説明

吸収性物品

【課題】吸収性物品の逆戻りを防止する。
【解決手段】使い捨ておむつにおいて、トップシート11と、物品の使用面側において、物品の両側部に前後方向に沿って設けられ、幅方向内側が着用時に着用者側に起立する縦方向立体ギャザー24とを有し、前記トップシートは、前後方向に沿って複数枚の単位シートから構成され、単位シート相互の隣接端部が重なり状態で配置され、前記重なり状態上側の単位シートの前後方向端部が着用時に着用者側に起立するように伸縮部材が設けられた横方向立体ギャザーが構成され、前記縦方向立体ギャザーで覆われた領域及び横方向立体ギャザーで覆われた領域の少なくとも一方の領域が、対応する立体ギャザーを構成するシート並びに覆われていない前記単位シートより、排泄液に関し易透過性である吸収性物品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッドタイプ、パンツタイプ若しくはテープタイプ使い捨ておむつ等の吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排泄液を吸収した吸収性物品を着用したまま着座等すると、体によって押された部分で吸収した排泄液が着用者の肌へ漏れ出す現象(以下、「逆戻り」という)が生じる。排泄時を考慮すると、吸収性物品の使用面側は排泄液を透過しやすくする必要があるが、透過しやすくすることで、吸収体に一旦吸収された排泄液が逆戻りしやすくなるという問題を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−203096号公報
【特許文献2】特開2010−115218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、このような逆戻りに対して有効な解決策が提供されていない。
そこで、本発明の主たる課題は、吸収性物品の逆戻りを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
使用面側から排泄液を入れ、吸収要素により排泄液を吸収する構造の使い捨ておむつにおいて、
トップシートと、
物品の使用面側において、物品の両側部に前後方向に沿って設けられ、幅方向内側が着用時に着用者側に起立する縦方向立体ギャザーとを有し;
前記トップシートは、前後方向に沿って複数枚の単位シートから構成され、単位シート相互の隣接端部が重なり状態で配置され、
前記重なり状態上側の単位シートの前後方向端部に、その端部が着用時に着用者側に起立するように伸縮部材が設けられた横方向立体ギャザーが構成され、
少なくとも横方向立体ギャザーの起立端部に相当する前後範囲において、前記横方向立体ギャザーが前記縦方向立体ギャザーの幅方向内側と結合され、
前記縦方向立体ギャザーで覆われた領域及び横方向立体ギャザーで覆われた領域の少なくとも一方の領域が、対応する立体ギャザーを構成するシート並びに覆われていない前記単位シートより、排泄液に関し易透過性である、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0006】
(作用効果)
着用者が単位シートに排泄液を排泄すると、縦方向立体ギャザーで覆われた領域及び横方向立体ギャザーで覆われた領域の少なくとも一方の領域と、単位シートとの透過性能の違いにより、単位シートから、縦方向立体ギャザーで覆われた領域および横方向立体ギャザーで覆われた領域の少なくとも一方の領域へ排泄液が移動する。そして、排泄液は吸収要素によって吸収される。
着用者が着座等をして吸収要素を押した場合であっても、縦方向立体ギャザーで覆われた領域及び横方向立体ギャザーで覆われた領域は、縦方向立体ギャザーおよび横方向立体ギャザーによって蓋がされたような状態になるため、排泄液が単位シートへ逆戻りすることを防ぐことができる。
【0007】
<請求項2記載の発明>
前記横方向立体ギャザーの起立基端が、前記重なり状態における下側の単位シートの前後方向縁と離間しており、その離間領域が、前記易透過性領域である請求項1記載の吸収性物品。
【0008】
(作用効果)
離間領域を形成することで、単位シートとの透過性能の差をつけやすくなる。
【0009】
<請求項3記載の発明>
前記縦方向立体ギャザーの起立基端が、前記重なり状態における下側の単位シートの前後方向縁と離間しており、その離間領域が、前記易透過性領域である請求項1記載の吸収性物品。
【0010】
(作用効果)
請求項2と同様の効果がある。
【0011】
<請求項4記載の発明>
製品の排尿部位に対し、横方向立体ギャザーが背側に設けられ、その起立端部が排尿部位側において起立するように設けられている請求項1記載の吸収性物品。
【0012】
(作用効果)
排尿部位に対して背側にポケットが形成され、排泄された尿がそのポケットよりも前後方向後側へ移動することを防ぐことができるとともに、ポケットに易透過性領域が形成されているため、速やかに尿を吸収体へ移動させることができる。
【0013】
<請求項5記載の発明>
横方向立体ギャザーで覆われた前記領域から前後方向前側へ延在するように、吸収要素のうちの少なくとも吸収体にスリット及び凹溝加工及び連続的なエンボス加工の少なくともいずれか一つが形成された請求項1記載の吸収性物品。
【0014】
(作用効果)
単位シートから横方向立体ギャザーで覆われた領域へ、排泄液が移動しやすくなる。また、吸収性物品を着用すると、スリット等を起点として、吸収要素の幅方向両側が着用者側へ移動し、吸収要素の幅方向中間が裏面側へ移動する。その結果、吸収要素に窪みが形成され、排泄液の排泄量が多い場合であっても、窪み部分で一時的に保持することができるため、溢れもれを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のとおり本発明によれば、吸収性物品の逆戻りを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の吸収性物品の平面図である。
【図2】本発明の吸収性物品の縦方向立体ギャザーを示した平面図である。
【図3】本発明の吸収性物品の横方向立体ギャザーと単位シートを示した一部破断図である。
【図4】本発明の吸収性物品の吸収要素を示した平面図である。
【図5】図1のX−X断面図である。
【図6】図1のY−Y断面図である。
【図7】図6の横方向立体ギャザーの立ち上がりを示した断面図である。
【図8】図1のZ−Z断面図である。
【図9】図8の横方向立体ギャザーの立ち上がりを示した断面図である。
【図10】図1のT−T断面図である。
【図11】図10の横方向立体ギャザーの立ち上がりを示した断面図である。
【図12】装着状態の斜視図である。
【図13】スリットを起点として窪みを形成した状態を示した断面図である。
【図14】本発明の吸収性物品の製造方法を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面に示されるパッドタイプ使い捨ておむつの例を参照しながら詳説する。なお、本発明の用語のうち「股間部」とは使用時に身体の股間と対応させる部分を意味し、製品によって、図示形態のように物品の前後方向中央若しくはその近傍から前側の所定部位までの範囲であったり、物品の前後方向中央の所定範囲であったりするものである。図示形態のように、物品の前後方向中間あるいは吸収体の前後方向中間より少し前側に幅の狭い括れ部分を有する場合は、「股間部」は括れ部分の最小幅部位を前後方向中央とする所定の前後方向範囲を意味する。また、「前側部分(腹側部分)」は股間部よりも前側の部分を意味し、「後側部分(背側部分)」は股間部よりも後側の部分を意味する。また吸収体における「スリット」とは、吸収体に形成した細長い切り込みをいう。また、本発明の吸収性物品を構成する各構成物品において、着用者に近い側の面を「使用面」といい、遠い側の面を「裏面」という。また、着用者の肌に近い側を「使用面側」といい、遠い側を「裏面側」という。
【0018】
図1〜図13は、本発明に係るパッドタイプ使い捨ておむつ例200を示している。このパッドタイプ使い捨ておむつ200は、股間部C2と、その前後両側に延在する前側部分F2及び後側部分B2とを有するものである。各部の寸法は適宜定めることができ、例えば、おむつ全長L(前後方向長さ)は350〜700mm程度、おむつ全幅W1は130〜400mm程度とすることができ、この場合における股間部C2の前後方向長さは10〜150mm程度、前側部分F2の前後方向長さは50〜350mm程度、及び後側部分B2の前後方向長さは50〜350mm程度とすることができる。
【0019】
本実施例のパッドタイプ使い捨ておむつ200は、裏面側に外装シート32を有し、使用面側に向かって順に、バックシート21、吸収体23、中間シート25、セカンドシート22、トップシート11を積層した構造を有している。
【0020】
本発明においては、着用者の肌に最も近い側にあるシートをトップシートという。このトップシートは、複数枚の単位シートから構成される。また、このトップシートよりも裏面側にあるシートおよび吸収体を総称して吸収要素という。本実施例の場合においては、外装シート32、バックシート21、吸収体23、中間シート25、セカンドシート22が吸収要素に該当する。
【0021】
吸収体23の外側には、バックシート21が吸収体23の周縁より若干食み出すように設けられている。バックシート21としては、遮水性を有するものが好ましく、ポリエチレンフィルム等の他、ムレ防止の点から遮水性を損なわずに透湿性を備えたシートも用いることができる。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを用いることができる。
【0022】
また、バックシート21の裏面は、不織布からなる外装シート32により覆われており、この外装シート32は、所定の食み出し幅をもってバックシート21の周縁より外側に食み出している。外装シート32としては各種の不織布を用いることができる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0023】
吸収体23の使用面は、セカンドシート22により覆われている。図示形態ではセカンドシート22の側縁から吸収体23が一部食み出しているが、吸収体23の側縁が食み出さないようにセカンドシート22の幅を広げることもできる。セカンドシート22としては、有孔または無孔の不織布や穴あきプラスチックシートなどが用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。本発明においては、このセカンドシート22を省略する形態も考えることができる。
【0024】
セカンドシート22と吸収体23との間には、中間シート25を介在させるのが望ましい。この中間シート25は、吸収体23により吸収した尿の逆戻りを防止するために設けられるものであり、保水性が低く、且つ透液性の高い素材、例えばメッシュフィルム等を用いるのが望ましい。セカンドシート22の前端を0%としセカンドシート22の後端を100%としたとき、中間シート25の前端は0〜11%の範囲に位置しているのが好ましく、中間シート25の後端は92〜100%の範囲に位置しているのが好ましい。また、中間シート25の幅25wは吸収体23の幅W2の50〜90%程度であるのが好ましい。
【0025】
パッドタイプ使い捨ておむつ200の前後方向両端部では、外装シート32およびセカンドシート22が吸収体23の前後端よりも前後両側にそれぞれ延在されて貼り合わされ、吸収体23の存在しないエンドフラップ部EFが形成されている。パッドタイプ使い捨ておむつ200の両側部では、外装シート32が吸収体23の側縁よりも外側にそれぞれ延在され、この延在部からセカンドシート22の側部までの部分の使用面には縦方向立体ギャザーシート24の幅方向外側の部分24xが前後方向全体にわたり貼り付けられ、吸収体23の存在しないサイドフラップ部SFを構成している。縦方向立体ギャザーシート24とは、縦方向立体ギャザーを構成するシートをいう。これら貼り合わせは、例えば、ホットメルト接着剤、ヒートシール、超音波シールにより行われる。これらエンドフラップ部EF及びサイドフラップ部SFは、本発明の周縁部をなし、これらにより囲まれる部分が本発明の本体部をなす。外装シート32を設けない場合、外装シート32に代えてバックシート21をサイドフラップ部SFまで延在させ、サイドフラップ部SFの裏面側を形成することができる。
【0026】
縦方向立体ギャザーシート24の素材としては、プラスチックシートやメルトブローン不織布を使用することもできるが、肌への感触性の点で、シリコンなどにより撥水処理をした不織布が好適に使用される。
【0027】
縦方向立体ギャザーシート24の幅方向中央側の部分24cはセカンドシート22上にまで延在しており、その幅方向中央側の端部には、細長状弾性部材24Gが前後方向に沿って伸張状態でホットメルト接着剤等により固定されている。この細長状弾性部材24Gとしては、糸状、紐状、帯状等に形成された、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等、通常使用される素材を用いることができる。
【0028】
また、両縦方向立体ギャザーシート24,24は、幅方向外側の部分24xが前後方向全体にわたりセカンドシート22の使用面および外装シート32の使用面に貼り合わされて固定されるとともに、幅方向中央側の部分24cが、前後方向の両端部ではセカンドシート22の使用面に貼り合わされて固定され、かつ前後方向の両端部間ではセカンドシート22使用面に固定されていない。この非固定部分は、図1に示されるように、セカンドシート22の使用面に対して起立可能なバリヤ部となる部分であり、その起立基端24bは縦方向立体ギャザーシート24における幅方向外側の固定部分24xと内側の部分24cとの境に位置する。
【0029】
吸収体23としては、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて粒子状等の高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。吸収体23における繊維目付け及び高吸収性ポリマーの目付けは適宜定めることができるが、繊維目付けは100〜600g/m2程度とするのが好ましく、また吸収性ポリマーの目付け0〜400g/m2程度とするのが好ましい。高吸収性ポリマー粒子を混合する場合等、必要に応じて、吸収体23はクレープ紙等の包装シート(図示せず)により包むことができる。また、吸収体23の形状は、相対的に前側の部分が後側の部分よりも幅広な帯状、あるいは長方形状、台形状等、適宜の形状とすることができる。
【0030】
吸収体23は、股間部C2を含む前後方向中間の所定部分が幅の狭い括れ部分23nとして形成されている。この括れ部分23nの最小幅W3は、括れ部分23nの前後に位置する非括れ部分の幅(吸収体23の全幅)W2の50〜65%程度であるのが好ましい。また、おむつ前端を0%としおむつ後端を100%としたとき、括れ部分23nの前端は10〜25%の範囲に位置しているのが好ましく、括れ部分23nの後端は40〜65%の範囲に位置しているのが好ましく、括れ部分23nの最小幅W3となる部位(最小幅部位)は25〜30%の範囲に位置しているのが好ましい。
【0031】
パッドタイプ使い捨ておむつ200の厚さ方向において、セカンドシート22と縦方向立体ギャザーシート24の間にトップシート11が設けられている。このトップシート11は、吸収体23で吸収した排泄液が着用者の肌へ漏れ出す現象(以下、「逆戻り」という)を防止する機能を有するシートである。
【0032】
トップシート11は、吸収体23で吸収した排泄液が漏れ出さないように、撥水性または疎水性または不透液性を有するものが望ましい。具体的な素材としては、プラスチックシート、メルトブローン不織布、シリコンなどにより撥水処理をした不織布を用いることができる。また、逆戻りを防止する目的を考えると、防水フィルムをラミネートした不織布を用いるのが好ましい。
【0033】
トップシート11は単位シートから構成され、図3においては、前側部分から後側部分へ順に11a、11b、11c、11dの4枚の単位シートを配置している。
単位シート11aは、裏面全体をセカンドシート22の前側部分に貼り付けて固定する。この貼り合わせは、例えば、ホットメルト接着剤、ヒートシール、超音波シールにより行われる。
【0034】
また、単位シート11bは、その前後方向前側を単位シート11aの前後方向後側の上に重ねて配置する。その重なり部分において、単位シート11aと11bは貼り合わさず固定しない。単位シート11bの前記重なり部分から前後方向後側に所定の距離11x置いた部分においても、単位シート11bはセカンドシート22と貼り合わさず固定しない。この所定の距離11xと、単位シート11bの幅方向の全長によって区画される空間を易透過性領域11Lという。単位シート11bのうち、前記易透過領域11Lよりも前後方向後側の部分は、その裏面全体をセカンドシート22に貼り付けて固定する。この固定部と前記易透過領域11Lの境界は、単位シート11bの起立基端11pとなる。このように単位シートおよび細長状弾性部材11Gによって、横方向立体ギャザーが形成される。このとき、単位シートの端部のうち、立ち上がる部分を起立端部17という。
【0035】
なお、前記易透過領域は単位シートよりも液体の透過性能が高く、その透過性能の差により、単位シートに排泄された尿などが易透過領域へ移動することとなる。また、易透過領域は、排泄液の量が多い場合、排泄液を一時的に保持する機能も有する。
【0036】
単位シート11bの前後方向前側の端部には、細長状弾性部材11Gが幅方向に沿って伸張状態でホットメルト接着剤等により固定されている。この細長状弾性部材11Gとしては、糸状、紐状、帯状等に形成された、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等、通常使用される素材を用いることができる。
【0037】
単位シート11cは、その前後方向前側を単位シート11bの前後方向後側の上に重ねて配置する。その重なり部分において、単位シート11bと11cは貼り合わさず固定しない。単位シート11cの前記重なり部分から前後方向後側に所定の距離11y置いた部分においても、単位シート11cはセカンドシート22と貼り合わさず固定しない。この所定の距離11yと、単位シート11cの幅方向の全長によって区画される空間を易透過領域11Mという。単位シート11cのうち、前記易透過領域11Mよりも前後方向後側にある部分においては、その裏面全体をセカンドシート22に貼り付けて固定する。この固定部と前記易透過領域11Mの境界は、単位シート11cの起立基端11qとなる。また、単位シート11cの前後方向前側の端部にも、細長状弾性部材11Gが幅方向に沿って伸張状態でホットメルト接着剤等により固定されている。
【0038】
単位シート11dは、その前後方向前側を単位シート11cの前後方向後側の上に重ねて配置する。その重なり部分において、単位シート11cと11dは貼り合わさず固定しない。単位シート11dの前記重なり部分から前後方向後側に所定の距離11z置いた部分においても、単位シート11dはセカンドシート22と貼り合わさず固定しない。この所定の距離11zと、単位シート11dの幅方向の全長によって区画される空間を易透過領域11Nという。単位シート11dのうち、前記易透過領域11Nよりも前後方向後側にある部分においては、その裏面全体をセカンドシート22に貼り付けて固定する。この固定部と前記易透過領域11Nの境界は、単位シート11dの起立基端11rとなる。また、単位シート11dの前後方向前側の端部にも、細長状弾性部材11Gが幅方向に沿って伸張状態でホットメルト接着剤等により固定されている。
【0039】
一方、単位シート11は、平面視で、一対の縦方向立体ギャザーシート24、24それぞれの起立基端24b、24bの間に配置されている。このとき、単位シート11の幅方向端部11Sと縦方向立体ギャザーシート24の起立基端24bの間には、単位シート11が存在しない易透過領域12Aがある。また、縦方向立体ギャザーシート24の幅方向中央側の部分24cの裏面と、単位シート11b、11c、11dの非固定部の使用面とが重なる部分は、互いに貼り付けられて固定される。この貼り合わせは、例えば、ホットメルト接着剤、ヒートシール、超音波シールにより行われる。
【0040】
パッドタイプ使い捨ておむつ200を着用すると、細長状弾性部材11Gおよび24Gの収縮作用と着用者の足圧によって、易透過領域11Lの使用面と単位シート11bの裏面の間、易透過領域11Mの使用面と単位シート11cの裏面の間、易透過領域11Nの使用面と単位シート11dの裏面の間、易透過領域24Aの使用面と縦方向立体ギャザーシート24の間にそれぞれ空間ができる。
【0041】
男性の着用者が尿を排出すると、排出された尿は単位シート11aを通って易透過領域11Lへ流れ、この易透過領域11Lを通って裏面側にある吸収体23に吸収される。また、着用者の体位が左右に傾いている場合、排出された尿は単位シート11aを通って易透過領域24Aへ流れ、この易透過領域24Aを通って裏面側にある吸収体23に吸収される。易透過領域11Lだけでなく易透過領域24Aも設けることで、着用者の体位が左右に傾いている場合であっても、排出された尿を迅速に吸収体23で吸収することができるとともに、尿の排出量が多い場合であっても、尿の排出が追い付かずに易透過領域11L付近で溢れることを防ぐことができる。
【0042】
一方、女性の着用者が尿を排出すると、排出された尿は単位シート11bを通って易透過領域11Mへ流れ、この易透過領域11Mを通って裏面側にある吸収体23に吸収される。また、着用者の体位が左右に傾いている場合、排出された尿は単位シート11bを通って易透過領域24Aへ流れ、この易透過領域24Aを通って裏面側にある吸収体23に吸収される。易透過領域24Aの利点は、前記と同様である。
【0043】
さらに、着用者が軟便や下痢便を排出すると、排出された便の液体は単位シート11cを通って易透過領域11Nへ流れ、この易透過領域11Nを通って裏面側にある吸収体23に吸収される。また、着用者の体位が左右に傾いている場合、排出された尿は単位シート11cを通って易透過領域24Aへ流れ、この易透過領域24Aを通って裏面側にある吸収体23に吸収される。易透過領域24Aの利点は、前記と同様である。
【0044】
また、着座等によってパッドタイプ使い捨ておむつ200が着用者によって押された場合であっても、単位シート11によって、吸収体23で保持されている排泄液の逆戻りを防止することができる。その結果、着用者のスキントラブルを防止することができる。
【0045】
易透過領域11L、11M、11Nには単位シート11を貼り付けていないが、前記各易透過領域の使用面側にはそれぞれ単位シート11b、11c、11dが存在する。着用者が着座等をすると単位シート11b、11c、11dが体圧に押されてそれぞれ易透過領域11L、11M、11Nに重なり、易透過領域11L、11M、11Nに蓋をするような状態になる。そのため、吸収体23に保持されている排泄液が易透過領域11L、11M、11Nを通じて逆戻りすることを、各単位シート11b、11c、11dによって防ぐことができる。
【0046】
さらに、易透過領域12Aにも単位シート11を貼り付けていないが、易透過領域12Aの使用面側には、縦方向立体ギャザーシート24が存在する。この縦方向立体ギャザーシート24は前記の通り撥水素材から構成されており、着用者の体圧がかかると縦方向立体ギャザーシート24が体圧に押されて易透過領域12Aに重なり、易透過領域12Aに蓋をするような状態になる。そのため、吸収体23に保持されている排泄液が易透過領域12Aを通じて逆戻りすることを、この縦方向立体ギャザーシート24によって防ぐことができる。
【0047】
一方、吸収体23には、単位シート11bの前後方向後端を始点として、前後方向前側に延在する二本のスリット13が形成されている。スリット13を設けることで、排出された尿を迅速に易透過領域11L、11Mに移動させることができる。その結果、易透過領域11L、11Mの面積が小さくても、尿の吸収スピードが速くなり、吸収が遅いことによる溢れもれを防ぐことができる。
【0048】
また、図13のように、パッドタイプ使い捨ておむつ200を着用すると、細長状弾性部材11Gの収縮作用と着用者の足圧により、スリット13を起点として、幅方向両側にある吸収体23A、23Cが押し上げられ、幅方向中央にある吸収体23Bが押し下げられる。その結果、断面視で略U字形の窪みが形成される。その結果、放尿量が多い場合であっても、窪み部分で一時的に尿を保持することができ、溢れもれを防ぐことができる。
【0049】
このスリット13の形状は、単位シート11a、11bに排出された尿を易透過領域11L、11Mへ誘導するものであれば、特に問わない。図4の様に直線状とする他、幅方向外側又は中央側に膨出する弧状等の曲線状や波状としても良い。これらの形状のうち最も好ましいものは、尿の移動距離が最も短くなる直線状である。
また、スリット13は、易透過領域11L、11Mの前後方向前側の端辺と所定の角度を付けて斜めに設けてもよい。
【0050】
図4においては、スリットの数を二本にしたが、一本であっても良いし、三本以上設けても良い。この場合、スリットの数を多くするほど、単位シート11a、11bに排出された尿を易透過領域11L、11Mへ早く移動させることができるというメリットがある。また、複数本設ける場合は、スリットの間をある程度離間させるのが好ましい。ある程度(例えば吸収体23の股間部C2の幅の20〜30%程度)離間させることで、前記の窪み部分が形成しやすくなるからである。
【0051】
また、スリット13の前後方向の範囲は適宜定めることができるが、単位シート11a、11bに排出された尿を易透過領域11L、11Mへ誘導するためには、スリット13の前後方向前端部を単位シート11a、11bの裏面側に設けるのが好ましい。同様の理由から、スリット13の前後方向後端部を易透過領域11L、11Mの裏面側に設けるのが好ましい。
【0052】
図6等において、前記スリット13は、吸収体23を厚さ方向に貫通するように設けているが、貫通させないようにしても良い。貫通させない場合は、尿の拡散通路を作るため、使用面側が窪む凹形状とするのが良い。また、スリット13に代えて、連続的なエンボス加工を吸収体23の表面に形成することにより尿の拡散通路を構成しても良い。さらに、スリットや連続的なエンボス加工に代えて、凹溝加工を吸収体23の表面に形成することにより尿の拡散通路を構成しても良い。
【0053】
図4においては、前記スリット13を吸収体23に設けている。より具体的には、易透過領域11Mの裏面側に始点を設け、そこから単位シート11aの裏面側まで、前後方向前側へ延在するように直線状に二本設けている。しかし、易透過領域11Mの裏面側に始点を設け、そこから単位シート11bの裏面側まで、前後方向前側へ延在するように直線状に二本設けるとともに、それとは別に、易透過領域11Lの裏面側に始点を設け、そこからから単位シート11aの裏面側まで、前後方向前側へ延在するように直線状に二本設けるようにしてもよい。
【0054】
また、易透過領域11Nから単位シート11cまで前後方向にスリット13を設けるようにしても良い。このスリット13を設けることで、単位シート11cに排出された軟便の液体を迅速に易透過領域11Nへ移動させることができる。
【0055】
さらに、パッドタイプ使い捨ておむつ200を男性用と女性用に分け、男性用の場合は易透過領域11Mを設けないようにするとともに、女性用の場合は、易透過領域11Lを設けないようにすることもできる。
【0056】
そのほか、図3においては、易透過領域を計三つ設けたが、四つ以上設けるようにしてもよい。易透過領域の数を増やすことで、排泄液が排泄された箇所から易透過領域までの距離が短くなるため、排泄液をより早く吸収体23で吸収することができるというメリットがある。
【0057】
本発明のパッドタイプ使い捨ておむつ200においては、着用者の肛門に対向する位置の吸収体23を薄くすることもできる。吸収体23を薄くすることで、便用パッドを併用しやすくなる。便用パッドを併用することで、軟便や下痢便など粘性の高い排泄液が排泄された場合であっても、便用パッドが排泄液の吸収を補助し、着用者が感じる不快感を軽減させることができる。この便用パッドとして、例えば、「テークケア軟便吸収パッド」(大王製紙株式会社製)を用いることができる。
【0058】
(製法)
本発明の吸収性物品の製法を説明する。なお、説明においては、本発明の特徴的部分である単位シート11の貼り付け工程に絞って説明する。
図14の左側を上流とし、右側を下流とする。上流には吸収性物品の原材料があり、下流には吸収性物品の完成品がある。
【0059】
単位シート11を貼り付ける作業スペースでは、上流から下流へ縦方向立体ギャザーシート24が流れている。また、その縦方向立体ギャザーシート24の下方では、一定の間隔で切断された単位シート11が上流から下流へ流れている。
【0060】
そして、一枚の単位シート11の上流側の使用面の幅方向両端と縦方向立体ギャザーシート24の裏面とを貼り付ける。この貼り付け作業は、下流側にある単位シート11から順に行う。より詳細には、まず、縦方向立体ギャザーシート24の裏面に一枚目の単位シート11αを貼りつけ(図14(A))、次に、二枚目の単位シート11βを貼り付け(図14(B))、次に三枚目の単位シート11θを貼り付ける(図14(C))、というように順番に貼り付けを行っていく。このとき、単位シート11の上流側と、隣にある他の単位シート11の下流側が一部で重なるようにする。
【0061】
その後、単位シート11の下流側の裏面と、セカンドシート22の使用面を貼り付ける。この貼り付け作業も、下流側にある単位シート11から順に行う。
このとき、単位シート11の上流側かつ裏面側に易透過領域を形成するため、単位シート11を貼り付けない領域を設ける。
【0062】
その後、縦方向立体ギャザーシート24の裏面と、セカンドシート22の使用面を貼り付ける。この貼り付け作業も、下流側にある単位シート11から順に行う。このとき、縦方向立体ギャザーシート24の幅方向中央側かつ裏面側に親水部を形成するため、縦方向立体ギャザーシート24を貼り付けない領域を設ける。
【符号の説明】
【0063】
11…トップシート、 11a、11b、11c、11d…単位シート、11G…細長状弾性部材、11L、11M、11N…易透過領域、11S…単位シート幅方向端辺、13…スリット、17…起立端部、21…バックシート、22…セカンドシート、23…吸収体、23n…括れ部分、24…縦方向立体ギャザーシート、24G…細長状弾性部材、25…中間シート、32…外装シート、200…パッドタイプ使い捨ておむつ、C2…股間部、F2…前側部分、B2…後側部分、L…おむつ全長、W1…おむつ全幅、W2…吸収体全幅、EF…エンドフラップ部、SF…サイドフラップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用面側から排泄液を入れ、吸収要素により排泄液を吸収する構造の使い捨ておむつにおいて、
トップシートと、
物品の使用面側において、物品の両側部に前後方向に沿って設けられ、幅方向内側が着用時に着用者側に起立する縦方向立体ギャザーとを有し;
前記トップシートは、前後方向に沿って複数枚の単位シートから構成され、単位シート相互の隣接端部が重なり状態で配置され、
前記重なり状態上側の単位シートの前後方向端部に、その端部が着用時に着用者側に起立するように伸縮部材が設けられた横方向立体ギャザーが構成され、
少なくとも横方向立体ギャザーの起立端部に相当する前後範囲において、前記横方向立体ギャザーが前記縦方向立体ギャザーの幅方向内側と結合され、
前記縦方向立体ギャザーで覆われた領域及び横方向立体ギャザーで覆われた領域の少なくとも一方の領域が、対応する立体ギャザーを構成するシート並びに覆われていない前記単位シートより、排泄液に関し易透過性である、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記横方向立体ギャザーの起立基端が、前記重なり状態における下側の単位シートの前後方向縁と離間しており、その離間領域が、前記易透過性領域である請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記縦方向立体ギャザーの起立基端が、前記重なり状態における下側の単位シートの前後方向縁と離間しており、その離間領域が、前記易透過性領域である請求項1記載の吸収性物品。
【請求項4】
製品の排尿部位に対し、横方向立体ギャザーが背側に設けられ、その起立端部が排尿部位側において起立するように設けられている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項5】
横方向立体ギャザーで覆われた前記領域から前後方向前側へ延在するように、吸収要素のうちの少なくとも吸収体にスリット及び凹溝加工及び連続的なエンボス加工の少なくともいずれか一つが形成された請求項1記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−74960(P2013−74960A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215957(P2011−215957)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】