説明

吸引装置

【課題】船舶に設けられた液体タンク内の残液を効率的に低減することができる吸引装置を提供すること。
【解決手段】吸引装置1は、ポンプPに接続され第1吸引口22を有する本管2と、本管2に連通され第2吸引口31を第1吸引口22よりも低位置に有する枝管3と、を備えている。本管2には、下向きに開口するバケット4が外挿されている。バケット4には、フロート42が取り付けられている。バラストタンクT内の液位が所定レベル以下に低下した際に、バケット4の下端部44と底面Bとを密着させて、第1吸引口22からの吸引を停止すると共に、本管2よりも細い枝管3からバラスト水を吸引する。これにより、流体抵抗を極端に増大させることなく、バラストタンクT内におけるより底側のバラスト水までも好適に吸引することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に設けられた液体タンク内の液体を吸引する吸引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶に設けられたカーゴタンク、バラストタンク、及び燃料タンク等の液体タンク内の液体を吸引する装置として、以下の特許文献1に記載の液体吸引管装置が知られている。この液体吸引管装置では、下方を向いた吸引パイプの先端に、管状の液体吸引管が取り付けられている。この液体吸引管の上下端部には、フランジが設けられている。また、液体吸引管のフランジの間には、リング状の浮力体が上下方向に移動可能に外挿されている。浮力体の外側には、下方に行くに従って拡がる円筒状のベルマウスが設けられている。
【0003】
このような従来の液体吸引装置では、液体タンク内の液位に応じて、浮力体及びベルマウスがフランジの間を一体的に浮動する。これにより、液位が充分に高い場合において、ベルマウスから吸引される液体に過大な流体抵抗(水流抵抗)が及ばないように、液位に応じてベルマウスから液体タンク底面までの距離が可変され、その結果、効率的な液体吸引が可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−123592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1の液体吸引装置では、浮力体が下部のフランジと接触したとき(ベルマウスが最下点に位置したとき)においても、ベルマウスの下端部と液体タンクの底面との間に所定の隙間が形成されるため、これ以下の液位では空気を吸い込み、例えばこの隙間分の残液が液体タンク内に生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、船舶に設けられた液体タンク内の残液を効率的に低減することができる吸引装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る吸引装置は、船舶に設けられた液体タンク内の液体を吸引する吸引装置であって、液体を吸引するためのポンプと、ポンプと接続され、液体タンク内に第1の液体吸引口を有する第1の管と、第1の管に連通され、第1の管よりも細い管状をなし、液体タンク内に第2の液体吸引口を有する第2の管と、液体に浮上する浮上部材とを備え、第2の液体吸引口は、第1の液体吸引口よりも小さく、且つ第1の液体吸引口よりも低位置に設けられており、第1の管は、鉛直方向に沿って延在し且つ第1の液体吸引口としての管端を含む鉛直部を有し、浮上部材は、鉛直部に対し鉛直方向に沿って移動可能とされ、鉛直部が挿入され下方に開口する内部空間を有し、液体タンク内の液位が所定レベル以下のときに、内部空間に第1の液体吸引口を位置させた状態で下端部が液体タンクの底面と当接することにより、内部空間を密封して第1の液体吸引口からの吸引を停止させることを特徴とする。
【0008】
この本発明に係る吸引装置では、第1の管における第1の液体吸引口から液体を吸引できない所定レベルまで液体タンク内の液位が低下したときでも、第2の管における第1の液体吸引口よりも低位置に設けられた第2の液体吸引口から液体が吸引される。よって、第1の管のみでは吸引しきれない液体タンク内の液体をも、第2の管で確実に吸引することが可能となる。
そしてこのとき、浮上部材によって第1の液体吸引口からの吸引が停止されるため、液体タンク内の液体を第2の液体吸引口から好適に吸引することができる。すなわち、第2の管は第1の管よりも細く第2の液体吸引口が第1の液体吸引口よりも小さいものとされていることから、残液が低減するよう第1の液体吸引口を低位置に設け当該第1の液体吸引口から液体を吸引する場合に比して、吸引される流体に及ぶ流体抵抗を抑制することができる。従って、本発明によれば、船舶に設けられた液体タンク内の残液を効率的に低減することが可能となる。
【0009】
また、浮上部材の下端部には、軟質材が設けられていることが好ましい。こうすると、浮上部材の下端部と液体タンクの底面との密着性が向上し、内部空間の密封性を向上することができる。
【0010】
また、浮上部材の下端部には、硬質材が設けられていることが好ましい。こうすると、液体タンクの底面に砂等の堆積物が多く堆積している場合でも、浮上部材の下端部と液体タンクの底面との密着性を向上させることが可能となり、内部空間の密封性を向上することができる。
【0011】
このとき、浮上部材は、下方に開口するカップ状を呈していることとしてもよい。
【0012】
また、第2の液体吸引口は、液体の吸引時において液体が溜まりやすい位置に設けられていることが好ましい。こうすると、例えば、液体タンクの底面の窪みや反りによって液体が溜まりやすい位置から液体を第2の液体吸引口により好適に吸引することができ、船舶に設けられた液体タンク内の残液を一層効率的に低減することができる。
【0013】
また、第2の液体吸引口は、第1の液体吸引口に対し、液体の吸引時における船舶の傾きに応じて液体が溜まりやすい側に設けられていることが好ましい。こうすると、船舶の傾きによって液体タンク内の液位に偏りが生じて液体が溜まった場合でも、当該液体をより一層好適に吸引することができる。従って、船舶に設けられた液体タンク内の残液を効率的に低減することができる。
【0014】
また、液体タンクはバラストタンクであり、液体はバラスト水であることが好ましい。この場合、バラストタンク内のバラスト水の残液を効率的に低減できることから、当該残液のために積載可能量が低下してしまうのを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、船舶に設けられた液体タンク内の残液を効率的に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る吸引装置が設けられた船舶を示す概略構成図である。
【図2】図1の吸引装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ吸引装置の実施形態について詳細に説明する。なお、同一又は相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、「上」「下」「左」「右」「前」「後」の語は、それぞれ船舶における上下左右前後方向に対応したものである。
【0018】
図1は、実施形態に係る吸引装置が設けられた船舶を示す概略構成図である。図1に示すように、吸引装置1は、例えばタンカー等の貨物船舶である船舶Vに設けられている。この船舶Vは、シーチェストC、バラスト処理装置D、ポンプP、及び複数のバラストタンクTを備えている。
【0019】
シーチェストCは、海水や清水等の水を船外からバラスト水として取り込むための取込口、又はバラスト水を船外へ排出する排出口である。バラスト処理装置Dは、バラスト水の水処理(水生生物の除去)を行うものである。バラスト処理装置Dとしては、種々のものを用いることができ、例えば電極に電力を印加してバラスト水を電解処理するもの、紫外線ランプに電力を印加して紫外線照射することによりバラスト水を水処理するもの、電力の印加で電場を発生させて電気ショックを与えることにより水処理するもの、等が挙げられる。
【0020】
ポンプPは、バラスト水をバラストタンクTへ供給するための圧力、バラスト水をバラストタンクTから吸引するための圧力、及び、バラスト水を外部へ排出するための圧力を少なくとも得るためのものである。なお、バラスト処理装置D及びポンプPは、例えば船舶Vの後部のエンジンルームEやポンプルームA内に設けられており、ここではポンプルームA内に設けられている。
【0021】
バラストタンクTは、船舶V内の貨物積載量に応じてバラスト水を漲水又は排水することによって、バラスト水の重みで船舶V全体を貨物量によらず一定のレベルまで沈下させる機能を有するものである(詳しくは後述)。
【0022】
バラストタンクTは、例えば、船体におけるポンプルームAよりも前方の部分に、外板の内側に内部隔壁を設けて二重船殻構造とすることによって画設されており、例えば、船体の左側面、底面、及び右側面に沿ったU字状を呈している。バラストタンクTの内部の側面には、船舶Vの強度を確保すべく、上下左右方向に延在したリブ状の補強部材Fが設けられている(図2参照)。なお、バラストタンクTの内側には、カーゴタンクRが設けられている。
【0023】
吸引装置1は、バラストタンクT内のバラスト水を吸引するための装置であり、各バラストタンクTにそれぞれ設けられている。
【0024】
次に、吸引装置1について詳細に説明する。図2は、図1の吸引装置を示す概略構成図である。図2に示すように、吸引装置1は、バラスト水を圧送する上記ポンプPと、ポンプPと接続された本管(第1の管)2と、本管2に接続された枝管(第2の管)3と、本管2に対し上下方向に移動可能に外挿されたバケット(浮上部材)4と、を備えている。
【0025】
本管2は、バラスト水の主流路を構成する管である。この本管2は、前後方向に延在する水平部26と、鉛直方向に沿って延在する鉛直部21を有している。本管2の太さは、例えば呼び径で600A程度となっている。
【0026】
鉛直部21は、各バラストタンクT内において、ここでは前後方向略中央部に位置するように水平部26に接続されている。鉛直部21の管端である下端は、第1吸引口(第1の液体吸引口)22となっている。第1吸引口22は、ここでは下方に行くに従って外側に拡がるベルマウスを構成している。第1吸引口22は、バラストタンクT内の補強部材Fと干渉を避けるように位置しており、ここでは、バラストタンクT内の前後方向略中央部に設けられている。また、この第1吸引口22は上下方向においてバラストタンクTの底面Bよりもやや上方に設けられており、第1吸引口22と底面Bとの間の距離(クリアランス)は例えば100mm程度とされている。
【0027】
鉛直部21の略中央部には、バケット4の上昇を規制するためのものとして、鍔状の上部ストッパー23が設けられている。また、鉛直部21の下端部には、鍔状の圧着パッキン座24が設けられている。この圧着パッキン座24の上面には、円環状の圧着パッキン25が取り付けられている。この圧着パッキン25は、降下したバケット4と密着するようにされており、これにより、当該バケット4と本管2との間が気密にされる。
【0028】
枝管3は、本管2の鉛直部21に連通した管である。枝管3は、鉛直部21において上部ストッパー23よりも上方部分から、ここでは後方(図2において紙面左側)に向かって延在した後、バラストタンクTの後壁面の近傍(壁際)で下方に屈曲し、鉛直方向に沿って下方に延在している。また、枝管3は、本管2よりも下方まで延びている。
【0029】
この枝管3は、本管2よりも細い管状をなしている。枝管3の太さは、例えば呼び径で60A程度とされている。枝管3の管端である下端は、第2吸引口(第2の液体吸引口)31となっている。第2吸引口31は、第1吸引口22と同様に、ここでは下方に行くに従って外側に拡がるベルマウスを構成している。この第2吸引口31は、第1吸引口22よりも小さくされている。つまり、第2吸引口31の径は第1吸引口22の径よりも小さくされ、第2吸引口31の開口面積は第1吸引口22の開口面積よりも小さくされている。この第2吸引口31は、ここでは、バラストタンクTの後底部に位置しており、第1吸引口22よりも低位置に設けられている。
【0030】
バケット4は、下方に開口するカップ状を呈する部材であり、ここでは、上方視で円形外形の丸型とされている。バケット4は、下方に向けて開口する内部空間41を有している。バケット4は、例えば鋼板等で形成されており、比較的安価に形成可能とされている。
【0031】
このバケット4は、上面の中央部に貫通孔を有している。このバケット4の貫通孔には、鉛直部21における上部ストッパー23と圧着パッキン25との間の部分が、所定の隙間を有して挿入されている。つまり、バケット4の内部空間41には、鉛直部21が貫通孔を介して挿入されている。これにより、バケット4は、上部ストッパー23と圧着パッキン25との間において、鉛直方向に移動可能となるように鉛直部21に外挿されることになる。
【0032】
バケット4は、圧着パッキン25と接触したときに最下点に位置し、この最下点において、その下端部44がバラストタンクTの底面Bと気密に密着(当接)するようになっている。これにより、最下点に位置するバケット4は、その内部空間41がバラストタンクT内にて密封される。
【0033】
このバケット4の外周面上部には、ここでは円環状のフロート42が取り付けられている。このフロート42は、バケット4をバラスト水に対し浮上させるためのものであり、例えば所定の浮力が得られる樹脂等で形成されている。
【0034】
また、バケット4の下端部44は、底面Bとの密着性を向上させるべく、円環状のゴム(軟質材)43を有している。このゴム43は、ここでは、その断面が下向きに楔状に突出する凸部とされている。これにより、バケット4の下端部44が底面Bに密着する際、底面Bに堆積した砂等の堆積物に食い込み易いようになっている。ゴム43としては、例えばNBRバイトン等の軟質系のゴム等を用いることができる。
【0035】
このような吸引装置1が設けられた船舶Vでは、例えば貨物を船外へ降ろしたとき、シーチェストCにより取り込まれたバラスト水がポンプPにより各バラストタンクTに漲水されて、船舶V全体が一定レベルまで沈下される。特に、ここでの船舶Vでは、後下部にあるスクリューSを航行時に深く水面下に沈めるため、各バラストタンクT内に漲水するバラスト水の量を調節することで、後部を下方に傾けた姿勢(以下、「後傾斜姿勢」という)で沈下される。バラストタンクT内においては、液位の上昇に伴い、バケット4がフロート42からの浮力により浮上する。
【0036】
一方、例えば貨物を積載したときには、ポンプPにより各バラストタンクT内のバラスト水が第1吸引口22及び第2吸引口31から吸引され、本管2及び枝管3を介して外部に排出され、船舶V全体の沈下量が一定レベルに保たれる。
【0037】
ここで、本実施形態においては、バラスト水が吸引される際、バラストタンクT内の液位の低下に伴って、浮上したバケット4が降下される。そして、バラストタンクT内の液位が所定レベル(高さ)以下に低下されると、バケット4の自重がフロート42からの浮力に勝り、バケット4が圧着パッキン25と接触されてこれらの間が気密化されると共に、バケット4の下端部44が底面Bと密着されてこれらの間が気密化される。これにより、バケット4は、その内部空間41が密封された状態となって最下点まで降下され、第1吸引口22からの吸引が停止されることとなる。
【0038】
他方、第1吸引口22よりも低位置に設けられた第2吸引口31からは、第1吸引口22からの吸引が停止された後においても、引き続きバラスト水が吸引される。特に、第2吸引口31からの吸込圧力は、第1吸引口22からの吸引の停止によって高まる。
【0039】
ところで、一般的に、吸引口から吸引される液体には流体抵抗が及ぶため、流体抵抗が大きい場合、吸引口から液体が好適に吸引されず、好ましくない。そして、下式(1)が成立する場合、流体抵抗は増大する傾向にあり、液体が好適に吸引されない。
【数1】


但し、
da:吸引口の直径、
dx:吸込口と液体タンクの底面との間のクリアランス
【0040】
従って、式(1)に示されるように、太い管に比して細い管の方が、クリアランスdxを小さくした場合であっても、液体が好適に吸引されることがわかる。よって、本実施形態では、上述したように、枝管3は本管2よりも細く第2吸引口31が第1吸引口22よりも小さいため、第2吸引口31を第1吸引口22よりも低位置に設けることにより、当該低位置に第1吸引口22を設ける場合に比べ、バラスト水に及ぶ流体抵抗を抑制することができる。
【0041】
以上、本実施形態に係る吸引装置1では、本管2の第1吸引口22からバラスト水を吸引できない所定レベルまでバラストタンクT内の液位が低下したときでも、第1吸引口22よりも低位置に設けられた第2吸引口31からバラスト水が吸引される。よって、本管2の第1吸引口22からのみでは吸引しきれないバラストタンクTのバラスト水をも、枝管3から確実に吸引することが可能となる。
【0042】
そして、所定レベル以下にバラストタンクT内の液位が低下したとき、上述したように、バケット4によって第1吸引口22からの吸引が停止されるため、バラストタンクT内のバラスト水を第2吸引口31から好適に吸引することができる。つまり、枝管3は本管2よりも細く第2吸引口31が第1吸引口よりも小さいものとされていることから、残液が低減するように第1吸引口22が低位置に設けられ(バラストタンクTの底面Bとのクリアランスが僅かにされ)当該第1吸引口22からバラスト水が吸引される場合に比べ、バラスト水に及ぶ流体抵抗を抑制することができる(上式(1)参照)。従って、本実施形態によれば、バラストタンクT内の残液を効率的に低減することが可能となる。
【0043】
また、本実施形態では、上述したように、バケット4の下端部44にゴム43が取り付けられているため、バケット4の下端部44と底面Bとの密着性を向上させることができ、内部空間41の密封性を向上することができる。
【0044】
さらに、ゴム43は、その断面が下向きに楔状の凸部とされており、底面Bに密着する際に底面Bに堆積した堆積物に食い込み易いようになっている。そのため、底面Bに堆積物が堆積している場合、バケット4の下端部44と底面Bとの密着性(シール効果)を一層向上させることができ、内部空間41の密封性を向上することができる。
【0045】
ここで、上述したように、船舶Vは、スクリューSを深く水面下に沈めるべく後傾斜姿勢(トリム)にされるため、バラスト水の吸引時にも後傾斜姿勢になる場合がある。この場合、バラストタンクT内のバラスト水は、後底部に溜まり易い(図2参照)。これに対し、吸引装置1では、第2吸引口31がバラスト水の溜まり易い後底部に設けられている。すなわち、第2吸引口31は、本管2が太いため、及び、補強部材Fに干渉するため十分後方に配置することが困難な第1吸引口22に対し、バラスト水の吸引時における船舶Vの傾きに応じてバラスト水が溜まりやすい側に設けられている。よって、第2吸引口31でバラストタンクT内のバラスト水をより一層好適に吸引することができ、バラストタンクT内の残水を一層効率的に低減することが可能となる。
【0046】
また、本実施形態では、上述したように、バラストタンクT内の残液を効率的に低減できるため、当該残液のために積載可能量が低下してしまうのを抑制することが可能となる。その結果、バラストタンクT内の残液が低減した分、カーゴタンク等に多くの積荷を積載することが可能となる。
【0047】
ちなみに、船舶Vが傾いてバラストタンクT内の液位に偏りが生じた場合、吸引口とバラスト水との間に隙間が生じると、この隙間から空気が吸引されて水流が切れてしまい、バラスト水を効率よく吸引できないおそれがある。この点、吸引装置1では、枝管3が本管2よりも細くされているため、船舶Vが傾いてバラストタンクT内の液位に偏りが生じても、第2吸引口31とバラスト水との間には、第1吸引口22とバラスト水との間に比べ、隙間が生じにくくなる。
【0048】
また、本実施形態では、上述したように、バラストタンクT内の液位が所定レベル以下に低下した際に第1吸引口22からの吸引を停止する停止手段としてバケット4を機能させることができる。よって、停止手段に電力等の動力供給を不要にでき、省エネの観点から好適である。また、停止手段を比較的安価な構成のバケット4で構成できるため、高価な制御系を必要とせず、低コスト化を図ることが可能となる。
【0049】
なお、本実施形態では、バラストタンクT内の液位が所定レベル以下に低下した際に第1吸引口22からの吸引を停止することで、当該吸引の停止分第2吸引口31からの吸引力を増大することも可能となる。
【0050】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0051】
例えば、上記実施形態では、吸引装置1はバラストタンクT内に設けられているが、船舶に設けられたカーゴタンク、及び燃料タンク等の他の液体タンク内に設けられていてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、船舶Vにバラスト処理装置Dが設けられているが、このバラスト処理装置Dが設けられていない場合もある。
【0053】
また、例えば、上記実施形態では、第1吸引口22及び第2吸引口31によりベルマウスが構成されるようになっているが、これに限定されるものではなく、直管状とされていてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、バケット4の下端部44にゴム43が設けられているが、例えばテフロン(登録商標)等の樹脂が設けられていてもよく、要は、バケット4の下端部44と底面Bとの密着性を向上させ得る材料が設けられていればよい。また、上記実施形態では、ゴム43は楔状を呈しているが、楔状以外の形状であっても良い。また、バケット4の下端部44に磁石を取り付け、この磁石と底面Bとを磁力で結合させることで、バケット4の下端部44と底面Bとの密着性を向上させてもよい。また、バケット4の下端部44と底面Bとの密着性を確保できれば、バケット4の下端部44にゴム43が取り付けられていなくてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、バケット4の下端部44に、NBRバイトン等の軟質系のゴム等の軟質材であるゴム43が設けられているが、フロロプレン等の硬質系のゴム等やMCナイロン等の硬質材が設けられていても良い。この場合、バラストタンクTの底面Bに砂等の堆積物が多く堆積している場合であっても、硬質材が堆積物に良好に突き刺さって底面Bまで達するため、バケット4の下端部44と底面Bとの密着性を向上させることが可能となる。
【0056】
また、上記実施形態では、フロート42は所定の浮力が得られる樹脂等で形成されているが、バケット4に中空状の部分を設け当該中空状の部分をフロートとしてもよく、要は、フロートは、バケット4をバラスト水に対し浮上可能にするものであればよい。
【0057】
また、上記実施形態では、第2吸引口31は、バラスト水の吸引時における船舶Vの傾きに応じてバラスト水が溜まりやすいバラストタンクTの後底部に設けられているが、その他バラスト水が溜まりやすい位置であるバラストタンクTの底面Bの窪みや、底面Bの反りによって生じる低部等に設けられていてもよい。
【0058】
なお、バラスト水吸引時の船舶Vの傾きが「前傾」、「左傾」、「右傾」の場合、これに応じて、バラストタンクT内における「前底部」、「左底部」、「右底部」に第2吸引口31が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…吸引装置、2…本管(第1の管)、3…枝管(第2の管)、4…バケット(浮上部材)、21…鉛直部、22…第1吸引口(第1の液体吸引口)、31…第2吸引口(第2の液体吸引口)、41…内部空間、43…ゴム(軟質材)、44…下端部、B…底面、P…ポンプ、T…バラストタンク(液体タンク)、V…船舶。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に設けられた液体タンク内の液体を吸引する吸引装置であって、
前記液体を吸引するためのポンプと、
前記ポンプと接続され、前記液体タンク内に第1の液体吸引口を有する第1の管と、
前記第1の管に連通され、前記第1の管よりも細い管状をなし、前記液体タンク内に第2の液体吸引口を有する第2の管と、
前記液体に浮上する浮上部材と、を備え、
前記第2の液体吸引口は、前記第1の液体吸引口よりも小さく、且つ前記第1の液体吸引口よりも低位置に設けられており、
前記第1の管は、鉛直方向に沿って延在し且つ前記第1の液体吸引口としての管端を含む鉛直部を有し、
前記浮上部材は、
前記鉛直部に対し鉛直方向に沿って移動可能とされ、
前記鉛直部が挿入され下方に開口する内部空間を有し、
前記液体タンク内の液位が所定レベル以下のときに、前記内部空間に前記第1の液体吸引口を位置させた状態で下端部が前記液体タンクの底面と当接することにより、前記内部空間を密封して前記第1の液体吸引口からの吸引を停止させること、を特徴とする吸引装置。
【請求項2】
前記浮上部材の下端部には、軟質材が設けられていること、を特徴とする請求項1に記載の吸引装置。
【請求項3】
前記浮上部材の下端部には、硬質材が設けられていること、を特徴とする請求項1に記載の吸引装置。
【請求項4】
前記浮上部材は、下方に開口するカップ状を呈していること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸引装置。
【請求項5】
前記第2の液体吸引口は、前記液体の吸引時において前記液体が溜まりやすい位置に設けられていること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸引装置。
【請求項6】
前記第2の液体吸引口は、前記第1の液体吸引口に対し、前記液体の吸引時における前記船舶の傾きに応じて前記液体が溜まりやすい側に設けられていること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸引装置。
【請求項7】
前記液体タンクは、バラストタンクであり、
前記液体は、バラスト水であること、を特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸引装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−32110(P2013−32110A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169426(P2011−169426)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(503218067)住友重機械マリンエンジニアリング株式会社 (55)