説明

吸引容器

【課題】容器の向きに特に注意を払わなくても体液が排出される恐れがなく容易に取り扱うことができる。
【解決手段】筒状の側壁2aおよび該側壁2aの両端を閉塞する端壁2b,2cを有する容器本体2と、一方の端壁2bの略重心位置に設けられ、容器本体2内を減圧状態に排気する排気口3と、他方の端壁2cの略重心位置に設けられ、体液が流入させられる流入口4とを備える吸引容器1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カテーテルと吸引チューブとの間に接続され、カテーテルを介して吸引した体液を貯留する容器が知られている(例えば、非特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】”アトム羊水吸引カテーテル”、[online]、2007年7月6日、アトムメディカル株式会社、[平成22年5月17日検索]、インターネット<URL:http://www.atomed.co.jp/tmp/pdf/dis/YousuiKyuinCatheter_1.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1の容器の場合、容器が傾いたり倒れたりすると、内部に吸引した体液が吸引チューブ内に排出されてしまうので、操作者は、体液の吸引と同時に容器を常に一定の方向に向けるように注意を払いわなければならない。特に、操作者が一方の手に容器を持ち、他方の手でカテーテルを操作する場合には、カテーテルの操作に集中することが困難であり、取り扱いが容易でないという不都合がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、容器の向きに特に注意を払わなくても体液が排出される恐れがなく容易に取り扱うことができる吸引容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、筒状の側壁および該側壁の両端を閉塞する端壁を有する容器本体と、一方の前記端壁の略重心位置に設けられ、前記容器本体内を減圧状態に排気する排気口と、他方の前記端壁の略重心位置に設けられ、体液が流入させられる流入口とを備える吸引容器を提供する。
【0007】
本発明によれば、体腔内に挿入されたカテーテルなどを流入口に接続し、シリンジなどの吸引手段を排気口に接続し、吸引手段により排気口から容器本体内を排気することにより、体腔内の体液をカテーテルなどを介して容器本体内に吸引して貯留させることができる。
【0008】
この場合に、操作者が吸引手段を操作するときに、通常の使用方法においては、吸引手段の接続されている一方の端壁が下方に向けられることはなく、容器本体は側壁を略水平にしてまたは他方の端壁を下方に向けて配置される。そのため、容器本体が側壁を略水平にして配置されても、その周方向の向きに依らずに排気口の下方に十分な収容空間が確保されるので、容器の向きに特に注意を払わなくても体液が排出される恐れがなく容易に取り扱うことができる。
【0009】
上記発明においては、前記他方の端壁が、前記側壁および流入口と連続し、前記側壁に略直交して平坦にまたは前記側壁から前記流入口に向かって漸次先細に形成された内面を有していてもよい。
このようにすることで、体液の吸引後、カテーテルなどを取り外した流入口を下方に向けて他の容器内などに設置した状態で、容器本体の上側に配置された排気口を大気圧に開放するまたは排気口から容器本体内を加圧するだけで、体液が他方の端壁の内面に沿って滑らかに流入口から他の容器内などに排出される。これにより、容器本体内に採取した体液を他の容器などに容易に移し替えることができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記容器本体の側壁が、円筒状または多角筒状であってもよい。
このようにすることで、容器本体の形状を簡略にすることができる。また、排気口および流入口が各端壁の略重心位置に設けられている場合には、吸引時の容器本体の周方向の方向性がよりなくなるので、さらに取り扱いを容易にすることができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記他方の端壁が、テーパ状であってもよい。
このようにすることで、容器本体内の体液をより効率良く排出することができる。
また、上記発明においては、前記排気口が、前記一方の端壁から、該一方の端壁と前記他方の端壁との間の途中位置まで延びた管状であってもよい。
このようにすることで、一方の端壁を下方に向けて容器本体を載置したときに、一方の端壁より高い位置に排気口が配置されるので、容器本体内に貯留した体液が一定量以下の場合には排気口から漏れることを防ぐことができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記排気口は、前記一方の端壁から、前記側壁の長手方向の長さの4分の1以上2分の1以下の距離まで延びていることが好ましい。
このようにすることで、容器本体をいずれの方向に向けても、体液が一定量以下の場合には、体液の液面より上方に排気口が配置されるので、体液が排出されることをさらに確実に防止することができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記排気口が、前記一方の端壁の内側において、前記流入口に対して異なる方向を向いて開口していてもよい。
このようにすることで、体液が流入口から容器本体内に流入したときに飛沫しても、その飛沫が排気口から容器本体外に排出されることを防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、容器の向きに特に注意を払わなくても体液が排出される恐れがなく容易に取り扱うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る吸引容器の全体構成を示す(a)縦断面図および(b)正面図である。
【図2】排気管の長さの範囲を導出するための変数を示した図である。
【図3】図1の吸引容器内に体液を吸引するときの使用方法を説明する図である。
【図4】図1の吸引容器内に採取した体液を他の容器に移し替えるときの使用方法を説明する図である。
【図5】図1に示される容器本体の変形例を示す図である。
【図6】図1に示される容器本体のもう1つの変形例を示す図である。
【図7】図1に示される容器本体のもう1つの変形例を示す図である。
【図8】図1の排気口の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の一実施形態に係る吸引容器1について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る吸引容器1は、図1(a),(b)に示されるように、筒状の側壁2aおよび該側壁2aの両端を閉塞する端壁2b,2cを有する筒状の容器本体2と、該容器本体2の一方の端壁2bの略中心位置に設けられた排気口3と、容器本体2の他方の端壁2cの略中心位置に設けられた流入口4とを備えている。
【0017】
容器本体2の側壁2aは、円形の横断面形状を有し略一定の内径寸法を有する直筒状のである。また、側壁2aは、容器本体2の長さ方向の寸法に対する外径寸法の比が1以上に形成されている。これにより、容器本体2の容積に対して側壁2aから排気口3までの距離が十分に確保され、容器本体2を側壁の略水平にして配置しても、十分な量の体液を排気口3から排出されることなく収容することができる。
【0018】
容器本体2の一方の端壁2b(以下、平端壁2bという。)は、側壁2aに略垂直に平坦に形成され、他方の端壁2c(以下、テーパ端壁2cという。)は、その略中心に向かって直線的に漸次先細になるテーパ状に形成されている。また、各端壁2b,2cの内面と側壁2aの内面とは互いに連続している。
【0019】
容器本体2を構成する材料としては、生体試料に対して安定であり十分に丈夫な材料であればよく、例えば、ポリスチレンやプリプロピレンなどが好ましい。また、容器本体2は、内部に収容された体液を外側から観察できるように、透明または半透明であることが好ましい。容器本体2の内面は、体液が付着することによる排出時の体液の残留を防ぐために、撥水加工が施されていてもよい。
【0020】
排気口3は、平端壁2bから容器本体2の内側に向かって略垂直に延びた管状であり、平端壁2bとテーパ端壁2cとの間の途中位置に、開口を有する先端面が配置されている。
流入口4は、テーパ端壁2cの頂点部分に設けられている。これにより、排気口3を開放した状態で、または、排気口3から容器本体2内を加圧した状態で流入口4を下方に向けるだけで、容器本体2内に収容された体液を、側壁2aおよびテーパ端壁2cの内面に沿って滑らかに流入口4から排出させることができる。
【0021】
また、排気口3および流入口4は各端壁2b,2cの外側に突出して形成され、排気口3にはシリンジや吸引チューブなどの吸引手段を、流入口4にはカテーテルを、それぞれ接続可能になっている。
【0022】
ここで、排気口3の、平端壁2bから容器本体2内の先端面までの長さは、側壁2aの長さ方向の寸法(高さ)の1/4以上1/2以下であることが好ましい。このようにすることで、容器本体2を平端壁2bを下に向けて配置しても、体液の液面よりも上方に排気口3の先端面を配置させることができる。
【0023】
なお、上記の排気口3の長さの範囲は、以下のようにして導出される。
図2に示されるように、平端壁2bを底面としたときの側壁2aの半径をx、側壁2aの高さをy、テーパ端壁2cの高さをzとする。一方、容器本体2を側壁2aを水平にして配置したときに、体液Aの液面が排気口3に達するまで容器本体2内に体液を貯留できる。このときの体液Aの体積は、容器本体2の体積の約半分となり、この体積を容器本体2の最大容量とする。
【0024】
容器本体2内に最大容量まで体液Aを貯留した状態で平端壁2bを下方に向けて容器本体2を載置したときの体液Aの液面の高さhは、(y+z/3)/2となる。ここで、テーパ端壁2cにより形成された円錐状の空間を小さくしたときに、すなわち、zをゼロに近づけたときに、液面の高さhはy/2に近づく。すなわち、テーパ端壁2cの形状によらず、排気口3が側壁2aの長さ寸法の少なくとも1/2あれば、平端壁2bを下に向けて容器本体2を配置しても、排気口3から体液が排出されることを防ぐことができる。
【0025】
一方、円錐状の空間を大きくしたときに、すなわち、yに対してzを十分に大きくしたときに、液面の高さhはy/6に近づく。しかし、使用時の取り扱いやすさの点から、テーパ端壁2cの高さzは側壁2aの高さyの3倍以内に設計されることが好ましく、テーパ端壁2cの高さzを側壁2aの高さyの3倍にしたときの液面の高さhはy/4となる。すなわち、円錐状の空間を最大に設計しても、排気口3が少なくとも側壁2aの長さ寸法の1/4あれば、排気口3から体液が排出されることを防ぐことができる。
【0026】
ここで、容器本体2の各壁2a,2b,2cの厚さは、各寸法x,y,zに対して十分に薄いため、上述の計算においては無視できるものとする。
なお、平端壁2bから容器本体2内の先端面までの排気口3の長さは、平端壁2bの長さ方向の寸法の1/3以上1/2以下がより好ましく、2/5以上1/2以下がさらに好ましい。
【0027】
具体的には、最大容量が50mlの容器本体2を製造する場合、側壁2aの半径xを2.5cm、側壁2aの高さyを5cm、テーパ端壁2cの高さzを1cmにする。このときに、排気口3の平端壁2bから容器本体2内の先端面までの長さを2.5cmにすることにより、容器本体2のいずれの面を下に向けても体液Aの液面が排気口3の先端面の下方に配置させることができる。
【0028】
このように構成された本実施形態に係る吸引容器1の使用方法および作用について以下に説明する。
本実施形態に係る吸引容器1を使用して体液を採取するには、図3に示されるように、排気口3に吸引手段であるシリンジ5を接続し、流入口4にカテーテル6を接続する。そして、カテーテル6を体腔内に挿入し、シリンジ5のプランジャ5aを引くことにより排気口3から容器本体2内の空気を排気して減圧状態にする。これにより、カテーテル6内を吸引されてきた体液を容器本体2内に貯留させることができる。
【0029】
また、このようにして容器本体2内に体液Aを採取した後、例えば、図4に示されるように、カテーテル6を取り外した流入口4を下に向けて他の容器7内に挿入し、プランジャ5aを押すことにより、容器本体2内の体液Aを十分に流入口4から他の容器7内に移し替えることができる。
【0030】
この場合に、本実施形態によれば、容器本体2がどのような向きで配置されても、内部に収容された体液の液面の上方に排気口3の先端面の開口が配置されるので、体液が排気口3から排出される恐れがない。したがって、操作者が一方の手でカテーテル6を操作し、他方の手で容器本体2とシリンジ5を保持しながらプランジャ5aを操作する場合でも、容器本体2の向きに注意を払う必要がないので、カテーテル6とプランジャ5aの操作にのみ集中することが可能になり、取り扱いを容易にすることができるという利点がある。
【0031】
また、体液を他の容器7に移し替えるときには、簡便な操作のみで容器本体2内を開放することなく移し替えることができるので、体液が容器本体2の外側にこぼれたりする不都合を防止することができる。
【0032】
なお、上記実施形態においては、容器本体2の側壁2aが、円形の横断面形状を有する円筒状であることとしたが、側壁2aの形状はこれに限定されるものではなく、多角形、好ましくは正多角形の横断面形状を有する多角筒状であってもよい。このようにしても、容器本体2がその中心軸線に対して回転対象な形状を有するので、吸引時の容器本体2の向きに注意を払う必要がなく、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0033】
また、上記実施形態においては、テーパ端壁2cが、側壁2aから流入口4に向かって直線状に形成されていることとしたが、これに代えて、湾曲して形成されていてもよい。例えば、図5に示されるように、テーパ端壁2cの内面が窪んでいてもよく、図6に示されるように、テーパ端壁2cの内面が盛り上がっていてもよい。また、両方の端壁が、図7に示されるように、側壁2aに対して略垂直に平坦に形成された平端壁2bであってもよい。
このようにしても、流入口4から体液を排出させる際に、体液が容器本体2内に取りこぼされるのを防いで十分に効率良く排出させることができる。
【0034】
また、上記実施形態においては、排気口3が、流入口4に対して側方または後方を向いて開口していてもよい。例えば、図8に示されるように、排気口3が、途中位置で屈曲して流入口4に対して90°側方を向いて形成されていてもよい。
このようにすることで、流入口4から容器本体2内に吸引されてきた体液が吸引の勢いなどで飛沫しても、その体液の飛沫が排気口3内に直接侵入して排出されてしまうことを防ぐことができる。
【実施例】
【0035】
次に、上述した実施形態の実施例について説明する。
〔実施例1〕
図1に示されるような、平端壁とテーパ端壁を有する容器本体を備えた実施例1に係る吸引容器を作成した。側壁の半径を1cm、側壁の長さ方向の寸法を2cm、テーパ端壁の中心軸方向の寸法を1cmとした。また、平端壁の略中心位置から内側に略垂直に延びる0.67cmの長さの排気口を設けた。
【0036】
このように作成された本実施例に係る吸引容器の流入口にカテーテルを接続し、排気口ンにシリンジを接続した。そして、体内に予め挿入された内視鏡のチャネルを介してカテーテルを体内に挿入し、シリンジのプランジャを引くことにより、膵液を体内からカテーテル内を介して容器本体内に吸引した。このときに、容器本体の向きが変わっても、内部に収容された排気口から体液が排出されてしまうことがなく、操作者は容器本体の向きに注意を払わなくても正常に膵液を吸引することができた。
【符号の説明】
【0037】
1 吸引容器
2 容器本体
2a 側壁
2b 平端壁(一方の端壁)
2c テーパ端壁(他方の端壁)
3 排気口
4 流入口
5 シリンジ
5a プランジャ
6 カテーテル
7 他の容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の側壁および該側壁の両端を閉塞する端壁を有する容器本体と、
一方の前記端壁の略重心位置に設けられ、前記容器本体内を減圧状態に排気する排気口と、
他方の前記端壁の略重心位置に設けられ、体液が流入させられる流入口とを備える吸引容器。
【請求項2】
前記他方の端壁が、前記側壁および流入口と連続し、前記側壁に略直交して平坦にまたは前記側壁から前記流入口に向かって漸次先細に形成された内面を有している請求項1に記載の吸引容器。
【請求項3】
前記側壁が、円筒状または多角筒状である請求項1または請求項2に記載の吸引容器。
【請求項4】
前記他方の端壁が、テーパ状である請求項1から請求項3のいずれかに記載の吸引容器。
【請求項5】
前記排気口が、前記一方の端壁から、該一方の端壁と前記他方の端壁との間の途中位置まで延びた管状である請求項1から請求項4のいずれかに記載の吸引容器。
【請求項6】
前記排気口は、前記一方の端壁から、前記側壁の長さ方向の寸法の4分の1以上2分の1以下の距離まで延びている請求項5に記載の吸引容器。
【請求項7】
前記排気口が、前記一方の端壁の内側において、前記流入口に対して異なる方向を向いて開口している請求項5または請求項6に記載の吸引容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−135351(P2012−135351A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288074(P2010−288074)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】