説明

吸水性フェノール樹脂発泡体

【課題】 フラワーアレンジメントされた生花の寿命を延ばし、植物栽培用培養土として使用された場合に植物の生育を促進する、吸水性フェノール樹脂発泡体を提供する。
【解決手段】 吸水性フェノール樹脂発泡体は、芳香環を含まず、スルホン酸塩基を含む界面活性剤よりなる湿潤剤を配合する。湿潤剤は、N−アシル−N−メチルタウリン界面活性剤、N−アシルタウリン塩界面活性剤、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドエーテルサルフェート系界面活性剤、グリセリル脂肪酸アルキロールアミドエーテルサルフェート系界面活性剤、長鎖アシルグルタミン酸系界面活性剤、イセチオン酸系界面活性剤、α−スルホ脂肪酸エステル系界面活性剤、アルコールエトキシグリセリルスルホン酸塩系界面活性剤、およびノルマルパラフィンスルホン酸塩系界面活性剤の少なくとも1種の界面活性剤から選ばれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性フェノール樹脂発泡体(以下、単に「吸水性樹脂発泡体」という場合がある)に関し、特に、生花のフラワーアレンジメント用、植物栽培用培養土に適した吸水性フェノール樹脂発泡体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、吸水性フェノール樹脂発泡体は、レゾール型フェノール樹脂、主として整泡を目的に添加される界面活性剤(以下、整泡剤という)、主として湿潤を目的として添加される界面活性剤(以下、湿潤剤という)、発泡剤、および硬化剤からなる組成物を発泡硬化させることにより、得ることができる。
【0003】
具体的には、吸水性フェノール樹脂発泡体は、レゾール型液状フェノール樹脂、湿潤剤、発泡剤、整泡剤、および硬化剤からなる樹脂組成物を、高速攪拌して、30〜100℃の温度で発泡硬化させることにより製造されている。
【0004】
この吸水性樹脂発泡体は、生花のフラワーアレンジメントにおいて、切花等の生花を挿して保持・給水する剣山として使用される他、各種植物の栽培に際して、所定の寸法(例えば0.1〜4cm角)に裁断または粉砕して植物栽培用培養土として使用される。
【0005】
吸水性フェノール樹脂発泡体は、その機能として、吸水性と吸水後の保水性とが重要視され、また、フラワーアレンジメントの場合は、これに付け加えて生花の保持機能が要求されている。
【0006】
吸水性フェノール樹脂発泡体のフラワーアレンジメントの従来の用途は、業務用が多く、パーティー、ブライダル、葬儀等に主として使用されていた。これら業務用の用途では、剣山としての吸水性樹脂発泡体の継続的使用期間は短く、通常は1〜3日で生花と共に廃棄されている。
【0007】
しかしながら、近年、花屋において、従来のいわゆる花束に代わる商品として、吸水性フェノール樹脂発泡体を用いて、花屋が独自に生花をフラワーアレンジメントし、これを商品として販売するケースが増加している。これらのフラワーアレンジメントされた商品は、購入後、個人宅またはオフィスなどで観賞されることになる。このような観賞用のフラワーアレンジメント商品に要求される新たな機能として、フラワーアレンジメントされた生花が長持ちすることが求められるようになって来ている。
【0008】
また、吸水性フェノール樹脂発泡体を、植物栽培用培養土として使う場合は、長期的な使用になるので、これに使用する吸水性樹脂発泡体は、できるだけ植物に対して優しいものを使う必要があることは、長年認識されて来ている。
【0009】
しかしながら、従来技術では、もっぱら吸水性フェノール樹脂発泡体の吸水性、保水性、生花保持力に重点が置かれ、吸水性フェノール樹脂発泡体が使用される生花および植物の寿命に焦点を絞った技術開発が見かけられない。ここで、吸水性フェノール樹脂発泡体の従来技術の一端は、下記の文献に示されている。
【特許文献1】特開平7−207058号公報
【特許文献2】特開平10−139916号公報
【特許文献3】特開2001−26649号公報 最近、吸水性フェノール樹脂発泡体にフラワーアレンジメントされた生花、植物の寿命を延ばすことに着眼した発明も見かけられるが、吸水性フェノール樹脂発泡体の基本的な製法は従来と同じで、これに生花、植物の寿命を延ばす処方を追加するものであった。この考え方の従来の技術の一端は以下の文献で示されている。
【特許文献4】特開2008−150423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、フラワーアレンジメントされた生花の寿命を延ばし、植物栽培用培養土として使用された場合に植物の生育を促進する、吸水性フェノール樹脂発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、フラワーアレンジメントおよび植物栽培用培養土に要求されるこれらの事項については、吸水性フェノール樹脂発泡体の製法に係わる組成物の選択を適切にすることにより、解決できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0012】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、芳香環を含まず、スルホン酸塩基を含む界面活性剤よりなる湿潤剤を配合することを特徴とする、吸水性フェノール樹脂発泡体である。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載の吸水性フェノール樹脂発泡体であって、湿潤剤が、スルホン酸塩基を含みかつN−アシル基を含む界面活性剤であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2に記載の吸水性フェノール樹脂発泡体であって、湿潤剤が、N−アシル−N−メチルタウリン塩および/またはN−アシルタウリン塩よりなる界面活性剤であることを特徴とするものである。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1に記載の吸水性フェノール樹脂発泡体であって、湿潤剤が、イセチオン酸系界面活性剤であることを特徴とするものである。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1に記載の吸水性フェノール樹脂発泡体であって、湿潤剤が、α−スルホ脂肪酸エステル系界面活性剤であることを特徴とするものである。
【0017】
請求項6の吸水性フェノール樹脂発泡体の発明は、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の湿潤剤を、2種以上を混合して配合することを特徴とするものである。
【0018】
請求項7の発明は、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の吸水性フェノール樹脂発泡体であって、湿潤剤の配合量が、フェノール樹脂発泡体質量に対し、0.5〜5.0質量%であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体は、芳香環を含まず、スルホン酸塩基を含む界面活性剤よりなる湿潤剤を配合するものであるから、本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体をフラワーアレンジメントに使用することにより、通常の吸水性フェノール樹脂発泡体を使った場合に比較して、例えばバラ、ガーベラ、カーネーション等の切花の寿命が、最低でも2倍以上に長持ちするという効果を奏する。
【0020】
また、本発明による吸水性フェノール樹脂発泡体を所定の寸法に裁断してチューリップ等の植物栽培用培養土として使った場合、通常の土を使った場合と比較して、開花時期が概ね2週間以上早くなり、また、花弁の大きさが1.5倍以上大きくなり、植物の成長が促進されるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
つぎに、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
本発明による吸水性フェノール樹脂発泡体は、芳香環を含まず、スルホン酸塩基を含む界面活性剤よりなる湿潤剤を配合することを特徴とするものである。
【0023】
一般に、フラワーアレンジメントで生花を使う場合は、切花として使用する。このようなフラワーアレンジメントに吸水性フェノール樹脂発泡体を使用した場合、吸水性フェノール樹脂発泡体に含まれる薬剤が切花の生育に悪影響があると、結果として水に生けた場合に比較して、フラワーアレンジメントされた生花の寿命が短くなる傾向がある。このような場合、吸水性フェノール樹脂発泡体に含まれる薬剤の作用メカニズムについては、未だ十分には把握されていないが、薬剤が植物の導管を傷め、最終的には水揚げができずに枯れてしまうともの考えられる。
【0024】
本発明では、吸水性フェノール樹脂発泡体の製造に使用する薬剤の切花の寿命に対する影響を鋭意検討し、その過程で、吸水性フェノール樹脂発泡体の製造に配合される湿潤剤を、従来のものから、芳香環を含まず、スルホン酸塩基を含む界面活性剤よりなる湿潤剤に変更することにより、切花の寿命が大幅に延長できることを見出した。
【0025】
本発明による吸水性フェノール樹脂発泡体は、レゾール型フェノール樹脂、湿潤剤、発泡剤、整泡剤、および硬化剤からなる組成物を発泡させることにより、製造されるものである。
【0026】
ここでまず、レゾール型フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類を、アルデヒドを当モル比以上でアルカリ触媒の存在下に反応させることよって製造される。フェノール類としては、フェノール、クレゾール、ビスフェノールA等が挙げられ、これらは単独または併用しても構わない。
【0027】
アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール等が挙げられ、これらは単独または併用しても構わない。また、アルカリ性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属水酸化物、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等のアルカリ酸化物、アンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン等のアミン類が挙げられ、これらは単独または併用しても構わない。
【0028】
本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体においては、湿潤剤が、スルホン酸塩基を含みかつN−アシル基を含む界面活性剤であることが好ましく、湿潤剤が、N−アシル−N−メチルタウリン塩および/またはN−アシルタウリン塩よりなる界面活性剤であることが、さらに好ましい。
【0029】
本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体において配合する好適な湿潤剤であるN−アシル−N−メチルタウリン塩は、下記の一般式(1)を有するものである。
【化1】

【0030】
式中、Rは、炭素数が4〜18のアルキル基またはアルケニル基を示す。Mは、水素原子、またはナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属イオン、またはカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属イオン、またはアンモニウムイオン、またはアルカノールアミン、モノ、ジ、トリ−エタノールアミン、n−イソプロパノールアミン等の有機アミン由来の有機アンモニウムイオンを示し、それら二種以上を併用することもできる。
【0031】
本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体において配合する湿潤剤であるN−アシル−N−メチルタウリン塩の好ましい具体例としては、ラウロイル−N−メチルタウリン、ミリストイル−N−メチルタウリン、ステアロイル−N−メチルタウリン、ココイル−N−メチルタウリン等のN−メチルタウリンから得られるそれらの塩化合物(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩)が挙げられる。
【0032】
ここで、「ココイル」とは、やし油由来の脂肪酸で、一般にラウリン酸を44〜48質量%、ミリスチン酸を約18%、パルミチン酸を8〜10質量%、カプリル酸を約8質量%、カプリン酸を6〜8質量%を含有する炭素数6〜18の脂肪酸の混合物である。
【0033】
また、本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体において配合する湿潤剤であるN−アシルタウリン塩は、下記の一般式(2)を有するものである。
【化2】

【0034】
式中、Rは、炭素数が4〜18のアルキル基またはアルケニル基を示す。Mは、水素原子、またはナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属イオン、またはカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属イオン、またはアンモニウムイオン、またはアルカノールアミン、モノ、ジ、トリ−エタノールアミン、n−イソプロパノールアミン等の有機アミン由来の有機アンモニウムイオンを示し、それら二種以上を併用することもできる。
【0035】
本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体において配合する湿潤剤であるN−アシルタウリン塩の好ましい具体的としては、ラウロイルタウリン、ミリストイルタウリン、ステアロイルタウリン、ココイルタウリン等のナトリウム塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩が挙げられる。
【0036】
本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体において配合する湿潤剤であるスルホン酸塩基を含みかつN−アシル基を含む界面活性剤で、上記N−アシル−N−メチルタウリン塩およびN−アシルタウリン酸以外の化合物としては、下記の一般式(3)を有するポリオキシエチレン脂肪酸アミドエーテルサルフェート系界面活性剤が挙げられる。
【化3】

【0037】
式中、Rは、炭素数4〜21のアルキル基またはアルケニル基を示し、Rは、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示し、Mは、水素原子、またはナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属イオン、またはカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属イオン、またはアンモニウムイオン、またはアルカノールアミン、モノ、ジ、トリ−エタノールアミン、n−イソプロパノールアミン等の有機アミン由来の有機アンモニウムイオンを示し、それら二種以上を併用することもできる。mは、2〜20の数を示す。
【0038】
本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体において配合する湿潤剤であるポリオキシエチレン脂肪酸アミドエーテルサルフェート系界面活性剤の好ましい具体例としては、ポリオキシエチレン(3)ラウリン酸アミドエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(3)ヤシ油脂肪酸アミドエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。なお、カッコ内の数字はエチレンオキシド基の平均付加モル数を示す。
【0039】
さらに、本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体において、スルホン酸塩基を含みかつN−アシル基を含む界面活性剤よりなる湿潤剤の他の例としては、下記の一般式(4)を有するグリセリル脂肪酸アルキロールアミドエーテルサルフェート系界面活性剤が挙げられる。
【化4】

【0040】
式中、Rは、炭素数4〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、Rは、水素原子、−(AO)q(G)pH、−(AO)q(G)pSOM(qは、1〜20の数を示し、pは、0〜10の数を示す)、または炭素数1〜3のアルキル基を示す。AOは、エチレンオキシド基またはプロピレンオキシド基あるいはそれらの混合アルキレンオキシド基を示す。Gは、−CHC(OH)CH−、または−CHCH(CHOH)O−を示し、aは、1〜20の数を示し、nは、1〜10の数を示す。Mは、水素原子、またはナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属イオン、またはカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属イオン、またはアンモニウムイオン、またはアルカノールアミン、モノ、ジ、トリ−エタノールアミン、n−イソプロパノールアミン等の有機アミン由来の有機アンモニウムイオンを示し、それら二種以上を併用することもできる。
【0041】
本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体において配合する湿潤剤であるグリセリル脂肪酸アルキロールアミドエーテルサルフェート系界面活性剤の好ましい具体例としては、Rは、炭素数10から24であり、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、オクタデセニル基、ウンデシル基、2−ヘキシルデシル基、2−オクチルウンデシル基、および2−デシルテトラデシル基等が挙げられる。それぞれ単独、あるいは、混合して使用することができる。Rは、水素原子、ヒドロキシエチル基が挙げられる。aはアルキレンオキシド基の平均付加モル数で、好ましくは1〜2の数を示す。nは、グリセリンの平均縮合数であり、好ましくは1〜2の数を示す。
【0042】
このようなグリセリル脂肪酸アルキロールアミドエーテルサルフェート系界面活性剤の好ましい具体例としては、グリセリルパルミチン酸モノエタノールアミドエーテル硫酸塩、グリセリルミリスチン酸モノエタノールアミドエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレングリセリルミリスチン酸アミドエーテル硫酸塩が挙げられる。
【0043】
また、本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体において、スルホン酸塩基を含みかつN−アシル基を含む界面活性剤よりなる湿潤剤の他の例としては、下記の一般式(5)を有する長鎖アシルグルタミン酸系界面活性剤が挙げられる。
【化5】

【0044】
式中、Rは、炭素数4〜19のアルキル基またはアルケニル基を表し、Rは、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表す。M、Mは、それぞれ独立に水素原子、またはナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属イオン、またはカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属イオン、またはアンモニウムイオン、またはアルカノールアミン、モノ、ジ、トリ−エタノールアミン、n−イソプロパノールアミン等の有機アミン由来の有機アンモニウムイオンを示す。それら二種以上を併用することもできる。
【0045】
本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体において配合する湿潤剤である長鎖アシルグルタミン酸系界面活性剤の好ましい具体例としては、Rとして、ウンデシル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、トリデセニル基、ペンタデセニル基、およびココヤシ脂肪酸またはパームヤシ脂肪酸由来のアルキル基またはアルケニル基が挙げられる。Rとしては、水素原子、メチル基、エチル基またはプロピル基等が挙げられる。また、M、Mとしては、それぞれ独立にナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アンモニウムイオンおよびモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン由来の有機アンモニウムイオンが挙げられる。
【0046】
このような長鎖アシルグルタミン酸系界面活性剤の中で、特に好ましいものは、N−ココイルグルタミン酸ナトリウム、N−ココイル−N−メチルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイル−N−メチルグルタミン酸ナトリウム、N−パーム油脂肪酸−N−エチルグルタミン酸トリエタノールアミン、N−ココイルグルタミン酸マグネシウム、N−ココイル−N−メチルグルタミン酸マグネシウム、N−ラウロイルグルタミン酸マグネシウム、N−ラウロイル−N−メチルグルタミン酸マグネシウムが挙げられる。
【0047】
本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体において、湿潤剤が、イセチオン酸系界面活性剤であることが好ましい。ここで、イセチオン酸系界面活性剤は、下記の一般式(6)を有するものである。
【化6】

【0048】
式中、Rは、炭素数4〜17のアルキル基またはアルケニル基を示し、Mは、水素原子、またはナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属イオン、またはカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属イオン、またはアンモニウムイオン、またはアルカノールアミン、モノ、ジ、トリ−エタノールアミン、n−イソプロパノールアミン等の有機アミン由来の有機アンモニウムイオン等を示す。それら二種以上を併用することもできる。
【0049】
本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体において配合する湿潤剤であるイセチオン酸系界面活性剤の好ましい具体例としては、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ミリストイルイセチオン酸ナトリウム、ラウロイルイセチオン酸カリウム、ミリストイルイセチオン酸カリウム、ラウロイルイセチオン酸トリエタノールアミン、ココイルイセチオン酸ナトリウム、ココイルイセチオン酸カリウム等が挙げられる。
【0050】
本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体において、湿潤剤が、α−スルホ脂肪酸エステル系界面活性剤であることが好ましい。ここで、α−スルホ脂肪酸エステル系界面活性剤は、下記の一般式(7)を有するものである。
【化7】

【0051】
式中、Rは、炭素数4〜18のアルキル基またはアルケニル基を示し、Rは、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示し、AOは、低級アルキレンオキシ基、Mは、水素原子、またはナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属イオン、またはカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属イオン、またはアンモニウムイオン、またはアルカノールアミン、モノ、ジ、トリ−エタノールアミン、n−イソプロパノールアミン等の有機アミン由来の有機アンモニウムイオンを示し、それら二種以上を併用することもできる。bは、0〜25の数を示す。
【0052】
本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体において配合する湿潤剤であるα−スルホ脂肪酸誘導体系界面活性剤の好ましい具体例としては、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基が挙げられる。Rは、水素原子または炭素数1〜18のアルキル基である。AOは、低級アルキレンオキシ基を示すが、低級アルキレンオキシ基としては、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基が挙げられる。bは、好ましくは10〜15の数である。
【0053】
このようなα−スルホ脂肪酸誘導体系界面活性剤の具体的な例としては、α−スルホラウリン酸メチルエステルナトリウム、メトキシヘキサエチレングリコール(α−スルホラウリン酸)エステルナトリウム、メトキシノナエチレングリコール(α−スルホラウリン酸)エステルナトリウム、メトキシヘキサエチレングリコール(α−スルホミリスチン酸)エステルナトリウムが挙げられる。
【0054】
本発明による吸水性フェノール樹脂発泡体は、芳香環を含まず、スルホン酸塩基を含む界面活性剤よりなる湿潤剤を配合することを特徴とするものであるが、本発明に好適な湿潤剤の他の例としては、下記の一般式(8)を有するアルコールエトキシグリセリルスルホン酸塩系界面活性剤が挙げられる。
【化8】

【0055】
式中、R10は、炭素数4〜18のアルキル基またはアルケニル基を示し、Mは、水素原子、またはナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属イオン、またはカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属イオン、またはアンモニウムイオン、またはアルカノールアミン、モノ、ジ、トリ−エタノールアミン、n−イソプロパノールアミン等の有機アミン由来の有機アンモニウムイオンを示し、それら二種以上を併用することもできる。dは、1〜10の数を示す。
【0056】
本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体において、使用する湿潤剤であるアルコールエトキシグリセリルスルホン酸塩系界面活性剤の好ましい具体例としては、R10は、炭素原子が12および13個のアルキル基であり、dの平均値が1〜3のエチレンオキシド基である。もしくは、R10は、炭素原子が14個および15個のアルキル基で、dの平均値が1〜3のエチレンオキシド基である。mは、平均値1が最も好ましい。
【0057】
本発明による吸水性フェノール樹脂発泡体に好適な湿潤剤である、例えばアルコールエトキシグリセリルスルホン酸ナトリウム塩は、「NEGS−23」の商品名でShell Chemical Companyで製造されている。この場合、R10は、炭素原子が12および13個のアルキル基で、dの平均値は1〜3のエチレンオキシド基である。あるいはまた、「NEGS−45」の商品名で同社で製造されているものを使用することもでき、この場合、R10は、炭素原子が14個および15個のアルキル基で、dの平均値は1〜3のエチレンオキシド基である。
【0058】
本発明による吸水性フェノール樹脂発泡体は、芳香環を含まず、スルホン酸塩基を含む界面活性剤よりなる湿潤剤を配合することを特徴とするものであるが、本発明に好適な湿潤剤のさらに他の例としては、下記の一般式(9)を有するノルマルパラフィンスルホン酸塩系界面活性剤が挙げられる。
【化9】

【0059】
式中、R11は、炭素数4〜18のアルキル基を示し、Mは、水素原子、またはナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属イオン、またはカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属イオン、またはアンモニウムイオン、またはアルカノールアミン、モノ、ジ、トリ−エタノールアミン、n−イソプロパノールアミン等の有機アミン由来の有機アンモニウムイオンを示し、それら二種以上を併用することもできる。
【0060】
本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体において配合する湿潤剤であるノルマルパラフィンスルホン酸塩系界面活性剤の好ましい具体例としては、R11が炭素数13〜15のパラフィンのモノスルホン酸のリチウム塩、ナトリュウム塩、カリウム塩、またはアンモニウム塩が主成分の化合物が挙げられる。
【0061】
本発明による吸水性フェノール樹脂発泡体の吸水性を発現させるため必要とされる湿潤剤の配合量は、最低必要量より少ないと吸水機能が発現せず、逆に最大必要量より多すぎると吸水はするが、保水力がなく、一旦吸水した水を保持することができず排水してしまう。
【0062】
本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体において、配合する湿潤剤を総括すると、つぎの通りである。
【0063】
すなわち、本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体は、N−アシル−N−メチルタウリン界面活性剤、N−アシルタウリン塩界面活性剤、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドエーテルサルフェート系界面活性剤、グリセリル脂肪酸アルキロールアミドエーテルサルフェート系界面活性剤、長鎖アシルグルタミン酸系界面活性剤、イセチオン酸系界面活性剤、α−スルホ脂肪酸エステル系界面活性剤、アルコールエトキシグリセリルスルホン酸塩系界面活性剤、およびノルマルパラフィンスルホン酸塩系界面活性剤よりなる群の中から選ばれた少なくとも1種の界面活性剤よりなる湿潤剤を配合することを特徴とするものである。
【0064】
本発明による吸水性フェノール樹脂発泡体において、湿潤剤の量は、整泡剤の量より多く配合しないと吸水の効果は発現しない。整泡剤の配合量は、通常、吸水性フェノール樹脂発泡体に対し、0.2〜2.0質量%である。
【0065】
本発明において、湿潤剤の配合量は、0.5〜5.0質量%の範囲内である。なお、この湿潤剤の配合量は、使用する湿潤剤の種類により変化するものであり、以下に、本発明において使用する湿潤剤の種類と、好ましい配合量について、例を挙げて記載する。ここで、湿潤剤の配合量は、いずれも吸水性フェノール樹脂発泡体に対する割合を示す。
【0066】
本発明において使用する湿潤剤の種類 好ましい配合量
N−アシル−N−メチルタウリン塩 :0.5〜4.0質量%
N−アシルタウリン塩 :0.7〜4.0質量%
ポリオキシエチレン脂肪酸アミドエーテルサルフェート系界面活性剤
:0.7〜4.1質量%
グリセリル脂肪酸アルキロールアミドエーテルサルフェート系界面活性剤
:1.0〜4.2質量%
長鎖アシルグルタミン酸系界面活性剤 :1.2〜4.5質量%
イセチオン酸系界面活性剤 :1.0〜4.3質量%
α−スルホ脂肪酸エステル系界面活性剤 :1.3〜4.6質量%
アルコールエトキシグリセリルスルホン酸塩系界面活性剤
:1.2〜4.6質量%
ノルマルパラフィンスルホン酸塩系界面活性剤 :1.3〜5.0質量%
本発明による吸水性フェノール樹脂発泡体において、通常は、湿潤剤の配合量を増やして行き、最低必要量以上になると、吸水機能が発現し、かつ保水機能が働くので、一旦吸水した水は、排水されないか、排水したとしても、吸水性樹脂発泡体の体積に相当する水の量の2質量%未満である。実用的な製品の処方としては、湿潤剤の添加量は、この最低量の添加で行われるのが経済的である。最低量を超え湿潤剤の量を増やして行っても、目的の機能は発現し続けるが、最大必要量を超えると排水が激しくなるので、最小必要量以上に湿潤剤を添加する意味が見出せない。
【0067】
つぎに、本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体に配合される発泡剤としては、炭化水素系発泡剤とフッ素系発泡剤が挙げられる。ここで、炭化水素系発泡剤の例としては、イソペンタン、ノルマルペンタン、シクロペンタン、イソヘキサン、ノルマルヘキサン、石油エーテルが挙げられる。フッ素系発泡剤の例としては、従来から使われているフッ素化合物、例えばHFC−245fa、HFC-365mfcが、現状では推奨される。これら化合物を単独で使用しても、2種以上を混合して使用しても良い。発泡剤の配合量は、レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して3〜30質量部が好ましい。なお、HCFC−141b、HCFC−22等の塩素を含むフッ素化合物はオゾン層破壊物質として現在使用が制限されている。
【0068】
本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体に配合される整泡剤は、発泡剤の種類により配合するものが異なるが、整泡剤としては、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤を併用、またはそれぞれ単独で使用する。整泡剤としては、炭化水素系整泡剤はもとより、シリコーン系整泡剤も使われる。整泡剤の配合量は、レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して0.1〜4質量部、好ましくは0.5〜2質量部である。
【0069】
本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体において、炭化水素系発泡剤が用いられる場合、整泡剤としては、油脂エトキシ化物および/または長鎖脂肪酸のエトキシ化物類からなる非イオン界面活性剤、油脂エトキシ化物および/または長鎖脂肪酸のエトキシ化物類の硫酸エステル塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、脂肪族アミン塩)等のアニオン系界面活性剤、並びに変性シリコーンオイル(通常、シリコーン系整泡剤と称される)の中から1種以上が選択される。
【0070】
また、フッ素系発泡剤が用いられる場合、整泡剤としては、変性シリコーンオイル(シリコーン系整泡剤)の中から1種以上が選択される。
【0071】
本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体において、整泡剤として用いられる油脂エトキシ化物および長鎖脂肪酸エトキシ化物としては、大豆油、ヤシ油、アマニ油、ナタネ油、キリ油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、および牛脂等の油脂類のエトキシ化物、並びにラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ソルビタン脂肪酸エステル、およびグリセリン脂肪酸エステル等の脂肪酸類のエトキシ化物が挙げられる。これらは、単独または2種以上混合して使用しても構わない。
【0072】
本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体においては、特に、整泡剤としてヒマシ油エトキシ化物の使用が、吸水性、保水性の点で好ましい。
【0073】
本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体において、整泡剤として用いられる変性シリコーンオイルとしては、ポリオキシエチレン−ポリアルキルシロキサン、ポリオキシプロピレン−ポリアルキルシロキサン等のシリコーン系製泡剤、例えば東レ・ダウコーニング株式会社製の商品名SH−193、同SRX295などが挙げられる。
【0074】
つぎに、本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体において配合する硬化剤としては、公知慣用のものが使用することができ、例えばパラトルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸、キシレンスルホン酸等の有機酸、硫酸、リン酸等の無機酸等が挙げられる。
【0075】
本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体において、硬化剤の配合量は、レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して、有効成分で3〜20質量部であることが好ましい。
【0076】
本発明による吸水性フェノール樹脂発泡体は、上記のレゾール型フェノール樹脂、湿潤剤、および整泡剤を所定の割合で混合して、レゾール型フェノール樹脂予備混合液組成物を調製し、この混合液組成物に、発泡剤と硬化剤を同時に混合し、高速撹拌して、30〜100℃で発泡硬化反応させることにより、製造することができる。ここで、発泡の方法は、特に制限されず、例えば連続スラブ発泡、モールド発泡、スプレー発泡等が挙げられる。
【0077】
本発明による吸水性フェノール樹脂発泡体には、上記の湿潤剤を、2種以上、好ましくは2〜4種を混合して配合することも可能である。
【0078】
本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体は、優れた吸水性および保水性を有し、かつ均質なセル構造を有しており、生花用剣山用、植物栽培用培養土等の用途に使用することができるものであり、本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体を用いれば、従来の吸水性フェノール樹脂発泡体と比較して、フラワーアレンジメントの花の寿命が著しく延びるため、花屋が予め生花をフラワーアレンジメントしたものを商品として陳列しても、花の寿命が長くなり、例えその商品がフラワーアレンジメント後直ぐに販売できなくても、長期にわたって陳列でき、商品価値が落ちない。また、このフラワーアレンジメントされた商品が買い取られた後も、家庭、オフィス等において長期にわたって花が枯れることなく観賞できるため、フラワーアレンジメントされた商品の価格が少々高くても十分に商品価値がある商品になりうる。これらのことにより、花き流通の活性化が図られ、ひいては花き生産の活性化にもつながる。また、植物栽培用培養土として使用された場合にも植物の生育を大幅に促進することができる。
【実施例】
【0079】
つぎに、本発明の実施例を比較例と共に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、各例中の「部」、および「%」は、それぞれ質量基準である。
【0080】
実施例1
まず、攪拌機、コンデンサー、温度計および滴下ロートを備えた4つ口3リットルフラスコを用意し、このフラスコにフェノールモノマー940部、42%ホルマリン1000部および、触媒として48%苛性ソーダを9.4部加え、90℃で3時間反応させ、その後、蟻酸で中和し、pHを6〜7に調節して、減圧脱水することにより、粘度4000cps、不揮発分70%のレゾール型フェノール樹脂を得た。
【0081】
つぎに、レゾール型フェノール樹脂100部、整泡剤としてヒマシ油エトキシ化物1部および同オレイルアルコールエトキシ化スルファネート化物0.5部、湿潤剤としてココイル−N−メチルタウリンのナトリウム塩を1.7部、を添加し、予め空気泡を内包することなく、良く混合した。
【0082】
その後、発泡剤としてペンタン9部を添加して、高速撹拌で、ペンタンをレゾール樹脂の中に均一に分散させ、その後に硬化剤として65%パラトルエンスルホン酸7.5部を加え、直ちに高速撹拌混合し、混合物をダンボール容器に入れて、50℃にて発泡硬化させ、均一なセル構造を有する本発明の吸水性フェノール樹脂発泡体を作製した。得られた吸水性フェノール樹脂発泡体は、89部であった。なお、湿潤剤としてのココイル−N−メチルタウリンのナトリウム塩には変化が無いので、湿潤剤の配合量は、フェノール樹脂発泡体質量に対し、1.9質量%であった。
【0083】
実施例2
実施例1の湿潤剤の代わりに、ココイルタウリンのナトリウム塩1.9部を加えた以外は、実施例1と同じ方法により、本発明による吸水性フェノール樹脂発泡体を作製した。得られた吸水性フェノール樹脂発泡体は、89部であった。なお、湿潤剤としてのココイルタウリンのナトリウム塩には変化が無いので、湿潤剤の配合量は、フェノール樹脂発泡体質量に対し、2.1質量%であった。
【0084】
実施例3
実施例1の湿潤剤の代わりに、ポリオキシエチレン(3)ヤシ油脂肪酸アミドエーテル硫酸ナトリウム(カッコ内の数字はエチレンオキシド基の平均付加モル数を示す)1.9部を加えること以外は、実施例1と同じ方法で、本発明による吸水性フェノール樹脂発泡体を作製した。得られた吸水性フェノール樹脂発泡体は、89部であった。なお、湿潤剤としてのポリオキシエチレン(3)ヤシ油脂肪酸アミドエーテル硫酸ナトリウムには変化が無いので、湿潤剤の配合量は、フェノール樹脂発泡体質量に対し、2.1質量%であった。
【0085】
実施例4
実施例1の湿潤剤の代わりに、グリセリル脂肪酸アルキロールアミドエーテルサルフェート系界面活性剤よりなる湿潤剤としてグリセリルパルミチン酸モノエタノールアミドエーテル硫酸ナトリウム2.1部を加えること以外は、実施例1と同じ方法で、本発明による吸水性フェノール樹脂発泡体を作製した。得られた吸水性フェノール樹脂発泡体は、89部であった。なお、湿潤剤としてのグリセリルパルミチン酸モノエタノールアミドエーテル硫酸ナトリウムには変化が無いので、湿潤剤の配合量は、フェノール樹脂発泡体質量に対し、2.4質量%であった。
【0086】
実施例5
実施例1の湿潤剤の代わりに、長鎖アシルグルタミン酸系界面活性剤よりなる湿潤剤としてN−ココイルグルタミン酸ナトリウム2.5部を加えること以外は、実施例1と同じ方法で、本発明による吸水性フェノール樹脂発泡体を作製した。得られた吸水性フェノール樹脂発泡体は、90部であった。なお、湿潤剤としてのN−ココイルグルタミン酸ナトリウムには変化が無いので、湿潤剤の配合量は、フェノール樹脂発泡体質量に対し、2.8質量%であった。
【0087】
実施例6
実施例1の湿潤剤の代わりに、イセチオン酸系界面活性剤よりなる湿潤剤としてラウロイルイセチオン酸ナトリウム2.1部を加えること以外は、実施例1と同じ方法で、本発明による吸水性フェノール樹脂発泡体を作製した。得られた吸水性フェノール樹脂発泡体は、89部であった。なお、湿潤剤としてのラウロイルイセチオン酸ナトリウムには変化が無いので、湿潤剤の配合量は、フェノール樹脂発泡体質量に対し、2.4質量%であった。
【0088】
実施例7
実施例1の湿潤剤の代わりに、α−スルホ脂肪酸エステル系界面活性剤よりなる湿潤剤としてメトキシヘキサエチレングリコール(α−スルホラウリン酸)エステルナトリウム2.6部を加えること以外は、実施例1と同じ方法で、本発明による吸水性フェノール樹脂発泡体を作製した。得られた吸水性フェノール樹脂発泡体は、90部であった。なお、湿潤剤としてのメトキシヘキサエチレングリコール(α−スルホラウリン酸)エステルナトリウムには変化が無いので、湿潤剤の配合量は、フェノール樹脂発泡体質量に対し、2.9質量%であった。
【0089】
実施例8
実施例1の湿潤剤の代わりに、アルコールエトキシグリセリルスルホン酸塩系界面活性剤(商品名NEGS−23、Shell Chemical Company製)2.6部を加えること以外は、全て実施例1と同じ方法で、本発明による吸水性フェノール樹脂発泡体を作製した。得られた吸水性フェノール樹脂発泡体は、90部であった。なお、湿潤剤としてのアルコールエトキシグリセリルスルホン酸塩系界面活性剤には変化が無いので、湿潤剤の配合量は、フェノール樹脂発泡体質量に対し、2.9質量%であった。
【0090】
実施例9
実施例1の湿潤剤の代わりに、ノルマルパラフィンスルホン酸塩系界面活性剤よりなる湿潤剤として1−ドデカンスルホン酸ナトリウム2.5部を加えること以外は、実施例1と同じ方法で、本発明による吸水性フェノール樹脂発泡体を作製した。得られた吸水性フェノール樹脂発泡体は、90部であった。なお、湿潤剤としての1−ドデカンスルホン酸ナトリウムには変化が無いので、湿潤剤の配合量は、フェノール樹脂発泡体質量に対し、2.8質量%であった。
【0091】
実施例10
実施例1の湿潤剤の代わりに、イセチオン酸系界面活性剤よりなる湿潤剤としてラウロイルイセチオン酸ナトリウム2.2部を加えること以外は、実施例1と同じ方法で、本発明による吸水性フェノール樹脂発泡体を作製した。得られた吸水性フェノール樹脂発泡体は、90部であった。なお、湿潤剤としてのラウロイルイセチオン酸ナトリウムには変化が無いので、湿潤剤の配合量は、フェノール樹脂発泡体質量に対し、2.4質量%であった。
【0092】
実施例11
実施例1の湿潤剤の代わりに、ココイル−N−メチルタウリンのナトリウム塩1.0部と、ココイルタウリンのナトリウム塩1.0部とを加えること以外は、実施例1と同じ方法で、本発明による吸水性フェノール樹脂発泡体を作製した。得られた吸水性フェノール樹脂発泡体は、89部であった。なお、湿潤剤としてのココイル−N−メチルタウリンのナトリウムおよびココイルタウリンのナトリウム塩には変化が無いので、湿潤剤の配合量は、フェノール樹脂発泡体質量に対し、2.2質量%であった。
【0093】
比較例1
実施例1の湿潤剤の代わりに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(芳香環を含むスルホン酸塩界面活性剤よりなる湿潤剤)2.5部を加えること以外は、実施例1と同じ方法で、比較用の吸水性フェノール樹脂発泡体を作製した。得られた吸水性フェノール樹脂発泡体は、90部であった。なお、湿潤剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムには変化が無いので、湿潤剤の配合量は、フェノール樹脂発泡体質量に対し、2.8質量%であった。
【0094】
比較例2
実施例1の湿潤剤の代わりに、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(芳香環を含むスルホン酸塩基界面活性剤よりなる湿潤剤)2.0部を加えること以外は、実施例1と同じ方法で、比較用の吸水性フェノール樹脂発泡体を作製した。得られた吸水性フェノール樹脂発泡体は、89部であった。なお、湿潤剤としてのドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムには変化が無いので、湿潤剤の配合量は、フェノール樹脂発泡体質量に対し、2.2質量%であった。
【0095】
比較例3
実施例1の湿潤剤であるココイル−N−メチルタウリンのナトリウム塩の添加量を、0.3部に変更すること以外は、実施例1と同じ方法で、比較用の吸水性フェノール樹脂発泡体を作製した。得られた吸水性フェノール樹脂発泡体は、88部であった。なお、湿潤剤としてのココイル−N−メチルタウリンのナトリウム塩には変化が無いので、湿潤剤の配合量は、フェノール樹脂発泡体質量に対し、0.3質量%であった。
【0096】
上記実施例1〜11および比較例1〜3で得られた各種吸水性フェノール樹脂発泡体について、密度を測定するとともに、各発泡体に、水道水を用いて定法に従って吸水させ、その時の吸水時間、および吸水量を測定した。
【0097】
なお、各吸水性フェノール樹脂発泡体の吸水時間および吸水量については、各発泡体を、幅230mm、奥行110mm、高さ80mmに裁断し、各発泡体の裁断片を、温度20℃の水に浮かべて、自重で沈ませた場合について、測定したものである。測定結果は、下記の表1にまとめて示した。
【0098】
実施例1〜11および比較例1〜3で得られた吸水性フェノール樹脂発泡体のうち、吸水したものについては、これらを使って生花のフラワーアレンジメントを行った。生花には、バラ、ガーベラ、カーネーションを使用した。
【0099】
これらのフラワーアレンジメントを、温度25℃、相対湿度50−70%の室内で、蛍光灯を使用してフラワーアレンジメントの照度が800〜1200ルクスになるように設定し、時間の経過によるフラワーアレンジメントした生花の状態を観察した。その間、水道水は、各吸水性フェノール樹脂発泡体を入れた容器に、該発泡体が底面から1センチメートル程度浸かるように補充した。
【0100】
観察点として、花びらについては、花弁の垂れ下がり、先端の変色・壊死、花首の折れ曲がり、また、茎および葉については、がく片の黄変・壊死、茎の黄変・折れ・壊死、葉の乾燥・黄変の、いずれかもしくは複合した症状が現れた時点を花の寿命とした。得られた結果を下記の表1にあわせて示した。
【0101】
なお、蛍光灯は1日24時間の連続照射とした。通常の室内環境では、蛍光灯の連続照射は考えられないので、本発明による吸水性フェノール樹脂発泡体を用いた場合、実環境においては、今回測定された寿命の約2倍は長持ちするものと考えられる。
【表1】

【0102】

上記の表1の結果から明らかなように、実施例1〜11で得られた吸水性フェノール樹脂発泡体を用いると、バラ、ガーベラおよびカーネーションの寿命は、比較例1〜2で得られた吸水性フェノール樹脂発泡体を用いたと比べて、いずれも約2倍強に延びていた。
【0103】
なお、上記の表1に示されるように、密度および吸水性については、実施例1〜11で得られた吸水性フェノール樹脂発泡体と、比較例1〜2で得られた吸水性フェノール樹脂発泡体とでは、実質的な差異は見られなかった。
【0104】
また、比較例3の吸水性フェノール樹脂発泡体は、湿潤剤の添加量を吸水に必要な量以下にしたため、吸水せず、その結果として吸水時間、吸水量および花の寿命については測定することができなかった。
【0105】
実施例12
つぎに、上記の実施例1で得られた本発明による吸水性フェノール樹脂発泡体を、カッターで、その一辺が約1〜2cmの立方体にカットし、植物栽培用培養土として使用した。この植物栽培用培養土を、4号の素焼き鉢に約8リットルの容積で入れた。つぎに、該発泡体表面の余分な薬剤を取り除くために、水による洗浄作業を行なった。
【0106】
ここで、洗浄作業の方法は、鉢の上から水を注ぎ、水が鉢表面(鉢の上端面)から溢れ出るまで入れた後、鉢の底から水が漏れなくなるまで待った。その後、同様の作業を10回以上繰り返し、鉢の底から出る排水に泡立ちが無いことを確認した。
【0107】
ついで、この洗浄済み吸水性フェノール樹脂発泡体よりなる植物栽培用培養土を入れた鉢に、トライアンフ系チューリップの品種である「ガンダー」種の球根3個を、培養土表面から約4〜5cmの深さに分散させて植え、上から同じく洗浄済み吸水性フェノール樹脂発泡体よりなる植物栽培用培養土をかけた。その後、水を如雨露で植物栽培用培養土全体に注ぎ、底から水が漏れ出すまで十分に水を植物栽培用培養土に含ませた。なおここで、植えた日は11月17日であった。
【0108】
そうして、該鉢を屋外の日当たりの良い場所に置き開花を待った。雨がふらず鉢内の吸水性フェノール樹脂発泡体よりなる植物栽培用培養土の表面が乾いてきたら、随時水を補給した。水の補給に際しては、鉢の底から水があまり漏れ出さない程度で止めた。肥料は使わなかった。
【0109】
この結果、ガンダー種チューリップの開花は、植えた年の翌年の4月1日であった。
【0110】
実施例13
実施例12の発泡体よりなる植物栽培用培養土の代わりに、上記の実施例2〜11で得られた本発明による吸水性フェノール樹脂発泡体をそれぞれ使用した以外は、実施例12と同じ方法でチューリップを栽培した。
【0111】
この結果、ガンダー種チューリップの開花は、いずれの場合も、植えた年の翌年の4月3日〜4月6日の期間内であった。
【0112】
比較例4
実施例12の発泡体よりなる植物栽培用培養土の代わりに、従来の植物栽培用培養土、すなわち、赤球細粒:腐葉土:軽石細粒を容量比で6:3:1になるように配合した培養土を使用した以外は、実施例12と同じ方法でチューリップを栽培した。この比較例4では、水の補給は、実施例12の場合に比較して、2倍程度の頻度で行なわないと、土の表面が直ぐに乾燥した。
【0113】
この結果、ガンダー種チューリップの開花は、植えた年の翌年の4月20日であった。
【0114】
また、上記実施例12と13、および比較例4において、それぞれ開花したチューリップの一番大きな花弁の長さを比較したところ、実施例12のチューリップの花弁の長さは、比較例4のチューリップの花弁の長さに比べて、約1.6倍あり、また、実施例13のそれぞれのチューリップの花弁の長さは、比較例4のチューリップの花弁の長さに比べて、いずれの場合も、約1.4倍〜1.5倍あり、チューリップの成長が促進された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香環を含まず、スルホン酸塩基を含む界面活性剤よりなる湿潤剤を配合することを特徴とする、吸水性フェノール樹脂発泡体。
【請求項2】
湿潤剤が、スルホン酸塩基を含みかつN−アシル基を含む界面活性剤であることを特徴とする、請求項1に記載の吸水性フェノール樹脂発泡体。
【請求項3】
湿潤剤が、N−アシル−N−メチルタウリン塩および/またはN−アシルタウリン塩よりなる界面活性剤であることを特徴とする、請求項2に記載の吸水性フェノール樹脂発泡体。
【請求項4】
湿潤剤が、イセチオン酸系界面活性剤であることを特徴とする、請求項1に記載の吸水性フェノール樹脂発泡体。
【請求項5】
湿潤剤が、α−スルホ脂肪酸エステル系界面活性剤であることを特徴とする、請求項1に記載の吸水性フェノール樹脂発泡体。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の湿潤剤を、2種以上を混合して配合することを特徴とする、吸水性フェノール樹脂発泡体。
【請求項7】
湿潤剤の配合量が、フェノール樹脂発泡体質量に対し、0.5〜5.0質量%であることを特徴とする、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の吸水性フェノール樹脂発泡体。

【公開番号】特開2011−157444(P2011−157444A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19076(P2010−19076)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(593220410)松村アクア株式会社 (2)
【Fターム(参考)】