説明

吸引式投薬器

【課題】薬粉が塊状になってもこの塊が吸引されるおそれを確実に排除することができて患者に負担を与えることがない吸引式投薬器を提案する。
【解決手段】本発明の吸引式投薬器は、薬粉を充填した内容器体Pを収納するベース10と、収納室Mに配置された内容器体Pに孔を開ける穿孔部31を有しベース10に覆い被さる蓋体20と、蓋体20に一体連結するとともにその先端に設けた先端開口41を通して薬粉を吸引可能とするノズル40とを備え、蓋体20は、吸引に伴い外気を蓋体20内に導く空気導入孔27を有し、穿孔部31を、蓋体20と一体連結し収納室Mに向けて伸延する筒体30の先端に設け、筒体30の内側に、ノズル40の内側を通して先端開口41に繋がる出口通路Hを形成し、出口通路Hに、複数の微細孔を有するメッシュ部材50を設けることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の吸引により薬剤を投与するのに適した吸引式投薬器に関するものであり、特に粉状の薬剤を鼻から吸引する投薬器に関する。
【背景技術】
【0002】
患者自身が操作することによって鼻腔内面に各種の薬剤を投与する投薬器としては、従来から種々の提案が行われている。このようなものとして例えば特許文献1には、点鼻薬を収容した容器体に上方付勢状態で取り付けられるノズル部材を設け、このノズル部材に被さるように押圧腕を形成し、押圧腕を押し込むことでノズル部材を押し下げて、点鼻薬を霧状にして排出する点鼻薬噴出器が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−75874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した点鼻薬噴出器をはじめ、患者自身の操作によって鼻腔に投与される薬剤は液体であることが一般的であって、霧状にして投与するとはいえ、長時間鼻腔内面に留めておくことは難しく、薬剤が十分な効能を発揮する前に鼻から流れ出してしまうことがあった。一方、薬剤として粉状のものを用いてこの薬粉を鼻腔内面に付着させることで、薬粉を長時間鼻腔内面に留めることも検討されたが、薬粉の保管状況や吸引状況によっては塊状になる場合があり、この塊が吸引によって直接鼻腔内に入り込む不具合が発生するおそれがあって、未だ改善の余地が残されていた。
【0005】
本発明の課題は、薬粉を吸引することで所期する効能を確実に発揮させることが可能であり、しかも、薬粉が塊状になってもこの塊が吸引されるおそれを確実に排除することができて患者に負担を与えることがない新たな吸引式投薬器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、薬粉を充填した内容器体を収納する収納室を有するベースと、該収納室に配置された内容器体に孔を開ける穿孔部を有し該ベースに覆い被さる蓋体と、該蓋体に一体連結するとともにその先端に設けた先端開口を通して内容器体の薬粉を吸引可能とするノズルとを備える吸引式投薬器であって、
前記蓋体は、吸引に伴い外気を該蓋体内に導く空気導入孔を有し、
前記穿孔部を、該蓋体と一体連結し前記収納室に向けて伸延する筒体の先端に設け、
該筒体の内側に、前記ノズルの内側を通して前記先端開口に繋がる出口通路を形成し、
該出口通路に、複数の微細孔を有するメッシュ部材を設けることを特徴とする吸引式投薬器である。
【0007】
前記筒体の外面に、該筒体の軸線に沿って延在する複数本のリブを設け、該リブは、その相互間に前記蓋体内の空気を前記内容器体に導入する外側通路を有することが望ましい。
【0008】
前記出口通路に、吸引に伴い該出口通路内の空気を旋回させる螺旋状部材を設けることが望ましい。
【0009】
前記内容器体は、ブリスターパックであることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
薬粉を充填した内容器体を収納するベース及び、内容器体に孔を開ける穿孔部を有しベースに覆い被さる蓋体を備え、蓋体と連結するノズルの先端開口から薬粉を吸引する吸引式投薬器に関し、蓋体に、吸引に伴い外気を蓋体内に導く空気導入孔を形成し、穿孔部を、蓋体と一体連結する筒体の先端に設け、この筒体の内側に、ノズルの内側を通して先端開口に繋がる出口通路を形成し、この出口通路に、複数の微細孔を有するメッシュ部材を設けたので、粉状のままの薬粉はメッシュ部材を通り抜けて吸引される一方、塊状の薬粉はメッシュ部材で阻止されて鼻腔内への侵入が有効に防止される。また、内容器体に孔を開けることで、内容器体の破断部が分離して破断片となるおそれがあるものの、塊状の薬粉と同様に、この破断片の鼻腔内への侵入も確実に防止することができる。
【0011】
筒体の外面に、その軸線に沿って延在する複数本のリブを設け、これらのリブの相互間に、蓋体内の空気を内容器体に導入する外側通路を設ける場合は、内容器体の破断部が筒体外面のリブに密着する場合でも、外側通路を通して空気を内容器体に送り込むことができるので、吸引に際して内容器体内が負圧になることがなく、患者に負担をかけることなく吸引させることができる。
【0012】
出口通路に、吸引に伴い該出口通路内の空気を旋回させる螺旋状部材を設ける場合は、鼻腔内に吸引される薬粉を均一に拡散することができ、所期する薬粉の効能を確実に発揮させることができる。
【0013】
内容器体として、ブリスターパックを用いる場合は、内容器体内が使用直前まで気密に維持されるので、薬粉が塊状になるおそれを極力減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に従う吸引式投薬器の実施の形態につき、(a)は平面図であり、(b)は側面視での断面図であり、(c)は、(b)に示すA−Aに沿う断面図であり、(d)は、(b)に示すB−Bに沿う断面図である。
【図2】図1に示す吸引式投薬器につき、蓋体を開いた姿勢で示す断面図と、収納室に収納される内容器体の断面図及び平面図である。
【図3】図2に示す吸引式投薬器につき、収納室に内容器体を装填した姿勢で示す断面図である。
【図4】図3に示す吸引式投薬器につき、蓋体を閉めて内容器体に孔を開けた姿勢で示す断面図である。
【図5】図4に示す吸引式投薬器につき、ノズルを鼻腔内に差し込んで吸引する状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明に従う吸引式投薬器の実施の形態につき、(a)は平面図であり、(b)は側面視での断面図であり、(c)は、(b)に示すA−Aに沿う断面図であり、(d)は、(b)に示すB−Bに沿う断面図である。
【0016】
10はベースである。図示の例でベース10は、平面視でリング状となる天壁11を備えている。また、図1(b)に示すように天壁11は、その内側端縁に環状の内壁12を一体連結しており、その外側端縁に環状の外壁13を一体連結している。また、内壁12の径方向内側に形成される内側空間は、後述する内容器体を収納する収納室Mとなっている。外壁13の外面には、後述する蓋体を支持する支持部14が設けられている。図示の例で支持部14は、図1(a)に示すように間隔をおいて平行配置となる一対の支持壁14aと、それぞれの支持壁14aに設けた軸孔14bとからなる。また、外壁13において支持部14に対向する部位には、蓋体に係合する係合部15が形成されている。
【0017】
20は、ベース10に覆い被さる蓋体である。図示の例で蓋体20は、平面視でリング状となる蓋壁21を有している。また、図1(b)に示すように蓋壁21は、その内側端縁から起立するとともに頂部に水平段部22aを有する内側周壁22と、その外側端縁から垂下する外側周壁23とを備えている。そして、外側周壁23の外面には、支持部14に対応して設けられ蓋体20をベース10に揺動可能に支持する蓋体支持部24が設けられていている。図示の例で蓋体支持部24は、図1(a)に示すように、支持壁14aの相互間に配設される蓋体支持壁24aと、蓋体支持壁24aの両側面から突設されて軸孔14bに入り込む一対の軸部24bとからなる。なお、支持部14及び蓋体支持部24は、ベース10及び蓋体20を揺動自在に一体連結するヒンジ構造であってもよい。また、外側周壁23における蓋体支持壁24aに対向する部位には、その内面に、係合部15に対応する被係合部25が形成され、その外面に、蓋体20を開く際の指掛かり部26が設けられている。さらに、内側周壁22には、その表裏を貫通して外界と蓋体20内とを連通させる空気導入孔27が形成されている。図1(a)に示す例では、空気導入孔27を周方向に均等間隔で合計4個設けている。
【0018】
30は、蓋体20の裏面に一体連結する筒体である。図示の例で筒体30は、水平段部22aの内側端縁から収納室Mに向けて垂下され、その先端に、筒体30を斜めに切り取って傾斜状とするとともに筒体30の壁部の厚みが先端に向けて薄くなるように設けた穿孔部31を備えている。筒体30の外面には、その筒体30の軸線に沿って延在する複数本のリブ32(図1(d)に示す例では周方向に均等間隔で合計6本)が設けられている。また、図1(d)に示すようにリブ32の相互間は、外側通路33となっている。
【0019】
40は、蓋体20とその表面にて一体連結するノズルである。図1(b)に示す例でノズル40は、水平段部22aの内側端縁から起立するとともに先端に向けて先細りとなる筒状であって、その先端には、ノズル40の表裏を貫く先端開口41が形成されている。また、筒体30及びノズル40の内側は先端開口41に連通する出口通路Hとなっている。
【0020】
50は、出口通路Hに設けられるメッシュ部材である。メッシュ部材50は、環状体51と、複数の微細孔を有し環状体51に固着されるメッシュシート52とからなる。図示の例でメッシュ部材50は、アンダーカットにて抜け止め保持されている。なお、環状体51を筒体30の内面に嵌合させて保持してもよい。
【0021】
60は、出口通路Hに設けられる螺旋状部材である。図1(b)、(c)に示す例で螺旋状部材60は、薄板がノズル40の軸線を中心として捻られた形状となっていて、ノズル内に嵌合し、メッシュ部材50で抜け止め保持されている。
【0022】
上記のように構成される吸引式投薬器を使用するに当たっては、図2に示すように蓋体20を開き、薬粉を充填した内容器体Pを、図3に示すようにベース10の収納室Mに装填する。ここで、内容器体Pとは、例えば膨出変形させた合成樹脂シートにフィルムを固着してその内側を封止するブリスターパックであって、図示の例では、フィルム側を上方に向けて内容器体Pを装填する。ブリスターパックを用いる場合は、内容器体内が使用直前まで気密に維持されるので、薬粉が塊状になるおそれを極力減らすことができる。また、薄いフィルムに孔を開けるだけで済むので、無理に力を入れる必要が無く、開孔作業が容易となる。
【0023】
次いで、図4に示すように蓋体20を閉めることで、穿孔部31によって内容器体Pのフィルムに孔を開けることができる。そして、図5に示すように、鼻腔内にノズル40を差し込んで鼻から吸引を行う。これにより、出口通路H内の空気は、内容器体P内の薬粉を吸引しつつ先端開口41を通して鼻腔内に取り込まれ、また、蓋体20内には、空気導入孔27から外気が取り込まれる。ここで、粉状のままの薬粉は、メッシュシート52の微細孔を通り抜けて鼻腔内に取り込まれる一方で、塊状の薬粉は、メッシュシート52によって遮られるため、塊が吸引されるおそれがない。また、穿孔部31によって内容器体Pに孔を開けるに当たっては、内容器体Pの破断部が分離して破断片となるおそれがあるものの、この破断片の鼻腔内への侵入も、メッシュシート52によって確実に防止される。
【0024】
なお、投薬器から内容器体Pを取り外すに当たっては、収納室Mの下方は開口している(内壁12が内容器体Pの下壁を取り囲んでいない)ので、下方から押し上げることで簡単に内容器体Pを取り外すことができる。
【0025】
また、穿孔部31によって孔を開けるに伴い、内容器体Pの破断部が、筒体30の外面に密着して、空気の流れが遮断されるおそれがあるが、筒体30の外面に設けたリブ32によって外側通路33を設ける場合は、この外側通路33を通して空気を内容器体Pに送り込むことができるので、患者は負担なく薬粉を吸引することができる
【0026】
また、出口通路Hに螺旋状部材60を設ける場合は、出口通路Hを流れる空気を旋回させることができるので、鼻腔内に吸引される薬粉が均一に拡散されて、薬粉を鼻腔内面にむら無く付着させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、薬粉を吸引することで所期する効能を確実に発揮させることができ、また、塊状の薬粉及び内容器体の破断片が吸引されるおそれを確実に排除することができる吸引式投薬器を提供することができる。
【符号の説明】
【0028】
10 ベース
20 蓋体
27 空気導入孔
30 筒体
31 穿孔部
32 リブ
33 外側通路
40 ノズル
41 先端開口
50 メッシュ部材
60 螺旋状部材
H 出口通路
M 収納室
P 内容器体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬粉を充填した内容器体を収納する収納室を有するベースと、該収納室に配置された内容器体に孔を開ける穿孔部を有し該ベースに覆い被さる蓋体と、該蓋体に一体連結するとともにその先端に設けた先端開口を通して内容器体の薬粉を吸引可能とするノズルとを備える吸引式投薬器であって、
前記蓋体は、吸引に伴い外気を該蓋体内に導く空気導入孔を有し、
前記穿孔部を、該蓋体と一体連結し前記収納室に向けて伸延する筒体の先端に設け、
該筒体の内側に、前記ノズルの内側を通して前記先端開口に繋がる出口通路を形成し、
該出口通路に、複数の微細孔を有するメッシュ部材を設けることを特徴とする吸引式投薬器。
【請求項2】
前記筒体の外面に、該筒体の軸線に沿って延在する複数本のリブを設け、該リブは、その相互間に前記蓋体内の空気を前記内容器体に導入する外側通路を有する請求項1に記載の吸引式投薬器。
【請求項3】
前記出口通路に、吸引に伴い該出口通路内の空気を旋回させる螺旋状部材を設けてなる請求項1又は2に記載の吸引式投薬器。
【請求項4】
前記内容器体は、ブリスターパックである請求項1〜3の何れかに記載の吸引式投薬器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−27668(P2013−27668A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167594(P2011−167594)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)