説明

吸排気式履物用の圧縮バネ式復帰構造

【課題】靴などの履物における圧縮バネ式の復帰構造に関し、構造の簡素化、強度アップ、耐久性向上、小型軽量化、コストダウン、履き心地の向上などを実現する。
【解決手段】履物中に設ける圧縮コイルバネの上端並びに下端と中底層並びに外底層との間にバネ受け板を介在させるため、圧縮コイルバネで履物自体を損傷する恐れが少ない。また、前記の圧縮コイルバネが全部圧縮される前に前記のバネ受け板が当接する、円柱状又は断面台形状の緩衝手段を前記圧縮コイルバネの内側に設けてあるので、圧縮コイルバネの圧縮動作時の衝撃を緩和できる。緩衝体を囲む環状壁体の外側下端に、前記圧縮コイルバネの下部を受けるバネ受けフランジを設けてあるので、ゴムや合成樹脂製の緩衝手段が金属製の圧縮コイルバネで損傷する恐れが無い

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履物の中底層と外底層との間に設けた拡縮室が拡縮することによって足裏側に効果的に通気可能な吸排気式履物などにおける圧縮バネ式の復帰構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2003−284604号や特開2001-57902号、実開平6-52506号に記載のように、靴の中底と外底との間にポンプ手段を設けて、外部から吸入した新鮮な空気を靴の内部に供給する吸排気構造では、足裏全体に均一に給気することができないこと、吸気弁と排気弁を設ける必要があるので、故障が生じ易く、ポンプ機能としての寿命が短いなどの問題が避けられない。
【0003】
本発明の発明者は、このような問題を解決すべく、特願2007-80261号において、図1のように、極めて簡易な構造で、履物の中底全面から足裏に吸排気可能な構造を提案した。図1は、吸排気式履物用の圧縮バネ式復帰構造1を踵部に収納した状態の縦断面図である。拡縮室5の前半は、特許文献1の図1〜図4と変わりないが、拡縮室5の踵の領域において、コイル状の圧縮バネ14を収納してある。また、金属製の圧縮バネ14で中底層3や外底層4が損傷しないように、圧縮バネ14の上端と中底層3との間にバネ受け板15を挟み、圧縮バネ14の下端と外底層4との間にバネ受け板16を挟んである。バネ受け板15、16は皿状の金属板であり、圧縮バネ14と接しても磨耗損傷は少ない。
【0004】
下側のバネ受け板16の上に、比較的硬度の高いゴムないし合成樹脂製の断面台形状の円錐体17を設けてあり、その高さが、上下のバネ受け板15、16の間隔より低い。その結果、着地時に上側のバネ受け板15が弾性のある台形円錐体17に当たるので、着地時に上側のバネ受け板15が下側のバネ受け板16に直接衝突したり、圧縮バネ14が完全に圧縮されて衝撃を発生することが無く、効果的に緩衝される。台形円錐体17の中央の貫通孔18中に挿入した引っ張りコイルバネ19で、上側のバネ受け板15と下側のバネ受け板16を引っ張って、各部品がバラバラに分離するのを防いでいる。
【0005】
台形状の緩衝体17の外周下部を環状壁体11で押さえ、そのフランジ11fを前記の圧縮コイルバネ14で押さえているので、緩衝体17は安定良くバネ受け板16上に保持される。図示の台形円錐体17に代えて、円柱状や円筒状、ドーナツ状なども可能であり、その中心孔に引っ張りコイルバネ19を挿通する。ドーナツ状体を採用する場合は、環状壁体11をドーナツ状の緩衝手段の最大径部より高めの位置まで延ばして、円筒状に形成し、その中にドーナツ状緩衝手段を収納すると、安定性がよい。
【0006】
このような圧縮バネ14が、図では踵の領域に内蔵してあるが、外周側壁12で囲まれた拡縮室5の前半の領域に配置することも可能である。踵以外に配置する場合は、小型化すると共に分散するのが望ましい。なお、緩衝体17も中空構造にできるが、ゴムないし合成樹脂製に代えて、同等の弾力のある圧縮バネを代用することも可能である。
【0007】
図1は、拡縮室5を形成する中底層3や外底層4と、靴側壁や甲部2と接地層4bが分離状態となっているが、一体に接着すると、特許文献1の図1や図4のような一体構造となる。中底層3や外底層4は、各支柱6の弾力や支柱の横孔9や中空部10、括れ部13などによる弾力を受けるし、中底層3は足裏から体重を受けるので、中底層3や外底層4は、硬度の高い硬質合成樹脂板が適している。接地層4bの硬度は、使用者の多様な好みに応じて、様々な硬度を設定できる。
【0008】
以上のように、履物の中底層3を支持する支柱手段および/又は中空部をゴムないし合成樹脂から成るゴム様弾性素材で構成し、拡縮室中に適宜配設してあって、中底層3に開けた通気孔7によって、靴の内部に拡縮室5から通気し換気できるので、極めて簡易な構造で、履物中の足裏の蒸れを抑制でき、衛生的となる。なお、甲部2に換気孔8を設けると、外気でも換気できる。
【特許文献1】特願2007-80261号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の技術的課題は、特許文献1に記載の吸排気式履物における圧縮バネ式復帰構造をさらに改良して実施形態を増やすと共に、構造の簡素化、強度アップ、耐久性向上、小型軽量化、コストダウン、履き心地の向上などを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の技術的課題は次のような手段によって解決される。請求項1は、履物中に設ける圧縮コイルバネの上端並びに下端と中底層並びに外底層との間にバネ受け板を介在させると共に、
前記の圧縮コイルバネが全部圧縮される前に前記のバネ受け板が当接する緩衝手段を前記圧縮コイルバネの内側に設けてあることを特徴とする履物用の圧縮バネ式復帰構造である。
このように、履物中に設ける圧縮コイルバネの上端並びに下端と中底層並びに外底層との間にバネ受け板を介在させるので、圧縮コイルバネで履物自体を損傷する恐れが少ない。また、前記の圧縮コイルバネが全部圧縮される前に前記のバネ受け板が当接する緩衝手段を前記圧縮コイルバネの内側に設けてあるので、圧縮コイルバネの圧縮動作時の衝撃を緩和できる。しかも、圧縮コイルバネの内側に緩衝手段を配置してあるので、小型化できる。
【0011】
請求項2は、前記の緩衝手段が円柱状又は断面台形状をしており、その下側を包囲する環状壁体の外側下端に、前記圧縮コイルバネの下部を受けるバネ受けフランジを設けてあることを特徴とする請求項1に記載の履物用の圧縮バネ式復帰構造である。このように、前記の緩衝手段が円柱状又は断面台形状をしているので、圧縮コイルバネの内側に高密度に配置できる。また、円柱状又は断面台形状の緩衝手段の下側を包囲する環状壁体の外側下端に、前記圧縮コイルバネの下部を受けるバネ受けフランジを設けてあるので、ゴムや合成樹脂製の緩衝手段が金属製の圧縮コイルバネに接して損傷する恐れが無い。
【0012】
請求項3は、前記の緩衝手段の頂端に載置する蓋板の中央にバネ受け用の凹室を設けて、その下面を緩衝手段の中央に嵌入させると共に、
前記凹室に嵌入する小型圧縮コイルバネの上端を前記の中底層側のバネ受け板で受ける構造となっていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の履物用の圧縮バネ式復帰構造である。
このように、前記の緩衝手段の頂端に載置する蓋板の中央にバネ受け用の凹室を設けて、その下面を緩衝手段の中央に嵌入させると共に、前記凹室に嵌入した小型圧縮コイルバネの上端を前記の中底層側のバネ受け板で受ける構造となっているので、緩衝手段を小型圧縮コイルバネで外底層側のバネ受け板側に押圧支持できる。また、緩衝手段の頂端に載置する蓋板中央の凹室に小型圧縮コイルバネを嵌め込むので、小型圧縮コイルバネと蓋板や緩衝手段との位置ずれが発生しない。なお、上下のバネ受け板は圧縮コイルバネと溶接固定したり、履物の内部に閉じ込めるので、バラバラにはならない。
【0013】
請求項4は、請求項3に記載の中底層側のバネ受け板の中央部に下向き凸部または複数の下向き舌片を設けて、前記の小型圧縮コイルバネの上端に嵌入させてなることを特徴とする請求項3に記載の履物用の圧縮バネ式復帰構造である。このように、請求項3に記載の中底層側のバネ受け板の中央部に下向き凸部または複数の下向き舌片を設けて、前記の小型圧縮コイルバネの上端のリング状部中に嵌入させてあるので、中底層側のバネ受け板と小型圧縮コイルバネとの位置決めが確実となり、また、小型圧縮コイルバネや圧縮コイルバネの伸縮動作時の位置ずれやガタが発生しない。
【0014】
請求項5は、前記の緩衝手段が中空の合成樹脂ないしゴム質材からなり、中空部にガス体が入っていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの項に記載の履物用の圧縮バネ式復帰構造である。このように、前記の緩衝手段が中空の合成樹脂ないしゴム質材からなり、しかも中空部にガス体が入っているので、弾性に富み、圧縮コイルバネが圧縮される際の緩衝効果が向上し、ソフトになる。
【0015】
請求項6は、前記の緩衝手段の頂端に載置する蓋板の中央部と請求項1に記載の外底層側のバネ受け板の中央部との間に引っ張りコイルバネを取付けて、前記緩衝手段をバネ力で挟持する構造となっていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の履物用の圧縮バネ式復帰構造である。このように、前記の緩衝手段の頂端に載置する蓋板の中央部と請求項1に記載の外底層側のバネ受け板の中央部との間に引っ張りコイルバネを取付けて、緩衝体蓋板と外底層側バネ受け板との間に前記緩衝手段をバネ力で挟持する構造となっているので、緩衝手段を引っ張りコイルバネだけで外底層側バネ受け板に支持できる。しかも、請求項3のような蓋板凹室や請求項4のようなバネ受け板の下向き凸部などを設ける必要も無い。
【0016】
請求項7は、前記の圧縮コイルバネの上端並びに下端を前記の中底層並びに外底層側のバネ受け板にそれぞれ溶接又はロウ付け、結束、加締めなどの手段で連結固定してあることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの項に記載の履物用の圧縮バネ式復帰構造である。このように、前記の圧縮コイルバネの上端並びに下端を前記の中底層並びに外底層側のバネ受け板にそれぞれ溶接又はロウ付け、結束、加締めなどの手段で連結固定してあるので、履物の中に圧縮バネ式復帰構造をセットするまでに、各部品がバラバラに分離するを防止でき、製造が容易になる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1のように、履物中に設ける圧縮コイルバネの上端並びに下端と中底層並びに外底層との間にバネ受け板を介在させるので、圧縮コイルバネで履物自体を損傷する恐れが少ない。また、前記の圧縮コイルバネが全部圧縮される前に前記のバネ受け板が当接する緩衝手段を前記圧縮コイルバネの内側に設けてあるので、圧縮コイルバネの圧縮動作時の衝撃を緩和できる。しかも、圧縮コイルバネの内側に緩衝手段を配置してあるので、小型化できる。
【0018】
請求項2のように、前記の緩衝手段が円柱状又は断面台形状をしているので、圧縮コイルバネの内側に高密度に配置できる。また、円柱状又は断面台形状の緩衝手段の下側を包囲する環状壁体の外側下端に、前記圧縮コイルバネの下部を受けるバネ受けフランジを設けてあるので、ゴムや合成樹脂製の緩衝手段が金属製の圧縮コイルバネに接して損傷する恐れが無い。
【0019】
請求項3のように、前記の緩衝手段の頂端に載置する蓋板の中央にバネ受け用の凹室を設けて、その下面を緩衝手段の中央に嵌入させると共に、前記凹室に嵌入した小型圧縮コイルバネの上端を前記の中底層側のバネ受け板で受ける構造となっているので、緩衝手段を小型圧縮コイルバネで外底層側のバネ受け板側に押圧支持できる。また、緩衝手段の頂端に載置する蓋板中央の凹室に小型圧縮コイルバネを嵌め込むので、小型圧縮コイルバネと蓋板や緩衝手段との位置ずれが発生しない。
【0020】
請求項4のように、請求項3に記載の中底層側のバネ受け板の中央部に下向き凸部または複数の下向き舌片を設けて、前記の小型圧縮コイルバネの上端のリング状部中に嵌入させてあるので、中底層側のバネ受け板と小型圧縮コイルバネとの位置決めが確実となり、また、小型圧縮コイルバネや圧縮コイルバネの伸縮動作時の位置ずれやガタが発生しない。
【0021】
請求項5のように、前記の緩衝手段が中空の合成樹脂ないしゴム質材からなり、しかも中空部にガス体が入っているので、弾性に富み、圧縮コイルバネが圧縮される際の緩衝効果が向上し、ソフトになる。
【0022】
請求項6のように、前記の緩衝手段の頂端に載置する蓋板の中央部と請求項1に記載の外底層側のバネ受け板の中央部との間に引っ張りコイルバネを取付けて、緩衝体蓋板と外底層側バネ受け板との間に前記緩衝手段をバネ力で挟持する構造となっているので、緩衝手段を引っ張りコイルバネだけで外底層側バネ受け板に支持できる。しかも、請求項3のような蓋板凹室や請求項4のようなバネ受け板の下向き凸部などを設ける必要も無い。
【0023】
請求項7のように、前記の圧縮コイルバネの上端並びに下端を前記の中底層並びに外底層側のバネ受け板にそれぞれ溶接又はロウ付け、結束、加締めなどの手段で連結固定してあるので、履物の中に圧縮バネ式復帰構造をセットするまでに、各部品がバラバラに分離するを防止でき、製造が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に本発明による吸排気式履物における圧縮バネ式復帰構造が実際上どのように具体化されるか実施形態を説明する。図2は、本発明による履物用の圧縮バネ式復帰構造1を履物から取り出した状態の縦断面図、図3はその分解状態を示す縦断面図、図4は分解状態の平面図である。図3のような円形の皿状のバネ受け板16の上に合成樹脂製やゴム質の緩衝体17を載置し、その上に押さえ用の環状壁体11を被せた状態で、その外側下端のフランジ11fの上に圧縮コイルバネ14を載せ、その上に、円形皿状のバネ受け板15を逆さにして被せると、上下のバネ受け板15、16外周の隆起縁15w、16wの内側に圧縮コイルバネ14の上下端が位置決めされる。そして、引っ張りコイルバネ19を、緩衝体17の中心孔18に挿通すると共に、下端のフックf1を前記の下部バネ受け板16の中央に形成された押し出し孔16aに引っ掛け、上端のフックf2を上側のバネ受け板15中央に形成された押し出し孔15aに引っ掛けることで、全体がバラバラに分離不能に組み立てると、図2の状態となる。
【0025】
この構造では、着地時の人体の荷重で圧縮コイルバネ14が圧縮された際に、上側の中底層3側のバネ受け板15が緩衝体17と圧接するので、その後の荷重は緩衝体17で受けることになり、衝撃が効果的に緩和されるため、関節などを痛める恐れがなく、履き心地もよい。また、足を上げる際に、圧縮コイルバネ14がバネ力で元の状態に復帰する作用で足が大地から反発力を受けることになり、軽快に走ったり歩いたりできる。なお、上側のバネ受け板15が環状壁体11と接しないように、環状壁体11は緩衝体17より低くしてある。その結果、緩衝体17による緩衝作用は、最初はソフトであるが、緩衝体17の環状壁体11中の部分が環状壁体11に圧接して、それ以上圧縮不能になると、弾力がハードとなり、緩衝作用も完了する。
【0026】
上下のバネ受け板15、16と環状壁体11は、図示のように、軽量化のために多数の孔hを開けることもできる。また、バネ受け板15、16の孔hは、圧縮コイルバネ14の上端や下端を上下のバネ受け板15、16に針金などで結束し連結する場合にも利用できる。
図2のように、環状壁体11のフランジ11f上の圧縮コイルバネ11と緩衝体17が環状壁体11で分離されているので、互いに接して緩衝体17が損傷することはない。緩衝体17の断面形状が台形状であり、その上に被せる環状壁体11も台形状であるため、環状壁体11中の緩衝体17の分離や移動を拘束できる。
【0027】
図5は他の実施形態を示す分解状態の縦断面図で、引っ張りコイルバネ19に代えて、小型圧縮コイルバネ20を用いる。緩衝体17の頂端面に載置する蓋状板21の中央に凹室21sをプレス形成し、その下側の下向き凸部21pは、緩衝体17の中央凹部17s中に嵌入させる。なお、図3の中央貫通孔18中に嵌入させてもよい。そして、凹室21s中に、小型圧縮コイルバネ20の下部を嵌入せさせる。小型圧縮コイルバネ20上端のリング状部20R中に、上側のバネ受け板15中央の下向き凸部15pを嵌入させることで、小型圧縮コイルバネ20は、上側バネ受け板15と緩衝体17に対し安定よく位置決め保持される。
【0028】
図5の下向き凸部21pを切除して円形の窓孔にすると共に、小型圧縮コイルバネ20を貫通させ、しかも、図3の緩衝体17中央貫通孔18をも貫通させて下部バネ受け板16に圧接させると、圧縮コイルバネ14と同様な圧縮バネ力が中央部においても発生するので、圧縮バネ力が外周部に集中するのを防止できる。
【0029】
図6は、図5の蓋板凸部21pに代えて、図3と同様な押し出し孔21aを形成して、緩衝体17中の引っ張りコイルバネ22を取付けてある。そして、この引っ張りコイルバネ22の下端のフックを下側のバネ受け板16中央に形成された押し出し孔16aに引っ掛けて取付けるため、図2〜図4の引っ張りコイルバネ19より短い。なお、図3と同様に上端と下端に引っ掛け用のフックf2、f1を形成してある。このように、蓋状板21で緩衝体17を下側バネ受け板16側に引っ張り支持する場合は、フランジ11f無しの環状壁体11も可能である。
【0030】
このように、上下のバネ受け板15と16間に長い引っ張りコイルバネ19を取付けない場合は、上下のバネ受け板15、16や圧縮コイルバネ14が分離するため、履物中に実装しづらいので、圧縮コイルバネ14の上端と上側のバネ受け板15とを溶接し、圧縮コイルバネ14の下端と下側のバネ受け板16とを溶接することが望ましい。ロウ付けや針金による結束、加締めなどの手法で連結固定してもよい。なお、蓋状板21の外周21cは、緩衝体17の上端外周を囲むように垂下させてあるので、相互の位置決めは安定し、互いに位置ずれしたりする恐れはない。
【0031】
図7のように、前記の環状壁体11に代えて、外側下端のフランジ11fを省いた円筒状の環状壁体11cを使用して、その内側に緩衝体17をきつめに押し込み収納することも可能で、この場合は、下側バネ受け板16の圧縮コイルバネ14より内側の領域を上側に切り起こして3個以上の切り起こし舌片16tを形成し、その内側にフランジレス環状壁体11cを配置すれば、該環状壁体11cの位置づれを防止でき、安定性も向上する。なお、緩衝体17自体の弾力を利用して、その外側の環状壁体11などの内部にきつめに押し込み収納する場合は、下側バネ受け板16に取付けるための中央貫通孔18や中央凹部17sの存在しない、無垢の台形状も可能である。このとき、外側の層と内部との弾力を変えることによって、内部をソフトに、外層はハードにしたり、その逆も可能である。
【0032】
緩衝体17を下側バネ受け板16に確実に固定するために、緩衝体17の中央において、ワッシャー23の上から割りピン24を挿通し、下側バネ受け板16の下側で加締めたり、ロウ付け、半田付け又は溶接することもできる。割りピン24に代えてボルトを挿通して、下側バネ受け板16の下側に設けたナットで固定し、かつ溶接することも可能である。あるいは、下側バネ受け板16に開けた小孔から矢印状ないし釣針状のピン25を緩衝体17中に打ち込んで、返しの作用で離脱不能に固定することもできる。ピン25に代えて、木ねじをねじ込んでもよい。この場合、木ねじや割りピン、ボルト、矢印状ピンなどは、複数本用いてもよい。溶接する場合は、緩衝体17と溶接金属体との間に断熱シートを挟んで緩衝体17が熱劣化するのを防止するのがよい。
なお、緩衝体17と摺動接触する各パーツすなわち、環状壁体11、円筒状の環状壁体11c、下側バネ受け板16、蓋状板21などの摺動接触面にフッ素樹脂などを塗布して、潤滑性を高めることで、摩擦熱の抑制と耐久性向上を図ることが望ましい。
【0033】
緩衝体17の材質は合成樹脂やゴム質材などが適しており、硬度の設定も容易である。また、図8のように、緩衝体17自体を中空構造にすると、弾性がより向上する。中空構造の場合は、中空部が真空だと弾力が劣るので、中空部17g中に空気その他のガス体が入っていることは言うまでもない。弾力を硬めにするには、高圧の窒素ガスなどの不活性ガスを充填しておくことがより望ましい。中空構造の場合、図示のような2層構造又は3層構造も可能である。例えば、外側又は内側の層を、粘性に富んだゴム質にすると、針などが刺さってピンホールが開いたりしても、粘着力でピンホールが自然と閉じられるので、便利である。内面寄りに繊維材17nを例えばネット状にして埋め込むと、強度と耐久性が向上する。なお、緩衝体17はドーナツ状も可能である。
【0034】
以上のように、緩衝体17をドーナツ状や球状、図8のような楕円状にする場合は、切り起こし舌片16tや環状壁体11、前記の壁の高いリングの高さを、内側に配置する緩衝体17の最大径部より高めにすると、緩衝体17の外周が拘束されて弾力がハードとなり、かつ環状壁体11や壁高リング、切り起こし舌片16tの位置決めが確実となり、ずれたりするのを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように、履物中に設ける圧縮コイルバネの上端並びに下端と中底層並びに外底層との間にバネ受け板を介在させると共に、前記の圧縮コイルバネが全部圧縮される前に前記のバネ受け板が当接する緩衝手段を前記圧縮コイルバネの内側に設けてあるため、簡素な構造で、履物における緩衝機構部の強度アップや耐久性向上、小型軽量化、コストダウンが可能になると共に、履き心地と安全性も向上する。したがって、吸排気式の履物に限らず、履物の緩衝手段全般に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】特許文献1で開示した吸排気式履物用の圧縮バネ式復帰構造を示す断面図である。
【図2】本発明による履物用の圧縮バネ式復帰構造を履物から取り出した状態の縦断面図である。
【図3】図2の圧縮バネ式復帰構造の分解状態を示す縦断面図である。
【図4】図2の圧縮バネ式復帰構造の各部品の平面図である。
【図5】緩衝体頂面の蓋状板と上側バネ受け板との間に圧縮コイルバネを介在させる実施形態である。
【図6】緩衝体頂面の蓋状板と下側バネ受け板との間に短い引っ張りコイルバネを取付けた実施形態である。
【図7】外底層側の下部バネ受け板に直接に圧縮コイルバネの下端を載置する実施形態の縦断面図である。
【図8】中空の緩衝体の実施形態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0037】
3 中底層
4 外底層
4b 接地層
5 拡縮室
7 通気孔
11 緩衝体押さえ用の環状壁体
11f フランジ
12 外周側壁
14 圧縮バネ
15・16 バネ受け板
15a・16a 押し出し孔
15p 下向き凸部
16t 切り起こし舌片
17 緩衝体
17s 中央凹部
18 中心孔
19 引っ張りコイルバネ
20 小型の圧縮コイルバネ
21 蓋状板
21a 押し出し孔
21s 凹室
21p 下向き凸部
22 短い引っ張りコイルバネ
f1・f2 フック


【特許請求の範囲】
【請求項1】
履物中に設ける圧縮コイルバネの上端並びに下端と中底層並びに外底層との間にバネ受け板を介在させると共に、
前記の圧縮コイルバネが全部圧縮される前に前記のバネ受け板が当接する緩衝手段を前記圧縮コイルバネの内側に設けてあることを特徴とする履物用の圧縮バネ式復帰構造。
【請求項2】
前記の緩衝手段が円柱状又は断面台形状をしており、その下側を包囲する環状壁体の外側下端に、前記圧縮コイルバネの下部を受けるバネ受けフランジを設けてあることを特徴とする請求項1に記載の履物用の圧縮バネ式復帰構造。
【請求項3】
前記の緩衝手段の頂端に載置する蓋板の中央にバネ受け用の凹室を設けて、その下面を緩衝手段の中央に嵌入させると共に、
前記凹室に嵌入する小型圧縮コイルバネの上端を前記の中底層側のバネ受け板で受ける構造となっていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の履物用の圧縮バネ式復帰構造。
【請求項4】
請求項3に記載の中底層側のバネ受け板の中央部に下向き凸部または複数の下向き舌片を設けて、前記の小型圧縮コイルバネの上端に嵌入させてなることを特徴とする請求項3に記載の履物用の圧縮バネ式復帰構造。
【請求項5】
前記の緩衝手段が中空の合成樹脂ないしゴム質材からなり、中空部にガス体が入っていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの項に記載の履物用の圧縮バネ式復帰構造。
【請求項6】
前記の緩衝手段の頂端に載置する蓋板の中央部と請求項1に記載の外底層側のバネ受け板の中央部との間に引っ張りコイルバネを取付けて、前記緩衝手段をバネ力で挟持する構造となっていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の履物用の圧縮バネ式復帰構造。
【請求項7】
前記の圧縮コイルバネの上端並びに下端を前記の中底層並びに外底層側のバネ受け板にそれぞれ溶接又はロウ付け、結束、加締めなどの手段で連結固定してあることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの項に記載の履物用の圧縮バネ式復帰構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−60966(P2009−60966A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229216(P2007−229216)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(593108912)
【Fターム(参考)】