側部分において、前記フラップ部Fの外形は、ナプキン1の幅方向中央部(中央先端部)では相対的に大きな曲率半径の中央凸状曲線部11とされ、両側の前記傾斜線4aに沿って形成された前記波状形状線10は、吸収体4の傾斜線4aと平行する直線に対してフラップ部Fの外形線に対する接線の向きが正負に連続的に変化するように、凸状曲線部13と凹状曲線部12とが交互に配された波状の曲線となっている。前記中央凸状曲線部11の両側に位置する前記凸状曲線部13及び凹状曲線部12は、ナプキン長手方向中心を境に左右対称配置で形成されている。
【0039】
この場合、中央先端部に配置された中央凸状曲線部11は、半径20〜30mmの相対的に大きな曲率半径を有する曲線とし、両側の前記傾斜線4aに沿って形成された前記波状形状線10部分は、半径10〜15mmの相対的に小さな曲率半径の凹状曲線部12と凸状曲線部13との組合せとするのが望ましい。
【0040】
本生理用ナプキン1では特に、図2に示されるように、前記前側部分の中央凸状曲線部11は、前記後側部分の中央凸状曲線部11に対して相対的に大きな曲率半径及び弧長で形成されている。すなわち、曲率半径Rf>曲率半径Rb、弧長Lf>弧長Lbの関係にある。これら曲率半径比及び弧長比は、1.1以上3.0以下、好ましくは2.0以上2.5以下とするのが望ましい。特に、曲率半径比及び弧長比を2.0以上2.5以下とした場合は、平面視で見栄えのバランスが良くなるとともに、フィット性を向上させることができる。従って、本生理用ナプキン1の前側部分では相対的に大きな中央凸状曲線部11としてあるため、恥骨への当りが柔らかくなるとともに、恥骨側に折れて感じる違和感が軽減できるようになる。一方、ナプキン1の後側部分では相対的に小さな中央凸状曲線部11としてあるため、お尻の谷間に食い込み易くなる。
【0041】
以上より、体の体型に合わせて前後部の波状形状線を変えた本生理用ナプキン1の場合は、体の体型に沿うとともに、体の動きに追従し易くなる。また、装着時の違和感を軽減することが可能となる。
【0042】
図4に示されるように、例えば着座時には、ショーツSに対して両脚がLF、LFの位置となる。この場合、フラップ部Fの前側部分の両側には、脚の内側部分から押圧力がかかる。ところが、本生理用ナプキン1では、前側部分及び後側部分に前記波状形状線10が形成されているため、両側部分のフラップ部外形線に作用する押圧力が、波状形状線の凹状曲線部12と中央凸状曲線部11,凸状曲線部13によって漸次的に作用するようになるとともに(力の作用箇所が間欠的となる。)、曲線によって力が逸らされることによって、フラップ部Fにシワを発生させない。また、仮にシワが生じても凸状曲線部分で収まり、内側部分まで伝播させないため、シワがフラップ部の内方にまで進展することを防止できる。
【0043】
また、着座時に、脚がLF、LFの位置となるため、ショーツS自体には脚周りに沿って伸び縮みが生じ、このショーツSの伸縮によって、ナプキン1にも摩擦によって圧縮力又は引張力が作用するようになるが、波状形状線10の凹状曲線部12と中央凸状曲線部11,凸状曲線部13によって漸次的に作用させるようになるとともに、曲線によって力が逸らされることによって、フラップ部Fにシワを発生しづらくする。
【0044】
さらに、図5に示されるように、本生理用ナプキン1では、前側部分及び後側部分において、フラップ部Fは、生理用ナプキン1の中央先端部では吸収体4端縁から外形線までのフラップ幅D1を相対的に大きく形成し、両側の前記傾斜線4aに沿って形成された波状形状線10の形成部分では吸収体4端縁から外形線までのフラップ幅D2を相対的に小さく形成している。これは、着座時や歩行時などにおいても脚にかからない生理用ナプキン1の中央先端部では、体液の前漏れに対応できるようにし、脚の付け根に当たる波状形状線10が形成された部分では、フラップ部Fにシワやヨレが発生しにくい構造としたものである。
【0045】
一方、歩行時などにおいて、脚を前後に動かした場合、脚の動きに伴ってショーツSも伸び縮みして、このときショーツSには脚の動きの方向と直交する方向にシワがよる。具体的には、図6、図7に示されるように、歩行時の脚の動きに伴ってショーツSが伸び縮みする方向は、ナプキン1の長手中心線に対して約19°〜40°、平均して約36°の角度であることが発明者等の観察結果から明らかとされている。このとき、シワはショーツSの動きに直交する方向に沿って発生し易くなるが、本生理用ナプキン1では、前側部分及び後側部分に前記波状形状線10が形成されているため、このショーツSの動き方向のシワを発生させる力を漸次的に作用させるか、逸らすようにするためシワの発生を防止することができる。また、中央凸状曲線部11と、凸状曲線部13及び凹状曲線部12とは、外形線に対する接線の向きを連続的に変化させてあるため、ある程度の幅内で作用する様々な角度の力に対し対応することができる。
【0046】
なお、前記波状形状線10は、シワを発生させる力を漸次的に作用させたり、逸らすように作用しなければならないため、外形線に対する接線が不連続となるようなギザ状の曲線は除かれる。
【0047】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、側方にウイング状フラップW、Wが形成された生理用ナプキン1としていたが、ウイング状フラップW、Wを有さないものについても同様に適用できる。
【0048】
〔ズレ止め粘着剤層8〕
図8に示されるように、前記透液性表面シート3と不透液性裏面シート2との間に吸収体4が介在された本体部分の非肌当接面には、下着に対する固定のために適宜の塗布パターンによって複数条の、図示例では5条のズレ止め粘着剤層8が形成されているとともに、これらズレ止め粘着剤層8が図示されない本体用剥離材によって覆われている。また、前記ウイング状フラップW、Wの不透液性裏面シート2側の面には、ウイングズレ止め粘着剤層9が形成されるとともに、これらウイングズレ止め粘着剤層9,9が図示されないウイング用剥離材によって覆われている。前記剥離材は、本体用剥離材と横断方向に配置されたウイング用剥離材とを交差部で接合し、1回の剥離手間で剥離材を撤去できるようにするのが望ましく、前記ウイング状フラップW、Wは、個装状態では透液性表面シート3側に折り畳む、所謂腹折りとしても良いし、不透液性裏面シート2側に折り畳む、所謂背折りとすることでもよい。また、ウイングズレ止め粘着剤層9,9を覆う剥離材として1枚の剥離材ではなく、左右に分離させてもよい。
【0049】
前記剥離材としては、ズレ止め粘着剤層8,9に対する当接面に対し、例えばシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、または四フッ化エチレン系樹脂などの離型処理液を塗工するかスプレー塗布し離型処理した紙またはプラスチックシートを用いることができる。
【0050】
前記ズレ止め粘着剤層8、9を形成する粘着剤としては、たとえばスチレン系ポリマー、粘着付与剤、可塑剤のいずれかが主成分であるものが好適に使用される。前記スチレン系ポリマーとしては、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等が挙げられるが、これらのうち1種のみを使用しても、二種以上のポリマーブレンドであってもよい。この中でも熱安定性が良好であるという点で、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体が好ましい。また、前記粘着付与剤および可塑剤としては、常温で固体のものを好ましく用いることができ、粘着付与剤ではたとえばC5系石油樹脂、C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ロジン系石油樹脂、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられ、前記可塑剤では例えば、リン酸トリフレシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のモノマー可塑剤の他、ビニル重合体やポリエステルのようなポリマー可塑剤が挙げられる。
【0051】
前記ズレ止め粘着剤層8は、前記中央凸状曲線部11,凸状曲線部13…に対応する位置に生理用ナプキン1の長手方向に沿って形成された複数条の帯状ズレ止め粘着剤層8A〜8Cとされ、各帯状ズレ止め粘着剤層8A〜8Cの前後端部は前記中央凸状曲線部11,凸状曲線部13に近接している。図示例では、中央凸状曲線部11に対応する位置に帯状ズレ止め粘着剤層8Aが形成され、左右の凸状曲線部13、13に対応する位置に帯状ズレ止め粘着剤層8B、8Cが形成され、計5本の帯状ズレ止め粘着剤層が形成されている。
【0052】
各帯状ズレ止め粘着剤層8A〜8Cの端部と生理用ナプキン1の外形線との距離Sは、好ましくは15mm以内、より好ましくは10mm以内になるように中央凸状曲線部11,凸状曲線部13に近接させるのが望ましい。
【0053】
前記帯状ズレ止め粘着剤層8A〜8Cの生理用ナプキン1の外形線に対する近接程度は、図9に示されるように、前記凸状曲線部11,13の両側の起点同士を繋いだ仮想線L1〜L3が、前記帯状ズレ止め粘着剤層8A〜8Cに交差するように各帯状ズレ止め粘着剤層8A〜8Cの前後端部を前記中央凸状曲線部11,凸状曲線部13に近接させるようにするのが更に望ましい。換言すれば、中央凸状曲線部11,凸状曲線部13の領域内に帯状ズレ止め粘着剤層8A〜8Cの端部を侵入させる程度に近接させるようにする。このように近接させれば、前記中央凸状曲線部11,凸状曲線部13のめくれや折れは格段に防止できるようになる。なお、前記中央凸状曲線部11,凸状曲線部13の両側の起点とは、隣接する凹状曲線部12の頂点部又は凸状曲線部13とナプキン側縁との交点部をいう。
【0054】
前記帯状ズレ止め粘着剤層8A〜8Cは、前後方向についても体の動きに拘束されないようにするとともに、通気性を損なわないようにするために、図10に示されるように、前記帯状ズレ止め粘着剤層8A〜8Cを、中間部で1又は複数に分断された間欠線状に形成するようにしてもよい。
【0055】
ところで、本生理用ナプキン1の場合、前記前側部分の中央凸状曲線部11は、前記後側部分の中央凸状曲線部11に対して相対的に大きな曲率半径及び弧長で形成されているため、前側部分に形成された波状形状線10と後側部分に形成された波状形状線10との間で、凸状曲線部13、13の位置が幅方向に異なることになる。この場合、一方(前側部分又は後側部分)の凸状曲線部13に合わせて帯状ズレ止め粘着剤層8A〜8Cを配置すると、他方(後側部分又は前側部分)の凸状曲線部13との位置が微妙にずれることになるため、図11に示されるように、帯状ズレ止め粘着剤層8A〜8Cを体液排出部位Hで前後方向に分断し、前記体液排出部位Hよりも前側に位置する帯状ズレ止め粘着剤層8A〜8Cは前記前側部分の波状形状線10の凸状曲線部13に対応する位置に配置し、前記体液排出部位Hよりも後側に位置する帯状ズレ止め粘着剤層8A〜8Cは前記後側部分の波状形状線10の凸状曲線部13に対応する位置に配置するようにするのが望ましい。このようなズレ止め粘着剤層パターンとすることによって、前後部それぞれに配置された各帯状ズレ止め粘着剤層8B、8Cが各凸状曲線部13に対応して配置されるようになり、各凸状曲線部13部分のめくれや折れを確実に防止できるようになる。
【0056】
更に、前記帯状ズレ止め粘着剤層8A〜8Cの前端部及び後端部は、前記中央凸状曲線部11,凸状曲線部13に沿ったような曲線形状とすると、中央凸状曲線部11,凸状曲線部13のめくれや折れの防止効果が高まるようになる。図12に示される例は、各帯状ズレ止め粘着剤層8A〜8Cの前端部及び後端部の形状を前記中央凸状曲線部11,凸状曲線部13に沿った形状にした例である。図13に示される例は、前記帯状ズレ止め粘着剤層8A〜8Cの前端部及び後端部は矩形状のままとし、この矩形状端部から生理用ナプキン1の長手方向に隣接した位置に、前記中央凸状曲線部11,凸状曲線部13に沿った曲線形状部分を有するドット状のズレ止め粘着剤層8a〜8cを配置するようにした例である。
【0057】
更に、前記帯状ズレ止め粘着剤層8A〜8Cは、図13に示されるように、対応する中央凸状曲線部11,凸状曲線部13の大きさ(弧長及び/又は曲率半径により判断)に合わせて幅寸法を異ならせるようにしてもよい。すなわち、中央凸状曲線部11は脇部の凸状曲線部13より大きいため、相対的に大きな幅寸法で帯状ズレ止め粘着剤層8Aを形成し、その両側にある凸状曲線部13、13は小さいため相対的に小さな幅寸法で帯状ズレ止め粘着剤層8B、8Cを形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…クレープ紙、7…サイド不織布、8A〜8C…帯状ズレ止め粘着剤層、8a〜8c…ドット状のズレ止め粘着剤層、10…波状形状線、11…中央凸状曲線部、12…凹状曲線部、13…凸状曲線部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、周囲に吸収体の存在しないフラップ部が形成され、少なくとも前記吸収性物品の前側部分及び後側部分における前記フラップ部の外形が凸状曲線部と凹状曲線部との組合せからなる波状形状線とされる吸収性物品において、
前記波状形状線は、吸収性物品の幅方向中央部に中央凸状曲線部を有するとともに、その両側に対称配置で凹状曲線部と凸状曲線部とを有する形状線とされ、
前記前側部分の中央凸状曲線部は、前記後側部分の中央凸状曲線部に対して相対的に大きな曲率半径及び弧長で形成されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記不透液性裏面シートの外面に設けられるズレ止め粘着剤層は、前記各凸状曲線部に対応する位置に吸収性物品の長手方向に沿って形成された複数条の帯状ズレ止め粘着剤層とされ、各帯状ズレ止め粘着剤層の前後端部は前記凸状曲線部に近接している請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記凸状曲線部の両側の起点同士を繋いだ仮想線が、前記帯状ズレ止め粘着剤層に交差するように各帯状ズレ止め粘着剤層の前後端部を前記凸状曲線部に近接させている請求項2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記帯状ズレ止め粘着剤層は、中間部で1又は複数に分断された間欠線状に形成されている請求項2、3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記帯状ズレ止め粘着剤層は体液排出部位で前後方向に分断され、前記体液排出部位よりも前側に位置する帯状ズレ止め粘着剤層は前記前側部分の波状形状線の凸状曲線部に対応する位置に配置され、前記体液排出部位よりも後側に位置する帯状ズレ止め粘着剤層は前記後側部分の波状形状線の凸状曲線部に対応する位置に配置されている請求項2〜4いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記帯状ズレ止め粘着剤層は、前記各凸状曲線部の弧長に比例させて幅寸法を設定してある請求項2〜5いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記帯状ズレ止め粘着剤層の前端部及び後端部は、前記凸状曲線部に沿った曲線形状とされる請求項2〜6いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記帯状ズレ止め粘着剤層の前端部及び後端部は矩形状とされ、この矩形状端部から吸収性物品の長手方向に隣接した位置に、前記凸状曲線部に沿った曲線形状部分を有するドット状のズレ止め粘着剤層を配置している請求項2〜6いずれかに記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−27598(P2013−27598A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166585(P2011−166585)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】