説明

吸水性樹脂を主成分として含む吸水剤およびその製造方法

【課題】吸水性樹脂を主成分として含む、吸収倍率が大きく、通液性が向上した吸水剤およびその製造方法を提供する。
【解決手段】カルボキシル基含有不飽和単量体を含んでなる単量体水溶液中のカルボキシル基含有不飽和単量体を、少なくとも、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する化非高分子化合物合物の存在下で、重合させるとともに、内部架橋させて得た吸水性樹脂を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂を主成分として含む吸水剤およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、吸水性樹脂は尿や血液等の体液を吸収させることを目的として、紙おむつや生理用ナプキン、失禁パット等などの衛生材料(吸収物品)において、体液の吸収に関わる吸収体の主要な構成材料して幅広く利用されている。
【0003】
上記吸水性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、澱粉−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、澱粉−アクリル酸グラフト重合体の中和物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、カルボキシメチルセルロース架橋体、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、カチオン性モノマーの架橋体、架橋イソブチレン−マレイン酸共重合体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とアクリル酸の架橋体等が知られている。
【0004】
従来から上記の吸水性樹脂に望まれる吸水特性としては、体液等の水性液体に接した際の高い吸水倍率、優れた吸収速度、通液性、膨潤ゲルのゲル強度、水性液体を含んだ基材から水を吸い上げる吸引量(液吸い上げ性)等が唱えられている。
【0005】
近年、紙おむつなどの衛生材料は高機能化かつ薄型化が進み、吸水性樹脂の使用量(g)や、衛生材料において吸収体全体に対する吸水性樹脂の使用比率(重量%)を高めることで、吸収量の増大や漏れ防止を図りつつ薄型化を図っている。このように吸水性樹脂を増加させた吸収体は単純に液体を貯蔵するという観点からは好ましい方向である。しかし、実際のおむつ等衛生材料の使用では吸水性樹脂は吸水により膨潤し柔らかいゲル状となり、さらに吸水されるべき後に続く液体(尿や血液)はもはや吸収体に浸透し得ない、いわゆるゲルブロッキングを起こし、吸収量低下や漏れを起こすという問題がある。
【0006】
そこで、吸水性樹脂の通液性が近年注目され、通液性を高めた吸水性樹脂についての報告が多数なされている(例えば、特許文献1〜7等参照)。例えば、粒度分布が通液性に非常に寄与することも知られており(例えば、特許文献8〜11参照)、粒子径を大きくしてゲル隙間を大きくすることにより通液性を向上させる技術が報告されている(例えば、特許文献1等参照)。
【0007】
しかし、通液性を大きくするために粒子径を大きくしてゲル隙間を大きくすると、一般に液吸い上げ性が低下するという問題がある。かかる問題を解決する方法として、粒子表面に4価以上のポリオールを有し、そのヒドロキシル基が部分的にフリーの形で存在する吸水性樹脂粒子を用いることによって、液吸い上げ性を向上させる方法が開示されている(例えば、特許文献12等参照。)
また、吸水性樹脂を表面架橋することなく、通液性を向上させる方法として、ポリビニル系架橋剤およびヒドロキシル含有架橋剤の2種の共有結合架橋剤を用いてポリマーを架橋することにより、高透過性(高通液性)で低吸収容量(低吸収倍率)のポリマーを製造する方法が開示されている(例えば特許文献13等参照。)。
【特許文献1】国際公開第95/26209号パンフレット
【特許文献2】欧州特許第0951913号明細書
【特許文献3】欧州特許第0640330号明細書
【特許文献4】国際公開第2001/066056号パンフレット
【特許文献5】国際公開第98/47454号パンフレット
【特許文献6】米国特許第6414214号明細書
【特許文献7】米国公開2002/128618号明細書
【特許文献8】米国特許第5051259号明細書
【特許文献9】欧州特許第0349240号明細書
【特許文献10】欧州特許第0579764号明細書
【特許文献11】欧州特許第0629411号明細書
【特許文献12】特開2005−154758号公報
【特許文献13】特表2003−518150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の方法により通液性を高めた吸水性樹脂は、通液性は向上しても全体的な吸水特性というバランスの観点では十分ではない。
【0009】
すなわち、粒子径を大きくしてゲル隙間を大きくすることにより通液性を向上させる技術では、上述したように、粒子径を大きくしてゲル隙間を大きくすると、一般に液吸い上げ性や吸収速度が低下するといった問題等がある。
【0010】
また、ポリビニル系架橋剤およびヒドロキシル含有架橋剤の2種の共有結合架橋剤を用いてポリマーを架橋する方法では、高透過性は達成されるが、吸水倍率の低いポリマーしか製造することができない。
【0011】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来の方法とは異なる通液性向上のための方法を見出し、液吸い上げ性、吸収速度、吸水倍率等の吸水特性を低下させることなく通液性を向上させた吸水性樹脂、これを含む吸水剤およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物を内部架橋剤として用いて、当該非高分子化合物の存在下で、カルボキシル基含有不飽和単量体を重合したところ、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を3個以下有する内部架橋剤を単独で、或いは2個以上の重合性エチレン性二重結合を有する内部架橋剤と併用して用いる場合と比較して、通液性が顕著に向上することを初めて見出して本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明にかかる吸水剤は、上記課題を解決するために、カルボキシル基含有不飽和単量体を重合して得られ架橋構造を有する吸水性樹脂を主成分として含む吸水剤であって、上記吸水性樹脂は、少なくとも、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物が内部に導入されていることを特徴としている。
【0014】
また、本発明にかかる吸水剤は、カルボキシル基含有不飽和単量体を重合して得られ架橋構造を有する吸水性樹脂を主成分として含む吸水剤であって、上記吸水性樹脂は、少なくとも、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物が導入され、かつ、導入された非高分子化合物の少なくとも一部で内部架橋されているものであってもよい。
【0015】
また、本発明にかかる吸水剤では、少なくとも一部の上記非高分子化合物は、カルボキシル基と共有結合しうるいずれの官能基も上記吸水性樹脂のカルボキシル基と結合していないものであってもよい。
【0016】
なお、本発明において、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物を内部に導入するとは、該非高分子化合物が吸水性樹脂全体又は吸水性樹脂粒子全体に分布する状態を指し、吸水性樹脂又は吸水性樹脂粒子の表面架橋や表面被覆とは異なる概念である。すなわち、従来、150〜850μm程度の吸水性樹脂粒子の極表層(例えば、0.01〜数μm)を表面架橋又は表面被覆する技術(EP1680470等)は知られている。かかる従来技術では、乾燥した吸水性樹脂粒子に化合物(表面架橋剤又は表面被覆剤)を添加し、その際、必要により少量の溶媒(例えば、吸水性樹脂粒子に対し0.1〜10重量%の水)を使用することで、吸水性樹脂粒子の極表層に化合物(表面架橋剤又は表面被覆剤)を偏在させていたことにより、化合物(表面架橋剤又は表面被覆剤)は吸水性樹脂粒子の極表層に偏在したり、内部に向かって濃度勾配(内部に行くほど淡い)を有しており、吸水性樹脂粒子の中心部には実質存在していなかった。これに対して本発明では、上記非高分子化合物が、吸水性樹脂全体(内部を含む)又は吸水性樹脂粒子全体(内部を含む)に分布又は架橋し、好ましくは、実質的に均一に分布又は架橋していることに特徴がある。このように、吸水性樹脂の内部に上記非高分子化合物を導入することにより、本発明の効果(例えば、通液性の向上)が達成される。
【0017】
また、上記非高分子化合物であって、カルボキシル基と共有結合しうるいずれの官能基も上記吸水性樹脂のカルボキシル基と結合していない未反応の非高分子化合物は、吸水剤に対して100ppm以上含まれていることが好ましい。
【0018】
上記非高分子化合物の分子量は5000以下であることが好ましい。また、上記非高分子化合物の官能基当量は、20以上200g/mol以下であることが好ましい。
【0019】
上記吸水性樹脂は、さらに、一分子中に2個以上の重合性エチレン性二重結合を有する内部架橋剤、及び/又は、一分子中に2個以上の官能基を有する上記非高分子化合物以外の内部架橋剤で内部架橋されていることが好ましい。中でも上記吸水性樹脂は、さらに、一分子中に2個以上の重合性エチレン性二重結合を有する内部架橋剤で内部架橋されていることがより好ましい。上記吸水性樹脂は、さらに有機表面架橋剤及び/又は無機表面架橋剤で、表面架橋されていることが好ましい。
【0020】
上記吸水性樹脂は、粒子状の吸水性樹脂粒子であって、該吸水性樹脂粒子全体に対する、粒子径が150μm以上850μm未満の粒子の割合が90重量%以上であることが好ましい。
【0021】
また、上記カルボキシル基と共有結合しうる官能基は、水酸基および/またはアミノ基であることが好ましい。
【0022】
また、本発明の吸水剤は、さらに、通液性向上剤を含んでいてもよい。また、本発明の吸水剤は、該吸水剤0.5gを20℃の生理食塩水50mlに分散させてなる吸水剤分散液の表面張力が55mN/m以上であることが好ましい。
【0023】
また、本発明の吸水剤は、吸水倍率(CRC)が25g/gより大きいことが好ましく、食塩水流れ誘導性(SFC)が30cm・s・10−7/g以上であることが好ましい。
【0024】
本発明にかかる吸水剤の製造方法は、上記課題を解決するために、カルボキシル基含有不飽和単量体を重合して得られ架橋構造を有する吸水性樹脂を主成分として含む吸水剤を製造する方法であって、上記カルボキシル基含有不飽和単量体を含んでなる単量体水溶液中のカルボキシル基含有不飽和単量体を、少なくとも、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物の存在下で、重合させて含水重合物を得る重合工程と、上記重合工程で得られた含水重合物を乾燥して吸水性樹脂を得る乾燥工程とを含み、上記カルボキシル基含有不飽和単量体に対する、上記カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物の使用量(Y)(単位:mol%)が、以下の式(1)
Y<0.06/{2−(2.35X/100)} ・・・(1)
で示される量であって、式(1)中、Xは前記吸水性樹脂中のカルボキシル基の中和率(単位:モル%)を示し、Xは45以上85以下であることを特徴としている。
【0025】
上記重合工程は、上記カルボキシル基含有不飽和単量体を含んでなる単量体水溶液中のカルボキシル基含有不飽和単量体を、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物と、さらに、一分子中に2個以上の重合性エチレン性二重結合を有する内部架橋剤、及び/又は、一分子中に2個以上の官能基を有する上記非高分子化合物以外の内部架橋剤との存在下で、重合させて含水重合物を得る工程であることが好ましい。また、上記重合工程は、上記カルボキシル基含有不飽和単量体を含んでなる単量体水溶液中のカルボキシル基含有不飽和単量体を、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物と、さらに、一分子中に2個以上の重合性エチレン性二重結合を有する内部架橋剤との存在下で、重合させて含水重合物を得る工程であることがより好ましい。
【0026】
また、本発明にかかる吸水剤の製造方法は、さらに、有機表面架橋剤及び/又は無機表面架橋剤で上記吸水性樹脂の表面を架橋する表面架橋工程を含んでいてもよい。
【0027】
また、本発明にかかる吸水剤の製造方法は、さらに、通液性向上剤を添加する、通液性向上剤添加工程を含んでいることが好ましい。上記通液性向上剤は、水溶性の多価金属化合物または水溶性のポリカチオン化合物であることが好ましく、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物、及び、アミノ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明にかかる吸水剤は、以上のように、カルボキシル基含有不飽和単量体を重合して得られ架橋構造を有する吸水性樹脂を主成分として含む吸水剤であって、上記吸水性樹脂は、少なくとも、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物が内部に導入されているので、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を3個以下有する内部架橋剤を単独で、或いは官能基3個以下の内部架橋剤と2個以上の重合性エチレン性二重結合を有する内部架橋剤とを併用して用いる場合と比較して、通液性が顕著に向上するという効果を奏する。また、液吸い上げ性、吸収速度、吸水倍率等の吸水特性を低下させることなく通液性を向上させた吸水性樹脂を提供することが可能となる。
【0029】
また、本発明にかかる吸水剤では、上記吸水性樹脂が、さらに、2個以上の重合性エチレン性二重結合を有する内部架橋剤(第2架橋剤)及び/又は、2個以上の官能基を有する上記非高分子化合物以外の内部架橋剤(第3架橋剤)で内部架橋されている場合には、重合後のゲル強度が向上し、その取扱性及び吸水剤の物性が向上する。
【0030】
また、本発明にかかる吸水剤の製造方法は、以上のように、カルボキシル基含有不飽和単量体を、少なくとも、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物の存在下で重合させ、該非高分子化合物を、内部に導入する構成を備えているので、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を3個以下有する内部架橋剤を単独で、或いは官能基3個以下の内部架橋剤と2個以上の重合性エチレン性二重結合を有する内部架橋剤とを併用して用いる場合と比較して、通液性が顕著に向上した吸水剤を製造することができるという効果を奏する。また、液吸い上げ性、吸収速度、吸水倍率等の吸水特性を低下させることなく通液性を向上させた吸水性樹脂を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の吸水剤、およびその製造方法について説明する。また、本発明における、(a)吸水倍率(CRC:Centrifuge Retention Capacity)、(b)加圧下吸収倍率(AAP:Absorbency Against Pressure)、(c)吸収速度(FSR:Free Swell Rate)、(d)食塩水流れ誘導性(SFC:Saline Flow Conductivity)、(e)粒子径、(f)粒度分布の対数標準偏差(σζ)、(g)嵩比重、(h)可溶分量、(i)不揮発分量または含水率、(j)表面張力、及び(k)吸水剤に対する未反応の非高分子化合物の量は、後述する実施例に記載する方法によって測定した数値とする。なお、本発明においては、「重量」は「質量」と同義語として扱い、「重量%」は「質量%」と同義語として扱う。
【0032】
(1)本発明にかかる吸水剤
本発明にかかる吸水剤は、カルボキシル基含有不飽和単量体を重合して得られる吸水性樹脂を主成分として含み、該吸水性樹脂は架橋構造を有しており、少なくとも、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物が内部に導入(好ましくは吸水性樹脂中に均一に導入)されている。ここで、該吸水性樹脂の内部に導入されている上記非高分子化合物は、該吸水性樹脂のカルボキシル基と結合していることが好ましく、該吸水性樹脂を内部架橋していることがより好ましい。なお、吸水性樹脂が架橋構造を有する限り、上記非高分子化合物の少なくとも一部は、カルボキシル基と共有結合しうるいずれの官能基も上記吸水性樹脂のカルボキシル基と結合しないで該吸水性樹脂の内部に含有されていてもよい。したがって、少なくとも、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物が該吸水性樹脂の内部に導入されている態様には、上記非高分子化合物の全部が、カルボキシル基と共有結合しうるいずれの官能基も上記吸水性樹脂のカルボキシル基と結合しないで該吸水性樹脂の内部に含有されている構成も含まれる。
【0033】
なお、本発明において「非高分子化合物」とは、高分子化合物以外の化合物をいう。ここで「高分子化合物」とは、重合により得られ、または、天然に存在する、同じ構造部分が繰り返された化合物であって、分子量(重量平均分子量)が5000より大きい化合物をいう。
【0034】
本発明で吸水剤とは、吸水性樹脂を主成分とし、必要により少量の添加剤および/または水を含有する、水性液体の吸収固化剤のことを指す。ここで「主成分」とは、吸水性樹脂の含有量が吸水剤全体に対して50重量%以上であることをいう。吸水性樹脂の含有量は吸水剤全体中、好ましくは60重量%以上100重量%以下、より好ましくは80重量%以上100重量%以下、さらに好ましくは90重量%以上100%以下、特に好ましくは95重量%以上100%以下、最も好ましくは98重量%以上100%以下含有している。したがって、本発明の吸水剤には、吸水性樹脂のみからなるものも含まれる。上記吸水剤中の吸水性樹脂以外の成分としては、通常は水が主成分とされ、さらには後述の添加剤が使用される。なお、上記水性液体としては、水に限らず、尿、血液、糞、廃液、湿気や蒸気、氷、水と有機溶媒および/または無機溶媒との混合物、雨水、地下水など、水を含めば特定に制限されないが、好ましくは、尿、特に人尿を挙げることができる。
【0035】
以下、(1−1)本発明の吸水剤に含まれる吸水性樹脂、(1−2)吸水性樹脂以外の成分、(1−3)吸水性樹脂および吸水剤の形状と粒子径、(1−4)本発明の吸水剤の吸水特性、(1−5)本発明の吸水剤の利用について順に説明する。
【0036】
(1−1)本発明の吸水剤に含まれる吸水性樹脂
本発明で用いられる吸水性樹脂は、カルボキシル基含有不飽和単量体を重合して得られる吸水性樹脂であって、架橋構造を有しており、少なくとも、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物が内部に導入されており、該非高分子化合物は、好ましくは内部で該吸水性樹脂のカルボキシル基と結合し、より好ましくは、該吸水性樹脂を内部架橋している。また、上記非高分子化合物の少なくとも一部は、カルボキシル基と共有結合しうるいずれの官能基も上記吸水性樹脂のカルボキシル基と結合しないで該吸水性樹脂の内部に含有されていてもよい。なお、上記非高分子化合物の少なくとも一部が、カルボキシル基と共有結合しうるいずれの官能基も上記吸水性樹脂のカルボキシル基と結合しないで該吸水性樹脂の内部に含有されているとは、上記非高分子化合物の全量が、カルボキシル基と共有結合しうるいずれの官能基も上記吸水性樹脂のカルボキシル基と結合しないで該吸水性樹脂の内部に含有されている構成も含む趣旨である。
【0037】
本発明において、吸水性樹脂とは、ヒドロゲルを形成しうる水膨潤性水不溶性の架橋重合体のことをいう。ここで、一般に「水膨潤性」とは、例えば、イオン交換水中において必須に自重の5倍以上、より好ましくは10倍以上、さらに好ましくは20倍以上、特に好ましくは50倍から1000倍という多量の水を吸収するものを指す。また、「水膨潤性」の架橋重合体は、「イオン交換水中における吸水倍率」が5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上、特に好ましくは50から1000のものであるということもできる。なお、「イオン交換水中における吸水倍率」は、測定対象として吸水性樹脂または吸水剤0.020gを用い、イオン交換水中で測定する以外は、後述する吸水倍率(CRC)の測定法と同様にして得られる値である。
【0038】
また、「水不溶性」とは吸水性樹脂中の未架橋の可溶分量(水溶性高分子)が、好ましくは、吸水性樹脂全体の重量の0以上50重量%以下、より好ましくは25重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下、特に好ましくは10重量%以下のものを指す。なお、これらの測定法は本発明の実施例に準じていればよい。
【0039】
<カルボキシル基含有不飽和単量体を重合して得られる吸水性樹脂>
本発明では吸水性樹脂として、通液性の面から、カルボキシル基含有不飽和単量体を重合して得られる架橋構造を有する吸水性樹脂が好ましく用いられる。また、アクリロニトリルなど重合後の加水分解によって重合後にカルボキシル基となる単量体も本発明ではカルボキシル基含有不飽和単量体とするが、好ましくは、重合時にカルボキシル基を含有するカルボキシル基含有不飽和単量体が用いられる。
【0040】
カルボキシル基含有不飽和単量体を重合して得られる吸水性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、ケイ皮酸等のカルボキシル基を有するカルボキシル基含有不飽和単量体および/またはその塩(中和物)を重合および架橋して得られる重合体;デンプン−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物;デンプン−アクリル酸グラフト重合体;酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物;アクリロニトリル共重合体もしくはアクリルアミド共重合体の加水分解物、またはこれらの架橋体;カルボキシル基含有架橋ポリビニルアルコール変性物;架橋イソブチレン−無水マレイン酸共重合体;あるいはこれらの1種または2種以上の組み合わせを挙げることができる。中でも、上記吸水性樹脂は、アクリル酸および/またはその塩(中和物)を主成分とする単量体を重合することにより得られるポリアクリル酸(塩)系架橋重合体であることが好ましい。
【0041】
本発明においてポリアクリル酸(塩)系架橋重合体とは、アクリル酸および/またはその塩を、単量体の全量に対して、好ましくは50〜100モル%、より好ましくは70〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%含む単量体(架橋剤を除く)を重合して得られる、内部に架橋構造を有する重合体である。
【0042】
また、上記吸水性樹脂中のカルボキシル基は、その45〜85モル%が中和されて塩を形成していることが好ましい。言い換えれば、上記吸水性樹脂中のカルボキシル基の中和率は45〜85モル%であることが好ましく、50〜85モル%であることがより好ましく、55〜80モル%であることがさらに好ましく、60〜75モル%であることが特に好ましい。また、塩としてはナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などの1種または2種以上を例示することができる。塩を形成させるためのカルボキシル基の中和は、重合前に単量体の状態で行っても良いし、あるいは重合途中や重合後に重合体の状態で行っても良いし、それらを併用してもよい。
【0043】
なお、吸水性樹脂中のカルボキシル基の中和率は、未中和のカルボキシル基含有不飽和単量体の量と、重合前、重合途中、および/または重合後に中和に用いた全塩基量とから計算により求めることができる。また、後述するように、吸水性樹脂中の可溶分量を抽出し滴定により求めてもよい。
【0044】
本発明に好ましく用いられる吸水性樹脂は、主成分として用いられるカルボキシル基含有不飽和単量体(ポリアクリル酸(塩)系架橋重合体の場合はアクリル酸および/またはその塩)に併用して、必要によりその他の単量体を共重合させたものであってもよい。
【0045】
併用されるその他の単量体としては、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリロキシアルカンスルホン酸およびこれらの酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソブチレン、ラウリル(メタ)アクリレート等の水溶性または疎水性不飽和単量体等が挙げられる。
【0046】
上記吸水性樹脂がポリアクリル酸(塩)系架橋重合体であるとき、アクリル酸(塩)以外の単量体を用いる場合には、該アクリル酸(塩)以外の単量体は、該アクリル酸(塩)以外の単量体と主成分として用いるアクリル酸および/またはその塩との合計量に対して、好ましくは0〜30モル%、より好ましくは0〜10モル%の割合である。これにより、最終的に得られる吸水性樹脂および吸水剤の吸収特性がより一層向上すると共に、吸水性樹脂(吸水剤)をより一層安価に得ることができる。
【0047】
<架橋構造>
本発明で用いられる吸水性樹脂は、少なくとも吸水性樹脂の内部に、より好ましくは吸水性樹脂の内部及び表面に架橋構造を有している。
【0048】
また、本発明で用いられる吸水性樹脂は、少なくとも、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物が内部に導入されている。これにより、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を3個以下有する内部架橋剤を単独で、或いは官能基3個以下の内部架橋剤と2個以上の重合性エチレン性二重結合を有する内部架橋剤とを併用して用いる場合と比較して、得られる吸水性樹脂および吸水剤の通液性が格段に高くなる。
【0049】
なお、上述したように、上記非高分子化合物は、好ましくは上記吸水性樹脂を内部架橋しているが、結合していても内部架橋構造を形成していない場合や、カルボキシル基と共有結合しうるいずれの官能基も上記吸水性樹脂のカルボキシル基と結合しないで該吸水性樹脂の内部に含有されている場合がある。このように上記非高分子化合物が吸水性樹脂を内部架橋していない場合には、本発明に用いられる上記吸水性樹脂は、後述する自己架橋型のモノマー;後述する他の内部架橋剤;上記非高分子化合物が後述するようにさらに重合性エチレン性二重結合等を有している場合にはかかる重合性エチレン性二重結合等によって内部架橋されている。
【0050】
ここで、カルボキシル基と共有結合しうる官能基としては、吸水性樹脂のカルボキシル基と結合する官能基であれば、特に限定されるものではないが、例えば、水酸基、アミノ基、エポキシ基、オキセタン基、エチレンイミン基(アジリジン基)、イソシアネート基、オキサゾリン、シクロカーボネート、オキサゾリジノン、環状ウレア、アジチジニウム塩基、クロロヒドリン等を挙げることができる。中でも、上記官能基は、水酸基、アミノ基、オキセタン基、オキサゾリン、シクロカーボネート、オキサゾリジノン、環状ウレア等であることがより好ましい。これにより、より安全性に優れた吸水剤を提供することができる。
【0051】
したがって、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物としては、例えば、水酸基を4個以上有する非高分子化合物;アミノ基を4個以上有する非高分子化合物;エポキシ基を4個以上有する非高分子化合物;オキセタン基を4個以上有する非高分子化合物;エチレンイミン基(アジリジン基)を4個以上有する非高分子化合物;イソシアネート基を4個以上有する非高分子化合物;オキサゾリンを4個以上有する非高分子化合物;シクロカーボネートを4個以上有する非高分子化合物;オキサゾリジノンを4個以上有する非高分子化合物;環状ウレアを4個以上有する非高分子化合物;アジチジニウム塩基を4個以上有する非高分子化合物;クロロヒドリンを4個以上有する非高分子化合物;水酸基、アミノ基、エポキシ基、オキセタン基、エチレンイミン基(アジリジン基)、イソシアネート基、オキサゾリン、シクロカーボネート、オキサゾリジノン、環状ウレア、アジチジニウム塩基、およびクロロヒドリンから選ばれる2種類以上の基を有しそれらの基が合わせて4個以上である非高分子化合物等を挙げることができる。中でも、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物は、水酸基、アミノ基、オキセタン基、オキサゾリン、シクロカーボネート、オキサゾリジノン、及び、環状ウレアから選ばれる1種類以上の基を有しそれらの基が合わせて4個以上である非高分子化合物であることがより好ましい。これにより、より安全性に優れた吸水剤を提供することができる。また、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物は水酸基を4個以上有する非高分子化合物であることがさらに好ましい。なお、複数の種類の基を有する非高分子化合物の場合、各種類の基の比率は特に限定されるものではない。
【0052】
また、上記非高分子化合物は、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有していればよく、さらに、重合性エチレン性二重結合、イオン結合性の官能基等を1つ以上有していてもよい。
【0053】
また、上記非高分子化合物は、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有していれば、特に限定されるものではないが、好ましくは4〜50個、より好ましくは4〜20個、さらに好ましくは4〜10個、特に好ましくは4〜6個有している。また、その炭素数は、カルボキシル基と共有結合しうる官能基の個数の0.5〜4倍が好ましく、1〜2倍の範囲であることがより好ましい。かかる官能基の数が4個未満である場合または50個より大きい場合は通液性の向上に乏しい。
【0054】
水酸基を4個以上有する上記非高分子化合物としては、具体的には、例えば、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール;エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、オリゴ糖アルコール等の糖アルコール類;キシロース、グルコース、グロース、マンノース、イドース等のアルドース類;フルクトース、ソルボース等のケトース類等を挙げることができる。また、アミノ基を4個以上有する非高分子化合物としては、例えば、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ペンタエチレンヘキサアミン等を挙げることができる。また、水酸基とアミノ基とを有する非高分子化合物としては、例えば、2−アミノ−2ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、N,N−ビス(2ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等を挙げることができる。また、これらの非高分子化合物は1種類の非高分子化合物を単独で用いてもよいし、2種以上の非高分子化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
中でも、前記カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物は、水酸基を4個以上有する非高分子化合物であることがより好ましく、糖アルコール類であることがより好ましく、エリスリトール、キシリトール、ソルビトールであることがさらに好ましく、キシリトール、ソルビトールであることが特に好ましく、ソルビトールであることが最も好ましい。また、これらは、非常に安全性が高いことからも好ましい。
【0056】
また、前記カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物は、添加の容易さおよび均一な架橋を行う点から、室温で100gの純水に0.1g以上、より好ましくは1g以上、さらに好ましくは10g以上溶解する水溶性であることが好ましい。
【0057】
また、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物は、その分子量が好ましくは5000以下であり、より好ましくは2000以下であり、さらに好ましくは1000以下であり、特に好ましくは500以下であり、最も好ましくは200以下である。また、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物の分子量の下限は特に限定されるものではないが、50であることが好ましく、80であることがより好ましく、90でありことがさらに好ましい。上記非高分子化合物の分子量が、5000よりも大きい、あるいは、50よりも小さいと、効率的に内部架橋されないため好ましくない。さらに、ポリビニルアルコールやデンプンなどの高分子化合物は、得られる吸水性樹脂の物性も低く、乾燥時に容易に着色するため好ましくない。
【0058】
また、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物は、その官能基当量が、20以上200g/mol以下であることが好ましく、30以上100g/mol以下であることがさらに好ましい。ここで、官能基当量とは、上記非高分子化合物の分子量を、その非高分子化合物が有する「カルボキシル基と共有結合しうる官能基」の数で除した値をいう。上記官能基当量が200g/molより大きい、あるいは、20g/molより小さいと、効率的に内部架橋されないため好ましくない。
【0059】
なお、上記非高分子化合物は、カルボキシル基と共有結合しうるフリーの官能基が4個以上残存していれば、その官能基の一部が修飾されていてもよい。得られる吸水性樹脂の親水性や、物性面、安全性の面、さらには加熱処理後の着色の面から、好ましくは、官能基が無修飾の上記非高分子化合物が使用される。
【0060】
なお、上記非高分子化合物は、好ましくは、吸水性樹脂の内部において該吸水性樹脂のカルボキシル基と共有結合し、該吸水性樹脂を内部架橋している。なお、上記官能基は吸水性樹脂のカルボキシル基と共有結合していることが好ましいが、必ずしも全ての官能基が、吸水性樹脂のカルボキシル基と共有結合している必要はなく、官能基の一部が吸水性樹脂のカルボキシル基と共有結合せずにフリーで存在していてもよい。また、使用した官能基を4個以上有する非高分子化合物の一部または全部が未反応(いずれの官能基も結合していない)で存在していてもよい。
【0061】
カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物をAとするときに、その官能基が吸水性樹脂のカルボキシル基といずれの官能基も全く結合していないAを未反応Aとする。かかる未反応Aは、吸水性樹脂から抽出し、抽出物を液体クロマトグラフィー(LC、Liquid Chromatography)等で分析することにより定量することができる。抽出の方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を適宜選択すればよいが、例えば、吸水性樹脂1gを0.9重量%塩化ナトリウム水溶液中で2時間以上攪拌し、攪拌後の塩化ナトリウム水溶液をろ過することにより得ることができ、ろ液として得られる抽出液を液体クロマトグラフィー(LC、Liquid Chromatography)で分析すればよい。ここで、上記方法により抽出される上記非高分子化合物の量は、上記非高分子化合物の全使用量に対して、0〜100重量%であり、より好ましくは10〜50重量%である。
【0062】
また、4個の官能基の少なくとも1個がカルボキシル基と結合しているAを反応Aとする。かかる反応Aは、未反応Aを例えば上記方法により抽出した後、吸水性樹脂を加水分解し、架橋点や反応点を切断後、得られた液中の非高分子化合物をガスクロマトグラフィー質量分析(GC−MS、Gas Chromatography-Mass Spectrometry)や液体クロマトグラフィー質量分析(LC−MS、Liquid Chromatography-Mass Spectrometry)等で分析することにより定量することができる。
【0063】
本発明にかかる吸水剤では、上記非高分子化合物であって、いずれの官能基も上記吸水性樹脂のカルボキシル基と結合していない未反応の非高分子化合物は、使用量の全量又は一部であり、吸水剤に対して100ppm以上含まれていることが好ましく、150ppm以上含まれていることがより好ましく、200ppm以上含まれていることがさらに好ましい。未反応の非高分子化合物が、100ppm以上残存することにより、理由は不明であるが、通液性能が向上する。なお、吸水剤に含まれる未反応の非高分子化合物の上限は、通常10000ppmであり、好ましくは5000ppmであり、より好ましくは1000ppmである。
【0064】
本発明にかかる吸水剤では、上記吸水性樹脂は、内部に上記非高分子化合物が導入されている。すなわち上記吸水性樹脂は、(i)内部で上記非高分子化合物と結合し好ましくは内部架橋されている、及び/又は、(ii)未反応の上記非高分子化合物を含有している。ここで、上記吸水性樹脂の内部に、官能基を4個以上有する非高分子化合物が、導入されていることは、吸水性樹脂又は吸水剤の表面付近のみに存在する非高分子化合物量と吸水性樹脂又は吸水剤の内部に存在する非高分子化合物量とを比較することにより確認することができる。吸水性樹脂又は吸水剤の表面付近のみに存在する非高分子化合物量は、吸水剤をエタノール等のアルコール等でリンスし、そのリンスした液体中に含まれる、残存官能基を4個以上有する非高分子化合物量を、液体クロマトグラフィー等で測定することにより容易に求めることができる。
【0065】
吸水性樹脂又は吸水剤の内部に存在する未反応の非高分子化合物量は、例えば、吸水性樹脂又は吸水剤を0.9重量%塩化ナトリウム水溶液で抽出し、抽出液を液体クロマトグラフィー等で測定することにより求めることができる。
【0066】
また、上記吸水性樹脂の内部が、官能基を4個以上有する非高分子化合物で、架橋(好ましくは均一に架橋)されていることは、熱風乾燥機等で例えば、200℃で2時間加熱した吸水性樹脂又は吸水剤を割るか、又は、研磨し、吸水剤内部を観察することによっても容易に確認することができる。内部まで均一に着色している場合、上記吸水性樹脂の内部が、官能基を4個以上有する非高分子化合物で、架橋(好ましくは均一に架橋)されていることが確認できる。
【0067】
本発明で用いられる吸水性樹脂は、少なくとも、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物(第1架橋剤)が内部に導入されていればよいが、該第1架橋剤による内部架橋に加えて、または、該第1架橋剤による内部架橋の代わりに、上記非高分子化合物以外の他の内部架橋剤による内部架橋構造を有していてもよい。かかる内部架橋構造は、架橋剤を使用しない自己架橋型のものであってもよいし、一分子中に2個以上、好ましくは2〜4の重合性エチレン性二重結合を有する内部架橋剤(第2架橋剤)、及び/又は、一分子中に2個以上、好ましくは2〜4の官能基を有する上記非高分子化合物以外の内部架橋剤(第3架橋剤)を共重合又は反応させたものであってもよい。ここで、官能基とは、分子内の反応性に富む基をいい、共有結合性の官能基と、イオン結合性の官能基とを含む趣旨である。中でも、本発明で用いられる吸水性樹脂は、少なくとも、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物(第1架橋剤)および2個以上の重合性エチレン性二重結合を有する内部架橋剤(第2架橋剤)及び/又は、2個以上の官能基を有する上記非高分子化合物以外の内部架橋剤(第3架橋剤)を併用すること、すなわち、二種内部架橋又は三種内部架橋であることがより好ましい。また、本発明で用いられる吸水性樹脂は、少なくとも、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物(第1架橋剤)および2個以上の重合性エチレン性二重結合を有する内部架橋剤(第2架橋剤)を併用すること、すなわち、二種内部架橋であることがさらに好ましい。これにより、重合後のゲル強度が向上し、その取扱性及び吸水剤の物性が向上するので好ましい。
【0068】
上記第2架橋剤、すなわち、一分子中に2個以上の重合性エチレン性二重結合を有する内部架橋剤の具体例としては、例えば、N,N´−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン等を挙げることができる。これらの重合性架橋剤は、通常カルボキシル基含有不飽和単量体に対して0〜10モル%、より好ましくは0.001モル%〜0.3モル%使用され、架橋に用いられることにより重合後は実質N.D.(検出限界の1ppm以下)となる。
【0069】
また、第3架橋剤、すなわち、一分子中に2個以上の官能基を有する上記非高分子化合物以外の内部架橋剤、すなわち、2個以上の共有結合性、イオン結合性の官能基を有する上記非高分子化合物以外の内部架橋剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、2−アミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体等の多価アルコール化合物や、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、ジルコニウム等の水酸化物又は塩化物等の多価金属化合物、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、グリシジル(メタ)アクリレートなども挙げられる。
【0070】
これら内部架橋剤(第2架橋剤、第3架橋剤)は、単独で用いてもよく、適宜2種類以上を混合して用いてもよい。
【0071】
本発明で用いられる吸水性樹脂は、少なくとも、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物が内部に導入されていればよいが、さらに表面架橋されているものであることがより好ましい。
【0072】
上記表面架橋を行うための表面架橋剤としては、種々のものがあるが、物性の観点から、例えば、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、多価アミン化合物、多価アミン化合物のハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、モノオキサゾリジノン化合物、ジオキサゾリジノン化合物、ポリオキサゾリジノン化合物、多価金属塩、アルキレンカーボネート化合物等の有機表面架橋剤(第4架橋剤)を挙げることができる。具体的には、米国特許6228930号明細書、同6071976号明細書、同6254990号明細書などに例示されている表面架橋剤を用いることができる。より具体的には、上記表面架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,3,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール等の多価アルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリシドール等のエポキシ化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン等の多価アミン化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;上記多価アミン化合物と上記ハロエポキシ化合物との縮合物;2−オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン化合物(US6559239);オキセタン化合物;環状尿素化合物;エチレンカーボネートなどのアルキレンカーボネート化合物(US5409771)等が挙げられるが、特に限定されるものではない。本発明の効果を最大限にするために、これらの架橋剤の中でも少なくともオキセタン化合物(US2002/72471)、環状尿素化合物、多価アルコールから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、より好ましくは炭素数3〜10のオキセタン化合物あるいは炭素数2〜10の多価アルコールから選ばれる少なくとも1種、さらに好ましくは炭素数3〜8の多価アルコールが用いられる。また、架橋剤を含むモノマーで表面架橋する方法(特許第2530668号)、ラジカル開始剤で表面架橋する方法(特開昭63−99211号公報)、ラジカル開始剤とモノマーで表面架橋する方法(US2005−0048221)等も好適に用いることができる。これにより、本発明に用いられる吸水性樹脂が、上記非高分子化合物(第1架橋剤)、上記他の内部架橋剤(第2架橋剤及び/又は第3架橋剤)、及び、表面架橋剤好ましくは有機表面架橋剤(第4架橋剤)で架橋されている場合には、内部架橋および表面架橋を合わせて3種以上の架橋を有する吸水性樹脂を得ることができる。
【0073】
また、上記表面架橋を行うための表面架橋剤は、無機表面架橋剤(第5架橋剤)であってもよい。かかる無機表面架橋剤(第5架橋剤)としては、より具体的には、例えば、(1−2)で後述する無機表面架橋剤を好適に用いることができる。
【0074】
上記表面架橋剤は、単独で用いてもよいし、2以上の表面架橋剤を組み合わせて用いてもよい。また、有機表面架橋剤(第4架橋剤)と、無機表面架橋剤(第5架橋剤)とを組み合わせて用いてもよい。これにより、本発明に用いられる吸水性樹脂が、上記非高分子化合物(第1架橋剤)、上記他の内部架橋剤(第2架橋剤及び/又は第3架橋剤)、上記有機表面架橋剤(第4架橋剤)、及び、上記無機表面架橋剤(第5架橋剤)で架橋されている場合には、内部架橋および表面架橋を合わせて4種以上の架橋を有する吸水性樹脂を得ることができる。かかる4種以上の架橋を有する吸水性樹脂を用いた吸水剤の中では、カルボキシル基含有不飽和単量体を重合して得られ架橋構造を有する吸水性樹脂を主成分として含む吸水剤であって、上記吸水性樹脂は、樹脂内部が、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物、及び、一分子中に2個以上の重合性エチレン性二重結合を有する内部架橋剤で内部架橋され、樹脂表面が有機表面架橋剤及び無機表面架橋剤で表面架橋されている吸水剤がより好適である。
【0075】
また、本発明で用いられる吸水性樹脂の表面は、特許文献12に記載のように、4価以上のポリオールおよび必要に応じて3価以上のポリカチオンを少なくとも表面に含有していてもよい。これにより、粒子状吸水性樹脂組成物のぬれ性が発揮される。
【0076】
(1−2)吸水性樹脂以外の成分
本発明にかかる吸水剤は、吸水性樹脂を主成分とし、必要により少量の添加剤および/または水を含有している。本発明の吸水剤は、かかる添加剤として、通液性向上剤を含有していることが好ましい。これにより、吸水剤の通液性を向上させることができる。なお、本明細書において、通液性向上剤とは、SFCが1以上である吸水性樹脂または吸水剤のSFCを10以上向上させる剤のことをいう。
【0077】
通液性向上剤を吸水性樹脂または吸水剤と混合することにより、水性液を吸収した後の吸水性樹脂または吸水剤の通液路が物理的またはイオン的に保持され、それゆえ通液性を向上させることが可能となる。
【0078】
通液性向上剤としては、例えば、硫酸アルミニウム、カリウム明礬、アンモニウム明礬、ナトリウム明礬、(ポリ)塩化アルミニウム、これらの水和物などの水溶性の多価金属化合物;ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンなどのポリカチオン化合物;シリカ、アルミナ、ベントナイトなどの非水溶性の無機微粒子;などが挙げられ、これらの1種のみ用いても良いし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、硫酸アルミニウム、カリウム明礬などの水溶性多価金属塩が架橋剤(第5架橋剤:無機表面架橋剤)として働き、食塩水流れ誘導性(SFC)が向上する点で好ましい。
【0079】
通液性向上剤は、吸水性樹脂に対して、0.001〜10重量%の割合で用いることが好ましく、0.01〜5重量%の割合で用いることがより好ましい。
【0080】
なお、通液性向上剤は、吸水剤の通液性を向上させることができるものであればよいが、吸水性樹脂の表面の官能基と共有結合しない物質であることが好ましい。
【0081】
また、本発明にかかる吸水剤は、さらに添加剤として、必要に応じて、消臭剤、抗菌剤、香料、発泡剤、顔料、染料、可塑剤、粘着剤、界面活性剤、肥料、酸化剤、還元剤、水、塩類、キレート剤、殺菌剤、ポリエチレングリコールなどの親水性高分子、パラフィン、疎水性高分子、ポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂、ポリエステル樹脂やユリア樹脂などの熱硬化性樹脂等を、吸水剤の通液性等の吸水特性を低下しない範囲、例えば、吸水性樹脂に対して0〜10重量%程度含有していてもよい。
【0082】
また、本発明の吸水剤は、添加剤として、無機粉末を含有してもよいが、吸水剤の通液性等の吸水特性を低下しない範囲で添加することが好ましい。用いられる無機粉末としては、具体的には、例えば、二酸化珪素や酸化チタン等の金属酸化物、天然ゼオライトや合成ゼオライト等の珪酸(塩)、カオリン、タルク、クレー、ベントナイト等が挙げられ、コールターカウンター法により測定された平均粒子径が200μm以下の二酸化珪素及び珪酸(塩)が好ましい。上記無機粉末が固体粒子である場合、その使用量は、吸水性樹脂および/または吸水剤の組成にもよるが、例えば、吸水性樹脂に対し、好ましくは0〜0.5重量%、より好ましくは0〜0.3重量%、さらに好ましくは0〜0.1重量%、特に好ましくは0〜0.05重量%である。固体粒子状の無機粉末の添加量が0.5重量部より多い場合、前述した均一な性能を持つおむつなどの吸水性物品を得ることが困難となるおそれがあり、好ましくない。
【0083】
(1−3)吸水性樹脂および本発明の吸水剤の形状と粒子径
本発明で用いられる吸水性樹脂および本発明の吸水剤の形状は特に限定されるものではないが、本発明を達成する上で、粒子状であることが好ましく、特定の粒子径に調整されたものであることがより好ましい。本発明で用いられる吸水性樹脂および本発明の吸水剤の粒子径は、好ましくは、850μm未満で150μm以上の粒子(ふるい分級で規定:JIS Z8801−1:2000)が全体の90重量%以上、上限100%であり、より好ましくは、850μm未満で150μm以上の粒子が全体の95重量%以上であり、さらに好ましくは850μm未満で150μm以上の粒子が全体の98重量%以上である。また、300μm以上の粒子が全体の60重量%以上であることが好ましい。なお、ここで全体とは、吸水性樹脂の粒子径については粒子状吸水性樹脂全体を、吸水剤の粒子径については吸水剤全体を意味する。
【0084】
また、吸水性樹脂あるいは吸水剤の重量平均粒子径(D50)は、好ましくは200〜850μm、より好ましくは200〜600μm、さらに好ましくは300〜600μm、特に好ましくは300〜500μm、最も好ましくは350〜450μmとされる。吸水性樹脂および吸水剤の粒子径は必要により造粒などで調整してもよい。
【0085】
また、吸水性樹脂や吸水剤の粒子形状は、特に限定されるものではなく、球状、破砕状、不定形状等であればよいが、粉砕工程を経て得られた不定形破砕状のものが好ましく使用できる。さらに、その嵩比重(JIS K−3362:1998で規定)は、好ましくは0.40〜0.80g/ml、より好ましくは0.50〜0.75g/ml、さらに好ましくは0.60〜0.73g/mlの範囲である。
【0086】
また、本発明における吸水性樹脂や吸水剤は、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が、好ましくは0.1〜0.45、より好ましくは0.25〜0.45、さらに好ましくは0.30〜0.40である。粒度分布の対数標準偏差(σζ)が小さいほど粒度分布が狭いことを表すが、本発明における吸水性樹脂や吸水剤では粒度分布が単に狭いのではなく、ある程度の広がりをもつことが重要となる。対数標準偏差(σζ)が0.1未満の場合は、目的とする性能が得られないことがあるだけでなく、生産性が著しく低下してしまう。0.45を超える場合には粒度分布が広がりすぎて、目的とする性能が得られない恐れがある。
【0087】
なお、本発明で言う「300μm以上の粒子」とは後述する篩分級方法で分級された後に、測定される300μmの目開きを有するJIS標準篩の上に残った粒子を指す。また、「300μm未満の粒子」とは同様に後述する分級方法で分級された後に、測定される300μmの目開きを有するメッシュを通過した粒子を指す。他の目開きの大きさについても同様である。また、300μmの目開きを有するメッシュで粒子の50重量%が分級される場合、その重量平均粒子径(D50)は300μmである。
【0088】
なお、粒度調整は、重合、含水重合物粉砕(別称:含水重合物細分化)、乾燥、粉砕、分級、造粒、複数の吸水性樹脂粒子の混合などで、適宜調整すればよい。
(1−4)本発明の吸水剤の吸水特性
本発明の吸水剤は、吸水倍率(CRC)が、25g/gより大きいことが好ましい。これにより、本発明の吸水剤をおむつ等の衛生材料用いるときに、水性液体を吸収し保持する性能に優れるため好ましい。本発明は、吸水倍率を低下させることなく通液性を向上させることを可能とするものであり、吸水倍率(CRC)が25g/gより大きい場合も高い通液性を併せ持つ吸水剤を提供する。もちろん、吸水倍率(CRC)は、5g/g以上であれば、25g/g以下であってもよいが、水性液体を吸収し保持する性能の面から、吸水倍率(CRC)は、好ましくは25g/g以上50g/g以下、さらに好ましくは26g/g以上40g/g以下、特に好ましくは27g/g以上35g/g以下、最も好ましくは28g/g以上35g/g以下の範囲である。吸水倍率(CRC)が25g/gよりも小さいと、吸水剤の使用量が多くなるため好ましくない。なお、本発明において「吸水倍率」なる語は「吸収倍率」なる語と同義語である。
【0089】
吸水倍率(CRC)は、重合や架橋の条件を調整することにより、制御することが可能である。吸水倍率(CRC)は、単量体の種類や、架橋剤の種類等にもよるが、内部架橋に用いるカルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物(第1架橋剤)、及び/又は、2個以上の重合性エチレン性二重結合を有する架橋剤(第2架橋剤)の使用量を調整することにより制御することができる。ここで、上記非高分子化合物の使用量を調整するにあたっては、使用する上記非高分子化合物のカルボキシル基への結合は、吸水性樹脂のカルボキシル基の中和率に依存するため、カルボキシル基の中和率を考慮する必要がある。かかる中和率を考慮すると、吸水倍率(CRC)が、25g/gより大きい値となるために必要な上記非高分子化合物の使用量は、中和率との関係式として表すことができる。
【0090】
すなわち、上記カルボキシル基含有不飽和単量体に対する上記非高分子化合物の使用量(Y)(単位:モル%)は、以下の式(1)
Y<0.06/{2−(2.35X/100)} ・・・(1)
で示される量であって、式(1)中、前記吸水性樹脂中のカルボキシル基の中和率Xは45モル%以上85モル%以下であることが好ましい。
【0091】
また、本発明の吸水剤は、通液性の評価にあたる、食塩水流れ誘導性(SFC)が、30cm・s・10−7/g以上であり、好ましくは40cm・s・10−7/g以上、より好ましくは45cm・s・10−7/g以上、さらに好ましくは50cm・s・10−7/g以上、特に好ましくは55cm・s・10−7/g以上、最も好ましくは60cm・s・10−7/g以上である。上限値は特に限定されないが、好ましくは400cm・s・10−7/g以下、より好ましくは300cm・s・10−7/g以下、さらに好ましくは200cm・s・10−7/g以下である。食塩水流れ誘導性(SFC)が30cm・s・10−7/gよりも小さいと、例えば、尿等の水性液体が吸収体内で拡散されにくくなることで吸収体に吸収されにくくなり、漏れを起こすおそれがある。
【0092】
なお、本発明における「通液性」とは、吸水剤が加圧下で吸水膨潤した後の加圧下での通液性能、すなわち、膨潤ゲル粒子間の加圧下通液性であり、実使用時のおむつでの通液性モデルである。
【0093】
本発明の吸水剤は、加圧下吸収倍率(AAP)が、15g/g以上であることが好ましい。これにより、本発明の吸水剤をおむつ等の衛生材料用いるときに、水性液体を吸収し保持する性能に優れるため好ましい。本発明は、吸水倍率を低下させることなく通液性を向上させることを可能とするものであり、加圧下吸収倍率(AAP)が15g/gより大きい場合も高い通液性を併せ持つ吸水剤を提供する。もちろん、加圧下吸収倍率(AAP)は、5g/g以上であれば、15g/g未満であってもよいが、水性液体を吸収し保持する性能の面から、加圧下吸収倍率(AAP)は、好ましくは15g/g以上30g/g以下、さらに好ましくは19g/g以上30g/g以下、特に好ましくは20g/g以上28g/g以下の範囲である。加圧下吸収倍率(AAP)が5g/gよりも小さいと、吸水剤の使用量が多くなるため好ましくない。また、加圧下吸水倍率(AAP)が15g/g未満では、粒子状吸水性樹脂組成物に体重などの荷重がかかった場合、液体の液拡散および吸収力が劣るため、吸収体および/または衛生材料中で液体の拡散が行なわれず液がブロッキングを起こし、紙おむつでの実使用で、漏れ、肌のかぶれ等の問題がある。
【0094】
本発明の吸水剤は、吸収速度(FSR)が、0.05g/g/s以上であり、より好ましくは0.1g/g/s以上、さらに好ましくは0.15g/g/s以上、特に好ましくは0.17g/g/s以上である。上限値は特に限定されないが、好ましくは5.0g/g/s以下、より好ましくは3.0g/g/s以下である。吸収速度(FSR)が0.05g/g/sよりも小さいと、例えば、おむつに用いた場合に、尿が十分に吸収されずに漏れてしまうおそれがある。
【0095】
また、本発明の吸水剤の不揮発分量は、吸水剤に対して、好ましくは70〜99.8重量%、より好ましくは80〜99.5重量%、さらに好ましくは85〜99重量%、特に好ましくは90〜99重量%である。不揮発分量が、80重量%よりも小さい場合、吸水倍率の低下を招く場合があり、不揮発分量が99.5重量%よりも大きい場合、粉体の耐衝撃性が低下したり、液拡散速度や吸収速度が低下したりする場合がある。
【0096】
本発明の吸水剤は、該吸水剤0.5gを20℃の生理食塩水50mlに分散させてなる吸水剤分散液の表面張力が55mN/m以上であることが好ましく、60mN/m以上であることがより好ましく、65mN/m以上であることがさらに好ましく、68mN/m以上であることが特に好ましく、70mN/m以上であることが最も好ましい。また、上記吸水剤分散液の表面張力の上限は、特に限定されるものではないが、85mN/mであることが好ましく、80mN/mであることがより好ましく、78mN/mであることがさらに好ましい。表面張力が55mN/mより低いと、おむつ等の衛生材料に吸水剤を使用したときに、液の拡散性が低下するので好ましくない。
【0097】
(1−5)本発明の吸水剤の利用
本発明の吸水剤は、通液性や吸水倍率をはじめとする吸水特性に優れている。それゆえ、尿、血液等水性液体の吸収固化剤(吸収ゲル化剤)として、子供用おむつ、生理用ナプキン、いわゆる失禁パッド等の衛生材料に好適に使用される。
【0098】
本発明の吸水剤は、衛生材料の用途にためには、通常粒子状の形で、親水性繊維と組み合わせて、成型され吸収体として使用される。かかる吸収体は、吸水剤と親水性繊維との合計重量に対する吸水剤の含有量(コア濃度)が20〜100重量%であることが好ましく、より好ましくは30〜100重量%、さらに好ましくは40〜100重量%、特に好ましくは50〜100重量%の範囲である。コア濃度が20重量%未満の場合は、吸水剤の特性が生かされ難い。
【0099】
かかる吸収体は、好ましくは、密度0.06〜0.50g/cc、坪量0.01〜0.20g/cm2の範囲に圧縮成形される。なお、用いられる繊維基材としては、親水性繊維、例えば、粉砕された木材パルプ、その他、コットンリンターや架橋セルロース繊維、レーヨン、綿、羊毛、アセテート、ビニロン等を例示できる。好ましくはそれらをエアレイドしたものである。
【0100】
また、本発明にかかる吸水剤は、衛生材料に限らず、農園芸、ケーブル止水剤、土木・建築、食品などの従来の吸水性樹脂の用途にも広く使用されうる。
【0101】
(2)本発明にかかる吸水剤の製造方法
本発明にかかる吸水剤の製造方法は、カルボキシル基含有不飽和単量体を重合して得られ架橋構造を有する吸水性樹脂を主成分として含む吸水剤を製造する方法であって、上記吸水性樹脂は少なくとも、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物が内部に導入されている吸水剤を製造する方法であれば特に限定されるものではない。
【0102】
本発明にかかる吸水剤の製造方法は、例えば、(2−1)上記カルボキシル基含有不飽和単量体を含んでなる単量体水溶液中のカルボキシル基含有不飽和単量体を、少なくとも、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物の存在下で、重合させて含水重合物を得る重合工程、および、(2−3)重合工程で得られた含水重合物を乾燥して吸水性樹脂を得る乾燥工程を少なくとも含んでいればよい。
【0103】
その他の製造方法として、多量の水(例えば、重量基準で吸水性樹脂の1倍〜300倍、より好ましくは3〜300倍)に溶解させた上記非高分子化合物を乾燥した吸水性樹脂又は吸水性樹脂の含水ゲルに吸収させてもよく、また、吸水性樹脂の含水ゲルに上記非高分子化合物をニーダーやミートチョッパーなどで混練してもよいが、好ましくは上述したように重合工程に上記非高分子化合物を存在させることで、該非高分子化合物を吸水性樹脂全体に均一に導入することができる。なお、上記非高分子化合物は、吸水性樹脂内部に導入されていればよく、吸水性樹脂内部における上記非高分子化合物の分布は、海島(ミクロドメイン)が均一に分散していてもよいし、分子レベルで均一に導入されていてもよい。中でも上記非高分子化合物は、分子レベルで均一に導入されていることがより好ましい。
【0104】
また、本発明にかかる吸水剤の製造方法は、さらに、(2−2)上記重合工程の前に、さらに、上記カルボキシル基含有不飽和単量体と、少なくとも上記非高分子化合物とを含む単量体水溶液を調製する単量体水溶液調製工程、(2−4)上記乾燥工程の少なくとも前または後に、得られた含水重合物または吸水性樹脂を粉砕する粉砕工程、(2−5)吸水性樹脂の表面を架橋する表面架橋工程、(2−6)通液性向上剤を添加する通液性向上剤添加工程を含んでいてもよい。以下、各工程について順次説明する。
【0105】
(2−1)重合工程
本工程では、上記カルボキシル基含有不飽和単量体を含んでなる単量体水溶液中のカルボキシル基含有不飽和単量体を、少なくとも、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物の存在下で、重合させて含水重合物を得る。
【0106】
上記カルボキシル基含有不飽和単量体に対する、上記カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物の使用量(Y)(単位:モル%)は、以下の式(1)
Y<0.06/{2−(2.35X/100)} ・・・(1)
で示される量であることが好ましい。なお、式(1)中、Xは前記吸水性樹脂中のカルボキシル基の中和率(単位:モル%)を示し、Xは45モル%以上85モル%以下であることが好ましい。
【0107】
ここで、カルボキシル基含有不飽和単量体については、(1−1)で説明したとおりである。
【0108】
また、本工程では、カルボキシル基含有不飽和単量体に併用して、必要により(1−1)で述べた他の単量体を共重合させてもよい。他の単量体を共重合させる場合は、カルボキシル基含有不飽和単量体を含んでなる単量体水溶液は、カルボキシル基含有不飽和単量体に加えてさらに(1−1)で述べたその他の単量体を含んでいてもよい。以下、単量体水溶液に含まれる単量体、すなわち、(a)その他の単量体を用いない場合は、カルボキシル基含有不飽和単量体、または、(b)その他の単量体を用いる場合は、カルボキシル基含有不飽和単量体および用いるその他の単量体を、単に単量体と称する。
【0109】
上記単量体水溶液中の単量体は、本工程で重合するとともに、少なくとも、上記(1−1)で述べた、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物が内部に導入されている。
【0110】
上記カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物(第1架橋剤)の使用量は、上述したとおりであり、例えば、吸水性樹脂のカルボキシル基の中和率が45モル%のときは、カルボキシル基含有不飽和単量体に対して、0.064モル%より少ないことが好ましく、例えば、吸水性樹脂のカルボキシル基の中和率が85モル%のときは、カルボキシル基含有不飽和単量体に対して、24モル%より少ないことが好ましい。
【0111】
また、上記カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物の使用量の下限は、カルボキシル基含有不飽和単量体に対して、0.001モル%であることが好ましく、0.002モル%であることがより好ましく、0.005モル%であることがさらに好ましく、0.01モル%であることが特に好ましく、0.02モル%であることが最も好ましい。上記非高分子化合物の使用量が、0.001モル%よりも少ない場合は、本発明の効果が十分に発揮されず、吸水特性のバランスに優れないため好ましくない。また、上記非高分子化合物の使用量が、上記式(1)で表される範囲外であるときには、吸水倍率(CRC)が低下するため好ましくない。
【0112】
また、単量体溶液中の単量体は、他の内部架橋剤として、さらに(1−1)で述べた2個以上の重合性エチレン性二重結合を有する内部架橋剤(第2架橋剤)、及び/又は、2個以上の官能基を有する他の内部架橋剤(第3架橋剤)によって内部架橋させるために、上記非高分子化合物とこれら他の内部架橋剤(第2架橋剤及び/又は第3架橋剤)との存在下で重合を行ってもよい。第1架橋剤と、第2架橋剤及び/又は第3架橋剤とを併用する際の使用量の比[(第1架橋剤の使用量):(第2架橋剤及び/又は第3架橋剤の使用量)]は、モル比で、1:9〜9:1であることが好ましく、重合ゲルの取扱い性の観点からは第1架橋剤が、第2架橋剤及び/又は第3架橋剤より少ないことがより好ましい。
【0113】
これら他の内部架橋剤(第2架橋剤及び/又は第3架橋剤)の合計使用量は、カルボキシル基含有不飽和単量体(架橋剤を除く)に対して、好ましくは0以上、1.0モル%以下、より好ましくは0以上、0.5モル%以下、さらに好ましくは0以上、0.2モル%以下、特に好ましくは0.005モル%以上、0.1モル%以下、最も好ましくは0.01モル%以上、0.1モル%未満の範囲である。上記他の内部架橋剤の合計使用量が1.0モル%よりも多い場合には、吸水倍率(CRC)が低下するため好ましくない。
【0114】
中でも、他の内部架橋剤として、2個以上の重合性エチレン性二重結合を有する内部架橋剤(第2架橋剤)を併用することが好ましい。また、この重合性架橋剤(第2架橋剤)は通常、架橋に用いられるので重合後に実質N.D.(検出限界1ppm以下)となる。すなわち、本工程は、上記カルボキシル基含有不飽和単量体を含んでなる単量体水溶液中のカルボキシル基含有不飽和単量体を、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物である内部架橋剤(第1架橋剤)と、2個以上の重合性エチレン性二重結合を有する内部架橋剤(第2架橋剤)との存在下で重合させて含水重合物を得るものであることがより好ましい。なお、内部架橋剤として、共有結合性の内部架橋剤のみを用いる場合は、内部架橋は後述する乾燥工程や表面架橋工程で加熱されることによって起こる。また、内部架橋剤として2個以上の重合性エチレン性二重結合を有する内部架橋剤を用いる場合は内部架橋は重合工程で起こる。したがって、第2架橋剤を併用することによって、重合工程で架橋構造が形成されるため、重合工程後にある程度硬い含水ゲル、言い換えればゲル強度が向上した含水ゲルを得ることができる。それゆえ、含水ゲルの取り扱い性が向上するという効果を奏する。すなわち、得られた含水ゲルは、柔らかすぎることがないため、粉砕等が行い易く、粉砕された含水ゲルの大きさや形状を制御し易いという効果を奏する。さらには、含水ゲルの大きさや形状、またはこれに伴い吸水性樹脂の表面積を制御することが容易となるため、得られる吸水性樹脂の、吸水速度等の物性を向上させることができる。
【0115】
このように、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物である内部架橋剤と、2個以上の重合性エチレン性二重結合を有する内部架橋剤とを用いる場合、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物である内部架橋剤の使用量は上述した範囲であることが好ましい。また、2個以上の重合性エチレン性二重結合を有する内部架橋剤の使用量は、カルボキシル基含有不飽和単量体(架橋剤を除く)に対して、好ましくは0以上、1.0モル%以下、より好ましくは0以上、0.5モル%以下、さらに好ましくは0以上、0.2モル%以下、特に好ましくは0.005モル%以上、0.1モル%以下、最も好ましくは0.01モル%以上、0.1モル%未満の範囲である。上記他の内部架橋剤(第2架橋剤)の使用量が1.0モル%よりも多い場合には、吸水倍率(CRC)が低下するため好ましくない。
【0116】
なお、上記非高分子化合物や他の内部架橋剤は、単量体の重合時に存在すればよく、単量体の重合前に添加してもよいし、重合途中に添加してもよい。また、これら内部架橋剤は、反応系に一括添加してもよく、分割添加してもよい。
【0117】
本工程で、上述の単量体を重合するに際して使用される開始剤としては過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酢酸カリウム、過酢酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過炭酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等の光重合開始剤等を用いることができる。これら重合開始剤の使用量は得られる吸水性樹脂の物性面から0.001〜2モル%、好ましくは0.01〜0.1モル%(対全単量体)である。これらの重合開始剤が0.001モル%未満の場合には未反応の残存単量体が多くなり、一方重合開始剤が2モル%を超える場合には重合の制御が困難となるので好ましくない。
【0118】
また、本工程で上記単量体を重合するに際しては、バルク重合や沈殿重合を行うことが可能であるが、得られる吸水性樹脂の物性面から上記単量体を水溶液とすることによる、水溶液重合や逆相懸濁重合を行うことが好ましい。単量体を水溶液とする場合の該水溶液(単量体水溶液)中の単量体の濃度は水溶液の温度や単量体によって決まり、特に限定されるものではないが、例えば、予め中和されたカルボキシル基含有不飽和単量体で重合(中和重合法)を行なう場合は、好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは20〜60質量%である。また、上記水溶液重合を行う際には、水以外の溶媒を必要に応じて併用してもよく、併用して用いられる溶媒の種類は、特に限定されるものではない。
【0119】
上記の重合を開始させる際には、上記重合開始剤を使用して開始させることができる。また、上記重合開始剤の他にも、紫外線や電子線、γ線などの活性エネルギー線を単独で、あるいは上記重合開始剤と併用して用いても良い。重合開始時の温度は、使用する重合開始剤の種類にもよるが、上下限で15〜130℃の範囲が好ましく、20〜120℃の範囲がより好ましい。
【0120】
なお、逆相懸濁重合とは、単量体水溶液を疎水性有機溶媒に懸濁させる重合法であり、例えば、米国特許4093776号、同4367323号、同4446261号、同4683274号、同5244735号などに記載されている。水溶液重合は分散溶媒を用いずに単量体水溶液を重合する方法であり、例えば、米国特許4625001号、同4873299号、同4286082号、同4973632号、同4985518号、同5124416号、同5250640号、同5264495号、同5145906号、同5380808号、欧州特許0811636号、同0955086号,同0922717号などに記載されている。これらに例示の単量体や開始剤なども本発明では適用できる。
【0121】
<その他の重合方法>
上記の重合方法は、通常、予め中和されたカルボキシル基含有不飽和単量体を用いて重合(中和重合法)されるが、他の重合方法として、未中和のカルボキシル基含有不飽和単量体、特に未中和アクリル酸を主成分として重合を行い、重合後にカルボキシル基を中和する、いわゆる酸重合&後中和法を用いてもよい。
【0122】
かかる酸重合&後中和法では、未中和アクリル酸を主成分とする特定濃度の単量体水溶液を内部架橋剤の存在下に架橋重合したのち中和し、特定の粒度に調整し、得られた特定の粒度および吸水倍率の架橋重合体をさらに表面架橋する。
【0123】
このような酸重合&後中和法では、未中和アクリル酸の全アクリル酸に対するモル比が、30〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%、さらに好ましくは100モル%であるような未中和アクリル酸を主成分として含む不飽和単量体を重合させて得られる架橋重合体について、1価化合物、特に、アルカリ金属化合物を添加して部分的に一価塩、特に、アルカリ金属塩とすることで本発明で用いられる吸水性樹脂を得ることができる。
【0124】
なお、酸重合&後中和法においても、上述の重合方法と同様に、カルボキシル基含有不飽和単量体とともに必要により「その他の単量体」も使用することが出来る。また、「その他の単量体」、「カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物」、「他の内部架橋剤」、および「重合開始剤」の種類、添加量等詳細については、上記の重合方法と同様である。
【0125】
なお、上記非高分子化合物や他の内部架橋剤は、単量体の重合時に存在すればよく、単量体の重合前に添加してもよいし、重合途中に添加してもよい。また、これら内部架橋剤は、反応系に一括添加してもよく、分割添加してもよい。
【0126】
酸重合&後中和法において、重合後の架橋重合体は必須に中和される。得られた架橋重合体中のカルボキシル基を中和して部分的にアルカリ金属塩基とするために使用されるアルカリ金属化合物としてはアルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなど)、アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムなど)などが挙げられる。また、アンモニア、アルカノールアミン、炭酸アンモニウム等のアミンを用いてもよい。得られる吸水性樹脂の性能、工業的入手の容易さ、安全性等の面からナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。本酸重合&後中和法においては、架橋重合体中のカルボキシル基の好ましくは45〜85モル%、より好ましくは50〜85モル%、さらに好ましくは55〜80モル%、特に好ましくは60〜75モル%がアルカリ金属化合物との中和反応によりアルカリ金属塩に変換される。重合により得られる含水重合物をアルカリ金属化合物で中和する方法としては溶媒を使用して重合した場合、得られた含水重合物を約1cm以下の小片に裁断しながらアルカリ金属化合物の水溶液を添加し、これをさらにニーダーやミートチョパーで混練する方法がある。また、本発明の吸水剤を得る上で、中和温度は好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜90℃であり、中和は米国特許6187872号の請求項1に記載の第一中和指数(粒子200個の中和度合いで規定)が10以下で均一であることが好ましい。
【0127】
<連鎖移動剤を添加する方法>
本発明の吸水剤の製造方法では、重合時に必要により連鎖移動剤が使用されても良い。上記単量体、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物、他の内部架橋剤、および、重合開始剤に加えて水溶性連鎖移動剤を存在させて重合することで、得られる架橋重合体から製造された吸水性樹脂を本発明の吸水剤に用いた場合、吸収能が高く、尿に対する安定性に優れる吸収剤を得ることが可能になる。
【0128】
本発明で重合に使用する上記水溶性連鎖移動剤としては、水または単量体に溶解するものであれば特に限定されず、チオール類、チオール酸類、2級アルコール類、アミン類、次亜燐酸塩類などを挙げることができる。具体的には、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、ドデシルメルカプタン、チオグリコール類、チオリンゴ酸、3−メルカプトプロピオン酸、イソプロパノール、次亜燐酸ナトリウム、蟻酸、およびこれらの塩類からなる群から選ばれる1種または2種以上が用いられるが、その効果から次亜燐酸ナトリウムなどの次亜燐酸塩を用いることがより好ましい。
【0129】
上記水溶性連鎖移動剤の使用量は水溶性連鎖移動剤の種類や使用量、単量体水溶液の単量体濃度にもよるが、全単量体に対して0.001〜1モル%であり、好ましくは0.005〜0.3モル%である。使用量が0.001モル%未満の場合、本発明に用いる内部架橋剤量では架橋密度が高く吸水倍率が低くなりすぎるので好ましくない。また1モル%を超えて使用すると水可溶成分量が増加し、かえって安定性が低下するので好ましくない。
【0130】
(2−2)単量体水溶液調製工程
本発明にかかる吸水剤の製造方法は、上記重合工程の前に、さらに、少なくとも上記カルボキシル基含有不飽和単量体と、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する化非高分子化合物合物とを含む単量体水溶液を調製する単量体水溶液調製工程を含んでいてもよい。
【0131】
上記単量体水溶液は、カルボキシル基含有不飽和単量体と、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物とを少なくとも含んでいればよいが、さらに、(1−1)で説明したその他単量体を含んでいてもよい。
【0132】
また、単量体溶液は、さらに、他の内部架橋剤として、(1−1)で述べた2個以上の重合性エチレン性二重結合、及び/又は、2個以上の官能基を有する他の内部架橋剤を含んでいてもよい。
【0133】
(2−3)乾燥工程
上述した重合工程で得られる重合体は含水重合物として得られる。得られた含水重合物は、必要に応じて例えば含水率10質量%以上70質量%未満の含水重合物の状態で粉砕し、さらに乾燥される。乾燥は通常150℃〜250℃、好ましくは150℃〜220℃、より好ましくは180℃〜200℃の温度範囲で行われる。150℃より低い温度条件下で乾燥すると、内部架橋反応が起こりにくくなる。また、250℃より高い温度で乾燥すると、得られる吸水性樹脂に着色が起こる可能性がある。なお、乾燥温度はオイルや蒸気を熱媒として用いる場合は熱媒の温度、電子線を照射するなど熱媒を使用せずに乾燥する場合は、材料(乾燥するもの)の温度で規定される。また、乾燥温度を段階的に変化させてもよい。乾燥時間は含水重合物の表面積、含水率、および乾燥機の種類に依存し、目的とする含水率になるよう選択すればよいが、例えば、10〜180分間、より好ましくは30〜120分間である。なお、本発明では、乾燥後の架橋重合体を吸水性樹脂と称する。
【0134】
本発明に用いることのできる吸水性樹脂の含水率は特に限定されないが、室温でも流動性を示す粒子(粉末)であり、より好ましくは含水率が0.2〜30質量%、さらに好ましくは0.3〜15質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%の粉末状態である。含水率が上記範囲の上限より高くなってしまうと、吸水性樹脂の流動性が悪くなり製造に支障をきたすばかりか、吸水性樹脂が粉砕できなくなったり、特定の粒度分布に制御できなくなってしまう恐れがある。
【0135】
用いられる乾燥方法としては、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、疎水性有機溶媒との共沸による脱水、高温の水蒸気を用いた高湿乾燥等目的の含水率となるように種々の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。
【0136】
以上のような製法で得られた、本発明で用いられる吸水性樹脂の形状は、粉末として取り扱えるのであれば、球状、繊維状、棒状、略球状、偏平状、不定形状、造粒粒子状、多孔質構造を有する粒子等特に限定されるものではないが、粉砕工程を経て得られた不定形破砕状のものが好ましく使用できる。
【0137】
(2−4)粉砕工程
本発明にかかる吸水剤の製造方法は、上記乾燥工程の前または後に、好ましくは、上記乾燥工程の前および後に、得られた含水重合物または吸水性樹脂を粉砕する粉砕工程を含んでいることが好ましい。
【0138】
上記乾燥工程の前に得られた含水重合物を粉砕する場合、含水重合物を、好ましくは孔径0.3〜22mm、より好ましくは1〜20mm、さらに好ましくは5〜18mmの多孔構造から押し出して粉砕することによって、粉砕含水重合物粒子とする。このように、含水重合物を特定の孔径の多孔構造から押し出して粉砕することによって、本発明の効果を十分に発揮できる粉砕含水重合物粒子とすることが可能となる。孔の形状としては、円形、正方形、長方形、などの四方形、三角形、六角形など、特に限定されないが、好ましくは、円形の孔から押し出される。なお、前記の孔径とは、目開き部の外周を円の外周に換算した場合の直径で規定できる。
【0139】
粉砕含水重合物粒子を得るための押し出し粉砕を行うための装置としては、例えば、含水重合物を多孔板より押し出すことで破砕するもので、押し出す機構としては、スクリュー型、回転ロール型によるもの等、含水重合物をその供給口から多孔板に圧送できる形式のものが用いられる。スクリュー型押し出し機は、一軸あるいは多軸でもよく、通常、食肉、ゴム、プラスチックの押し出し成型に使用されるもの、あるいは、粉砕機として使用されるものでもよい。例えば、ミートチョッパーやドームグランが挙げられる。
【0140】
本発明で用いることができる吸水性樹脂は、粒子状の吸水性樹脂粒子であることが好ましく、その少なくとも一部の粒子が造粒粒子であることが好ましい。この造粒粒子は、粒子径が150μm未満の粒子を造粒して得られる造粒粒子であることがより好ましい。このように吸水性樹脂粒子の少なくとも一部の粒子を造粒粒子とするための方法は特に限定されず、従来公知の造粒方法を適用すればよい。例えば、温水と吸水性樹脂粒子の微粉を混合し乾燥する方法(米国特許第6228930号)や、吸水性樹脂粒子の微粉を単量体水溶液と混合し重合する方法(米国特許第5264495号)、吸水性樹脂粒子の微粉に水を加え特定の面圧以上で造粒する方法(欧州特許第844270号)、吸水性樹脂粒子の微粉を十分に湿潤させ非晶質のゲルを形成し乾燥・粉砕する方法(米国特許第4950692号)、吸水性樹脂粒子の微粉と重合ゲルを混合する方法(米国特許第5478879号)などを適用することが可能である。
【0141】
また、本発明で用いることができる吸水性樹脂粒子は、その少なくとも一部の粒子が発泡粒子であることが好ましい。発泡粒子は、アゾ系開始剤や、炭酸塩などの発泡剤を含んで重合すること、あるいは、不活性ガスをバブリングしながら気泡を含んで重合することを特徴として得られる発泡粒子であることが好ましい。
【0142】
本発明における吸水性樹脂や水性液吸収剤は、その嵩比重が、上記(1−3)で述べた範囲であり、かかる範囲で造粒粒子を含んでなることが好ましい。嵩比重の範囲が外れたり、造粒粒子が全く含まれない場合、本発明の効果を発揮することが困難になる場合がある。このような造粒物を含んだ水性液吸収剤を得ることにより、吸収速度、吸水倍率、食塩水流れ誘導性に優れた水性液吸収剤を得ることが容易になる。
【0143】
含水重合物または粉砕含水重合物粒子を、好ましくは乾燥した後に、粉砕する条件は、特に限定されないが、例えば、ロールミル、ハンマーミル等、従来から知られている粉砕機を使用することができる。粉砕によって得られる形状は、不定形破砕状であることが好ましく、一部、表面積が大きくて造粒された形状の粒子を含んでいることがより好ましい。
【0144】
本発明において用いることができる吸水性樹脂粒子は、例えば、さらに分級することなどによって、重量平均粒子径および対数標準偏差(σζ)を上記(1−3)で述べた範囲に調整する。本発明において用いることができる吸水性樹脂粒子について、重量平均粒子径と対数標準偏差(σζ)をこのように調整することによって、本発明の効果をより一層発揮することができる。
【0145】
本発明において、必要に応じて分級する場合、分級する際に用いる篩は、分級効率を考慮して選択する必要がある。例えば、目開き150μmの篩を通過した吸水性樹脂粒子ないし水性液吸収剤を分級操作によって除いた場合において、粒子径が150μm以下の粒子を完全に除去することは困難であり、目的の粒子径を有する吸水性樹脂粒子ないし吸水剤を得るために、適宜、使用する篩の種類を選択することが好ましい。
【0146】
本発明で用いることができる吸水性樹脂粒子は、本発明の効果をより一層発揮するため、粒子径が150〜850μmの粒子を90〜100重量%含むことが好ましく、95〜100重量%含むことがより好ましい。粒子径が150μm未満の粒子が多いと、通液性が悪くなって本発明の効果が十分に発揮できないおそれがある。粒子径が850μmより大きい粒子が多いと、実使用の場面において例えば人体に触れた場合に不快感を与えるおそれがある。
【0147】
(2−5)表面架橋工程
本発明にかかる吸水剤の製造方法は、本発明の効果をより一層発揮するために、後述する通液性向上剤添加工程の前、同時、および後から選ばれる少なくとも1つにおいて、吸水性樹脂の表面架橋を行うことが好ましい。
【0148】
本表面架橋工程で用いることができる表面架橋剤としては、(1−1)で述べた表面架橋剤を用いればよい。
【0149】
上記表面架橋剤の使用量は、用いる化合物やそれらの組み合わせ等にもよるが、吸水性樹脂に対して、0.001重量%以上、10重量%以下の範囲内が好ましく、0.01重量%以上、5重量%以下の範囲内がより好ましい。
【0150】
本発明において、表面架橋には水を用いることが好ましい。この際、使用される水の量は、使用する吸水性樹脂の含水率にもよるが、通常、好ましくは吸水性樹脂に対し0.5重量%以上20重量%以下、より好ましくは0.5重量%以上10重量%以下の範囲である。また、本発明において、水以外に親水性有機溶媒を用いてもよく、吸水性樹脂に対して好ましくは0以上10重量%以下、より好ましくは0〜5重量%以下、さらに好ましくは0〜3重量%以下の範囲である。
【0151】
さらに、上記表面架橋剤に加えて、有機酸(乳酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸)や無機酸(リン酸、硫酸、亜硫酸)などの酸物質、苛性ソーダや炭酸ソーダなどの塩基物質、硫酸アルミニウムなどの多価金属などを、吸水性樹脂に対して0〜10重量%、さらには0〜5重量%、特に0〜1%程度で併用してもよい。
【0152】
本発明において表面架橋を行う場合には、水及び/または親水性有機溶媒と表面架橋剤とを予め混合した後、次いで、その水溶液を吸水性樹脂に噴霧あるいは滴下混合する方法が好ましく、噴霧する方法がより好ましい。噴霧される液滴の大きさは、平均粒子径で0.1〜300μmの範囲内が好ましく、0.1〜200μmの範囲がより好ましい。
【0153】
本発明の吸水性樹脂と、該表面架橋剤と、水及び/又は親水性有機溶媒とを混合する際に用いられる混合装置としては両者を均一にかつ確実に混合するために、大きな混合力を備えていることが好ましい。上記の混合装置としては例えば、円筒型混合機、二重壁円錐混合機、高速攪拌型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、双腕型ニーダー、粉砕型ニーダー、回転式混合機、気流型混合機、タービュライザー、バッチ式レディゲミキサー、連続式レディゲミキサー等が好適である。
【0154】
表面架橋剤を混合後の吸水性樹脂は加熱処理されることが好ましい。加熱温度(熱媒温度または材料温度)は、好ましくは120〜250℃の範囲内、より好ましくは150〜250℃の範囲内であり、加熱時間は、1分〜2時間の範囲内が好ましい。加熱温度と加熱時間の組み合わせの好適例としては、180℃で0.1〜1.5時間、200℃で0.1〜1時間である。
【0155】
加熱処理を行う装置としては、表面架橋剤と吸水性樹脂の混合物に対して均一に熱が伝わるように処理が行われる装置であれば、特に限定されるものではないが、均一な加熱処理を確実に行うために、大きな混合装置を備えていることが好ましい。上記加熱処理装置としては、ベルト式、溝型攪拌式、スクリュー型、回転型、円盤型、捏和型、流動層式、気流式、赤外線型、電子線型の乾燥機又は加熱炉が挙げられる。
(2−6)通液性向上剤添加工程
本発明にかかる吸水剤の製造方法は、通液性向上剤を添加する通液性向上剤添加工程を含んでいることが好ましい。本工程は、表面処理工程の前、同時、後のいずれに行っても良いが、本発明の効果をより発揮するために、好ましくは、表面処理工程の後であり、表面処理工程とは別に行うことが好ましい。
【0156】
通液性向上剤は、水溶性多価金属化合物またはポリカチオン化合物であることが好ましく、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物、及び、アミノ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることがより好ましい。具体的には、上記(1−2)に例示するものが挙げられる。また、通液性向上剤は、吸水性樹脂表面全体により均一に添加しやすく、通液性向上剤の偏析等がない点から、水溶性であることが好ましい。
【0157】
通液性向上剤は、吸水性樹脂粒子に対して、0.001〜10重量%の割合で用いることが好ましく、0.01〜5重量%の割合で用いることがより好ましい。
【0158】
通液性向上剤の添加方法は、特に限定されず、ドライブレンドでもよいし、水溶液または分散液として添加しても良いし、熱融着による方法でもよい。
【0159】
より詳細には、ドライブレンドとは、固体で粉体状である多価金属化合物あるいは無機微粒子等の上記通液性向上剤を、乾燥粉砕後の吸水性樹脂粒子に均一に混合する方法であり、必要に応じて、混合後、水や多価アルコールの水溶液をさらに添加混合しても良いし、さらに加熱しても良い。「水溶液として添加」とは、多価金属化合物やポリカチオン化合物等の水溶液を吸水性樹脂粒子に添加混合する方法であり、多価金属化合物やポリカチオン化合物の濃度が高いほうが好ましい。また、混合後、必要により加熱しても良い。熱融着とは、硫酸アルミニウム、カリウム明礬、アンモニウム明礬、ナトリウム明礬等の多価金属水和物と吸水性樹脂粒子を混合と同時あるいは混合した後、加熱するまたはあらかじめ加熱した吸水性樹脂粒子に多価金属化合物を混合することで、多価金属水和物を溶融させ、吸水性樹脂粒子に接着させる方法であり、必要により加熱前に水を添加しても良い。
【実施例】
【0160】
以下に、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と、「リットル」を単に「L」と記すことがある。また、「重量%」を「wt%」と記すことがある。
【0161】
実施例および比較例における測定方法および評価方法を以下に示す。特に記載がない限り、下記の測定や評価は、特に指定の無いものは、温度25℃、湿度50RH%の条件下で行われたものである。
【0162】
なお、以下の測定および評価の対象は、吸水性樹脂に適用してもよいし、吸水剤に適用してもよい。したがって、吸水剤を測定対象とする場合は、測定方法の記載における「吸水性樹脂」を「吸水剤」に読み替えて測定を行えばよい。また、市販品の吸水性樹脂や、おむつから取り出した吸水性樹脂について測定する際は、これらを適宜、減圧乾燥(例えば、60〜80℃で16時間乾燥)し、固形分を90〜100重量%にした後に測定する。
【0163】
(a)吸水倍率(CRC:Centrifuge Retention Capacity)
吸水性樹脂0.200gを不織布製(南国パルプ工業(株)製、商品名:ヒートロンペーパー、型式:GSP−22)の袋(80mm×60mm)に均一に入れ、25℃に調温した生理食塩水(以下、本明細書において、生理食塩水とは、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液を指す。)中に浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン社製、遠心機:型式H−122)を用いて250Gの遠心力で3分間水切りを行った後、袋の重量W(g)を測定した。また、同様の操作を吸水性樹脂を用いずに行い、その時の袋の重量W(g)を測定した。そして、これらW、Wから、下記の式に従ってCRC(g/g)を算出した。
【0164】
CRC(g/g)=[(W(g)−W(g))/吸水性樹脂の重量(g)]−1
(b)加圧下吸収倍率(AAP:Absorbency against Pressure)
加圧下吸収倍率(AAP)は、生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する4.83kPaでの60分の加圧下吸収倍率を表す。
【0165】
図1に示す装置を用いて測定した。
【0166】
内径60mmのプラスチックの支持円筒100の底に、ステンレス製400メッシュの金網(目の大きさ38μm)101を融着させた。室温(23.0±2.0℃)、湿度50RH%の条件下で、金網上に吸水性樹脂(102)0.90gを均一に散布し、その上に、吸水性樹脂に対して、4.83kPa(0.7psi)の荷重を均一に加えることができるよう調整されたピストン103と荷重104とをこの順に載置して、この測定装置一式の重量Wa(g)を測定した。なお、ピストン103は外径が60mmよりわずかに小さく、支持円筒の内壁面との間に隙間が生じず、かつ上下の動きが妨げられないようになっている。
【0167】
直径150mmのペトリ皿105の内側に直径90mmのガラスフィルター106(株式会社相互理化学硝子製作所社製、細孔直径:100〜120μm)を置き、生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)108(20〜25℃)をガラスフィルターの上面と同じレベルになるように加えた。その上に、直径90mmの濾紙(107)1枚(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を載せ、表面が全て濡れるようにし、かつ過剰の液を除いた。
【0168】
この湿った濾紙上に、上記測定装置一式を載せ、液を荷重下で所定時間吸収させた。この吸収時間は、測定開始から算出して、1時間後とした。具体的には、1時間後、測定装置一式を持ち上げ、その重量Wb(g)を測定した。この重量測定はできるだけすばやく、かつ振動を与えないように行わなくてはならない。そして、Wa、Wbから、次式によって加圧下吸収倍率(AAP)(g/g)を算出した。
【0169】
AAP(g/g)=[Wb(g)−Wa(g)]/水性液吸収剤の重量(g)
(c)吸収速度(FSR:Free Swell Rate)
吸水性樹脂1.000±0.0005gを小数点以下4桁まで正確に秤量した(単位:g)(W)。秤量した吸水性樹脂を25mlガラス製ビーカー(直径32−34mm、高さ50mm)に入れた。この際、ビーカーに入れた吸水性樹脂の上面が水平となるようにした。必要により、慎重にビーカーをたたくなどの処置を行うことで吸水性樹脂表面を水平にしても良い。次に、23.0±2.0℃に調温した生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)20mlを50mlのガラス製ビーカーに量り取り、重さ(単位:g)を小数点以下4桁まで測定した(W)。量り取った生理食塩水を、吸水性樹脂の入った25mlビーカーに丁寧に素早く注いだ。注ぎ込んだ生理食塩水が水性液吸収剤と接触したと同時に時間測定を開始した。そして、生理食塩水を注ぎ込んだビーカー中の生理食塩水液上面を約20゜の角度で目視した際、始め生理食塩水液表面であった上面が、吸水性樹脂が生理食塩水を吸収することにより、生理食塩水を吸収した吸水性樹脂表面に置き換わる時点で、時問測定を終了した(単位:秒)(t)。次に、生理食塩水を注ぎ込んだ後の50mlビーカーに付着残存した生理食塩水の重さ(単位:g)を小数点以下4桁まで測定した(W)。注ぎ込んだ生理食塩水の重さ(W、単位:g)を下記式(a)により求めた。
【0170】
吸水速度(FSR)は、下記式(c)によって計算した。
【0171】
式(a): W(g)=W(g)−W(g)
式(c): FSR(g/g/s)=W/(t×W
1つのサンプルにつき、同様の測定を3回繰り返し行い、測定結果は、3回の測定値の平均値とした。
【0172】
(d)食塩水流れ誘導性(SFC:Saline Flow Conductivity)
特表平9−509591の食塩水流れ誘導性(SFC)試験に準じて行った。
【0173】
図2に示す装置を用い、容器40に均一に入れた吸水性樹脂(0.900g)を人工尿(1)中で0.3psi(2.07kPa)の加圧下、60分間膨潤させ、ゲル44のゲル層の高さを記録し、次に0.3psi(2.07kPa)の加圧下、0.69重量%塩化ナトリウム水溶液33を、一定の静水圧でタンク31から膨潤したゲル層を通液させた。
【0174】
コンピューターと天秤を用い、時間の関数として20秒間隔でゲル層を通過する液体量を10分間記録した。膨潤したゲル44(の主に粒子間)を通過する流速F(t)は増加重量(g)を増加時間(s)で割ることによりg/sの単位で決定した。一定の静水圧と安定した流速が得られた時間をtとし、tと10分間の間に得たデータだけを流速計算に使用して、tと10分間の間に得た流速を使用してF(t=0)の値、つまりゲル層を通る最初の流速を計算した。F(t=0)はF(t)対時間の最小2乗法の結果をt=0に外挿することにより計算した。
【0175】
食塩水流れ誘導性(SFC)は下記式により計算した。
食塩水流れ誘導性(SFC)
=(F(t=0)×L)/(ρ×A×ΔP)
=(F(t=0)×L)/139506
なお、上記式中、F、L、ρ、A、ΔPはそれぞれ、
(t=0):g/sで表した流速
:cmで表したゲル層の最初の厚さ
ρ :NaCl溶液の密度(1.003g/cm
A :セル41中のゲル層上側の面積(28.27cm
ΔP:ゲル層にかかる静水圧(4920dyne/cm
を表す。また、食塩水流れ誘導性(SFC)の単位は(cm・s・10−7/g)である。
【0176】
図2に示す装置としてはタンク31にはガラス管32が挿入されており、ガラス管32の下端は、0.69重量%塩化ナトリウム水溶液33をセル41中の膨潤ゲル44の底部から、5cm上の高さに維持できるように配置した。タンク31中の0.69重量%塩化ナトリウム水溶液33は、コック付きL字管34を通じてセル41へ供給された。セル41の下には、通過した液を補集する容器48が配置されており、補集容器48は上皿天秤49の上に設置されていた。セル41の内径は6cmであり、下部の底面にはNo.400ステンレス製金網(目開き38μm)42が設置されていた。ピストン46の下部には液が通過するのに十分な穴47があり、底部には吸水性樹脂組成物あるいはその膨潤ゲルが、穴47へ入り込まないように透過性の良いガラスフィルター45が取り付けてあった。セル41は、セルを乗せるための台の上に置かれ、セルと接する台の面は、液の透過を妨げないステンレス製の金網43の上に設置した。
【0177】
人工尿(1)は、塩化カルシウムの2水和物0.25g、塩化カリウム2.0g、塩化マグネシウムの6水和物0.50g、硫酸ナトリウム2.0g、りん酸2水素アンモニウム0.85g、燐酸水素2アンモニウム0.15g、および、純水994.25gを混合したものを用いた。
【0178】
(e)粒子径
粉砕後の吸水性樹脂を目開き850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、45μmのJIS標準ふるいで篩い分けし、残留百分率Rを対数確率紙にプロットした。これにより、重量平均粒子径(D50)を読み取った。なお、850μmを超える吸水性樹脂を含んでいる場合は適宜市販の目開きが850μmを超えるJIS標準ふるいを用いる。
【0179】
(f)粒度分布の対数標準偏差(σζ)
吸水性樹脂を目開き850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、45μmのJIS標準ふるいで篩い分けし、残留百分率Rを対数確率紙にプロットした。なお、850μmを超える吸水性樹脂を含んでいる場合は適宜市販の目開きが850μmを超えるJIS標準ふるいを用いる。そこで、X1をR=84.1重量%、X2を15.9重量%の時のそれぞれの粒径とすると、対数標準偏差(σζ)は下記の式で表され、σζの値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
【0180】
σζ=0.5×ln(X2/X1)
粒子径、粒度分布における対数標準偏差(σζ)を測定する際の分級方法は、吸水性樹脂粒子または吸水性樹脂組成物10.0gを、目開き850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、45μmのJIS標準ふるい(THE IIDA TESTING SIEVE:径8cm)に仕込み、振動分級器(IIDA SIEVE SHAKER、TYPE:ES−65型、SER.No.0501)により、5分間、分級を行った。
【0181】
(g)嵩比重
吸水性樹脂粒子の嵩比重は、edana460.1−99記載の方法で測定した。
【0182】
(h)可溶分量
250ml容量の蓋付きプラスチック容器に、生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)の184.3gを測り取り、その水溶液中に吸水性樹脂1.00gを加え、16時間攪拌することにより、樹脂中の可溶分を抽出した。この抽出液を濾紙1枚(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801 No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を用いて濾過することにより得られた濾液の50.0gを、測り取り測定溶液とした。
【0183】
はじめに生理食塩水だけを、まず、0.1NのNaOH水溶液でpH10まで滴定を行い、その後、0.1NのHCl水溶液でpH2.7まで滴定して、空滴定量([bNaOH]ml、[bHCl]ml)を得た。
【0184】
同様の滴定操作を測定溶液についても行うことにより滴定量([NaOH]ml、[HCl]ml)を求めた。
【0185】
例えば、既知量のアクリル酸とそのナトリウム塩からなる吸水性樹脂の場合、そのモノマーの平均分子量と上記操作により得られた滴定量をもとに、吸水性樹脂中の可溶分量を下記式によって算出した。未知量の場合には、滴定により求めた中和率を用いてモノマーの平均分子量を算出した。
【0186】
可溶分量(重量%)=0.1×(平均分子量)×184.3×100×([HCl]−[bHCl])/1000/1.0/50.0
中和率(モル%)=[1−([NaOH]−[bNaOH])/([HCl]−[bHCl])]×100
(i)不揮発分量または含水率
内径52mmのアルミカップに吸水性樹脂1.000gを小数点以下3桁まで秤量して入れ、180℃の無風乾燥機中で3時間加熱乾燥し、その乾燥減量に基づいて、吸水性樹脂または吸水剤の不揮発分量または含水率を算出した。
【0187】
不揮発分量または含水率は、以下の式により与えられる値である。
不揮発分量(重量%)=(乾燥後の試料の重量/乾燥前の試料の重量)×100
含水率(重量%)={(乾燥前の試料の重量−乾燥後の試料の重量)/乾燥前の試料の重量}×100
(j)表面張力
十分に洗浄された100mlのビーカーに20℃に調整された生理食塩水50mlを入れ、まず、生理食塩水の表面張力を表面張力計(K11自動表面張力計、KRUSS社)を用いて測定する。この測定において表面張力の値が71〜75mN/mの範囲でなくてはならない。次に、20℃に調整した表面張力測定後の生理食塩水を含んだビーカーに、十分に洗浄された25mm長のフッ素樹脂製回転子、および吸水剤0.5gを投入し、500rpmの条件で4分間攪拌する。4分後、攪拌を止め、含水した吸水剤が沈降した後に、上澄み液の表面張力を再度同様の操作を行い測定した。なお、本発明では白金プレートを用いるプレート法を採用し、プレートは各測定前に十分洗浄し、且つバーナーで加熱洗浄して使用した。
(k)吸水剤に対する未反応の非高分子化合物の量
吸水剤1gを生理食塩水(0.9質量%塩化ナトリウム水溶液)100g中で、長さ30mmのスターラーチップを用いてマグネットスターラーで、300rpmで、4時間攪拌し、攪拌後の生理食塩水をろ過した。ろ液として得られた抽出液を液体クロマトグラフィーで分析し、予め準備した検量線により定量した。なお、検量線は、約10、50、100、200、500、1000、2000、5000ppmの既知量に調製した溶液を分析することで作成した。分析カラムとしては、昭和電工株式会社製 Shodex SUGAR SH1011を用いた。
【0188】
〔実施例1〕
(操作1−1)
断熱材である発泡スチロールで覆われた、内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸293g(4.1mol)、他の内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(エチレングリコールの繰り返し単位数は9)0.215g(カルボキシル基含有不飽和単量体に対し0.01モル%)、および1.0重量%ジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム水溶液1.80g、IRGACURE(登録商標)184の1.0重量%アクリル酸溶液3.60gを混合した溶液(A)と、48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液238gと50℃に調温したイオン交換水252g、および、meso−エリスリトール0.20g(カルボキシル基含有不飽和単量体に対し0.04モル%)を混合した溶液(B)を作成した。長さ5cmのマグネチックスターラーを用い800r.p.m.で攪拌した溶液(A)に、溶液(B)をすばやく加え混合することで単量体水溶液(C)を得た。単量体水溶液(C)は、中和熱と溶解熱により、液温が約100℃まで上昇した。なお、アクリル酸の中和率は、70モル%であった。
【0189】
次に、単量体水溶液(C)に3重量%の過硫酸ナトリウム水溶液11gを加え、約1秒間攪拌した後すぐに、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けたステンレス製バット型容器中に開放系で注いだ。また、ステンレス製バット型容器に単量体水溶液を注ぎ込むと同時に紫外線を照射した。
【0190】
単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合が開始し、重合は約1分以内にピーク温度となった。3分後、紫外線の照射を停止し、含水重合物を取り出した。なお、これら一連の操作は大気中に開放された系で行った。
【0191】
(操作1−2)
得られた含水重合物を、ミート・チョッパー(MEAT−CHOPPER TYPE:12VR−400KSOX 飯塚工業株式会社、ダイ孔径:6.4mm、孔数:38、ダイ厚み8mm)により粉砕し、細分化された粉砕含水重合物粒子)を得た。
【0192】
(操作1−3)
この細分化された粉砕含水重合物粒子を50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、180℃で熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmと目開き45μmのJIS標準篩で分級することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂(固形分96重量%)を得た。
【0193】
(操作1−4)
得られた吸水性樹脂100重量部に1,4−ブタンジオール0.3重量部、プロピレングリコール0.6重量部、純水3.0重量部の混合液からなる表面処理剤溶液を均一に混合した。表面架橋剤溶液を混合した吸水性樹脂を攪拌機を備えたジャケット付き加熱装置(ジャケット温度:210℃)で35分間加熱処理した。加熱処理後、得られた吸水性樹脂を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕することで、表面が架橋された吸水性樹脂(1)を得て、これを吸水剤(1)とした。吸水剤(1)の諸物性を表1に示した。
【0194】
なお、液体クロマトグラフィーを用いて分析した吸水剤中の未反応のmeso−エリスリトールは吸水剤に対して280ppmであった。
【0195】
【表1】

【0196】
〔実施例2〕
内部架橋剤meso−エリスリトール0.20g(カルボキシル基含有不飽和単量体に対し0.04モル%)をキシリトール0.25g(カルボキシル基含有不飽和単量体に対し0.04モル%)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、表面が架橋された吸水性樹脂(2)を得て、これを吸水剤(2)とした。吸水剤(2)の諸物性を表1に示した。
【0197】
なお、液体クロマトグラフィーを用いて分析した吸水剤中の未反応のキシリトールは吸水剤に対して460ppmであった。
【0198】
〔実施例3〜5〕
内部架橋剤meso−エリスリトール0.20g(カルボキシル基含有不飽和単量体に対し0.04モル%)をD−ソルビトール0.30g(カルボキシル基含有不飽和単量体に対し0.04モル%)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、表面が架橋された吸水性樹脂(3)〜(5)を得て、それぞれ吸水剤(3)〜(5)とした。吸水剤(3)〜(5)の諸物性を表1に示した。なお、実施例3、4および5では、上記(操作1−4)の加熱処理時間は実施例1と若干異なり、それぞれ、25分、30分、および40分であった。
【0199】
なお、実施例5において、液体クロマトグラフィーを用いて分析した吸水剤中の未反応のソルビトールは吸水剤に対して280ppmであった。
【0200】
〔実施例6〕
内部架橋剤meso−エリスリトール0.20g(カルボキシル基含有不飽和単量体に対し0.04モル%)をD−ソルビトール0.30g(カルボキシル基含有不飽和単量体に対し0.04モル%)に変更し、他の内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレートを用いなかった以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、表面が架橋された吸水性樹脂(6)を得て、それぞれ吸水剤(6)とした。吸水剤(6)の諸物性を表1に示した。また、上記(操作1−4)の加熱処理時間は30分であった。
【0201】
なお、液体クロマトグラフィーを用いて分析した吸水剤中の未反応のソルビトールは吸水剤に対して250ppmであった。
【0202】
〔比較例1〕
内部架橋剤として、ポリエチレングリコールジアクリレート1.10g(カルボキシル基含有不飽和単量体に対し0.05モル%)のみを用い、meso−エリスリトールを用いなかった以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、表面が架橋された比較吸水性樹脂(1)を得て、比較吸水剤(1)とした。比較吸水剤(1)の諸物性を表1に示した。
【0203】
〔比較例2〜3〕
内部架橋剤meso−エリスリトール0.20g(カルボキシル基含有不飽和単量体に対し0.04モル%)をエチレングリコール0.10g(カルボキシル基含有不飽和単量体に対し、0.04モル%)に変更した以外は実施例1と同様の操作(他の内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレートは実施例1と同様に用いた。)を行うことにより、表面が架橋された比較吸水性樹脂(2)〜(3)を得て、比較吸水剤(2)〜(3)とした。比較吸水剤(2)〜(3)の諸物性を表1に示した。
【0204】
〔比較例4〜5〕
内部架橋剤meso−エリスリトール0.20g(カルボキシル基含有不飽和単量体に対し0.04モル%)をグリセリン0.152g(カルボキシル基含有不飽和単量体に対し、0.04モル%)に変更した以外は実施例1と同様の操作(他の内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレートは実施例1と同様に用いた。)を行うことにより、表面が架橋された比較吸水性樹脂(4)〜(5)を得て、比較吸水剤(4)〜(5)とした。比較吸水剤(4)〜(5)の諸物性を表1に示した。
【0205】
なお、比較例4において、液体クロマトグラフィーを用いて分析した吸水剤中の未反応のグリセリンは吸水剤に対して130ppmであった。
【0206】
〔実施例7〕
実施例1で得られた吸水性樹脂(1)に、更に以下に示す操作1−5を行うことで、通液性向上剤が添加された吸水剤(7)を得た。吸水剤(7)の諸物性を表2に示した。
【0207】
(操作1−5)
得られた表面が架橋された吸水性樹脂(1)100重量部に硫酸アルミニウム水和物(13〜14水和物、住友化学工業株式会社より入手)1重量部を均一に混合し、吸水剤(7)を得た。吸水剤(7)の諸物性を表2に示す。
【0208】
【表2】

【0209】
〔実施例8〜12〕
吸水性樹脂(1)を実施例2〜6で得られた吸水性樹脂(2)〜(6)に変更した以外は、実施例7と同様の操作を行うことにより、通液性向上剤が添加された吸水剤(8)〜(12)を得た。吸水剤(8)〜(12)の諸物性を表2に示した。
【0210】
〔比較例6〜10〕
吸水性樹脂(1)を比較例1〜5で得られた比較吸水性樹脂(1)〜(5)に変更した以外は、実施例7と同様の操作を行うことにより、通液性向上剤が添加された比較吸水剤(6)〜(10)を得た。比較吸水剤(6)〜(10)の諸物性を表2に示した。
【0211】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0212】
本発明は、通液性を向上させた吸水剤およびその製造方法に関する。かかる吸水剤は、紙オムツなどの衛生材料に使用した場合、従来の吸収体と比べ高い通液性を示し、ゲルブロッキングによる吸収量低下や漏れ問題を改善することができる。
【0213】
また、本発明にかかる吸水剤は、衛生材料に限らず、農園芸、ケーブル止水剤、土木・建築、食品などの従来の吸水性樹脂の用途にも広く使用されうる。
【0214】
それゆえ、本発明はこれらを製造する衛生材料製造業、園芸産業、土木・建築業、食品産業のみならず、吸水剤の製造を行う化学工業に利用でき非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0215】
【図1】AAPの測定に用いる測定装置の概略の断面図である。
【図2】SFCの測定に用いる測定装置の概略の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基含有不飽和単量体を重合して得られ架橋構造を有する吸水性樹脂を主成分として含む吸水剤であって、
上記吸水性樹脂は、少なくとも、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物が内部に導入されていることを特徴とする吸水剤。
【請求項2】
カルボキシル基含有不飽和単量体を重合して得られ架橋構造を有する吸水性樹脂を主成分として含む吸水剤であって、
上記吸水性樹脂は、少なくとも、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物が内部に導入され、かつ、導入された非高分子化合物の少なくとも一部で内部架橋されていることを特徴とする吸水剤。
【請求項3】
少なくとも一部の上記非高分子化合物は、カルボキシル基と共有結合しうるいずれの官能基も上記吸水性樹脂のカルボキシル基と結合していないことを特徴とする請求項1又は2に記載の吸水剤。
【請求項4】
上記非高分子化合物であって、カルボキシル基と共有結合しうるいずれの官能基も上記吸水性樹脂のカルボキシル基と結合していない未反応の非高分子化合物が、吸水剤に対して100ppm以上含まれていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の吸水剤。
【請求項5】
上記非高分子化合物の分子量が5000以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の吸水剤。
【請求項6】
上記非高分子化合物の官能基当量が、20以上200g/mol以下であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の吸水剤。
【請求項7】
上記吸水性樹脂は、さらに、一分子中に2個以上の重合性エチレン性二重結合を有する内部架橋剤、及び/又は、一分子中に2個以上の官能基を有する上記非高分子化合物以外の内部架橋剤で内部架橋されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の吸水剤。
【請求項8】
上記吸水性樹脂は、さらに有機表面架橋剤及び/又は無機表面架橋剤で、表面架橋されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の吸水剤。
【請求項9】
上記吸水性樹脂は、粒子状の吸水性樹脂粒子であって、該吸水性樹脂粒子全体に対する、粒子径が150μm以上850μm未満の粒子の割合が90重量%以上であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の吸水剤。
【請求項10】
上記カルボキシル基と共有結合しうる官能基は、水酸基および/またはアミノ基であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の吸水剤。
【請求項11】
さらに、通液性向上剤を含むことを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の吸水剤。
【請求項12】
上記吸水剤0.5gを20℃の生理食塩水50mlに分散させてなる吸水剤分散液の表面張力が55mN/m以上であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の吸水剤。
【請求項13】
吸水倍率(CRC)が25g/gより大きいことを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の吸水剤。
【請求項14】
食塩水流れ誘導性(SFC)が30cm・s・10−7/g以上であることを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の吸水剤。
【請求項15】
カルボキシル基含有不飽和単量体を重合して得られ架橋構造を有する吸水性樹脂を主成分として含む吸水剤を製造する方法であって、
上記カルボキシル基含有不飽和単量体を含んでなる単量体水溶液中のカルボキシル基含有不飽和単量体を、少なくとも、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物の存在下で、重合させて含水重合物を得る重合工程と、
上記重合工程で得られた含水重合物を乾燥して吸水性樹脂を得る乾燥工程とを含み、
上記カルボキシル基含有不飽和単量体に対する、上記カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物の使用量(Y)(単位:モル%)が、以下の式(1)
Y<0.06/{2−(2.35X/100)} ・・・(1)
で示される量であって、式(1)中、Xは前記吸水性樹脂中のカルボキシル基の中和率(単位:モル%)を示し、Xは45以上85以下であることを特徴とする吸水剤の製造方法。
【請求項16】
上記重合工程は、上記カルボキシル基含有不飽和単量体を含んでなる単量体水溶液中のカルボキシル基含有不飽和単量体を、カルボキシル基と共有結合しうる官能基を4個以上有する非高分子化合物と、さらに、一分子中に2個以上の重合性エチレン性二重結合を有する内部架橋剤、及び/又は、一分子中に2個以上の官能基を有する上記非高分子化合物以外の内部架橋剤との存在下で、重合させて含水重合物を得る工程であることを特徴とする請求項15に記載の吸水剤の製造方法。
【請求項17】
さらに、有機表面架橋剤及び/又は無機表面架橋剤で上記吸水性樹脂の表面を架橋する表面架橋工程を含むことを特徴とする請求項15又は16に記載の吸水剤の製造方法。
【請求項18】
さらに、通液性向上剤を添加する、通液性向上剤添加工程を含むことを特徴とする請求項15ないし17のいずれか1項に記載の吸水剤の製造方法。
【請求項19】
上記通液性向上剤は、水溶性の多価金属化合物または水溶性のポリカチオン化合物であることを特徴とする請求項18に記載の吸水剤の製造方法。
【請求項20】
上記通液性向上剤は、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物、及び、アミノ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項18または19に記載の吸水剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−509722(P2009−509722A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516057(P2008−516057)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【国際出願番号】PCT/JP2006/319627
【国際公開番号】WO2007/037454
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】