説明

吸水剤の製法

【課題】優れたゲル特性を有し、紙おむつ等の衛生材料の吸水体に使用された場合、優れた性能を示す吸水剤およびその製法を提供する。また、高い液体保持能力を有して、かつゲル強度が高い吸水性樹脂であって、通液性を向上させるために用いる液透過性向上剤の使用量を低減した、安全でかつ高い通液性を有する吸水剤を提供する。
【解決手段】本発明の吸水剤の製法は、吸水性樹脂のゲル層膨潤圧(SPGL(B))が3.5kPa以上であり、かつJIS 標準篩で測定される粒度分布が、850μm未満で106μm以上の粒子が全体の95〜100重量%、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸水剤およびその製法に関するものである。さらに詳しくは、紙おむつや生理用ナプキン、いわゆる失禁パット等の衛生材料に好適に用いることのできる吸水剤およびその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、紙オムツや生理用ナプキン、いわゆる失禁パット等の衛生材料には、その構成材として、体液を吸収させることを目的とした吸水性樹脂およびパルプ等の親水性繊維が幅広く使用されている。
【0003】
上記の吸水性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、澱粉−アクリル酸グラフト重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、及びカチオン性モノマーの架橋重合体等が主原料として用いられている。
【0004】
これらの一般的な吸水性樹脂は、高い吸収倍率を有する場合、膨潤ゲルの耐尿性、耐久性、経時安定性が悪くなる。このため、時間が経つと膨潤ゲルがべとついたり、液状化するといった問題を抱えていた。これらの問題を解決するために、膨潤ゲルの耐久性、または、経時安定性を改良する手法が提案されている。
【0005】
上記手法としては、例えば、水溶性エチレン性不飽和単量体を架橋剤および水溶性連鎖移動剤の存在下に逆相懸濁重合させる製法(特許文献1)、アクリル酸およびそのアルカリ金属塩を主成分とする水溶性モノマーを重合させて高吸水性ポリマーを製造するに際して、重合時に次亜燐酸化合物を共存させる製法(特許文献2)、水溶性エチレン性不飽和単量体を架橋剤および水溶性連鎖移動剤の存在下に水溶液重合させる製法(特許文献3)、酸基又はその塩を有する水溶性ラジカル重合性単量体を水存在下、架橋剤を用い、ラジカル重合性二重結合を有するチオール化合物を重合成分として用いて重合する吸水剤の製法(特許文献4)、アクリル酸および/またはそのアルカリ金属塩を主成分とする親水性不飽和単量体を、内部架橋剤、および亜燐酸および/またはその塩の存在下で水溶液重合させた吸水性樹脂を表面処理する製法(特許文献5)等が知られている。
【0006】
上述の方法では、重合時に連鎖移動剤を使用することで、ゲルの内部構造を変化させ、膨潤ゲルの耐久性、ゲルの経時安定性、耐尿性などを向上させている。しかしながら、これらの技術は高い吸収倍率を有するゲルが持つ、耐久性・耐尿性の弱さや経時安定性の悪さを改良することを課題としており、これらの技術で得られる吸水性樹脂(または吸水剤)は十分なゲルの特性を有しているものではなかった。そのため、これらの吸水性樹脂が紙おむつなどの吸水体などに使用された場合、性能面で改善の余地があった。
【0007】
また、近年これら紙おむつや生理用ナプキン等における衛生材料一枚あたりの吸水性樹脂の使用量や、吸水性樹脂と親水性繊維等からなる吸収体全体に対する吸水性樹脂の重量%が増加する傾向にある。つまり、嵩比重の小さい親水性繊維(パルプ)を少なくし、吸水性に優れ、かつ、嵩比重の大きい吸水性樹脂を多く使用することにより、吸収体における吸水性樹脂の比率を高めている。これにより、吸水量を低下させることなく衛生材料の薄型化を図っている。その結果、パルプ等の親水性繊維に代わって、吸水性樹脂は液体の輸送および分配に関する機能を荷うことも必要となり、これらの機能はひと口で液透過特性と表現することができる。
【0008】
粒子状の吸水性樹脂の場合、透過性は添加された液体を粒子内ないし粒子間で輸送して、その膨潤状態の中に三次元的に分配する能力として理解されている。膨潤した吸水性樹脂のゲルでは、このプロセスはゲル粒子間の隙間を通っての毛管現象による輸送を介して生じる。また、膨潤した吸水性樹脂を通過する際の、実際の液体輸送は拡散の法則に従ったものであり、衛生用品が使用されている条件においては、液体の分配に何ら役に立たないほど著しく遅いプロセスである。一方、ゲルの安定性が欠如するために毛管輸送のできない吸水性樹脂では、これらの材料を繊維のマトリックスに植え付けることによって粒子間の相互分離を確保し、ゲルのブロッキング現象を回避してきた。新世代のおむつの構造では、吸水性樹脂層は液体輸送をサポートするための繊維材料を少量しか使用していないか、または全く使用していない。従って、そこに使用される吸水性樹脂は、膨潤状態において充分に高い安定性をもたなければならず、そうであると膨潤ゲルは毛管空隙を充分な量で有して液体輸送が可能となる。
【0009】
一般的に、膨潤状態での高いゲル強度を有する吸水性樹脂を得るためには、ポリマーの架橋レベルを上げることで可能となる。しかしながら、これは、不可避的に膨潤容量および保持能力の損失を招くという結果につながる。また、特許文献6には、低中和率(5〜30モル%)での酸型重合の後、後中和してなる表面架橋された吸水性樹脂においてゲルの膨潤圧力を改善する方法が示されている。しかしながら、この方法では、酸性の強いポリマーを取り扱う上での安全性や工程が複雑になるなど、工業的な生産は困難である。また、吸水性樹脂だけでできた層をおむつ構造に取り入れることが可能になるレベルまでの液体の透過性は不十分である。
【0010】
また、高いゲル強度を有する吸水性樹脂を得るために、表面処理を施すことがよく知られている。これは、吸水性樹脂表面のポリマー分子のカルボキシル基と反応することができる種々の表面架橋剤や特定のポリマーを用いて処理することにより、ゲル強度が高く、圧力下での液体吸収能力が高い吸水性樹脂を得ようとするものである。これによりゲルブロッキング現象が抑制される。
【0011】
これら表面処理によって、吸水性樹脂の表面を改質し、液透過性および拡散性を向上させる試みが種々なされている。例えば、特定の金属イオンで架橋した吸水性樹脂を用いる方法(特許文献7、特許文献8)、有機溶剤中のポリアミンおよびポリイミンで吸水性樹脂を改質する方法(特許文献9)、吸水性樹脂をポリオールと水溶液状態のカチオンを含む表面処理剤で表面処理する方法(特許文献10)、ポリオールを除く有機架橋化合物と水溶液状態のカチオンを含む表面処理剤とで吸水性樹脂を表面処理する方法(特許文献10)などが知られている。これら公知の方法によりゲルブロッキングを防止することができる。しかしながら、これら公知の方法にて表面処理を行った場合、吸水性樹脂含有量の多いおむつ中での液透過特性、特に0.69重量%食塩水流れ誘導性(Saline Flow Conductivity:以下SFCと記す)は、必ずしも十分なレベルではない。また、表面架橋によるゲル強度の向上は粒子の表面近傍の架橋密度を上げているためであり、表面架橋が及ばない粒子内部の本質的なゲル強度が改善されているとは言えない。
【0012】
特に、吸水性樹脂に無機化合物などを添加して、吸水性樹脂粉体の取り扱い性や保存性、或いは吸水性能を改善する試みは既に良く知られている。例えば、硫酸アルミなどの多価金属塩を吸水性樹脂とドライブレンドし、ついで結合剤(水など)と接触させて、弾性があってゲルブロッキングを起こし難い吸水性樹脂を製造する方法(特許文献11)、吸水性樹脂と透過性保持剤(シリカ、アルミナ、チタニア、クレー、乳化重合物、沈殿重合物など)をVortex Mixerで混合後、Osterizer blenderなどで機械的ストレスをかける方
法(特許文献12)、特定のゲル強度を有する表面架橋された吸水性樹脂に立体的或いは静電的スペーサーでコートする方法(特許文献13)、高吸水性樹脂と少なくとも一部に−M1−O−M2−結合を有する2種類の金属M1、M2を含む含水酸化物の集合体からなる微粉末を含む高吸水性樹脂組成物(特許文献14)などが知られている。
【0013】
これら公知の方法により、ゲルブロッキングを防止することができる。しかしながら、おむつ中での液拡散性能、特にSFCにおいて必ずしも十分なレベルではなく、また十分であったとしてもSFCを向上させるために必要な有機、無機粒子などの液透過性向上剤の使用量は非常に多くなる。このため、かかる吸水剤の製造およびおむつの製造ラインでの粉立ちやフィルターの詰まり等のダスト問題が発生し、安全性およびコスト面からも改善の余地が残される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平2−255804号公報(平成2年10月16日公開)
【特許文献2】特開平2−300210号公報(平成2年12月12日公開)
【特許文献3】特開平3−179008号公報(平成3年8月5日公開)
【特許文献4】特開平9−77832号公報(平成9年3月25日公開)
【特許文献5】特開平9−124710号公報(平成9年5月13日公開)
【特許文献6】米国登録6403700号公報(平成13年6月11日登録)
【特許文献7】特表2002−513043号公報(平成14年5月8日公表)
【特許文献8】特表2002−513059号公報(平成14年5月8日公表)
【特許文献9】国際公開95/22356号パンフレット(平成7年8月24日公開)
【特許文献10】国際公開00/53644号パンフレット(平成12年9月14日公開)
【特許文献11】国際公開98/48857号パンフレット(平成10年11月5日公開)
【特許文献12】国際公開01/66056号パンフレット(平成13年9月13日公開)
【特許文献13】米国公開2002/0128618号明細書(平成14年9月12日公開)
【特許文献14】特開平10−147724号公報(平成10年6月2日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明の目的は、上述した問題点を解決し、優れたゲル特性(すなわち特定の粒度分布、特定の0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)、特定の0.9重量%食塩水の加圧下吸収倍率(AAPs)、特定の化学架橋指数または加圧下化学架橋指数)を有し、紙おむつ等の衛生材料の吸水体に使用された場合、優れた性能を示す吸水剤およびその製法を提供することにある。
【0016】
また、本発明の他の目的は、上述した問題を解決し、吸水性樹脂含有量の多い薄型の衛生材料・吸収性物品に用いられるのに適した、高い吸収倍率を有し、かつ本質的なゲル安定性が高く、より高い液透過特性を有し、かつ安全性に優れた吸水剤及びその製法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の粒度分布、特定のCRCs、特定のAAPs、そして特定の化学架橋指数(または加圧下化学架橋指数)を有することで、従来にない優れたゲル特性を有し、紙おむつ等の衛生材料の吸水体に使用された場合、優れた性能を示す吸水剤を見出した。
【0018】
また、本発明者らは、上記目的を解決すべく鋭意検討した結果、特定量の内部架橋剤および特定量の水溶性連鎖移動剤存在下に重合して得られた吸水性樹脂を、特定の粒度分布とし、特定の吸収倍率まで表面処理を行うことで、従来にない優れたゲル特性を有し、紙おむつ等の衛生材料の吸水体に使用された場合、優れた性能を示す吸水剤が得られることを見出した。
【0019】
また、同時に本発明の優れたゲル特性を有する吸水剤は通液性向上剤を含むことで、従来にない優れた通液・拡散性を有することも見出した。
【0020】
また、前記他の目的を解決するため本発明者らは鋭意検討した結果、特定の重合法により従来の重合法では不可能であった架橋レベルを上げてかつ、高い吸収倍率を有し、かつゲル層の膨潤圧力の高い吸水性樹脂が得られることを見出した。
【0021】
さらに驚くべきことに本発明の製造方法により得られる後述する測定法によって規定されるゲル層膨潤圧の値が優れて、かつ特定の粒度分布に制御された、吸水性樹脂の表面を架橋してなる吸水樹脂粒子において液透過性向上剤を加えると、従来の重合方法で得られた吸水性樹脂と比較して、より高いSFCが得られることを見出した。これは同時にシリカ等の無機微粒子などを含む液透過性向上剤の使用量を低減できることを意味する。
【0022】
すなわち本発明にかかる吸水剤の製造方法は、下記(1)及び(2)によって達成される。
(1)アクリル酸および/またはその塩を主成分とする単量体を架橋重合して得られた吸水性樹脂をさらに表面架橋した吸水性樹脂粒子を主成分とする吸水剤の製造方法であって、前記吸水性樹脂のゲル層膨潤圧(SPGL(B))が3.50(kPa)以上であり、かつJIS標準篩で測定される粒度分布が、850μm未満で106μm以上の粒子が全体の95〜100重量%、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45、であることを特徴とする吸水剤の製造方法。
(2)アクリル酸および/またはその塩を主成分とする単量体を架橋重合して得られた吸水性樹脂をさらに表面架橋した吸水性樹脂粒子を主成分とする吸水剤の製造方法であって、該吸水性樹脂のゲル層膨潤圧(SPGL(B))が3.50(kPa)以上であり、かつ該吸水性樹脂を0.69重量%食塩水流れ誘導性(SFC)が40(10-7・cm3・s・g-1)以上まで表面架橋した後に、さらに液透過性向上剤を混合する吸水剤の製造方法。
【0023】
以上のように、本発明ではゲル層膨潤圧の高い吸水性樹脂を得ることと、それらゲル層膨潤圧の高い吸水性樹脂を表面架橋した後、液透過性向上剤を含むことを特徴とする。
【0024】
本発明におけるゲル層膨潤圧の測定は、表面架橋される前の吸水性樹脂に対して、一定容量に保たれたゲル層がさらに膨潤する際の力を測定するものである。吸水性樹脂含有量の高い薄型おむつに用いられる吸水性樹脂としては、吸水性樹脂表面を架橋することによってゲル強度の改善および表面の改質を促して、ゲルの安定性を付与し、おむつでの高い液透過特性を得ようとしているが、本質的に重要であるのは、表面架橋される前の吸水性樹脂における膨潤状態での安定性である。本発明で用いるゲル層膨潤圧の測定においてはゲル層自体が持つ膨潤時のゲルの安定性を示している。この値が従来よりも優れる本発明の吸水性樹脂を表面架橋して後、液透過性向上剤含んだ吸水剤を用いることで吸水剤の使用量が増加している薄型おむつに対して求められる、高い液透過特性が達成される。
【0025】
本実施形態のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本実施形態の利益は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであろう。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、優れたゲル特性を有し、紙おむつ等の衛生材料の吸水体に使用された場合、優れた性能を示す吸水剤を提供することができるという効果を奏する。また、本発明によると、優れたゲル特性を有し、紙おむつ等の衛生材料の吸水体に使用された場合、優れた性能を示す吸水剤の製法を提供することができるという効果を奏する。
【0027】
本発明の製法により得られた吸水剤は、おむつなどの吸水体に使用された場合、膨潤ゲルの安定性が高く、かつ液拡散性に優れるため、液の取り込みが早く、吸水体表層の液の残存量が少ない非常に優れた吸水体が得られる。また、本発明の製法により得られた吸水剤は、所望の液拡散性を得るために使用する無機粒子などの液透過性向上剤の使用量を低減でき、かかる吸水剤の製造およびおむつの製造ラインでの粉立ちやフィルターの詰まりなどのダスト問題を解消し、さらには消費者にとってより安全な吸収剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】0.69重量%食塩水流れ誘導性(SFC)の測定に用いる測定装置の概略を示す断面図である。
【図2】毛管吸収倍率(CSF)の測定に用いる測定装置の概略を示す断面図である。
【図3】図0.9重量%食塩水の加圧下吸収倍率(AAPs)を測定するための装置の概略を示す断面図である。
【図4】ゲル層膨潤圧(A)の測定に用いる測定装置の概略を示す断面図である。
【図5】測定した吸水性樹脂のゲル層膨潤圧(A)とCRCsとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(実施の形態1)
まず、本発明で使用する略語について定義する。
CRCs(Centrifuge Retention Capacity saline/CRCs)は、0.9重量%食塩水の吸収倍率のことを示す。
CRCdw(Centrifuge Retention Capacity deionized water/CRCdw)は、純水の吸収倍率のことを示す。
AAPs(Absorbency Against Pressure saline/AAPs)は、0.9重量%食塩水の加圧下吸収倍率のことを示す。
AAPdw(Absorbency Against Pressure deionized water/AAPdw)は、純水の加圧下吸収倍率のことを示す。
SFC(Saline Flow Conductivity/SFC)は、0.69重量%食塩水流れ誘導性のことを示す。
CSF(Capillary Suction Force/CSF)は、毛管吸収倍率のことを示す。
D50は、重量平均粒子径のことを示す。
σζは、粒度分布の対数標準偏差のことを示す。
これらの測定方法については、後段の実施例にて詳述する。
食塩水は、塩化ナトリウム水溶液を示す。
本発明では重量と質量は同様の意味として使用し、文中での使用は重量に統一する。
【0030】
以下、本発明について詳しく説明する。なお、本発明の吸水剤とは吸水性樹脂粒子または吸水性樹脂粒子を主成分とする組成物であり、好ましくは吸水性樹脂粒子を90〜100重量%含み、さらに好ましくは95〜100重量%含む粒子状の組成物で、紙おむつ、生理用ナプキン、いわゆる失禁パット等の衛生材料に好適に用いられる。
【0031】
本発明にかかる吸水剤は、ある特定のゲル特性を有する吸水性樹脂粒子である。本発明にかかる吸水剤は、必要に応じて、該吸水性樹脂粒子が通液性向上剤を含むものである。
【0032】
本発明にかかる吸水剤の製法は、ある特定の吸水性樹脂を合成し、この吸水性樹脂を特定の粒度分布とし、さらに特定の表面処理剤で表面処理する製法である。また、本発明にかかる吸水剤は、必要に応じて、通液性向上剤を添加する製法である。
【0033】
(1)吸水性樹脂粒子の製法
(1−1)単量体(A)
本発明で用いる単量体(A)は、アクリル酸および/またはその塩を主成分として含有してなっている。上記単量体(A)中におけるアクリル酸および/またはその塩の含有率は、吸水剤の吸収特性およびゲル特性をさらに向上させるために、70〜100モル%であるのが好ましく、80〜100モル%であるのがより好ましく、90〜100モル%であるのが最も好ましい。
【0034】
上記アクリル酸塩としては、アクリル酸のナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩及びアミン塩等を例示することができる。好ましくは、ナトリウム塩が用いられる。上記単量体(A)は、その構成単位としてアクリル酸0〜50モル%およびアクリル酸塩100〜50モル%(但し、両者の合計量は100モル%以下とする)の範囲にあるものが好ましく、アクリル酸10〜40モル%およびアクリル酸塩90〜60モル%(但し、両者の合計量は100モル%以下とする)の範囲にあるものがより好ましい。なお、この酸と塩とのモル比を中和率と呼ぶ。例えばアクリル酸30モル%とアクリル酸塩70モル%からなる単量体の中和率は70%である。上記塩を形成させるためのカルボキシル基の中和は重合前に単量体の状態で行っても良いし、あるいは重合途中や重合後に重合体の状態で行っても良いし、それらを併用してもよいが、好ましくは、中和は重合前に単量体の状態で行われる。なお、使用するアクリル酸については、従来公知のものを使用することができる。例えば、米国特許公開第2001−0016668号、米国特許公開第5817865号、米国特許第6596901号などに記載されている。
【0035】
本発明で用いる吸水性樹脂を得るための単量体(A)は、必要に応じて上記アクリル酸(塩)以外の単量体を含有していてもよい。アクリル酸(塩)以外の単量体としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、アリルトルエンスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸等のアニオン性不飽和単量体及びその塩;メルカプタン基含有不飽和単量体;フェノール性水酸基含有不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン、N−ビニルアセトアミド等のノニオン性の親水基含有不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、及びこれらの四級塩等のカチオン性不飽和単量体等が挙げられる。これら単量体は、単独で用いてもよく、適宜2種類以上を混合して用いてもよい。得られる吸水性樹脂の性能やコストの点から、アクリル酸および/またはその塩(例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、アンモニウム、アミン類等の塩、中でもコスト面からナトリウム塩が好ましい)を主成分として用いることが必要である。
【0036】
本発明において、アクリル酸(塩)以外の単量体を用いる場合には、該アクリル酸(塩)以外の単量体は、単量体(A)の合計量に対して、好ましくは30モル%以下、より好ましくは10モル%以下の割合である。上記アクリル酸(塩)以外の単量体を上記の割合で用いることにより、最終的に得られる吸水性樹脂(または吸水剤)の吸収特性がより一層向上すると共に、吸水性樹脂(または吸水剤)をより一層安価に得ることができる。
【0037】
(1−2)内部架橋剤(B)
本発明で用いる吸水性樹脂は、架橋剤を使用しない自己架橋型のものであってもよいが、1分子中に2個以上の重合性不飽和基および/または反応性基を有する架橋剤(吸水性樹脂の内部架橋剤)、または、環状化合物であって開環反応により1分子中に2個以上の反応性基が出現する内部架橋剤(B)を、共重合又は反応させたものが好ましい。さらに好ましい形態は、内部架橋剤(B)存在下に重合した吸水性樹脂である。
【0038】
これら内部架橋剤(B)の具体例としては、例えば、N,N´−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル;エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類;エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0039】
これら内部架橋剤(B)は、単独で用いてもよく、適宜2種類以上を混合して用いてもよい。また、これら内部架橋剤(B)は、反応系に一括添加してもよく、分割添加してもよい。少なくとも1種または2種類以上の内部架橋剤(B)を使用する場合には、最終的に得られる吸水性樹脂や吸水剤の吸収特性等を考慮して、2個以上の重合性不飽和基を有する化合物を重合時に必須に用いることが好ましい。
【0040】
これら内部架橋剤(B)の使用量は前記単量体(A)(内部架橋剤を除く)に対して、好ましくは0.005〜5モル%、より好ましくは0.02〜1.0モル%、さらに好ましくは0.06〜0.30モル%、最も好ましくは0.08〜0.20モル%の範囲内とされる。上記内部架橋剤(B)の使用量が0.005モル%よりも少ない場合、並びに、5モル%よりも多い場合には、充分な吸収特性が得られないおそれがある。
【0041】
上記内部架橋剤(B)を用いて架橋構造を重合体内部に導入する場合には、上記内部架橋剤(B)を、上記単量体(A)の重合前あるいは重合途中、あるいは重合後、または中和後に反応系に添加するようにすればよいが、重合前に添加することが好ましい。
【0042】
(1−3)水溶性連鎖移動剤(C)
本発明において、単量体(A)の重合時に用いられる連鎖移動剤は水溶性連鎖移動剤であることが好ましい。水溶性連鎖移動剤で無い場合、得られる吸水剤の化学架橋指数(または加圧下化学架橋指数)が十分でない恐れがある。本発明で使用される水溶性連鎖移動剤(C)としては、水、またはアクリル酸および/またはその塩に溶解するものであれば特に制限されず、チオール類、チオール酸類、2級アルコール類、アミン類、リン化合物類、遷移金属錯体類などを挙げることができる。より具体的に例示すると、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸および/またはその塩、チオリンゴ酸および/またはその塩、3−メルカプトプロピオン酸および/またはその塩、イソプロパノール、蟻酸および/またはその塩、次亜燐酸および/またはその塩、亜燐酸および/またはその塩、から選ばれる1種または2種以上が用いられるが、この効果からチオリンゴ酸および/またはその塩、次亜燐酸および/またはその塩、亜燐酸および/またはその塩、から選ばれる1種または2種以上がより好ましく、次亜燐酸および/またはその塩、亜燐酸および/またはその塩、のようなリン化合物がさらに好ましく用いられる。
【0043】
水溶性連鎖移動剤(C)の使用量は水溶性連鎖移動剤の種類や、単量体(A)の水溶液の濃度、内部架橋剤(B)の使用量にもよるが、単量体(A)に対して、0.001〜10モル%であり、好ましくは0.001〜2モル、さらに0.001〜1モル%であり、さらに好ましくは0.005〜0.5モル%であり、最も好ましくは0.01〜0.3モル%である。この使用量が0.001モル%未満では十分な化学架橋指数(または加圧下化学架橋指数)を有する吸水剤が得られない恐れがあり、10モル%より多く使用すると水可溶分が増加し、十分な化学架橋指数(または加圧下化学架橋指数)を有する吸水剤が得られない恐れがある。
【0044】
(1−4)吸水性樹脂(D)
本発明に用いられる吸水性樹脂(D)を得るために上述の単量体(A)を重合するに際しては、バルク重合や沈殿重合を行うことが可能であるが、性能面や重合の制御の容易さ、さらに膨潤ゲルの吸収特性の観点から、上記単量体(A)を水溶液とすることによる水溶液重合や逆相懸濁重合を行うことが好ましく、水溶液重合が最も好ましい。かかる重合方法は、従来公知であって例えば、US4625001、US4769427、US4873299、US4093776、US4367323、US4446261、US4683274、US4690996、US4721647、US4738867、US4748076、EP1178059などに記載されている。尚、上記単量体(A)を水溶液とする場合の該水溶液(以下、単量体水溶液と称する)中の単量体(A)の濃度は、水溶液の温度や単量体(A)によって決まり、特に限定されるものではないが、30重量%〜70重量%の範囲内が好ましく、35重量%〜70重量%の範囲内がさらに好ましい。30重量%未満の濃度では単位反応容積当りの生産性が下がり、また、乾燥工程にも時間とエネルギーを要し、生産性が低下して工業的観点から好ましくない。また、上記水溶液重合を行う際には、水以外の溶媒を必要に応じて併用してもよく、併用して用いられる溶媒の種類は、特に限定されるものではない。
【0045】
水溶液重合の方法としては、双腕型ニーダー中で単量体(A)の水溶液を、得られる含水ゲルを砕きながら重合したり、所定の容器中や駆動するベルト上に単量体(A)の水溶液を供給し、重合(または沸騰重合)して得られたゲルをミートチョッパー等で粉砕する方法等が挙げられる。
【0046】
上記の重合を開始させる際に用いられる重合開始剤としては、特に制限はなく、熱分解型開始剤(例えば、過硫酸塩:過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム;過酸化物:過酸化水素、t―ブチル−パーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド);アゾ化合物:アゾニトリル化合物、アゾアミジン化合物、環状アゾアミジン化合物、アゾアミド化合物、アルキルアゾ化合物、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド)や、光分解型開始剤(例えば、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アゾ化合物)等を用いることができる。
【0047】
さらに、これら重合開始剤の分解を促進する還元剤を併用し、両者を組み合わせることによりレドックス系開始剤とすることもできる。上記の還元剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の(重)亜硫酸(塩)、L−アスコルビン酸(塩)、第一鉄塩等の還元性金属(塩)、アミン類等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0048】
これら重合開始剤の使用量は、単量体(A)に対して、通常0.001〜2モル%、好ましくは0.01〜0.1モル%である。これら重合開始剤の使用量が0.001モル%未満の場合には、未反応の単量体が多くなり、従って、得られる吸水性樹脂(D)や吸水剤中の残存単量体量が増加するので好ましくない。一方、これら重合開始剤の使用量が2モル%を超える場合には、得られる吸水性樹脂(D)や吸水剤中の水可溶成分量が増加するので好ましくない場合がある。
【0049】
また、反応系に放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより重合反応の開始を行ってもよいし、さらに、上記重合開始剤を併用してもよい。尚、上記重合反応における反応温度は、特に限定されるものではないが、10〜130℃の範囲が好ましく、15〜120℃の範囲内がより好ましく、20〜100℃の範囲が特に好ましい。また、反応時間や重合圧力も特に限定されるものではなく、単量体や重合開始剤の種類、反応温度等に応じて適宜設定すればよい。
【0050】
尚、上記重合に際しては、反応系に、澱粉・セルロース、澱粉・セルロースの誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子0〜50重量%(対単量体)や、その他0〜10重量%の、炭酸(水素)塩、二酸化炭素、アゾ化合物、不活性有機溶媒等の各種発泡剤;各種界面活性剤;キレート剤;カオリン、タルク、二酸化珪素等の無機微粒子;ポリ塩化アルミ、硫酸アルミ、硫酸マグネシウムなどの多価金属塩などを添加してもよい。
【0051】
上記架橋重合体が水溶液重合で得られたものでゲル状である場合、すなわち含水ゲル状架橋重合体である場合、該架橋重合体は、必要に応じて乾燥し、乾燥の前および/または後で通常粉砕されて吸水性樹脂(D)とする。また、乾燥は通常60℃〜250℃、好ましくは100℃〜220℃、より好ましくは120℃〜200℃の温度範囲で行われる。乾燥時間は、重合体の表面積、含水率、および乾燥機の種類に依存し、目的とする含水率になるよう選択される。
【0052】
本発明に用いることのできる吸水性樹脂(D)の含水率(吸水性樹脂に含まれる水分量で規定され、180℃で3時間の乾燥減量で測定される。)は特に限定されないが、室温でも流動性を示す程度の含水率を有するものであり、より好ましくは含水率が0.2〜30重量%、さらに好ましくは0.3〜15重量%、特に好ましくは0.5〜10重量%の粉末状態である。含水率が高くなってしまうと、流動性が悪くなり製造し支障をきたすばかりか、吸水性樹脂が粉砕できなくなったり、特定の粒度分布に制御できなくなってしまう恐れがある。
【0053】
また本発明の吸水性樹脂(D)としては、不定形で、容易に粉砕される粒子状や粉末状や粒子状乾燥物凝集体のものを挙げることができる。
【0054】
吸水性樹脂(D)は、必要に応じて粉砕機によって粉砕されことによって得られる。粉砕機は特に限定されないが、例えばロールミルのようなロール式粉砕機、ハンマーミルのようなハンマー式粉砕機、衝撃式粉砕機、カッターミル、ターボグラインダー、ボールミル、フラッシュミルなどが用いられる。この中でも、粒度分布を制御するためにはロールミルが好ましい。粒度分布を制御するため連続して2回以上粉砕しても良いが、好ましくは3回以上である。2回以上粉砕する場合には、それぞれの粉砕機は同じであっても違っていても良い。違う種類の粉砕機を組み合わせて使うことも可能である。
【0055】
吸水性樹脂(D)を特定の粒度分布に制御するため、前記粉砕された吸水性樹脂を特定の目開きの篩で分級しても良い。分級機は特に限定されないが、たとえば振動篩(アンバランスウェイト駆動式、共振式、振動モータ式、電磁式、円型振動式など)、面内運動篩(水平運動式、水平円−直線運動式、3次元円運動式など)、可動網式篩、強制攪拌式篩、網面振動式篩、風力篩、音波篩などが用いられ、好ましくは振動篩、面内運動篩が用いられる。本発明の吸水性樹脂(D)を得るためには、好ましくは篩の目開きは1000μm〜300μm、より好ましくは900μm〜400μm、最も好ましくは710μm〜45
0μmの範囲である。これらの範囲から外れると目的の粒度分布が得られない可能性がある。異なる目開きを有する篩を2種以上用いることが好ましい。
【0056】
本発明の吸水性樹脂(D)を特定の粒度分布に制御するため、さらに分級することで、特定の粒子径未満の、粒子の一部またはすべてを除去しても良い。本工程において分級機は特に限定されないが、たとえば前記で例示されたものが好ましく用いられ、他には微粉型分級装置(遠心力式、慣性力式など)などが用いられる。本工程において、本発明の吸水性樹脂(D)を得るために、好ましくは粒子径が200μm未満、より好ましくは150μm未満、最も好ましくは106μm未満の粒子径である粒子の、一部またはすべてが除去される。
【0057】
また、本発明では好ましくは、分級により除去された粒子を造粒などによって、より大きな粒子または粒子状凝集物に再生し、本発明の吸水性樹脂(D)として用いることも可能である。微粉を再生するためには公知の技術が使用可能である。例えば、温水と吸水性樹脂の微粉を混合し乾燥する方法(US6228930)や、吸水性樹脂の微粉を単量体水溶液と混合し重合する方法(US5264495)、吸水性樹脂の微粉に水を加え特定の面圧以上で造粒する方法(EP844270)、吸水性樹脂の微粉を十分に湿潤させ非晶質のゲルを形成し乾燥・粉砕する方法(US4950692)、吸水性樹脂の微粉と重合ゲルを混合する方法(US5478879)などを用いることが可能であるが、好ましくは前記の温水と吸水性樹脂の微粉を混合し乾燥する方法が用いられる。また、再生された吸水性樹脂は、そのまま本発明の吸水性樹脂(D)としても良いし、粉砕工程に戻しても良い。目的とする吸水性樹脂(D)を得るためには、粉砕工程に戻すことが好ましい。このように再生された吸水性樹脂は実質的に多孔質構造を有する。本発明の吸水性樹脂(D)中に含まれる、再生された吸水性樹脂の割合は、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、最も好ましくは10重量%以下である。
【0058】
上記の方法により得られた吸水性樹脂(D)は、無加圧下での0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)が、好ましくは15〜45g/g、より好ましくは20〜45g/g、特に好ましくは20〜40g/g、さらに好ましくは25〜40g/g、最も好ましくは28〜40g/gの範囲である。この吸収倍率などの物性は目的に応じて適宜調整されるが、15g/g未満や45g/gを超えるような場合には、本発明の吸水剤が得られなくなる可能性がある。
【0059】
上記の方法により得られた吸水性樹脂(D)は、架橋構造を有しており該吸水性樹脂(D)中の水可溶成分が好ましくは25重量%以下、より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下、特に好ましくは10重量%以下のものが用いられる。吸水性樹脂(D)の水可溶成分は後述の方法で測定される。
【0060】
本発明の吸水性樹脂(D)の粒度分布は、850μm未満で106μm以上の粒子が全体の90〜100重量%であるものが好ましく、850μm未満で150μm以上の粒子が全体の90〜100重量%であるものがより好ましく、850μm未満で106μm以上の粒子が全体の95〜100重量%であるものがさらに好ましく、850μm未満で150μm以上の粒子を全体の95〜100重量%含むものが最も好ましい。850μm未満で106μm以上の粒子が全体の95重量%未満となるとダストが多く、得られる吸水剤の通液・拡散性が悪くなってしまう恐れがある。
【0061】
本発明の吸水性樹脂(D)は、重量平均粒子径が好ましくは100〜600μmの粒子状であり、より好ましく重量平均粒子径が200〜500μmの粒子状であり、最も好ましくは250〜450μmである。重量平均粒子径が100μm未満の場合は、得られる吸水剤の取り扱い性が悪く、またダストが多く、通液・拡散性が悪くなってしまう恐れがある。重量平均粒子径が600μmよりも大きい場合には、得られる吸水剤がダメージを受けやすくなり、物性の低下を招く恐れがある。
【0062】
本発明の吸水性樹脂(D)は、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が好ましくは0.25〜0.45、より好ましくは0.27〜0.43、さらに好ましくは0.30〜0.40である。粒度分布の対数標準偏差(σζ)は粒度分布の広がりを示す数値で、小さい値ほど粒度分布が狭いことを表している。すなわち、対数標準偏差(σζ)が0.45よりも大きくなってしまうと、粒度分布の幅が広くなりすぎ、得られる吸水剤の取り扱い性が悪くなったり、通液・拡散性が低下する恐れがある。0.25未満の場合には、生産性が著しく低下してしまうため、コストに見合った効果が得られない可能性がある。
【0063】
上記より、本発明の吸水性樹脂(D)は以下の(a)および(b)の要件を満たすことが好ましい。
【0064】
(a)850μm未満で150μm以上の粒子が全体の90重量%以上
(b)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45
(1−5)吸水性樹脂粒子(E)
本発明に用いられる吸水性樹脂粒子(E)は、好ましくは、前記方法により得られた吸水性樹脂(D)の表面を特定の表面架橋剤を用いて架橋処理することによって得られる。
【0065】
好ましくは、CRCsが15g/g以上、39g/g未満の範囲、かつ/またはAAPsが20g/g以上の範囲まで表面架橋される。また、前記吸水性樹脂(D)と吸水性樹脂粒子(E)のCRCsの差が好ましくは3g/g以上、より好ましくは5g/g以上である範囲まで表面架橋される。前記吸水性樹脂(D)と吸水性樹脂粒子(E)のCRCsの差が3g/g未満の場合には、得られる吸水剤のAAPsやSFCが十分でない可能性がある。
【0066】
本発明で好適に使用される表面架橋剤としては、吸水性樹脂(D)中の官能基と反応しうる官能基(好ましくはカルボキシル基と脱水反応またはエステル交換反応する官能基)を、少なくとも2個有する化合物を例示することが出来る。吸水性樹脂(D)中の官能基は、好ましくはアニオン性解離基であり、より好ましくはカルボキシル基である。
【0067】
このような表面架橋剤としては例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシドール等のエポキシ化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン等の多価アミン化合物や、それらの無機塩または有機塩(例えば、アジチニウム塩等);2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物;ポリアジリジン等のアジリジン化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン、ビスオキサゾリン、ポリオキサゾリン等の多価オキサゾリン化合物;尿素、チオ尿素、グアニジン、ジシアンジアミド、2−オキサゾリジノン等の炭酸誘導体;1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、1,3−ジオキソパン−2−オン等のアルキレンカーボネート化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物、および、その多価アミン付加物(例えばハーキュレス製カイメン(登録商標));オキセタン化合物;2−オキサゾリドンなどのオキサゾリドン類;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノブロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤等を挙げることができる。これらの1種または複数を組み合わせて使用することができる。
【0068】
また、これら表面架橋剤の使用量は、吸水性樹脂(D)100重量部に対して0.001〜10重量部程度であり、好ましくは0.01〜5重量部の範囲内である。10重量部を越える場合には、使用量に見合っただけの性能が出ずに不経済となるばかりか、残存する表面架橋剤の量が多くなるため好ましくない。さらに、表面架橋剤の使用量が0.001重量部未満の場合には、AAPsが十分でない恐れがある。
【0069】
また、表面架橋剤の反応をより加速し吸収特性をより向上するために、欧州特許第0668080号公報に示された無機酸、有機酸、ポリアミノ酸等を用いてもよい。より具体的には、硫酸、リン酸、塩酸、クエン酸、グリオキシル酸、グリコール酸、グリセリンリン酸、グルタル酸、ケイ皮酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、乳酸、ピルビン酸、フマル酸、プロヒオン酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、マロン酸、酪酸、イソ酪酸、イミジノ酢酸、リンゴ酸、イセチオン酸、シトラコン酸、アジピン酸、イタコン酸、クロトン酸、シュウ酸、サリチル酸、没食子酸、ソルビン酸、グルコン酸、p−トルエンスルホン酸等が例示される。これらの使用量は、吸水性樹脂(D)のpH等によって異なるが、吸水性樹脂(D)100重量部に対して、好ましくは0〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部の範囲である。
【0070】
本発明において吸水性樹脂(D)と表面架橋剤とを混合する際には、溶媒として水を用いることが好ましい。水の使用量は、吸水性樹脂(D)の種類や粒径等にもよるが、吸水性樹脂(D)の固形分100重量部に対して、0を越え、20重量部以下が好ましく、0.5重量部〜10重量部の範囲内がより好ましく、0.5〜5重量部の範囲内がさらに好ましい。
【0071】
また、吸水性樹脂(D)と表面架橋剤とを混合する際には、必要に応じて、溶媒として親水性有機溶媒を用いてもよい。上記の親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等の低級アルコール類;アセトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、アルコキシポリエチレングリコール等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類:ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。親水性有機溶媒の使用量は、吸水性樹脂(D)の種類や粒径等にもよるが、吸水性樹脂(D)の固形分100重量部に対して、20重量部以下が好ましく、10重量部以下がより好ましく、5重量部以下がさらに好ましい。しかし、安全性等の問題から有機溶媒を用いないことが最も好ましい。
【0072】
また、吸水性樹脂(D)と表面架橋剤とをより均一に混合するため、非架橋性の水溶性無機塩基類(好ましくは、アルカリ金属塩,アンモニウム塩,アルカリ金属水酸化物、および、アンモニアあるいはその水酸化物)や、非還元性アルカリ金属塩pH緩衝剤(好ましくは炭酸水素塩、リン酸二水素塩、リン酸水素塩等)を、吸水性樹脂(D)と表面架橋剤とを混合する際に共存させても良い。これらの使用量は、吸水性樹脂(D)の種類や粒径等にもよるが、吸水性樹脂(D)の固形分100重量部に対して0.005〜10重量部の範囲内が好ましく、0.05〜5重量部の範囲内がより好ましい。
【0073】
そして、吸水性樹脂(D)に表面架橋剤を混合する際、例えば、上記の親水性有機溶媒中に吸水性樹脂(D)を分散させた後、表面架橋剤を添加してもよいが、必要に応じて水および/または親水性有機溶媒に溶解あるいは分散させた表面架橋剤を、攪拌下に、吸水性樹脂(D)に直接、噴霧若しくは滴下して添加する方法が好ましい。また、水を用いて混合する場合には、水に不溶な無機微粒子粉末や、水溶性の多価金属塩類や、界面活性剤等を共存させてもよい。
【0074】
吸水性樹脂(D)と表面架橋剤とを混合する際に用いられる混合装置は、両者を均一かつ確実に混合するために、大きな混合力を備えていることが好ましい。上記の混合装置としては、例えば、円筒型混合機、二重壁円錐型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、流動型炉ロータリーデスク型混合機、気流型混合機、双腕型ニーダー、内部混合機、粉砕型ニーダー、回転式混合機、スクリュー型押出機、鋤型混合機等が好適である。
【0075】
吸水性樹脂(D)と表面架橋剤とを混合した後、その混合物は、加熱処理をおこなわれることにより、吸水性樹脂(D)の表面が架橋され、好ましくは、0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)が15g/g以上、39g/g未満の範囲かつ/または0.9重量%食塩水の加圧下吸収倍率(AAPs)が20g/g以上の範囲まで表面架橋される。本発明で加熱処理を行う場合、処理時間は、1分〜180分が好ましく、3分〜120分がより好ましく、5分〜100分がさらに好ましい。処理温度(熱媒温度)は60〜250℃の範囲が好ましく、100〜210℃の範囲がより好ましく、120〜200℃の範囲がさらに好ましい。加熱温度が60℃未満では、加熱処理に時間がかかり生産性の低下を引き起こすのみならず、均一な架橋が達成されず、目的とする吸水剤が得られなくなるおそれがある。また処理温度が250℃を越えると、得られる吸水性樹脂粒子(E)がダメージを受け、吸水倍率に優れたものが得られにくいことがある。
【0076】
前記の加熱処理は、通常の乾燥機または加熱炉を用いて行うことができる。上記の乾燥機としては、例えば、溝型混合乾燥機、ロータリー乾燥機、ディスク乾燥機、流動層乾燥機、気流型乾燥機、赤外線乾燥機等が挙げられる。加熱処理にかえて本発明において光照射処理を行う場合には、紫外線を照射することが好ましく、また、光重合開始剤を使用することができる。
【0077】
前記の表面処理工程で、吸水性樹脂(D)が加熱された場合には、その吸水性樹脂(D)を冷却することが好ましい。冷却は100〜20℃の範囲までされることが好ましい。また、冷却に使用される冷却機としては、例えば上記加熱処理に用いられる乾燥機の熱媒体を冷媒体に変換したものが用いられる。
【0078】
前記の工程を経て、得られた吸水性樹脂粒子(E)は好ましくは、整粒工程によって粒度分布が調整されることが好ましい。
【0079】
本発明の吸水性樹脂粒子(E)は、850μm未満で150μm以上の粒子を吸水性樹脂粒子(E)全体の90重量%以上含むものが好ましく、95重量%以上含むものがより好ましい。850μm未満で150μm以上の粒子が全体の90重量%未満となるとダストが多く、得られる吸水剤の通液・拡散性が悪くなってしまう恐れがある。
【0080】
本発明の吸水性樹脂粒子(E)は、重量平均粒子径が好ましくは100〜600μmの粒子状であり、より好ましく重量平均粒子径が200〜500μmの粒子状であり、最も好ましくは250〜450μmである。重量平均粒子径が100μm未満の場合は、得られる吸水剤の取り扱い性が悪く、またダストが多く、通液・拡散性が悪くなってしまう恐れがある。重量平均粒子径が600μmよりも大きい場合には、得られる吸水剤がダメージを受けやすくなり、物性の低下を招く恐れがある。
【0081】
本発明の吸水性樹脂粒子(E)は、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が好ましくは0.25〜0.45、より好ましくは0.27〜0.43、さらに好ましくは0.30〜0.40である。粒度分布の対数標準偏差(σζ)は粒度分布の広がりを示す数値で、小さい値ほど粒度分布が狭いことを表している。すなわち、対数標準偏差(σζ)が0.45よりも大きくなってしまうと、粒度分布の幅が広くなりすぎ、得られる吸水剤の取り扱い性が悪くなったり、通液・拡散性が低下する恐れがある。0.25未満の場合には、生産性が著しく低下してしまうため、コストに見合った効果が得られない可能性がある。
【0082】
上記の本発明に係る吸水性樹脂粒子(E)の製法においては、さらに、必要に応じて、消臭剤、抗菌剤、香料、発泡剤、顔料、染料、親水性短繊維、可塑剤、粘着剤、金属石鹸、界面活性剤、肥料、酸化剤、還元剤、水、塩類、キレート剤、殺菌剤、ポリエチレングリコールなどの親水性高分子、パラフィンなどの疎水性高分子、ポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂、ポリエステル樹脂やユリア樹脂などの熱硬化性樹脂等を添加する等、吸水性樹脂粒子(E)に種々の機能を付与する工程を含んでいてもよい。これら添加剤の使用量は吸水性樹脂粒子(E)100重量部に対して0〜10重量部、好ましくは0〜1重量部の範囲で用いられる。
【0083】
上記より、本発明の吸水性樹脂粒子(E)は以下の(a)および(b)の要件を満たすことが好ましい。
【0084】
(a)850μm未満で150μm以上の粒子が全体の90重量%以上
(b)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45
本発明で使用される吸水性樹脂粒子は特に限定されないが、好ましくは前記の製法によって得られた吸水性樹脂粒子(E)である。吸水性樹脂粒子(E)を本発明の吸水剤とすることができ、その場合、吸水剤は好ましくは、下記の(3)吸水剤に記載のCRCs、AAPs、SFC、CSF、粒度分布、嵩比重、水可溶分、形状、含水率などを有するものであるが、その他の方法で本発明の吸水剤を得てもよい。
【0085】
(2)液透過性向上剤(F)
本発明の吸水剤は、吸水性樹脂粒子と液透過性向上剤を含む吸水性樹脂組成物であっても良い。以下に、本発明で使用される液透過性向上剤(F)について詳述する。
【0086】
本発明でいう液透過性向上剤(F)とは、吸水性樹脂粒子(吸水性樹脂粒子は特に限定されない)がそれを含むことでSFCが向上し得るような物質を示す。具体的には、液透過性向上剤とは、表面が架橋処理されてなる吸水性樹脂粒子と液透過性向上剤が混合されることによって得られる吸水剤のSFCが、添加されない吸水性樹脂粒子のSFCに比べて1(10−7・cm3・s・g−1)以上、好ましくは5(10−7・cm3・s・g−1)以上向上する物質を示す。例えば、本発明の実施例7で得られた吸水性樹脂粒子(E7)に添加し、添加前後のSFCを比較することで確認できる。液透過性向上剤(F)は吸水性樹脂粒子中の内部に含まれていても、表面に存在していても、近傍に存在していても良いが、好ましくは、表面またはその近傍に存在する。また、液透過性向上剤(F)は吸水性樹脂粒子中の官能基と反応していても良い。液透過性向上剤(F)の添加は表面処理の前、中、後のいつに行っても良い。液透過性向上剤(F)はスペーサー的な役割またはイオン的な表面架橋効果などにより、膨潤した吸水性樹脂粒子間の隙間を広げ、液透過性を向上させる効果がある。
【0087】
本発明で使用される液透過性向上剤(F)は、例えば、親水性の無機化合物が挙げられ、水不溶性親水性の無機微粒子や水溶性の多価金属塩などが好ましく用いられる。本発明でいう親水性とは例えば、EP0629411に記載されている親水性度が70%以上のものが挙げられる。本発明において、カチオン性高分子化合物(US5797893のカラム11に例示されているものなど)や疎水性の無機微粒子などは液透過性を向上させ、液透過性向上剤(F)として使用可能であるが、吸水剤の接触角を増加させ、CSFの低下を招く場合があるため、使用されることは好ましくない場合がある。吸水剤の表面張力を低下させるような界面活性剤は、CSFの低下を招くため、本発明に使用されることは好ましくない。本発明で使用される液透過性向上剤(F)が無機微粒子の場合、その粒子径は取り扱い性や添加効果の点から、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることが最も好ましい。前記粒子径は、1次粒子の粒子径である場合と2次粒子(造粒物、凝集体)の粒子径である場合の両方の場合を含む。非凝集体(1次粒子)のシリカやアルミナなどのように粒子の硬度が高く、衝撃力で容易に壊れない化合物の粒子を使用する場合は、凝集体や造粒物の1次粒子の粒子径は好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下、最も好ましくは0.1μm以下である。
【0088】
これら本発明で使用する液透過性向上剤(F)の具体例としては、例えば、タルク、カオリン、フラー土、ベントナイト、活性白土、重晶石、天然アスファルタム、ストロンチウム鉱石、イルメナイト、パーライトなどの鉱産物;硫酸アルミニウム14〜18水塩(または無水物)、硫酸カリウムアルミニウム12水塩、硫酸ナトリウムアルミニウム12水塩、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、酸化アルミニウムなどのアルミニウム化合物類;その他の多価金属塩類;親水性のアモルファスシリカ(例、乾式法:トクヤマ社 ReolosilQS−20、沈殿法:DEGUSSA社 Sipernat22S, Sipernat2200)類;酸化ケイ素・酸化アルミ・酸化マグネシウム複合体(例、ENGELHARD社 Attagel#50)、酸化ケイ素・酸化アルミニウム複合体、酸化ケイ素・酸化マグネシウム複合体などの酸化物複合体類、を挙げる事が出来る。また、US5164459、EP761241などに例示されたものも使用可能である。これらの粒子の中から親水性の粒子(例えば、硫酸アルミニウム14〜18水塩や親水性のアモルファスシリカ)を選択して使用するのが好ましいが、粒子の親水性が低い場合は、粒子表面を親水性化合物で処理して親水化したものを使用すれば良い。これらのものを単独で用いても良いし、2種以上使用してもよい。
【0089】
本発明で使用する液透過性向上剤(F)の混合方法としては、特に限定されないが、水溶液として混合する方法やスラリー状として混合する方法、粉体として混合する方法である。例えば、特表2002−539281号、特表2002−538275号(表面処理前に水溶液添加する方法)、特表2001−523289号(ドライブレンドした後、結合剤を添加する方法)、特表2001−523287号(表面処理後に水溶液添加する方法)に記載の方法なども使用できる。また、吸水性樹脂粒子に結合剤を添加した後に液透過性向上剤(F)を添加する方法や吸水性樹脂粒子の表面の少なくとも一部に液透過性向上剤(F)の少なくとも一部を熱融着する方法も使用可能である。
【0090】
本発明で使用する液透過性向上剤(F)の吸水性樹脂粒子に対する添加量は0.01〜10重量%が好ましく、0.05〜5重量%がより好ましい。添加量が10重量%より多くなると吸水倍率の低下を招き、0.01質量%より少ないと添加の効果が得られなくなる恐れがある。また、添加量を変えることで、吸水剤の液透過性を調整することが可能である。
【0091】
吸水性樹脂粒子と液透過性向上剤(F)の混合装置は、特に大きな混合力を備えている必要はなく、例えば、解砕機や篩機などで混合されても良い。上記の混合装置としては、例えば、円筒型混合機、二重壁円錐型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、流動型炉ロータリーデスク型混合機、気流型混合機、双腕型ニーダー、内部混合機、粉砕型ニーダー、回転式混合機、スクリュー型押出機、スタティックミキサー等が好適である。また、添加の時期は前記製法において、吸水性樹脂粒子が得られる前、中、後のいずれでも良いが、好ましくは表面架橋後である。
【0092】
こうして得られた吸水剤は、好ましくは、下記の(3)吸水剤に記載のCRCs、AAPs、SFC、CSF、粒度分布、嵩比重、水可溶分、形状、含水率などを有するものであるが、その他の方法で本発明の吸水剤を得てもよい。
【0093】
(3)吸水剤
本発明の吸水剤とは、吸水性樹脂粒子または吸水性樹脂粒子を含む吸水性樹脂組成物(好ましくは吸水性樹脂粒子および液透過性向上剤を含む吸水性樹脂組成物)であり、粒子状で尿、経血、汗、その他の体液吸収のための衛生材料用吸収材料として好適に使用されるものである。吸水性樹脂粒子は好ましくは前記(1−5)吸水性樹脂粒子(E)に記載の製法で得られたものである。また、液透過性向上剤は好ましくは前記(2)液透過性向上剤に記載されたものである。本発明の吸水剤に含まれる吸水性樹脂粒子の割合は90〜100重量%であり、好ましくは95〜100重量%であり、特に好ましくは98〜100重量%である。また、本発明の吸水剤は好ましくはリン原子を含有する。このリン原子は水溶性連鎖移動剤であるリン化合物に由来するものである。
【0094】
本発明の吸水剤は、優れたゲル特性を有する。優れたゲル特性とは、特定の粒度分布、特定のCRCs、特定のAAPs、そして特定の化学架橋指数(または加圧下化学架橋指数)を有することで達成される特性である。公知の技術である連鎖移動剤存在下での重合(特許文献1〜5)では、重合時に連鎖移動剤を用いることで、ゲルの耐久性に優れた吸水性樹脂を得ているが、吸収倍率が高すぎるために十分なゲル特性を有していなかった、また、吸水剤の性能を決定する重要な因子である粒度分布についても見出されていなかった。本発明者らは、優れたゲル特性を有する吸水剤を得るために鋭意検討した結果、特定の粒度分布、特定のCRCs、特定のAAPs、そして化学架橋指数(または加圧下化学架橋指数)を有することで初めてそれが達成されることを見出した。その機構については十分解明されていないが、次のように考察される。すなわち、重合時に連鎖移動剤を用いることで、吸水性樹脂中の主鎖高分子の分子量を低下させることができる。これにより、主鎖高分子の“からみあい”が減少し、この“からみあい”による物理的な架橋も減少する。この結果、得られる吸水性樹脂の吸収倍率は連鎖移動剤を使用しない場合と比べて上昇する。このとき、内部架橋剤量をより多く使用することにより、“からみあい”が減少した分の物理的な架橋の減少を化学的な架橋で補填でき、その場合は連鎖移動剤を使用しない場合と同程度の吸収倍率の吸水性樹脂が得られる。このような吸水性樹脂は、通常の重合で得られた吸水性樹脂が有する化学的架橋の量よりも、より多くの化学的架橋を有するため優れたゲル特性を有することとなる。さらに、本発明者らはこの化学的架橋の程度を示す指標を見出し、この指標が特定の値を示し、同時に特定の粒度分布、特定のCRCs、特定のAAPsが満たされるときに優れたゲル特性を有することを見出し、本発明の完成に至った。これら特定の物性値について以下に詳述する。
【0095】
本発明の吸水剤は、CRCsが29g/g以上、39g/g未満の場合、以下の式1で表される化学架橋指数が160以上であり、好ましくは170以上であり、さらに好ましくは175以上であり、最も好ましくは180以上である。化学架橋指数は通常1000を上限とする。
【0096】
化学架橋指数=(CRCs)/(CRCdw)×1000 (式1)
CRCs(g/g):0.9重量%食塩水の吸収倍率
CRCdw(g/g):純水の吸収倍率
本発明の吸水剤は、CRCsが15g/g以上、29g/g未満の場合、以下の式2で表される加圧下化学架橋指数が100以上であり、好ましくは110以上であり、さらに好ましくは115以上であり、最も好ましくは120以上である。加圧下化学架橋指数は通常1000を上限とする。
【0097】
加圧下化学架橋指数=(CRCs)+(AAPdw) (式2)
CRCs(g/g):0.9重量%食塩水の吸収倍率
AAPdw(g/g):純水の加圧下吸収倍率
本発明の吸水剤の特徴である化学架橋指数は純水での吸収倍率と0.9重量%食塩水の吸収倍率との比で表される。化学架橋指数は純水での吸収倍率が低く、0.9重量%食塩水の吸収倍率が高い方が高くなる。吸水剤を純水で膨潤させた場合、主鎖高分子の“からみあい”による物理的な架橋は、多量の溶媒によって、主鎖の“からみあい”がほぐれることによって解消される。しかし、化学架橋による膨潤規制は変化しない。つまり、吸水剤に含まれる化学架橋の量が多いほど、純水での吸収倍率は低くなり、同じ0.9重量%食塩水の吸収倍率を有するもので比較すると化学架橋指数の値は高くなる。同様の理由で、純水の加圧下吸収倍率は化学架橋が多いほうが高くなる。すなわち、純水中では主鎖高分子の“からみあい”による物理的な架橋はほぐれてしまい、加圧下でのゲルの強度を保持する能力は低い。一方、化学架橋は加圧下でのゲルの強度を保持する能力に優れる。すなわち、同じ0.9重量%食塩水の吸収倍率を有するもので比較すると、化学架橋が多い吸水剤ほど加圧下化学架橋指数が高くなる。これら2つの指標(化学架橋指数および加圧下化学架橋指数)は好ましく適用される吸水剤のCRCsの範囲がある。すなわち、より高いCRCs(CRCsが29g/g以上、39g/g未満)の範囲では化学架橋指数が好ましく、より低いCRCs(CRCsが15g/g以上、29g/g未満)の範囲では加圧下化学架橋指数が好ましい。これはそれぞれの範囲でそれぞれの特性の差が顕著に観察されるためである。
【0098】
本発明の吸水剤は、粒度分布として850μm未満で150μm以上の粒子を全体の90重量%以上含むものであり、好ましくは850μm未満で106μm以上の粒子を全体の95重量%以上含むものであり、最も好ましくは850μm未満で150μm以上の粒子を全体の95重量%以上含むものである。上限は100重量%である。850μm未満で15
0μm以上の粒子が全体の90重量%未満となるとダストが多く、通液・拡散性が悪くなってしまう恐れがある。
【0099】
本発明の吸水剤は、重量平均粒子径が好ましくは100〜600μmの粒子状であり、より好ましく重量平均粒子径が200〜500μmの粒子状であり、最も好ましくは250〜450μmである。重量平均粒子径が100μm未満の場合は、取り扱い性が悪く、またダストが多く、通液・拡散性が悪くなってしまう恐れがある。重量平均粒子径が600μmよりも大きい場合には、ダメージを受けやすくなり、物性の低下を招く恐れがある。
【0100】
本発明の吸水剤は、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が好ましくは0.25〜0.45、より好ましくは0.27〜0.43、さらに好ましくは0.30〜0.40である。粒度分布の対数標準偏差(σζ)は粒度分布の広がりを示す数値で、小さい値ほど粒度分布が狭いことを表している。すなわち、対数標準偏差(σζ)が0.45よりも大きくなってしまうと、粒度分布の幅が広くなりすぎ、取り扱い性が悪くなったり、通液・拡散性が低下する恐れがある。0.25未満の場合には、生産性が著しく低下してしまうため、コストに見合った効果が得られない可能性がある。
【0101】
上記より、本発明の吸水剤は以下の(a)および(b)の要件を満たすことが好ましい。
【0102】
(a)850μm未満で150μm以上の粒子が全体の90重量%以上
(b)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45 本発明の吸水剤は、0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)は15g/g以上、39g/g未満の範囲であり、20〜35g/gであることがより好ましく、20〜32g/gであることがさらに好ましく、24〜32g/gであることが最も好ましい。吸収倍率が低いとおむつ等の衛生材料に使用する場合の効率が悪くなり、高すぎた場合にはゲル強度の低下などによる性能低下が起こる恐れがある。
【0103】
本発明の吸水剤は、0.9重量%食塩水の加圧下吸収倍率(AAPs)は20g/g以上を示し、22g/g以上を示すことがより好ましく、23g/g以上を示すことがさらに好ましく、24g/g以上を示すことが最も好ましい。0.9重量%の食塩水の加圧下吸収倍率(AAPs)は通常100を上限とする。AAPsが20g/g未満の場合には、吸水剤のゲル特性が十分でなく、紙おむつなどの吸水体として使用された場合に十分な性能が発揮されない可能性がある。
【0104】
本発明の吸水剤は、0.69重量%食塩水流れ誘導性(SFC)が30〜3000(10−7・cm・s・g−1)を示す物が好ましく、50〜2000(10−7・cm・s・g−1)を示す物がより好ましく、70〜1000(10−7・cm・s・g−1)を示す物がより好ましく、80〜300(10−7・cm・s・g−1)を示す物が特に好ましく、100〜250(10−7・cm・s・g−1)を示す物が特に好ましく、100〜200(10−7・cm・s・g−1)を示す物が最も好ましい。0.69重量%食塩水流れ誘導性(SFC)は通常3000を上限とする。0.69重量%食塩水流れ誘導性(SFC)は通液・拡散性を示す数値であり、高い吸水剤ほど通液・拡散性に優れる。0.69重量%食塩水流れ誘導性(SFC)は衛生材料中の吸水剤の含有率にもよるが高含有率になる程より高い値が必要となる。
【0105】
本発明の吸水剤は、20cmの高さにおける毛管吸収倍率(CSF)が15g/g以上を示すことが好ましく、18g/g以上を示すことがより好ましく、20g/g以上を示すことが最も好ましい。毛管吸収倍率(CSF)は毛管吸引力の強さを示す値である。毛管吸収倍率(CSF)が高い方がより吸収液を高さ方向にも拡散できるので望ましい。
【0106】
本発明の吸水剤は、吸水剤中の水可溶成分が好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下、特に好ましくは13重量%以下、最も好ましくは10重量%以下のものが用いられる。本発明において水可溶成分が20重量%以上になると、発明の効果が得られないおそれがあるばかりか、おむつなどの衛生材料の吸水体として使用した場合の性能を低下させるおそれもある。また、安全性の観点からも好ましくない。性能低下の原因としては、吸水剤が吸水し膨潤した時に、吸水性樹脂内部の高分子成分が溶出し、それによって液の透過が阻害されることが挙げられる。溶出した高分子成分は、吸水性樹脂粒子表面を液が流れる際に抵抗となっていると考えられる。また、同様に高分子成分の溶出は、被吸収溶液の粘度を上げ、毛管吸引力を低下させるおそれもある。吸水剤の水可溶成分は後述の方法で測定される。
【0107】
本発明の吸水剤の含水率は特に限定されないが、好ましくは含水率は0重量%以上50重量%以下、より好ましくは0.01重量%以上40重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以上10重量%以下である。
【0108】
本発明の吸水剤の嵩比重は特に限定されないが、好ましくは嵩比重が0.40〜0.90g/mlであり、0.50〜0.80g/mlの範囲であることがさらに好ましい(嵩比重の測定法はJIS K−3362で規定されている)。嵩比重が0.4g/ml未満のものや0.90g/mlを超えるものの場合には、プロセスによるダメージを受けやすくなり、物性が低下するおそれがある。燐化合物の含有量はその使用量にもよるが、好ましくは吸水剤中に燐元素として10ppm〜1重量%、さらに好ましくは20〜5000pm、さらに好ましくは30〜4000pm、特に好ましくは50〜3000ppmである。燐化合物の含有量が燐元素として1重量%を超えると、水溶性の可溶成分が増加し得られる吸水剤の物性が低下するため好ましくない。また10ppm未満では連鎖移動能が低く目的の吸水剤が得にくい場合もある。
【0109】
さらに、これら吸水剤は、吸水性樹脂粒子100重量部あたり液透過性向上剤が0.001〜10重量部、好ましくは0.001〜5重量部を含む。
【0110】
また、本発明の吸水剤は、吸水性樹脂粒子(E)および/または液透過性向上剤(F)の他に、さらに、必要に応じて、消臭剤、抗菌剤、香料、発泡剤、顔料、染料、親水性短繊維、可塑剤、粘着剤、金属石鹸、界面活性剤、肥料、酸化剤、還元剤、水、塩類、キレート剤、殺菌剤、ポリエチレングリコールなどの親水性高分子、パラフィンなどの疎水性高分子、ポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂、ポリエステル樹脂やユリア樹脂などの熱硬化性樹脂等の添加物を含有し、機能を付与或いは高めたものであってもよい。これら添加物の使用割合は吸水剤の重量に対して10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは1重量%未満である。
【0111】
本発明の吸水剤が衛生材料に用いられた場合、優れたゲル特性を有するため、オムツなどの吸収体中に高濃度で使用した場合においても、2度目以降の尿や体液が吸収体表面で行き場を失うことなく吸収体の内部に拡散することが出来、内部の吸水性樹脂粒子に尿や体液を分配することができる。
【0112】
(4)吸水体の製法および吸水特性
上記方法により得られた吸水剤は、適当な素材と組み合わせることにより、たとえば、衛生材料の吸収層として好適な吸水体とすることができる。以下、本発明の吸水体について説明する。
【0113】
本発明の吸水体とは血液や体液、尿などを吸収する、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等の衛生材料に用いられる、吸水剤とその他の素材からなる成形された組成物のことであり、用いられる素材の例としては、たとえば、セルロース繊維が挙げられる。セルロース繊維の具体例としては、木材からのメカニカルパルプ、ケミカルパルプ、セミケミカルパルプ、溶解パルプ等の木材パルプ繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維等を例示できる。好ましいセルロース繊維は木材パルプ繊維である。これらセルロース繊維はナイロン、ポリエステル等の合成繊維を一部含有していてもよい。本発明の吸水剤を吸水体の一部として使用する際には、吸水体中に含まれる本発明の吸水剤の重量が、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上、最も好ましくは50重量%以上の範囲である。吸水体中に含まれる本発明の吸水剤の重量が、20重量%未満になると、十分な効果が得られなくなるおそれがある。
【0114】
上記方法により得られた吸水剤とセルロース繊維から吸水体を得るには、たとえば、セルロース繊維からなる紙やマットに吸水剤を散布し、必要によりこれらで挟持する方法、セルロース繊維と吸水剤を均一にブレンドする方法、など吸水体を得るための公知の手段を適宜選択できる。好ましくは、吸水剤とセルロース繊維を乾式混含した後、圧縮する方法である。この方法により、セルロース繊維からの吸水剤の脱落を箸しく抑えることが可能である。圧縮は加熱下に行うことが好ましく、その温度範囲は、たとえば50〜200℃である。また、吸水体を得るために、特表平9−509591号(吸水性樹脂及び尿の中に含まれる少なくとも1種の成分と反応しうる吸収性改良重合体の混合物を含んでなる吸収性材料)、特開平9−290000号(吸水性樹脂とその表面で吸水性樹脂に結合したポリ陽イオン重合体と吸水性樹脂中に分散されたグルー微小繊維及びグルー微小繊維によって吸水性樹脂に結合した担体層からなる吸収性材料)、特開平10−265582号(具体的な方法を次に示す。吸収剤75重量部と、木材粉砕パルプ25重量部とを、ミキサーを用いて乾式混合した。次いで、得られた混合物を、400メッシュ(目の大きさ38μm)に形成されたワイヤースクリーン上にバッチ型空気抄造装置を用いて空気抄造することにより、120mm×350mmの大きさのウエブを成形した。さらに、このウエブを圧力2kg/cmで5秒間プレスすることにより、秤量が約500g/m吸収体を得た。続いて、液不透過性のポリプロピレンからなり、いわゆるレッグギャザーを有するバックシート(液不透過性シート)、上記の吸収体、及び、液透過性のポリプロピレンからなるトップシート(液透過性シート)を、両面テープを用いてこの順に互いに貼着すると共に、この貼着物に2つのいわゆるテープファスナーを取り付けることにより、吸収性物品(つまり、紙オムツ)を得た)などに記載されている方法も好ましく用いられる。
【0115】
この発明の得られた吸水剤は、吸水体に使用された場合、ゲル特性に優れるため、吸収量に優れ、液の取り込み速度に優れ、吸収後の加圧下のドライタッチ性に優れ、16時間経過後の膨潤ゲル安定性に優れた吸水体が得られる。
【0116】
また、これらの優れた吸水特性を有しているため種々の用途の吸水保水剤として使用できる。例えば紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等の吸収物品用吸水保水剤;水海苔代替、土壌改質改良剤、保水剤、農薬効力持続剤等の農園芸用保水剤;内装壁剤用結露防止材、セメント添加剤等の建築用保水剤;リリースコントロール剤、保冷剤、使い捨てカイロ、汚泥凝固剤、食品用鮮度保持剤、イオン交換カラム材料、スラッジまたはオイルの脱水剤、乾燥剤、湿度調整材料等で使用できる。また、本発明で得られた吸水剤は紙おむつ、生理用ナプキンなどの、糞、尿または血液の吸収用衛生材料に特に好適に用いられる。
【0117】
本発明の吸水体は紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等の衛生材料に用いられる場合、着用者の体に隣接して配置される液体透過性のトップシート、(b)着用者の身体から遠くに、着用者の衣類に隣接して配置される、液体に対して不透過性のバックシート、および(c)トップシートとバックシートの間に配置された吸水体を含んでなる構成で使用されることが好ましい。吸水体は二層以上であっても良いし、パルプ層などとともに用いても良い。
【0118】
吸水体から、取り出された吸水剤の諸物性は、好ましくは前記(3)吸水剤に記載されているものである。
【0119】
すなわち、本発明の衛生材料は、(a)着用者の体に隣接して配置される液体透過性のトップシート、(b)着用者の身体から遠くに、着用者の衣類に隣接して配置される、液体に対して不透過性のバックシート、および(c)トップシートとバックシートの間に配置された吸水体を含んでなる衛生材料であり、該吸水体中の吸水剤の割合が、20重量%以上、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上、最も好ましくは50重量%以上の範囲であり、該吸水剤がアクリル酸およびその塩を含む単量体を重合して得られる架橋構造を有する吸水性樹脂が表面架橋された吸水性樹脂粒子を主成分とする吸水剤であって、
該吸水剤が、下記(a)〜(e)の要件を満たす吸水剤である衛生材料である。
【0120】
(a)850μm未満で150μm以上の粒子が全体の90重量%以上
(b)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45
(c)0.9重量%食塩水の加圧下吸収倍率(AAPs)が20g/g以上
(d)0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)が29g/g以上、39g/g未満の範囲 (e)以下の式1で表される化学架橋指数が160以上
化学架橋指数=(CRCs)/(CRCdw)×1000 (式1)
CRCs(g/g):0.9重量%食塩水の吸収倍率
CRCdw(g/g):純水の吸収倍率
また、本発明の衛生材料は、(a)着用者の体に隣接して配置される液体透過性のトップシート、(b)着用者の身体から遠くに、着用者の衣類に隣接して配置される、液体に対して不透過性のバックシート、および(c)トップシートとバックシートの間に配置された吸水体を含んでなる衛生材料であり、該吸水体中の吸水剤の割合が、20重量%以上、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上、最も好ましくは50重量%以上の範囲であり、該吸水剤がアクリル酸およびその塩を含む単量体を重合して得られる架橋構造を有する吸水性樹脂が表面架橋された吸水性樹脂粒子を主成分とする吸水剤であって、
該吸水剤が、下記(a)〜(c)および(f)、(g)の要件を満たす吸水剤である衛生材料である。
【0121】
(a)850μm未満で150μm以上の粒子が全体の90重量%以上
(b)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45
(c)0.9重量%食塩水の加圧下吸収倍率(AAPs)が20g/g以上
(f)0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)が15g/g以上、29g/g未満
(g)以下の式2で表される加圧下化学架橋指数が100以上
加圧下化学架橋指数=(CRCs)+(AAPdw) (式2)
CRCs(g/g):0.9重量%食塩水の吸収倍率
AAPdw(g/g):純水の加圧下吸収倍率
(実施の形態2)
以下に本発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0122】
なお、以下、本発明で吸水性樹脂とは重合、乾燥、粉砕工程を経て得られる、表面が種々の表面架橋剤を用いて架橋される前の水膨潤性架橋重合体のことを指す。また本発明で吸水剤とは、架橋剤によって表面がさらに架橋されてなる吸水性樹脂粒子を主成分とし、液透過性向上剤などの他成分を含んでも良い。表面がさらに架橋されてなる吸水性樹脂粒子の割合は吸水剤に対して、好ましくは80〜100重量%、より好ましくは90〜100重量%、さらに好ましくは95〜100重量%である(ここで言う表面がさらに架橋されてなる吸水性樹脂粒子の含水率は10重量%以下である)。
【0123】
(1)吸水性樹脂およびその重合
本実施形態で用いられる重合して吸水性樹脂となる単量体成分の例としては、上記実施の形態1に記載された単量体成分を適用しうる。
【0124】
また、本実施形態で用いられる内部架橋剤としては、上記実施の形態1に記載された内部架橋剤を適用しうる。これら内部架橋剤の使用量は前記単量体(内部架橋剤を除く)に対して、さらに好ましくは0.10〜0.50モル%、特に好ましくは0.20〜0.40モル%の範囲内とされる。上記内部架橋剤の使用量が0.001モル%よりも少ない場合、並びに、2モル%よりも多い場合には、充分な吸収特性が得られないおそれがある。
【0125】
本実施形態で用いられる重合開始剤としては、上記実施の形態1に記載された重合開始剤を適用しうる。しかしながら、本実施形態で用いられる重合開始剤は、コスト、残存モノマー低減能から過硫酸塩が好ましい。また、本実施形態で用いられる重合開始剤の使用量も、上記実施の形態1と同様である。
【0126】
また、反応系に放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより重合反応の開始を行ってもよいし、さらに、上記重合開始剤を併用してもよい。
【0127】
重合に際しては、反応系に、澱粉、澱粉誘導体、セルロース、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子、キレート剤などを添加してもよい。これら添加剤の使用量は吸水剤100重量部に対して0〜10重量部、好ましくは0〜1.0重量部の範囲で用いられる。
【0128】
本発明に用いられる吸水性樹脂を得るために上述の単量体を重合する方法としては、特定の手法が用いられる。特開2002−212204号では水溶液重合において、合理的工程により、低コストで優れた品質の吸水性樹脂を得る製法が示されているが、望ましい低コストでの吸水性樹脂の製造を行う場合にはおのずとモノマー濃度は高くなり、使用架橋剤量は減少するため、ゲル層膨潤圧の低下が考えられる。本発明者らは鋭意検討した結果、重合中の最高温度が100℃を超えるような重合条件下における、特定のモノマー濃度領域でゲル層膨潤圧に優れた吸水性樹脂が得られることを見出した。
【0129】
すなわち、本発明において重合して吸水性樹脂となる単量体成分の濃度は、30〜60重量%が好ましく、さらに好ましくは30〜45重量%が、さらに好ましくは30〜40重量%、さらに好ましくは30〜35重量%である。30重量%未満では生産性が低く、60重量%を超えると吸水性樹脂のゲル層膨潤圧が低くなる。
【0130】
ゲル層膨潤圧が高くなる要因としては、該重合法を特定のモノマー濃度に適用した場合、使用架橋剤量を多く使用できる点にある。通常使用架橋剤量が増加すると液体の吸収倍率が低下するのは全くもって公知の事実であるが、本発明においては架橋剤量を多く使用しても、高い保持能力を有して、かつ高いゲル層膨潤圧の吸水性樹脂が得られる。この現象に対しての明確な理由は定かでないが、架橋剤量を多く使用してなお、高い液体保持能力を有していることから、吸水性樹脂全体がより均一でかつ液体保持に最適な架橋構造を形成しているためと推測される。
【0131】
上記概念に基づき、主鎖の分子量を抑える水溶性の連鎖移動剤を併用することによって、さらに本発明の吸水性樹脂のゲル層膨潤圧は向上し、本発明の物性を更に満足する。
【0132】
本発明に用いられる水溶性連鎖移動剤としては、上記実施の形態1の記載されている水溶性連鎖移動剤を適用しうる。
【0133】
また、本実施形態で用いられる水溶性連鎖移動剤の使用量も、上記実施の形態1と同様である。
【0134】
酸基含有単量体の中和率には、特に制限はないが、衛生用品等、人体に触れる可能性のある用途では、50〜100モル%が好ましい。より好ましくは50〜80モル%、より好ましくは55〜78モル%、最も好ましくは60〜75モル%である。
【0135】
アクリル酸をアルカリで中和して用いる場合には、中和熱および/または(アクリル酸およびアルカリの)溶解熱を、単量体水溶液の昇温に有効に利用することが好ましい。好ましい実施態様では、断熱状態で中和により昇温した単量体水溶液に、架橋剤および開始剤を添加して重合開始させる。あるいは、後述するように、中和熱および/または(アクリル酸およびアルカリの)溶解熱を溶存酸素の除去に利用する。
【0136】
上記単量体成分の重合方法としては、バルク重合や沈殿重合を行うことが可能であるが、性能面や重合の制御の容易さ、さらに膨潤ゲルの吸収特性の観点から、上記単量体を水溶液とすることによる水溶液重合や逆相懸濁重合を行うことが好ましい。特に好ましくは水溶液重合である。水溶液重合であれば、特に限定されるものではなく、単量体水溶液を静置状態で重合する静置重合法、攪拌装置内で重合する攪拌重合法などで本発明を実施することができる。
【0137】
静置重合法ではエンドレスベルトを用いるのが好ましい。ベルトは重合熱を接材面から逃がしにくい樹脂ないしゴム製のベルトが好ましい。
【0138】
攪拌重合法では、一軸攪拌機でも可能であるが、複数攪拌軸の攪拌機が好ましく用いられる。
【0139】
一般にラジカル水溶液重合では、重合開始剤投入前に、不活性ガスを吹き込んだり、減圧脱気したりして、重合を阻害する溶存酸素を除去することを行うが、そのための設備、運転経費を要しているのが実状である。本発明の好ましい実施態様では、溶存酸素の除去作業を、前述した、中和熱および/または(アクリル酸およびアルカリの)溶解熱を利用し、単量体水溶液を昇温し、溶存酸素を揮散させることにより行う。その際溶存酸素を揮散させるのに十分な単量体水溶液の昇温が得られない場合には、あらかじめ混合前の各成分(単量体水溶液および/またはアルカリ水溶液および/または純水)を昇温しておくことが好ましい。
【0140】
より好ましい実施態様では、単量体水溶液の原料であるアクリル酸、アルカリ水溶液、水などを、あらかじめ脱酸素することなく中和により昇温し、溶存酸素量を、単量体水溶液に対して好ましくは4ppm以下、より好ましくは2ppm以下、最も好ましくは1ppm以下にし、そのまま脱酸素作業をすることなしに重合に供することができる。
【0141】
また、単量体水溶液の原料であるアクリル酸、アルカリ水溶液、水などの一部または全部をあらかじめ部分的に脱酸素しておき、中和による昇温によって、さらに脱酸素するのも好ましい。また、アクリル酸とアルカリをラインミキシング中和し、さらに重合開始剤をラインミキシングして80℃以上の高温度で重合開始する場合には、ライン中での重合開始を防ぐために、原料のアクリル酸、アルカリ水溶液、水などは前もって脱酸素しないのが好ましい。
【0142】
重合は、通常、常圧下で行われるが、重合系の沸騰温度を下げるために減圧下に水を留去しながら行うのも好ましい態様である。操作の容易さ等のため、より好ましくは常圧下で行う。
【0143】
単量体温度は、予め高くしておくことが好ましい。その理由は、このようにすることで、先に述べた溶存酸素の除去が容易になるからであり、かつ、次に述べる、好ましい重合開始温度が直ちに実現できるからでもある。このような単量体温度は特に限定されないが、通常50℃以上単量体水溶液の沸騰温度以下であり、好ましくは60℃以上単量体水溶液の沸騰温度以下、より好ましくは70℃以上単量体水溶液の沸騰温度以下、より好ましくは80℃以上単量体水溶液の沸騰温度以下であり、より好ましくは80℃〜120℃、最も好ましくは90〜110℃である。50℃未満であると、誘導期間、重合時間の延びのため生産性が低下するのみならず、吸水性樹脂の物性も低下する。なお、重合時間とは、単量体水溶液が重合容器に入れられ、重合開始条件が整った時から、ピーク温度までの時間を指す。
【0144】
重合開始温度は通常50〜120℃で、好ましくは60〜120℃、より好ましくは70〜120℃以上、より好ましくは80〜110℃、より好ましくは90〜110℃、より好ましくは90℃〜105℃、最も好ましくは90〜100℃である。50℃未満であると、誘導期間、重合時間の延びのため生産性が低下するのみならず、吸水性樹脂の物性も低下する。重合開始温度が105℃を超える場合には発泡や延伸が十分に起こらない場合がある。重合開始温度は単量体水溶液の白濁、粘度上昇などにより観測することができる。
【0145】
なお、この単量体水溶液の温度を確保し、重合開始を起こさせるためには、前述したように単量体水溶液の中和熱および/または(アクリル酸およびアルカリの)溶解熱を利用することが好ましい。
【0146】
本発明の特徴として単量体水溶液を沸騰重合させることがあげられる。ここで言う沸騰重合とは、重合時の最高到達温度が100℃を超えるような重合を指し、これにより本発明の吸水性樹脂(吸水剤)を得ることができる。
【0147】
重合中の最高到達温度は、好ましくは100〜150℃、より好ましくは100〜130℃、より好ましくは100〜120℃、最も好ましくは100〜115℃である。100℃未満および150℃を超えると、得られる重合体(含水重合体、および吸水性樹脂粒子)の物性が低下する点で好ましくない。
【0148】
本発明においては、重合開始温度と重合中の最高到達温度との差ΔTが、好ましくは70℃以下であり、より好ましくは60℃以下、更に好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下、最も好ましくは25℃以下である。ΔTが70℃よりも大きいと、得られる重合体(含水重合体、および吸水性樹脂粒子)の物性が低下する点で好ましくない。
【0149】
重合時間は特に限定されないが、好ましくは5分以下、より好ましくは3分以下、より好ましくは2分以下、さらに好ましくは1分以下である。5分を超えると、得られる重合体(含水重合体、および吸水性樹脂)の生産性が低下する点で好ましくない。
【0150】
また、本発明の方法は、重合の開始時から高温度で重合することが特徴であり、高性能の原因を成しているものと推察される。常圧下での重合では、重合率が40モル%では既に100℃以上の温度になり、重合率が50モル%でもやはり100℃以上の温度であるような重合が好ましい態様である。重合率が30モル%では既に100℃以上の温度になり、重合率が50モル%でもやはり100℃以上の温度であるような重合がより好ましい態様である。重合率が20モル%では既に100℃以上の温度になり、重合率が50モル%でもやはり100℃以上の温度であるような重合が好ましい態様である。減圧重合の場合には、やはり重合率が40モル%では既に沸騰温度になり、重合率が50モル%でもやはり沸騰温度であるような重合が好ましい態様である。重合率が30モル%では既に沸騰温度になり、重合率が50モル%でもやはり沸騰温度であるような重合が、より好ましい態様であり、重合率が20モル%では既に沸騰温度になり、重合率が50モル%でもやはり沸騰温度であるような重合が最も好ましい態様である。
【0151】
このように、低い重合率で高温になるので、重合所要時間も短く、10分以下で終わるのが通例で、好ましくは5分以下である。ここで重合所要時間は、重合開始剤を添加した単量体水溶液を重合容器に入れた時から、含水重合体を重合容器から取り出すまでの時間を指す。
【0152】
本発明では、重合により生成する含水重合体の固形分濃度と単量体水溶液の固形分濃度との比(濃縮比)が、好ましくは1.10〜1.50、より好ましくは1.15〜1.45、さらに好ましくは1.25〜1.40であるように水分を蒸発させながら重合することが望ましい。濃縮比が1.10未満では、重合熱の利用が十分とは言えない。ここで単量体水溶液の固形分とは、単量体およびその他の添加剤であり、水や溶剤は含まない。
【0153】
上記の重合により得られた、含水重合体は、その固形分濃度が、好ましくは35〜65重量%、より好ましくは40〜60重量%、さらに好ましくは40〜50重量%である。この固形分濃度が65重量%を超えると粉砕工程の負荷が大きく、物性も低下するため好ましくない。
【0154】
上記の含水重合体は、細分化後、乾燥・粉砕されて、吸水性樹脂(表面処理を施す前の吸水性樹脂)を得ることができる。
【0155】
本発明により得られる含水重合体は肉挽き機(ミートチョッパー)型の解砕機等で容易に解砕できる。
【0156】
上記含水重合体の粉砕物の乾燥は、上記実施の形態1と同様の乾燥温度を適用しうる。
【0157】
本発明に用いることのできる吸水性樹脂の含水率は、前記実施の形態1に記載された吸水性樹脂(D)の含水率と同様である。
【0158】
本発明の吸水性樹脂の粒度分布及び粒度分布の対数標準偏差は、前記実施の形態1に記載された吸水性樹脂(D)と同様である。
【0159】
本発明の吸水性樹脂は前記の粒度分布に調整されることで液透過性の優れた本発明の吸水剤を得ることができる。
【0160】
(2)吸水性樹脂の物性および形状
以下、本発明の吸水性樹脂の物性および形状を説明する。
【0161】
本発明の吸水性樹脂の形状は通常、粒子状であり、その粒度分布やその対数標準偏差は前記の範囲、すなわち、850μm未満で106μm以上の粒子が全体の95重量%以上、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45以下、さらに好ましくは前記の範囲である。
【0162】
また、吸水性樹脂の0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)は、好ましくは前記実施の形態1に記載された吸水性樹脂(D)と同様である。
【0163】
また、後述する測定法によって測定される吸水性樹脂のゲル層膨潤圧(B)の値は、3.50(kPa)以上が好ましく、さらに好ましくは、4.00(kPa)以上である。ゲル層膨潤圧(B)の値が3.50(kPa)未満では、吸水性樹脂内部の本質的なゲル強度が低下し、該吸水性樹脂を表面架橋した後、後述する液透過性向上剤を含んでも、目的とする液透過特性が得られない恐れがある。
【0164】
(3)表面架橋
本発明で用いられる吸水剤は、好ましくは、前記方法により得られた吸水性樹脂の表面を前記実施の形態1の記載と同様の架橋処理をすることによって得られる。なお、使用される表面架橋剤の使用量についても、実施の形態1と同様である。
【0165】
(4)液透過性向上剤
本実施形態で使用される液透過性向上剤は、上記実施の形態1に記載された液透過性向上剤を適用しうる。
【0166】
(5)吸水剤の物性および形状 以下、本発明の吸水剤の物性および形状をさらに説明する。
【0167】
本発明の吸水剤の形状、粒度分布、粒度分布の対数標準偏差(σζ)、重量平均粒子径(D50)、0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)、0.69重量%食塩水流れ誘導性(SFC)、0.9重量%食塩水の加圧下吸収倍率(AAPs)、毛管吸収倍率(CSF)、水可溶分、含水率、嵩比重、燐化合物の含有量、液透過性向上剤の含有量は、上記実施の形態1の記載と同様である。
【0168】
すなわち、本発明は、アクリル酸および/またはその塩を主成分とする単量体を架橋重合して得られた吸水性樹脂をさらに表面架橋した吸水性樹脂粒子を主成分とする粒子状吸水剤であって、
0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)が20〜32g/g
加圧下吸水倍率(AAPs)が22g/g以上
0.69重量%食塩水流れ誘導性(SFC)が80〜300(10−7・cm3・s・g
−1)
850μm未満で106μm以上の粒子が全体の95重量%以上、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45の吸水剤を与える。かかる新規な吸水剤は好ましくは連鎖移動剤、さらには燐化合物を重合体内部に含む。
【0169】
また、液透過性向上剤を含む本発明の吸水剤は、好ましくは、使用液透過性向上剤1重量%当たりの0.69重量%食塩水流れ誘導性(SFC)増加倍率(Increasing Rate of SFC/以下IRS)が3.5倍以上である。増加倍率(IRS)はより好ましくは4.0倍以上、さらに好ましくは6.0倍以上、さらに好ましくは8.0倍以上である。IRSが3.5倍未満では、高い液透過性を得るために必要な無機微粒子などの液透過性向上剤の使用量が増加する点で好ましくない。
【0170】
(6)吸水剤の用途
本発明の吸水剤は好ましくは、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等の衛生材料に使用される。吸水剤は繊維材料と複合化されシート化されるなどして吸収体とされる。吸収体中で本発明の吸水剤は10重量%以上、さらには20重量%以上の高濃度で使用される。かかる吸収体は、液体透過性のトップシート、および、液体に対して不透過性のバックシート、の間に配置された構成で使用されることが好ましい。吸収体は二層以上であっても良いし、パルプ層などとともに用いても良い。
【0171】
本発明の吸水剤が衛生材料に用いられる場合、表面架橋された吸水性樹脂に液透過性向上剤が添加されていることで、水性液に対する拡散性に優れ、また表面架橋される前の吸水性樹脂のゲル層膨潤圧に優れるために、膨潤後のゲルブロッキングを起こし難く、おむつなどの吸収体中に高濃度で使用した場合においても、2回目以降の尿や体液が吸収体表面で行き場を失うことなく吸収体の内部に拡散することが出来、内部の吸水性樹脂に尿や体液を分配することができる。
【0172】
更に本発明の吸水性樹脂を表面架橋してなる吸水性樹脂粒子においては液透過性向上剤の添加量に対するSFCの向上倍率に優れ、所望の液透過性を得る場合、その添加量を従来よりも削減することができる。これにより、製造ライン中での粉立ちや排気口の詰まりを防止し、また無機微粒子等の使用量を削減できるため、高い液透過特性を有し、かつ安全性に優れた吸水性樹脂を提供することができる。
【0173】
また、本発明は、以下の発明を包含する。
【0174】
(I)アクリル酸およびその塩を含む単量体を重合して得られる架橋構造を有する吸水性樹脂が表面架橋された吸水性樹脂粒子を主成分とする吸水剤であって、
該吸水剤が、下記(a)〜(e)の要件を満たす吸水剤
(a)850μm未満で150μm以上の粒子が全体の90重量%以上
(b)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45
(c)0.9重量%食塩水の加圧下吸収倍率(AAPs)が20g/g以上
(d)0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)が29g/g以上、39g/g未満の範囲
(e)以下の式1で表される化学架橋指数が160以上
化学架橋指数=(CRCs)/(CRCdw)×1000 (式1)
CRCs(g/g):0.9重量%食塩水の吸収倍率
CRCdw(g/g):純水の吸収倍率。
【0175】
(II)アクリル酸およびその塩を含む単量体を重合して得られる架橋構造を有する吸水性樹脂が表面架橋された吸水性樹脂粒子を主成分とする吸水剤であって、
該吸水剤が、下記(a)〜(c)および(f),(g)の要件を満たす吸水剤
(a)850μm未満で150μm以上の粒子が全体の90重量%以上
(b)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45
(c)0.9重量%食塩水の加圧下吸収倍率(AAPs)が20g/g以上
(f)0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)が15g/g以上、29g/g未満
(g)以下の式2で表される加圧下化学架橋指数が100以上
加圧下化学架橋指数=(CRCs)+(AAPdw) (式2)
CRCs(g/g):0.9重量%食塩水の吸収倍率
AAPdw(g/g):純水の加圧下吸収倍率。
【0176】
(III)前記加圧下化学架橋指数が115以上である(II)に記載の吸水剤。
【0177】
(IV)前記吸水剤がリン原子を含む(II)または(III)に記載の吸水剤。
【0178】
(V)前記吸水剤の食塩水流れ誘導性(SFC)が30〜3000(10−7・cm・s・g−1)である(II)〜(IV)のいずれか一つに記載の吸水剤。
【0179】
(VI)前記吸水剤の食塩水流れ誘導性(SFC)が100〜250(10−7・cm・s・g−1)である請求項(II)〜(V)のいずれか一つに記載の吸水剤。
【0180】
(VII)前記吸水剤が、鉱産物、アルミニウム化合物類、その他多価金属塩類、親水性のアモルファスシリカ類、酸化物複合体類、からなる群より選ばれる液透過性向上剤を含む請求項(II)〜(VI)のいずれか一つに記載の吸水剤。
【0181】
(VIII)前記液透過性向上剤が多価金属化合物である請求項(VII)に記載の吸水剤。
【0182】
(IX)アクリル酸および/またはその塩を主成分とする単量体を架橋重合して得られた吸水性樹脂をさらに表面架橋した吸水性樹脂粒子を主成分とする吸水剤の製造方法であって、前記架橋重合は、単量体に対して水溶性連鎖移動剤0.001〜10モル%の存在下にて沸騰重合する吸水剤の製造方法。
【0183】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。さらに、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0184】
吸水性樹脂または吸水性樹脂粒子または吸水剤の諸性能は、以下の方法で測定した。特に記載が無い限り下記の測定は室温(23±2℃)、湿度50RH%の条件下で行われたものとする。また、以下の測定法には具体例として吸水剤を挙げているが、吸水性樹脂または吸水性樹脂粒子においても同様の測定法が適用できる。
【0185】
なお、衛生材料などの最終製品として使用された吸水剤の場合は、吸水剤は吸湿しているので、適宜、吸水剤を最終製品から分離して減圧低温乾燥後(例えば、1mmHg以下、60℃で12時間)に測定すればよい。また、本発明の実施例および比較例において使用された吸水剤の含水率はすべて6重量%以下であった。
【0186】
(1)0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)
0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)は0.9重量%食塩水に対する無加圧下で30分の吸収倍率を示す。本発明において、0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)と無加圧下吸収倍率とは同義である。
【0187】
吸水性樹脂または、吸水剤0.20gを不織布製(南国パルプ工業(株)製、商品名:ヒートロンペーパー、型式:GSP−22)の袋(85mm×60mm)に均一に入れてシールした後、室温で大過剰(通常500ml程度)の0.9重量%食塩水中に浸漬した。(吸水性樹脂のCRCsを測定する場合には、300〜500μmに分級したものを使用する。該当する粒度範囲が存在しないサンプルの場合には、分級せずにそのままの粒度で測定に用いる)。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン社製、遠心機:型式H−122)を用いてedana ABSORBENCY II 441.1−99に記載の遠心力(250G)で3分間水切りを行った後、袋の重量W1(g)を測定した。また、同様の操作を、吸水性樹脂あるいは吸水剤を用いずに行い、その時の重量W0(g)を測定した。そして、これらW1、W0から、次式に従って0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)(g/g)を算出した。
【0188】
0.9重量%食塩水の吸収倍率(g/g)
=(W1(g)−W0(g))/(吸水剤の重量(g))−1
(2)純水の吸収倍率(CRCdw)
純水の吸収倍率(CRCdw)は純水に対する無加圧下で30分の吸収倍率を示す。なお、純水の電気伝導率は25℃において、1.0〜2.0μS/cmとする。
【0189】
吸水剤0.050gを、前記(1)0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)にて用いた、不織布製の袋(85mm×60mm)に均一に入れてシールした後、室温で大過剰(通常500ml程度)の純水中に浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン社製、遠心機:型式H−122)を用いてedana ABSORBENCY II 441.1−99に記載の遠心力で3分間水切りを行った後、袋の重量W2(g)を測定した。また、同様の操作を吸水剤を用いずに行い、その時の重量W0(g)を測定した。そして、これらW2、W0から、次式に従って純水の吸収倍率(g/g)を算出した。
【0190】
純水の吸収倍率(g/g)
=(W2(g)−W0(g))/(吸水剤の重量(g))−1
(3)0.9重量%食塩水の加圧下吸収倍率(AAPs)
0.9重量%食塩水の加圧下吸収倍率(AAPs)は0.9重量%食塩水に対する4.83kPaで60分の加圧下吸収倍率を示す。図3を参照して、0.9重量%食塩水の加圧下吸収倍率(AAPs)を測定するための装置および方法を記載する。
【0191】
内径60mmのプラスチックの支持円筒100の底に、ステンレス製400メッシュの金網101(目の大きさ38μm)を融着させ、室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で、該網上に吸水性樹脂組成物0.90gを均一に散布し、その上に、吸水剤に対して4.83kPa(0.7psi)の荷重を均一に加えることができるよう調整された、外径が60mmよりわずかに小さく支持円筒との隙間が生じず、かつ上下の動きが妨げられないピストン103と荷重104とをこの順に載置し、この測定装置一式の重量Wa(g)を測定した。
【0192】
直径150mmのペトリ皿105の内側に直径90mmのガラスフィルター106(株式会社相互理化学硝子製作所社製、細孔直径:100〜120μm)を置き、0.9重量%食塩水108(20〜25℃)をガラスフィルターの上面と同じレベルになるように加えた。その上に、直径90mmの濾紙107(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を1枚載せ、表面が全て濡れるようにし、かつ過剰の液を除いた。
【0193】
上記測定装置一式を前記湿った濾紙上に載せ、液を荷重下で吸収させた。また、吸水剤が膨潤中に0.9重量%食塩水108の液面がガラスフィルター106の上面と同じレベルを保つように、随時液を加えた。1時間後、測定装置一式を持ち上げ、その重量Wb(g)を測定した。そして、Wa、Wbから、下記の式に従って加圧下吸収倍率(g/g)を算出した。
【0194】
0.9重量%食塩水の加圧下吸収倍率(g/g)
=(Wb(g)−Wa(g))/(吸水剤の重量(0.90g))
(4)純水の加圧下吸収倍率(AAPdw)
加圧下吸収倍率(AAPdw)は純水に対する4.83kPaで60分の加圧下吸収倍率を示す。
【0195】
上記(3)0.9重量%食塩水の加圧下吸収倍率(AAPs)の被吸収液を、0.9重量%食塩水から純水に変えたこと以外は同様の操作を行いAAPdwを求めた。
【0196】
(5)重量平均粒子径(D50)および粒度分布の対数標準偏差(σζ)
吸水剤を目開き850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、45μmなどのJIS標準ふるいで篩い分けし、残留百分率Rを対数確率紙にプロットした。これにより、R=50重量%に相当する粒径を重量平均粒子径(D50)として読み取った。また、対数標準偏差(σζ)は下記の式で表され、σζの値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
【0197】
σζ = 0.5 × ln(X2/X1)
(X1はR=84.1%、X2はR=15.9%の時のそれぞれの粒径)
重量平均粒子径(D50)および対数標準偏差(σζ)を測定する際の分級方法は、吸水剤10.0gを、室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で、目開き850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、45μmのJIS標準ふるい(THE IIDA TESTING SIEVE:径8cm)に仕込み、振動分級器(IIDA SIEVE SHAKER、TYPE:ES−65型、SER.No.0501)により、5分間、分級を行った。ここでいう、対数標準偏差は粒子径の対数標準偏差または粒度分布の対数標準偏差と同じ意味である。
【0198】
(6)0.69重量%食塩水流れ誘導性(SFC)
0.69重量%食塩水流れ誘導性(SFC)は吸水剤の膨潤時の液透過性を示す値である。SFCの値が大きいほど高い液透過性を有することを示している。
【0199】
特表平9−509591の塩水流れ誘導性(SFC)試験に準じて行った。
【0200】
図1に示す装置を用い、容器40に均一に入れた吸水剤(0.900g)を人工尿(1)中で0.3psi(2.07kPa)の加圧下、60分間膨潤させ、ゲル44のゲル層の高さを記録し、次に0.3psi(2.07kPa)の加圧下、0.69重量%食塩水33を、一定の静水圧でタンク31から膨潤したゲル層を通液させる。このSFC試験は室温(20〜25℃)で行った。コンピューターと天秤を用い、時間の関数として20秒間隔でゲル層を通過する液体量を10分間記録する。膨潤したゲル44(の主に粒子間)を通過する流速Fs(T)は増加重量(g)を増加時間(s)で割ることによりg/sの単位で決定する。一定の静水圧と安定した流速が得られた時間をTsとし、Tsと10分間の間に得たデータだけを流速計算に使用して、Tsと10分間の間に得た流速を使用してFs(T=0)の値、つまりゲル層を通る最初の流速を計算する。Fs(T=0)はFs(T)対時間の最小2乗法の結果をT=0に外挿することにより計算される。
【0201】
0.69重量%食塩水流れ誘導性
=(Fs(T=0)×L0)/(ρ×A×ΔP)
=(Fs(T=0)×L0)/139506
ここで、
Fs(T=0):g/sで表した流速
L0:cmで表したゲル層の高さ
ρ:NaCl溶液の密度(1.003g/cm
A:セル41中のゲル層上側の面積(28.27cm
ΔP:ゲル層にかかる静水圧(4920dyne/cm
およびSFC値の単位は(10−7・cm・s・g−1)である。
【0202】
図1に示す装置としては、タンク31には、ガラス管32が挿入されており、ガラス管32の下端は、0.69重量%食塩水33をセル41中の膨潤ゲル44の底部から、5cm上の高さに維持できるように配置した。タンク31中の0.69重量%食塩水33は、コック付きL字管34を通じてセル41へ供給された。セル41の下には、通過した液を補集する容器48が配置されており、補集容器48は上皿天秤49の上に設置されていた。セル41の内径は6cmであり、下部の底面にはNo.400ステンレス製金網(目開き38μm)42が設置されていた。ピストン46の下部には液が通過するのに十分な穴47があり、底部には吸水剤あるいはその膨潤ゲルが、穴47へ入り込まないように透過性の良いガラスフィルター45が取り付けてあった。セル41は、セルを乗せるための台の上に置かれ、セルと接する台の面は、液の透過を妨げないステンレス製の金網43の上に設置した。
【0203】
人工尿(1)は、塩化カルシウムの2水和物0.25g、塩化カリウム2.0g、塩化マグネシウムの6水和物0.50g、硫酸ナトリウム2.0g、りん酸2水素アンモニウム0.85g、りん酸水素2アンモニウム0.15g、および、純水994.25gを加えたものを用いた。
【0204】
(7)毛管吸収倍率(CSF)
CSFは吸水剤の毛管吸引力をあらわす指標である。
【0205】
本発明の毛管吸収倍率は20cmの負の圧力勾配における所定時間内での吸収体の液体の吸収能力を0.06psi(0.41kPa)荷重下で測定する。図2を参照して、これらの毛管吸収能力を測定するための装置および方法を記載する。
【0206】
1.多孔質ガラス板2(グラスフィルター粒子番号#3; 株式会社相互理化学硝子製作所製のBuccaneer型フィルターTOP17G−3(code no.1175−03))の液吸収面を有する直径60mmのグラスフィルター1の下部に導管3をつなぎ、この導管3を直径10cmの液溜容器4の下部に備え付けられている口に接続する。前記グラスフィルター1の多孔質ガラス板2は平均孔径が20〜30μmであって、その毛管力によって60cmの液面高さの差を付けた状態でも水柱の負圧に抗して多孔質ガラス板内に水を保持することが出来、空気の導入が無い状態を保てるものである。グラスフィルター1に高さを上下させるための支持リング11をはめ、系に0.9重量%食塩水5を満たし、液溜容器4を天秤上6に載せる。導管中、およびグラスフィルター1の多孔質ガラス板2の下部に空気がないことを確認してから液溜容器4中の0.9重量%食塩水5上部の液面レベルと多孔質ガラス板2の上面の高低差が20cmになるように調節してグラスフィルター1をスタンド7に固定する。
【0207】
2.多孔質ガラス板2上に測定試料8(吸水剤)0.44gをロート中のグラスフィルター上に均一にすばやく散布し、さらその上に直径59mmの荷重9(0.06psi(0.41kPa))を載せ、30分後に測定試料8に吸収された0.9重量%食塩水の値(W20)を測定する。
毛管吸収倍率は以下の式で求められる。
【0208】
吸水剤の20cm高さでの毛管吸収倍率D1(g/g)
=吸収量(W20)(g)/0.44(g)
(8)可溶分(水可溶成分)量
250ml容量の蓋付きプラスチック容器に0.9重量%食塩水184.3gをはかり取り、その水溶液中に吸水性樹脂または吸水剤1.00gを加え16時間、スターラーを回転させ攪拌することにより樹脂中の可溶分を抽出した。この抽出液を濾紙1枚(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を用いて濾過することにより得られた濾液の50.0gを測り取り測定溶液とした。
【0209】
はじめに0.9重量%食塩水だけを、まず、0.1NのNaOH水溶液でpH10まで滴定を行い、その後、0.1NのHCl水溶液でpH2.7まで滴定して空滴定量([bNaOH]ml、[bHCl]ml)を得た。
【0210】
同様の滴定操作を測定溶液についても行うことにより滴定量([NaOH]ml、[HCl]ml)を求めた。
【0211】
例えば既知量のアクリル酸とそのナトリウム塩からなる吸水剤の場合、そのモノマーの平均分子量と上記操作により得られた滴定量をもとに、吸水性樹脂中の可溶分量を以下の計算式により算出することができる。未知量の場合は滴定により求めた中和率を用いてモノマーの平均分子量を算出する。
【0212】
可溶分(重量%)=0.1×(平均分子量)×184.3×100×([HCl]−[bHCl])/1000/1.0/50.0
中和率(mol%)=(1−([NaOH]−[bNaOH])/([HCl]−[bHCl]))×100
(9)吸水体の評価方法
本発明の吸水剤を用いた吸水体の評価を以下の方法で行った。
【0213】
特開平10−265582号(US6110992)に記載された方法を参考にして、液透過性トップシートと液不透過性バックシートに挟まれた吸水体を作成した。吸水体中に含まれる本発明の吸水剤の重量は、50重量%以上の範囲であった。この吸水体に成人の人尿を3倍に薄めたものを吸収させることで評価を行った。評価は、吸収量、液の取り込み速度、吸収後の加圧下のドライタッチ性、16時間経過後の膨潤ゲル安定性の4点について、それぞれ1〜5の五段階評価で行った。五段階評価の基準を以下に示す。
5:非常に良い
4:良い
3:普通
2:悪い
1:非常に悪い
上記評価項目4項目の五段階評価点の合計点を総合評価点とし、吸水体の性能評価とした。評価点が高い吸水体の方が優れた吸水体である。
【0214】
(10)ゲル層膨潤圧(Swelling Pressure of Gel Layer; SPGL)
図4に示したような構造の測定装置(Accuforce Cadnet Force Gage X5931C(デジタルフォースゲージ)、AMETEK社製)を用い、次の方法により測定した。300〜500μmに分級した吸水性樹脂(a)0.358gをFISHER ELECTRO-PHOTOMETER用セル(b)に入れ、25℃に調温された前記人工尿(1)(c)10gを上記セル(b)に投入した(測定する吸水性樹脂の粒度に関して、該当する粒度範囲が存在しないサンプルの場合には、分級せずにそのままの粒度で測定に用いる)。すぐさま、ポリエチレン製落とし蓋(d)を浮かべ、その落とし蓋(d)に直径20mmの円形プレートを有する荷重測定支持棒(e)が重なるよう昇降レバーおよび調節つまみにより調整した。次に人工尿(c)10gをさらに加え、膨潤した吸水性樹脂のゲル層が落とし蓋(d)に到達した後、30分間測定を行った。SPGLの算出に用いる測定値としては30分間の測定における最大値を採用した。次式に従ってSPGL(A)の算出を行った。
【0215】
SPGL(A)[0.1×kPa] =Force Gage測定値[g]×981[cm・s-2]/3.14[cm2]/1000
ここで、SPGL(A)の値は上記算出式により、測定された値(荷重[g])を単位面積当たりの力として変換したものである。SPGL(A)の値は図5に示されるように測定に用いたサンプルの0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)の値に大きく依存する。従って、測定する吸水性樹脂のCRCsが異なればこの値を用いて優劣を簡単に判断することはできない。そこで図5より実験的に求められたCRCsとSPGL(A)との関係式(近似式)を用いて同一CRCsでのSPGLの比較を行った(図5のデータは後述する比較例14と同様の重合方法を用い、モノマー濃度39重量%、中和率71.3モル%で架橋剤量のみ0.02〜0.20まで変化させて重合を行った結果得られた吸水性樹脂に対する測定値である(表16))。次式の換算式を用い、CRCs=40[g/g]での換算値、SPGL(B)を算出した。
【0216】
SPGL(B)[0.1×kPa] =201.35×e([ln(SPGL(A)/201.35)]/CRCs×40)
ここでln(SPGL(A)/201.35)は(SPGL(A)/201.35)の自然対数を表す。
【0217】
以下実施例で示されるSPGLの値は全てCRCs=40[g/g]での換算値(SPGL(B))として示す。
【0218】
(11)使用液透過性向上剤1重量%当たりのSFC増加倍率(Increasing Rate of SFC;IRS)
液透過性向上剤を添加する前の表面が架橋された吸水性樹脂粒子のSFC(A)と、液透過性向上剤を加えた後の吸水剤のSFC(B)を測定し、以下の計算式より算出した。
【0219】
使用液透過性向上剤1重量%当たりのSFC増加倍率=(SFC(B)−SFC(A))/(SFC(A))/(使用した液透過性向上剤の重量%)
なお、ここで言う(使用した液透過性向上剤の重量%)に関して、液透過性向上剤が水溶液の形で添加される場合にはその水溶液中に溶解している化合物(例えば多価金属化合物)の重量を基準として算出する。
【0220】
(12)含水重合体の固形分濃度の測定
重合器から取りだされた含水重合体の一部を少量切り取って素早く冷やし、はさみで素早く細分化した含水重合体5gを内径50mmのシャーレに取り、180℃静置乾燥機中で12時間乾燥して算出した。
【0221】
固形分濃度(重量%)=乾燥後の含水重合体重量(g)/乾燥前の含水重合体重量(g)×100
(13)濃縮比の算出
重合により生成する含水重合体の固形分濃度と単量体水溶液中の固形分濃度との比(濃縮比)である。ここで、単量体水溶液中の固形分とは、単量体およびその他の添加剤であり、水や溶剤は含まない。例えば、単量体水溶液中の固形分濃度が40重量%で、生成する含水重合体の固形分濃度が48重量%の場合、濃縮比=48/40=1.20となる。
【0222】
(a)重合および表面処理
(実施例1)
シグマ型羽根を2本有する内容積10リットルのジャケット付きステンレス型双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、71モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5432g(単量体濃度39重量%)にポリエチレングリコールジアクリレート11.9g(0.1モル%)、および亜燐酸水素2ナトリウム5水和物3.65gを溶解させて反応液とした。次にこの反応液を窒素ガス雰囲気下で、30分間脱気した。続いて、反応液に10重量%過硫酸ナトリウム水溶液29.36gおよび0.1重量%L−アスコルビン酸水溶液24.47gを攪拌しながら添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。そして、生成したゲルを粉砕しながら、20〜95℃で重合を行い、重合が開始して30分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出した。
【0223】
得られた含水ゲル状架橋重合体は、その径が約5mm以下に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥した。得られた吸水性樹脂をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmおよび150μmのJIS標準篩で分級し、粒度分布を調整することにより、吸水性樹脂(D1)を得た。得られた吸水性樹脂(D1)のCRCsは35.2g/gであった。この吸水性樹脂(D1)100gにエチレングリコール1.0g、純水2.5gからなる水溶液を混合した。上記の混合物を210℃で20分間加熱処理し、60℃まで冷却した後に、目開き600μmのJIS標準篩を通過させて吸水性樹脂粒子(E1)を得た。得られた吸水性樹脂粒子(E1)を吸水剤(1)とした。
【0224】
(実施例2)
実施例1における反応液を、71モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5416g(単量体濃度39重量%)にポリエチレングリコールジアクリレート11.9g(0.1モル%)、および亜燐酸水素2ナトリウム5水和物18.23gを溶解させたものにかえて同様の重合、乾燥操作を行った。得られた吸水性樹脂をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmおよび150μmのJIS標準篩で分級し、粒度分布を調整することにより、吸水性樹脂(D2)を得た。得られた吸水性樹脂(D2)のCRCsは39.4g/gであった。この吸水性樹脂(D2)100gに2−オキサゾリドン0.5g、プロピレングリコール0.5g、純水3.0gからなる水溶液を混合した。上記の混合物を200℃で30分間加熱処理し、60℃まで冷却した後に、目開き710μmのJIS標準篩を通過させて吸水性樹脂粒子(E2)を得た。得られた吸水性樹脂粒子(E2)を吸水剤(2)とした。
【0225】
(実施例3)
実施例1における反応液を、71モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5426g(単量体濃度39重量%)にポリエチレングリコールジアクリレート11.9g(0.1モル%)、および亜燐酸水素2ナトリウム5水和物2.19gを溶解させたものにかえて同様の重合、乾燥操作を行った。得られた吸水性樹脂をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmおよび150μmのJIS標準篩で分級し、粒度分布を調整することにより、吸水性樹脂(D3)を得た。得られた吸水性樹脂(D3)のCRCsは32.8g/gであった。この吸水性樹脂(D3)100gに1,4−ブタンジオール1.0g、純水2.5gからなる水溶液を混合した。上記の混合物を200℃で20分間加熱処理し、60℃まで冷却した後に、目開き850μmのJIS標準篩を通過させて吸水性樹脂粒子(E3)を得た。得られた吸水性樹脂粒子(E3)を吸水剤(3)とした。
【0226】
(実施例4)
実施例1で得られた吸水性樹脂粒子(E1)100gに、硫酸アルミニウム14〜18水和物(浅田化学工業株式会社製)1.5gおよび純水1.6gからなる水溶液を均一に混合した。この混合物を60℃で30分間乾燥し、目開き600μmのJIS標準篩を通過させた。得られた組成物を吸水剤(4)とした。
【0227】
(実施例5)
実施例2で得られた吸水性樹脂粒子(E2)100gに、ポリビニルアミン20重量%水溶液2.0gおよびReolosil QS−20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA製)0.3gを均一に混合した。この混合物を60℃で30分間乾燥し、目開き710μmのJIS標準篩を通過させた。得られた組成物を吸水剤(5)とした。
【0228】
(実施例6)
実施例3で得られた吸水性樹脂粒子(E3)100gに、硫酸アルミニウム14〜18水和物(重量平均粒子径約150μm)1.0gを均一に混合した。得られた組成物を吸水剤(6)とした。
【0229】
(比較例1)
実施例3で得られた吸水性樹脂(D3)を比較吸水剤(1)とした。
【0230】
(比較例2)
実施例1と同様の重合操作を、反応液を75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5444g(単量体濃度38重量%)にポリエチレングリコールジアクリレート4.02g(0.035モル%)を溶解させたものに変えて行った。得られた吸水性樹脂をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmおよび150μmのJIS標準篩で分級し、粒度分布を調整することにより、比較吸水性樹脂(2)を得た。得られた比較吸水性樹脂(2)のCRCsは44.0g/gであった。この比較吸水性樹脂(2)100gに2−オキサゾリドン0.5g、プロピレングリコール0.5g、純水3.0gからなる水溶液を混合した。上記の混合物を200℃で30分間加熱処理し、60℃まで冷却した後に、目開き710μmのJIS標準篩を通過させて比較吸水性樹脂粒子(2)を得た。得られた比較吸水性樹脂粒子(2)を比較吸水剤(2)とした。
【0231】
(比較例3)
シグマ型羽根を2本有する内容積10リットルのジャケット付きステンレス型双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5367g(単量体濃度33重量%)にポリエチレングリコールジアクリレート5.74g(0.06モル%)、および亜燐酸水素ナトリウム2.5水和物10.6gを溶解させて反応液とした。次にこの反応液を窒素ガス雰囲気下で、30分間脱気した。続いて、反応液に20重量%過硫酸ナトリウム水溶液12gおよび1重量%L−アスコルビン酸水溶液10gを攪拌しながら添加したところ、重合が開始した。そして、生成したゲルを粉砕しながら、20〜95℃で重合を行い、重合が開始して60分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出した。
【0232】
得られた含水ゲル状架橋重合体は、その径が約5mm以下に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、160℃で60分間熱風乾燥した。得られた吸水性樹脂を振動ミルを用いて粉砕し、さらに分級し、粒度分布を調整することにより、75〜850μmの比較吸水性樹脂(3)を得た。得られた比較吸水性樹脂(3)のCRCsは51.0g/gであった。この比較吸水性樹脂(3)100gにエチレングリコールジグリシジルエーテル0.05g、純水3.0g、イソプロピルアルコール0.75gからなる水溶液を混合した。上記の混合物を200℃で50分間加熱処理することにより、比較吸水性樹脂粒子(3)を得た。この比較吸水性樹脂粒子(3)を比較吸水剤(3)とした。
【0233】
(比較例4)
実施例3と同様の反応液を用いて、重合・乾燥操作を行い、得られた吸水性樹脂をハンマーミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmおよび150μmのJIS標準篩で分級し、粒度分布を特に調整することなく、比較吸水性樹脂(4)を得た。得られた比較吸水性樹脂(4)のCRCsは32.7g/gであった。この比較吸水性樹脂(4)100gに1,4−ブタンジオール1.0g、純水2.5gからなる水溶液を混合した。上記の混合物を200℃で20分間加熱処理し、60℃まで冷却した後に、目開き850μmのJIS標準篩を通過させて比較吸水性樹脂粒子(4)を得た。得られた比較吸水性樹脂粒子(4)を比較吸水剤(4)とした。
【0234】
(比較例5)
比較例1で得られた比較吸水剤(1)100gに、Reolosil QS−20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA製)0.3gを均一に混合した。得られた組成物を比較吸水剤(5)とした。
【0235】
(比較例6)
比較例2で得られた比較吸水剤(2)100gに、硫酸アルミニウム14〜18水和物(重量平均粒子径約150μm)1.0gを均一に混合した。得られた組成物を比較吸水剤(6)とした。
【0236】
(比較例7)
比較例3で得られた比較吸水剤(3)100gに、塩化アルミニウム6水和物(重量平均粒子径約150μm)1.0gを均一に混合した。得られた組成物を比較吸水剤(7)とした。
【0237】
上記、実施例1〜6および比較例1〜7で得られた吸水剤(1)〜(6)および比較吸水剤(1)〜(7)の諸物性(850μm未満で150μm以上の粒子の割合、σζ、CRCs、AAPs、SFC、CRCdw、化学架橋指数)を表1に示す。また、これらの粒度分布を表2および表3に示す。
【0238】
【表1】

【0239】
【表2】

【0240】
【表3】

【0241】
表1より、本発明の実施例で得られた吸水剤は優れた化学架橋指数を示し、さらに優れたAAPs、SFCを有することがわかる。比較吸水剤(1)および(5)はAAPsが十分ではない。比較吸水剤(2)および(6)は化学架橋指数が十分でない。比較吸水剤(3)および(7)はCRCsが高すぎるため、通液・拡散性が十分でない。比較吸水剤(4)は粒度分布が調整されていないため、AAPs、SFCが低レベルであり、十分な物性を有していない。また、比較吸水剤(4)はダストが多く、非常に取り扱い性の悪い粉体であった。
【0242】
吸水剤(1)〜(6)および比較吸水剤(1)〜(7)を用いた吸水体の評価結果を表4に示す。
【0243】
【表4】

【0244】
表4より、本発明の実施例で得られた吸水剤を使用した吸水体は、比較吸水剤を使用した吸水体と比べて優れた性能を有することがわかる。
【0245】
(実施例7)
実施例1における反応液を、71モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5426g(単量体濃度39重量%)にポリエチレングリコールジアクリレート17.87g(0.15モル%)、および亜燐酸水素2ナトリウム5水和物2.19gを溶解させたものにかえて同様の重合、乾燥操作を行った。得られた吸水性樹脂をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmおよび150μmのJIS標準篩で分級し、粒度分布を調整することにより、吸水性樹脂(D7)を得た。得られた吸水性樹脂(D7)のCRCsは31.2g/gであった。この吸水性樹脂(D7)100gに1,4−ブタンジオール0.4g、プロピレングリコール0.6g、純水3.0gからなる水溶液を混合した。上記の混合物を200℃で30分間加熱処理し、60℃まで冷却した後に、目開き600μmのJIS標準篩を通過させて吸水性樹脂粒子(E7)を得た。得られた吸水性樹脂粒子(E7)を吸水剤(7)とした。
【0246】
(実施例8)
実施例1における反応液を、71モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5425g(単量体濃度39重量%)にポリエチレングリコールジアクリレート17.87g(0.15モル%)、および亜燐酸水素2ナトリウム5水和物3.65gを溶解させたものにかえて同様の重合、乾燥操作を行った。得られた吸水性樹脂をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmおよび150μmのJIS標準篩で分級し、粒度分布を調整することにより、吸水性樹脂(D8)を得た。得られた吸水性樹脂(D8)のCRCsは31.9g/gであった。この吸水性樹脂(D8)100gに1,3−プロパンジオール1.0g、純水3.0gからなる水溶液を混合した。上記の混合物を190℃で30分間加熱処理し、60℃まで冷却した後に、目開き850μmのJIS標準篩を通過させて吸水性樹脂粒子(E8)を得た。得られた吸水性樹脂粒子(E8)を吸水剤(8)とした。
【0247】
(実施例9)
実施例1における反応液を、71モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5426g(単量体濃度39重量%)にポリエチレングリコールジアクリレート23.83g(0.20モル%)、および亜燐酸水素2ナトリウム5水和物2.19gを溶解させたものにかえて同様の重合、乾燥操作を行った。得られた吸水性樹脂をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmおよび150μmのJIS標準篩で分級し、粒度分布を調整することにより、吸水性樹脂(D9)を得た。得られた吸水性樹脂(D9)のCRCsは27.4g/gであった。この吸水性樹脂(D9)100gに炭酸エチレン1.0、純水3.0gからなる水溶液を混合した。上記の混合物を195℃で30分間加熱処理し、60℃まで冷却した後に、目開き710μmのJIS標準篩を通過させて吸水性樹脂粒子(E9)を得た。得られた吸水性樹脂粒子(E9)を吸水剤(9)とした。
【0248】
(実施例10)
実施例7で得られた吸水性樹脂粒子(E7)100gを160℃に加温し、カリウムミョウバン(硫酸カリウムアルミニウム12水、重量平均粒子径150μm)1.6gを攪拌下に混合し、10分間攪拌した。このようにして吸水剤(10)を得た。
【0249】
(実施例11)
実施例8で得られた吸水性樹脂(D8)100gにプロピレングリコール0.6g、硫酸アルミニウム14〜18水和物1.0g、純水1.5gからなる水溶液を混合した。上記の混合物を190℃で30分間加熱処理し、60℃まで冷却した後に、目開き850μmのJIS標準篩を通過させて、吸水剤(11)を得た。
【0250】
(実施例12)
実施例9で得られた吸水性樹脂粒子(E9)100gに、硫酸アルミニウム14〜18水和物1.0g(重量平均粒子径約150μm)1.0gを均一に混合した。この混合物に5gの純水を均一に添加した。このものを60℃で30分間乾燥し、目開き710μmのJIS標準篩を通過させた。得られた組成物を吸水剤(12)とした。
【0251】
(比較例8)
実施例9で得られた吸水性樹脂(D9)を比較吸水剤(8)とした。
【0252】
(比較例9)
実施例1における反応液を、71モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5434g(単量体濃度39重量%)にポリエチレングリコールジアクリレート11.91g(0.10モル%)を溶解させたものにかえて同様の重合、乾燥操作を行った。得られた吸水性樹脂を、ロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmおよび150μmのJIS標準篩で分級し、粒度分布を調整することにより、比較吸水性樹脂(9)を得た。この比較吸水性樹脂(9)100gに1,4−ブタンジオール0.4g、プロピレングリコール0.6g、純水3.0gからなる水溶液を混合した。上記の混合物を200℃で30分間加熱処理し、60℃まで冷却した後に、目開き600μmのJIS標準篩を通過させて比較吸水性樹脂粒子(9)を得た。得られた比較吸水性樹脂粒子(9)を比較吸水剤(9)とした。
【0253】
(比較例10)
実施例1における反応液を、71モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5434g(単量体濃度39重量%)にポリエチレングリコールジアクリレート7.74g(0.065モル%)を溶解させたものにかえて同様の重合、乾燥操作を行った。得られた吸水性樹脂をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmおよび150μmのJIS標準篩で分級し、粒度分布を調整することにより、比較吸水性樹脂(10)を得た。得られた比較吸水性樹脂(10)のCRCsは35.2g/gであった。この比較吸水性樹脂(10)100gに1,3−プロパンジオール1.0g、純水3.0gからなる水溶液を混合した。上記の混合物を190℃で30分間加熱処理し、60℃まで冷却した後に、目開き850μmのJIS標準篩を通過させて比較吸水性樹脂粒子(10)を得た。得られた比較吸水性樹脂粒子(10)を比較吸水剤(10)とした。
【0254】
(比較例11)
比較例8で得られた比較吸水剤(8)100gを160℃に加温し、カリウムミョウバン(硫酸カリウムアルミニウム12水、重量平均粒子径150μm)1.6gを攪拌下に混合し、10分間攪拌した。このようにして比較吸水剤(11)を得た。
【0255】
(比較例12)
比較例9で得られた比較吸水性樹脂(9)100gにプロピレングリコール0.6g、硫酸アルミニウム14〜18水和物1.0g、純水1.5gからなる水溶液を混合した。上記の混合物を190℃で30分間加熱処理し、60℃まで冷却した後に、目開き600μmのJIS標準篩を通過させて、比較吸水剤(12)を得た。
【0256】
(比較例13)
比較例10で得られた比較吸水性樹脂(10)100gに、硫酸アルミニウム14〜18水和物1.0g(重量平均粒子径約150μm)1.0gを均一に混合した。この混合物に5gの純水を均一に添加した。このものを60℃で30分間乾燥し、目開き850μmのJIS標準篩を通過させた。得られた組成物を比較吸水剤(13)とした。
【0257】
上記、実施例7〜12および比較例8〜13で得られた吸水剤(7)〜(12)および比較吸水剤(8)〜(13)の諸物性(850μm未満で150μm以上の粒子の割合、σζ、CRCs、AAPs、SFC、CRCdw、加圧下化学架橋指数)を表5に示す。また、これらの粒度分布を表6および表7に示す。
【0258】
【表5】

【0259】
【表6】

【0260】
【表7】

【0261】
表5より、本発明の吸水剤は優れた加圧下化学架橋指数を示し、さらに優れたAAPs、SFCを有することがわかる。比較吸水剤(8)および(11)はAAPsが十分ではない。比較吸水剤(8)〜(13)は加圧下化学架橋指数が十分でない。
【0262】
吸水剤(7)〜(12)および比較吸水剤(8)〜(13)を用いた吸水体の評価結果を表8に示す。
【0263】
【表8】

【0264】
表8より、本発明の実施例で得られた吸水剤を使用した吸水体は、比較吸水剤を使用した吸水体と比べて優れた性能を有することがわかる。
【0265】
上記、実施例1〜3、7〜9、および比較例2〜4、9、10で得られた吸水性樹脂(D1)〜(D3)、(D7)〜(D9)、および比較吸水性樹脂(2)〜(4)、(9)、(10)のCRCs、ゲル層膨潤圧(B)を表9に示す。また、これらの850μm未満で106μm以上の粒子の割合、σζ、粒度分布を表10および表11に示す。
【0266】
【表9】

【0267】
【表10】

【0268】
【表11】

【0269】
(実施例13)
断熱材である発泡スチロールで覆われた、内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸173.0g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)2.5g、およびジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム0.01gを混合した溶液(A)と、48.5重量%NaOH水溶液138.6gと50℃に調温したイオン交換水276.2gを混合した溶液(B)を、マグネチックスターラーで攪拌しながら(A)に(B)を開放系で一気に加え混合した。中和熱と溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液(単量体濃度35重量%、中和率70モル%が得られた。さらに、この単量体水溶液に3重量%の過硫酸ナトリウム水溶液9.6gを加え、数秒攪拌した後すぐに、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1−1000(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注いだ。ステンレス製バット型容器は、そのサイズが底面250×250mm、上面640×640mm、高さ50mmであり、中心断面が台形で、上面が開放されている。
【0270】
単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始した。水蒸気を発生し上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮した。この膨張収縮は約1分以内に終了し、4分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出した。
【0271】
得られた含水重合体をダイス径9.5mmのミートチョッパー(ROYAL MEAT CHOPPER VR400K飯塚工業株式会社製)により粉砕し、細分化された含水重合体を得た。
【0272】
この細分化された含水重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で40min間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmのJIS標準篩で分級することにより、重量平均粒径323μm、対数標準偏差(σζ)0.36の不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂のCRCsは34.0g/g、ゲル層膨潤圧は3.76kPaであった。その他の諸物性を表12、13に示した。
【0273】
得られた吸水性樹脂100重量部に1,4−ブタンジオール0.3重量部、プロピレングリコール0.6重量部、純水3重量部の混合液からなる表面架橋剤を混合した後、混合物を195℃で30分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された吸水性樹脂を得た。得られた吸水剤(13)の諸物性を表12に示した。
【0274】
(実施例14)
実施例13に記載の方法においてポリエチレングリコールジアクリレートを0.25モル%に変更した以外は同様の操作を行い、重量平均粒子径328μm、対数標準偏差(σζ)0.36の不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂のCRCsは30.2g/g、ゲル層膨潤圧は4.14kPaであった。その他の諸物性を表12、13に示した。
【0275】
(実施例14−1)
実施例13と同様の条件で表面架橋を行い、表面が架橋された吸水性樹脂を得た。得られた吸水剤(14−1)の諸物性を表12に示した。
【0276】
(実施例14−2)
実施例14で得られた吸水性樹脂100重量部に1,4−ブタンジオール0.3重量部、プロピレングリコール0.6重量部、純水3重量部の混合液からなる表面架橋剤を混合した後、混合物を195℃で35分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された吸水性樹脂を得た。得られた吸水剤(14−2)の諸物性を表12に示した。
【0277】
(実施例15)
断熱材である発泡スチロールで覆われた内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸192.2g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)2.79g、およびジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム0.01gを混合した溶液(A)と、48.5重量%NaOH水溶液156.8gと40℃に調温したイオン交換水239.3gを混合した溶液(B)を、マグネチックスターラーで攪拌しながら(A)に(B)を開放系で一気に加え混合した。中和熱と溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液(単量体濃度39重量%、中和率71.3モル%が得られた。さらに、この単量体水溶液に3重量%の過硫酸ナトリウム水溶液8.89gを加え、数秒攪拌した後すぐに、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1−1000(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注いだ。
【0278】
単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始した。水蒸気を発生し上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮した。この膨張収縮は約1分以内に終了し、3分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出した。
【0279】
この細分化された含水重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で40min間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmのJIS標準篩で分級することにより、重量平均粒子径325μm、対数標準偏差(σζ)0.35の不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂のCRCsは31.4g/g、ゲル層膨潤圧は4.01kPaであった。その他の諸物性を表12、13に示した。
【0280】
得られた吸水性樹脂粒子100重量部にエチレンカーボネート0.4重量部、プロピレングリコール1重量部、純水3重量部の混合液からなる表面架橋剤を混合した後、混合物を190℃で35分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された吸水性樹脂を得た。得られた吸水剤(15)の諸物性を表12に示した。
【0281】
(実施例16)
断熱材である発泡スチロールで覆われた内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸259.6g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)2.26g、およびジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム0.01gを混合した溶液(A)と、48.5重量%NaOH水溶液208.0gと25℃に調温したイオン交換水223.0gを混合した溶液(B)を、マグネチックスターラーで攪拌しながら(A)に(B)を開放系で一気に加え混合した。中和熱と溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液(単量体濃度45重量%、中和率70モル%が得られた。さらに、この単量体水溶液に5重量%の過硫酸ナトリウム水溶液7.2gを加え、数秒攪拌した後すぐに、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1−1000(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注いだ。ステンレス製バット型容器は、そのサイズが底面250×250mm、上面640×640mm、高さ50mmであり、中心断面が台形で、上面が開放されている。
【0282】
単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始した。水蒸気を発生し上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮した。この膨張収縮は約1分以内に終了し、3分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出した。
【0283】
この細分化された含水重合体を50メッシュの金網上に広げ、190℃で40min間
熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmのJIS標準篩で分級することにより、重量平均粒子径312μm、対数標準偏差(σζ)0.40の不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂のCRCsは32.4g/g、ゲル層膨潤圧は3.52kPaであった。その他の諸物性を表12、13に示した。
【0284】
得られた吸水性樹脂100重量部に1,4−ブタンジオール0.6重量部、プロピレングリコール0.8重量部、純水3.8重量部の混合液からなる表面架橋剤を混合した後、混合物を190℃で50分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された吸水性樹脂を得た。得られた吸水剤(16)の諸物性を表12に示した。
【0285】
(実施例17)
断熱材である発泡スチロールで覆われた、内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸214.7g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)3.12g、および2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン0.03gさらにジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム0.01g、さらにポリプロピレングリコール(分子量6000)2.63gを混合した溶液(A)と、48.5重量%NaOH水溶液179.4gと40℃に調温したイオン交換水338.3gを混合した溶液(B)を、マグネチックスターラーで攪拌しながら(A)に(B)を開放系で一気に加え混合した。中和熱と溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液(単量体濃度35重量%、中和率73.0モル%が得られた。さらに、この単量体水溶液に3重量%の過硫酸ナトリウム水溶液11.9gを加え、数秒攪拌した後すぐに、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1−1000(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注いだ。
【0286】
単量体水溶液がバットに注がれると同時にブラックライト水銀ランプ(ピーク波長352nm、型式H400BL、投光器MT−420内に装着、ランプ・投光器ともに(株)東芝ライテック社製)で紫外線照射を行い重合を開始させた。水蒸気を発生し上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮した。この膨張収縮は約1分以内に終了し、3分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出した。
【0287】
この細分化された含水重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で40min間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmのJIS標準篩で分級することにより、重量平均粒径327μm、対数標準偏差(σζ)0.34の不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂のCRCsは34g/g、ゲル層膨潤圧は3.57kPaであった。その他の諸物性を表12、13に示した。
【0288】
得られた吸水性樹脂100重量部に1,4−ブタンジオール0.3重量部、プロピレングリコール0.6重量部、純水3重量部の混合液からなる表面架橋剤を混合した後、混合物を200℃で30分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された吸水性樹脂を得た。得られた吸水剤(17)の諸物性を表12に示した。
【0289】
(実施例18)
断熱材である発泡スチロールで覆われた、内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸172.5g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)3.5g、およびジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム0.01g、さらに亜りん酸水素二ナトリウム・五水和物0.31gを混合した溶液(A)と、48.5重量%NaOH水溶液140.8gと50℃に加熱したイオン交換水273.4gを混合した溶液(B)を、マグネチックスターラーで攪拌しながら(A)に(B)を開放系で一気に加え混合した。中和熱と溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液(単量体濃度35重量%、中和率71.3モル%が得られた。さらに、この単量体水溶液に3重量%の過硫酸ナトリウム水溶液9.6gを加え、数秒攪拌した後すぐに、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1−1000(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注いだ。
【0290】
単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始した。水蒸気を発生し上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮した。この膨張収縮は約1分以内に終了し、3分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出した。
【0291】
この細分化された含水重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で40min間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmのJIS標準篩で分級することにより、重量平均粒子径321μm、対数標準偏差(σζ)0.36の不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂のCRCsは32.6g/g、ゲル層膨潤圧は4.42kPaであった。その他の諸物性を表12、13に示した。
【0292】
(実施例18−1)
実施例18で得られた吸水性樹脂100重量部に1,4−ブタンジオール0.3重量部、プロピレングリコール0.6重量部、純水3重量部の混合液からなる表面架橋剤を混合した後、混合物を190℃で30分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された吸水性樹脂を得た。得られた吸水剤(18−1)の諸物性を表12に示した。
【0293】
(実施例18−2)
実施例18で得られた吸水性樹脂100重量部に1,4−ブタンジオール0.3重量部、プロピレングリコール0.6重量部、純水3重量部の混合液からなる表面架橋剤を混合した後、混合物を190℃で35分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された吸水性樹脂を得た。得られた吸水剤(18−2)の諸物性を表12に示した。
【0294】
(実施例19)
断熱材である発泡スチロールで覆われた、内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸192.2g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)3.49g、およびジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム0.01g、さらに亜りん酸水素二ナトリウム・五水和物0.35gを混合した溶液(A)と、48.5重量%NaOH水溶液156.8gと40℃に加熱したイオン交換水238.3gを混合した溶液(B)を、マグネチックスターラーで攪拌しながら(A)に(B)を開放系で一気に加え混合した。中和熱と溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液(単量体濃度39重量%、中和率71.3モル%が得られた。さらに、この単量体水溶液に3重量%の過硫酸ナトリウム水溶液8.9gを加え、数秒攪拌した後すぐに、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1−1000(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注いだ。
【0295】
単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始した。水蒸気を発生し上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮した。この膨張収縮は約1分以内に終了し、3分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出した。
【0296】
この細分化された含水重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で40min間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmのJIS標準篩で分級することにより、重量平均粒子径325μm、対数標準偏差(σζ)0.35の不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂のCRCsは30.6g/g、ゲル層膨潤圧は4.28kPaであった。その他の諸物性を表12、13に示した。
【0297】
(実施例19−1)
実施例19で得られた吸水性樹脂100重量部に1,4−ブタンジオール0.3重量部、プロピレングリコール0.6重量部、純水3重量部の混合液からなる表面架橋剤を混合した後、混合物を190℃で35分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された吸水性樹脂を得た。得られた吸水剤(19−1)の諸物性を表12に示した。
【0298】
(実施例19−2)
実施例19で得られた吸水性樹脂100重量部に1,4−ブタンジオール0.3重量部、プロピレングリコール1重量部、純水3重量部の混合液からなる表面架橋剤を混合した後、混合物を190℃で40分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された吸水性樹脂を得た。得られた吸水剤(19−2)の諸物性を表12に示した。
【0299】
(実施例20)
実施例15に記載の方法においてポリエチレングリコールジアクリレートを0.05モル%に変更した以外は同様の操作を行い、重量平均粒子径323μm、対数標準偏差(σζ)0.37の不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂のCRCsは43.5g/g、ゲル層膨潤圧は3.51kPaであった。その他の諸物性を表12、13に示した。
【0300】
得られた吸水性樹脂100重量部に1,4−ブタンジオール0.5重量部、プロピレングリコール0.5重量部、純水4重量部の混合液からなる表面架橋剤を混合した後、混合物を200℃で35分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された吸水性樹脂を得た。得られた吸水剤(20)の諸物性を表12に示した。
【0301】
(b)液透過性向上剤の添加
(実施例21)
実施例13で得られた吸水剤(13)100重量部に、ReolosilQS−20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA社製)0.3重量部を均一に混合し、吸水剤を得た。得られた吸水剤の諸物性を表14、15に示した。
【0302】
(実施例22)
実施例14−1で得られた吸水剤(14−1)100重量部に、ReolosilQS−20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA社製)0.3重量部を均一に混合し、吸水剤を得た。得られた吸水剤の諸物性を表14、15に示した。
【0303】
(実施例23)
実施例14−2で得られた吸水剤(14−2)100重量部に、ReolosilQS−20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA社製)0.3重量部を均一に混合し、吸水剤を得た。得られた吸水剤の諸物性を表14、15に示した。
【0304】
(実施例24)
実施例14−2で得られた吸水剤(14−2)100重量部に、硫酸アルミニウム14〜18水和物(和光純薬より入手)0.7重量部を均一に混合し、吸水剤を得た。得られた吸水剤の諸物性を表14、15に示した。
【0305】
(実施例25)
実施例15で得られた吸水剤(15)100重量部に、ReolosilQS−20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA社製)0.3重量部を均一に混合し、吸水剤を得た。得られた吸水剤の諸物性を表14、15に示した。
【0306】
(実施例26)
実施例16で得られた吸水剤(16)100重量部に、ReolosilQS−20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA社製)0.3重量部を均一に混合し、吸水剤を得た。得られた吸水剤の諸物性を表14、15に示した。
【0307】
(実施例27)
実施例17で得られた吸水剤(17)100重量部に、ReolosilQS−20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA社製)0.3重量部を均一に混合し、吸水剤を得た。得られた吸水剤の諸物性を表14、15に示した。
【0308】
(実施例28)
実施例18−1で得られた吸水剤(18−1)100重量部に、ReolosilQS−20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA社製)0.3重量部を均一に混合し、吸水剤を得た。得られた吸水剤の諸物性を表14、15に示した。
【0309】
(実施例29)
実施例18−2で得られた吸水剤(18−2)100重量部に、ReolosilQS−20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA社製)0.3重量部を均一に混合し、吸水剤を得た。得られた吸水剤の諸物性を表14、15に示した。
【0310】
(実施例30)
実施例19−1で得られた吸水剤(19−1)100重量部に、ReolosilQS−20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA社製)0.3重量部を均一に混合し、吸水剤を得た。得られた吸水剤の諸物性を表14、15に示した。
【0311】
(実施例31)
実施例19−2で得られた吸水剤(19−2)100重量部に、ReolosilQS−20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA社製)0.3重量部を均一に混合し、吸水剤を得た。得られた吸水剤の諸物性を表14、15に示した。
【0312】
(実施例32)
実施例20で得られた吸水剤(20)100重量部に、ReolosilQS−20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA社製)0.3重量部を均一に混合し、吸水剤を得た。得られた吸水剤の諸物性を表14、15に示した。
【0313】
(a)重合および表面処理
(比較例14)
シグマ型羽根を2本有する内容積10リットルのジャケット付きステンレス型双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、71.3モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5438g(単量体濃度39重量%)にポリエチレングリコールジアクリレート11.7g(0.10モル%)を溶解させて反応液とした。次にこの反応液を窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。続いて、反応液に10重量%過硫酸ナトリウム水溶液29.34gおよび0.1重量%L−アスコルビン酸水溶液24.45gを攪拌しながら添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。そして生成したゲルを粉砕しながら、20〜95℃で重合を行い、重合が開始して30分後に含水重合体を取り出した。
【0314】
得られた含水ゲル状架橋重合体(1)は、その系が約5mm以下に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状架橋重合体(1)を50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、175℃で50分間熱風乾燥し、乾燥物をロールミルを用いて粉砕した。次いで粉砕物を目開き850μmのJIS標準篩で分級し、大部分が150〜850μmの粒子径を持ち、重量平均粒子径325μm、対数標準偏差(σζ)0.35の不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂のCRCsは31.3g/g、ゲル層膨潤圧は3.3kPaであった。その他の諸物性を表12、13に示した。
【0315】
得られた吸水性樹脂100重量部に1,4−ブタンジオール0.3重量部、プロピレングリコール0.6重量部、純水3重量部の混合液からなる表面架橋剤を混合した後、混合物を195℃で30分間加熱処理した。さらにその粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋処理された吸水性樹脂を得た。得られた比較吸水剤(14)の諸物性を表14に示す。
【0316】
(比較例15)
実施例25の重合条件において得られた吸水性樹脂の重量平均粒子径が278μm、対数標準偏差(σζ)0.49である以外は同様の操作を行い、吸水性樹脂粒子を得た(850μm未満で106μm以上の粒子が全体の93.8重量%)。得られた吸水性樹脂のCRCsは34.0g/g、ゲル層膨潤圧は3.76kPaであった。その他の諸物性を表12、13に示した。
【0317】
得られた吸水性樹脂100重量部に1,4−ブタンジオール0.3重量部、プロピレングリコール0.6重量部、純水3重量部の混合液からなる表面架橋剤を混合した後、混合物を195℃で30分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された吸水性樹脂を得た。得られた比較吸水剤(16)の諸物性を表12に示す。
【0318】
(比較例16)
断熱材である発泡スチロールで覆われた、内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸194.35g、及び、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量478)0.58gを混合した溶液(A)と、48.5重量%NaOH水溶液166.7gと40℃に加熱したイオン交換水235.7gを混合した溶液(B)を、マグネチックスターラーで攪拌しながら(A)に(B)を開放系で一気に加え混合した。中和熱と溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液(単量体濃度40重量%、中和率75モル%)が得られた。さらに、この単量体水溶液に10重量%の過硫酸ナトリウム水溶液2.70gを加え、数秒攪拌した後すぐに、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1−1000(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注いだ。
【0319】
単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始した。水蒸気を発生し上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮した。この膨張収縮は約1分以内に終了し、3分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出した。
【0320】
この細分化された含水重合体を50メッシュの金網上に広げ、170℃で40min間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmのJIS標準篩で分級することにより、重量平均粒子径323μm、対数標準偏差(σζ)0.37の不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂のCRCsは47.2g/g、ゲル層膨潤圧は3.22kPaであった。その他の諸物性を表12、13に示した。
【0321】
得られた吸水性樹脂粒子100重量部にエチレングリコールジグリシジルエーテル0.05重量部、プロピレングリコール1重量部、純水2重量部の混合液からなる表面架橋剤を混合した後、混合物を80℃で40分間加熱処理した。さらにその粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋処理された吸水性樹脂を得た。得られた比較吸水剤(3)の諸物性を表12に示す。
【0322】
(b)液透過性向上剤の添加
(比較例17)
比較例14で得られた比較吸水剤(14)100重量部に、ReolosilQS−20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA社製)0.3重量部を均一に混合し、吸水剤を得た。得られた比較吸水剤の諸物性を表14、15に示した。
【0323】
(比較例18)
比較例14で得られた比較吸水剤(14)100重量部に対して硫酸アルミニウム14〜18水和物(和光純薬より入手)1重量部を均一に混合し、吸水剤を得た。得られた比較吸水剤の諸物性を表14、15に示した。
【0324】
(比較例19)
比較例15で得られた比較吸水剤(15)100重量部に、ReolosilQS−20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA社製)0.3重量部を均一に混合し、吸水剤を得た。得られた比較吸水剤の諸物性を表14、15に示した。
【0325】
(比較例20)
比較例16で得られた比較吸水剤(16)100重量部に、ReolosilQS−20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA社製)0.3重量部を均一に混合し、吸水剤を得た。得られた比較吸水剤の諸物性を表14、15に示した。
【0326】
【表12】

【0327】
【表13】

【0328】
【表14】

【0329】
【表15】

【0330】
【表16】

【0331】
(実施例13〜20、比較例14)
本発明の実施例13〜20によって得られた吸水性樹脂は、すべて本発明におけるゲル層膨潤圧(B)の値が3.50kPa以上であり、膨潤状態での高いゲル安定性を有している。比較例14では、この範囲を満たさない。
【0332】
(実施例21〜32、比較例17〜19)
本発明の実施例21〜32によって得られた吸水剤は液透過性向上剤の添加による、液透過性の改善効果が大きく、使用した液透過性向上剤1重量%当たりのSFC増加倍率は全て3.5倍以上であり、所望の透過性を有する吸水剤を製造する場合には、液透過性向上剤量を低減することが可能となる。比較例17〜19によって得られた比較吸水剤においては、液透過性(SFC)および使用した液透過性向上剤1重量%当たりのSFC増加倍
率に優れていない。
【0333】
(実施例21、比較例19)
本発明において高い透過性を得るためには特定の粒度分布(850μm未満で106μm以上の粒子が全体の95重量%以上、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45)であることが重要である。重量平均粒子径や対数標準偏差が適当でない比較例19の比較吸水剤では、優れた液透過性は得られない。
【0334】
(実施例21、実施例32)
本発明において高い透過性を得るためには、表面架橋される前の吸水性樹脂における無加圧下吸水倍率(CRCs)が高すぎると使用架橋剤量が十分でなく、本質的なゲルの安定性が低い。また、表面架橋後のSFCも低く、液透過性向上剤を含んでも、所望の透過性
を得ることができない。
【0335】
尚、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する特許請求の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0336】
本発明によれば、優れたゲル特性を有し、紙おむつ等の衛生材料の吸水体に使用された場合、優れた性能を示す吸水剤を提供することができるという効果を奏する。また、本発明によると、優れたゲル特性を有し、紙おむつ等の衛生材料の吸水体に使用された場合、優れた性能を示す吸水剤の製法を提供することができるという効果を奏する。
【0337】
本発明の製法により得られた吸水剤は、おむつなどの吸水体に使用された場合、膨潤ゲルの安定性が高く、かつ液拡散性に優れるため、液の取り込みが早く、吸水体表層の液の残存量が少ない非常に優れた吸水体が得られる。また、本発明の製法により得られた吸水剤は、所望の液拡散性を得るために使用する無機粒子などの液透過性向上剤の使用量を低減でき、かかる吸水剤の製造およびおむつの製造ラインでの粉立ちやフィルターの詰まりなどのダスト問題を解消し、さらには消費者にとってより安全な吸収剤を提供することができる。
【符号の説明】
【0338】
1 多孔質ガラス板
2 グラスフィルター
3 導管
4 液溜容器
5 支持リング
6 生理食塩水(0.9重量%食塩水)
7 天秤
8 スタンド9 測定試料(吸水性樹脂粒子または吸水剤)
10 荷重(0.41kPa(0.06psi))
11 外気吸入パイプ
31 タンク
32 ガラス管
33 0.69重量%食塩水
34 コック付きL字管
35 コック
40 容器
41 セル
42 ステンレス製金網
43 ステンレス製金網
44 膨潤ゲル
45 ガラスフィルター
46 ピストン
47 ピストン中の穴
48 補集容器
49 上皿天秤
51 ガラス容器
52 分散機
53 上側クランプ
54 下側クランプ
100 支持円筒
101 金網
102 膨潤ゲル
103 ピストン
104 荷重
105 ペトリ皿
106 ガラスフィルター
107 濾紙
108 0・90重量%食塩水
(a) 吸水性樹脂
(b) FISHER ELECTRO-PHOTOMETER用セル
(c) 人工尿(1)
(d) 落し蓋
(e) 荷重測定支持棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸および/またはその塩を主成分とする単量体を架橋重合して得られた吸水性樹脂をさらに表面架橋した吸水性樹脂粒子を主成分とする吸水剤の製造方法であって、
該吸水性樹脂のゲル層膨潤圧(SPGL(B))が3.5kPa以上であり、かつJIS 標準篩で測定される粒度分布が、850μm未満で106μm以上の粒子が全体の95〜100重量%、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45であることを特徴とする吸水剤の製造方法。
【請求項2】
前記吸水性樹脂の0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)が28〜40(g/g)であり、かつ前記吸水性樹脂のゲル層膨潤圧(SPGL(B))が4.0kPa以上である請求項1に記載の吸水剤の製造方法。
【請求項3】
前記吸水性樹脂を食塩水流れ誘導性(SFC)が40(10−7・cm・s・g−1)以上まで表面架橋したのちに、さらに鉱産物、アルミニウム化合物類、その他多価金属塩類、親水性のアモルファスシリカ類、酸化物複合体類、からなる群より選ばれる液透過性向上剤を混合する請求項1または2に記載の吸水剤の製造方法。
【請求項4】
前記吸水性樹脂のJIS 標準篩で測定される粒度分布が、850μm未満で106μm以上の粒子が全体の95〜100重量%、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45である、請求項1〜3の何れか一つに記載の吸水剤の製造方法。
【請求項5】
重合時の単量体に対してチオール類、チオール酸類、2級アルコール類、アミン類、リン化合物類、遷移金属錯体類、蟻酸および/またはその塩、からなる群より選ばれる水溶性連鎖移動剤0.001〜10モル%を含む、請求項1,2,4の何れか一つに記載の吸水剤の製造方法。
【請求項6】
吸水性樹脂粒子100重量部あたり鉱産物、アルミニウム化合物類、その他多価金属塩類、親水性のアモルファスシリカ類、酸化物複合体類、からなる群より選ばれる液透過性向上剤0.001〜5重量部をさらに混合する、請求項1〜5の何れか一つに記載の吸水剤の製造方法。
【請求項7】
前記表面架橋された吸水性樹脂粒子に鉱産物、アルミニウム化合物類、その他多価金属塩類、親水性のアモルファスシリカ類、酸化物複合体類、からなる群より選ばれる液透過性向上剤を添加した際の使用液透過性向上剤1重量%当たりの食塩水流れ誘導性(SFC)増加倍率が3.5倍以上であることを特徴とする、請求項1〜6の何れか一つに記載の吸水剤の製造方法。
【請求項8】
前記液透過性向上剤が無機粒子または多価金属化合物の少なくとも1つ以上を含むことを特徴とする請求項3,6,7の何れか一つに記載の吸水剤の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一つに記載の吸水剤の製造方法により製造される吸収剤であって、
前記表面架橋された吸水性樹脂粒子を主成分とするとともに、
以下の式2で表される加圧下化学架橋指数が100以上であることを特徴とする吸収剤。
加圧下化学架橋指数=(CRCs)+(AAPdw) (式2)
CRCs(g/g):0.9重量%食塩水の吸収倍率
AAPdw(g/g):純水の加圧下吸収倍率

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−161788(P2012−161788A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−4481(P2012−4481)
【出願日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【分割の表示】特願2011−158357(P2011−158357)の分割
【原出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】