説明

吸水性アミノ酸含有錠剤

吸水性アミノ酸とエタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤を含有することを特徴とする錠剤を提供する。本発明の錠剤は、スポーツ用、ダイエット用又は医薬品用アミノ酸製剤として、また人体の健康維持に有効なアミノ酸の栄養補給や人体組織の生理活性を高める栄養補助食品や医薬品等として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、栄養補助食品又は医薬品に用いられる吸水性アミノ酸含有錠剤及びその製造法に関する。
【背景技術】
吸水性アミノ酸が有する筋肉疲労軽減効果、脂肪酸燃焼効果が需要者に高く評価され、スポーツ用、ダイエット用等のアミノ酸栄養食品又はアミノ酸含有医薬品の需要が激増している。これらの用途に適合するためには、吸水性アミノ酸を高含量で含有する錠剤が栄養食品等として供給されることが望ましいが、吸水性アミノ酸については、その強い吸水性のため、高含量で含有する錠剤を製造することが従来はできなかった。
一方、医薬品等においては、活性成分の苦味を低減させるために、活性成分を腸溶性高分子でコーティングする方法〔例えば、特開2000−169364号公報(対応国際公開第2000/18372号パンフレット)参照〕、反芻動物において、第四胃から効率良くアミノ酸を吸収させるために、動物脂肪等でアミノ酸を被覆する方法〔例えば、特開平7−289172号公報(対応米国特許第5676966号)参照)、分岐鎖アミノ酸の臭いや苦味を抑制するために、分岐鎖アミノ酸を造粒結合液で被覆する方法〔例えば、特許第3341768号公報(対応国際公開第2003/63854号パンフレット)参照〕等が知られている。
【発明の開示】
プロリン、リジン、ヒスチジン、システイン、オルニチン、グルタミン酸、アルギニン等のアミノ酸は、分岐鎖アミノ酸、グルタミン等と異なり強い吸水性があるため、保存性や打錠性が悪く、錠剤中への配合量が制限されるため、製剤の改善が望まれている。
本発明は、吸水性アミノ酸を高含量で含有することのできる錠剤を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、
(1)吸水性アミノ酸とエタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤とを含有することを特徴とする錠剤、
(2)吸水性アミノ酸は、エタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤に被覆されていることを特徴とする前記(1)に記載の錠剤、
(3)エタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤がシェラック又はゼインであることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の錠剤、
(4)吸水性アミノ酸が、プロリン、リジン、ヒスチジン、システイン、オルニチン、グルタミン酸又はアルギニンであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の錠剤、
(5)吸水性アミノ酸が、錠剤総質量中10〜70質量%含まれることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の錠剤、
(6)錠剤がチュアブル剤であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の錠剤、
(7)吸水性アミノ酸を含む粉体を造粒した後、得られた造粒物を5〜20質量%のエタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤を含有するエタノール溶液を用いて被覆することによりアミノ酸顆粒を得る工程を含むことを特徴とする吸水性アミノ酸含有錠剤の製造方法、
に関する。
本発明の錠剤は、吸水性アミノ酸とエタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤とを含有することを特徴とする。
本発明によれば、吸水性アミノ酸を高含量で含有することのできる錠剤が提供される。本発明の錠剤に含有される吸水性アミノ酸は、筋肉疲労軽減効果、脂肪酸燃焼効果、ダイエット効果等を有する。このため本発明の錠剤は、スポーツ用、ダイエット用又は医薬品用アミノ酸製剤として簡便に服用することができる。また人体の健康維持に有効なアミノ酸の栄養補給や人体組織の生理活性を高める栄養補助食品や医薬品等として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の錠剤に用いる「吸水性アミノ酸」とは、例えば製剤の製造時に使用する水をよく吸収する性質、空気中の水分又は湿気をよく吸収又は吸湿する性質、少量の吸水又は吸湿により潮解性や粘着性等を呈する性質等をもつアミノ酸をいう。このような吸水性アミノ酸としては、プロリン、リジン、ヒスチジン、システイン、オルニチン、グルタミン酸、アルギニン等が挙げられる。
これらの吸水性アミノ酸は、発酵法、合成法、植物抽出法等により得ることができ、1種又は2種以上組み合わせたもののいずれであってもよい。
また、本発明に用いる吸水性アミノ酸は塩であってもよく、そのような塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩等の有機酸又は無機酸との塩、ナトリウム塩、カリウム塩等の塩基との塩等が挙げられる。吸水性アミノ酸は、好ましくは錠剤を構成するアミノ酸顆粒を構成し、該アミノ酸顆粒総質量に対して好ましくは約30〜98.5質量%、より好ましくは約35〜90質量%、とりわけ好ましくは約35〜80質量%含まれる。また吸水性アミノ酸は、錠剤総質量に対して好ましくは約10〜70質量%、より好ましくは約20〜70質量%、とりわけ好ましくは約20〜60質量%含まれる。
本発明に使用される被覆剤は、水難溶性であると同時にエタノール可溶性である。この場合において、難溶性とは、第14改正日本薬局方の溶解性を示す用語の、極めて溶けにくい、ほとんど溶けない場合をいう。また、エタノール可溶性とは、エタノールに澄明に溶解し得る場合のみならず、エタノールに乳濁もしくはエマルジョン化し得る場合をいう。具体的被覆剤としては、食品用であればシェラック、ゼイン等が、医薬品用であればエチルセルロース、メタアクリル酸コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等が挙げられる。
本発明において、エタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤はどのような形で吸水性アミノ酸と配合していても良いが、エタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤は、吸水性アミノ酸を被覆するように配合していることが好ましく、吸水性アミノ酸が錠剤を構成するアミノ酸顆粒を構成する場合には、エタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤は、該アミノ酸顆粒を被覆するように配合していることが好ましい。本発明の錠剤としては、エタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤で被覆したアミノ酸顆粒で構成されているものが好ましい。
上記アミノ酸顆粒において、被覆剤は顆粒総質量に対して、好ましくは約1〜6質量%、より好ましくは約2〜5質量%である。また、本発明の錠剤総質量に対して、好ましくは約0.1〜4.2質量%、より好ましくは約0.2〜4.2質量%、特に好ましくは約0.5〜4.2質量%となる。
本発明の錠剤又は前記のエタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤で被覆したアミノ酸顆粒には、主活性成分である吸水性アミノ酸以外に、糖類、糖アルコール等、通常栄養食品サプリメント又は医薬品において用いられる通常の賦形剤を用いることができる。
糖類としては、例えば、単糖類、二糖類等が挙げられ、より具体的には例えば、乳糖、マルトース、トレハロース等が挙げられる。糖アルコールとしては、例えばマンニトール、還元麦芽糖水飴、マルチトール、マルトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール等が挙げられる。糖類又は糖アルコールは、吸水性アミノ酸の種類や配合比、含有量等によって任意に1種又は2種以上の組み合わせから選択することができる。糖類又は糖アルコールは、本発明の錠剤の総質量に対し、単独で又は組み合わせて好ましくは約15〜85質量%、より好ましくは約15〜60質量%、さらに好ましくは約20〜40質量%含有させることができる。また、糖類又は糖アルコールは、前記エタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤で被覆したアミノ酸顆粒の総質量に対し、単独で又は組み合わせて好ましくは約1〜65質量%、より好ましくは約1〜40質量%、さらに好ましくは約3〜25質量%含有させることができる。
本発明の錠剤に口腔内崩壊性を付与するために、本発明の錠剤又は前記エタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤で被覆したアミノ酸顆粒に、口腔内崩壊促進成分を含有させることもできる。前記口腔内崩壊促進成分としては、例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム等が挙げられ、好ましくはカルボキシメチルセルロースカルシウム又はデンプングリコール酸ナトリウムである。これらの口腔内崩壊促進成分は単独で又は組み合わせて使用することができる。口腔内崩壊促進成分は、本発明の錠剤又は前記エタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤で被覆したアミノ酸顆粒の総質量に対し、単独で又は組み合わせて好ましくは約0.5〜20質量%、より好ましくは約0.5〜5質量%、さらに好ましくは約0.5〜2質量%含有させることができる。
また、本発明の錠剤又は前記エタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤で被覆したアミノ酸顆粒に、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール等の水溶性のよい糖アルコールを組み合わせて、本発明の錠剤の口腔内崩壊性を改善してもよい。この場合は、上記した口腔内崩壊促進成分を必ずしも加えなくてもよい。
また、本発明の錠剤又は前記エタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤で被覆したアミノ酸顆粒においては、結合剤、滑沢剤、その他の添加成分等を所望により含有させることができる。
結合剤としては、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、プルラン、アクリル酸系高分子、ポリビニルアルコール、ゼラチン、寒天、アラビアゴム、アラビアゴム末、部分α化デンプン、マクロゴール等が挙げられ、これらの中から1種又は2種以上を所望により使用することができる。結合剤は、本発明の錠剤又は前記エタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤で被覆したアミノ酸顆粒の総質量に対し、好ましくは約0.1〜5質量%、より好ましくは約0.3〜3質量%、さらに好ましくは約0.5〜2質量%含有させることができる。
滑沢剤としては、例えばショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられ、これらの中から1種又は2種以上を所望により使用することができる。滑沢剤は、本発明の錠剤又は前記エタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤で被覆したアミノ酸顆粒の総質量に対し、好ましくは約0.05〜10質量%、より好ましくは約0.1〜5質量%、さらに好ましくは約0.1〜3質量%含有させることができる。
また、本発明の錠剤又は前記のエタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤で被覆したアミノ酸顆粒には、吸水性アミノ酸以外のアミノ酸も含有させることができる。
吸水性アミノ酸以外のアミノ酸としては、例えば分岐鎖アミノ酸(例えばバリン、ロイシン、イソロイシン等)、グルタミン、チロシン、トリプトファン、アラニン、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、グリシン、アスパラギン酸、セリン等が挙げられる。吸水性アミノ酸以外のアミノ酸は、吸水性アミノ酸の種類や配合比、含有量等によって任意に1種又は2種以上の組み合わせから選択することができる。吸水性アミノ酸以外のアミノ酸は、本発明の錠剤総質量に対し、単独で又は組み合わせて好ましくは約5〜60質量%、より好ましくは約10〜50質量%、さらに好ましくは約15〜40質量%含有させることができる。また、吸水性アミノ酸以外のアミノ酸は、前記エタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤で被覆したアミノ酸顆粒の総質量に対し、単独で又は組み合わせて好ましくは約1〜65質量%、より好ましくは約15〜65質量%、さらに好ましくは約30〜60質量%含有させることができる。
その他の添加成分としては、デキストリン、スターチ等の炭水化物、シクロデキストリン等の苦味矯正剤、ベータカロチン、食用黄色5号、食用赤色2号、食用青色2号等の食用色素、食用レーキ色素、ベンガラナイアシン等の着色剤、ビタミンE、アスコルビン酸、ビタミンB類、ビタミンA、ビタミンD等のビタミン類又はこれらの誘導体、ナトリウム等のミネラル類、アスパルテーム、グルコース、フルクトース、スクラロース、ステビア、サッカロース、サッカリンナトリウム、ソマチン、アセスルファムカリウム等の甘味料、微粒二酸化ケイ酸、ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、タルク等の固化防止剤、重曹等の発泡剤、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の酸味料、レモン、レモンライム、オレンジ、メントール等の香料、セルロース又はその誘導体、結晶セルロース、微結晶セルロース等が挙げられ、これらの中から1種又は2種以上を所望により使用することができる。その他の添加成分は、本発明の錠剤又は前記エタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤で被覆したアミノ酸顆粒の総質量に対し、好ましくは約0.01〜5質量%、より好ましくは約0.1〜3質量%、さらに好ましくは約0.1〜1質量%含有させることができる。
本発明において、錠剤は、栄養食品又は医薬品に用いられているものであればどのようなものでも良く、胃で溶解される通常の錠剤、腸溶錠、チュアブル剤、トローチ、口腔内速溶錠等が挙げられるが、簡便な投与方法で吸水性アミノ酸の補給が可能なチュアブル剤、口腔内速溶錠が好ましい。更に、錠剤は防湿性、保存安定性の向上のため、糖、還元麦芽糖水飴等、糖アルコール等によりコーティングされた糖衣錠又はコーティング錠であっても良い。
本発明の錠剤には、前記エタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤で被覆したアミノ酸顆粒を錠剤総質量に対して約10〜80質量%含有させるのが好ましいが、本発明の錠剤がアミノ酸による栄養補給の高機能を果たすためには、アミノ酸顆粒をより好ましくは約30〜85質量%、さらに好ましくは約35〜70質量%、とりわけ好ましくは約40〜65質量%含有させるのがよい。
本発明の錠剤又は前記エタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤で被覆したアミノ酸顆粒に含有されて良い前述した賦形剤、口腔内崩壊促進成分、結合剤、滑沢剤、吸水性アミノ酸以外のアミノ酸、その他の添加成分等は、錠剤がアミノ酸顆粒で構成されている場合には、該アミノ酸顆粒内及び/又は該アミノ酸顆粒外に含有されていて良く、吸水性アミン酸以外のアミノ酸は、アミノ酸顆粒内に含有されていることがより好ましい。また、該賦形剤は、該アミノ酸顆粒外に含有されていることがより好ましい。
前記のアミノ酸顆粒に予め前述した添加成分等が含有されている場合には、予めアミノ酸顆粒に配合された各添加成分の含有量と、更にアミノ酸顆粒外の成分として添加される各添加成分の添加量との合計が、錠剤総質量に対して、前述した各添加成分における好ましい質量%の範囲内にあることが好ましい。
本発明の錠剤をチュアブル剤に用いる場合は、咀嚼しやすいように、錠剤径(直径)が好ましくは約7〜20mm、より好ましくは約9〜17mm、さらに好ましくは約10〜16mmであり、錠剤質量が好ましくは約300mg〜約1.5g、より好ましくは約400mg〜1g、さらに好ましくは約500mg〜900mgである。また、前記チュアブル剤においては吸水性アミノ酸の含量を高くすることができ、その場合は吸水性アミノ酸含有量に対する錠剤質量を減少させることができる。このため錠剤直径に対する錠剤の厚さを減少させることができる。本発明のチュアブル剤の厚さは好ましくは約2〜8mm、より好ましくは約3〜6mm、とりわけ好ましくは約3.5〜5mmである。
また、本発明の錠剤をチュアブル剤として用いる場合は、一般錠剤より柔らかいものが好ましいが、その硬度は好ましくは約50〜120N、より好ましくは約60〜110N、さらに好ましくは約65〜100N、最適には約70〜90Nである。
また硬度が50N以下の場合は口腔内速溶錠として用いることができる。
錠剤硬度の上限値は通常約120Nである。なお、硬度は、ジャパンマシナリー社製硬度計(Type PTB−301)を用いて錠剤の直径方向について測定する。
以下に本発明の錠剤の好ましい製造法を記載する。
(1)エタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤で被覆したアミノ酸顆粒の製造
プロリン、リジン、ヒスチジン、システイン、オルニチン、グルタミン酸もしくはアルギニン、又はそれらの塩を1種類以上含み、全体として吸水性アミノ酸を好ましくは約10質量%以上、より好ましくは約20質量%以上、とりわけ好ましくは約30質量%以上含む粉体を用いる。粉体としては、好ましくは平均粒子径約300μm以下、より好ましくは約200μm以下のものを原料として用いる。この原料を攪拌造粒機、高速攪拌造粒機、流動層造粒乾燥機、押出造粒機又は転動流動層造粒機等の造粒機、好ましくは流動層造粒乾燥機に投入する。所望により約0.5〜5質量%、好ましくは約1〜4質量%、とりわけ好ましくは約1.5〜3.5質量%の、例えばメチルセルロース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の一種以上を含有した水(結合水)を噴霧して、常法により造粒を行う。ここで用いられる水は、食品衛生法又は薬事法上許容される水、例えば精製水等であることが好ましい。
また、アミノ酸顆粒に、予め前記の糖類、糖アルコール等の賦形剤、口腔内崩壊促進成分、結合剤、滑沢剤又はその他の添加成分等を配合する場合には、上記の粉砕した吸水性アミノ酸粉体に、所望量の前記添加成分等を配合・混合し、これを原料として用いて造粒するのが好ましい。
得られた顆粒(好ましくは平均粒子径約75〜850μm)に対して、スプレー装置を持つ流動層造粒機、スプレー装置を持つコーティング機等を用いて好ましくは約5〜20質量%、より好ましくは約7〜15質量%のシェラック、ゼイン等のエタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤を溶解したエタノール溶液を噴霧して、コーティングを行う。この際、ノズル径及び噴霧速度は装置、噴霧量等により変化するが、口径約0.8〜2.2mmφのノズルを用い、噴霧速度約20〜300mL/分で噴霧するのが好ましい。当該被覆操作により、顆粒総質量に対して、好ましくは約1〜6質量%、より好ましくは約2〜5質量%のエタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤で被覆したアミノ酸顆粒が製造される。
(2)吸水性アミノ酸及びエタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤を含む錠剤の製造方法
本発明の錠剤の製造方法としては、例えば、前記吸水性アミノ酸をエタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤で被覆したアミノ酸顆粒を圧縮成形する製造方法を挙げることができる。
圧縮成形方法は、特に限定されることなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば、前記(1)で作製したエタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤で被覆したアミノ酸顆粒に、所望により前記の各種添加成分を加え、混合し、圧縮成形する通例の方法や、あらかじめ滑沢剤を杵表面及び臼壁に塗布してから、エタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤で被覆したアミノ酸顆粒と滑沢剤以外の各種添加成分とを混合して圧縮成形する方法等が挙げられる。
ここで、賦形剤、口腔内崩壊促進成分、結合剤、滑沢剤又はその他の添加成分等は、それぞれ独立した粉体又は液体の形態であってもよいし、予めこれらを組み合わせて、公知の湿式造粒又は乾式造粒方法等を用いて造粒した顆粒状の形態であっても良い。
前記の各種添加成分を造粒する方法としては、例えば前記の各種添加成分に、食品衛生法又は薬事法上許容される水、例えば精製水等を加えて練合造粒する方法又は水等を噴霧して造粒する方法等が挙げられる。練合造粒方法において、添加成分等に糖アルコール等の液体が含まれる場合には、所望により前記水の全量又は一部を糖アルコール等に置換してもよい。噴霧により造粒する場合には、例えば、上記(1)のエタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤で被覆したアミノ酸顆粒の製造において用いられる造粒方法、例えば流動層造粒乾燥機での造粒方法等に従って良い。
得られた錠剤は、さらに乾燥するのが好ましい。乾燥は、例えば、真空乾燥、凍結乾燥、自然乾燥等一般に製剤の製造において用いられるいずれの方法によっても行うことができる。
また、上述した(2)吸水性アミノ酸及びエタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤を含む錠剤の製造方法以外に、例えば吸水性アミノ酸をエタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤で被覆したアミノ酸顆粒に、糖類又は糖アルコールを加えて混合物とし、強圧を加えて乾燥状態のまま塊状にして、それを破砕して粉粒体にした後、粉粒体を圧縮成形(この際に添加成分等を加えてもよい)して、本発明の錠剤を製造することもできる。
打錠に用いる装置としては、特に限定されず、一般に錠剤の成形又は造粒に用いられる装置を用いることができる。例えば、ロータリー型打錠機、単発錠剤機等を用いることができる。打錠時の打錠圧は、好ましくは約1〜100kN/cm、より好ましくは約5〜50kN/cm、さらに好ましくは約10〜40kN/cmである。
本発明の錠剤は、筋肉疲労軽減効果、脂肪酸燃焼効果、ダイエット効果等を目的とする他、人体の健康維持に有効なバランスのとれた栄養補給と人体組織を生理活性化すること等を目的とする栄養補助食品や医薬品等として使用することができる。また該錠剤を投与する対象は、ヒト等の哺乳動物が主であるが、投与する方法としては比較的簡便な投与法、例えば経口投与が好ましい。また、本発明の錠剤の投与量は、投与の目的、投与されるヒト等の性別、体重、年齢等により一概には言えないが、通常は、吸水性アミノ酸総量として約0.1〜20g/日、好ましくは約0.2〜20g/日、特に好ましくは約0.2〜10g/日である。
本発明の錠剤は、吸水性アミノ酸及び食品衛生上又は薬事法上許容されるエタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤をその主要構成成分とし、その他に、吸水性アミノ酸を造粒する際に用いるメチルセルロースやマンニトール等、所望により賦形剤、滑沢剤等の添加成分を含んでいることが好ましい。これらの添加成分も食品衛生上又は薬事法上許容される成分であることが好ましい。
以下に本発明において好ましい実施例について述べるが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
流動層造粒型コーティング装置〔フローコーター(モデルFL−LABO)、フロイント産業株式会社製〕を用いて、グルタミン酸3.74質量%、プロリン16.5質量%、グリシン11.4質量%、リジン塩酸塩12.53質量%、アルギニン4.87質量%を含むアミノ酸混合粉350g〔協和醗酵工業株式会社製〕を、水200ml中にメチルセルロース〔SM−100、信越化学工業株式会社製〕2.8gを含む水溶液100mlを噴霧しながら造粒し、平均粒子径250〜300μmの造粒物を得た。続いて同一装置内に於いて、得られた造粒物に対し、エタノール150ml中にシェラック10.5gを含むエタノール溶液を全量噴霧し、3質量%のシェラックを被覆したコーティング顆粒1を得た。
上記の操作を数回繰り返し、得られたコーティング顆粒1(6000g)にエリスリトール3200g、カルボキシメチルセルロースカルシウム200g、ショ糖脂肪酸エステル500g及びオレンジ香料100gを加え、混合した。
次に、直径13mmの平面杵を装着したロータリー型打錠機(商品名:AP−15型、畑鉄工所製)を用い、20kNの打錠圧で圧縮成形して錠剤質量600mg(アミノ酸含量360mg、アミノ酸含有率約60質量%)のチュアブル剤を製造した(以下、錠剤1という)。
【実施例2】
流動層造粒型コーティング装置〔フローコーター(モデルFLO−5)、フロイント産業株式会社製〕を用いて、グルタミン酸3.74質量%、プロリン16.5質量%、グリシン11.4質量%、リジン塩酸塩12.53質量%、アルギニン4.87質量%を含むアミノ酸混合粉3000g〔協和醗酵工業株式会社製〕を、水1.5L中にメチルセルロース〔SM−100、信越化学工業株式会社製〕21gを含む水溶液1.3Lを噴霧しながら造粒し、平均粒子径250〜300μmの造粒物を得た。続いて同一装置内に於いて、得られた造粒物に対し、エタノール1.3L中にシェラック90gを含むエタノール溶液を全量噴霧し、3質量%のシェラックを被覆したコーティング顆粒2を得た。
上記の操作を数回繰り返し、得られたコーティング顆粒2(6000g)を用いて、実施例1と同様にチュアブル剤を製造した(以下、錠剤2という)。
錠剤の評価試験
得られた錠剤1及び2の物理的性質(硬度及び口腔内崩壊時間)を評価した。その結果、いずれの錠剤も、錠剤硬度が約70N、口腔内での錠剤崩壊時間が約90秒であり、チュアブル剤として服用感に優れた錠剤であった。また、打錠工程中のキャッピング(Capping)やスティッキング(Sticking)等の打錠障害も認められず、4時間の連続打錠が可能であった。
比較例
グルタミン酸3.74質量%、プロリン16.5質量%、グリシン11.4質量%、リジン塩酸塩12.53質量%、アルギニン4.87質量%を含むアミノ酸混合粉〔協和醗酵工業株式会社製〕を、エタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤でコーティングしないで打錠しようとしたが、試験打錠さえ不可能であった。
【産業上の利用可能性】
本発明の錠剤は、吸水性アミノ酸を含有するスポーツ用、ダイエット用又は医薬品用アミノ酸製剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性アミノ酸とエタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤とを含有することを特徴とする錠剤。
【請求項2】
吸水性アミノ酸は、エタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤に被覆されていることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の錠剤。
【請求項3】
エタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤がシェラック又はゼインであることを特徴とする請求の範囲第1項又は第2項に記載の錠剤。
【請求項4】
吸水性アミノ酸が、プロリン、リジン、ヒスチジン、システイン、オルニチン、グルタミン酸又はアルギニンであることを特徴とする請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の錠剤。
【請求項5】
吸水性アミノ酸が、錠剤総質量中10〜70質量%含まれることを特徴とする請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載の錠剤。
【請求項6】
錠剤がチュアブル剤であることを特徴とする請求の範囲第1項〜第5項のいずれかに記載の錠剤。
【請求項7】
吸水性アミノ酸を含む粉体を造粒した後、得られた造粒物を5〜20質量%のエタノール可溶性かつ水難溶性被覆剤を含有するエタノール溶液を用いて被覆することによりアミノ酸顆粒を得る工程を含むことを特徴とする吸水性アミノ酸含有錠剤の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/078171
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【発行日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503147(P2005−503147)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002882
【国際出願日】平成16年3月5日(2004.3.5)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】