説明

吸水処理材及びその保存方法

【課題】本発明は、従来にない作用効果を発揮する画期的な吸水処理材及びその保存方法を提供することを目的とする。
【解決手段】処理対象物Aを吸水処理するためのものであって、吸水性を有する吸水樹脂3と、水1に浮く粒状若しくは粉状の炭材2とを具備するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば排泄物、嘔吐物、食物残渣などの処理対象物を吸水処理するための吸水処理材及びその保存方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特開2011−20912号に開示されるような、事故現場やガソリンスタンドで流出した油を吸着するためのものとして、籾殻炭から成る処理材(以下、従来例)が種々提案されており、これら従来例は、前述したような油に限らず、例えば排泄物や嘔吐物などの水を含んだ物(処理対象物)に対しても広く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−20912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この従来例(籾殻炭)は、処理対象物を吸水処理する場合には非常に多くの量が必要となる為、その保管や持ち運びの際にかさばってしまい、しかも、多量の従来例を用いる為、吸水処理後の従来例(籾殻炭)の廃棄処理が厄介となる場合がある。
【0005】
本発明者は、前述した問題点に着目し、種々の実験・研究を繰り返し行い、その結果、従来にない作用効果を発揮する画期的な吸水処理材及びその保存方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0007】
処理対象物Aを吸水処理するためのものであって、吸水性を有する吸水樹脂3と、水1に浮く粒状若しくは粉状の炭材2とを具備することを特徴とする吸水処理材に係るものである。
【0008】
また、請求項1記載の吸水処理材において、前記吸水樹脂3は粉状若しくは粒状であることを特徴とする吸水処理材に係るものである。
【0009】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の吸水処理材において、前記炭材2として籾殻炭を採用したことを特徴とする吸水処理材に係るものである。
【0010】
また、請求項1〜3いずれか1項に記載の吸水処理材において、親水性を有する炭材を具備することを特徴とする吸水処理材に係るものである。
【0011】
また、請求項1〜4いずれか1項に記載の吸水処理材において、前記吸水樹脂3として抗菌加工した吸水樹脂3を採用したことを特徴とする吸水処理材に係るものである。
【0012】
また、処理対象物Aを吸水処理するためのものであって、吸水性を有する吸水樹脂3と、水1に浮く粒状若しくは粉状の多孔質材2とを具備することを特徴とする吸水処理材に係るものである。
【0013】
また、請求項1〜6いずれか1項に記載の吸水処理材において、この吸水処理材は、通気性のない容体4内に密閉収納されていることを特徴とする吸水処理材に係るものである。
【0014】
また、請求項7記載の吸水処理材において、前記容体4内は、真空処理されていることを特徴とする吸水処理材に係るものである。
【0015】
また、請求項7,8のいずれか1項に記載の吸水処理材において、前記容体4として、帯電防止剤が混入された面状部材若しくは表面が帯電防止剤でコーティングされた面状部材で形成され、帯電防止性を具備する容体4を採用したことを特徴とする吸水処理材に係るものである。
【0016】
また、請求項7〜9いずれか1項に記載の吸水処理材の保存方法であって、前記吸水処理材を収納した前記容体4を他の通気しない収納容体6内に収納した後、前記収納容体6を密閉することを特徴とする吸水処理材の保存方法に係るものである。
【0017】
また、請求項7〜9いずれか1項に記載の吸水処理材の保存方法であって、前記吸水処理材を収納した前記容体4を他の通気しない収納容体6内に収納するとともに該収納容体6内を真空処理した後、前記収納容体6を密閉することを特徴とする吸水処理材の保存方法に係るものである。
【0018】
また、請求項10,11いずれか1項に記載の吸水処理材の保存方法において、脱酸素剤7を前記収納容体6内に収納することを特徴とする吸水処理材の保存方法に係るものである。
【0019】
また、請求項10〜12いずれか1項に記載の吸水処理材の保存方法において、前記収納容体6として透明部材で形成された袋を採用したことを特徴とする吸水処理材の保存方法に係るものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明は上述のように構成したから、前述した従来例と異なり、処理対象物に含まれる水を吸水樹脂により少量で吸水処理できるから、その保管や持ち運びの際にかさばらず、しかも、吸水処理後もかさばることが無いから廃棄処理が簡易に行えることになり、そして更に、水に浮く炭材により、吸水した吸水樹脂の表面は炭材で覆われた状態となり、例えば処理対象物が排泄物(小便)や嘔吐物や食物残渣などの臭いを発するものであった場合には、この炭材により、処理対象物から発せられる臭いは抑制され、且つ、この処理対象物が隠蔽され、外観上も廃棄処理し易くなるなどの効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施例を示す説明斜視図である。
【図2】本実施例の使用状態説明図である。
【図3】本実施例の使用状態説明図である。
【図4】本実施例の使用状態説明図である。
【図5】本実施例の使用状態説明図である。
【図6】本実施例に係る吸水処理材の保存方法を説明する図である。
【図7】試験1の結果を示す図である。
【図8】試験2の結果を示す図である。
【図9】試験3の結果を示す図である。
【図10】試験4の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0023】
本発明に係る吸水処理材を処理対象物Aに例えば、ふりかけると、この処理対象物Aに含まれる水1は吸水樹脂3に吸水されるとともに、この処理対象物Aに含まれる水1に粒状若しくは粉状の炭材2は浮かんで、当該水1を吸水した吸水樹脂3の表面は炭材2で覆われる。
【0024】
従って、処理対象物Aに含まれる水1を、前述した籾殻炭に比して吸水性の良い吸水樹脂3で吸水することになる為、この処理対象物Aに含まれる水1を少量の吸水樹脂3で吸水できるから、その保管や持ち運びの際にかさばらず、しかも、吸水処理後もかさばることが無いから廃棄処理が簡易に行える。
【0025】
また、処理対象物Aに含まれる水1を吸水した吸水樹脂3の表面は炭材2で覆われることになり、よって、仮に処理対象物Aが臭いを発するものであった場合、この処理対象物Aから発せられる臭いは炭材2により抑制され、且つ、この処理対象物Aは炭材2により隠蔽され、外観上も廃棄処理し易くなる。
【0026】
具体的には、処理対象物Aが例えば排泄物(小便)であった場合、この小便Aに本発明に係る吸水処理材をふりかけると、小便Aに含まれる水1は吸水樹脂3に吸水され、小便Aの臭いは吸水樹脂3に保持された状態となる。また、この小便Aに含まれる水1を吸水した吸水樹脂3の表面は該小便Aに含まれる水1に炭材2が浮いて覆われた状態となり、よって、この炭材2が蓋となって小便Aの臭いの飛散が抑制されるとともに、炭材2が持つ臭いを吸着する臭い吸着機能によっても小便Aの臭いの飛散が抑制され、更に、小便Aが炭材2により隠蔽され、外観上も廃棄処理し易い状態となる(見た目の不快感が軽減される)。
【0027】
この他にも、処理対象物Aとしては、例えば水1を含む排泄物としての大便や食物残渣としてのラーメン汁なども処理対象物Aとなり、実際にそれらを処理した際に同様の作用効果が発揮される。
【実施例】
【0028】
本発明の具体的な一実施例について図面に基づいて説明する。
【0029】
本実施例は、処理対象物Aを吸水処理するためのものであって、吸水性を有する吸水樹脂3と、水1に浮く粒状若しくは粉状の炭材2や水1に浮く臭い吸着性能を有する多孔質材とを具備するものである。
【0030】
尚、処理対象物Aとは、例えば飲料水や清涼飲料水や酒類は勿論、排泄物(小便・大便)や嘔吐物や食物残渣(例えばラーメン汁)などの水1(水分)を含むものであり、本実施例に係る吸水処理材で処理し得る処理対象物Aの範囲は多岐にわたるものである。
【0031】
以下、本実施例に係る構成各部について詳細な説明をする。
【0032】
吸水樹脂3は、図1に図示したように粉状であり、水1を吸水保持することでゲル化するものである。尚、吸水樹脂3は粒状のものでも比較的大きな板状であったりブロック状のものでも良い。
【0033】
具体的には、本実施例では、吸水樹脂3として吸水性及び保水性の高い高吸水性樹脂(例えば三洋化成株式会社製のサンフレッシュST−250(登録商標)・ST900E/アクリル酸モノマー含有の樹脂/アクリル酸塩系(アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物)の高吸水性樹脂)を採用しており、その性能は自重の約700倍の吸水量(700g/g)を具備している。尚、本実施例に係る吸水樹脂3の比重は0.63である。
【0034】
また、本実施例では、この吸水樹脂3における後述する容体4に収納する量として、コンパクト化及び軽量化を考慮するのは勿論、成人男性が一回で出す小便の量を250〜500ccと想定した4gとしている。
【0035】
また、この水1を吸水してゲル化した吸水樹脂3は、1.5Lの水で液体状(一粒約2mmの粒子の集合体)に変化することになり、よって、必要に応じてゲル化したものを液体状とすることでトイレに流して廃棄処理することができる。
【0036】
また、実際に本発明者が500ccの水1に対して4gの吸水樹脂3で吸水実験をした際、この吸水樹脂3は約60秒以内でゲル化することを確認している。
【0037】
炭材2は、図1に図示したように籾殻炭(炭化処理した籾殻)であり、通常、その表面にはグラファイトが付着しており、水1に配した際に浮く適宜な撥水性を有する。尚、本実施例に係る炭材2の比重は0.08である。
【0038】
また、炭材2は、含水率20%(重量)以下とすることで秀れた水浮き性能を有する。
【0039】
また、炭材2は、湿気などの水分を吸収する毛管凝縮現象がおきにくい部材、即ち、籾殻炭の表面に形成される細孔は、例えば吸湿剤で使用されるシリカゲルなどに比し、毛管凝縮現象が生じ易い大きさとされる約2〜12μmの細孔の分布が少ない部材である。
【0040】
従って、長期に亙って保管されていた場合であっても、湿気などが存在する環境下においても水分を吸収しにくく、よって、常に最良の水浮き性能を発揮することになる。
【0041】
また、炭材2は、後述する容体4に収納した吸水樹脂3における静電気の帯電を防止する機能を発揮し、しかも、保存時における湿気を吸着することによる能力低下を防止する機能を発揮する。
【0042】
また、炭材2は、容体4に収納する際、吸水樹脂3との容積比にして6:1の割合で混合して収納される。
【0043】
具体的には、前述した吸水樹脂3の4g(6.3cc)に対して炭材2を3.0g(37.6cc)混合して収納している。尚、吸水樹脂3及び炭材2の分量は適宜変更し得るものである。
【0044】
水1に浮く炭材2としては、籾殻炭に限らず、木炭,竹炭,そばがら炭,ヤシがら炭,コーヒー炭,活性炭,その他植物繊維を炭化したものなど、本実施例の特性を発揮するものであれば適宜作用し得るものである。
【0045】
また、前記水1に浮く炭材2の他、水1に浮く多孔質材2も実施可能であり、例えばシリカゲルやゼオライトなどが望ましい。
【0046】
なお、水1に浮きにくい炭材2や多孔質材2であった場合には、水1に浮くよう適宜な撥水処理を行う。
【0047】
また、この水1に浮く撥水性を有する炭材2とともに、容体4内に水1に沈む親水性を有する炭材(籾殻炭)を一緒に収納しても良い。
【0048】
この親水性を有する炭材とは、通常、籾殻を炭化処理した際に籾殻炭の表面に付着するグラファイトの付着を防止することで、前述した撥水性とは逆の親水性を向上する処理を行っている。その吸水量は7.57g/gである。
【0049】
具体的には、炭化処理部で籾殻炭を攪拌しながら無酸素状態若しくは低酸素状態で加熱し、この加熱処理する際、炭化処理部内で発生するガスを該炭化処理部の外へ強制排気して籾殻炭へのグラファイト含有量を低減することで籾殻炭の親水性を向上している。
【0050】
また、親水性を有する炭材2は、界面活性処理することによって親水性を有するようにしても良い。
【0051】
従って、この親水性を有する炭材2は、水1に沈んで内部から臭い吸着機能を発揮し、その他、仮にこの水1が排泄物に含まれる水1であった場合には、この炭材2が内部に混ざることで隠蔽され、外観上も廃棄処理し易い状態となる(見た目の不快感が軽減される)。
【0052】
尚、水1に沈む炭材としては、籾殻炭に限らず、活性炭などでも良く、その他、水1に浮く撥水性を有する炭材2とともに容体4に収納する部材として、シリカゲル若しくはゼオライトなど、本実施例の特性を発揮するものであれば適宜作用し得るものである。
【0053】
前述した本実施例に係る吸水樹脂3及び炭材2は、図1に図示したように通気しない容体4内に混合した状態で収納して密閉することで保存される。
【0054】
この容体4は、図1に図示したように酸素バリア性及び可撓性を有する面状部材(通気性を具備しない合成樹脂製部材)からなるスティック状の袋(例えば株式会社メイワパックス製のバリアナイロン/ポリエチレンからなる袋、ポリエチレンテフタレート/アルミ/ポリエチレンからなる袋)であり、開口部から所定量の炭材2及び吸水樹脂3を収納した後、開口部がシール(熱融着)される。この容体4の開口部を閉塞する際、場合によっては容体4内を真空処理しても良いし、不活性ガスを充填するようにしても良い。
【0055】
また、容体4は帯電防止性を有しており、よって、容体4に吸水樹脂3を収納した際に危惧される帯電を抑制することができる。
【0056】
具体的には、帯電防止性を有する袋の材料としては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂部材(プラスチック)中に帯電防止剤を混合した面状部材が採用される。その他、面状部材の表面に帯電防止剤をコーティング(塗布・積層)したものなども適宜採用される。
【0057】
尚、容体4は袋に限らず箱状体でも良い。
【0058】
また、図6に図示したように吸水処理材を収納した容体4を通気しない収納容体6内に収納した後、この収納容体6を密閉して吸水処理材を保存しても良い。
【0059】
具体的には、図6では、吸水処理材を収納した容体4と脱酸素剤7(例えば三菱ガス化学株式会社製のエージレス(登録商標))を通気しない収納容体6内に収納するとともに該収納容体6内を真空処理した後、収納容体6を密閉している。
【0060】
この収納容体6は、一対の酸素バリア性及び可撓性を有する透明の面状部材(通気性を具備しない合成樹脂製部材)を重合して周縁同士をシールすることで袋状に形成されるものである。尚、本実施例でいう透明とは、内容物を看取し得る半透明も含む。
【0061】
従って、収納容体6が透明故に、収納容体6を開封しなくても収納物、例えば容体4や後述する処理袋5、容体4に印刷された説明書きや、ノベルティを目的とした用紙などが確認でき、更に、この収納容体6に収納されているため収納物の印刷が消えることがない。
【0062】
尚、この収納容体6を閉塞する際、場合によっては脱酸素剤7を収納せず単に密閉するだけでも良いし、収納容体6内を真空処理しても良いし、不活性ガスを充填するようにしても良いし、乾燥剤(例えばAGCエスアイテック株式会社製のヒシビート(商品名))を一緒に収納しても良い。
【0063】
また、本実施例では、収納容体6内に、前述した吸水処理材を収納した容体4と脱酸素剤7の他に、二枚の不透明のビニール製の処理袋5(45L)を折り畳み状態としてセットで収納しており、この処理袋5は、例えば排泄物を処理する袋として利用し、この処理袋8内に配した排泄物を本実施例の吸水処理材で処理することができる。尚、図6に図示した容体4には、吸水樹脂3を8g、炭材2を3.0gを混合して収納している。
【0064】
従って、前述した保存方法により、吸水処理材における長期間の保管が可能となり、常に最良の使用状態が得られることになり、しかも、非常時(災害時や野外活動時)における排泄物の処理が簡易且つ確実に行えることになる。
【0065】
以上の構成からなる本実施例に係る吸水処理材を用いた処理対象物Aの吸水処理作業について説明する。尚、下記の2つの吸水処理作業は、アウトドア活動時や災害時における簡易トイレとしての使用例である。
【0066】
図2は、処理対象物Aとしての小便及び大便が混ざった状態のものを処理する場合であり、この処理対象物A(小便及び大便)の入った処理袋5に、容体4を破って吸水処理材(吸水樹脂3及び炭材2)を入れて軽くかき混ぜると、この処理対象物A(小便及び大便)に含まれる水1は吸水樹脂3で吸水され、粉状の吸水樹脂3はゲル化し、一方、この処理対象物A(小便及び大便)に含まれる水1に炭材2は浮くことで、当該水1を吸水した吸水樹脂3の表面(処理対象物Aの表面)は炭材2で覆われる(図3参照)。
【0067】
また、図4は、処理対象物Aとしての大便を処理する場合であり、この処理対象物A(大便)が入った処理袋5に容体4を破って吸水処理材(吸水樹脂3及び炭材2)をふりかけると、この処理対象物A(大便)に含まれる水1(水分)は吸水樹脂3で吸水され、粉状の吸水樹脂3はゲル化して層状となり、一方、この処理対象物A(大便)に含まれる水1に炭材2は浮くことで、当該水1を吸水した層状の吸水樹脂3の表面(処理対象物Aの表面)は炭材2で覆われる(図5参照)。
【0068】
本発明者は、前述した2つの吸水処理作業において処理した処理対象物Aの臭いを嗅いだところ、処理対象物Aから発せられる臭いの飛散は抑制されていることが確認できた。
【0069】
処理対象物Aから周囲に臭いが飛散するメカニズムとしては、処理対象物Aに含まれる水1(水分)が蒸発して周囲に飛散する際、この蒸発した水1に臭い成分が含有されて一緒となって周囲に飛散することによるものであるが、本実施例に係る吸水処理材で処理された処理対象物Aから発せられる臭いの飛散が抑制されるのは、この臭い成分を含有した蒸発した水1を、吸水樹脂3の表面を覆う炭材2が蓋となって外部に出ることをブロックするとともに、炭材2の臭い吸着機能により炭材2の中に吸い込むからである。
【0070】
本実施例は上述のように構成したから、前述した従来例と異なり、処理対象物Aに含まれる水1を吸水樹脂3により少量で吸水処理できるから、その保管や持ち運びの際にかさばらず、しかも、吸水処理後もかさばることが無いから廃棄処理が簡易に行えることになり、そして更に、水1に浮く炭材2により、吸水した吸水樹脂3の表面は炭材2で覆われた状態となり、例えば処理対象物Aが排泄物(小便)や嘔吐物や食物残渣などの臭いを発するものであった場合には、この炭材2により、処理対象物Aから発せられる臭いは抑制され、且つ、この処理対象物Aが隠蔽され、外観上も廃棄処理し易くなるなどの効果が得られる。
【0071】
また、本実施例は、吸水樹脂3は粉状(若しくは粒状)であるから、表面積が広い故に処理対象物Aに含まれる水1を良好に吸水して秀れた吸水機能を発揮することになる。
【0072】
また、本実施例は、炭材2として籾殻炭を採用したから、コスト安にして量産性に秀れることになり、しかも、良好な臭い吸着機能を発揮することになる。
【0073】
また、本実施例は、吸水処理材を通気性のない容体4内に密閉されているから、常に良好な機能を発揮する保管状態が得られることになる。
【0074】
また、本実施例は、容体4として帯電防止性を具備する容体4を採用したから、容体4内に収納する吸水樹脂3が帯電することなく良好な保管状態が得られることになる。
【0075】
また、本実施例は、吸水処理材を収納した容体4を通気しない収納容体6内に収納するとともに該収納容体6内を真空処理した後、収納容体6を密閉するで吸水処理材を保存するから、吸水処理材における長期間の保管が可能となり、常に最良の使用状態が得られることになる。
【0076】
次に、本実施例の吸水処理材に関する試験(試験1,試験2,試験3及び試験4)を行った。
【0077】
試験1は、アンモニアガスに対する臭い吸着性能評価試験である。
【0078】
<試験1>
試験方法としては、5%アンモニア水0.1mlを滴下したろ紙をデシケーター内に入れ、その後、臭い吸着性能を有する多孔質材(ゼオライト、ヤシ殻活性炭、石炭系活性炭、親水性籾殻炭、撥水性籾殻炭)夫々をデシケーター内に入れ、一定時間経過後のデシケーター内のアンモニアガス濃度を測定した。尚、各多孔質材の重量は、撥水性籾殻炭1.0gを基準として目視で同程度の体積(約15cm)となるような重量としている。
【0079】
その結果は図7の表に示した通りである。尚、表中の0分値のアンモニアガス濃度の数値は、デシケーター内に多孔質材を入れる直前にアンモニア水を滴下したろ紙のみをデシケーター内に1時間以上放置した後に測定したアンモニアガス濃度の数値である。
【0080】
即ち、この試験1で使用した多孔質材は、いずれも時間が経過するに従いアンモニアガス濃度の数値が下がっており、臭い吸着効果が確認された。
【0081】
試験2及び試験3は、アンモニア水に対する臭い吸着性能評価試験である。
【0082】
<試験2>
試験方法としては、臭い吸着性能を有する多孔質材(ゼオライト、ヤシ殻活性炭、撥水性籾殻炭)夫々を、0.5%アンモニア水200mlが入ったビーカー内に入れて混合し、これをデシケーター内に入れ、一定時間経過後のデシケーター内のアンモニアガス濃度を測定した。尚、各多孔質材の重量は、撥水性籾殻炭1.0gを基準として目視で同程度の体積(約15cm)となるような重量としている。
【0083】
その結果は図8の表に示した通りである。尚、表中の0分値のアンモニアガス濃度の数値は、多孔質材を混合する直前に、アンモニア水のみを入れたビーカーをデシケーター内に2時間以上放置した後に測定したアンモニアガス濃度の数値である。
【0084】
即ち、アンモニア水にゼオライト及びヤシ殻活性炭を混合した場合、アンモニアガス濃度の数値は、終始ほとんど変わらなかった。
【0085】
また、アンモニア水に撥水性籾殻炭を混合した場合、アンモニアガス濃度の数値は、0分から60分後までの間において下がったが、60分後から120分後までの間において上昇して元に戻った。
【0086】
これは、ゼオライト及びヤシ殻活性炭は、アンモニア水の中に直ちに沈んでしまい、終始その臭い吸着性能が発揮されず、一方、撥水性籾殻炭は、アンモニア水に浮いて臭い吸着性能を発揮したが、約60分後には全て水中に沈んでしまい、その後は臭い吸着効果が得られなかったからである。
【0087】
<試験3>
試験方法としては、吸水樹脂(2.0g)と、臭い吸着性能を有する多孔質材(ゼオライト、ヤシ殻活性炭、石炭系活性炭、親水性籾殻炭、撥水性籾殻炭)夫々を混合し、これを0.5%アンモニア水200mlが入ったビーカー内に入れて混合し、これをデシケーター内に入れ、一定時間経過後のデシケーター内のアンモニアガス濃度を測定した。尚、各多孔質材の重量は、撥水性籾殻炭1.0gを基準として目視で同程度の体積(約15cm)となるような重量としており、親水性籾殻炭(1.0g、4.0g)は、親水性籾殻炭の量を変えた場合の変化を確認するためのものである。
【0088】
その結果は図9の表に示した通りである。尚、表中の0分値のアンモニアガス濃度の数値は、吸水樹脂と多孔質材を混合する直前に、アンモニア水のみを入れたビーカーをデシケーター内に2時間以上放置した後に測定したアンモニアガス濃度の数値である。また、吸水樹脂を入れると吸水してゲル化するまで約1分かかるが、この間のアンモニアの放出濃度を把握するため、吸水樹脂を入れてから2分後のアンモニアガス濃度も測定している。
【0089】
即ち、吸水樹脂のみの場合、ゲル化した後に徐々にアンモニアガス濃度の数値が高くなっている。
【0090】
また、吸水樹脂とゼオライト,ヤシ殻活性炭若しくは石炭系活性炭を混合した場合、前述した吸水樹脂のみの場合と同様、吸水樹脂がゲル化した後に徐々にアンモニアガス濃度の数値が高くなっている。
【0091】
また、吸水樹脂と親水性籾殻炭を混合した場合、前述した吸水樹脂のみの場合と同様、吸水樹脂がゲル化した後に徐々にアンモニアガス濃度の数値が高くなっている。
【0092】
また、吸水樹脂と撥水性籾殻炭を混合した場合、吸水樹脂がゲル化した後の120分後もアンモニアガス濃度の数値が低く抑えられている。
【0093】
ここで、親水性籾殻炭が撥水性籾殻炭と異なる結果となった点について述べると、親水性籾殻炭においても、後述する撥水性籾殻炭と同様に、アンモニア水に投入した後に水面に浮いて蓋のような状態となるが、この親水性籾殻炭は吸水樹脂がゲル化するよりも先にアンモニア水を吸水しており、このアンモニア水を吸って表面に蓋のような状態となっている親水性籾殻炭からアンモニアガスが放出されているからである。これは親水性籾殻炭の量を増加させても(蓋の層を厚くしても)変化がない。
【0094】
この点、撥水性籾殻炭は、アンモニア水に投入した後に水面に浮いて蓋のような状態となるが、親水性籾殻炭に比して吸水性が低く、よって、撥水性籾殻炭による吸水が行われる前に吸水樹脂のゲル化が先に行われ、蓋のような状態となっている撥水性籾殻炭からアンモニアガスが放出される量は極めて少ない。また、撥水性籾殻炭は、アンモニア水に瞬時に浮き易く、吸水樹脂がゲル化する前に水面に浮いて効率よく蓋を形成し易いことからもアンモニアガスの放出を抑えられるものと考える。
【0095】
以上の試験1〜3の結果から、吸水樹脂と多孔質材とを具備した吸水処理材は水分を含有した処理対象物Aの処理に適しており、特に、吸水樹脂と水に浮く多孔質材(例えば撥水性籾殻炭)とを具備した吸水処理材が有用であることが確認できた。
【0096】
試験4は、抗菌加工した吸水樹脂の有用性の評価試験である。
【0097】
<試験4>
試験方法としては、滅菌カップに抗菌加工してない吸水樹脂及び抗菌加工した吸水樹脂を夫々1g採取し、この夫々に約10に調整した菌液(大腸菌)50mlを加えて撹拌して試験品1及び試験品2とする。これとは別に菌液のみ50mlを滅菌カップに入れてブランクとする。
【0098】
この調整した試験品1,試験品2及びブランクを25℃のインキュベーターにて保存し、初発(調整直後)、60分後、1440分(24時間)後に菌数を測定した。尚、初発の菌数は調整直後のブランクの菌数を適用した。
【0099】
その結果は図10の表に示した通りであり、試験品2(抗菌加工した吸水樹脂)における菌数がその他に比し明らかに激減している。
【0100】
以上の試験4の結果から、吸水処理材を構成する吸水樹脂として抗菌加工した吸水樹脂が有用であることが確認できた。
【0101】
そこで、本実施例では、前述した吸水樹脂3として抗菌加工した吸水樹脂を採用しており、樹脂表面にカチオン性界面活性剤が噴霧されている。
【0102】
尚、カチオン性界面活性剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化デカリニウムなどである。
【0103】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0104】
A 処理対象物
1 水
2 炭材・多孔質材
3 吸水樹脂
4 容体
6 収納容体
7 脱酸素剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物を吸水処理するためのものであって、吸水性を有する吸水樹脂と、水に浮く粒状若しくは粉状の炭材とを具備することを特徴とする吸水処理材。
【請求項2】
請求項1記載の吸水処理材において、前記吸水樹脂は粉状若しくは粒状であることを特徴とする吸水処理材。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の吸水処理材において、前記炭材として籾殻炭を採用したことを特徴とする吸水処理材。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載の吸水処理材において、親水性を有する炭材を具備することを特徴とする吸水処理材。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項に記載の吸水処理材において、前記吸水樹脂として抗菌加工した吸水樹脂を採用したことを特徴とする吸水処理材。
【請求項6】
処理対象物を吸水処理するためのものであって、吸水性を有する吸水樹脂と、水に浮く粒状若しくは粉状の多孔質材とを具備することを特徴とする吸水処理材。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項に記載の吸水処理材において、この吸水処理材は、通気性のない容体内に密閉収納されていることを特徴とする吸水処理材。
【請求項8】
請求項7記載の吸水処理材において、前記容体内は、真空処理されていることを特徴とする吸水処理材。
【請求項9】
請求項7,8のいずれか1項に記載の吸水処理材において、前記容体として、帯電防止剤が混入された面状部材若しくは表面が帯電防止剤でコーティングされた面状部材で形成され、帯電防止性を具備する容体を採用したことを特徴とする吸水処理材。
【請求項10】
請求項7〜9いずれか1項に記載の吸水処理材の保存方法であって、前記吸水処理材を収納した前記容体を他の通気しない収納容体内に収納した後、前記収納容体を密閉することを特徴とする吸水処理材の保存方法。
【請求項11】
請求項7〜9いずれか1項に記載の吸水処理材の保存方法であって、前記吸水処理材を収納した前記容体を他の通気しない収納容体内に収納するとともに該収納容体内を真空処理した後、前記収納容体を密閉することを特徴とする吸水処理材の保存方法。
【請求項12】
請求項10,11いずれか1項に記載の吸水処理材の保存方法において、脱酸素剤を前記収納容体内に収納することを特徴とする吸水処理材の保存方法。
【請求項13】
請求項10〜12いずれか1項に記載の吸水処理材の保存方法において、前記収納容体として透明部材で形成された袋を採用したことを特徴とする吸水処理材の保存方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−74875(P2013−74875A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−40129(P2012−40129)
【出願日】平成24年2月27日(2012.2.27)
【出願人】(593013317)進展工業株式会社 (16)
【Fターム(参考)】