説明

吸水性不織布状シート及びその製造方法

【課題】液体吸収材などとしても有用な吸水性に優れる不織布状シートを提供する。
【解決手段】本発明の不織布状シートは、吸水倍率が25〜1500g/gである水溶性繊維(カルボキシメチルセルロース繊維などセルロース系繊維など)を乾式法(エアレイド製法など)で抄紙することにより得られる。不織布状シートは、水溶性繊維の前記吸水倍率をA、及び前記不織布状シートの吸水倍率をBとするとき、前記吸水倍率の比B/Aで表される吸水保持率が0.7〜1.1であってもよい。また、前記シートは、引張強度が3N/25mm以上であってもよい。前記シートにおいて、前記水溶性繊維は、自己接着、もしくは水溶性架橋剤及び/又は水溶性バインダーから選択された少なくとも一種により互いに接着していてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた吸水性を有し、衛生用品、水解紙、包装材料などに有用な不織布状シート及びその製造方法、並びに不織布状シートを用いた液体吸収材に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性繊維や水不溶性繊維を用いたシートのうち、水解紙は、従来から、実用品として種々の用途に用いられている。一方、水溶性繊維を用いたシートでも、水解紙とは異なり目付が小さなシートは、液体吸収材として有効であるが、湿式抄紙法では、抄紙工程で多量の水を用いて繊維をスラリー状にする必要があるため、繊維が溶解又は膨潤して、抄紙構造を有するシートを効率よく製造することが困難である。特に、液体(特に水)に対して高い吸収性を有するシートは、このような方法では、製造するのが非常に困難である。
【0003】
特開平11−152696号公報(特許文献1)には、針葉樹パルプからなる繊維、及び針葉樹パルプより平均繊維長の短い広葉樹パルプからなる繊維を水不溶性カルボキシメチルセルロースのバインダーで結着させた水溶性シートが開示されている。この文献では、繊維同士が強く水素結合した針葉樹パルプに、繊維長が短く、結合力の弱い広葉樹パルプを添加することにより、シート全体としての水分散性を向上させている。しかし、このようなシートでは、水に対する分散性はある程度改善されるものの、パルプ繊維自体の吸水性が低いため、シートの吸水性を改善するのは困難である。
【0004】
また、湿式抄紙法により、水不溶性シートを形成した後、水溶化処理することにより、水溶性のシートを製造する方法も検討されている。例えば、特開平10−280291号公報(特許文献2)には、特定の平均繊維長及びカルボキシメチル置換度を有する水不溶性繊維状カルボキシメチルセルロースと、水に対して難溶又は不溶であり、アルカリ溶液に対して溶解する無機粉体とを混合した原料を湿式抄紙法によりシートとし、その後アルカリ溶液で処理する水溶性シートの製造方法が開示されている。しかし、水溶性にするためにアルカリ溶液処理が必要となり、アルカリ溶液処理のための防爆設備が必要となるとともに、アルカリ溶液中の水の割合が多くなると、アルカリ溶液処理の段階で、繊維が溶解する虞がある。また、このような方法では、湿式抄紙後の乾燥工程で、繊維同士が密着して、表面積が小さくなるため、液体吸収材には不向きである。さらに、使用可能な繊維の種類も、湿式抄紙工程では、水不溶性であり、アルカリ処理により水溶性に変化する繊維に限られ、選択範囲が狭い。
【特許文献1】特開平11−152696号公報(請求項1及び段落番号[0009])
【特許文献2】特開平10−280291号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、吸水性に優れるとともに、実用上十分な強度を有する不織布状シート、及びこの不織布状シートを製造する方法を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、簡便な方法により、高い吸水性を有する不織布状シートを製造する方法を提供することにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、吸水性が高く、液体吸収材として有用な不織布状シート、及びこの不織布状シートで形成された液体吸収材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、水溶性繊維を乾式抄紙法により抄紙すると、水溶性繊維の吸水性を保持しつつ、高い吸水性を有する不織布状シートが得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の不織布状シートは、吸水倍率が25〜1500g/gである水溶性繊維で形成された吸水性不織布状シートであって、水溶性繊維の前記吸水倍率をA、及び前記不織布状シートの吸水倍率をBとするとき、前記吸水倍率の比B/Aで表される吸水保持率が0.7〜1.1である。また、前記不織布状シートは、引張強度が3N/25mm以上であってもよい。このような不織布状シートは、前記水溶性繊維を乾式法(エアレイド製法など)で抄紙することにより得られるシートであってもよい。前記不織布状シートにおいて、前記水溶性繊維は、自己接着、又は水溶性架橋剤及び水溶性バインダーから選択された少なくとも一種により互いに接着していてもよい。前記水溶性繊維としては、セルロース系繊維(カルボキシメチルセルロース繊維など)が挙げられる。
【0010】
本発明の方法では、吸水倍率が25〜1500g/gである水溶性繊維を乾式法により抄紙し、不織布状シートを製造する。また、本発明には、吸水倍率が25〜1500g/gである水溶性繊維を乾式法により抄紙し、水溶性繊維の前記吸水倍率をA、及び抄紙により得られる不織布状シートの吸水倍率をBとするとき、前記吸水倍率の比B/Aで表される吸水保持率が0.7〜1.1である不織布状シートを製造する方法も含まれる。また、引張強度が3N/25mm以上である不織布状シートを製造する前記製造方法も含まれる。
【0011】
このような製造方法では、水溶性繊維をエアレイド製法で抄紙してもよく、抄紙工程又は抄紙後に、水溶性繊維に少なくとも水を適用し、乾燥させてもよい。前記水溶性繊維への水の適用は、水、又は水溶性架橋剤及び水溶性バインダーから選択された少なくとも一種の水溶液を噴霧することにより行ってもよい。前記水溶性繊維1重量部に対して、適用する水の割合は0.01〜10重量部程度であってもよい。
【0012】
本発明には、さらに、前記不織布状シートで形成された液体吸収材も含まれる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、原料繊維(水溶性繊維)の吸水倍率と、この繊維から形成される不織布状シートの吸収倍率とが特定の関係を有するように(すなわち、原料繊維の高い吸水倍率がシート成形後にも保持されるように)不織布シートを形成するので、シートの吸水性に優れるとともに、シートに実用上十分な強度を付与できる。また、簡便な方法、すなわち、前記水溶性繊維を、乾式抄紙法により抄紙することにより、高い吸水性を有する不織布状シートを製造できる。さらに、このような不織布状シートは、吸水性が高く、液体吸収材を形成するのに有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[不織布状シート]
本発明の不織布状シートは、水溶性繊維で形成されている。前記水溶性繊維としては、植物等から抽出される水溶性繊維(アルギン酸ナトリウム繊維などのアルギン酸系繊維など)などであってもよいが、通常、水溶性樹脂[ビニルアルコール系重合体(例えば、ポリビニルアルコールなど)、カルボキシビニルポリマー、水溶性アクリル系樹脂、水溶性スチレン系樹脂、ビニルピロリドン系樹脂(ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体など)などの水溶性合成樹脂;セルロース誘導体など]から得られる繊維(例えば、水溶性樹脂の紡糸などにより得られる繊維)を利用する場合が多い。水溶性繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、水溶性繊維は、酸(例えば、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸、酢酸などの有機酸など)により処理(又は酸型化)されていてもよい。
【0015】
これらの水溶性繊維のうち、セルロース系繊維が好ましい。セルロース系繊維としては、セルロースエーテル系繊維、例えば、ヒドロキシアルキルセルロース繊維(例えば、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)繊維、ヒドロキシプロピルセルロース繊維などの他、エチルヒドロキシエチルセルロース繊維、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)繊維などのアルキル−ヒドロキシアルキルセルロース繊維も含む)、カルボキシアルキルセルロース繊維(カルボキシメチルセルロース(CMC)繊維、カルボキシエチルセルロース繊維、メチルカルボキシメチルセルロース繊維などのアルキル−カルボキシアルキルセルロース繊維などの他、ヒドロキシエチルカルボキシメチルセルロース繊維などのヒドロキシアルキル−カルボキシルアルキルセルロース繊維なども含む)、アルキルセルロース繊維(メチルセルロース繊維、エチルセルロース繊維、イソプロピルセルロース繊維、ブチルセルロース繊維など)などが挙げられる。セルロース繊維を構成するセルロース誘導体は、塩の形態を有していてもよい。このようなセルロース誘導体の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、第四級アンモニウム塩、又はこれらの複塩などが挙げられ、これらの塩の繊維も前記水溶性繊維に包含される。これらのセルロース系繊維は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのセルロース系繊維のうち、CMC系繊維、例えば、CMC繊維、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのCMC塩(アルカリ金属塩など)の繊維(特に、カルボキシメチルセルロースナトリウム繊維)などが好ましい。
【0016】
前記セルロース系繊維(CMC系繊維など)を構成するセルロース誘導体の平均重合度(粘度平均重合度)は、例えば、10〜2,000、好ましくは50〜1,000、さらに好ましくは200〜800程度であってもよい。
【0017】
前記セルロースエーテル(カルボキシメチルセルロースなど)の平均置換度(又は平均エーテル化度(カルボキシメチル基などの平均置換度))は、例えば、0.05以上(例えば、0.1〜2.5)、好ましくは0.2〜2.5、好ましくは0.3〜2、さらに好ましくは0.4〜1.5程度である。
【0018】
なお、前記水溶性繊維としては、市販品を用いてもよく、慣用の方法(紡糸など)により得られる繊維を用いてもよい。また、水に対して不溶性又は難溶性の繊維を、水溶化することにより前記水溶性繊維を得てもよい。例えば、セルロース系繊維(セルロースエーテル系繊維)は、例えば、繊維状のセルロース(木材パルプ、リンターパルプなど)を、慣用の方法によりエーテル化し(例えば、アルカリと反応させて繊維状のアルカリセルロースを生成させ(アルカリセルロース化工程)、エーテル化剤と反応させ(エーテル化工程))、必要により塩に変換する方法などにより製造してもよい。
【0019】
なお、前記アルカリセルロース化工程には、例えば、スラリー法(高液倍率法)やニーダー法(低液倍率法)などの慣用の方法が利用できる。アルカリセルロース化工程において使用されるアルカリとしては、リチウム、カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニアなどが挙げられる。これらのアルカリのうち、アルカリ金属水酸化物(特に水酸化ナトリウム)を用いる場合が多い。なお、アルカリは、通常、水溶液の形態で使用される。なお、アルカリの使用量は、セルロース100重量部に対して、例えば、10〜90重量部、好ましくは30〜80重量部、さらに好ましくは40〜70重量部程度であってもよい。
【0020】
また、前記エーテル化工程で使用されるエーテル化剤としては、セルロースエーテルの種類に応じて、アルキルハライド(メチルクロライド、エチルクロライドなどのアルキルクロライドなど)、アラルキルハライド(トリチルクロライドなどのアラルキルクロライドなど)、ハロカルボン酸(モノクロロ酢酸、モノクロロプロピオン酸など)、アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなど)、金属硫酸塩(硫酸ナトリウムなどのアルカリ金属硫酸塩、硫酸カルシウムなどのアルカリ土類金属硫酸塩など)などが挙げられる。
【0021】
水溶性繊維の平均繊維径は、例えば、0.01〜100μm、好ましくは0.1〜50μm、さらに好ましくは0.5〜30μm程度であってもよい。また、平均繊維長は、例えば、0.05〜50mm、好ましくは0.1〜20mm、さらに好ましくは0.5〜10mm程度であってもよい。
【0022】
前記水溶性繊維の吸水倍率(吸水倍率A)は、25〜1500g/g、好ましくは40〜1000g/g、さらに好ましくは50〜500g/g程度である。なお、前記吸水倍率は、水溶性繊維2gを網状袋(♯250のポリアミドメッシュ袋など)に入れ、25℃の水(イオン交換水など)2Lに24時間浸漬させて、浸漬後の重量(g)を、浸漬前の重量(乾燥重量)(g)で除することにより算出する。
【0023】
網状袋の素材は、繊維の吸水倍率測定を阻害しない限り特に制限されず、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンなどの合成樹脂;ステンレス(クロム鋼(SUS)など)などの金属などから選択できる。これらの素材のうち、通常、ポリアミドなどの合成樹脂を用いる場合が多い。また、メッシュの大きさは、内容物(繊維、シートなど)が抜け落ちず、水の吸収が阻害されない程度の目開きであれば特に限定されず、例えば、100〜500メッシュ、好ましくは200〜400メッシュ程度であってもよい。
【0024】
不織布状シートは、前記水溶性繊維で形成されていればよく、前記水溶性繊維を乾式法により抄紙することにより得ることができる。乾式抄紙法により水溶性繊維を抄紙すると、水溶性繊維の高い吸水倍率をシート形成後も保持(又はさらに改善)することができ、液体(水分を含む液体など)吸収能に優れる不織布状シートが得られる。
【0025】
不織布状シートについて、水溶性繊維の吸水倍率(吸水倍率A)に対する不織布状シートの吸水倍率(吸水倍率B)の比(B/A)で表される吸水保持率は、例えば、0.7〜1.1、好ましくは0.75〜1.05、さらに好ましくは0.8〜1.0程度であってもよい。なお、不織布状シートの吸水倍率は、前記水溶性繊維の吸水倍率の測定と同様の方法により測定できる。
【0026】
不織布状シートは、ウェブ状であってもよく、少なくとも一部の水溶性繊維同士が互いに接着していてもよい。水溶性繊維は、自己接着により互いに接着していてもよく、水溶性架橋剤及び/又は水溶性バインダーなどにより互いに接着していてもよい。
【0027】
前記水溶性架橋剤としては、水に溶解して多価金属イオンを生成可能な多価金属化合物(例えば、2〜4価金属化合物、好ましくは2〜3価金属化合物など)が挙げられる。このような金属化合物を構成する多価金属としては、例えば、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム,バリウムなど)、遷移金属(クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅など)、周期表第12族金属(亜鉛など)、周期表第13族金属(アルミニウムなど)などが挙げられる。前記金属化合物は、これらの多価金属を一種又は二種以上組み合わせて含有してもよい。
【0028】
前記金属化合物としては、例えば、金属ハロゲン化物[例えば、アルカリ土類金属塩化物(塩化カルシウム、塩化マグネシウムなど)などの塩化物など]、金属塩(例えば、無機酸及び/又は有機酸と前記多価金属との塩など)を用いる場合が多い。なお、前記金属塩は、複塩、例えば、同種又は異種の複数の多価金属を含む複塩であってもよく、多価金属と一価金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属など)とを含む複塩などであってもよい。
【0029】
前記金属塩としては、過ハロゲン酸塩(過塩素酸マグネシウム、過塩素酸カルシウムなどの過塩素酸塩など)、硫酸塩[硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ミョウバン(α−ミョウバン、β−ミョウバン、γ−ミョウバンなど)など]、硝酸塩(硝酸マグネシウム、硝酸カルシウムなど)、リン酸塩(リン酸マグネシウム、リン酸カルシウムなど)などの無機酸塩;カルボン酸塩(酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウムなど)などの有機酸塩などが挙げられる。
【0030】
これらの金属化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。金属化合物のうち、無機酸塩、特にミョウバンなどの硫酸塩が好ましい。
【0031】
ミョウバンとしては、アルミニウム含有ミョウバン(カリウムミョウバン(カリミョウバン)、セシウムミョウバン、ナトリウムミョウバンなどのアルミニウムとアルカリ金属とを含有するミョウバン;アンモニウムミョウバンなど)、アンモニウムクロムミョウバン、鉄アンモニウムミョウバン(鉄ミョウバン)などが挙げられる。これらのミョウバンのうち、アルミニウム含有ミョウバン、特にカリミョウバンなどのアルミニウムとアルカリ金属とを含有するミョウバンを用いる場合が多い。
【0032】
前記水溶性バインダーとしては、前記水溶性繊維の項で例示の水溶性樹脂も含めて種々の水溶性高分子が使用できる。このような水溶性バインダーとしては、例えば、前記例示のセルロース誘導体(CMCなどの前記例示のセルロースエーテルなど)、ビニルアルコール系樹脂(完全鹸化ポリビニルアルコール、部分鹸化ポリビニルアルコール、部分アセタール化ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ビニルアルコール−エチレンスルホン酸共重合体、ビニルアルコール−マレイン酸共重合体など)、前記例示のビニルピロリドン系樹脂(ポリビニルピロリドンなど)、ビニルエーテル系樹脂(ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ビニルアルキルエーテル−マレイン酸共重合体などのビニルアルキルエーテルの単独又は共重合体など)、ビニル系水溶性高分子(ポリ(メタ)アクリル酸又はその塩などの水溶性アクリル系樹脂;酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸共重合体などのビニルエステル(酢酸ビニルなど)と酸基含有ビニルモノマーとの共重合体;スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体などの芳香族ビニルモノマーと酸基含有ビニルモノマーとの共重合体など)、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体など)、アクリルアミド系樹脂(ポリアクリルアミドなど)、水溶性ポリアミド(ポリオキシエチレンユニットなどのポリオキシC2−3アルキレンユニットを有するポリエーテル型ポリアミドなど)など]が挙げられる。これらの水溶性バインダーは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。水溶性バインダーのうち、セルロースエーテルなどのセルロース誘導体、特に、CMCなどのカルボキシアルキルセルロースなどが好ましい。
【0033】
架橋剤及びバインダーの割合は、架橋剤及びバインダーの総量として、水溶性繊維100重量部に対して、例えば、0.01〜50重量部、好ましくは0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜10重量部程度であってもよい。
【0034】
前記不織布状シートの厚みは、特に制限されず、例えば、0.4〜20mm、好ましくは0.5〜10mm、さらに好ましくは0.6〜5mm程度であってもよい。また、不織布状シートの目付けは10〜300g/m、好ましくは20〜200g/m、さらに好ましくは30〜150g/m程度であってもよい。
【0035】
前記不織布状シートは、必要により、慣用の添加剤、例えば、脱臭剤、抗菌剤、着色剤、界面活性剤、帯電防止剤、芳香剤などを含有してもよい。
【0036】
乾式抄紙法としては、慣用の方法、例えば、カード製法、エアレイド製法などが利用できる。これらの製法のうち、通常、水溶性繊維を空気流により集めて抄紙するエアレイド製法を用いる場合が多い。なお、乾式抄紙法において、前記水溶性繊維は、必要により解繊して用いてもよい。
【0037】
ウェブ状のシートは、水溶性繊維を単に乾式抄紙することにより得ることができる。また、不織布状シートの製造において、適当な段階で、必要により水溶性繊維(又は不織布状シート(例えば、ウェブ状シート))に少なくとも水を適用してもよい。このように水溶性繊維(又は不織布状シート)に水を適用すると、水溶性繊維の一部が溶解し、互いに自己接着することによりシートの強度を改善できる。
【0038】
水の適用は、抄紙工程及び抄紙後のいずれの段階で行ってもよい。例えば、乾式抄紙法において、水溶性繊維に水を適用しつつ回収してシートを形成してもよく、乾式抄紙法によりウェブ状シートを製造した後、得られたシートに水を適用してもよい。なお、水溶性繊維(又は不織布状シート)に水を適用した後、乾燥処理(自然乾燥、減圧乾燥、熱風乾燥などの慣用の乾燥処理)を行ってもよい。
【0039】
水の適用方法は、水溶性繊維が少なくとも水に接触すればよく、水蒸気に対して接触させる方法、液状の水を噴霧(スプレーなど)する方法などが挙げられる。これらの方法のうち、水蒸気に接触させる方法、水を噴霧する方法などが好ましい。
【0040】
水溶性繊維(又は不織布状シート)には、前記例示の水溶性架橋剤及び/又は前記例示の水溶性バインダーを適用してもよい。水溶性架橋剤及び/又は水溶性バインダーは、粉末状などの形態で水溶性繊維(又は不織布状シート)に適用してもよいが、通常、水溶液の形態で適用できる。
【0041】
水溶性架橋剤及び/又は水溶性バインダーの水溶液を水溶性繊維(又は不織布状シート)に適用すると、水による自己接着に加えて、架橋剤及び/又はバインダーにより水溶性繊維を互いに接着させることができ、不織布状シートの強度をさらに改善することができる。
【0042】
適用される水(架橋剤及び/又はバインダーの水溶液中の水も含む)の割合は、不織布状シートの吸水性を阻害しない範囲で適宜選択でき、水溶性繊維1重量部に対して、例えば、0.01〜10重量部程度の範囲から選択でき、好ましくは0.02〜5重量部、さらに好ましくは0.03〜1重量部程度である。なお、水のみを適用する場合、水の割合は、水溶性繊維1重量部に対して、例えば、0.04〜7重量部、好ましくは0.05〜4重量部、さらに好ましくは0.08〜3重量部(例えば、0.1〜2.5重量部)程度であってもよい。また、架橋剤及び/又はバインダー水溶液を適用する場合、水の割合は、水溶性繊維1重量部に対して、例えば、0.01〜4重量部、好ましくは0.03〜2.5重量部、さらに好ましくは0.04〜1.5重量部程度であってもよい。
【0043】
水又は前記水溶液には、不織布状シートの用途などに応じて、必要により、水溶性有機溶媒、例えば、エタノール、イソプロパノール(IPA)、エチレングリコール、グリセリンなどの一価又は多価の脂肪族C1−4アルコール;アセトンなどの脂肪族ケトン;アセトニトリルなどの脂肪族ニトリル;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類などを含有させてもよい。
【0044】
不織布状シートの引張強度は、例えば、1〜25N/25mm、好ましくは1.5N/25mm〜20N/25mm程度であってもよい。なお、液体吸収材などの用途では、引張強度は、例えば、3N/25mm以上(例えば3〜20N/25mm程度)、好ましくは3.5〜15N/25mm、さらに好ましくは4〜10N/25mm程度であってもよい。
【0045】
このような不織布状シートは、吸水性に優れており、液体(水分を含む液体など)の吸収性が要求される用途、例えば、液体吸収材、例えば、おむつ(紙おむつ、おむつライナーなど)、生理用品(ナプキン、タンポンなど)、ティッシュ類(ティッシュ、トイレットペーパー、キッチンペーパーなど)、汗取りパット、母乳パットなどの他、液体を保持させる用途、例えば、ウェットティッシュ類(ウェットティッシュ、各種拭き取り用シート(掃除用ペーパークリーナー、メイク落とし用シートなど)などに利用できる。また、不織布状シートは、水溶性(又は水分散性)も高いため、例えば、水解紙用途[トイレットペーパー、たばこフィルター、包装材料(包装紙、包装袋、緩衝材など)など]、医療用品(創傷被覆材など)などにも利用できる。なお、前記包装材料には、例えば、薬剤、入浴剤、洗剤(洗濯用洗剤などの固形洗剤など)などを分包するための包装材(包装紙、包装袋など)なども含まれる。水溶性が要求される用途には、特に、ウェブ状シート、自己接着したシート、水溶性バインダーで繊維同士が接着したシートなどが適している。
【0046】
本発明には、液体吸収材(前記例示の液体吸収材など)も含まれる。液体吸収材では、用途に応じて、前記不織布状シートを、一枚のシートとして使用してもよく、複数のシートを積層した積層体(シート状積層体の他、シートをロール状に巻いた積層体など)として使用してもよい。また、不織布状シート(積層体も含む)は、他のシート(紙、不織布、織布、樹脂シート、樹脂ネットなど)と組み合わせて用いてもよい。例えば、他のシートと不織布状シートとの積層体であってもよく、他のシートで形成された袋に不織布状シートを内包させて用いてもよい。なお、前記他のシートは、水溶性又は水不溶性シートであってもよく、吸水性又は非吸水性シートであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の不織布状シートは、優れた吸水性を有するため、衛生用品(おむつ、生理用品など)などの液体吸収剤として有用である。また、不織布状シートは、水溶性も高いため、従来の水解紙[トイレットペーパー、ティッシュペーパー、包装材料(薬品、洗剤、入浴剤などの分包)など]にも利用できる。
【実施例】
【0048】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0049】
実施例1
(1)カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)繊維の作製
主溶媒成分として、イソプロピルアルコール(IPA)を使用する有機溶媒法により、CMC及びその塩を製造した。すなわち撹拌装置付きの3Lセパラブルフラスコに、IPA1580gと水168g及び原料となる市販の粉砕パルプ(セルロース)70gを投入して撹拌した。30℃の温度条件下で、水酸化ナトリウム38gと水38gとの水溶液を添加し、30〜35℃で60分間撹拌混合して、アルカリセルロースを得た(アルセル化工程)。これにモノクロロ酢酸39gをIPA32gに溶解したIPA溶液を供給及び混合して、70℃の温度条件下で60分間反応させた。反応終了後、3Lセパラブルフラスコから得られた反応物を取り出し、遠心分離機により脱液し、湿綿状のCMC−Na繊維を得た(エーテル化工程)。得られた湿綿状のCMC−Na繊維を80重量%濃度のメタノール水溶液で洗浄し、脱液、及び乾燥を行った。次いで得られた繊維を60℃で一昼夜乾燥させた。得られた繊維は白色で繊維長2〜10mm程度であった。また、平均エーテル化度は0.8であり、1重量%水溶液の粘度は8200mPa・sであった。
【0050】
CMC−Na繊維2g(乾燥重量)を♯250ポリアミドメッシュの袋(50mm×100mm)に入れ、2Lのイオン交換水(25℃)の中に24時間浸漬させた。水から引き上げ、15分後の重量を測定し、繊維の乾燥重量に対する比(吸水倍率A)を算出した。
【0051】
(2)不織布の作製
上記(1)で得られたCMC−Na繊維を、Dan−Webforming社のフォーミングドラムユニット(ドラム孔径状2.4mm×20mm、開孔率40%)を用いてエアレイドウェブを得た。このエレイドウェブに、適用後(乾燥前)の水の割合が25g/mとなるように水蒸気を適用し、乾燥させ、不織布(面積:200mm×200mm、目付け:50g/m)を作製した。
【0052】
得られた不織布2g(乾燥重量)を用いて、上記CMC−Na繊維と同様の方法により、不織布の吸水倍率(吸水倍率B)を算出した。そして、不織布の吸水倍率Bを繊維の吸水倍率Aで除することにより、吸水保持率を求めた。
【0053】
得られた不織布を、幅25mm、長さ150mmに裁断したものを試料とし、可変速引張試験機((株)東洋精機製作所製)により、チャック間隔100mm、引張速度10mm/分で、引張強度を測定した。引張強度の測定は、不織布の長さ方向(又は縦方向(MD方向))について行った。
【0054】
実施例2
水蒸気に代えて、2重量%濃度のカリミョウバン水溶液を、ウェブ状シート中の乾燥重量比がCMC−Na繊維/カリミョウバン=100/1となるようにスプレーする以外は、実施例1と同様にして不織布を作製し、吸水保持率を算出するとともに、引張強度を測定した。
【0055】
実施例3
CMC−Na繊維をIPA中で、CMC−Naの置換されているNaの10%当量分の塩酸を加えることにより酸型化し、脱液し、さらにIPAで洗浄及び脱液を繰り返した後、80℃で2時間エージングし、繊維を得た。
【0056】
得られた繊維をCMC−Na繊維に代えて用いる以外は実施例1と同様にして不織布を作製し、吸水保持率を算出するとともに、引張強度を測定した。
【0057】
実施例4
水蒸気に代えて、平均エーテル化度0.8のCMCを0.1重量%の濃度で含有する水溶液を、適用後(乾燥前)の水の割合が25g/mとなるようにスプレーする以外は、実施例1と同様にして不織布を作製し、吸水保持率を算出するとともに、引張強度を測定した。
【0058】
比較例1
CMC−Na繊維を、この繊維に対して50倍の重量のIPA水溶液(水/IPA(重量比)=20/80)中に分散し、湿式抄紙を行った後、乾燥させて、不織布(面積:200mm×200mm、目付け:50g/m)を得た。
【0059】
得られた不織布を用いて、実施例1と同様の方法により、吸水保持率を算出するとともに、引張強度を測定した。
【0060】
比較例2
市販のパルプを、パルプに対して50倍の重量の水に分散させ、次いでパルプ100重量部に対して5重量部のCMC繊維をバインダーとして加え、湿式抄紙を行った後、乾燥させ不織布を得た。
【0061】
得られた不織布を用いて、実施例1と同様の方法により、吸水保持率を算出するとともに、引張強度を測定した。
【0062】
比較例3
適用後(乾燥前)の水の割合が200g/mとなるようにウェブ状シートに水蒸気を適用する以外は、実施例1と同様にして不織布を作製し、吸水保持率を算出するとともに、引張強度を測定した。
【0063】
参考例1
適用後(乾燥前)の水の割合が5g/mとなるようにウェブ状シートに水蒸気を適用する以外は、実施例1と同様にして不織布を作製し、吸水保持率を算出するとともに、引張強度を測定した。
【0064】
結果を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
表1から明らかなように、実施例1〜4の不織布は、原料の水溶性繊維の高い吸水性を維持しており、いずれも吸水倍率が高い。また、引張強度も高く、実用性にも優れている。それに対し、比較例1では、湿式法により抄紙するため、抄紙自体に有機溶媒が必須であることに加え、得られる不織布は、引張強度が高いものの、吸水保持率(B/A)は非常に低い。また、パルプを用いた比較例2では、引張強度及び吸水保持率は高いものの、パルプ自体の吸水性が低いため、不織布の吸水性も低い。比較例3では、水の適用量が多いため、繊維同士が接近することにより表面積低下を招き、吸水保持率(B/A)が不十分である。また、参考例1では、引張強度が低いものの、高い吸水保持率(B/A)が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水倍率が25〜1500g/gである水溶性繊維で形成された吸水性不織布状シートであって、水溶性繊維の前記吸水倍率をA、及び前記不織布状シートの吸水倍率をBとするとき、前記吸水倍率の比B/Aで表される吸水保持率が0.7〜1.1である不織布状シート。
【請求項2】
引張強度が3N/25mm以上である請求項1記載の不織布状シート。
【請求項3】
水溶性繊維を乾式法で抄紙することにより得られる請求項1記載の不織布状シート。
【請求項4】
水溶性繊維をエアレイド製法で抄紙することにより得られる請求項1記載の不織布状シート。
【請求項5】
水溶性繊維が、自己接着、又は水溶性架橋剤及び水溶性バインダーから選択された少なくとも一種により互いに接着している請求項1記載の不織布状シート。
【請求項6】
水溶性繊維がセルロース系繊維である請求項1記載の不織布状シート。
【請求項7】
水溶性繊維がカルボキシメチルセルロース系繊維である請求項1記載の不織布状シート。
【請求項8】
吸水倍率が25〜1500g/gである水溶性繊維を乾式法により抄紙し、不織布状シートを製造する方法。
【請求項9】
吸水倍率が25〜1500g/gである水溶性繊維を乾式法により抄紙し、水溶性繊維の前記吸水倍率をA、及び抄紙により得られる不織布状シートの吸水倍率をBとするとき、前記吸水倍率の比B/Aで表される吸水保持率が0.7〜1.1である不織布状シートを製造する方法。
【請求項10】
引張強度が3N/25mm以上である不織布状シートを製造する請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
水溶性繊維をエアレイド製法で抄紙し、不織布状シートを製造する方法であって、抄紙工程又は抄紙後に、水溶性繊維に少なくとも水を適用し、乾燥させる請求項8又は9記載の製造方法。
【請求項12】
水溶性繊維に、水、又は水溶性架橋剤及び水溶性バインダーから選択された少なくとも一種の水溶液を噴霧する請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
水溶性繊維1重量部に対して、0.01〜10重量部の水を適用する請求項11又は12記載の製造方法。
【請求項14】
請求項1記載の不織布状シートで形成された液体吸収材。