説明

吸収性物品

【課題】圧搾部が形成されることによる表面シートの体液の引き込み性の低下を抑制し、着用者の装着感の悪化を抑制することができる吸収性物品を提供する。
【解決手段】 吸収性物品1は、表面シート10、裏面シート20、及び表面シートと裏面シートとの間に配置される吸収体30を有する。吸収体には、表面シート及び吸収体を厚み方向に圧縮した圧搾部80が複数形成されている。圧搾部は、着用者の排泄口に対向して配置される排泄口当接領域の中心を含む中央領域CAに設けられ、かつ間欠的に複数形成された点状の中央圧搾部81と、中央領域よりも吸収性物品の幅方向外側に設けられ、かつ長手方向に延びる長手方向圧搾部82と、を有する。長手方向圧搾部は、表面シート側から裏面シート側に向かって凹んでおり、中央圧搾部は、裏面シート側から表面シート側に向かって凹んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に配置される吸収体とを有する吸収性物品としての生理用ナプキンにおいて、吸収性物品の厚み方向に吸収体及び表面シートを圧縮した圧搾部が形成された生理用ナプキンが記載されている。特許文献1の圧搾部は、表面シートと吸収体とを部分的に厚み方向に凹ませた大径凹部と、大径凹部内において大径凹部よりも更に凹ませた小径凹部と、によって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−71105号公報(図2、段落0014等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の生理用ナプキンの表面シートは、熱可塑性繊維によって構成されている。圧搾部を形成する際は、表面シート側から裏面シート側に向かって吸収性物品を部分的に加熱しつつ圧縮する。表面シートの圧搾部が形成された部分は、裏面シート側に加熱されつつ延伸されるため、フィルム化することがある。特に、表面シートの小径凹部が形成された部分は、大径凹部が形成された状態から更に裏面シート側に加熱されつつ延伸されるため、フィルム化が顕著に表れ易い。
【0005】
表面がフィルム化すると、表面シートに体液を引き込み難くなる。よって、着用者から排出された体液が表面シートによって十分に引き込まれずに表面シート上に残り、着用者の装着感が悪化することがある。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、圧搾部が形成されることによる表面シートの体液の引き込み性の低下を抑制し、着用者の装着感の悪化を抑制することができる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本開示に係る吸収性物品は、液透過性の表面シート(表面シート10)、液不透過性の裏面シート(裏面シート20)、及び前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置される吸収体(吸収体30)を有する吸収性物品(吸収性物品1)であって、前記吸収体には、前記表面シート及び前記吸収体を吸収性物品の厚み方向に圧縮した圧搾部(圧搾部80)が複数形成されており、前記圧搾部は、着用者の排泄口に対向して配置される排泄口当接領域の中心を含む中央領域(中央領域CA)に設けられ、かつ間欠的に複数形成された点状の中央圧搾部(中央圧搾部81)と、前記中央領域よりも前記吸収性物品の幅方向外側に設けられ、かつ前記吸収性物品の長手方向に延びる長手方向圧搾部(長手方向圧搾部82)と、を有し、前記長手方向圧搾部は、前記表面シート側から前記裏面シート側に向かって凹んでおり、前記中央圧搾部は、前記裏面シート側から前記表面シート側に向かって凹んでいることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る吸収性物品は、中央領域に形成された中央圧搾部が裏面シート側から表面シート側に凹んでいるため、表面シート側から裏面シート側に圧縮された中央圧搾部と比較して、表面シートにおける熱によるダメージが低減される。よって、表面シートのフィルム化を抑制し、着用者から排出される体液を表面シートによって引き込むことができる。表面シート上に体液が残ることを抑制し、着用者の装着感を向上させることができる。
【0009】
中央圧搾部は、間欠的に配置されているため、表面シートにおいて圧搾部の形成時における熱によるダメージが連続して形成されない。例えば、中央圧搾部が連続して形成されている場合には、熱によるダメージが連続するため、排出された体液を表面シート内に引き込み難く、体液が表面シート上を伝ってしまうことがある。しかし、中央圧搾部間には、熱によるダメージを受けてない部分が配置されるため、体液が表面シート上を伝って拡散することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る吸収性物品の肌当接面側から見た平面図である。
【図2】図1に示すA−A断面の模式断面図である。
【図3】図1に示すB−B断面の模式断面図である。
【図4】中央圧搾部の配列状態を説明するための図である。(a)は、表面シート側から視認した状態であり、(b)は、裏面シート側から視認した状態である。
【図5】第2の実施形態に係る吸収性物品の肌当接面側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
図1及び図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係る吸収性物品1について説明する。図1は、吸収性物品の平面図である。図2は、図1に示すA−A断面図であり、図3は、図1に示すB−B断面図である。本実施形態に係る吸収性物品1は、例えば、生理用ナプキンである。
【0012】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なのものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることを留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる。
【0013】
なお、以下の模式断面図においては、説明の便宜上、吸収性物品の厚み寸法を、長手方向及び幅方向の長さ寸法に比べて拡大して示しているが、実際の吸収性物品においては、厚み方向の寸法は、長手方向及び幅方向の長さ寸法に比べて小さい。
【0014】
実施の形態に係る吸収性物品は、昼用の生理用ナプキンである。吸収性物品は、長手方向において着用者の前側に位置する前側領域と、着用者の後側に位置する後側領域と、を有しており、前側領域の長手方向における長さは、後側領域の長手方向における長さと同じである。
【0015】
なお、本実施の形態では、昼用の生理用ナプキンを例に挙げて説明しているが、夜用の生理用ナプキンにおいても適用することができる。夜用の生理用ナプキンは、前側領域よりも後側領域の長さが長く構成されている。
【0016】
吸収性物品1は、着用者の肌に当接する表面シート10と、液体を透過しない液不透過性の裏面シート20と、吸収体30とを有する。吸収体30は、表面シート10と裏面シート20との間に配設される。従って、吸収体30は、図1及び図2において破線で示される。吸収体30は、吸収性物品1の長手方向L及び幅方向Wにおける中央部分に配設される。
【0017】
吸収性物品1は、図1に示す平面視にて、長手方向Lに直交する幅方向Wにおいて吸収体30の外側に設けられるウイング部43,44を備える。更に、吸収性物品1は、幅方向Wにおいて吸収体30の外側に設けられるサイドシート41,42を備える。
【0018】
表面シート10は、体液等の液体を透過する液透過性のシートである。表面シート10は、少なくとも吸収体30の表面を覆う。表面シート10は、不織布、織布、有孔プラスチックシート、メッシュシート等、液体を透過する構造のシート状の材料であれば、特に限定されない。織布や不織布の素材としては、天然繊維、化学繊維のいずれも使用できる。
【0019】
裏面シート20は、表面シート10の長さと略同一の長さを有する。裏面シート20は、ポリエチレンシート、ポリプロピレン等を主体としたラミネート不織布、通気性の樹脂フィルム、スパンボンド、又はスパンレース等の不織布に通気性の樹脂フィルムが接合されたシートなどを用いることができる。裏面シート20は、着用時の違和感を生じさせない程度の柔軟性を有する材料とすることが好ましい。裏面シート20は、不透液性且つ透湿性であることが望ましく、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂に無機充填剤を溶融混練したものを延伸処理した微多孔性シートによって構成することができる。
【0020】
吸収体30は、親水性繊維、パルプを含む。吸収体30は、経血などの体液を吸収可能な材料によって形成される。吸収体30は、親水性繊維又は粉体をエアレイド法によって積層して形成されてもよいし、親水性繊維又は粉体をエアレイド法によってシート状に成形したエアレイドシートでもよいし、ティッシュ(例えば、目付15g/m)上に高吸収ポリマーを混入した粉砕パルプを配置し、ティッシュで包むことによって形成されていてもよい。
【0021】
本実施の形態に係る吸収体30は、綿状パルプや合成パルプ等を坪量100〜300g/m程度に積層したパルプを保護紙(図示せず)で包むことによって構成されている。
【0022】
吸収体30は、前後方向に延びる形状であり、裏面シート20よりも略一回り程度小さい。吸収体30の幅方向Wの長さは、成人女性の股間隔に対応しており、概ね50〜80mmである。本実施の形態では、吸収体30と表面シート10とは、ホットメルト接着剤60によって接着されている(図2参照)。
【0023】
サイドシート41,42は、表面シート10の両側に配設される。サイドシート41,42は、表面シート10と同様の材料から選ぶことができる。但し、サイドシート41,42を乗り越えて吸収性物品1外方へ経血が流れることを防止するためには、疎水性又は撥水性を有することが好ましい。サイドシート41,42は、吸収体30の側縁の一部及びウイング部43,44を覆う。
【0024】
表面シート10と吸収体30との間には、表面側中間シート71が設けられている。表面側中間シート71は、ホットメルト接着剤60を介して吸収体30及び表面シート10に接着されている。表面側中間シート71は、吸液性のシートであればよく、例えば、表面シート10と同様の材料によって構成することができる。
【0025】
裏面シート20と吸収体30との間には、裏面側中間シート72が設けられている。裏面側中間シート72は、ホットメルト接着剤60を介して吸収体30及び裏面シート20に接着されている。裏面側中間シート72は、SMS不織布等の不織布によって構成されている。
【0026】
吸収性物品1では、表面シート10、サイドシート41,42、及び裏面シート20の周縁が接合されて、吸収体30が内封される。表面シート10と裏面シート20との接合方法としては、ヒートエンボス加工、超音波、又はホットメルト接着剤のいずれか一つ、又は複数を組み合わせることが可能である。
【0027】
吸収体30は、着用者の排泄口に対向して配置される排泄口当接領域の中心を含む中央領域CAと、中央領域CAよりも長手方向外側に配置された第1領域FAと、を有する。
【0028】
排泄口当接領域の中心とは、着用者の排泄口が当接する領域の長手方向及び幅方向の中心であり、中央領域の中心と一致する。例えば、ウイング部を有する吸収性物品においては、ウイング部の長手方向の中心が、排泄口当接領域の長手方向の中心となる。また、ウイング部を有しない吸収性物品においては、吸収体の幅方向の長さ寸法が最も短い位置が、排泄口当接領域の長手方向の中心となる。排泄口当接領域は、着用者の股間部と当接する領域に含まれており、着用者の両脚の間に位置する。本実施の形態では、吸収体30の長手方向における中心及び幅方向における中心は、排泄口当接領域の中心及び中央領域の中心と一致する。
【0029】
吸収性物品1には、少なくとも表面シート10及び吸収体30を厚み方向に圧搾加工(エンボス加工)して形成された圧搾部80が形成されている。圧搾部80は、点状の中央圧搾部81と、長手方向Lに沿って延びる長手方向圧搾部82と、幅方向Wに沿って延びる第1幅方向圧搾部83及び第2幅方向圧搾部84と、点状の第1圧搾部85と、を有する。本実施の形態に係る圧搾部は、表面シート10、表面側中間シート71、吸収体30及び裏面側中間シート72が圧搾加工されて形成されている。
【0030】
裏面側中間シート72を含んで圧搾部を形成しているため、ティシュ等によって吸収材を内包しない場合であっても、表面シート10と裏面側中間シート72によって吸収体30を挟み込んだ状態を維持できる。よって、吸収体30が体液を吸収した場合であっても、吸収体30の形状を維持し易くなる。
【0031】
長手方向圧搾部82、第1幅方向圧搾部83及び第2幅方向圧搾部84は、表面シート10側から裏面シート20側に向かって圧縮されて形成されており、表面シート10側から裏面シート20側に向かって凹んでいる。
【0032】
一方、中央圧搾部81及び第1圧搾部85は、裏面シート20側から表面シート10側に向かって圧縮されて形成されており、裏面シート20側から表面シート10側に向かって凹んでいる。
【0033】
なお、吸収体30は、図2に示すように、点状圧搾部81によって裏面シート20側から表面シート10側に押圧されて、表面シート側に突出するように変形している。しかし、例えば、厚みが薄い吸収体にあっては、点状圧搾部が形成された部分の吸収材が周囲に流れて吸収体の厚みが更に薄くなり、表面側中間シート71と裏面側中間シート72とが近接したり、表面側中間シート71と裏面側中間シート72とが当接したりするように変形する。すなわち、点状圧搾部81が形成された部分の吸収体30、表面側中間シート71及び裏面側中間シート72の形状は、図2及び図3に示す例に限定されない。
【0034】
中央圧搾部81は、円形の点状であって、間欠的に複数形成されている。中央圧搾部81は、一定の方向に配列され、多数の仮想圧搾ラインを形成している。仮想圧搾ラインは、幅方向Wに対して所要角度で傾斜する第1仮想圧搾ラインN1と、幅方向Wに対して所要角度で傾斜し、かつ、第1仮想圧搾ラインN1と交差する第2仮想圧搾ラインN2と、を有し、第1仮想圧搾ラインN1と第2仮想圧搾ラインN2とから格子状パターンを形成している。
【0035】
第1圧搾部85は、円形の点状であって、間欠的に複数形成されている。第1圧搾部85は、所定の間隔を空けて配置されている。
【0036】
なお、中央圧搾部81及び第1圧搾部85は、間欠的に複数設けられていればよく、その形状は、円形に限られず、楕円形、星形、ハート形、菱形等であってもよく、限定されない。
【0037】
長手方向圧搾部82は、中央領域CAの幅方向外側に配置されている。長手方向圧搾部82は、長手方向Lに沿って2列に形成されている。
【0038】
幅方向圧搾部は、中央領域CAよりも長手方向外側に配置され、中央領域と第1領域FAとの間に配置された第1幅方向圧搾部83と、第1領域FAよりも長手方向外側に配置された第2幅方向圧搾部84と、を有する。
【0039】
第2幅方向圧搾部84の幅方向外側端部は、長手方向圧搾部82の前端部及び後端部と連なっている。第2幅方向圧搾部84と長手方向圧搾部82とが連なった状態において、環状の圧搾部を構成している。第1幅方向圧搾部83は、長手方向圧搾部82よりも幅方向内内側に配置されている。
【0040】
なお、長手方向圧搾部82は、長手方向Lに沿った直線に対して傾斜するように形成されていてもよい。長手方向圧搾部82は、長手方向Lに沿った直線と、長手方向圧搾部82とによって形成される角度(鋭角側)が45度以下であるものとする。一方、幅方向圧搾部83、84は、幅方向Wに沿った直線に対して傾斜するように形成されていてもよい。幅方向圧搾部83、84は、幅方向Wに沿った直線と、幅方向圧搾部とによって形成される角度(鋭角側)が45度未満であるものとする。
【0041】
中央領域CAは、長手方向圧搾部82と第1幅方向圧搾部83とによって囲まれた領域である。第1領域FAは、環状の第2幅方向圧搾部84及び長手方向圧搾部82よりも内側かつ、第1幅方向圧搾部83よりも長手方向外側の領域である。
【0042】
中央圧搾部81は、長手方向L及び幅方向Wに対して傾斜した第1仮想圧搾ラインN1及び第2仮想圧搾ラインN2に配列されている。吸収性物品1が幅方向外側から内側に押圧された際には、第1仮想圧搾ラインN1と第2仮想圧搾ラインN2とに沿って折れ曲がり易くなる。
【0043】
着用者は、歩行時等において片脚ずつ動かすため、両脚の間に配置される吸収性物品1には、斜めに捻られる方向の力が掛かる。第1仮想圧搾ラインN1と第2仮想圧搾ラインN2とが長手方向及び幅方向に対して傾斜しているため、吸収性物品1は、着用者の動きに追従して斜め方向の力に沿って変形し易くなる。すなわち、着用者の身体の外形に沿って吸収性物品1が曲がり易くなり、吸収性物品1のフィット性を向上させることができる。
【0044】
第1仮想圧搾ラインN1及び第2仮想圧搾ラインN2は、長手方向Lに対して傾斜しているため、吸収性物品1が長手方向Lに沿って折り曲がることを抑制できる。更に、第1仮想圧搾ラインN1及び第2仮想圧搾ラインN2は、幅方向Wに対して傾斜しているため、幅方向外側からの外力に対抗することができる。
【0045】
また、中央圧搾部81は、間欠的に配置されているため、幅方向に延びる幅方向圧搾部や長手方向に延びる長手方向圧搾部よりも硬くなり難く、かつ一部の領域の剛性が偏って硬くなり難い。よって、着用者の排泄口と当接する排泄口当接領域を含む中央領域の質感を高め、装着感を向上させることができる。
【0046】
中央圧搾部81及び第1圧搾部の断面形状は、図2に示すように、裏面シート側から表面シート側に向かう凸状である。例えば、中央圧搾部81の幅方向の長さは、厚み方向において変化しており、裏面シート20側の幅方向長さW1は、表面シート10側の幅方向長さW2よりも長い。
【0047】
また、図4は、中央圧搾部の配列状態を説明するための図である。図4(a)は、表面シート側から見た、図1に示す領域Rを拡大した図であり、図4(b)は、裏面シート側から見た領域Rの中央圧搾部81を示している。表面シート10側から視認した状態では、中央圧搾部81同士の間隔W3が裏面シート10側から視認した状態の間隔W4よりも広く、中央圧搾部81は、点状に視認される。一方、裏面シート20側から視認した状態では、中央圧搾部81同士の間隔W4が表面シート10側から視認した状態の間隔W3よりも狭く、中央圧搾部81は、ライン状に視認される。中央圧搾部81は、裏面シート20側において隣接する中央圧搾部との距離が近く、中央圧搾部81同士の間も中央圧搾部81に追従して表面シート側に凹むように変形する。よって、裏面シート20側において中央圧搾部81がライン状に表面シート側に凹み、吸収性物品1は、着用者側に凸になるように変形する。
【0048】
中央領域CAに対して幅方向外側から幅方向内側に向かう方向の外力が加えられた際には、中央圧搾部81は幅方向においてつぶれるように変形する。このとき、中央圧搾部81の裏面シート側の断面形状は、中央圧搾部81の表面シート側の断面形状よりも大きいため、中央圧搾部81がつぶれると、表面シート側に膨らむように変形する。よって、中央圧搾部81が形成された部分が着用者側(上方に)押し上げられ、排泄口に表面シート10を近付けることができ、排泄口から排泄された体液を迅速に表面シート10に引き込むことが可能となる。
【0049】
また、中央圧搾部81及び第1圧搾部85は、裏面シート側から表面シート側に向かって圧縮されているため、表面シート側から裏面シート側から圧縮された圧搾部と比較して、表面シートにおける熱によるダメージが少ない。例えば、表面シートが熱によるダメージを受けると、圧搾部が形成された部分が必要以上に硬化したり、フィルム化して液透過性を損なったりするおそれがある。
【0050】
しかし、中央圧搾部81及び第1圧搾部85は、裏面シート20側から表面シート10側に向かって圧縮されているため、表面シート10のフィルム化を抑制できる。特に、中央圧搾部81は、最も体液が多く排出される中央領域に配置されているため、吸収性能を確保することが望ましい。体液が排出される中央領域に形成された中央圧搾部81の表面シートのフィルム化を抑制することにより、中央領域における表面シート上の液残りを防止でき、着用者の装着感の悪化を抑制できる。
【0051】
また、中央圧搾部81は、間欠的に配置されているため、表面シートにおいて圧搾部の形成時における熱によるダメージが連続して形成されない。例えば、中央圧搾部81が連続して形成されている場合には、熱によるダメージが連続するため、排出された体液を表面シート内に引き込み難く、体液が表面シート上を伝ってしまうことがある。しかし、中央圧搾部81間には、熱によるダメージを受けてない表面シートが配置されているため、体液が表面シート上を伝うことを防止できる。
【0052】
例えば、図3に示す中央圧搾部81の裏面シート側の部分のように、中央圧搾部81が連続して形成されている部分では、中央圧搾部81同士の間隔が狭くなり、中央圧搾部81が連なって形成される。このように、中央圧搾部81同士の間隔が狭くなると、中央圧搾部81が形成された部分のみならず、その周囲においても熱によるダメージを受けるおそれがある。
【0053】
連続した中央圧搾部81を表面シート側から圧搾加工すると、中央圧搾部81が形成された圧搾ラインに沿って表面シートがフィルム化して、更に体液を吸収体に引き込み難くなり、表面シート上を体液が伝ってしまうおそれがある。しかし、本実施の形態のように、連続して中央圧搾部81を裏面シート側から圧搾加工することにより、表面シートが連続してフィルム化すること抑制し、体液の引き込み性を確保できる。
【0054】
更に、中央圧搾部81は、格子状の圧搾ライン上のみに形成されており、仮想圧搾ラインによって囲まれた領域には、中央圧搾部81が形成されていない。仮想圧搾ラインによって囲まれた領域は、熱による表面シートのダメージを受けてなく、仮想圧搾ラインによって囲まれた領域の表面シートによって、体液を引き込むことができる。更に、その下方に位置する吸収体は、圧搾部が形成されてなく、体積が確保されているため、表面シートによって引き込んだ体液を保持することができる。
【0055】
中央領域CAに配置されている中央圧搾部81の密度は、第1領域に配置されている第1圧搾部の密度よりも低い。よって、吸収力の必要な中央領域の吸収体の体積が確保しやすくなり、中央領域における吸収性能を確保できる。一方、第1領域は、圧搾部の密度が高いため、折れ基点が多くなる。よって、体に沿った変形をすることができる。
【0056】
なお、中央領域に配置されている中央圧搾部81の密度とは、中央領域の面積に対する中央圧搾部81の面積であり、第1領域FAに配置されている第1圧搾部85の密度とは、第1領域の面積に対する第1圧搾部85の面積である。中央領域CAに配置されている中央圧搾部81の密度及び第1領域FAに配置されている第1圧搾部85の密度は、例えば、表面シートにおける中央領域の面積を測定し、かつ表面シートに形成された中央圧搾部の面積を測定し、中央領域の面積に対する中央圧搾部の面積の比率によって測定することができる。第1領域FAに配置されている第1圧搾部85の密度ついても、同様の方法によって測定することができる。
【0057】
また、仮想圧搾ラインによって囲まれた領域の剛性は、圧搾部が形成された部分の剛性よりも低い。よって、中央領域における肌触りを向上させて、装着感を向上させることができる。さらに、表面シート側から見た際に、中央圧搾部81は、表面シート側から圧縮された長手方向圧搾部等よりも目立ちにくくなり、見た目のふんわり感を維持することができる。
【0058】
長手方向圧搾部82は、中央圧搾部81よりも幅方向外側に配置されており、中央圧搾部81によって引き込んだ体液を、幅方向外側へ拡散することを抑制し、横漏れを防ぐことができる。
【0059】
長手方向圧搾部82は、表面シート側から裏面シート側に凹み、かつ中央圧搾部81は、裏面シート側から表面シート側に凹んでいるため、一方のシート側から長手方向圧搾部82及び中央圧搾部81が形成されている構成と比較して、吸収性物品の曲げに対する抵抗を高くすることができる。
【0060】
更に、第1幅方向圧搾部83及び第2幅方向圧搾部84が形成されているため、幅方向外側から幅方向内側に向かって力がかかった際に形状を維持しやすくなる。また、長手方向圧搾部と幅方向圧搾部とが連続して環状の圧搾部を構成し、その環状の圧搾部によって中央圧搾部81を囲んでいるため、中央領域の平面の形状にて保ちやすくなり、よれに対して強くすることができる。
【0061】
また、例えば、圧搾部が幅方向に延びていたり、長手方向に延びていたりすると、圧搾部によって保持される体液が前後方向や幅方向に拡散してしまうおそれがある。特に、第1圧搾部85は、吸収体30の前側端部と吸収体30の後側端部とに配置されており、体液が拡散し過ぎると前漏れ等が発生するおそれがある。しかし、第1圧搾部85は、円形であるため、保持した体液の拡散を抑制し、漏れを防ぐことができる。
【0062】
次に、本実施形態に係る吸収性物品の製造方法の一部について説明する。なお、以下に説明しない方法については、既存の方法を用いることができる。吸収性物品の製造方法は、吸収体形成工程と、吸収体接合工程と、圧搾加工工程と、を少なくとも備える。
【0063】
吸収体形成工程は、例えば、成型ドラムによって吸収体の材料となるパルプを成型して吸収体30を成型する。吸収体接合工程は、成形した吸収体に対して、表面シート10、表面側中間シート71及び裏面側中間シート72を接合する。
【0064】
圧搾加工工程は、表面シート10、吸収体30、表面側中間シート71及び裏面側中間シート72を圧搾加工して圧搾部を形成する。このとき、表面シート側から裏面シート側に向かって圧搾加工を施して長手方向圧搾部82、第1幅方向圧搾部83及び第2幅方向圧搾部84を形成し、かつ裏面シート側から表面シート側に向かって圧搾加工を施して中央圧搾部81及び第1圧搾部85を形成する。このように構成された吸収体等に裏面シートを接合して切断することにより、吸収性物品1を得ることができる。
【0065】
(第2の実施形態)
次いで、図5に基づいて第2の実施形態に係る吸収性物品1Aについて説明する。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の構成については、同符号を用いて説明を省略する。
【0066】
第2の実施形態に係る吸収性物品1Aの中央圧搾部81は、格子状に配列されてなく、第1圧搾部85と同様に、均等に間隔をあけて配列されている。また、中央領域CAに配置されている中央圧搾部81の密度は、第1領域FAに配置されている第1圧搾部の密度と略同じように構成されている。
【0067】
第2の実施形態における中央領域CAにおける中央圧搾部81の密度は、第1の実施形態に係る吸収性物品1における中央圧搾部81の密度よりも高いため、中央領域CAの剛性を高めて平面状に維持し、中央領域CAを排泄口に対向させて配置し易くなる。また、中央領域CAにおける中央圧搾部81の密度を高めることにより、折れ基点を多く設けることができ、体に沿って変形させることができる。
【0068】
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0069】
圧搾部は、少なくとも表面シート10及び吸収体30を厚み方向Tに圧搾されて形成されていればよく、種々の構成を採用することができる。例えば、プレス加工やエンボス加工によって形成することができ、その形状は、格子網やハニカム形状であってもよい。
【0070】
例えば、本実施の形態に係る吸収性物品は、裏面側中間シートと表面側中間シートが設けられているが、裏面側中間シートと表面側中間シートとのうち少なくともいずれか一方が設けられていてもよいし、いずれも設けられていなくてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1、1A…吸収性物品、 10…表面シート、 20…裏面シート、 30…吸収体、 41,42…サイドシート、 43,44…ウイング部、 50…粘着材、 60…ホットメルト接着剤、 71…表面側中間シート、 72…裏面側中間シート、 80…圧搾部、 81…点状圧搾部、82…長手方向圧搾部、 83…第1幅方向圧搾部、 84…第2幅方向圧搾部、 85…第1圧搾部 CA…中央領域、 FA…第1領域、L…長手方向 T…厚み方向、 W…幅方向、N1…第1仮想圧搾ライン N2…第2仮想圧搾ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シート、及び前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置される吸収体と、を有する吸収性物品であって、
前記吸収体には、前記表面シート及び前記吸収体を吸収性物品の厚み方向に圧縮した圧搾部が複数形成されており、
前記圧搾部は、着用者の排泄口に対向して配置される排泄口当接領域の中心を含む中央領域に設けられ、かつ間欠的に複数形成された点状の中央圧搾部と、前記中央領域よりも前記吸収性物品の幅方向外側に設けられ、かつ前記吸収性物品の長手方向に延びる長手方向圧搾部と、を有し、
前記長手方向圧搾部は、前記表面シート側から前記裏面シート側に向かって凹んでおり、
前記中央圧搾部は、前記裏面シート側から前記表面シート側に向かって凹んでいる、吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収体と前記裏面シートとの間には、不織布からなる裏面側中間シートが配置されており、
前記中央圧搾部は、前記裏面側中間シート、前記表面シート及び前記吸収体が圧縮されて形成されている、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記中央圧搾部の厚み方向における断面形状は、前記裏面シート側から前記表面シート側に向かう凸状である、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体は、前記中央領域よりも長手方向外側に配置された第1領域を有しており、
前記圧搾部は、前記中央領域と前記第1領域との間において前記幅方向延びて設けられ、かつ前記表面シート側から前記裏面シート側に向かって凹む幅方向圧搾部と、
前記第1領域に間欠的に設けられ、かつ前記裏面シート側から前記表面シート側に向かって凹む第1圧搾部と、を更に有しており、
前記中央領域に配置されている前記中央圧搾部の密度は、前記第1領域に配置されている前記第1圧搾部の密度以下である、請求項1から請求項3のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記複数の中央圧搾部は、一定の方向に配列され、多数の仮想圧搾ラインを形成しており、前記仮想圧搾ラインが、前記幅方向に対して所要角度で傾斜する第1仮想圧搾ラインと、前記幅方向に対して所要角度で傾斜し、かつ、前記第1仮想圧搾ラインと交差する第2仮想圧搾ラインとから格子状パターンを形成している、請求項1から請求項4のいずれかに記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−34525(P2013−34525A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170832(P2011−170832)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】