説明

吸水性樹脂組成物

本発明は、長期間の香りの持続効果が高く、さらには優れた消臭効果を示す芳香剤や衛生材料を提供する。本発明は、香料を包含するシクロデキストリン、香料を包含するデキストリン誘導体、炭素数6〜10の不飽和脂肪族アルデヒドおよび不飽和脂肪族アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1の物質と、ポリカルボン酸系吸水性樹脂とを含む吸水性樹脂組成物である。好ましくは、ヘキセナールおよびヘキセノールから選ばれる不飽和アルデヒドまたは不飽和アルコールが用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸水性樹脂組成物に関するものである。さらに詳しくは、香料を包含するシクロデキストリン、シクロデキストリン誘導体、炭素数6〜10の不飽和脂肪族アルデヒドおよび炭素数6〜10の不飽和脂肪族アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1の物質と、吸水性樹脂を含む吸水性樹脂組成物に関するものであって、例えば、香りの持続効果が高く、匂い安定性や美観に優れ、工業的に製造容易であり、さらに、臭気低減性や耐久性に優れた芳香消臭剤や衛生材料(おむつ等の吸収物品を含む)に関するものである。本発明は、香料を包含するシクロデキストリン、シクロデキストリン誘導体、炭素数6〜10の不飽和脂肪族アルデヒドまたは炭素数6〜10の不飽和脂肪族アルコールを吸水性樹脂内部に包含する吸水性樹脂組成物に関するものであって、例えば、芳香ゲルや衛生材料として好適に使用できる吸水性樹脂組成物に関するものである。本発明は、香りの持続性と香りの安定性に優れるだけでなく、室内芳香剤や衛生材料に使用された場合に疲労やストレスの緩和に効果がある吸水性樹脂組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、清潔志向・健康志向の高まりの中で、家庭内における匂いや香りに敏感になってきている傾向にある。とりわけ犬・猫などのペット臭に代表される悪臭除去が課題となってきているだけでなく、疲労やストレスの緩和のための良い香りへのニーズが高まりつつある。おむつ等の衛生材料についても、尿等が吸収された際において悪臭が発生しうる。衛生材料についても、悪臭除去や良い香りに対するニーズがある。
【0003】
上記ニーズに応えるため、従来から室内や車内用の芳香剤が数多く提案されている。芳香剤には、液状、ゲル状、粒状、固体状のものが知られている。液状のものは通常アルコールがベースであり、ゲル状のものは吸水性樹脂のような水不溶性ゲル化剤をはじめ、寒天やカラギーナン等の水溶性ゲル化剤、金属石鹸、モンモリロナイト他の粘土鉱物、シリカ等でゲル状にしたものが知られている。また、粒状のものでは活性炭が、固体状ではシリカゲル等が利用されている。
【0004】
室内や車内用の芳香剤には、液状、ゲル状、粒状、固体状のものが知られている。液状のものは通常アルコールがベースであり、ゲル状のものは寒天やカラギーナン等の水溶性ゲル化剤、金属石鹸、モンモリロナイト他の粘土鉱物、シリカ等でゲル状にしたものが知られている。また、粒状のものでは活性炭が、固体状ではシリカゲル等が利用されている。
【0005】
また、従来、悪臭除去を目的として、吸水性樹脂に消臭剤を組み合わせた組成物に関する技術が数多く提案されてきた。例えば、臭気低減するために吸水性樹脂にシクロデキストリン等の化合物との組成物による消臭機能付与(特許文献1〜6)や、抗菌や除菌効果の付与(特許文献7)が提案されてきた。しかしながらこれらは臭気低減機能のみであり、人の疲労やストレス緩和のための積極的な芳香機能を付与するものではなかった。
【0006】
臭気低減に加えて、さらに香りへのニーズに応えるため、積極的に芳香機能を付与した吸水性樹脂組成物に関しても提案されてきた。例えば、水溶性樹脂に香料を包含させた粉末と吸水性樹脂粉末により芳香機能を付与した組成物(特許文献8)や、香料とシクロデキストリンを含有したゲル状の組成物(特許文献9)、吸水性樹脂と水増粘性ポリマー、芳香剤とを組み合わせた組成物(特許文献10)、無水マレイン酸とアンモニア反応物、吸水性樹脂および芳香剤との組成物(特許文献11)などが提案されてきた。
【0007】
このように種々の芳香剤が使用されているが、いずれも、従来品は香りが飛びやすく、香りの持続性が十分満足されるものではなかった。したがって、上記吸水性樹脂をおむつ等の吸収物品に応用したとしても、香りの持続性(徐放性)が十分とは言えない。持続性を向上することを目的として上記吸水性樹脂等のゲル化剤と香料を複合させる試みも種々行われてきているが、香料は一般的に疎水性であり、親水性のゲル化剤との複合化は容易でなく、例えば界面活性剤等の併用により問題解決を図ろうとする試みもあるが界面活性剤由来の異臭や濁りの発生だけでなく、香りの持続性においても十分な効果を上げられていないのが現状である。
【0008】
さらに、特許文献9開示の技術では、芳香成分の徐放持続性が不十分であるだけでなく使用中の水分蒸発と共に析出してくるシクロデキストリンが容器内部又は衛生材料の内部に付着してくるという欠点を有し、外観上も実用に耐えがたいという問題点を有していた。
【0009】
さらに、特許文献12では、香料の水溶液および/または水分散液を吸収した高吸水性ポリマー微粒子を油性分散媒体中に分散させたことを特徴とする香料を担持した高吸水性ポリマー微粒子を含む香料組成物が開示されている。また、特許文献13では、イソプレゴ−ル、3−(3−イソプロピルフェニル)ブタナ−ル、p−エチル−α、α−ジメチルヒドロシンナムアルデヒド、エチルバニリン、1−エトキシ−(3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン−3−イロキシ)−エタン、オクタヒドロ−8,8−ジメチル−2−ナフタレンカルボキシアルデヒド、サリチルアルデヒド、ジヒドロジャスモン、3,7−ジメチル−1−オクタナール、シス−ジャスモン、シンナミックアルコール、セドレノール、1−(5,5−ジメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−4−ペンテン−1−オン、α―ダマスコン、β―ダマセノン、α, 3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルフォーメート、トリメチルシクロヘキセンカルボキシアルデヒド、バニリン、4(3)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド、シスー3−ヘキセノール、ベチベリルアセテート、4−メチルフェニルアセトアルデヒド、3−メチル−5−フェニルペンタナ−ル、メトキシジシクロペンタジエンカルボキシアルデヒド、及びリナリルシンナメ−トから成る群から選ばれる1種以上の化合物を有効成分として含有する消臭香料組成物が開示されている。
【0010】
このような環境下、種々の芳香剤が使用されているが、従来の芳香剤(例えば特許文献12)は香りが飛びやすく、香りの持続性が十分満足されるものではなかった。また疲労やストレスの緩和という観点からも満足のゆくものではなかった。
【0011】
【特許文献1】国際公開特許WO98/26808号
【特許文献2】国際公開特許WO2001/26808号
【特許文献3】日本国公開 特開2000−079159号
【特許文献4】国際公開特許WO2000/01479号
【特許文献5】日本国公開 特開2004−346130号
【特許文献6】日本国公開 特開2004−285202号
【特許文献7】日本国公開 特開2003−146803号
【特許文献8】日本国公開 特開昭62−236860号
【特許文献9】日本国公開 特開平7−241333号
【特許文献10】日本国公開 特開2000−014760号
【特許文献11】日本国公開 特開2000−135280号
【特許文献12】日本国公開 特開2003−064393号
【特許文献13】日本国公開 特開2003−321697号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、長期間の香りの持続効果が高く、組成物のゲル安定性や美観に優れ、工業的に生産性の高い芳香剤又は衛生材料を提供する。さらに、臭気マスキング性に優れた組成物として衛生材料に使用することで、心地の良い安心感のある吸収物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、香料とシクロデキストリンおよび/またはシクロデキストリン誘導体とを吸水性樹脂内部に包含する芳香組成物が、香りの持続性と香料の安定性を著しく向上できるだけでなく、更に外観上も容器内または衛生材料内への析出物の付着を激減できる事を見出し、本発明に到達した。また、上記現状を鑑み、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、炭素数6〜10の不飽和脂肪族アルデヒドまたは不飽和脂肪族アルコール(特に、トランス−2−ヘキセナールおよび/またはシス−3−ヘキセノール)と吸水性樹脂とを含む芳香組成物が、香りの持続性と香りの安定性に優れるだけでなく、該芳香組成物を室内芳香剤または衛生材料に使用した場合に疲労やストレスの緩和に効果があることを見出し、本発明に到達した。
【0014】
すなわち、本発明の吸水性樹脂組成物は、香料を包含するシクロデキストリン、香料を包含するデキストリン誘導体、炭素数6〜10の不飽和脂肪族アルデヒドおよび炭素数6〜10の不飽和脂肪族アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1の物質と、ポリカルボン酸系吸水性樹脂とを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、長期間の香りの持続効果が高く、組成物のゲル安定性や美観に優れ、工業的に生産性の高い芳香剤や衛生材料を提供することができる。本発明によれば、香りの持続性と香りの安定性に優れ、疲労やストレスの緩和する芳香剤や衛生材料を提供することができる。本発明によれば、優れた消臭効果ないし抗菌効果を示す紙おむつなどの衛生材料や芳香剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明についてさらに詳述する。
【0017】
(1) 吸水性樹脂
本発明の吸水性樹脂とは、水と接触してヒドロゲルを形成しうる水膨潤性水不溶性の親水性架橋重合体のことである。水膨潤性とはイオン交換水中において必須に自重の5倍以上、好ましくは、50倍から1000倍という多量の水を吸収するものを指す。また、その水不溶性とは、樹脂中の水可溶分が必須に0〜50質量%、好ましくは0〜25質量%、より好ましくは0〜15質量%、さらに好ましくは0〜10質量%であり、実質的に水不溶性であることをいう。なお、これらの測定法は後述の実施例で規定する。
【0018】
このような吸水性樹脂の例としては、ポリアクリル酸部分中和物重合体、デンプン−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、デンプン−アクリル酸グラフト重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、アクリロニトリル共重合体もしくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、カルボキシル基含有架橋ポリビニルアルコール変性物、架橋イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、カルボキシメチルセルロース等のカルボキシアルキル化セルロースおよびポリアスパラギン酸架橋体やポリグルタミン酸等のポリアミノ酸系吸水性樹脂から選ばれるポリカルボン酸(塩)系吸水性樹脂の1種または2種以上を挙げることができ、特にポリアクリル酸塩系吸水性樹脂が使用される。
【0019】
また、本発明においてポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂とは、重合に用いられる総単量体(架橋剤を除く)でアクリル酸および/またはその塩の合計モル%が必須に50〜100モル%、より好ましくは70〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%、特に好ましくは95〜100モル%、最も好ましくは実質100モル%のものを言う。
本発明で用いられるアクリル酸塩としては、物性面や膨潤ゲルの長期間安定性の観点から好ましくはアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩からなるアクリル酸の1価塩、より好ましくはアクリル酸アルカリ金属塩、さらに好ましくは、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩から選ばれるアクリル酸アルカリ金属塩が主成分に用いられる。なお、水膨潤性の範囲でカルシウム塩、アルミニウム塩などの多価金属塩を併用してもよい。
【0020】
本発明において得られる吸水性樹脂の中和率は酸基の20〜99モル%、好ましくは50〜95モル%、より好ましくは60〜90モル%である。この中和は重合前の単量体成分に対して行っても良いし、重合中や重合後に重合体に対して行っても良い。さらには、単量体成分の中和と重合体の中和を併用しても良いが、好ましくは単量体成分としてのアクリル酸に対してアルカリでの中和処理、好ましくは水酸化ナトリウムまたは炭酸ナトリウムでの中和処理がなされる。
【0021】
好ましくは、アクリル酸及び/又はその塩(中和物)を主成分とする単量体を重合・架橋することにより得られるポリアクリル酸(塩)架橋重合体が用いられる。
【0022】
さらに、本発明において、後述する香料とシクロデキストリンおよび/またはシクロデキストリン誘導体とを吸水性樹脂内部に包含させるために用いる吸水性樹脂は、香料とシクロデキストリンおよび/またはシクロデキストリン誘導体を均一に吸水性樹脂組成物中に分布させるために、表面架橋することが好ましい。さらに、本発明において、後述する不飽和有機化合物を吸水性樹脂内部に包含させるために用いる吸水性樹脂は、不飽和有機化合物を均一に吸水性樹脂組成物中に分布させるために、表面架橋することが好ましい。
【0023】
吸水性樹脂の表面架橋とは、重合体内部に均一な架橋構造を吸水性樹脂の表面層(表面近傍:通常数10μm以下の近傍)にさらに架橋密度の高い部分を設けることである。
【0024】
表面架橋を行うための架橋剤としては、種々のものがあるが、物性の観点から、カルボキシル基と反応しうる架橋剤、一般的には、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、多価アミン化合物またはそのハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、モノ、ジ、またはポリオキサゾリジノン化合物、多価金属塩、アルキレンカーボネート化合物等が用いられる。
【0025】
なお、これらの表面架橋方法は、欧州特許0349240号、同0605150号、同0450923号、同0812873号、同0450924号、同0668080号などの各種欧州特許や、日本国特開平7−242709号、同7−224304号などの各種日本特許、米国特許5409771号、同5597873号、同5385983号、同5610220号、同5633316号、同5674633号、同5462972号などの各種米国特許、国際公開特許WO99/42494号、WO99/43720号、WO99/42496号などの各種国際公開特許にも記載されており、これらの表面架橋方法や吸水性樹脂も本発明に適用できる。
【0026】
本発明の方法で用いられる吸水性樹脂の形状については、特に制限がなく、不定形破砕状や球状等の粒子状ないし粉末、ゲル状、シート状、棒状、繊維状、フィルム状等であってもよいが、通常、その用途である衛生材料または芳香剤での使用を考慮した場合、粒子状ないし粉末状が好ましい。吸水性樹脂が粉末の場合、表面架橋前または表面架橋後において、その質量平均粒子径(篩分級で規定される)は通常100〜50000μmである。芳香成分の持続的な徐放効果の観点から、表面架橋前または表面架橋後において、その質量平均粒子径は、好ましくは100〜20000μm、より好ましくは200〜20000μm、さらに好ましくは300〜20000μm、特に好ましくは500〜10000μmである。芳香成分の持続的な徐放効果の観点から、表面架橋前または表面架橋後において、粒子径150μm未満の割合が0〜5質量%、より好ましくは0〜3質量%、特に好ましくは0〜1質量%である。
【0027】
特に芳香剤として使用される場合、芳香成分の徐放持続性の観点から、吸水性樹脂における粒子径300μm未満の割合は、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜3質量%、さらに好ましくは0〜1質量%である。また、特に紙おむつ等の衛生材料として使用される場合、吸収特性の観点から、吸水性樹脂の質量平均粒子径は好ましくは200μm〜850μm、特に好ましくは300μm〜600μmである。特に紙おむつ等の衛生材料として使用される場合、吸収特性の観点から、吸水性樹脂における150μm未満の割合は好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜3質量%、特に好ましくは0〜1質量%である。これらの好ましい粒子径または粒子割合は、吸水性樹脂のみならず、吸水性樹脂組成物にも適用されうる。
【0028】
また、吸水性樹脂の物性として、後述の無荷重吸水倍率(CRC)は、20g/g〜100g/g、さらには25〜50g/gが好ましい。吸水性樹脂の荷重下吸水倍率(AAP)は、10g/g〜60g/gが好ましく、さらには20〜40g/gがより好ましい。さらに詳しくは、吸水性樹脂の物性として、生理食塩水(0.9質量%塩化ナトリウム水溶液)に対する荷重20g/cmでの荷重下吸水倍率(加圧下吸収倍率)は好ましくは10〜60(g/g)、より好ましくは20〜40(g/g)であり、生理食塩水に対する荷重50g/cmでの荷重下吸水倍率(加圧下吸収倍率)は好ましくは15〜40(g/g)、より好ましくは15〜30(g/g)である。吸水性樹脂の水可溶分および粒度は前記の範囲に調整されるのが好ましい。
【0029】
本発明において、後述する香料とシクロデキストリンおよび/またはシクロデキストリン誘導体を吸水性樹脂内部に包含させることが好ましいが、そのためには吸水性樹脂の架橋密度制御すなわち吸水性樹脂の膨潤倍率制御が重要である。架橋密度の制御は吸水性樹脂を合成する際の重合条件、とりわけ内部架橋剤の量や重合時のモノマー濃度等で、ある程度コントロール可能である。
【0030】
本発明において、香料とシクロデキストリンおよび/またはシクロデキストリン誘導体とを吸水性樹脂内部に包含させる場合、好ましい吸水性樹脂の膨潤倍率は約2倍〜400倍の範囲である。かかる膨潤により、吸水性樹脂が重合ゲルとなってもよい。かかる膨潤は、乾燥前または乾燥後の吸水性樹脂に水を添加することによりなされてもよい。吸水性樹脂の膨潤倍率が400倍を超える場合は得られる吸水性樹脂組成物の強度が低下することがあり、2倍に満たない場合には香料とシクロデキストリンおよび/またはシクロデキストリン誘導体が吸水性樹脂内部に包含されない場合がある。尚、吸水性樹脂の膨潤倍率は、吸水性樹脂に吸水させた水の重量を吸水性樹脂の重量で除すること(重量比)で求めることが可能である。
【0031】
(2)シクロデキストリン
本発明に用いられるシクロデキストリンは、d−グルコース6〜10分子がα−1、4結合によって環状に結合したものであり、d−グルコース分子が6個結合したものはα−シクロデキストリンと称され、d−グルコース分子が7個結合したものはβ−シクロデキストリンと称され、d−グルコース分子が8個結合したものはγ−シクロデキストリンと称され、d−グルコース分子が9個結合したものはδ−シクロデキストリンと称され、d−グルコース分子が10個結合したものはε−シクロデキストリンと称される。本発明ではα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンのいずれも使用する事が出来る。α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンは、最も普通に得られるシクロデキストリンである。シクロデキストリンの使用量は、香料がシクロデキストリン内部に包接した後に香料成分と共にシクロデキストリン(誘導体)が水に溶解するような範囲で使用することが好ましい。この観点から、香料100質量部に対して、好ましくはシクロデキストリン1〜10000質量部、より好ましくは1〜1000質量部、さらに好ましくは1〜500質量部の範囲で好適に使用できる。
【0032】
また、本発明において、シクロデキストリンおよび/または種々のシクロデキストリン誘導体も使用することが可能である。このようなシクロデキストリン誘導体としては、例えばヒドロキシメチルシクロデキストリン、ヒドロキシエチルシクロデキストリン、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、ヒドロキシブチルシクロデキストリン、ジメチルシクロデキストリン、トリメチルシクロデキストリン、ジエチルシクロデキストリン、トリエチルシクロデキストリン、カルボキシメチルシクロデキストリン、グルコシルシクロデキストリン、マルトシルシクロデキストリン、ジマルトシルシクロデキストリン、シクロデキストリンエピクロルヒドリンポリマー等を例示することが出来る。これらシクロデキストリン誘導体の使用量は、香料100質量部に対してシクロデキストリン誘導体1〜10000質量部が好ましく、より好ましくは1〜1000質量部、さらに好ましくは1〜500質量部の範囲で好適に使用できる。
【0033】
本発明において、後述する不飽和有機化合物を吸水性樹脂内部に包含させることが好ましいが、そのためには吸水性樹脂の架橋密度制御すなわち吸水性樹脂の膨潤倍率制御が重要である。架橋密度の制御は吸水性樹脂を合成する際の重合条件、とりわけ内部架橋剤の量や重合時のモノマー濃度等である程度コントロール可能である。
【0034】
[炭素数6〜10の不飽和脂肪族アルデヒドまたは不飽和脂肪族アルコール(好ましくは、ヘキセナールまたはヘキセノール)]
本発明の吸水性樹脂組成物は、炭素数6〜10(さらには炭素数6〜8)の不飽和脂肪族アルデヒドまたは不飽和脂肪族アルコールを含むものが好ましく、さらには、ヘキセナールおよびヘキセノールから選ばれる不飽和アルデヒドまたは不飽和アルコールを含むものが好ましい。本発明において、香りの持続性と香りの安定性の観点から、より好ましくは、直鎖不飽和アルデヒドないしアルコール、さらに好ましくは、ヘキセナールおよび/またはヘキセノールを吸水性樹脂内部に含ませることが重要である。
【0035】
本発明で用いられるヘキセノール(炭素数6)としては、トランス−2−ヘキセノール、シス−2−ヘキセノール、トランス−3−ヘキセノール、シス−3−ヘキセノールなどの直鎖不飽和アルコールが例示される。本発明で用いられるヘキセナールとしては、トランス−2−ヘキセナール、シス−2−ヘキセナール、トランス−3−ヘキセナール、シス−3−ヘキセナールなどの直鎖不飽和アルデヒド、またはそれらの分岐物などが例示される。好ましくは、直鎖不飽和アルコールないしの直鎖不飽和アルデヒドであり、より好ましくは、シス−3−ヘキセノールおよび/またはトランス−2−ヘキセナールが使用される。
【0036】
かかる不飽和アルデヒドまたはアルコールを吸水性樹脂内部に包含することによって香りの持続性が著しく改善され、香りが安定化され、更に美観にもすぐれる吸水性樹脂組成物である芳香組成物が提供できる。また、本発明の吸水性樹脂組成物をおむつなどの衛生材料に使用する場合、消臭作用と抗菌作用を発揮して、良好なおむつを与える。
【0037】
本発明で使用されるシス−3−ヘキセノールは別名青葉アルコールとも言われ、生葉に含まれ、青臭みに関与すると言われる香気成分である。また、トランス−2−ヘキセナールは別名青葉アルデヒドとも言われ、植物性の青臭さの元で抗菌作用もあると言われる化合物である。かかるシス−3−ヘキセノールおよび/またはトランス−2−ヘキセナールは合成で得てもよいし、天然物から得てもよい。また、シス−3−ヘキセノールおよび/またはトランス−2−ヘキセナールは単一化合物でもよいし、天然物としてこれらを含有する化合物または混合抽出物であってもよい。シス−3−ヘキセノールおよび/またはトランス−2−ヘキセナールを混合物で使用する場合、その重量比は1/99〜99/1、好ましくは20/80〜80/20の範囲とするのが好ましい。
【0038】
[他の成分]
本発明の吸水性樹脂組成物において、シクロデキストリンおよび/またはシクロデキストリン誘導体を用い、且つ、前記炭素数6〜10の不飽和脂肪族アルデヒドまたは不飽和脂肪族アルコールに代えて、他の成分、特に香料成分を加えても良い。好ましくは、本発明の吸水性樹脂組成物において、シクロデキストリンおよび/またはシクロデキストリン誘導体を用い、且つ、前記炭素数6〜10の不飽和脂肪族アルデヒドまたは不飽和脂肪族アルコールに併用して、他の成分、特に香料成分を加えても良い。
【0039】
[香料]
香料とは、香気を付与または増強するために添加される添加物及びその製剤のことである。本発明で使用できる香料としては、揮発性で且つ常温で芳香を添えることが出来るものであれば、天然香料、合成香料、調合香料など種々のものが使用できる。
【0040】
天然香料としては、動物性香料・植物性香料いずれも使用することが出来る。動物性香料としては例えば、ムスク(麝香)、アンバーグリス(龍涎香)、シベット(霊猫香)、カストリュウム(海狸香)等を挙げることが出来る。植物性香料としては、例えばローズ、ジャスミン、オレンジフラワー、バイオレット等の花より得られた香料やレモン、ローズマリー、イリス、シナモン等の果皮や葉、根、蕾、樹皮、幹材より得られた香料などを挙げることができる。
【0041】
本発明で使用される香料は、例えば、下記化合物である。
【0042】
(アルコール類の香料)
シンナミックアルコ−ル、α−ピネン、カンフェン、リモネン、ミルセン、カジネン等の炭化水素類;アニスアルコール、ゲラニオール、シトロネロール、シンナミルアルコール、フェニルエチルアルコール、ペチペノール、メントール、ベンジルアルコール、リナロール等のアルコール類。
【0043】
(アルデヒド類の香料)
3,7−ジメチル−1−オクタナ−ル、4(3)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド、4−メチルフェニルアセトアルデヒド、3−メチル−5―フェニルペンタナ−ル、メトキシジシクロペンタジエンカルボキシアルデヒド、トリメチルシクロヘキセンカルボキシアルデヒド、オクタヒドロ-8,8-ジメチル−2−ナフタレンカルボキシアルデヒド、3−(3−イソプロピルフェニル)ブタナール、p−エチル−α、α−ジメチルヒドロシンナムアルデヒド、サリチルアルデヒド、アニスアルデヒド、α−アミルシンナムアルデヒド、オキシシトロネラール、シトラール、シトロネラール、シクラメンアルデヒド、パニリン、フェニルアセトアルデヒド、ピペロナール等のアルデヒド類。
【0044】
(ケトン類の香料)
イロン、カルボン、シクロヘプタデカノン、ジャスモン、シペトン、ベンジリデンアセトン、ムスコン、α−ヨノン等のケトン類。
【0045】
(エステル類の香料)
安息香酸エチル、酢酸エチル、酢酸ゲラニル、酢酸リナリル、サリチル酸メチル等のエステル類。
【0046】
(エーテル類の香料)
アニソール、アネトール、オイゲノール、サフロール、ジフェニルオキシド、ネロリン等のフェノールエーテル類。
【0047】
(酸類の香料)
クマリン、アンブレットリド、エキサルトリド、クマリン等のラクトン類;p−オキシアニソール、ヒドロキノンジメチルエーテル等のキノン類;アニス酸、ケイ皮酸、シトロネル酸、フェニル酢酸等の酸類等。
【0048】
その他上記香料以外にも、例えば「Perfume and Flavor Chemicals Vol.1 and Vol.2 ; Steffen Arctander Allured Pub.Co.1994」、「合成香料 化学と商品知識;印藤元一著、化学工業日報社発行、1996年」、「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin ; Steffen Arctander Allured Pub.Co.1994」および「香りの百科;日本香料協会編、朝倉書店発行、1989年」等に記載された香料が使用されうる。
【0049】
上記天然香料および合成香料として、シス−3−ヘキセノールおよび/またはトランス−2−ヘキセナールなどが、それぞれ単独でも使用できるが、2種以上を調合して希望の香りにしても良い。また、上記天然香料および合成香料として、シス−3−ヘキセノールおよび/またはトランス−2−ヘキセナールに加えて、更に1種又は2種以上の香料を調合して希望の香りにしても良い。調合した香りの例としては、フローラル系、オリエンタル系、シブレ系、ナチュラル系、シトラス系、フゼア系等が挙げられる。
【0050】
シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体に対する包含の容易性の観点および芳香成分の徐放性の観点から、上記香料の中で、油溶性香料が好ましい。この観点から、香料の水に対する溶解度は、0以上10以下が好ましく、0以上7以下がより好ましく、0以上5以下が最も好ましい。この溶解度は、20℃における100gのイオン交換水に対する溶解量(g)を意味する。使用される香料の水に対する溶解度が高く、香料が親水性である場合、吸水性樹脂との相互作用が高くなるため、芳香成分の徐放性が低下する傾向となる。さらに、本発明で使用される香料は、常温(20〜25℃)で液状であることが好ましい。香料の融点は、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下、特に好ましくは0℃以下である。香料の沸点は、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。本発明で使用される香料が常温で液状でなく、例えば常温で固体ないし結晶である場合、吸水性樹脂と均一に一体化ないし複合化しないため好ましくない。上記油溶性香料の中でも、炭素数が6以上10以下の不飽和アルデヒドまたは炭素数が6以上10以下の不飽和アルコールが好ましく、ヘキセナールまたはヘキセノールがより好ましい。
【0051】
[吸水性樹脂組成物およびその製造方法]
本発明における吸水性樹脂組成物は、香りの持続性と香料の安定性の観点から、香料とシクロデキストリンおよび/またはシクロデキストリン誘導体を吸水性樹脂内部に包含することが好ましい。なお、本発明で吸水性樹脂の内部とは、内部に均一に存在する必要はなく、吸水性樹脂と一体化または複合化されておればよく、例えば、吸水性樹脂中にミクロドメイン(海島状)に含有されてもよく、表面に含有されてもよく、内部に包摂されていてもよい。
【0052】
本発明者らは、香料とシクロデキストリンおよび/またはシクロデキストリン誘導体を吸水性樹脂内部に包含することによって香りの持続性が著しく改善され、香料が安定化され、更に美観にもすぐれる衛生材料または芳香剤が提供できることを見出した。吸水性樹脂は一般的に3次元の網目構造を有しているが、その網目の大きさをシクロデキストリンおよび/またはシクロデキストリン誘導体の大きさよりも大きくコントロールすることで、香料とシクロデキストリンおよび/またはシクロデキストリン誘導体を吸水性樹脂内部に包含することが初めて可能となったのである。
【0053】
香料とシクロデキストリンおよび/またはシクロデキストリン誘導体とを吸水性樹脂内部に包含する方法としては、吸水性樹脂の製造工程に前記化合物を添加したり、製造後の吸水性樹脂に添加したりすることができる。例えば、下記方法(A)〜(F)を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
(A)予め香料とシクロデキストリンおよび/またはシクロデキストリン誘導体とを混合し、この混合物を水溶液とし、この水溶液を吸水性樹脂に吸収させる方法。
(B)予め香料とシクロデキストリンおよび/またはシクロデキストリン誘導体とを混合し、この混合物を水溶液とし、この水溶液を吸水性樹脂に吸収させ、その後乾燥する方法。
(C)水に溶解したシクロデキストリンおよび/またはシクロデキストリン誘導体に香料を添加混合して水溶液を得て、得られた水溶液を吸水性樹脂に吸収させる方法。
(D)水に溶解したシクロデキストリンおよび/またはシクロデキストリン誘導体に香料を添加混合して水溶液を得て、得られた水溶液を吸水性樹脂に吸収させ、その後乾燥する方法
(E)吸水性樹脂の重合工程において、モノマーあるいは重合ゲルに、香料とシクロデキストリンおよび/またはシクロデキストリン誘導体とを添加する方法
(F)吸水性樹脂の表面架橋工程、造粒工程などにおいて、香料とシクロデキストリンおよび/またはシクロデキストリン誘導体とを添加する方法
【0055】
香料の安定性・匂いの持続性の観点から、得られた吸水性樹脂組成物はゲル状(含水ゲル状)であることが好ましい。操作の簡便性・エネルギー効率の観点から、上記方法のうち(A)もしくは(B)の方法が好ましい。これらの方法(A)もしくは(B)の場合、製造途中で香料が揮発することも無く優れた効率で本発明の吸水性樹脂組成物を生産することが可能である。本発明の吸水性樹脂組成物が衛生材料に使用される場合、おむつの加工性や吸水能の観点から、吸水性樹脂組成物は粉末状であることが好ましい。本発明の吸水性樹脂組成物が衛生材料に使用される場合、上記方法(D)が好ましい。また得られる吸水性樹脂組成物の大きさ、形状は使用目的によって適宜選択できる。
【0056】
[組成比]
本発明の吸水性樹脂組成物において、香料と吸水性樹脂の配合割合は、目的とする芳香性能によって適宜選択可能であるが、通常は香料100質量部に対して吸水性樹脂1〜100000質量部であり、さらには1〜10000質量部が好ましく、10〜10000質量部がより好ましい。また、香料を包含する前記シクロデキストリン、香料を包含する前記デキストリン誘導体、前記不飽和脂肪族アルデヒドおよび不飽和脂肪族アルコールの総和100質量部に対して、前記吸水性樹脂が1〜10000質量部であるのが好ましく、1〜1000質量部であるのがより好ましい。また、前記不飽和脂肪族アルデヒドおよび前記不飽和脂肪族アルコールの総和100質量部に対して、前記吸水性樹脂が1〜10000質量部であるのが好ましく、1〜1000質量部であるのがより好ましい。
【0057】
本発明の吸水性樹脂組成物はドライな状態でも使用可能である。ドライな状態とは、溶媒の水が実質無い状態(含水率が20%以下)であり、固体状である。しかし、芳香剤として使用される場合、その芳香機能の観点から好ましくは水性ゲルの状態で使用される。水性ゲルの状態というのは、吸水性樹脂の3次元網目の中に水性液を取り込んだ形を言い、固体のような外見を持つ水性液の系である。この水性液とは、水単独および/またはエタノールのような親水性有機溶媒と水との混合液であり、好ましくは水が50〜100質量%、さらに好ましくは水が70〜100質量%、特に好ましくは水が90〜100質量%である。一方、吸収倍率や使用感等の観点から、おむつ等の吸収物品を含む衛生材料に使用される場合には、本発明の吸水性樹脂組成物は、ドライな状態で使用されるのが好ましい。
【0058】
本発明の吸水性樹脂組成物が水性ゲル状の場合、3次元網目の中に取り込まれた前記水性液の量は、香料、シクロデキストリンおよび/またはシクロデキストリン誘導体及び吸水性樹脂の総和100質量部に対して、好ましくは200〜50000質量部、より好ましくは500〜10000質量部である。3次元網目の中に取り込まれた前記水性液の量は、香料を包含する前記シクロデキストリン、香料を包含する前記シクロデキストリン誘導体、前記不飽和脂肪族アルデヒド、前記不飽和脂肪族アルコールおよび吸水性樹脂の総和100質量部に対して、好ましくは200〜50000質量部、より好ましくは500〜10000質量部である。3次元網目の中に取り込まれた上記水性液の量は、前記不飽和脂肪族アルデヒド、前記不飽和脂肪族アルコールおよび吸水性樹脂の総和100質量部に対して、好ましくは200〜50000質量部、より好ましくは500〜10000質量部である。水性液の量が50000質量部を超える場合は、吸水性樹脂組成物の強度が不十分でゲル状態が維持できなくなって実使用に耐えないことがある。
【0059】
[他の成分]
上記の本発明に係る吸水性樹脂または吸水性樹脂組成物は、さらに、必要に応じて、他の成分を、0〜20重量%、好ましくは0〜5重量%含んでいてもよい。他の成分としては、抗菌剤、発泡剤、顔料、染料、可塑剤、粘着剤、界面活性剤、肥料、酸化剤、還元剤、水、塩類、キレート剤(好ましくはアミノカルボン酸)、殺菌剤、ポリエチレングリコールやポリエチレンイミンなどの親水性高分子、パラフィンなどの疎水性高分子、ポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂、ポリエステル樹脂やユリア樹脂などの熱硬化性樹脂等が挙げられる。本発明に係る吸水性樹脂または吸水性樹脂組成物の製造方法は、これらの他の成分を添加する工程等、種々の機能を付与する工程を含んでいても良い。
【0060】
[吸水性樹脂組成物の製造方法]
前記不飽和脂肪族アルコールおよび/または不飽和脂肪族アルデヒドを吸水性樹脂内部に包含する方法としては、シクロデキストリンおよび/またはその誘導体を使用せず、または使用して、吸水性樹脂の製造工程に前記化合物を添加したり、製造後の吸水性樹脂に添加することができる。なお、本発明において、前記不飽和脂肪族アルコールおよび/または不飽和脂肪族アルデヒドが吸水性樹脂の内部に存在する場合とは、シクロデキストリンおよび/またはその誘導体が存在する場合も含み、シクロデキストリンおよび/またはその誘導体が存在しない場合も含む。また、本発明において、前記不飽和脂肪族アルコールおよび/または不飽和脂肪族アルデヒドが吸水性樹脂の内部に存在する場合とは、内部に均一に存在する場合に限られず、吸水性樹脂と一体化ないし複合化されている場合も含む。例えば、前記不飽和脂肪族アルコールおよび/または不飽和脂肪族アルデヒドは、吸水性樹脂中にミクロドメイン(海島状)に含有されてもよく、吸水性樹脂の表面に含有されてもよく、吸水性樹脂の内部に包接されていてもよい。
【0061】
本発明者らは、前記不飽和有機化合物(アルコールおよびアルデヒド)を吸水性樹脂内部に包含させることによって、香りの持続性が著しく改善され、香料が安定化され、更に美観にもすぐれる衛生材料や芳香剤が提供できることを見出した。吸水性樹脂は一般的に3次元の網目構造を有しているが、その網目の大きさを前記不飽和有機化合物の大きさよりも大きくコントロールすることで、不飽和有機化合物を吸水性樹脂内部に包含することが初めて可能となったのである。
【0062】
不飽和有機化合物(アルコールおよびアルデヒド)を吸水性樹脂内部に包含させる製造方法として、例えば、下記方法(A1)〜(D1)を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
(A1)前記不飽和脂肪族アルコールまたは不飽和脂肪族アルデヒドを水性液にして、この水性液を吸水性樹脂に吸収させる方法。ただし、この水性液は、例えばエタノールのような親水性有機溶媒と水からなる。
(B1)前記不飽和脂肪族アルコールまたは不飽和脂肪族アルデヒドをシクロデキストリンのような水溶性高分子と混合し、この混合物を水性液とし、この水性液を吸水性樹脂に吸収させる方法。
(C1)吸水性樹脂の重合工程において、モノマーあるいは重合ゲルに、前記不飽和脂肪族アルコールまたは不飽和脂肪族アルデヒドを添加する方法
(D1)吸水性樹脂の表面架橋工程、造粒工程などにおいて、前記不飽和脂肪族アルコールまたは不飽和脂肪族アルデヒドを添加する方法
【0064】
本発明の吸水性樹脂組成物を芳香剤として使用する場合、香料の安定性・匂いの持続性の観点から得られた組成物はゲル状(含水ゲル状)であることが好ましく、操作の簡便性・エネルギー効率の観点から上記方法のうち(A1)もしくは(B1)の方法が好ましい。本発明の吸水性樹脂組成物を衛生材料に使用する場合、おむつの加工性や吸水能から粉末状であることが好ましく、上記方法(D1)の方法が好ましい。また得られる吸水性樹脂組成物の大きさ、形状は使用目的によって適宜選択できる。
【0065】
[組成比]
本発明の吸水性樹脂組成物において、前記不飽和脂肪族アルコールおよび不飽和脂肪族アルデヒドと吸水性樹脂との配合割合は、目的とする芳香性能によって適宜選択可能であるが、通常は前記不飽和脂肪族アルコールおよび不飽和脂肪族アルデヒドの総和100質量部に対して吸水性樹脂1〜100000質量部、より好ましくは1〜10000質量部、さらに好ましくは10〜10000質量部である。
【0066】
本発明の吸水性樹脂組成物は、芳香剤とされる場合、その芳香機能の観点から好ましくは水性ゲルの状態で使用される。水性ゲルの状態および水性液については、前述した通りである。
【0067】
本発明の吸水性樹脂組成物が水性ゲル状の場合、3次元網目の中に取り込まれた上記水性液の量は、前記不飽和脂肪族アルコールまたは不飽和脂肪族アルデヒドと吸水性樹脂の総和100質量部に対して、好ましくは200〜50000質量部、より好ましくは500〜10000質量部である。水性液の量が50000質量部を超える場合、吸水性樹脂組成物の強度が不十分でゲル状態が維持できなくなって実使用に耐えないことがある。
【0068】
[吸水性樹脂組成物の形状等]
上記製法を製法の一例とする本発明の吸水性樹脂組成物はゲル状(例えば、含水率20%を超える状態、特に50〜99.999%)であってもよいし、乾燥物(例えば、含水率20%以下)であってもよい。乾燥物である場合、本発明の吸水性樹脂組成物は、粒子形状であって、例えば、後述の無荷重吸水倍率(CRC)は20g/g〜100g/g、さらにはは25〜50g/gであるのが好ましく、荷重下吸水倍率(加圧下吸収倍率、AAP)は10〜60g/g、さらに20〜40g/gであるのが好ましい。特に本発明の吸水性樹脂組成物が吸収物品等の衛生材料に用いられる場合、衛生材料として求められる吸収特性の観点から、生理食塩水(0.9質量%塩化ナトリウム水溶液)に対する荷重20g/cmでの荷重下吸水倍率(加圧下吸収倍率)は20(g/g)以上40(g/g)以下が好ましく、生理食塩水に対する荷重50g/cmでの荷重下吸水倍率(加圧下吸収倍率)は15(g/g)以上40(g/g)以下が好ましい。水可溶分および粒度は前記の範囲に調整される。
【0069】
本発明の吸水性樹脂組成物の形状については、特に制限がなく、不定形破砕状や球状等の粒子状ないし粉末、ゲル状、シート状、棒状、繊維状、フィルム状等であってもよい。なお、後述される吸水性樹脂組成物は、その質量平均粒子径が通常100〜50000μmである。芳香成分の持続的な徐放効果の観点から、後述される吸水性樹脂組成物は、その質量平均粒子径が好ましくは100〜20000μm、より好ましくは200〜20000μm、さらに好ましくは300〜20000μm、特に好ましくは500〜10000μmの範囲である粒子、粉末またはそれらのゲル状物である。この吸水性樹脂組成物において、粒子径150μm未満の割合は、0〜5質量%が好ましく、0〜3質量%がより好ましく、0〜1質量%が特に好ましい。
【0070】
特に芳香剤として使用される場合、芳香成分の徐放持続性の観点から、吸水性樹脂組成物における粒子径300μm未満の割合は、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜3質量%、さらに好ましくは0〜1質量%である。また、特に紙おむつ等の衛生材料として使用される場合、吸収特性の観点から、吸水性樹脂組成物の質量平均粒子径は好ましくは200μm〜850μm、特に好ましくは300μm〜600μmである。特に紙おむつ等の衛生材料として使用される場合、吸収特性の観点から、吸水性樹脂組成物における150μm未満の割合は好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜3質量%、特に好ましくは0〜1質量%である。
【0071】
(8)用途
本発明の吸水性樹脂組成物は、長期間の香りの持続効果が高く、色の安定性に優れ、組成物のゲル安定性や美観に優れ、工業的に生産性の高い衛生材料や芳香剤を提供する。また、本発明の吸水性樹脂組成物(特に粒子状吸水性樹脂組成物)は、おむつや生理用品などの衛生材料に使用した場合、良好な消臭性と耐久性(ゲル劣化防止性)を示す。さらに、本発明の吸水性樹脂組成物は、香りの持続性と香りの安定性に優れ、疲労やストレスの緩和に効果がある衛生材料や芳香剤を提供するものである。更に本発明の吸水性樹脂組成物は、香料成分によるマスキング効果や抗菌効果も有しているので消臭抗菌剤としても使用可能であり、例えば室内や車内用の芳香剤・消臭剤や衛生材料として利用できる。また、本発明の吸水性樹脂組成物(特に粒子状吸水性樹脂組成物)はおむつなど衛生材料に使用された場合、良好な消臭性や抗菌性と耐久性(ゲル劣化防止性)を示し、白色粉末での長期間の色安定性に優れた特性を示す。
【0072】
特に、本発明の吸水性樹脂組成物が衛生材料用途に使用される場合、親水性繊維等の任意の他の材料とともに成形されることで、吸収体(成形物)が得られる。吸収体の形状は特に限定されないが、好ましくは、シート状、筒状、フィルム状又は繊維状とされ、特に好ましくはシート状(別称ウェッブ状)とされる。これらの形状に加工されることで吸収体が得られる。
【0073】
本発明で用いることができる親水性繊維は特に限定されないが、例えば、粉砕された木材パルプ、コットンリンターや架橋セルロース繊維、レーヨン、綿、羊毛、アセテート、ビニロン等が例示でき、これらをエアレイドしたものが好ましい。
【0074】
本発明にかかる吸収体が粒子状吸水剤と親水性繊維とを含む吸収体である場合、粒子状吸水剤と親水性繊維との合計質量に対する粒子状吸水剤の含有量(以下、コア濃度とも称される)が20〜100質量%の範囲であることが好ましく、25〜90質量%の範囲であることがより好ましく、30〜80質量%の範囲であることがさらに好ましい。かかる吸収体は、密度0.001〜0.50(g/cc)、且つ、坪量0.01〜0.20(g/cm)の範囲に圧縮成形されることが好ましい。
【0075】
さらに、本発明の吸水性樹脂が使用された吸収性物品(最終消費財)は、上記した本発明の吸収体、液透過性を有する表面シート、液不透過性を有する背面シートを備える。本発明に係る吸収性物品の製造方法は、特に限定されないが、例えば、吸収体を、液透過性
を有する基材(表面シート)と液不透過性を有する基材(背面シート)とでサンドイッチし(挟み込み)、必要に応じて、弾性部材、拡散層、粘着テープ等を装備することにより、紙オムツや生理用ナプキン等の吸収性物品を得る製造方法が採用されうる。
【実施例】
【0076】
本発明の吸水性樹脂組成物について実施例により詳細に説明するが、本発明は以下の記載に何ら限定されるものではない。尚、「%」は、特に記載がない場合は全て質量%(重量%)であり、「部」は、特に記載がない場合は全て質量部(重量部)である。
【0077】
(1)無加圧下での吸収倍率(GVs/Gel Volume Saline)
吸水性樹脂0.2gを不織布製袋(60×60mm)に均一に入れシールをして、25(±3)℃の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液100gに浸漬した。24時間後に袋を引き上げ、遠心分離機を用いて250Gで3分間水切りを行った後、前記不織布製袋の質量W1を測定した。同様の操作を、吸水性樹脂を用いないで行い、そのときの質量W2を求めた。質量W1と質量W2を用いて、式1により吸収倍率を算出した。なお、吸水性樹脂組成物の形状や大きさ等により0.2gを採取できない場合は、0.2gの採取が可能となるように適宜粉砕して、測定がなされる。
式1:GVs=(W1−W2)/0.2−1
【0078】
(2)水可溶性重合体量(可溶分量、可溶分とも略すことがある)
250ml容量の蓋付きプラスチック容器に、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)の184.3gを測り取り、その水溶液中に吸水性樹脂1.00gを加え24時間攪拌することにより樹脂中の可溶分を抽出した。この抽出液を濾紙1枚(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を用いて濾過することにより得られた濾液の50.0gを測り取り、測定溶液とした。
【0079】
はじめに生理食塩水だけを、まず、0.1NのNaOH水溶液でpH10まで滴定を行い、その後、0.1NのHCl水溶液でpH2.7まで滴定して空滴定量([bNaOH]ml、[bHCl]ml)を得た。同様の滴定操作を測定溶液についても行うことにより滴定量([NaOH]ml、[HCl]ml)を求めた。例えば既知量のアクリル酸とそのナトリウム塩とからなる吸水性樹脂の場合、そのモノマーの平均分子量と上記操作により得られた滴定量をもとに、吸水性樹脂の可溶分率を下式2により算出することができる。未知量の場合は滴定により求めた中和率を用いてモノマーの平均分子量を算出する。なお、抽出された可溶分は、抽出された水溶性重合体が主成分である。
【0080】
式2:
可溶分率(重量%)=0.1×(平均分子量)×184.3×100×([HCl]−[bHCl])/1000/1.0/50.0
【0081】
式3:
中和率(mol%)=(1−([NaOH]−[bNaOH])/([HCl]−[bHCl]))×100
【0082】
(3)質量平均粒子径(D50)
吸水性樹脂粉末または吸水性樹脂組成物を53mm、45mm、31.5mm、22.4mm、11.3mm、8mm、5.6mm、4mm、2.8mm、1.4mm、1mm、850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、75μmなどのJIS標準篩(JIS Z8801−1(2000)ないしその相当品)で篩い分けし、残留百分率を対数確率紙にプロットした。これにより、質量平均粒子径(D50)を読み取った。
【0083】
篩い分けは吸水性樹脂10gを室温(20〜25℃)、相対湿度50±5%RHの条件下で上記JIS標準ふるい(The IIDA TESTING SIEVE:内径80mm)に仕込み、ロータップ型ふるい振盪機(株式会社飯田製作所製ES−65型ふるい振盪機)により10分間分級した。なお、質量平均粒子径(D50)とは、米国特許5051259号公報などにあるように、一定目開きの標準ふるいで粒子全体の50重量%に対応する標準ふるいの粒子径のことである。また、前記目開きの標準篩以外にも、JIS Z8801−1記載の標準篩を適宜選択して測定してもよい。
【0084】
[加圧下吸水倍率]
米国特許6444744号に準じて、生理食塩水(0.9質量%塩化ナトリウム水溶液)に対する荷重20g/cm(0.3psi)および荷重50g/cm(0.7psi)での加圧下吸水倍率を測定した。
【0085】
(参考例1)
37重量%アクリル酸ナトリウム水溶液340.6部、アクリル酸39.5部、10%ポリエチレングリコールジアクリレート水溶液1部およびイオン交換水33.8部を含むモノマー水溶液に、窒素雰囲気下でヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184;チバスペシャリティケミカル株式会社製)の1%アクリル酸溶液1.9部、3%過硫酸ナトリウム水溶液1.9部を加え、該水溶液温度が5℃の状態で紫外線を照射し重合を行った。重合終了後、得られた含水ゲル状重合体(1)を粉砕し、熱風乾燥機中120℃で乾燥を行い、吸水性樹脂(1)を得た。吸水性樹脂(1)の質量平均粒子径は1500μm、150μm未満の粒子の割合が0.1重量%であった。また、吸水性樹脂(1)のGVs(g/g)および可溶分率(%)は、32(g/g)および7重量%であった。
【0086】
(参考例2)
37%アクリル酸ナトリウム水溶液340.6部、アクリル酸39.5部、10%ポリエチレングリコールジアクリレート水溶液1部およびイオン交換水33.8部を含むモノマー水溶液に窒素雰囲気下にヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184;チバスペシャリティケミカル株式会社製)の1%アクリル酸溶液1.9部、3%過硫酸ナトリウム水溶液1.9部を加え、該水溶液温度が22℃の状態で紫外線を照射し重合を行った。重合終了後、得られた含水ゲル状重合体(2)を粉砕し、熱風乾燥機中120℃で乾燥を行い、吸水性樹脂(2)を得た。吸水性樹脂(2)の質量平均粒子径は1000μmであった。吸水性樹脂(2)において、150μm未満の粒子の割合は0.1重量%であった。また、吸水性樹脂(2)のGVs(g/g)および可溶分率(%)は、37(g/g)および9重量%であった。
【0087】
(参考例3)
アクリル酸ナトリウム74.5モル%、アクリル酸25モル%およびメチレンビスアクリルアミド0.5モル%からなる濃度39%のモノマー水溶液400部を、窒素雰囲気下、0.54部の過硫酸ナトリウムおよび0.03部のl−アスコルビン酸を用いて重合した。この重合により得られた含水ゲル状重合体(3)を細かく砕いて180℃の熱風乾燥機中で乾燥した。得られた乾燥物を粉砕機で粉砕し、JIS標準篩850μm通過物を分取して吸水性樹脂(3)を得た。吸水性樹脂(3)の質量平均粒子径は2000μmであった。吸水性樹脂(3)において、150μm未満の粒子の割合は0.5重量%であった。また、吸水性樹脂(3)のGVs(g/g)および可溶分率(%)は、40(g/g)および9重量%であった。
【0088】
(実施例1)
シス−3−ヘキセノール10%、クエン酸トリエチルエステル15%およびエチルアルコール75%を成分とする香料(1)1.5部、食用青色一号(東京化成工業株式会社製)0.0001部ならびにイオン交換水47部からなる水溶液を作製し、この水溶液に吸水性樹脂(1)1部を加え、本発明の吸水性樹脂組成物(1)を得た。吸水性樹脂組成物(1)は、ゲル状組成物である。
【0089】
(実施例2)
シス−3−ヘキセノール10%、クエン酸トリエチルエステル15%およびエチルアルコール75%を成分とする香料(1)1部ならびにイオン交換水180部からなる水溶液を作製し、この水溶液に吸水性樹脂(2)4.5部を加えて、本発明の吸水性樹脂組成物(2)を得た。吸水性樹脂組成物(2)は、ゲル状組成物である。
【0090】
(実施例3)
シス−3−ヘキセノール10%、クエン酸トリエチルエステル15%およびエチルアルコール75%を成分とする香料(1)1.5部、食用青色一号(東京化成工業株式会社製)0.0001部、食用黄色4号(東京化成工業株式会社製)0.0001部ならびにイオン交換水47部からなる水溶液を作製し、この水溶液に吸水性樹脂(3)1部を加え、本発明の吸水性樹脂組成物(3)を得た。吸水性樹脂組成物(3)は、ゲル状組成物である。
【0091】
(実施例4)
シス−3−ヘキセノールをトランス−2−ヘキセナールに変更する以外は実施例1と同様にして、本発明の吸水性樹脂組成物(4)を得た。吸水性樹脂組成物(4)は、ゲル状組成物である。
【0092】
(実施例5)
上記香料(1)を、シス−3−ヘキセノール5%、トランス−2−ヘキセナール5%、クエン酸トリエチルエステル15%およびエチルアルコール75%を成分とする香料に変更する以外は実施例1と同様にして、本発明の吸水性樹脂組成物(5)を得た。吸水性樹脂組成物(5)は、ゲル状組成物である。
【0093】
(比較例1)
シス−3−ヘキセノールを使用しない以外は実施例1と同様にして、本発明の比較吸水性樹脂組成物(1)を得た。比較吸水性樹脂組成物(1)は、ゲル状組成物である。
【0094】
(比較例2)
吸水性樹脂(1)を使用しない以外は実施例1と同様にして、本発明の比較組成物(2)を得た。
【0095】
(実施例6)
シス−3−ヘキセノール1.5部を吸水性樹脂(1)100部に添加混合することにより、吸水性樹脂組成物(6)を得た。吸水性樹脂組成物(6)は、粉末状組成物である。
【0096】
(評価1)
吸水性樹脂組成物(1)〜(5)20gを500mlのガラスビーカーに入れて室温放置したところ、一ヶ月後に芳香組成物の重量は約半分となっていたが、依然として透明なゲル状で容器への析出物はなく、香りも維持していた。
【0097】
(評価2)
比較吸水性樹脂組成物(1)および比較組成物(2)において評価1と同様の試験をおこなったところ、香りは全く残っていなかった。吸水性樹脂組成物(1)〜(6)、比較吸水性樹脂組成物(1)および比較組成物(2)の仕様が下記の表1で示される。
【0098】
【表1】

【0099】
(実施例7)
シス−3−ヘキセノール10%、クエン酸トリエチル15%およびエチルアルコール75%を成分とする香料(1)1部、α−シクロデキストリン2部ならびに純水180部からなる水溶液を作製し、この水溶液に、参考例2で得られた吸水性樹脂(2)4.5部を加えて、本発明の吸水性樹脂組成物(7)を得た。吸水性樹脂組成物(7)は、ゲル状組成物である。
【0100】
(比較例3)
吸水性樹脂を加えない以外は実施例7と同様にして、比較組成物(3)を得た。
【0101】
(実施例8)
シス−3−ヘキセノール10%、クエン酸トリエチル15%およびエチルアルコール75%を成分とする香料(1)1.5部、食用青色一号(東京化成工業株式会社製)0.0001部、α−シクロデキストリン0.2部および純水47部からなる水溶液を作製し、この水溶液に、参考例1で得られた吸水性樹脂(1)1部を加え、本発明の吸水性樹脂組成物(8)を得た。吸水性樹脂組成物(8)は、ゲル状組成物である。
【0102】
(実施例9)
シトラールA(高砂香料工業株式会社製)0.1部、α−シクロデキストリン0.2部および純水100部からなる水溶液を作製し、この水溶液に吸水性樹脂(2)1部を加えて、本発明の吸水性樹脂組成物(9)を得た。吸水性樹脂組成物(9)は、ゲル状組成物である。
【0103】
(比較例4)
α−シクロデキストリンの替わりにポリオキシエチレンソルビタンモノラウリレートを用いた以外は実施例9と同様にして、比較組成物(4)を得た。比較組成物(4)は外観上白濁した状態であった。比較組成物(4)は、ゲル状組成物である。
【0104】
(実施例10)
シス−3−ヘキセノール10%、クエン酸トリエチル15%、エチルアルコール75%を成分とする香料(1)1.5部、食用青色一号(東京化成工業株式会社製)0.0001部、食用黄色4号(東京化成工業株式会社製)0.0001部、β−シクロデキストリン0.2部および純水47部からなる水溶液を作製し、この水溶液に、参考例3で得られた吸水性樹脂(3)1部を加え、本発明の吸水性樹脂組成物(10)を得た。吸水性樹脂組成物(10)は、ゲル状組成物である。
【0105】
(実施例11)
シス−3−ヘキセノールをトランス−2−ヘキセナールに替える以外は実施例7と同様にして、吸水性樹脂組成物(11)を得た。吸水性樹脂組成物(11)は、ゲル状組成物である。
【0106】
(参考例4)
参考例1で得られた含水ゲル状重合体(1)を粉砕し、180℃で熱風乾燥して、乾燥物を得た。次いで、この乾燥物をロールミルにより粉砕し、さらに目開き850μmと目開き150μmのJIS標準篩で分級することにより、質量平均粒子径400μmの不定形破砕状の吸水性樹脂(4)を得た。吸水性樹脂(4)のGVs(g/g)は33(g/g)であった。吸水性樹脂(4)の可溶分率(%)は7重量%であった。荷重が20g/cmとされた条件下において、吸水性樹脂(4)の生理食塩水に対する加圧下吸収倍率は、7(g/g)であった。荷重が50g/cmとされた条件下において、吸水性樹脂(4)の生理食塩水に対する加圧下吸収倍率は、5(g/g)であった。
【0107】
(参考例5)
参考例4で得られた吸水性樹脂(4)100質量部に、1,4ブタンジオール0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部及び純水3.0質量部の混合液からなる表面処理剤を均一に混合した。この混合物を200℃で30分間加熱処理した。この加熱処理された粒子を、目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで粉砕することにより、吸水性樹脂(5)を得た。吸水性樹脂(5)のGVs(g/g)は24(g/g)であった。吸水性樹脂(5)の可溶分率(%)は7重量%であった。荷重が20g/cmとされた条件下において、吸水性樹脂(5)の生理食塩水に対する加圧下吸収倍率は、25(g/g)であった。荷重が50g/cmとされた条件下において、吸水性樹脂(5)の生理食塩水に対する加圧下吸収倍率は、21(g/g)であった。
【0108】
(実施例12)
実施例1で用いた香料(1)1部と、α−シクロデキストリン2部とを混合し、香料(1)をα−シクロデキストリンに吸収させることにより、香料(1)を包含したα−シクロデキストリンを得た。次いで、香料(1)を包含したα−シクロデキストリン3部をイオン交換水180部に溶解させることにより水溶液を作製し、この水溶液に吸水性樹脂(2)4.5部を加えることにより、吸水性樹脂組成物(12)を得た。吸水性樹脂組成物(12)は、ゲル状組成物である。
【0109】
(実施例13)
香料(1)1.5部及び食用青色一号(東京化成工業株式会社製)0.0001部をα−シクロデキストリンに包含させる以外は実施例12と同様にして、吸水性樹脂組成物(13)を得た。吸水性樹脂組成物(13)は、ゲル状組成物である。
【0110】
(実施例14)
実施例12と同様にして、香料(1)を包含したα−シクロデキストリンを得た。 このα−シクロデキストリン1部をイオン交換水5部に溶解することにより水溶液(14)を得た。この水溶液(14)を、参考例(5)で得られた吸水性樹脂(5)100部に均一混合した。混合後、この混合物を、60℃の無風オーブン中に1時間放置した。その後、目開き850μmのJIS標準篩に通過させることにより、質量平均粒子径が420μmであり、150μm未満の粒子成分が0.5質量%である、粉末状の吸水性樹脂組成物(14)を得た。吸水性樹脂組成物(14)のGVs(g/g)は23(g/g)であった。吸水性樹脂組成物(14)の可溶分率(%)は7重量%であった。荷重が20g/cmとされた条件下において、吸水性樹脂組成物(14)の生理食塩水に対する加圧下吸収倍率は、23(g/g)であった。荷重が50g/cmとされた条件下において、吸水性樹脂組成物(14)の生理食塩水に対する加圧下吸収倍率は、20(g/g)であった。
【0111】
(実施例15)
香料(1)を香料(2)に置き換える以外は実施例14と同様にして、質量平均粒子径が420μmであり、150μm未満の粒子成分が0.2質量%である粒子状の吸水性樹脂組成物(15)を得た。香料(2)の成分は、トランス−2−ヘキセナール10質量%、クエン酸トリエチルエステル15質量%およびエチルアルコール75質量%とした。吸水性樹脂組成物(15)のGVs(g/g)は23(g/g)であった。吸水性樹脂組成物(15)の可溶分率(%)は7重量%であった。荷重が20g/cmとされた条件下において、吸水性樹脂組成物(15)の生理食塩水に対する加圧下吸収倍率は、23(g/g)であった。荷重が50g/cmとされた条件下において、吸水性樹脂組成物(15)の生理食塩水に対する加圧下吸収倍率は、20(g/g)であった。
【0112】
(実施例16)
実施例15で用いられた香料(2)1部と、参考例5で得られた吸水性樹脂(5)100部とを均一混合することにより、質量平均粒子径が400μmであり、150μm未満の粒子成分が0.3質量%である粉末状の吸水性樹脂組成物(16)を得た。吸水性樹脂組成物(16)のGVs(g/g)は24(g/g)であった。吸水性樹脂組成物(16)の可溶分率(%)は7重量%であった。荷重が20g/cmとされた条件下において、吸水性樹脂組成物(16)の生理食塩水に対する加圧下吸収倍率は、24(g/g)であった。荷重が50g/cmとされた条件下において、吸水性樹脂組成物(16)の生理食塩水に対する加圧下吸収倍率は、21(g/g)であった。
【0113】
(評価3)
吸水性樹脂組成物(7)〜(13)20gをそれぞれ500mlのガラスビーカーに入れて室温放置したところ、一ヶ月後に芳香組成物の重量は約半分となっていたが、依然として透明なゲル状で容器への析出物はなく、香りも維持していた。
【0114】
(評価4)
吸水性樹脂組成物(7)〜(13)に替えて、比較組成物(3)、(4)を用いた以外は、評価3と同様の評価を行った。その結果、香りは全く残っていなかった。また、比較組成物(4)では、析出物が観察された。
【0115】
(評価5)
内径が60mmで且つ高さが80mmであるポリプロピレン製容器内に、吸水性樹脂組成物(6)、吸水性樹脂組成物(14)、吸水性樹脂組成物(15)および吸水性樹脂組成物(16)をそれぞれ1gを入れ、更にこの1gの吸水性樹脂組成物に対して50gのイオン交換水を混合することにより、膨潤ゲルを作製した。続いてこの膨潤ゲルの入った容器に蓋をし、37℃の乾燥機内で1日間放置した。放置後、ゲルの状態を目視にて確認したところ、吸水性樹脂組成物(6)、(14)、(15)および(16)はいずれも安定したゲル状態を保っていた。
【0116】
(評価6)
吸水性樹脂組成物(6)、(14)、(15)および(16)に替えて、参考例4で得られた吸水性樹脂(4)を用いた以外は評価5と同様にして評価した。放置後のゲルは、その一部が溶解し且つ流動する状態であった。評価5と評価6との比較からわかるように、吸水性樹脂組成物(6)、(14)、(15)および(16)は、吸水性樹脂(4)に比べてゲル安定性に優れる。
【0117】
(評価7)
吸水性樹脂組成物(14)から(16)をそれぞれ75部と、親水性繊維としての木材粉砕パルプ25部とを、ミキサーにより乾式混合した。次いで、得られた混合物を、バッチ型空気抄造装置を用いて、400メッシュ(目の大きさ38μm)に形成されたワイヤースクリーン上に空気抄造した。この空気抄造により、120mm×400mmの大きさを有するウェブが形成された。更に、このウェブを、2kg/cmの圧力で5秒間プレスすることにより、坪量が約0.047g/cmでありコア濃度が75質量%である吸収体を得た。バックシート、上記吸収体、トップシートの順で、これらを互いに両面テープで貼着するとともに、この貼着物に2つのいわゆるテープファスナーを取り付けることにより、紙おむつである吸収物品(1)から(3)を得た。なお、上記バックシートは、液不透過性のポリプロピレンからなるとともに、いわゆるレッグギャザーを有している。上記トップシートは液透過性のポリプロピレンからなる。次に、吸収物品(1)から(3)に、生理食塩水(0.9質量%の塩化ナトリウム水溶液)50mlをトップシート側から投入した。更に20分間隔で50mlずつ生理食塩水を追加投入し、合計250mlの生理食塩水を投入した。その後、生理食塩水が投入された吸収物品(1)から(3)を、無風オーブン中において37℃で16時間放置した。16時間放置後の吸収物品(1)から(3)に、再び50mlの生理食塩水を投入したところ、全ての生理食塩水が吸収された。
【0118】
(評価8)
吸水性樹脂組成物(14)から(16)に替えて、参考例4で得られた吸水性樹脂(4)を用いた以外は評価7と同様にして評価した。その結果、16時間放置後に投入された生理食塩水は、目詰まりにより、トップシートから吸収されなかった。
【0119】
本願は、2005年7月20日に出願された日本国特許出願2005−209655及び2005年7月20日に出願された日本国特許2005−209659に基づく優先権主張を伴う。これら日本国出願の全ての内容は、参照されることにより、ここにインコーポレートされる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の吸水性樹脂組成物は、香りの持続性と香りの安定性に優れ、疲労やストレスの緩和に効果がある衛生材料や芳香剤を提供するものである。更に本発明の吸水性樹脂組成物は、香料成分によるマスキング効果や抗菌効果も有しているので消臭抗菌剤としても使用可能であり、例えば、室内や車内用の芳香剤・消臭剤や衛生材料として利用できる。製造途中から商品に至るまで香料の安定性が著しく向上される。また、紙おむつなどの衛生材料に使用する場合、優れた消臭効果や抗菌効果と耐久性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
香料を包含するシクロデキストリン、香料を包含するデキストリン誘導体、炭素数6〜10の不飽和脂肪族アルデヒドおよび炭素数6〜10の不飽和脂肪族アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1の物質と、ポリカルボン酸系吸水性樹脂とを含む吸水性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリカルボン酸系吸水性樹脂がポリアクリル酸(塩)架橋重合体である請求項1に記載の吸水性樹脂組成物。
【請求項3】
質量平均粒子径(JIS標準ふるい分級で規定)が100〜20000μmである請求項1または2に記載の吸水性樹脂組成物。
【請求項4】
水性ゲル状物である請求項1から3のいずれかに記載の吸水性樹脂組成物。
【請求項5】
香料を包含する前記シクロデキストリン、香料を包含する前記デキストリン誘導体、前記不飽和脂肪族アルデヒドおよび不飽和脂肪族アルコールの総和100質量部に対して、前記吸水性樹脂が1〜10000質量部の範囲である請求項1から4のいずれかに記載の吸水性樹脂組成物。
【請求項6】
香料を包含する前記シクロデキストリン、香料を包含する前記デキストリン誘導体、前記不飽和脂肪族アルデヒド、前記不飽和脂肪族アルコールおよび吸水性樹脂の総和100質量部に対して、水性液200〜50000質量部を含有する請求項1から5のいずれかに記載の吸水性樹脂組成物。
【請求項7】
前記不飽和脂肪族アルデヒドがヘキセナールであるか、または、前記不飽和脂肪族アルコールがヘキセノールである請求項1から6のいずれかに記載の吸水性樹脂組成物。
【請求項8】
香料を包含する前記シクロデキストリンおよび/または香料を包含する前記デキストリン誘導体と、ポリアクリル酸(塩)架橋重合体とを含む請求項1から7のいずれかに記載の吸水性樹脂組成物。
【請求項9】
炭素数6〜10の前記不飽和脂肪族アルデヒドおよび/または炭素数6〜10の前記不飽和脂肪族アルコールとポリアクリル酸(塩)架橋重合体とを含む請求項1から7のいずれかに記載の吸水性樹脂組成物。
【請求項10】
香料とシクロデキストリンおよび/またはシクロデキストリン誘導体とを混合する工程と、該混合物を水に溶解させて水溶液とする工程と、この水溶液を吸水性樹脂に吸収させる工程とを含む、吸水性樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
シクロデキストリンおよび/またはシクロデキストリン誘導体と香料とを水に混合して水溶液を得る工程と、この水溶液を吸水性樹脂に吸収させる工程とを含む、吸水性樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
炭素数6〜10の不飽和脂肪族アルデヒドおよび/または炭素数6〜10の不飽和脂肪族アルコールを含む水性液と吸水性樹脂とを混合する工程を含む吸水性樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれかに記載の吸水性樹脂組成物を含む衛生材料。
【請求項14】
請求項1〜9のいずれかに記載の吸水性樹脂組成物を含む芳香剤。

【公表番号】特表2009−501803(P2009−501803A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−558364(P2007−558364)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【国際出願番号】PCT/JP2006/314717
【国際公開番号】WO2007/011058
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】