説明

吸水性樹脂組成物

【課題】アミノ酢酸系キレート剤を含む耐尿性に優れた吸水性樹脂組成物であって、しかも耐光性に優れ、着色が少なく、消臭を備えることもある吸水性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】吸水性樹脂とアミノ酢酸系キレート剤とを含む吸水性樹脂組成物であって、前記アミノ酢酸系キレート剤を前記吸水性樹脂に対して10ppm以上含み、しかも前記組成物中のニトリロトリ酢酸およびその塩の含有量が前記組成物に対して1ppm以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂組成物に関する。詳しくは、耐尿性と耐光性に優れ、かつ着色の少ない吸水性樹脂組成物に関する。さらに、消臭性にも優れた吸水性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙おむつや生理用ナプキン、失禁パット等の衛生材料には、その構成材として、尿や経血等の体液を吸収させることを目的として、吸水性樹脂が幅広く利用されている。
上記吸水性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、澱粉−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、澱粉−アクリル酸グラフト重合体の中和物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、カルボキシメチルセルロース架橋体、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、カチオン性モノマーの架橋体、架橋イソブチレン−マレイン酸共重合体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とアクリル酸の架橋体等が知られている。
【0003】
吸水性樹脂を紙おむつの吸収体として用いる場合に、経時的に吸水性樹脂が劣化し、通液性が低下したりゲル強度が低下し、おむつから尿が漏れてしまうという問題が従来から指摘されている。このような吸水性樹脂の尿による劣化は微量の金属イオンと尿中に含まれるL−アスコルビン酸により起きると考えられるため、いわゆるキレート剤を吸水性樹脂に添加し、金属イオンを捕捉することで、吸水性樹脂の耐尿性を向上させるという技術が提案されている。このようなキレート剤としては、例えば、ジエチレントリアミン5酢酸ナトリウムやトリエチレンテトラアミン6酢酸ナトリウム等のアミノ酢酸系キレート剤が知られている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−246674号公報
【特許文献2】欧州特許940148A号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アミノ酢酸系キレート剤は、その構造から、吸水性樹脂の耐尿性のみならず耐光性をも向上させ得ることが期待される。しかしながら、従来技術においては耐尿性の向上しか見られず、耐光性については無添加の場合と変わりがないものであった。
他方、吸水性樹脂の主な用途が衛生材であることから、経時的な着色の少ないことが望まれている(欧州特許942014号公報)。また、吸水性樹脂が尿を吸収したとき等に発生する悪臭の低減も望まれている(米国特許第5078992号明細書、特開平9−85082号公報)。
したがって、本発明の第1の課題は、アミノ酢酸系キレート剤を含む耐尿性に優れた吸水性樹脂組成物であって、しかも耐光性に優れた吸水性樹脂組成物を提供することにある。本発明の第2の課題は、着色が少なく、また、使用時において悪臭を発することも少ない吸水性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明者が鋭意検討を行った結果、従来技術においてアミノ酢酸系キレート剤を添加しても耐光性が向上しない原因は、アミノ酢酸系キレート剤に不純物として数重量%以上(通常、5〜15重量%程度)含まれているニトリロトリ酢酸および/またはその塩(以下、簡便のため両者をまとめて「ニトリロトリ酢酸(塩)」ということがある)であることが判明した。ニトリロトリ酢酸(塩)は、発がん性の懸念される物質でもあるため(IARCのランク2B)、吸水性樹脂組成物が紙おむつ等の人体に接触する用途に用いられることに鑑みれば、安全性の面からも、その含有量を極力低減しなければならない。
【0007】
アミノ酢酸系キレート剤は、一般に、アンモニアとエチレンジクロライドやアジリジンとを反応させてジエチレントリアミンやトリエチレンテトラアミン等を得て、これにクロロ酢酸と水酸化ナトリウム等のアルカリ剤とを反応させることで製造されるが、未反応のアンモニアがジエチレントリアミンやトリエチレンテトラアミン等の中に残存するために、これとクロロ酢酸とが反応し、不純物であるニトリロトリ酢酸(塩)が生成するものと考えられる。
本発明者が実験により確認した結果によれば、耐光性を向上させると言う観点からは、組成物中のニトリロトリ酢酸(塩)の含有量は、組成物に対して1ppm以下、好ましくは0.5ppm以下、さらに好ましくは0.1ppm以下、よりさらに好ましくは0.01ppm以下にする必要がある(本明細書中、「ppm」は、特に断らない限り、重量基準である)。しかも、ニトリロトリ酢酸(塩)の含有量をこのように低減すれば、着色も少ないことが分かった。しかし、単純に、アミノ酢酸系キレート剤の配合量を減らすことでニトリロトリ酢酸(塩)の含有量を低減しようとすれば、耐光性は改善されても、今度は、耐尿性が極端に低下する。つまり、キレート剤配合による耐尿性の維持向上が困難となるのである。本発明者が実験により確認した結果によれば、耐尿性の維持向上と言う観点からは、アミノ酢酸系キレート剤の配合量は、吸水性樹脂に対して10ppm以上、好ましくは20ppm以上とすることが必要であることが分かった。
【0008】
以上のことから、アミノ酢酸系キレート剤の配合量を吸水性樹脂に対して10ppm以上とした上で、組成物中のニトリロトリ酢酸(塩)の含有量を組成物に対して1ppm以下、好ましくは0.5ppm以下、さらに好ましくは0.1ppm以下、よりさらに好ましくは0.01ppm以下とすれば、耐尿性に優れるとともに、耐光性にも優れ、かつ着色も少ない吸水性樹脂組成物が得られることが分かり、本発明を完成した。
本発明者は、さらに、上述の構成、すなわち、アミノ酢酸系キレート剤の配合量を吸水性樹脂に対して10ppm以上とした上で、組成物中のニトリロトリ酢酸(塩)の含有量を組成物に対して1ppm以下とする構成の実行を容易とするために、アミノ酢酸系キレート剤に含まれるニトリロトリ酢酸(塩)の含有量を低減させる方法について鋭意検討を行った。その結果、アミノ酢酸系キレート剤もニトリロトリ酢酸も塩(−COOX(X:アルカリ金属等))の状態ではともに水への溶解度が高いために両者の分離は困難であるが、酸(−COOH)の状態では、アミノ酢酸系キレート剤は水への溶解度が低いのに対して、ニトリロトリ酢酸は水への溶解度が高いことが判明した。そこで、この水への溶解度の違いを利用して、ニトリロトリ酢酸(塩)を含むアミノ酢酸系キレート剤の水溶液をpH1〜3に調整して沈澱物(酸の状態のアミノ酢酸系キレート剤)を析出させた後、前記沈澱物を分離回収し、必要に応じて洗浄・乾燥すれば、ニトリロトリ酢酸(塩)の含有量が極めて低減された吸水性樹脂用アミノ酢酸系キレート剤が得られることを見出し、本発明を完成したものである。
【0009】
以上により、本発明は、前述の課題を解決するため、以下の手段を採用しているのである。
(1)吸水性樹脂とアミノ酢酸系キレート剤とを含む吸水性樹脂組成物であって、前記アミノ酢酸系キレート剤の配合量が前記吸水性樹脂に対して10ppm以上であり、かつ、前記組成物中のニトリロトリ酢酸およびその塩の含有量が前記組成物に対して1ppm以下であることを特徴とする吸水性樹脂組成物。
(2)吸水性樹脂とアミノ酢酸系キレート剤とを含む吸水性樹脂組成物であって、前記組成物中のニトリロトリ酢酸およびその塩の含有量が前記アミノ酢酸系キレート剤に対して1000ppm以下である吸水性樹脂組成物。
【0010】
(3)水溶性消臭剤をも配合してなる、上記(1)または(2)に記載の吸水性樹脂組成物。
(4)無荷重下吸収倍率が30g/g以上、劣化可溶性成分溶出量が20重量%以下、1.9kPa荷重下吸収倍率が28g/g以上、着色度が26以下である、上記(1)から(3)までのいずれかに記載の吸水性樹脂組成物。
(5)吸水性樹脂と水溶性消臭剤とを含み、無荷重下吸収倍率が30g/g以上、劣化可溶性成分溶出量が20重量%以下、1.9kPa荷重下吸収倍率が28g/g以上、悪臭低減率が40%以上である、吸水性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の吸水性樹脂組成物は、アミノ酢酸系キレート剤を含み、しかも、ニトリロトリ酢酸(塩)の含有量が非常に少ないため、耐尿性に優れており、しかも耐光性に優れ、着色が少なく、かつ安全性の高いものである。水溶性消臭剤をも含む場合には尿等を吸った場合の問題点を解消することも出来る。本発明の吸水性樹脂組成物は、しかも、優れた無荷重下吸収倍率、劣化可溶性成分溶出量および荷重下吸収倍率を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】荷重下吸収倍率の測定装置である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、吸水性樹脂とアミノ酢酸系キレート剤とを含む吸水性樹脂組成物であって、前記アミノ酢酸系キレート剤の配合量が前記吸水性樹脂に対して10ppm以上であり、かつ、前記組成物中のニトリロトリ酢酸(塩)の含有量が前記組成物に対して1ppm以下である。
このような構成は、前記アミノ酢酸系キレート剤として、ニトリロトリ酢酸(塩)の含有量が該アミノ酢酸系キレート剤に対して1000ppm以下のアミノ酢酸系キレート剤を用いる等すれば、容易に達成できるが、この方法に限るものではない。
かかるニトリロトリ酢酸(塩)含有量の極めて少ないアミノ酢酸系キレート剤は、限定する訳ではないが、例えば、不純物としてニトリロトリ酢酸(塩)を含む市販のアミノ酢酸系キレート剤の水溶液をpH1〜3に調整して沈澱物を析出させた後、前記沈澱物を分離回収することにより得ることが出来る。
【0014】
ニトリロトリ酢酸(塩)を含むアミノ酢酸系キレート剤の水溶液をpH1〜3に調整する方法は特に限定されないが、硫酸、硝酸、塩酸等の酸を前記水溶液に添加すればよい。水溶液のpHは1.5〜2.5に調整することが好ましく、1.8〜2.0に調整することがより好ましい。沈澱物の分離回収は、濾過により行うことが簡便である。分離回収した沈澱物の洗浄は純水で行うことが好ましく、乾燥は50〜200℃で行うことが好ましい。
この方法により、アミノ酢酸系キレート剤中のニトリロトリ酢酸(塩)の含有量は該アミノ酢酸系キレート剤に対して1000ppm以下にまで低減することができ、好ましくは500ppm以下、より好ましくは200ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下である。
【0015】
上記のようにして得られる、ニトリロトリ酢酸(塩)の含有量が極めて低減されたアミノ酢酸系キレート剤を、吸水性樹脂またはその原料に添加することで、吸水性樹脂組成物中のニトリロトリ酢酸(塩)の含有量を非常に低いものとすることができる。具体的には該組成物に対して1ppm以下が好ましく、より好ましくは0.5ppm以下、さらに好ましくは0.1ppm以下、よりさらに好ましくは0.01ppm以下である。
アミノ酢酸系キレート剤を吸水性樹脂またはその原料に添加する時期は特に限定されず、例えば、(1) モノマーに添加、(2) 重合途中または重合後のゲルに添加、(3) 表面架橋処理時に添加、(4) 表面架橋処理後に添加、(5) 吸水性樹脂の微粒子を回収する回収工程で添加、等することができる。中でも、表面架橋処理時または表面架橋処理後に添加することが好ましい。
【0016】
アミノ酢酸系キレート剤は、水や有機溶媒(メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン等)に溶解または分散させて、吸水性樹脂またはその原料に添加することができるが、上述のように酸型では水への溶解度が低いので、アルカリ溶液に溶解させて添加することが好ましい。アミノ酢酸系キレート剤溶液の濃度としては、0.1〜40重量%が好ましく、より好ましくは1〜40重量%である。
アミノ酢酸系キレート剤は、その使用量が吸水性樹脂に対して1ppm〜10重量%となるように添加することができ、好ましくは5〜1000ppm、より好ましくは10〜800ppmである。アミノ酢酸系キレート剤の使用量が少なすぎる場合には耐尿性向上の効果が見られず、多すぎる場合には使用に見合う効果が得られない。
【0017】
配合されたアミノ酢酸系キレート剤は、吸水性樹脂に配合される方法にもよるが、吸水性樹脂組成物中の吸水性樹脂に対しても実質的に上記添加量と同量含有される。
アミノ酢酸系キレート剤としては、エチレンジアミン4酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン3酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸、トリエチレンテトラアミン6酢酸、シクロヘキサンジアミノ4酢酸およびこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が使用可能であるが、中でもジエチレントリアミン5酢酸、トリエチレンテトラアミン6酢酸およびこれらのアルカリ金属塩が好ましい。
本発明の吸水性樹脂組成物に用いることのできる吸水性樹脂としては、水中において多量の水を吸収してヒドロゲルを形成するものであり、カルボキシル基を有するものが挙げられ、具体的には、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、澱粉−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、澱粉−アクリル酸グラフト重合体の中和物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、カルボキシメチルセルロース架橋体、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、カチオン性モノマーの架橋体、架橋イソブチレン−マレイン酸共重合体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とアクリル酸の架橋体等が挙げられる。これらの中でポリアクリル酸部分中和物架橋体が最も好ましい。
【0018】
ポリアクリル酸部分中和物架橋体を得るには、アクリル酸および/またはその塩を主成分とする親水性単量体を重合すればよく、アクリル酸および/またはその塩以外の単量体は単量体成分中30モル%以下とすることが好ましい。中和率としては、酸基の50〜95モル%が中和されていることが好ましく、60〜90モル%が中和されていることがより好ましい。塩としてはアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などを例示することができる。重合方法としては、水溶液重合又は逆相懸濁重合を行うことが好ましい。
重合により得られるポリアクリル酸部分中和物を架橋体とするには、架橋剤を使用しない自己架橋型のものを用いてもよいが、一分子中に2個以上の重合性不飽和基や、2個以上の反応性基を有する内部架橋剤を共重合または反応させることが好ましい。
【0019】
内部架橋剤の具体例としては、例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらの内部架橋剤は単独で用いてもよいし、二種以上併用してもよい。
【0020】
内部架橋剤の使用量としては前記単量体成分に対して好ましくは0.005〜3モル%、より好ましくは0.01〜1.5モル%である。内部架橋剤が少なすぎると、通液性、吸収速度が低下する傾向があり、逆に内部架橋剤が多すぎると、吸収倍率が低下する傾向がある。
上記重合により得られた重合体が含水ゲル状である場合には、含水ゲルを後で乾燥するために、所定の粒経にまで前記含水ゲルは細粒化されることが望ましい。含水ゲルの細粒化は、たとえば、双腕型ニーダー等により撹拌しながら重合することにより重合時に行ったり、重合後のゲルをミートチョッパー等を用いてダイスから押し出すことにより行うことができる。また、カッティングミル等により細粒化することもできる。細粒化されたゲルの粒経は、乾燥機の能力等により適宜設定することができるが、一般には0.1〜10mmの範囲が好ましい。0.1mmよりもゲルが細かいと、得られる吸水性樹脂が物性の低いものとなる恐れがある。10mmよりも大きいと、ゲルが乾燥されにくくなる恐れがある。
【0021】
細粒化工程においては、10mmよりも大きい粗ゲルおよび0.1mmよりも小さい微ゲルが生成し得る。これらの重合物を取り出し、たとえば、単量体水溶液や重合ゲルに添加することができる。
上記細粒化工程で細粒化されたゲルは乾燥工程で乾燥される。乾燥方法としては、たとえば、熱風乾燥機、気流乾燥機、流動層乾燥機、ドラムドライヤー、マイクロ波、遠赤外線等を用いることができる。乾燥温度は通常120℃以上であり、好ましくは150〜250℃の範囲であり、より好ましくは160〜220℃の範囲である。得られた乾燥物を、必要により粉砕し、所定の大きさの篩で分級することで、平均粒径が10〜1000μm程度、好ましくは100〜700μm程度、より好ましくは300〜500μm程度であり、106μm未満の微粒子の含有割合が5重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下の吸水性樹脂粉末とすることができる。
【0022】
分級により取り除かれた吸水性樹脂の微粒子を回収し、リサイクルして、該吸水性樹脂を製造する何れかの工程で添加することができる。
回収する吸水性樹脂(微粒子)の粒径は特に限定されないが、一般に300μm以下、好ましくは225μm以下、より好ましくは150μm以下である。
回収する吸水性樹脂は、表面架橋処理前のものであっても、表面架橋処理後のものであってもよく、いずれの吸水性樹脂をも用いることができる。
回収した微粒子をリサイクルするには、該微粒子に水を加えて造粒する。水の添加量としては、吸水性樹脂100重量部に対し、0.1〜2000重量部の範囲が好ましく、より好ましくは10〜900重量部である。水の添加量が前記範囲を下回ると、リサイクルが困難となる。また、水の添加量が前記範囲を上回ると、リサイクルした吸水性樹脂が劣化しやすい。
【0023】
微粒子の回収時にアミノ酢酸系キレート剤を添加する場合には、キレート剤を水溶液として微粒子に加えてもよいし、水と混合した微粒子にキレート剤を加えてもよい。また、キレート剤と微粒子とをドライブレンドした後、水を混合することもできる。
吸水性樹脂粉末の表面近傍を架橋処理することにより、吸水性樹脂の吸水特性、特に加圧下の吸収倍率をさらに高めることができる。表面架橋剤としては、特開昭58−180233号公報、特開昭61−16903号公報、特開昭59−189103号公報、特開昭52−117393号公報、特開昭51−136588号公報、特開昭61−257235号公報、特開昭62−7745号公報、特開昭61−211305号公報、特開昭61−252212号公報、特開昭61−264006号公報、独国特許第4020780号公報、WO99/42494号公報、WO99/43720号公報、WO00/31153号公報、特開2000−197818号公報等に開示されているもの等が例示される。具体的には、吸水性樹脂の表面の官能基と反応できる2個以上の官能基を有するものであればよく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、グリセロリン酸、2−ブテン−1,4−ジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシドール等の(多価)エポキシ化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン等の多価アミン化合物や、それらの無機塩ないし有機塩(例えば、アジチニウム塩等);2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン、ポリイソプロペニルオキサゾリンやその共重合体等の多価オキサゾリン化合物;1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、1,3−ジオキソパン−2−オン等のアルキレンカーボネート化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物、および、その多価アミン付加物(例えばハーキュレス製カイメン:登録商標);γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤;亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、ジルコニウム等の水酸化物及び塩化物等の多価金属化合物等が挙げられる。これらの中でも多価アルコール化合物、(多価)エポキシ化合物、多価アミン化合物やそれらの塩、アルキレンカーボネート化合物が好ましい。これらの表面架橋剤は単独で用いてもよいし、二種以上併用してもよい。
【0024】
表面架橋剤の量としては、吸水性樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部用いるのが好ましく、0.1〜5重量部用いるのがより好ましい。表面架橋剤の量が0.01重量部未満の場合には、表面架橋が不十分となる。10重量部を越えて使用すると、吸収倍率が極端に低下する場合がある。
吸水性樹脂と表面架橋剤とを混合した後、必要に応じて加熱処理を行う。加熱処理には通常の乾燥機や加熱炉を用いることができる。例えば、溝型撹拌乾燥機、回転乾燥機、円盤乾燥機、流動層乾燥機、気流乾燥機、赤外線乾燥機等である。その場合、加熱処理温度は好ましくは40〜250℃、より好ましくは90〜230℃、さらに好ましくは120〜220℃である。加熱処理温度が40℃未満の場合には加熱処理に時間がかかり生産性の低下を引き起こす。一方加熱処理温度が250℃を越える場合には、使用される吸水性樹脂の種類によっては熱劣化を起こす危険性がある。加熱処理時間としては、通常1〜120分が好ましく、10〜60分がより好ましい。
【0025】
表面架橋処理時にアミノ酢酸系キレート剤を添加する場合には、吸水性樹脂と、表面架橋剤、アミノ酢酸系キレート剤とを混合し、必要に応じて加熱処理を行う。前記混合の際には、水を使用することが好ましい。水の量としては、吸水性樹脂100重量部に対し、0.5〜10重量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜3重量部である。水の添加量が前記範囲を下回ると、アミノ酢酸系キレート剤を吸水性樹脂粒子表面に固定することが困難になる。また、水の添加量が前記範囲を上回ると、吸水性樹脂の吸収倍率が低下してしまうおそれがある。加熱処理の条件は、アミノ酢酸系キレート剤を添加しない場合と同様である。
【0026】
表面架橋処理後にアミノ酢酸系キレート剤を添加する場合には、表面架橋処理された吸水性樹脂にアミノ酢酸系キレート剤と水とを噴霧する等して添加し、水をバインダーとして該吸水性樹脂の粒子を結合せしめ、造粒することが好ましい。これにより、アミノ酢酸系キレート剤を吸水性樹脂の表面に固定することができる。吸水性樹脂の尿による劣化は樹脂表面から起こるので、アミノ酢酸系キレート剤を吸水性樹脂の表面近傍に配することで、耐尿性を向上させることができる。このときの水の使用量は、吸水性樹脂100重量部に対し、0.1〜20重量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜4重量部である。水の添加量が前記範囲を下回ると、吸水性樹脂粒子を造粒することが困難となる他、アミノ酢酸系キレート剤を吸水性樹脂粒子表面に固定することが困難になる。また、水の添加量が前記範囲を上回ると、吸水性樹脂の内部まで膨潤しゲルを形成するため目的とする造粒物が得られなくなると共に、吸水性樹脂粒子表面の表面架橋層が壊れてしまうおそれがある。
【0027】
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、消臭性を発揮させるために、水溶性消臭剤を配合することが出来る。なお、消臭剤として水溶性のものを用いる理由は、水溶性消臭剤は、吸水性樹脂組成物の吸収性能を低下させることなく優れた消臭性能を吸水性樹脂組成物に付与するからである。ここで、水溶性消臭剤とは、室温で、脱イオン水100gに対して、0.1g以上、好ましくは1g以上、さらに好ましくは10g以上溶解しうるものである。このような消臭剤としては、ツバキ科植物の葉からの抽出物その他、公知の種々のものが使用できる。ツバキ科植物とは、例えば、椿、茶樹、山茶花、サカキ、ヒサカキ等であり、アルコール系、ケトン系等の有機溶媒、水あるいはこれらの混合溶媒等を用いて、これらの葉から消臭成分を抽出できる。抽出成分は、フラボノール、フラバノール類、有機高分子またはタンニン等を含む。消臭剤の配合割合は、吸水性樹脂に対し0.0001重量%(1ppm)〜10重量%が好ましい。消臭剤の配合割合が前記範囲を下回ると、消臭効果が現れず、また、消臭剤の配合割合が前記範囲を上回ると、コスト増加に見合った効果が得られない。消臭剤は、たとえば、1)水かアルコール等の有機溶剤に溶解しておいて吸水性樹脂(またはその組成物)に噴霧するか、2)吸水性樹脂(またはその組成物)を膨潤させない溶媒中に吸水性樹脂と併せて添加し、攪拌混合した後、溶媒を除去するか、3)粉末状か顆粒状にしておいて吸水性樹脂(またはその組成物)と混合するかして、吸水性樹脂組成物に配合する。消臭剤は、好ましくは上記造粒またはキレート剤の添加と同時に添加される。
【0028】
上記ツバキ科植物の葉からの抽出物以外の消臭剤としては、例えば、酢酸、クエン酸、乳酸等の有機酸、鉄クロロフィリンナトリウム、銅クロロフィリンナトリウム、シクロデキストリン、フラボノイド化合物等が挙げられる。これらの配合割合としては、吸水性樹脂に対し0.0001重量%(1ppm)〜10重量%程度が好ましい。
以上のようにして構成される、本発明の吸水性樹脂組成物は、下記の特性(i)または(ii)を備えている。
(i)無荷重下吸収倍率が30g/g以上、好ましくは34g/g以上、さらに好ましくは40g/g以上であり、劣化可溶性成分溶出量が20重量%以下、好ましくは18重量%以下、さらに好ましくは16重量%以下であり、1.9kPa荷重下吸収倍率が28g/g以上、好ましくは30g/g以上、さらに好ましくは32g/g以上であって、着色度が26以下、好ましくは24以下、さらに好ましくは22以下である。
【0029】
(ii)無荷重下吸収倍率が30g/g以上、好ましくは34g/g以上、さらに好ましくは40g/g以上であり、劣化可溶性成分溶出量が20重量%以下、好ましくは18重量%以下、さらに好ましくは16重量%以下であり、1.9kPa荷重下吸収倍率が28g/g以上、好ましくは30g/g以上、さらに好ましくは32g/g以上であって、悪臭低減率が40%以上、好ましくは45%以上、さらに好ましくは50%以上である。
無荷重下吸収倍率が30g/g未満の吸水性樹脂組成物を吸収物品に使用した場合、吸収物品の吸収量が少なく、漏れが生じやすい。
劣化可溶性成分溶出量が20重量%を超える吸水性樹脂組成物を吸収物品に使用した場合、長時間の使用で、ぬめり感が大きくなる。
【0030】
1.9kPa荷重下吸収倍率が28g/g未満の吸水性樹脂組成物を吸収物品に使用した場合、吸収物品の吸収量が少なく、漏れが生じやすい。
着色度が26を超える吸水性樹脂組成物を紙おむつやナプキン等の吸収物品に使用すると、該吸収物品の保存中に吸水性樹脂組成物が着色しやすく、その結果、吸水性樹脂組成物が吸収物品の表面から透けて見えるようになる。着色度が26以下であれば、保存に耐え、吸水性樹脂組成物が吸収物品の表面を通して識別できなくなり、その結果、消費者からのクレームが減る。
悪臭低減率が40%未満の吸水性樹脂組成物をおむつに使用した場合、消臭効果が弱いか、あるいは、全くない。しかし、悪臭低減率が40%以上の吸水性樹脂組成物を使用すれば、消臭効果が見られる。
【0031】
本発明の吸水性樹脂組成物は、これに香料、薬剤、植物生育助剤、殺菌剤、発泡剤、顔料、染料、肥料等を含有させることにより、新たな機能を付与することもできる。
本発明の吸水性樹脂組成物は、不定形破砕状、球状、棒状、顆粒状等の種々の形状を持つ粒子であり、その重量平均粒子径は、好ましくは100〜600μmの範囲内、より好ましくは200〜500μmの範囲内である。また、吸水性樹脂組成物中の吸水性樹脂の割合が、該組成物に対して通常75重量%以上、好ましくは85重量%以上、より好ましくは95重量%以上である。
本発明の吸水性樹脂組成物は、水だけでなく、体液、生理食塩水、尿、血液、セメント水、肥料含有水などの水を含む各種液体を吸収するものであり、紙おむつや生理ナプキン、失禁パット等の衛生材料を始め、土木、農園芸等の各種産業分野においても好適に用いられるが、その優れた耐尿性を利用して紙おむつ(幼児に排尿・排便の躾をする際に用いられる紙おむつ付きパンツも含む)や失禁パット等の尿を吸収させることを目的とした衛生材料に特に好適に用いられる。
【0032】
次に、本発明の吸水性樹脂組成物を用いた吸収物品について説明する。
本発明の吸水性樹脂組成物を用いた吸収物品は、本発明の吸水性樹脂組成物と繊維基材とを含む吸収層、透液性を有する表面シート、不透液性を有する背面シートを備えた吸収物品であって、吸水性樹脂組成物と繊維基材の合計量に対する吸水性樹脂組成物の重量比αが通常0.2以上であるものである。αは、好ましくは0.3〜1.0、さらに好ましくは0.4〜0.8の範囲である。
上記重量比αが0.2未満の場合、一般に、吸収物品は嵩高く、戻り量も多いものとなる。特に、本発明の吸水性樹脂組成物を用いた場合、製造初期および経時的な着色が非常に少ないため、αが0.2以上の高濃度に吸水性樹脂組成物を配合しても、その着色が問題となることがなく、非常に好ましい。また、上記で規定した悪臭低減率を満たす本発明の吸水性樹脂組成物をαが0.2以上の高濃度に使用すると、消臭効果が高く、非常に好ましい。
【0033】
この吸収物品の製造方法は、繊維基材と吸水性樹脂組成物とをブレンドないしサンドイッチすることで吸収体(吸収コア)を作製し、この吸収コアを液透過性表面材と液不透過性基材でサンドイッチして、必要に応じて、弾性部材、拡散層、粘着テープ等を装置することで、吸収物品、特に生理用ナプキンや大人用おむつとすればよい。このような吸収コアは、密度0.06〜0.5g/cc、坪量0.01〜0.20g/cm2 の範囲に圧縮成形される。なお、用いられる繊維基材としては、親水性繊維、たとえば、粉砕された木材パルプ、その他、コットンリンターや架橋セルロース繊維、レーヨン、綿、羊毛、アセテート、ビニロン等を例示できる。好ましくはそれらをエアレイドしたものである。
【実施例】
【0034】
以下に実施例と比較例によりさらに詳細に本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下において、単に「部」、「%」、「吸水性樹脂(組成物)」とあるのは、特にことわりがない限り、それぞれ「重量部」、「重量%」、「吸水性樹脂または吸水性樹脂組成物」を表すものとする。
(1)吸水性樹脂(組成物)の無荷重下吸収倍率
吸水性樹脂(組成物)0.2gをティーバッグ式袋(6cm×6cm)に均一に入れ、開口部をヒートシールした後、室温の0.9%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)中に浸漬した。60分後にティーバッグ式袋を引き上げ、遠心分離機を用いて250G(cm/sec2 )で3分間水切りを行った後、該袋の重量W1 (g)を測定した。また、同様の操作を吸水性樹脂(組成物)を用いないで行い、そのときの重量W0 (g)を測定した。そして、これら重量W1 、W0 から、次式に従って無荷重下吸収倍率(g/g)を算出した。
【0035】
無荷重下吸収倍率(g/g)
=(W1 −W0 )/吸水性樹脂(組成物)の重量(g)
(2)吸水性樹脂(組成物)の可溶性成分溶出量
100mlのビーカー中、吸水性樹脂(組成物)1gを人工尿25mlに膨潤させ、ビーカーに蓋をして37℃で16時間放置した。次いで膨潤したゲルを975mlの脱イオン水中に分散させ、溶出した可溶分を脱イオン水でリンスした。1時間撹拌した後、濾紙で濾過した。次に、得られた濾液50gを100mlビーカーに取り、該濾液に0.1Nー水酸化ナトリウム水溶液1ml、N/200−メチルグリコールキトサン水溶液10mlおよび0.1%トルイジンブルー水溶液4滴を加えた。次いで、上記ビーカー中の溶液を、N/400−ポリビニル硫酸カリウム水溶液を用いてコロイド滴定し、溶液の色が青色から赤紫色に変化した時点を滴定の終点として滴定量B1 (ml)を求めた。また、吸水性樹脂(組成物)を用いないで同様の操作を行い、ブランクとして滴定量C1 (ml)を求めた。そして、これらの滴定量B1 およびC1 と吸水性樹脂の繰り返し単位の分子量D1 (たとえば、中和率75%のポリアクリル酸の場合は88.5である)とから、次式に従って吸水性樹脂(組成物)の可溶性成分溶出量(重量%)を算出した。
【0036】
可溶性成分溶出量(重量%)=(C1 −B1 )×0.005×D1
人工尿の組成を以下に示す。
脱イオン水 97.1%
尿素 1.9%
塩化ナトリウム 0.8%
塩化マグネシウム 0.1%
塩化カルシウム 0.1%
(3)吸水性樹脂(組成物)の劣化可溶性成分溶出量
L−アスコルビン酸0.005重量%含有人工尿を用いて、100mlの蓋付プラスチック容器中で、吸水性樹脂(組成物)1gを25倍に膨潤させ、容器に蓋をして37℃で16時間放置した。その後、生じた膨潤ゲルを975gの脱イオン水中に分散させ、溶出した劣化可溶分を脱イオン水でリンスした。1時間撹拌した後、濾紙で濾過した。次に、得られた濾液50gを100mlビーカーに取り、該濾液に0.1Nー水酸化ナトリウム水溶液1ml、N/200−メチルグリコールキトサン水溶液10mlおよび0.1%トルイジンブルー水溶液4滴を加えた。次いで、上記ビーカー中の溶液を、N/400−ポリビニル硫酸カリウム水溶液を用いてコロイド滴定し、溶液の色が青色から赤紫色に変化した時点を滴定の終点として滴定量B2 (ml)を求めた。また、吸水性樹脂(組成物)を用いないで同様の操作を行い、ブランクとして滴定量C2 (ml)を求めた。そして、これらの滴定量B2 およびC2 と吸水性樹脂の繰り返し単位の分子量D2 (たとえば、中和率75%のポリアクリル酸の場合は88.5である)とから、次式に従って吸水性樹脂(組成物)の劣化可溶性成分溶出量(重量%)を算出した。
【0037】
劣化可溶性成分溶出量(重量%)=(C2 −B2 )×0.005×D2
(4)荷重下吸収倍率
図1に示す測定装置を用いて荷重下吸収倍率を求めた。図1に示すように、測定装置は、天秤1、天秤1上に載置された所定容量の容器2、外気吸入パイプ3、導管4、ガラスフィルター6、ガラスフィルター6上に載置された測定部5からなっている。容器2は、頂部に開口部2aと、側部に開口部2bを有している。開口部2aには外気吸入パイプ3が嵌入されており、開口部2bには導管4が取り付けられている。また、容器2には、所定量の0.9%塩化ナトリウム水溶液(以下、生理食塩水と称す)12が入っている。外気吸入パイプ3の下端部は、生理食塩水12中に没している。外気吸入パイプ3は、容器2内の圧力をほぼ大気圧に保つために設けられている。上記のガラスフィルター6は、直径55mmに形成されている。容器2およびガラスフィルター6は、シリコーン樹脂からなる導管4によって互いに連通している。また、ガラスフィルター6は、容器2に対する位置および高さが固定されている。上記の測定部5は、濾紙7、支持円筒9、支持円筒9の底部に貼着された金網10、重り11を有している。測定部5は、ガラスフィルター6上に、濾紙7、支持円筒9(つまり、金網10)がこの順に載置されてなっている。金網10はステンレスからなり、その網目の大きさは400メッシュ(目開き38μm)である。金網10の上面、すなわち、金網10と吸水性樹脂(組成物)15との接触面の高さは、外気吸入パイプ3の下端面3aの高さと等しくなるように設定されている。金網10上には、所定量の吸水性樹脂(組成物)15が均一に散布される。重り11は、金網10、すなわち吸水性樹脂(組成物)15に対して、4.83kPaまたは1.9kPaの荷重を均一に加えることができるように、その重量が調整されている。
【0038】
上記構成の測定装置を用いて荷重下の吸収倍率を測定した。測定方法について以下に説明する。
容器2に所定量の生理食塩水12を入れる、容器2に外気吸入パイプ3を嵌入する、等の所定の準備動作を行った。次に、ガラスフィルター6上に濾紙7を載置した。また、載置と並行して、支持円筒9内部、即ち、金網10上に、吸水性樹脂(組成物)15を0.9g均一に散布し、この吸水性樹脂(組成物)15上に重り11を載置した。次いで、濾紙7上に、金網10、即ち吸水性樹脂(組成物)15および重り11を載置した上記支持円筒9を、その中心部がガラスフィルター6の中心部に一致するように載置した。次いで、濾紙7上に支持円筒9を載置した時点から、60分間にわたって経時的に、該吸水性樹脂(組成物)15が吸収した生理食塩水の重量を、天秤1の測定値から求めた。また、同様の操作を吸水性樹脂(組成物)15を用いないで行い、吸水性樹脂(組成物)15以外の材料が吸収した生理食塩水の重量を、天秤1の測定値から求め、これをブランク値とした。荷重下吸収倍率は以下の式より求めた。
【0039】
荷重下吸収倍率(g/g)
=(60分後の吸水量−ブランク値)/吸水性樹脂(組成物)の重量(g)
(5)キレート剤の分析
キレート剤を水に溶解させ、キレート剤中のニトリロトリ酢酸(塩)の含有量を高速液体クロマトグラフィーを用い以下の条件にて分析した。
(溶離液) 0.4mol/Lのミョウバン溶液0.3ml 、0.1N-KOH溶液450ml 、40%水酸化テトラn−ブチルアンモニウム水溶液3ml 、硫酸3ml 、水2550ml、エチレングリコール1.5ml
(カラム) メルク社製 LichroCART 250-4 Superspher 100 RP-18e(4 μm )
(流量) 1ml/分
(検出器) UV258nm
(インジェクション) 50μl
(6)吸水性樹脂組成物中のニトリロトリ酢酸(塩)の含有量
吸水性樹脂組成物1gを生理食塩水100g中1時間撹拌・濾過し、濾液中に含まれるニトリロトリ酢酸(塩)の含有量を上記(5)の液体クロマトグラフィーで測定し、吸水性樹脂組成物中のニトリロトリ酢酸(塩)の含有量を定量した。
【0040】
(7)吸水性樹脂組成物の経時着色の評価方法
吸水性樹脂組成物(特に断りのない限り粒径600〜300μmの乾燥粉末)を内径55mmで高さ70mmのポリプロピレン製容器(株式会社テラオカ製、容量120cc、Pack−Ace)の底面に2.000g散布し、容器に蓋をせず、開放系で、タバイエスペック株式会社製の恒温恒湿機(PLATINOUSLUCIFER、形式番号PL−2G)中で70℃、80%RH雰囲気に5日間、放置した。なお、上記吸水性樹脂組成物の単位面積当たりの散布量(0.084g/cm2 )は高濃度コアでのモデル的な散布量である。
【0041】
5日間後、容器中の吸水性樹脂組成物を下記粉末・ペースト試料台(30mmφ)にすべて充填して、その着色度(YI)について、日本電色工業株式会社製の分光式色差計(SZ−Σ80 COLOR MEASURING SYSTEM)を用いて、設定条件(反射測定/付属の粉末・ペースト試料台(30mmφ)/標準として粉末・ペースト用・標準丸白板NO2/30mmφ投光パイプ)によって、吸水性樹脂組成物の表面色を測定した。
(8)消臭性測定(悪臭低減率評価方法)
口径69mm、下径63mm、高さ97mmの密閉できる容積250mlのポリプロピレン容器((株)テラオカ製の250cc Pack−Ace)中に、吸水性樹脂組成物を5g入れた。次に、悪臭成分として15重量%メチルメルカプタンナトリウム水溶液(東京化成工業株式会社製)を500倍に脱イオン水で希釈した水溶液0.5mlを添加した人工尿30gを容器に入れ、ガスが漏れないように蓋およびシールをした。25℃、55%RHの条件で、4時間放置後、容器内の空間にしめるメチルメルカプタン濃度を、株式会社ガステックの検知器および検知管により測定し、得られた結果をG1とした。検知管は、株式会社ガステックNo.70全メルカプタン(測定範囲:0.5から120ppm)を使用し、測定方法は、検知管に定められた操作に従い、以下の通りに行った。検知管は、1回吸引(100ml、2分間)で使用した。5ppm以下の濃度を測定する場合は、2〜10回吸引し、読み値を吸引回数で割った。使用検知管は、エチルメルカプタンで校正しているため、メチルメルカプタンに換算係数0.7(吸引回数=1)をかけて濃度を測定した。
【0042】
次に、吸水性樹脂組成物と人工尿を容器に入れず、15重量%メチルメルカプタンナトリウム水溶液(東京化成工業株式会社製)を脱イオン水で500倍に希釈した水溶液0.5mlを入れた以外は、上記と同様の操作を行い、容器内の空間にしめるメチルメルカプタン濃度を測定し、得られた結果をG0とした。
そして、悪臭低減率を下式により算出した。
悪臭低減率(%)=(G0−G1)/G0×100
[参考例1]
37%アクリル酸ナトリウム水溶液67.0部、アクリル酸10.2部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均エチレンオキサイドユニット数8)0.079部及び水22.0部を混合しモノマー水溶液を調製した。バット中で前記モノマー水溶液に窒素を吹き込み溶液中の溶存酸素を0.1ppm以下とした。
【0043】
引き続き窒素雰囲気下前記モノマー水溶液の温度を18℃に調整し、次いで5%過硫酸ナトリウム水溶液0.16部、5%2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩水溶液0.16部、0.5%L−アスコルビン酸水溶液0.15部及び0.35%過酸化水素水溶液0.17部を順番に撹拌下滴下した。
過酸化水素滴下後直ちに重合が開始した。その後、撹拌を停止し、10分後にモノマーの温度はピーク温度に達した。ピーク温度は85℃であった。引き続きバットを80℃の湯浴に浸し、10分間熟成した。
得られた透明の含水ゲルをミートチョッパーで砕き、次いで180℃で30分間乾燥した。
【0044】
乾燥物を粉砕機で粉砕し、500μmの篩を通過し105μmの篩上に残るものに分級し、吸水性樹脂(A)を得た。
吸水性樹脂(A)100部にエチレングリコールジグリシジルエーテル0.05部、プロピレングリコール1部、水3部及びイソプロピルアルコール1部からなる組成液を混合し、180℃で40分間加熱処理して、表面架橋吸水性樹脂(B)を得た。
この表面架橋吸水性樹脂(B)の各物性について測定した結果を表1に示す。
[実施例1]
市販のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液(固形分40%)に60%硫酸を撹拌下で加え、pHを1.8〜2に調整した。この溶液をしばらく放置し、析出したジエチレントリアミン5酢酸を濾過し、純水で洗浄した後60℃で乾燥させた。
【0045】
上記市販のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウムは、ニトリロトリ酢酸(塩)を約5%含むものであったが、上記処理により、ジエチレントリアミン5酢酸中のニトリロトリ酢酸(塩)の含有量は該ジエチレントリアミン5酢酸に対して35ppmに低減されていた。
上記で得られたニトリロトリ酢酸(塩)含有量の低減されたジエチレントリアミン5酢酸0.002部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.05部、プロピレングリコール1部、水3部およびイソプロピルアルコール1部を添加してなる処理剤溶液を、参考例1で得られた吸水性樹脂(A)100部に混合し、180℃で40分間加熱処理し、吸水性樹脂組成物(1)を得た(吸水性樹脂(A)に対するジエチレントリアミン5酢酸の配合量は20ppm)。
【0046】
吸水性樹脂組成物(1)中のニトリロトリ酢酸(塩)の含有量を測定したところ、該組成物に対して0.1ppm以下であり測定できなかった。吸水性樹脂組成物(1)の各物性について測定した結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1において処理剤溶液中のジエチレントリアミン5酢酸の量を0.01部に変更した以外は、実施例1と同様にして吸水性樹脂組成物(2)を得た(吸水性樹脂(A)に対するジエチレントリアミン5酢酸の配合量は100ppm)。
吸水性樹脂組成物(2)中のニトリロトリ酢酸(塩)の含有量を測定したところ、該組成物に対して0.1ppm以下であり測定できなかった。吸水性樹脂組成物(2)の各物性について測定した結果を表1に示す。
【0047】
[実施例3]
実施例1で得られた、ニトリロトリ酢酸(塩)含有量の低減されたジエチレントリアミン5酢酸を水に溶かして、0.07%水溶液を調製した。この溶液3部を参考例1で得られた吸水性樹脂(B)100部に噴霧した後、80℃で乾燥して、吸水性樹脂組成物(3)を得た(吸水性樹脂(B)に対するジエチレントリアミン5酢酸の配合量は21ppm)。
吸水性樹脂組成物(3)中のニトリロトリ酢酸(塩)の含有量を測定したところ、該組成物に対して0.1ppm以下であり測定できなかった。吸水性樹脂組成物(3)の各物性について測定した結果を表1に示す。
【0048】
[実施例4]
実施例3においてジエチレントリアミン5酢酸水溶液の濃度を0.5%に変更した以外は、実施例3と同様にして吸水性樹脂組成物(4)を得た(吸水性樹脂(B)に対するジエチレントリアミン5酢酸の配合量は150ppm)。
吸水性樹脂組成物(4)中のニトリロトリ酢酸(塩)の含有量を測定したところ、該組成物に対して0.1ppm以下であり測定できなかった。吸水性樹脂組成物(4)の各物性について測定した結果を表1に示す。
[実施例5]
実施例1で得られた、ニトリロトリ酢酸(塩)含有量の低減されたジエチレントリアミン5酢酸を水に溶かして、0.1%水溶液を調製した。
【0049】
参考例1において、重合後のゲル100部をミートチョッパーで粉砕する際に、上記の水溶液3.5部を添加した以外は、参考例1と同様に乾燥、粉砕、表面処理を行い、吸水性樹脂組成物(5)を得た(ゲル中の固形分(実質的に吸水性樹脂)に対するジエチレントリアミン5酢酸の配合量は100ppm)。
吸水性樹脂組成物(5)中のニトリロトリ酢酸(塩)の含有量を測定したところ、該組成物に対して0.1ppm以下であり測定できなかった。吸水性樹脂組成物(5)の各物性について測定した結果を表1に示す。
[実施例6]
実施例1で得られた、ニトリロトリ酢酸(塩)含有量の低減されたジエチレントリアミン5酢酸と、水酸化ナトリウムおよび水とを混合して、ジエチレントリアミン5酢酸4ナトリウムの35%水溶液を調製した。この水溶液を水で200倍に希釈した。
【0050】
この希釈溶液3部を参考例1で得られた吸水性樹脂(B)100部に噴霧混合し、80℃で加熱して、吸水性樹脂組成物(6)を得た(吸水性樹脂(B)に対するジエチレントリアミン5酢酸4ナトリウムの配合量は52.5ppm)。
吸水性樹脂組成物(6)中のニトリロトリ酢酸(塩)の含有量を測定したところ、該組成物に対して0.1ppm以下であり測定できなかった。吸水性樹脂組成物(6)の各物性について測定した結果を表1に示す。
[実施例7]
実施例6で得られた希釈溶液3部、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.05部、プロピレングリコール1部、イソプロピルアルコール1部からなる処理剤溶液を、参考例1で得られた吸水性樹脂(A)100部に混合し、180℃で40分間加熱処理して、吸水性樹脂組成物(7)を得た(吸水性樹脂(A)に対するジエチレントリアミン5酢酸4ナトリウムの配合量は52.5ppm)。
【0051】
吸水性樹脂組成物(7)中のニトリロトリ酢酸(塩)の含有量を測定したところ、該組成物に対して0.1ppm以下であり測定できなかった。吸水性樹脂組成物(7)の各物性について測定した結果を表1に示す。
[実施例8]
市販のトリエチレンテトラアミン6酢酸6ナトリウム水溶液(固形分40%)に60%硫酸を撹拌下で加え、pHを1.8〜2に調整した。この溶液をしばらく放置し、析出したトリエチレンテトラアミン6酢酸を濾過し、純水で洗浄した後60℃で乾燥させた。
得られたトリエチレンテトラアミン6酢酸中のニトリロトリ酢酸(塩)の含有量は該トリエチレンテトラアミン6酢酸に対して20ppmであった。
【0052】
この、ニトリロトリ酢酸(塩)の含有量の低減されたトリエチレンテトラアミン6酢酸と、水酸化ナトリウムおよび水とを混合して、トリエチレンテトラアミン6酢酸5ナトリウムの35%水溶液を調製した。この水溶液を水で200倍に希釈した。
この希釈溶液3部を参考例1で得られた吸水性樹脂(B)100部に噴霧混合し、80℃で加熱して、吸水性樹脂組成物(8)を得た(吸水性樹脂(B)に対するトリエチレンテトラアミン6酢酸5ナトリウムの配合量は52.5ppm)。
吸水性樹脂組成物(8)中のニトリロトリ酢酸(塩)の含有量を測定したところ、該組成物に対して0.1ppm以下であり測定できなかった。吸水性樹脂組成物(8)の各物性について測定した結果を表1に示す。
【0053】
[比較例1]
実施例2において、ニトリロトリ酢酸(塩)の含有量の低減されたジエチレントリアミン5酢酸に代えて、市販のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウムをそのままで溶解した水溶液を用いた他は実施例2と同様にして、比較吸水性樹脂組成物(1)を得た。
比較吸水性樹脂組成物(1)中のニトリロトリ酢酸(塩)含有量は該組成物に対して5ppmであった。
比較吸水性樹脂組成物(1)の各物性について測定した結果を表1に示す。
[参考例2]
37%アクリル酸ナトリウム水溶液76部、アクリル酸7部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均エチレンオキサイドユニット数8)0.05部及び水15部を混合しモノマー水溶液を調製した。
【0054】
ジャケットを備えた双腕型ニーダー中で、前記モノマー水溶液に窒素を吹き込み溶液中の溶存酸素を除去した。引き続き前記モノマー水溶液の温度を22℃に調整した。
次いで、撹拌しながら5%過硫酸ナトリウム水溶液1部、0.5%L−アスコルビン酸水溶液0.04部を添加した。添加後1分後にモノマー水溶液は白濁し始め温度が上昇し始めた。20分後ピーク温度に達し、更に撹拌しながら20分間熟成した。ピーク温度は94℃であった。
熟成終了後得られたゲルを取り出し、170℃で65分間乾燥した。乾燥後のポリマーを粉砕し、850μmの篩を通過し105μmの篩上に残るものに分級し吸水性樹脂(C)を得た。
【0055】
吸水性樹脂(C)100部にエチレングリコールジグリシジルエーテル0.05部、プロピレングリコール1部、水3部及びイソプロピルアルコール1部からなる組成液を混合し、180℃で40分間加熱処理して、表面架橋吸水性樹脂(D)を得た。
この表面架橋吸水性樹脂(D)の各物性について測定した結果を表1に示す。
[実施例9]
実施例1で得られた、ニトリロトリ酢酸(塩)含有量の低減されたジエチレントリアミン5酢酸と、水酸化ナトリウムおよび脱イオン水とを混合し、ジエチレントリアミン5酢酸4ナトリウムの35%水溶液を調製した。
【0056】
この水溶液を脱イオン水で200倍に希釈し、希釈溶液3部を参考例2で得た吸水性樹脂(D)100部に噴霧混合し、80℃で加熱して、吸水性樹脂組成物(9)を得た(吸水性樹脂(D)に対するジエチレントリアミン5酢酸4ナトリウムの配合量は52.5ppm)。
吸水性樹脂組成物(9)中のニトリロトリ酢酸(塩)の含有量を測定したところ、該組成物に対して0.1ppm以下であり測定できなかった。吸水性樹脂組成物(9)の各物性について測定した結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例1で用いた、市販のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液を脱イオン水で200倍に希釈した。この希釈溶液3部を参考例2で得た吸水性樹脂(D)100部に噴霧混合し、80℃で加熱して比較吸水性樹脂組成物(2)を得た。
【0057】
比較吸水性樹脂組成物(2)中のニトリロトリ酢酸(塩)の含有量は、該組成物に対して3ppmであった。比較吸水性樹脂組成物(2)の各物性について測定した結果を表1に示す。
〈耐光性の比較〉:
実施例9で得た吸水性樹脂組成物(9)、比較例2で得た比較吸水性樹脂組成物(2)、および参考例2で得た吸水性樹脂(D)各1gを、ポリプロピレン製の容器中で脱イオン水100gに膨潤させた。容器に蓋をし、日当たりの良い窓の内側に5日間放置した。
5日間放置後、ゲルを900mlの脱イオン水中に分散させ、溶出した可溶分を脱イオン水でリンスした。1時間撹拌した後に濾紙で濾過し、得られた濾液をコロイド滴定により滴定して、各吸水性樹脂(組成物)から溶出した可溶分量(%)を求めた。この可溶分量(%)が少ない程、耐光性が高い。その結果は以下のとおりであった。
【0058】
吸水性樹脂組成物(9) 32%
比較吸水性樹脂組成物(2) 50%
吸水性樹脂(D) 50%
以上の結果より、ニトリロトリ酢酸(塩)を多く含むアミノ酢酸系キレート剤では耐光性を向上させることができないが、ニトリロトリ酢酸(塩)の含有量を低減させることで耐光性を向上させることができることがわかる。
[実施例10]
実施例1で得られた、ニトリロトリ酢酸(塩)の含有量の低減されたジエチレントリアミン5酢酸と、水酸化ナトリウムおよび脱イオン水とを混合して、ジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウムの40%水溶液を調製した。
【0059】
得られたジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液(固形分40%)に60%硫酸を撹拌下で加え、pHを1.8〜2に調整した。この溶液をしばらく放置し、析出したジエチレントリアミン5酢酸を濾過し、純水で洗浄した後60℃で乾燥させた。
得られたジエチレントリアミン5酢酸中のニトリロトリ酢酸(塩)の含有量は該ジエチレントリアミン5酢酸に対して0.1ppm以下であり、測定できなかった。
上記で得られた、ニトリロトリ酢酸(塩)含有量の低減されたジエチレントリアミン5酢酸と、水酸化ナトリウムおよび脱イオン水とを混合して、ジエチレントリアミン5酢酸4ナトリウムの35%水溶液を調製した。この水溶液を脱イオン水で200倍に希釈した。
【0060】
この希釈溶液3部を、参考例1で得られた吸水性樹脂(B)100部に噴霧混合し、80℃で加熱して、吸水性樹脂組成物(10)を得た(吸水性樹脂(B)に対するジエチレントリアミン5酢酸4ナトリウムの配合量は52.5ppm)。
吸水性樹脂組成物(10)中のニトリロトリ酢酸(塩)の含有量を測定したところ、該組成物に対して0.1ppm以下であり測定できなかった。吸水性樹脂組成物(10)の各物性について測定した結果を表2に示す。
[実施例11]
実施例10において、参考例1で得られた吸水性樹脂(B)の代わりに参考例2で得られた吸水性樹脂(D)を用いた以外は、実施例10と同様にして吸水性樹脂組成物(11)を得た(吸水性樹脂(D)に対するジエチレントリアミン5酢酸4ナトリウムの配合量は52.5ppm)。
【0061】
吸水性樹脂組成物(11)中のニトリロトリ酢酸(塩)の含有量を測定したところ、該組成物に対して0.1ppm以下であり測定できなかった。吸水性樹脂組成物(11)の各物性について測定した結果を表2に示す。
[実施例12]
200倍に希釈した水溶液中に、市販の水溶性消臭剤(ツバキ科植物の葉抽出物15%水溶液)を16.7%存在するように調製し、得られた水溶液3部を参考例1で得られた吸水性樹脂(B)100部に噴霧混合し、80℃で加熱、その後、無機粉末として二酸化ケイ素(日本アエロジル社製;アエロジル200)を0.5%添加した以外は、実施例10における吸水性樹脂組成物(10)の製法と同様の操作を行い、吸水性樹脂組成物(12)を得た。
【0062】
[実施例13]
200倍に希釈した水溶液中に、市販の水溶性消臭剤(ツバキ科植物の葉抽出物15%水溶液)を16.7%存在するように調製し、得られた水溶液3部を参考例2で得られた吸水性樹脂(D)100部に攪拌混合した以外は、実施例11における吸水性樹脂組成物(11)の製法と同様の操作を行い、吸水性樹脂組成物(13)を得た。
[実施例14]
200倍に希釈した水溶液中に、市販の水溶性消臭剤(大洋香料製;オークリーンEX)を16.7%存在するように調製し、得られた水溶液3部を参考例1で得られた吸水性樹脂(B)100部に噴霧混合した以外は、実施例10における吸水性樹脂組成物(10)の製法と同様の操作を行い、吸水性樹脂組成物(14)を得た。
【0063】
[実施例15]
実施例10で得られた吸水性樹脂組成物(10)100部に対し、市販の水溶性消臭剤(アイコー株式会社製;エポリオン)を0.5%添加混合し、吸水性樹脂組成物(15)を得た。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、耐尿性と耐光性に優れ、かつ、着色が少なく、消臭性にも優れるので、紙おむつや生理用ナプキン、失禁パット等の衛生材料の分野において好ましく使用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 天秤
2 容器
2a 開口部
2b 開口部
3 外気吸入パイプ
4 導管
5 測定部
6 ガラスフィルター
7 濾紙
9 支持円筒
10 金網
11 重り
12 生理食塩水
15 吸水性樹脂(組成物)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性樹脂と水溶性消臭剤とを含み、前記吸水性樹脂がアクリル酸および/またはその塩からなる群から選ばれる単量体成分を主成分とする親水性単量体を重合することにより得られるポリアクリル酸部分中和物架橋体であり、無荷重下吸収倍率が30g/g以上、劣化可溶性成分溶出量が20重量%以下、1.9kPa荷重下吸収倍率が28g/g以上、悪臭低減率が40%以上である、粒子状の吸水性樹脂組成物。
【請求項2】
さらにアミノ酢酸系キレート剤を前記吸水性樹脂に対して1ppm〜10重量%含む、請求項1に記載の吸水性樹脂組成物。
【請求項3】
着色度が26以下である、請求項2に記載の吸水性樹脂組成物。
【請求項4】
前記水溶性消臭剤は、その配合量が前記吸水性樹脂に対して1ppm〜10重量%であり、かつ、室温で、脱イオン水100gに対して、0.1g以上溶解しうるものである、請求項1から3までのいずれかに記載の吸水性樹脂組成物。
【請求項5】
前記水溶性消臭剤はツバキ科植物の葉からの抽出物である、請求項1から4までのいずれかに記載の吸水性樹脂組成物。
【請求項6】
前記水溶性消臭剤は、酢酸、クエン酸、乳酸、鉄クロロフィリンナトリウム、銅クロロフィリンナトリウム、シクロデキストリンおよびフラボノイド化合物からなる群から選ばれる、請求項1から5までのいずれかに記載の吸水性樹脂組成物。
【請求項7】
前記吸水性樹脂粒子の表面近傍がさらに架橋されている、請求項1から6までのいずれかに記載の吸水性樹脂組成物。
【請求項8】
重量平均粒子径が100〜600μmの範囲内である、請求項1から7までのいずれかに記載の吸水性樹脂組成物。
【請求項9】
前記吸水性樹脂の配合量が前記吸水性樹脂組成物に対して75重量%以上である、請求項1から8までのいずれかに記載の吸水性樹脂組成物。
【請求項10】
前記アミノ酢酸系キレート剤が前記吸水性樹脂の表面に固定されている、請求項1から9までのいずれかに記載の吸水性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれかに記載の吸水性樹脂組成物を含んでなる衛生材料である、吸収物品。
【請求項12】
前記吸水性樹脂組成物および繊維基材を含む吸収層と、透液性を有する表面シートと、不透液性を有する背面シートとを備え、前記吸水性樹脂組成物と前記繊維基材の合計量に対する前記吸水性樹脂組成物の重量比が0.3〜1.0の範囲である、請求項11に記載の吸収物品。

【図1】
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【公開番号】特開2010−174258(P2010−174258A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104311(P2010−104311)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【分割の表示】特願2000−379390(P2000−379390)の分割
【原出願日】平成12年12月13日(2000.12.13)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】