説明

吸引式壜台、及びこれを用いた容器搬送装置並びに容器検査装置

【課題】ペタロイド形状など外周部に凹凸が設けられた形状の底部を有する容器を確実に保持することが可能な吸引式壜台を提供する。
【解決手段】容器100の底部101を支持する支持面20aを有し、その底部101に吸引力を作用させて容器100を保持する壜台20において、支持面20aとなる天面23bの中央部に開口するヘッド収容穴23a及びヘッド収容穴23aに開口する吸引路35を備えたロータ23と、ヘッド収容穴23a内に上下動可能なように収容され、内部には吸引路35と接続されて上端に一端が開口するガス通路39dが設けられる吸引ヘッド24と、吸引ヘッド24の上端の高さがロータ23の天面23bの高さ以下になるように吸引ヘッド24を下方に付勢するスプリング25とを備え、容器100を保持させるべく吸引路35に作用させた吸引力を利用して減圧室S2を減圧し、これにより吸引ヘッド24を上方に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の底部に吸引力を作用させてその容器を保持する吸引式壜台、及びこれを用いた容器搬送装置並びに容器検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の搬送経路に沿って容器を搬送しつつその容器を自転させ、自転している容器の外観を撮像して容器の外観の異常の有無を検査する検査装置が知られている。このような検査装置では、容器の外観を撮像する際に邪魔にならないように壜台の上に載置された容器の底部を保持してその容器を搬送することが望ましい。このように底部を保持して容器を搬送すべくスターホイール装置などの搬送装置に使用される壜台として、壜台の上端に吸着カップ(吸引カップや吸着パッドとも呼ばれる。)などの吸着部を設け、この吸着部に吸引力を作用させつつ吸着部を容器の底部に接触させてその底部を吸引保持する吸引式壜台が知られている。このような壜台として、容器の底面に刻印などの凸部が設けられた容器を吸引保持すべく尖端部の断面がV字形であり、そのV字形の外周部と内周部とを容器の底面に接触させる吸着パッドを備えたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−2658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
容器の検査装置では、外周部に下方に突出する凸部が周方向に所定間隔で設けられた形状、いわゆるペタロイド形状の底部を有する容器の検査も行われる。このようなペタロイド形状の底部を有する容器としては、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)製の容器いわゆるペットボトルが知られている。ペタロイド形状の底部を有する容器を吸引保持すべく、特許文献1の壜台に設けられた吸着パッドをこの容器の底部に接触させても、外周部の凸部によって容器の凸部と吸着パッドとの間に隙間が形成されるので、吸着パッドに吸引力を作用させたときにこの隙間から空気が吸い込まれて吸着パッド内の圧力が低下しない。そのため、吸着パッドが容器の底部に密着せず、容器の保持が不十分になるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、ペタロイド形状など外周部に凹凸が設けられた形状の底部を有する容器を確実に保持することが可能な吸引式壜台及び容器搬送装置並びに容器検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の吸引式壜台は、保持対象の容器(100)の底部(101)を支持する支持面(20a)を有し、前記保持対象の容器の底部に吸引力を作用させてその容器を保持する吸引式壜台(20)において、前記支持面となる天面(23b)を有する上端には前記天面の中央部に開口するヘッド収容穴(23a)が、内部には前記ヘッド収容穴に開口する吸引路(35)がそれぞれ設けられた壜台本体(23)と、前記ヘッド収容穴内に上下動可能なように収容され、内部には前記吸引路と接続されて上端に一端が開口するガス通路(39d)が設けられる吸引ヘッド(24)と、前記吸引ヘッドの上端の高さが前記壜台本体の前記天面の高さ以下になるように前記吸引ヘッドを下方に付勢する付勢手段(25)と、前記保持対象の容器を保持させるべく前記吸引路に作用させた吸引力を利用して前記吸引ヘッドの上端が前記壜台本体の前記天面よりも上方に突出するように前記付勢手段に抗して前記吸引ヘッドを上方に移動させる駆動手段(S1、S2)と、を備えることにより、上述した課題を解決する。
【0007】
本発明の吸引式壜台によれば、支持面の中央部に容器の底部の中央部が位置するように支持面に容器を載置することにより、吸引路に吸引力を作用させたときに駆動手段で吸引ヘッドを壜台本体の天面よりも突出させ、吸引ヘッドの上端を容器の底部の中央部に近付けることができる。これにより、底部の中央部に吸引力を作用させることができるので、ペタロイド形状などの外周部に凹凸がある形状の底部を有する容器を確実に保持することができる。一方、吸引路に吸引力が作用していないときは、吸引ヘッドの上端の高さが壜台本体の天面の高さ以下になるように吸引ヘッドが付勢手段で下方に付勢されるので、壜台の支持面から突出するものが無くなる。そのため、容器を上下させたり傾かせたりすることなく容器をこの壜台に移動させることができる。駆動手段は吸引路に作用させた吸引力を利用して吸引ヘッドを移動させるので、新たにモータやアクチュエータなどの駆動源を設ける必要がない。そのため、構造を簡略化できるとともに、コストを低減できる。
【0008】
本発明の吸引式壜台の一形態において、前記吸引ヘッドには、半径方向外周に突出し、前記ヘッド収容穴を上下方向に仕切るフランジ部(39b)が設けられ、前記ヘッド収容穴の内部には、前記フランジ部の下面と前記ヘッド収容穴の底部とによって前記フランジ部の下側に形成され、かつ外部と連通する空気導入室(S1)と、前記吸引ヘッドの側面、前記フランジ部の上面、及び前記ヘッド収容穴の内面によって前記フランジ部の上側に形成され、かつ前記吸引路と接続される減圧室(S2)と、が設けられ、前記駆動手段は、前記減圧室及び前記空気導入室であってもよい。この場合、吸引路に吸引力を作用させると減圧室から空気が吸引されるので、減圧室の圧力が低下する。一方、空気導入室は外部と連通しているので、空気導入室の圧力は大気圧に維持される。そのため、この減圧室の圧力と空気導入室の圧力との差によって吸引ヘッドを上方に移動させることができる。この形態では、壜台の外部に駆動手段を設ける必要がないので、壜台をコンパクトにすることができる。
【0009】
この形態において、前記ガス通路は、その他端が前記吸引ヘッドの側面に開口して前記減圧室と連通しており、前記減圧室は、前記吸引路と前記ガス通路との間の空気吸引経路を形成してもよい。この場合、減圧室の他に吸引路とガス通路とを接続する通路を壜台本体に設ける必要がない。そのため、壜台本体の構造を簡略化できる。また、製造する際の加工の手間を軽減できる。
【0010】
本発明の吸引式壜台の一形態において、前記ヘッド収容穴には、半径方向内周に突出し、前記保持対象の容器の底部に前記吸引ヘッドの上端が接触するとともに前記保持対象の容器の底部の外周部が前記壜台本体の前記天面に支持される上限位置よりも上方に前記吸引ヘッドが移動することを制限する移動制限部材(31)が設けられていてもよい。この場合、吸引ヘッドが上限位置より上方に移動することを制限できるので、支持面から容器の底部の外周部が離間すること、いわゆる支持面から容器が浮くことを防止できる。そのため、支持面で容器の底部の外周部を支持しつつ吸引ヘッドの上端を容器の底部の中央部に接触させて容器の底部に吸引力を作用させることができる。従って、容器をより確実に保持することができる。
【0011】
本発明の吸引式壜台の一形態においては、内部空間(40c)が前記ガス通路と接続されるようにして前記吸引ヘッドに取り付けられ、前記吸引路への吸引力の作用に伴って前記保持対象の容器の底部に吸着するよう変形可能な弾性体製の吸着カップ(40)をさらに備えていてもよい。この場合、容器の底部に吸着カップを吸着させて容器を保持できるので、容器をより確実に保持することができる。
【0012】
本発明の容器搬送装置は、所定の搬送経路に沿って容器(100)を搬送する容器搬送装置(10)において、上述した吸引式壜台(20)と、前記吸引式壜台を前記所定の搬送経路に沿って移動させる移動手段(14)と、を備えることにより、上述した課題を解決する。
【0013】
本発明の容器搬送装置によれば、上述した本発明の吸引式壜台を備えるので、ペタロイド形状などの外周部に凹凸が設けられた形状の底部を有する容器を確実に保持できる。そのため、この容器を移動手段によって確実に移動させることができる。また、上述した吸引式壜台では壜台本体が上下方向に移動しないので、本発明の容器搬送装置では、容器の高さ方向の位置を変更することなく、すなわち容器をほぼ水平に搬送することができる。
【0014】
本発明の容器検査装置は、所定の搬送経路に沿って容器(100)を搬送しつつ搬送中の容器を撮像し、得られた画像に基づいてその容器の異常の有無を検査する容器検査装置(1)において、上述した吸引式壜台(20)と、前記吸引式壜台を前記所定の搬送経路に沿って移動させる移動手段(14)とを有する容器搬送装置(10)と、前記容器搬送装置によって搬送されている容器を撮像する撮像手段(5)と、を備えることにより、上述した課題を解決する。
【0015】
本発明の容器検査装置によれば、上述した本発明の吸引式壜台を有する容器搬送装置で容器を搬送するので、ペタロイド形状などの外周部に凹凸が設けられた形状の底部を有する容器であっても容器の底部を確実に吸引保持して搬送できる。そのため、底部以外の部分の容器の検査をこの搬送中に行うことができる。また、壜台上に容器を確実に吸引保持できるので、搬送中の容器の振動を抑制し、検査精度を向上させることができる。さらに、上述したように本発明の吸引式壜台を有する容器搬送装置では、高さ方向の位置を変更することなく、すなわち容器をほぼ水平に搬送することができる。そのため、容器を検査することが可能な搬送区間が限定されるなど容器の検査方法に無駄な制約が課されることを抑制できる。
【0016】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0017】
以上に説明したように、本発明によれば、吸引路に吸引力を作用させることにより、吸引ヘッドを容器の底部の中央部に近付けることができるので、この底部の中央部に吸引力を作用させることができる。そのため、ペタロイド形状など外周部に凹凸がある形状の底部を有する容器を確実に保持することができる。特に、このような形状の底部が設けられるPET製の容器(ペットボトル)はガラス製の壜などと比較して軽いので、このように底部を確実に保持することにより搬送中に容器が転倒することをより確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の一形態に係る容器検査装置を示している。この容器検査装置1は、図2に一例を示した容器100に対して検査を行うものである。容器100は、PET製の容器いわゆるペットボトルであり、飲料などの内容物が充填されて密閉される周知のものである。図2に示したように容器100の底部101の外周部101aには、下方に突出する複数(例えば5個)の凸部102が設けられている。図2に示したように複数の凸部102は、周方向に所定の間隔で設けられている。そのため、容器100の底部101は、外周部101aに対して中央部101bが凹み、かつ外周部101aに周方向に凹凸が交互に設けられた形状、いわゆるペタロイド形状に形成されている。
【0019】
容器検査装置1は、この容器100を所定経路に沿って搬送しつつその搬送中の容器100に対して種々の検査を行うものである。検査としては、例えば容器100の外観の異常の有無を検査する外観検査が行われる。容器検査装置1は、容器100を所定経路に沿って搬送させるために搬送方向上流側から順に、スクリュー式搬送装置2、第1スターホイール式搬送装置3、容器搬送装置としてのホイール式搬送装置10、及び第2スターホイール式搬送装置4を備えている。また、容器検査装置1は、搬送されている容器100の外観を撮像する撮像手段としての複数のカメラ5を備えている。第2スターホイール式搬送装置4から排出された容器100は、排出コンベア6にて下流の工程に搬送される。第1スターホイール式搬送装置3及び第2スターホイール式搬送装置4は、スターホイール3a、4aの外周に等間隔で設けられた複数のポケット(不図示)に容器100を取り込んで搬送する周知のものである。また、スクリュー式搬送装置2は、スクリュー2aによって容器100の間隔を下流の第1スターホイール式搬送装置3のポケット間のピッチに揃える周知のものである。そのため、これらの搬送装置2、3、4についての詳細な説明は省略する。また、容器検査装置1による外観検査の方法は、複数のカメラ5で撮像した容器100の各部の画像に基づいて容器100の外観の異常の有無を検査する周知の検査方法でよいため、詳細な説明は省略する。
【0020】
図3は、ホイール式搬送装置10の断面を示した図である。ホイール式搬送装置10は、本発明の一形態に係る壜台20の支持面20a上に載置された容器100を壜台20に保持させ、この壜台20に保持させた容器100を自転させつつ所定の搬送経路に沿って搬送するものである。図3に示したようにホイール式搬送装置10は、架台11に複数の軸受12を介して回転自在に支持される回転軸13と、回転軸13の上端に取り付けられて回転軸13と一体回転する移動手段としての円盤状のホイール14と、ホイール14の外周に周方向に等間隔で設けられる複数の壜台20とを備えている。回転軸13の下端にはギア15が一体回転するように設けられており、このギア15に不図示の駆動モータの回転が伝達されることにより回転軸13及びホイール14が回転駆動される。また、ホイール式搬送装置10は、壜台20による容器100の保持及びその保持の解除を切り替えるための切替弁16を備えている。切替弁16は、吸引手段としての吸引ポンプ17と壜台20との間の空気吸引経路の途中に設けられ、ホイール式搬送装置10で容器100を搬送すべき区間において壜台20に吸引力が作用するように吸引ポンプ17と壜台20との接続及び遮断を切り替える周知のものである。そのため、詳細な説明は省略する。
【0021】
図4を参照して壜台20について説明する。なお、図4は壜台20の内部を拡大して示す図である。図4に示したように壜台20は、ホイール14に形成された壜台取付孔14aに嵌め合わされるホルダ21と、ホルダ21に軸受22を介して取り付けられて軸線CLの回りに回転自在な壜台本体としてのロータ23と、ロータ23の上端に形成されたヘッド収容穴23aに上下動可能に収容される吸引ヘッド24と、吸引ヘッド24を下方に付勢する付勢手段としてのスプリング25とを備えている。図4に示したようにロータ23と吸引ヘッド24とは同軸に設けられる。そのため、吸引ヘッド24は支持面20aの中央部に配置される。ホルダ21は、ステンレス鋼などの金属にて構成されている。
【0022】
ロータ23は、軸受22の内周に嵌め合わされ、上端に半径方向外周に突出する円盤状のフランジ部26aを有するロータ軸26と、ロータ軸26のフランジ部26aの上面を覆うように設けられる円盤状の蓋部27と、蓋部27の上面に取り付けられ、中心部に吸引ヘッド24が挿入される挿入孔29が設けられる円筒状のケース部28とを備えている。これらロータ軸26、蓋部27、及びケース部28は、ステンレス鋼などの金属にて構成されている。図4に示したようにロータ軸26、蓋部27、及びケース部28は、壜台20の軸線CLと同軸に設けられる。フランジ部26a、蓋部27、及びケース部28のそれぞれの外径は同じである。蓋部27は、蓋部27の下面に設けられた凹部がフランジ部26aの上面に設けられた凸部に嵌るようにフランジ部26aに取り付けられる。ケース部28は、挿入孔29が蓋部27の上面に設けられた凸部に嵌るように蓋部27に取り付けられる。そして、蓋部27及びケース部28は周方向に所定の間隔で設けられる複数(図4では2本のみを示す。)のボルト30で、ロータ軸26に固定される。このようにケース部28を蓋部27に取り付けることにより、挿入孔29及び蓋部27にてヘッド収容穴23aが形成される。図3に示したようにロータ軸26にはロータ23を軸線CLの回りに回転させるためのプーリ26bが取り付けられている。プーリ26bはホイール14の回転経路の一部に設けられた不図示のベルトと噛み合い、そのベルトの走行に伴って回転駆動される。
【0023】
ケース部28の挿入孔29には、上方から順に吸引ヘッド24の胴部39aの外径とほぼ同じ内径で形成され、その胴部39aが挿入される摺動部29a、吸引ヘッド24と挿入孔29との間に空間が形成されるように吸引ヘッド24の胴部39aの外径より大きく、かつ吸引ヘッド24のフランジ部39bの外径より小さい内径で形成される空間形成部29b、及び吸引ヘッド24のフランジ部39bの外径とほぼ同じ内径で形成され、そのフランジ部39bが嵌る大径部29cが設けられる。
【0024】
図4に示したようにケース部28の上面において、挿入孔29の周囲には下方に凹む凹部28aが形成される。この凹部28aには、内周部に下方に突出する凸部31aが設けられ、内径が摺動部29aの内径よりも小さい移動制限部材としてのストッパ部材31が嵌め込まれる。凹部28aは、ストッパ部材31の上面がケース部28の上面から突出しないようにストッパ部材31を嵌め込むことが可能なように形成される。ケース部28の上面には、この上面を覆うようにゴムなどの弾性体製のパッド32が取り付けられる。そして、ストッパ部材31は、パッド32とケース部28とに挟み込まれることにより、ケース部28に固定される。パッド32の中央には、上下方向に貫通し、摺動部29aの内径と同じ内径で形成される貫通孔32aが設けられている。このようにケース部28の上面にパッド32を取り付けることにより、パッド32の上面がロータ23の天面23bとなり、壜台20の支持面20aとなる。
【0025】
ケース部28の下端には、半径方向に延びてケース部28の内周面と外周面とにそれぞれ開口し、ケース部28を蓋部27に取り付けた際にヘッド収容穴23aの下端に空気導入孔33が形成されるように設けられる空気溝28bが設けられている。蓋部27の中央には、頭部34aがヘッド収容穴23a内に突出するように取り付けられる下限位置調整部材34が設けられる。図4に示したように、下限位置調整部材34の頭部34aの高さは、吸引ヘッド24がスプリング25で下方に付勢され、吸引ヘッド24の下面が下限位置調整部材34と当接しているときに、吸引ヘッド24の上端の高さがロータ23の天面の高さとほぼ同じになるように設定される。以降、このように吸引ヘッド24の上端の高さがロータ23の天面の高さとほぼ同じになる位置を吸引ヘッド24の下限位置と称することがある。
【0026】
図3及び図4に示したようにロータ23は、その内部に吸引路35を備えている。吸引路35は、ロータ軸26の内部に設けられる第1吸引路36、フランジ部26aと蓋部27にて形成される第2吸引路37、及びケース部28に設けられる第3吸引路38にて形成される。第1吸引路36は、ロータ軸26の軸線上、すなわち壜台20の軸線CL上に形成されている。第1吸引路36の上端はフランジ部26aの上面に開口する。図3に示したように第1吸引路36の下端には継ぎ手18が取り付けられ、吸引路35はこの継ぎ手18に接続された接続配管19を介して切替弁16と接続される。第2吸引路37は、第1吸引路36から半径方向外周に延びるようにフランジ部26aの上面に設けられた溝26cと、蓋部27に上下方向に貫通するように設けられた貫通孔27aとによって形成される。
【0027】
図4に示したように溝26cは、フランジ部26aの中心から半径方向外周に延び、蓋部27の貫通孔27aが配置される位置まで、すなわちフランジ部26aの外周面に達することがないように設けられる。そのため、蓋部27をフランジ部26aの上面に取り付けることにより、溝26cと蓋部27とによって通路を形成することができる。そして、第2吸引路37は、この通路と貫通孔27aとによって形成される。図4に示したように第3吸引路38は、ケース部28の下面から上方に向かって形成され、挿入孔29の空間形成部29bに設けられた溝部29dと連通するように設けられている。そして、これら第1吸引路36、第2吸引路37、及び第3吸引路38を接続することにより、図4に示したようにロータ軸26からヘッド収容穴23aの底部を迂回して挿入孔29の空間形成部29bすなわちヘッド収容穴23aの側面に開口する吸引路35を形成することができる。
【0028】
吸引ヘッド24は、ヘッド本体39と、ヘッド本体39の上端に取り付けられるゴムなどの弾性体製の吸着カップ40とを備えている。ヘッド本体39は、ステンレス鋼などの金属製であり、円筒状の胴部39aと、胴部39aの下端に設けられて半径方向外周に突出する円盤状のフランジ部39bとを備えている。胴部39aの上端には、ヘッド取付部39cが設けられている。胴部39aの内部には、一端がヘッド取付部39cの上面の中央に開口し、他端が胴部39aの側面に開口するガス通路39dが形成されている。吸着カップ40は、ヘッド取付部39cに取り付けられるカップ本体40aと、カップ本体40aの上部に設けられるベローズ部40bとを備えている。カップ本体40aの内部には、上下方向に貫通してベローズ部40bの内部空間40cと連通する吸引孔40dが形成されている。吸着カップ40は、吸引孔40dがガス通路39dと連通するようにヘッド取付部39cに取り付けられる。ベローズ部40bの直径Rには、容器100の底部101のうち外周部101aの内周の直径RB(図2参照)より小さい値が設定される。
【0029】
図4に示したように、この吸引ヘッド24を吸着カップ40が上方を向くようにロータ23のヘッド収容穴23a内に取り付けることにより、ヘッド収容穴23aを吸引ヘッド24のフランジ部39bで上下方向に仕切り、ヘッド収容穴23aの内部に空気導入室S1及び減圧室S2を形成することができる。空気導入室S1は、図4に示したようにヘッド収容穴23aの底部とフランジ部39bの下面とによってフランジ部39bの下側に形成される。上述したようにケース部28の下端に設けられた空気溝28bによってヘッド収容穴23aの下端には空気導入孔33が形成されるため、この空気導入室S1は外部と連通している。一方、減圧室S2は、図4に示したように吸引ヘッド24の胴部39aの側面、フランジ部39bの上面、及び空間形成部29bによってフランジ部39bの上側に形成される。上述したように空間形成部29bには吸引路35が開口している。また、胴部39aの側面には、ガス通路39dが開口している。そのため、減圧室S2は、吸引路35とガス通路39dとの間の空気吸引経路となる。また、図4に示したようにスプリング25は、フランジ部39bの上面に設けられた座金41とケース部28の上部とに挟まれるように減圧室S2内に設けられている。
【0030】
この壜台20によれば、切替弁16によって吸引路35と吸引ポンプ17とが接続され、吸引路35から空気の吸引が開始されると、減圧室S2から空気が吸い出されて減圧室S2の圧力が低下する、一方、空気導入室S1は外部と連通しているので、大気圧に維持される。そのため、減圧室S2と空気導入室S1との圧力差を利用して吸引ヘッド24をスプリング25に抗して上方に移動させることができる。このように吸引ヘッド24を駆動することにより、減圧室S2及び空気導入室S1が本発明の駆動手段として機能する。
【0031】
図5は、吸引路35に吸引力を作用させて吸引ヘッド24を上方に移動させた状態の壜台20を示している。図5に示したように、吸引ヘッド24を上方に移動させることにより、吸引ヘッド24の上端を壜台20の支持面20aよりも上方に突出させることができる。そのため、壜台20の支持面20aの中央付近に容器100の底部101の中央部101bが配置されるように壜台20に容器100を載置することにより、図5に示したように吸着カップ40を容器100の底部101の中央部101bに吸着させ、その内部空間40cに作用させた吸引力で容器100を吸引保持することができる。
【0032】
一方、図4に示したように吸引路35に吸引力が作用していないときは、スプリング25によって吸引ヘッド24が下限位置に駆動されるので、壜台20の支持面20a上に突出する突起物が無くなる。そのため、第1スターホイール式搬送装置3から壜台20上への容器100の移動時や壜台20から第2スターホイール式搬送装置4への容器100の移動時に吸引ヘッド24を下限位置に移動させておくことにより、容器100を上下に移動させたり、傾かせたりすることなく壜台20に容器100を載せたり、壜台20から容器100を移動させることができる。
【0033】
図5に示したように、吸引ヘッド24は、胴部39aの上端がストッパ部材31の下端に当たることにより、上方への移動が止められる。上述したように吸引ヘッド24が下限位置にあるときは、吸引ヘッド24の上端の高さがロータ23の天面、すなわち壜台20の支持面20aの高さとほぼ同じである。そのため、吸引ヘッド24が下限位置にあるときの胴部39aの上端とストッパ部材31の下端との距離G(図4参照)は、吸引路35に吸引力を作用させて吸引ヘッド24の上端を壜台20の支持面20aよりも上方に突出させたときの突出量L(図5参照)と等しくなる。従って、ストッパ部材31の凸部31aの厚さを変更してこの距離Gを調整することにより、突出量Lを調整することができる。距離G、すなわち突出量Lとしては、例えば容器100の底部101の各凸部102が壜台20の支持面20aに接し、かつ吸着カップ40が容器100の底部101の中央部101bに吸着する距離が設定される。吸引ヘッド24をこのような位置(以下、上限位置と称することがある。)で止めることにより、容器100の凸部102が支持面20aから離間する、いわゆる容器100が浮くことを防止できるので、容器100を安定に保持できる。
【0034】
以上に説明したように、本発明の壜台20によれば、壜台20に吸引力を作用させることによりその吸引力を利用して吸引ヘッド24を上方に移動させることができるので、図5に示したようにペタロイド形状など、外周部101aに下方に突出する凸部102が設けられた形状の底部101を有する容器100に対してもその底部101の中央部101bを吸着カップ40で吸引保持しつつ支持面20aで底部101の外周部101aを支持できる。そのため、このような形状の底部101を有する容器100を確実に保持することができる。壜台20に吸引力が作用していないときは、壜台20の支持面20a上に突出する突起物が無くなるので、容器100を上下に移動させたり傾かせたりすることなく容器100を速やかに壜台20上に載せたり壜台20上から移動させたりすることができる。吸引ヘッド24の駆動は容器100を吸引保持するために壜台20に作用させた吸引力を利用して行うので、この吸引ヘッド24を駆動するために新たにモータやアクチュエータなどの駆動源を設ける必要がない。そのため、構造を簡略化できるとともに、コストを低減できる。
【0035】
容器100の底部101に設けられる凸部102の突出量は、容器100によって異なる。本発明の壜台20では、壜台20に吸引力を作用させたときの吸引ヘッド24の上端の突出量Lをストッパ部材31を交換することにより、容易に変更することができる。そのため、凸部102の突出量が異なる容器100に壜台20を対応させる、いわゆる型替え作業を簡略化でき、またこの作業時間を短縮することができる。
【0036】
ホイール式搬送装置10によれば、上述した壜台20を備えるので、ペタロイド形状の底部101を有する容器100であっても底部101に吸引力を作用させて容器100を保持することができる。そのため、このような容器100の胴部や口栓部を保持部材で覆うことなく容器100を自転させつつ搬送することができる。従って、ホイール式搬送装置10による搬送中に容器100の底部以外の部分の検査を行うことができる。また、容器100の底部101を確実に吸引保持できるので、自転時及び搬送時の容器100のふらつきを抑制できる。そのため、検査精度を向上させることができる。さらに、上述した壜台20においては、支持面20aが上下方向に移動せず、一定の高さに維持されるので、その支持面20aに載置された容器100の高さ方向の位置を殆ど変化させることなくこの容器100を搬送することができる。すなわち、容器100をほぼ水平に搬送することができる。そのため、容器100の検査を行うことが可能な搬送区間が制限されるなど、容器100の検査に無駄な制約が課されることを抑制できる。
【0037】
本発明は、上述した形態に限定されることなく、種々の形態にて実施してよい。例えば、本発明の壜台にて保持される容器は、ペタロイド形状の底部を有する容器に限定されない。例えば、例えば中央部に対して外周部が全周に亘って下方に突出した形状の底部を有する容器、及び底部が平坦な容器を本発明の壜台で保持してもよい。なお、本発明の壜台に底部が平坦な容器を保持させる場合は、減圧室に吸引力が作用しても吸引ヘッドが下限位置に固定されるようにストッパ部材の凸部の厚さを変更すればよい。また、容器はペットボトルに限定されず、ガラス製の壜でもよい。
【0038】
吸引力が作用していないときの吸引ヘッドの下限位置は、吸引ヘッドの上端と壜台の支持面とが同じ高さになる位置に限定されない。下限位置には、壜台の支持面から吸引ヘッドの上端が突出しない位置が設定されていればよく、例えば、吸引ヘッドの上端が壜台の支持面よりも低くなる位置を設定してもよい。
【0039】
吸引ヘッドを上方に駆動する駆動手段は、減圧室及び空気導入室に限定されない。例えば、内部が減圧されると縮む駆動機構を壜台に設け、この駆動機構に吸引力を作用させて吸引ヘッドを上方に移動させてもよい。
【0040】
本発明の壜台が適用される容器搬送装置は、ホイール式搬送装置に限定されない。本発明の壜台は、壜台を所定の搬送経路に沿って移動させることにより壜台上に載せた容器を搬送する種々の搬送装置に適用してよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一形態に係る容器搬送装置が組み込まれた容器検査装置を示す図。
【図2】図1の容器検査装置で検査される容器の一例を示す図。
【図3】図1のホイール式搬送装置の断面を示す図。
【図4】本発明の一形態に係る壜台を拡大して示す図。
【図5】吸引路に吸引力が作用している状態の壜台を示す図。
【符号の説明】
【0042】
1 容器検査装置
5 カメラ(撮像手段)
10 ホイール式搬送装置
14 ホイール(移動手段)
20 壜台
20a 支持面
23 ロータ(壜台本体)
23a ヘッド収容穴
23b 天面
24 吸引ヘッド
25 スプリング(付勢手段)
31 ストッパ部材(移動制限部材)
35 吸引路
39b フランジ部
39d ガス通路
40 吸着カップ
40c 内部空間
100 容器
101 底部
S1 空気導入室(駆動手段)
S2 減圧室(駆動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持対象の容器の底部を支持する支持面を有し、前記保持対象の容器の底部に吸引力を作用させてその容器を保持する吸引式壜台において、
前記支持面となる天面を有する上端には前記天面の中央部に開口するヘッド収容穴が、内部には前記ヘッド収容穴に開口する吸引路がそれぞれ設けられた壜台本体と、前記ヘッド収容穴内に上下動可能なように収容され、内部には前記吸引路と接続されて上端に一端が開口するガス通路が設けられる吸引ヘッドと、前記吸引ヘッドの上端の高さが前記壜台本体の前記天面の高さ以下になるように前記吸引ヘッドを下方に付勢する付勢手段と、前記保持対象の容器を保持させるべく前記吸引路に作用させた吸引力を利用して前記吸引ヘッドの上端が前記壜台本体の前記天面よりも上方に突出するように前記付勢手段に抗して前記吸引ヘッドを上方に移動させる駆動手段と、を備えることを特徴とする吸引式壜台。
【請求項2】
前記吸引ヘッドには、半径方向外周に突出し、前記ヘッド収容穴を上下方向に仕切るフランジ部が設けられ、
前記ヘッド収容穴の内部には、前記フランジ部の下面と前記ヘッド収容穴の底部とによって前記フランジ部の下側に形成され、かつ外部と連通する空気導入室と、前記吸引ヘッドの側面、前記フランジ部の上面、及び前記ヘッド収容穴の内面によって前記フランジ部の上側に形成され、かつ前記吸引路と接続される減圧室と、が設けられ、
前記駆動手段は、前記減圧室及び前記空気導入室であることを特徴とする請求項1に記載の吸引式壜台。
【請求項3】
前記ガス通路は、その他端が前記吸引ヘッドの側面に開口して前記減圧室と連通しており、
前記減圧室は、前記吸引路と前記ガス通路との間の空気吸引経路を形成することを特徴とする請求項2に記載の吸引式壜台。
【請求項4】
前記ヘッド収容穴には、半径方向内周に突出し、前記保持対象の容器の底部に前記吸引ヘッドの上端が接触するとともに前記保持対象の容器の底部の外周部が前記壜台本体の前記天面に支持される上限位置よりも上方に前記吸引ヘッドが移動することを制限する移動制限部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸引式壜台。
【請求項5】
内部空間が前記ガス通路と接続されるようにして前記吸引ヘッドに取り付けられ、前記吸引路への吸引力の作用に伴って前記保持対象の容器の底部に吸着するよう変形可能な弾性体製の吸着カップをさらに備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸引式壜台。
【請求項6】
所定の搬送経路に沿って容器を搬送する容器搬送装置において、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸引式壜台と、前記吸引式壜台を前記所定の搬送経路に沿って移動させる移動手段と、を備えることを特徴とする容器搬送装置。
【請求項7】
所定の搬送経路に沿って容器を搬送しつつ搬送中の容器を撮像し、得られた画像に基づいてその容器の異常の有無を検査する容器検査装置において、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸引式壜台と、前記吸引式壜台を前記所定の搬送経路に沿って移動させる移動手段とを有する容器搬送装置と、
前記容器搬送装置によって搬送されている容器を撮像する撮像手段と、を備えることを特徴とする容器検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−161270(P2009−161270A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339745(P2007−339745)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(390014661)キリンテクノシステム株式会社 (126)
【Fターム(参考)】