説明

吸水性シートおよびその製造方法

【課題】塩化カルシウムの高い吸湿能力を有効に利用した吸水性シートを提供すること。
【解決手段】シリカ微粒子を分散させてあるコロイダルシリカ分散液に塩化カルシウムを5〜15質量%溶解し、得られた塊状ゾル組成物を、流動させつつシート材料に塗工した後、そのシート材料を乾燥、硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式除湿用の乾燥剤として用いることのできる吸水性シートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気体中の水分を吸湿する乾燥剤としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、シリカゲル、ゼオライトなどがある。このうち塩化カルシウム等のアルカリ土類金属の塩化物はゼオライト等の物理的吸湿型の乾燥物質より吸湿容量が大きい反面、潮解性塩類であるため自らは吸湿した吸湿水中に溶解する傾向がある。そこで、このような潮解性化合物を乾燥剤として利用するために、これをゼオライト等の多孔質鉱物や吸水性ポリマー等の保水剤に担持させて複合化し、吸湿水を多孔質材料中に蓄積固定させたり(例えば特許文献1参照)、シリカゲル等の保水剤を均一に混合したりすることが考えられていた。
【0003】
しかし、このような乾燥剤は、粒状物であるため、短期、小規模の利用には問題なく用いられるものの、フィルタ等の定置式で長期にわたって用いられる用途には不向きである。また、このような乾燥剤を樹脂組成物に混合してシート状に成型することも考えられているが、吸水容量が低下したり、フィルタとしての使用を想定したときに充分な通気性が得られず、実使用に耐えなかったりするという問題があった。
【0004】
そこで、例えば紙、織布や不織布等のシート材料に対して含浸保持させて、シート状の乾燥剤を成型することが考えられるが、上記従来の乾燥剤をシート材料に成型するのは困難で、潮解性の塩化カルシウムが吸湿水に溶解、流出して徐々に散逸して除湿、乾燥性能が低下しやすいものにならざるを得ないという現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2131494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、塩化カルシウムの高い吸湿能力を有効に利用した吸水性シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が鋭意研究したところ、下記の知見を得るとともに本発明に想到した。
【0008】
コロイダルシリカ分散液は、非常に細かいシリカ微粒子を水に分散させた液状体で、シリカが水中に均一に分散したものである。この分散液自体は、ある程度シート材料に対する塗工性を有し、また、乾燥硬化するとシリカゲルとなるので、ある程度の吸湿性能を発揮することが期待される。この分散液に塩化カルシウムを混合した状態で塗工すると、シリカゲルと塩化カルシウムとが渾然一体となって前記シート材料の表面に塗工され、塩化カルシウムの高い吸湿性が発揮され、かつシリカゲルの高い保水性が発揮されるものと期待される。
【0009】
コロイダルシリカ分散液自体は、流動性が高すぎるため、担体に担持、付着させて用いる従来の用い方には適しているものの、シート状に塗工するには、流動性、付着性の面から充分適したものとはいえない。そこで、粘度を高めるべく前記分散液からシリカ微粒子を塩析させると、その分散液の粘度は、ある塩濃度で急激に脱水した塊状のゾル組成物が得られる(コロイダルシリカがゲル化する直前の状況と考えられる)。このゾルは、シリカ微粒子がコロイド状に分散している分散液に徐々に塩化カルシウムを添加することにより、その分散液のシリカ濃度に応じた塩化カルシウム濃度の組成物として得ることができる。
【0010】
この組成物は、一見塊状で流動性がなく、塗工することができないように思われるが、本発明者は、撹拌衝撃や、振動を与え続けると、流動性が現れる点に着目し、この塊状ゾルを、流動させつつ薄く引き伸ばしたところ、シート材料に良好に塗工でき、良く付着していることを見出した。この塊状ゾルを塩析させるには、塩化カルシウムを用いると、塊状ゾルは塩化カルシウムを均一に含むものであるから、これを塗工した吸水性シートは塩化カルシウムの吸湿性を備えた層状に形成される。
【0011】
〔構成〕
よって、上記目的を達成するための本発明の吸水性シートの製造方法の特徴構成は、
シリカ微粒子を分散させてあるコロイダルシリカ分散液に塩化カルシウムを5〜15質量%溶解し、得られた塊状ゾル組成物を、流動させつつシート材料に塗工した後、そのシート材料を乾燥、硬化させる点にある。
【0012】
〔作用効果〕
塊状ゾルを、層状に形成し、乾燥、硬化させると、吸水性シートが得られる。この吸水性シートについて、吸湿性を調べたところ、充分な吸湿性が確認でき、しかも、シリカゲルの高い保水性に基づき、吸湿した水分による塩化カルシウムの流出がほとんど見られない高性能な吸水性シートとなっていることがわかった。
【0013】
尚、塊状ゾルは、ある程度過剰の塩化カルシウムを加えても均一な組成で、撹拌衝撃や振動を与え続けると流動性が現れる物性を有し、塩化カルシウム濃度についても種々調整することができる。ここで、塩化カルシウム濃度は5質量%以上添加しておけば、充分な吸湿性を発揮させられ、15質量%以下としておくことで上述の潮解性に基づく塩化カルシウムの流出、散逸を防止することができる。塩化カルシウム濃度は、5質量%以下とすると、さらに潮解性が低下するので好ましい。
【0014】
すなわち、上述の知見に基づけば、上記構成により、塗工性高く吸水性シートを製造することができ、しかも得られた吸水性シートは、塩化カルシウムによる低湿度条件下での高い吸水性を発揮し、潮解性がないために取り扱い容易でかつ長寿命であるという優れた特徴をもつ。
【0015】
また、このようにして得られた吸水性シートは、乾燥したガスに接することにより、逆に吸湿した水分を放出する性能を有し、可逆的に空中の水分を吸放出することができる。そのため、得られた吸水性シートは、デシカントローター等、調湿機能を要求される場所において高性能なフィルタ材として用いることができる。
【0016】
〔構成〕
また、上述の構成において、
前記シリカ微粒子が粒径4〜200nmであることが好ましく、
前記コロイダルシリカ分散液がシリカ微粒子を10〜40質量%含有することが好ましい。
【0017】
〔作用効果〕
上述の吸水性シートは、コロイダルシリカ分散液を基に塊状ゾル組成物を得る点に特徴を有する。コロイド状のシリカ成分が、一見凝集して塊状になるプロセスは、コロイダルシリカの粒径、濃度に依存して変化し、生成する塊状ゾルの物性も変化することがわかった。
【0018】
そこで、塗工性が高く、かつシート材料への密着性が高い塊状ゾル組成物を得るべく、これら条件を調整したところ、シリカ微粒子は200nm以下であれば、充分上記現象が発現することがわかった。尚、シリカ微粒子は、細かいほどコロイド状に分散しやすくなり好ましいものと考えられるが、現実的には、4nm未満にするのは費用、労力対効果の面から効率的でない。
【0019】
また、シリカ微粒子の分散濃度は、濃いほど塊状ゾル化しやすいため好ましいが、分散液状態での取り扱い性が低下するため、40質量%以下とすることが好ましい。また、濃度が低下しすぎると塊状ゾル化しにくくなるとともに、目的とする性能を保持するために使用すべき塩化カルシウム量が増加せざるを得ないことになり、その塊状ゾルを塗工して得られた吸水性シートの潮解性が次第に増すため、10質量%以上とすることが好ましい。
【0020】
〔構成〕
さらに、上述の構成において、
前記塊状ゾル組成物を、紙、織布もしくは不織布からなるシート材料とともに一対のローラー間に供給し、シート材料に含浸塗工することが好ましい。
【0021】
〔作用効果〕
このような塊状ゾルをシート材料に塗工する場合、前記シート材料への前記塊状ゾル付着性を高めようとすると、前記塊状ゾル中のシリカ微粒子のそれぞれが前記シート材料に対して広い面積で付着することが望ましい。その点で、前記シート材料として、紙、織布あるいは不織布を選択すると、前記シリカ微粒子は、紙、織布あるいは不織布の繊維間に侵入しつつ、周囲の繊維に絡まって付着するため、広い面積で前記繊維に付着しつつ、そのシリカ微粒子同士が層状に凝集し易いために、強固にシート材料に付着させることができる。また、紙、織布、不織布のように通気性のシート材料であると、前記シリカ微粒子が構成する繊維間の奥にまで含浸したとしても、繊維間の通気性によりそのシリカ微粒子が雰囲気中から吸湿することができるようになり、塗工されたシリカ微粒子の有効表面積を大きくして、高い吸湿性を発揮させるのに役立てられる。また、このようなシート材料に塊状ゾル組成物を含浸塗工するには、塊状ゾル組成物をシート材料とともに一対のローラー間に供給して行うと、前記塊状ゾル組成物はよく前記シート材料に含浸しつつ、均一な薄層を形成しやすくなるため、前記紙、織布または不織布の繊維間の奥までシリカ微粒子及び塩化カルシウムの吸湿性を大きな有効表面積で働かせられる。
【0022】
また、一対のローラーを用いる場合、前記ローラーを加振するなど、前記塊状ゾルを流動させつつ塗工する等、前記塊状ゾルを効率よく流動させつつ均一な薄層を容易に形成する手段を選択することができる。そのため、効率的に前記シート材料を連続的に供給しつつ、前記塊状ゾルを塗工することができ、吸水性シートを連続的に生産するのに役立つ。
【0023】
〔構成〕
また、上記目的を達成するための本発明の吸水性シートの特徴構成は、
塩化カルシウムを含有するコロイダルシリカ分散液をシート材料に塗布して乾燥させてある吸水性シートであって、
前記分散液が、塩化カルシウムを5〜15質量%含有するとともに、
粒径4〜200nmのシリカ微粒子を10〜40質量%分散させてあるコロイダルシリカ分散液であり、
前記シート材料が、紙を主材とし、秤量20〜50g/m2、厚さ100〜300μm、密度15〜30g/cm3である
点にある。
【0024】
〔作用効果〕
つまり、塩化カルシウムの含有量、粒径、シリカ微粒子の分散量を上述の範囲に設定しておくことにより、上述の吸水性シートは、高い吸水性と、潮解しにくさを併せ持ち、しかも製造容易であって、例えば、先述のシート製造方法によって簡便に製造可能な構成となる。
【0025】
ここで、さらに、シート材料が、紙を主材とし、秤量20〜50g/m2、厚さ100〜300μm、密度15〜30g/cm3であると、上述の塩化カルシウム、シリカ微粒子が紙を構成する繊維間によく浸透して確実に保持され、全体として一体化した吸水性シートを形成するので、その吸水性シートを高性能なフィルタ材として用いることができる。さらに、この吸水性シートは、塩化カルシウム、シリカ微粒子が、紙を構成する繊維間に確実に保持され、強固に一体化しているから、その吸水性シートを折り曲げてプリーツ加工するなど、さらに種々の加工を行ったとしても、剥離、脱落がおきにくく、種々の用途に応用するのに適している。
【発明の効果】
【0026】
したがって、本発明によれば、デシカント空調等に用いられるフィルタ材として、高い吸放湿性を発揮し、かつ、高い耐久性を発揮することができる高性能な吸水性シートを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】吸水性シートの除湿能力の評価方法を示す概念図である。
【図2】本発明の吸水性シートの30℃における水蒸気吸着等温線を示す図である。
【図5】試料Bの顕微鏡写真である。
【図4】試料Bの均一分散性を示す顕微鏡写真である。
【図3】試料Dの顕微鏡写真である。
【図6】試料Dの均一分散性を示す顕微鏡写真である。
【図7】ローラーコーターの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明の実施の形態を示す。以下には、発明を明瞭に説明するために、具体的な数値、材料等を挙げて説明を行うが、本発明はこれらの構成に限られるものではない。
【0029】
本発明の吸水性シートは、塩化カルシウムを含有するコロイダルシリカ分散液をシート材料に塗布して乾燥させて製造される。
【0030】
〔コロイダルシリカ分散液〕
具体的には、粒径4〜200nmのシリカ微粒子を水中に20質量%分散させてあるコロイダルシリカ(下記スノーテックスXS)に、塩化カルシウムを5〜10質量%(無水塩化カルシウムにて換算)溶解した分散液を用意する。
【0031】
コロイダルシリカ:
型番;スノーテックスXS
製造元;日産化学
物性;SiO2粒子径4−7nm、濃度20.0質量%、溶媒H2
【0032】
〔分散液の含浸塗工〕
この分散液を、バーコーター(図外)を用いて、シート材料(下記シート材料)に含浸塗工する。前記分散液は、塩化カルシウムを添加した時点で、シリカゲルが塩析し、流動性のきわめて乏しい塊状ゾルとなるが、振動を加えつつバーコーターで展開すると、前記シート材料に対して薄層状に塗布することができる。
【0033】
シート材料:
型番;PHN−35−40G
製造元;王子特殊紙製
物性;坪量40.0g/m2、厚み200μm、密度20.0g/cm3
【0034】
得られたシート材料を、100〜150℃で3分間乾燥硬化させることによって吸水性シートが得られた。
【0035】
〔吸水性シートの評価試験〕
上述の製造方法により製造した80mm角の形状の試験片による除湿性能を、デシカントローターでの使用環境を再現する下記条件によって測定した。評価は、測定手法の概略を図1に示すように、環境1、2の2つの恒湿槽に一定時間保持後、重量を測定するサイクルをくり返し、環境1の重量と環境2の重量との差分の10サイクル分もとめ、その差分の平均を除湿能力とし、吸水性を評価し、環境1における吸水性シートの表面状態から潮解性を評価した。その結果を表1に示す。
【0036】
環境:
環境1: 30℃,80%RH(恒温恒湿槽)
環境2: 60℃,10%RH(恒温恒湿槽)
サイクル:
環境1に1分保持後、秤量。(重量1)
さらに、環境2に1分保持後、秤量。(重量2)
これを1サイクルとする。
【0037】
【表1】

【0038】
尚、表1中の標記は、以下の内容を示す。
コロイダルシリカ:A−C,比較例2
型番;スノーテックスXS
製造元;日産化学
物性;SiO2粒子径4−7nm、濃度20.0質量%、溶媒H2
【0039】
コロイダルシリカ:D,比較例3
型番;スノーテックスMP−2040
製造元;日産化学
物性;SiO2粒子径200nm、濃度40.0質量%、溶媒H2
【0040】
コロイダルシリカ:括弧内標記は、コロイダルシリカ中のシリカ成分量
【0041】
塩化カルシウム:無水塩化カルシウムを使用
【0042】
有機吸湿材:ポリアクリル酸ナトリウム(20%分散液)を使用
【0043】
評価:デシカントローター用フィルタとして、◎=使用に好適、○=使用に適、△=使用可能、×=性能不十分
【0044】
表に示すとおり、水蒸気の吸脱湿性能において、本発明の吸水性シートA〜Cは、従来の比較例1(表中比較1)の吸水性シートと比べて何れも高い除湿性能を示しており、コロイダルシリカを5%含むAであっても比較1のものよりも高い除湿能力を示し、Cにおいてはきわめて高い除湿能力を示している。一方、潮解性に関しては、コロイダルシリカの割合が低減するにしたがって、潮解性が増し、塩化カルシウム使用量は、15%を超えない程度、さらに好ましくは、10%を超えない程度が好ましいことがわかる。
【0045】
また、本発明の吸水性シートとして、粒径200μmのコロイダルシリカを用いた場合(D)、吸水性、潮解性ともに好ましい結果が得られたが、粒径の細かな場合(A−C)に比べて除湿能力の向上が顕著ではなく、特にコロイダルシリカそのものの除湿能力が低下するため(比較例2,3)コロイダルシリカの粒径としては、比較的細かいものが好ましく、上記200μmを超えないことが好ましいことがわかる。また、40質量%程度のシリカ微粒子を分散させてあるコロイダルシリカに、塩化カルシウム10質量%を加えても良好なシート材料が得られることからコロイダルシリカのシリカ微粒子含有率は、40質量%以下程度が好ましいことがわかる。
【0046】
〔水蒸気吸着等温線〕
また、試料Cの30℃における水蒸気吸着等温線を測定し、比較例1(表中比較1)の試料と比較した。結果を図2に示す。図2から本発明の吸水性シートが、何れの分圧においても大きな吸湿量を示しており、高い吸湿能力を発揮することが分かる。
【0047】
〔吸湿材料の塗工状態〕
上記試料Bの吸水性シートの塗工状態を顕微鏡により観察したところ、図3,4のようになった。また、比較として、粒径2.9μmのシリカゲル(東ソー・シリカゲル株式会社製NIPGEL CY−200)2.5gと、無水塩化カルシウム1.0gを蒸留水31.5gに溶解・分散した分散液を調製し、試料Bと同様に前記シート材料に塗工して試料Dを作成し、顕微鏡により観察したところ、図5,6のようになった。
【0048】
図4,6のSEM−EDX写真を示す。図4,6において、a、bは、試験片表面を示す図、cは、試料中のSi分布を示す図、dは、試料中のカルシウム分布を示す図、eは、試料中のアルミニウム分布を示す図、fは、試料の元素分析比率を示す図である。試料B、Dは、成分組成(シリカ:カルシウム比率、濃度)は類似しているが(図4f,図6f)、分散状態に差がある(図4c〜e,図6c〜e)ことがわかる。試料Dにおいては、シリカ粒子や塩化カルシウムの分布にムラがある。一方で、試料Bのように、コロイダルシリカを用いた場合は、シリカ粒子が約100nmのサイズでムラ無く高分散し、且つ塩化カルシウムも凝集することなく高分散していることが分かる。(尚、各図中濃点が観測対象の元素である。)また、スケールの大きいSEM画像で確認すると、図3,5のように、コロイダルシリカより生じたシリカゲル微粒子のシート材料に対する浸透状態にも大きな差があることがわかる。
【0049】
〔吸水シートのフィルタ加工〕
得られた吸水シートを折り曲げ加工、エンボス加工するなどして、立体的に成型し、フィルタ材料を作成したところ、前記シリカゲル微粒子はシート材料に良く含浸付着しており、剥離、崩壊等の不都合なく、精度良くフィルタ材料を製造することができた。
【0050】
〔その他〕
尚、コロイダルシリカ分散液の含浸塗工の項において、例えばシート材料に前記分散液を含浸塗工するに、バーコーターに代えて、図7に示すローラーコーターを用いることもできる。ローラーコーターを用いる場合、一対のローラー1,1間にシート材料2及び分散液3を供給しつつ、加振装置4から振動を与えるなどして強制的に流動させながら、そのシート材料2に圧縮力をかけつつ、前記シート材料を構成する繊維間に前記分散液3を供給する。すると、前記分散液3中のシリカ微粒子及び塩化カルシウムを、容易に前記シート材料2を構成する繊維材料間に浸透させることができるため、吸水性シートの連続塗工、製造に有利である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の吸水性シートは、デシカント空調等に用いられるフィルタ材、室内、倉庫内等の空間調湿剤(壁紙など)等として、高い吸放湿性を発揮し、かつ、高い耐久性を発揮することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 ローラー
2 シート材料
3 分散液
4 加振装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ微粒子を分散させてあるコロイダルシリカ分散液に、塩化カルシウムを5〜15質量%溶解し、得られた塊状ゾル組成物を流動させつつシート材料に塗工したのち、そのシート材料を乾燥、硬化させる吸水性シートの製造方法。
【請求項2】
前記シリカ微粒子が、粒径4〜200nmである請求項1に記載の吸水性シートの製造方法。
【請求項3】
前記コロイダルシリカ分散液がシリカ微粒子を10〜40質量%含有する請求項1または2に記載の吸水性シートの製造方法。
【請求項4】
前記塊状ゾル組成物を紙、織布もしくは不織布からなるシート材料とともに一対のローラー間に供給し、前記シート材料に前記塊状ゾル組成物を含浸塗工する請求項1〜3のいずれかに記載の吸水性シートの製造方法。
【請求項5】
塩化カルシウムを含有するコロイダルシリカ分散液をシート材料に塗布して乾燥させてある吸水性シートであって、
前記分散液が、塩化カルシウムを5〜15質量%含有するとともに、
粒径4〜200nmのシリカ微粒子を10〜40質量%分散させてあるコロイダルシリカ分散液であり、
前記シート材料が、紙を主材とし、秤量20〜50g/m2、厚さ100〜300μm、密度15〜30g/cm3である
吸水性シート。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−41917(P2011−41917A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192436(P2009−192436)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】