説明

吸水性ポリマー粒子の表面後架橋法

キャリアーガスにより生成された流動層内での吸水性ポリマー粒子の熱的な表面後架橋法であって、その際、表面後架橋剤を前記流動層にガス状で供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、キャリアーガスにより生成された流動層内での吸水性ポリマー粒子の熱的な表面後架橋法に関し、その際、表面後架橋剤が該流動層にガス状で供給される。
【0002】
吸水性ポリマー粒子の製造は、モノグラフ"Modern Superabsorbent Polymer Technology",F.L.Buchholz and A.T.Graham,Wiley−VCH,1998の第71頁〜第103頁に記載される。
【0003】
吸水性ポリマーは、おむつ、タンポン、ナプキンおよびその他の衛生物品を製造するために使用されるが、農業園芸における保水剤としても使用される。該吸水性ポリマーは、超吸収体とも呼ばれる。
【0004】
該吸水性ポリマーの特性は、架橋度により調整されることができる。架橋度が高まるにつれて、ゲル強度が高まり、かつ遠心保持容量(Zentrifugenretetionskapazitaet)(CRC)が低下する。
【0005】
適用特性、例えばおむつ中での膨潤したゲルベッドの透過性(SFC)および49.2g/cm2(AUL0.7psi)の加圧下での吸収量を改善するために、一般的に吸水性ポリマー粒子は表面後架橋される。それによって該粒子表面の架橋度は高まり、そうして49.2g/cm2(AUL0.7psi)の加圧下での吸収量と遠心保持容量(CRC)とのつながりを少なくとも部分的に切り離すことができる。この表面後架橋は、水性ゲル相中で実施されることができる。しかし、好ましくは、乾燥、粉砕および篩分されたポリマー粒子(ベースポリマー)が、表面で表面後架橋剤によりコーティングされ、熱的に表面後架橋され、かつ乾燥される。それに適した架橋剤は、該吸水性ポリマーのカルボキシレート基と共有結合を形成することができる少なくとも2個の基を有する化合物である。
【0006】
例えばWO00/053664A1は、例15〜17において表面後架橋を記載し、その際、吸水性ポリマー粒子が、パドル乾燥機中で表面後架橋剤水溶液によりコーティングされ、該コーティングされたポリマー粒子は、ディスク乾燥機中で熱的に表面後架橋され、かつ該表面後架橋されたポリマー粒子は、流動層内の空気を用いて冷却される。
【0007】
本発明の課題は、吸水性ポリマー粒子の改善された表面後架橋法を提供することであった。
【0008】
該課題は、キャリアーガスにより生成された流動層内での吸水性ポリマー粒子の熱的な表面後架橋法において、少なくとも1つの表面後架橋剤を該流動層にガス状で供給することを特徴とする方法によって解決された。
【0009】
該吸水性ポリマー粒子は、例えば
a) 少なくとも部分的に中和されていてよい、少なくとも1つのエチレン性不飽和の酸基含有モノマー、
b) 少なくとも1つの架橋剤、
c) 少なくとも1つの開始剤、
d) 任意に1つ以上の、a)に記載されるモノマーと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーおよび
e) 任意に1つ以上の水溶性ポリマー
を含有するモノマー溶液の重合によって製造され、かつ通常は水不溶性である。
【0010】
モノマーa)は、好ましくは水溶性であり、すなわち、23℃における水中での溶解度は、概して少なくとも1g/水 100g、好ましくは少なくとも5g/水 100g、特に有利には少なくとも25g/水 100g、極めて有利には少なくとも35g/水 100gである。
【0011】
適したモノマーa)は、例えばエチレン性不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、およびイタコン酸である。特に有利なモノマーは、アクリル酸およびメタクリル酸である。極めて有利なのは、アクリル酸である。
【0012】
不純物は、重合に著しい影響を与えかねない。それゆえ、使用される原料は、可能な限り高い純度を有していることが望ましい。それゆえ、多くの場合、該モノマーa)を特別に精製することが好ましい。適した精製法は、例えばWO2002/055469A1、WO2003/078378A1およびWO2004/035514A1に記載される。適したモノマーa)は、例えばWO2004/035514A1による精製アクリル酸であり、アクリル酸99.8460質量%、酢酸0.0950質量%、水0.0332質量%、プロピオン酸0.0203質量%、フルフラール0.0001質量%、無水マレイン酸0.0001質量%、ジアクリル酸0.0003質量%およびヒドロキノンモノメチルエーテル0.0050質量%を伴う。
【0013】
該モノマーa)の全体量に対するアクリル酸および/またはその塩の割合は、好ましくは少なくとも50mol%、特に有利には少なくとも90mol%、極めて有利には少なくとも95mol%である。
【0014】
さらなる適したモノマーa)は、例えばエチレン性不飽和スルホン酸、例えばスチレンスルホン酸および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)である。
【0015】
該モノマーa)の酸基は、通常は部分的に中和されている。そのために、中和剤が、水溶液または有利には固体としても該モノマー溶液に混ぜ込まれる。中和度は、好ましくは25〜95モル%、特に有利には30〜80モル%、極めて有利には40〜75モル%であり、その際、通常の中和剤、好ましくはアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属炭酸水素塩ならびにこれらの混合物を使用することができる。アルカリ金属塩の代わりに、アンモニウム塩も使用することができる。ナトリウムおよびカリウムは、アルカリ金属として特に有利であるが、しかしながら、極めて有利なのは、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムならびにこれらの混合物である。
【0016】
該モノマーa)は、通常は重合禁止剤、好ましくはヒドロキノン半エーテルを、貯蔵安定剤として含有する。
【0017】
該モノマー溶液は、そのつど未中和の該モノマーa)に対して、ヒドロキノン半エーテルを、好ましくは250質量ppmまで、有利にはせいぜい130質量ppm、特に有利にはせいぜい70質量ppm、有利には少なくとも10質量ppm、特に有利には少なくとも30質量ppm、殊に約50質量ppm含有する。例えば、該モノマー溶液の製造のために、相応するヒドロキノン半エーテル含量を有するエチレン性不飽和の酸基含有モノマーを使用することができる。
【0018】
有利なヒドロキノン半エーテルは、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)および/またはα−トコフェロール(ビタミンE)である。
【0019】
適した架橋剤b)は、架橋のために適した少なくとも2個の基を有する化合物である。かかる基は、例えば、ポリマー鎖中にラジカル重合導入されることができるエチレン性不飽和基、および該モノマーa)の酸基と共有結合を形成することができる官能基である。さらに、該モノマーa)の少なくとも2個の酸基と配位結合を形成することができる多価金属塩も架橋剤b)として適している。
【0020】
架橋剤b)は、好ましくは、ポリマー網目にラジカル重合により導入されることができる少なくとも2個の重合可能な基を有する化合物である。適した架橋剤b)は、例えばエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルアンモニウムクロリド、テトラアリルオキシエタン(例えばEP0530438A1に記載)、ジアクリレートおよびトリアクリレート(例えばEP0547847A1、EP0559476A1、EP0632068A1、WO93/21237A1、WO2003/104299A1、WO2003/104300A1、WO2003/104301A1およびDE10331450A1に記載)、アクリレート基の他にさらなるエチレン性不飽和基を有する混合アクリレート(例えばDE10331456A1およびDE10355401A1に記載)、または架橋剤混合物(例えばDE19543368A1、DE19646484A1、WO90/15830A1およびWO2002/032962A2に記載)である。
【0021】
有利な架橋剤b)は、ペンタエリトリトリアリルエーテル、テトラアルコキシエタン、メチレンビス−メタクリルアミド、15箇所エトキシ化されたトリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートおよびトリアリルアミンである。
【0022】
極めて有利な架橋剤b)は、例えばWO2003/104301A1に記載されているような、アクリル酸またはメタクリル酸でジアクリレートまたはトリアクリレートへとエステル化された複数箇所エトキシ化および/またはプロポキシ化されたグリセリンである。3〜10箇所エトキシ化されたグリセリンのジアクリレートおよび/またはトリアクリレートが特に好ましい。極めて有利なのは、1〜5箇所エトキシ化および/またはプロポキシ化されたグリセリンのジアクリレートまたはトリアクリレートである。最も有利なのは、3〜5箇所エトキシ化および/またはプロポキシ化されたグリセリンのトリアクリレート、殊に3箇所エトキシ化されたグリセリンのトリアクリレートである。
【0023】
架橋剤b)の量は、そのつどモノマーa)に対して、好ましくは0.05〜1.5質量%、特に有利には0.1〜1質量%、極めて有利には0.3〜0.6質量%である。架橋剤含量が増えるにつれて、遠心保持容量(CRC)は低下し、かつ21.0g/cm2(AUL0.3psi)の加圧下での吸収量は最大値を通過する。
【0024】
開始剤c)として、重合条件下で全てのラジカルを生成する化合物、例えば熱開始剤、レドックス開始剤、光開始剤を使用することができる。適したレドックス開始剤は、ペルオキソ二硫酸ナトリウム/アスコルビン酸、過酸化水素/アスコルビン酸、ペルオキソ二硫酸ナトリウム/重亜硫酸ナトリウムおよび過酸化水素/重亜硫酸ナトリウムである。好ましくは、熱開始剤とレドックス開始剤とからの混合物、例えばペルオキソ二硫酸ナトリウム/過酸化水素/アスコルビン酸が使用される。しかし、還元性成分として、好ましくは2−ヒドロキシ−2−スルフィナト酢酸のナトリウム塩、2−ヒドロキシ−2−スルホナト酢酸の二ナトリウム塩および重亜硫酸ナトリウムとからの混合物も使用される。この種の混合物は、Brueggolite(R)FF6およびBrueggolite(R)FF7(Brueggeman Chemicals;Heilbronn;Germany)として入手可能である。
【0025】
エチレン性不飽和の酸基含有モノマーa)と共重合可能なエチレン性不飽和モノマーd)は、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジエチルアミノプロピルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートおよびジエチルアミノエチルメタクリレートである。
【0026】
水溶性ポリマーe)として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、デンプン誘導体、変性されたセルロース、例えばメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロース、ゼラチン、ポリグリコールまたはポリアクリル酸、好ましくはデンプン、デンプン誘導体および変性されたセルロースを使用することができる。
【0027】
通常はモノマー水溶液が使用される。該モノマー溶液の含水率は、好ましくは40〜75質量%、特に有利には45〜70質量%、極めて有利には50〜65質量%である。
【0028】
有利な重合禁止剤は、最適な作用のために溶存酸素を要する。それゆえ、該モノマー溶液から、重合前に、不活性化によって、すなわち、不活性ガス、好ましくは窒素または二酸化炭素による流過によって、溶存酸素を取り除いてよい。好ましくは、重合前の該モノマー溶液の酸素含有率は、1質量ppm未満に、特に有利には0.5質量ppm未満に、極めて有利には0.1質量ppm未満に低下される。
【0029】
適した反応器は、例えばニーダー反応器またはベルト反応器(ゲル重合)である。混練機中で、モノマー水溶液の重合に際して発生する該ポリマーゲルが、WO2001/038402A1に記載されるように、例えば反転撹拌シャフトによって連続的に微粉砕される。ベルト上での重合は、例えばDE3825366A1およびUS6,241,928に記載される。ベルト反応器中での該重合に際してポリマーゲルが生じ、それは、さらなる方法工程において、例えば押出機中または混練機中で微粉砕されなければならない。
【0030】
混練反応器またはベルト反応器が使用される場合、重合後の中和は、該重合に際して生じるポリマーゲルの段階で実施することも可能である。さらに、該酸基を重合前に、該中和剤の一部をすでにモノマー溶液に添加し、かつ所望の最終中和度を重合後に初めて、ポリマーゲルの段階で調整することによって、40mol%まで、好ましくは10〜30mol%、特に有利には15〜25mol%中和することが可能である。該ポリマーゲルが少なくとも部分的に重合後に中和される場合、該ポリマーゲルは、好ましくは機械的に、例えば押出機を用いて微粉砕され、その際、該中和剤を吹き付けるか、振りかけるか、または注ぎ込み、次いで入念に相互に混合してよい。そのために、得られたゲル組成物は、なお繰り返し均質化のために押出してよい。
【0031】
得られたポリマーゲルは、好ましくはベルト乾燥機により、残留湿分含有率が、好ましくは0.5〜15質量%、特に有利には1〜10質量%、極めて有利には2〜8質量%になるまで乾燥され、その際、該残留湿分含有率は、欧州不織布協会(European Disposables and Nonwovens Association)より推奨される試験法No.WSP 230.2−05 "Moisture Content"に従って測定される。残留湿分が高すぎる場合、乾燥された該ポリマーゲルは低すぎるガラス転移温度Tgを有し、かつ、さらに加工を行うにも困難となる。残留湿分が低すぎる場合、乾燥されたポリマーゲルは過度に脆性となり、かつ引き続く微粉砕工程において、不所望にも過度に低い粒径("微粉(fines)")を有する大量のポリマー粒子が発生する。該ゲルの固体含有率は、乾燥前に、好ましくは25〜90質量%、特に有利には35〜70質量%、極めて有利には40〜60質量%である。しかし、選択的に、乾燥のために、流動床乾燥機またはパドル乾燥機も使用してよい。
【0032】
乾燥されたポリマーゲルは、この後に粉砕され、かつ分級され、その際、粉砕のために通常は単段式または多段式のロールミル、有利には二段式または三段式のロールミル、ピンミル、ハンマーミルまたは振動ミルを使用してよい。
【0033】
生成物画分として分離されたポリマー粒子の平均粒径は、好ましくは少なくとも200μm、特に有利には250〜600μm、極めて有利には300〜500μmである。該生成物画分の平均粒径は、欧州不織布協会(European Disposables and Nonwovens Association)より推奨される試験法No.WSP 220.2−05 "Partikel Size Distribution"によって算出されることができ、その際、該篩画分の質量割合は、累積的にプロットされ、かつ平均粒径は、グラフにより定められる。この際、該平均粒径は、累積して50質量%となるメッシュサイズの値である。
【0034】
少なくとも150μmの粒径を有する粒子の割合は、好ましくは少なくとも90質量%、特に有利には少なくとも95質量%、極めて有利には少なくとも98質量%である。
【0035】
過度に低い粒径を有するポリマー粒子は、透過性(SFC)を低下させる。それゆえ、過度に小さいポリマー粒子("微粉")の割合は低いことが望ましい。
【0036】
過度に小さいポリマー粒子は、それゆえ通常は分離され、かつ処理に返送される。これは、好ましくは、重合の前、重合の間または重合直後に、すなわち、該ポリマーゲルの乾燥前に行われる。過度に小さいポリマー粒子は、該返送の前または間に、水および/または水性界面活性剤で湿らせてよい。
【0037】
重合のために混練反応器が使用される場合、過度に小さいポリマー粒子は、好ましくは、該重合の最後の3分の1の間に添加される。
【0038】
過度に小さいポリマー粒子が、非常に早く、例えば、すでにモノマー溶液に添加される場合、それによって、得られた該吸水性ポリマー粒子の遠心保持容量(CRC)は低下する。これは、しかし、例えば架橋剤b)の使用量を適合させることによって補うことができる。
【0039】
過度に小さいポリマー粒子が、非常に遅く、例えば、重合反応器中に後接続された装置中で、例えば押出機中で初めて添加される場合、過度に小さい該ポリマー粒子を、得られたポリマーゲルに組み込むのは困難でしかない。不十分に組み込まれた非常に小さいポリマー粒子は、一方で、乾燥されたポリマーゲルから粉砕中に再び離れ、それゆえ分級に際して新たに分離され、かつ返送されるべき過度に小さいポリマー粒子の量を高める。
【0040】
せいぜい850μmの粒径を有する粒子の割合は、好ましくは少なくとも90質量%、特に有利には少なくとも95質量%、極めて有利には少なくとも98質量%である。
【0041】
過度に大きい粒径を有するポリマー粒子は、膨潤速度を低下させる。それゆえ過度に大きいポリマー粒子の割合も同様に低いことが望ましい。
【0042】
それゆえ、過度に大きいポリマー粒子は、通常は分離され、かつ乾燥されたポリマーゲルの粉砕に返送される。
【0043】
しかし、モノマー水溶液を液滴化し、かつ生成された該液滴を、加熱されたキャリアーガス流中で重合することも可能である(滴下重合)。この際、WO2008/040715A2およびWO2008/052971A1に記載されるように、重合および乾燥の方法工程は一括りにされ、ならびに微粉砕および分級の方法工程を省くことができる。このために、該モノマー溶液は、少なくとも1個の穿孔を用いて液滴の形成下で反応室中に計量供給される該穿孔は、例えば液滴化プレートに存在してよい。
【0044】
液滴化プレートは、少なくとも1個の穿孔を有するプレートであり、その際、液体は上方から該穿孔を通り抜ける。該液滴化プレートもしくは該液体は揺動させてもよく、それによって該液滴化プレートの下側で、穿孔ごとに、理想的には単分散の液滴鎖状物が生成される。有利な一実施態様において、該液滴化プレートは刺激されない。
【0045】
該穿孔の数と大きさとは、所望の流量と液滴の大きさにより選択される。その際、液滴径は、通常は該穿孔の直径の1.9倍である。この際、重要なことは、液滴化されるべき液体が該穿孔を通り抜けるのが速すぎないこと、もしくは該穿孔全面にわたる圧力損失が大きすぎないことである。さもなければ、液体は液滴化されずに、液体噴流が、高い運動エネルギーのために引き裂かれる(噴霧)される。穿孔1個当たりの流量および穿孔径に対するレイノルズ数は、好ましくは2000より小さく、有利には1000より小さく、特に有利には500より小さく、極めて有利には250より小さい。
【0046】
該液滴化プレートは、通常は少なくとも1個の、好ましくは少なくとも10個の、特に有利には少なくとも50個の、および通常は10000個までの、好ましくは5000個までの、特に有利には1000個までの穿孔を有し、その際、該穿孔は、通常は均等に液滴化プレート全面にわたり割り当てられており、好ましくは、いわゆる三角ピッチで割り当てられており、すなわち、そのつど3個の穿孔が正三角形の頂点を形成する。
【0047】
該穿孔の間隔は、好ましくは1〜50mm、特に有利には2.5〜20mm、極めて有利には5〜10mmである。
【0048】
重合反応器にはキャリアーガスが流過する。その際、該キャリアーガスは、自由落下するモノマー溶液の液滴に並流または向流で、有利には並流で、すなわち、下方から上方に反応室に導いてよい。好ましくは、該キャリアーガスは、1回の通過後に、少なくとも部分的に、有利には少なくとも50%、特に有利には少なくとも75%が、循環ガスとして該反応室に返送される。通常は該キャリアーガスの部分流は、各通過後に、好ましくは10%まで、特に有利には3%まで、極めて有利には1%までが排出される。
【0049】
該キャリアーガスの酸素含有率は、好ましくは0.5〜15体積%、特に有利には1〜10体積%、極めて有利には2〜5質量%である。
【0050】
該キャリアーガスは、酸素以外に、好ましくは窒素を含有する。該キャリアーガスの窒素含有率は、好ましくは少なくとも80体積%、特に有利には少なくとも90体積%、極めて有利には少なくとも93体積%である。
【0051】
好ましくは、ガス速度は、流れが重合反応器に向いており、例えば、全般的な流れ方向と逆の対流渦が存在せず、かつ、例えば0.01〜5m/s、好ましくは0.02〜4m/s、特に有利には0.05〜3m/s、極めて有利には0.1〜2m/sとなるように調整される。
【0052】
反応器を流過するキャリアーガスは、目的に応じて、該反応器前で反応温度に予熱される。
【0053】
ガス入口温度、すなわち、該キャリアーガスが反応室に入る温度は、好ましくは160〜250℃、特に有利には180〜230℃、極めて有利には190〜220℃である。
【0054】
好ましくは、該ガス入口温度は、ガス出口温度、すなわち、該キャリアーガスが反応室を出る温度が、100〜180℃、特に有利には110〜160℃、極めて有利には120〜140℃となるように制御される。
【0055】
該反応は、過圧または減圧で実施してよく、周囲圧力に対して100ミリバールまでの減圧が有利である。
【0056】
反応排ガス、すなわち、反応室を出るガスは、例えば熱交換器中で冷却することができる。その際、水および反応しなかったモノマーa)が凝縮する。その後、該反応排ガスは、少なくとも部分的に再び加熱され、かつ循環ガスとして反応器に返送されることができる。反応排ガスの一部が排出され、そして新鮮なキャリアーガスと交換されることができ、その際、反応排ガス中に含まれる水および反応しなかったモノマーa)とが分離され、かつ返送されることができる。
【0057】
特に有利なのは熱統合であり、すなわち、該排ガスの冷却に際しての排熱の一部が、該循環ガスの加熱のために使用される。
【0058】
該反応器は、随伴加熱されることができる。その際、該随伴加熱は、壁部温度が反応器内部温度より少なくとも5℃高く、かつ反応器壁部での凝縮が確実に回避されるように調整される。
【0059】
例えばゲル重合または滴下重合によって得られた吸水性ポリマー粒子は、引き続き本発明による方法により表面後架橋される。
【0060】
そのために、該吸水性ポリマー粒子は、キャリアーガスによって流動床反応器中で流動化される。
【0061】
該キャリアーガスの酸素含有率は、好ましくは5体積%未満である。低い該酸素含有量によって、反応器中で着火性混合物が回避される。
【0062】
該キャリアーガスは、好ましくは窒素を含有する。該キャリアーガスの窒素含有率は、好ましくは少なくとも80体積%、特に有利には少なくとも90体積%、極めて有利には少なくとも95体積%である。
【0063】
重要なことは、表面後架橋剤がガス状で反応器中に計量供給されることである。そのために、相応する量が蒸発され、かつガス状で反応器中に導入してよい。しかし、該キャリアーガスを、反応器前で、相応する量の表面後架橋剤により負荷させることも可能である。このために、例えば表面後架橋剤が充填された温度調節式ガススクラバーが適している。
【0064】
ガス状の計量供給は、穏やかなかつ非常に均一な表面後架橋を可能にする。それとは別に癒合傾向を伴う通常の水溶液の使用は省かれる。
【0065】
使用可能な表面後架橋剤は制限されない。適した表面後架橋剤は、ポリマー粒子の少なくとも2個のカルボキシレート基と共有結合を形成することができる基を含有する化合物である。適した化合物は、例えば多官能性アミン、多官能性アミドアミン、多官能性エポキシド(例えばEP0083022A2、EP0543303A1およびEP0937736A2に記載)、二官能性または多官能性のアルコール(例えばDE3314019A1、DE3523617A1およびEP450922A2に記載)、またはβ−ヒドロキシアルキルアミド(例えばDE10204938A1およびUS6,239,230に記載)である。
【0066】
有利な表面後架橋剤は、二官能性アルコール(ジオール)、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオールおよび1,4−ブタンジオールである。
【0067】
極めて有利な表面後架橋剤は、プロピレングリコールおよび2,3−ブタンジオールである。
【0068】
該表面後架橋剤は、一方で、反応温度にて十分に高い蒸気圧を有していることが望ましい。蒸気圧が低すぎる場合、該表面後架橋剤は、徐々にしか計量供給することができず、またこの方法は、必須の長い滞留時間に基づき不経済である。これは、キャリアーガス中での該表面後架橋剤の分圧が蒸気圧より決して高くなり得ないということに拠る。該表面後架橋剤の分圧が高すぎる場合、吸水性ポリマー粒子は、溶剤の不在下でも癒合する傾向がある。
【0069】
該流動層のキャリアーガス中での該表面後架橋剤の分圧は、好ましくは5〜200ミリバール、特に有利には10〜100ミリバール、極めて有利には15〜50ミリバールである。
【0070】
反応温度は、好ましくは150〜250℃、特に有利には155〜220℃、極めて有利には160〜200℃の範囲にある。流動層内での吸水性ポリマー粒子の有利な滞留時間は、好ましくは少なくとも10分間、特に有利には少なくとも20分間、極めて有利には少なくとも30分間であり、また通常はせいぜい120分間である。
【0071】
表面後架橋剤の反応排ガス、すなわち、該流動層を出るキャリアーガスは、少なくとも部分的に循環ガスとして表面後架橋に返送されることができる。該反応排ガスの一部が排出され、かつ新鮮なキャリアーガスと交換されることができ、その際、反応排ガス中に含まれる表面後架橋剤が分離され、かつ返送されることができる。
【0072】
表面後架橋されたポリマー粒子は、特性のさらなる改善のためにコーティングされるかまたは後に湿らせてよい。膨潤速度ならびに透過性(SFC)を改善するための適したコーティングは、例えば無機不活性物質、例えば水不溶性の金属塩、有機ポリマー、カチオン性ポリマーならびに二価または多価の金属カチオン、例えば、乳酸アルミニウム水溶液または硫酸アルミニウム水溶液としてのアルミニウムカチオンである。防塵処理のための適したコーティングは、例えばポリオールである。該ポリマー粒子の不所望な凝結傾向に対する適したコーティングは、例えば熱分解シリカ、例えばAerosil(R)200、および界面活性剤、例えばSpan(R)20である。
【0073】
本発明による方法により製造された吸水性ポリマー粒子は、概して少なくとも15g/g、好ましくは少なくとも20g/g、有利には少なくとも22g/g、特に有利には少なくとも24g/g、極めて有利には少なくとも26g/gの遠心保持容量(CRC)を有する。吸水性ポリマー粒子の遠心保持容量(CRC)は、通常は60g/g未満である。遠心保持容量(CRC)は、欧州不織布協会(European Disposables and Nonwovens Association)によって推奨される試験法No.241.2−05 "Centrifuge Retention Capacity"に従って測定される。
【0074】
本発明による方法により製造された吸水性ポリマー粒子は、49.2g/cm2(AUL0.7psi)の加圧下で、概して少なくとも15g/g、好ましくは少なくとも20g/g、有利には少なくとも22g/g、特に有利には少なくとも24g/g、極めて有利には少なくとも26g/gの吸収量を有する。該吸水性ポリマー粒子の49.2g/cm2(AUL0.7psi)の加圧下での吸収量は、通常は35g/g未満である。49.2g/cm2(AUL0.7psi)の加圧下での吸収量は、欧州不織布協会(European Disposables and Nonwovens Association)によって推奨される試験法No.WSP 242.2−05 "Absorption Under Pressure"と同様に測定され、その際、21.0g/cm2(AUL0.3psi)の圧力の代わりに、49.2g/cm2(AUL0.7psi)の圧力が調整される。
【0075】
吸水性ポリマー粒子は、以下に記載される試験法によって試験される。
【0076】
方法:
測定は、他に記載がない場合、23±2℃の周囲温度および50±10%の空気の相対湿度で実施されるべきである。吸水性ポリマー粒子は、該測定前に十分に混合される。
【0077】
透過性(生理食塩水流れ誘導性(Saline Flow Conductivity))
21.0g/cm2の圧力負荷下での膨潤されたゲルベッドの透過性(SFC)は、EP0640330A1に記載される通り、吸水性ポリマー粒子からの膨潤したゲル層のゲル−層−透過率として測定し、その際、前述の特許出願明細書中の第19頁および図8に記載される装置を、ガラスフリット(40)はもはや使用せず、ポンチ(39)は円筒体(37)と同じプラスチック材料から成り、そのとき全接触面にわたり均一に割り当てられた形で21個の同一サイズの穿孔を含むことになるよう改良した。該測定の手順および評価は、EP0640330A1と変わっていない。流量は自動的に検出される。
【0078】
液体誘導性(SFC)は、下記の通り計算される:
SFC[cm3s/g]=(Fg(t=o)×L0)/(d×A×WP)、
式中、Fg(t=o)は、g/秒におけるNaCl溶液の流量であり、これは、該流量測定のデータFg(t)の線形回帰分析を手がかりにしてt=0に対する補外法によって得られ、L0は、cmにおけるゲル層の厚さであり、dは、g/cm3におけるNaCl溶液の密度であり、Aは、cm2におけるゲル層の面積であり、かつWPは、dyn/cm2におけるゲル層上の静水圧である。
【0079】
湿分含有率(Moisture Content)
該吸水性ポリマーの湿分含有率は、欧州不織布協会(European Disposables and Nonwovens Association)により推奨される試験法No.WSP 230.2−05"Moisture content"に従って測定される。
【0080】
遠心保持容量(Centrifuge Retention Capacity)
遠心保持容量(CRC)は、欧州不織布協会(European Disposables and Nonwovens Association)により推奨される試験法No.WSP 241.2−05 "Centrifuge Retention Capacity"に従って測定される。
【0081】
49.2g/cm2の加圧下での吸収量(Absorption under Pressure)
49.2g/cm2(AUL0.7psi)の加圧下での吸収量は、欧州不織布協会(European Disposables and Nonwovens Association)によって推奨される試験法No.WSP 242.2−05 "Absorption under Pressure"と同様に測定され、その際、21.0g/cm2(AUL0.3psi)の圧力の代わりに、49.2g/cm2(AUL0.7psi)の圧力が調整される。
【0082】
抽出分(Extractables)
抽出分は、欧州不織布協会(European Disposables and Nonwovens Association)により推奨される試験法No.WSP 270.2−05 "Extractables"に従って測定される。
【0083】
欧州不織布協会の該試験法は、例えばEuropean Disposables and Nonwovens Association,Avenue Eugene Plasky 157,B−1030 Bruessel,Belgienにて得られる。
【0084】
例:
例1
アクリル酸ナトリウム31.6質量%、アクリル酸9.9質量%、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドクロリド0.17質量%、ペルオキソ二硫酸ナトリウム0.085質量%、3箇所エトキシ化されたグリセリントリアクリレート0.058質量%(約85質量%)および水を含有するモノマー溶液を、加熱された液滴化塔(Vertropfungsturm)内で液滴化した(高さ12m、幅2m、並流でのガス速度0.1m/s)。該モノマー溶液は、0.0065Pasの動的粘度、1.1g/cm2の密度および0.039N/mの表面張力を有していた。該液滴化プレートは170μmの穿孔を30個有していた。該混合物の計量供給速度は16.0kg/hであった。ガス予熱のヒータ出力は、液滴化塔内のガス出口温度が常に130℃となるように制御した。
【0085】
得られた吸水性ポリマー粒子は、30.5g/gの遠心保持容量(CRC)、20.7g/gの49.2g/cm2(AUL0.7psi)の加圧下での吸収量、11×10-7cm3s/gの透過性(SFC)、12.6質量%の湿分含有率および2.2質量%の抽出分割合を有していた。
【0086】
例2
例1と同じように処理を行った。モノマー溶液中の3箇所エトキシ化されたグリセリントリアクリレートの濃度は0.018質量%に下げた。
【0087】
得られた吸水性ポリマー粒子は、53.4g/gの遠心保持容量(CRC)、7.7g/gの49.2g/cm2(AUL0.7psi)の加圧下での吸収量、11×10-7cm3s/gの透過性(SFC)、15.6質量%の湿分含有率および6.7質量%の抽出分割合を有していた。
【0088】
例3
7cmの内径を有する流動床反応器中に、例1からの吸水性ポリマー粒子 約100gを装入した。反応器中でのキャリアーガスの空塔速度は1m/sであった。キャリアーガスとして、160℃の温度有する工業用窒素を使用した。該吸水性ポリマー粒子を、反応器中で10分間乾燥させた。引き続き、該キャリアーガスを、反応器上流で160℃にて1,2−プロパンジオールにより負荷させた(t=0)。キャリアーガス中での1,2−プロパンジールの分圧は、約20ミリバールであった。
【0089】
得られた該吸水性ポリマー粒子を分析した:
【表1】

【0090】
例4
例3と同じように処理を行った。キャリアーガス温度は180℃に上げ、そして表面後架橋剤として2,3−ブタンジオールを使用した。
【0091】
得られた該吸水性ポリマー粒子を分析した:
【表2】

【0092】
例5
例3と同じように処理を行った。例2からの吸水性ポリマー粒子を使用した。
【0093】
得られた該吸水性ポリマー粒子を分析した:
【表3】

【0094】
例6
例5と同じように処理を行った。キャリアーガス温度は180℃に上げた。
【0095】
得られた該吸水性ポリマー粒子を分析した:
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアーガスにより生成された流動層内での吸水性ポリマー粒子の熱的な表面後架橋法において、少なくとも1つの表面後架橋剤を該流動層にガス状で供給することを特徴とする、吸水性ポリマー粒子の熱的な表面後架橋法。
【請求項2】
前記流動層のキャリアーガス中での表面後架橋剤の分圧が、少なくとも5ミリバールであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記表面後架橋を、少なくとも150℃の反応温度で実施することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記流動層内での吸水性ポリマー粒子の滞留時間が、少なくとも10分であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記表面後架橋剤がジオールであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記表面後架橋剤が1,2−プロパンジオールおよび/または2,3−ブタンジオールであることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記流動層のキャリアーガスの少なくとも80体積%が窒素であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記吸水性ポリマー粒子を、
a) 少なくとも部分的に中和されていてよい、少なくとも1つのエチレン性不飽和の酸基含有モノマー、
b) 少なくとも1つの架橋剤、
c) 少なくとも1つの開始剤、
d) 任意に1つ以上の、a)に記載されるモノマーと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーおよび
e) 任意に1つ以上の水溶性ポリマー
を含有するモノマー溶液の重合によって得ることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
モノマーa)が、部分的に中和されたアクリル酸であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記吸水性ポリマー粒子が、少なくとも15g/gの遠心保持容量を有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2011−527360(P2011−527360A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517110(P2011−517110)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058414
【国際公開番号】WO2010/003897
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】