説明

吸収性物品

【課題】粘度の高い経血を吸収した後であってもトップシートにべたつき感がなく、トップシートがサラサラしている吸収性物品を提供すること。
【解決手段】液透過性のトップシート2と、吸収体3と、液不透過性のバックシート7と、上記トップシート2及び吸収体3の間のセカンドシート4とを有する吸収性物品であって、上記トップシート2と、上記セカンドシート4とが、0〜0.60のIOBと、45℃以下の融点と、25℃の水100gに対する、0.05g以下の水溶解度とを有する血液改質剤を含むことを特徴とする吸収性物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品、例えば、生理用ナプキン、パンティーライナー等では、長年積み重ねられてきた技術開発により基本的性能が向上し、以前と比較して、経血等の排泄物を吸収した後に、漏れ等が生ずることが少なくなってきており、現在は、さらなる高機能化、例えば、肌着に近い着用感を有すること、経血等の排泄物を吸収した後でもトップシートがサラサラしていること等が求められている。特に、月経時の経血は、子宮内膜等の成分が含まれることもあって、その粘度が高く、当該粘度の高い経血を吸収した後であっても、べたつき感がなく、トップシートがサラサラしていること等が求められる。また、粘度の高い経血は、トップシート上で、塊の状態で残存することが多く、使用者が、視覚的に不快感を覚えることが多く、その観点からも、粘度の高い経血を、トップシート上に残存させないことが好ましい。
【0003】
例えば、特許文献1には、肌当接面以外の部位に、糖アルキルエーテル及び糖脂肪酸エステルからなる群から選択される1又は2種以上の界面活性剤を含有するセルロース系親水性繊維を含む吸収性物品が記載されている。
また、特許文献2には、ポリプロピレングリコール材料を含むローション組成物を、トップシートの内表面(着衣側の面)、バックシートの内表面(身体側の面)、トップシートの内表面及びバックシートの内表面の間の基材等に配置した吸収性物品が開示されている。
さらに、特許文献3には、ポリプロピレングリコール材料を含むローション組成物を、トップシートの外表面(身体側の面)に適用した吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−029830号
【特許文献2】特表2010−518918号
【特許文献3】特表2011−510801号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の発明では、いわゆる界面活性剤を用いて、粘度の高い経血の粘度及び表面張力を変化させ、液の吸収速度を速くしようと試みられているが、その効果は十分ではなく、粘度の高い経血を吸収した後に、べたつき感がなく、トップシートにサラサラ感が得られるまでには至っていない。また、特許文献1に記載の発明では、界面活性剤を水溶液として塗布する必要があるため、後の乾燥工程を含めると、生産性の観点から問題がある。
【0006】
また、特許文献2及び3に記載の発明に関して本願発明者が確認したところ、ポリプロピレングリコール材料は、その分子量によって吸収能が異なり、低分子量のポリプロピレングリコール材料では、血液を吸収した後にトップシートにべたつき感が残り且つ血液の赤さが残りやすい傾向があることが明らかとなった。
【0007】
従って、本発明は、粘度の高い経血を吸収した後であってもトップシートにべたつき感がなく、トップシートがサラサラしている吸収性物品を提供することを目的とする。
本発明はまた、粘度の高い経血を、トップシート上に残存させにくく、着用者が視覚的に不快感を覚えにくい吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、液透過性のトップシートと、吸収体と、液不透過性のバックシートと、上記トップシート及び吸収体の間のセカンドシートとを有する吸収性物品であって、上記トップシートと、上記セカンドシートとが、0〜0.60のIOBと、45℃以下の融点と、25℃の水100gに対する、0.05g以下の水溶解度とを有する血液改質剤を含むことを特徴とする吸収性物品により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸収性物品は、経血を、トップシートから、セカンドシートを介して吸収体に速やかに移行させることができるので、トップシートに粘度の高い経血が残存しにくく、トップシートにべたつき感がなく、サラサラ感を有することができる。
本発明の吸収性物品はまた、トップシート上に粘度の高い経血の塊が残存しにくく、着用者が視覚的に不快感を覚えにくい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の吸収性物品の実施形態の1つである、生理用ナプキンの正面図である。
【図2】図2は、図1に示される生理用ナプキン1のA部分のX−X断面における断面図である。
【図3】図3は、本開示の吸収性物品の別の実施形態の断面図である。
【図4】図4は、本開示の吸収性物品の別の実施形態の断面図である。
【図5】図5は、本開示の吸収性物品の別の実施形態の断面図である。
【図6】図6は、トップシートがトリC2L油脂肪酸グリセリドを含む生理用ナプキンにおける、トップシートの肌当接面の電子顕微鏡写真である。
【図7】図7は、血液改質剤を含む又は含まない経血の顕微鏡写真である。
【図8】図8は、表面張力の測定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の吸収性物品について、以下、詳細に説明する。
[吸収性物品]
本開示の吸収性物品は、液透過性のトップシートと、吸収体と、液不透過性のバックシートと、上記液透過性のトップシート及び吸収体の間のセカンドシートとを有し、上記トップシートと、上記セカンドシートとが、0〜0.60のIOBと、45℃以下の融点と、25℃の水100gに対する、0.05g以下の水溶解度とを有する血液改質剤を含む。
【0012】
本開示の吸収性物品では、トップシート及びセカンドシートの両方が血液改質剤を含むことにより、吸収性物品に到達した経血が血液改質剤と接する機会が増え、経血をさらに改質することができ、それにより、トップシートに粘度の高い経血が残存しにくく、トップシートにべたつき感がなく、サラサラ感を有することができ、そしてトップシート上に粘度の高い経血の塊が残存しにくく、着用者が視覚的に不快感を覚えにくいと考えられる。
【0013】
本開示の吸収性物品の実施形態の1つでは、上記トップシートが、第1領域と、第1領域よりも液透過性が低い第2領域とを有し、セカンドシートが、吸収性物品の厚さ方向に関して、上記トップシートの第1領域及び第2領域にそれぞれ隣接する第3領域及び第4領域を有する。上記トップシートと、セカンドシートの第3領域とが、後述する血液改質剤を少なくとも含む。
【0014】
上記実施形態では、トップシートにおいて、第1領域の方が、第2領域よりも液透過性が高いため、着用時には、第1領域を通過する経血の量が、第2領域を通過する経血の量よりも多くなる傾向がある。従って、トップシートの第1領域と厚さ方向に接する、セカンドシートの第3領域が、血液改質剤を含むことにより、経血が血液改質剤と接する機会が増え、経血をさらに改質することができ、それにより、トップシートに粘度の高い経血が残存しにくく、トップシートにべたつき感がなく、サラサラ感を有することができ、そしてトップシート上に粘度の高い経血の塊が残存しにくく、着用者が視覚的に不快感を覚えにくいと考えられる。
【0015】
また、上記実施形態では、トップシートの第1領域において、血液改質剤が経血に作用するに伴って、その量が少なくなり、その減少速度は、第2領域の血液改質剤の減少速度よりも速いと考えられる。従って、セカンドシートの第3領域が血液改質剤を含むことにより、より長期にわたって、トップシートに粘度の高い経血が残存しにくく、トップシートにべたつき感がなく、サラサラ感を有することができ、そしてトップシート上に粘度の高い経血の塊が残存しにくく、着用者が視覚的に不快感を覚えにくいと考えられる。
【0016】
上記実施形態において、第1領域と、第1領域よりも液透過性が低い第2領域とを有するトップシートとしては、例えば、坪量に分布を有するトップシート、すなわち、第1領域がトップシートの平均坪量よりも小さい坪量を有する低坪量領域であり且つ第2領域がトップシートの平均坪量よりも大きい坪量を有する高坪量領域であるトップシートが挙げられる。上記坪量に分布を有するトップシートとしては、例えば、繊維密度に分布を有するトップシート、すなわち、第1領域が、第2領域よりも低い繊維密度を有するトップシート、及び厚さに分布を有するトップシート、すなわち、第1領域が凹部、例えば、溝部であり且つ第2領域が凸部、例えば、畝部であるトップシート、並びにこれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0017】
また、上記実施形態において、第1領域と、第1領域よりも液透過性が低い第2領域とを有するトップシートとしては、第1領域の開孔部の個数が、第2領域の開孔部の個数よりも多い、フィルム系トップシートが挙げられる。
【0018】
図1は、本発明の吸収性物品の実施形態の1つである、生理用ナプキンの正面図である。図1に示される生理用ナプキン1は、向かって左側が、前方である。図1に示される生理用ナプキン1は、液透過性のトップシート2と、吸収体3と、液不透過性のバックシート(図示せず)と、液透過性のトップシート2及び吸収体3の間のセカンドシート4とを有する。図1に示される生理用ナプキン1にはまた、サイドシート5、及び圧搾部6が示されている。
なお、本開示の吸収性物品では、サイドシート及び圧搾部はなくてもよい。
【0019】
図2は、図1に示される生理用ナプキン1のA部分のX−X断面における断面図である。図2に示される生理用ナプキン1は、液透過性のトップシート2と、吸収体3と、液不透過性のバックシート7と、液透過性のトップシート2及び吸収体3の間のセカンドシート4とを有する。図2において、トップシート2が、第1領域9と、第1領域よりも液透過性が低い第2領域10とを有し、そしてセカンドシート4が、吸収性物品の厚さ方向に関して、第1領域と隣接する第3領域11と、第2領域と隣接する第4領域12とを有する。
【0020】
なお、図2に示される実施形態では、第1領域9が、トップシートの平均坪量よりも小さい坪量を有する低坪量領域であり、そして第2領域10が、トップシートの平均坪量よりも大きい坪量を有する高坪量領域であり、より具体的には、第1領域9が、第2領域10よりも低い繊維密度を有する。
【0021】
図2に示される実施形態では、トップシート2の第1領域9及び第2領域10と、セカンドシート4の第3領域11及び第4領域12とが、血液改質剤8を含む。
なお、図面では、便宜上、血液改質剤が、球形であり、そしてトップシート及びセカンドシートの表面、より具体的には、着用者側の表面に存在するように記載されているが、血液改質剤の形状及び分布は、図面の記載に限定されるものではなく、例えば、トップシート及び/又はセカンドシートの内部に血液改質剤が存在してもよい。また、図面では、便宜上、トップシートの第1領域及び第2領域、並びにセカンドシートの第3領域及び第4領域は、一部のみ表示されている。以下同様である。
【0022】
図2に示されるような、第1領域が、第2領域よりも低い繊維密度を有する実施形態では、着用時に吸収性物品に到達した経血は、繊維密度が低く、流体抵抗の少ない、すなわち、液透過性が高い第1領域から、その内部に侵入しやすいと考えられる。従って、セカンドシートの、第1領域と隣接する第3領域が、血液改質剤を含む吸収性物品は、第3領域が血液改質剤を含まない吸収性物品よりも、吸収した経血をより改質することができると考えられる。
【0023】
上記実施形態では、トップシートは、その第1領域に血液改質剤を含むことができ、第2領域に血液改質剤を含むことができ、そして第1領域及び第2領域の両方に血液改質剤を含むことができる。また、上記実施形態では、セカンドシートにおいて、第3領域が血液改質剤を含む限り、第4領域は血液改質剤を含んでも、又は含まなくてもよい。ただし、経済性の観点からは、第3領域における血液改質剤の坪量が、第4領域における血液改質剤の坪量よりも多いことが好ましい。吸収性物品に到達した経血は、トップシートの第1領域から、セカンドシートの第3領域を経由して吸収体に移行する比率が高いため、第3領域が第4領域よりも多量の血液吸収剤を含むことにより、経血を効率よく改質することができるからである。
【0024】
図3は、本開示の吸収性物品の別の実施形態の断面図である。図3は、図1に示される生理用ナプキン1のA部分のX−X断面に相当する。図3に示される生理用ナプキン1は、液透過性のトップシート2と、吸収体3と、液不透過性のバックシート7と、液透過性のトップシート2及び吸収体3の間のセカンドシート4とを有する。図3において、トップシート2が、第1領域9と、第1領域よりも液透過性が低い第2領域10とを有し、そしてセカンドシート4が、吸収性物品の厚さ方向に関して、第1領域と隣接する第3領域11と、第2領域と隣接する第4領域12とを有する。図3に示される実施形態では、図2と同様に、第1領域9が、トップシートの平均坪量よりも小さい坪量を有する低坪量領域であり、そして第2領域10が、トップシートの平均坪量よりも大きい坪量を有する高坪量領域であり、より具体的には、第1領域9が、第2領域10よりも低い繊維密度を有する。
【0025】
図3に示される実施形態では、トップシート2の第1領域9及び第2領域10と、セカンドシート4の第3領域11及び第4領域12とが、血液改質剤8を含み、第3領域11が、第4領域12よりも高い、血液改質剤の坪量を有する。図3に示される実施態様では、セカンドシートに塗工される血液改質剤の総量を少なくしつつ、経血を効率よく改質することができる。
【0026】
本開示の吸収性物品では、トップシートの坪量及び平均坪量は、約10〜約100g/m2であることが好ましく、約15〜約80g/m2であることがより好ましく、そして約20〜約50g/m2であることがさらに好ましい。
なお、本明細書において、トップシートに関する、「平均坪量」は、場所により坪量が変化するトップシートに関して用いられる用語であり、トップシート全体の質量(g)を、その吸収性物品の厚さ方向の投影面積(m2)で除した値を意味する。
【0027】
また、第1領域が、上記トップシートの平均坪量よりも小さい坪量を有する低坪量領域であり、第2領域が、上記トップシートの平均坪量よりも大きい坪量を有する高坪量領域である実施形態では、第1領域は、上記平均坪量よりも、好ましくは約1〜約50g/m2、そしてより好ましくは約5〜約30g/m2低い坪量を有し、そして第2領域は、上記平均坪量よりも、好ましくは約1〜約50g/m2、そしてより好ましくは約5〜約30g/m2高い坪量を有する。第1領域と、第2領域との坪量の差が大きくなりすぎると、トップシートの風合いが劣る、外観が劣る等の傾向がある。第1領域と、第2領域との坪量の差が小さくなりすぎると、液透過性の差も小さくなり、セカンドシートの第3領域及び第4領域の両方が血液改質剤を含むことが好ましくなり、製造コストが上がる場合がある。
【0028】
なお、第1領域及び第2領域の坪量は、トップシートの一定の領域を切り出し、その領域の質量を測定することにより測定することができる。
【0029】
図2及び図3に示されるような、第1領域が、第2領域よりも低い繊維密度を有する実施形態では、第1領域が、第2領域よりも、好ましくは約0.001〜約0.1g/cm3、より好ましくは約0.005〜約0.05g/cm3低い繊維密度を有する。第1領域と、第2領域との密度の差が大きくなりすぎると、トップシートの風合いが劣る、外観が劣る等の傾向がある。第1領域と、第2領域との密度の差が小さくなりすぎると、液透過性の差も小さくなり、セカンドシートの第3領域及び第4領域の両方が血液改質剤を含むことが好ましくなるため、製造コストが上がる傾向がある。
【0030】
上記繊維密度は、トップシートの一定の領域の高さを測定し、その領域を切断し、その領域の質量を測定することにより測定することができる。
なお、上記高さは、後述のキーエンス株式会社製 高精度2次元レーザ変位計 LJ−Gシリーズ(型式:LJ−G030)等のレーザ変位計により測定することができる。
【0031】
本開示の吸収性物品では、セカンドシートの坪量は、約10〜約100g/m2であることが好ましく、そして約15〜約80g/m2であることがより好ましく、そして約20〜約50g/m2であることがさらに好ましい。トップシートからセカンドシートに経血を迅速に移行させるため、セカンドシートから吸収体に経血を迅速に移行させるため、吸収体で拡散した経血を隠蔽するため等の観点からである。
【0032】
図2及び図3に示されるような、第1領域が、第2領域よりも低い繊維密度を有する実施形態では、トップシートは、好ましくは約1〜約30g/m2、より好ましくは約2〜約20g/m2、そしてさらに好ましくは約3〜約10g/m2の坪量の血液改質剤を含むことが好ましい。上記坪量が、約1g/m2を下回ると血液改質効果が不十分となる傾向があり、そして血液改質剤の坪量が多くなると、着用中のぬるぬる感が増加する傾向がある。
【0033】
また、図2及び図3に示されるような、第1領域が、第2領域よりも低い繊維密度を有する実施形態では、セカンドシートの第3領域は、約0.1〜約30g/m2、好ましくは約1〜約20g/m2、そしてより好ましくは約2〜約10g/m2の坪量の血液改質剤を含むことが好ましく、そしてセカンドシートの第4領域は、約0〜約30g/m2、好ましくは約0〜約20g/m2、そしてより好ましくは約0〜約10g/m2の坪量の血液改質剤を含むことが好ましい。セカンドシートから吸収体に経血を迅速に移行させるため、トップシートとセカンドシートとを貼り合わせる粘着剤の強度低下を抑制するため、製造コストの上昇を抑制するため等の観点からである。
【0034】
図2及び図3に示されるような、第1領域が、第2領域よりも低い繊維密度を有するトップシートは、特開2008−138340号明細書、同第2008−264084号明細書、同第2008−144322号明細書、同第2008−266813号明細書等に記載の方法により製造することができる。
【0035】
図4は、本開示の吸収性物品の別の実施形態の断面図である。図4は、図1に示される生理用ナプキン1のA部分のX−X断面に相当する。図4に示される生理用ナプキン1は、液透過性のトップシート2と、吸収体3と、液不透過性のバックシート7と、液透過性のトップシート2及び吸収体3の間のセカンドシート4とを有する。図4において、トップシート2が、第1領域9と、第1領域よりも液透過性が低い第2領域10とを有し、そしてセカンドシート4が、吸収性物品の厚さ方向に関して、第1領域と隣接する第3領域11と、第2領域と隣接する第4領域12とを有する。図4に示される実施形態では、第1領域9が、トップシートの平均坪量よりも小さい坪量を有する低坪量領域であり、そして第2領域10が、トップシートの平均坪量よりも大きい坪量を有する高坪量領域であり、より具体的には、第1領域9の厚さが、第2領域10の厚さよりも薄い。
【0036】
図4に示される実施形態では、トップシート2の第1領域9及び第2領域10と、セカンドシート4の第3領域11及び第4領域12とが、血液改質剤8を含む。
図4に示されるような、第1領域の厚さが、第2領域の厚さよりも薄い実施形態では、吸収性物品に到達した経血は、厚さが薄い第1領域から、主に吸収性物品内部に侵入する。従って、トップシートの第1領域と隣接する、セカンドシートの第3領域が、血液改質剤を含むことにより、吸収した経血をさらに改質することができる。
【0037】
なお、第1領域の厚さが、第2領域の厚さよりも薄い実施形態では、第1領域及び第2領域に関する「厚さ」は、それぞれ、第1領域における最薄の厚さ(図4におけるt1)、及び第2領域における最厚の厚さ(図4におけるt2)を意味する。
上記厚さは、レーザ変位計を用いて、非接触で測定することができる。上記レーザ変位計としては、例えば、キーエンス株式会社製 高精度2次元レーザ変位計 LJ−Gシリーズ(型式:LJ−G030)が挙げられる。具体的には、試料を水平の測定台の上に置き、測定台からの変位を計測することにより、第1領域及び第2領域の厚さを測定することができる。
【0038】
図5は、本開示の吸収性物品の別の実施形態の断面図である。図5に示される実施形態は、セカンドシートの血液改質剤の分布以外は、図4に示される実施形態と同一である。
図5に示される吸収性物品では、トップシート2の第1領域9及び第2領域10と、セカンドシート4の第3領域11とが、血液改質剤8を含み、そして第4領域12は、血液改質剤を含まない。図5に示される実施態様では、セカンドシートに塗工される血液改質剤の量を少なくしつつ、経血を効率よく改質することができる。
【0039】
図4及び図5に示されるような、第1領域の厚さが、第2領域の厚さよりも薄い実施形態では、第1領域は、好ましくは約0.01〜約5.0mm、そしてより好ましくは約0.1〜約2.0mm、第2領域よりも薄いことが好ましい。トップシートとしての性能を維持できる範囲で、第1領域と第2領域の厚さの差を大きくするほど、第1領域に経血を迅速に移動させることができるからである。
【0040】
図4及び図5に示されるような、第1領域の厚さが、第2領域の厚さよりも薄い実施形態では、トップシートは、好ましくは約1〜約30g/m2、より好ましくは約2〜約20g/m2、そしてさらに好ましくは約3〜約10g/m2の坪量の血液改質剤を含むことが好ましい。上記坪量が、約1g/m2を下回ると血液改質効果が不十分となる傾向があり、そして血液改質剤の坪量が多くなると、着用中のぬるぬる感が増加する傾向がある。
また、図4及び図5に示されるような、第1領域の厚さが、第2領域の厚さよりも薄い実施形態では、セカンドシートの第3領域及び第4領域における血液改質剤の坪量は、図2及び図3に示す実施形態同様の範囲が、同様の理由により好ましい。
【0041】
本開示の吸収性物品のさらに別の実施形態では、トップシートが、第1領域が、吸収性物品の長手方向に延びる複数の溝部であり、第2領域が、吸収性物品の長手方向に延びる複数の畝部であり、上記畝部及び溝部が、互いに平行であり且つ交互に配置されているものを挙げることができる。
【0042】
本開示の吸収性物品のさらに別の実施形態では、第1領域が開孔部を有することができる。トップシートの第1領域が開孔部を有する場合には、吸収性物品に到達した経血は、当該開孔部及びセカンドシートの第3領域を経由して、吸収体に移行する割合が多い。従って、セカンドシートの第3領域が血液改質剤を含むことにより、吸収した経血をより改質することができると考えられる。
【0043】
なお、第1領域が開孔部を有する実施形態では、開孔部の形状は、直径約0.1〜約5.0mmの略円形であることが好ましく、そしてその開孔率は、約1〜約30%であることが好ましい。吸収時の経血の透過性と、吸収した経血の逆戻りしにくさとの観点からである。
なお、上記開孔率は、複数の開孔部を含む、トップシートの一定の領域の画像を撮影し、画像を拡大して開孔部の面積を算出し、上記一定の領域の面積で除することにより測定することができる。
【0044】
上記トップシートは、特開2008−2034号明細書、同第2008−23311号明細書、同第2008−25078号明細書、同第2008−25079号明細書、同第2008−25080〜同第2008−25085号明細書、同第2008−307179、同第2009−30218号明細書、同第2011−38211号明細書、同第2011−74515号明細書、同第2011−80178号明細書等に記載の方法に従って製造することができる。
【0045】
[血液改質剤]
上記血液改質剤は、約0〜約0.60のIOBと、約45℃以下の融点と、25℃における、約0.05g以下の水溶解度を有する。
IOB(Inorganic Organic Balance)は、親水性及び親油性のバランスを示す指標であり、本明細書では、小田らによる次式:
IOB=無機性値/有機性値
により算出される値を意味する。
【0046】
上記無機性値と、有機性値とは、藤田穆「有機化合物の予測と有機概念図」化学の領域Vol.11,No.10(1957)p.719−725)に記載される有機概念図に基づく。
藤田氏による、主要な基の有機性値及び無機性値を、以下の表1にまとめる。
【0047】
【表1】

【0048】
例えば、炭素数14のテトラデカン酸と、炭素数12のドデシルアルコールとのエステルの場合には、有機性値が520(CH2,20×26個)、無機性値が60(−COOR,60×1個)となるため、IOB=0.12となる。
【0049】
上記血液改質剤において、IOBは、約0〜約0.60であり、約0〜約0.50であることが好ましく、約0〜約0.40であることがより好ましく、そして約0〜約0.30であることがさらに好ましい。IOBが低いほど、有機性が高く、血球との親和性が高くなると考えられるからである。
【0050】
本明細書において、「融点」は、示差走査熱量分析計において、昇温速度10℃/分で測定した場合の、固形状から液状に変化する際の吸熱ピークのピークトップ温度を意味する。上記融点は、例えば、島津製作所社製のDSC−60型DSC測定装置を用い、昇温速度10℃/分で測定することができる。
【0051】
上記血液改質剤は、約45℃以下の融点を有すれば、室温で液体であっても、又は固体であってもよい、すなわち、融点が約25℃以上でも、又は約25℃未満でもよく、そして例えば、約−5℃、約−20℃等の融点を有することができる。上記血液改質剤の融点が約45℃以下である根拠は、後述する。
【0052】
上記血液改質剤は、その融点に下限は存在しないが、その蒸気圧が低いことが好ましい。上記血液改質剤の蒸気圧は、1気圧及び25℃で約0.01Pa以下であることが好ましく、約0.001Pa以下であることがより好ましく、そして約0.0001Pa以下であることがさらに好ましい。本開示の吸収性物品が、人体に接して用いられることを考慮すると、上記蒸気圧は、1気圧及び40℃で約0.01Pa以下であることが好ましく、約0.001Pa以下であることがより好ましく、そして約0.0001Pa以下であることがさらに好ましい。蒸気圧が高いと、保存中に気化し、血液改質剤の量の減少、着用時の臭気等の問題が発生する場合があるからである。
【0053】
また、血液改質剤の融点を、気候、着用時間の長さ等に応じて、使い分けることができる。例えば、平均気温が10℃以下の地域では、約10℃以下の融点を有する血液改質剤を採用することにより、経血が排泄された後、周囲温度によって冷却された場合であっても、血液改質剤が、安定して血液を改質することができると考えられる。
また、吸収性物品が長時間にわたって使用される場合には、血液改質剤の融点は、45℃以下の範囲で高い方が好ましい。汗、着用時の摩擦等の影響を受けにくく、長時間着用した場合であっても、血液改質剤が移動しにくいからである。
【0054】
上記水溶解度は、25℃において、100gの脱イオン水に、0.05gの試料を添加して24時間静置し、24時間後に、必要に応じて軽く攪拌し、試料が溶解したか否かにより、0.05g以下の水溶解度を有するか否か判断することができる。
なお、本明細書では、水溶解度に関して、「溶解」には、試料が脱イオン水に完全に溶解し、均一混合物を形成した場合と、試料が完全にエマルション化した場合とが含まれる。なお、「完全」とは、脱イオン水に、試料の塊が存在しないことを意味する。
【0055】
当技術分野では、血液の表面張力等を変化させ、血液を迅速に吸収することを目的として、トップシートの表面を、界面活性剤でコーティングすることが行われている。しかし、界面活性剤は、一般に水溶解度が高いため、界面活性剤がコーティングされたトップシートは、血液中の親水性成分(血漿等)となじみがよく、むしろ血液をトップシートに残存させるようにはたらく傾向がある。上記血液改質剤は、水溶解度が低いため、従来公知の界面活性剤と異なり、血液をトップシートに残存させず、迅速に吸収体に移行させることができると考えられる。
【0056】
本明細書において、25℃における、100gの水に対する溶解度を、単に、「水溶解度」と称する場合がある。
上記血液改質剤は、約0gの水溶解度を有することができる。従って、上記血液改質剤において、上記水溶解度の下限は、約0gである。
【0057】
上記血液改質剤の例として、以下の構造を有する化合物が挙げられる。
(i)炭化水素、
(ii)炭化水素のC−C単結合間に、少なくとも1つのカルボニル結合(−CO−)及び/若しくは少なくとも1つのエーテル結合(−O−)が挿入された化合物、又は
(iii)炭化水素のC−C単結合間に、少なくとも1つのカルボニル結合(−CO−)及び/若しくは少なくとも1つのエーテル結合(−O−)が挿入され、且つ炭化水素上の少なくとも1つの水素原子が、カルボキシル基(−COOH)若しくはヒドロキシル基(−OH)で置換された化合物。
【0058】
本明細書において、「炭化水素」は、炭素と水素とから成る化合物を意味し、鎖状炭化水素、例えば、パラフィン系炭化水素(二重結合及び三重結合を含まない、アルカンとも称される)、オレフィン系炭化水素(二重結合を1つ含む、アルケンとも称される)、アセチレン系炭化水素(三重結合を1つ含む、アルキンとも称される)、及び二重結合及び三重結合から成る群から選択される結合を2つ以上含む炭化水素、並びに環状炭化水素、例えば、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素が挙げられる。
【0059】
上記炭化水素としては、鎖状炭化水素及び脂環式炭化水素であることが好ましく、鎖状炭化水素であることがより好ましく、パラフィン系炭化水素、オレフィン系炭化水素、及び二重結合を2つ以上含む炭化水素(三重結合を含まない)であることがさらに好ましく、そしてパラフィン系炭化水素であることが最も好ましい。
上記鎖状炭化水素には、直鎖状炭化水素及び分岐鎖状炭化水素が含まれる。
【0060】
上記(ii)及び(iii)の化合物において、エーテル結合(−O−)が2つ以上挿入されている場合には、エーテル結合(−O−)同士は隣接していない。従って、上記(ii)及び(iii)の化合物には、エーテル結合が連続する化合物(いわゆる、過酸化物)は含まれない。
【0061】
また、上記(iii)の化合物では、炭化水素上の少なくとも1つの水素原子が、カルボキシル基(−COOH)で置換された化合物よりも、炭化水素上の少なくとも1つの水素原子が、ヒドロキシル基(−OH)で置換された化合物の方が好ましい。表1に示すように、カルボキシル基は、経血中の金属等と結合し、無機性値が150から、400以上へと大幅に上昇するため、カルボキシル基を有する血液改質剤は、使用時にIOBの値が約0.6を上回り、血球との親和性が低下する可能性があるからである。
【0062】
上記血液改質剤は、好ましくは、以下の構造を有する化合物であることができる。
(i’)炭化水素、
(ii’)炭化水素のC−C単結合間に、少なくとも1つのカルボニル結合(−CO−)、少なくとも1つのエステル結合(−COO−)、少なくとも1つのカーボネート結合(−OCOO−)及び/若しくは少なくとも1つのエーテル結合(−O−)が挿入された化合物、又は
(iii’)炭化水素のC−C単結合間に、少なくとも1つのカルボニル結合(−CO−)、少なくとも1つのエステル結合(−COO−)、少なくとも1つのカーボネート結合(−OCOO−)及び/若しくは少なくとも1つのエーテル結合(−O−)が挿入され、且つ炭化水素上の少なくとも1つの水素原子が、カルボキシル基(−COOH)若しくはヒドロキシル基(−OH)で置換された化合物。
【0063】
上記(ii’)及び(iii’)の化合物において、2以上の結合が挿入されている場合、すなわち、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、カーボネート結合(−OCOO−)及びエーテル結合(−O−)から選択される2以上の結合が挿入されている場合には、各結合は隣接しておらず、各結合の間には、少なくとも、炭素原子が1つ介在する。
【0064】
上記血液改質剤は、さらに好ましくは、炭化水素中に、炭素原子10個当たり、カルボニル結合(−CO−)を約1.8個以下、エステル結合(−COO−)を2個以下、カーボネート結合(−OCOO−)を約1.5個以下、エーテル結合(−O−)を約6個以下、カルボキシル基(−COOH)を約0.8個以下、そして/又はヒドロキシル基(−OH)を約1.2個以下有する化合物であることができる。
【0065】
上記血液改質剤は、さらに好ましくは、
(A)2〜4個のヒドロキシル基を有する化合物と、1個のカルボキシル基を有する化合物とのエステル、
(B)2〜4個のヒドロキシル基を有する化合物と、1個のヒドロキシル基を有する化合物とのエーテル、
(C)2〜4個のカルボキシル基を有する化合物と、1個のヒドロキシル基を有する化合物とのエステル、
(D)炭化水素に、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、カーボネート結合(−OCOO−)及びエーテル結合(−O−)から成る群から選択されるいずれか1つが挿入された化合物、
(E)ポリC2〜6アルキレングリコール、又はそのエステル若しくはエーテル、あるいは
(F)鎖状炭化水素、
であることができる。
以下、(A)〜(F)について詳細に説明する。
【0066】
[(A)2〜4個のヒドロキシル基を有する化合物と、1個のカルボキシル基を有する化合物とのエステル]
上記2〜4個のヒドロキシル基を有する化合物と、1個のカルボキシル基を有する化合物とのエステル(以下、「化合物(A)」と称する場合がある)には、4個、3個、又は2個のヒドロキシル基を有する化合物と、1個のカルボキシル基を有する化合物とのエステルが含まれ、上述のIOB、融点及び水溶解度を有する範囲にある限り、全てのヒドロキシル基がエステル化されていなくともよい。
【0067】
上記2〜4個のヒドロキシル基を有する化合物としては、例えば、鎖状炭化水素テトラオール、例えば、アルカンテトラオール、例えば、ペンタエリトリトール、鎖状炭化水素トリオール、例えば、アルカントリオール、例えば、グリセリン、及び鎖状炭化水素ジオール、例えば、アルカンジオール、例えば、グリコールが挙げられる。上記1個のカルボキシル基を有する化合物としては、例えば、炭化水素上の1つの水素原子が、1つのカルボキシル基(−COOH)で置換された化合物、例えば、脂肪酸が挙げられる。
化合物(A)としては、例えば、(A1)鎖状炭化水素テトラオールと脂肪酸とのエステル、(A2)鎖状炭化水素トリオールと脂肪酸とのエステル、及び(A3)鎖状炭化水素ジオールと脂肪酸とのエステルが挙げられる。
【0068】
[(A1)鎖状炭化水素テトラオールと脂肪酸とのエステル]
上記鎖状炭化水素テトラオールと脂肪酸とのエステルとしては、例えば、次の式(1):
【化1】

のペンタエリトリトールと脂肪酸とのテトラエステル、次の式(2):
【化2】

のペンタエリトリトールと脂肪酸とのトリエステル、次の式(3):
【化3】

のペンタエリトリトールと脂肪酸とのジエステル、次の式(4):
【化4】

のペンタエリトリトールと脂肪酸とのモノエステルが挙げられる。
(式中、R1〜R4は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
【0069】
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステルを構成する脂肪酸(R1COOH、R2COOH,R3COOH,及びR4COOH)としては、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステルが、上記IOB、融点及び水溶解度の要件を満たすものであれば、特に制限されないが、例えば、飽和脂肪酸、例えば、C2〜C30の飽和脂肪酸、例えば、酢酸(C2)(C2は、炭素数を示し、R1C、R2C,R3C又はR4Cの炭素数に相当する、以下同じ)、プロパン酸(C3)、ブタン酸(C4)及びその異性体、例えば、2−メチルプロパン酸(C4)、ペンタン酸(C5)及びその異性体、例えば、2−メチルブタン酸(C5)、2,2−ジメチルプロパン酸(C5)、ヘキサン酸(C6)、ヘプタン酸(C7)、オクタン酸(C8)及びその異性体、例えば、2−エチルヘキサン酸(C8)、ノナン酸(C9)、デカン酸(C10)、ドデカン酸(C12)、テトラデカン酸(C14)、ヘキサデカン酸(C16)、ヘプタデカン酸(C17)、オクタデカン酸(C18)、エイコサン酸(C20)、ドコサン酸(C22)、テトラコサン酸(C24)、ヘキサコサン酸(C26)、オクタコサン酸(C28)、トリアコンタン酸(C30)等、並びにこれらの異性体(上述のものを除く)が挙げられる。
【0070】
上記脂肪酸はまた、不飽和脂肪酸であることができる。上記不飽和脂肪酸としては、例えば、C3〜C20の不飽和脂肪酸、例えば、モノ不飽和脂肪酸、例えば、クロトン酸(C4)、ミリストレイン酸(C14)、パルミトレイン酸(C16)、オレイン酸(C18)、エライジン酸(C18)、バクセン酸(C18)、ガドレイン酸(C20)、エイコセン酸(C20)等、ジ不飽和脂肪酸、例えば、リノール酸(C18)、エイコサジエン酸(C20)等、トリ不飽和脂肪酸、例えば、リノレン酸、例えば、α-リノレン酸(C18)及びγ-リノレン酸(C18)、ピノレン酸(C18)、エレオステアリン酸、例えば、α-エレオステアリン酸(C18)及びβ-エレオステアリン酸(C18)、ミード酸(C20)、ジホモ-γ-リノレン酸(C20)、エイコサトリエン酸(C20)等、テトラ不飽和脂肪酸、例えば、ステアリドン酸(C20)、アラキドン酸(C20)、エイコサテトラエン酸(C20)等、ペンタ不飽和脂肪酸、例えば、ボセオペンタエン酸(C18)、エイコサペンタエン酸(C20)等、並びにこれらの部分水素付加物が挙げられる。
【0071】
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステルとしては、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸に由来する、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステル、すなわち、ペンタエリトリトールと飽和脂肪酸とのエステルであることが好ましい。
また、上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステルとしては、IOBを小さくし、より疎水性とするために、ジエステル、トリエステル又はテトラエステルであることが好ましく、トリエステル又はテトラエステルであることがより好ましく、そしてテトラエステルであることが最も好ましい。
【0072】
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのテトラエステルでは、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのテトラエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、上記式(1)において、R1C、R2C、R3C及びR4C部分の炭素数の合計が15の場合にIOBが0.60となる。従って、上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのテトラエステルでは、上記炭素数の合計が約15以上である場合に、IOBが約0〜約0.6の要件を満たす。
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのテトラエステルでは、例えば、ペンタエリトリトールと、ヘキサン酸(C6)、ヘプタン酸(C7)、オクタン酸(C8)、例えば、2−エチルヘキサン酸(C8)、ノナン酸(C9)、デカン酸(C10)及び/又はドデカン酸(C12)とのテトラエステルが挙げられる。
【0073】
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのトリエステルでは、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのトリエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、上記式(2)において、R1C、R2C及びR3C部分の炭素数の合計が19の場合にIOBが0.58となる。従って、上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのトリエステルでは、脂肪酸の炭素数の合計が約19以上である場合に、IOBが約0〜約0.6の要件を満たす。
【0074】
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのジエステルでは、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのジエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、上記式(3)において、R1C及びR2C部分の炭素数の合計が22の場合にIOBが0.59となる。従って、上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのジエステルでは、脂肪酸の炭素数の合計が約22以上である場合に、IOBが約0〜約0.6の要件を満たす。
【0075】
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのモノエステルでは、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのモノエステルを構成する脂肪酸の炭素数、すなわち、上記式(4)において、R1C部分の炭素数が25の場合にIOBが0.60となる。従って、上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのモノエステルでは、脂肪酸の炭素数が約25以上である場合に、IOBが約0〜約0.6の要件を満たす。
なお、上記計算に当たっては、二重結合、三重結合、iso分岐、及びtert分岐の影響は、考慮していない。
【0076】
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステルの市販品としては、ユニスター H−408BRS、H−2408BRS−22(混合品)等(以上、日油株式会社製)が挙げられる。
【0077】
[(A2)鎖状炭化水素トリオールと脂肪酸とのエステル]
上記鎖状炭化水素トリオールと脂肪酸とのエステルとしては、例えば、次の式(5):
【化5】

のグリセリンと脂肪酸とのトリエステル、次の式(6):
【化6】

のグリセリンと脂肪酸とのジエステル、及び次の式(7):
【化7】

(式中、R5〜R7は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
のグリセリンと脂肪酸とのモノエステルが挙げられる。
【0078】
上記グリセリンと脂肪酸とのエステルを構成する脂肪酸(R5COOH、R6COOH及びR7COOH)としては、グリセリンと脂肪酸とのエステルが、上記IOB、融点及び水溶解度の要件を満たすものであれば、特に制限されず、例えば、「(A1)鎖状炭化水素テトラオールと脂肪酸とのエステル」において列挙される脂肪酸、すなわち、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸が挙げられ、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸に由来する、グリセリンと脂肪酸とのエステル、すなわち、グリセリンと飽和脂肪酸とのエステルであることが好ましい。
また、上記グリセリンと脂肪酸とのエステルとしては、IOBを小さくし、より疎水性とするために、ジエステル又はトリエステルであることが好ましく、そしてトリエステルであることがより好ましい。
【0079】
上記グリセリンと脂肪酸とのトリエステルは、トリグリセリドとも称され、例えば、グリセリンとオクタン酸(C8)とのトリエステル、グリセリンとデカン酸(C10)とのトリエステル、グリセリンとドデカン酸(C12)とのトリエステル、及びグリセリンと、2種又は3種の脂肪酸とのトリエステル、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0080】
上記グリセリンと、2種以上の脂肪酸とのトリエステルとしては、例えば、グリセリンと、オクタン酸(C8)及びデカン酸(C10)とのトリエステル、グリセリンと、オクタン酸(C8)、デカン酸(C10)及びドデカン酸(C12)とのトリエステル、グリセリンと、オクタン酸(C8)、デカン酸(C10)、ドデカン酸(C12)、テトラデカン酸(C14)、ヘキサデカン酸(C16)及びオクタデカン酸(C18)とのトリエステル等が挙げられる。
【0081】
上記グリセリンと脂肪酸とのトリエステルとしては、融点を約45℃以下とするために、グリセリンと脂肪酸とのトリエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、式(5)において、R5C、R6C及びR7C部分の炭素数の合計が、約40以下であることが好ましい。
【0082】
また、上記グリセリンと脂肪酸とのトリエステルでは、グリセリンと脂肪酸とのトリエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、式(5)において、R5C、R6C及びR7C部分の炭素数の合計が12の場合にIOBが0.60となる。従って、上記グリセリンと脂肪酸とのトリエステルでは、脂肪酸の炭素数の合計が約12以上である場合に、IOBが約0〜約0.6の要件を満たす。
上記グリセリンと脂肪酸とのトリエステルは、いわゆる、脂肪であり、人体を構成しうる成分であるため、安全性の観点から好ましい。
【0083】
上記グリセリンと脂肪酸とのトリエステルの市販品としては、トリヤシ油脂肪酸グリセリド、NA36、パナセート800、パナセート800B及びパナセート810S、並びにトリC2L油脂肪酸グリセリド及びトリCL油脂肪酸グリセリド(以上、日油株式会社製)等が挙げられる。
【0084】
上記グリセリンと脂肪酸とのジエステルは、ジグリセリドとも称され、例えば、グリセリンとデカン酸(C10)とのジエステル、グリセリンとドデカン酸(C12)とのジエステル、グリセリンとヘキサデカン酸(C16)とのジエステル、及びグリセリンと、2種の脂肪酸とのジエステル、並びにこれらの混合物が挙げられる。
上記グリセリンと脂肪酸とのジエステルでは、グリセリンと脂肪酸とのジエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、式(6)において、R5C及びR6C部分の炭素数の合計が16の場合にIOBが0.58となる。従って、上記グリセリンと脂肪酸とのジエステルでは、脂肪酸の炭素数の合計が約16以上である場合に、IOBが約0〜約0.6の要件を満たす。
【0085】
上記グリセリンと脂肪酸とのモノエステルは、モノグリセリドとも称され、例えば、グリセリンのイコサン酸(C20)モノエステル、グリセリンのドコサン酸(C22)モノエステル等が挙げられる。
上記グリセリンと脂肪酸とのモノエステルでは、グリセリンと脂肪酸とのモノエステルを構成する脂肪酸の炭素数、すなわち、式(7)において、R5C部分の炭素数が19の場合にIOBが0.59となる。従って、上記グリセリンと脂肪酸とのモノエステルでは、脂肪酸の炭素数が約19以上である場合に、IOBが約0〜約0.6の要件を満たす。
【0086】
[(A3)鎖状炭化水素ジオールと脂肪酸とのエステル]
上記鎖状炭化水素ジオールと脂肪酸とのエステルとしては、例えば、C2〜C6の鎖状炭化水素ジオール、例えば、C2〜C6のグリコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール又はヘキシレングリコールと、脂肪酸とのモノエステル又はジエステルが挙げられる。
【0087】
具体的には、上記鎖状炭化水素ジオールと脂肪酸とのエステルとしては、例えば、次の式(8):
8COOCk2kOCOR9 (8)
(式中、kは、2〜6の整数であり、そしてR8及びR9は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
のC2〜C6グリコールと脂肪酸とのジエステル、及び次の式(9):
8COOCk2kOH (9)
(式中、kは、2〜6の整数であり、そしてR8は、鎖状炭化水素である)
のC2〜C6グリコールと脂肪酸とのモノエステルが挙げられる。
【0088】
上記C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルにおいて、エステル化すべき脂肪酸(式(8)及び式(9)において、R8COOH及びR9COOHに相当する)としては、C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルが、上記IOB、融点及び水溶解度の要件を満たすものであれば、特に制限されず、例えば、「(A1)鎖状炭化水素テトラオールと脂肪酸とのエステル」において列挙されている脂肪酸、すなわち、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸が挙げられ、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸が好ましい。
【0089】
式(8)に示されるブチレングリコール(k=4)と脂肪酸とのジエステルでは、R8C及びR9C部分の炭素数の合計が6の場合に、IOBが、0.6となる。従って、式(8)に示されるブチレングリコール(k=4)と脂肪酸とのジエステルでは、上記炭素数の合計が約6以上の場合に、IOBが約0〜約0.6の要件を満たす。また、式(9)に示されるエチレングリコール(k=2)と脂肪酸とのモノエステルでは、R8C部分の炭素数が12の場合に、IOBが0.57となる。従って、式(9)に示されるエチレングリコール(k=2)と脂肪酸とのモノエステルでは、脂肪酸の炭素数が約12以上である場合に、IOBが約0〜約0.6の要件を満たす。
【0090】
上記C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルとしては、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸に由来する、C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステル、すわなち、C2〜C6グリコールと飽和脂肪酸とのエステルであることが好ましい。
【0091】
また、上記C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルとしては、IOBを小さくし、より疎水性とするために、炭素数の大きいグリコールに由来する、グリコールと脂肪酸とのエステル、例えば、ブチレングリコール、ペンチレングリコール又はヘキシレングリコールに由来するグリコールと脂肪酸とのエステルであることが好ましい。
さらに、上記C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルとしては、IOBを小さくし、より疎水性とするために、ジエステルであることが好ましい。
上記C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルの市販品としては、例えば、コムポールBL、コムポールBS(以上、日油株式会社製)等が挙げられる。
【0092】
[(B)2〜4個のヒドロキシル基を有する化合物と、1個のヒドロキシル基を有する化合物とのエーテル]
上記2〜4個のヒドロキシル基を有する化合物と、1個のヒドロキシル基を有する化合物とのエーテル(以下、「化合物(B)」と称する場合がある)には、4個、3個、又は2個のヒドロキシル基を有する化合物と、1個のヒドロキシル基を有する化合物とのエーテルが含まれ、上述のIOB、融点及び水溶解度を有する範囲にある限り、全てのヒドロキシル基がエーテル化されていなくともよい。
【0093】
上記2〜4個のヒドロキシル基を有する化合物としては、「化合物(A)」において列挙されるもの、例えば、ペンタエリトリトール、グリセリン、及びグリコールが挙げられる。
上記1個のヒドロキシル基を有する化合物としては、例えば、炭化水素の1個の水素原子が、1個のヒドロキシル基(−OH)で置換された化合物、例えば、脂肪族1価アルコール、例えば、飽和脂肪族1価アルコール及び不飽和脂肪族1価アルコールが挙げられる。
【0094】
上記飽和脂肪族1価アルコールとしては、例えば、C1〜C20の飽和脂肪族1価アルコール、例えば、メチルアルコール(C1)(C1は、炭素数を示す、以下同じ)、エチルアルコール(C2)、プロピルアルコール(C3)及びその異性体、例えば、イソプロピルアルコール(C3)、ブチルアルコール(C4)及びその異性体、例えば、sec−ブチルアルコール(C4)及びtert−ブチルアルコール(C4)、ペンチルアルコール(C5)、ヘキシルアルコール(C6)、ヘプチルアルコール(C7)、オクチルアルコール(C8)及びその異性体、例えば、2−エチルヘキシルアルコール(C8)、ノニルアルコール(C9)、デシルアルコール(C10)、ドデシルアルコール(C12)、テトラデシルアルコール(C14)、ヘキサデシルアルコール(C16)、へプラデシルアルコール(C17)、オクタデシルアルコール(C18)、及びエイコシルアルコール(C20)、並びにこれらの列挙されていない異性体が挙げられる。
【0095】
上記不飽和脂肪族1価アルコールとしては、上記飽和脂肪族1価アルコールのC−C単結合の1つを、C=C二重結合で置換したもの、例えば、オレイルアルコールが挙げられ、例えば、新日本理化株式会社から、リカコールシリーズ及びアンジェコオールシリーズの名称で市販されている。
【0096】
化合物(B)としては、例えば、(B1)鎖状炭化水素テトラオールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、例えば、モノエーテル、ジエーテル、トリエーテル及びテトラエーテル、好ましくはジエーテル、トリエーテル及びテトラエーテル、より好ましくはトリエーテル及びテトラエーテル、そしてさらに好ましくはテトラエーテル、(B2)鎖状炭化水素トリオールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、例えば、モノエーテル、ジエーテル及びトリエーテル、好ましくはジエーテル及びトリエーテル、そしてより好ましくはトリエーテル、並びに(B3)鎖状炭化水素ジオールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、例えば、モノエーテル及びジエーテル、そして好ましくはジエーテルが挙げられる。
【0097】
上記鎖状炭化水素テトラオールと脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、例えば、次の式(10)〜(13):
【化8】

(式中、R10〜R13は、それぞれ、鎖状炭化水素である。)
の、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのテトラエーテル、トリエーテル、ジエーテル及びモノエーテルが挙げられる。
【0098】
上記鎖状炭化水素トリオールと脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、例えば、次の式(14)〜(16):
【化9】

(式中、R14〜R16は、それぞれ、鎖状炭化水素である。)
の、グリセリンと脂肪族1価アルコールとのトリエーテル、ジエーテル及びモノエーテルが挙げられる。
【0099】
上記鎖状炭化水素ジオールと脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、次の式(17):
17OCn2nOR18 (17)
(式中、nは、2〜6の整数であり、そしてR17及びR18は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
のC2〜C6グリコールと脂肪族1価アルコールとのジエーテル、及び次の式(18):
17OCn2nOH (18)
(式中、nは、2〜6の整数であり、そしてR17は、鎖状炭化水素である)
のC2〜C6グリコールと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルが挙げられる。
【0100】
上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのテトラエーテルでは、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのテトラエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、上記式(10)において、R10、R11、R12及びR13部分の炭素数の合計が4の場合にIOBが0.44となる。従って、上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのテトラエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数の合計が約4以上である場合に、IOBが約0〜約0.6の要件を満たす。
【0101】
上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのトリエーテルでは、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのトリエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、上記式(11)において、R10、R11及びR12部分の炭素数の合計が9の場合にIOBが0.57となる。従って、上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのトリエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数の合計が約9以上である場合に、IOBが約0〜約0.6の要件を満たす。
【0102】
上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのジエーテルでは、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのジエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、上記式(12)において、R10及びR11部分の炭素数の合計が15の場合にIOBが0.60となる。従って、上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのジエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数の合計が約15以上である場合に、IOBが約0〜約0.6の要件を満たす。
【0103】
上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルでは、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数、すなわち、上記式(13)において、R10部分の炭素数が22の場合にIOBが0.59となる。従って、上記ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数が約22以上である場合に、IOBが約0〜約0.6の要件を満たす。
【0104】
また、上記グリセリンと脂肪族1価アルコールとのトリエーテルでは、グリセリンと脂肪族1価アルコールとのトリエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、式(14)において、R14、R15及びR16部分の炭素数の合計が3の場合にIOBが0.50となる。従って、上記グリセリンと脂肪族1価アルコールとのトリエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数の合計が約3以上である場合に、IOBが約0〜約0.6の要件を満たす。
【0105】
上記グリセリンと脂肪族1価アルコールとのジエーテルでは、グリセリンと脂肪族1価アルコールとのジエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、式(15)において、R14及びR15部分の炭素数の合計が9の場合にIOBが0.58となる。従って、上記グリセリンと脂肪族1価アルコールとのジエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数の合計が約9以上である場合に、IOBが約0〜約0.6の要件を満たす。
【0106】
上記グリセリンと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルでは、グリセリンと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数、すなわち、式(16)において、R14部分の炭素数が16の場合にIOBが0.58となる。従って、上記グリセリンと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数が約16以上である場合に、IOBが約0〜約0.6の要件を満たす。
【0107】
式(17)に示されるブチレングリコール(n=4)と脂肪族1価アルコールとのジエーテルでは、R17及びR18部分の炭素数の合計が2の場合に、IOBが、0.33となる。従って、式(17)に示されるブチレングリコール(n=4)と脂肪族1価アルコールとのジエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数の合計が2以上の場合に、IOBが約0〜約0.6の要件を満たす。また、式(18)に示されるエチレングリコール(n=2)と脂肪族1価アルコールとのモノエーテルでは、R17部分の炭素数が8の場合に、IOBが0.60となる。従って、式(18)に示されるエチレングリコール(n=2)と脂肪族1価アルコールとのモノエーテルでは、脂肪族1価アルコールの炭素数が約8以上である場合に、IOBが約0〜約0.6の要件を満たす。
【0108】
化合物(B)としては、2〜4個のヒドロキシル基を有する化合物と、脂肪族1価アルコール等の1個のヒドロキシル基を有する化合物とを、酸触媒の存在下で、脱水縮合することにより生成することができる。
【0109】
[(C)2〜4個のカルボキシル基を有する化合物と、1個のヒドロキシル基を有する化合物とのエステル]
上記2〜4個のカルボキシル基を有する化合物と、1個のヒドロキシル基を有する化合物とのエステル(以下、「化合物(C)」と称する場合がある)には、4個、3個又は2個のカルボキシル基を有する化合物と、1個のヒドロキシル基を有する化合物とのエステルが含まれ、上述のIOB、融点及び水溶解度を有する範囲にある限り、全てのカルボキシル基がエステル化されていなくともよい。
【0110】
上記2〜4個のカルボキシル基を有する化合物としては、例えば、2〜4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素、例えば、鎖状炭化水素ジカルボン酸、例えば、アルカンジカルボン酸、例えば、エタン二酸、プロパン二酸、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸及びデカン二酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、例えば、アルカントリカルボン酸、例えば、プロパン三酸、ブタン三酸、ペンタン三酸、ヘキサン三酸、ヘプタン三酸、オクタン三酸、ノナン三酸及びデカン三酸、並びに鎖状炭化水素テトラカルボン酸、例えば、アルカンテトラカルボン酸、例えば、ブタン四酸、ペンタン四酸、ヘキサン四酸、ヘプタン四酸、オクタン四酸、ノナン四酸及びデカン四酸が挙げられる。
【0111】
また、上記2〜4個のカルボキシル基を有する化合物には、2〜4個のカルボキシル基を有するヒドロキシ酸、例えば、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸等、2〜4個のカルボキシル基を有するアルコキシ酸、例えば、O−アセチルクエン酸、及び2〜4個のカルボキシル基を有するオキソ酸が含まれる。
上記1個のヒドロキシル基を有する化合物としては、「化合物(B)」の項で列挙されるもの、例えば、脂肪族1価アルコールが挙げられる。
【0112】
化合物(C)としては、(C1)4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素テトラカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、脂肪族1価アルコールとのエステル、例えば、モノエステル、ジエステル、トリエステル及びテトラエステル、好ましくはジエステル、トリエステル及びテトラエステル、より好ましくはトリエステル及びテトラエステル、そしてさらに好ましくはテトラエステル、(C2)3個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素トリカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、脂肪族1価アルコールとのエステル、例えば、モノエステル、ジエステル及びトリエステル、好ましくはジエステル及びトリエステル、そしてより好ましくはトリエステル、並びに(C3)2個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ジカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、脂肪族1価アルコールとのエステル、例えば、モノエステル及びジエステル、好ましくはジエステルが挙げられる。
化合物(C)の例としては、アジピン酸ジオクチル、リンゴ酸ジイソステアリル、クエン酸トリブチル、O−アセチルクエン酸トリブチル等が挙げられ、そして市販されている。
【0113】
[(D)炭化水素に、エーテル結合(−O−)、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、及びカーボネート結合(−OCOO−)から成る群から選択されるいずれか1つが挿入された化合物]
上記炭化水素に、エーテル結合(−O−)、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、及びカーボネート結合(−OCOO−)から成る群から選択されるいずれか1つが挿入された化合物(以下、「化合物(D)」と称する場合がある)としては、(D1)脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、(D2)ジアルキルケトン、(D3)脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステル、及び(D4)ジアルキルカーボネートが挙げられる。
【0114】
[(D1)脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテル]
上記脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、次の式(19):
19OR20 (19)
(式中、R19及びR20は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
を有する化合物が挙げられる。
【0115】
上記エーテルを構成する脂肪族1価アルコール(式(19)において、R19OH及びR20OHに相当する)としては、上記エーテルが、上記IOB、融点及び水溶解度の要件を満たすものであれば、特に制限されず、例えば、「化合物(B)」の項で列挙される脂肪族1価アルコールが挙げられる。
【0116】
脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテルでは、当該エーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、上記式(19)において、R19及びR20部分の炭素数の合計が2の場合にIOBが0.50となるため、当該炭素数の合計が約2以上であれば、上記IOBの要件を満たす。しかし、上記炭素数の合計が6程度では、水溶解度が約2gと高く、蒸気圧の観点からも問題がある。水溶解度が約0.05g以下の要件を満たすためには、上記炭素数の合計が約8以上であることが好ましい。
【0117】
[(D2)ジアルキルケトン]
上記ジアルキルケトンとしては、次の式(20):
21COR22 (20)
(式中、R21及びR22は、それぞれ、アルキル基である)
を有する化合物が挙げられる。
【0118】
上記ジアルキルケトンでは、R21及びR22の炭素数の合計が5の場合にIOBが0.54となるため、当該炭素数の合計が約5以上であれば、上記IOBの要件を満たす。しかし、上記炭素数の合計が5程度では、水溶解度が約2gと高い。従って、水溶解度が約0.05g以下の要件を満たすためには、上記炭素数の合計が約8以上であることが好ましい。また、蒸気圧を考慮すると、上記炭素数は、約10以上であることが好ましく、そして約12以上であることが好ましい。
なお、上記炭素数の合計が約8の場合、例えば、5−ノナノンでは、融点は約−50℃であり、蒸気圧は20℃で約230Paである。
上記ジアルキルケトンは、市販されている他、公知の方法、例えば、第二級アルコールを、クロム酸等で酸化することにより得ることができる。
【0119】
[(D3)脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステル]
上記脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステルとしては、例えば、次の式(21):
23COOR24 (21)
(式中、R23及びR24は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
を有する化合物が挙げられる。
【0120】
上記エステルを構成する脂肪酸(式(21)において、R23COOHに相当する)としては、例えば、「(A1)鎖状炭化水素テトラオールと脂肪酸とのエステル」において列挙されている脂肪酸、すなわち、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸が挙げられ、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸が好ましい。上記エステルを構成する脂肪族1価アルコール(式(21)において、R24OHに相当する)としては、例えば、「化合物(B)」の項で列挙される脂肪族1価アルコールが挙げられる。
【0121】
なお、上記脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステルでは、脂肪酸及び脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、式(21)において、R23C及びR24部分の炭素数の合計が5の場合にIOBが0.60となるため、R23C及びR24部分の炭素数の合計が約5以上である場合に、上記IOBの要件を満たす。しかし、例えば、上記炭素数の合計が6の酢酸ブチルでは、蒸気圧が2,000Pa超と高い。従って、蒸気圧を考慮すると、上記炭素数の合計が約12以上であることが好ましい。なお、上記炭素数の合計が約11以上であれば、水溶解度が約0.05g以下の要件を満たすことができる。
【0122】
上記脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステルの例としては、例えば、ドデカン酸(C12)と、ドデシルアルコール(C12)とのエステル、テトラデカン酸(C14)と、ドデシルアルコール(C12)とのエステル等が挙げられ、上記脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステルの市販品としては、例えば、エレクトールWE20、及びエレクトールWE40(以上、日油株式会社製)が挙げられる。
【0123】
[(D4)ジアルキルカーボネート]
上記ジアルキルカーボネートとしては、次の式(22):
25OC(=O)OR26 (22)
(式中、R25及びR26は、それぞれ、アルキル基である)
を有する化合物が挙げられる。
【0124】
上記ジアルキルカーボネートでは、R25及びR26の炭素数の合計が6の場合にIOBが0.57となるため、R25及びR26の炭素数の合計が、約6以上であれば、IOBの要件を満たす。
水溶解度を考慮すると、R25及びR26の炭素数の合計が約7以上であることが好ましく、そして約9以上であることがより好ましい。
上記ジアルキルカーボネートは、市販されている他、ホスゲンとアルコールとの反応、塩化ギ酸エステルとアルコール又はアルコラートとの反応、及び炭酸銀とヨウ化アルキルとの反応により合成することができる。
【0125】
[(E)ポリC2〜6アルキレングリコール、又はそのエステル若しくはエーテル]
上記ポリC2〜6アルキレングリコール、又はそのエステル若しくはエーテル(以下、化合物(E)と称する場合がある)としては、(E1)ポリC2〜6アルキレングリコール、(E2)ポリC2〜6アルキレングリコールと脂肪酸とのエステル、(E3)ポリC2〜6アルキレングリコールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、(E4)ポリC2〜6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、又は鎖状炭化水素ジカルボン酸とのエステル、及び(E5)ポリC2〜6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、又は鎖状炭化水素ジオールとのエーテルが挙げられる。以下、説明する。
【0126】
[(E1)ポリC2〜6アルキレングリコール]
上記ポリC2〜6アルキレングリコールには、単一のグリコールのホモポリマーだけでなく、2種以上のグリコールのコポリマー及びランダムポリマーも含まれる。グリコール種としては、C2〜6アルキレングリコール、すなわち、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、又はヘキシレングリコールが挙げられる。上記グリコール種としては、ポリC2〜6アルキレングリコールのIOBを低くする観点から、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール又はヘキシレングリコールであることが好ましく、ブチレングリコール、ペンチレングリコール又はヘキシレングリコールであることがより好ましい。
【0127】
なお、本明細書において、「ポリC2〜6アルキレングリコール」は、C2〜6アルキレングリコール、すなわち、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール及びヘキシレングリコールから成る群から選択されるいずれか1種のホモポリマー、上記群から選択される2種以上のコポリマー、又は上記群から選択される2種以上のランダムポリマーを意味する。
【0128】
上記ポリC2〜6アルキレングリコールがホモポリマーである場合には、ポリC2〜6アルキレングリコールは、次の式(23):
HO−(Cm2mO)n−H (23)
により表わされうる。
【0129】
なお、本発明者が確認したところ、ポリエチレングリコール(式(23)において、m=2の場合に相当する)は、n≧45(重量平均分子量約2,000超)の場合に、約0〜約0.60のIOBの要件を満たすものの、重量平均分子量が約4,000を超えた場合であっても、水溶解度の要件を満たさなかった。従って、(E1)ポリC2〜6アルキレングリコールには、エチレングリコールのホモポリマーは含まれないと考えられ、エチレングリコールは、他のグリコールとのコポリマー又はランダムポリマーとして、(E1)ポリC2〜6アルキレングリコールに含まれるべきである。
【0130】
従って、式(23)のホモポリマーには、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール又はヘキシレングリコールのホモポリマーが含まれうる。
以上より、式(23)において、mは、約3〜約6であり、そして約4〜約6であることがより好ましく、そしてnは2以上である。
【0131】
上記式(23)において、nの値は、ポリC2〜6アルキレングリコールが、約0〜約0.60のIOBと、約45℃以下の融点と、25℃の水100gに対する、約0.05g以下の水溶解度とを有するような値である。
例えば、式(23)がポリプロピレングリコール(m=3)である場合には、n=12の場合に、IOBが0.58となる。従って、式(23)がポリプロピレングリコール(m=3)である場合には、m≧約12の場合に、上記IOBの要件を満たす。
また、式(21)がポリブチレングリコール(m=4)である場合には、n=7の場合に、IOBが0.57となる。従って、式(23)がポリブチレングリコール(m=4)である場合には、n≧約7の場合に、上記IOBの要件を満たす。
【0132】
IOB、融点及び水溶解度の観点から、ポリC4〜6アルキレングリコールの重量平均分子量は、好ましくは約200〜約10,000、より好ましくは約250〜約8,000、そしてさらに好ましくは、約250〜約5,000の範囲にある。
また、IOB、融点及び水溶解度の観点から、ポリC3アルキレングリコール、すなわち、ポリプロピレングリコールの重量平均分子量は、好ましくは約1,000〜約10,000、より好ましくは約3,000〜約8,000、そしてさらに好ましくは、約4,000〜約5,000の範囲にある。上記重量平均分子量が約1,000未満では、水溶解度が要件を満たさず、そして重量平均分子量が大きいほど、特に、吸収体移行速度及びトップシートの白さが向上する傾向があるからである。
【0133】
上記ポリC2〜6アルキレングリコールの市販品としては、例えば、ユニオール(商標)D−1000,D−1200,D−2000,D−3000,D−4000,PB−500,PB−700,PB−1000及びPB−2000(以上、日油株式会社製)が挙げられる。
【0134】
[(E2)ポリC2〜6アルキレングリコールと脂肪酸とのエステル]
上記ポリC2〜6アルキレングリコールと脂肪酸とのエステルとしては、「(E1)ポリC2〜6アルキレングリコール」の項で説明したポリC2〜6アルキレングリコールのOH末端の一方又は両方が、脂肪酸によりエステル化されているもの、すなわち、モノエステル及びジエステルが挙げられる。
【0135】
ポリC2〜6アルキレングリコールと脂肪酸とのエステルにおいて、エステル化すべき脂肪酸としては、例えば、「(A1)鎖状炭化水素テトラオールと脂肪酸とのエステル」において列挙されている脂肪酸、すなわち、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸が挙げられ、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸が好ましい。
上記ポリC2〜6アルキレングリコールと脂肪酸とのエステルの市販品としては、例えば、ウィルブライトcp9(日油株式会社製)が挙げられる。
【0136】
[(E3)ポリC2〜6アルキレングリコールと脂肪族1価アルコールとのエーテル]
上記ポリC2〜6アルキレングリコールと脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、「(E1)ポリC2〜6アルキレングリコール」の項で説明したポリC2〜6アルキレングリコールのOH末端の一方又は両方が、脂肪族1価アルコールによりエーテル化されているもの、すなわち、モノエーテル及びジエーテルが挙げられる。
ポリC2〜6アルキレングリコールと脂肪族1価アルコールとのエーテルにおいて、エーテル化すべき脂肪族1価アルコールとしては、例えば、「化合物(B)」の項で列挙されている脂肪族1価アルコールが挙げられる。
【0137】
[(E4)ポリC2〜6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、又は鎖状炭化水素ジカルボン酸とのエステル]
上記ポリC2〜6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、又は鎖状炭化水素ジカルボン酸とのエステルにおいて、エステル化すべきポリC2〜6アルキレングリコールとしては、「(E1)ポリC2〜6アルキレングリコール」の項で説明したポリC2〜6アルキレングリコールが挙げられる。また、エステル化すべき鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、及び鎖状炭化水素ジカルボン酸としては、「化合物(C)」の項で説明されるものが挙げられる。
【0138】
上記ポリC2〜6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、又は鎖状炭化水素ジカルボン酸とのエステルは、市販されているほか、鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、又は鎖状炭化水素ジカルボン酸に、C2〜6アルキレングリコールを、公知の条件で重縮合させることにより製造することができる。
【0139】
[(E5)ポリC2〜6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、又は鎖状炭化水素ジオールとのエーテル]
上記ポリC2〜6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、又は鎖状炭化水素ジオールとのエーテルにおいて、エーテル化すべきポリC2〜6アルキレングリコールとしては、「(E1)ポリC2〜6アルキレングリコール」の項で説明したポリC2〜6アルキレングリコールが挙げられる。また、エーテル化すべき鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、及び鎖状炭化水素ジオールとしては、「化合物(A)」の項で説明されるもの、例えば、ペンタエリトリトール、グリセリン、及びグリコールが挙げられる。
【0140】
上記ポリC2〜6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、又は鎖状炭化水素ジオールとのエーテルの市販品としては、例えば、ユニルーブ(商標)5TP−300KB,並びにユニオール(商標)TG−3000及びTG−4000(日油株式会社製)が挙げられる。
ユニルーブ(商標)5TP−300KBは、ペンタエリトリトール1モルに、プロピレングリコール65モルと、エチレングリコール5モルとを重縮合させた化合物であり、そのIOBは0.39であり、融点は45℃未満であり、そして水溶解度は0.05g未満であった。
【0141】
ユニオール(商標)TG−3000は、グリセリン1モルに、プロピレングリコール50モルを重縮合させた化合物であり、そのIOBは0.42であり、融点は45℃未満であり、水溶解度は0.05g未満であり、そして重量平均分子量は約3,000であった。
ユニオール(商標)TG−4000は、グリセリン1モルに、プロピレングリコール70モルを重縮合させた化合物であり、そのIOBは0.40であり、融点は45℃未満であり、水溶解度は0.05g未満であり、そして重量平均分子量は約4,000であった。
【0142】
上記ポリC2〜6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、又は鎖状炭化水素ジオールとのエーテルはまた、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、又は鎖状炭化水素ジオールに、C2〜6アルキレングリコールを、公知の条件で重縮合させることにより製造することができる。
【0143】
[(F)鎖状炭化水素]
上記鎖状炭化水素は、上記無機性値が0であることから、IOBが0であり、そして水溶解度がほぼ0gであるので、融点が約45℃以下のものであれば、上記血液改質剤に含まれうる。上記鎖状炭化水素としては、例えば、(F1)鎖状アルカン、例えば、直鎖アルカン及び分岐鎖アルカンが挙げられ、例えば、直鎖アルカンの場合には、融点が約45℃以下であることを考慮すると、おおむね、炭素数が22以下のものが含まれる。また、蒸気圧を考慮すると、おおむね、炭素数が13以上のものが含まれる。分岐鎖アルカンの場合には、直鎖アルカンよりも、同一炭素数において、融点が低くなる場合があるため、炭素数が22以上のものも含まれうる。
上記炭化水素の市販品としては、例えば、パールリーム6(日油株式会社)が挙げられる。
【0144】
上記血液改質剤は、実施例と共に詳細に考察するが、血液の粘度及び表面張力を下げるメカニズムを有すると考えられる。吸収性物品が吸収すべき経血は、通常の血液と比較して、子宮内膜壁等のタンパク質を含むため、それらが血球同士を繋ぐように作用して、血球が連銭した状態をとりやすい。そのため、吸収性物品が吸収すべき経血は、高粘度となりやすく、トップシート及びセカンドシートが不織布である場合には、経血が繊維の間に目詰まりしやすく、着用者はベタつき感を覚えやすく、そしてトップシートの表面で経血が拡散し、漏れやすくなる。
【0145】
本開示の吸収性物品では、トップシートが、血液の粘度及び表面張力を下げるメカニズムを有すると考えられる血液改質剤を含むため、トップシートの繊維の間に経血が目詰まりしにくく、経血をトップシートから、セカンドシートを介して、吸収体に迅速に移行させることが可能となる。
また、本開示の吸収性物品では、血液改質剤の融点が約45℃以下であることにより、常温(25℃)で液体であるか、又は固体であるかを問わず、約30〜約40℃の体液と接触した際に液化し(又は液体であり)、体液に溶解しやすくなると考えられる。
【0146】
さらに、IOBが約0〜約0.60である血液改質剤は、有機性が高く、血球の間に入り込みやすいので、血球を安定化させ、血球に連銭構造を形成しにくくすることができると考えられる。
上記改質剤が、血球を安定化させ、血球に連銭構造を形成しにくくすることにより、吸収体が経血を吸収しやすくなると考えられる。例えば、アクリル系高吸収ポリマー、いわゆる、SAPを含む吸収性物品では、経血を吸収すると、連銭した血球がSAP表面を覆い、SAPが吸収性能を発揮しにくくなることが知られているが、血球を安定化することにより、SAPが吸収性能を発揮しやすくなると考えられる。また、赤血球と親和性の高い血液改質剤が、赤血球膜を保護するため、赤血球が破壊されにくくなると考えられる。
【0147】
上記トップシートが含む血液改質剤と、上記セカンドシートが含む血液改質剤とは、同一であってもよく、又は異なっていてもよい。例えば、上記トップシート用の血液改質剤を、感触、皮膚保護性、経血吸収後の白さ等の観点から選択し、そして上記セカンドシート用の血液改質剤を、リウェット率、残存血液量、吸収体移行速度等の観点から選択することができる。
【0148】
上記液透過性のトップシートとしては、当技術分野で通常用いられているものを、特に制限なく採用することができ、例えば、液体を透過する構造を有するシート状材料、例えば、開孔フィルム、織布、不織布等が挙げられる。上記織布及び不織布を構成する繊維として、天然繊維及び化学繊維が挙げられ、天然繊維としては、例えば、粉砕パルプ、コットン等のセルロースが挙げられ、化学繊維としては、例えば、レーヨン、フィブリルレーヨン等の再生セルロース、アセテート、トリアセテート等の半合成セルロース、熱可塑性疎水性化学繊維、並びに親水化処理を施した熱可塑性疎水性化学繊維が挙げられる。
【0149】
上記熱可塑性疎水性化学繊維としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の単繊維、PE及びPPのグラフト重合物からなる繊維が挙げられる。
上記不織布の例としては、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、メルトブローン不織布、及びこれらの組み合わせ(例えば、SMS等)等が挙げられる。
【0150】
上記液不透過性のバックシートとしては、PE、PP等を含むフィルム、通気性を有する樹脂フィルム、スパンボンド又はスパンレース等の不織布に通気性を有する樹脂フィルムを接合したもの、SMS等の複層不織布等が挙げられる。吸収性物品の柔軟性を考慮すると、例えば、坪量約15〜約30g/m2の低密度ポリエチレン(LDPE)フィルムが好ましい。
上記セカンドシートとしては、液透過性のトップシートと同様の例が挙げられる。
【0151】
上記吸収体の第1の例としては、吸収コアが、コアラップで覆われているものが挙げられる。
上記吸収コアの構成要素としては、例えば、親水性繊維、例えば、粉砕パルプ、コットン等のセルロース、レーヨン、フィブリルレーヨン等の再生セルロース、アセテート、トリアセテート等の半合成セルロース、粒子状ポリマー、繊維状ポリマー、熱可塑性疎水性化学繊維、及び親水化処理された熱可塑性疎水性化学繊維、並びにこれらの組み合わせ等が挙げられる。また、上記吸収コアの構成要素として、高吸収性ポリマー、例えば、アクリル酸ナトリウムコポリマー等の粒状物が挙げられる。
【0152】
上記コアラップとしては、液透過性で高分子吸収体が透過しないバリアー性を有する物であれば、特に制限されず、例えば、織布、不織布等が挙げられる。上記織布及び不織布としては、天然繊維、化学繊維、ティッシュ等が挙げられる。
【0153】
上記吸収体の第2の例としては、吸収シート又はポリマーシートから形成されたものが挙げられ、その厚さは、約0.3〜約5.0mmであることが好ましい。上記吸収シート及びポリマーシートとしては、通常、生理用ナプキン等の吸収性物品に用いられるものであれば特に制限なく用いることができる。
また、上記血液改質剤は、トップシートの平面方向に関しては、トップシートの全面、膣口付近の中心領域等、任意の場所に存在することができる。
【0154】
また、液透過性のトップシートが不織布又は織布から形成されている場合には、上記血液改質剤は、不織布又は織布の繊維間の空隙を閉塞しないことが好ましく、上記血液改質剤は、例えば、不織布の繊維の表面に、液滴状又は粒子状で付着しているか、又は繊維の表面を覆うことができる。一方、液透過性のトップシートが開孔フィルムから形成されている場合には、上記血液改質剤は、開孔フィルムの開孔を閉塞しないことが好ましく、上記血液改質剤は、例えば、開孔フィルムの表面に、液滴状又は粒子状で付着していることができる。上記血液改質剤が、不織布又は織布の繊維間の空隙または開孔フィルムの開孔を閉塞すると、吸収した液体の吸収体への移行を阻害することがあるからである。
また、上記血液改質剤は、吸収した液体に迅速に移行するために、その表面積が大きいことが好ましく、液滴状又は粒子状で存在する血液改質剤は、粒径が小さいことが好ましい。
【0155】
血液改質剤が塗布される資材、例えば、トップシートが合成樹脂からなる不織布、開孔フィルムである場合には、これらは、親水剤がコーティングされるか、又は混合されることにより、親水化処理されていることが好ましい。元々の資材が親水性を有すると、次いで約0〜約0.60のIOBを有し、有機性が高く且つ親油性の改質剤が塗布されるため、親油性領域と、親水性領域とがまばらに共存することになる。それにより、親水性成分(血漿等)と、親油性成分(血球等)から成る経血に対して、一定の吸収性能を発揮することができると考えられる。
【0156】
上記血液改質剤の塗布方法は、特に制限されるものではなく、必要に応じて加熱され、例えば、非接触式のコーター、例えば、スパイラルコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ディップコーター等、接触式のコーター等により塗布されることができる。液滴状又は粒子状の改質剤が全体に均一に分散される点、及び資材にダメージを与えない観点から、非接触式のコーターが好ましい。また、上記血液改質剤は、室温で液体の場合にはそのまま、又は粘度を下げるために加熱し、そして室温で固体の場合には液化するように加熱して、コントロールシームHMAガンから塗布することができる。コントロールシームHMAガンのエアー圧を高くすることにより、微粒子状の血液改質剤を塗布することができる。
【0157】
上記血液改質剤は、トップシート及び/又はセカンドシートの素材、例えば、不織布を製造する際に塗布されることができ、又は吸収性物品を製造する製造ラインにおいて塗布されることもできる。設備投資を抑制する観点からは、吸収性物品の製造ラインにおいて、血液改質剤を塗布することが好ましく、血液改質剤が脱落し、ラインを汚染することを抑制するためには、製造ラインの川下工程、具体的には、製品を個包装に封入する直前に、血液改質剤を塗布することが好ましい。
【0158】
製品を個包装に封入する直前に、血液改質剤を塗布する場合には、例えば、液透過性のトップシートと、セカンドシートと、吸収体と、液不透過性のバックシートとを有する吸収性物品前駆体のトップシート面に、血液改質剤を、上記コントロールシームHMAガンから吹き付けることにより、トップシートと、上記セカンドシートの第3領域とに、血液改質剤を一括塗工することができる。
【0159】
上記血液改質剤は、潤滑剤としての作用も有することができる。トップシートが不織布である場合には、繊維同士の摩擦を低減させることができるため、不織布全体のしなやかさが向上する。また、トップシートが樹脂フィルムの場合には、トップシートと肌との摩擦を低減することができる。
【0160】
上記血液改質剤は、約2,000以下の重量平均分子量を有することが好ましく、そして1,000以下の重量平均分子量を有することがより好ましい。重量平均分子量が高くなると、血液改質剤の粘度を、塗工に適した粘度に下げることが難しくなり、溶媒で希釈すべき場合が生ずるからである。また、数平均分子量が大きくなると、血液改質剤にタック性が生じ、着用者に不快感を与える場合があるからである。
【0161】
上記吸収性物品は、血液を吸収することを目的とする吸収性物品、例えば、生理用ナプキン、パンティーライナー等に好適である。
なお、本開示の吸収性物品では、従来公知のスキンケア組成物、ローション組成物等を含む吸収性物品とは異なり、エモリエント剤、固定化剤等の成分が不要であり、血液改質剤単体で、トップシートに適用されうる。
【実施例】
【0162】
以下、例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
[例1]
[リウェット率及び吸収体移行速度の評価]
親水剤で処理されたエアスルー不織布(ポリエステル及びポリエチレンテレフタレートから成る複合繊維、坪量:35g/m2)から形成されたトップシート(「TS」と省略する場合あり)と、エアスルー不織布(ポリエステル及びポリエチレンテレフタレートから成る複合繊維、坪量:30g/m2)から形成されたセカンドシート(「SS」と省略する場合あり)と、パルプ(坪量:150〜450g/m2、中央部ほど多い)、アクリル系高吸収ポリマー(坪量:15g/m2)及びコアラップとしてのティッシュを含む吸収体と、撥水剤処理されたサイドシートと、ポリエチレンフィルムから成るバックシートとを準備した。
【0163】
上記トップシートは、特開2008−2034号に記載の方法に従って製造され、畝溝構造を有し、畝部の厚さが約1.5mmであり、溝部の厚さが約0.4mmであり、そして畝溝構造のピッチ(畝部の幅+溝部の幅)が約4mmであり、そして溝部には、開孔率約15%の開孔部が形成されていた。
【0164】
血液改質剤として、パナセート810s(日油株式会社製、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル)を選択し、室温において、コントロールシームHMAガンから、上記トップシートの肌当接面(畝溝面)に、5.0g/m2の坪量で塗工した。電子顕微鏡で確認したところ、パナセート810sは、微粒子状で、繊維の表面に付着していた。次いで、同様に、セカンドシートの肌当接面側に、1.2g/m2の坪量でパナセート810sを塗工した。
次いで、バックシート、吸収体、セカンドシート、そして畝溝面を上にしてトップシートを順に重ね合わせることにより、生理用ナプキンNo.1−1を形成した。
【0165】
セカンドシートの上に、畝溝面を上にしたトップシートを重ね合わせ、ホチキスで固定し、パナセート810sを、コントロールシームHMAガンから、0.5MPaのエアー圧で、上記トップシートの肌当接面(畝溝面)に、5.0g/m2の坪量で塗工した。次いで、バックシートと、吸収体と、畝溝面を上にした、セカンドシート及びトップシートの積層物を順に重ね合わせることにより、生理用ナプキンNo.1−2を形成した。
なお、生理用ナプキンNo.1−2のホチキスを外して、セカンドシートの、トップシートと接していた面を確認したところ、トップシートの溝部と隣接していた領域を中心に、パナセート810sが塗工されていることを確認した。
【0166】
セカンドシートにパナセート810sを塗工しなかった以外は吸収性物品No.1−1と同様にして、生理用ナプキンNo.1−3を形成した。
トップシート及びセカンドシートにパナセート810sを塗工しなかった以外は吸収性物品No.1−1と同様にして、生理用ナプキンNo.1−4を形成した。
【0167】
[試験方法]
各血液改質剤を含むトップシートの上に、穴の開いたアクリル板(200mm×100mm,125g,中央に、40mm×10mmの穴が開いている)を置き、上記穴から、37±1℃のウマEDTA血(ウマの血液に、凝結防止のため、エチレンジアミン四酢酸(以下、「EDTA」と称する)が添加されたもの)3gを、ピペットを用いて滴下(1回目)し、1分後、37±1℃のウマEDTA血3gを、アクリル板の穴から、ピペットで再度滴下した(2回目)。
【0168】
2回目の血液の滴下後、直ちに上記アクリル板を外し、血液を滴下した場所に、ろ紙(50mm×35mm)10枚を置き、その上から、圧力が30g/cm2となるようにおもりを置いた。1分後、上記ろ紙を取出し、以下の式に従って、「リウェット率」を算出した。
リウェット率(%)=100×(試験後のろ紙質量−当初のろ紙質量)/6
【0169】
また、リウェット率の評価とは別に、2回目の血液の滴下から1分経過した後、上記アクリル板を外し、トップシート及びセカンドシートの質量を測定し、当初のトップシート質量及びセカンドシート質量との差から、残存血液量を測定した。
【0170】
さらに、リウェット率の評価とは別に、2回目の血液の滴下後、血液がトップシートから吸収体に移行する時間である「吸収体移行速度」を測定した。上記吸収体移行速度は、吸収体に血液を投入してから、トップシートの表面及び内部に、血液の赤さが見られなくなるまでの時間を意味する。
生理用ナプキンNo.1−1〜1−4のリウェット率、吸収体移行速度及び残存血液量の結果を以下の表2に示す。
【0171】
【表2】

【0172】
表2から、セカンドシートが血液改質剤を含む吸収性物品No.1−1及び1−2は、リウェット率が低く且つ残存血液量が、吸収性物品No.1−3及び1−4と比較して少ない。従って、セカンドシートが血液改質剤を含む吸収性物品No.1−1及び1−2は、トップシートから吸収体へ速やかに経血を移行させることができるので、トップシートに粘度の高い経血が残存しにくく、トップシートにべたつき感がなく、サラサラ感を有することができることが示唆される。また、セカンドシートが血液改質剤を含む吸収性物品No.1−1及び1−2は、トップシート上に粘度の高い経血の塊が残存しにくく、着用者が視覚的に不快感を覚えにくいことが示唆される。
【0173】
さらに、吸収性物品No.1−2は、吸収性物品No.1−1と同等以上の結果を有することから、セカンドシートにおいて、トップシートの溝部と隣接する領域に、トップシートの畝部と隣接する領域よりも多量の血液改質剤を塗工することにより、効率的に血液を改質することができると考えられる。
【0174】
[例2]
[その他の血液改質剤のデータ]
市販の生理用ナプキンを準備した。当該生理用ナプキンは、親水剤で処理されたエアスルー不織布(ポリエステル及びポリエチレンテレフタレートから成る複合繊維、坪量:35g/m2)から形成されたトップシートと、エアスルー不織布(ポリエステル及びポリエチレンテレフタレートから成る複合繊維、坪量:30g/m2)から形成されたセカンドシートと、パルプ(坪量:150〜450g/m2、中央部ほど多い)、アクリル系高吸収ポリマー(坪量:15g/m2)及びコアラップとしてのティッシュを含む吸収体と、撥水剤処理されたサイドシートと、ポリエチレンフィルムから成るバックシートとから形成されていた。
【0175】
以下に、実験に用いられた血液改質剤を列挙する。
[(A1)鎖状炭化水素テトラオールと脂肪酸とのエステル]
・ユニスター H−408BRS,日油株式会社製
テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリトール
・ユニスター H−2408BRS−22,日油株式会社製
テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリトールと、ジ2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコールとの混合物(58:42,重量比)
【0176】
[(A2)鎖状炭化水素トリオールと脂肪酸とのエステル]
・Cetiol SB45DEO,コグニスジャパン株式会社製
脂肪酸が、オレイン酸又はステアリル酸である、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル
・トリC2L油脂肪酸グリセリド,日油株式会社製
8の脂肪酸:C10の脂肪酸:C12の脂肪酸がおおよそ37:7:56の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル
・トリCL油脂肪酸グリセリド,日油株式会社製
8の脂肪酸:C12の脂肪酸がおおよその重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル
【0177】
・パナセート810s,日油株式会社製
8の脂肪酸:C10の脂肪酸がおおよそ85:15の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル
・パナセート800,日油株式会社製
脂肪酸が全てオクタン酸(C8)である、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル
【0178】
・パナセート800B,日油株式会社製
脂肪酸が全て2−エチルヘキサン酸(C8)である、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル
・NA36,日油株式会社製
16の脂肪酸:C18の脂肪酸:C20の脂肪酸(飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸の両方を含む)がおおよそ5:92:3の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル
【0179】
・トリヤシ油脂肪酸グリセリド,日油株式会社製
8の脂肪酸:C10の脂肪酸:C12の脂肪酸:C14の脂肪酸:C16の脂肪酸(飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸の両方を含む)がおおよそ4:8:60:25:3の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル
・SOY42,日油株式会社製
14の脂肪酸:C16の脂肪酸:C18の脂肪酸:C20の脂肪酸(飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸の両方を含む)がおおよそ0.2:11:88:0.8の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル
【0180】
・カプリル酸ジグリセリド,日油株式会社製
脂肪酸がオクタン酸である、グリセリンと脂肪酸とのジエステル
[(A3)鎖状炭化水素ジオールと脂肪酸とのエステル]
・コムポールBL,日油株式会社製
ブチレングリコールのドデカン酸(C12)モノエステル
・コムポールBS,日油株式会社製
ブチレングリコールのオクタデカン酸(C18)モノエステル
・ユニスター H−208BRS,日油株式会社製
ジ2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール
【0181】
[(C3)2個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ジカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、脂肪族1価アルコールとのエステル]
・アジピン酸ジオクチル,和光純薬工業製
[(D3)脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステル]
・エレクトールWE20,日油株式会社製
ドデカン酸(C12)と、ドデシルアルコール(C12)とのエステル
・エレクトールWE40,日油株式会社製
テトラデカン酸(C14)と、ドデシルアルコール(C12)とのエステル
【0182】
[(E1)ポリC2〜6アルキレングリコール]
・ユニオールD−1000(ユニオールは、全て日油株式会社製)
重量平均分子量約1,000のポリプロピレングリコール
・ユニオールD−1200
重量平均分子量約1,200のポリプロピレングリコール
・ユニオールD−3000
【0183】
重量平均分子量約3000のポリプロピレングリコール
・ユニオールD−4000
重量平均分子量約4000のポリプロピレングリコール
・ユニオールPB500
重量平均分子量約500のポリブチレングリコール
・ユニオールPB700
重量平均分子量約700のポリオキシブチレンポリオキシプロピレングリコール
・ユニオールPB1000R
重量平均分子量約1000のポリブチレングリコール
【0184】
[(E2)ポリC2〜6アルキレングリコールと脂肪酸とのエステル]
・ウィルブライトcp9,日油株式会社製
両末端のOH基がヘキサデカン酸(C16)によりエステル化されている、重量平均分子量約1,100のポリブチレングリコール
[(E3)ポリC2〜6アルキレングリコールと脂肪酸とのエーテル]
・ユニルーブMS−70K,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのステアリルエーテル,約15の繰返し単位
【0185】
[(F1)鎖状アルカン]
・パールリーム6,日油株式会社製
流動イソパラフィン、イソブテン及びn-ブテンを共重合し、次いで水素を付加することにより生成された分岐鎖炭化水素、重合度:約5〜約10
【0186】
[その他]
・NA50,日油株式会社製
NA36に水素を付加し、原料である不飽和脂肪酸に由来する二重結合の比率を下げたグリセリンと脂肪酸とのトリエステル
・(カプリル酸/カプリン酸)モノグリセリド,日油株式会社製
オクタン酸(C8)及びデカン酸(C10)がおおよそ85:15の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのモノエステル
・Monomuls 90−L2ラウリン酸モノグリセリド,コグニスジャパン株式会社製
【0187】
・ユニオックスHC60,日油株式会社製
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
・ウィルブライトs753,日油株式会社製
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオキシブチレングリセリン
・クエン酸イソプロピル,東京化成工業製
・ユニオールD−400
重量平均分子量約400のポリプロピレングリコール
・ユニオール TG−330,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのグリセリルエーテル,約6の繰返し単位,重量平均分子量:約330
【0188】
・ユニオール TG−1000,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのグリセリルエーテル,約16の繰返し単位,重量平均分子量:約1000
・ユニルーブ DGP−700,日油株式会社製
ポリプロピレングリコールのジグリセリルエーテル,約9の繰返し単位,重量平均分子量:約700
・PEG1500,日油株式会社製
重量平均分子量約1,500〜約1,600のポリエチレングリコール
【0189】
・ノニオンS−6,日油株式会社製
ポリオキシエチレンモノステアレート、約7の繰返し単位、重量平均分子量:約600
・ワセリン,コグニスジャパン株式会社製
石油に由来する炭化水素、半固形
【0190】
上記試料の、IOB,融点及び水溶解度を、以下の表3に示す。
なお、水溶解度は、上述の方法に従って測定したが、100gの脱塩水に、20.0gを添加し、24時間後に溶解した試料は、「20g<」と評価し、そして100gの脱塩水に、0.05gは溶解したが、1.00gは溶解しなかった試料は、0.05〜1.00gと評価した。
また、融点に関し、「<45」は、融点が45℃未満であることを意味する。
【0191】
上記生理用ナプキンのトップシートの肌当接面を、上述の血液改質剤で塗工した。各血液改質剤を、血液改質剤が室温で液体である場合にはそのまま、そして血液改質剤が室温で固体である場合には、融点+20℃まで加熱し、次いで、コントロールシームHMAガンを用いて、各血液改質剤を微粒化し、トップシートの肌当接面の全体に、坪量がおおよそ5g/m2となるように塗布した。
【0192】
図6は、トップシートがトリC2L油脂肪酸グリセリドを含む生理用ナプキン(No.2−5)における、トップシートの肌当接面の電子顕微鏡写真である。図6から明らかなように、トリC2L油脂肪酸グリセリドは、微粒子状で、繊維の表面に付着している。
上述の手順に従って、リウェット率と、吸収体移行速度とを測定した。結果を、下記表3に示す。
【0193】
次いで、吸収体移行速度の試験後のトップシートの肌当接面の白さを、以下の基準に従って、目視で評価した。
◎:血液の赤さがほとんど残っておらず、血液が存在した場所と、存在していない場所の区別がつかない
○:血液の赤さが若干残っているが、血液の存在した場所と、存在していない場所の区別がつきいにくい
△:血液の赤さが若干残っており、血液が存在した場所が分かる
×:血液の赤さがそのまま残っている
結果を、併せて表3に示す。
【0194】
【表3−1】

【0195】
【表3−2】

【0196】
血液改質剤を有しない場合には、リウェット率は22.7%であり、そして吸収体移行速度は60秒超であったが、グリセリンと脂肪酸とのトリエステルは、いずれも、リウェット率が7.0%以下であり、そして吸収体移行速度が8秒以下であることから、吸収性能が大幅に改善されていることが分かる。しかし、グリセリンと脂肪酸とのトリエステルのうち、融点が45℃を超えるNA50では、吸収性能に大きな改善はみられなかった。
【0197】
同様に、約0〜約0.60のIOBと、約45℃以下の融点と、25℃の水100gに対する、約0.05g以下の水溶解度を有する血液改質剤では、吸収性能が大きく改善されることが分かった。
【0198】
次に、No.2−1〜2−42の生理用ナプキンを、複数のボランティアの被験者に着用してもらったところ、No.2−1〜2−28の血液改質剤を含む生理用ナプキンでは、経血を吸収した後であってもトップシートにべたつき感がなく、トップシートがサラサラしているとの回答を得た。特に、これらは、No.2−29,32,39,41及び42の生理用ナプキンとの差異が顕著であるとの回答を得た。
【0199】
また、No.2−1〜No.2−28の生理用ナプキンでは、そして特に、No.2−1〜11,15〜18及び28の血液改質剤を含む生理用ナプキンでは、経血を吸収後のトップシートの肌当接面が、血液で赤く染まっておらず、不快感が少ないとの回答を得た。
なお、例2は、セカンドシートが血液改質剤を含まない例ではあるが、セカンドシートが血液改質剤を含む場合には、例1と同様の結果が得られると考えられる。
【0200】
[例3]
動物の各種血液に関して、上述の手順に従って、リウェット率を評価した。実験に用いられた血液は、以下の通りである。
[動物種]
(1)ヒト
(2)ウマ
(3)ヒツジ
【0201】
[血液種]
・脱繊維血:血液を採取後、ガラスビーズと共に、三角フラスコ内で約5分間撹拌したもの
・EDTA血:静脈血65mLに、12%EDTA・2K生理食塩液0.5mLを添加したもの
【0202】
[分画]
血清又は血漿:それぞれ、脱繊維血又はEDTA血を、室温下で、約1900Gで10分間遠心分離した後の上清
血球:血液から血清を除去し、残差をリン酸緩衝生理食塩液(PBS)で2回洗浄し、次いで除去した血清分のリン酸緩衝生理食塩液を加えたもの
【0203】
トリC2L油脂肪酸グリセリドが、坪量がおおよそ5g/m2となるように塗布されている以外は、例2と同様にして吸収性物品を製造し、上述の各種血液に関して、リウェット率を評価した。各血液に関して測定を3回行い、その平均値を採用した。
結果を、以下の表4に示す。
【0204】
【表4】

【0205】
例2で得られた、ウマEDTA血と同様の傾向が、ヒト及びヒツジの血液でも得られた。また、脱繊維血及びEDTA血においても、同様の傾向が観察された。
【0206】
[例4]
[血液保持性の評価]
血液改質剤を含むトップシートと、血液改質剤を含まないトップシートとにおける血液保持性を評価した。
【0207】
[試験方法]
(1)エアスルー不織布(ポリエステル及びポリエチレンテレフタレートから成る複合繊維、坪量:35g/m2)から形成されたトップシートの肌当接面に、トリC2L油脂肪酸グリセリドを、コントロールシームHMAガンを用いて微粒化し、坪量がおおよそ5g/m2となるように塗布する。また、比較のため、トリC2L油脂肪酸グリセリドを塗布していないものも準備する。次いで、トリC2L油脂肪酸グリセリドが塗布されているトップシートと、塗布されていないトップシートとの両方を、0.2gの大きさにカットし、セルストレイナー+トップシートの質量(a)を正確に測定する。
【0208】
(2)ウマEDTA血約2mLを、肌当接面側から添加し、1分間静置する。
(3)セルストレイナーを、遠心管にセットし、スピンダウンして、余剰のウマEDTA血を取り除く。
(4)セルストレイナー+ウマEDTA血を含むトップシートの重量(b)を測定する。
(5)下式に従って、トップシート1g当たりの当初吸収量(g)を算出する。
当初吸収量=[重量(b)−重量(a)]/0.2
(6)セルストレイナーを、遠心管に再セットし、室温下、約1200Gで1分間遠心分離する。
【0209】
(7)セルストレイナー+ウマEDTA血を含むトップシートの重量(c)を測定する。
(8)下式に従って、トップシート1g当たりの試験後吸収量(g)を算出する。
試験後吸収量=[重量(c)−重量(a)]/0.2
(9)下式に従って血液保持率(%)を算出した。
血液保持率(%)=100×試験後吸収量/当初吸収量
なお、測定は3回行い、その平均値を採用した。
結果を、以下の表5に示す。
【0210】
【表5】

【0211】
血液改質剤を含むトップシートは、血液保持性が低く、血液を吸収後、迅速に吸収体に移行させることができることが示唆される。
【0212】
[例5]
[血液改質剤を含む血液の粘性]
血液改質剤を含む血液の粘性を、Rheometric Expansion System ARES(Rheometric Scientific,Inc)を用いて測定した。ウマ脱繊維血に、パナセート810sを2質量%添加し、軽く撹拌して試料を形成し、直径50mmのパラレルプレートに試料を載せ、ギャップを100μmとし、37±0.5℃で粘度を測定した。パラレルプレートゆえ、試料に均一なせん断速度はかかっていないが、機器に表示された平均せん断速度は、10s-1であった。
【0213】
パナセート810sを2質量%含むウマ脱繊維血の粘度は、5.9mPa・sであり、一方、血液改質剤を含まないウマ脱繊維血の粘度は、50.4mPa・sであった。従って、パナセート810sを2質量%含むウマ脱繊維血は、血液改質剤を含まない場合と比較して、約90%粘度を下げることが分かる。
血液は、血球等の成分を含み、チキソトロピーの性質を有することが知られているが、本開示の血液改質剤は、低粘度域で、血液の粘度を下げることができると考えられる。血液の粘度を下げることにより、吸収した経血を、トップシートから吸収体に速やかに移行させることができると考えられる。
【0214】
[例6]
[血液改質剤を含む血液の顕微鏡写真]
健常ボランティアの経血をサランラップ上に採取し、その一部に、10倍の質量のリン酸緩衝生理食塩水中に分散されたパナセート810sを、パナセート810sの濃度が1質量%となるように添加した。経血を、スライドグラスに適下し、カバーグラスをかけ、光学顕微鏡にて、赤血球の状態を観察した。血液改質剤を含まない経血の顕微鏡写真を図7(a)に、そしてパナセート810sを含む経血の顕微鏡写真を図7(b)に示す。
【0215】
図7から、血液改質剤を含まない経血では、赤血球が連銭等の集合塊を形成しているが、パナセート810sを含む経血では、赤血球が、それぞれ、安定に分散していることが分かる。従って、血液改質剤は、血液の中で、赤血球を安定化させる働きをしていることが示唆される。
【0216】
[例7]
[血液改質剤を含む血液の表面張力]
血液改質剤を含む血液の表面張力を、協和界面科学社製接触角計 Drop Master500を用い、ペンダントドロップ法にて測定した。表面張力は、ヒツジ脱繊維血に、所定の量の血液改質剤を添加し、十分振とうした後に測定した。
測定は、機器が自動で行うが、密度γは、以下の式により求められる(図8を参照)。
【0217】
γ=g×ρ×(de)2×1/H
g:重力定数
1/H:ds/deから求められる補正項
ρ:密度
de:最大直径
ds:滴下端よりdeだけ上がった位置での径
【0218】
密度ρは、JIS K 2249−1995の「密度試験方法及び密度・質量・容量換算表」の5.振動式密度試験方法に準拠し、以下の表6に示される温度で測定した。
測定には、京都電子工業株式会社のDA−505を用いた。
結果を、表6に示す。
【0219】
【表6】

【0220】
表6から、血液改質剤は、25℃の水100gに対する、0.05g以下の水溶解度を有することからも明らかなように、水への溶解性が非常に低いが、血液の表面張力を下げることができることが分かる。
血液の表面張力を下げることにより、吸収した血液をトップシートの繊維間に保持せず、速やかに吸収体に移行させることができると考えられる。
【0221】
本発明は、以下の態様に関する。
[態様1]
液透過性のトップシートと、吸収体と、液不透過性のバックシートと、上記トップシート及び吸収体の間のセカンドシートとを有する吸収性物品であって、
上記トップシートと、上記セカンドシートとが、0〜0.60のIOBと、45℃以下の融点と、25℃の水100gに対する、0.05g以下の水溶解度とを有する血液改質剤を含む、
ことを特徴とする、上記吸収性物品。
【0222】
[態様2]
上記トップシートが、第1領域と、第1領域よりも液透過性が低い第2領域とを有し、
上記セカンドシートが、上記吸収性物品の厚さ方向に関して、上記トップシートの第1領域及び第2領域にそれぞれ隣接する第3領域及び第4領域を有し、そして
上記トップシートと、上記セカンドシートの第3領域とが、上記血液改質剤を含む、
態様1に記載の吸収性物品。
【0223】
[態様3]
第1領域が、上記トップシートの平均坪量よりも小さい坪量を有する低坪量領域であり、第2領域が、上記トップシートの平均坪量よりも大きい坪量を有する高坪量領域である、態様2に記載の吸収性物品。
【0224】
[態様4]
第1領域が、第2領域よりも低い繊維密度を有する、態様2又は3に記載の吸収性物品。
[態様5]
第1領域の厚さが、第2領域の厚さよりも薄い、態様2〜4のいずれか一つに記載の吸収性物品。
【0225】
[態様6]
第1領域が、上記吸収性物品の長手方向に延びる複数の溝部であり、第2領域が、上記吸収性物品の長手方向に延びる複数の畝部であり、上記畝部及び溝部が、互いに平行であり且つ交互に配置されている、態様2〜5のいずれか一つに記載の吸収性物品。
【0226】
[態様7]
第1領域が開孔部を有する、態様2〜6のいずれか一つに記載の吸収性物品。
[態様8]
第3領域における血液改質剤の坪量が、第4領域における血液改質剤の坪量よりも高い、態様2〜7のいずれか一つに記載の吸収性物品。
【0227】
[態様9]
上記血液改質剤が、
(i)炭化水素、
(ii)炭化水素のC−C単結合間に、少なくとも1つのカルボニル結合(−CO−)及び/若しくは少なくとも1つのエーテル結合(−O−)が挿入された化合物、又は
(iii)炭化水素のC−C単結合間に、少なくとも1つのカルボニル結合(−CO−)及び/若しくは少なくとも1つのエーテル結合(−O−)が挿入され、且つ炭化水素上の少なくとも1つの水素原子が、カルボキシル基(−COOH)若しくはヒドロキシル基(−OH)で置換された化合物、
であり、ここで、(ii)又は(iii)の化合物において、エーテル結合が2つ以上挿入されている場合には、エーテル結合同士は隣接していない、
態様1〜8のいずれか一つに記載の吸収性物品。
【0228】
[態様10]
上記血液改質剤が、
(i’)炭化水素、
(ii’)炭化水素のC−C単結合間に、少なくとも1つのカルボニル結合(−CO−)、少なくとも1つのエステル結合(−COO−)、少なくとも1つのカーボネート結合(−OCOO−)及び/若しくは少なくとも1つのエーテル結合(−O−)が挿入された化合物、又は
(iii’)炭化水素のC−C単結合間に、少なくとも1つのカルボニル結合(−CO−)、少なくとも1つのエステル結合(−COO−)、少なくとも1つのカーボネート結合(−OCOO−)及び/若しくは少なくとも1つのエーテル結合(−O−)が挿入され、且つ炭化水素上の少なくとも1つの水素原子が、カルボキシル基(−COOH)若しくはヒドロキシル基(−OH)で置換された化合物、
であり、ここで、(ii’)又は(iii’)の化合物において、2以上の結合が挿入されている場合には、各結合は隣接していない、
態様1〜9のいずれか一つに記載の吸収性物品。
【0229】
[態様11]
上記血液改質剤が、
(A)2〜4個のヒドロキシル基を有する化合物と、1個のカルボキシル基を有する化合物とのエステル、
(B)2〜4個のヒドロキシル基を有する化合物と、1個のヒドロキシル基を有する化合物とのエーテル、
(C)2〜4個のカルボキシル基を有する化合物と、1個のヒドロキシル基を有する化合物とのエステル、
(D)炭化水素に、エーテル結合(−O−)、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、及びカーボネート結合(−OCOO−)から成る群から選択されるいずれか1つが挿入された化合物、
(E)ポリC2〜6アルキレングリコール、又はそのエステル若しくはエーテル、あるいは
(F)鎖状炭化水素、
である、態様1〜10のいずれか一つに記載の吸収性物品。
【0230】
[態様12]
上記血液改質剤が、(A1)鎖状炭化水素テトラオールと脂肪酸とのエステル、(A2)鎖状炭化水素トリオールと脂肪酸とのエステル、(A3)鎖状炭化水素ジオールと脂肪酸とのエステル、(B1)鎖状炭化水素テトラオールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、(B2)鎖状炭化水素トリオールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、(B3)鎖状炭化水素ジオールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、(C1)4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素テトラカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、脂肪族1価アルコールとのエステル、(C2)3個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素トリカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、脂肪族1価アルコールとのエステル、(C3)2個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ジカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、脂肪族1価アルコールとのエステル、(D1)脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、(D2)ジアルキルケトン、(D3)脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステル、(D4)ジアルキルカーボネート、(E1)ポリC2〜6アルキレングリコール、(E2)ポリC2〜6アルキレングリコールと脂肪酸とのエステル、(E3)ポリC2〜6アルキレングリコールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、(E4)ポリC2〜6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、又は鎖状炭化水素ジカルボン酸とのエステル、(E5)ポリC2〜6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、又は鎖状炭化水素ジオールとのエーテル、及び(F1)鎖状アルカンから成る群から選択される、態様1〜11のいずれか一つに記載の吸収性物品。
【0231】
[態様13]
上記血液改質剤が、2000以下の重量平均分子量を有する、態様1〜12のいずれか一つに記載の吸収性物品。
[態様14]
上記液透過性のトップシート及びセカンドシートが、不織布又は織布であり、上記血液改質剤が、上記不織布又は織布の繊維の表面に付着している、態様1〜13のいずれか一つに記載の吸収性物品。
【0232】
[態様15]
生理用ナプキン又はパンティーライナーである、態様1〜14のいずれか一つに記載の吸収性物品。
[態様16]
液透過性のトップシートと、吸収体と、液不透過性のバックシートと、上記液透過性のトップシート及び吸収体の間のセカンドシートとを有する吸収性物品前駆体に、上記血液改質剤を、上記液透過性のトップシート側からスプレーすることにより製造された、態様1〜15のいずれか一つに記載の吸収性物品。
【符号の説明】
【0233】
1 生理用ナプキン
2 トップシート
3 吸収体
4 セカンドシート
5 サイドシート
6 圧搾部
7 バックシート
8 血液改質剤
9 第1領域
10 第2領域
11 第3領域
12 第4領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、吸収体と、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び吸収体の間のセカンドシートとを有する吸収性物品であって、
前記トップシートと、前記セカンドシートとが、0〜0.60のIOBと、45℃以下の融点と、25℃の水100gに対する、0.05g以下の水溶解度とを有する血液改質剤を含む、
ことを特徴とする、前記吸収性物品。
【請求項2】
前記トップシートが、第1領域と、第1領域よりも液透過性が低い第2領域とを有し、
前記セカンドシートが、前記吸収性物品の厚さ方向に関して、前記トップシートの第1領域及び第2領域にそれぞれ隣接する第3領域及び第4領域を有し、そして
前記トップシートと、前記セカンドシートの第3領域とが、前記血液改質剤を含む、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
第1領域が、前記トップシートの平均坪量よりも小さい坪量を有する低坪量領域であり、第2領域が、前記トップシートの平均坪量よりも大きい坪量を有する高坪量領域である、請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
第1領域が、第2領域よりも低い繊維密度を有する、請求項2又は3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
第1領域の厚さが、第2領域の厚さよりも薄い、請求項2〜4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
第1領域が、前記吸収性物品の長手方向に延びる複数の溝部であり、第2領域が、前記吸収性物品の長手方向に延びる複数の畝部であり、前記畝部及び溝部が、互いに平行であり且つ交互に配置されている、請求項2〜5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
第1領域が開孔部を有する、請求項2〜6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
第3領域における血液改質剤の坪量が、第4領域における血液改質剤の坪量よりも高い、請求項2〜7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記血液改質剤が、
(i)炭化水素、
(ii)炭化水素のC−C単結合間に、少なくとも1つのカルボニル結合(−CO−)及び/若しくは少なくとも1つのエーテル結合(−O−)が挿入された化合物、又は
(iii)炭化水素のC−C単結合間に、少なくとも1つのカルボニル結合(−CO−)及び/若しくは少なくとも1つのエーテル結合(−O−)が挿入され、且つ炭化水素上の少なくとも1つの水素原子が、カルボキシル基(−COOH)若しくはヒドロキシル基(−OH)で置換された化合物、
であり、ここで、(ii)又は(iii)の化合物において、エーテル結合が2つ以上挿入されている場合には、エーテル結合同士は隣接していない、
請求項1〜8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記血液改質剤が、
(i’)炭化水素、
(ii’)炭化水素のC−C単結合間に、少なくとも1つのカルボニル結合(−CO−)、少なくとも1つのエステル結合(−COO−)、少なくとも1つのカーボネート結合(−OCOO−)及び/若しくは少なくとも1つのエーテル結合(−O−)が挿入された化合物、又は
(iii’)炭化水素のC−C単結合間に、少なくとも1つのカルボニル結合(−CO−)、少なくとも1つのエステル結合(−COO−)、少なくとも1つのカーボネート結合(−OCOO−)及び/若しくは少なくとも1つのエーテル結合(−O−)が挿入され、且つ炭化水素上の少なくとも1つの水素原子が、カルボキシル基(−COOH)若しくはヒドロキシル基(−OH)で置換された化合物、
であり、ここで、(ii’)又は(iii’)の化合物において、2以上の結合が挿入されている場合には、各結合は隣接していない、
請求項1〜9のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記血液改質剤が、
(A)2〜4個のヒドロキシル基を有する化合物と、1個のカルボキシル基を有する化合物とのエステル、
(B)2〜4個のヒドロキシル基を有する化合物と、1個のヒドロキシル基を有する化合物とのエーテル、
(C)2〜4個のカルボキシル基を有する化合物と、1個のヒドロキシル基を有する化合物とのエステル、
(D)炭化水素に、エーテル結合(−O−)、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、及びカーボネート結合(−OCOO−)から成る群から選択されるいずれか1つが挿入された化合物、
(E)ポリC2〜6アルキレングリコール、又はそのエステル若しくはエーテル、あるいは
(F)鎖状炭化水素、
である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記血液改質剤が、(A1)鎖状炭化水素テトラオールと脂肪酸とのエステル、(A2)鎖状炭化水素トリオールと脂肪酸とのエステル、(A3)鎖状炭化水素ジオールと脂肪酸とのエステル、(B1)鎖状炭化水素テトラオールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、(B2)鎖状炭化水素トリオールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、(B3)鎖状炭化水素ジオールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、(C1)4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素テトラカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、脂肪族1価アルコールとのエステル、(C2)3個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素トリカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、脂肪族1価アルコールとのエステル、(C3)2個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ジカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、脂肪族1価アルコールとのエステル、(D1)脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、(D2)ジアルキルケトン、(D3)脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステル、(D4)ジアルキルカーボネート、(E1)ポリC2〜6アルキレングリコール、(E2)ポリC2〜6アルキレングリコールと脂肪酸とのエステル、(E3)ポリC2〜6アルキレングリコールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、(E4)ポリC2〜6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラカルボン酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、又は鎖状炭化水素ジカルボン酸とのエステル、(E5)ポリC2〜6アルキレングリコールと、鎖状炭化水素テトラオール、鎖状炭化水素トリオール、又は鎖状炭化水素ジオールとのエーテル、及び(F1)鎖状アルカンから成る群から選択される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記血液改質剤が、2000以下の重量平均分子量を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記液透過性のトップシート及びセカンドシートが、不織布又は織布であり、前記血液改質剤が、前記不織布又は織布の繊維の表面に付着している、請求項1〜13のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項15】
生理用ナプキン又はパンティーライナーである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項16】
液透過性のトップシートと、吸収体と、液不透過性のバックシートと、前記液透過性のトップシート及び吸収体の間のセカンドシートとを有する吸収性物品前駆体に、前記血液改質剤を、前記液透過性のトップシート側からスプレーすることにより製造された、請求項1〜15のいずれか一項に記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−75097(P2013−75097A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217816(P2011−217816)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.サランラップ
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】