説明

吸引式載置台のシール装置

【課題】 積層状態で吸引による嵩の変化が大きいシート材に対しても、搬入搬出を円滑に行い、かつ裁断精度を良好に保つことができるようにする。
【解決手段】 図1(c)のような構成では、特に圧縮性の高いシート材を裁断する場合などで、間隔Hcを充分に確保して被裁断材25の搬入や搬出を容易にしようとすると、距離Dcが大きくなり、裁断精度が低下してしまう。シール装置21によれば、図1(a)に示す押圧状態で、間隔Ha<Hcとすることは容易であり、距離Da<Dcとして、密閉シート27aによる被裁断材25の被覆を充分に行うことができ、裁断精度も向上させることができる。図1(b)に示す非押圧状態では、間隔Hb>Hcとすることができ、嵩が大きい被裁断材25でも、容易に搬入や搬出を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裁断機で被裁断材を裁断する際に、吸引して保持するための吸引式載置台のシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、図6に示すような裁断機1では、吸引式載置台2の上面の矩形の領域に裁断テーブル3を形成している。裁断テーブル3の幅方向には、裁断刃4を備える裁断ヘッド5がガイドブリッジ6に沿って往復移動する。さらにガイドブリッジ6は、裁断テーブル3の長手方向に往復移動する。裁断テーブル3は、長手方向をX軸方向、幅方向をY軸方向として、ガイドブリッジ6をX軸方向移動部7でX軸方向に移動させる。裁断ヘッド5は、裁断テーブル3の表面に対し、X軸方向移動部7によるX軸方向の移動と、ガイドブリッジ6に沿うY軸方向の移動とを組合せて二次元的な変位が可能である。裁断刃4は、裁断ヘッド5から裁断テーブル3側に突出し、突出量が増減するように、高速度で往復動させることができる。
【0003】
X軸方向移動部7の一方には、たとえばコントローラ8が設けられ、作業者は、裁断機1の動作を指示する操作を行うことができる。裁断テーブル3のX軸方向の一方および他方には、搬入部9および搬出部10がそれぞれ設けられる。搬入部9と搬出部10との間の裁断テーブルは、搬送方向3aに搬送するベルトコンベアとして機能し、搬入部9側から積層状態のシート材11を搬入して、搬出部10側に搬送することができる。このベルトコンベアには、合成樹脂などを材料とする剛毛ブラシのブロックが並べられ、裁断テーブル3の上面は剛毛ブラシの剛毛の先端によって形成される。裁断刃4がシート材11を貫通して往復動しながら、裁断ヘッド5をX軸方向およびY軸方向に移動させると、シート材11からパーツ12を裁断することができる。裁断刃4による裁断の際には、ベルトコンベアを停止させ、シート材11が裁断テーブル3上で動かないように保持する必要がある。吸引式載置台2では、内部に吸引機構を設け、シート材料11を裁断テーブル3上に吸引して保持する。裁断テーブル3の上面を形成する剛毛は、吸引力を作用させるための通気性を有し、さらに、シート材を貫通して裁断テーブル3の表面に貫入する裁断刃4から逃げるような弾性変形も可能である。
【0004】
シート材料11は、たとえば布帛等の生地であり、柔軟で通気性を有する。シート材11は、そのような通気性を有するものを複数枚積層した状態で搬入部9側から裁断テーブル3上に搬入する。搬入部9の幅方向の両側には、スタンド13が立設され、頂部に被覆シートロール14を支持している。シート材11が搬入部9から搬入される際に、シート材11の上面は、被覆シートロール14から引出される被覆シート14aで覆われる。被覆シート14aは、合成樹脂フィルムなどであって、空気不透過性であり、吸引式載置台2で発生する吸引力がシート材11を介して作用し、裁断刃4による裁断中に、シート材11を裁断テーブル3上に保持させることができる。裁断ヘッド5は、パーツ12の輪郭など、裁断刃4で裁断すべき形状のデータに応じてX軸方向およびY軸方向に移動し、裁断刃4の向きも移動方向に刃先が向くように制御される。裁断するためのデータは、予めCAD装置などで作成しておく。裁断刃4としては、直線上を往復移動する形式ばかりではなく、回転して外周で裁断する丸刃なども用いられる。
【0005】
裁断のデータに従って、シート材11から全てのパーツ12の裁断が終了すると、裁断テーブル3のベルトコンベアが起動され、パーツ12を裁断したシート材11を搬出部10側に搬送する。搬出部10に隣接して作業テーブル15などを配置しておくと、パーツ12の裁断が終了したシート材11を載置して、パーツ12を分離する作業などを行うことができる。このような作業の間に、裁断テーブル3上には次のシート材11を載置し、裁断機1に裁断を行わせることができる。
【0006】
シート材11の裁断とともに、被覆シート14aも裁断され、裁断された部分は空気透過性となってしまう。シート材11の搬入時に被覆シート14aで覆って空気不透過性としても、裁断が進行すると、裁断部分から空気が流入し、吸引力が低下してしまう。この対策として、パーツ12の裁断が終了したシート材11の部分に、空気不透過性のシートをさらに被せて空気不透過性とする吸引式載置台のシール装置が開発されている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0007】
図7は、特許文献1で開示されている吸引式載置台のシール装置の概略的な構成を示す。図6の構成と対応する部分には同一の参照符を付して重複する説明を省略する。裁断テーブル3の搬入部9側から搬入されたシート材11は、X軸方向に関して搬出部10側から搬入部9側に裁断ヘッド5を移動させながら、パーツ12を順次裁断していく。X軸方向移動部7からは、搬出部10側に突出するようにブラケット16が設けられる。ブラケット16の先端では、密閉シートロール17が回転可能に支持される。密閉シートロール17には、合成樹脂フィルムなどの空気不透過性の密閉シート17aが巻付けられている。密閉シート17aの先端は、搬出部10側に立設される保持アーム18の上部に固定される。ブラケット16内には、X軸方向移動部7によるX軸方向の往復移動に連動して、密閉シート17aを繰出す方向または巻取る方向に密閉シートロール17を回転駆動する機構が設けられている。すなわち、被裁断材であるシート材11および被覆シート14aの既裁断部分を被覆する密閉シート17aは、一端側を既裁断側で吸引式載置台2の端部に固定し、他端側を裁断刃4が裁断テーブル3の長手方向に移動するのに連動して繰出し、または巻取るように配設された密閉シートロール17としている。
【0008】
なお、図7の保持アーム18に相当する部分を昇降変位可能にしておき、裁断の途中でも吸引式載置台2の吸引を停止し、密閉シート17aの先端側を上昇させて、密閉シート17aを被裁断材の上面から剥離させ、裁断されたパーツ12の点検などのアクセスを可能にする構成も提案されている(たとえば、特許文献2および特許文献3参照。)。なお、特許文献2の密閉シートロール17に相当する部分は、ばねで巻取り側に付勢されているだけである。また、特許文献3では、密閉シートロール17側も、X軸方向移動部7に相当する部分が搬出部10側に相当する部分に達するときに斜面に案内されて上昇し、密閉シート17aに相当する空気不透過性シートによる密閉を解除する構成を有する。
【0009】
【特許文献1】特許第2654491号公報
【特許文献2】特公昭63−31355号公報
【特許文献3】特開平6−8192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
シート材11の積層厚は、吸引式載置台2による吸引前と吸引後とで大きく異なる場合がある。たとえば、スポンジ材料、綿、裏面にスポンジが付いているカーシート材、中綿入の生地などの弾力性のあるシート材11を積層して被覆シート14aで覆って被裁断材とするときは、吸引による積層厚の変化が大きくなる。すなわち、被裁断材を吸引式載置台2上へ搬入または搬出する際には、吸引力は作用させないので、被裁断材は嵩が大きくなる。被裁断材を裁断テーブル3上に搬入して吸引力を作用させれば、シート材11は被覆シート14aと裁断テーブル3との間で圧縮され、嵩が小さくなる。図6に示すように、図7のような密閉シート17aを使用しない場合、裁断終了後のパーツ12の輪郭などからの空気漏れで、パーツ12の吸着力が弱まり、そのパーツ12の部分のシート材11の嵩が増大して、パーツ12が浮き上がってしまう。
【0011】
図7に示すように、密閉シート17aを使用する場合は、嵩が大きい被裁断材を搬入部9から裁断テーブル3上に円滑に搬入するためには、密閉シートロール17の裁断テーブル3上の高さを充分に高くしておかなければならない。被裁断材の積層厚が密閉シートロール17の下端と裁断テーブル3の上面との間の間隔以上あると、密閉シートロール17が邪魔になって、被裁断材の搬入や搬出の作業性が悪くなってしまう。したがって、密閉シートロール17の裁断テーブル3の上面からの高さは、充分に高くする必要がある。
【0012】
しかしながら、密閉シートロール17の高さを高くすると、たとえば保持アーム18側のように、被裁断材の表面から傾斜して上昇することとなり、被裁断材を被覆する端部の位置が密閉シートロール17の直下よりも搬出部10側にずれてしまう。密閉シートロール17の位置は、X軸方向に関して、できるだけ裁断ヘッド5で裁断を行う位置に近い方が好ましいけれども、ブラケット16である程度は裁断位置から離さなければならない。密閉シートロール17の高さを上げれば、密閉シート17aで被覆可能な既裁断領域の範囲が減少してしまう。
【0013】
図8は、裁断テーブル3上に載置されるシート材11から裁断すべき複数のパーツ12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g…の配置を模式的に示す。実際に切断するパーツ12は、大きさや形状が異なることが多いけれども、説明の便宜上、全て同一形状とする。裁断テーブル3は、たとえば搬出部10で図の下端位置を原点として、原点に近い位置のパーツ12aからY軸方向に隣接するパーツ12b,12cを順次切断し、次にX軸方向に隣接するパーツ12dに移り、さらにY軸方向に隣接するパーツ12e,12fを裁断する。図に示すのは、さらにX軸方向に隣接するパーツ12gを、裁断ヘッド5で裁断している状態である。密閉シートロール17の位置は、X軸方向移動部7からブラケット16の長さだけ原点側に離れている。密閉シートロール17の裁断テーブル3の上面からの高さが保持アーム18と同程度に高くなると、実際に被裁断材を覆う密閉シート17aの範囲は、斜線を施して示すように、密閉シートロール17の位置よりもさらに搬出部10側になってしまう。このため、裁断が終了しているパーツ12d,12e,12fを密封することができず、吸引力が低下し、非圧縮状態では嵩が大きくなる弾力性のあるシート材11であれば、浮上がってしまうおそれがある。
【0014】
裁断済のパーツ12が浮上がると、その周辺では傾斜が生じる。裁断刃4で傾斜している部分を裁断すると、積層されているシート材11の上下で裁断位置がずれてしまい、裁断精度に悪影響を及ぼす。
【0015】
本発明の目的は、積層状態で吸引による嵩の変化が大きいシート材に対しても、搬入搬出を円滑に行い、かつ裁断精度を良好に保つことができる吸引式載置台のシール装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、柔軟なシート材を積重ね、吸引式載置台上で保持しながら、吸引式載置台の表面に沿って移動する裁断刃で裁断する際に、吸引式載置台の一端側からの裁断刃の移動量に合わせて、裁断刃側に設ける供給部から該一端側との間に空気不透過性シートを供給し、シート材表面に該空気不透過性シートを被せてシールする吸引式載置台のシール装置であって、
供給部からは、吸引式載置台の表面から間隔を開けた上方の位置で、空気不透過性シートを該吸引式載置台の表面側に供給するようにしておき、
該供給部の近傍に設けられ、該吸引式載置台側に供給される該空気不透過性シートの表面を下方に押圧する押圧状態、および該空気不透過性シートの表面を押圧しない非押圧状態を切換え可能な押圧機構を含み、
押圧機構による該押圧状態で、該非押圧状態よりも、該空気不透過性シートが該吸引式載置台上に載置されるシート材の表面に被せられる位置は、該裁断刃側に近くなることを特徴とする吸引式載置台のシール装置である。
【0017】
また本発明で、前記押圧機構は、前記押圧状態で前記空気不透過性シートの表面を下方に押圧する位置を、前記吸引式載置台の表面からの高さとして、変更可能であることを特徴とする。
【0018】
また本発明で、前記押圧機構は、
前記押圧状態で、前記空気不透過性シートの表面に接触する押圧部材と、
該押圧部材を移動端側で支持し、前記非押圧状態で、該押圧部材を該空気不透過性シートの表面から離隔させるように揺動変位可能な揺動部材とを含むことを特徴とする。
【0019】
また本発明で、前記揺動部材で、前記揺動変位の支点となる基端側の位置は、前記非押圧状態での前記移動端側の位置よりも、前記供給部から前記裁断刃側に離れる位置であることを特徴とする。
【0020】
また本発明で、前記押圧部材は、外周面で前記空気不透過性シートの表面に接触し、回転自在なローラであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、押圧機構による押圧状態では、非押圧状態よりも、空気不透過性シートが吸引式載置台上に載置されるシート材の表面に被せられる位置を、裁断刃側に近くすることができる。シート材の裁断を、吸引式載置台の一端側から他端側に行うようにしておくと、裁断の進行とともに、既裁断領域を覆う空気不透過性シートを、裁断刃で裁断を行う部分に近付けて、有効に密閉して裁断精度を良好にすることができる。押圧機構を非押圧状態とするときに、供給部が吸引式載置台の表面から高い位置にあれば、圧縮状態で嵩が小さくなるシート材を圧縮されない嵩が大きい状態で搬入したり搬出したりする際に、供給部が邪魔になることはなく、円滑な作業を行うことができる。
【0022】
また本発明によれば、押圧状態で空気不透過性シートの表面を下方に押圧する位置の吸引式載置台表面からの高さを変更可能であるので、シート材の積層高さに応じて適切に変更させることができる。
【0023】
また、本発明によれば、揺動部材を揺動変位させて、押圧部材を非押圧状態とすれば、圧縮性のシート材を嵩が大きい状態で搬入したり搬出したりする際に、供給部が邪魔になることはなく、円滑な作業を行うことができる。押圧部材を押圧状態にすれば、空気不透過性シートによる密閉位置を、裁断刃で裁断を行う部分に近付けて、有効に密閉して裁断精度を良好にすることができる。
【0024】
また本発明によれば、非押圧状態では押圧部材を供給部に近付け、押圧状態では押圧部材を裁断刃に近付けることができる。
【0025】
また本発明によれば、押圧部材は、外周面で空気不透過性シートの表面に接触し、回転自在なローラであるので、押圧状態でも空気不透過性シートの供給部からの供給や供給部への戻しを容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、本発明の実施の一形態であるシール装置21の主要部分の構成を簡略化して、また従来の構成と比較して示す。すなわち、図1(a)として押圧状態、図1(b)として非押圧状態、図1(c)として従来技術をそれぞれ示す。シール装置21が使用される裁断機の他の構成は、図7に示す裁断機1と基本的に同等である。
【0027】
図1(a)および図1(b)に示すシール装置21は、図7に示すような裁断機1の吸引式載置台2と基本的に同等な吸引式載置台22上に形成される裁断テーブル23で、裁断刃24で被裁断材25を裁断する際に用いられる。被裁断材25は、図7に示す積層されたシート材11の上に被覆シート14aが被せられているものと、基本的に同等である。図7のX軸方向移動部7と同等の構成部分からX軸方向の原点側に突出するブラケット26は、その先端に保持される密閉シートロール27から被裁断材25の表面に空気不透過性の合成樹脂フィルムなどによる密閉シート27aを供給する。シール装置21では、押圧部材として、押圧ローラ28を密閉シートロール27の近傍に配置する。押圧ローラ28は、ブラケット26の中間部分に設ける基端軸を支点として揺動変位する揺動アーム29の先端部で回転自在に支持される。図1(a)は揺動アーム29の先端部を下降させ、押圧ローラ28が密閉シート27aに接触して、裁断刃24に近い位置まで密閉シート27aを接近させてから被裁断材25を覆うようにしている押圧状態を示す。図1(b)は、揺動アーム29の揺動変位によって、揺動アーム29の先端部がブラケット26の位置まで上昇している非押圧状態を示す。図1(c)は、従来の構成として、押圧ローラ28および揺動アーム29を用いない構成を示す。
【0028】
図1(a)で、密閉シート27aが被裁断材25の上面を覆う位置と裁断刃24との距離をDaとし、押圧ローラ28の下端と裁断テーブル23の上面との間隔をHaとする。図1(b)で、押圧ローラ28の下端と裁断テーブル23の上面との間隔をHbとする。非押圧状態では、押圧ローラ28の下端は密閉シートロール27の下端よりも上昇するようにしてもよい。この場合は、間隔Hbを、密閉シートロール27の下端と裁断テーブル23の上面との間にとる。図1(c)で、密閉シート27aが被裁断材25の上面を覆う位置と裁断刃24との距離をDcとし、密閉シートロール27の下端と裁断テーブル23の上面との間隔をHcとする。
【0029】
図1(c)のような構成では、特に圧縮性の高いシート材を裁断する場合などで、間隔Hcを充分に確保して被裁断材25の搬入や搬出を容易にしようとすると、距離Dcが大きくなり、裁断精度が低下してしまう。シール装置21によれば、図1(a)に示す押圧状態で、間隔Ha<Hcとすることは容易であり、距離Da<Dcとして、密閉シート27aによる被裁断材25の被覆を充分に行うことができ、裁断精度も向上させることができる。図1(b)に示す非押圧状態では、間隔Hb>Hcとすることができ、嵩が大きい被裁断材25でも、容易に搬入や搬出を行うことができる。
【0030】
図2は、図1のシール装置21の構成を、より詳細に示す。押圧ローラ28および揺動アーム29は、押圧機構30に含まれる。押圧機構30は、さらに、シリンダ31や後述するばね等を含む。揺動アーム29は、基端側が揺動軸29aで、ブラケット26の中間部分に揺動変位自在に軸支されている。揺動アーム29の先端側には、押圧ローラ28が回動自在に軸支されている。揺動アーム29の基端側には、揺動軸29aと押圧ローラ28との距離よりも短い長さの駆動腕が延出して形成されている。駆動腕の先端には、シリンダ31のロッドの先端が連結されている。シリンダ31の基端は、密閉シートロール27の付近で、ブラケット26に揺動変位自在に軸支されている。シリンダ31は、たとえば空気圧などの流体圧で伸縮し、伸長状態で揺動アーム29の駆動腕をブラケット26の基端側に押圧し、揺動アーム29に、揺動軸29aまわりで、先端側の押圧ローラ28が上昇するようなトルクを与える。
【0031】
このような押圧機構30は、種々の構成を用いることができる。たとえば、流体圧によるシリンダ31ではなく、ボールねじなどの機構を用いることもできる。また、揺動軸29aに直接、トルクを与えるような角変位アクチュエータを用いることもできる。ただし、図示の機構を用いると、押圧機構30をコンパクトに構成することができ、図に示す非押圧状態では、側面視で、揺動アーム29をブラケット26の裏側に隠すことができる。シリンダ31のロッドが収縮すると、揺動アーム29には押圧ローラ28が下降するようなトルクが印加され、図に細線で示すような押圧状態となる。
【0032】
裁断中には、裁断刃24を被裁断材25に貫通させて裁断する位置の周囲を生地押さえ32で押圧し、裁断刃24の上下方向の往復動で被裁断材25が浮き上がるのを防止している。押圧状態の押圧ローラ28は、生地押さえ32と干渉しない範囲で、裁断刃24に近付けることができる。また、押圧ローラ28の下端は、被裁断材25の上面には接触しないように、少しだけ上方の位置となるようにする。
【0033】
特許文献1に示すように、密閉シートロール27は、裁断刃24をX軸方向に往復移動するのに連動して、密閉シート27aを繰出して裁断テーブル23側に供給したり、密閉シート27aを巻き取って裁断テーブル23側から回収したりすることができるように、回転駆動される。その駆動力は、裁断テーブル23の一側方に、X軸方向に張架されているベルト33に対して相対的に移動することで発生させる。すなわち、図7のX軸方向移動部7と同様な構成部分内にベルト33の一部を引き込み、プーリ34で上方に方向を変え、プーリ35でさらに横方向に方向を変える。同様なプーリ34,35が対称的な配置で図の右側にも設けられ、ベルト33は裁断テーブル23の側方の高さに戻る。X軸方向の移動でプーリ34,35は回転する。X軸方向の原点側のプーリ35には、同軸上に歯車36が設けられ、ブラケット26の基端部分に設けられる歯車37と噛合している。歯車37には、同軸上にプーリ38が設けられる。プーリ38には無端状のベルト39の一端が掛け渡されている。ベルト39は、側面視でブラケット26の裏面側に収納され、他端が密閉シートロール27と同軸上に設けられるプーリ40に掛け渡される。ベルト39による密閉シートロール27の駆動で、裁断刃24のX軸方向への移動量と、密閉シート27aの繰出し量または巻取り量を同期させる。また、噛合する歯車36,37間で、減速などの変速作用を行わせることができる。変速比は、密閉シートロール27の外径に応じて設定すればよい。なお、押圧ローラ28として、Y軸方向に一様な外径で連続しているものを使用しているけれども、小径の部分を有するものであってもよい。短いローラを小径の軸で連結して構成することもできる。
【0034】
図3は、ほぼ図2に対応する部分を、上方から見た構成を示す。図8のようにX軸およびY軸を設定すると、図の上方向がX軸方向であり、左方向がY軸方向である。揺動アーム29やシリンダ31や押圧ローラ28などの押圧機構30は、Y軸方向の両側のブラケット26にそれぞれ設けられる。ベルト39やプーリ40を含む密閉シートロール27の回転駆動機構は、Y軸方向の一方、たとえば原点側のブラケット26に設けられる。他方のブラケット26には、密閉シートロール27を回転可能に支持する支持部を押圧するばね41が収納されている。このブラケット26側に密閉シートロール27を押すようにすると、ばね41が収縮し、密閉シートロール27を取り外すことができる。押圧ローラ28も、ばね42でY軸の原点側に押圧されており、逆方向に押してばね42を収縮させれば、揺動アーム29間から取り外すことができる。
【0035】
図4および図5は、側面視でブラケット26の裏面側に設けられる構成を、密閉シートロール27の回転駆動機構が設けられる側と設けられない側とで、それぞれ示す。すなわち、図4は図3の右側を左方から見た構成、図5は図3の左側を右方から見た構成を、それぞれ示す。図4(a)および図5(a)は、押圧ローラ28の非押圧状態を示す。図4(b)および図5(b)は、押圧ローラ28の押圧状態を示す。揺動アーム29の基端側とブラケット26との間には引張力を作用させるばね43が設けられる。ばね43は、押圧ローラ28を上昇位置に揺動させるための補助となる。ばね43の付勢力をシリンダ31の推力に付加することによって、小さな推力のシリンダ31でも押圧ローラ28の重量に反して、上昇位置に揺動させ、非押圧状態とすることができる。ばね43は、シリンダ31に流体圧が作用しない状態となっても非押圧状態を維持するように付勢するような利用方法も可能である。
【0036】
すなわち、裁断刃24の移動量に合わせて、密閉シートロール27から密閉シート27aを供給し、被裁断材25表面に被せてシールする吸引式載置台22のシール装置21は、押圧機構30を含み、裁断テーブル23上面から間隔Hbを開けた上方の位置で、密閉シート27aを供給するようにしておく。押圧ローラ28は、密閉シートロール27の近傍に設けられ、吸引式載置台22側に供給される密閉シート27aの表面を下方に押圧する押圧状態、および密閉シート27aの表面を押圧しない非押圧状態を切換え可能である。押圧ローラ28による押圧状態では、密閉シート27aが吸引式載置台22上に載置される被裁断材25の表面に被せられる位置を、非押圧状態よりも裁断刃24側に近くすることができる。被裁断材25の裁断を、裁断テーブル23のX軸方向など、吸引式載置台22の一端側から他端側に行うようにしておくと、裁断の進行とともに、既裁断領域を覆う密閉シート27aを、裁断ヘッドで裁断を行う部分に近付けて、有効に密閉して裁断精度を良好にすることができる。押圧ローラ28を非押圧状態とするときに、密閉シートロール27が吸引式載置台22の表面から高い位置にあれば、圧縮性の被裁断材25を嵩が大きい状態で搬入したり搬出したりする際に、密閉シートロール27が邪魔になることはなく、円滑な作業を行うことができる。
【0037】
また、押圧機構30は、押圧状態での押圧ローラ28による密閉シート27aへの押圧位置を、裁断テーブル23の表面からの高さとして、変更可能な構成を含むようにすることもできる。たとえば、揺動アーム29の揺動変位の駆動をモータで行うようにすれば、押圧位置を容易に変更可能となる。裁断機には、裁断可能な許容積層厚が設けられており、密閉シートロール27の高さなどは、許容積層厚に対して最適となるように設定される。押圧機構30で押圧ローラ28の押圧位置を可変にしておけば、たとえば許容積層厚が約5cm(約2インチ)の裁断機で約2.5cm(約1インチ)の積層厚を裁断するような場合でも、適切な高さから密閉シート27aを供給することができる。裁断ヘッド側に、たとえば本件出願人が特開平7−60686号公報などで開示しているような積層厚の測定手段を設ければ、積層厚に応じて自動的に押圧位置を変えることも可能となる。
【0038】
また、揺動アーム29は、非押圧状態で先端側が密閉シートロール27に近く、裁断テーブル23の表面からの高さが高くなり、押圧状態で先端側が裁断刃24側に近付き、裁断テーブル23の表面からの高さが低くなるので、有効な切換えを行うことができる。
【0039】
また、押圧部材である押圧ローラ28は、外周面で空気不透過性シートである密閉シート27aの表面に接触し、回転自在なローラであるので、押圧状態でも空気不透過性シートの供給部からの供給や供給部への戻しを容易に行うことができる。押圧部材としては、回転しないで接触するだけのものを用いることもできる。また、空気圧などを作用させて、非接触で押圧することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の一形態であるシール装置21の主要部分の構成を簡略化して、また従来の構成と比較して示す模式的な側面断面図である。
【図2】図1のシール装置21の構成を、より詳細に示す側面断面図である。
【図3】ほぼ図2に対応する部分を、上方から見た構成を示す平面図である。
【図4】図3の右側のブラケット26の左側面図である。
【図5】図3の左側のブラケット26の右側面図である。
【図6】従来からの裁断機の構成を示す斜視図である。
【図7】先行技術による吸引式載置台のシール装置の概略的な構成を示す側面図である。
【図8】図7の裁断テーブル3上に載置されるシート材11から裁断すべき複数のパーツ12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g…の配置を模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0041】
21 シール装置
22 吸引式載置台
23 裁断テーブル
24 裁断刃
25 被裁断材
26 ブラケット
27 密閉シートロール
27a 密閉シート
28 押圧ローラ
29 揺動アーム
30 押圧機構
31 シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟なシート材を積重ね、吸引式載置台上で保持しながら、吸引式載置台の表面に沿って移動する裁断刃で裁断する際に、吸引式載置台の一端側からの裁断刃の移動量に合わせて、裁断刃側に設ける供給部から該一端側との間に空気不透過性シートを供給し、シート材表面に該空気不透過性シートを被せてシールする吸引式載置台のシール装置であって、
供給部からは、吸引式載置台の表面から間隔を開けた上方の位置で、空気不透過性シートを該吸引式載置台の表面側に供給するようにしておき、
該供給部の近傍に設けられ、該吸引式載置台側に供給される該空気不透過性シートの表面を下方に押圧する押圧状態、および該空気不透過性シートの表面を押圧しない非押圧状態を切換え可能な押圧機構を含み、
押圧機構による該押圧状態で、該非押圧状態よりも、該空気不透過性シートが該吸引式載置台上に載置されるシート材の表面に被せられる位置は、該裁断刃側に近くなることを特徴とする吸引式載置台のシール装置。
【請求項2】
前記押圧機構は、前記押圧状態で前記空気不透過性シートの表面を下方に押圧する位置を、前記吸引式載置台の表面からの高さとして、変更可能であることを特徴とする請求項1記載の吸引式載置台のシール装置。
【請求項3】
前記押圧機構は、
前記押圧状態で、前記空気不透過性シートの表面に接触する押圧部材と、
該押圧部材を移動端側で支持し、前記非押圧状態で、該押圧部材を該空気不透過性シートの表面から離隔させるように揺動変位可能な揺動部材とを含むことを特徴とする請求項1または2記載の吸引式載置台のシール装置。
【請求項4】
前記揺動部材で、前記揺動変位の支点となる基端側の位置は、前記非押圧状態での前記移動端側の位置よりも、前記供給部から前記裁断刃側に離れる位置であることを特徴とする請求項3記載の吸引式載置台のシール装置。
【請求項5】
前記押圧部材は、外周面で前記空気不透過性シートの表面に接触し、回転自在なローラであることを特徴とする請求項3または4記載の吸引式載置台のシール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−45684(P2006−45684A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223663(P2004−223663)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000151221)株式会社島精機製作所 (357)
【Fターム(参考)】