説明

吸引穿刺装置

【課題】簡便な操作で且つ安全に所定部位の組織等を採取でき、しかもその組織を挫滅させることなく、任意の大きさの組織を採取できる吸引穿刺装置を提供する。
【解決手段】穿刺針(2)は、先端の開口縁が刃物状に形成された外筒(11)と、外筒(11)内で外筒(11)先端から所定寸法だけ離隔した位置に先端が配置される受止部材(12)とを有する。受止部材(12)の先端と外筒(11)先端との間には試料収容部(13)が形成してある。外筒(11)内で受止部材(12)の周囲に通気路(14)が形成してある。外筒(11)の基端側に吸引手段(21)が接続される。吸引手段(21)が試料収容部(13)に、通気路(14)を介して連通連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臓器や器官の組織検査等において、超音波画像、光学内視鏡画像、或いは超音波内視鏡画像等のガイド下で体内の検査対象臓器・器官の所定部位から組織等を検査試料としてサンプリングする際に用いる装置に関し、さらに詳しくは、簡便な操作で且つ安全に所定部位の組織等を採取でき、しかもその組織を挫滅させることなく、任意の大きさの組織を採取できる吸引穿刺装置に関する。
本願は、2010年4月8日に、日本に出願された特願2010−89331号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
一般に、組織等を検査対象の体内臓器等から採取する方法には、超音波画像、光学内視鏡画像、或いは超音波内視鏡画像のガイド下に、採取用針を対象臓器等に穿刺して採取する方法がある。例えば超音波内視鏡画像のガイド下に採取する方法は、内視鏡に付随させた採取用針を用いて採取する。即ちこの方法は、超音波内視鏡により、その映し出された画像を基に、所定部位を特定させながら対象の臓器・器官の内部へ採取用針(穿刺針)を刺し入れ、この穿刺針により組織等の採取を行う。
【0003】
従来、上記の採取方法としては、対象臓器等の所定位置(例えば、腫瘍部など)に穿刺針を差し込み、その穿刺針の内部を、注射器等の吸引手段による吸引で減圧し、その針内部に組織を吸引する、いわゆる吸引法(例えば、特許文献1参照。)と、刺し込んだ穿刺針内へ組織を挟み込むようにして採取する、いわゆるTrucut法(例えば、特許文献2参照。)とがある。
【0004】
上記の吸引法に用いる穿刺針は、例えば図6に示すように、超音波内視鏡内へ進退可能に挿入される採取用外筒(51)と、その内部へ進退可能に挿入された内棒(52)とを備えている。この外筒(51)は、超音波内視鏡の基端(外部末端)側での手動操作により、その超音波内視鏡の先端から進出させることができる。また上記の内棒(52)は、上記の外筒(51)の基端側での手動操作により、その外筒(51)の先端から進出させることができ、さらにこの外筒(51)の基端側から抜き出して取り外すこともできる。またこの外筒(51)の基端側には注射器等の吸引手段を取り付けでき、この吸引手段を操作することで、外筒(51)の内部が陰圧にされる。
【0005】
上記の吸引法では、穿刺針(50)は次のように操作される。
最初に、図7Aに示すように、超音波内視鏡のガイド下に上記の穿刺針(50)を、上記の採取用外筒(51)内に上記の内棒(52)を挿入した状態で、例えば対象臓器(53)の近傍まで案内する。このとき、上記の内棒(52)は外筒(51)の先端口より若干内方で、出来るだけ先端部に近い位置に保持しておく。この内棒(52)は、穿刺針(50)を対象臓器(53)に刺し込む際、目的部位以外の組織などが外筒(51)内へ侵入することを防止し、目的部位以外の組織の混入によるコンタミネーションを極力回避するためである。
【0006】
次に、図7Bに示すように、この状態でその臓器(53)の、例えば病変した所定部位に上記の穿刺針(50)の先端を刺し込む。穿刺針(50)が所定部位に到達すると、外筒(51)の先端内部には、消化管粘膜(56)など、目的部位以外の組織(57)などが入り込んでいる場合がある。そこで図7Cに示すように、上記の内棒(52)を穿刺針(50)の先端よりも前方へ押し出し、外筒(51)内部に溜った他組織(57)等を排出する。
【0007】
次に、上記の内棒(52)を外筒(51)の基端側から抜き取り、図7Dに示すように、外筒(51)の基端(外部末端)側に注射器等の吸引手段(54)を接続し、外筒(51)の内部を陰圧にする。この陰圧をかけた状態で、図7Eに示すように穿刺針(50)の先端を対象臓器(53)の所定部位内で15〜20回、進退(ストローク)させる。これによりその所定部位の組織が外筒(51)内に吸引され、採取される。その後、陰圧による吸引を解除し、吸引手段(54)を取り外したのち、図7Fに示すように速やかに穿刺針(50)を超音波内視鏡(55)から抜き取り、外筒(51)内に採取されている細胞や組織切片の採取物(58)をシャーレに取り出し検査試料とする。
【0008】
一方、例えば図8に示すように、上記のTrucut法で用いる穿刺針(60)は、カテーテルシース(61)内に収容され、先端が刃物状に形成されている採取用外筒(62)と、その内部へ進退可能に挿入された内針(63)とを備えており、この内針(63)の先端近傍に、試料を収容するためのトレー部(64)が凹設してある。
【0009】
上記のTrucut法では、穿刺針(60)は次のように操作される。
最初に、図9Aに示すように、カテーテルシース(61)内で、外筒(62)の先端から内針(63)のトレー部(64)が出た状態にしておき、且つこの内針(63)の先端がカテーテルシース(61)の先端から出ていない位置で、外筒(62)と内針(63)とを固定する。そしてこの状態で対象臓器(65)の近傍まで案内する。符号(66)は消化管粘膜など、対象臓器以外の器官等を示す。
【0010】
次に、図9Bに示すように、超音波内視鏡のガイド下で、穿刺針(60)を目的部位に穿刺する。これにより、目的部位の組織が上記のトレー部(64)に入り込む。この状態で、図9Cに示すように、内針(63)を固定したまま、上記の外筒(62)を先端側へ押し出し、その先端縁で目的の組織を切り取るとともに、内針(63)を外筒(62)内に収容する。その後、図9Dに示すように、内針(63)が収容された外筒(62)をカテーテルシース(61)内に戻して、この穿刺針(60)を超音波内視鏡から抜き取り、上記の採取された組織(67)を上記のトレー部(64)からシャーレに取り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平08−117232号公報
【特許文献2】特表2001−515372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の吸引法では、次の問題点がある。
(イ)上記の吸引手段で外筒内の略全長に亘る内部を陰圧にするため、高い陰圧で組織を吸引することとなる。外筒内に吸引された試料は飛び散りが生じ、外筒内面に付着する形で採取されるため、試料の前後で差圧がつき難く、試料が外筒の先端から滑り落ちる可能性が高い。また、穿刺針先端の一回の往復(ストローク)では、検体がほとんど採取できていないことがある。このため、対象臓器・器官の所定部位へ穿刺後、穿刺針(外筒)をその部位の周囲で、針を刺した方向と平行に進退させるように、15〜20回往復(ストローク)させる必要があり、手間がかかるうえ、穿刺している時間が長くなる問題がある。
【0013】
(ロ)さらに、上記の15〜20回往復させる1回の穿刺操作では、充分な検体の採取が出来ないことが多く、所望量の試料を採取するには、この操作を複数回(通常3、4回)繰り返すことが必要となる場合がある。
【0014】
(ハ)外筒内には、略全長に亘って同じ内径の空間が形成されており、吸引された試料は、この外筒内の陰圧により勢い良く管内へ吸引されて採取される。この結果、採取された組織の大部分が吸引の衝撃等により破壊され、微小検体となることが多く、組織標本として作製していく上で検体処理が困難となる問題がある。また、吸引圧による組織の挫滅をみることが多く、病理組織診に支障をきたす場合がある。従って多くの場合、バラバラになった細胞を採取し標本を作製することとなり、組織診断に十分な標本とはならず、診断は細胞診による判定のみとなる。
【0015】
(ニ)採取された試料の処理や、採取できているかの確認のためには、迅速に細胞診を行うことが望ましいが、ばらばらになった小さな細胞で採取されるため、組織として採取できているかを肉眼で判断することが容易でなく、また、組織診断に耐えうるだけのサンプル形状で採取することが困難であり、このため、臨床検査技師や病理医の立ち会いが推奨され、人手と手間がかかる問題がある。
【0016】
一方、上記のTrucut法では、次の問題点がある。
(イ)市販のTrucut用穿刺針では、上記のトレー部の長が20mmと長く、また、そのトレー部の長さを必要に応じて変更する、ということが出来ない。このため、臨機応変に所望の寸法の試料を採取する、といった操作はできず、組織を採取する対象の臓器・器官は、例えば20〜30mm以上など、一定以上の大きさに限られており、これよりも小さな臓器・器官から組織を採取することやこれ以上の組織を採取することが難しい。
【0017】
(ロ)市販のTrucut用穿刺針は、基端側に設けたボタンを押すと、先端から外筒が強制的に飛び出す自動式であり、対象臓器・器官が非常に硬い場合などは、穿刺の反力で超音波内視鏡が手前に押し戻される虞がある。また、穿刺針の外径が太い(19G)ことから、スコープの捻じれやアングル操作、鉗子起立装置の作動、或いは対象臓器・器官の位置によっては、穿刺針の操作性が悪くなり、自動式に飛び出すタイミングがズレてしまう可能性がある。
【0018】
(ハ)外筒内に内針を設け、その内針にトレー部を形成した複雑な構造となっているためか、吸引法に用いる穿刺針が例えば1〜3万円であるのに対し、Trucut用穿刺針は例えば5万円程度と高価である。
【0019】
通常、良性悪性の鑑別診断に関しては、細胞異型で概ね判定することができる細胞診診断により良好な判定が得られる。しかし、細胞異型のみでは判定困難で構造異型を判定していくことが必要となった場合には、組織診診断が必要となる。特に、自己免疫性膵炎、消化管粘膜下腫瘍、リンパ節疾患等、免疫組織化学的判定が必要な病変に対しては組織診断が欠かせない。また、今後大きな期待をもたれている、遺伝子解析や免疫染色等による分子病理診断分野には、十分な量でかつ挫滅の少ない組織採取が必要となる。
【0020】
しかしながら上述のように、吸引法で採取した検体は、病理学的判定法として、細胞診がメインであり、極めて低い確率ではあるが、組織診断に足り得る組織検体が採取できた場合にのみ組織診が可能である。従って、組織診断用の装置として十分に機能するとはいえない。一方、Trucut法では組織診を主目的とするが、上記理由によって、対象臓器・器官の大きさや超音波内視鏡で描出し得る対象臓器・器官の位置により適応が限られてくるため、このTrucut法は広く普及していない。従って、吸引法を行った後、検体不足分をTrucut法で補うことを推奨している報告もある。
【0021】
本発明の技術的課題は上記の問題点を解消し、簡便な操作で且つ安全に所定部位の組織等を採取でき、しかもその組織を挫滅させることなく、任意の大きさの組織を採取できる吸引穿刺装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は上記の課題を解決するために、以下の手段を提供する。
【0023】
すなわち、本発明は、第1の先端の開口縁が刃物状に形成された外筒と、前記外筒内で前記外筒の前記第1の先端から所定寸法だけ離隔した位置に第2の先端が配置される受止部材とを有する穿刺針を備え、前記受止部材の前記第2の先端と前記外筒の前記第1の先端との間に試料収容部が形成され、前記外筒内で上記の受止部材の周囲に通気路が形成され、前記外筒の第1の基端側に接続される吸引手段を備え、この吸引手段が上記の試料収容部に上記の通気路を介して連通して連結される、吸引穿刺装置において、前記受止部材は、前記試料収容部の容積の指標となる指標部を有し、前記指標部は、前記受止部材の第2の基端側を屈曲させて形成された係止部であり、前記試料収容部の容積が所定の値になると、前記係止部によって前記受止部材の前記外筒に対する後退が妨げられる。
【0024】
上記の穿刺針の外筒の先端は、例えば超音波内視鏡画像のガイド下等で案内され、対象臓器・器官の所定部位に穿刺される。そして、上記の吸引手段が作動すると、上記の試料収容部内の空気は上記の通気路を介して吸引され、この試料収容部内に陰圧が加えられる。この状態で、上記の外筒の先端が進出すると、その外筒の先端で所定部位の一部が切り取られる。そして、この切り取られた部分は、上記の陰圧で吸引されて上記の試料収容部内へ円滑に収容され、その陰圧でこの試料収容部内に保持される。このとき、上記の採取物は上記の受止部材で受け止められて先端から大きく入り込むことが無いので、上記の陰圧による過剰な力学的衝撃を受けずに済み、飛び散りによる微小化や組織の挫滅などが抑制され、大きな(長い)組織として採取される。
【0025】
上記の外筒を上記の所定部位で進出させる寸法は、上記の試料収容部の長さ、即ち、外筒の先端と上記の受止部材との離隔寸法に応じて設定される。
また上記の外筒は、上記の進出と後退を複数繰り返してもよいが、1回の進出で所望量の試料を採取すると、所定部位の一部を大きな組織の状態で採取できるので好ましい。
また上記の外筒の進出は、例えば外筒の基端(外部末端)側に配置したボタン等で自動操作してもよいが、手動で操作すると、ある程度の手元感覚がリアルタイムに把握でき、丁寧に且つ確実に、対象臓器・器官の所定部位から組織等を採取できて好ましい。
【0026】
上記の穿刺針は、前記の受止部材と交換して配置される内棒を上記の外筒内に備えており、この内棒は、外筒の内方で先端近傍に位置させた閉止姿勢と、外筒の先端から外方へ押し出した排除姿勢とに切り換え可能であると好ましい。この場合、上記の内棒を予め閉止姿勢で外筒内に装着しておき、上記の外筒の先端部を対象臓器・器官の所定部位へ穿刺したのち、上記の内棒を排除姿勢に切り換えることで、上記の穿刺までに外筒内へ侵入した他組織などの異物を排出でき、採取される試料にこれらの異物が混入することを防止できて好ましい。なお、上記の排出姿勢に切り換えられた内棒は、外筒内に後退されたのち、上記の受止部材に交換される。
【0027】
上記の内棒は、上記の受止部材を兼ねることができる。即ち上記の内棒は、上記の排出姿勢に切り換えたのち、上記の外筒内で先端から所定寸法だけ離隔した位置まで後退させることで、上記の受止部材として用いることができる。
【0028】
また上記の内棒は、上記の受止部材と別部材に構成してもよい。この場合は、上記の排出姿勢に切り換えた内棒が外筒の内部を経て基端側から取り出したのち、上記の受止部材が外筒内の所定位置に装着される。
【0029】
上記の受止部材挿通口は、上記の受止部材を気密状に挿入可能であればよく、特定の構造に限定されないが、上記の受止部材の基端側を任意の位置で固定保持できると、この受止部材の先端が外筒先端から離隔している所定寸法を、任意に設定できて好ましい。
【0030】
上記の接続部は、上記の外筒の基端側に一体に形成したものであってもよいが、上記の外筒と別体に形成され、この外筒の基端部と気密状に接続可能な外筒接続口を備えると、例えば市販の外筒などを採用でき、安価に実施できて好ましい。
【0031】
上記の吸引手段は、上記の試料収容部内に適度の陰圧をかけることができればよく、特定の構造のものに限定されない。例えば注射器型の吸引器や、電動の排気ポンプ等を用いることができる。この吸引手段と上記の外筒の基端側との接続は、特定の構造のものに限定されないが、例えばユニバーサルジョイントなどを用いると、簡単に且つ気密状に接続できて好ましい。
【0032】
また、上記の外筒の基端側と上記の吸引手段との間には、この吸引手段と上記の通気路との連通を開閉できる、コック等の開閉手段を備えると、好ましい。
例えば、上記の吸引手段が注射器タイプの吸引器等であると、一回の吸引で試料収容部内に十分な陰圧が得られない場合がある。この場合は吸入手段が吸引と排気とを繰り返すことになるが、この排気操作の際に上記の開閉手段で上記の連通を遮断することで、上記の試料収容部内の陰圧を容易に保持することができる。
また、上記の吸引手段が排気ポンプ等の減圧装置である場合には、この吸引手段と上記の外筒の基端側との接続の際に、その外筒内に急激な吸引が生じる虞があるので、その接続時に上記の開閉手段で上記の連通を遮断しておくと好ましい。
【0033】
上記の吸引手段は、上記の試料収容部内の圧力変化を調整できる圧力調整手段を備えると、穿刺針内(外筒内)の急激な圧力降下を防止でき、採取した組織の力学的損傷を回避できて好ましい。またこれらの圧力降下や試料収容室内の陰圧を確認するために、圧力計等を付設することも好ましい。
【0034】
上記の穿刺針は、通常、内視鏡内に進退可能に装着され、内視鏡のガイド下で操作されて上記の外筒の先端部が対象臓器・器官の所定部位へ穿刺される。ここで上記の内視鏡とは、通常の光学内視鏡であってもよく、超音波内視鏡等であってもよい。
上記の穿刺針は内視鏡内を通過することになることから、保護チューブで覆われていると好ましい。この保護チューブは、通常は内視鏡先端からはみ出ないようになっており、穿刺針は、内視鏡先端部及び保護チューブ先端部から押し出される形で、対象臓器・器官等の所定部位に到達する。
【0035】
上記の対象臓器・器官とは、ヒトやヒト以外の動物の、超音波、光学内視鏡、或いは超音波内視鏡等で観察できる臓器等であればよく、生体内の特定の臓器や器官に限定されない。具体的には、上部消化管や、下部消化管と隣接している臓器として、食道、縦隔、消化粘膜、食道に密接している肺病変、胃、膵臓、肝左葉、十二指腸、各種のリンパ節、後腹膜、左副腎、大腸、直腸隣接臓器、腎臓、などを挙げることができる。
この時、通常、体外からのエコー画像によりガイド可能な臓器・器官については、体外からの直接穿刺法により組織等の採取がおこなわれ、体外からのエコー画像により確認が出来ない若しくは困難な臓器・器官であって、光学内視鏡画像でガイド可能な臓器・器官については、光学内視鏡画像のガイド下に組織等の採取がおこなわれ、さらに光学内視鏡画像での確認が出来ない、もしくは困難な臓器・器官については、超音波内視鏡画像のガイド下に組織等の採取がおこなわれる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の吸引穿刺装置は、上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
【0037】
(1)外筒の先端で所定部位の一部が切り取られた組織は、試料収容部内の陰圧で吸引されるが、その試料収容部は外筒内の先端部のみを占める小容積に過ぎないので、その採取組織に大きな吸引圧力を加える必要がなく、上記の陰圧による過剰な力学的衝撃が加わることを防止できる。この結果、採取された組織の飛び散りによる微小化や組織の挫滅などを抑制できる。
(2)飛び散りによる微小化や挫滅を抑制して組織を採取できるので、内視鏡医などの施行者が、組織として採取できているかを肉眼で容易に判断できる。この結果、試料の採取の際に臨床検査技師や病理医の立ち会いを省略でき、迅速に組織診や細胞診を行うことができる。
【0038】
(3)外筒の先端で切り取った組織等を略そのままの状態で上記の試料収容部内へ円滑に収容できるので、例えば外筒の1回の進出で所定部位の組織等から所望量を採取することができ、前記の従来の吸引法に比べて簡単に操作できるうえ、穿刺している時間を短縮することができる。従って、臓器等に対するダメージ・損傷を低減することができる。
(4)外筒の進出は手動で操作することができるので、対象臓器・器官の所定部位から組織等を丁寧に且つ安全で確実に採取することができる。
【0039】
(5)上記の受止部材の配設位置を調整し、試料収容部の大きさを容易に変更することができ、これに応じて外筒先端の進出寸法を設定することで、所望の大きさの組織を採取することができる。従って、前記の従来のTrucut法と異なり、例えば20mm以下等の、任意の大きさの臓器・器官の所定部位の組織等も、他の組織を混入させずに、容易に採取することができる。
(6)対象臓器・器官の所定部位から組織を採取できるものでありながら、外筒内に受止部材を配置するだけの簡単な構造であるので、前記の従来のTrucut法と異なり、安価に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態を示す、超音波内視鏡から穿刺針の先端部を進出させた状態の外観図である。
【図2】本発明の実施形態の、吸引穿刺装置の中間部を省略した外観図である。
【図3A】同実施形態の吸引穿刺方法の手順を説明する模式図である。
【図3B】同実施形態の吸引穿刺方法の手順を説明する模式図である。
【図3C】同実施形態の吸引穿刺方法の手順を説明する模式図である。
【図3D】同実施形態の吸引穿刺方法の手順を説明する模式図である。
【図3E】同実施形態の吸引穿刺方法の手順を説明する模式図である。
【図3F】同実施形態の吸引穿刺方法の手順を説明する模式図である。
【図3G】同実施形態の吸引穿刺方法の手順を説明する模式図である。
【図3H】同実施形態の吸引穿刺方法の手順を説明する模式図である。
【図4】本発明の吸引穿刺装置を用いて膵癌から採取した、採取物の写真である。
【図5】従来の吸引穿刺装置を用いて膵癌から採取した、採取物の写真である。
【図6】従来の吸引法に用いる穿刺針先端の断面図である。
【図7A】従来の吸引法の手順を説明する模式図である。
【図7B】従来の吸引法の手順を説明する模式図である。
【図7C】従来の吸引法の手順を説明する模式図である。
【図7D】従来の吸引法の手順を説明する模式図である。
【図7E】従来の吸引法の手順を説明する模式図である。
【図7F】従来の吸引法の手順を説明する模式図である。
【図8】従来のTrucut法に用いる穿刺針先端の外観図である。
【図9A】従来のTrucut法の手順を説明する模式図である。
【図9B】従来のTrucut法の手順を説明する模式図である。
【図9C】従来のTrucut法の手順を説明する模式図である。
【図9D】従来のTrucut法の手順を説明する模式図である。
【図10】本発明の変形例における受止部材の基端部を示す模式図である。
【図11】本発明の変形例における受止部材の基端部を示す模式図である。
【図12】本発明の変形例における受止部材の基端部を示す模式図である。
【図13】本発明の変形例における外筒の先端部を示す模式図である。
【図14】本発明の変形例における受止部材の基端部を示す模式図である。
【図15】本発明の変形例における受止部材の先端部を示す模式図である。
【図16】本発明の変形例における外筒の先端部を示す模式図である。
【図17】本発明の変形例における受止部材の先端部を示す模式図である。
【図18A】本発明の変形例における外筒および受止部材の断面図である。
【図18B】本発明の変形例における外筒および受止部材の断面図である。
【図19】本発明の変形例における外筒および受止部材の断面図である。
【図20】本発明の変形例における接続部を一部断面で示す図である。
【図21】外筒と受止部材とのクリアランスと、組織の吸引採取との関係を検討する実験に用いた機構の模式図である。
【図22】同クリアランスと組織採取量との関係を示すグラフである。
【図23】2.0mg以上組織を採取できる確率と同クリアランスとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1に示すように、本発明の吸引穿刺装置(1)は穿刺針(2)を備えており、保護チューブ(3)で覆われた状態で、超音波内視鏡(4)内に進退可能に装着されている。この超音波内視鏡(4)の先端には、深触子(5)とライトガイド(6)と送気・送水ノズル(7)と対物レンズ(8)と鉗子口(9)と鉗子起上台(10)とが設けてあり、上記の穿刺針(2)は、この鉗子口(9)から先端を進出できるように構成してある。
【0042】
図2に示すように、上記の穿刺針(2)は、外筒(11)と、この外筒(11)内でその外筒(11)先端から所定寸法だけ離隔した位置に先端部が配置される受止部材(12)とを有する。上記の外筒(11)は、先端の開口縁が刃物状に形成されている。この外筒(11)先端と上記の受止部材(12)の先端との間には、試料収容部(13)が形成してある。また上記の外筒(11)内で上記の受止部材(12)の周囲には、通気路(14)が形成してある。この通気路(14)の通路断面積は、外筒(11)内空間の径方向の断面積よりも大幅に狭く形成されている。
【0043】
上記の外筒(11)の基端(外部末端)側には、接続部(15)が付設してある。この接続部(15)は、外筒接続口(16)と、受止部材挿通口(17)と、吸引手段連通口(18)とを備え、この外筒接続口(16)に上記の外筒(11)の基端側端部が気密状に、且つ着脱可能に接続されている。上記の受止部材挿通口(17)には、上記の受止部材(12)が気密状に挿入可能であり、この受止部材挿通口(17)に付設されたユニオンジョイント(19)により、上記の受止部材(12)を任意の所定位置で固定保持してある。
【0044】
上記の受止部材(12)は、内側の先端が外筒(11)内の所定位置に達すると、通常は、基端側端部がこの受止部材挿通口(17)よりも外側に突出している。この突出した基端側端部の外周面には、外筒(11)の先端から受止部材(12)の内側先端までの距離に対応する目盛(20)が、必要に応じて付してある。そしてこの目盛(20)を参考に受止部材(12)の挿入位置を調節することで、上記の外筒(11)の先端と受止部材(12)の内側先端との間に形成される試料収容部(13)の長さ(容積)が、所定の値に設定される。
【0045】
上記の吸引手段連通口(18)には、吸引手段として、例えば注射器型の吸引器(21)が、開閉手段であるコック(22)を介して気密状に接続してある。従ってこの吸引器(21)は、上記の試料収容部(13)に上記の通気路(14)を介して連通連結されている。この吸引器(21)と上記の通気路(14)との連通は、上記のコック(22)により開閉することができる。
【0046】
上記の外筒(11)内には、図2の仮想線に示すように、内棒(23)が上記の受止部材(12)と交換して配置できるようにしてある。この内棒(23)は、外筒(11)の内方で先端近傍に位置させた閉止姿勢(S)と、外筒(11)の先端から外方へ押し出した排除姿勢(R)とに切り換えることができる。
【0047】
次に、上記の各部材について詳述する。
(1)外筒(穿刺針)について
上記の外筒(11)は、体内組織や器官へ穿刺して組織試料を取り出すことから、先端は斜めに切り欠かれており、且つ開口周縁がカッター(刃物)状にされている。また外径等の寸法については、人体への影響を考慮してごく一般的な範囲で定められ、この観点から、従来の吸引法等において使用される穿刺針を使用してもよい。例えば太さについては、対象臓器等により規格は異なるが、一般的には市販品の19G(外径1.06mm、内径0.70mm)や、22G(外径0.71mm、内径0.41mm)、25G(外径0.51mm、内径0.26mm)等を採用することができる。
【0048】
なお、超音波の画像や超音波内視鏡の画像のガイド下に組織採取する場合には、例えば図1に示すように、本外筒(11)の先端部分に溝等の窪み部(28)を形成すると好ましい。この窪み部(28)を形成することで超音波による乱反射が起こり、外筒(11)の先端部分が鮮明に画像に描出され、対象臓器・器官に穿刺する場合に、その外筒(11)の先端部分の正確な位置を確認することが容易となるからである。この窪み部(28)は超音波を乱反射できればよく、同心状の溝や螺旋状の溝、凹部、環状溝など、任意の形状や構造を採用することができる。超音波を用いない、通常の光学内視鏡による場合は、当然に、外筒(11)の先端部分にこの窪み部(28)を形成する必要はない。
【0049】
また外筒(11)の長さについては、例えば、内視鏡観察の下に組織サンプルを採取する場合、その内視鏡内を通して操作されることから、少なくともその内視鏡の長さより長くする必要がある。また、当然ながら対象部位に到達可能な長さが必要である。この長さの点でも、上記したように市販の穿刺針を使用でき、通常、120cm〜200cmが推奨される。また、例えば、内視鏡を使用せず、通常の超音波観察下に直接外部から穿刺して、組織サンプルを採取する場合には、必要に応じてその長さを決定すればよく、例えば市販のものでは、有効長さで75mmから200mm程度のものを使用してもよい。
【0050】
(2)内棒について
上記の内棒(23)は、対象臓器・器官へ体外から穿刺する際に、上記の外筒(11)内に対象臓器等の目的部位以外の組織等が侵入することを防止するものであり、外筒(11)の内部でこの外筒(11)の先端より中側に位置した閉止姿勢(S)に切り換えてある。また、穿刺操作においては、外筒(11)が目的とする対象臓器・器官の所定位置に到達したとき、それまでの他の部位を通過した際の、外筒(11)内へ侵入した異物を排除するため、内棒(23)を排除姿勢(R)に切り換えて押し出すことが必要となる。このため、この内棒(23)の形状は、先端が平坦な円形の、棒状のものが好ましい。またこの内棒(23)の長さは、当然に外筒(11)の全長より長くする必要があり、その操作性を考慮し、外筒(11)の全長より数cm長くすることが推奨される。さらにこの内棒(23)の外径は、当然に、使用する外筒(11)の内径よりも小さくなければならない。なお、本発明では、該当する穿刺針(2)に対応した、市販の内棒(23)を使うことができる。
【0051】
(3)受止部材について
上記の受止部材(12)は、サンプリング(組織採取)時に、外筒(11)内に吸引された採取サンプル(組織)を先端で受け止めるものであり、この受止部材(12)の先端位置と外筒(11)の先端位置との離隔寸法を設定することにより、所望の大きさ(長さ)の組織を採取することができる。またこの離隔寸法を調整することにより、対象臓器・器官の大きさや穿刺方向の厚みに対して、フレキシブルに対応することができる。そして上記の採取サンプルは、受止部材(12)の先端部までしか外筒(11)内へ入り込まないことから、吸引や陰圧による過剰な力学的衝撃を受けず、組織の挫滅を抑制することができる。
【0052】
上記の受止部材(12)の外周面と上記の外筒(11)の内周面との間のクリアランスは、次の要因に基づいて決定される。
(1)外筒(11)への挿入や、外筒(11)内からの引き抜き(脱着行為)がスムーズに抵抗なく行えるクリアランスであること。
(2)クリアランスが広すぎると、上記の吸引器(21)による吸引の際に、吸引による陰圧効果が小さいため、充分に組織を吸引することが出来ない。
(3)クリアランスが狭すぎると、外筒(11)内面との摺動抵抗が大きくなり、スムーズな進退操作を妨げる。
(4)クリアランスが過剰に狭くなると、上記の吸引器(21)による吸引・陰圧操作に強い抵抗が生じて、操作性が低下する。また、吸引操作により急激な内圧の低下をきたし、組織の急激な外筒(11)内への吸引が起こり、組織の挫滅を生じる虞がある。
【0053】
上記の受止部材(12)の外径は、上記のクリアランスを考慮して、適宜決定することも好ましいが、例えば棒状の場合には、上記の内棒(23)の外径の規格と同様の太さであればよく、穿刺針に対応した市販品を使用することができ、また受止部材(12)の先端部が円盤状や円柱状の場合は、その最大径が上記の内棒(23)の外径であれば使用することができる。
【0054】
上記の受止部材(12)の形状は、特定のものに限定されないが、例えば全体が棒状であってもよい。この場合は、上記の内棒(23)を兼用することも可能であるが、この場合は当然に、外筒(11)内に挿入された受止部材(12)の先端を、内棒(23)としてその外筒(11)の先端から突出させるに足る長さが必要となる。
【0055】
また上記の受止部材(12)の形状は、採取した試料と接触する先端部がその吸引した試料のストッパー機構をもたせたものであればよく、例えばその先端部が円盤状や円柱状であって、その後方の大部分はワイヤー状などであってもよい。この場合は、外筒(11)と受止部材(12)との間に充分なクリアランスを確保できるので、過度に急激な吸引による圧力変動を回避でき、穏和な吸引操作により、力学的な組織破壊を抑制することができる。
【0056】
この時、上記のワイヤー状部分に関しては、先端部を外筒(11)内の所定部位まで挿入するに十分な強度、即ち、挿入の際に生じる外筒(11)内面との摺動抵抗に抗して、挫屈せずに挿入できるだけの強度を有している必要がある。
【0057】
上記の受止部材(12)の先端形状は、鋭角状であると安価に実施できて好ましく、円盤状や円柱状であると吸引した試料を確実に受け止めることができて好ましい。
一方、この受止部材(12)の基端(外部末端)側には、前記のように目盛(20)等の目安が付記されていると、外筒(11)の先端部から受止部材(12)の先端部までの離隔距離を、この目盛(20)等の目安で把握できるので、好ましい。
【0058】
なお上記の受止部材(12)の外周面には、長さ方向に沿って縦溝や螺旋状の溝を設けてもよく、これにより、受止部材(12)の外周面と外筒(11)の内周面との間のクリアランスが小さくても、前記の通気路(14)の通路断面積を広くでき、吸引時の管内抵抗を抑えて、スムーズな吸引操作を行うことができる。
【0059】
上記の受止部材(12)の太さは、外筒(11)の内径に応じて定められるが、好ましくは、前記のクリアランスを決める要因に適合するように設定される。即ち、この受止部材(12)の太さが外筒(11)の内径に比較して過剰に小さい場合には、外筒(11)内の空間が大きくなるので、前記の吸引器(21)による吸引力が低下し、一回の吸引で十分な量の組織を採取できない虞があり、また強く吸引することで、採取した組織や試料が飛散し破壊される虞がある。
【0060】
一方、受止部材(12)が過剰に太く、外筒(11)の内面とのクリアランスが狭い場合は、外筒(11)内の空間容積が減少し、少しの吸引操作によって試料収容部(13)内が大きく減圧される。この結果、試料組織が急激に強い力で吸引され、受止部材(12)や外筒(11)の内面に激しく衝突したり接触したりして、組織破壊が引き起こされる可能性がある。
【0061】
また上記の受止部材(12)の長さは、前記の接続部(15)が装着された状態であっても、外筒(11)内の所定位置に配設した際に、施術者が上下の動きによる位置合わせ等の操作をできる程度に、接続部(15)の外部に露出する部分が確保されていると好ましい。特に、採取サンプルの大きさ(長さ)をフレキシブルに変化させるために、上記の目盛(20)等を基端側に付設した場合には、その目盛等を明確に読み取れるように接続部(15)の外側へ露出できる長さが確保される。
【0062】
(4)接続部について
外筒(11)内を吸引減圧する吸引器(21)を接続し、上記の受止部材(12)を挿入でき、外筒(11)の基端部に接続する部材である。この実施形態では外筒(11)とは別部材であるが、本発明では外筒(11)の基端部に一体に形成してもよく、この場合は、この接続部(15)に受止部材挿通口(17)と吸引手段連通口(18)とが設けられる。
【0063】
この接続部(15)は、開放された受止部材挿通口(17)と吸引手段連通口(18)と外筒接続口(16)とを備えておればよく、具体的にはT字管やY字管などの三又管が好ましいが、特定の形状に限定されない。この接続部(15)の寸法は、外筒(11)の外径や吸引器(21)の規格、受止部材(12)の規格等により適宜決定することができるが、各部材との接合のし易さを考慮すると、たとえば、吸引手段連通口(18)の外径は、吸引器(21)の接合管の外径と同等程度が好ましい。また接続部(15)の内径において、少なくとも上記の受止部材(12)が通過する部分は、その受止部材(12)がスムーズに通過できる大きさにする必要がある。具体的には、受止部材(12)が通過する部分での接続部(15)内径は、少なくとも外筒(11)の内径と同等もしくはそれ以上であると好ましい。
【0064】
上記の吸引手段連通口(18)と上記の吸引器(21)との接続は、減圧に耐えうる接合器具、例えば耐圧管や接合ユニオンジョイント等を用いての接合や、吸引器(21)の接合部分を吸引手段連通口(18)にねじ込むといった接合により行うことができる。この接合部分は、吸引・減圧時にリークを防ぎ、試料採取時に穿刺針内部の減圧状態が保持できるように、気密状に接続される。
【0065】
上記の外筒接続口(16)と外筒(11)の基端部との接続も、上記の吸引手段連通口(18)と同様な手法により接合され、気密状態が保持される。
【0066】
上記の接続部(15)は、上記の受止部材(12)を上記の受止部材挿通口(17)から上記の外筒(11)内へ挿入でき、且つ、受止部材挿通口(17)が気密状に保持される構造にされている。この気密状に保持する構造としては、例えば、互いに外径が異なるものを接合できる異型ユニオンジョイントや、密閉性を維持させながら受止部材(12)を通せる透孔を中心に設けた密栓などによる接合が例示される。
【0067】
上記の受止部材挿通口(17)は、受止部材(12)の挿入深さ位置を変更できる措置が講じられた接合方法が推奨される。具体的には、上記の密栓を用いる場合、受止部材(12)との接触部の滑りを良くし、必要に応じて受止部材(12)の進退運動を許容し、外筒(11)先端と受止部材(12)先端との離隔距離を調節でき、採取サンプルの大きさ(長さ)をフレキシブルに調節できるように構成してある。なお、この採取サンプルの大きさの調節は、外筒(11)の内径の大きさともリンクし、採取組織の量等をフレキシブルに変化させることができ、従来の組織採取法としてのTrucut法の欠点を克服することができる。
【0068】
(5)吸引器について
試料採取操作において、接続部(15)の吸引手段連通口(18)に接続され、外筒(11)内部を吸引、排気等により、減圧にするために用いられる。
なおこの実施形態では、吸引手段として注射器型の吸引器(21)を用いてあり、吸引器内のプランジャを引き戻すことで、外筒(11)内を減圧状態にすることができる。しかし本発明で用いる吸引手段(21)は、外筒(11)内部を減圧して上記の試料収容部(13)に陰圧を加えることができるものであれば、例えば排気ポンプ等、いずれの器具や装置であっても差し支えない。
【0069】
これらの吸引器や他の吸引手段には、採取組織の破壊等を防ぐために、圧力計等を設置することも推奨される。また、試料収容部(13)内の急激な圧力の降下を防止し、採取組織の力学的損傷を回避するため、吸引手段に圧力調整器を、その吸引手段と並列に接続させて取り付けることも、好ましい。この圧力調整器としては、外筒(11)内の排気速度を調節できるものであればよく、例えばリーク弁等を用いることができる。
【0070】
次に、上記の吸引穿刺装置を用いた組織の採取方法について説明する。
最初に、超音波内視鏡(4)を用いて対象臓器や器官(以下、説明を簡略にするため、単に対象臓器ともいう。)をエコー画面に描出する。最も穿刺しやすいラインを同定したのち、カラードプラ法を併用して穿刺ライン上に介在血管がないことを確認し、超音波内視鏡(4)の位置を固定する。次に、上記の穿刺針(2)を超音波内視鏡(4)内に装着し、内視鏡(4)の鉗子口(9)から穿刺針(2)の先端を出す。穿刺針(2)は外筒(11)と、その内部に、上記の受止部材(12)に代えて配置した内棒(23)とを備えている。この内棒(23)は、外筒(11)の先端口より若干内方で、出来るだけ先端部に近い位置に位置させた、閉止姿勢(S)に保持しておく。そして、そして図3Aに示すように、超音波内視鏡(4)のガイド下で、この状態の穿刺針(2)を対象臓器(24)の近傍まで案内する。
【0071】
次に、超音波内視鏡ガイド下でエコー画面を見ながら、図3Bに示すように、上記の対象臓器(24)の、例えば病変した所定部位に、上記の穿刺針(2)の先端を刺し込む。穿刺針(2)が所定部位に到達すると、消化管粘膜(26)などの、目的部位以外の組織(27)が外筒(11)の先端内部に入り込んでいる場合がある。そこで、図3Cに示すように、上記の内棒(23)を外筒(11)の先端よりも前方へ押し出した排除姿勢(R)に切り換え、外筒(11)内部に溜った他の組織(27)等を排出する。
【0072】
次に、上記の内棒(23)を上記の外筒(11)の基端から抜き取り、図3Dに示すように、その外筒(11)の基端に接続部(15)の外筒接続口(16)を連結する。なお、この実施形態では内棒(23)を取り出した後に上記の接続部(15)を取り付けたが、この内棒(23)が十分に長い場合は、上記の接続部(15)を外筒(11)の基端に、予め取り付けておいてもよい。この場合上記の内棒(23)は、受止部材挿通口(17)に挿通される。
【0073】
次に、図3Eに示すように、上記の受止部材(12)を上記の受止部材挿通口(17)から上記の外筒(11)内へ挿入し、図3Fに示すように、この外筒(11)内で、先端から所定寸法だけ離隔した位置に受止部材(12)の先端を配置して固定保持する。この受止部材(12)の先端と外筒(11)先端との間に試料収容部(13)が形成され、この試料収容部(13)の長さが、必要試料の長さとなる。従ってこの受止部材(12)の位置により、深さ方向における、組織サンプルの長さ(厚み)を調節して採取することができる。なお、この受止部材(12)の外周面と上記の外筒(11)の内面との間には、前記の通気路(14)が形成されている。
【0074】
次に、図3Fに示すように、吸引手段連通口(18)に上記の吸引器(21)を連結し、上記のコック(22)を開いて、この吸引器(21)の吸引により、上記の通気路(14)を介して上記の試料収容部(13)に陰圧を加える。この試料収容部(13)に陰圧が加わると上記のコック(22)を閉じてその陰圧を保持する。この状態で、図3Gに示すように、上記の外筒(11)の先端部を対象臓器(24)の所定部位で進出させ、この外筒(11)の先端縁でその所定部位の一部を切り取り採取する。この切り取られた採取物(25)は、組織の状態で上記の陰圧により上記の試料収容部(13)へ収容される。
【0075】
その後、上記の陰圧を解除し、図3Hに示すように、素早く穿刺針(2)を超音波内視鏡(4)から抜去し、上記の試料収容部(13)に収容されている採取物(25)をシャーレに取り出し、組織検査の試料とする。
【0076】
上記の吸引穿刺装置(1)を用いて、具体的に、膵癌に対して超音波内視鏡のガイド下で組織採取した採取物の写真を図4に示す。この図4に示すように、本発明の吸引穿刺装置によれば、きれいな細長い組織片として採取することができ、分子生物学的な診断はもとより、組織診断をも十分に行うことができた。
これに対し、前記した従来の吸引穿刺装置により、同様の膵癌に対して超音波内視鏡のガイド下で組織採取した場合には、図5に示すように、組織がバラバラになり、組織片として採取することができなかった。このため、組織診断が不可能であり、細胞診断となってしまうだけでなく、得られた採取物が非常に微量な検体になり、それからの分子生物学的な診断も不可能であった。
【0077】
上記の実施形態では、上記の穿刺針を超音波内視鏡内に挿通して用いた。このため、通常の光学内視鏡では、直接、光学的に観察することができない臓器等であっても、超音波内視鏡が到達可能な部位において超音波により観察可能な臓器や器官であれば、この超音波内視鏡のガイド下に、その対象臓器等から組織や細胞を本発明の吸引穿刺装置で採取することができる。
例えば、光学内視鏡では直接見えず、観察できない、腎臓などの臓器を対象とする場合には、本発明の吸引穿刺装置を装着した超音波内視鏡を胃内部まで挿入し、胃内壁での超音波画像撮影により上記の対象臓器の画像が得て、この像をガイドに所望の所定部位に穿刺し、組織等を吸引採取する。この場合の対象臓器・器官としては、上記の腎臓以外に、膵臓、縦隔腫瘍、リンパ節、消化管粘膜下腫瘍などが例示される。
【0078】
しかし本発明は、超音波内視鏡を貫通する状態に装着して使用する装置や方法に限定されない。
例えば、対象臓器等が超音波や場合によってはX線により体外から観察可能な場合であって、穿刺針を穿刺する場合に阻害するような他の臓器等がない場合には、超音波内視鏡や通常の光学内視鏡等を用いなくともよい。この場合には、通常の超音波(エコー)画像やX線の画像によるガイド下で、体外から直接、本発明の吸引穿刺装置の穿刺針を穿刺して、対象臓器等の所定部位から組織や細胞を採取する。この場合の対象臓器としては、例えば肝臓や腎臓、膵臓などが例示される。ただし、膵臓の場合には、体外からのエコーで観察が可能な部位に限られる。
【0079】
また、対象臓器等が通常の光学内視鏡にて直接画像が映し出され、観察可能な臓器や器官であれば、その光学内視鏡に本発明の吸引穿刺装置を貫通する状態に装着して用いてもよい。この場合、本発明の吸引穿刺装置は、上記の超音波内視鏡に用いる場合と同様の構造を備えており、この光学内視鏡のガイド下で同様に操作して、対象臓器等から組織や細胞を採取する。ただし、光学的に見える範囲での採取となることから、内視鏡末端から穿刺針がそれほど長く突出しなくてもよくなる。この場合の対象臓器としては、例えば胃、十二指腸、食道、大腸等が例示される。
【0080】
上記の実施形態で説明した吸引穿刺方法と吸引穿刺装置は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、各部材の形状や寸法、材質、構造、配置、操作手順などをこの実施形態のものに限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものである。以下、本発明の吸引穿刺装置の種々の変形例について説明する。
【0081】
本発明の吸引穿刺装置において、受取部材の基端側に目盛を設けると試料収容部の容積調節のための指標として利用できることは既に説明したが、容積調節のための指標部は上述の目盛に限らず、様々な構成をとることができる。
【0082】
図10に示す変形例では、受止部材101の基端側に、径方向の最大寸法が他の部位よりも大きく形成された大径部101Aが指標部として形成されており、受止部材挿通口111の内腔には、内径が縮小された小径部111Aが形成されている。これにより、大径部101Aが小径部111Aを乗り越える際にクリック感が発生するため、術者はこのクリック感を試料収容部の容積調節の指標とすることができる。
【0083】
図11に示す変形例では、受止部材102に径方向に突出するフランジ102Aを指標部として形成し、受止部材挿通口112の基端部112Aの開口径を、フランジ102Aが乗り越えられない程度に縮小している。これにより、試料収容部の容積が所定の大きさになると、フランジ102Aが受止部材挿通口112の基端部112Aに接触し、受止部材102が外筒に対してそれ以上後退できなくなるため、容積調節の指標とすることができる。なお、この場合、受止部材102が抜去できなくなるため、内棒と兼用するのが好ましい。
【0084】
図12に示す変形例では、受止部材103の基端部を屈曲させることにより、指標部として機能する係止部103Aを設けている。これにより、試料収容部の容積が所定の大きさになると、係止部103Aが受止部材挿通口113のうち、開口が縮径された基端部113Aに接触するため、容積調節の指標とすることができる。この変形例では、係止部103Aが基端部113Aに接触した後、より強い力で受止部材103を牽引することにより、係止部103Aを弾性変形させて抜去することが可能である。また、棒状の受止部材を折り曲げ加工するだけで指標部として機能する係止部を形成できるため、製造が容易であるという利点もある。
【0085】
また、図13に示すように、上述した各種指標によって規定される受止部材(図13には一例として受止部材12を示す。)の先端位置に対応する外筒120の外周面に、超音波画像で認識可能なディンプル等からなる外筒指標121を形成しておくと、超音波画像下での操作の目安とすることができ、好ましい。
【0086】
また、上記の実施形態では、受止部材と内棒とが別部材である例を説明したが、内棒と受止部材とを同一の部材で兼用してもよい。この場合、受止部材を排除姿勢から後退させて試料収容部を形成した後、受止部材挿通口を気密に封止しないと組織の吸引を行えないため、操作が煩雑になる恐れがある。
【0087】
そこで、例えば図14に示す変形例のように、受止部材挿通口114の基端部に穴115Aを有する環状の弾性体115を配置し、受止部材104に金属製のパイプ105を取り付けて径方向の寸法が拡大された大径部104Aを形成する。さらに、穴115Aの内径を、受止部材104のうち大径部104A以外の部位の外径よりもわずかに大きく、かつ、大径部104Aの外径よりもわずかに小さく設定する。
このようにすると、受止部材104を後退させて試料収容部を形成すると、大径部104Aが弾性体115を弾性変形させつつ、穴115A内に進入し、大径部104Aが穴115A内に位置するときに、受止部材挿通口と連通する受止部材挿通口114の基端部が気密に閉塞される。その結果、試料収容部を形成する操作だけで組織の吸引が可能な状態が確立され、より操作しやすい吸引穿刺装置とすることができる。
【0088】
また、受止部材において、組織を先端で確実に保持するようにすると、外筒とのクリアランスが小さくなりすぎ、吸引圧が試料収容部に効率よく伝わらない場合がある。これを解消するため、外筒および受止部材を様々な形状に変更することができる。なお、クリアランスとは、外筒の内周面と受止部材の外周面との間に形成される間隙を指し、通気路の容積を大きく左右するものである。
【0089】
図15に示す変形例では、受止部材131において、組織を保持する先端部131Aよりも基端側の径を小さくしている。これにより、先端部131Aよりも基端側では、比較的大きいクリアランスが確保できるため、吸引圧を試料収容部に効率よく伝えることができる。このような場合、基端側の部位の外径を、受止部材の進退操作によって座屈等起こさずに、確実に先端部に進退操作を伝達できる程度の剛性を有するように設定する点に注意する。
【0090】
図16に示す変形例では、外筒122において、試料収容部が形成される先端部122Aの内径よりも基端側の内径を大きくしている。このようにしても試料収容部の基端側におけるクリアランスを大きくすることができる。
【0091】
図17に示す変形例では、受止部材132に長手方向に貫通する吸引管路132Aを形成している。このようにしても、吸引圧を試料収容部に効率よく伝えることができるが、吸引管路132Aの先端開口は、採取した組織が吸引管路132A内に進入しない程度の大きさに設定するのが好ましい。吸引管路132Aは、受止部材の長手方向中間部分で受止部材の外周面に形成された開口に連通していてもよい。
【0092】
図18Aおよび図18Bに示す変形例では、受止部材の径方向における断面形状を非円形とすることにより、径方向の断面形状が円形の外筒11との間にクリアランスを確保した例である。受止部材の断面形状は、図18Aに示す受止部材133のような四角形や、図18Bに示す受止部材134のような十字形に限らず、他の非円形の形状でもかまわない。特に、外筒の内壁と10個以下程度の接触点を有し(例えば、受止部材133は、4つの接触点を有している。)、断面において少なくとも2つの接触点間が直線状に形成された形状であれば、クリアランスを効率よく増加させることができる。
【0093】
さらに、図19に示す変形例のように、径方向の断面形状が非円形の外筒123と断面形状が円形の受止部材12とを組み合わせても、同様にクリアランスを増加させることができる。すなわち、外筒および受止部材の一方の径方向断面形状を円形とし、他方の径方向断面形状を非円形とすれば、クリアランスを効率よく増加させ、吸引圧を試料収容部に効率よく伝えることができる。
なお、これらの場合でも図17に示した変形例と同様に、クリアランスによって形成された通気路の先端側開口を、吸引採取した組織が進入しない程度の大きさに設定するのが好ましい。
【0094】
本発明の吸引穿刺装置において、外径の異なる複数の受止部材を使い分ける場合、より細い受止部材の使用時に、受止部材挿通口の気密性が保ちにくくなる場合がある。この場合、例えば図20に示す変形例のように、接続部141の受止部材挿通口142に、開口端から徐々に内径が小さくなるようにテーパー部142Aを形成し、受止部材挿通口142とユニオンジョイント143との間にドーナツ状の弾性体144を配置し、弾性体144の穴144Aの内径を最も太い受止部材の外径と同一あるいはわずかに小さく設定しておくとよい。
このようにすると、細い受止部材を使用する際は、ユニオンジョイント143と接続部141との螺合長を長くすることで、弾性体144が軸線方向に圧縮され、一部が受止部材挿通口142に形成したテーパー部142Aに進入する。その結果、穴144Aの実質的内径が縮小され、細い受止部材の使用時も好適に気密状態を確保することができる。
【0095】
また本発明の吸引手段は、圧力調整手段や圧力計を備えるものであってもよいことは、いうまでもない。また、上述した実施形態および各変形例の各構成は、適宜組み合わされてもよい。
【0096】
最後に、外筒と受止部材のクリアランスと、吸引による組織採取の確実性との関係を検討した結果を示す。
図21に、検討に用いた機構の構成を模式的に示す。外筒201として、19ゲージの針管(内径0.92mm、全長1700mm)を使用し、基端に三方コック202を気密に接続した。残りの2箇所の口のうち、一方には最大容量60mlのシリンジ203を気密に接続し、他方の口から外径の異なる受止部材204を挿入した。受止部材204を挿入する口には、受止部材の径に応じたゴムパッキンを取り付け、受止部材204が挿入された状態で当該口の気密性が保持されるようにした。
【0097】
受止部材としては、外径0.45mm(クリアランス0.47mm(両側の合計))、0.73mm(クリアランス0.19mm)、0.80mm(クリアランス0.12mm)、および0.85mm(クリアランス0.07mm)の4種類の太さで、いずれも外径が全長にわたって一定のものを用意した。そこで本検討では、外筒の内径と受止部材の外径との差をクリアランスとして示した。
【0098】
上記機構の外筒201の先端をブタの肝臓に穿刺し、シリンジ203のプランジャを1回だけ50mlまで引いて陰圧をかけ、肝組織の吸引採取を行った。各受止部材について複数回吸引採取を行い、各回ごとに採取された組織の量を計測した。結果を表1に示す。なお、表1において、「クリアランス0.92mm」とは、従来法として、受止部材204を用いずに、三方コック202の受止部材204が挿入される口を気密に封止して吸引採取を行った結果を示している。
【0099】
【表1】

【0100】
図22は、表1の結果を、縦軸に組織採取量、横軸にクリアランスをとってプロットしたものである。クリアランスが小さいほど、採取された組織量のバラつきが小さく、クリアランスが大きくなるにつれて、組織量のバラつきが大きくなる傾向が見られた。
【0101】
一般に、組織が2mg以上採取できれば、当該組織を用いて組織診断を好適に行うことができるため、表1のデータを用いて、一回の吸引採取で2mg以上の組織を採取することができる確率をクリアランスごとに検討し、図23に示した。
図23に示すように、クリアランスが0.2mm以下では100%の確率で、2mg以上の組織を一回の吸引採取で採取することができた。また、クリアランス0.47mmでも6回中5回の吸引採取で2mg以上の組織を採取することができ、確率は83.3%と高確率であった。従来、一回の吸引採取で2mg以上の組織を採取することができる確率は、5割弱から6割未満といわれているが、受止部材を用いて外筒とのクリアランスを適正に保ちつつ吸引することにより、組織診断可能な量の組織を1回の穿刺吸引操作でより確実に採取できることが示された。したがって、本発明の吸引穿刺装置では、吸引穿刺のやり直し等による患者の侵襲の増大を好適に抑制できることが期待される。
なお、本発明は、以下の技術思想を含んでいる。
(付記項1)前記受止部材は、前記試料収容部の容積の指標となる指標部を有する、請求項1に記載の吸引穿刺装置。
(付記項2) 前記指標部は、前記受止部材に形成された目盛である、付記項1に記載の吸引穿刺装置。
(付記項3)前記指標部は、前記受止部材に形成された大径部である、付記項1に記載の吸引穿刺装置。
(付記項4) 前記指標部は、前記受止部材の基端側を屈曲させて形成された係止部であり、前記試料収容部の容積が所定の値になると、前記係止部によって前記受止部材の前記外筒に対する後退が妨げられる、付記項1に記載の吸引穿刺装置。
(付記項5) 前記外筒の外周面には、前記試料収容部の容積が所定の値であるときの、前記受止部材の先端の位置に対応する位置に、超音波画像で視認可能な外筒指標を有する、請求項1に記載の吸引穿刺装置。
(付記項6)前記受止部材は、先端側よりも基端側のほうが小径に形成されている、請求項1に記載の吸引穿刺装置。
(付記項7)前記受止部材は、長手方向に貫通する吸引管路を有する、請求項1に記載の吸引穿刺装置。
(付記項8)前記外筒は、先端側の内径よりも基端側の内径のほうが大きく形成されている、請求項1に記載の吸引穿刺装置。
(付記項9)前記外筒および前記受止部材は、一方の径方向における断面形状が円形であり、他方の径方向における断面形状が非円形である、請求項1に記載の吸引穿刺装置。
(付記項10)前記外筒の内径と前記受止部材の外径との差は、0.05ミリメートル以上0.5ミリメートル以下である、請求項1に記載の吸引穿刺装置。
【0102】
(産業上の利用可能性)
本発明の吸引穿刺装置は、簡便な操作で且つ安全に所定部位の組織等を採取でき、しかもその組織を挫滅させることなく、任意の大きさの組織を採取することができるので、特に超音波内視鏡や通常の光学内視鏡等のガイド下で組織を検査試料としてサンプリングする場合に好適である。
【符号の説明】
【0103】
1 吸引穿刺装置
2 穿刺針
3 保護チューブ
4 内視鏡(超音波内視鏡)
11、121、122、123 外筒
12、101、102、103、104、131、132、133、134 受止部材
13 試料収容部
14 通気路
15、141 接続部
16 外筒接続口
17、111、112、113、114、142 受止部材挿通口
18 吸引手段連通口
20 目盛(指標部)
21 吸引手段(吸引器)
22 開閉手段(コック)
23 内棒
24 対象臓器・器官
25 採取物
101A 大径部(指標部)
102A フランジ(指標部)
103A 係止部(指標部)
104A 大径部
115 弾性体
115A 穴
121 外筒指標
122A 先端部
131A 先端部
132A 吸引管路
142A テーパー部
143 ユニオンジョイント
144 弾性体
R 排除姿勢
S 閉止姿勢

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の先端の開口縁が刃物状に形成された外筒と、前記外筒内で前記外筒の前記第1の先端から所定寸法だけ離隔した位置に第2の先端が配置される受止部材とを有する穿刺針を備え、
前記受止部材の前記第2の先端と前記外筒の前記第1の先端との間に試料収容部が形成され、
前記外筒内で上記の受止部材の周囲に通気路が形成され、
前記外筒の第1の基端側に接続される吸引手段を備え、
この吸引手段が上記の試料収容部に上記の通気路を介して連通して連結される、
吸引穿刺装置において、
前記受止部材は、前記試料収容部の容積の指標となる指標部を有し、
前記指標部は、前記受止部材の第2の基端側を屈曲させて形成された係止部であり、前記試料収容部の容積が所定の値になると、前記係止部によって前記受止部材の前記外筒に対する後退が妨げられる。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−46830(P2013−46830A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−255701(P2012−255701)
【出願日】平成24年11月21日(2012.11.21)
【分割の表示】特願2012−509712(P2012−509712)の分割
【原出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(599045903)学校法人 久留米大学 (72)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)