説明

吸水性ポリウレタン発泡体

【課題】洗車後の車体表面の水分除去道具、トイレクリーナー、水取りモップ、雑巾やガーゼ、脱脂綿の代替品等として用いられ、低い膨潤率を有すると共に吸水性に優れる吸水性ポリウレタン発泡体の提供を目的とする。
【解決手段】ポリオールとポリイソシアネートを反応させてなるイソシアネート末端のプレポリマーと、セルロースナノファイバーを水に分散させた水溶液を反応させて得られたポリウレタン発泡体からなり、セルロースナノファイバーの量を水100wt%に対して0.15〜2.0wt%とする。好ましいセルロースナノファイバーの幅(長さ方向と直交する方向の幅、1本の場合の直径方向に相当する寸法)は、0.5〜800nm(複数本束にされた場合の幅を含む)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性に優れる吸水性ポリウレタン発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸水性を有するポリウレタン発泡体は、水分を吸収し、その後発泡体内で水分を保持し、発泡体を絞っても外部へ流出する水分が少ない性質を有する。吸水性ポリウレタン発泡体の用途としては、洗車後の車体表面の水分除去道具、トイレクリーナー、水取りモップ、雑巾やガーゼ、脱脂綿の代替品等が挙げられる。
【0003】
従来の吸水性ポリウレタン発泡体は、前記用途の場合、吸水性がまだ不足しており、さらに高い吸水性が求められていた。また、吸水性ポリウレタン発泡体は、通常水を含むと膨潤するため、引張強度等の機械強度が低下することで、使用時の作業性が悪く、また、廃棄する際には体積がかさばることからゴミの増量にもつながる。そのため、低い膨潤率で高い吸収性を有するポリウレタン発泡体が望まれている。
【0004】
さらに、通常、吸水性ポリウレタン発泡体は、ポリオールとポリイソシアネートから水発泡により得られるが、その際にシリコーン整泡剤が添加される。シリコーン整泡剤は、ポリウレタン発泡体の使用中にポリウレタン発泡体から流出するおそれがあり、環境問題の観点より、ポリウレタン発泡体に添加せずにポリウレタン発泡体を発泡できればより好ましい。
【0005】
【特許文献1】特開2006−265448号公報
【特許文献2】特開2001−151846号公報
【特許文献3】特開2005−187788号公報
【特許文献4】特開2002−20500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、低い膨潤率で吸水性に優れる吸水性ポリウレタン発泡体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、ポリウレタン発泡体にセルロースナノファイバーを含有していることを特徴とする吸水性ポリウレタン発泡体に係る。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、前記セルロースナノファイバーの量が前記吸水性ポリウレタン発泡体100wt%中に0.15〜2.0wt%含まれていることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記ポリウレタン発泡体が、ポリオールとポリイソシアネートを反応させてなるイソシアネート末端のプレポリマーと、前記セルロースナノファイバーを水に分散させた水溶液を反応させて得られたものからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1〜3の発明によれば、吸水性ポリウレタン発泡体は、ポリウレタン発泡体にセルロースナノファイバーを含むことにより、低い膨潤率で吸水性に優れる効果を発揮する。セルロースナノファイバーは、水酸基を有し、水との親和性に優れるため、吸水性及び保水性に優れる効果を奏する。しかも、セルロースナノファイバーは、極めて小さいことから、ポリウレタン発泡体の原料に添加してポリウレタン発泡体を発泡する際に偏在し難く、セルロースナノファイバーが良好に分散した吸水性ポリウレタン発泡体が得られる。
【0011】
また、セルロースナノファイバーは、ポリウレタン発泡体の原料への添加量増大にしたがい、原料の粘度上昇を生じ、多量に添加した場合には、撹拌不良を引き起こし、ひいては水とイソシアネート化合物によりウレア結合が生じると共に、二酸化炭素が生じる泡化反応と、ポリオールとイソシアネート化合物によりウレタン結合等が生じる樹脂化反応との均衡である泡化と樹脂化のバランス(以下、発泡バランスという)が崩れるおそれがある。しかし、請求項2のように、セルロースナノファイバーの量を吸水性ポリウレタン発泡体(セルロースナノファイバーが含まれているもの)100wt%中に0.15〜2.0wt%とすることにより、撹拌不良を抑え、発泡バランスの崩れを効果的に抑えることができ、吸水性の良好なポリウレタン発泡体が得られやすくなる。さらに、請求項3にように、ポリウレタン発泡体が、ポリオールとポリイソシアネートを反応させてなるイソシアネート端末のプレポリマーとセルロースナノファイバーを水に分散させた水溶液を反応させて得られたものからなる場合には、ポリオールやプレポリマーと比べてはるかに粘度の低い水に予めセルロースナノファイバーを分散させて用いるため、プレポリマーと水溶液を混合した際にプレポリマーに対してセルロースの分散が容易になる。したがって、発泡バランスの崩れをより確実に抑えることができ、セルロースナノファイバーが良好に分散した吸水性ポリウレタン発泡体が得られるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明における吸水性ポリウレタン発泡体は、ポリウレタン発泡体にセルロースナノファイバーを含有している。
【0013】
前記ポリウレタン発泡体は、プレポリマー法あるいはワンショット法で発泡されたものからなる。
【0014】
プレポリマー法は、ポリオールとポリイソシアネートを反応させてなるイソシアネート末端のプレポリマーを水と混合して反応させ、発泡させる方法であり、本発明では、セルロースナノファイバーを水に分散させた水溶液とイソシアネート末端のプレポリマーを反応させて吸水性ポリウレタン発泡体を得ている。
【0015】
一方、ワンショット法は、ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、触媒を含むポリウレタン発泡原料をチャンバー内に噴射、スターラーで撹拌、混合し、常温、大気圧下で反応、発泡、硬化させる方法であり、本発明では、ポリウレタン発泡原料、特には、ポリオールにセルロースナノファイバーを添加して吸水性ポリウレタン発泡体を得ている。
【0016】
まず、プレポリマー法の場合について説明する。
プレポリマー法で用いるイソシアネート末端プレポリマーは、ポリイソシアネートとポリオール、場合によってはさらに架橋剤を公知のプレポリマー製造方法に従い反応させて得られるもの(重合体)である。
【0017】
前記イソシアネート末端プレポリマーは、イソシアネート基(NCO基)を5〜25wt%含有するものであれば特に制限はない。
【0018】
具体的には、前記イソシアネート末端プレポリマーの製造に用いられるポリイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネートあるいは2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、更には、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の異性体、多核体が含まれるクルードMDI、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、3.3’−ジメチルジフェニル4,4’−ジイソシアネート(TODI)、m−キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、或いはこれらのウレタン、カルボジイミド、イソシアヌレート、アロファネート、ビュレット各変成体のほか、2核体等が挙げられる。
【0019】
前記イソシアネート末端プレポリマーの製造に用いられるポリオールとしては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカプロラクトン系、ポリカーボネート系等の公知のものが使用可能である。また、約2〜8のヒドロシキル官能基と約200〜20000の重量平均分子量を有するものが使用可能である。好ましくは、2官能の開始剤にアルキレンオキサイド、中でもエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの双方、或いは何れか一方を付加して得られる分子量800〜4000のポリオールである。
【0020】
さらに、ポリウレタン発泡体は3次元網目構造のものが好ましい。3次元網目構造のポリウレタン発泡体を得るには、前記イソシアネート末端プレポリマーの製造に際して、架橋剤として多官能で且つイソシアネート基と反応性を有するものを使用するのが好ましい。好ましい架橋剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリレン−2,4,6−トリアミン、エチレンジアミン、アミノエタノール、トリエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ヒドラジントリエタノールアミン、ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸、ニトリロトリ酢酸、クエン酸、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)等が挙げられる。これらの中でも、グリセリンやトリメチロールプロパンが広く使用されていることから好ましい。
【0021】
イソシアネート末端のプレポリマーと反応させる水は、イソシアネート末端プレポリマー100wt%に対して50〜1000wt%である。前記イソシアネート末端のプレポリマーと反応させる水は、セルロースナノファイバーを分散させた水溶液として用いられる。
【0022】
セルロースナノファイバーは、1本単位のものに限られない。通常は、複数本、例えば数十本の束で使用される。好ましいセルロースナノファイバーの幅(長さ方向と直交する方向の寸法であり、1本の場合には直径、複数本束の場合には束の径に相当)は、0.5〜800nm(複数本束にされた場合の幅を含む)である。特にセルロースナノファイバーの入手容易性を考慮すると、セルロースナノファイバーのより好ましい幅は3〜100nmである。なお、通常のセルロースファイバーは、直径が10〜50μm程度(マイクロサイズ)であり、本発明で使用するセルロースナノファイバーとは10レベルのオーダー差がある。また、本発明で使用するセルロースナノファイバーの繊維長は、10000〜100000nm(10〜100μm)である。好ましいアスペクト比は100〜30000である。セルロースナノファイバーの幅は、ナノサイズであることから、少量の添加でも発泡体中における樹脂単位体積あたりのファイバー本数を向上させることができる為、吸水性の向上に併せ、樹脂の膨潤性の抑制をすることができる。添加量を多くすれば、吸水性のさらなる向上が期待できる。しかし、セルロースナノファイバーの添加は、原料粘度を増加させるため、多量に添加した場合には、撹拌不良を引き起こし、ひいては発泡バランスが崩れるおそれがある。そのため、前記セルロースナノファイバーの好ましい添加量は、吸水性ポリウレタン発泡体100重量%中に0.15〜2.0wt%含まれることとなる量である。さらに、水が多量に添加されるプレポリマー法は、原料配合液の粘度を低くできる一方、セルロースナノファイバーの添加を容易にし、原料配合液中のセルロースナノファイバーの分散を良好にすることができる。これらのことから、本発明の吸水性ポリウレタン発泡体は、プレポリマー法によって製造されたものが、より好ましい。プレポリマー法における水100wt%に対するセルロースナノファイバーの好ましい添加量は、0.15〜2.0wt%である。
【0023】
次にワンショット法の場合を説明する。
ワンショット法で使用されるポリオールは、軟質ポリウレタン発泡体に用いられる公知のエーテル系ポリオールまたはエステル系ポリオールの何れか一方又は両方が用いられる。
【0024】
エーテル系ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコール、またはその多価アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを挙げることができる。また、エステル系ポリオールとしては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族グリコール等とから重縮合して得られたポリエステルポリオールを挙げることできる。
【0025】
ポリイソシアネートとしては、芳香族系、脂環式、脂肪族系の何れでもよく、また、1分子中に2個のイソシアネート基を有する2官能のイソシアネートであっても、あるいは1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する3官能以上のイソシアネートであってもよく、それらを単独であるいは複数組み合わせて使用してもよい。
【0026】
例えば、2官能のイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネートなどの芳香族系のもの、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環式のもの、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、リジンイソシアネートなどの脂肪族系のものを挙げることができる。
【0027】
また、3官能以上のイソシアネートとしては、1−メチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、1,3,5−トリメチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、ビフェニル−2,4,4’−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,4’−トリイソシアネート、メチルジフェニルメタン−4,6,4’−トリイソシアネート、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’テトライソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、ポリメリックMDI等を挙げることができる。なお、その他ウレタンプレポリマーも使用することができる。また、ポリイソシアネートは、それぞれ一種類に限られず一種類以上であってもよい。例えば、脂肪族系イソシアネートの一種類と芳香族系イソシアネートの二種類を併用してもよい。
【0028】
発泡剤は水、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、炭酸ガス等が用いられる。発泡剤が水の場合、添加量は吸水性ポリウレタン発泡体において目的とする密度や良好な発泡状態が得られる範囲に決定され、通常はポリオール100wt%に対して1〜5wt%が好ましい。
【0029】
触媒は、軟質ポリウレタン発泡体用として公知のものを用いることができる。例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノモルフォリン、N−エチルモルホリン、テトラメチルグアニジン等のアミン触媒や、スタナスオクトエートやジブチルチンジラウレート等の錫触媒やフェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される。)を挙げることができる。触媒の一般的な量は、ポリオール100wt%に対して0.01〜2.0wt%程度である。
【0030】
セルロースナノファイバーは、前記プレポリマー法の場合と同様のものが用いられる。また、セルロースナノファイバーの好ましい量は、前記ポリオール100wt%に対して0.15〜2.0wt%である。ワンショット法では、前記プレポリマー法と比べて水の使用量が少ないことから、セルロースナノファイバーの添加による原料粘度の上昇を抑えにくくなる。
【実施例】
【0031】
・プレポリマー法の実施例
イソシアネート末端プレポリマーを有するプレポリマーを、ポリエチレングリコール(官能基数:2、分子量:1000)1モル、グリセリン(架橋剤、官能基数3)1モル、TDI−80(トリレンジイソシアネート、2,4と2,6の比率が80:20)5モルから、イソシアネート末端プレポリマーを製造した。得られたイソシアネート末端プレポリマーは、イソシアネート基(NCO基)の含有量が11.2wt%である。また、水100重量%にセルロースナノファイバーを表1に示す量添加して、撹拌ミキサーにより混合し、分散させてセルロースナノファイバー水溶液を調製した。使用したセルロースナノファイバーは、繊維幅3〜100nm、繊維長10〜100μm、アスペクト比100〜30000(品番:セリッシュFD−100G、ダイセル化学工業(株))である。前記イソシアネート末端プレポリマー(100wt%)とセルロースナノファイバー水溶液(水100wt%+セルロースナノファイバーの添加量)を、ミキサーにより混合撹拌し、発泡させて実施例の吸水性ポリウレタン発泡体を得た。表1の各成分における数値はwt%を示す。
【0032】
【表1】

【0033】
また、前記セルロースナノファイバーを含まない比較例1と、セルソースナノファイバーに代えて繊維直径18μm(18000nm)、繊維長30μmのセルロースファイバー(品番:ARBOCEL BE600−30、東亜化成(株))を用いた比較例2〜4を作成した。比較例の内容については、表2に示す。表2の各成分における数値はwt%を示す。
【0034】
【表2】

【0035】
このようにして得られた実施例及び比較例の吸水性ポリウレタン発泡体に対し、密度(kg/m、JIS K 7222:1999準拠)、引張強度(kPa、JIS K 6400−5:2004準拠)、伸び(%、JIS K 6400−5:2004準拠)、体積膨潤率(%)、吸水率(%)、吸水速度(秒)を測定した。なお、体積膨張率の値は、水に実施例及び比較例の吸水性ポリウレタン発泡体(厚み10mm、100mm角)を漬け、10分後に水から吸水性ポリウレタン発泡体を取り出して吸水性ポリウレタン発泡体の体積を測定し、〔浸漬後の体積/浸漬前の体積×100〕の式で体積膨張率(%)を計算した。また、吸水率の測定は、実施例及び比較例の吸水性ポリウレタン発泡体(厚み10mm、100mm角)を、30℃、90RH%の雰囲気に24時間放置した後、吸水性ポリウレタン発泡体の重量を測定し、次に23℃、50RH%、の雰囲気中に24時間放置した後、吸水性ポリウレタン発泡体の重量を測定し、〔{(30℃、90RH%、24時間後の重量)−(23℃、50RH%、24時間後の重量)}/(30℃、90RH%、24時間後の重量)×100]の式で、吸水率(%)を計算した。吸水速度は、実施例及び比較例の吸水性ポリウレタン発泡体(厚み10mm、100mm角)の表面に水滴(0.5ml)を垂らし、水滴が発泡体内に沈む(染みこむ)までの時間(秒)を測定した。
【0036】
測定結果は表1及び、表2の下部に示す通りである。また、発泡時のプロセス性についても判断した。プロセス性は、反応性、外観とも良好なものを◎、反応性良好であるが外観の一部に軽度の割れやクラックが入った場合を○、大きな割れやパンク等により正常な発泡体とならなかった場合を×とした。なお、反応性は、液体状態の原料が、発泡を経て硬化するまでの段階で、均一な発泡経過を経て硬化に至ったものを良好とし、発泡の経過過程において顕著なブロックの割れや、パンクの入ったものを不良とした。さらに、実施例1〜5及び比較例2〜4については、セルロースナノファイバーを添加しない比較例1の吸水率と比較した吸水率向上率を計算した。
【0037】
・ワンショット法の実施例
ワンショット法の実施例について説明する。表3に示す各成分を同表中の配合割合にしたがって配合し、ミキサーにより混合して反応、発泡させて実施例Aの吸水性ポリウレタン発泡体を得た。また、比較のため、セルロースナノファイバーを添加していない比較例Aの吸水性ポリウレタン発泡体をワンショット法で作成した。表3の各成分における数値はwt%を示す。
【0038】
【表3】

【0039】
ワンショット法で用いたポリオールAはポリエーテルポリオール(品番:GP3050F、官能基数f=3、OH価=56、Mw=3000、三洋化成工業株式会社製)、ポリイソシアネートはトリレンジイソシアネート(品番:コロネートT−80、NCO%=48.2%、日本ポリウレタン工業株式会社製)、触媒AはN,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン(品番:カオーライザーNo3、花王株式会社製)、触媒Bはオクチル酸第一錫(品番:MRH110、城北化学工業株式会社製)、整泡剤はシリコーン整泡剤(品番:BF2370、デグサジャパン製)である。ワンショット法で用いたセルロースナノファイバーは、繊維幅3〜100nm、繊維長10〜100μm、アスペクト比100〜30000(品番:セリッシュFD−100G、ダイセル化学工業(株))である。実施例A及び比較例Aについても、密度(kg/m、JIS K 7222:1999準拠)、引張強度(kPa、JIS K 6400−5:2004準拠)、伸び(%、JIS K 6400−5:2004準拠)、体積膨潤率(%)、吸水率(%)、吸水速度(秒)を測定した。また、実施例Aについては、セルロースナノファイバーを添加していない比較例Aの吸水率と比較した吸水率向上率を計算した。また、プロセス性についてもプレポリマー法の場合と同様に判断した。測定結果は表3の下部に示す通りである。
【0040】
表1及び表2に示すように、プレポリマー法で製造され、セルロースナノファイバーを含む実施例1〜実施例5は、セルロースナノファイバーを含まない比較例1と比べ、体積膨潤率が小さくなると共に吸水率が121%以上向上しているのがわかる。また、セルロースナノファイバーを含む実施例1〜実施例5は、繊維直径がμm単位のセルロースファイバーを含む比較例2及び比較例3(比較例4はパンクしたため物性値測定が不可)と比べて体積膨潤率が低く、吸水率が向上している。さらに、実施例1〜実施例5の体積膨潤率から理解されるように、セルロースナノファイバーの含有量を増加すると体積膨潤率が低下すると共に吸水率が向上している。このことから、体積膨潤率と吸水率は、セルロースナノファイバーの量が多い程、好ましい。しかし、実施例5のようにポリウレタン発泡体100wt%に対してセルロースナノファイバーの量が2.0wt%、になると、発泡時のプロセス性が低下してポリウレタン発泡体の上部に割れが発生するようになる。このことから、セルロースナノファイバーの量は、ポリウレタン発泡体100wt%に対して0.2〜2.0wt%とするのがより好ましい。
【0041】
また、表3から理解されるように、ワンショット法で製造され、セルロースナノファイバーを含む実施例Aは、セルロースナノファイバーを含まない比較例Aと比べ、体積膨潤率が僅かであるが小さくなると共に吸水率が104%向上する。
【0042】
さらに、プレポリマー法による実施例1〜5は、ワンショット法による実施例Aよりも吸水率が向上している。このことからも、プレポリマー法による吸水性ポリウレタン発泡体が好ましいことがわかる。また、プレポリマー法による実施例1〜実施例5は、シリコーン整泡剤を含まないため、吸水性ポリウレタン発泡体の使用中にシリコーン整泡剤がポリウレタン発泡体から流出して環境問題を引き起こすおそれがない。なお、ワンショット法による実施例Aは、プレポリマー法による比較例1よりも吸水率が低下しているが、これは主鎖のポリオールにおけるEOの比率の低さと、主に添加する水の量の差に起因する製造方法差が原因と思われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン発泡体にセルロースナノファイバーを含有していることを特徴とする吸水性ポリウレタン発泡体。
【請求項2】
前記セルロースナノファイバーの量が前記吸水性ポリウレタン発泡体100wt%中に0.15〜2.0wt%であることを特徴とする請求項1に記載の吸水性ポリウレタン発泡体。
【請求項3】
前記ポリウレタン発泡体が、ポリオールとポリイソシアネートを反応させてなるイソシアネート末端のプレポリマーと、前記セルロースナノファイバーを水に分散させた水溶液を反応させて得られたものからなることを特徴とする請求項1または2に記載の吸水性ポリウレタン発泡体。

【公開番号】特開2009−203412(P2009−203412A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−49397(P2008−49397)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】