吸収性物品
【課題】男性が使用する際、装着時の違和感が少ないものでありながら、脚周りの漏れ防止性に優れる吸収性物品を提供する。
【解決手段】上記課題は、幅方向中間に位置する基部11と、基部11の幅方向両側に位置する両側部12とを備え、両側部12が、それぞれ側端部12Eを巻き始めとして表面が内側となるように巻かれることにより、基部11よりも厚いロール状部分13となるように構成されており、前記ロール状部分の巻きが非固定とされるとともに、両側部12のロール状部分13の間に間隔13Dを空けた状態で、ロール状部分の巻きの緩みを制限するポケット部(巻き拘束手段)15が設けられており、少なくともロール状部分13はその外部露出面から尿を吸収可能である、ことを特徴とする吸収性物品10により解決される。
【解決手段】上記課題は、幅方向中間に位置する基部11と、基部11の幅方向両側に位置する両側部12とを備え、両側部12が、それぞれ側端部12Eを巻き始めとして表面が内側となるように巻かれることにより、基部11よりも厚いロール状部分13となるように構成されており、前記ロール状部分の巻きが非固定とされるとともに、両側部12のロール状部分13の間に間隔13Dを空けた状態で、ロール状部分の巻きの緩みを制限するポケット部(巻き拘束手段)15が設けられており、少なくともロール状部分13はその外部露出面から尿を吸収可能である、ことを特徴とする吸収性物品10により解決される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッドタイプ、テープタイプ、パンツタイプ等の基本吸収性物品とともに補助的に使用される吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
成人向けの排泄物吸収性物品(おむつ)としては、パッドタイプ、テープタイプ、パンツタイプ等の基本吸収性物品(アウターとも呼ばれる)の他に、これらと併用することを想定した、より小型のフラットタイプと呼ばれる補助吸収性物品(インナーとも呼ばれる)が提供されており、これらの組み合わせは特にケア施設等の介護現場において汎用されている。
【0003】
特に装着者が男性の場合、排尿位置が陰茎の位置により変化するため、脚周りからの漏れが発生し易いという問題があり、介護現場ではこの問題を解決するために、フラットタイプの補助吸収性物品を用い、その幅方向両側部を蛇腹状にして、蛇腹状部分間に陰茎を配置することにより、鼠径部から股間までの両脚の付根の溝に発生する隙間を埋めるようにしたり、特に装着者が男性のときには円錐状に丸めて陰茎に巻き付けたりする(以下、男性巻きともいう)、といった対応が取られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
また、男性巻きの装着作業の簡素化及び漏れの低減を図るために、陰茎挿入口を有する袋状吸収性物品も提案されている(例えば、特許文献3,4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−212452号公報
【特許文献2】特開2001−129012号公報
【特許文献3】特開2001−204755号公報
【特許文献4】特許第4388213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述の男性巻きや袋状吸収性物品では、装着状態において陰茎が吸収性物品により拘束されるため違和感が強く、また陰茎が動いて物品外に抜け出ると意味をなさないという問題点がある。
【0007】
また、上述の蛇腹状装着形態は、男性巻きや袋状吸収性物品と比べて装着時の違和感は少ないものの、鼠径部から股間までの両脚の付根の溝に発生する隙間を完全に埋めることが困難であり、隙間が残り易いだけでなく、脚の動きに追従できずにじゃばらが崩れ易いため、脚周りの漏れ防止という観点からは改善の余地がある。
【0008】
そこで、本発明の主たる課題は、男性が使用する際、装着時の違和感が少ないものでありながら、型くずれし難く、脚周りの漏れ防止性に優れる吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
幅方向中間に位置する基部と、基部の幅方向両側に位置する両側部とを備え、
両側部が、それぞれ側端部を巻き始めとして表面が内側となるように巻かれることにより、基部よりも厚いロール状部分となるように構成されており、
【0010】
前記ロール状部分の巻きが非固定とされるとともに、前記両側部のロール状部分の間に間隔を空けた状態で、前記ロール状部分の巻きの緩みを制限する巻き拘束手段が設けられており、
少なくとも前記ロール状部分はその外部露出面から尿を吸収可能である、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0011】
(作用効果)
本発明の吸収性物品は、使用前の準備段階で又は予め製品状態でロール状部分を形成するとともに、その巻きの緩みを巻き拘束手段により制限しておき、使用に際して、鼠径部から股間までの両脚の付根の溝に、両側部のロール状部分を入り込ませるとともに、それらロール状部分の間に男性器を配置して男性器を基部で覆うようにして装着することができる。したがって、鼠径部から股間までの両脚の付根の溝に発生する隙間を、尿吸収可能なロール状部分により埋めることができ、脚周りに向かう尿をロール状部分により効果的に吸収することができる。しかも、ロール状部分は、蛇腹状のものとは異なり、弾力性及び形状維持性(形状の崩れにくさ)に富むとともに、巻きが非固定であるため、脚の付根の溝にしっかりとフィットし、脚等の体動に追従して変形・復元することができる。それでいて、巻き拘束手段により巻きの緩みが制限されているから巻きが緩み過ぎたりせず、崩壊し難い。よって、脚周りからの漏れは発生し難くなる。さらに、本発明の吸収性物品では、男性巻きや袋状吸収性物品のように男性器が強く拘束されず、違和感も生じ難い。
なお、ロール状部分は、側部が少なくとも1周は巻かれている(つまり筒状になっている)部分を意味する。
【0012】
<請求項2記載の発明>
前記巻き拘束手段として、吸収性物品の裏面の前端部及び後端部の少なくとも一方に、前後方向中央側に開口するポケット部を備えており、前記ロール状部分を形成した状態で、前記ポケット部を裏返して前記ロール状部分の端部に被せることにより、前記ロール状部分の巻きの緩みを制限するように構成した、請求項1記載の吸収性物品。
【0013】
(作用効果)
このように、裏面にポケット部を設けて巻き拘束手段を構成した場合、簡単確実にロール状部分の巻きを拘束できるとともに、ポケット部が尿の前後移動を遮る遮断壁ともなり、前方又は後方への漏れを防止する効果も発揮される。
【0014】
<請求項3記載の発明>
前記ポケット部は、吸収性物品の裏面にポケット形成シートを貼り付けることにより吸収性物品の裏面とポケット形成シートとの間が収容空間となる形態で形成されており、前記ポケット形成シートにおける前記開口の縁部に、細長状弾性伸縮部材が前記開口に沿って伸長状態で固定されている、請求項2記載の吸収性物品。
【0015】
(作用効果)
このようにポケット形成シートを設けて、開口の縁部が細長状弾性伸縮部材の収縮力で絞られる構成とすることにより、ロール状部分をある程度の弾力をもって確実に拘束することができ、ロール状部分の緩み及びそれによる崩れを効果的に防止することができる。
【0016】
<請求項4記載の発明>
前記巻き拘束手段として、前記両側部の一方の裏面に一端部が固定され、他方の裏面に他端部が固定され、幅方向に弾性伸縮する弾性伸縮バンドを備えており、前記ロール状部分を形成した状態で、前記弾性伸縮バンドを裏返して前記ロール状部分の端部に掛けることにより、前記ロール状部分の巻きの緩みを制限するように構成した、請求項1記載の吸収性物品。
【0017】
(作用効果)
このような弾性伸縮バンドによる巻きの拘束は、簡単確実にロール状部分の巻きを拘束できるとともに、製造も容易であるため好ましい。
【0018】
<請求項5記載の発明>
前記巻き拘束手段として、前記両側部の一方の裏面に一端部が固定され、他方の裏面に対する接合手段が他端部に設けられた、固定テープを備えており、前記ロール状部分を形成した状態で、前記固定テープを、前記一端部が位置する一方のロール状部分の外周面から基部の反対側を通り他方のロール状部分の外周面に渡し、前記他端部の接合手段を前記他方のロール状部分の外周面に接合することにより、前記ロール状部分の巻きの緩みを制限するように構成した、請求項1記載の吸収性物品。
【0019】
後処理テープ、請求項1記載の吸収性物品。
【0020】
(作用効果)
このように、固定テープを設けて両側部のロール状部分を基部側と反対側で連結することによりロール状部分の巻きを拘束する形態は、簡単確実にロール状部分の巻きを拘束できるとともに、使用者が必要に応じて、ロール状部分の巻きを戻す又は進めることによりロール状部分の位置や直径を調節したり、巻きを緩める又は締めることによりロール状部分の直径、弾力性、変形容易性を調節したりすることが可能となり、多少の個人差があっても適切な装着状態を得ることができる。もちろん、製造も容易である。
【0021】
<請求項6記載の発明>
前記基部及び両側部にわたる一体的な吸収体と、この吸収体の表裏両面を被覆する液透過性シートとを備えた、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0022】
(作用効果)
このような形態であると、基部及び両側部の全体において表裏両面からの尿吸収が可能となり、また吸収した尿は吸収体全体に拡散可能となる。さらに、吸収体の剛性により、装着状態では、両側部のロール状部分が両脚の付根の溝に向かって付勢された状態となるため、脚の動きに追従して両側部のロール状部分が基部との境界を軸に揺動することができ、動的なフィット性に優れるとともに、男性器への側方からの圧迫も少ないものとなる。
【発明の効果】
【0023】
以上のとおり、本発明によれば、男性が使用する際、装着時の違和感が少ないものでありながら、脚周りの漏れ防止性に優れる等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の形態の吸収性物品の展開状態の表面側を示す平面図である。
【図2】第1の形態の吸収性物品の展開状態の裏面側を示す平面図である。
【図3】図1のX−X断面図、図2のV−V断面図、W−W断面図である。
【図4】第1の形態の吸収性物品の表面側を示す斜視図である。
【図5】第1の形態の吸収性物品の裏面側を示す斜視図である。
【図6】吸収性物品の配置状態を示す斜視図である。
【図7】吸収性物品の装着状態を概略的に示す正面図である。
【図8】吸収性物品の装着状態を概略的に示す横断面図である。
【図9】第1の形態の吸収性物品の表面側を示す斜視図である。
【図10】第2の形態の吸収性物品の展開状態の裏面側を示す平面図である。
【図11】第3の形態の吸収性物品の展開状態の裏面側を示す平面図である。
【図12】第3の形態の吸収性物品を示す斜視図である。
【図13】第4の形態の吸収性物品の展開状態の裏面側を示す平面図である。
【図14】第4の形態の吸収性物品の正面図である。
【図15】パッドタイプ吸収性物品の展開状態の表面側を示す平面図である。
【図16】パッドタイプ吸収性物品の裏面側を示す平面図である。
【図17】図15のY−Y断面図である。
【図18】図15のZ−Z断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しつつ詳説する。
(第1の形態)
第1の形態の吸収性物品10は、図1〜図3に示すように、幅方向中間に位置する基部11と、基部11の幅方向両側に位置する両側部12とを備えたものであり、使用前の準備段階で又は予め製品状態で、図4及び図5に示すように、両側部12を、それぞれ側端部12Eを巻き始めとして表面が内側となるように巻かれることにより、基部11よりも厚いロール状部分13とするものである。
【0026】
この吸収性物品10は、少なくともロール状部分13がその外部露出面から尿を吸収可能なように構成されている限り、内部構造は特に限定されず、形状維持性に優れるものであれば吸収性素材単独で構成することもできるが、図1〜図3に示すように、基部11及び両側部12にわたる一体的な吸収体3と、吸収体3の表面を被覆する透液性トップシート2と、吸収体3の裏面を被覆する透液性バックシート1とを備えた構造が簡素であり好ましい。この場合、図4に示すように、基部11の表面はトップシート2により形成され、このトップシート2を介して吸収体3への吸収がなされるのに対して、ロール状部分13では外部露出面がバックシート1により形成され、バックシート1を介して吸収体3への吸収がなされる。なお、図中の点模様部分はホットメルト接着剤による接着部を示している。
【0027】
トップシート2及びバックシート1としては、有孔または無孔の不織布や有孔プラスチックシートなどが用いられる。不織布を用いる場合、その繊維は特に限定されず、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、また製法も特に限定されず、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。トップシート2及びバックシート1に多数の透孔を形成したプラスチックシートを用いると、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。
【0028】
トップシート2及びバックシート1は、図示例では吸収体3の周囲からはみ出した部分を接合しているため吸収体3を有しないフラップ部4が形成されているが、いずれか一方のシートを吸収体3の周縁部を巻き込むように延在させることで周囲の一部又は全部にフラップ部4を有しない構造とすることもできる。
【0029】
吸収体3としては、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。吸収体3は、形状及びポリマー保持等のため、必要に応じてクレープ紙等の、液透過性及び液保持性を有する包装シート(図示略)によって包装することができる。吸収体3の形状は、図示形態のように長方形状とする他、適宜の形状とすることができる。吸収体3における繊維目付け及び吸収性ポリマーの目付けは適宜定めることができるが、繊維目付けは250〜500g/m2程度とするのが好ましく、また吸収性ポリマーの目付けは50〜250g/m2程度とするのが好ましい。
【0030】
図示例と異なり、基部11の裏側にのみ公知の不透液性シートを配置したり、ロール状部分13の外部露出面の一部のみ透液性としたり、基部11内の吸収体3を省略したり、基部11及び両側部12に対して個別に吸収体3を設けたりする等、適宜の変更が可能である。
【0031】
吸収性物品10の寸法・形状は適宜定めることができるが、通常の場合、展開状態における幅Wは350〜450mm程度とするのが好ましく、展開状態における前後方向長さLは140〜210mm程度とするのが好ましく、前後方向長さLよりも幅Wの長い横長形状とするのが好ましい。基部11の幅(展開状態)は、装着者の股間幅より狭く、60〜90mm程度とすることができる。両側部12の幅(展開状態)は、ロール状部分13の巻き長さ(巻かれている部分の幅方向長さ)に応じて決まるものであり、通常の場合、145〜180mm程度とするのが好ましい。ロール状部分13の巻き長さ及び直径は次に述べる巻き拘束手段により定まるものである。また巻き数は、1.5巻き程度(図14の状態)は確保するのが好ましい。
【0032】
特徴的には、両側部12のロール状部分13の巻きが非固定とされるとともに、両側部12のロール状部分13の間に間隔13Dを空けた状態で、ロール状部分13の巻きの緩みを制限する巻き拘束手段が設けられている。巻き拘束手段は特に限定されるものではないが、第1の形態では、吸収性物品10の裏面の前端部に後方側に開口するポケット部15を備えており、ロール状部分13を形成した状態で、図9に示すようにポケット部15を裏返して図4及び図5に示すようにロール状部分13の端部に被せることにより、ロール状部分13の巻きの緩みを制限するように構成している。ポケット部15は吸収性物品10の前端部にのみ設ける他、これとともに又はこれに代えて後端部にも設けることができる。
【0033】
また、第1の形態のポケット部15は、吸収性物品10の裏面にポケット形成シート16を貼り付けることにより吸収性物品10の裏面とポケット形成シート16との間が収容空間となる形態で形成されている。より詳細には、吸収性物品10の裏面における前端部に、幅方向全体にわたるポケット形成シート16が配置され、このポケット形成シート16の幅方向両側部12は前後方向全体にわたり吸収性物品10の裏面に固定され、幅方向中間部は前端部が吸収性物品10の裏面に固定されるとともに、この固定部16fよりも後側の部分16nは非固定とされ、この非固定の部分16fの後端部(開口の縁部)に、細長状弾性伸縮部材16gが開口に沿って伸長状態で固定されている(なお、ポケット部15を吸収性物品10の後端部に設ける場合は前後が逆になる)。図1中の斜線を付した部分はポケット形成シート16の固定部である。
【0034】
ポケット形成シート16としては、スパンボンド不織布(SS、SSS等)やSMS不織布(SMS、SSMMS等)、メルトブロー不織布等の柔軟で均一性・隠蔽性に優れた不織布に、必要に応じてシリコーンなどにより撥水処理を施したものを好適に用いることができ、繊維目付けは13〜20g/m2程度とするのが好ましい。細長状弾性伸縮部材16gとしては糸状、帯状等の合成又は天然ゴムを用いることができる。合成糸ゴムを用いる場合は、太さは450〜950dtexが好ましく、500〜650dtexがより好ましい。固定時の伸長率は、180〜240%が好ましく、200〜230%がより好ましい。なお、用語「伸長率」は自然長を100%としたときの値を意味する。また、図示例では細長状弾性伸縮部材16gの本数が1本とされているが、複数本平行に設けることもできる。
【0035】
以上のように構成された吸収性物品10は、使用前の準備段階で又は予め製品状態で、図4及び図5に示すように、両側部12を、それぞれ側端部12Eを巻き始めとして表面が内側となるように巻いて、基部11よりも厚いロール状部分13を形成するとともに、ポケット部15を図9に示すように裏返して図4及び図5に示すように両側部12のロール状部分13の端部に被せることにより、ロール状部分13の巻きの緩みを制限するように構成した後、図6〜図8に示すように、基本吸収性物品20の内面と男性器Pとの間に配置し、装着者の鼠径部から股間までの両脚Tの付根の溝に、両側部12のロール状部分13を入り込ませるとともに、それらロール状部分13の間に男性器Pを配置して男性器Pを基部11で覆うようにして装着することができる。基本吸収性物品20は立体ギャザー24を備えた形態が一般的であるが、そのような場合には立体ギャザー24の間に吸収性物品10を配置する。そしてこの装着状態では、鼠径部から股間までの両脚Tの付根の溝に発生する隙間を、尿吸収可能なロール状部分13により埋めることができ、脚T周りに向かう尿をロール状部分13により効果的に吸収することができる。しかも、ロール状部分13は、弾力性及び形状維持性(形状の崩れにくさ)に富むむとともに、巻きが非固定であるため、脚Tの付根の溝にしっかりとフィットし、脚T等の体動に追従して変形・復元することができる。それでいて、ポケット部15により巻きの緩みが制限されているから巻きが緩み過ぎたりせず、崩壊し難い。よって、脚T周りからの漏れは発生し難くなる。また、男性器Pが強く拘束されず、違和感も生じ難い。なお、図8中の符号Dは装着者の下腹部Dを示している。
【0036】
特に、図示形態のように、吸収性物品10の裏面にポケット部15を設けて巻き拘束手段を構成した場合、簡単確実にロール状部分13の巻きを拘束できるとともに、ポケット部15が尿の前後移動を遮る遮断壁ともなり、前方又は後方への漏れを防止する効果も発揮される。さらに、図示形態では、ポケット部15の開口の縁部が細長状弾性伸縮部材16gの収縮力で絞られる構成とすることにより、ロール状部分13をある程度の弾力をもって確実に拘束することができ、ロール状部分13の緩み及びそれによる崩れを効果的に防止することができる。
【0037】
また、図示形態のように、基部11及び両側部12にわたる一体的な吸収体3と、この吸収体3の表裏両面を被覆する液透過性シートとを備えた構造であると、基部11及び両側部12の全体において表裏両面からの尿吸収が可能となり、また吸収した尿は吸収体3全体に拡散可能となる。さらに、吸収体3の剛性により、装着状態では、両側部12のロール状部分13が両脚Tの付根の溝に向かって付勢された状態となるため、脚Tの動きに追従して両側部12のロール状部分13が基部11との境界を軸に揺動することができ、動的なフィット性に優れるとともに、男性器Pへの側方からの圧迫も少ないものとなる。
【0038】
他方、基部11は基本吸収性物品20に対して非固定とすることもできるが、図示形態のように、基部11の裏面に、粘着剤層や面ファスナー(メカニカルファスナー)のオス材(フックテープ)等からなるズレ止め部5を設け、基部11の位置ズレを防止するのも好ましい形態である。なお、図示形態は粘着剤層によりズレ止め部5を形成した場合を想定しており、符号6は粘着剤層を覆う剥離シートである。使用時にはこの剥離シート6を剥がして、粘着剤層を露出させて基本吸収性物品20の内面に粘着させる。
【0039】
(第2の形態)
第1の形態では、ポケット部15の開口の縁部に細長状弾性伸縮部材16gを設け、その収縮力でポケット部15の開口を絞る構成としたが、図10に示すように、細長状弾性伸縮部材16gを省略したポケット部15により巻き拘束手段を構成することもできる。
【0040】
(第3の形態)
第1の形態では、ポケット部15により巻き拘束手段を構成したが、図11及び図12に示すように、両側部12の一方の裏面に一端部が固定され、他方の裏面に他端部が固定された、幅方向に弾性伸縮する弾性伸縮バンド17により、巻き拘束手段を構成するのも好ましい形態である。このような弾性伸縮バンド17としては、天然又は合成ゴムそのものを用いたり、輪ゴムの一部を固定して非固定の自由部分を弾性伸縮バンド17の変わりとしたり、2枚の不織布をホットメルト接着剤により貼り合わせるとともに、その間に一本又は複数本の細長状弾性伸縮部材16gを幅方向に沿って伸長状態で固定した弾性伸縮シートを用いたりすることができる。
【0041】
本第3の形態の弾性伸縮バンド17は、吸収性物品10の裏面の前端部及び後端部(図示形態)の少なくとも一方に設けるのが好ましい。
【0042】
本第3の形態では、図12に示すように、ロール状部分13を形成した状態で、弾性伸縮バンド17を裏返してロール状部分13の端部に掛けることにより、ロール状部分13の巻きの緩みを制限することができる。本第3の形態は、漏れ防止機能を有しない点で第1の形態と異なるが、簡単確実にロール状部分13の巻きを拘束できるとともに、製造も容易であるという利点がある。
【0043】
(第4の形態)
また、第1〜第3の形態では、ポケット部15又は弾性伸縮バンド17の輪の寸法により巻きの緩みをどの程度に制限するかが定まるため、使用者が自由に緩み具合を変更することができない。そこで、図13及び図14に示すように、巻き拘束手段として、両側部12の一方の裏面に一端部が固定され、他方の裏面に対する接合手段が他端部に設けられた、固定テープ70を備えた形態も提案する。
【0044】
このような固定テープ70の具体例としては、図13に拡大して示すように、パンツタイプ使い捨ておむつで汎用されている後処理テープを好適に用いることができる。図示形態の固定テープ70は、基端部71が裏面の外面に接着剤等により固定されるとともに、この基端部71よりも先端側の部分は三つ折り(断面Z字状)や二つ折りで折り畳まれて、折り重なり部分間が仮止め接着剤72により剥離可能に固定(仮固定)されている。また、先端部に白色等の不透明色に着色された摘み部73を有する。この摘み部73の着色は着色テープ74を張り合わせることにより形成しても良い。使用時には、固定テープ70の折り重なり部分を剥離して展ばすことにより、使用前よりも固定テープ70の長さを伸ばすことができるとともに、仮止め接着剤72が接合手段として機能するようになる。固定テープ70は、不使用時にはコンパクトに折り畳まれ、使用時には長尺状に展開できる点で、三つ折り形状のものが特に好適である。
【0045】
また、テープタイプ使い捨ておむつのテープと同様に、テープ基材の基端部を吸収性物品10に対する固定部とし、テープ基材の先端部に接合手段として、粘着剤層や面ファスナー(メカニカルファスナー)のオス材(フックテープ)を貼り付けたりしたものも用いることができる(図示略)。この場合、テープ基材としてテープの長手方向(吸収性物品10の幅方向)に弾性伸縮するもの、例えば2枚の不織布をホットメルト接着剤により貼り合わせるとともに、その間に一本又は複数本の細長状弾性伸縮部材16gを幅方向に沿って伸長状態で固定した弾性伸縮シート等を用いるのが好ましい。
【0046】
本第4の形態の固定テープ70は、吸収性物品10の裏面の前端部及び後端部の少なくとも一方に設けるのが好ましい。
【0047】
本第4の形態では、図14に示すように、ロール状部分13を形成した状態で、固定テープ70を、その一端部が位置する一方のロール状部分13の外周面から基部11の反対側を通り他方のロール状部分13の外周面に渡して巻き付け、他端部の仮止め接着剤72を他方のロール状部分13の外周面に接合することにより、ロール状部分13の巻きの緩みを制限することができる。このように、固定テープ70を設けて両側部12のロール状部分13を基部11側と反対側で連結することによりロール状部分13の巻きを拘束する形態は、簡単確実にロール状部分13の巻きを拘束できるとともに、使用者が必要に応じて、ロール状部分13の巻きを戻す又は進めることによりロール状部分13の位置や直径を調節したり、巻きを緩める又は締めることによりロール状部分13の直径、弾力性、変形容易性を調節したりすることが可能となり、多少の個人差があっても適切な装着状態を得ることができる。もちろん、製造も容易である。
【0048】
(第6の形態)
第1〜第3の形態のような巻き拘束手段であっても、ポケット部15を前後両側に設けるとともにポケット部15の開口の幅を前後で異ならしめる、又は弾性伸縮部分の幅が異なる複数の弾性伸縮バンド17を設けることにより、巻きの緩み制限を複数の異なる程度から選択できるように構成することができる。この場合、使用に際して、装着者の身体寸法に合わせて巻きの緩み制限の程度を選択することにより、ロール状部分13の位置や直径、ロール状部分13の相互間隔13Dを調節することが可能となる。
【0049】
<その他>
本発明の吸収性物品は、製品状態で図4に示すようにロール状部分13が形成されているものであっても良い。
【0050】
<基本吸収性物品の例>
【0051】
本発明に係る吸収性物品は、パッドタイプ、テープタイプ、パンツタイプ等、基本吸収性物品の形態に関係なく補助的に使用することができる。以下、パッドタイプ吸収性物品の例を引いて基本吸収性物品の形態について説明する。
【0052】
図15〜図18はパッドタイプ吸収性物品の一例20を示している。このパッドタイプ吸収性物品20は、股間部C2と、その前後両側に延在する腹側部分F2及び背側部分B2とを有しており、液不透過性のバックシート21の内面と、透液性トップシート22との間に、吸収体23が介在された基本構造を有するものである。
【0053】
パッドタイプ吸収性物品20の各部の寸法は適宜定めることができ、例えば、物品全長(前後方向長さ)L1は350〜700mm程度、全幅W1は130〜400mm程度(ただし、おむつの吸収面の幅より狭い)とすることができ、この場合における股間部C2の前後方向長さは10〜150mm程度、腹側部分F2の前後方向長さは50〜350mm程度、及び背側部分B2の前後方向長さは50〜350mm程度とすることができる。
【0054】
吸収体23としては、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。必要に応じて、吸収体23はクレープ紙(図示せず)により包むことができる。また、吸収体23の形状は適宜定めることができ、図示例では太もも内側に対するフィット性を高めるために、股間部C2を含む前後方向中間領域が脚周りに沿う括れた形状となっているが、長方形状等とすることもできる。
【0055】
吸収体23における繊維目付け及び吸収性ポリマーの目付けは適宜定めることができるが、繊維目付けは100〜600g/m2程度とするのが好ましく、また吸収性ポリマーの目付け0〜400g/m2程度とするのが好ましい。
【0056】
吸収体23の裏面側には、バックシート21が吸収体3の周縁より所定長さ食み出すように設けられている。バックシート21としては、ポリエチレンフィルム等の他、ムレ防止の点から遮水性を損なわずに透湿性を備えたシートも用いることができる。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを用いることができる。このような透湿性シートにおいても臭気の透過は抑制される。パッドタイプ吸収性物品の裏面を布のような肌触りとするために、バックシート21の外面に不織布等の外装シート21Cを張り合わせたり、バックシート21として外面に不織布をラミネートしたラミネートシートを用いたりすることができる。これらの不織布の原料繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0057】
吸収体23の表面側は、透液性トップシート22により覆われている。図示形態ではトップシート22の側縁から吸収体23が一部食み出しているが、吸収体23の側縁が食み出さないようにトップシート22の幅を広げることもできる。トップシート22としては、有孔または無孔の不織布や穴あきプラスチックシートなどが用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0058】
パッドタイプ吸収性物品20の前後方向両端部では、透液性トップシート22が吸収体23の前後端よりも前後両側にそれぞれ延在されて貼り合わされ、吸収体23の存在しないエンドフラップ部EFが形成されている。
【0059】
パッドタイプ吸収性物品20の両側部では、バックシート21が吸収体23の側縁よりも外側にそれぞれ延在されるとともに、この延在部からトップシート22の側部までの部分の表面に対して、立体ギャザー24をなすギャザーシート24sの幅方向外側の部分24xが前後方向全体にわたり貼り付けられ、これにより吸収体23の存在しないサイドフラップ部SFが構成されている。これら貼り合わせ部分は、図17及び図18では点模様で示されており、ホットメルト接着剤、ヒートシール、超音波シールにより形成できる。
【0060】
エンドフラップ部EF及びサイドフラップ部SF以外の吸収体介在部分が、排泄物の主吸収領域である本体部BDを構成する。エンドフラップ部EF及びサイドフラップ部SFの寸法は適宜定めることができるが、エンドフラップ部EF及びサイドフラップ部SFにおいてバックシート21と透液性トップシート22およびギャザーシート24sとが確実に貼り合わせられるため、少なくとも一部が本体部との境界から10mm以上食み出しているのが好ましい。
【0061】
図示形態では、サイドフラップ部SFの側縁は、吸収体の側縁に合わせて前後方向中間が脚周りに沿うように括れているが、括れの無い長方形状であってもよい。また、このような脚周りに沿う括れ部分を設ける場合、括れ部分の位置を前後方向中央より一方側に偏倚させ、当該一方側の部分における前後長を短くし、他方側の部分における前後長を長くし、当該一方側の部分を前、当該他方側の部分を後とすること(順方向装着)が一般的となっている。これは、臀部までを広くカバーする通常の装着状態や女性装着者を想定した場合、括れ部分の前後方向両側のうち前後長が長い方を装着状態における後とするのが望ましいからであり、図示形態における腹側部分F2及び背側部分B2はこれに応じたものである。しかし、装着の向きはユーザーが自由に変更できるものであり、例えば、男性における排尿の吸収性を高める場合等は、括れ部分の前後方向両側のうち前後長が長い方を装着状態における前とする、つまり背側部分B2が腹側に位置するように装着すること(逆方向装着)も行われている。
【0062】
ギャザーシート24sの素材としては、プラスチックシートやメルトブローン不織布を使用することもできるが、肌への感触性の点で、不織布にシリコーンなどの撥水剤により撥水処理をしたものが好適に使用される。
【0063】
ギャザーシート24sの幅方向中央側の部分24cはトップシート22上にまで延在しており、その幅方向中央側の端部には、細長状弾性部材24gが前後方向に沿って伸張状態でホットメルト接着剤等により固定されている。この細長状弾性部材24gとしては、糸状、紐状、帯状等に形成された、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコーン、ポリエステル等、通常使用される素材を用いることができる。
【0064】
また、両ギャザーシート24s,24は、幅方向外側の部分24xが前後方向全体にわたり物品内面(図示形態ではトップシート22表面およびバックシート21表面)に貼り合わされて固定されるとともに、幅方向中央側の部分24cが、前後方向の両端部では物品内面(図示形態ではトップシート22表面)に貼り合わされて固定され、かつ前後方向の両端部の間では物品内面(図示形態ではトップシート22表面)に固定されていない。この非固定部分は、図18に示されるように、物品内面(図示形態ではトップシート22表面)に対して起立可能なバリヤー部となる部分であり、その起立基端24bはギャザーシート24sにおける幅方向外側の固定部分24xと内側の部分24cとの境に位置する。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、パッドタイプ、テープタイプ、パンツタイプ等の基本吸収性物品に併用して使用される補助吸収性物品に好適なものであるが、バックシートとして液不透過性シートを用いることにより単体の吸収性物品として利用することも可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…バックシート、2…トップシート、3…吸収体、4…フラップ部、5…ズレ止め部、6…剥離シート、10…吸収性物品、11…基部、12…両側部、12E…側端部、13…ロール状部分、13D…間隔、15…ポケット部、16…ポケット形成シート、16g…細長状弾性伸縮部材、17…弾性伸縮バンド、70…固定テープ、20…基本吸収性物品、D…下腹部、P…男性器、T…脚。
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッドタイプ、テープタイプ、パンツタイプ等の基本吸収性物品とともに補助的に使用される吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
成人向けの排泄物吸収性物品(おむつ)としては、パッドタイプ、テープタイプ、パンツタイプ等の基本吸収性物品(アウターとも呼ばれる)の他に、これらと併用することを想定した、より小型のフラットタイプと呼ばれる補助吸収性物品(インナーとも呼ばれる)が提供されており、これらの組み合わせは特にケア施設等の介護現場において汎用されている。
【0003】
特に装着者が男性の場合、排尿位置が陰茎の位置により変化するため、脚周りからの漏れが発生し易いという問題があり、介護現場ではこの問題を解決するために、フラットタイプの補助吸収性物品を用い、その幅方向両側部を蛇腹状にして、蛇腹状部分間に陰茎を配置することにより、鼠径部から股間までの両脚の付根の溝に発生する隙間を埋めるようにしたり、特に装着者が男性のときには円錐状に丸めて陰茎に巻き付けたりする(以下、男性巻きともいう)、といった対応が取られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
また、男性巻きの装着作業の簡素化及び漏れの低減を図るために、陰茎挿入口を有する袋状吸収性物品も提案されている(例えば、特許文献3,4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−212452号公報
【特許文献2】特開2001−129012号公報
【特許文献3】特開2001−204755号公報
【特許文献4】特許第4388213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述の男性巻きや袋状吸収性物品では、装着状態において陰茎が吸収性物品により拘束されるため違和感が強く、また陰茎が動いて物品外に抜け出ると意味をなさないという問題点がある。
【0007】
また、上述の蛇腹状装着形態は、男性巻きや袋状吸収性物品と比べて装着時の違和感は少ないものの、鼠径部から股間までの両脚の付根の溝に発生する隙間を完全に埋めることが困難であり、隙間が残り易いだけでなく、脚の動きに追従できずにじゃばらが崩れ易いため、脚周りの漏れ防止という観点からは改善の余地がある。
【0008】
そこで、本発明の主たる課題は、男性が使用する際、装着時の違和感が少ないものでありながら、型くずれし難く、脚周りの漏れ防止性に優れる吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
幅方向中間に位置する基部と、基部の幅方向両側に位置する両側部とを備え、
両側部が、それぞれ側端部を巻き始めとして表面が内側となるように巻かれることにより、基部よりも厚いロール状部分となるように構成されており、
【0010】
前記ロール状部分の巻きが非固定とされるとともに、前記両側部のロール状部分の間に間隔を空けた状態で、前記ロール状部分の巻きの緩みを制限する巻き拘束手段が設けられており、
少なくとも前記ロール状部分はその外部露出面から尿を吸収可能である、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0011】
(作用効果)
本発明の吸収性物品は、使用前の準備段階で又は予め製品状態でロール状部分を形成するとともに、その巻きの緩みを巻き拘束手段により制限しておき、使用に際して、鼠径部から股間までの両脚の付根の溝に、両側部のロール状部分を入り込ませるとともに、それらロール状部分の間に男性器を配置して男性器を基部で覆うようにして装着することができる。したがって、鼠径部から股間までの両脚の付根の溝に発生する隙間を、尿吸収可能なロール状部分により埋めることができ、脚周りに向かう尿をロール状部分により効果的に吸収することができる。しかも、ロール状部分は、蛇腹状のものとは異なり、弾力性及び形状維持性(形状の崩れにくさ)に富むとともに、巻きが非固定であるため、脚の付根の溝にしっかりとフィットし、脚等の体動に追従して変形・復元することができる。それでいて、巻き拘束手段により巻きの緩みが制限されているから巻きが緩み過ぎたりせず、崩壊し難い。よって、脚周りからの漏れは発生し難くなる。さらに、本発明の吸収性物品では、男性巻きや袋状吸収性物品のように男性器が強く拘束されず、違和感も生じ難い。
なお、ロール状部分は、側部が少なくとも1周は巻かれている(つまり筒状になっている)部分を意味する。
【0012】
<請求項2記載の発明>
前記巻き拘束手段として、吸収性物品の裏面の前端部及び後端部の少なくとも一方に、前後方向中央側に開口するポケット部を備えており、前記ロール状部分を形成した状態で、前記ポケット部を裏返して前記ロール状部分の端部に被せることにより、前記ロール状部分の巻きの緩みを制限するように構成した、請求項1記載の吸収性物品。
【0013】
(作用効果)
このように、裏面にポケット部を設けて巻き拘束手段を構成した場合、簡単確実にロール状部分の巻きを拘束できるとともに、ポケット部が尿の前後移動を遮る遮断壁ともなり、前方又は後方への漏れを防止する効果も発揮される。
【0014】
<請求項3記載の発明>
前記ポケット部は、吸収性物品の裏面にポケット形成シートを貼り付けることにより吸収性物品の裏面とポケット形成シートとの間が収容空間となる形態で形成されており、前記ポケット形成シートにおける前記開口の縁部に、細長状弾性伸縮部材が前記開口に沿って伸長状態で固定されている、請求項2記載の吸収性物品。
【0015】
(作用効果)
このようにポケット形成シートを設けて、開口の縁部が細長状弾性伸縮部材の収縮力で絞られる構成とすることにより、ロール状部分をある程度の弾力をもって確実に拘束することができ、ロール状部分の緩み及びそれによる崩れを効果的に防止することができる。
【0016】
<請求項4記載の発明>
前記巻き拘束手段として、前記両側部の一方の裏面に一端部が固定され、他方の裏面に他端部が固定され、幅方向に弾性伸縮する弾性伸縮バンドを備えており、前記ロール状部分を形成した状態で、前記弾性伸縮バンドを裏返して前記ロール状部分の端部に掛けることにより、前記ロール状部分の巻きの緩みを制限するように構成した、請求項1記載の吸収性物品。
【0017】
(作用効果)
このような弾性伸縮バンドによる巻きの拘束は、簡単確実にロール状部分の巻きを拘束できるとともに、製造も容易であるため好ましい。
【0018】
<請求項5記載の発明>
前記巻き拘束手段として、前記両側部の一方の裏面に一端部が固定され、他方の裏面に対する接合手段が他端部に設けられた、固定テープを備えており、前記ロール状部分を形成した状態で、前記固定テープを、前記一端部が位置する一方のロール状部分の外周面から基部の反対側を通り他方のロール状部分の外周面に渡し、前記他端部の接合手段を前記他方のロール状部分の外周面に接合することにより、前記ロール状部分の巻きの緩みを制限するように構成した、請求項1記載の吸収性物品。
【0019】
後処理テープ、請求項1記載の吸収性物品。
【0020】
(作用効果)
このように、固定テープを設けて両側部のロール状部分を基部側と反対側で連結することによりロール状部分の巻きを拘束する形態は、簡単確実にロール状部分の巻きを拘束できるとともに、使用者が必要に応じて、ロール状部分の巻きを戻す又は進めることによりロール状部分の位置や直径を調節したり、巻きを緩める又は締めることによりロール状部分の直径、弾力性、変形容易性を調節したりすることが可能となり、多少の個人差があっても適切な装着状態を得ることができる。もちろん、製造も容易である。
【0021】
<請求項6記載の発明>
前記基部及び両側部にわたる一体的な吸収体と、この吸収体の表裏両面を被覆する液透過性シートとを備えた、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0022】
(作用効果)
このような形態であると、基部及び両側部の全体において表裏両面からの尿吸収が可能となり、また吸収した尿は吸収体全体に拡散可能となる。さらに、吸収体の剛性により、装着状態では、両側部のロール状部分が両脚の付根の溝に向かって付勢された状態となるため、脚の動きに追従して両側部のロール状部分が基部との境界を軸に揺動することができ、動的なフィット性に優れるとともに、男性器への側方からの圧迫も少ないものとなる。
【発明の効果】
【0023】
以上のとおり、本発明によれば、男性が使用する際、装着時の違和感が少ないものでありながら、脚周りの漏れ防止性に優れる等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の形態の吸収性物品の展開状態の表面側を示す平面図である。
【図2】第1の形態の吸収性物品の展開状態の裏面側を示す平面図である。
【図3】図1のX−X断面図、図2のV−V断面図、W−W断面図である。
【図4】第1の形態の吸収性物品の表面側を示す斜視図である。
【図5】第1の形態の吸収性物品の裏面側を示す斜視図である。
【図6】吸収性物品の配置状態を示す斜視図である。
【図7】吸収性物品の装着状態を概略的に示す正面図である。
【図8】吸収性物品の装着状態を概略的に示す横断面図である。
【図9】第1の形態の吸収性物品の表面側を示す斜視図である。
【図10】第2の形態の吸収性物品の展開状態の裏面側を示す平面図である。
【図11】第3の形態の吸収性物品の展開状態の裏面側を示す平面図である。
【図12】第3の形態の吸収性物品を示す斜視図である。
【図13】第4の形態の吸収性物品の展開状態の裏面側を示す平面図である。
【図14】第4の形態の吸収性物品の正面図である。
【図15】パッドタイプ吸収性物品の展開状態の表面側を示す平面図である。
【図16】パッドタイプ吸収性物品の裏面側を示す平面図である。
【図17】図15のY−Y断面図である。
【図18】図15のZ−Z断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しつつ詳説する。
(第1の形態)
第1の形態の吸収性物品10は、図1〜図3に示すように、幅方向中間に位置する基部11と、基部11の幅方向両側に位置する両側部12とを備えたものであり、使用前の準備段階で又は予め製品状態で、図4及び図5に示すように、両側部12を、それぞれ側端部12Eを巻き始めとして表面が内側となるように巻かれることにより、基部11よりも厚いロール状部分13とするものである。
【0026】
この吸収性物品10は、少なくともロール状部分13がその外部露出面から尿を吸収可能なように構成されている限り、内部構造は特に限定されず、形状維持性に優れるものであれば吸収性素材単独で構成することもできるが、図1〜図3に示すように、基部11及び両側部12にわたる一体的な吸収体3と、吸収体3の表面を被覆する透液性トップシート2と、吸収体3の裏面を被覆する透液性バックシート1とを備えた構造が簡素であり好ましい。この場合、図4に示すように、基部11の表面はトップシート2により形成され、このトップシート2を介して吸収体3への吸収がなされるのに対して、ロール状部分13では外部露出面がバックシート1により形成され、バックシート1を介して吸収体3への吸収がなされる。なお、図中の点模様部分はホットメルト接着剤による接着部を示している。
【0027】
トップシート2及びバックシート1としては、有孔または無孔の不織布や有孔プラスチックシートなどが用いられる。不織布を用いる場合、その繊維は特に限定されず、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、また製法も特に限定されず、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。トップシート2及びバックシート1に多数の透孔を形成したプラスチックシートを用いると、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。
【0028】
トップシート2及びバックシート1は、図示例では吸収体3の周囲からはみ出した部分を接合しているため吸収体3を有しないフラップ部4が形成されているが、いずれか一方のシートを吸収体3の周縁部を巻き込むように延在させることで周囲の一部又は全部にフラップ部4を有しない構造とすることもできる。
【0029】
吸収体3としては、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。吸収体3は、形状及びポリマー保持等のため、必要に応じてクレープ紙等の、液透過性及び液保持性を有する包装シート(図示略)によって包装することができる。吸収体3の形状は、図示形態のように長方形状とする他、適宜の形状とすることができる。吸収体3における繊維目付け及び吸収性ポリマーの目付けは適宜定めることができるが、繊維目付けは250〜500g/m2程度とするのが好ましく、また吸収性ポリマーの目付けは50〜250g/m2程度とするのが好ましい。
【0030】
図示例と異なり、基部11の裏側にのみ公知の不透液性シートを配置したり、ロール状部分13の外部露出面の一部のみ透液性としたり、基部11内の吸収体3を省略したり、基部11及び両側部12に対して個別に吸収体3を設けたりする等、適宜の変更が可能である。
【0031】
吸収性物品10の寸法・形状は適宜定めることができるが、通常の場合、展開状態における幅Wは350〜450mm程度とするのが好ましく、展開状態における前後方向長さLは140〜210mm程度とするのが好ましく、前後方向長さLよりも幅Wの長い横長形状とするのが好ましい。基部11の幅(展開状態)は、装着者の股間幅より狭く、60〜90mm程度とすることができる。両側部12の幅(展開状態)は、ロール状部分13の巻き長さ(巻かれている部分の幅方向長さ)に応じて決まるものであり、通常の場合、145〜180mm程度とするのが好ましい。ロール状部分13の巻き長さ及び直径は次に述べる巻き拘束手段により定まるものである。また巻き数は、1.5巻き程度(図14の状態)は確保するのが好ましい。
【0032】
特徴的には、両側部12のロール状部分13の巻きが非固定とされるとともに、両側部12のロール状部分13の間に間隔13Dを空けた状態で、ロール状部分13の巻きの緩みを制限する巻き拘束手段が設けられている。巻き拘束手段は特に限定されるものではないが、第1の形態では、吸収性物品10の裏面の前端部に後方側に開口するポケット部15を備えており、ロール状部分13を形成した状態で、図9に示すようにポケット部15を裏返して図4及び図5に示すようにロール状部分13の端部に被せることにより、ロール状部分13の巻きの緩みを制限するように構成している。ポケット部15は吸収性物品10の前端部にのみ設ける他、これとともに又はこれに代えて後端部にも設けることができる。
【0033】
また、第1の形態のポケット部15は、吸収性物品10の裏面にポケット形成シート16を貼り付けることにより吸収性物品10の裏面とポケット形成シート16との間が収容空間となる形態で形成されている。より詳細には、吸収性物品10の裏面における前端部に、幅方向全体にわたるポケット形成シート16が配置され、このポケット形成シート16の幅方向両側部12は前後方向全体にわたり吸収性物品10の裏面に固定され、幅方向中間部は前端部が吸収性物品10の裏面に固定されるとともに、この固定部16fよりも後側の部分16nは非固定とされ、この非固定の部分16fの後端部(開口の縁部)に、細長状弾性伸縮部材16gが開口に沿って伸長状態で固定されている(なお、ポケット部15を吸収性物品10の後端部に設ける場合は前後が逆になる)。図1中の斜線を付した部分はポケット形成シート16の固定部である。
【0034】
ポケット形成シート16としては、スパンボンド不織布(SS、SSS等)やSMS不織布(SMS、SSMMS等)、メルトブロー不織布等の柔軟で均一性・隠蔽性に優れた不織布に、必要に応じてシリコーンなどにより撥水処理を施したものを好適に用いることができ、繊維目付けは13〜20g/m2程度とするのが好ましい。細長状弾性伸縮部材16gとしては糸状、帯状等の合成又は天然ゴムを用いることができる。合成糸ゴムを用いる場合は、太さは450〜950dtexが好ましく、500〜650dtexがより好ましい。固定時の伸長率は、180〜240%が好ましく、200〜230%がより好ましい。なお、用語「伸長率」は自然長を100%としたときの値を意味する。また、図示例では細長状弾性伸縮部材16gの本数が1本とされているが、複数本平行に設けることもできる。
【0035】
以上のように構成された吸収性物品10は、使用前の準備段階で又は予め製品状態で、図4及び図5に示すように、両側部12を、それぞれ側端部12Eを巻き始めとして表面が内側となるように巻いて、基部11よりも厚いロール状部分13を形成するとともに、ポケット部15を図9に示すように裏返して図4及び図5に示すように両側部12のロール状部分13の端部に被せることにより、ロール状部分13の巻きの緩みを制限するように構成した後、図6〜図8に示すように、基本吸収性物品20の内面と男性器Pとの間に配置し、装着者の鼠径部から股間までの両脚Tの付根の溝に、両側部12のロール状部分13を入り込ませるとともに、それらロール状部分13の間に男性器Pを配置して男性器Pを基部11で覆うようにして装着することができる。基本吸収性物品20は立体ギャザー24を備えた形態が一般的であるが、そのような場合には立体ギャザー24の間に吸収性物品10を配置する。そしてこの装着状態では、鼠径部から股間までの両脚Tの付根の溝に発生する隙間を、尿吸収可能なロール状部分13により埋めることができ、脚T周りに向かう尿をロール状部分13により効果的に吸収することができる。しかも、ロール状部分13は、弾力性及び形状維持性(形状の崩れにくさ)に富むむとともに、巻きが非固定であるため、脚Tの付根の溝にしっかりとフィットし、脚T等の体動に追従して変形・復元することができる。それでいて、ポケット部15により巻きの緩みが制限されているから巻きが緩み過ぎたりせず、崩壊し難い。よって、脚T周りからの漏れは発生し難くなる。また、男性器Pが強く拘束されず、違和感も生じ難い。なお、図8中の符号Dは装着者の下腹部Dを示している。
【0036】
特に、図示形態のように、吸収性物品10の裏面にポケット部15を設けて巻き拘束手段を構成した場合、簡単確実にロール状部分13の巻きを拘束できるとともに、ポケット部15が尿の前後移動を遮る遮断壁ともなり、前方又は後方への漏れを防止する効果も発揮される。さらに、図示形態では、ポケット部15の開口の縁部が細長状弾性伸縮部材16gの収縮力で絞られる構成とすることにより、ロール状部分13をある程度の弾力をもって確実に拘束することができ、ロール状部分13の緩み及びそれによる崩れを効果的に防止することができる。
【0037】
また、図示形態のように、基部11及び両側部12にわたる一体的な吸収体3と、この吸収体3の表裏両面を被覆する液透過性シートとを備えた構造であると、基部11及び両側部12の全体において表裏両面からの尿吸収が可能となり、また吸収した尿は吸収体3全体に拡散可能となる。さらに、吸収体3の剛性により、装着状態では、両側部12のロール状部分13が両脚Tの付根の溝に向かって付勢された状態となるため、脚Tの動きに追従して両側部12のロール状部分13が基部11との境界を軸に揺動することができ、動的なフィット性に優れるとともに、男性器Pへの側方からの圧迫も少ないものとなる。
【0038】
他方、基部11は基本吸収性物品20に対して非固定とすることもできるが、図示形態のように、基部11の裏面に、粘着剤層や面ファスナー(メカニカルファスナー)のオス材(フックテープ)等からなるズレ止め部5を設け、基部11の位置ズレを防止するのも好ましい形態である。なお、図示形態は粘着剤層によりズレ止め部5を形成した場合を想定しており、符号6は粘着剤層を覆う剥離シートである。使用時にはこの剥離シート6を剥がして、粘着剤層を露出させて基本吸収性物品20の内面に粘着させる。
【0039】
(第2の形態)
第1の形態では、ポケット部15の開口の縁部に細長状弾性伸縮部材16gを設け、その収縮力でポケット部15の開口を絞る構成としたが、図10に示すように、細長状弾性伸縮部材16gを省略したポケット部15により巻き拘束手段を構成することもできる。
【0040】
(第3の形態)
第1の形態では、ポケット部15により巻き拘束手段を構成したが、図11及び図12に示すように、両側部12の一方の裏面に一端部が固定され、他方の裏面に他端部が固定された、幅方向に弾性伸縮する弾性伸縮バンド17により、巻き拘束手段を構成するのも好ましい形態である。このような弾性伸縮バンド17としては、天然又は合成ゴムそのものを用いたり、輪ゴムの一部を固定して非固定の自由部分を弾性伸縮バンド17の変わりとしたり、2枚の不織布をホットメルト接着剤により貼り合わせるとともに、その間に一本又は複数本の細長状弾性伸縮部材16gを幅方向に沿って伸長状態で固定した弾性伸縮シートを用いたりすることができる。
【0041】
本第3の形態の弾性伸縮バンド17は、吸収性物品10の裏面の前端部及び後端部(図示形態)の少なくとも一方に設けるのが好ましい。
【0042】
本第3の形態では、図12に示すように、ロール状部分13を形成した状態で、弾性伸縮バンド17を裏返してロール状部分13の端部に掛けることにより、ロール状部分13の巻きの緩みを制限することができる。本第3の形態は、漏れ防止機能を有しない点で第1の形態と異なるが、簡単確実にロール状部分13の巻きを拘束できるとともに、製造も容易であるという利点がある。
【0043】
(第4の形態)
また、第1〜第3の形態では、ポケット部15又は弾性伸縮バンド17の輪の寸法により巻きの緩みをどの程度に制限するかが定まるため、使用者が自由に緩み具合を変更することができない。そこで、図13及び図14に示すように、巻き拘束手段として、両側部12の一方の裏面に一端部が固定され、他方の裏面に対する接合手段が他端部に設けられた、固定テープ70を備えた形態も提案する。
【0044】
このような固定テープ70の具体例としては、図13に拡大して示すように、パンツタイプ使い捨ておむつで汎用されている後処理テープを好適に用いることができる。図示形態の固定テープ70は、基端部71が裏面の外面に接着剤等により固定されるとともに、この基端部71よりも先端側の部分は三つ折り(断面Z字状)や二つ折りで折り畳まれて、折り重なり部分間が仮止め接着剤72により剥離可能に固定(仮固定)されている。また、先端部に白色等の不透明色に着色された摘み部73を有する。この摘み部73の着色は着色テープ74を張り合わせることにより形成しても良い。使用時には、固定テープ70の折り重なり部分を剥離して展ばすことにより、使用前よりも固定テープ70の長さを伸ばすことができるとともに、仮止め接着剤72が接合手段として機能するようになる。固定テープ70は、不使用時にはコンパクトに折り畳まれ、使用時には長尺状に展開できる点で、三つ折り形状のものが特に好適である。
【0045】
また、テープタイプ使い捨ておむつのテープと同様に、テープ基材の基端部を吸収性物品10に対する固定部とし、テープ基材の先端部に接合手段として、粘着剤層や面ファスナー(メカニカルファスナー)のオス材(フックテープ)を貼り付けたりしたものも用いることができる(図示略)。この場合、テープ基材としてテープの長手方向(吸収性物品10の幅方向)に弾性伸縮するもの、例えば2枚の不織布をホットメルト接着剤により貼り合わせるとともに、その間に一本又は複数本の細長状弾性伸縮部材16gを幅方向に沿って伸長状態で固定した弾性伸縮シート等を用いるのが好ましい。
【0046】
本第4の形態の固定テープ70は、吸収性物品10の裏面の前端部及び後端部の少なくとも一方に設けるのが好ましい。
【0047】
本第4の形態では、図14に示すように、ロール状部分13を形成した状態で、固定テープ70を、その一端部が位置する一方のロール状部分13の外周面から基部11の反対側を通り他方のロール状部分13の外周面に渡して巻き付け、他端部の仮止め接着剤72を他方のロール状部分13の外周面に接合することにより、ロール状部分13の巻きの緩みを制限することができる。このように、固定テープ70を設けて両側部12のロール状部分13を基部11側と反対側で連結することによりロール状部分13の巻きを拘束する形態は、簡単確実にロール状部分13の巻きを拘束できるとともに、使用者が必要に応じて、ロール状部分13の巻きを戻す又は進めることによりロール状部分13の位置や直径を調節したり、巻きを緩める又は締めることによりロール状部分13の直径、弾力性、変形容易性を調節したりすることが可能となり、多少の個人差があっても適切な装着状態を得ることができる。もちろん、製造も容易である。
【0048】
(第6の形態)
第1〜第3の形態のような巻き拘束手段であっても、ポケット部15を前後両側に設けるとともにポケット部15の開口の幅を前後で異ならしめる、又は弾性伸縮部分の幅が異なる複数の弾性伸縮バンド17を設けることにより、巻きの緩み制限を複数の異なる程度から選択できるように構成することができる。この場合、使用に際して、装着者の身体寸法に合わせて巻きの緩み制限の程度を選択することにより、ロール状部分13の位置や直径、ロール状部分13の相互間隔13Dを調節することが可能となる。
【0049】
<その他>
本発明の吸収性物品は、製品状態で図4に示すようにロール状部分13が形成されているものであっても良い。
【0050】
<基本吸収性物品の例>
【0051】
本発明に係る吸収性物品は、パッドタイプ、テープタイプ、パンツタイプ等、基本吸収性物品の形態に関係なく補助的に使用することができる。以下、パッドタイプ吸収性物品の例を引いて基本吸収性物品の形態について説明する。
【0052】
図15〜図18はパッドタイプ吸収性物品の一例20を示している。このパッドタイプ吸収性物品20は、股間部C2と、その前後両側に延在する腹側部分F2及び背側部分B2とを有しており、液不透過性のバックシート21の内面と、透液性トップシート22との間に、吸収体23が介在された基本構造を有するものである。
【0053】
パッドタイプ吸収性物品20の各部の寸法は適宜定めることができ、例えば、物品全長(前後方向長さ)L1は350〜700mm程度、全幅W1は130〜400mm程度(ただし、おむつの吸収面の幅より狭い)とすることができ、この場合における股間部C2の前後方向長さは10〜150mm程度、腹側部分F2の前後方向長さは50〜350mm程度、及び背側部分B2の前後方向長さは50〜350mm程度とすることができる。
【0054】
吸収体23としては、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。必要に応じて、吸収体23はクレープ紙(図示せず)により包むことができる。また、吸収体23の形状は適宜定めることができ、図示例では太もも内側に対するフィット性を高めるために、股間部C2を含む前後方向中間領域が脚周りに沿う括れた形状となっているが、長方形状等とすることもできる。
【0055】
吸収体23における繊維目付け及び吸収性ポリマーの目付けは適宜定めることができるが、繊維目付けは100〜600g/m2程度とするのが好ましく、また吸収性ポリマーの目付け0〜400g/m2程度とするのが好ましい。
【0056】
吸収体23の裏面側には、バックシート21が吸収体3の周縁より所定長さ食み出すように設けられている。バックシート21としては、ポリエチレンフィルム等の他、ムレ防止の点から遮水性を損なわずに透湿性を備えたシートも用いることができる。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを用いることができる。このような透湿性シートにおいても臭気の透過は抑制される。パッドタイプ吸収性物品の裏面を布のような肌触りとするために、バックシート21の外面に不織布等の外装シート21Cを張り合わせたり、バックシート21として外面に不織布をラミネートしたラミネートシートを用いたりすることができる。これらの不織布の原料繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0057】
吸収体23の表面側は、透液性トップシート22により覆われている。図示形態ではトップシート22の側縁から吸収体23が一部食み出しているが、吸収体23の側縁が食み出さないようにトップシート22の幅を広げることもできる。トップシート22としては、有孔または無孔の不織布や穴あきプラスチックシートなどが用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0058】
パッドタイプ吸収性物品20の前後方向両端部では、透液性トップシート22が吸収体23の前後端よりも前後両側にそれぞれ延在されて貼り合わされ、吸収体23の存在しないエンドフラップ部EFが形成されている。
【0059】
パッドタイプ吸収性物品20の両側部では、バックシート21が吸収体23の側縁よりも外側にそれぞれ延在されるとともに、この延在部からトップシート22の側部までの部分の表面に対して、立体ギャザー24をなすギャザーシート24sの幅方向外側の部分24xが前後方向全体にわたり貼り付けられ、これにより吸収体23の存在しないサイドフラップ部SFが構成されている。これら貼り合わせ部分は、図17及び図18では点模様で示されており、ホットメルト接着剤、ヒートシール、超音波シールにより形成できる。
【0060】
エンドフラップ部EF及びサイドフラップ部SF以外の吸収体介在部分が、排泄物の主吸収領域である本体部BDを構成する。エンドフラップ部EF及びサイドフラップ部SFの寸法は適宜定めることができるが、エンドフラップ部EF及びサイドフラップ部SFにおいてバックシート21と透液性トップシート22およびギャザーシート24sとが確実に貼り合わせられるため、少なくとも一部が本体部との境界から10mm以上食み出しているのが好ましい。
【0061】
図示形態では、サイドフラップ部SFの側縁は、吸収体の側縁に合わせて前後方向中間が脚周りに沿うように括れているが、括れの無い長方形状であってもよい。また、このような脚周りに沿う括れ部分を設ける場合、括れ部分の位置を前後方向中央より一方側に偏倚させ、当該一方側の部分における前後長を短くし、他方側の部分における前後長を長くし、当該一方側の部分を前、当該他方側の部分を後とすること(順方向装着)が一般的となっている。これは、臀部までを広くカバーする通常の装着状態や女性装着者を想定した場合、括れ部分の前後方向両側のうち前後長が長い方を装着状態における後とするのが望ましいからであり、図示形態における腹側部分F2及び背側部分B2はこれに応じたものである。しかし、装着の向きはユーザーが自由に変更できるものであり、例えば、男性における排尿の吸収性を高める場合等は、括れ部分の前後方向両側のうち前後長が長い方を装着状態における前とする、つまり背側部分B2が腹側に位置するように装着すること(逆方向装着)も行われている。
【0062】
ギャザーシート24sの素材としては、プラスチックシートやメルトブローン不織布を使用することもできるが、肌への感触性の点で、不織布にシリコーンなどの撥水剤により撥水処理をしたものが好適に使用される。
【0063】
ギャザーシート24sの幅方向中央側の部分24cはトップシート22上にまで延在しており、その幅方向中央側の端部には、細長状弾性部材24gが前後方向に沿って伸張状態でホットメルト接着剤等により固定されている。この細長状弾性部材24gとしては、糸状、紐状、帯状等に形成された、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコーン、ポリエステル等、通常使用される素材を用いることができる。
【0064】
また、両ギャザーシート24s,24は、幅方向外側の部分24xが前後方向全体にわたり物品内面(図示形態ではトップシート22表面およびバックシート21表面)に貼り合わされて固定されるとともに、幅方向中央側の部分24cが、前後方向の両端部では物品内面(図示形態ではトップシート22表面)に貼り合わされて固定され、かつ前後方向の両端部の間では物品内面(図示形態ではトップシート22表面)に固定されていない。この非固定部分は、図18に示されるように、物品内面(図示形態ではトップシート22表面)に対して起立可能なバリヤー部となる部分であり、その起立基端24bはギャザーシート24sにおける幅方向外側の固定部分24xと内側の部分24cとの境に位置する。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、パッドタイプ、テープタイプ、パンツタイプ等の基本吸収性物品に併用して使用される補助吸収性物品に好適なものであるが、バックシートとして液不透過性シートを用いることにより単体の吸収性物品として利用することも可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…バックシート、2…トップシート、3…吸収体、4…フラップ部、5…ズレ止め部、6…剥離シート、10…吸収性物品、11…基部、12…両側部、12E…側端部、13…ロール状部分、13D…間隔、15…ポケット部、16…ポケット形成シート、16g…細長状弾性伸縮部材、17…弾性伸縮バンド、70…固定テープ、20…基本吸収性物品、D…下腹部、P…男性器、T…脚。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向中間に位置する基部と、基部の幅方向両側に位置する両側部とを備え、
両側部が、それぞれ側端部を巻き始めとして表面が内側となるように巻かれることにより、基部よりも厚いロール状部分となるように構成されており、
前記ロール状部分の巻きが非固定とされるとともに、前記両側部のロール状部分の間に間隔を空けた状態で、前記ロール状部分の巻きの緩みを制限する巻き拘束手段が設けられており、
少なくとも前記ロール状部分はその外部露出面から尿を吸収可能である、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記巻き拘束手段として、吸収性物品の裏面の前端部及び後端部の少なくとも一方に、前後方向中央側に開口するポケット部を備えており、前記ロール状部分を形成した状態で、前記ポケット部を裏返して前記ロール状部分の端部に被せることにより、前記ロール状部分の巻きの緩みを制限するように構成した、請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記ポケット部は、吸収性物品の裏面にポケット形成シートを貼り付けることにより吸収性物品の裏面とポケット形成シートとの間が収容空間となる形態で形成されており、前記ポケット形成シートにおける前記開口の縁部に、細長状弾性伸縮部材が前記開口に沿って伸長状態で固定されている、請求項2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記巻き拘束手段として、前記両側部の一方の裏面に一端部が固定され、他方の裏面に他端部が固定され、幅方向に弾性伸縮する弾性伸縮バンドを備えており、前記ロール状部分を形成した状態で、前記弾性伸縮バンドを裏返して前記ロール状部分の端部に掛けることにより、前記ロール状部分の巻きの緩みを制限するように構成した、請求項1記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記巻き拘束手段として、前記両側部の一方の裏面に一端部が固定され、他方の裏面に対する接合手段が他端部に設けられた、固定テープを備えており、前記ロール状部分を形成した状態で、前記固定テープを、前記一端部が位置する一方のロール状部分の外周面から基部の反対側を通り他方のロール状部分の外周面に渡し、前記他端部の接合手段を前記他方のロール状部分の外周面に接合することにより、前記ロール状部分の巻きの緩みを制限するように構成した、請求項1記載の吸収性物品。
後処理テープ、請求項1記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記基部及び両側部にわたる一体的な吸収体と、この吸収体の表裏両面を被覆する液透過性シートとを備えた、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項1】
幅方向中間に位置する基部と、基部の幅方向両側に位置する両側部とを備え、
両側部が、それぞれ側端部を巻き始めとして表面が内側となるように巻かれることにより、基部よりも厚いロール状部分となるように構成されており、
前記ロール状部分の巻きが非固定とされるとともに、前記両側部のロール状部分の間に間隔を空けた状態で、前記ロール状部分の巻きの緩みを制限する巻き拘束手段が設けられており、
少なくとも前記ロール状部分はその外部露出面から尿を吸収可能である、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記巻き拘束手段として、吸収性物品の裏面の前端部及び後端部の少なくとも一方に、前後方向中央側に開口するポケット部を備えており、前記ロール状部分を形成した状態で、前記ポケット部を裏返して前記ロール状部分の端部に被せることにより、前記ロール状部分の巻きの緩みを制限するように構成した、請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記ポケット部は、吸収性物品の裏面にポケット形成シートを貼り付けることにより吸収性物品の裏面とポケット形成シートとの間が収容空間となる形態で形成されており、前記ポケット形成シートにおける前記開口の縁部に、細長状弾性伸縮部材が前記開口に沿って伸長状態で固定されている、請求項2記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記巻き拘束手段として、前記両側部の一方の裏面に一端部が固定され、他方の裏面に他端部が固定され、幅方向に弾性伸縮する弾性伸縮バンドを備えており、前記ロール状部分を形成した状態で、前記弾性伸縮バンドを裏返して前記ロール状部分の端部に掛けることにより、前記ロール状部分の巻きの緩みを制限するように構成した、請求項1記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記巻き拘束手段として、前記両側部の一方の裏面に一端部が固定され、他方の裏面に対する接合手段が他端部に設けられた、固定テープを備えており、前記ロール状部分を形成した状態で、前記固定テープを、前記一端部が位置する一方のロール状部分の外周面から基部の反対側を通り他方のロール状部分の外周面に渡し、前記他端部の接合手段を前記他方のロール状部分の外周面に接合することにより、前記ロール状部分の巻きの緩みを制限するように構成した、請求項1記載の吸収性物品。
後処理テープ、請求項1記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記基部及び両側部にわたる一体的な吸収体と、この吸収体の表裏両面を被覆する液透過性シートとを備えた、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
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【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−43043(P2013−43043A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184607(P2011−184607)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】
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