説明

吸引式濾過濃縮装置

【課題】シンプルな構造で、有効な濾過面積の確保と濃縮汚泥の剥離性および洗浄性の改善が可能な吸引式濾過濃縮装置を提供する。
【解決手段】汚泥槽12と、該汚泥槽内で互いに隣接する複数の濾過板14とを有し、各濾過板は、網目状の支持板と、支持板に一体的に縫合され、該支持板を収容する袋状の濾布18(内部に濾過室が形成)、さらに、該濾過室を通じて前記濾布を吸引する吸引手段と、該濾過室を通じて前記濾布を膨出する膨出手段と、複数の濾過板それぞれに対して常時張力を付加する弾性部材とを有する、汚泥の吸引式濾過濃縮装置において、前記濾布は、樹脂製であり、該樹脂は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンからなる群から選択され、前記膨出手段は、前記濾過室内に含水圧搾空気を供給する含水圧搾空気供給手段91を有し、前記弾性部材は、前記濾過板の周縁部から外方に直線状に延びることを特徴とする吸引式濾過濃縮装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引式濾過濃縮装置に関し、より詳細には、シンプルな構造でありながら濾過面積を有効に確保しつつ、濃縮汚泥の剥離性および洗浄性を改善することが可能な吸引式濾過濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、たとえば浄水場において発生する凝集汚泥を濃縮するのに、吸引式濾過濃縮装置が用いられている。吸引式濾過濃縮装置の一例が、特許文献1に開示されている。
この吸引式濾過濃縮装置は、濾過濃縮対象である汚泥を収容する汚泥槽と、それぞれ汚泥槽の上下方向に延び、汚泥槽内で互いに隣接して整列する複数の濾過板とを有する。各濾過板は、支持板と、支持板に対して一体的に縫合され、支持板を収容し、内部に濾過室を形成するナイロン製の濾布とを有する。この濾過室には、濾液排出管が連通して設けられ、濾液排出管を通じて濾液を排出するようにしている。さらに、濾過室を通じて濾布を吸引する吸引部と、濾過室を通じて濾布を膨出させる膨出部とが設けられるとともに、複数の濾過板のそれぞれに対して常時張力を付加するコイルスプリングが、各濾過板の周囲に配置されている。
【0003】
このような構成によれば、濾過の際、汚泥槽内の汚泥は、吸引されて濾布により濾過され、濾布の外表面に濃縮された汚泥が付着するとともに、濾布を通過し、濾過室に導かれた濾液は、濾液排出管を通じて、汚泥槽の外部に回収することが可能である。
一方、濃縮汚泥の回収の際、濾過室を通じて濾布の内表面に向かって圧搾空気を供給することにより、濾布が膨出し、それにより濾布の外表面に付着した濃縮汚泥を剥離させ、汚泥槽の底に溜まった濃縮汚泥を排出し、別途機械脱水処理を行うことにより、ケーキとして焼却あるいは埋立処分することが可能である。このような汚泥の濾過濃縮処理により、加圧あるいは真空等による機械脱水処理におけるエネルギー負荷を軽減することが可能である。
【0004】
このような濾過の際、および濾布の膨出の際、各濾過板には、その周囲に設けられたコイルスプリングにより常時張力が加えられ、各濾過板は不動静止状態に維持されるので、濾過の際の吸引力により、あるいは濾布の膨出の際に濾過室内に送り込まれる空気により、各濾過板がばたついたり、あるいは揺動したりして、隣接する濾過板に接触して、実質的に濾過面積の低減を引き起こしたり、あるいは濾布の外表面に付着した濃縮汚泥が自然剥離したりする技術的問題を回避することができる。
しかしながら、このような従来の吸引式濾過濃縮装置を大型化するに伴って、以下のような技術的問題が引き起こされる。
【0005】
第1に、ナイロン(ポリアミド)製の濾布を使用していることに起因して、濾布の外表面に付着する濃縮汚泥の剥離性は良好である半面、限られた濃縮汚泥槽内スペースにおいて、濾布の大きさに対する制約が大きいことである。
より詳細には、ナイロン(ポリアミド)製の濾布は強度の点で劣り、また伸縮性が高いことから、濾布の弛みを常時防止する観点より濾布の伸縮の変動に係わらず濾布の周囲から一定の張力を付加するためには、たとえばバネ、板ゴム等の弾性部材の長さが必要となり、その分、濾布の大きさを制限せざるを得ない。
この点、特許文献1においては、このような問題点を解決するために、コイルスプリングの配置について提案がなされている。
提案は、濾過板の幅方向に張力を付加するコイルスプリングが濾過板の幅方向に付設されることに伴って、濾布の大きさに対する制約となる点をコイルスプリングの配置を工夫することにより解消するものである。
第1の提案は、濾過板と濾過板の周囲を取り囲むように配置された支持枠の上下方向に延びる枠部との間に屈曲させたワイヤを付設し、ワイヤの支持枠側の一端に枠部の長手方向に延びるコイルスプリングを設け、コイルスプリングの弾性力によってワイヤには枠部の長手方向の張力が生じ、ワイヤの屈曲点に設けた枠部上のガイド部材による方向転換により、濾過板を幅方向に牽引するようにしている。
これによれば、コイルスプリングが上下方向に延びる枠部の長手方向に配置されているので、上記問題点を解決することが可能である。
【0006】
しかしながら、このような構造では、支持枠上に屈曲したワイヤを設けていることに起因して、支持枠に汚泥が残留しやすく、しかも残留した汚泥が通常の洗浄では除去しにくい位置に残留する。
第2の提案は、支持枠の上下方向に延びる枠部内に上下方向に延びる回転軸を設け、一端がこの回転軸に連結し、他端が濾過板に連結した第1ワイヤを設ける一方、一端がこの回転軸に連結し、他端が支持枠の幅方向に延びる枠部内に設けたコイルスプリングに連結された第2ワイヤを設け、コイルスプリングの弾性力によって第2ワイヤを通じて、回転軸が枠部内で長手方向を中心として回転することにより、第1ワイヤを通じて濾過板を幅方向に牽引するようにしている。
これによれば、コイルスプリングが幅方向に延びる枠部内に配置されているので、上記問題点を解決することが可能である。
【0007】
しかしながら、このような構造では、構造が比較的複雑であり、コスト高となるとともに、信頼性に劣り、たとえば不具合点検のために濾過中における装置停止等装置の稼働率の低下を引き起こしかねない。
この点、吸引式濾過濃縮装置の大型化に伴って、限られた内部スペースを有する汚泥槽内に設置する濾過板の総濾過面積を確保するに際し、一枚の濾過板による濾過面積を最大限に大きくしつつ、汚泥槽内に設置する濾過板の枚数を極力増やすことが望まれる。そのために、採用する濾布を大きくして濾過面積を増大するとともに、隣接する濾過板どうしの間隔をなるべく小さくする必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上の技術的問題に鑑み、本発明の目的は、シンプルな構造でありながら濾過面積を有効に確保しつつ、濃縮汚泥の剥離性および洗浄性を改善することが可能な吸引式濾過濃縮装置を提供することにある。
本発明の目的は、濾過性能を確保しつつ、濃縮汚泥の剥離性および洗浄性を改善することが可能な吸引式濾過濃縮装置を提供することにある。
【特許文献1】特許第4164498号公報
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る吸引式濾過濃縮装置は、
濾過濃縮対象である汚泥を収容する汚泥槽と、それぞれ平面部が上下方向に延び、該汚泥槽内で互いに隣接して整列する複数の濾過板とを有し、各濾過板は、網目状の支持板と、支持板に対して一体的に縫合され、該支持板を収容する袋状の濾布とを有し、それにより濾布の内部には濾過室が形成され、さらに、該濾過室を通じて前記濾布を吸引する吸引手段と、該濾過室を通じて前記濾布を膨出する膨出手段と、複数の濾過板のそれぞれの周囲に亘って配置され、各濾過板に対して常時張力を付加する弾性部材とを有する、吸引式濾過濃縮装置において、
前記濾布は、樹脂製であり、該樹脂は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンからなる群から選択され、
前記膨出手段は、前記濾過室内に含水圧搾空気を供給するための含水圧搾空気供給手段を有し、
前記弾性部材は、前記濾過板の周縁部から外方に向かって直線状に延びる、構成としている。

【0010】
以上の構成を有する吸引式濾過濃縮装置によれば、汚泥槽内に収容された汚泥を濾布を通じて吸引濾過することにより、汚泥中の水分が濾布を通過して、濾過室に案内される一方、脱水された汚泥が濾布の外表面に付着することを通じて、汚泥を濾過濃縮することが可能である。その際、複数の濾過板は各々、その周囲から弾性手段により常時張力が付加されていることから、各濾過板は、不動静止状態に維持され、たとえば吸引の際に、濾過板がばたつくことにより、付着した濃縮汚泥が自然剥離したり、あるいは隣接する濾過板に接触して、濃縮汚泥の形成が阻害されたり、あるいは有効な濾過面積が減少したりすることを防止することが可能である。
その際、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンからなる群から選択される樹脂製の濾布を採用することにより、このような濾布は、強度が高く、かつ伸縮性の小さい特性を有することから、濾布の構造、材質を見直すことにより、汚泥中における濾布の伸縮量の変動を抑制することで、必要な張力と弾性部材の設置間隔の短縮とを両立させることが可能となり、濾布の周囲から張力を加えて、濾布を常時緊張させるのに、濾過板の周縁部から外方に向かって直線状に延びるシンプルな構造の弾性部材を採用するとともに、その長さを短くすることが可能であり、それにより限られた汚泥槽内スペースにおいて、濾布の大きさを確保し、以て濾過面積を有効に確保することが可能である。
それに対して、このような樹脂製の濾布によれば、たとえば、ナイロン製の濾布に較べて、濾布の外表面に付着した濃縮汚泥に対する剥離性が低下するが、含水圧搾空気供給手段により、濾過室内に含水圧搾空気を供給することにより、圧搾空気により濾布を膨出させるとともに、膨出する濾布の外表面と、濾布の外表面に付着している濃縮汚泥との間に水分が浸透することにより、濃縮汚泥の濾布の外表面からの剥離を容易にすることが可能である。
これにより、従来のような弾性部材の配置に起因する装置の複雑化あるいは汚泥の洗浄性低下を引き起こすことなしに、シンプルな構造でありながら濾過面積を有効に確保しつつ、濃縮汚泥の剥離性および洗浄性を改善することが可能となる。

【0011】
また、前記含水圧搾空気供給手段は、圧搾空気を発生するコンプレッサと、一端が該コンプレッサに接続され、他端が前記濾過室に接続された圧搾空気供給管路と、該圧搾空気供給管路内の圧搾空気の流れによって管内に負圧が生じるように、該圧搾空気供給管路の途中に接続された吸水管と、該吸水管の一端が水中に没入された貯水槽とを、有し、それにより、前記含水圧搾空気供給手段により前記濾過室に微細水滴を含む圧搾空気を供給するのがよい。
さらにまた、前記含水圧搾空気供給手段は、圧搾空気を発生するコンプレッサと、一端が該コンプレッサに接続され、他端が前記濾過室に接続された圧搾空気供給管路と、該圧搾空気供給管路の途中に接続された吸水管と、該吸水管が接続された貯水槽とを、有し、それにより、前記コンプレッサからの圧搾空気と前記貯水槽からの水とを混合して、前記圧搾空気供給管路を通じて、前記含水圧搾空気供給手段により前記濾過室に含水圧搾空気を供給するのでもよい。
【0012】
加えて、前記濾布は、上下方向に延びる複数の縫い目により、対応する濾過板の横方向に区分され、各区分ごとに前記濾過室を形成し、
隣合う縫い目によって区分される前記濾布の部分の横方向の長さは、その上下方向全体に亘って、該区分に相当する前記支持板の横方向長さより長く設定され、それにより、前記各区分は、前記濾布の膨出の際の膨出余裕しろを備えるのがよい。

【0013】
また、前記吸引手段によって引き起こされる負圧は、前記膨張余裕しろに基づいて濾過時に濾布に形成されるしわ状の非密着部が濾布の健全性を損ねない程度の所定値以下に設定されるのがよい。
加えて、前記濾過板の外周には、該濾過板を囲む濾過枠が設けられ、
前記濾布の上部は、前記濾過枠の上部より懸架支持されるのがよい。
さらに、前記濾布の下部には、おもり部材が取り付けられ、その重さにより前記濾布に対して下方に張力が加えられるのがよい。
さらにまた、前記濾布の部分の横方向の区分長さは、濾布を膨出したときの隣接する濾過板に向かう張り出し量および隣接する濾過板同士の間隔に応じて決定されるのがよい。
さらに、前記弾性部材は、SUS製コイルスプリングであるのがよい。

【0014】
上記目的を達成するために、本発明に係る吸引式濾過濃縮装置は、
濾過濃縮対象物を含有する処理液を収容する濾過濃縮槽と、平面部が上下方向に延び、該濾過濃縮槽内に設けられる濾過板とを有し、該濾過板は、網目状の支持板と、支持板に対して一体的に縫合され、該支持板を収容する袋状の濾布とを有し、それにより濾布の内部には濾過室が形成され、さらに、該濾過室を通じて前記濾布を吸引する吸引手段と、該濾過室を通じて前記濾布を膨出する膨出手段と、前記濾過板の周囲に亘って配置され、該濾過板に対して常時張力を付加する弾性部材とを有する、吸引式濾過濃縮装置において、
前記濾布は、樹脂製であり、該樹脂は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンからなる群から選択され、
前記膨出手段は、前記濾過室内に含水圧搾空気を供給するための含水圧搾空気供給手段を有し、
前記弾性部材は、前記濾過板の周縁部から外方に向かって直線状に延びる、構成としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る吸引式濾過濃縮装置によれば、強度が高く、かつ伸縮性の小さい特性を有する、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンからなる群から選択される樹脂製の濾布を採用することにより、濾布の構造、材質を見直すことにより、汚泥中における濾布の伸縮量の変動を抑制することで、必要な張力と弾性部材の設置間隔の短縮とを両立させることが可能となり、濾布の周囲から張力を加えて、濾布を常時緊張させるのに、濾過板の周縁部から外方に向かって直線状に延びるシンプルな構造の弾性部材を採用するとともに、その長さを短くすることが可能であり、それにより限られた汚泥槽内スペースにおいて、濾布の大きさを確保し、以て濾過面積を有効に確保することが可能であるとともに、含水圧搾空気供給手段により、濾過室内に含水圧搾空気を供給することにより、圧搾空気により濾布を膨出させるとともに、膨出する濾布の外表面と、濾布の外表面に付着している濃縮汚泥との間に水分が浸透することにより、濃縮汚泥の濾布の外表面からの剥離を容易にすることが可能であり、以上より、従来のような弾性手段の配置に起因する装置の複雑化あるいは汚泥の洗浄性低下を引き起こすことなしに、シンプルな構造でありながら濾過面積を有効に確保しつつ、濃縮汚泥の剥離性および洗浄性を改善することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
下水場あるいは浄水場において発生する汚泥を濾過濃縮対象とした場合を例として、本発明に係る吸引式濾過濃縮装置10の第1実施形態を図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る吸引式濾過濃縮装置の概略構成図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る吸引式濾過濃縮装置において、複数の濾過板が隣接して配置されている状態を示す概略斜視図である。図3は、本発明の第1実施形態に係る吸引式濾過濃縮装置における濾過板を示す概略側面図である。図4は、本発明の第1実施形態に係る吸引式濾過濃縮装置において、複数の濾過板が汚泥槽により懸架支持されている状態を示す部分平面図である。図5は、本発明の第1実施形態に係る吸引式濾過濃縮装置において、図5(A)は、隣合う濾過板の濾布が膨出している状況を示し、図5(B)は、隣合う濾過板の濾布により濾過が行われている状況を示す概念図である。
【0017】
図1に示すように、吸引式濾過濃縮装置10は、濾過濃縮対象である汚泥を収容する汚泥槽12と、汚泥槽12内に配置された複数の濾過板14と、汚泥を吸引する吸引部16と、複数の濾過板14それぞれに設けられた濾布18を膨出させる膨出部20とから概略構成されている。
汚泥槽12は、有底の矩形断面の容器であり、後に説明する複数の濾過板14を内部に設置可能な容積を有する。汚泥槽12の側壁22には、汚泥槽12内に汚泥を供給する汚泥供給/排出管24の一端が連通し、汚泥供給/排出管24の途中に設けられた汚泥供給/排出弁26を介して、正逆作動可能な汚泥供給/排出ポンプ28が接続されている。これにより、汚泥供給/排出弁26を開き、汚泥供給/排出ポンプ28を作動することにより、汚泥を汚泥槽12内に供給する一方、汚泥供給/排出ポンプ28を逆に作動することにより、汚泥槽12内の未濃縮の汚泥を汚泥槽12から排出することが可能なようにしている。また、汚泥槽12の底部には、汚泥槽12の底に溜まった濃縮汚泥を排出する濃縮汚泥排出管30の一端が連通し、濃縮汚泥排出管30の途中には、濃縮汚泥排出弁32が設けられている。濃縮汚泥排出弁32を開くことにより、汚泥槽12の底に溜まった濃縮汚泥が重力落下により、濃縮汚泥排出管30を通じて外部に排出されるようにしている。
【0018】
図2に示すように、複数の濾過板14(14Aないし14E)は、汚泥槽12内において、平面部13が上下方向に延びる状態で、所定の間隔Dを隔てて互いに隣接して整列配置されている。隣り合う濾過板14同士の間隔Dを小さくするほど、汚泥槽12内に設置可能な濾過板14の枚数を増やし、それにより総濾過面積を増大することが可能である。しかしながら、後に説明するように、濾過板14の濾布18に付着した濃縮汚泥を剥離するために濾布18を膨出する必要があり、この濾布18の膨出により、濾布18が隣りの濾過板14に向かって張り出すことから、濾布18が隣りの濾過板14に接触し、濾過面積として有効に利用できなく恐れがある。このように、隣合う濾過板14が接触しないようにしつつ、濾過面積を最大限に確保する観点から、隣合う濾過板14同士の間隔を定めるのがよい。
【0019】
複数の濾過板14はそれぞれ、その上部において分配管34を介して、汚泥槽12の外部に設置された濾液貯留槽36に接続され、この濾液貯留槽36には、濾液排出管38の一端が連通して接続され、濾液排出管38は、鉛直下方に延び、途中に濾液排出弁40が設けられている。
濾液貯留槽36を通じて各分配管34と濾液排出管38とが、逆U字状に接続されており、サイフォンの原理を利用して、汚泥槽12内で濾過された濾液を汚泥槽12外に排出するようにしてある。さらに、分配管34には、吸引管31が分岐して接続され、吸引管31には、途中に設けられた吸引弁33を介して真空ポンプ35が接続している。これにより、吸引弁33を開いた状態で、真空ポンプ35を作動することにより、汚泥槽12内の処理すべき液を分配管34内に吸引し、サイフォンの原理を利用して、濾液排出管38を通じて、濾液を外部に排出する準備を行うことができるようにしている。
一方、濾液貯留槽36には、含水圧搾空気供給手段91が設けられている。この含水圧搾空気供給手段91は、圧搾空気を発生するコンプレッサ46と、一端がコンプレッサ46に接続され、他端が濾液貯留槽36に接続された圧搾空気供給管路42と、圧搾空気供給管路42内の圧搾空気の流れによって管内に負圧が生じるように、圧搾空気供給管路42の途中に接続された吸水管93と、吸水管93の一端が水中に没入された貯水槽94とを、有し、それにより、含水圧搾空気供給手段91により濾過室に微細水滴を含む圧搾空気を供給するように構成している。圧搾空気供給管路42の途中には、空気流入弁44が設けられている。貯水槽94には、管路の途中に給水弁95が設けられた給水管96が設けられている。貯水槽94と空気流入管42とは、管路の途中に弁97を設けた連通管98によって、接続され、それにより貯水槽94内の水面上に圧搾空気の一部を供給できるようにしている。
このような構成によれば、空気流入弁44を開いた状態で、コンプレッサー46を作動することにより、圧搾空気が空気流入管42内を濾液貯留槽36に向かって流れ、それにより空気流入管42内が負圧となり、吸水管93を通じて貯水槽94内の水が吸い出されて霧化し、圧搾空気中に霧化した水分が混入し、含水圧搾空気となる。この含水圧搾空気は、濾液貯留槽36、および各分配管34を通じて、各濾過板14の濾過室76に供給され、後に説明する濃縮汚泥を濾布18から剥離する際、濾布18を膨出させるようにするとともに、濃縮汚泥と濾布18の外表面との間に水分を浸透させ、濃縮汚泥の剥離を容易ならしめている。
因みに、含水圧搾空気の湿り度を調節するには、空気流入弁44の開度あるいはコンプレッサー46の駆動を調整すればよい。
なお、分配管34の一端は、濾過板14の上部に設けられた水平管15に接続され、この水平管15の下部には、後に説明する隣合う縫い目74により区画される、濾布18の区分ごとに、排出孔(図示せず)が設けられている。これにより、濾布18の区分ごとに、対応する排出孔を通じて、コンプレッサー46により圧搾空気を供給したり、あるいは真空ポンプ35によりサイフォン式の吸引を行うようにしている。
【0020】
複数の濾過板14のそれぞれの構成は、同様であるので、濾過板14の1つについてその構成を以下に説明する。
図3に示すように、濾過板14は、濾過枠48と、濾過枠48の内部に配置された支持板50と、支持板50を内部に収容するように袋状とした濾布18と、濾過枠48と支持板50との間に設けられた複数のコイルスプリング54とから概略構成されている。濾過枠48は、中空の矩形形状をなし、上辺56、下辺58および上下辺との間の両側辺60、62を有する。濾過板14は、上辺56の両端部により汚泥槽12の内側面68より懸架支持されている。より詳細には、図4に示すように、上辺56の両端部にはそれぞれ、延長部64が設けられる一方、汚泥槽12の内側面68には、内部に向かって突出する一対のガイド板70,72が設けられ、延長部64の端部を一対のガイド板70,72の間に配置して、延長部64の上面に固定された係合板66が、一対のガイド板70,72の上面に載置されるようにしてある。これにより、各濾過板14は、汚泥槽12から懸架支持されるようにしている。濾過板4を懸架支持する一対のガイド板の選択により、隣合う濾過板14同士の間隔が決定されるが、たとえば、濃縮汚泥の濾布18への付着量、吸引による負圧の大きさ、後に説明する濾布18の横方向の区分長さ等に応じて、濾過板14を懸架支持する一対のガイド板を選択することにより、隣合う濾過板14の間隔を適宜変えるようにしてもよい。
【0021】
支持板50は、ネットあるいはメッシュ網等からなり、矩形形状とされ、無数の小開口が支持板50に設けられている。支持板50の表面には、その上下方向に延びる凹凸部(図示せず)が設けられ、それにより、支持板50の凹部と濾布18の内面との間には、支持板50の上下方向に延びる濾液の流路が複数形成されるようにしている。支持板50は、樹脂製が好ましく、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、EVA等から選択される。この場合、後に説明するように一体に裁合される濾布18として、強度が高く、かつ伸縮性の小さい特性を有する樹脂製を採用することから、支持板50としては、伸縮性に対する制約なしに、材料を選択すればよい。
【0022】
濾布18は、ナイロン製に比べて強度が高くかつ伸縮性が小さく、それにより汚泥中に膨潤しているときの濾布の伸長と、濾布の外表面に付着した濃縮汚泥を剥離するために濾布を膨出させるときの濾布の収縮との変動幅が小さい、ポリエステル製、ポリエチレン製、あるいはポリプロピレン製がよい。繊維の種類に関し、洗浄効果が高く、かつ目詰まりが起きにくいモノフィラメントの糸を使用するのがよいが、強度や微粒子の捕捉性を重視するのであれば、複数の繊維を撚り合せて形成されるマルチフィラメントを採用してもよい。なお、採用する糸の径は、要求される濾布18の強度、伸び率等を考慮して、経糸、緯糸それぞれについて、適宜に定まればよい。
布の織り方に関し、洗浄効果が高く、かつ目詰まりが起きにくい朱子織を使用するのがよいが、目の粗さ或は微粒子の捕捉性を重視するのであれば、平織、綾織を用いてもよい。また、織り糸の密度に関し、要求される濾布18の強度、伸び率等を考慮して、経糸、緯糸それぞれについて、適宜に定まればよい。
通気度に関して、サイフォン式吸引ろ過であり、比較的低圧で時間をかけて吸引することから、濾布18の目が粗くても濾布18の表面に濃縮汚泥が形成され得る事を考慮し、微粒子の捕捉性は低い反面、洗浄効果が高く、かつ目詰まりが起きにくいように、比較的高い通気度を選択する事もできる。
例えば、通気度600、1,700、3,000cm3/(cm2・min)の3種類のポリエステル製濾布を用いて、濃度1.2%の浄水工程にて排出される汚泥をサイフォン圧-33.3kPaで90分間濃縮運転を行った場合では、濾布18の表面に濃縮汚泥が形成され、それらの濃度は6.1、6.5、6.3%であった。
濾布18は、たとえば、一対の矩形状の布体を重ね合わせて周縁部どうしを縫ったり、あるいは一枚の矩形状の布体を対向する縁どうしが重なり合うように折り曲げて、周縁部どうしを縫ったりすることにより袋状に形成するのがよい。濾布18の周囲には、複数の鳩目78が設けられ、後に説明するコイルスプリング54の一端が、鳩目78にフックされるようにしている。
濾布18には、汚泥槽12の上下方向に延びる縫い目74が複数設けられ、各縫い目74により、濾布18はその内部に収容される支持板50と一体的に縫合されている。それにより濾布18は、横方向(汚泥槽12の上下方向にほぼ直交する方向)に沿って区分され、区分ごとに、濾布18の内面と支持板50との間に濾過室76が形成されるようにしている(図5参照)。隣合う縫い目74の間隔は、均等である必要はないが、隣接する濾過板14同士が接触する危険がない範囲で濾過板14同士を極力近接して配置することにより、濾過板14全体としての総濾過面積を最大限に確保する観点から、設定すればよい。
【0023】
より詳細には、図5(A)に示すように、表面に濃縮汚泥が付着した濾布18から濃縮汚泥を剥離するために、含水圧搾空気供給手段91により濾過室76に含水圧搾空気を送り込むことにより、濾布18を膨出させる際、濾布18は隣接する濾過板14に向かって張り出すことになるが、濾布18を横方向に沿って区分し、各区分ごとに濾布18が膨出することにより、この張り出し量Pを小さくし、以て隣接する濾過板14同士の間隔Dを狭めることが可能となる。
さらに、濾布18の隣合う縫い目74で区分される各区分ごとに、濾布18の横方向の長さが、その上下方向全体に亘って、この区分に対応する支持板50の横方向の長さより長く設定されており、それにより区分ごとに、濾布18を膨出させる際の膨出余裕しろが設けられている。これにより、図5(B)に示すように、濾過時には、濾布18の区分ごとに、濾過室76を通じて濾布18が吸引されることにより、濾布18の大部分は、支持板50に密着する一方、支持板50に密着しないしわ状の非密着部分71がその上下方向に形成される。一方、濾布18を膨出させる際、濾布18が過度に張ることなしに、濾布18の細孔が拡げられて正常な濾過機能を喪失したり、あるいは濾布18がやぶけたりするのを未然に防止することが可能である。
【0024】
複数のコイルスプリング54は、濾過枠48の側辺60と濾布18の側辺61との間、濾過枠48の側辺62と濾布18の側辺63との間、濾過枠48の下辺58と濾布18の下辺59との間、 および濾過枠48の上辺56と濾布18の上辺57との間に配置され、それぞれ濾過板の周縁から外方に向かって直線状に延びている。濾過枠48の両側辺60、62、下辺58、上辺56それぞれにおいて設置される隣り合うコイルスプリング54同士の間隔は、濾布18の大きさ、付着する濃縮汚泥量等に応じて、適宜設定すればよい。より詳細には、各コイルスプリング54は、その一端部が濾布18の鳩目78にフックされる一方、その他端部が濾過枠48の側辺60、62あるいは下辺58に固定されている。
このような構成により、濾過板14は上下および両側の全周に亘って常時張力が付加され、この張力により濾過板14が不動静止状態に保持され、たとえば吸引濾過する際に濾過板14がばたついたり、ぐらついたりして、吸引濾過することにより濾布18に付着する濃縮汚泥が自然剥離したり、あるいは隣接する濾過板14に接触して、濾過面積が有効に活用できなくなったりする事態を防止するようにしている。複数のコイルスプリング54は、耐蝕性の観点から、SUS製が好ましく、濾過板14の周囲に亘って数十本配置し、濾過板14の枚数がたとえば、数十枚に及ぶことから、特注品ではなく標準品を採用するのがよい。
【0025】

以上の構成を有する濾過濃縮装置10について、運転方法を含めその作用を以下に説明する。
まず、汚泥槽12内に汚泥を供給する。より詳細には、汚泥排出弁32を閉じた状態で、汚泥供給/排出弁26を開き、汚泥供給/排出ポンプ28を作動することにより、汚泥供給/排出管24を通じて濾過濃縮対象である汚泥を、濾過板14の頂部のレベルまで汚泥槽12内に供給する。
次いで、汚泥槽12内の汚泥をサイフォン式により濾過濃縮する準備を行う。より詳細には、吸引弁33を開き、真空ポンプ35を作動することにより、濾布18内の液体が、分配管34を通じて濾液貯留槽36内に吸引される。分配管34の濾過板14側の端部と、濾液貯留槽36とのレベル差に応じて、サイフォン作用により、濾過室76内に導かれた濾液を汚泥排出管38を通じて外部に排出することが可能となる。
【0026】
次いで、汚泥槽12内の汚泥を濾過濃縮する。より詳細には、汚泥槽12内の汚泥は、サイフォンの原理により、濾布18の外表面に向かって吸引され、その際、汚泥中の水分は、濾布18を通過して、濾液として濾布18内の濾過室76に導かれ、汚泥が脱水され、脱水され濃縮された汚泥は、濾布18の外表面に付着する。その際、濾布18の各区分ごとに、膨出余裕しろが設けられていることから、濾布18が吸引されることにより、各区分中の濾布18の大部分は、支持板50に密着した状態となるが、支持板50に密着しない非密着部71が、濾布18の上下方向に延びるしわ状に形成される。このしわ状の非密着部71は、濾過のたびごとに、区分ごとに新たに形成されるので、濾布の健全性に悪影響を与える傾向は小さいが、濾布18を長時間使用することにより、濾布18に一種のくせがつき、濾過のたびに、同じ位置に非密着部71が形成されることもある。このような場合には、たとえば、濾過室76内に生じる負圧を調整することにより、非密着部71の生成に起因する濾布18に対する悪影響を防止することが可能である。
【0027】
各濾過板14には、その周囲からコイルスプリング54によって常時張力が付加されているので、不動静止状態に維持される。それにより、濾布18の外表面に付着した濃縮汚泥が、濾過板14がばたついたり、ぐらついたりすることにより、濾布18の外表面から剥離するような事態を防止することが可能である。
その際、強度が高く、かつ伸縮性の小さい特性を有する、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンからなる群から選択される樹脂製の濾布を採用することにより、汚泥中における濾布18の伸縮量の変動を抑制することにより、濾布18の周囲から張力を加えて、濾布18を常時緊張させるのに、コイルスプリング54の長さを短くすることが可能であり、それにより限られた汚泥槽12内スペースにおいて、濾布18の大きさを確保し、以て濾過面積を有効に確保することが可能である。
次いで、汚泥槽12内の未濃縮の汚泥を汚泥槽12外部に排出する。より詳細には、汚泥供給/排出弁26を開き、汚泥供給/排出ポンプ28を汚泥の供給の際と逆に作動することにより、汚泥供給/排出管24を通じて汚泥槽12内の未濃縮の汚泥を汚泥槽12外部に排出する。
【0028】
次いで、濾布18を膨出させることにより、濾布18に付着した濃縮汚泥を剥離させる。より詳細には、空気流入弁44を開き、コンプレッサー46より濾液貯留槽36に向かって空気流入管42内に圧搾空気を流入させる。それにより、空気流入管42内は負圧となり、吸水管93を通じて貯水槽94内の水が吸い出され、空気流入管42内で霧化し、圧搾空気に混入し、含水圧搾空気となる。この含水圧搾空気は、濾液貯留槽36、各分配管34および各水平管15を通じて、各濾過板14の濾過室76内に供給される。それにより、濃縮汚泥により無数の細孔が閉塞された濾布18は、支持板50から離れる向きに膨出する。その際、濾布18の外表面と濾布18の外表面に付着している濃縮汚泥との間に含水圧搾空気中の水分が浸透し、濃縮汚泥の剥離が容易となる。これにより、ナイロン製の濾布に比べて剥離性に劣るポリエステル製、ポリエチレン製、あるいはポリプロピレン製の濾布を採用するとしても、濾布18の膨出変形により濾布18の外表面に付着している濃縮汚泥の剥離が促進されるとともに、含水圧搾空気が無数の細孔を通じて付着している濃縮汚泥を押圧することにより、濃縮汚泥を剥離することが可能である。
また、濾布18には、各区分ごとに、膨出余裕しろが設けられているので、濾布18が過度に張って、細孔が拡がったりあるいは濾布18がやぶけたりするのを防止することが可能である。
【0029】
次いで、剥離した濃縮汚泥を汚泥槽12の外部に排出する。より詳細には、汚泥排出弁32を開き、濾布18から剥離されることにより汚泥槽12の底に溜まった濃縮汚泥を重力作用により濃縮汚泥排出管30を通じて、汚泥槽12の外部に排出する。
【0030】
以上で、汚泥の濾過濃縮作業が完了する。
汚泥槽12の外部に排出された濃縮汚泥は、別途脱水機によりさらに濃縮されて、ケーキ状に形成され、焼却あるいは埋立処分に付される。

【0031】
以上の構成を有する吸引式濾過濃縮装置10によれば、汚泥槽12内に収容された汚泥を濾布18を通じて吸引濾過することにより、汚泥中の水分が濾布18を通過して、濾過室76に案内される一方、脱水された汚泥が濾布18の外表面に付着することを通じて、汚泥を濾過濃縮することが可能である。その際、複数の濾過板14は各々、その周囲からコイルスプリング54により常時張力が付加されていることから、各濾過板14は、不動静止状態に維持され、たとえば吸引の際に、濾過板14がばたつくことにより、付着した濃縮汚泥が自然剥離したり、あるいは隣接する濾過板14に接触して、濃縮汚泥の形成が阻害されたり、あるいは有効な濾過面積が減少したりすることを防止することが可能である。
その際、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンからなる群から選択される樹脂製の濾布を採用することにより、このような濾布は、強度が高く、かつ伸縮性の小さい特性を有することから、汚泥中における濾布の伸縮量の変動を抑制することにより、濾布の周囲から張力を加えて、濾布を常時緊張させるのに、濾過板の周縁部から外方に向かって直線状に延びるシンプルな構造の弾性部材を採用するとともに、その長さを短くすることが可能であり、それにより限られた汚泥槽内スペースにおいて、濾布の大きさを確保し、以て濾過面積を有効に確保することが可能である。
【0032】
それに対して、このような樹脂製の濾布18によれば、たとえば、ナイロン製の濾布に較べて、濾布18の外表面に付着した濃縮汚泥に対する剥離性が低下するが、含水圧搾空気供給手段91により、濾過室76内に含水圧搾空気を供給することにより、圧搾空気により濾布を膨出させるとともに、膨出する濾布18の外表面と、濾布18の外表面に付着している濃縮汚泥との間に水分が浸透することにより、濃縮汚泥の濾布18の外表面からの剥離を容易にすることが可能である。
これにより、従来のような弾性手段の配置に起因する装置の複雑化あるいは汚泥の洗浄性低下を引き起こすことなしに、シンプルな構造でありながら濾過面積を有効に確保しつつ、濃縮汚泥の剥離性および洗浄性を改善することが可能となる。
【0033】
以下に、本発明の第2実施形態を説明する。以下の説明では、第1実施形態と同様な要素には、同様な参照番号を付すことによりその説明は省略し、本実施形態の特徴部分について詳細に説明する。図6は、本発明の第2実施形態に係る吸引式濾過濃縮装置における、図1と同様な図である。
【0034】
図6に示すように、本実施形態の特徴は、含水圧搾空気供給手段91にある。より詳細には、第1実施例における貯水槽94と吸水管93との代替として、ポンプ101を用いて圧搾空気中に直接水を供給するようにしている。より具体的には、含水圧搾空気供給手段91は、圧搾空気を発生するコンプレッサ46と、一端がコンプレッサ46に接続され、他端が濾過室76に接続された圧搾空気供給管路42と、圧搾空気供給管路42の途中に接続された吸水管102(途中に空気遮断弁104を有する)と、吸水管102が接続された貯水槽103とを、有し、それにより、コンプレッサ46からの圧搾空気と貯水槽103からの水とを混合して、圧搾空気供給管路42を通じて、含水圧搾空気供給手段91により濾過室76に含水圧搾空気を供給するようにしている。
【0035】
本実施形態においては、コンプレッサ46を駆動して空気遮断弁44を開き、それと同時にポンプ102を作動し、空気遮断弁104を開き、圧搾空気と給水とを混合して供給管路を通じて濾過室76内に含水圧搾空気を供給することで、第1実施形態と同様な作用効果を奏することが可能である。
含水圧搾空気の湿り度を調整するためには、空気遮断弁の開度と給水弁の開度とを適宜に調節すればよい。
【0036】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば種々の修正あるいは変形が可能である。たとえば、第1実施形態においては、濾過濃縮の対象が汚泥の場合を説明したが、それに限定されることなく、たとえば濾過濃縮の対象としては、アルカリ溶液中に含有した焼却灰、牛乳、ジュース等飲料液中に含有した異物、濁質水中の濁質物等があり、濾過濃縮の対象に応じて、濾布の種類、細孔径の大きさ、吸引力等の条件を適切に設定する限り、本発明に係る吸引式濾過濃縮装置は、これらに対して適用可能である。
また、第1実施形態においては、サイフォン式の吸引式濾過濃縮装置10を説明したが、それに限定されることなく、濾布18に対する影響を考慮して負圧値を設定する限り、吸引ポンプを利用した吸引式の吸引式濾過濃縮装置10でもよい。また、第1実施形態においては、弾性部材として、コイルスプリング54を採用したが、これに限定されることなく、所望の張力を奏することが可能である限り、ゴム板等でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る吸引式濾過濃縮装置は、上水、中水および下水を含めた水処理系技術分野に限らず、食品系分野、化学工業系分野等広範囲の技術分野に対して適用可能であり、そのなかでも、浄水場や下水処理場等の水処理工程において発生する汚泥の濃縮工程において適用される吸引式濾過濃縮装置を大型化する場合に特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施形態に係る吸引式濾過濃縮装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る吸引式濾過濃縮装置において、複数の濾過板が隣接して配置されている状態を示す概略斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る吸引式濾過濃縮装置における濾過板を示す概略側面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る吸引式濾過濃縮装置において、複数の濾過板が汚泥槽により懸架支持されている状態を示す部分平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る吸引式濾過濃縮装置において、図5(A)は、隣合う濾過板の濾布が膨出している状況を示し、図5(B)は、隣合う濾過板の濾布により濾過が行われている状況を示す概念図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る吸引式濾過濃縮装置における、図1と同様な図である。
【符号の説明】
【0039】
P 張り出し量
D 間隔
10 汚泥濾過濃縮装置
12 汚泥槽
14 濾過板
15 水平管
16 吸引部
18 濾布
20 膨出部
22 側壁
24 汚泥供給/排出管
26 汚泥供給/排出弁
30 濃縮汚泥排出管
32 濃縮汚泥排出弁
34 分配管
35 真空ポンプ
36 濾液貯留槽
42 空気流入管
44 空気流入弁
46 コンプレッサー
50 支持板
54 コイルスプリング
56 上辺
58 下辺
60、62 側辺
71 非密着部
74 縫い目
76 濾過室
78 鳩目
80 おもり部材
82 吊り金具
84 延出部
86 本体
88 連結棒
90 スプリング
91 含水圧搾空気供給手段
93 吸水管
94 貯水槽
95 給水弁
96 給水管
97 弁
98 連通路
101 ポンプ
102 吸水管
103 貯水槽
104 空気遮断弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過濃縮対象である汚泥を収容する汚泥槽と、それぞれ平面部が上下方向に延び、該汚泥槽内で互いに隣接して整列する複数の濾過板とを有し、各濾過板は、網目状の支持板と、支持板に対して一体的に縫合され、該支持板を収容する袋状の濾布とを有し、それにより濾布の内部には濾過室が形成され、さらに、該濾過室を通じて前記濾布を吸引する吸引手段と、該濾過室を通じて前記濾布を膨出する膨出手段と、複数の濾過板のそれぞれの周囲に亘って配置され、各濾過板に対して常時張力を付加する弾性部材とを有する、吸引式濾過濃縮装置において、
前記濾布は、樹脂製であり、該樹脂は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンからなる群から選択され、
前記膨出手段は、前記濾過室内に含水圧搾空気を供給するための含水圧搾空気供給手段を有し、
前記弾性部材は、前記濾過板の周縁部から外方に向かって直線状に延びる、ことを特徴とする吸引式濾過濃縮装置。
【請求項2】
前記含水圧搾空気供給手段は、圧搾空気を発生するコンプレッサと、一端が該コンプレッサに接続され、他端が前記濾過室に接続された圧搾空気供給管路と、該圧搾空気供給管路内の圧搾空気の流れによって管内に負圧が生じるように、該圧搾空気供給管路の途中に接続された吸水管と、該吸水管の一端が水中に没入された貯水槽とを、有し、それにより、前記含水圧搾空気供給手段により前記濾過室に微細水滴を含む圧搾空気を供給する、請求項1に記載の吸引式濾過濃縮装置。
【請求項3】
前記含水圧搾空気供給手段は、圧搾空気を発生するコンプレッサと、一端が該コンプレッサに接続され、他端が前記濾過室に接続された圧搾空気供給管路と、該圧搾空気供給管路の途中に接続された吸水管と、該吸水管が接続された貯水槽とを、有し、それにより、前記コンプレッサからの圧搾空気と前記貯水槽からの水とを混合して、前記圧搾空気供給管路を通じて、前記含水圧搾空気供給手段により前記濾過室に含水圧搾空気を供給する、請求項1に記載の吸引式濾過濃縮装置。
【請求項4】
前記濾布は、上下方向に延びる複数の縫い目により、対応する濾過板の横方向に区分され、各区分ごとに前記濾過室を形成し、
隣合う縫い目によって区分される前記濾布の部分の横方向の長さは、その上下方向全体に亘って、該区分に相当する前記支持板の横方向長さより長く設定され、それにより、前記各区分は、前記濾布の膨出の際の膨出余裕しろを備える、請求項1に記載の吸引式濾過濃縮装置。
【請求項5】
前記吸引手段によって引き起こされる負圧は、前記膨張余裕しろに基づいて濾過時に濾布に形成されるしわ状の非密着部が濾布の健全性を損ねない程度の所定値以下に設定される、請求項1に記載の吸引式濾過濃縮装置。
【請求項6】
前記濾過板の外周には、該濾過板を囲む濾過枠が設けられ、
前記濾布の上部は、前記濾過枠の上部より懸架支持される、請求項1に記載の吸引式濾過濃縮装置。
【請求項7】
前記濾布の下部には、おもり部材が取り付けられ、その重さにより前記濾布に対して下方に張力が加えられる、請求項6に記載の吸引式濾過濃縮装置。
【請求項8】
前記濾布の部分の横方向の区分長さは、濾布を膨出したときの隣接する濾過板に向かう張り出し量および隣接する濾過板同士の間隔に応じて決定される、請求項4に記載の吸引式濾過濃縮装置。
【請求項9】
前記弾性部材は、SUS製コイルスプリングである、請求項1に記載の吸引式濾過濃縮装置。
【請求項10】
濾過濃縮対象物を含有する処理液を収容する濾過濃縮槽と、平面部が上下方向に延び、該濾過濃縮槽内に設けられる濾過板とを有し、該濾過板は、網目状の支持板と、支持板に対して一体的に縫合され、該支持板を収容する袋状の濾布とを有し、それにより濾布の内部には濾過室が形成され、さらに、該濾過室を通じて前記濾布を吸引する吸引手段と、該濾過室を通じて前記濾布を膨出する膨出手段と、前記濾過板の周囲に亘って配置され、該濾過板に対して常時張力を付加する弾性部材とを有する、吸引式濾過濃縮装置において、
前記濾布は、樹脂製であり、該樹脂は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンからなる群から選択され、
前記膨出手段は、前記濾過室内に含水圧搾空気を供給するための含水圧搾空気供給手段を有し、
前記弾性部材は、前記濾過板の周縁部から外方に向かって直線状に延びる、ことを特徴とする吸引式濾過濃縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−234199(P2010−234199A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83107(P2009−83107)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】