説明

吸水性材料

【課題】吸水性および保水性に優れ、加工性が良好であり、かつ機械強度の強い吸水性材料を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の吸収性材料は、(1)主鎖骨格である、炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン連鎖からなり、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が、0.70dl/g以上である重合体セグメントAと、(2)側鎖骨格である、水溶性(メタ)アクリル酸系モノマーに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするモノマー連鎖からなる重合体セグメントBとからなるグラフト型オレフィン系重合体を成型し、該吸水性材料の(i)示差走査熱量計(DSC)測定により求めた融点が、100〜280℃であり、(ii)保水率が7%以上であり、(iii)含水率が10%以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸水性材料に関する。さらに詳しくは、加工性が良好であり、フィルムまたはシート状に成型した場合にも充分な強度を有し、吸水性および保水性に優れる吸水性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から種々の吸水性材料が知られており、例えば、特許文献1には、ポリアルキレンオキシド化合物と多価カルボン酸またはジイソシアネートとを反応させて得られる親水性高分子量化合物に、電離性放射線または紫外線を照射し、架橋させて得られる吸水性材料が開示されている。しかし、この方法で得られる吸水性材料においても、親水性高分子量化合物を架橋するための電離性放射線または紫外線の照射条件をコントロールすることが難しく、架橋にムラが生じ易い。また、強度が弱いなどの欠点を有するため、充分満足できる吸水性材料を得ることはできない。
【0003】
また、特許文献2には、ポリアルキレンオキシドをイソシアネートにより架橋する際に、微粒子状無機酸化物を添加するか、またはポリアルキレンオキシドをイソシアネートにより架橋して得られる架橋ポリアルキレンオキシドに微粒子状無機酸化物を添加することで、ゲル強度、およびシート、フィルム等への加工性を改良した吸水性架橋物の製造方法が提案されている。しかし、この方法で得られた吸水性材料は、微粒子が添加されているために、薄膜にする成型が難しく、また、材料の強度も充分でないとの欠点を有する。
【0004】
また、成型加工品を親水性物質で表面被覆する方法(例えば、特許文献3)、が報告されているが、初期の吸水性には優れるものの、保水性という点では十分な性能を示さない。
【0005】
さらに、特許文献4には、主鎖骨格として、特定構造を有するオレフィン系重合体と、側鎖骨格として、特定構造を有するモノマーの重合体とからなる、グラフト型オレフィン系重合体について記載されている。しかし、この特許文献では、吸水性および保水性についての記載がなく、この文献からでは、吸水性および保水性に優れる吸水性材料を得ることはできない。
【0006】
また、特許文献5では、特定の低分子量ポリオレフィン(A)に、オキシアルキレン結合を有するエチレン性不飽和単量体(B)をグラフト共重合してなるポリオレフィンが開示されている。しかし、このポリオレフィンを成型して得られる吸収材料についての記載はなく、構造体として強度を有するための分子量を有する吸水性ポリオレフィン材料の創出が望まれている。
【特許文献1】特開平5−339384号公報
【特許文献2】特開平6−32863号公報
【特許文献3】特開2002−348779号公報
【特許文献4】特開2008−156528号公報
【特許文献5】特開平7−292042号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の事情に鑑み、本発明の目的は、吸水性および保水性に優れ、加工性が良好であり、かつフィルムまたはシート状に成型した場合にも機械強度の強い吸水性材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定構造を有するオレフィン系重合体と、特定構造を有するモノマーの重合体とからなるグラフト型オレフィン系重合体を成型した吸収性材料が、吸水性および保水性に優れ、加工性が良好であり、かつフィルムまたはシート状に成型した場合にも機械強度が強いことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、たとえば、次の事項で特定される。
本発明の吸収性材料は、
(1)主鎖骨格である、炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン連鎖からなり、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が、0.70dl/g以上である重合体セグメントAと、
(2)側鎖骨格である、水溶性(メタ)アクリル酸系モノマーに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするモノマー連鎖からなる重合体セグメントBとからなるグラフト型オレフィン系重合体を成型した吸水性材料であって、該吸水性材料の
(i)示差走査熱量計(DSC)測定により求めた融点が、100〜280℃であり、
(ii)保水率が、7%以上であり、
(iii)含水率が、10%以上であることを特徴とする。
また、前記水溶性(メタ)アクリル酸系モノマーが、ポリエーテル基を含有する水溶性(メタ)アクリル酸系モノマーであることが好ましい。
また、前記ポリエーテル基を含有する水溶性(メタ)アクリル酸系モノマーが、ポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステルであることも好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明で得られる吸水性材料は、強度など機械物性のバランスに優れ、加工性が良好なポリオレフィン材料に吸水性および保水性の機能を付与した新しい材料たるものであり、シーリング材、接着材等の土木・建築分野、保水材等の農園芸分野、その他、吸水性が要求される各種の用途に有用である。例えば、植物組織や微生物を培養するのに用いる培地として、また、電解質溶液を含浸させて、電池および電気化学デバイス用材料の電解質として用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明における吸水性材料を説明する。
本発明における吸水性材料は、(1)主鎖骨格である、炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン連鎖からなり、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が、0.70dl/g以上である重合体セグメントAと、(2)側鎖骨格である、水溶性(メタ)アクリル酸系モノマーに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするモノマー連鎖からなる重合体セグメントBとからなるグラフト型オレフィン系重合体を成型したものであり、該吸水性材料の(i)示差走査熱量計(DSC)測定により求めた融点が、100〜280℃であり、(ii)保水率が、7%以上であり、(iii)含水率が、10%以上である。
【0012】
まず、炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン連鎖からなる重合体セグメントA(以下、重合体セグメントAと称す)と、水溶性(メタ)アクリル酸系モノマーに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするモノマー連鎖からなる重合体セグメントB(以下、重合体セグメントBと称す)について説明する。
【0013】
(1)重合体セグメントA
(1−1)重合体セグメントA
本発明における、重合体セグメントAを構成するオレフィンは、炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来しており、炭素原子数2〜20のオレフィンとしては、例えば直鎖状または分岐状のα-オレフィン、環状オレフ
ィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、非共役ポリエン、官能化ビニル化合物が挙げられる。
【0014】
直鎖状のα-オレフィンとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-
ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどの炭素原子数2〜20、好ましくは炭素原子数2〜10の直鎖状のα-オレフィンが挙げられる。
【0015】
また、分岐状のα-オレフィンとしては、具体的には、2-メチルプロペン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4,4-ジメ
チル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセンなどの炭素原子数4〜20、好ましくは炭素原子数4〜20、
より好ましくは炭素原子数4〜10の分岐状のα-オレフィンが挙げられる。
【0016】
環状オレフィンとしては、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ビニルシク
ロヘキサンなどの炭素原子数3〜20、好ましくは炭素原子数4〜15などが挙げられる。
【0017】
芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、およびα-メチルスチレン、o-メチル
スチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレンなどのモノまたはポリアルキルスチレンが挙げられる。
【0018】
共役ジエンとしては、例えば1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエンなどの炭素原子数4〜20、好ましくは炭素原子数4
〜10のものが挙げられる。
【0019】
非共役ポリエンとしては、例えば1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペンル-2-ノル
ボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエンなどの炭素原子数4〜20、好ましくは炭素原子数4〜10のものが挙げられる。
【0020】
官能化ビニル化合物としては、水酸基含有オレフィン、ハロゲン化オレフィン、アクリル酸、プロピオン酸、3−ブテン酸、4−ペンテン酸、5−ヘキセン酸、6−ヘプテン酸、7−オクテン酸、8−ノネン酸、9−デセン酸などの不飽和カルボン酸類、アリルアミン、5−ヘキセンアミン、6−ヘプテンアミンなどの不飽和アミン類、(2,7−オクタ
ジエニル)コハク酸無水物、ペンタプロペニルコハク酸無水物および上記不飽和カルボン酸類にある化合物の例示において、カルボン酸基をカルボン酸無水物基に置き換えた化合物などの不飽和酸無水物類、上記不飽和カルボン酸類にある化合物の例示において、カルボン酸基をカルボン酸ハライド基に置き換えた化合物などの不飽和カルボン酸ハライド類、4−エポキシ−1−ブテン、5−エポキシ−1−ペンテン、6−エポキシ−1−ヘキセン、7−エポキシ−1−ヘプテン、8−エポキシ−1−オクテン、9−エポキシ−1−ノネン、10−エポキシ−1−デセン、11−エポキシ−1−ウンデセンなどの不飽和エポキシ化合物類などが挙げられる。
【0021】
上記水酸基含有オレフィンとしては、水酸基含有のオレフィン系化合物であれば特に制限は無いが、例えば水酸化オレフィン化合物が挙げられる。水酸化オレフィン化合物として、具体的には、例えばビニルアルコール、アリルアルコール、水酸化−1−ブテン、水
酸化−1−ペンテン、水酸化−1−ヘキセン、水酸化−1−オクテン、水酸化−1−デセン、水酸化−1−ドデセン、水酸化−1−テトラデセン、水酸化−1−ヘキサデセン、水酸化−1−オクタデセン、水酸化−1−エイコセンなどの炭素原子数2〜20、好ましくは炭素原
子数2〜10の直鎖状の水酸化α-オレフィン;
例えば、水酸化−2−メチルプロペン、水酸化−3−メチル−1−ブテン、水酸化−4−メチル−1−ペンテン、水酸化−3−メチル−1−ペンテン、水酸化−3−エチル−1−ペンテン、水酸化−4,4−ジメチル−1−ペンテン、水酸化−4−メチル−1−ヘキセン、水酸化−4,4−ジメチル−1−ヘキセン、水酸化−4−エチル−1−ヘキセン、水酸化−3−エチル−1−ヘキセンなどの炭素原子数4〜20、好ましくは5〜20、より好ましくは5〜10の分岐状の水酸化α-オレフィンが挙げられる。
【0022】
上記ハロゲン化オレフィンとして、具体的には、例えば塩素、臭素、よう素等周期律表第17族原子を有する、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化−1−ブテン、ハロゲン化−1−ペンテン、ハロゲン化−1−ヘキセン、ハロゲン化−1−オクテン、ハロゲン化−1−デセン
、ハロゲン化−1−ドデセン、ハロゲン化−1−テトラデセン、ハロゲン化−1−ヘキサデ
セン、ハロゲン化−1−オクタデセン、ハロゲン化−1−エイコセンなどの炭素原子数2〜20、好ましくは炭素原子数2〜10の直鎖状のハロゲン化α-オレフィン;
例えば、ハロゲン化−2−メチル−1−プロペン、ハロゲン化−3−メチル−1−ブテン、
ハロゲン化−4−メチル−1−ペンテン、ハロゲン化−3−メチル−1−ペンテン、ハロゲ
ン化−3−エチル−1−ペンテン、ハロゲン化−4,4−ジメチル−1−ペンテン、ハロゲン化−4−メチル−1−ヘキセン、ハロゲン化−4,4−ジメチル−1−ヘキセン、ハロゲン化−4
−エチル−1−ヘキセン、ハロゲン化−3−エチル−1−ヘキセンなどの炭素原子数4〜2
0、好ましくは炭素原子数5〜20、より好ましくは炭素原子数5〜10の分岐状のハロゲン化α-オレフィンが挙げられる。
【0023】
本発明の重合体セグメントAは、これらのオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン連鎖からなる重合体セグメントである。好ましくは、結晶性を有する重合体セグメントであり、より好ましくはエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレンと炭素原子数3〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンとの共重合体、またはプロピレンと炭素原子数4〜20のオレフィンかから選ばれる少なくとも1種のオレフィンから得られる共重合体に由来するセグメントである。
【0024】
本発明の重合体セグメントAは、その主鎖中に制御ラジカル重合開始能を有する部位を有していることが好ましく、例えばニトロキシドを有する基や、原子移動ラジカル重合に用いられるハロゲン原子又はハロゲン化スルホニル基、可逆的付加脱離連鎖移動重合に用いられるジチオカルボニル基を有していることが好ましい。
【0025】
本発明の重合体セグメントAの分子量は、極限粘度[η]が、0.70dl/g以上である。好ましくは、0.75〜20dl/gの範囲にあり、より好ましくは0.8〜15dl/gの範囲にあり、更に好ましくは0.85〜12dl/gの範囲にある。分子量が短いと十分な機械物性が発現できず、分子量が大きすぎると成型性が悪くなり好ましくない。本発明において、極限粘度[η]は、デカリン溶媒中135℃で測定される値である。
【0026】
本発明の重合体セグメントAの分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)において、ポリプロピレン換算で、10,000〜10,000,000の範囲にあり、好ましくは15,000〜5,000,000の範囲にあり、より好ましくは20,000〜2,000,000の範囲にある。分子量が短いと十分な機械物性が発現できず、分子量が大きすぎると成型性が悪くなり好ましくない。
【0027】
(1−2)重合体セグメントAの製造方法
本発明の重合体セグメントAの製造方法について説明する。
本発明に係る重合体セグメントAは、上記要件を満たすものであれば、いかなる方法によって製造されたものであっても良いが、好ましくは、オレフィンモノマーの重合によって得られる重合体セグメントである。
【0028】
まず、重合体セグメントAの製造に用いられるオレフィン重合触媒について説明する。重合体セグメントAの製造に用いられるオレフィン重合触媒は、従来公知のいずれの触媒であってもよい。従来公知の触媒としては、例えばマグネシウム担持型チタン触媒、メタロセン触媒などが挙げられ、例えば国際公開特許WO01/53369あるいはWO01/27124中に記載の触媒が好適に用いられる。
【0029】
重合体セグメントAの製造は、溶液重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施することができる。マグネシウム担持型チタン触媒系を用いる場合、重合系内においては、固体状チタン触媒成分(a)またはその予備重合触媒は、重合容積1リットル当りチタン原子に換算して、通常は約0.0001〜50ミリモル、好ま
しくは約0.001〜10ミリモルの量で用いられる。有機金属化合物触媒成分(b)は
、該触媒成分(b)中の金属原子が、重合系中の固体状チタン触媒成分(a)中のチタン原子1モルに対し、通常1〜2000モル、好ましくは2〜1000モルの量で用いられる。電子供与体(ED)は、有機金属化合物触媒成分(b)の金属原子1モルに対し、通常0.001モル〜10モル、好ましくは0.01モル〜5モルの量で用いられる。
【0030】
重合工程における、水素濃度はモノマー1モルに対して0〜0.01モル、好ましくは
0〜0.005モル、より好ましくは0〜0.001モルの量である。
重合温度は、通常、70℃以上、好ましくは80〜150℃、より好ましくは85〜140℃、特に好ましくは90〜130℃の範囲であり、圧力は、通常、常圧〜10MPa、好ましくは常圧〜5MPaに設定される。重合は回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができ、2段以上に分けて行う場合は、反応条件は同じであっても異なっていてもよい。
【0031】
触媒としてメタロセン系触媒を用いて重合体セグメントAを製造する場合には、重合系内のメタロセン化合物(c)の濃度は、重合容積1リットル当り、通常0.00005〜
0.1ミリモル、好ましくは0.0001〜0.05ミリモルの量で用いられる。有機アル
ミニウムオキシ化合物(d)は、メタロセン化合物(c)中の遷移金属原子(M)に対するアルミニウム原子(Al)のモル比(Al/M)で、5〜1000、好ましくは10〜400となるような量で用いられる。また有機アルミニウム化合物(e)が用いられる場
合には、メタロセン化合物(c)中の遷移金属原子1モルに対して、通常約1〜300モル、好ましくは約2〜200モルとなるような量で用いられる。
【0032】
メタロセン系触媒は、メタロセンが可溶な溶媒中で溶液状態として用いてもよく、無機化合物あるいは樹脂組成物を単体として用いた、担持触媒として用いてもよい。
メタロセン系触媒を用いた場合の重合温度は、通常温度が−20〜150℃、好ましくは0〜120℃、さらに好ましくは0〜100℃の範囲であり、重合圧力は0を超えて8MPa(ゲージ圧)、好ましくは0を超えて5MPa(ゲージ圧)の範囲である。
【0033】
重合体セグメントAの製造は、バッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を、反応条件を変えて2段以上に分けて行うこともできる。オレフィン重合では、オレフィンの単独重合体を製造してもよく、前述のオレフィン類から選ばれる2種類以上のオレフィンからランダム共重合体を製造してもよい。
【0034】
(2)重合体セグメントB
本発明における重合体セグメントBは、水溶性(メタ)アクリル酸系モノマーから選ばれる少なくとも1種以上のモノマーに由来しており、水溶性(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、アクリルアミド、水酸基含有水溶性(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシ基および/またはポリエーテル基含有水溶性(メタ)アクリル酸エステル、アミノ基含有水溶性(メタ)アクリル酸エステル、リン酸基含有水溶性(メタ)アクリル酸エステル、イオン性基含有水溶性(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0035】
水酸基含有水溶性(メタ)アクリル酸エステルとして具体的には、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(2,3−ジヒドロキシプロピル)、メタクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、メタクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、メタクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、メタクリル酸(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)、メタクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、メタクリル酸(2,3−ジヒドロキシプロピル)等が挙げられる。
【0036】
アルコキシ基および/またはポリエーテル基含有水溶性(メタ)アクリル酸エステルとして具体的には、アクリル酸(2−エトキシエチル)、アクリル酸(2−メトキシエチル)、アクリル酸(ジエチレングリコール)、アクリル酸(メトキシエトキシエチル)、アクリル酸(エトキシエトキシエチル)、アクリル酸(メトキシトリエチレングリコール)、アクリル酸(エトキシトリエチレングリコール)、エチレングリコールユニット数が4以上のアクリル酸(ポリエチレングリコール)、およびアクリル酸(末端アルコキシポリエチレングリコール)、メタクリル酸(2−エトキシエチル)、メタクリル酸(2−メトキシエチル)、メタクリル酸(ジエチレングリコール)、メタクリル酸(メトキシエトキシエチル)、メタクリル酸(エトキシエトキシエチル)、メタクリル酸(メトキシトリエチレングリコール)、メタクリル酸(エトキシトリエチレングリコール)、エチレングリコールユニット数が4以上のメタクリル酸(ポリエチレングリコール)、およびメタクリル酸(末端アルコキシポリエチレングリコール)等が挙げられる。
【0037】
アミノ基含有水溶性(メタ)アクリル酸エステルとして具体的には、アクリル酸(2−N,N−ジメチルアミノエチル)、アクリル酸(2−ジエチルアミノエチル)、アクリル酸(ブチルアミノエチル)、アクリル酸(2−アジリジニルエチル)、アクリル酸(2−N−モルフォリノエチル)、アクリル酸(1−ピペリジンエチル)、アクリルアミド(2−ジメチルアミノエチル)、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリ
ン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシアクリルアミド、メタクリル酸(2−N,N−ジメチルアミノエチル)、メタクリル酸(2−ジエチルアミノエチル)、メタクリル酸(ブチルアミノエチル)、メタクリル酸(2−アジリジニルエチル)、メタクリル酸(2−N−モルフォリノエチル)、メタクリル酸(1−ピペリジンエチル)、メタクリルアミド(2−ジメチルアミノエチル)、N,N−ジメチルメタクリルアミド、mエタクリロイルモルフォリン、N−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−ヒドロキシメタクリルアミド等が挙げられる。
【0038】
リン酸基含有水溶性(メタ)アクリル酸エステルとして具体的には、アクリル酸(ホスホキシエチル)、アクリロイロキシホスホリルコリン、アクリル酸(3−クロロ−2−アシッド ホスホキシプロピル)、アクリル酸(アシッドホスホキシポリオキシエチレング
リコール)、アクロイルオキシエチルアシッドホスフェート・モノエタノールアミンハーフ塩、アクリル酸(アシッドホスホキシポリオキシプロピレングリコール)、メタクリル酸(ホスホキシエチル)、メタクリロイロキシホスホリルコリン、メタクリル酸(3−クロロ−2−アシッド ホスホキシプロピル)、メタクリル酸(アシッド ホスホキシポリオキシエチレングリコール)、メタクロイルオキシエチルアシッドホスフェート・モノエタノールアミンハーフ塩、メタクリル酸(アシッドホスホキシポリオキシプロピレングリコール)等が挙げられる。
【0039】
イオン性基含有水溶性(メタ)アクリル酸エステルとして具体的には、アクリル酸(N,N−トリメチルアミノエチル)クロライド、アクリル酸(2−アミノエチル)塩酸塩、2−アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウム−メチルスルホン酸塩、アクリル酸(2−ニトロエチル)、アクリル酸(N,N−ジメチルアミノエチル)メトスルホン酸塩、アクリル酸(N,N−ジエチルアミノエチル)メトスルホン酸塩、アクリル酸エチル(トリメチルアンモニウム)クロライド、アクリル酸(スルホン酸エチル)アンモニウム塩、アクリル酸(2−ヒドロキシ−3−トリメチルアンモニウム)クロライド、アクリロイロキシコリン・クロリド、メタクリル酸(N,N−トリメチルアミノエチル)クロライド、メタクリル酸(2−アミノエチル)塩酸塩、2−メタクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウム−メチルスルホン酸塩、メタクリル酸(2−ニトロエチル)、メタクリル酸(N,N−ジメチルアミノエチル)メトスルホン酸塩、メタクリル酸(N,N−ジエチルアミノエチル)メトスルホン酸塩、メタクリル酸エチル(トリメチルアンモニウム)クロライド、メタクリル酸(スルホン酸エチル)アンモニウム塩、メタクリル酸(2−ヒドロキシ−3−トリメチルアンモニウム)クロライド、アリルアミン塩酸塩、ジアリルアミン塩酸塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイロキシコリン・クロリド等が挙げられる。
【0040】
本発明の重合体セグメントBは、これらの(メタ)アクリル酸系モノマーから選ばれる少なくとも1種以上のモノマーに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするモノマー連鎖からなる重合体セグメントである。
【0041】
本発明の重合体セグメントBの分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)において、ポリスチレン換算で、300〜10,000,000の範囲にあり、好ましくは500〜5,000,000の範囲にあり、より好ましくは1,000〜2,000,000の範囲にある。分子量が短いと十分な吸水性および保水性が発現できず、分子量が大きすぎると成型性が悪くなり好ましくない。
【0042】
吸水性の点から、好ましくは、ポリエーテル基含有モノマーであるポリエーテル基含有水溶性(メタ)アクリル酸エステル、および/またはイオン性基含有水溶性(メタ)アク
リル酸エステルからなる重合体である。更に好ましくは、ポリエーテル基含有水溶性(メタ)アクリル酸エステルであり、より好ましくはポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステルである。
【0043】
(3)オレフィン系重合体
(3−1)オレフィン系重合体
本発明におけるオレフィン系重合体は、上記重合体セグメントA中および/または末端に、上記重合体セグメントBを有する構造であり、重合体セグメントAは、1本以上の重合体セグメントBを有しているグラフト型の構造である。好ましくは、重合体セグメントAは1本以上200本以下の重合体セグメントBを有しているグラフト型の構造であり、より好ましくは、重合体セグメントAは2本以上100本以下の重合体セグメントBを有しているグラフト型の構造である。
【0044】
本発明におけるオレフィン系重合体はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)が、ポリプロピレン換算で、1,000〜10,000,000(g/mol)の範囲にあり、好ましくは1,500〜5,000,000の範囲にあり、より好ましくは2,000〜2,000,000の範囲にある。分子量が短いと十分な機械物性が発現できず、分子量が大きすぎると成型性が悪くなり好ましくない。
【0045】
本発明におけるオレフィン系重合体は、重合体セグメントAの含有量[A]に対する重合体セグメントBの含有量[B]の比([B]/[A])が、重量比で0.2〜9の範囲にある。[B]/[A]値が0.2未満の時は、十分な吸水能を有するオレフィン系重合体が得られず、一方、[B]/[A]値が9を超えると、強度の低下を招き、他の樹脂との相溶性が悪くなるため好ましくない。[B]/[A]値は、好ましくは0.3〜5の範囲であり、より好ましくは0.5〜4の範囲であり、さらに好ましくは1〜3の範囲である。
【0046】
(3−2)オレフィン系重合体の製造方法
本発明において、重合体セグメントBを重合体セグメントAへ導入する方法として特に制限は無いが、制御ラジカル重合開始能を有する重合体セグメントAを用いて、水溶性(メタ)アクリル酸系モノマーの重合を行うことによってオレフィン系重合体を製造することが好ましい。制御ラジカル重合法の種類は特に限定されないが、重合体セグメントAへの重合開始基の導入の容易さ、重合体セグメントBの種類、重合条件等の因子を制御することで、適切な手法を選ぶことができる。
【0047】
例えば、Trend Polym. Sci., (1996), 4, 456 に開示されているように、ニトロキ
シドを有する基を結合し熱的な開裂によりラジカルを発生させる方法や、原子移動ラジカル重合(ATRP)と呼ばれる方法、すなわち、Science,(1996),272,866、Chem. Rev., 101,
2921 (2001)、WO96/30421号公報、WO97/18247号公報、WO98/01480号公報、WO98/40415号公報、WO00/156795号公報、あるいは澤本ら、Chem. Rev., 101, 3689 (2001)、特開平8-41117号公報、特開平9-208616号公報、特開2000-264914号公報、特開2001-316410号公報、特開2002-80523号公報、特開2004-307872号公報で開示されているような、有機ハロゲン
化物又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、遷移金属を中心金属とする金属錯体を触媒としてラジカル重合性単量体をラジカル重合する方法、可逆的付加脱離連鎖移動(Reversible Addition-Fragmentation Chain Transfer; RAFT)重合と呼ばれる方法、すなわち、Macromolecules2000年33巻2号243〜245ページなどに記載されている、ジチオカルボニル基を連鎖移動部位としてラジカル重合性単量体をラジカル重合する方法、などが挙げられる。
【0048】
ラジカル重合開始末端の導入方法の容易さ、及び選択できるモノマー種の豊富さから、原子移動ラジカル重合法は、本発明に係る重合体セグメントBを導入するために有力な制御ラジカル重合法である。
【0049】
原子移動ラジカル重合開始剤を重合体セグメントAに導入する方法としては、官能基変換法や直接ハロゲン化法などが有効である。
官能基変換法とは、水酸基、酸無水物基、ビニル基、シリル基等の官能基が導入されたオレフィン連鎖からなる重合体セグメントの官能基部位を原子移動ラジカル開始剤構造に変換する方法、例えば、特開2004-131620号公報に記載の水酸基含有ポリオレフィンを2
−ブロモイソ酪酸ブロミドの様な低分子化合物で修飾する方法である。
【0050】
直接ハロゲン化法とは、ハロゲン化剤をポリオレフィンに直接作用させ、炭素-ハロゲ
ン結合を有すハロゲン化ポリオレフィンを得る方法である。
使用するハロゲン化剤や導入されたハロゲン原子の種類については特に限定されるものではないが、原子移動ラジカル開始骨格の安定性と開始効率のバランスより臭素原子を導入された臭素化ポリオレフィンが好ましい。
【0051】
また、Science,(1996),272,866等に示されるように、原子移動ラジカル重合の開始構造としては、炭素−ハロゲン原子の結合解離エネルギーが低い構造が好ましく、そのためには、3級炭素原子に直接ハロゲン原子が導入された構造やビニル基やビニリデン基などの不飽和炭素―炭素結合に結合する炭素原子にハロゲン原子が導入された構造などを発現させやすいハロゲン化剤が好ましく用いられる。
【0052】
このような観点より、直接ハロゲン化法によるハロゲン化ポリオレフィンを製造するにあたって、ハロゲン化剤として好ましくは、臭素(ブロミン)やN−ブロモスクシンイミド(NBS)が挙げられる。
【0053】
本発明に係わる制御ラジカル重合を行うに当たり、溶媒を使用してもしなくても良い。使用できる溶媒としては、重合反応を阻害しないものでなければ何れでも使用することができるが、例えば、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンおよびデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびデカヒドロナフタレンのような脂環族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素およびテトラクロルエチレン等の塩素化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノールおよびtert-ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンおよび
メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチルおよびジメチルフタレート等のエステル系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ-n-アミルエーテル、テトラヒ
ドロフランおよびジオキシアニソールのようなエーテル系溶媒等をあげることができる。また、水を溶媒とすることもできる。これらの溶媒は、単独でも2種以上を混合して使用してもよい。
【0054】
重合温度は、ラジカル重合反応が進行する温度であれば任意に設定できる。所望する重合体の重合度、使用するラジカル重合開始剤および溶媒の種類や量によって一様ではないが、通常、−50〜150℃、好ましくは0〜80℃であり、更に好ましくは0〜50℃である。重合反応は場合によって減圧、常圧または加圧の何れでも実施できる。上記重合反応は、酸素を除去した後、副反応を抑えるため窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0055】
(4)吸水性材料
本発明に係る吸水性材料は、前述のグラフト型オレフィン系重合体を成型してなるものである。
【0056】
本発明の成形方法としては射出成形、圧縮成形、カレンダ成形、スラッシュ成形、回転成形、押出成形、ブロー成形、フィルム成形(キャスト法、テンター法、インフレーション法等)等が挙げられ、目的に応じて単層成形、多層成形あるいは発泡成形等の手段も取り入れた任意の方法で成形できる。
【0057】
本発明における前述のグラフト型オレフィン系重合体は、それ自体溶媒に可溶であり、シート、フィルム等に成型するに際し、優れた加工性を示す。該オレフィン系重合体が可溶な溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、トリエタノールアミン等の含窒素有機溶媒、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類およびこれらの混合物が挙げられる。
【0058】
該オレフィン系重合体をシート化するには、熱プレス、押出成型機(Tダイ)やカレンダーロール等、通常使用されるものを用い、80〜280℃に加熱して通常0.5〜5mmの厚さの吸水性を有するシートを得る。フィルム化するには、熱プレスや押出成型機(イン
フレーションダイ)を用い、加熱溶融して吸水性を有するフィルムを得る。また、上記溶
媒に溶解させ、キャスティングによりフィルムを得ることもできる。このようにして、厚みが5〜500μmのフィルムが得られる。
【0059】
本発明の吸水性材料は、上記の方法で得られたフィルムまたはシート等の成型物に電子線照射を施し、これによりさらに架橋の程度を高めても良い。該オレフィン系重合体は、それ自体では熱可塑性であり、溶媒に可溶性であるが、電子線照射後は熱可塑性が低下したり、溶媒に不溶性となる場合がある。そのため、フィルムやシートへの成型は電子線照射前に行うのが好ましい。溶媒に溶解させ、キャスティングによりフィルムとなした場合にも、該電子線照射により溶媒に不溶性となり、吸水時にも機械強度の高いフィルムを得ることができる。
【0060】
本発明の吸水性材料において、示差走査熱量計(DSC)測定により求めた融点(i)は、100〜280℃の範囲に観測される。融点が低いと、十分な耐熱性や機械強度が発現できず、融点が高すぎると成型性が悪くなり好ましくない。
【0061】
なお、示差走査熱量計(DSC)測定は、例えば、次のようにして行われる。試料5.
00mg程度を専用アルミパンに詰め、示差走査熱量計(DSC)を用い、30℃から200℃までを320℃/minで昇温し、200℃で5分間保持したのち、200℃から20℃までを10℃/minで降温し、20℃でさらに5分間保持したのち、次いで10℃/minで昇温する際の吸熱曲線から融点(Tm)を求める。なお、DSC測定時に、複数のピークが検出される場合は、最も高温側で検出されるピークを、融点(Tm)と定義する。
【0062】
本発明の吸水性材料の保水率(ii)は、7%以上、好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上、最も好ましくは15〜20%である。保水率が低いと、材料としての要求物性を満たすことに不利であり、7%未満では吸水性材料としての用途に不適当である。
【0063】
本発明において、吸水性材料(試料)の保水率は、下記式(1)で示す式を用いて算出できる。なお、重量W1(g)は、試料を温度20℃、相対湿度65%の雰囲気中で24
時間調湿して測定した値であり、重量W2(g)は、前記で調湿した試料を、温度20℃の水道水中に24時間浸漬した後取り出し、遠心脱水機にて3500rpmで5分間脱水後に測定した値である。
【0064】
保水率T0(%)=〔(W2−W1)/W1〕×100・・・(1)
本発明において、吸水性材料の含水率(iii)は、10%以上、好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上、最も好ましくは25〜40%である。含水率が低いと、材料としての要求物性を満たすことに不利であり、10%未満では吸水性材料としての用途に不適当であり、その使用が制限されるため好ましくない。
【0065】
本発明において、吸水性材料(試料)の含水率は、下記式(2)で示す式を用いて算出できる。なお、重量w1(g)は、試験片(成形体)をイオン交換水中に浸す前の値であり、重量w2(g)は、試験片をイオン交換水中に26時間浸した後、取り出して試験片表面の水滴を除去した後の値である。
含水率t(%)=〔(w2−w1)/w2〕×100・・・(2)
【0066】
(5)添加剤
本発明の吸水性材料は、必要に応じて(a)アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩、(b)界面活性剤、(c)その他の添加剤、を添加して用いられる。
【0067】
(a)アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩
アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩としては、アルカリ金属(例えばリチウム、ナトリウムおよびカリウム)および/またはアルカリ土類金属(例えばマグネシウムおよびカルシウム)の有機酸(C1〜7のモノ−またはジカルボン酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、コハク酸および安息香酸、およびC1〜9のスルホン酸、例えばメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸およびトリフルオロメタンスルホン酸)塩、および無機酸[例えばハロゲン化水素酸(例えば塩酸および臭化水素酸)、過塩素酸、硫酸、リン酸およびチオシアン酸]塩が挙げられる。
【0068】
具体例としては、例えばハライド(例えば塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化カルシウムおよび臭化マグネシウム)、酢酸塩(例えば酢酸リチウムおよび酢酸カリウム)、過塩素酸塩(例えば過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウムおよび過塩素酸カリウム)、硫酸塩(例えば硫酸カリウム)、リン酸塩(例えばリン酸カリウム)およびチオシアン酸塩(例えばチオシアン酸カリウム)が挙げられる。
【0069】
(b)界面活性剤
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤が挙げられる。
【0070】
非イオン性界面活性剤としては、例えばエチレンオキサイド(以下、EOと略記)付加型非イオン性界面活性剤が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えばカルボン酸(例えばC8〜22の飽和または不飽和脂肪酸およびエーテルカルボン酸)またはその塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、およびリン酸エステル塩が挙げられる。上記の塩としては例えばアルカリ金属(例えばナトリウムおよびカリウム)塩、アルカリ土類金属(例えばカルシウムおよびマグネシウム)塩、アンモニウム塩、アルキルアミン(C1〜20)塩およびアルカノールアミン(C2〜12、例えばモノ−、ジ−およびトリエタノールアミン)塩が挙げられる。
【0071】
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩型、およびアミン塩型が挙げら
れる。
両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤、硫酸エステル塩型両性界面活性剤、スルホン酸塩型両性界面活性剤、およびリン酸エステル塩型両性界面活性剤が挙げられる。
【0072】
(c)その他の添加剤
その他の添加剤としては、着色剤、充填剤、核剤、滑剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、抗菌剤および難燃剤等が挙げられる。これらは既知化合物として公的に用いられているものを特に制限なく用いることが出来る。
【0073】
本発明の吸水性材料では、微粒子状無機酸化物を添加して、成型した後、電子線照射を行なうと、ゲル強度が強くなる。そのため、特に強い機械強度が要求される用途に適する。このような微粒子状無機酸化物としては、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等を挙げることができる。特に、シリカまたは酸化チタンを用いることが好ましい。
【0074】
本発明の吸水性材料は、必要に応じて、他の樹脂や材料とともに組成物として用いることができる。他の樹脂としては、特に例外なく用いることができるが、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、メチルペンテン、オクテン、デセン等のオレフィン(共)重合体に代表されるオレフィン系の樹脂が好適に用いられる。
【0075】
本発明においては、さらに透水性または透湿性を有する基材の少なくとも片面に本発明の吸収性材料を積層させることができる。本発明で用いられる透水性または透湿性を有する基材としては特に限定されないが、食品関係の用途おける外観や衛生上の観点から、紙、セロハン、ビニロン、不織布、穴あきプラスチックフィルム等が好ましく用いられる。上記基材と本発明の吸収性材料の複合化方法としては、熱ラミネーション、ドライラミネーション、多層インフレーション等の方法から適宜選択すればよい。
本発明の吸水性材料は、必要に応じてベントナイト、シリカ、木粉、澱粉などを適量添加することにより、その吸水性、機械強度を調節することが出来る。
【0076】
(6)用途
こうして得られる吸水性材料は、医療用製品、衛材用製品、食品容器・包装用製品、自動車用製品、電子材料製品、ハウジング製品、家電製品などに使用され、土壌の保水剤、防振材、緩衝材、シーリング材、接着材等の土木・建築用材、農園芸分野の吸水材、その他、吸水性、保水性が要求される各種の用途に有用である。例えば、植物組織や微生物を培養するのに用いる培地として、また、電解質溶液を含浸させて、電池および電気化学デバイス用材料の電解質として用いることができ、多方面の用途に利用することが出来る。
【0077】
[実施例]
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0078】
〔物性評価〕
実施例では、以下の条件で物性測定を行った。
【0079】
(NMR分析)
測定装置:日本電子社製 GSX-400スペクトロメーター 400MHz (FTモード)
測定条件:パルス角:45°、パルス反復:5秒、パルス幅:8000Hz、温度:120℃、サンプリング点数:32000
試料処理:試料(重合体)50mgを重水素1,2-ジクロロベンゼン0.5mLに120℃で完全に溶
解したものを分析試料とした。
【0080】
(極限粘度[η](dl/g))
デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した。すなわち、重合ペレット約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求めた(下式参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
【0081】
(重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn))
重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、Waters社製ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC−2000型を用い、以下のようにして測定した。分離カラムは、TSKgel GNH6−HTを2本およびTSKgel GNH6−HTLを2本であり、カラムサイズはいずれも直径7.5mm、長さ300mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo−ジクロロベンゼン(和光純薬工業)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025重量%を用い、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は15mg/10mLとし、試料注入量は500μLとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000およびMw>4×106については東ソー社製を用い、1000≦Mw≦4×106についてはプレッシャーケミカル社製を用いた。
【0082】
(融点[Tm](℃))
セイコーインスツル株式会社(SII)社製DSC(RDC220)を用い、窒素雰囲気下(20ml/分)、約5mgの試験片を200℃まで昇温、5分間保持した後、10℃/分で20℃まで冷却した。20℃で5分間保持した後、10℃/分で200℃まで昇温させた時の結晶溶融ピークのピーク頂点から融点を算出した。
【0083】
(含水率)
試験片の含水率(%)は、試験片(重量w1(mg))をイオン交換水中に26時間浸した後、取り出して試料表面の水滴を除去し、試料の重量w2(mg)を測定し、下記式(2)で示す式から求めた。
含水率t(%)=〔(w2−w1)/w2〕×100・・・(2)
【0084】
(保水率)
試験片の保水率(%)は、試験片を温度20℃、相対湿度65%の雰囲気中で24時間調湿して重量W1(mg)を測定し、次に温度20℃の水道水中に24時間浸漬した後取り出し、遠心脱水機にて2000rpmで5分間脱水後、重量W2(mg)を測定し、下記式(1)で示す式から求めた。
保水率T0(%)=〔(W2−W1)/W1〕×100・・・(1)
【0085】
〔製造例1〕
[ラジカル重合開始基を有するポリプロピレン系重合体の調製]
特開2002-145944公報に記載の方法に準じて製造したプロピレン/10-ウンデセン-1-オールランダム共重合ポリマー(極限粘度[η];1.31dl/g、高温GPC測定によるポリプロピレン換算分子量;Mw=53000,Mw/Mn=1.71,1H-NMR測定より得られるコモノマー含量;0.035mol/g) 170gを、脱
気窒素置換された2Lガラス製重合器に入れ、ヘキサン1700mL、2-ブロモイソ酪
酸ブロミド9.2mLをそれぞれ添加し、60℃に昇温し、2時間加熱撹拌した。室温に戻した反応スラリー状ポリマー溶液を、桐山ロートでろ過した後、ロート上のポリマーを
メタノール200mLで3回リンスした。ポリマーを50℃、10Torrの減圧条件下で10時間乾燥させ、白色ポリマーが得られた。1H-NMRの結果、OH基の94%が2-ブロモイソ酪酸基で修飾されたハロゲン原子含有ポリプロピレン系共重合体であった。
【0086】
[製造例2]
[グラフト型オレフィン系重合体(1)の調製]
製造例1で得られたラジカル重合開始基を有するポリプロピレン(25g)をガラス製反応器に入れ、十分に窒素バブリングしたキシレン200mLとポリエチレングリコール
メタクリル酸エステル(Aldrich社製;Mw=350、比重;1.05)100m
Lを加え、更に反応器を窒素置換した。ここに、臭化第一銅(146mg)とN,N,N',N",N"-ペンタメチルジエチレントリアミンの2M キシレン溶液1mLとキシレン
5.0mLの均質溶液を加え、70℃で1時間攪拌した。得られた重合体懸濁液を3Lのメタノール中に注ぎ込み、重合体を濾別した。メタノールとアセトンで数回洗浄した後、10Torrの減圧下、80℃で10時間乾燥した。NMRで得られた重合体を分析したところエチレンオキサイドに由来するピークが3.7ppm付近に観察されたことからポリエチレングリコールメタクリル酸エステルに由来する重合体が存在していることが確認された。NMR分析からポリエチレングリコールメタクリレートに由来する重合体は、33重量%含有されていると算出された。
【0087】
[製造例3]
[グラフト型オレフィン系重合体(2)の調製]
製造例1で得られたラジカル重合開始基を有するポリプロピレンを用いてポリエチレングリコールメタクリル酸エステル(Aldrich社製;Mw=350)の重合を、70℃で2時間攪拌した以外は製造例2と同様にして重合体を製造した。NMR分析からポリエチレングリコールメタクリレートに由来する重合体は、50重量%含有されていると算出された。
【0088】
[製造例4]
[グラフト型オレフィン系重合体(3)の調製]
製造例1で得られたラジカル重合開始基を有するポリプロピレン(25g)をガラス製反応器に入れ、十分に窒素バブリングしたキシレン150mLとポリエチレングリコール
メタクリル酸エステル(Aldrich社製;Mw=350)150mLを加え、更に反応器を窒素置換した。ここに、臭化第一銅(146mg)とN,N,N',N",N"-ペンタメチルジエチレントリアミンの2M キシレン溶液1mLとキシレン5.0mLの均質
溶液を加え、70℃で2時間攪拌した。得られた重合体懸濁液を3Lのメタノール中に注ぎ込み、重合体を濾別した。メタノールとアセトンで数回洗浄した後、10Torrの減圧下、80℃で10時間乾燥した。NMR分析からポリエチレングリコールメタクリレートに由来する重合体は、58重量%含有されていると算出された。
【0089】
[製造例5]
[グラフト型オレフィン系重合体(4)の調製]
製造例1で得られたラジカル重合開始基を有するポリプロピレン(25g)をガラス製反応器に入れ、十分に窒素バブリングしたキシレン150mLとポリエチレングリコール
メタクリル酸エステル(Aldrich社製;Mw=1100)150mLを加え、更に反応器を窒素置換した。ここに、臭化第一銅(146mg)とN,N,N',N",N"-ペンタメチルジエチレントリアミンの2M キシレン溶液1mLとキシレン5.0mLの均
質溶液を加え、70℃で2時間攪拌した。得られた重合体懸濁液を3Lのメタノール中に注ぎ込み、重合体を濾別した。メタノールとアセトンで数回洗浄した後、10Torrの減圧下、80℃で10時間乾燥した。NMR分析からポリエチレングリコールメタクリレートに由来する重合体は、46重量%含有されていると算出された。
【0090】
[製造例6]
[ラジカル重合開始基を有するポリプロピレン系重合体の調製]
特開2002-145944公報に記載の方法に準じて製造したプロピレン/10-ウンデセン-1-オールランダム共重合ポリマー(極限粘度[η];0.51dl/g、高温GPC測定によるポリプロピレン換算分子量;Mw=21000,Mw/Mn=2.01,1H-NMR測定より得られるコモノマー含量;0.10mol/g)170gを、脱気窒素置換された2Lガラス製重合器に入れ、ヘキサン1700mL、2-ブロモイソ酪酸ブ
ロミド30.0mLをそれぞれ添加し、60℃に昇温し、2時間加熱撹拌した。室温に戻した反応スラリー状ポリマー溶液を、桐山ロートでろ過した後、ロート上のポリマーをメタノール200mLで3回リンスした。ポリマーを50℃、10Torrの減圧条件下で10時間乾燥させ、白色ポリマーが得られた。1H-NMRの結果、OH基の92%が2-
ブロモイソ酪酸基で修飾されたハロゲン原子含有ポリプロピレン系共重合体であった。
【0091】
[製造例7]
[グラフト型オレフィン系重合体(5)の調製]
製造例6で得られたラジカル重合開始基を有するポリプロピレンを用いてポリエチレングリコールメタクリル酸エステル(Aldrich社製;Mw=350)の重合を、70℃で2時間攪拌した以外は製造例2と同様にして重合体を製造した。NMR分析からポリエチレングリコールメタクリレートに由来する重合体は、53重量%含有されていると算出された。
【0092】
[実施例1〜4]
製造例2〜5で得られたグラフト型オレフィン系重合体を所定の金型内に導入して、テフロン(登録商標)製シートで挟み200℃で5分間アニールした。100kg/cm2のプレ
ス条件下で1分間保持してプレスした後、速やかに冷却して厚みが約0.2mmの試験片を、それぞれ作成した。得られた各試験片の測定結果を表1に示す(実施例1〜4)。
【0093】
[比較例1]
製造例1で得られたハロゲン原子含有ポリプロピレンを所定の金型内に導入して、テフロン(登録商標)製シートで挟み200℃で5分間アニールした。100kg/cm2のプレス
条件下で1分間保持してプレスした後、速やかに冷却して厚みが約0.2mmの試験片を得た。得られた試験片の測定結果を表1に示す(比較例1)。
【0094】
[比較例2]
製造例6で得られたハロゲン原子含有ポリプロピレンを所定の金型内に導入して、比較例1同様に試験片の調製を試みたが、金型から取り出す際に試験片が直ぐに割れてしまい、成型体の調製が出来なかった。
【0095】
[比較例3]
製造例7で得られたハロゲン原子含有ポリプロピレンを所定の金型内に導入して、比較例1同様に試験片の調製を試みたが、金型から取り出す際に試験片が直ぐに割れてしまい、成型体の調製が出来なかった。
【0096】
【表1】

[実施例5〜8]
製造例2〜5で得られたグラフト型オレフィン系重合体を所定の金型内に導入して、テフロン(登録商標)製シートで挟み200℃で5分間アニールした。100kg/cm2のプレ
ス条件下で1分間保持してプレスした後、速やかに冷却して厚みが約0.2mmの試験片を、それぞれ作成した。得られた各試験片の保水率を表2に示す(実施例5〜8)。
【0097】
[比較例4]
製造例1で得られたハロゲン原子含有ポリプロピレンを所定の金型内に導入して、テフロン(登録商標)製シートで挟み200℃で5分間アニールした。100kg/cm2のプレス
条件下で1分間保持してプレスした後、速やかに冷却して厚みが約0.2mmの試験片を得た。得られた試験片の保水率を表1に示す(比較例4)。
【0098】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明にかかる吸水性材料は、吸水性、保水性に優れ、熱可塑性を有しているため成型性が良好である。また、その吸水性能は、吸水性材料の機械強度が強いため薄膜とした場合にも充分使用に耐える。これらの特徴を活かし、本発明の吸水性材料は、シーリング材として土木建築分野、保水材として農園芸分野の他吸水性が要求される各種の分野において有用に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)主鎖骨格である、炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種以上のオレフィンに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするオレフィン連鎖からなり、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が、0.70dl/g以上である重合体セグメントAと、
(2)側鎖骨格である、水溶性(メタ)アクリル酸系モノマーに由来する繰り返し単位を主たる構成単位とするモノマー連鎖からなる重合体セグメントBと
からなるグラフト型オレフィン系重合体を成型した吸水性材料であって、
該吸水性材料の
(i)示差走査熱量計(DSC)測定により求めた融点が、100〜280℃であり、
(ii)保水率が、7%以上であり、
(iii)含水率が、10%以上である
ことを特徴とする吸水性材料。
【請求項2】
前記水溶性(メタ)アクリル酸系モノマーが、ポリエーテル基を含有する水溶性(メタ)アクリル酸系モノマーであることを特徴とする請求項1に記載の吸水性材料。
【請求項3】
前記ポリエーテル基を含有する水溶性(メタ)アクリル酸系モノマーが、ポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする請求項2に記載の吸水性材料。

【公開番号】特開2010−116431(P2010−116431A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288601(P2008−288601)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】