説明

吸収性物品

【課題】尿と経血(粘性物)の両方の吸収に優れた吸収性物品を提供する。
【解決手段】吸収体6と、使用者の肌に接する液透過性の表面シート2と、表面シートと吸収体との間に配置される液透過性のセカンドシート3とを備え、表面シート及びセカンドシートは、繊維を面方向に粗密に分布させてなり、表面シート及びセカンドシートをそれぞれ平面から見て画像処理により2値化した場合に、セカンドシートの方が表面シートよりも単位面積当たりの繊維が密な領域2a、3aを表す画像の個数が多くなっている吸収性物品20である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生理用ナプキンや失禁パッド等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
軽度の失禁症状のある女性が生理の際、軽失禁パッドを使用するか、又は生理用ナプキンで代用するか迷うことがある。従来の軽失禁パッドで粘性の高い経血やおりものを吸収させると、これらは透過及び拡散速度が遅いためにパッド表面に長く留まり、着用者が不快に感じることがある。一方、生理用ナプキンは尿を吸収するほど吸収量が多くなく、少量の尿でも漏れが生じることがある。
【0003】
吸収性物品の不快感を軽減するものとして、着用面に凹凸を設けて体液の吸収とムレを改善した技術が開示されている(特許文献1参照)。又、表面シートと吸収体との間に繊維材料からなる液透過性の2層のシートを配し、そのうち吸収体側の第1層を捲縮繊維及び熱融着性繊維から構成して粗密かつ嵩高とした吸収性物品が開示されている(特許文献2参照)。特許文献2記載の技術によれば、着用者側の第2の層から、繊維が粗密な第1の層に向かって毛管力が高まり、液の透過性や引き込み性が高くなるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05-269168号公報
【特許文献2】特許第3946095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、尿と経血(粘性物)では吸収特性や吸収量が異なっており、これら両方の吸収性に優れた吸収性物品の開発は未だ十分とはいえない。
従って本発明は、尿と経血(粘性物)の両方の吸収に優れた吸収性物品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の吸収性物品は、吸収体と、使用者の肌に接する液透過性の表面シートと、前記表面シートと前記吸収体との間に配置される液透過性のセカンドシートとを備え、前記表面シート及び前記セカンドシートは、繊維を面方向に粗密に分布させてなり、前記表面シート及び前記セカンドシートをそれぞれ平面から見て画像処理により2値化した場合に、前記セカンドシートの方が前記表面シートよりも単位面積当たりの前記繊維が密な領域を表す画像の個数が多くなっている。
このような構成とすると、表面シートでは繊維の粗密のピッチが大きくなるため、密な領域に囲まれた、繊維が粗な領域に経血等の粘性物が流入し、表面シート上から速やかに消失させる。さらに、セカンドシートの方が繊維の粗密のピッチが細かいために表面シートからセカンドシートへ向かって水分の流路(密な領域)が分岐し、吸収体へ向かう水分の浸透拡散が促進される。そのため、透過及び拡散速度が遅い粘性物(経血やおりもの)でも吸収体側へ移行し易く、これら粘性物が表面に長く留まって着用者が不快に感じることが少ない。
【0007】
前記吸収体は、前記セカンドシート側の上層と、前記セカンドシートと反対側の下層とを積層してなり、前記上層は高吸水性ポリマーを30質量%以下含み、前記下層は高吸水性ポリマーを30〜50質量%含み、かつ前記吸収体は総量としてパルプを300g/m2以上含むことが好ましい。
【0008】
人工尿として生理食塩水(36±3℃)を用い、純分85%wt%グリセリン8.5wt%、CMC-Na:0.7wt%、NaCl:0.4wt%、食紅0.05wt%、精製水90.35wt%を混合したもの(14±2cps 25℃)を用い、水平な状態に伸ばして固定した前記吸収性物品の中央に、中空の円筒で内径30mm、外径80mm、重量2kgの測定治具を載せ、前記人工尿及び前記人工経血をそれぞれ前記測定治具の筒内に10ml滴下し、完全に吸収するまでの時間を計測した場合に、前記人工尿について20秒以下、前記人工経血について60秒以下であり、前記人工経血の総吸収量が100g以上、前記人工尿の総吸収量が120g以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、尿と経血(粘性物)の両方の吸収に優れた吸収性物品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る吸収性物品の外観を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】表面シートの平面図である。
【図5】セカンドシートの平面図である。
【図6】吸収性物品による尿及び経血の吸収状態を示す図である。
【図7】吸収性物品の製造方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る吸収性物品について説明する。本発明の実施形態に係る吸収性物品は、生理用ナプキン、失禁パッド、尿取パッド等として使用可能であるが、排せつ物や分泌物を吸収するものであれば、これらの用途に限定されない。
図1は、本発明の実施形態に係る吸収性物品の外観を示す斜視図である。図1において、吸収性物品20は細長い片状をなし、液透過性の表面シート2と、液不透過性のバックシート4との間に図示しない吸収体を挟み込んだ構成を有している。又、吸収性物品20の幅方向両側縁から撥水性の不織布からなるサイドシート12が表面シートの上に立ち上がっている。吸収性物品20は、長手方向を使用者の股部の前後に渡され、表面シート2が使用者の肌(股部)に触れるようにして装着され、サイドシート12は尿等の横漏れを防止する。
又、吸収性物品20は、表面シート2の中央部付近がやや幅狭になっていて、股部に装着し易いようになっている。
【0012】
図2は、図1のA−A線に沿う断面図である。吸収性物品20の表層となる表面シート2とバックシート4の間には吸収体6が介装され、さらに、表面シート2と吸収体6の間にセカンドシート3が配置されている。
そして、表面シート2、セカンドシート3、吸収体6及びバックシート4からなる積層体の両側端(幅方向の端部)を覆うように、バックシート4の両側端が表面シート2へ向かって立ち上がっている。又、表面シート2の両側端から表面シート2より上に向かってサイドシート12が立ち上がり、表面シート2の両側端におけるサイドシート12がバックシート4の先端を覆っている。
なお、A−A線に沿う断面から見て、サイドシート12は「く」の字状になっていて、「く」の字の折り曲げ部が表面シート2の両側に向き、この折り曲げ部から2つのフラップ12a、12bが外側に伸びている。そして、バックシート4から立ち上がる先端をサイドシート12で覆ったフラップ12bには、吸収性物品20の長手方向に沿って第1の弾性部材14が配置されている。又、フラップ12bより内側のフラップ12aにも、吸収性物品20の長手方向に沿って第2の弾性部材16が配置されている。そして、サイドシート12は、第1の弾性部材14及び第2の弾性部材16の弾性力によってこれらの間に展張され、サイドシート12の立ち上がり部を立体形成し、横漏れを有効に防止する。
【0013】
表面シート2は、液透過性の不織布であればよく、使用者の肌に接するため、感触が柔らかで、皮膚に刺激を与えない繊維材料から形成されている。セカンドシート3も、繊維材料から形成されていればよく、使用者の排せつ物や分泌物(尿等)を吸収体6へ移し、分散させ、弾力性を発現できればよい。特に、表面シート2及びセカンドシート3として親水性不織布を用いると好ましく、エアースルー不織布を用いるとより好ましい。
【0014】
吸収体6は、木材パルプフラッフのような、フラッフのウェブの吸水性繊維マトリックスを、公知の高吸水性ポリマー(SAP)の粒子と混合して形成すればよい。又、吸収体6表面にエンボスを施すと、尿等の拡散をコントロールすると共に、使用者の体型に応じて吸収体6が容易に変形するので好ましい。SAPとしては、破砕タイプと、パールタイプ(逆相懸濁重合法により得られるもの)のどちらでも選択できる。
フラッフとしては、木材パルプフラッフの代わりにレーヨン繊維等の再生繊維、ポリマー繊維などを使用してもよい。又、木材パルプフラッフとしては、嵩が低く、解繊装置の所要動力(パルプをフラッフ化する際の解繊機の消費電力)が抑えられるトリートメントパルプを用いることが好ましい。
濡れ戻り(ウェットバック)を少なくするためには、SAPの配合比を高くすることが一般的であるが、尿吸収の初期段階ではフラッフの役割が大きく、SAPが多過ぎてフラッフが少ないと初期吸収性が劣る。このため、吸収体6を、セカンドシート3側の上層6aと、セカンドシート3と反対側の下層6bとを積層して構成し、上層6aは高吸水性ポリマーを30質量%以下含み、下層6bは高吸水性ポリマーを30〜50質量%含み、かつ吸収体6は総量としてフラッフを300g/m2以上含むことが好ましい。
【0015】
バックシート4は、吸収体6内において保持している液体などが下着に漏れないような防水性を有する液不透過性の材料から形成されていればよく、ポリエチレンフィルムなどの薄いプラスチックフィルムとすることができるが、着用中にカサカサした音がしやすく、柔らかさを付与するよう、バックシート4にマイクロエンボスを施したり、プラスチックフィルムの外側に不織布を貼合わせたクロスライクバックシートを用いることもできる。
又、透湿性のフィルムを用いてムレを低減することが好ましい。
バックシート4の外面に、吸収性物品20を下着等に固定する際のずれを防止するずれ止め(粘着剤)や、吸収性物品の両側縁より外方へ延出するウイング等を設けてもよい。
【0016】
サイドシート12は、撥水性の不織布から形成することができ、バックシート4と同様の材料から形成してもよい。第1弾性部材14と第2弾性部材16としては、エラストマー性ポリマー材料からなるストランド、リボン、ポリウレタン、合成ゴム、天然ゴム等を用いることができるがこれらに限られない。
【0017】
次に、図3〜図5を参照し、表面シート2及びセカンドシート3の構成について説明する。表面シート2は、繊維を面方向に粗密に分布させてなり、繊維が密な領域2aと、繊維が粗な領域2bとが面方向に混在している。セカンドシート3も同様に、繊維を面方向に粗密に分布させてなり、繊維が密な領域3aと、繊維が粗な領域3bとが面方向に混在している。
さらに、表面シート2及びセカンドシート3をそれぞれ平面から見て画像処理により2値化した場合に、セカンドシート3の方が表面シート2よりも単位面積当たりの繊維が密な領域を表す画像の個数が多くなっている。このようにすると、セカンドシート3の方が繊維の粗密のピッチが細かくなり、表面シート2では繊維の粗密のピッチが大きくなる。一方、セカンドシート3が表面シート2よりも単位面積当たりの繊維が密な領域を表す画像の個数を多くしないと、表面シート2の粗な領域が多くなり、表面シート2を透過した排せつ物の拡散が悪くなる。
【0018】
そのため、図6に示すように、セカンドシート3の方が表面シート2より毛管力が高くなり、尿等の水分103を吸収体6に速やかに移行させることができる。
又、表面シート2では繊維の粗密のピッチが大きくなるため、領域2aに囲まれた、繊維が粗な領域2bに経血等の粘性物101が流入し、表面シート2上から速やかに消失させる。さらに、セカンドシート3の方が繊維の粗密のピッチが細かいために表面シート2からセカンドシート3へ向かって水分の流路(領域2b、3b)が分岐し、吸収体6へ向かう水分の浸透拡散が促進される。そのため、透過及び拡散速度が遅い粘性物101(経血やおりもの)でも吸収体6側へ移行し易く、これら粘性物101が表面に長く留まって着用者が不快に感じることが少ない。
上記した毛管力の作用を有効に生じさせるには、セカンドシート3における繊維が密な領域の面積比は、表面シート2における繊維が密な領域の面積比より10%以上大きいことが好ましい。
【0019】
なお、表面シート2及びセカンドシート3の繊維の粗密のピッチを表す指標として、上記したように、各シートを平面から見て画像処理により2値化し、単位面積当たりの繊維が密な領域を表す画像の個数と面積を求める。マイクロスコープ等によって各シートの表面を撮影すると、繊維が密な領域が暗部となるが、繊維が密な領域はシートの面方向に分散しているので、適度な閾値で画像を2値化することで、繊維が密な領域を個々に暗部として抽出できる。2値化のための閾値としては、表面シート2及びセカンドシート3で同じ値を用いればよく、各シートの繊維が密な領域2a、3aの相対的な大きさを比較するのに十分である。
なお、2値化を行う単位面積は、30×30mm以上とすることが好ましく、表面シート2及びセカンドシート3の寸法と同一としてもよい。
【0020】
表面シート2における繊維が密な領域の個数は、30個/9cm以下であることが好ましく、又、表面シート2における繊維が密な領域の面積比が40%以下であることが好ましい。表面シート2における繊維が密な領域の個数が30個/9cmを超えたり、その面積比が40%を超えると、表面シート2の粗な領域が少なくなって、粘性の高い排せつ物の吸収が悪くなる場合がある。
又、セカンドシート3における繊維が密な領域の個数の下限は5個/9cm以下であることが好ましく、表面シート2における繊維が密な領域の個数の下限は、3個/9cm以下であることが好ましい。密な領域の個数がこれら下限値より小さいと、排泄物の吸収拡散が悪くなる場合がある。
【0021】
次に、図7を参照し、吸収性物品の製造方法について説明する。図7は、表面シート基材2x及びセカンドシート基材3xを積層した状態を示す。
表面シート基材2x及びセカンドシート基材3xは、熱によって捲縮可能な繊維を分散させて繊維ウェブを作成後、熱処理により繊維に部分的に捲縮を発現させることにより、製造することができる。この場合、繊維が捲縮した部分2ax、3axが「繊維が密な領域」となり、繊維が捲縮しない部分2bx、3bxが「繊維が粗な領域」となる。そして、シート全体に対する熱捲縮繊維の配合割合、又は捲縮繊維の太さや繊維の束数を変えることで、上記した繊維の粗密のピッチを変えることができる。
なお、捲縮可能な繊維を用いて繊維を面方向に粗密に分布させたシートは、例えば特開2004-33236号公報、特開2008-266813号公報に記載されている。又、捲縮可能な繊維としては、偏芯芯鞘型の複合繊維が挙げられ、この複合繊維としては、ポリプロピレン繊維を芯鞘とし、ポリエチレンをその周囲に配したものがある。
【0022】
又、捲縮しない通常の繊維を用いて繊維ウェブを形成した後、ウェブを移送するワイヤー上でエアーブローとサクションを調整し、繊維に分散ムラを形成させることで、表面シート基材2x及びセカンドシート基材3xを得ることもできる。この場合、繊維が集まった部分2ax、3axが「繊維が密な領域」となり、繊維が少ない部分2bx、3bxが「繊維が粗な領域」となる。そして、エアーブローやサクションの強弱を変えることで、上記した繊維の粗密のピッチを変えることができる。
又、格子状に形成された水流交絡不織布を複数枚積層することで、表面シート基材2x及びセカンドシート基材3xを得ることもできる。この場合、格子に相当する繊維が集まった部分2ax、3axが「繊維が密な領域」となり、格子の間の繊維が少ない部分2bx、3bxが「繊維が粗な領域」となる。そして、格子の間隔を変えることで、上記した繊維の粗密のピッチを変えることができる。
【0023】
得られた表面シート基材2xは、ウェブを移送するワイヤー側の面が平坦となり、その反対面は繊維が密な領域が凸状に出っ張っている。そこで、表面シート基材2xのうちワイヤー側の平坦な面を、使用者の肌に接する面に向けると肌への刺激が少なくなるので好ましい。
そして、表面シート基材2xとセカンドシート基材3xとの間、及びセカンドシート基材3xと吸収体6との間にそれぞれホットメルト接着剤を間欠的に塗布し、全体をプレスすると(図7の矢印)、各シート基材の繊維が密な領域(凸状部)が圧縮され、繊維がさらに高密度に集まるようになる。このようにして、表面シート2とセカンドシート3が積層され、吸収性物品を製造することができる。
【0024】
本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は勿論これらの例に限定されるものではない。
【0026】
<吸収性物品の作製>
図1〜3に示す構成を有する吸収性物品を作製し、実施例1〜4とした。表面シート2はエアースルータイプ不織布(PP/PE;2.0dtex)、セカンドシート3はエアースルータイプ不織布(PP/PE;4.0dtex)、バックシート4は、ポリエチレンフィルム(26μm)を用いた。また、吸収体としては、表1に示すものを用い、フラッフとしてNBKP(サザンパインパルプ)を解繊したものを用いた。なお、表1のATは、エアースルータイプの略記である。
ここで、表面シート及びセカンドシートは、熱によって捲縮可能な繊維を分散させて繊維ウェブを作成後、熱処理により繊維に部分的に捲縮を発現させることにより、製造した。捲縮可能な繊維として、ポリプロピレン繊維を芯鞘とし、ポリエチレンをその周囲に配した偏芯芯鞘型の複合繊維(上記PP/PE)を用いた。
この場合、繊維が捲縮した部分が「繊維が密な領域」となり、繊維が捲縮しない部分が「繊維が粗な領域」となる。そして、シート全体に対する熱捲縮繊維の配合割合を変えることで、表面シートとセカンドシートを作り分けた。
【0027】
なお、表面シート及びセカンドシートの繊維の粗密の有無は、各シートの平面の光学顕微鏡像を公知のソフトウェアで画像処理して2値化し、面方向に分散して暗部が観察されたか否かを目視で判定し、暗部が観察されなかった場合に繊維の粗密が無しとみなした。又、各シートに繊維の粗密が見られた実施例について、単位面積当たりの繊維が密な領域を表す画像の個数及び面積比を各シート毎に求めたところ、いずれの実施例においてもセカンドシートの方が表面シートよりも個数が多く、表面シートでは14〜 28個/9cm2、セカンドシートでは、28〜 35個/9cm2であった。また繊維の密な領域の面積比は、表面シートで40%、セカンドシートで52〜 58%であった。
一方、比較例1,2として、実施例と同じ組成の繊維を用い、表面シートとセカンドシートに粗密を設けないようにした。又、市販の吸収性物品を用意し、参考例1,2とした。
【0028】
<評価>
吸収速度は、各吸収性物品を水平な状態に伸ばして固定し、吸水速度測定治具(中空の円筒で内径30mm、外径80mm、重量2kg)を吸収性物品の中央に載せ、10mlの試験液を測定治具の筒内に注入し、完全に吸収するまでの時間を計測した(表1の1回法)。また同様に5mlの上記試験液を測定治具の筒内に計3回注入して、1回目から3回目までの吸収速度を計測した。後者の方法は、少しずつ複数回の吸収を評価しており、実際の失禁等の状態に近づけた評価法である。
試験液は、人工尿として生理食塩水(36±3℃)を用いた。又、人工経血として、純分85%wt%、グリセリン8.5wt%、CMC-Na 0.7wt%、NaCl 0.4wt%、食紅0.05wt%、精製水90.35wt%を混合したもの(14±2cps 25℃)を用いた。
ウェットバックは、吸収性物品を水平な状態に伸ばして固定し、所定量の上記試験液を吸収性物品の中央に注ぎ、10分放置後にろ紙と錘を吸収性物品上に載せ、1分経過後のろ紙の重量増加量を測定した。ろ紙はADVANTEC 社製の#2(直径55mm)を10枚重ねたものを用いた。
総吸収量は、吸収性物品を十分な量の上記試験液に5分間浸漬した後、金網上に表面シート側を下にして30秒間放置し、浸漬前後の重量差を測定した。
【0029】
得られた結果を表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
表1から明らかなように、各実施例の場合、人工尿と人工経血のいずれに対しても吸収速度が速く、ウェットバックも少なく、尿と経血(粘性物)の両方の吸収に優れ、これらの逆流も少ないことがわかる。
一方、表面シート及びセカンドシートの繊維を粗密に分布させなかった比較例1、2の場合、各実施例に比べて吸収速度が遅く、ウェットバックも多かった。
又、市販の失禁ライナーの場合は吸収速度が遅く、市販の生理用ナプキンの場合はウェットバックが多くなって吸収物の逆流が見られた。
【符号の説明】
【0032】
2 表面シート
3 セカンドシート
2a、3a 繊維が密な領域
6 吸収体
20 吸収性物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体と、使用者の肌に接する液透過性の表面シートと、前記表面シートと前記吸収体との間に配置される液透過性のセカンドシートとを備え、
前記表面シート及び前記セカンドシートは、繊維を面方向に粗密に分布させてなり、
前記表面シート及び前記セカンドシートをそれぞれ平面から見て画像処理により2値化した場合に、前記セカンドシートの方が前記表面シートよりも単位面積当たりの前記繊維が密な領域を表す画像の個数が多くなっている吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収体は、前記セカンドシート側の上層と、前記セカンドシートと反対側の下層とを積層してなり、
前記上層は高吸水性ポリマーを30質量%以下含み、前記下層は高吸水性ポリマーを30〜50質量%含み、かつ前記吸収体は総量としてパルプを300g/m2以上含む請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
人工尿として生理食塩水(36±3℃)を用い、人工経血として、純分85%wt%グリセリン8.5wt%、CMC-Na:0.7wt%、NaCl:0.4wt%、食紅0.05wt%、精製水90.35wt%を混合したもの(14±2cps 25℃)を用い、
水平な状態に伸ばして固定した前記吸収性物品の中央に、中空の円筒で内径30mm、外径80mm、重量2kgの測定治具を載せ、前記人工尿及び前記人工経血をそれぞれ前記測定治具の筒内に10ml滴下し、完全に吸収するまでの時間を計測した場合に、前記人工尿について20秒以下、前記人工経血について60秒以下であり、
前記人工経血の総吸収量が100g以上、前記人工尿の総吸収量が120g以上である請求項1又は2記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−74934(P2013−74934A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215513(P2011−215513)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000183462)日本製紙クレシア株式会社 (112)
【Fターム(参考)】