説明

吸水性布帛およびその製法、並びに吸水ウイックおよび環境試験装置

【課題】不純物の発生が抑制され、耐久性に優れた吸水性布帛とその製法、並びに上記吸水性布帛を用いた吸水ウイックおよびそれを用いた環境試験装置を提供する。
【解決手段】平均単糸繊度2.0dtex以下の熱可塑性繊維を50重量%以上含有する布帛からなり、85℃の純水に24時間浸漬して抽出される残留イオンの総和量が200μg/g以下に設定されている吸水性布帛を用いた吸水ウイック20である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性布帛およびその製法、並びに上記吸水性布帛を用いて得られる吸水ウイックおよびそれを用いた環境試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
試料に対し一定の環境下で耐久性試験等を行うために用いられる環境試験装置では、装置稼働中、装置内の温度と湿度を常時検出し、検出値が予め設定された設定値から外れた場合、これを適正に修正するよう温度制御および湿度制御が行われるようになっている。
【0003】
上記温度および湿度の検出には、例えば、図7に示すように、装置内に取り付けられた乾球温度検出部1と、吸水ウイック2で被覆された湿球温度検出部3とが用いられるようになっている。上記吸水ウイック2は、湿球温度検出部3の周囲を常時濡れた状態に保つ機能を果たすもので、その下端部を、下方に設けられたウイックパン4内の水に浸して、毛細管現象により水を吸い上げるようになっている。なお、5はウイックパン4内に水を供給するための吸水配管、6はウイックパン4内の水を排出するための排水配管である。
【0004】
上記吸水ウイック2は、図8に示すように、所定形状に裁断された不織布や織布を2枚重ね、上部を、上記湿球温度検出部3と係合させるために筒状に縫合したもので、その縫い目は破線7で示すようになっている。そして、上記吸水ウイック2の材質としては、吸水性、耐久性等を考慮して、通常、ナイロン不織布や、綿布(ガーゼ)等が用いられている。
【0005】
また、より耐熱性、吸水性を高めたものとして、例えば、ケイ酸ナトリウムを主成分とする水溶性物質を溶出させた多孔質ガラス繊維からなる湿球ウイック(特許文献1参照)や,抗菌性をもたせたものとして、例えば、部分的に銀含有繊維を用いたウイック(特許文献2参照)等が提案されている。
【特許文献1】特開平6−82403号公報
【特許文献2】特開平10−54814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、最近、電気・電子部品に対する高信頼性、長寿命化への要求に応えるために、上記環境試験装置において、試料に対し、加圧下で100℃を超える高温をかける等の苛酷な耐久性試験を行うことが多い。そのため、環境試験装置における上記吸水ウイックについても、従来以上に苛酷な条件下で長期間にわたって良好に吸水性能を維持することが強く望まれている。また、試験対象が半導体単体や半導体を組み込んだ半導体製品である場合、装置内に酸等の不純物が存在すると、試験中に、上記半導体等にこれらの不純物が侵入してその電気特性を低下させる原因となるため、できるだけ不純物の侵入・発生を抑えることが課題とされている。
【0007】
しかしながら、従来の、ナイロン不織布や綿布等からなる吸水ウイックを備えた環境試験装置を用いて、例えば、製品の85℃/85%耐久試験(JIS C60068−2−67「環境試験方法−電気・電子−基本的に構成部品を対象とした高温高湿、定常状態の促進試験」、温度85℃、湿度85%、1000時間)やHAST耐久試験(Hight Accelerated Temperature and Humidity Stress Test:JIS C60068−2−66「環境試験方法−電気・電子−高温高湿定常(不飽和加圧水蒸気)」、温度130℃、湿度85%、96時間)やPCT耐久試験(JESD22−A102−C Acclerated Moisture Resistance−Unbiased Autoclave法、温度121℃、湿度100%、96時間)を行うと、装置内に、上記吸水ウイックに由来すると思われる金属イオンの放出や有機酸の発生が生じて環境試験装置内の部品やトレイ等に蓄積し、これが半導体製品に悪影響を与えて、不純物に起因する不良品が発生することが判明し、問題となっている。
【0008】
上記金属イオンは、吸水ウイックに用いられる布帛に当初から付着していると考えられる。すなわち、金属イオンは繊維から布帛を得る工程で付着しやすい。また、有機酸は、綿布(天然セルロース)中の不純物成分の熱分解、ポリアミド中の残留モノマーやオリゴマー、ポリアミドの酸化劣化によるものや、合成繊維に残留した繊維用油剤等に由来すると考えられる。したがって、これらの不純物を、できるだけ除去した清浄な布帛を用いることが強く望まれている。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、苛酷な耐久試験を行う環境試験装置の吸水ウイックとして用いるのに適した、不純物の発生が抑制され、耐久性に優れた吸水性布帛とその製法、並びに上記吸水性布帛を用いた吸水ウイックおよびそれを用いた環境試験装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、平均単糸繊度2.0dtex以下の熱可塑性繊維を50重量%以上含有する布帛からなり、85℃の純水に24時間浸漬して抽出される残留イオンの総和量が200μg/g以下に設定されている吸水性布帛を第1の要旨とする。
【0011】
また、本発明は、上記吸水性布帛のなかでも、特に、上記熱可塑性繊維が、複合繊維の分割によって得られる平均単糸繊度1.0dtex以下のポリエステル極細繊維である吸水性布帛を第2の要旨とする。
【0012】
さらに、本発明は、上記第1の要旨である吸水性布帛の製法であって、平均単糸繊度2.0dtex以下の熱可塑性繊維を50重量%以上含有する布帛を準備する工程と、上記布帛を、密閉容器中において100℃以上の温度で、界面活性剤を含有する水溶液中にて洗浄する工程と、洗浄した布帛を純水中で濯ぐ工程とを備えた吸水性布帛の製法を第3の要旨とする。
【0013】
そして、本発明は、そのなかでも、特に、上記熱可塑性繊維として、複合繊維の分割によって得られるポリエステル極細繊維を用い、上記複合繊維を未分割の状態で織成もしくは編成して布帛を準備する工程と、上記布帛を、密閉容器中において100℃以上の温度で、界面活性剤を含有する水溶液中にて洗浄し、ついで複合繊維の分割処理を行うことにより、平均単糸繊度1.0dtex以下のポリエステル極細繊維を50重量%以上含有する布帛を得る工程と、洗浄した布帛を純水中で濯ぐ工程とを備えた吸水性布帛の製法を第4の要旨とする。
【0014】
また、本発明は、平均単糸繊度2.0dtex以下の熱可塑性繊維を50重量%以上含有する布帛からなり、85℃の純水に24時間浸漬して抽出される残留イオンの総和量が200μg/g以下に設定されている吸水性布帛によって形成されている吸水ウイックを第5の要旨とし、そのなかでも、特に、上記吸水性布帛の熱可塑性繊維が、複合繊維の分割によって得られる平均単糸繊度1.0dtex以下のポリエステル極細繊維である吸水性布帛を第6の要旨とする。
【0015】
そして、本発明は、乾球温度検出部と、湿球温度検出部とを備え、上記湿球温度検出部の周囲が、上記第5または第6の要旨である吸水ウイックで被覆されている環境試験装置を第7の要旨とする。
【発明の効果】
【0016】
すなわち、本発明の吸水性布帛は、特定の繊維を50重量%以上含有し、耐久性、吸水性に優れているだけでなく、85℃の純水に24時間浸漬して抽出される残留イオンの総和量が、極めて低いものであるため、高温、高圧といった苛酷な条件下で使用しても、酸や金属イオン等の残留イオンが殆ど発生せず、清浄な環境を維持することができる。特に、121℃の純水に24時間浸漬して抽出される残留イオンの総和量が200μg/g以下に設定されたものは、より過酷な条件で使用しても、清浄な環境を維持することができ、さらに好適である。
【0017】
そして、そのなかでも、特に、上記熱可塑性繊維として、複合繊維の分割によって得られる平均単糸繊度1.0dtex以下のポリエステル極細繊維を用いた場合には、とりわけ優れた吸水性能と、清浄性とを兼ね備えたものとなる。
【0018】
また、本発明の吸水性布帛の製法によれば、従来の布帛製造工程を利用することにより、上記吸水性布帛を安価に提供することができる。
【0019】
さらに、本発明の吸水ウイックは、上記特殊な吸水性布帛によって形成されているため、高温、高圧といった苛酷な条件下で耐久試験を行う環境試験装置等に使用した場合、耐久試験中に、上記酸や金属イオン等の残留イオンが殆ど発生せず、装置内を清浄に保つことができ、試験対象に悪影響を及ぼすことがない。
【0020】
そして、本発明の環境試験装置によれば、上記優れた吸水ウイックが用いられているため、耐久試験中に、吸水ウイックから酸や金属イオン等の残留イオンが殆ど発生せず、装置内を清浄に保つことができ、試験対象に悪影響を及ぼすことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施の形態である吸水ウイック20を示している。この吸水ウイック20は、従来の吸水ウイック2(図8参照)と同様、2枚の布帛を重ね、上部を、湿球温度検出部3(図7参照)との係合のために、筒状に縫合した構成になっている。ただし、上記縫合部の縫合線は、高周波ウェルダを用いた熱融着によって形成されており、上辺部が直線、先端R部と下辺部が点線で熱融着されている。また、その外形の切断は、溶融切断によってなされ、その切断縁部(幅3mm、図1において斜線で示す領域)が、加圧融着処理されており、切断部から繊維屑が生じないようになっている。
【0023】
上記吸水ウイック20は、平均単糸繊度2.0dtex以下の熱可塑性繊維を50重量%以上含有し、85℃の純水に24時間浸漬して抽出される残留イオンの総和量が200μg/g以下に設定された吸水性布帛によって形成されている。
【0024】
上記吸水性布帛の吸水性は、特に限定するものではないが、一般に、JIS L−1907 吸水性測定法(バイレック法)による吸水高さがたて方向、よこ方向とも50mm以上である吸水性布帛を用いることが好適である。
【0025】
また、上記吸水性布帛を用いて得られる吸水ウィック20を、図7に示す湿球温度検出部3等に用いる場合、周囲が乾燥しても迅速に湿球温度検出部3に水分を補給することができるように、その吸水速度が、1.0mm/秒以上、なかでも、1.5mm/秒以上に設定されていることが好適である。
【0026】
なお、上記吸水速度は、下記の方法によって測定される値である。
【0027】
〔吸水速度〕
図4に示すように、4.5cm×5cmの生地の一個所に、延長部30aを延設した形状のサンプル30を準備する。そして、その下縁部を、図示のように、水槽31内の水に、約1cmの深さだけ浸し、水の吸い上げが、延長部30aとの境界線に到達するまでの時間(水面から4cmの距離を上昇する時間)tを測定する。そして、下記の式(1)により、吸水速度を算出する。
【0028】
【数1】

【0029】
そして、上記吸水性布帛に含有される平均単糸繊度2.0dtex以下の熱可塑性繊維としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、アクリル等の合成繊維、レーヨン等の再生繊維等、平均単糸繊度2.0dtex以下という極細の繊維として得られるものであれば、どのようなものでも差し支えないが、なかでも、ポリエステルやポリアミドからなるものが好適であり、特に、不純物を生じにくく熱安定性にも優れ、耐久性が高いという点で、ポリエステルからなるものが最適である。そして、上記熱可塑性繊維の形態としては、マルチフィラメント、ステープル等、各種の形態のものがあげられる。
【0030】
なお、上記熱可塑性繊維の平均単糸繊度を2.0dtex以下に限定し、これを布帛に対し50重量%以上の割合で含有させるのは、得られる布帛に、JIS L−1907 吸水性測定法(バイレック法)による吸水高さがたて方向、よこ方向とも50mm以上となる、優れた吸水性能を付与するためであるが、なかでも、平均単糸繊度1.0dtex以下の極細繊維を用いることが、優れた吸水性能を得る上で、好適である。
【0031】
このような極細の繊維を得るには、通常、単繊維の中に、2種類以上の成分が複数のセグメントを形成しつつ接着された複合繊維を分割フィブリル化することが好適である。上記分割フィブリル化は、一方の成分を、溶解や分解によって除去したり、膨張剤によって膨潤させたり、逆に収縮剤によって収縮させたり、あるいは加熱によって変形、収縮を生起させたりして行うことができる。また、複数成分を、摩擦や打撃によって物理的に分割することもできる。なかでも、水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液を用いて一方の成分を溶解除去(アルカリ減量)して割繊することが好適である。なお、これらの分割は、通常、上記複合繊維を織成、編成する等して生地にした後、行われる。
【0032】
上記極細の繊維の一例として、図2(a)に示すように、円形が、花芯と花びらのような形で9分割された断面形状のポリエステル繊維(コスモアルファ〔登録商標〕、KBセーレン社製)をあげることができる。このものは、図2(b)に示すように、レギュラーポリエステル成分22が、互いにアルカリ易溶ポリエステル23で接合された複合繊維として紡糸したのち、上記アルカリ易溶ポリエステル23を除去することにより得られるものである。
【0033】
また、上記の例に限らず、例えば図3(a)〜(f)に示されるような複合繊維から分割されるものを用いることもできる。これらはいずれも2成分からなり、例えば、図3(a),(b)のものは、放射形の成分と扇形の成分とが複合されており、同図(c)のものは、2成分が環状に交互に並んでおり中空部を有している。また、同図(d)のものは2成分がサイドバイサイド型に並んでいるもの、同図(e)のものは、2成分がサイドバイサイド繰り返し型に並んでいるもの、同図(f)は2成分が海島型になっているものである。
【0034】
もちろん、これらの複合繊維の分解から得られるもの以外であっても、平均単糸繊度が2.0dtex以下の熱可塑性繊維であれば、特に限定されない。例えば、直接、平均単糸繊度が2.0dtex以下の極細繊維として紡糸したハイパー繊維を用いるようにしても差し支えない。上記ハイパー繊維としては、KBセーレン社製のソアリオン(登録商標、平均単糸繊度1.75dtex)Yや、旭化成社製のテクノファイン(登録商標、平均単糸繊度1.4dtex)等があげられる。また、これらの熱可塑性繊維であって、吸水性を向上させるために、異形断面にしたものを用いても差し支えない。その際、繊維の単繊維平均異形度(繊維断面形状の最大幅/繊維断面形状の最大内接円直径)が1.5〜6.0のものを用いることが望ましい。
【0035】
上記平均単糸繊度2.0dtex以下の熱可塑性繊維を用いた吸水性布帛の形態は、シングルトリコット、ダブルトリコット等のトリコット編、丸編等の編物や、平織、朱子織、綾織等の織物、あるいは不織布等があげられる。なかでも、吸水性能の点で、トリコット編による編物や、朱子織による織物が特に好適である。
【0036】
なお、上記吸水性布帛が織物である場合、そのトータルCFが、500〜3000となるよう設定することが好ましい。ただし、上記トータルCFは、下記の式(2)で算出される値である。
【0037】
【数2】

【0038】
また、上記吸水性布帛の密度は、この吸水性布帛を用いて吸水ウイックとするときの成形性や、発塵を抑制する点から、500g/m2 以下が好ましく、さらには、300g/m2 以下、特に、200g/m2 以下が好ましい。
【0039】
なお、いずれの形態においても、上記平均単糸繊度が2.0dtex以下の極細繊維(以下「極細繊維A」という)は、布帛全体に用いる必要はなく、すでに述べたように、全体の50重量%以上含有されていればよい。例えば、吸水性布帛として編物を用いる場合、全体を上記極細繊維Aからなる糸で編成しても、上記極細繊維Aからなる糸と、他の糸とを所定の割合で交編してもよい。また、吸水性布帛として織物を用いる場合、織物の経糸、緯糸の両方に上記極細繊維Aを用いても、経糸、緯糸のいずれか片方のみに極細繊維Aを用いてもよい。また、吸水性布帛として不織布を用いる場合も、全体の50%以上が上記極細繊維Aであれば、充分な吸水性能を得ることができる。
【0040】
上記吸水性布帛において、上記極細繊維Aとともに用いることのできる他の糸としては、特に限定するものではないが、得られる布帛の耐久性、吸水性の点で、同じくポリエステル、ポリアミド、ビニロン等の熱可塑性フィラメント、なかでもポリエステルフィラメントが好適である。そして、その平均単糸繊度は10dtex以下、なかでも5dtex以下に設定することが好適である。
【0041】
上記吸水性布帛は、製編、製織、積層等、適宜の方法によって、編物、織物、不織布のいずれかの形態の布帛として得ることができる。ただし、布帛とした後、不純物(主として繊維に付着された油剤等)を除去するために、布帛の洗浄を行う。洗浄の方法としては、例えば、101kPa以上の圧力下で、界面活性剤を含有する水溶液中に、布帛を浸漬して精練する方法が好適である。ただし、浸漬時間は、10分以上が好ましい。
【0042】
なお、上記精練処理に用いる界面活性剤としては、従来から用いられているどのようなものであっても差し支えないが、例えば、脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の界面活性剤が好適である。そして、上記界面活性剤濃度は、通常、0.5〜2重量%に設定することが好適である。
【0043】
また、上記吸水性布帛に極細繊維Aを用いる場合、布帛として準備する段階では複合繊維の状態で用い、上記精練処理後に、100℃以上、好ましくは120℃以上で布帛をアルカリ減量することにより、アルカリ減量等の分割処理を行う。
【0044】
そして、上記精練処理および必要であれば複合繊維の分割処理を行った布帛は、酸や金属イオン等の残留イオンやその他の不純物を除去するために、純水中で濯ぐ処理が行われる。上記濯ぎ処理は、通常、80〜130℃×10〜30分間行うことが好適である。濯ぎが弱いと、不純物除去が不充分になるおそれがあり、逆に濯ぎをある程度以上行っても、それ以上の効果は得られないからである。
【0045】
このようにして得られた吸水性布帛は、85℃の純水に24時間浸漬して抽出される残留イオンの総和量が200μg/g以下に設定されており、不純物が発生しにくいという特徴を有している。
【0046】
なお、上記「残留イオンの総和量」とは、従来から環境試験装置等において不純物として問題になっている有機酸や金属イオン等のイオンの各抽出量の総和量をいう。具体的にには、乳酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、蓚酸、鉄イオン、塩素イオン、硝酸イオン、臭素イオン、亜硝酸イオン、燐酸イオン、硫酸イオン、リチウムイオン、ナトリウムオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンの各イオンの、吸水性布帛1g相当から抽出される量の総和量をいう。そして、上記各イオンの抽出量の測定は、イオンクロマトグラフ法によって行うことができる。
【0047】
ちなみに、上記各種イオンのうち、カチオン系金属イオンは、半導体製品のリーク、耐圧低下等の原因となり、アニオン系イオンは、金属や半導体製品を腐食させる原因となり、その残留が問題となるものである。
【0048】
上記吸水性布帛を、図1に示す形状に、溶融切断し、2枚重ねてその上部を、高周波ウェルダによる熱融着によって筒状に縫合することにより、吸水ウイック20を得ることができる。
【0049】
なお、すでに述べたように、上記溶融切断の際、その切断縁部(幅3mm、図1において斜線で示す領域)を、同時に加圧融着処理することにより、切断部から繊維屑が生じることを防止することができる。
【0050】
このようにして得られた吸水ウイック20は、上記特殊な吸水性布帛によって形成されているため、高温、高圧といった苛酷な条件下で耐久試験を行う環境試験装置等に使用した場合、耐久試験中に、上記酸や金属イオン等の不純物となる各種イオンが殆ど発生しない。したがって、装置内を清浄に保つことができ、試験対象に悪影響を及ぼすことがない。
【0051】
なお、吸水ウイック20の形状は、図1に示すものに限らず、これを用いる環境試験装置等における規格にしたがって、適宜の形状にすることができる。
【0052】
そして、上記吸水ウイック20は、環境試験装置以外に、温度・湿度制御を必要とする各種装置、例えば空調機、加湿器、加湿機能付きヒータ等に広く用いることができる。
【0053】
また、上記吸水性布帛は、吸水ウイック20に用いる外、水冷式クーラー、分離フィルタ、保湿材、医療用ガーゼ、半導体研磨用布等、各種の用途に広く用いることができる。
【0054】
なお、上記の例では、吸水性布帛を得るために、最終段階で、純水もしくは超純水で布帛を洗浄したが、吸水ウイック等、最終製品形状にした後、これを純水もしくは超純水で洗浄するようにしても差し支えない。
【0055】
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0056】
〔実施例1〕
まず、図2(b)に示すアルカリ減量分割型複合繊維であるポリエステルマルチフィラメント(84dtex/25f−FCD、KBセーレン社製)をフロントとバックの筬(28ゲージ)に用い、ポリエステルマルチフィラメント(56dtex/24f−SOD、KBセーレン社製)をミドルの筬(28ゲージ)に用いて、ウェルト数28本、コース数72本、目付262g/m2 のトリコットをマイヤー製シングルトリコット機により製編した。
【0057】
つぎに、製編した布帛を、精練洗浄剤(スコアロール〔登録商標〕TS、北広ケミカル社製)1重量%の水溶液中で45分間精練(25℃から130℃まで30分かけて昇温後、130℃を30分間維持)を行い、繊維油剤を除去した。
【0058】
つぎに、上記布帛を、高温高圧液流染色機を用い、水酸化ナトリウムの2重量%水溶液中で45分間アルカリ減量(25℃から130℃まで30分かけて昇温後、130℃を15分間維持)を行い、上記複合繊維であるポリエステルマルチフィラメントを分割し、さらに、130℃の水道水中において45分間濯ぎ(25℃から130℃まで30分かけて昇温後、130℃を15分間維持)を行った。これにより、上記複合繊維は、63dtex/225fに分割され、平均単糸繊度は0.28dtex、繊維の異形度は1.9となった。そして、布帛全体に対する上記繊維の含有割合は79重量%であった。そして、この布帛を、200℃の乾熱下において3分間仕上げセットを行い、吸水ウイック用布帛とした。このものの目付は、255g/m2 であった。
【0059】
〔実施例2〕
精練、アルカリ減量および濯ぎの液中温度を101℃に変更した以外は、実施例1と同じ条件にて吸水ウイック用布帛を作製した。
【0060】
〔実施例3〕
濯ぎの液中温度を60℃に変更した以外は、実施例1と同じ条件にて吸水ウイック用布帛を作製した。
【0061】
〔実施例4〕
アルカリ減量および濯ぎの液中温度を101℃に変更した以外は、実施例1と同じ条件にて吸水ウイック用布帛を作製した。
【0062】
〔実施例5〕
Y形断面形状のポリエステルマルチフィラメント「ソアリオン〔登録商標〕Y」(84dtex/72f−SND、KBセーレン社製、平均単糸繊度1.17dtex、異形度3.8)をフロントとバックの筬(28ゲージ)に用い、ポリエステルマルチフィラメント(56dtex/24f−SOD、KBセーレン社製)をミドルの筬(28ゲージ)に用いて、ウェルト数28本、コース数72本、目付け262g/m2 のトリコットをマイヤー製シングルトリコット機を用いて製編した。布帛全体に対するY断面形状ポリエステルマルチフィラメントの含有割合は83重量%であった。
【0063】
つぎに、製編した布帛を、精練洗浄剤(スコアロール〔登録商標〕TS、北広ケミカル社製)1重量%の水溶液中で45分間精練(25℃から101℃まで30分かけて昇温後、101℃を15分間維持)を行い、繊維油剤を除去した。そして、この布帛を200℃の乾熱下において3分間仕上げセットを行い、吸水ウイック用布帛とした。このものの目付けは348g/m2 であった。
【0064】
〔実施例6〕
フロント、バックの筬にM形断面形状のポリエステルマルチフィラメント「アクアウェーブ〔登録商標〕」(84dtex/48f−DMD、KBセーレン社製、平均単糸繊度1.75dtex、異形度5.2)を用いた以外は実施5と同じ条件にて吸水ウイック用布帛を作製した。
【0065】
〔実施例7〕
図2(b)に示すアルカリ減量分割型複合繊維であるポリエステルマルチフィラメント(56dtex/25f−FCD、KBセーレン社製)を経糸に用い、ポリエステルマルチフィラメント(84dtex/36f−SOD、KBセーレン社製)を緯糸に用いて、ウォータージェット製織機で、経糸密度が242本/2.5cm、緯糸密度が88本/2.5cm、目付け82g/m2 の4枚繻子織物を製織した。
【0066】
つぎに、製織した布帛を、精練洗浄剤(スコアロール〔登録商標〕TS、北広ケミカル社製)1重量%の水溶液中で45分間精練(25℃から101℃まで30分かけて昇温後、101℃を15分間維持)を行い、繊維油剤を除去した。
【0067】
上記布帛を、高温高圧液流染色機において水酸化ナトリウムの2重量%水溶液中で45分間精練(25℃から101℃まで30分かけて昇温後、101℃を15分間維持)を行い、上記複合繊維であるポリエステル繊維を分割し、更に101℃の水道水中において45分濯ぎ(25℃から101℃まで30分かけて昇温後、101℃を15分間維持)を行った。これにより、上記複合繊維は、42dtex/225fに分割され、平均単糸繊度は0.19dtex、異形度は1.9となった。そして、布帛全体に対する上記繊維の含有割合は58重量%、布帛の経糸密度は260本/2.5cm、緯糸密度は95本/2.5cmであった。そして、この布帛を190℃の乾熱下において3分間仕上げセットを行い、吸水ウイック用布帛とした。このものの目付けは89g/m2 であった。
【0068】
〔実施例8〕
Y形断面形状のポリエステルマルチフィラメント「ソアリオン〔登録商標〕Y」(84dtex/72f−SND、KBセーレン社製、平均単糸繊度1.17dtex、異形度3.8)を経糸に用い、ポリエステルマルチフィラメント(84dtex/36f−SOD、KBセーレン社製)を緯糸に用いて、ウォータージェット製織機で、経糸密度が186本/2.5cm、緯糸密度が86本/2.5cm、目付け82g/m2 の4枚繻子織物を製織した。つぎに、この織物を101℃の熱水での目付け89g/m2 の織物を製織した。
【0069】
つぎに、製織した布帛を、精練洗浄剤(スコアロール〔登録商標〕TS、北広ケミカル社製)1重量%の水溶液中で45分間精練(25℃から101℃まで30分かけて昇温後、101℃を15分間維持)を行い、繊維油剤を除去した後に、101℃の水道水中において45分間濯ぎ(25℃から101℃まで30分かけて昇温後、101℃を15分間維持)を行った。
【0070】
これにより得られた布帛の経糸密度は260本/2.5cm、緯糸密度は95本/2.5cm、布帛全体に対する上記Y断面ポリエステルマルチフィラメントの含有割合は69重量%であった。そして、この布帛を190℃の乾熱下において3分間仕上げセットを行い、吸水ウイック用布帛とした。このものの目付けは102g/m2 であった。
【0071】
〔実施例9〕
精練温度を98℃、アルカリ減量の温度を98℃、濯ぎの温度を98℃に変更した以外は、実施例1と同用にして吸水ウイック用布帛を作製した。
【0072】
〔実施例10〕
精練温度を70℃、アルカリ減量の温度を98℃、濯ぎは行わなかった以外は、実施例1と同様の方法で吸水ウイック用布帛を作製した。
【0073】
〔実施例11〕
精練温度を70℃、アルカリ減量の温度を98℃、濯ぎの温度を98℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で吸水ウイック用布帛を作製した。
【0074】
〔比較例1〕
エスペック社製の環境試験器用ウイック(FINE WICK WG−104H、1.6dtexの6ナイロン製スパンレース不織布、目付け85g/m2 )を用意した。このものは、5cm間の吸水速度21mm/秒であった。
【0075】
〔比較例2〕
エスペック社製の高度加速寿命試験装置EHSシリーズ用ウイック(40番手綿:経糸密度48本/2.5cm、緯糸密度45本/2.5cm、目付け55g/m2 )を用意した。このものは、5cm間の吸水速度21mm/秒であった。
【0076】
〔比較例3〕
精練を行わず、アルカリ減量の温度を98℃、濯ぎの温度を70℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法で吸水ウイック用布帛を作製した。
【0077】
〔比較例4〕
図2(b)に示すアルカリ減量分割型複合繊維であるポリエステルマルチフィラメント(56dtex/25f−FCD、KBセーレン社製)を経糸に用い、ポリエステルマルチフィラメント(167dtex/96f−SWD、KBセーレン社製)を緯糸に用いて、ウォータージェット製織機で、経糸密度が142本/2.5cm、緯糸密度が70本/2.5cm、目付け90g/m2 のマット組織の織物を製織した。
【0078】
つぎに、製織した布帛を、精練洗浄剤(スコアロール〔登録商標〕TS、北広ケミカル社製)1重量%の水溶液中で45分間精練(25℃から70℃まで30分かけて昇温後、70℃を15分間維持)を行い、繊維油剤を除去した。
【0079】
上記布帛を、高温高圧液流染色機において水酸化ナトリウムの2重量%水溶液中で45分間アルカリ減量(25℃から98℃まで30分かけて昇温後、98℃を15分間維持)を行い、上記複合繊維であるポリエステルマルチフィラメントを分割し、さらに70℃の水道水中において45分間濯ぎ(25℃から70℃まで30分かけて昇温後、70℃を15分間維持)を行った。これにより、上記複合繊維は、42dtex/225fに分割され、平均単糸繊度は0.19dtex、異形度は1.9となった。そして、布帛全体に対する上記繊維の含有割合は44重量%、布帛の経糸密度は155本/2.5cm、緯糸密度は76本/2.5cmであった。そして、この布帛を190℃の乾熱下において3分間仕上げセットを行い、吸水ウイック用布帛とした。このものの目付けは97g/m2 であった。
【0080】
〔比較例5〕
ポリエステルマルチフィラメント(84dtex/48f−SOD、KBセーレン社製)をフロントとバックの筬(28ゲージ)に用い、ポリエステルマルチフィラメント(56dtex/24f−SOD、KBセーレン社製)をミドルの筬(28ゲージ)に用いて、ウェルト数28本、コース数72本、目付け262g/m2 のトリコットをマイヤー製シングルトリコット機を用いて製編した。布帛全体に対する対する平均単糸繊度2.0dtex以下の繊維の含有割合は83重量%であった。
【0081】
つぎに、製編した布帛を、精練洗浄剤(スコアロール〔登録商標〕TS、北広ケミカル社製)1重量%の水溶液中で45分間精練(25℃から70℃まで30分かけて昇温後、70℃を15分間維持)を行い、繊維油剤を除去した後に、70℃の水道水中において45分間濯ぎ(25℃から70℃まで30分かけて昇温後、70℃を15分間維持)を行った。そして、この布帛を200℃の乾熱下において3分間仕上げセットを行い、吸水ウイック用布帛とした。このものの目付けは348g/m2 であった。
【0082】
〔比較例6〕
ポリエステルマルチフィラメント(84dtex/72f−SOD、KBセーレン社製)を経糸に用い、ポリエステルマルチフィラメント(56dtex/48f−SOD、KBセーレン社製)を緯糸に用いて、ウォータージェット製織機で、経糸密度が104本/2.5cm、緯糸密度 か8本/2.5cm、目付け52g/m2 の平織物を製織した。
【0083】
つぎに、製織した布帛を、精練洗浄剤(スコアロール〔登録商標〕TS、北広ケミカル社製)1重量%の水溶液中で45分間精練(25℃から70℃まで30分かけて昇温後、70℃を15分間維持)を行い、繊維油剤を除去しただけで、濯ぎは行わなかった。
【0084】
これにより、平均単糸繊度は1.17dtex、異形度は1.1、布帛全体に対する平均単糸繊度2.0dtex以下の繊維の含有割合は100重量%、布帛の経糸密度は112本/2.5cm、緯糸密度は84本/2.5cmであった。そして、この布帛を190℃の乾熱下において3分間仕上げセットを行い、吸水ウイック用布帛とした。このものの目付けは60g/m2 であった。
【0085】
これらの吸水ウイック用布帛について、下記の方法により、布帛に残留するイオンの量を測定し、その総和量を求めた。
【0086】
〔残留イオンの測定法〕
(1)前処理
まず、テフロン(登録商標)製の密閉容器中にそれぞれの布帛試料、約2gと超純水30mlを入れ、オートクレーブ内で、以下の2条件で熱処理を行い、その後、半日間、オートクレーブ内に放置して、室温(25℃)まで除冷した。
a:85℃×24時間
b:121℃×24時間
【0087】
(2)イオンクロマトグラフによる残留イオン量の測定
イオンクロマトグラフ(日本ダイオネクス社製、DX−320)を用いて、JIS K0127イオンクロマトグラフ法により、各イオンを抽出した。
<1> アニオン測定条件
カラム:IonPack AG17、AS17(日本ダイオネクス社製)
検出モジュール:IC−20
溶離液:KOH(溶離液ジェネレーターEG−40使用)
溶離液流速:1.5ml/分
測定温度(恒温槽温度):35℃
注入量(試料導入量):100μl
<2>カチオン測定条件
カラム:IonPack CS12A(日本ダイオネクス社製)
検出モジュール:IC−20
溶離液:メタンスルホン酸(溶離液ジェネレーターEG−40使用)
溶離液流速:1.5ml/分
測定温度(恒温槽温度):35℃
注入量(試料導入量):100μl
【0088】
なお、測定を行ったイオン種は、アニオンが、F- 、Cl- 、NO2-、Br- 、NO3-、SO42- 、PO43- 、乳酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、蓚酸の13種、カチオンが、Li+ 、Na+ 、NH4 + 、K+ 、Ca2+、Mg2+の6種、合計19種である。これらの測定結果を、後記の表1〜表4(85℃×24時間の抽出結果)および表5〜表8(121℃×24時間の抽出結果)に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
【表3】

【0092】
【表4】

【0093】
【表5】

【0094】
【表6】

【0095】
【表7】

【0096】
【表8】

【0097】
また、上記実施例品、比較例品について、実際に、環境試験装置の湿球温度検出部に配備して、下記の条件にて、高周波半導体増幅器に対する環境試験を行った後、後記の方法に従い、試験に供した高周波半導体増幅器の不良品発生性を評価した。また、後記の方法に従い、その湿度制御性を評価した。それらの結果を、各布帛の特徴的構成、処理条件、上記残留イオンの総和量とともに、後記の表9〜表12に併せて示す。
【0098】
〔環境試験の条件1〕
対象品:高周波半導体増幅器(低雑音ヘテロ接合化合物半導体素子で、HEMT〈Hig h Electron Mobility Transistor〉と呼ばれて いるもの)50個
試験方法:JIS C60068−2−67「環境試験方法−電気・電子−基本的に構成 部品を対象とした高温高湿、定常状態の促進試験」
試験装置:エスペック社製、PR−3K
試験の実施回数:10回
圧力 :101.32kPa(1気圧)
温度 :85℃
湿度 :85%
時間 :1000時間
【0099】
〔環境試験の条件2〕
対象品:高周波半導体増幅器(低雑音ヘテロ接合化合物半導体素子で、HEMT〈Hig h Electron Mobility Transistor〉と呼ばれて いるもの)50個
試験方法:JESD22−A102−C Acclerated Moisture R esistance−Unbiased Autoclave法
試験装置:エスペック社製、高度加速寿命試験装置 EHS−221
試験の実施回数:10回
圧力 :202.65kPa(2気圧)
温度 :121℃
湿度 :100%
時間 :96時間
【0100】
〔不良品発生性〕
上記の条件1、2に従って環境試験を行い、不良品の発生数を求めた。そして、環境試験装置に起因する不良品の発生個数が3個以上のものを×、同じく発生個数が1〜2個のものを△、全く発生しなかったものを○として評価した。
【0101】
〔湿度制御性〕
環境試験装置(エスペック社製、PR−3K)において、実施例品および比較例品の湿球ウイックを、湿球温度を測定する熱電対に取り付けるとともに、校正された電子式評価用湿度計をセットし、温度85℃、湿度85%の条件で運転を開始し、温度湿度が安定した状態で、環境試験装置の温度湿度表示も、温度85℃、湿度85%になっている条件で、電子式評価用湿度計によって計測される湿度の値と、環境試験装置が表示する湿度の値の差を求めた。互いの値の誤差が±4%未満のものを○、±4%以上のものを×として評価した。
【0102】
【表9】

【0103】
【表10】

【0104】
【表11】

【0105】
【表12】

【0106】
上記の結果から、実施例品は、いずれも、比較例品に比べて、不純物が非常に少なく、環境を清浄に保つことができるものであることがわかる。そして、実施例品を用いて高周波半導体増幅器の環境試験を行ったものは、その試験品の不良品発生性が良好であることがわかる。これは、吸水ウイックから発生する不純物が、実施例品では抑制されているため、対象となる高周波半導体増幅器に影響を及ぼさないからであると思われる。
【0107】
さらに、上記実施例品、比較例品のうち、実施例1品と比較例1品を、上記と同様の環境試験装置(エスペック社製、PR−3K)の湿球温度検出部に、図5に示すように、両者の下端部が、それぞれ1cmの深さだけ水槽40内の水に浸漬するように取り付けた。そして、温度センサ(K型熱電対)41、42を両者の上端にそれぞれ固定し、温度85℃、相対湿度85%の条件下で、90日間、吸水ウイックの温度を計測して記録計43により記録した。この結果を、図6に示す。
【0108】
上記の結果によれば、実施例1の吸水ウイックは、常に83±0.5℃の温度を示しているのに対し、比較例1の吸水ウイックは、40日目辺りから徐々に83.5℃を超える温度を示し、50日目からは85℃近い温度を示している。これは、ポリエステル繊維を用いた実施例1の吸水ウイックが90日間、安定して環境試験装置内の湿度を検出することができるのに対し、6ナイロン(ポリアミド繊維)を用いた比較例1の吸水ウイックは、40日目を超えると生地の分解、劣化が生起して、吸水ウイックとして正確な環境試験装置内の湿度を検出できなくなったものと考えられる。これにより、実施例1品は、比較例1品と比較して、吸水ウイックとしての耐久性に優れていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の一実施例を示す説明図である。
【図2】(a)は上記実施例に用いる極細繊維Aの説明図、(b)は上記極細繊維Aの分割前の状態を示す説明図である。
【図3】(a)〜(f)は、いずれも本発明に用いることのできる複合繊維の横断面図である。
【図4】吸水速度を求めるための吸水試験の説明図である。
【図5】実施例1品と比較例1品に対する耐久性試験の説明図である。
【図6】上記耐久性試験の結果を示す線図である。
【図7】吸水ウイックの取り付け態様の説明図である。
【図8】一般的な吸水ウイックの説明図である。
【符号の説明】
【0110】
20 吸水ウイック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均単糸繊度2.0dtex以下の熱可塑性繊維を50重量%以上含有する布帛からなり、85℃の純水に24時間浸漬して抽出される残留イオンの総和量が200μg/g以下に設定されていることを特徴とする吸水性布帛。
【請求項2】
上記熱可塑性繊維が、複合繊維の分割によって得られる平均単糸繊度1.0dtex以下のポリエステル極細繊維である請求項1記載の吸水性布帛。
【請求項3】
請求項1記載の吸水性布帛の製法であって、平均単糸繊度2.0dtex以下の熱可塑性繊維を50重量%以上含有する布帛を準備する工程と、上記布帛を、密閉容器中において100℃以上の温度で、界面活性剤を含有する水溶液中にて洗浄する工程と、洗浄した布帛を純水中で濯ぐ工程とを備えたことを特徴とする吸水性布帛の製法。
【請求項4】
上記熱可塑性繊維として、複合繊維の分割によって得られるポリエステル極細繊維を用い、上記複合繊維を未分割の状態で織成もしくは編成して布帛を準備する工程と、上記布帛を、密閉容器中において100℃以上の温度で、界面活性剤を含有する水溶液中にて洗浄し、ついで複合繊維の分割処理を行うことにより、平均単糸繊度1.0dtex以下のポリエステル極細繊維を50重量%以上含有する布帛を得る工程と、洗浄した布帛を純水中で濯ぐ工程とを備えた請求項3記載の吸水性布帛の製法。
【請求項5】
平均単糸繊度2.0dtex以下の熱可塑性繊維を50重量%以上含有する布帛からなり、85℃の純水に24時間浸漬して抽出される残留イオンの総和量が200μg/g以下に設定されている吸水性布帛によって形成されていることを特徴とする吸水ウイック。
【請求項6】
上記吸水性布帛の熱可塑性繊維が、複合繊維の分割によって得られる平均単糸繊度1.0dtex以下のポリエステル極細繊維である請求項5記載の吸水ウィック。
【請求項7】
乾球温度検出部と、湿球温度検出部とを備え、上記湿球温度検出部の周囲が、請求項5または6記載の吸水ウイックで被覆されていることを特徴とする環境試験装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−179936(P2008−179936A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333960(P2007−333960)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(305037123)KBセーレン株式会社 (97)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】