説明

吸水性ポリマー粒子を製造するための加熱蒸気凝縮物の使用

本発明は、吸水性ポリマー粒子の製造方法に関し、その際にモノマー水溶液が重合され、かつ前記モノマー溶液を調製するために加熱蒸気凝縮物が使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性ポリマー粒子の製造方法に関し、その際にモノマー水溶液が重合され、かつ前記モノマー溶液を調製するために加熱蒸気凝縮物が使用される。
【0002】
吸水性ポリマー粒子は、おむつ、タンポン、生理用ナプキン及び他の衛生用品の製造のため、しかしまた市場園芸における保水剤として、使用される。吸水性ポリマー粒子は超吸収体とも呼ばれる。
【0003】
吸水性ポリマー粒子の製造は、モノグラフ"Modern Superabsorbent Polymer Technology", F.L. Buchholz及びA.T. Graham, Wiley-VCH, 1998, p.71-103に記載されている。
【0004】
重合速度論は、酸素により不都合な影響を受ける。故に、重合の際に酸素の存在を排除することが必要である。吸水性ポリマー粒子の製造に使用されるモノマー溶液は、溶存酸素を含有する。この酸素は、重合前に大幅に除去される。通常、これらの方法は、モノマー溶液が窒素でフラッシングされ、かつ酸素の減損された気相が除去されることに基づいている。このいわゆる不活性化の際に、窒素はたいてい向流でモノマー溶液に導かれる。気相及びモノマー溶液の良好な混合は、例えば、ノズル、スタティックミキサー又はダイナミックミキサー又は気泡塔を用いて達成されることができる。
【0005】
独国特許出願公開(DE-A1)第35 40 994号明細書及び欧州特許出願公開(EP-A2)第0 827 753号明細書には、並流中での不活性化が開示されており、その際に不活性ガスは、水流ポンプを用いて不活性化すべきモノマー溶液中へ吸引される。
【0006】
独国特許出願公開(DE-A1)第199 38 574号明細書には、典型的な気泡塔が記載されており、その際に気相及びモノマー溶液の混合は、付加的な混合器具により改善される。
【0007】
欧州特許出願公開(EP-A2)第1 097 946号明細書には、不活化されたモノマー溶液から、分散された気泡を改善して分離するための超音波の使用が提案されている。
【0008】
国際公開(WO-A1)第2007/028748号には、気相の分離が放棄されることができる、不活性化する方法が開示されている。
【0009】
本発明の課題は、吸水性ポリマー粒子を製造する、改良された方法を提供することであった、特に、モノマー溶液の不活性化は最適化されるべきであり、かつ必要な不活性ガス量は低下されるべきである。
【0010】
前記課題は、
a)酸基を有する少なくとも1種のエチレン系不飽和モノマー、
b)任意に、中和剤、
c)水及び
d)少なくとも1種の架橋剤
の混合によりモノマー水溶液又は水性モノマー懸濁液を調製し、前記モノマー溶液を不活性化し、不活性化されたモノマー溶液を重合させ、任意に、得られたポリマーゲルを後中和し、乾燥させ、粉砕し、かつ分級することを含む、吸水性ポリマー粒子の製造方法によって解決され、
前記方法は、水c)が少なくとも部分的に加熱蒸気凝縮物であることによって特徴付けられている。
【0011】
本発明は、加熱蒸気凝縮物が溶存酸素をほぼ含有しないという知見に基づくものである。モノマー水溶液又は水性モノマー懸濁液を調製するために、これまで常用の脱塩水の代わりに加熱蒸気凝縮物が使用される場合に、モノマー水溶液又は水性モノマー懸濁液中の溶存酸素の割合は不活性化前に既に有意に低下されることができる。それにより、モノマー水溶液又は水性モノマー懸濁液の不活性化に必要な費用が減少される。
【0012】
以下に、吸水性ポリマー粒子の製造がより詳細に説明される:
吸水性ポリマー粒子は、架橋されたポリマーをベースとし、かつ通常、水に不溶である。
【0013】
モノマーa)は、好ましくは水溶性であり、すなわち23℃での水への溶解度は、典型的には少なくとも1g/100g水、好ましくは少なくとも5g/100g水、特に好ましくは少なくとも25g/100g水、極めて特に好ましくは少なくとも35g/100g水である。
【0014】
適したモノマーa)は、例えばエチレン系不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸及びイタコン酸である。特に好ましいモノマーは、アクリル酸及びメタクリル酸である。アクリル酸が極めて特に好ましい。
【0015】
適したさらなるモノマーa)は、例えばエチレン系不飽和スルホン酸、例えばスチレンスルホン酸及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)である。
【0016】
不純物は、重合にかなりの影響を及ぼしうる。故に、使用される原料は、できるだけ高い純度を有するべきである。故に、モノマーa)を特別に精製することはしばしば有利である。適した精製方法は、例えば、国際公開(WO-A1)第2002/055469号、国際公開(WO-A1)第2003/078378号及び国際公開(WO-A1)第2004/035514号に記載されている。適したモノマーa)は、例えば、国際公開(WO-A1)第2004/035514号に従って精製された、アクリル酸99.8460質量%、酢酸0.0950質量%、水0.0332質量%、プロピオン酸0.0203質量%、フルフラール類0.0001質量%、無水マレイン酸0.0001質量%、ジアクリル酸0.0003質量%及びヒドロキノンモノメチルエーテル0.0050質量%を有するアクリル酸である。
【0017】
モノマーa)の全量に対するアクリル酸及び/又はその塩の割合は、好ましくは少なくとも50mol%、特に好ましくは少なくとも90mol%、極めて特に好ましくは少なくとも95mol%である。
【0018】
モノマーa)は通常、重合防止剤、好ましくはヒドロキノンモノエーテルを貯蔵安定剤として含有する。
【0019】
モノマー溶液は、それぞれ中和されていないモノマーa)を基準として、ヒドロキノンモノエーテルを好ましくは250質量ppmまで、より好ましくは最大でも130質量ppm、特に好ましくは最大でも70質量ppm、より好ましくは少なくとも10質量ppm、特に好ましくは少なくとも30質量ppm、殊に約50質量ppm含有する。例えば、モノマー溶液の製造のために、相応する含量のヒドロキノンモノエーテルを有し、酸基を有するエチレン系不飽和モノマーが使用されることができる。
【0020】
好ましいヒドロキノンモノエーテルは、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)及び/又はα−トコフェロール(ビタミンE)である。
【0021】
得られたポリマーゲルの酸基は通常、部分的に中和されている。中和は、好ましくはモノマーの段階で実施される。これは通常、中和剤b)を水溶液として又は好ましくは固体としても混入することにより行われる。中和度は、好ましくは25〜85mol%であり、"酸性"ポリマーゲルについては特に好ましくは30〜60mol%、極めて特に好ましくは35〜55mol%であり、"中性"ポリマーゲルについては特に好ましくは65〜80mol%、極めて特に好ましくは70〜75mol%であり、その際に常用の中和剤b)、好ましくはアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属炭酸水素塩並びにそれらの混合物が使用されることができる。アルカリ金属塩の代わりに、トリエタノールアミンの塩のようなアンモニウム塩も使用されることができる。ナトリウム及びカリウムは、アルカリ金属として特に好ましく、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウム並びにそれらの混合物がしかしながら極めて特に好ましい。
【0022】
しかしまた、中和を少なくとも部分的に重合後に、重合の際に生じたポリマーゲルの段階で実施することも可能である(後中和)。例えば、中和剤b)の一部が既にモノマー溶液の調製の際に添加され、かつ重合後にポリマーゲルの段階で初めて所望の最終中和度に調節されることによって、酸基の40mol%まで、好ましくは10〜30mol%、特に好ましくは15〜25mol%を重合の前に中和することが可能である。ポリマーゲルが少なくとも部分的に重合後に中和される場合には、ポリマーゲルは好ましくは機械的に、例えば押出機を用いて粉砕され、その際に中和剤が噴霧され、ふりかけられ(uebergestreut)又は注ぎ入れられ、ついで注意深く混合されることができる。それに加えて、得られたゲル状物は、均質化するためにさらに何度も押し出されることができる。
【0023】
水c)を用いて、モノマー溶液又はモノマー懸濁液の含水量は、所望の値に、好ましくは40〜75質量%、特に好ましくは45〜70質量%、極めて特に好ましくは50〜65質量%に、調節される。
【0024】
水c)として、少なくとも部分的に加熱蒸気凝縮物が使用される。水c)の加熱蒸気凝縮物の割合は、好ましくは少なくとも50質量%、特に好ましくは少なくとも90質量%、極めて特に好ましくは少なくとも95質量%である。
【0025】
加熱蒸気は通常、特別に処理された水、いわゆるボイラ給水が、加圧下に、例えば1.5バール、4バール、16バール又は100バール下に、適した熱交換器を用いて蒸発されることによって発生される。防食の理由から、ボイラ給水に、しばしば還元剤、例えばヒドラジンが添加される。
【0026】
加熱蒸気の凝縮の際に、蒸発熱は再び放出され、かつ加熱目的に使用されることができる。凝縮の際に生じる加熱蒸気凝縮物は通常、さらに使用されない。蒸発熱が放出される温度は、この場合に加熱蒸気圧の関数であり、かつ例えば4バールで約145℃である。蒸発熱が放出される温度は、この場合に加熱蒸気圧の関数であり、かつ例えば4バールで約145℃である。加熱蒸気を用いて、例えば空気は、吸水性ポリマー粒子の製造の際に使用される循環空気バンド乾燥器中で加熱される。
【0027】
加熱蒸気凝縮物はほぼ溶存酸素不含である。酸素含量の上昇は、加熱蒸気凝縮物の貯蔵及び輸送の際の酸素排除により回避されるべきである。
【0028】
加熱蒸気凝縮物は、好ましくは1ppm未満、特に好ましくは0.5ppm未満、極めて特に好ましくは0.1ppm未満の溶存酸素を含有する。酸素含量は、市販の酸素センサを用いて20℃及び大気圧で測定される。
【0029】
適した架橋剤d)は、架橋に適した少なくとも2個の基を有する化合物である。この種の基は、例えば、ポリマー鎖へラジカル重合により導入されることができるエチレン系不飽和基及びモノマーa)の酸基と共有結合を結合することができる官能基である。さらに、モノマーa)の少なくとも2個の酸基と配位結合を形成することができる多価の金属塩も、架橋剤d)として適している。
【0030】
架橋剤d)は、好ましくは、ポリマーネットワーク中へラジカル重合により導入されることができる少なくとも2個の重合可能な基を有する化合物である。適した架橋剤d)は、例えば、欧州特許出願公開(EP-A1)第0 530 438号明細書に記載されたようなエチレングリコールジメタクリラート、ジエチレングリコールジアクリラート、ポリエチレングリコールジアクリラート、アリルメタクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、トリアリルアミン、テトラアリルアンモニウムクロリド、テトラアリルオキシエタン、欧州特許出願公開(EP-A1)第0 547 847号明細書、欧州特許出願公開(EP-A1)第0 559 476号明細書、欧州特許出願公開(EP-A1)第0 632 068号明細書、国際公開(WO-A1)第93/21237号、国際公開(WO-A1)第2003/104299号、国際公開(WO-A1)第2003/104300号、国際公開(WO-A1)第2003/104301号及び独国特許出願公開(DE-A1)第103 31 450号明細書に記載されたようなジアクリラート及びトリアクリラート、独国特許出願公開(DE-A1)第103 31 456号明細書及び独国特許出願公開(DE-A1)第103 55 401号明細書に記載されたようなアクリラート基に加えて別のエチレン系不飽和基を有する混合アクリラート、又は例えば独国特許出願公開(DE-A1)第195 43 368号明細書、独国特許出願公開(DE-A1)第196 46 484号明細書、国際公開(WO-A1)第90/15830号及び国際公開(WO-A2)第2002/032962号に記載されたような架橋剤混合物である。
【0031】
好ましい架橋剤d)は、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、メチレンビスメタクリルアミド、15エトキシル化されたトリメチロールプロパントリアクリラート、ポリエチレングリコールジアクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート及びトリアリルアミンである。
【0032】
極めて特に好ましい架橋剤d)は、アクリル酸又はメタクリル酸でジアクリラート又はトリアクリラートへとエステル化されたポリエトキシル化及び/又はポリプロポキシル化されたグリセリンであり、これらは例えば国際公開(WO-A1)第2003/104301号に記載されている。3〜10エトキシル化されたグリセリンのジアクリラート及び/又はトリアクリラートが特に有利である。1〜5エトキシル化及び/又は1〜5プロポキシル化されたグリセリンのジアクリラート又はトリアクリラートが極めて特に好ましい。3〜5エトキシル化及び/又は3〜5プロポキシル化されたグリセリンのトリアクリラートが最も好ましく、殊に3エトキシル化グリセリンのトリアクリラートである。
【0033】
架橋剤d)の量は、それぞれモノマーa)を基準として、好ましくは0.05〜1.5質量%、特に好ましくは0.1〜1質量%、極めて特に好ましくは0.3〜0.6質量%である。架橋剤含量が上昇するにつれて、遠心機保持容量(CRC)は低下し、かつ21.0g/cm2の圧力下の吸収は最大値を通過する。
【0034】
モノマー溶液又はモノマー懸濁液は、通常、不活性ガスとして窒素を使用して、不活性化されるので、不活性化されたモノマー溶液又はモノマー懸濁液の酸素含量は、好ましくは1ppm未満、特に好ましくは0.5ppm未満、極めて特に好ましくは0.1ppm未満である。
【0035】
通常、モノマー溶液又はモノマー懸濁液に、不活性化後に開始剤が添加される。
【0036】
開始剤として、重合条件下でラジカルを発生させる全ての化合物、例えば熱開始剤、レドックス開始剤、光開始剤が使用されることができる。適したレドックス開始剤は、ペルオキソ二硫酸ナトリウム/アスコルビン酸、過酸化水素/アスコルビン酸、ペルオキソ二硫酸ナトリウム/重亜硫酸ナトリウム及び過酸化水素/重亜硫酸ナトリウムである。好ましくは、熱開始剤及びレドックス開始剤の混合物、例えばペルオキソ二硫酸ナトリウム/過酸化水素/アスコルビン酸が使用される。しかし、還元成分として、2−ヒドロキシ−2−スルフィナト酢酸のナトリウム塩、2−ヒドロキシ−2−スルホナト酢酸の二ナトリウム塩及び重亜硫酸ナトリウムの混合物が好ましくは使用される。この種の混合物は、Brueggolite(登録商標) FF6及びBrueggolite(登録商標) FF7(Brueggemann Chemicals; Heilbronn; DE)として入手可能である。
【0037】
さらに、モノマー溶液又はモノマー懸濁液は、酸基を有するエチレン系不飽和モノマーa)と共重合可能なエチレン系不飽和モノマーを含有していてよい。この種のモノマーは、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリラート、ヒドロキシエチルメタクリラート、ジメチルアミノエチルメタクリラート、ジメチルアミノエチルアクリラート、ジメチルアミノプロピルアクリラート、ジエチルアミノプロピルアクリラート、ジメチルアミノエチルメタクリラート、ジエチルアミノエチルメタクリラートである。
【0038】
付加的に、モノマー溶液又はモノマー懸濁液は、さらに水溶性ポリマー、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、デンプン誘導体、変性セルロース、例えばメチルセルロース又はヒドロキシエチルセルロース、ゼラチン、ポリグリコール又はポリアクリル酸、好ましくはデンプン、デンプン誘導体及び変性セルロースを含有していてよい。
【0039】
適した反応器は、例えば混練反応器又はベルト反応器である。そのニーダー中で、モノマー水溶液又は水性モノマー懸濁液の重合の際に生じるポリマーゲルは、例えば、国際公開(WO-A1)第2001/038402号に記載されたように、互いに反転する撹拌軸により連続的に粉砕される。ベルト上での重合は、例えば、独国特許出願公開(DE-A1)第38 25 366号明細書及び米国特許(US)第6,241,928号明細書に記載されている。ベルト反応器中での重合の場合にはポリマーゲルが生じ、このゲルはさらなる処理工程において、例えば押出機又はニーダー中で、粉砕されなければならない。
【0040】
しかしまた、モノマー水溶液を滴下し、かつ発生した液滴を加熱されたキャリヤーガス流中で重合させることも可能である。この場合に、重合及び乾燥の処理工程は、国際公開(WO-A2)第2008/040715号及び国際公開(WO-A1)第2008/052971号に記載されたように、統合されることができる。
【0041】
ついで、ポリマーゲルは、残留水分量が好ましくは0.5〜15質量%、特に好ましくは1〜10質量%、極めて特に好ましくは2〜8質量%になるまで好ましくはバンド乾燥器を用いて乾燥され、ここで、残留水分量は、EDANA(European Disposables and Nonwovens Association)により推奨された試験法No. WSP 230.2-05"Moisture Content"に従って測定される。高すぎる残留水分の場合に、乾燥されたポリマーゲルは、低すぎるガラス転移温度Tgを有し、さらに加工するのが困難であるに他ならない。低すぎる残留水分の場合に、乾燥されたポリマーゲルは脆すぎ、かつその後の粉砕工程において、小さすぎる粒度を有する望ましくない大量のポリマー粒子("微粉(fines)")が生じる。前記ゲルの固体含量は、乾燥前に、好ましくは25〜90質量%、特に好ましくは35〜70質量%、極めて特に好ましくは40〜60質量%である。しかし、選択的に、乾燥のために、流動床乾燥器又はパドル乾燥器が使用されることもできる。
【0042】
乾燥されたポリマーゲルは、この後に、粉砕され、かつ分級され、その際に粉砕のために、通常、一段式又は多段式のロールミル、好ましくは二段式又は三段式のロールミル、ピンミル、ハンマーミル又は振動ミルが使用されることができる。
【0043】
生成物の画分として分離されたポリマー粒子の平均粒度は、好ましくは少なくとも200μm、特に好ましくは250〜600μm、極めて特に300〜500μmである。生成物の画分の平均粒度は、EDANA(European Disposables and Nonwovens Association)により推奨された試験法No. WSP 220.2-05 "Partikel Size Distribution"を用いて算出されることができ、その際にふるい画分の質量割合は、累積してプロットされ、かつ平均粒度はグラフにより決定される。平均粒度は、この場合に、累積50質量%について得られる目開きの値である。
【0044】
少なくとも150μmの粒度を有する粒子の割合は、好ましくは少なくとも90質量%、特に好ましくは少なくとも95質量%、極めて特に好ましくは少なくとも98質量%である。
【0045】
小さすぎる粒度を有するポリマー粒子は、透過性(SFC)を低下させる。故に、小さすぎるポリマー粒子("微粉(fines)")の割合は低いべきである。
【0046】
故に、小さすぎるポリマー粒子は通常、分離され、かつプロセスへ返送される。これは、好ましくは重合前、重合中又は重合直後に、すなわちポリマーゲルの乾燥の前に行われる。小さすぎるポリマー粒子は、返送前又は返送中に水及び/又は水性界面活性剤で湿らされることができる。
【0047】
後の処理工程において、小さすぎるポリマー粒子を、例えば表面後架橋又は他のコーティング工程の後に、分離することも可能である。この場合に、返送された小さすぎるポリマー粒子は、表面後架橋されているか、もしくはさもなければ、例えば熱分解シリカで、コーティングされている。
【0048】
重合するために混練反応器が使用される場合には、小さすぎるポリマー粒子は好ましくは重合の最後の3分の1の間に添加される。
小さすぎるポリマー粒子が極めて早く、例えば既にモノマー溶液に、添加される場合には、それにより、得られた吸水性ポリマー粒子の遠心機保持容量(CRC)は低下する。しかしこれは、例えば架橋剤b)の使用量を適合させることにより、補償されることができる。
【0049】
小さすぎるポリマー粒子が極めて遅く、例えば重合反応器の後方にある装置、例えば押出機中で初めて、添加される場合には、小さすぎるポリマー粒子は得られたポリマーゲル中へもはや困難を伴ってしか配合されることができない。不十分に配合された小さすぎるポリマー粒子は、しかし粉砕中に乾燥されたポリマーゲルから再びはがれ、故に分級する際に改めて分離され、かつ返送すべき小さすぎるポリマー粒子の量を高める。
【0050】
最大でも850μmの粒度を有する粒子の割合は、好ましくは少なくとも90質量%、特に好ましくは少なくとも95質量%、極めて特に好ましくは少なくとも98質量%である。
【0051】
最大でも600μmの粒度を有する粒子の割合は、好ましくは少なくとも90質量%、特に好ましくは少なくとも95質量%、極めて特に好ましくは少なくとも98質量%である。
【0052】
大きすぎる粒度を有するポリマー粒子は、膨潤速度を低下させる。故に大きすぎるポリマー粒子の割合は同様に低いべきである。
【0053】
故に、大きすぎるポリマー粒子は通常、分離され、かつ乾燥されたポリマーゲルの粉砕へ返送される。
【0054】
前記ポリマー粒子は、それらの性質をさらに改善するために表面後架橋されることができる。適した表面後架橋剤は、前記ポリマー粒子の少なくとも2個のカルボン酸基と共有結合を形成することができる基を有する化合物である。適した化合物は、例えば、欧州特許出願公開(EP-A2)第0 083 022号明細書、欧州特許出願公開(EP-A1)第0 543 303号明細書及び欧州特許出願公開(EP-A2)第0 937 736号明細書に記載されたような多官能性アミン、多官能性アミドアミン、多官能性エポキシド、独国特許出願公開(DE-A1)第33 14 019号明細書、独国特許出願公開(DE-A1)第35 23 617号明細書及び欧州特許出願公開(EP-A2)第0 450 922号明細書に記載されたような二官能性又は多官能性のアルコール、又は独国特許出願公開(DE-A1)第102 04 938号明細書及び米国特許(US)第6,239,230号明細書に記載されたようなβ−ヒドロキシアルキルアミドである。
【0055】
さらに、独国特許(DE-C1)第40 20 780号明細書には環式カーボネートが、独国特許出願公開(DE-A1)第198 07 502号明細書には2−オキサゾリドン及びその誘導体、例えば2−ヒドロキシエチル−2−オキサゾリドンが、独国特許(DE-C1)第198 07 992号明細書にはビス−2−オキサゾリジノン及びポリ−2−オキサゾリジノンが、独国特許出願公開(DE-A1)第198 54 573号明細書には2−オキソテトラヒドロ−1,3−オキサジン及びその誘導体が、独国特許出願公開(DE-A1)第198 54 574号明細書にはN−アシル−2−オキサゾリドンが、独国特許出願公開(DE-A1)第102 04 937号明細書には環式尿素が、独国特許出願公開(DE-A1)第103 34 584号明細書には二環式アミドアセタールが、欧州特許出願公開(EP-A2)第1 199 327号明細書にはオキセタン及び環式尿素が、及び国際公開(WO-A1)第2003/031482号にはモルホリン−2,3−ジオン及びその誘導体が、適した表面後架橋剤として記載されている。
【0056】
好ましい表面後架橋剤は、エチレンカーボネート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリアミドとエピクロロヒドリンとの反応生成物及びプロピレングリコールと1,4−ブタンジオールとの混合物である。
【0057】
極めて特に好ましい表面後架橋剤は、2−ヒドロキシエチルオキサゾリジン−2−オン、オキサゾリジン−2−オン及び1,3−プロパンジオールである。
【0058】
さらに、独国特許出願公開(DE-A1)第37 13 601号明細書に記載されたような、重合可能な付加的なエチレン系不飽和基を有する表面後架橋剤も使用されることができる。
【0059】
表面後架橋剤の量は、それぞれポリマー粒子を基準として、好ましくは0.001〜2質量%、特に好ましくは0.02〜1質量%、極めて特に好ましくは0.05〜0.2質量%である。
【0060】
表面後架橋前、表面後架橋中又は表面後架橋後に、表面後架橋剤に加えて、多価カチオンが前記粒子表面へ施与されることができる。
【0061】
使用可能な多価カチオンは、例えば、2価カチオン、例えば亜鉛、マグネシウム、カルシウム及びストロンチウムのカチオン、3価カチオン、例えばアルミニウムのカチオン、4価カチオン、例えばチタン及びジルコニウムのカチオンである。対イオンとして、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオン及びカルボン酸イオン、例えば酢酸イオン及び乳酸イオンが可能である。硫酸アルミニウム及び乳酸アルミニウムが好ましい。金属塩以外に、ポリアミンも多価カチオンとして使用されることができる。
【0062】
多価カチオンの使用量は、それぞれポリマー粒子を基準として、例えば0.001〜1.5質量%、好ましくは0.005〜1質量%、特に好ましくは0.02〜0.8質量%である。
【0063】
表面後架橋は通常、表面後架橋剤の溶液が、乾燥されたポリマー粒子へ噴霧されるようにして実施される。噴霧に引き続き、表面後架橋剤でコーティングされたポリマー粒子は、加熱乾燥され、その際に表面後架橋反応は、乾燥前並びに乾燥中に行われることができる。
表面後架橋剤の溶液の噴霧は、好ましくは、可動式混合器具を備えたミキサー、例えばスクリューミキサー、ディスクミキサー及びブレードミキサー中で、実施されることができる。水平ミキサー、例えばブレードミキサーが特に好ましく、垂直ミキサーが極めて特に好ましい。水平ミキサー及び垂直ミキサーの区別は、混合シャフトの据え付けにより行われ、すなわち水平ミキサーは水平に据え付けられた混合シャフトを有し、かつ垂直ミキサーは垂直に据え付けられた混合シャフトを有する。適したミキサーは、例えば、Horizontale Pflugschar(登録商標) Mischer(Gebr. Loedige Maschinenbau GmbH; Paderborn; DE)、Vrieco-Nauta Continuous Mixer(Hosokawa Micron BV; Doetinchem; NL)、Processall Mixmill Mixer(Processall Incorporated; Cincinnati; US)及びSchugi Flexomix(登録商標)(Hosokawa Micron BV; Doetinchem; NL)である。しかし、表面後架橋剤溶液を流動床中で噴霧することも可能である。
【0064】
表面後架橋剤は、典型的には水溶液として使用される。非水溶剤の含量もしくは全溶剤量を通じて、前記ポリマー粒子への表面後架橋剤の浸透深さが調節されることができる。
【0065】
専ら水が溶剤として使用される場合には、有利には界面活性剤が添加される。それにより、濡れ挙動は改善され、かつ粘着傾向(Verklumpungsneigung)は減少される。しかし好ましくは、溶剤混合物、例えばイソプロパノール/水、1,3−プロパンジオール/水及びプロピレングリコール/水が使用され、その際に混合質量比は好ましくは20:80〜40:60である。
【0066】
加熱乾燥は、好ましくは接触乾燥器、特に好ましくはパドル乾燥器、極めて特に好ましくはディスク乾燥器中で、実施される。適した乾燥器は、例えばHosokawa Bepex(登録商標) Horizontal Paddle Dryer(Hosokawa Micron GmbH; Leingarten; DE)、Hosokawa Bepex(登録商標) Disc Dryer(Hosokawa Micron GmbH; Leingarten; DE)及びNara Paddle Dryer(NARA Machinery Europe; Frechen; DE)である。さらに、流動層乾燥器も使用されることができる。
【0067】
前記乾燥は、ミキサー自体中で、そのジャケットの加熱又は温風の吹き込みにより、行われることができる。後方にある乾燥器、例えば箱形乾燥器、回転管炉又は加熱可能なスクリューが同じように適している。特に有利には、流動層乾燥器中で混合及び乾燥される。
【0068】
好ましい乾燥温度は、100〜250℃、好ましくは120〜220℃、特に好ましくは130〜210℃及び極めて特に好ましくは150〜200℃の範囲内である。反応ミキサー又は乾燥器中のこの温度での好ましい滞留時間は、好ましくは少なくとも10分、特に好ましくは少なくとも20分、極めて特に好ましくは少なくとも30分、及び通常、最高でも60分である。
【0069】
引き続き、表面後架橋されたポリマー粒子は、改めて分級されることができ、その際に小さすぎる及び/又は大きすぎるポリマー粒子は分離され、かつプロセスへ返送される。
【0070】
表面後架橋されたポリマー粒子は、それらの性質をさらに改善するためにコーティングされることができるか、又は後給湿されることができる。
【0071】
後給湿は、好ましくは30〜80℃、特に好ましくは35〜70℃、極めて特に好ましくは40〜60℃で実施される。低すぎる温度では、吸水性ポリマー粒子が粘着する傾向があり、かつより高い温度では水が既に目立って蒸発する。後給湿に使用される水量は、好ましくは1〜10質量%、特に好ましくは2〜8質量%、極めて特に好ましくは3〜5質量%である。後給湿により、ポリマー粒子の機械的安定性が高められ、かつそれらの帯電する傾向が減少される。
【0072】
膨潤速度並びに透過性(SFC)の改善に適したコーティングは、例えば無機不活性物質、例えば水に不溶の金属塩、有機ポリマー、カチオン性ポリマー並びに二価又は多価の金属カチオンである。粉塵結合に適したコーティングは、例えばポリオールである。前記ポリマー粒子の望ましくないケーキング傾向(Verpackungsneigung)に対して適したコーティングは、例えば熱分解シリカ、例えばAerosil(登録商標) 200、及び界面活性剤、例えばSpan(登録商標) 20である。
【0073】
吸水性ポリマー粒子は、好ましくは1〜15質量%、特に好ましくは2〜10質量%、極めて特に好ましくは3〜5質量%の含水量を有し、その際に含水量は、EDANA(European Disposables and Nonwovens Association)により推奨された試験法No. WSP 230.2-05"Moisture content"に従って測定される。
【0074】
吸水性ポリマー粒子は、典型的には少なくとも15g/g、好ましくは少なくとも20g/g、より好ましくは少なくとも22g/g、特に好ましくは少なくとも24g/g、極めて特に好ましくは少なくとも26g/gの遠心機保持容量(CRC)を有する。吸水性ポリマー粒子の遠心機保持容量(CRC)は、通常60g/g未満である。遠心機保持容量(CRC)は、EDANA(European Disposables and Nonwovens Association)により推奨された試験法No. WSP 241.2-05"Centrifuge Retention Capacity"に従って測定される。
【0075】
吸水性ポリマー粒子は、典型的には少なくとも15g/g、好ましくは少なくとも20g/g、より好ましくは少なくとも22g/g、特に好ましくは少なくとも24g/g、極めて特に好ましくは少なくとも26g/gの49.2g/cm2の圧力下の吸収を有する。吸水性ポリマー粒子の49.2g/cm2の圧力下の吸収は、通常35g/g未満である。49.2g/cm2の圧力下の吸収は、EDANA(European Disposables and Nonwovens Association)により推奨された試験法No. WSP 242.2-05"Absorption under Pressure"に類似して測定され、その際に21.0g/cm2の圧力の代わりに49.2g/cm2の圧力に調節される。
【0076】
実施例
吸水性ポリマー粒子を製造するための設備中で、循環空気バンド乾燥器中で使用される空気を、加熱蒸気を用いて加熱した。その際に生じる加熱蒸気凝縮物の酸素含量を測定し、酸素含量は0.1ppm未満であった、すなわち加熱蒸気凝縮物は、検出可能な量の溶存酸素を含有していなかった。
【0077】
比較のために、設備中で利用可能な脱塩水の酸素含量を測定した。脱塩水は溶存酸素8ppmを含有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)酸基を有する少なくとも1種のエチレン系不飽和モノマー、
b)任意に、中和剤、
c)水及び
d)少なくとも1種の架橋剤
の混合によりモノマー水溶液又は水性モノマー懸濁液を調製し、前記モノマー溶液を不活性化し、不活性化されたモノマー溶液を重合させ、任意に、得られたポリマーゲルを後中和し、乾燥させ、粉砕し、かつ分級することを含む、吸水性ポリマー粒子の製造方法であって、
水c)が少なくとも部分的に加熱蒸気凝縮物であることを特徴とする、吸水性ポリマー粒子の製造方法。
【請求項2】
水c)の少なくとも50質量%が加熱蒸気凝縮物である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
加熱蒸気凝縮物が1ppm未満の溶存酸素を含有する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
モノマー水溶液又は水性モノマー懸濁液の酸素含量を、不活性化により1ppm未満に低下させる、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
モノマーa)の少なくとも50mol%が部分的に中和されたアクリル酸である、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
モノマーa)の25〜85mol%が中和されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
吸水性ポリマー粒子が少なくとも15g/gの遠心機保持容量を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の組成物。

【公表番号】特表2013−507465(P2013−507465A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532560(P2012−532560)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064776
【国際公開番号】WO2011/042404
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】