説明

吸水性ポリマー構造体のプラズマ変性

【解決課題】高い吸収率を有する吸水性ポリマー構造体の製造に関連して先行技術から生じる欠点を克服すること。
【解決手段】表面変性吸水性ポリマー構造体の製造方法であって、I)多数の吸水性ポリマー構造体を用意する工程と、II)工程(I)で用意した吸水性ポリマー構造体の表面をプラズマで処理する工程と、を含み、工程(II)において多数の吸水性ポリマー構造体を混合する方法。また、上記方法に使用する装置、上記方法によって得られる表面変性吸水性ポリマー構造体、前記表面変性吸水性ポリマー構造体及び基材を含む複合体、複合体の製造方法、前記方法によって得られる複合体、前記表面変性吸水性ポリマー構造体又は前記複合体を含む化学製品並びに前記表面変性吸水性ポリマー構造体又は前記複合体の化学製品における使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面変性吸水性ポリマー構造体の製造方法、前記方法によって得られる表面変性吸水性ポリマー構造体、前記表面変性吸水性ポリマー構造体及び基材を含む複合体、複合体の製造方法、前記複合体の製造方法によって得られる複合体、前記表面変性吸水性ポリマー構造体又は前記複合体を含む化学製品並びに前記表面変性吸水性ポリマー構造体又は前記複合体の化学製品における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
超吸収体は大量の水性液体(特に体液、好ましくは尿又は血液)を吸収することができる非水溶性架橋ポリマーであり、水性液体を吸収することにより膨潤し、ヒドロゲルを形成すると共に圧力下で水性液体を保持することができる。通常、吸収される液体(水)の量は、超吸収体又は超吸収性組成物の乾燥重量の少なくとも10倍又は少なくとも100倍である。上記特性を有するポリマーは、おむつ、失禁用品、生理用ナプキン等の衛生用品に主に使用されている。超吸収体、超吸収性組成物、それらの用途及び製造についての包括的な概観は、非特許文献1に記載されている。
【0003】
通常、超吸収体は、架橋剤の存在下において、部分的に中和された酸性基含有モノマーをフリーラジカル重合させることによって製造する。モノマー組成、架橋剤、重合条件及び重合後に得られるヒドロゲルの加工条件を選択することにより、異なる吸収特性を有するポリマーを製造することができる。また、化学変性デンプン、セルロース、ポリビニルアルコール等を使用するグラフトポリマーの製造方法(特許文献1を参照)も異なる吸収特性を有するポリマーを製造するために使用することができる。
【0004】
現在では、低いセルロース繊維含有量及び高い超吸収体含有量を有するより薄いおむつを製造する傾向にある。薄いおむつには、着用感が向上し、パッケージ及び保管コストが減少するという利点がある。より薄いおむつを製造する傾向があるために、超吸収剤に対する要件は大きく変化してきている。重要なことは、ヒドロゲルが液体を通過させ、分散させる能力である。衛生用品に使用される超吸収体の量(単位面積あたりの超吸収体の量)が増加しているため、膨潤状態のポリマーは液体に対するバリア層(ゲル閉塞)を形成してはならない。製品が優れた輸送特性を有していれば、衛生用品の最適な利用が可能となる。
【0005】
超吸収体の透過率(生理食塩水透過率(SFC))及び圧縮応力下における吸収能力に加えて、超吸収体粒子の吸収率(1秒間あたりに超吸収体1gに吸収される液体の量)も、超吸収体含有量(濃度)が高く、綿毛含有量が低い吸収性コアが液体と最初に接触した際に液体を急速に吸収(初期吸収)することができるか否かを決定する重要な評価基準である。超吸収体含有量が高い吸収性コアの場合には、初期吸収は特に超吸収性材料の吸収率に応じて決まる。
【0006】
超吸収体の吸収率を向上させるための様々な方法が先行技術文献に開示されている。例えば、高い表面−体積比を有する小さな超吸収体粒子を使用することによって超吸収体の表面積を増加させることができる。しかしながら、この場合には、超吸収体の透過率及びその他の特性(保持率等)が低下してしまう。この問題を回避するために、例えば、粉砕によって不規則な形状を有する超吸収体粒子を製造することにより、粒径を減少させることなく、超吸収体の表面積を増加させることができる。例えば、特許文献2及び特許文献3は、加熱時に炭酸ガスを放出する発泡剤を重合時にモノマー溶液に分散させることを開示している。得られる超吸収体の気孔率は高いためにポリマー粒子は比較的大きな表面積を有し、結果として吸収率を増加させることができる。特許文献4は、圧縮応力下における吸収能力を向上させるために、上述したような発泡超吸収体粒子を表面後架橋することを開示している。しかしながら、上記方法によれば、発泡超吸収体粒子は大きな表面積を有するため、非発泡超吸収体粒子の場合と比較して大量の表面架橋剤を使用する必要があり、表面領域における架橋密度が上昇してしまう。表面領域における架橋密度が高すぎると、吸収率が低下することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ドイツ特許第26 12 846号
【特許文献2】米国特許第5,118,719号
【特許文献3】米国特許第5,145,713号
【特許文献4】米国特許第5,399,391号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】F.L.Buchholz and A.T. Graham(editors),“Modern Superabsorbent Polymer Technology”,Wiley−VCH,New York,1998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、高い吸収率を有する吸水性ポリマー構造体の製造に関連して先行技術から生じる欠点を克服することにある。
【0010】
より具体的には、本発明の目的は、好ましくは粒径分布を変化させることなく、任意に選択される前駆体粒子の吸収率を増加させることができる超吸収体の製造方法を提供することにある。
【0011】
前記方法は、超吸収体の吸収率を増加させるが、保持率(吸収した液体を保持する能力)の低下を最小限にとどめるか、ごく僅かなものとするものでなければならない。
【0012】
また、本発明の別の目的は、超吸収体の性能に関して表面後架橋に対して少なくともニュートラルな作用を有する超吸収体粒子の表面処理を提供することにある。
【0013】
本発明のさらなる目的は、従来の超吸収体よりも高い吸収率を有すると共に最大の保持率を有する超吸収体を提供することにある。超吸収体の特性プロファイルは、長期間(例えば数週間)にわたって保管した場合でも極僅か又は全く変化しないことが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は、
I)多数の吸水性ポリマー構造体を用意する工程と、
II)工程I)において用意した吸水性ポリマー構造体の表面をプラズマ処理(好ましくはプラズマ変性)する工程と、
を含み、
工程II)において多数の吸水性ポリマー構造体を混合する、表面変性吸水性ポリマー構造体の製造方法によって達成される。上記工程は必ずしも厳密に連続して行う必要はない。また、上記工程及び本願明細書に記載する各工程は時間的に重複するように行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る方法を実施するために使用することができる回転ドラムとして構成された装置の第1の構成を示す。
【図2】本発明に係る方法を実施するために使用することができる落下塔として構成された装置の第2の構成を示す。
【図3】本発明に係る方法を実施するために使用することができる本発明に係る重合装置の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る方法の工程I)では、多数の吸水性ポリマー構造体を用意する。本願明細書において使用する「多数の」という用語は、吸水性ポリマー構造体の数が、好ましくは少なくとも1000、より好ましくは少なくとも1,000,000、最も好ましくは少なくとも1,000,000,000であることを意味する。
【0017】
本発明に係る好ましい吸水性ポリマー構造体は繊維、発泡体又は粒子であり、繊維及び粒子であることが好ましく、粒子であることが特に好ましい。
【0018】
本発明に係る好ましいポリマー繊維は、織糸として織物に織り込むか、織物に直接織り込むことができる寸法を有する。本発明において、ポリマー繊維は、1〜500mm、好ましくは2〜500mm、より好ましくは5〜100mmの長さを有し、1〜200デニール、好ましくは3〜100デニール、より好ましくは5〜60デニールの直径を有することが好ましい。
【0019】
本発明に係る好ましいポリマー粒子は、10〜3000μm、好ましくは20〜2000μm、より好ましくは150〜850μmの、ERT420.2−02に準拠して測定した平均粒径を有する。300〜600μmの粒径を有するポリマー粒子の量は、吸水性ポリマー粒子の総重量に対して、少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも40重量%、最も好ましくは少なくとも50重量%であることが特に好ましい。
【0020】
本発明において、工程I)で用意する吸水性ポリマー構造体は、部分的に中和された架橋アクリル酸からなることが好ましい。本発明に係る吸水性ポリマー構造体は、吸水性ポリマー構造体の重量に対して、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも90重量%がカルボキシレート基を有するモノマーからなる架橋ポリアクリレートであることが特に好ましい。また、本発明に係る吸水性ポリマー構造体は、吸水性ポリマー構造体の重量に対して、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%の、好ましくは少なくとも20モル%、より好ましくは少なくとも50モル%、さらに好ましくは60〜85モル%が中和されたポリアクリル酸からなることが好ましい。
【0021】
工程I)で用意する吸水性ポリマー構造体は、
i)(α1)重合性モノエチレン性不飽和酸性基を有するモノマー又はその塩と、(α2)前記モノマー(α1)と重合可能な任意のモノエチレン性不飽和モノマーと、(α3)任意の架橋剤と、を含むモノマー水溶液をフリーラジカル重合させてポリマーゲル(ヒドロゲル)を得る工程と、
ii)必要に応じてヒドロゲルを粉砕する工程と、
iii)必要に応じて粉砕したヒドロゲルを乾燥させて吸水性ポリマー粒子を得る工程と、
iv)得られた吸水性ポリマー粒子を必要に応じて粉砕及び篩い分けする工程と、
v)必要に応じて吸水性ポリマー粒子を表面変性(好ましくは表面後架橋)する工程と、を含み、工程v)の表面変性を、原則として、本発明に係る製造方法の工程II)における表面変性の前、表面変性の実施中又は表面変性の後に行う方法によって好ましくは得られる。
【0022】
本発明に係る方法において、表面変性とは異なる処理を行う場合には、上記処理は表面変性の前、表面変性の実施中又は表面変性の後に行うことができ、表面変性と上記処理は時間的に重複していてもよい。
【0023】
このような場合でも、表面後架橋ポリマー粒子は通常はほとんど劣化することはない。
【0024】
工程i)では、重合性モノエチレン性不飽和酸性基を有するモノマー(α1)又はその塩と、前記モノマー(α1)と重合可能な任意のモノエチレン性不飽和モノマー(α2)と、任意の架橋剤(α3)と、を含むモノマー水溶液をフリーラジカル重合させてポリマーゲル(ヒドロゲル)を得る。モノエチレン性不飽和酸性基を有するモノマー(α1)は、部分的又は完全に、好ましくは部分的に中和されていてもよい。モノエチレン性不飽和酸性基を有するモノマー(α1)は、少なくとも25モル%、より好ましくは少なくとも50モル%、さらに好ましくは50〜80モル%が中和されていることが好ましい。モノエチレン性不飽和酸性基を有するモノマーについては、ドイツ特許出願公開第195 29 348 A1号を参照する。ドイツ特許出願公開第195 29 348 A1号の開示内容は本願明細書に援用する。また、重合後に部分的又は完全に中和を行うこともできる。中和は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アンモニア、炭酸塩又は重炭酸塩を使用して行われる。酸と共に水溶性塩を形成する塩基も使用される。異なる塩基による中和も可能である。アンモニア及びアルカリ金属水酸化物による中和が好ましく、水酸化ナトリウム及びアンモニアによる中和が特に好ましい。
【0025】
本発明に係る吸水性ポリマー構造体には遊離酸基が多く含まれるため、ポリマー構造体のpHは酸性領域にある。酸性の吸水性ポリマー構造体を、酸性のポリマー構造体と比較して塩基性である、遊離塩基性基、好ましくはアミン基を有するポリマー構造体によって少なくとも部分的に中和することができる。これらのポリマー構造体は、文献では「混合床イオン交換性吸収性ポリマー」(MBIEAポリマー)と呼ばれており、特に国際公開第WO99/34843 A1号に開示されている。国際公開第WO99/34843 A1号の開示内容は本願明細書に援用し、本願明細書の開示内容の一部をなすものとする。通常、MBIEAポリマーは、アニオンを交換することができる塩基性ポリマー構造体と、塩基性ポリマー構造体と比較して酸性であり、カチオンを交換することができるポリマー構造体と、からなる組成物である。塩基性ポリマー構造体は塩基性基を有し、塩基性基又は塩基性基に変換可能な基を有するモノマーを重合させることによって通常は得られる。モノマーは、主として、第一アミン、第二アミン又は第三アミン又は対応するホスフィン又はこれらの官能基の少なくとも2種を含有するモノマーである。そのようなモノマーの例としては、エチレンアミン、アリルアミン、ジアリルアミン、4−アミノブテン、アルキルオキシシクリン、ビニルホルムアミド、5−アミノペンテン、カルボジイミド、ホルマールダシン、メラミン及びそれらの第二級又は第三級アミン誘導体が挙げられる。
【0026】
好ましいエチレン性不飽和酸性基を有するモノマー(α1)は、国際公開第WO2004/037903 A2号においてエチレン性不飽和酸性基を有するモノマー(α1)として記載されている化合物である。国際公開第WO2004/037903 A2号の開示内容は本願明細書に援用する。特に好ましいモノエチレン性不飽和酸性基を有するモノマー(α1)はアクリル酸及びメタクリル酸であり、アクリル酸が最も好ましい。
【0027】
モノマー(α1)と共重合可能なモノエチレン性不飽和モノマー(α2)として、アクリルアミド、メタクリルアミド又はビニルアミドを使用することができる。好ましいコモノマーとしては、国際公開第WO2004/037903 A2号においてコモノマー(α2)として記載されている化合物が挙げられる。
【0028】
架橋剤(α3)としては、国際公開第WO2004/037903 A2号において架橋剤(α3)として記載されている化合物が好ましい。これらの架橋剤のうち、水溶性架橋剤が特に好ましい。水溶性架橋剤としては、N,N−メチレンビスアクリルアミド、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、塩化トリアリルメチルアンモニウム、塩化テトラアリルアンモニウム、アクリル酸1モル当たり9モルのエチレンオキシドを使用して得られるアリルノナエチレングリコールアクリレートが最も好ましい。
【0029】
モノマー(α1)及び任意のモノマー(α2)及び架橋剤(α3)に加えて、モノマー溶液は水溶性ポリマー(α4)を含むことができる。好ましい水溶性ポリマー(α4)としては、部分的又は完全にケン化されたポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、澱粉、澱粉誘導体、ポリグリコール、ポリアクリル酸が挙げられる。これらのポリマーの分子量は、ポリマーが水溶性であれば限定されない。好ましい水溶性ポリマーは、デンプン、デンプン誘導体又はポリビニルアルコールである。水溶性ポリマー、好ましくはポリビニルアルコール等の合成水溶性ポリマーを、重合させるモノマーのグラフト基材以外としても使用することができる。これらの水溶性ポリマーは、重合後にポリマーゲルに混合するか、乾燥させた吸水性ポリマーゲルに混合することもできる。
【0030】
また、モノマー溶液は、EDTA等の重合に必要となる場合のある開始剤又は錯化剤等の助剤(α5)を含むことができる。
【0031】
モノマー溶液の溶媒としては、水、有機溶媒及び水と有機溶媒の混合物が挙げられ、特に重合方法に応じて選択される。
【0032】
工程iii)での乾燥後に得られる吸水性ポリマー構造体が、以下の成分からなるように、モノマー溶液におけるモノマー(α1)及び(α2)、架橋剤(α3)、水溶性ポリマー(α4)、助剤(α5)の相対的な量を、選択することが好ましい。
・20〜99.999重量%、好ましくは55〜98.99重量%、より好ましくは70〜98.79重量%のモノマー(α1)
・0〜80重量%、好ましくは0〜44.99重量%、より好ましくは0.1〜44.89重量%のモノマー(α2)
・0〜5重量%、好ましくは0.001〜3重量%、より好ましくは0.01〜2.5重量%の架橋剤(α3)
・0〜30重量%、好ましくは0〜5重量%、より好ましくは0.1〜5重量%の水溶性ポリマー(α4)
・0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%、より好ましくは0.1〜8重量%の助剤(α5)
・0.5〜25重量%、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは3〜7重量%の水(α6)
なお、成分(α1)〜(α6)の合計は100重量%である。モノマー溶液におけるモノマー、架橋剤、水溶性ポリマーの濃度の最適値は、簡単な予備実験によって決定するか、米国特許第4,286,082号、ドイツ特許第27 06 135 A1号、米国特許第4,076,663号、ドイツ特許第35 03 458 A1号、ドイツ特許第40 20 780 C1号、ドイツ特許第42 44 548 A1号、ドイツ特許第43 33 056 A1号、ドイツ特許第44 18 818 A1号に記載された方法によって決定することができる。モノマー溶液のフリーラジカル重合としては、当業者に公知の任意の重合法が原則として有用である。例えば、好ましくは押出機等の混練反応器内において行う塊状重合、溶液重合、噴霧重合、逆乳化重合及び逆懸濁重合が挙げられる。
【0033】
溶液重合は、好ましくは水を溶媒として使用して行われる。溶液重合を、連続的又は回分式で行うことができる。従来技術には、様々な反応条件(開始剤及び反応溶液の温度、種類、量等)が開示されている。典型的な方法は、米国特許第4,286,082号、ドイツ特許第27 06 135 A1号、米国特許第4,076,663号、ドイツ特許第35 03 458 A1号、ドイツ特許第40 20 780 C1号、ドイツ特許第42 44 548 A1号、ドイツ特許第43 33 056 A1号、ドイツ特許第44 18 818 A1号に開示されている。これらの文献の開示内容は、この参照によって本願明細書に援用する。
【0034】
重合は、従来の方法のように開始剤によって開始させる。重合を開始させるために使用する開始剤として、重合条件下においてフリーラジカルを生成し、超吸収体の製造に通常使用されている任意の開始剤を使用することできる。また、重合性水性混合物に対する電子線の作用によって重合を開始させることもできる。また、上述した開始剤を使用せずに、光開始剤の存在下における高エネルギー放射線の作用によって重合を開始させることもできる。重合開始剤は、モノマー溶液に溶解又は分散させた状態で使用される。有用な開始剤の例としては、フリーラジカルに分解する公知の化合物が挙げられる。特に、国際公開第WO2004/037903 A2号において使用可能な開始剤として記載されている開始剤を使用することができる。吸水性ポリマー構造体を、過酸化水素、ペルオキソ二硫酸ナトリウム及びアスコルビン酸からなるレドックス系を使用して製造することが特に好ましい。
【0035】
吸水性ポリマー構造体を、逆懸濁重合又は逆乳化重合を使用して製造することもできる。逆懸濁重合又は逆乳化重合では、保護コロイド及び/又は乳化剤を使用し、必要に応じて水溶性ポリマー(α4)及び助剤(α5)を含む、モノマー(α1)及び(α2)の部分的に中和された水溶液を疎水性有機溶媒中に分散させ、フリーラジカル開始剤によって重合を開始させる。架橋剤(α3)は、モノマー溶液に溶解させるか、モノマー溶液と共に添加するか、重合時に必要に応じて個別に添加する。グラフト基材として添加する水溶性ポリマー(α4)を、モノマー溶液として添加してもよく、油相に直接添加してもよい。次に、水を混合物から共沸除去し、ポリマーを濾別する。
【0036】
溶液重合、逆懸濁重合及び逆乳化重合のいずれのを使用する場合にも、モノマー溶液に溶解した多官能架橋剤(α3)の共重合及び/又は重合工程における適当な架橋剤とポリマーの官能基の反応によって架橋を行うことができる。上記工程は、例えば、米国特許第4,340,706号、ドイツ特許第37 13 601号、ドイツ特許第28 40 010号、国際公開第WO96/05234号に記載されている。これらの文献の対応する開示内容は、この参照によって本願明細書に援用する。
【0037】
工程ii)では、工程i)によって得られたポリマーゲルを必要に応じて粉砕する。この粉砕は、特に、重合を溶液重合によって行った場合に行われる。粉砕を公知の粉砕装置(肉挽機等)を使用して行うことができる。
【0038】
工程iii)では、必要に応じて粉砕したポリマーゲルを乾燥させる。ポリマーゲルを、適当な乾燥機又はオーブン内で乾燥させることが好ましい。例えば、回転オーブン(rotary tube oven)、流動床乾燥機、プレート乾燥機(pan drier)、パドル乾燥機又は赤外線乾燥機を使用することができる。本発明では、工程iii)におけるポリマーゲルの乾燥を、水分が0.5〜25重量%、好ましくは1〜10重量%となるまで行うことが好ましく、乾燥温度は通常は100〜200℃である。
【0039】
工程iv)では、工程iii)において(特に溶液重合によって)得られた吸水性ポリマー構造体を粉砕し、上述した所望の粒径に篩い分けることができる。乾燥させた吸水性ポリマー構造体の粉砕を、ボールミル等の適当な機械的粉砕装置内で行うことが好ましい。また、篩い分けを、例えば適当なメッシュ幅の篩を使用して行うことができる。
【0040】
工程v)では、必要に応じて粉砕し、篩い分けた吸水性ポリマー構造体を表面変性させることができる。表面変性は、好ましくは表面後架橋を含む。工程v)の表面後架橋は、原則として、本発明に係る方法の工程II)のプラズマ処理の前、プラズマ処理の実施中又はプラズマ処理の後に行われる。
【0041】
必要に応じて行う表面後架橋では、乾燥させ、必要に応じて粉砕し、篩い分け、必要に応じてプラズマ変性させた、工程iii)、iv)又はII)で得られた吸水性ポリマー構造体あるいは乾燥させていないが、好ましくは粉砕した工程ii)で得られたポリマーゲルを好ましくは有機化学表面後架橋剤と接触させる。特に、後架橋剤が後架橋条件において液体ではない場合には、後架橋剤と溶媒を含む流体として後架橋剤を吸水性ポリマー構造体又はポリマーゲルに接触させることが好ましい。溶媒としては、水、水混和性有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール)又はそれらの少なくとも2種の混合物を使用することが好ましく、水が溶媒として最も好ましい。後架橋剤は、流体の総重量に対して、5〜75重量%、好ましくは10〜50重量%、最も好ましくは15〜40重量%の量で流体に含まれることが好ましい。
【0042】
吸水性ポリマー構造体又は必要に応じて粉砕したポリマーゲルと後架橋剤を含む流体との接触を、流体をポリマー構造体又はポリマーゲルと十分に混合することによって行うことが好ましい。
【0043】
流体を塗布するための適当なミキサーとしては、パターソン・ケリー(Patterson−Kelley)ミキサー、DRAIS乱流ミキサー、ロディジ(Lodige)ミキサー、ルベルク(Ruberg)ミキサー、スクリューミキサー、パンミキサー、流動床ミキサー、回転刃を使用して高周波数でポリマー構造体を混合する連続垂直ミキサー(シュージ(Schugi)ミキサー)を挙げることができる。
【0044】
後架橋時に、ポリマー構造体又はポリマーゲルを、好ましくは20重量%以下、特に好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下の溶媒(好ましくは水)と接触させる。
【0045】
本発明では、好ましくは球状粒子であるポリマー構造体を使用する場合には、粒子状ポリマー構造体の外部領域のみを流体(後架橋剤)と接触させることが好ましい。
【0046】
後架橋剤とは、縮合反応(=縮合架橋剤)、付加反応又は開環反応によってポリマー構造体の官能基と反応することができる官能基を少なくとも2つ有する化合物を好ましくは意味する。好適な後架橋剤は、国際公開第WO2004/037903号において架橋剤IIとして記載されている架橋剤である。
【0047】
これらの化合物のうち、後架橋剤としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン/オキシプロピレンブロック共重合体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリビニルアルコール、ソルビトール、1,3−ジオキソラン−2−オン(炭酸エチレン)、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン(炭酸プロピレン)、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、1,3−ジオキソラン−2−オン等の縮合後架橋剤が特に好ましい。
【0048】
後架橋剤又は後架橋剤を含む流体と接触させたポリマー構造体又はポリマーゲルを、好ましくはポリマー構造体の外部領域が内部領域よりも高度に架橋させる(後架橋)ように、50〜300℃、好ましくは75〜275℃、特に好ましくは150〜250℃で加熱する。ポリマーゲルを使用する場合には、ポリマーゲルも乾燥させる。加熱時間は、ポリマー構造体の所望の特性プロファイルが熱によって損なわれないように制限する。
【0049】
また、工程v)における表面変性は、アルミニウム含有化合物(好ましくはAl3+イオン含有化合物)による処理を含むことができ、上記処理を、後架橋剤及びアルミニウム含有化合物(好ましくはAl3+イオン含有化合物)を含む水溶液を吸水性ポリマー構造体と接触させ、次に加熱することによって表面後架橋の実施中に行うことが好ましい。
【0050】
アルミニウム含有化合物を、吸水性ポリマー構造体の重量に対して、0.01〜30重量%、より好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは0.3〜5重量%の量で吸水性ポリマー構造体と接触させることが好ましい。
【0051】
アルミニウム含有化合物としては、Al3+イオン含有水溶性化合物(AlCl×6HO、NaAl(SO×12HO、KAl(SO×12HO、Al(SO×14−18HO又は乳酸アルミニウム等)又は非水溶性アルミニウム化合物(酸化アルミニウム(Al等)又はアルミン酸塩)等)が好ましい。乳酸アルミニウムと硫酸アルミニウムの混合物を使用することが特に好ましい。
【0052】
本発明に係る方法の工程II)では、工程I)で用意した吸水性ポリマー構造体をプラズマによって変性させ、吸水性ポリマー構造体を混合する。
【0053】
本願明細書において使用する「プラズマ」という用語は、大量の遊離電荷(イオン又は電子等)を含む、少なくとも部分的にイオン化されたガスを意味する。そのようなプラズマを、例えば、直流励起、低周波励起、高周波励起又はマイクロ波励起によるグロー放電を利用して発生させることができる。本発明においては、低周波励起によってプラズマを発生させることが特に好ましい。励起周波数は、好ましくは1〜1011Hz、より好ましくは1〜1010Hz、最も好ましくは1〜100kHzである。
【0054】
本発明に係る方法においてプラズマを発生させるために、当業者にとってプラズマ発生に適すると考えられる任意のガスを用いることができる。吸水性ポリマー構造体の吸収率を増加させるためには、窒素プラズマ、空気プラズマ又は水蒸気プラズマを用いることが特に有利である。例えば、吸水性ポリマーの吸水特性を変化させる場合には、希ガスプラズマ(例えば、ネオンプラズマ又はアルゴンプラズマ)を用いることが好ましい。
【0055】
プラズマを発生させる際、上記ガスは、好ましくは1〜1000ml/分、より好ましくは10〜200ml/分、最も好ましくは50〜100ml/分の範囲の特定のガス流量で使用する。
【0056】
また、工程I)で用意した吸水性ポリマー構造体の表面を、好ましくは10−6〜10秒、より好ましくは10〜360分、最も好ましくは30〜90分間にわたってプラズマ変性することが好ましい。プラズマ処理時間は、使用する吸水性ポリマー構造体の量及びプラズマに印加する電力に応じて異なる。
【0057】
本発明において、プラズマは低圧プラズマであることが好ましい。具体的には、工程I)で用意した吸水性ポリマー構造体の表面を、好ましくは10−6〜5バール、より好ましくは10−4〜2バール、最も好ましくは10−4〜10−2バールの絶対圧力下においてプラズマ変性することが特に好ましい。
【0058】
本発明に係る方法では、上述したプラズマ変性時に吸水性ポリマー構造体を混合する。この場合における「混合」という用語は、吸水性ポリマー構造体の相対的な移動を生じさせる任意の手段を意味する。
【0059】
上記混合に使用する混合装置としては、混合空間内において適当な方法によりプラズマを発生させ、混合室内の吸水性ポリマー構造体の表面を混合中に絶えずプラズマに暴露することができる公知の混合装置を用いることができる。有用な混合装置の例としては、好ましくは静電誘導(capacitative introduction)による電界発生によって混合室内のガスをプラズマ状態に変化させるように(位相シフトによるプラズマ発生も可能)、ドラムミキサー、パターソン・ケリー(Patterson−Kelley)ミキサー、DRAIS乱流ミキサー、ロディジ(Lodige)ミキサー、ルベルク(Ruberg)ミキサー、スクリューミキサー、パンミキサー、流動床ミキサー、連続垂直ミキサー(シュージ(Schugi)ミキサー)を、発生器を用いて2つの電極間に高周波交流電界を発生させるように構成(改良)した混合装置が挙げられる。
【0060】
本発明に係る方法の一実施形態では、工程II)において、内部でプラズマを発生させる(好ましくは水平軸を中心に回転する)回転ドラムを用いて吸水性ポリマー構造体を変性させる。プラズマを発生させるために使用される電極は、回転ドラムの両側にドラムの回転軸と平行に設置される。
【0061】
本発明では、ドラムが円筒状(長さ:L、周囲:U)である場合に、対向して配置されたほぼ半円状の2つの電極により、回転ドラムの周囲(U)の少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%が覆われ、回転ドラムの長さ(L)の少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%が覆われていることが特に有利である。このような構造とすることで、回転ドラムの実質的に内部全体をプラズマで満たすことができる。
【0062】
上記混合装置の他に、例えば、吸水性ポリマー構造体が特定の距離を自由落下する落下塔を用いることも原則として可能である。落下塔の外部には対向して配置された電極を設置し、当該電極によって落下塔内にプラズマを発生させることができる。そのような落下塔内において吸水性ポリマー構造体が互いに衝突すると吸水性ポリマー構造体は少なくともある程度混合されるため、落下塔を用いたプラズマ処理も本発明に係る方法に含まれる。本発明に係る方法においては、落下塔の他に、プラズマを発生させることができる流動床ミキサーも使用することができる。
【0063】
本願発明者らは、水性ポリマー構造体の量を制限し、水平軸を中心として回転するドラムを用いてプラズマ処理を行う場合に、吸水性ポリマー構造体の吸水率を特に増加させることができることを見出した。また、本願発明者らは、ドラムの体積に対して0.8g/cm以下、より好ましくは0.75g/cm以下、最も好ましくは0.5g/cm以下の量の吸水性ポリマー構造体を用いることが特に有利であることを見出した。
【0064】
また、本願発明者らは、工程II)の前又は工程II)の実施中に、吸水性ポリマー構造体の総重量に対して0.001〜5重量%、より好ましくは0.1〜2.5重量%、最も好ましくは0.25〜1重量%の充填剤と吸水性ポリマー構造体を混合することが特に有利であることを見出した。充填剤は単原子層であってもよく、単原子層の数は1〜10層であることが好ましい。特に有用な充填剤としてはSi−O化合物が挙げられ、ゼオライト又はAerosils(登録商標)等のヒュームドシリカが好ましい。
【0065】
また、本発明に係る方法の一実施形態では、工程I)で用意した多数の吸水性ポリマー構造体を多数の無機粒子と混合することが好ましい。有用な無機粒子としては、吸水性ポリマー構造体との混合に適していると当業者が考える任意の無機粒子が挙げられる。そのような無機粒子の中でも酸化物が好ましく、IV族酸化物が特に好ましく、酸化ケイ素がさらに特に好ましい。酸化ケイ素の中でも、ゼオライト、Aerosils(登録商標)及びSipernat(登録商標)等のヒュームドシリカが好ましく、Sipernat(登録商標)が特に好ましい。無機粒子を、吸水性ポリマー構造体の特性の改良に適していると当業者が考える任意の量で使用することができる。無機粒子を、吸水性ポリマー構造体粒子に対して、0.001〜15重量%、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは2〜7重量%の量で使用することが好ましい。また、無機粒子としては、吸水性ポリマー構造体の特性の改良に適すると当業者が考える任意の粒径を有する無機粒子を用いることができる。無機粒子は、0.001〜100μm、好ましくは0.01〜50μm、より好ましくは0.1〜15μmの、ASTM C 2690に準拠して測定した平均粒径を有することが好ましい。
【0066】
また、上記目的は、
V1)重合領域と、
V2)表面処理領域と、
V3)プラズマ処理領域と、
が流体を輸送するように直接又は間接的に相互に接続され、
プラズマ処理領域がプラズマ源及び混合装置(好ましくは回転式混合装置)を含む、プラズマ処理吸水性ポリマー構造体の製造装置によって達成される。
【0067】
吸水性ポリマー構造体の製造装置は周知である。例えば、国際公開第WO05/122075 A1号は、最も重要な装置構成要素である重合領域及び表面処理領域を詳細に示している。重合領域は、ベルト又はスクリュー押出重合装置を備えることが好ましい。表面処理領域は、乾燥及び粉砕装置を備えることが好ましい。
【0068】
国際公開第WO05/122075 A1号の装置の別の実施形態では、プラズマ処理領域の上流又は下流に表面架橋領域が設けられている。国際公開第WO05/122075 A1号は、(後架橋領域と称する)表面後架橋領域の詳細も開示している。吸水性ポリマー構造体の製造装置のさらなる詳細については、国際公開第WO05/122075 A1号を参照されたい。
【0069】
また、本発明に係る方法の実施形態は、本発明に係る装置にも適用することができる。例えば、本発明に係る方法において本発明に係る装置を用いることが好ましい。「流体を輸送するように接続された」という表現は、流体、ゲル、粉末又はその他の自由流動相が各領域内に移動することができるように各領域が接続されていることを意味する。このような接続を、ライン、管又は流路及びコンベア又はポンプを使用して行うことができる。
【0070】
また、上記目的は、上記方法によって得られる表面変性吸水性ポリマー構造体によって達成される。
【0071】
本発明に係る表面変性吸水性ポリマー構造体の一実施形態において、表面変性吸水性ポリマー構造体は、少なくとも0.3g/g/秒、より好ましくは少なくとも0.32g/g/秒、さらに好ましくは少なくとも0.34g/g/秒、さらに好ましくは少なくとも0.36g/g/秒、最も好ましくは少なくとも0.38g/g/秒の、本願明細書に記載する試験方法により測定した自由膨張率(FSR:Free Swell Rate)を有する。通常、表面変性吸水性ポリマー構造体の自由膨張率は0.8g/g/秒以下又は1g/g/秒以下である。
【0072】
また、本発明の一実施形態に係る吸水性ポリマー構造体は、少なくとも26.5g/g、より好ましくは少なくとも27.5g/g、最も好ましくは少なくとも28.5g/gの、本願明細書に記載する試験方法により測定した保持率を有する。通常、吸水性ポリマー構造体の保持率は40g/g以下又は42g/g以下である。
【0073】
また、本発明に係る表面変性吸水性ポリマー構造体の一実施形態において、表面変性吸水性ポリマー構造体は、少なくとも20g/g、より好ましくは少なくとも23g/g、最も好ましくは少なくとも24g/gの、本願明細書に記載する試験方法により測定した圧力下吸収率を有する。通常、表面変性吸水性ポリマー構造体の圧力下吸収率は30g/g以下又は32g/g以下である。
【0074】
また、上記目的は、本発明に係る表面変性吸水性ポリマー構造体と、基材と、を含む複合体によって達成される。表面変性吸水性ポリマー構造体と基材とは強固に結合されていることが好ましい。好ましい基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリアミド等のポリマーのフィルム、金属、不織布、綿毛、織物、織布、天然又は合成繊維又は発泡体である。本発明では、複合体は、複合体の総重量に対して、約15〜100重量%、好ましくは約30〜100重量%、より好ましくは約50〜99.99重量%、さらに好ましくは約60〜99.99重量%、さらに好ましくは約70〜99重量%の本発明に係る表面変性吸水性ポリマー構造体を含む少なくとも1つの領域を含み、当該領域は、少なくとも0.01cm、好ましくは少なくとも0.1cm、最も好ましくは少なくとも0.5cmの体積を有することが好ましい。
【0075】
本発明に係る複合体の特に好適な実施形態では、複合体は「吸収性材料」として国際公開第WO02/056812号に記載されている平坦な複合体である。国際公開第WO02/056812号の開示内容、特に複合体の構造、構成要素の目付及び厚みに関する開示内容は、この参照によって本願明細書に援用する。
【0076】
また、上記目的は、本発明に係る表面変性吸水性ポリマー構造体と、基材と、任意の添加剤と、を接触させる複合体の製造方法によって達成される。基材としては、本発明に係る複合体に関連して上述した基材を使用することが好ましい。
【0077】
また、上述した目的は、上記方法によって得られ、好ましくは上述した本発明に係る複合体と同一の特性を有する複合体によって達成される。
【0078】
また、上記目的は、本発明に係る表面変性吸水性ポリマー構造体又は本発明に係る複合体を含む化学製品によって達成される。好ましい化学製品は、発泡体、成形品、繊維、シート、フィルム、ケーブル、シール材、液体吸収性衛生用品(特におむつ及び生理用ナプキン)、植物/菌類生育調節剤・植物保護活性物質の担体、建設材料の添加剤、包装材料、土壌添加剤である。
【0079】
また、上記目的は、本発明に係る表面変性吸水性ポリマー構造体又は本発明に係る複合体の、化学製品、好ましくは上述した化学製品、特におむつ及び生理用ナプキン等の衛生用品における使用並びに超吸収体粒子の植物、菌類生育調節剤又は植物保護活性化合物の担体における使用によって達成される。植物、菌類生育調節剤又は植物保護活性物質の担体としての使用では、植物、菌類生育調節剤または植物保護活性物質は、担体によって制御される期間が経過した後に放出させることができることが好ましい。
【実施例】
【0080】
以下、図面、試験方法及び実施例を参照して本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0081】
図1に示す本発明に係る方法の実施形態では、水平軸を中心として回転するドラム1に吸水性ポリマー構造体3を投入する。ドラム1の外部には2つの対向する電極2が設けられ、電極2によって回転ドラム1の内部でプラズマを発生させることができる。ドラム1の内部には、吸水性ポリマー構造体を良好に混合するための撹拌パドル等(図示せず)を設けることができる。
【0082】
図2に示す本発明に係る方法の実施形態では、吸水性ポリマー構造体3は落下塔1内を落下する。落下する際に、吸水性ポリマー構造体3は落下塔1の外部に設けられた2つの対向する電極2によって発生したプラズマ内を通過する。
【0083】
図3は、本発明に係る装置4の一実施形態を示す。図3において、重合領域5の下流には表面処理領域6が設けられ、表面処理領域6の下流にはプラズマ処理領域7が設けられ、プラズマ処理領域7の下流には表面架橋領域が設けられている。プラズマ処理領域7は、プラズマ源8及び混合装置10を有する。プラズマ処理領域7は、図1又は図2に示すように構成することができる。プラズマ処理領域以外の領域の構成については、国際公開第WO05/722075 A1号に詳細に開示されている。
【0084】
試験方法
【0085】
吸収率の測定
吸収率は、欧州特許第0 443 627号の12頁に記載された試験方法に準拠して自由膨張率(FSR)を測定することによって測定した。吸収率は、300〜600μmの粒径を有する粒子を使用して測定した。
【0086】
圧力下吸収率の測定
0.7psi(約50g/cm)の圧力下における吸収率(AAP)を、ERT(EDANA(欧州不織布協会)推奨試験(EDANA recommended Test))442.2−02に準拠して測定した。圧力下吸収率は、300〜600μmの粒径を有する粒子を使用して測定した。
【0087】
保持率の測定
保持率(CRC)は、ERT 441.2−02に準拠して測定した。保持率の測定は、300〜600μmの粒径を有する粒子を使用して測定した。
【0088】
ポリマー構造体(粉末A)
320gのアクリル酸(水酸化ナトリウム溶液(266.41gのNaOH(濃度:50%))により75モル%を中和)、400.66gの水、0.508gのポリエチレングリコール−300ジアクリレート及び1.037gのモノアリルポリエチレングリコール−450モノアクリレートからなるモノマー溶液から窒素パージによって溶存酸素を除去した後、モノマー溶液を開始温度(7℃)に冷却した。開始温度に到達した時に、開始剤溶液(5gの水に溶解した0.3gのナトリウムペルオキソジサルフェート、5gの水に溶解した0.007gの35%過酸化水素溶液及び1.5gの水に溶解した0.015gのアスコルビン酸)を添加した。これにより、発熱を伴う重合反応が生じた。断熱終了温度は約105℃だった。形成されたヒドロゲルを肉挽機で粉砕し、強制空気乾燥棚内において150℃で2時間乾燥した。乾燥したポリマーを粗く砕き、2mmの篩い(「Conidur」)を備えたSM 100カッティングミルで粉砕し、300〜600μmの粒径を有する粉末(粉末A)を得た。
【0089】
後架橋ポリマー構造体(ポリマーB)
100gの粉末Aを、1.0gの炭酸エチレン、0.25gのAl(SO×14 HO、0.3gの乳酸アルミニウム及び3.0gの脱イオン水からなる溶液と混合した。混合は、注射器(0.45mmのカニューレ)を使用して溶液をミキサー内のポリマー粉末に添加することによって行った。次に、コーティングされた粉末を強制空気乾燥棚内において180℃で30分間加熱した(粉末B)。
【0090】
実施例1
図1(断面図)に示す水平軸を中心として回転するドラムに15gの吸水性ポリマー構造体を出発原料として投入した。ドラムとしては、回転ドラム(「DURAN」(登録商標)ガラス瓶、Schott Deutschland社製)を使用した。ドラムの外部には電極(図1を参照)を配置し、約90ワットの電力によって窒素プラズマ又は空気プラズマを発生させた(ガス流量:約200ml/分)。周波数は約40kHzとした(LF発生器を使用)。回転ドラムの内部圧力は0.2〜0.6ミリバールとし、吸水性ポリマー構造体をプラズマに約6時間暴露した。
【0091】
表面後架橋していない吸水性ポリマー構造体(粉末A)及び表面後架橋した吸水性ポリマー構造体(粉末B)を出発原料として用いた。
【0092】
吸水性ポリマー構造体のプラズマ処理前及びプラズマ処理後に粉末A及び粉末Bの保持率及びFSRを測定した。結果を表1に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
上記結果は、本発明に係る方法によって吸水性ポリマー構造体をプラズマ処理することにより、保持率をほとんど低下させることなく、表面後架橋した吸水性ポリマー構造体及び表面後架橋していない吸水性ポリマー構造体の吸水率を有意に向上させることができることを示している。
【0095】
実施例2
100gの粉末Aと、0.5gのSipernat(登録商標)(Evonik Degussa GmbH製)をヘラを用いてビーカー内で十分に均一に混合し、実施例1と同様にプラズマ処理を行って粉末Cを得た。
FSR値を表2に示す。
【0096】
【表2】

【0097】
上記結果は、FSR値はプラズマ処理のみによっても有意に上昇するが、SiO処理及びプラズマ処理によってさらに上昇することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面変性吸水性ポリマー構造体の製造方法であって、
I)多数の吸水性ポリマー構造体を用意する工程と、
II)前記工程(I)で用意した吸水性ポリマー構造体の表面をプラズマで処理する工程と、
を含み、
前記工程(II)において前記多数の吸水性ポリマー構造体を混合する方法。
【請求項2】
前記吸水性ポリマー構造体を混合することによって前記吸水性ポリマー粒子を相対的に移動させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程II)において、プラズマを発生させる回転ドラム内において前記吸水性ポリマー構造体を変性させる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記回転ドラムの体積に対して0.8g/cm以下の量で前記吸水性ポリマー構造体を使用する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記工程I)で用意した吸水性ポリマー構造体が、部分的に中和された架橋アクリル酸を含む、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程I)で用意した吸水性ポリマー構造体を、前記工程II)の前、前記工程II)の実施中又は前記工程II)の後に表面後架橋させる、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
有機化学表面後架橋剤を用いて前記表面後架橋を行う、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記プラズマが、窒素プラズマ、空気プラズマ又は水蒸気プラズマである、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記工程I)で用意した吸水性ポリマー構造体の表面を10−6〜10秒にわたって前記プラズマで変性させる、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記工程I)で用意した吸水性ポリマー構造体の表面を10−6〜5バールの圧力下において前記プラズマで変性させる、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記工程II)の前又は前記工程II)の実施中に、前記吸水性ポリマー構造体の総重量に対して0.01〜5重量%の量の充填剤と前記吸水性ポリマー構造体を混合する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記工程I)で用意した多数の吸水性ポリマー構造体を多数の無機粒子と混合する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
プラズマ処理吸水性ポリマー構造体の製造装置(4)であって、
V1)重合領域(5)と、
V2)表面処理領域(6)と、
V3)プラズマ処理領域(7)と、
が流体を輸送するように直接又は間接的に相互に接続され、
前記プラズマ処理領域がプラズマ源(8)及び混合装置(9)を含む装置。
【請求項14】
前記プラズマ処理領域の上流又は下流に表面後架橋領域(10)を含む、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
請求項13又は14のいずれかに記載の装置を使用する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜12又は15のいずれか1項に記載の方法によって得られる表面変性吸水性ポリマー構造体。
【請求項17】
少なくとも0.3g/g/秒の、本願明細書に記載する試験方法によって測定した自由膨張率(FSR)を有する、請求項16に記載の表面変性吸水性ポリマー構造体。
【請求項18】
少なくとも20g/gの、本願明細書に記載する試験方法によって測定した圧力下吸収率を有する、請求項16又は17に記載の表面変性吸水性ポリマー構造体。
【請求項19】
請求項16〜18のいずれか1項に記載の表面変性吸水性ポリマー構造体と、基材と、を含む複合体。
【請求項20】
請求項16〜18のいずれか1項に記載の表面変性吸水性ポリマー構造体と、基材と、任意の添加剤と、を接触させる、複合体の製造方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法により得られる複合体。
【請求項22】
請求項16〜18のいずれか1項に記載の表面変性吸水性ポリマー構造体又は請求項19又は20に記載の複合体を含む、発泡体、成形品、繊維、シート、フィルム、ケーブル、シール材、吸収性衛生用品、植物・菌類生育調節剤用担体、包装材料、土壌添加剤又は建設材料。
【請求項23】
請求項16〜18のいずれか1項に記載の表面変性吸水性ポリマー構造体又は請求項19又は20に記載の複合体の、発泡体、成形品、繊維、シート、フィルム、ケーブル、シール材、吸液性衛生用品、植物・菌類生育調節剤用担体、包装材料、活性化合物の制御放出のための土壌添加剤又は建設材料における使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−504635(P2013−504635A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528298(P2012−528298)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062028
【国際公開番号】WO2011/029704
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(504341139)エボニック ストックハウゼン ゲーエムベーハー (35)
【Fターム(参考)】