説明

吸排気式履物

【課題】履物の中底と外底との間に設けた拡縮室が拡縮することによって足裏側に効果的に通気可能な吸排気式履物に関し、極めて簡易な構造で、履物の中底全面から足裏に吸排気可能な構造を実現する。
【解決手段】履物の中底と外底の間に設けた拡縮室の中に、中底を支持する支柱手段および/又は中空体を複数設けると共に、少なくとも前記支柱手段と中空体をゴム様弾性手段で構成してあるので、歩行や走行に際して着地時に体重が加わるたびに、支柱手段や中空体が圧縮されて拡縮室が縮小し、足を上げた際には支柱手段や中空体がその復元力で復旧して拡縮室を拡張させるため、拡縮室の拡縮動作が繰り返される。こうして拡縮室が圧縮される際に、中底に開けた通気孔から足裏に向けて空気が吹き出すので、履物の中底内や足裏の通気性が向上し、快適となり、かつ衛生的で、水虫などの防止が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履物の中底層と外底層との間に設けた拡縮室が拡縮することによって足裏側に効果的に通気可能な吸排気式履物に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2003−284604号や特開2001-57902号、実開平6-52506号に記載のように、靴の中底と外底との間にポンプ手段を設けて、外部から吸入した新鮮な空気を靴の内部に供給する構造が提案されている。
【特許文献1】特開2003−284604号
【特許文献2】特開2001-57902号
【特許文献3】実開平6-52506号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、このような構造では、踵側にポンプ手段を設けて、足裏の前半部に給気する構造であるため、足裏全体に均一に給気することができないこと、吸気弁と排気弁を設ける必要があるので、故障が生じ易く、ポンプ機能としての寿命が短いなどの問題が避けられない。本発明の技術的課題は、このような問題に着目し、極めて簡易な構造で、履物の中底全面から足裏に吸排気可能な構造を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の技術的課題は次のような手段によって解決される。請求項1は、履物の中底層と外底層の間に設けた拡縮室の中に、中底層を支持する支柱手段および/又は中空体を設けると共に、少なくとも前記支柱手段と中空体をゴム様弾性手段で構成し、前記拡縮室と中底層上面を連通する通気孔を設けてなることを特徴とする履物である。このように、履物の中底層と外底層の間に設けた拡縮室の中に、中底層を支持する支柱手段および/又は中空体を設けると共に、少なくとも前記支柱手段と中空体をゴム様弾性手段で構成してあるので、歩行や走行に際して着地時に体重が加わるたびに、支柱手段や中空体が圧縮されて拡縮室が縮小し、足を上げた際には支柱手段や中空体がその復元力で復旧して拡縮室を拡張させるため、拡縮室の拡縮動作が繰り返される。こうして拡縮室が圧縮される際に、中底層に開けた通気孔から足裏に向けて空気が吹き出すので、履物の中底層内や足裏の通気性が向上し、快適となる。しかも、衛生的で、水虫などの防止が可能となる。
【0005】
請求項2は、前記の支柱手段に横孔および/又は縦孔を設けるか、又は異径部によって上下方向の断面積を不均一にしてなることを特徴とする請求項1に記載の履物である。このように、前記の支柱手段に横孔および/又は縦孔を設けたり、外径の異径部を設けて上下方向の断面積を不均一にすることで、支柱手段の弾力がソフトになり、拡縮室の拡縮動作がより円滑となるので、中底層内や足裏の通気性がより向上する。
【0006】
請求項3は、前記の中底層の内面に布又はメッシュシートを敷設してあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の履物である。このように、前記の中底層の内面に布又はメッシュシートを敷設してあるため、中底層内面における通気性が向上する。その結果、中底層に体重が加わっているにも係わらず、中底層の通気孔から中底層内や足裏への通気がより円滑に行われる。
【0007】
請求項4は、靴の少なくとも甲の部分に通気孔を有していることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3に記載の履物である。このように、靴の少なくとも甲の部分に通気孔を有しているので、靴の内部と拡縮室との間だけで換気作用が繰り返されるのでなく、靴の内部と外気との間でも円滑に換気され、新鮮な外気が入り込んで衛生的となる。
【0008】
請求項5は、拡縮室の所望の位置に圧縮バネ手段を内蔵してあり、前記圧縮バネ手段の上端並びに下端と中底層並びに外底層の間にバネ受け板を介在させてあることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの項に記載の履物である。このように、拡縮室の所望の位置に圧縮バネ手段を内蔵してあるため、体重と圧縮バネ手段によって、歩いたり走ったりするたびに拡縮室が拡縮可能となり、圧縮バネ手段によっても効果的な換気動作が可能となる。圧縮バネ手段の上端並びに下端と中底層並びに外底層の間にバネ受け板を介在させてあるので、硬度の高い圧縮バネ手段で、軟質の中底層や外底層が損傷するのを阻止できる。
【0009】
請求項6は、前記の圧縮バネ手段が全部圧縮される前に前記のバネ受け板が当接する副弾性手段を前記圧縮バネ手段の内側に設けてあることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの項に記載の履物である。このように、前記の圧縮バネ手段が全部圧縮される前に前記のバネ受け板が当接する副弾性手段を設けてあるため、圧縮バネ手段の圧縮時の衝撃を緩衝でき、踵に対するクッション効果が得られる。また、前記圧縮バネ手段の内側に副弾性手段を配置してあるため、安定性が良く、クッション効果が確実となる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1のように、履物の中底層と外底層の間に設けた拡縮室の中に、中底層を支持する支柱手段および/又は中空体を設けると共に、少なくとも前記支柱手段と中空体をゴム様弾性手段で構成してあるので、歩行や走行に際して着地時に体重が加わるたびに、支柱手段や中空体が圧縮されて拡縮室が縮小し、足を上げた際には支柱手段や中空体がその復元力で復旧して拡縮室を拡張させるため、拡縮室の拡縮動作が繰り返される。こうして拡縮室が圧縮される際に、中底層に開けた通気孔から足裏に向けて空気が吹き出すので、履物の中底層内や足裏の通気性が向上し、快適となる。しかも、衛生的で、水虫などの防止が可能となる。
【0011】
請求項2のように、前記の支柱手段に横孔および/又は縦孔を設けたり、外径の異径部を設けて上下方向の断面積を不均一にすることで、支柱手段の弾力がソフトになり、拡縮室の拡縮動作がより円滑となるので、中底層内や足裏の通気性がより向上する。
【0012】
請求項3のように、前記の中底層の内面に布又はメッシュシートを敷設してあるため、中底層内面における通気性が向上する。その結果、中底層に体重が加わっているにも係わらず、中底層の通気孔から中底層内や足裏への通気がより円滑に行われる。
【0013】
請求項4のように、靴の少なくとも甲の部分に通気孔を有しているので、靴の内部と拡縮室との間だけで換気作用が繰り返されるのでなく、靴の内部と外気との間でも円滑に換気され、新鮮な外気が入り込んで衛生的となる。
【0014】
請求項5のように、拡縮室の所望の位置に圧縮バネ手段を内蔵してあるため、体重と圧縮バネ手段によって、歩いたり走ったりするたびに拡縮室が拡縮可能となり、圧縮バネ手段によっても効果的な換気動作が可能となる。圧縮バネ手段の上端並びに下端と中底層並びに外底層の間にバネ受け板を介在させてあるので、硬度の高い圧縮バネ手段で、軟質の中底層や外底層が損傷するのを阻止できる。
【0015】
請求項6のように、前記の圧縮バネ手段が全部圧縮される前に前記のバネ受け板が当接する副弾性手段を設けてあるため、圧縮バネ手段の圧縮時の衝撃を緩衝でき、踵に対するクッション効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に本発明による吸排気式履物が実際上どのように具体化されるか実施形態を説明する。図1は、本発明による吸排気式履物の第1実施形態を示す要部の縦断面図である。靴1の中底層3と外底層4との間に拡縮室5が形成されている。拡縮室5の中には、ゴム様の弾性素材から成る支柱6を分散配置してあり、中底層3には、支柱6…を避けた位置に通気孔7を配置してある。したがって、この靴1を履いて歩いたり、走ったりすると、着地のたびに、体重を受けて各支柱6…が圧縮され、拡縮室5が下方向に縮小する。
【0017】
この際に、拡縮室5中の空気が中底層3の通気孔7から靴内に吹き出して、靴内が換気される。足を上げると、体重が開放されるので、弾性素材から成る支柱6の復元力で各支柱6…が上向きに伸びて、拡縮室5が元の大きさに戻る。この際に、靴内の空気が通気孔7から拡縮室5中に吸入される。このような動作の繰り返しで、靴の内部と拡縮室5間で空気が出入りするので、歩いたり走ったりしている間に自然と靴内が換気され、靴蒸れなどが解消されて、衛生的となる。靴の甲の部分2や側部にメッシュ状の換気孔8を設けてあるので、靴の内部は、外気との間でも換気され、新鮮な外気が靴内に供給される。
【0018】
図2は支柱6の実施形態で、(1)のように支柱6に横孔9を開けることによって、弾性を高めている。この横孔9と中底3内とを連通する縦孔を開けて逆T字孔7Tとすることで、換気と弾力軟化を兼ねてもよい。横孔9は、(2)図のように、クロスするように十字状に開けることもできる。
【0019】
支柱6に代えて、(3)のように、中空体10を設けることも可能である。この中空体10も、支柱6と同様に、ゴム様の弾性素材から成っているので、中空体10自体が体重で圧縮されるが、体重が開放されると、自身の復元力で元に伸長する。中空部11中の気体の圧縮と復元の作用も加わり、相乗効果を奏する。中空体10は中底層3や外底層4側と一体成型でもよいが、別体の中空体10を中底層3と外底層4側との間に介在させる製法でもよい。なお、鎖線のように、(1)図の逆T字孔7Tと同様な縦孔と横孔9を開けることも可能である。
【0020】
図3は、図1の中底層3の平面図で、拡縮室5の内部構造を示している。通気孔7は、踵の部分にも分散配置されているが、汗をかき易い足指の領域にも分散配置されている。横孔9の開いた支柱6と中空体10が適宜混在しているが、どちらか片方だけを用いることも可能である。また、支柱6の横孔9の向きも自由であり、十字状横孔でもよい。横孔9の開いていない支柱6も可能である。支柱6や中空体10の個数や配置も特に限定されない。拡縮室5の前半の領域には、前後方向に長い中空体10Lを設けてあるが、踵の部分まで延長してもよい。このように、中空体の形状やサイズ、配置も任意である。拡縮室5の外周側壁12も、支柱6と同様なゴム様の弾性素材から成り、各支柱6や中空体10の伸縮動作と同時に伸縮するので、拡縮室5の拡縮動作に寄与することもできる。
【0021】
図4は、支柱6の別の実施形態を示す縦断面図で、括れた部分13を有している。支柱6の外径より太い部分を設けることも可能である。図1のような横孔9に代えて、このように、支柱6に、外径の異なる異径部を設けることによって、上下方向の断面積を不均一にすることも可能である。目的は、横孔9と同様に弾性を高め、ソフトにするためであり、硬度の高い素材であっても、弾性を高めて、クッション性を出すことができる。
【0022】
外底層4は、接地層4bと別素材とする場合は、図示のように、2層構造にしてあるが、同一素材で1層だけにすることも可能である。また、中底層3の内面に布やメッシュシートを敷設することよって、足裏との間の通気性を高めると、通気孔7から吹き出した空気が布やメッシュシートの隙間を通過して、足裏に効果的に給気できる。この布やメッシュシートの目の粗さは任意であり、また厚手にすると、通気性がより高まる。
【0023】
靴の少なくとも甲の部分2や側部に通気孔8を設けると、靴1の内部と外気との間の換気性も向上し、新鮮な外気が流入するので、靴の内部と拡縮室5との間を通気孔7で換気するだけよりも、換気効果が高まり、かつ衛生的となる。
【0024】
図5は、圧縮バネ手段を併用した実施形態を示す要部断面図である。拡縮室5の前半は、図1〜4と変わりないが、拡縮室5の踵の領域において、圧縮バネ14を収納してある。また、金属製の圧縮バネ14で中底層3や外底層4が損傷しないように、圧縮バネ14の上端と中底層3との間にバネ受け板15を挟み、圧縮バネ14の下端と外底層4との間にバネ受け板16を挟んである。バネ受け板15、16は皿状の金属板であり、圧縮バネ14と接しても磨耗損傷は少ない。
【0025】
下側のバネ受け板16の中に、比較的硬度の高いゴムないし合成樹脂製の断面台形状の円錐体17を副弾性手段として内蔵固定してあり、その高さが、上下のバネ受け板15、16の間隔より低い。その結果、着地時に上側のバネ受け板15が弾性のある台形円錐体17に当たるので、着地時に上側のバネ受け板15が下側のバネ受け板16に直接衝突したり、圧縮バネ14が完全に圧縮された際の衝撃を抑制でき、緩衝される。台形円錐体17の中央の貫通孔18中に挿入した引っ張りコイルバネ19で、上側のバネ受け板15と下側のバネ受け板16を引っ張って、バラバラに分離するのを防いでいる。
【0026】
図示の台形円錐体17に代えて、ドーナツ状も可能であり、その中心孔に引っ張りコイルバネ19を挿通する。この場合、下側の皿状バネ受け板16の側壁をドーナツ状副弾性体の最大径部より高めの位置まで延ばして、円筒状に形成し、その中にドーナツ状副弾性体を収納すると、安定性がよい。
【0027】
このような圧縮バネ手段が、図では踵の領域に内蔵してあるが、拡縮室5の前半の領域に配置することも可能である。踵以外に配置する場合は、小型化すると共に分散するのが望ましい。なお、副弾性手段17も中空構造にできるが、ゴムないし合成樹脂製に代えて、同等の弾力のある圧縮バネを代用することも可能である。
【0028】
図5は、拡縮室5を形成する中底層3や外底層4と、靴側壁や甲部2と接地層4bが分離状態となっているが、一体に接着すると、図1や図4の状態となる。中底層3や外底層4は、各支柱6や中空体10から圧縮力を受けるし、中底層3は足裏から体重を受けるので、中底層3や外底層4は、硬度の高い硬質合成樹脂板が適している。接地層4bの硬度は、使用者の多様な好みに応じて、様々な硬度を設定できる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、履物の中底層を支持する支柱手段および/又は中空体をゴムないし合成樹脂から成るゴム様弾性素材で構成し、拡縮室中に適宜配設してあって、中底層に開けた通気孔によって、靴の内部に拡縮室から通気し換気できるので、極めて簡易な構造で、履物中の足裏の蒸れを抑制でき、衛生的となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による吸排気式履物の第1実施形態を示す要部の縦断面図である。
【図2】支柱並びに中空体の実施形態である。
【図3】図1の中底層の平面図である。
【図4】支柱の別の実施形態を示す縦断面図である。
【図5】圧縮バネ手段を併用した実施形態を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0031】
3 中底層
4 外底層
4b 接地層
5 拡縮室
6 支柱
7 通気孔
8 換気孔
9 横孔
10 中空体
12 外周側壁
13 括れ部
14 圧縮バネ
15・16 バネ受け板
17 台形円錐体
19 引っ張りコイルバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
履物の中底層と外底層の間に設けた拡縮室の中に、中底層を支持する支柱手段および/又は中空体を設けると共に、少なくとも前記支柱手段と中空体をゴム様弾性素材で構成し、前記拡縮室と中底層上面を連通する通気孔を設けてなることを特徴とする履物。
【請求項2】
前記の支柱手段に横孔および/又は縦孔を設けるか、又は異径部によって上下方向の断面積を不均一にしてなることを特徴とする請求項1に記載の履物。
【請求項3】
前記の中底層の内面に布又はメッシュシートを敷設してあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の履物。
【請求項4】
靴の少なくとも甲の部分に通気孔を有していることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3に記載の履物。
【請求項5】
拡縮室の所望の位置に圧縮バネ手段を内蔵してあり、前記圧縮バネ手段の上端並びに下端と中底層並びに外底層の間にバネ受け板を介在させてあることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの項に記載の履物。
【請求項6】
前記の圧縮バネ手段が全部圧縮される前に前記のバネ受け板が当接する副弾性手段を前記圧縮バネ手段の内側に設けてあることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの項に記載の履物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−237408(P2008−237408A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80261(P2007−80261)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(593108912)
【Fターム(参考)】