説明

吸放湿性建築材料及び吸放湿性建築材料の製造方法

【課題】多孔質体でありかつ吸放湿性を備えたケイ酸カルシウムとゼオライトを含有して、吸放湿性能に優れた吸放湿性建築材料及び当該建築材料の製造方法を提供すること。
【解決手段】ケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物とゼオライトを含有し、ケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物の含有率が全体の1〜50質量%であり、ゼオライトの含有率が全体の1〜50質量%であることを吸放湿性建築材料であり、かかる建築材料は、ケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物、ゼオライト、及び水を含む混合物を所定の形状に成形して原料成形体とし、当該原料成形体を水熱反応を行って硬化させて硬化体とすることにより簡便に製造することができる。また、硬化体の表面に対して光触媒を塗布して光触媒層を形成するようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物とゼオライトを含有した吸放湿性建築材料及び当該建築材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質体であるケイ酸カルシウムは、不燃材料として知られ、また、軽量で熱的にも安定な物質であることから、種々の形状の成形体に成形され、吸着性能を備えた建築材料や保温材料として広く使用されている。一般に、このケイ酸カルシウムの合成は、常温養生や蒸気養生でも可能であるが、水熱条件下で行うことが、強度面や寸法の安定性に有利である。また、ケイ酸質原料と石灰質原料を反応させ、ケイ酸カルシウムを結晶化させるにも、同様に水熱反応が必要とされる。
【0003】
また、多孔質体であるゼオライトを配合した吸放湿性建築材料(吸放湿性建材)は、室内その他の建築空間においてその吸放湿作用により、調湿や結露発生の抑制を行うものとして知られている。このようなゼオライトを含有した建築材料としては、ゼオライトと凝結硬化材とを配合してなる調湿建材や(例えば、特許文献1)、また、調湿作用を有するよう高温活性化処理をしたゼオライトに金属イオンを担持させてなるゼオライトの粉状体または粒状体を主原料とした抗菌・防カビ性を有する調湿性建築材料が提供されている(例えば、特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特開平3−93662号公報
【特許文献2】特開平3−109244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、ケイ酸カルシウムの成形体は、一般に、ケイ酸質原料、石灰質原料、セメント等を水と混合した混合体を水熱反応等で硬化させて成形体(硬化体)とするのであるが、かかる混合物中にゼオライトを含有させ、ケイ酸カルシウム成形体中にゼオライトを存在させようとすると、ゼオライトが成形体中に良好に分散されないことに加え、成形体の硬化も十分とならない場合が多かった。また、得られる成形体も所望の吸放湿性能を発現することができないため、改善が求められていた。
【0006】
従って、本発明の目的は、多孔質体でありかつ吸放湿性を備えたケイ酸カルシウムとゼオライトを含有して、吸放湿性能に優れた吸放湿性建築材料及び当該建築材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明の吸放湿性建築材料は、ケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物とゼオライトを含有し、前記ケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物の含有率が全体の1〜50質量%であり、前記ゼオライトの含有率が全体の1〜50質量%であることを特徴とする。
【0008】
この本発明の吸放湿性建築材料は、多孔質体であり、吸放湿性能を備えたケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物とゼオライトを特定の含有率で配合した構成を採用している。
従って、ケイ酸カルシウムを、あらかじめ硬化させた硬化体を粉砕させた粉砕物という状態で、これも吸放湿性能を備えた多孔質体のゼオライトと混合して硬化させて成形体としているため、吸放湿性能に優れた建築材料となる。
換言すれば、本発明の吸放湿性建築材料は、ケイ酸カルシウム硬化体を粉砕物という形態で配合していることにより、ケイ酸カルシウム及びゼオライトが本来備えている吸放湿性能に加え、種晶を配合したと同様の効果を期待でき、水熱反応におけるケイ酸カルシウム結晶生成を促進することができる。このため、強固に硬化された吸放湿性建築材料を提供することが可能となるとともに、この粉砕物の使用により、見掛けのかさも上がることから、より多くの空気孔を形成できるため、吸放湿性能を高いレベルの状態で維持することができる。
【0009】
更には、本発明の吸放湿性建築材料の構成材料であるケイ酸カルシウムやゼオライトは不燃材料であるため、吸放湿性能とともに、不燃性にも優れた建築材料となる。
そして、本発明の吸放湿性建築材料は、ケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物を配合できることから、建築廃材等のリサイクル材の有効利用が可能であり、環境問題にも効果的に対応することができる。
【0010】
本発明の吸放湿性建築材料は、前記したケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物の含有率と前記ゼオライトの含有率の合計が、全体の50質量%以上であることが好ましい。
この本発明によれば、吸放湿性建築材料全体に含有されるケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物とゼオライトとの合計量を特定範囲としているので、吸放湿性材料(ケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物及びゼオライト)をバランスよく配合し、吸放湿性がより一層優れた吸放湿性建築材料となる。
【0011】
本発明の吸放湿性建築材料は、前記したケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物と前記したゼオライトの重量比が、粉砕物/ゼオライト=1/6〜6/1であることが好ましい。
この本発明によれば、ケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物とゼオライトの比率(重量比)を特定の範囲としているので、例えば、かかる範囲内で粉砕物の割合を高くすれば、建築材料の不燃性も向上するほか、環境問題にもより効果的に対応することができる。一方、ゼオライトの割合を高くすれば、建築材料の吸着性能を向上させることができることとなる。
【0012】
本発明の吸放湿性建築材料は、表面に光触媒層が形成されていることが好ましい。
この本発明によれば、吸放湿性建築材料の表面に光触媒層が形成されているため、吸放湿性建築材料に対して臭気の吸着や分解による脱臭作用や抗菌作用などの機能を付与することができる。
【0013】
本発明の吸放湿性建築材料の製造方法は、含有率が建築材料全体の1〜50質量%としたケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物と、含有率が建築材料全体の1〜50質量%としたゼオライトを含む混合物を所定の形状に成形して原料成形体とする工程と、当該原料成形体を水熱反応を行って硬化させて硬化体とする工程と、を含むことを特徴とする。
この本発明の吸放湿性建築材料の製造方法は、このような所定の工程を採用して吸放湿性建築材料を製造するようにしているため、所定量のケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物及びゼオライトを含有して、吸放湿性能に優れた吸放湿性建築材料を効率的に提供することができる。
【0014】
本発明の吸放湿性建築材料の製造方法は、前記水熱反応の後、硬化体の表面に対して光触媒を塗布して光触媒層を形成することが好ましい。
この本発明によれば、水熱反応が終わった硬化体の表面に対して光触媒を塗布するようにしているので、表面に対して光触媒層が強固に形成された吸放湿性建築材料を好適に提供可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の吸放湿性建築材料は、ケイ酸カルシウム硬化体とゼオライトを必須の構成材料として含有するが、本発明の吸放湿性建築材料を構成するケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物の基材となるケイ酸カルシウム硬化体としては、例えば、ケイ酸カルシウムからなり、形状として板状、ブロック状、瓦状、造作部材等の繊維強化セメント板、窯業系サイディング、オートクレーブ養生軽量気泡コンクリート(ALC)、セメント瓦等の所定形状の硬化体を適宜使用することができる。また、例えば、セメント、ケイ酸質原料、石灰質原料及び水を含む混合物を所定の形状に成形した原料成形体を、所定の条件で水熱反応等させるようにして硬化させたものをケイ酸カルシウム硬化体として用いてもよい。
【0016】
このケイ酸カルシウム硬化体を粉砕させて粉砕物を得る手段としては、特に制限はなく、従来公知の手段を使用することができ、例えば、ロッドミル、ボールミル、振動ミル等のミル粉砕などの種々の粉砕手段により、ケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物を効率的に得ることができる。本発明は、ケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物を必須の構成材料とすることにより、見掛けのかさも上がることとなり、より多くの空気孔を形成でき、吸放湿性能が向上することとなる。
【0017】
本発明の吸放湿性建築材料において、このケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物の含有率は、吸放湿性建築材料全体に対して1〜50質量%であり、20〜40質量%であることが好ましい。粉砕物の含有率がかかる範囲であると、吸放湿性建築材料の吸放湿性能が優れたものとなり、また、吸放湿性建築材料の成形性も良好となる。これに対して、粉砕物の含有率が1質量%より小さいと、吸放湿性能として所望の効果を期待できないこととなり、粉砕物の含有率が50質量%を超えると、後工程における吸放湿性建築材料の成形性が低下し、コストアップに繋がる場合がある。
【0018】
ケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物の形状は、特に制限はなく、粒子状、粉状等の各種形状とすることができる。また、粉砕物の平均粒径(D50%)は、一般に、1〜100μm程度であることが好ましく、1〜20μm程度であることが特に好ましい。
【0019】
本発明の吸放湿性建築材料を構成するゼオライトとしては、天然ゼオライト、合成ゼオライトのいずれのゼオライトを使用することができ、また、これらの混合物であってもよい。合成ゼオライトは、一般には、吸着・触媒用、洗剤用等などに大別される場合もあるが、これらのいずれを使用しても問題はない。
【0020】
本発明の吸放湿性建築材料において、このゼオライトの含有率は、吸放湿性建築材料全体に対して1〜50質量%であり、20〜40質量%であることが好ましい。ゼオライトの含有率がかかる範囲であると、吸放湿性建築材料の吸放湿性能が優れたものとなり、また、吸放湿性建築材料の機械的強度を良好な状態で維持することができる。これに対して、ゼオライトの含有率が1質量%より小さいと、前記したケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物と同様、吸放湿性能として所望の効果を期待できないこととなり、ゼオライトの含有率が50質量%を超えると、吸放湿性建築材料の曲げ強度が低下する。
【0021】
また、ゼオライトの形状は、特に制限はなく、粒子状、粉状等の各種形状とすることができる。また、ゼオライトの平均粒径(D50%)は、一般に、1〜100μm程度であることが好ましく、1〜20μm程度であることが特に好ましい。
【0022】
本発明の吸放湿性建築材料にあっては、ケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物の含有率とゼオライトの含有率の合計が、吸放湿性建築材料全体の50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。粉砕物とゼオライトの含有率の合計が50質量%以上であることより、吸放湿性能に優れた材料をバランスよく配合し、得られる吸放湿性建築材料の吸放湿性の更なる向上が期待できる。
【0023】
また、本発明の吸放湿性建築材料にあっては、ケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物とゼオライトの重量比が、粉砕物/ゼオライト=1/6〜6/1であることが好ましく、2/3〜3/2であることがより好ましい。このような重量比内でケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物の割合を比較的高くすれば、建築材料の不燃性も向上し、また、建材廃材をより多く含有させることができ、環境問題にも効果的に対応することができる。これに対し、ゼオライトの割合を比較的高くすれば、建築材料の吸着性能を向上させることができる。
【0024】
また、本発明の吸放湿性建築材料には、前記の必須成分に加えて、下記の材料(以下、「任意材料」と呼ぶこともある)を含有させるようにしてもよい。
まず、ケイ酸質原料としては、ケイ酸(SiO)が含まれている原料をいい、例えば珪石、珪砂、珪藻土、白土、パーライトなどの鉱物微粉末、ホワイトカーボンなどの合成粉末、フライアッシュ、シリカヒュームなどのダストを使用することができる。
【0025】
また、石灰質原料としては、生石灰、生石灰の乾式消化で得られる粉末状の消石灰や、多量の水で生石灰を湿式消化して得られるスラリー状の消石灰(石灰乳)等を使用することができる。
【0026】
加えて、吸放湿性建築材料の構成材料としてセメントを混合することもでき、セメント材料としては、ポルトランドセメントを使用することが好ましく、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、低アルカリ形のポルトランドセメント等のポルトランドセメントが挙げられる。また、このポルトランドセメントに対して、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ質混合材を混合した混合セメントを使用してもよい。なお、セメントを混合する場合にあっては、セメントの水和促進のため、ケイ酸ソーダ等の硬化促進剤を添加するようにしてもよい。
【0027】
また、構成材料としては必要により繊維補強材を添加するようにしてもよく、繊維補強材を添加することにより、建築材料の機械的強度をより優れたものとすることができる。
使用可能な繊維補強材としては、例えば、セルロース繊維、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、ステンレス繊維などを挙げられ、セルロース繊維としては、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)の一種または二種以上を使用してもよい。これらの繊維補強材は、原料成形体全体に対して1〜10質量%程度添加することができ、これら繊維補強材は、所定の混合手段により、硬化前に製造される原料成形体に対して均一に混合、分散するようにすればよい。
【0028】
なお、本発明の吸放湿性建築材料に対しては、本発明の効果を妨げない範囲において、混合物に対して高分子系バインダー、木片、ガラスビーズ等の任意成分を適宜添加するようにしてもよい。
更には、混和材を添加してもよく、例えば、パーライト、樹脂バルーン等の軽量化材など、ケイ酸カルシウムを構成材料とする建築材料に添加する従来公知の混和材を適宜添加することができる。
【0029】
本発明の吸放湿性建築材料を製造するには、前記した必須材料(ケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物及びゼオライト)及び任意材料を水と混合して得た混合物を所定の形状に成形して原料成形体として、この原料成形体を水熱反応を行って硬化させて硬化体とすることが好ましい。
ここで、原料成形体は、次のようにして得ることができる。すなわち、必須材料と任意材料を所定の割合で混合した後、適量の水を添加するようにして混合物とする。この混合物を成形体とする成形方法として、抄造成形、脱水プレス成形、押出成形等の公知の成形方法を用いることができる。
【0030】
成形方法として抄造成形や脱水プレス成形を用いる場合は、構成材料に対して多量の水を混合して、スラリー状とした後、任意の条件により構成材料を成形するようにすればよい。なお、抄造成形や脱水プレス成形を行うに際しては、その成形時において、凝集剤を添加してもよく、このようにして成形時に凝集剤を添加することにより、成形性の向上を図ることができる。
【0031】
成形方法として押出成形の場合は、少量の水とセルロース系の押出助剤を混入して混合攪拌することにより粘土状の混練物として、任意の成形条件により成形するようにすればよい。ここで、押出成形は各原料の比重差による不均一が少ない成形方法であるので、平板はもとより、回り縁、見切縁、窓枠等建築材料としての意匠性に富む成形体の成形を可能とする。
【0032】
次に、この原料成形体を、水熱反応を用いて硬化させて原料成形体を硬化体とするが、この水熱反応は、オートクレーブを用いて実施することができる。水熱反応の条件としては、特に制限はないが、温度を105〜180℃程度として、1〜18時間程度とすればよい。このように、原料成形体に対して水熱反応を行うことにより、原料成形体が効率的に硬化されることとなり、機械的強度が良好な建築材料を得ることができる。
【0033】
そして、水熱反応が行われた硬化体に対しては、必要により乾燥処理を施すことが好ましい。ここで、乾燥処理の条件は、硬化体の含水状態等により適宜決定すればよい。
【0034】
この本発明の吸放湿性建築材料によれば、所定量のケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物及びゼオライトを含有しているので、吸放湿性能を備えた多孔質体であるケイ酸カルシウムを、あらかじめ硬化させた硬化体を粉砕させた粉砕物という状態で、これも吸放湿性能を備えた多孔質体のゼオライトと混合して硬化させているため、吸放湿性能に優れた建築材料となる。
【0035】
すなわち、得られる吸放湿性建築材料は、ケイ酸カルシウム及びゼオライトが有する吸放湿性能に加えて、ケイ酸カルシウム硬化体を粉砕物という形態で配合させるため、種晶を配合したと同様の効果を期待でき、水熱反応におけるケイ酸カルシウム結晶生成を促進することができるため、強固に硬化された吸放湿性建築材料を提供することができる。また、ケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物を使用することにより、見掛けのかさも上がることから、より多くの空気孔を形成できるため、吸放湿性能を高いレベルの状態で維持することができる。
【0036】
更には、本発明の吸放湿性建築材料の構成材料であるケイ酸カルシウムやゼオライトは不燃材料であるため、吸放湿性能とともに、不燃性にも優れた建築材料となる。
そして、本発明の吸放湿性建築材料は、ケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物を配合できることから、建築廃材等のリサイクル材の有効利用が可能であり、環境問題にも効果的に対応することができる。
【0037】
なお、この吸放湿性建築材料は、建築材料全体に対して所定の含有率であるケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物、ゼオライト及び必要により任意材料等を含む混合物を所定の形状に成形して原料成形体とし、この原料成形体を水熱反応を行って硬化させて硬化体とするようにして製造することにより、前記した効果を好適に享受する吸放湿性建築材料を提供することができる。
【0038】
そして、このようにして得られた吸放湿性建築材料は、吸放湿性能が良好であることから、例えば、高気密化された住宅、店舗、図書館、博物館等の建物における壁材や天井材等の構成材として適用可能な建築材料となる。
【0039】
なお、本発明の吸放湿性建築材料にあっては、水熱反応が行われた後の硬化体の表面に対しては、光触媒を塗布して光触媒層を形成するようにしてもよい。
ここで、使用される光触媒としては、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化鉄(Fe)などを使用することができる。また、酸化アンチモン(SnO)、酸化タングステン(WO)などの光触媒機能を有する物質を使用してもよい。
【0040】
そして、これらの光触媒の塗布方法としては、特に制限はなく、スプレーコーティングやロールコーティングなどの従来公知の塗布方法を用いて塗布することができる。
また、このようにして光触媒を塗布したら、必要により、温度を40〜150℃として1〜6時間乾燥させることにより、ケイ酸カルシウム硬化体の表面に対して光触媒層が強固に形成されることとなる。
【0041】
このようにして、水熱反応後における硬化体の表面に対して光触媒を塗布して光触媒層を形成することにより、前記した本発明の吸放湿性建築材料により奏される効果に加えて、得られる建築材料に対して臭気の吸着や分解による脱臭作用や抗菌作用などの機能を好適に付与することができる。
【0042】
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構成や手段等は、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内において、他の構成や手段等としてもよい。
例えば、前記した本発明の吸放湿性建築材料を製造する際における水熱反応にあっては、当該水熱反応の温度内で分解しない樹脂材料、例えば、ポリビニルアルコール等の樹脂材料を本発明の効果を妨げない範囲において添加することもでき、これにより、得られる吸放湿性建築材料の強度の向上を図ることができる。
その他、本発明の実施における具体的な構成や手段等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構成等としてもよい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は実施例の内容に限定されるものではない。
【0044】
[実施例1]
吸放湿性建築材料の製造(1):
下記(1)ないし(3)の手順に従って、板状の吸放湿性建築材料を製造した。
【0045】
(1)ケイ酸カルシウム硬化体粉砕物の製造:
まず、ケイ酸カルシウム硬化体として硬質ケイ酸カルシウム板(プライシリカNAS:神島化学工業(株)、比重 0.8)を、市販の乾式ミル:孔径 1.7mm)を用いて、平均粒径が5〜15μmとなるように粉砕して、ケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物を得た。
【0046】
(2)原料成形体の製造:
(1)で得られたケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物と、建築材料基材であるセメント、ケイ砂、ベントナイト、珪藻土、補強繊維材(有機質繊維、無機質繊維)、及びこれらと水とを表1の構成に従って混合して混合材料とした後、市販のモルタルミキサーを用いて、攪拌数50rpmとして10分間混練して、流動性を帯びた混練物を得た。なお、使用原料の詳細を下記に示した。
【0047】
( 使用原料 )
セメント : 普通ポルトランドセメント
ケイ砂 : SiO含有量 97.8質量%
(ブレーン比表面積 5000cm/g)
珪藻土粉末 : SiO含有量 88.5質量%
(平均粒径 30μm)
ゼオライト : 天然ゼオライト(平均粒径 15μm)
有機質繊維 : 針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)
(繊維長 3.5mm、繊維径 65μm)
無機質繊維 : 耐アルカリ性ガラス繊維
(繊維長 13mm、繊維径 18μm)
【0048】
次に、得られた混練物を、市販の脱水成形機により、サイズが長さ340mm×幅340mm×厚さ10mmに成形し、板状の原料成形体を得た。
【0049】
(3)オートクレーブを用いた水熱反応による成形体の硬化(硬化体の形成):
得られた板状の原料成形体を市販のオートクレーブを用いて、圧力を0.37MPa、温度を140℃として、10時間水熱反応を行って硬化させ、硬化体を得た。更に、この硬化体を120℃で12時間乾燥させることにより、本発明の板状の吸放湿性建築材料を得た。乾燥後の吸放湿生建築材料には、反りやヒビ等の外観異常は見られなかった。
【0050】
[比較例1]
実施例1において、ゼオライトの代わり同量のベントナイトを配合した以外は、実施例1の方法を用いて、板状の吸放湿性建築材料を製造した。乾燥後の吸放湿性建築材料に反りやヒビ等の外観異常は見られなかった。使用原料の詳細を下記に示した。なお、ベントナイトは多孔質体として公知であり、吸放湿性能を備えていることも知られている材料である。
【0051】
( 使用原料 )
セメント : 普通ポルトランドセメント
ケイ砂 : SiO含有量 97.8質量%
(ブレーン比表面積 5000cm/g)
ベントナイト : Ca−ベントナイト(平均粒径 15μm)
珪藻土粉末 : SiO含有量 88.5質量%
(平均粒径 30μm)
有機質繊維 : 針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)
(繊維長 3.5mm、繊維径 65μm)
無機質繊維 : 耐アルカリ性ガラス繊維
(繊維長 13mm、繊維径 18μm)
【0052】
( 原料構成 )
【表1】

【0053】
[試験例1]
前記した実施例1及び比較例1で得られた吸放湿性建築材料について、吸放湿性建築材料としての性能を確認すべく、かさ比重、曲げ強度、吸水率を測定して評価した。なお、これらの測定項目のうち、かさ比重、吸水率については、JIS A5430に準拠した方法により測定した。また、曲げ強度については、JIS A1408に準拠した方法により測定した。結果を表2に示す。
【0054】
( 結 果 )
【表2】

【0055】
表2からわかるように、十分に硬化された実施例1で得られた吸放湿性建築材料は、かさ比重、曲げ強度、吸水率といった特性についても、ゼオライトの代わり同量のベントナイトを配合した従来品である比較例1の吸放湿性建築材料と遜色なかった。従って、ケイ酸カルシウム硬化体の粉砕品とゼオライトを構成材料としても、従来品程度の実用性のある機械的特性を発現することが可能であることが確認できた。
【0056】
[試験例2]
吸放湿性能評価(1):
実施例1及び比較例1で得られた吸放湿性建築材料の吸放湿性能を、建材試験センター規格(JSTM H 6302)に準拠した方法により測定・評価した。
具体的には、板状の吸放湿性建築材料を100mm角に切断したサンプルを、温度 30℃、湿度 53%RHに設定した恒温恒湿器に静置して、所定の質量となるまで養生して、その状態で恒量を測定した(条件1)。
【0057】
次に、恒量後、恒温恒湿器からサンプルを取り出して、表面以外の5面をアルミニウムテープにてシールした後、温度 30℃、湿度 75%RHに設定した恒温恒湿器に24時間保持した(条件2)。
そして、24時間経過後、温度 30℃、湿度 53%RHに設定した恒温恒湿器に24時間保持した(条件3)。この条件1〜条件3を1サイクルとして、経過時間に対する
吸放湿量(測定時のサンプルの重量から恒量を引いた値を1mあたりの値に換算)を確認してプロットしてグラフとした。結果を図1に示す。
【0058】
なお、測定は、条件2の開始時を0として、当該開始時から1時間、2時間、4時間、8時間、24時間経過後に行い、また、条件3の開始時から1時間、2時間、4時間、8時間、24時間経過後(条件2の開始時から25時間、26時間、28時間、32時間、48時間経過後)に行った。
【0059】
図1の結果からわかるように、実施例1及び比較例1の吸放湿性建築材料は、湿度が高い条件2においては好適に吸湿するとともに、湿度が比較的低い条件3においては好適に放湿し、吸放湿性能は良好であった。また、図1からわかるように、多孔質体であるゼオライトを所定量含有する実施例1の吸放湿性建築材料は、ベントナイトを含有する比較例1の吸放湿性建築材料より吸放湿性が優れていた。
【0060】
[実施例2]
光触媒層を形成した吸放湿性建築材料の製造:
実施例1で得られた板状建築材料(硬化体)の表面に光触媒(PAO−115:(株)光触媒研究所製)を、35ml/mとなるようにスプレーコーティングした後、50℃で1時間乾燥して、その表面に光触媒層を形成した実施例2の吸放湿性建築材料を製造した。
【0061】
[試験例3]
吸放湿性能評価(2):
このようにして得られた実施例2の吸放湿性建築材料を、試験例2と同様の方法で吸放湿性能を測定・評価した。結果を図2に示す。
【0062】
前記した図1及び図2の結果を比較すると、表面に光触媒層を形成した実施例2と、光触媒層を形成しない実施例1の吸放湿性能はほとんど相違ないものあった。このことから、本発明の吸放湿性建築材料の表面に光触媒層を形成しても吸放湿性能に影響はないということが確認できた。
【0063】
[試験例4]
光触媒性能の評価(アセトアルデヒドの分解能の確認):
実施例2で得られた、表面に光触媒層を形成した板状建築材料をサイズ100mm×100mmに切断してサンプルとした。このサンプルを1.05リットルのプラスチック製循環容器の中に入れ、容器内にアセトアルデヒドを3μリットル注入した後、光源として15W×5本、及び紫外線強度1.5mW/cmのBL(ブラックライト)を用いて、時間経過に対する容器内のアセトアルデヒドの濃度変化をガスクロマトグラフィーを用いて測定した。結果を図3に示す。
【0064】
図3の結果から分かるように、時間の経過とともに容器内のアセトアルデヒド濃度は低下しており、表面に光触媒層を備えた実施例2の板状建築材料がアセトアルデヒドの分解能を備えていることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の吸放湿性建築材料は、例えば、高気密化された住宅、店舗、図書館、博物館等の建物における壁材や天井材等の構成材として有利に使用することができる吸放湿性建築材料を好適に提供可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】試験例2における経過時間と吸放湿量の関係を示したグラフである。
【図2】試験例3における経過時間と吸放湿量の関係を示したグラフである。
【図3】試験例4における時間経過と容器内のアセトアルデヒドの濃度変化の関係を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物とゼオライトを含有し、
前記ケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物の含有率が全体の1〜50質量%であり、
前記ゼオライトの含有率が全体の1〜50質量%であることを特徴とする吸放湿性建築材料。
【請求項2】
請求項1に記載の吸放湿性建築材料において、
前記ケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物の含有率と前記ゼオライトの含有率の合計が、全体の50質量%以上であることを特徴とする吸放湿性建築材料。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の吸放湿性建築材料において、
前記ケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物と前記ゼオライトの重量比が、粉砕物/ゼオライト=1/6〜6/1であることを特徴とする吸放湿性建築材料。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れかに記載の吸放湿性建築材料において、
表面に光触媒層が形成されていることを特徴とする吸放湿性建築材料。
【請求項5】
含有率を建築材料全体の1〜50質量%としたケイ酸カルシウム硬化体の粉砕物と、含有率を建築材料全体の1〜50質量%としたゼオライトを含む混合物を所定の形状に成形して原料成形体とする工程と、
当該原料成形体を水熱反応を行って硬化させて硬化体とする工程と、
を含むことを特徴とする吸放湿性建築材料の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の吸放湿性建築材料の製造方法において、
前記水熱反応の後、硬化体の表面に対して光触媒を塗布して光触媒層を形成することを特徴とする吸放湿性建築材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−1794(P2006−1794A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180120(P2004−180120)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(390036722)神島化学工業株式会社 (54)
【Fターム(参考)】