吸水性樹脂製品およびその連続製造方法
【課題】 高物性の吸水性樹脂製品を安定した一定の品質で簡便に安価に連続製造できる、吸水性樹脂製品の連続製造方法を提供する。また、高物性かつ品質の安定した吸水性樹脂製品を提供する。
【解決手段】 分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂について、所定物性および/または所定成分量を測定する工程(A)と、前記測定結果に従い、所定物性および/または所定成分量が一定以上および/または一定以下の値を示す吸水性樹脂(a)を、連続的に生産されてくる吸水性樹脂から所定量分離する工程(B)と、前記分離した所定量の吸水性樹脂(a)の少なくとも一部を、同一の製造ラインまたは別の製造ラインにおいて分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂と混合する工程(C)とを含む。
【解決手段】 分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂について、所定物性および/または所定成分量を測定する工程(A)と、前記測定結果に従い、所定物性および/または所定成分量が一定以上および/または一定以下の値を示す吸水性樹脂(a)を、連続的に生産されてくる吸水性樹脂から所定量分離する工程(B)と、前記分離した所定量の吸水性樹脂(a)の少なくとも一部を、同一の製造ラインまたは別の製造ラインにおいて分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂と混合する工程(C)とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高物性の吸水性樹脂製品の連続製造方法に関し、高物性の吸水性樹脂製品を安定した一定の品質で簡便に安価に得る連続製造方法に関する。また、高物性かつ品質の安定した吸水性樹脂製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙おむつや生理用ナプキン、いわゆる失禁パットなどの衛生材料には、その構成材として、体液を吸水させることを目的とした吸水性樹脂が幅広く使用されている。吸水性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、澱粉−アクリル酸グラフト重合体の加水分解物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、及びカチオン性モノマーの架橋重合体等が知られている。
このような吸水性樹脂は、体液などの水性液体に接した際に優れた吸液量や吸水速度、ゲル強度、ゲル通液性、水性液体を含んだ基材から水を吸い上げる吸引力などに優れた物性を備えることが要求されている。さらに、近年は、非常に粒度分布が狭い吸水性樹脂粉末や、吸収倍率が高く水可溶分が少ない吸水性樹脂粉末が求められ、加圧下吸収倍率や加圧下通液性などが高いことが必須に求められるようになっている。
【0003】
これら吸水性樹脂の諸物性を規定した多くのパラメーターや測定法が下記特許文献などに開示されている。
例えば、ゲル強度、可溶分、吸水倍率に優れた吸水性樹脂が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、無加圧下通液性、吸水速度、吸水倍率に優れた吸水性樹脂が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。さらに、特定の粒度分布を規定した技術も提案されている(例えば、特許文献3参照。この他に、米国特許5051259号、米国特許5419956号、欧州特許629441号など。)。
また、各種荷重での加圧下吸水倍率に優れた吸水性樹脂やその測定法も多く提案され、加圧下吸水倍率単独ないし他の物性との組み合わせた吸水性樹脂が提案されている(例えば、特許文献4参照。この他に、欧州特許0707603号,欧州特許0712659号,欧州特許1029886号、米国特許5462972号、米国特許5453323号、米国特許5797893号、米国特許6127454号、米国特許6184433号、米国再発行特許Re37021号など。)。
【0004】
また、耐衝撃性に優れた吸水性樹脂が提案されている(例えば、特許文献5参照。この他に、米国特許5140076号など。)。さらに、粉塵量を規定した吸水性樹脂が提案され(例えば、特許文献6参照。)、着色の少ない吸水性樹脂が提案されている(例えば、特許文献7参照)。耐尿性についてL−アスコルビン酸水溶液などへのゲル耐久性や吸水能に優れた吸水性樹脂が提案され(例えば、特許文献8参照。この他に、欧州特許0940148号など。)、通気性に優れた吸水性樹脂が提案されている(例えば、特許文献9参照。)。また、残存モノマーの少ない吸水性樹脂が提案されている(例えば、特許文献10参照。)。
【0005】
さらに特定の物性を持った吸水性樹脂が特定物性や構成ないしポリマー濃度の吸水性物品(おむつ)に好適であることが提案されている(例えば、特許文献11参照。この他に、米国特許5147343号、米国特許5149335号、欧州特許532002号、米国特許5601452号、米国特許5562646号、米国特許5669894号、国際公開WO02/053198号など。)。
近年、吸水性樹脂の製造量が増加するにつれて、重合や表面処理など、その製造の各工程が連続化されている(例えば、特許文献12参照。)。吸水性樹脂を連続生産する場合、すべてが同じ高物性を有することが望まれるが、実際には、連続的に製造される吸水性樹脂のロット間などで物性のばらつきが生じることがあり、目的物性を大きく超えたり下回ったりする吸水性樹脂が混入する(例えば、特許文献13、14参照)。そして、高物性が求められるほど、製造工程が長く連続化されるほど、製造スケールが大きくなるほど、各工程での物性の僅かなばらつきが最終の吸水性樹脂製品の物性に大きなばらつきを与える。また、後述の表面架橋、特に脱水エステル化によっても、最終の吸水性樹脂製品における物性のばらつきに影響を与える。そして、かかる物性のばらつきを抑えようとすると、従来は、生産性の低下を伴うことが多かった。さらに、ユーザーの要求に応じた多品種の吸水性樹脂が求められ、その結果、品番(タイプ)変更時には物性の安定に長時間かかるという問題や、製造工程が複雑になるという問題を有していた。
【0006】
近年、紙おむつに代表される、糞、尿ないし血液の吸収用衛生材料(別称;吸収性物品)では吸水性樹脂の濃度(使用量)が増加しており、かかる吸水性樹脂製品の物性の僅かなばらつきは、最終の吸水性物品に大きな影響を与えると言う問題を有した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国再発行特許発明第32649号明細書
【特許文献2】英国特許第2267094号明細書
【特許文献3】米国特許第6087002号明細書
【特許文献4】米国特許第6297335号明細書
【特許文献5】米国特許第6414214号明細書
【特許文献6】米国特許第5994440号明細書
【特許文献7】米国特許第6444744号明細書
【特許文献8】米国特許第6194531号明細書
【特許文献9】欧州特許第1153656号明細書
【特許文献10】欧州特許第0605215号明細書
【特許文献11】米国特許第6150582号明細書
【特許文献12】欧州特許第0937739号明細書
【特許文献13】国際公開第2002/10451号パンフレット
【特許文献14】特開平11−349625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の解決しようとする課題は、高物性の吸水性樹脂製品を安定した一定の品質で簡便に安価に連続製造できる、品質の安定した吸水性樹脂製品の連続製造方法を提供することである。また、高物性かつ品質の安定した吸水性樹脂製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂について、所定物性および/または所定成分量、例えば、無加圧下吸収倍率、加圧下吸収倍率、通液性、粒度などを測定し、所定物性および/または所定成分量が一定以上および/または一定以下の値を示す吸水性樹脂を分離して、同一の製造ラインまたは別の製造ラインにおいて分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂と混合することにより最終製品とすれば良いことを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明にかかる吸水性樹脂製品の連続製造方法は、分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂について、所定物性および/または所定成分量を測定する工程(A)と、前記測定結果に従い、所定物性および/または所定成分量が一定以上および/または一定以下の値を示す吸水性樹脂(a)を、連続的に生産されてくる吸水性樹脂から所定量分離する工程(B)と、前記分離した所定量の吸水性樹脂(a)の少なくとも一部を、同一の製造ラインまたは別の製造ラインにおいて分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂と混合する工程(C)とを含む。
【0010】
また、本発明にかかる吸水性樹脂製品の連続製造方法は、分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂について所定物性および/または所定成分量を測定する工程(A)を含み、且つ、前記測定結果に従い、製造条件を変更する。
さらに、本発明にかかる吸水性樹脂製品の連続製造方法は、分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂の粒度を測定する工程を含み、吸水性樹脂製品を連続的に製造する方法において、前記吸水性樹脂の粒度をレーザー回析散乱法で測定することを特徴とする。
本発明にかかる吸水性樹脂製品は、アクリル酸および/またはその塩を含む単量体を架橋重合した後、脱水反応性架橋剤を用いて表面架橋することによって得られる吸水性樹脂製品であって、(1)質量平均粒子径が300〜600μm、(2)残存モノマー量が500ppm以下、(3)分析点数n=3で測定した無加圧下吸収倍率の平均値が25g/g以上、標準偏差が0〜0.50、(4)分析点数n=3で測定した1.9kPaまたは4.9kPaでの加圧下吸収倍率の平均値が20g/g以上、標準偏差が0〜0.35、(5)分析点数n=3で測定した150μm未満の微粉量の平均値が5.0質量%未満、標準偏差が0〜0.50、であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、高物性の吸水性樹脂製品を安定した一定の品質で簡便に安価に連続製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の製造方法の実施形態の一例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
〔吸水性樹脂製品の連続的製造〕
本発明にかかる吸水性樹脂製品の製造方法は、重合工程で得られた含水ゲル状架橋重合体を乾燥工程で乾燥した後、必要に応じて粉砕工程にて粉砕を行い、その後に、分級工程および/または表面改質工程を経て、連続的に吸水性樹脂製品を製造する方法である。また、必要に応じて、輸送工程や貯蔵工程を含む。
【0014】
なお、本発明で「連続的に製造」とはすべての工程が連続工程である必要はなく、重合や表面処理などバッチ工程が含まれても実質的にそれらが連結され一連の連続フローであれば、連続的に製造とする。本発明でバッチ工程を含む場合、必要により、これらの連結のために中間に貯蔵ホッパーなどを適宜設ければよい。
本発明にかかる吸水性樹脂製品の連続製造方法は、工業的生産でプラント規模の吸水性樹脂製品の連続生産に好適に使用され、好ましくは、吸水性樹脂製品の生産量が1ラインで5t(metric ton)/日以上、さらに好ましくは10t/日以上、特に好ましくは20t/日以上という、巨大規模の連続生産に適用されることが好ましい。また、生産量の上限は特に制限はないが、通常、1000t/日以下が好ましく、500t/日以下がより好ましい。なお、以下、特に断りのない限り、重量ないし質量でtはmetric tonを意味し、重量と質量とは同義とする。
【0015】
(重合工程)
本発明において、吸水性樹脂とは水膨潤性かつ実質水不溶性の架橋重合体で、アニオン性、ノニオン性、またはカチオン性の実質水不溶性ヒドロゲルを形成する従来公知の水膨潤性架橋重合体のことである。本発明で「水膨潤性」とはイオン交換水中において必須に自重の5倍以上、好ましくは50倍から1000倍という多量の水を吸収することを指す。また、本発明で「実質水不溶性」とは吸水性樹脂中の水可溶性成分(水溶性高分子)が0〜50質量%、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下のことを指す。
【0016】
本発明において、吸水性樹脂は1種または混合物で用いられるが、これらの中でも、酸基含有の吸水性樹脂が好ましく、カルボン酸またはその塩であるカルボキシル基含有の吸水性樹脂の1種またはその混合物がさらに好ましい。典型的には、アクリル酸および/またはその塩(中和物)を主成分とする単量体を架橋重合することにより得られる架橋重合体、例えば、必要によりグラフト成分を含むポリアクリル酸塩架橋重合体を主成分とすることが好ましい。
本発明において、吸水性樹脂は、その構成単位としてアクリル酸0〜50モル%およびアクリル酸塩100〜50モル%(但し、両者の合計量は100モル%以下とする)の範囲にあるものが好ましく、アクリル酸10〜40モル%およびアクリル酸塩90〜60モル%(但し、両者の合計量は100モル%以下とする)の範囲にあるものがより好ましい。なお、この酸と塩とのモル比(酸と塩の合計モル量に対する塩の割合)を中和率と呼ぶ。
【0017】
上記塩を形成させるための吸水性樹脂の中和は重合前に単量体の状態で行っても良いし、あるいは重合途中や重合後に重合体の状態で行っても良いし、それらを併用してもよい。中和の塩としては、(ポリ)アクリル酸のナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩及びアミン塩等を例示することができる。
また、本発明で用いることができるアクリル酸は、物性の安定化、残存モノマーの低減、重合促進や低着色の面から、p−メトキシフェノール(別称、ヒドロキノンモノメチルエーテル)を含有することが好ましい。その含有量はアクリル酸に対して200質量ppm以下が好ましく、より好ましくは10〜160質量ppm、さらに好ましくは20〜140質量ppm、さらに好ましくは30〜120質量ppm、さらに好ましくは40〜100質量ppm、さらに好ましくは50〜90質量ppmである。また、本発明で用いることができるアクリル酸中のプロトアネモニンおよび/またはフルフラールの含有量は0〜20質量ppmであることが好ましく、さらに好ましくは0〜10質量ppm、特に好ましくは0〜5質量ppmである。
【0018】
本発明における吸水性樹脂を得るための単量体は実質アクリル酸(塩)のみでもよいし、上記アクリル酸(塩)以外の不飽和単量体を用いて吸水性樹脂を得てもよいし、また、他の不飽和単量体をアクリル酸(塩)と併用して吸水性樹脂を得てもよい。アクリル酸(塩)以外の単量体としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、メタクリル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸等のアニオン性不飽和単量体およびその塩;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン、N−ビニルアセトアミド等のノニオン性の親水基含有不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、およびこれらの四級塩等のカチオン性不飽和単量体等が挙げられる。これら単量体は、単独で用いてもよく、適宜2種類以上を混合して用いてもよい。
【0019】
本発明においては、物性面から、主成分として用いるアクリル酸およびその塩を用いて、さらに必要により、全単量体中において通常好ましくは0〜30モル%、より好ましくは0〜10モル%でその他の単量体を併用すればよい。
本発明における吸水性樹脂を得るために上述の単量体を重合するに際しては、バルク重合や沈殿重合を行うことが可能であるが、性能面や重合の制御の容易さ、さらに膨潤ゲルの吸収特性の観点から、上記単量体を水溶液とすることによる水溶液重合や逆相懸濁重合を行うことが好ましく、連続重合に適した水溶液重合を行うことがより好ましい。なお、上記単量体を水溶液とする場合の該水溶液(以下、単量体水溶液と称する)中の単量体の濃度は、水溶液の温度や単量体の種類によって決まり、特に限定されるものではないが、10〜70質量%の範囲内が好ましく、20〜60質量%の範囲内がさらに好ましい。また、上記水溶液重合を行う際には、水以外の溶媒を必要に応じて併用してもよく、併用して用いられる溶媒の種類は、特に限定されるものではない。
【0020】
水溶液重合の方法としては特に限定されないが、例えば、一軸型または多軸型(好ましくは双腕型)などのニーダー中で単量体水溶液を、得られる含水ゲル状架橋重合体を砕きながら重合する方法(ニーダー重合)や、所定の容器中や駆動するベルト上に単量体水溶液を供給して重合し(ベルト重合)、得られたゲルをミートチョッパー等で粉砕する方法等が挙げられる。本発明の効果を最も発揮する上で、かかるニーダー重合およびベルト重合が好ましく適用でき、特にこれらの連続重合が最も好適に使用される。
上記の重合を開始させる際には、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤や、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシル フェニル ケトン等の光重合開始剤を用いることができる。さらに、これら重合開始剤の分解を促進する還元剤を併用し、両者を組み合わせることによりレドックス系開始剤としてもよい。上記の還元剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の(重)亜硫酸(塩)、L−アスコルビン酸(塩)、第一鉄塩等の還元性金属(塩)、アミン類等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら重合開始剤の使用量は、残存モノマーや吸水特性などの物性面から、好ましくは0.001〜2モル%(対単量体)、より好ましくは0.01〜0.1モル%(対単量体)である。
【0021】
また、反応系に放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより重合反応の開始を行ってもよいし、さらに、上記重合開始剤を併用してもよい。なお、上記重合反応における反応温度は、特に限定されるものではないが、重合反応の最低温度から最高温度(ピーク温度)までの温度範囲が15〜130℃の範囲内にあることが好ましく、20〜120℃の範囲内にあることがより好ましい。また、反応時間や重合圧力も特に限定されるものではなく、単量体や重合開始剤の種類、反応温度等に応じて適宜設定すればよい。
本発明における吸水性樹脂は、その内部に架橋構造を有する(いわゆる内部架橋)。
【0022】
前記内部架橋は、架橋剤を使用しないで形成させたもの(自己架橋型)であってもよいが、一分子中に2個以上の重合性不飽和基や2個以上の反応性基を有する架橋剤(内部架橋剤)を共重合又は反応させて形成させたものがさらに好ましい。
これら内部架橋剤の具体例としては、例えば、N,N´−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる
これら内部架橋剤は、単独で用いてもよく、適宜2種類以上を混合して用いてもよい。また、これら内部架橋剤は、反応系に一括添加してもよく、分割添加してもよい。少なくとも1種または2種類以上の内部架橋剤を使用する場合には、最終的に得られる吸水性樹脂製品の吸収特性等を考慮して、2個以上の重合性不飽和基を有する化合物を重合時に必須に用いることが好ましい。
【0023】
これら内部架橋剤の使用量は、物性面から前記単量体(架橋剤を除く)に対して、好ましくは0.001〜2モル%、より好ましくは0.005〜0.5モル%、さらに好ましくは0.01〜0.2モル%、特に好ましくは0.03〜0.15モル%の範囲内とされる。
上記内部架橋剤を用いて架橋構造を吸水性樹脂内部に導入する場合には、上記内部架橋剤を、上記単量体の重合前あるいは重合途中、あるいは重合後、または中和後に反応系に添加するようにすればよい。
なお、上記重合に際しては、反応系に、0〜50質量%(対単量体)の、澱粉・セルロース、澱粉・セルロースの誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子や、その他、0〜10質量%(対単量体)の、炭酸(水素)塩、二酸化炭素、アゾ化合物、不活性有機溶媒等の各種発泡剤;各種界面活性剤;キレート剤;次亜燐酸(塩)等の連鎖移動剤などを添加してもよい。
【0024】
本発明においては、吸水性樹脂は逆相懸濁重合または水溶液重合で製造することが好ましく、特に水溶液重合で製造することが好ましい。なお、逆相懸濁重合とは、単量体水溶液を疎水性有機溶媒に懸濁させる重合法であり、例えば、米国特許4093776号、同4367323号、同4446261号、同4683274号、同5244735号などの米国特許に記載されている。水溶液重合は分散溶媒を用いずに単量体水溶液を重合する方法であり、例えば、米国特許4625001号、同4873299号、同4286082号、同4973632号、同4985518号、同5124416号、同5250640号、同5264495号、同5145906号、同5380808号などの米国特許や、欧州特許0811636号、同0955086号,同0922717号などの欧州特許、WO01/16197号などの国際公開に記載されている。また、従来技術の説明で用いた前述の特許文献等に記載の重合条件も、本発明に好適に適用できる。
【0025】
(乾燥工程)
上記重合工程において得られた含水ゲル状架橋重合体は、乾燥工程により、目的とする含水率を有する吸水性樹脂とする。着色低減や残存モノマー低減の面から、乾燥は重合終了後(重合機から排出後)、好ましくは2時間以内、より好ましくは1時間以内、さらに好ましくは0.5時間以内、特に好ましくは0.2時間以内に開始(乾燥機に投入)される。
乾燥は通常60〜250℃、好ましくは100℃〜220℃、さらに好ましくは120〜200℃の温度範囲で行われる。乾燥時間は重合体の表面積、含水率、乾燥機の種類などに依存し、目的とする含水率になるよう選択されるが、残存モノマー低減などの物性面から、好ましくは水蒸気を含有し且つ露点50〜100℃の熱風、さらに好ましくは水蒸気を含有し且つ露点60〜90℃の熱風にて、好ましくは0.1〜5時間で熱風乾燥を行う。
【0026】
本発明における吸水性樹脂の含水率(吸水性樹脂中に含まれる水分量で規定/180℃で3時間の乾燥減量で測定)は特に限定されないが、得られる吸水性樹脂製品の物性面から、室温でも流動性を示す粉末であることが好ましく、より好ましくは0.2〜30質量%、さらに好ましくは0.3〜15質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%の粉末状態である。
(粉砕工程)
本発明にかかる製造方法は、重合工程により得られた含水ゲル状架橋重合体を上記乾燥工程において乾燥した後、必要に応じて、粉砕機で粉砕して粒子状吸水性樹脂にする粉砕工程を含んでもよい。特に、重合工程において水溶液重合を行う場合には、粉砕工程を含むことが好ましい。
【0027】
この粉砕工程で用いられる粉砕機としては、たとえば、ローラーミル、ナイフミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等であり、粉砕機自体の内壁面を加熱する手段を備えていてもよい。
粉砕を行うことなしに得られるゲル状物や粉砕を行うことなしに得られるゲル状物を乾燥したもの、すなわち、質量平均粒径が1000μmを超えるようなものも使用できる場合があるが、重合工程において水溶液重合を行う場合には、一般には粉砕工程によって粉末状とすることが好ましい。
このようにして得られた吸水性樹脂の粒子形状は、球状、破砕状、不定形状等特に限定されるものではないが、粉砕工程を経て得られた不定形破砕状のものが好ましく使用できる。
【0028】
(分級工程)
本発明においては、好ましくは、さらに分級工程によって分級を行うことにより目的に応じた粉末粒径に調整される。分級工程は、好ましくは乾燥工程の後、より好ましくは粉砕工程の後に設けられる。また、表面改質工程を含む場合には、その前に設けられることが好ましく、表面改質工程の後にも第2の分級工程が設けられることがより好ましい。
本発明において得られる吸水性樹脂の粒径としては、分級後または最終製品として、質量平均粒子径が好ましくは200〜700μmの範囲、さらに好ましくは300〜600μmの範囲、特に好ましくは400〜500μmの範囲である。
【0029】
本発明において得られる吸水性樹脂は、分級後または最終製品として、850〜150μm(850μm標準篩を通過して且つ150μm標準篩の非通過物/標準篩はJISまたはその相当品)である吸水性樹脂粉末を95〜100質量%含むものが好ましい。本発明において得られる吸水性樹脂は、微粉末(例えば、好ましくは100μm未満、より好ましくは150μm未満)の割合が少ない方が好ましく、具体的には5.0質量%未満、さらには3.0質量%未満、特に1.0質量%未満である。また、本発明において得られる吸水性樹脂は、粗大粒子(例えば、好ましくは実質1000μm篩以上、より好ましくは850μm篩以上)の割合が少ない方が好ましく、具体的には5.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましい。
【0030】
(表面改質工程)
本発明においては、好ましくは、さらに表面改質工程によって表面改質を行う。
吸水性樹脂の表面改質としては、(i)表面架橋剤による表面架橋、(ii)水不溶性微粒子での表面被覆、(iii)界面活性剤での表面被覆、(iv)親水性ないし疎水性高分子での表面被覆、(v)抗菌剤ないし消臭剤での表面被覆、(vi)親水性ないし疎水性の有機化合物での表面被覆、などが挙げられ、これらの中の1種または2種以上が適用されるが、好ましくは、(i)の表面架橋剤による表面架橋、および/または、(ii)の水不溶性微粒子での表面被覆であり、最も好ましくは(i)と(ii)を併せて適用することである。
【0031】
物性面から考慮すると、表面改質剤(表面架橋剤や水不溶性微粒子など)の使用量は、吸水性樹脂100質量部(好ましくは、乾燥体である吸水性樹脂100質量部)に対して、好ましくは0.001〜10質量部の範囲、より好ましくは0.01〜8質量部の範囲、さらに好ましくは0.05〜5質量部、最も好ましくは0.1〜2質量部の範囲である。
表面架橋は、吸水性樹脂の表面近傍の架橋密度を粒子内部より高めて諸物性の改良を行う操作であり、内部架橋とは別途に、種々の表面架橋剤(内部架橋剤に対しては第2架橋剤となる)を吸水性樹脂に加えて表面ないし表面層のみ架橋する。
【0032】
表面架橋剤としては、特に限定されないが、カルボキシル基と反応する架橋剤、なかでも、脱水反応性架橋剤が好ましく用いられる。ここに、脱水反応性とは、吸水性樹脂の官能基(特に表面近傍の官能基)と架橋剤とが脱水反応すること、好ましくは脱水エステル化および/または脱水アミド化すること、さらに好ましくは脱水エステル化することである。脱水エステル化により表面架橋された吸水性樹脂は高物性であるが、連続生産での反応の制御が困難であった。この問題点を解消して物性の安定化を図るために、本発明が好適に適用される。
このような脱水反応性架橋剤としては、具体的には例えば、吸水性樹脂がカルボキシル基を含有する場合は、多価アルコールなどのヒドロキシル基含有の架橋剤;多価アミンなどのアミノ基含有の架橋剤;アルキレンカーボネートやモノ、ジまたはポリのオキサゾリジノン化合物、3−メチル−3−オキセタンメタノール等のオキセタン化合物などの環状架橋剤であって、その環状架橋剤の開環反応に伴ってヒドロキシル基やアミノ基を生成し該ヒドロキシル基やアミノ基が架橋反応を行う環状架橋剤;などが例示される。
【0033】
脱水反応性架橋剤をより一層具体的に述べると、例えば、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、グリセリン、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールなどの多価アルコール化合物;1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキソラン2−オンのアルキレンカーボネート化合物;3−メチル−3−オキセタンメタノール等のオキセタン化合物ならびに多価オキセタン化合物などであり、これらの中でも、本発明の効果を最大限に発揮するため、多価アルコール、アルキレンカーボネート、オキサゾリジノン化合物、(多価)オキセタン化合物から選ばれる脱水反応性架橋剤の1種以上が好ましく、多価アルコールを必須に用いることが特に好ましい。
【0034】
表面架橋剤としては、これら脱水反応性架橋剤のほかに、非脱水反応性架橋剤、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシ化合物;2,4−トリレンジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等の多価オキサゾリン化合物;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤;2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]などの多価アジリジン化合物;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、鉄、クロム、マンガン、チタン、ジルコニウムなどの多価金属;などが例示される。
【0035】
吸水性樹脂に表面架橋剤を混合する際には、水および/または親水性有機溶媒を用いてもよい。
水の使用量は吸水性樹脂100質量部(好ましくは、乾燥体である吸水性樹脂100質量部)に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜8質量部、さらに好ましくは1〜5質量部の範囲である。
親水性有機溶媒としては、例えば、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;アセトン等のケトン類;ジオキサン、アルコキシ(ポリ)エチレングリコール、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ε−カプロラクタムのアミド類;ジメチルスルホキサイド等のスルホキサイド類;などが挙げられ、その使用量は、吸水性樹脂100質量部に対して、0〜10質量部の範囲が好ましく、より好ましくは0〜5質量部の範囲、さらに好ましくは0〜3質量部の範囲である。
【0036】
表面架橋剤の混合方法は特に限定されるものではない。したがって、水や親水性有機溶媒、無機粉末などを、吸水性樹脂に対して別々に混合してもよいし、一括で混合してもよいし、数回に分けて混合してもよいが、好ましくは、これらの全てを予め混合した後に、この混合物を吸水性樹脂に添加し、その際、水溶液化しておくことがより好ましい。
混合に際し、本発明の効果を妨げない範囲、例えば0〜10質量部(対吸水性樹脂)の範囲で、水不溶性微粒子粉末や界面活性剤を共存させてもよい。
上記種々の混合方法の中では、表面架橋剤と必要により水および/または親水性有機溶媒とを吸水性樹脂に滴下混合する方法が好ましく、噴霧する方法がより好ましい。噴霧される液滴の大きさは、平均粒子径で0.1〜300μmが好ましく、平均粒子径で0.1〜200μmがより好ましい。この際の水溶液の温度は、混合性や安定性の面から、0℃〜沸点が好ましく、より好ましくは5〜50℃、さらに好ましくは10〜30℃である。混合前の吸水性樹脂粉末の温度は、混合性の面からみて、好ましくは0〜80℃、より好ましくは40〜70℃である。
【0037】
前記混合に用いられる好適な混合装置は、均一な混合を確実にするため大きな混合力を生み出せる装置である。このような混合装置としては、例えば、円筒型混合機、二重壁円錐型混合機、高速攪拌型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、流動型炉ロータリーディスク型混合機、気流型混合機、双腕型ニーダー、内部混合機、粉砕型ニーダー、回転式混合機、スクリュー型押出機等であり、好ましくは、高速攪拌型混合機中で3分以内の混合が行われる。特に、混合は連続混合が好ましい。
この工程において、加熱処理を行う場合、処理時間は1〜180分が好ましく、3〜120分がより好ましく、5〜100分が特に好ましい。加熱処理温度(熱媒温度ないし材料温度で規定)は100〜250℃の範囲が好ましく、140〜220℃の範囲がより好ましく、150〜220℃の範囲がさらに好ましく、160〜220℃の範囲が特に好ましい。
【0038】
加熱処理は、通常の乾燥機または加熱炉を用いて行うことができ、溝型混合乾燥機、ロータリー乾燥機、ディスク乾燥機、流動層乾燥機、気流型乾燥機、および赤外線乾燥機が例示される。
本発明にかかる製造方法において好ましく含まれる表面改質工程では、表面架橋に加えて、あるいは、表面架橋は起さないで実質的には吸水性樹脂に反応しないという意味での不活性な界面活性剤、不活性な消臭剤や不活性な無機微粒子粉末などを用いてもよい。この場合に用いられる界面活性剤や不活性無機微粒子粉末としては、好ましくは、後述の超微粒子、無機微粒子などが使用され、その際には、表面架橋も同時または別途に行うことが好ましい。
【0039】
本発明において、吸水性樹脂の表面改質に用いられる添加剤としてのカチオン性高分子化合物は、衛生材料への固定性などを向上でき、好ましくは質量平均分子量が2000以上で、さらに好ましくは5000以上、最も好ましくは10000以上である。なお、質量平均分子量の上限は特に限定されないが、物性面から、好ましくは1000万以下、より好ましくは100万以下である。その使用量は、吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部、さらに好ましくは0.1〜3質量部である。カチオン性高分子化合物の混合は、単独あるいは溶液(水溶液)で添加され、好ましくは、表面架橋後に添加される。カチオン性高分子化合物の具体例としては、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリアミドアミンとエピクロルヒドリンの縮合物、ポリアミジン、ポリ(N−ビニルホルムアルデヒド)の部分加水分解物またはこれらの塩などが例示される。
【0040】
本発明においては、添加剤として水不溶性微粒子を用いると、吸水性樹脂の通液性や吸湿時の耐ブロッキング性などを改善することができる。水不溶性微粒子としては、質量平均粒子径が好ましくは10μm以下、さらに好ましくは1μm以下、特に好ましくは0.1μm以下の無機または有機の水不溶性微粒子が用いられ、質量平均粒子径の下限は特に限定されないが、通常は0.1nm以上が好ましい。具体的には、酸化珪素(例えば、商品名:Aerosil、日本アエロジル社製)、酸化チタン、酸化アルミ、などが用いられる。混合は粉末混合(Dry−Blend)やスラリー混合で行われるが、その際の使用量は、吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは0.001〜5質量部、さらに好ましくは0.01〜2質量部である。
【0041】
なお、これらの表面架橋方法は、欧州特許0349240号、同0605150号、同0450923号、同0812873号、同0450924号、同0668080号などの各種欧州特許や、米国特許5409771号、同5597873号、同5385983号、同5610220号、同5633316号、同5674633号、同5462972号などの各種米国特許、WO99/42494号、WO99/43720号、WO99/42496号などの国際公開にも記載されており、これらの表面架橋方法も本発明に適用できる。
本発明においては、表面処理としての表面架橋とは別に、必要に応じてさらに添加剤を加えてもよい。すなわち、消臭剤、抗菌剤、香料、発泡剤、顔料、染料、親水性短繊維、可塑剤、粘着剤、界面活性剤、肥料、酸化剤、還元剤、水、塩類、キレート剤、殺菌剤、ポリエチレングリコールなどの親水性高分子、パラフィン、疎水性高分子、ポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂、ポリエステル樹脂やユリア樹脂などの熱硬化性樹脂等を添加する等、吸水性樹脂に種々の機能を付与するための添加工程、好ましくは表面への添加工程を含んでいてもよい。
【0042】
これらの添加剤の使用量は、吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは0〜30質量部の範囲、より好ましくは0〜10質量部の範囲、さらに好ましくは0〜1質量部の範囲である。なお、吸水性樹脂への表面架橋後および/または添加剤添加後も、吸水性樹脂を主成分とし且つ実質一体化されている範囲で、本発明では吸水性樹脂と総称する。そして、これら添加剤の含有量は、本発明における所定物性および/または所定成分量を測定する工程(A)における測定対象として適用される。
(輸送工程)
本発明にかかる製造方法において必要に応じて含まれる輸送工程は、重合工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、表面改質工程などの各工程を連結するものであり、各工程の連結にすべて輸送工程が必要とは限らないが、少なくとも乾燥した粒子状吸水性樹脂を輸送機で輸送する工程を含むことが好ましい。
【0043】
輸送工程において、輸送は連続またはバッチ式で行われるが、好ましくは連続で行われる。輸送工程で用いられる輸送機としては、例えば、ベルトコンベヤー、スクリューコンベヤー、チェーンコンベヤー、振動コンベヤー、ニューマチックコンベヤー等が挙げられ、その内壁面を外側から加熱する手段および/または保温する手段を備えたものを挙げることができる。これらの輸送機のうちでも、チェーンコンベヤーまたはニューマチックコンベヤーが好ましい。
輸送工程においては、当該工程の少なくとも一部を空気輸送で行うことが好ましい。乾燥物粉末である高物性の吸水性樹脂粉末の輸送による損傷を低減するためにも、また、金属性異物の混入を抑えるためにも、輸送工程の少なくとも一部が空気輸送でなされることが好ましい。
【0044】
この輸送工程では、輸送機の内壁面を外側から加熱した状態および/または保温した状態にすることが好ましい。輸送機での凝集を有効に防止することができる傾向があるからである。
(貯蔵工程)
本発明にかかる製造方法は、上記乾燥した粒子状吸水性樹脂を貯槽に貯蔵する貯蔵工程を含んでいてもよい。
この貯蔵工程で用いられる貯槽としては、例えば、サイロ、ホッパー等が挙げられ、その内壁面を加熱する手段を備えたものを好ましく挙げることができる。粒子状吸水性樹脂では、粒子状吸水性樹脂の摩耗性と帯電性の点から、金属性の内面、例えば鉄製、ステンレス製の内面を有する貯槽が好ましい。また、最終製品の貯蔵とは別に、各工程の中間に貯蔵工程(中間ホッパー)を別途設けてもよく、連続製造のために緩衝ホッパーおよび定量供給ホッパーで各工程を連結してもよい。
【0045】
(その他の工程)
得られる吸水性樹脂、特に最終の吸水性樹脂製品に磁力線を照射することも好ましい。かかる磁力線の照射でゲル劣化が防止され、耐久性に優れた且つ金属異物を実質まったく含まない吸水性樹脂が得られる。用いられる磁力線の磁束密度としては、好ましくは0.05Wb/m2(500gauss)以上、さらに好ましくは0.5Wb/m2以上、特に好ましくは1.0Wb/m2以上であり、好ましくは永久磁石および/または電磁石が用いられ、より好適には、磁石を格子状に配置して格子間に吸水性樹脂を通過させればよい。
【0046】
〔吸水性樹脂製品の品質安定化〕
本発明にかかる吸水性樹脂製品の連続製造方法においては、分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂について、所定物性および/または所定成分量を測定する工程(A)と、前記測定結果に従い、所定物性および/または所定成分量が一定以上および/または一定以下の値を示す吸水性樹脂(a)を、連続的に生産されてくる吸水性樹脂から所定量分離する工程(B)と、前記分離した所定量の吸水性樹脂(a)の少なくとも一部を、同一の製造ラインまたは別の製造ラインにおいて分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂と混合する工程(C)とを含む、ことを特徴とする。
【0047】
以下、これら工程(A)〜(C)について説明する。
(工程(A))
本発明にかかる吸水性樹脂製品の連続製造方法においては、分級工程および/または表面改質工程、好ましくは表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂について、所定物性および/または所定成分量を測定する。
上記分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂とは、分級工程および/または表面改質工程が行われた後の吸水性樹脂であれば特に限定されず、具体的には、分級工程および/または表面改質工程が行われる装置や反応器から分級および/または表面改質された吸水性樹脂が排出される出口以降の製造ライン中に存在する吸水性樹脂あるいは最終的に得られる吸水性樹脂製品を意味する。
【0048】
すなわち、前記所定物性を測定する吸水性樹脂は、分級工程および/または表面改質工程が行われる装置や反応器から分級および/または表面改質された吸水性樹脂が排出される出口以降の製造ライン中に存在する吸水性樹脂であってもよいし、最終的に得られる吸水性樹脂製品であってもよいが、測定のし易さの面などから、連続製造ラインの最終貯蔵工程および/またはその直前および/または周辺に存在する最終的に得られる吸水性樹脂製品であることが好ましい。なお、分級工程および/または表面改質工程が行われる装置や反応器から分級および/または表面改質された吸水性樹脂が排出される出口以降の製造ライン中に存在する吸水性樹脂について前記所定物性を測定する場合は、その測定箇所は特に限定されず、分級工程および/または表面改質工程が行われる装置や反応器から分級および/または表面改質された吸水性樹脂が排出される出口に近い箇所でもよいし、製造ラインの末端(製品としての排出口)に近い箇所でもよい。
【0049】
前記所定物性および/または所定成分量の測定は、連続測定であってもよいし、所定生産高および/または所定時間ごとに一定抜き取りで行っても良い。ここに、所定生産高ごとにとは、例えば、ロット(Lot)ごとにであっても良いし、ロット内での生産高ごとに抜き取り検査するようであってもよい。なお、より具体的には、例えば、所定量ごとに最終製品を袋詰め(ドラム詰めやコンテナ詰め)する場合には、所定生産高および/または所定時間ごとに該当する製品袋について抜き取り検査を行うか、そのロットに対するラインフローでサンプリングする。なお、ロットの大きさや定義は後述する。
前記所定物性および/または所定成分量は、吸水性樹脂製品の品質に影響を与える物性や成分量であれば特に限定されないが、例えば、無加圧下吸収倍率、加圧下吸収倍率、通液性(通液量)、含水率、pH、残存モノマー、嵩比重、各種成分(添加剤など)の含有量、ゲル強度、水可溶成分量、通気性、ゲル耐久性(耐光性、耐熱性、耐尿性、耐L−A性)、消臭能、抗菌能、物体色などを含めて公知または新規の諸物性や成分量が例示される。これらの測定法は、前述の各種特許やEDNA(European Disposable And Nonwoven Association)やJIS(Japanese Industrial Standard)でも知られている。これらの中でも、好ましくは、物性の安定性や与える影響の大きさから、微粉量に代表される粒度、CRCに代表される無加圧下吸収倍率、AAPないしAULに代表される加圧下吸収倍率、ゲル強度、および通液性(通液量)、から選ばれる少なくとも1つの物性であり、より好ましくは2つ以上の物性、さらに好ましくは3つ以上の物性、特に好ましくは4つ以上の物性である。
【0050】
なお、本発明で測定される物性や成分量は本願実施例に記載の方法に限定されず、公知の物性を公知の測定方法で測定してもよく、また、これら公知の物性測定法の改良でもよく、まったく新規な測定法でもよく、まったく新規な物性や成分量であってもよい。
粒度の測定法としては、篩分級、気流分級、湿式分級、乾式分級など特に限定されず、重量(質量)で測定してもよいし、体積をレーザーなどで測定してもよい。特に、粒度をレーザー回析散乱法で測定することは、本発明における好ましい態様の一つである。
すなわち、本発明は、分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂の粒度を測定する工程を含み、吸水性樹脂製品を連続的に製造する方法において、前記吸水性樹脂の粒度をレーザー回析散乱法で測定することを特徴とする、吸水性樹脂製品の連続製造方法をも提供する。
【0051】
レーザー回析散乱法とは、光散乱原理を利用して、液体に懸濁している粒子(湿式)または乾燥した粉末状の粒子(乾式)から散乱した光のパターンから粒度分布を測定する方法である。粒子のサンプル濃度は適宜決定されるが、好ましくは1〜90質量%、より好ましくは2〜70質量%である。測定原理としては、ミー散乱法、フラウンホーファー解析法、偏光差動散乱法(PIDS)から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。湿式で測定する場合、透明で低粘度であり、且つ、吸水性樹脂に不活性な非吸収性溶媒(非水系溶媒)が適宜選択され、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコール;ヘキサンなどの炭化水素;等が分散溶媒として用いられる。乾式で測定する場合、分散方式としては、例えば、自由落下が好ましく挙げられ、トルネード方式が特に好ましい。
【0052】
粒度をレーザー回析散乱法で測定する場合の好ましいレーザーとして、シングルウェーブまたはマルチウェーブが挙げられ、好ましくは50〜3000nmの波長、より好ましくは100〜1000nm、さらに好ましくは350〜900nmの波長、例えば、ダイオードレーザ(750nm)、タングステンハロゲンランプ(450nm、600nm、900nm)、赤色半導体レーザー(例えば690nm)が挙げられる。なお、粒度のレーザー回析散乱は吸水性樹脂の一部サンプリングによるバッチ測定でもよいし、製造ラインの途中にレーザー回析散乱装置をつけて連続的に測定してもよい。また、測定は湿式測定と乾式測定のいずれでもよいし、乾式測定では吸水性樹脂粉末を自由落下させてもよいし、噴射型でもよい。吸水性樹脂に対する精度面や本発明への適用面から、好ましくは乾式測定である。測定は、好ましくは、温度0〜100℃、より好ましくは10〜60℃の条件下であって、好ましくは、相対湿度10〜100%、より好ましくは10〜60%の条件下で行われる。なお、レーザー回折散乱法で粒度を測定する場合は、体積(%)で粒度を求めることが一般的であるが、適宜、篩分級と比較して質量(重量)%に換算してもよい。体積(%)で表された粒度を質量(重量)%に換算するためには、目的とする物性や成分量を有する吸水性樹脂の標準サンプルを用いて粒度を比較し、その結果に基づいて一定比率で換算すればよい。
【0053】
レーザー回析散乱法で測定される粒度は、好ましくは最終製品としての吸水性樹脂製品の粒度であり、その物性や成分量(無加圧下吸収倍率、加圧下吸収倍率、通液性、粒度など)は後述のように高く且つ制御されており、例えば、質量平均粒子径が300〜600μmの範囲内にあって、且つ、850〜150μm(850μm標準篩を通過して且つ150μm標準篩の非通過物/標準篩はJISまたはその相当品)である吸水性樹脂粉末を95〜100質量%含む、表面架橋された吸水性樹脂粉末が好ましい。また、レーザー回析散乱法で測定された吸水性樹脂の粒度(体積(%)で表された粒度でもよいし、篩換算によって質量(重量)%で表された粒度でもよい)やその他の物性および/または成分量は、本発明における所定物性および/または所定成分量の測定対象であるとともに、最終製品としての吸水性樹脂製品の性能を示す試験結果やカタログ記載事項として使用してもよい。
【0054】
レーザー回析散乱法による粒度の測定以外の測定として、無加圧下吸収倍率、加圧下吸収倍率、通液性の測定においては、粒度(吸水性樹脂の全体あるいは特定粒度で規定)、測定温度、測定時間や吸収液は適宜選ばれる。吸収液としては、例えば、イオン交換水、生理食塩水に限らず、各種濃度の食塩水、人工あるいは天然の尿、血液、排水、廃水、海水、さらには有機溶媒/水との混合水などが例示され、目的に応じて使用される。また測定温度も凝固点を超えて沸点以下の範囲で適宜選ばれるが、好ましくは0〜50℃の範囲、さらには10〜44℃の範囲、さらには20〜40℃の範囲でなるべく狭く制御される。また、測定時間も連続式で瞬時に測定してもよいし、また、測定時間が好ましくは16時間以内、より好ましくは3時間以内、さらに好ましくは1時間以内のバッチ式測定で行ってもよい。
【0055】
測定時間は必ずしも平衡ないし飽和に達する必要はなく、1秒〜10分程度のごく短時間で測定することで、過去の経験値より飽和値や1時間値などを類推してもよいし、また、短時間値で管理してもよい。かかる短時間の測定を用いて、吸水性樹脂の製造フローの途中で連続的に所定物性および/または所定成分量を測定して、吸水性樹脂の分離(例えば、ライン上での分離)を行ってもよい。
本発明における無加圧下吸収倍率は、大過剰の被吸収液中で吸水性樹脂を自由膨潤される方法であり、たとえば、CRC(Centrifuge Retention Capacity)やブルーデキストラン法、TB法(Tea Bag)などが知られている。
【0056】
本発明における加圧下吸収倍率の測定法は、各種荷重や測定濃度などにより、AAP(Absorbency against Pressure)やAUL(Absorbency under load)、デマンド法などが知られている。
なお、所定物性および/または所定成分量が一定以上および/または一定以下の値を示す吸水性樹脂(a)を決定するにあたって、その所定物性値および/または所定成分量値の値は、目標とする吸水性樹脂の物性から適宜決定すればよい。
前記所定物性値および/または所定成分量値を決定する方法は特に限定されないが、例えば、最終的に得たい吸水性樹脂製品の目標物性値や目標成分値から所定値外れた値を、所定物性値や所定成分量値として採用する方法が挙げられる。
【0057】
また、生産された所定数のLotそれぞれについて所定物性および/または所定成分量を測定しておき、測定値の高いLot(上位Lot)を測定値の高いものから順に所定数を分離したり、測定値の低いLot(下位Lot)を測定値の低いものから順に所定数を分離したりする方法もある。上位と下位の両方を分離してもよいし、いずれか一方のみを分離してもよい。より好ましくは下位のみの分離である。また、この方法の場合、分離する量としては、生産された所定数Lotの総量の好ましくは上位および/または下位30〜0.0001質量%、より好ましくは20〜0.001質量%、さらに好ましくは10〜0.01質量%、特に好ましくは5〜0.05質量%の範囲である。
【0058】
具体的には、例えば、無加圧下吸収倍率、加圧下吸収倍率、通液性、粒度などが所定範囲にある吸水性樹脂を製造することを目的とする場合、その目標とする所定物性値および/または所定成分量値から所定値外れる無加圧下吸収倍率、加圧下吸収倍率、通液性、粒度を予め決定しておくか、上位または下位の一定量を予め決定しておいて、その所定物性値および/または所定成分量値を基準としてそれ以下あるいは以上の吸水性樹脂を工程(B)に送ればよい。
かかる吸水性樹脂製品の目標物性値を基準として、その目標物性値から一定値外れたものを工程(B)で分離することが好ましい。
【0059】
工程(B)における分離の基準の具体例としては、目的とする吸水性樹脂製品に合わせて適宜決定されるために一概には言えないが、例えば、CRCについては、好ましくは10〜50g/gの範囲から外れたもの、より好ましくは25〜48g/gの範囲から外れたもの、さらに好ましくは28〜45g/gの範囲から外れたものを分離する。1.9kPaでのAAPについては、好ましくは20〜40g/gの範囲から外れたもの、より好ましくは30〜38g/gの範囲から外れたもの、さらに好ましくは33〜37g/gの範囲から外れたものを分離する。4.9kPaでのAAPについては、好ましくは10〜30g/gの範囲から外れたもの、より好ましくは20〜28g/gの範囲から外れたもの、さらに好ましくは23〜27g/gの範囲から外れたものを分離する。通液性については、好ましくは360秒以下の範囲から外れたもの、より好ましくは240秒以下の範囲から外れたもの、さらに好ましくは1〜180秒の範囲から外れたもの、さらに好ましくは2〜120秒の範囲から外れたものを分離する。粒度については、質量平均粒子径が300〜600μmであり且つ850〜150μm(850μm標準篩通過で150μm非通過)である吸水性樹脂粉末の含有量が、好ましくは90〜100質量%の範囲から外れたもの、より好ましくは95〜100質量%の範囲から外れたもの、さらに好ましくは98〜100質量%の範囲から外れたものを分離する。粒度については、また、150μm未満の微粉量が、好ましくは10質量%未満の範囲から外れたもの、より好ましくは5質量%未満の範囲から外れたもの、さらに好ましくは2質量%未満の範囲から外れたものを分離する。
【0060】
なお、これらの物性は、他の測定法で測定してもよく、例えば、CRC=50g/gという物性を与える吸水性樹脂製品は、他の測定法で測定する場合にはCRC=50g/gに相当する値を与える。
なお、本発明において、無加圧下吸水倍率についてのCRC値、加圧下吸水倍率についてのAAP値は、他の測定法で物性を管理してもよいが、結果的に、無加圧下吸水倍率、加圧下吸水倍率の諸物性が本発明でいうCRC、AAPの範囲を含む概念である。
工程(B)での分離量が多すぎる場合、生産性の低下をまねき、また、コストの割に物性安定への寄与が少ない。また、工程(B)での分離量が少なすぎる場合、物性安定への寄与が少ない。したがって、本発明の製造方法においては、工程(B)での分離量が多すぎたり少なすぎたりならないように、工程(B)における吸水性樹脂(a)を決定するにあたって必要な所定物性値および/または所定成分量値を決定することが必要である。
【0061】
また、本発明は、分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂について所定物性および/または所定成分量を測定する工程(A)を含み、且つ、前記測定結果に従い、製造条件を変更する、吸水性樹脂製品の連続製造方法をも提供する。
本発明においては、好ましくは、解析された粒度にあわせて製造条件を変更する。また、好ましくは、粒度などの所定物性および/または所定成分量の測定は自動的に連続で行なわれ、その測定結果に合わせて、プログラムされた製造条件の変更、例えば、工程(B)や工程(C)の条件変更を行えばよい。従来、吸水性樹脂の製造において、温度や流量を測定することは行なわれていたが、本発明では吸水性樹脂の所定物性および/または所定成分量を測定することで、より高物性の吸水性樹脂製品をより安定的に安定した品質で製造することができる。
【0062】
かかる製造条件の変更の好適な一例が、後述する工程(B)の分離および工程(C)の混合である。例えば、本発明にかかる製造方法が吸水性樹脂の粒度をレーザー回析散乱法で測定する工程を含む場合、従来の篩分級のようなバッチ式分析で且つ数10分の分級時間を必要とせず、瞬時に自動的に連続に粒度が判明するため、製造ラインの途中でモニターリングして、その粒度分布に応じて自動的ないし人間が製造条件を随時変更できる。よって、上記の粒度のレーザー回析散乱に合わせて変更する製造条件としては粒度に依存ないし関するものであればよく、粒度分布の調整や粒度に依存する表面改質の条件変更(例、温度、量)など、粉砕、分級、表面処理など各工程で適用できる。製造ラインの途中や最終でモニターリングする方法としては、例えば、自動あるいは手動でバッチ式にサンプリングする方法や連続的に測定する方法が挙げられる。
【0063】
(工程(B))
本発明にかかる吸水性樹脂製品の製造方法においては、前記工程(A)における測定結果に従い、所定物性および/または所定成分量が一定以上および/または一定以下の値を示す吸水性樹脂(a)を、連続的に生産されてくる吸水性樹脂から所定量分離する工程(B)を含む。
具体的な形態としては、例えば、最終的に得られる吸水性樹脂製品について所定物性および/または所定成分量を測定する場合には、所定物性および/または所定成分量が一定以上および/または一定以下の値を示す吸水性樹脂(a)を、連続的に生産されてくる吸水性樹脂製品そのものから所定量分離する。
【0064】
また、分級工程および/または表面改質工程が行われる装置や反応器から分級および/または表面改質された吸水性樹脂が排出される出口以降の製造ライン中に存在する吸水性樹脂について所定物性および/または所定成分量を測定する場合には、そのフローの途中から直接分離するか、または製造ラインの輸送スピード等から、かかる所定物性および/または所定成分量が一定以上および/または一定以下の値を示す吸水性樹脂製品が製造ラインの末端(製品としての排出口)から出てくる時間を予想し、該当する時間に得られる吸水性樹脂製品を分離する。分離はLot毎などの最終製品として袋やタンクに貯蔵された容器ごとのバッチ式でおこなってもよいし、下記に示される連続自動測定などで、連続フロー後に2又ラインで一方に流して分離してもよい。
【0065】
すなわち、連続生産において連続的に各工程ないし最終製品へのフローする吸水性樹脂について連続的に物性や粒度を測定して、2又のラインなどから一定基準以上のみをラインに流し続け、その際、一定基準未満の吸水性樹脂をラインから分離するようにしてもよい。また、バッチ式で分離を行う場合は、貯蔵された容器のまま、または、容器から取り出して、分離を行えばよい。
好ましい方法として、連続フローする吸水性樹脂の粒度をレーザーで湿式ないし乾式、好ましくは乾式で連続的に測定して、一定未満の粒度(例えば、微粉量の多い吸水性樹脂や粒度分布のブロードな吸水性樹脂)をラインから自動的に分離するシークエンスとすればよい。具体的には、レーザー回析散乱法によって粒度を測定し、その測定結果と連動させて自動的に分離する形態が好ましい。
【0066】
(工程(C))
本発明にかかる吸水性樹脂製品の製造方法においては、前記工程(B)において分離した所定量の吸水性樹脂(a)の少なくとも一部を、同一の製造ラインまたは別の製造ラインにおいて分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂と混合する工程(C)とを含む。
すなわち、前記工程(B)において分離した所定量の吸水性樹脂(a)の全量または少なくとも一部(好ましくは分離量の50〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、特に好ましくは95〜100質量%)を、同一の製造ラインまたは別の製造ラインにおいて分級工程および/または表面改質工程が行われる装置や反応器から分級および/または表面改質された吸水性樹脂が排出される出口以降の製造ライン中に存在する吸水性樹脂あるいは最終的に得られる吸水性樹脂製品に混合する。なお、工程(B)と(C)は、必要時に行われるものであるから、バッチ式でもよいし、連続でもよい。工程(B)と(C)における吸水性樹脂の輸送は、前述の輸送機で連結してもよいし、バッチ式の場合は、容器や袋ごとに行ってもよい。なお、工程(B)と(C)における吸水性樹脂は、その工程の間において、特に変性(例えば、表面処理や造粒)されることなくそのまま混合されることが好ましく、そのまま乾式混合(粉体どうしの混合)されることがより好ましい。
【0067】
工程(C)における混合は、製造ラインの途中で行うことがより好ましく、さらに好ましくは粉砕工程以降で行う。なお、製造ラインの途中とは、実質的に工程(C)のために新たに混合装置を設けることなく、連続生産の通常のフロー中(分級や輸送)に吸水性樹脂(a)を混合することを示す。
同一の製造ラインまたは別の製造ラインにおいて分級工程および/または表面改質工程が行われる装置や反応器から分級および/または表面改質された吸水性樹脂が排出される出口以降の製造ライン中に存在する吸水性樹脂に混合する場合は、かかる製造ラインの任意の箇所において導入すればよく、例えば、同一の製造ラインまたは別の製造ラインにおいて分級工程および/または表面改質工程が行われる装置や反応器から分級および/または表面改質された吸水性樹脂が排出される出口に近い箇所でもよいし、製造ラインの末端(製品としての排出口)に近い箇所でもよい。
【0068】
最終的に得られる吸水性樹脂製品に混合する場合は、吸水性樹脂製品に混合する。
工程(C)における混合の形態は特に限定されないが、品質の安定化を高めるためには、前記工程(B)において分離した所定物性および/または所定成分量が一定以上および/または一定以下の値を示す吸水性樹脂(a)を少量ずつ連続的あるいは間欠的に添加混合するのがよい。吸水性樹脂(a)を添加混合する場合、その添加混合量は、全体の10質量%以下が好ましく、0.01〜5質量%の範囲がより好ましい。
両者の混合は湿式混合または乾式混合で行うことが好ましく、より好ましくは乾式混合で行われ、前述に例示した各種の混合機が使用されるが、その他、混合機を使用せず、吸水性樹脂の製造フローの途中で、好ましくは表面処理後に混合して、各種輸送工程や分級工程における粉体の流動を混合機の代わりに利用して混合することも好ましい。
【0069】
すなわち、高物性の吸水性樹脂製品を安定した一定の品質で簡便に安価に連続製造するため、工程(C)における混合は、分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂の製造ラインの途中で行われることが好ましい。
本発明において、連続生産とは1ラインで24時間以上、若しくは5t(metric ton)/日で1日以上、連続して吸水性樹脂製品を生産することを示す。生産時間は好ましくは10日以上、さらに好ましくは100日以上、ラインあたりの生産量は好ましくは20t/日以上、さらに好ましくは50t/日以上である。また、吸水性樹脂製品の製造方法の基本工程である、重合、乾燥、粉砕、表面改質等は、連続生産系においては、各工程は連続式またはバッチ式を問わないが(例えば、重合工程においては連続重合とバッチ重合など)、各工程の間隔は24時間以下が好ましく、より好ましくは12時間以下、さらに好ましくは6時間以下、特に好ましくは3時間以下で行うものとする。
【0070】
〔品質の安定した吸水性樹脂製品〕
本発明にかかる製造方法によれば、無加圧下吸収倍率、加圧下吸収倍率、通液性、粒度などの諸物性に優れ、品質の安定した吸水性樹脂製品が連続的に高生産性で得られる。また、複数の吸水性樹脂を混合(好ましくは製造ライン途中で乾式混合)することで、目的とする任意の物性に調整することもできる。
本発明で得られる吸水性樹脂製品の有する物性は、無加圧下吸収倍率についてはCRC値として好ましくは25.0g/g以上、加圧下吸収倍率については1.9kPaまたは4.9kPaでのAAP値として好ましくは20.0g/g以上、通液性については、好ましくは240秒以下である。また、粒度については、好ましくは、質量平均粒子径が300〜600μmであり且つ850〜150μm(850μm標準篩通過で150μm非通過)である吸水性樹脂粉末の含有量が95〜100質量%、あるいは、150μm未満の微粉量が5質量%未満である。(なお、以下の説明において、物性値について、25.0は25のように少数点一桁がゼロの場合は省略する。)
なお、CRC、1.9kPaまたは4.9kPaでのAAPは、それぞれ無加圧下吸収倍率、加圧下吸収倍率の測定法の代表例であって、本願発明では必ずしもその測定法で測定される必要はなく、別の無加圧下吸収倍率(例えば、TB法、デキストラン法、濾過法)、別の加圧下吸収倍率(例えば、AUL,APUP)でもよい。
【0071】
本発明で得られる吸水性樹脂製品のCRCは、より好ましくは28〜65g/gであり、さらに好ましくは30〜60g/gであり、さらに好ましくは32〜58g/g、さらにより好ましくは34〜56g/g、特に好ましくは36〜54g/gの範囲である。
本発明で得られる吸水性樹脂製品の1.9kPaまたは4.9kPaでのAAPは、より好ましくは23g/g以上であり、さらに好ましくは25g/g以上、特に好ましくは27g/g以上である。本発明で得られる吸水性樹脂製品の1.9kPaまたは4.9kPaでのAAPの上限は特に限定されないが、好ましくは50g/g以下である。
本発明で得られる吸水性樹脂製品の通液性は、より好ましくは1〜180秒であり、さらに好ましくは2〜120秒、特に好ましくは3〜60秒である。
【0072】
本発明で得られる吸水性樹脂製品のかさ比重は、好ましくは0.30〜0.90、より好ましくは0.50〜0.80、さらに好ましくは0.60〜0.75である。
本発明で得られる吸水性樹脂製品の粒度は、質量平均粒子径が300〜600μmであり、且つ850〜150μm(850μm標準篩通過で150μm非通過)である吸水性樹脂粉末を、より好ましくは97〜100質量%含む粒度であり、さらに好ましくは99〜100質量%含む粒度である。また、本発明で得られる吸水性樹脂製品の粒度は、150μm未満の微粉量が、より好ましくは3質量%未満であり、さらに好ましくは1質量%未満である。(なお、粒度をレーザー回析散乱法によって体積で測定する場合は、必要により適宜、質量(重量)%に換算すればよい。)
また、後述の実施例や前述の本発明の課題に示すように、本発明で得られる吸水性樹脂製品は低着色(黄ばみもなく)、且つ残存モノマーも少ない。具体的には、着色状態がYI値(Yellow Index/欧州特許0942014号および同1108745号参照)で好ましくは0〜15、より好ましくは0〜13、さらに好ましくは0〜10、最も好ましくは0〜5を示し、殆ど黄ばみもない。さらに、残存モノマーは、好ましくは500ppm以下、より好ましくは400ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下を示し、その標準偏差は、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下である。
【0073】
また、pHは、好ましくは4.0〜9.0の範囲、より好ましくは5.0〜8.0の範囲である。
従来、吸水性樹脂の物性を高く且つ安定させようとすると、慎重な生産が必要であり、生産性を犠牲にする必要があったが、本発明は、物性が高く且つ安定した従来にない吸水性樹脂製品を、高い生産性で与える。また、前述の通り、表面架橋において脱水反応性架橋剤を用いると高物性が発現できるとともに安全性も高いが、反応の制御が困難となり、吸水性樹脂製品の物性を安定させることが困難であったが、本発明によれば、高物性のまま物性を安定させることができ、生産性にも影響を与えないか、あるいはむしろ向上する。なお、本発明において脱水反応性架橋剤を用いる場合、架橋剤として作用させずに溶媒(例えば、他の架橋剤の溶媒)として作用させてもよいが、通常、160〜220℃で加熱処理させて表面架橋させる際の表面架橋剤として作用させることが好ましい。
【0074】
すなわち、本発明は、高物性で且つ品質の安定した新規な吸水性樹脂製品を与える。
本発明にかかる吸水性樹脂製品は、アクリル酸および/またはその塩を主成分とする単量体を架橋重合した後、脱水反応性架橋剤を用いて表面架橋することによって得られる吸水性樹脂製品であって、
(1)質量平均粒子径が300〜600μm、
(2)残存モノマー量が500ppm以下、
(3)分析点数n=3で測定した無加圧下吸収倍率の平均値が25g/g以上、標準偏差が0〜0.50、
(4)分析点数n=3で測定した1.9kPaまたは4.9kPaでの加圧下吸収倍率の平均値が20g/g以上、標準偏差が0〜0.35、
(5)分析点数n=3で測定した150μm未満の微粉量の平均値が5.0質量%未満、標準偏差が0〜0.50、
であることを特徴とする。
【0075】
さらに、前記脱水反応性架橋剤が多価アルコールであることが好ましい。
本発明にかかる吸水性樹脂製品は、分析点数n=3において物性のふれがほとんどなく、しかも高物性であるため、実使用(例えば、実際のおむつとしての使用など)においても従来にない非常に優れた性能を与える。
ここで、分析点数nとは、吸水性樹脂製品について、任意にn点のサンプルを抽出して各種物性を測定することを意味する。分析点数nは大きければ大きいほど、物性のふれをより正確に認識することができる。nは3以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、20以上が特に好ましい。nの上限値は特に限定されないが、通常は5000以下が好ましく、1000以下がより好ましく、500以下がさらに好ましく、100以下が特に好ましい。
【0076】
分析点数nの1点の量は、吸水性樹脂製品の形態によって左右されるために特に限定されないが、例えば、吸水性樹脂製造プラントにおける製造物の場合には、例えば1ロットとして、1kg以上が好ましく、10kg以上がより好ましく、20kg以上がさらに好ましく、100kg以上がさらに好ましく、500kg以上が特に好ましい。上限値は特に限定されないが、通常は500t以下が好ましく、100t以下がより好ましく、50t以下がさらに好ましく、25t以下が特に好ましい。
n点の分析点数を抽出する形態としては、特に限定されず、例えば、吸水性樹脂製造プラントにおける製造物の場合には、製造Lotごとにn点のLotを抽出する形態、1つのLot中からn個のサンプルを抽出する形態、などが挙げられる。市販品については、吸水性樹脂製品の形態で市販されている場合には、製造Lotごとにn点の市販品を抽出する形態、同一Lotの市販品の中からn個のサンプルを抽出する形態、などが挙げられる。おむつ等の最終製品の場合には、製造Lotごとにn点の最終製品から吸水性樹脂製品を取り出す形態、同一Lotの最終製品から取り出した吸水性樹脂製品の中からn個のサンプルを抽出する形態、などが挙げられる。これら市販品においてLotが不明な場合には、例えば販売単位ごとに同一のLotであると考え、n点を抽出すればよい。なお、n点の分析点数の抽出は、最終製品の出荷容器(例えば、袋)単位でも良いし、生産のバッチ、時間、日などを単位としても良い。
【0077】
なお、おむつ等の最終製品から吸水性樹脂製品を取り出して各種物性を測定する場合には、最終製品から吸水性樹脂製品を取り出した後にダメージを与えない程度に乾燥(例えば、50℃以下で減圧乾燥)してから測定することが好ましい。吸水性樹脂製品の吸水特性は、その含水率に依存するため、製造直後の吸水性樹脂製品は固有の含水率を有している状態なのでそのまま測定すれば十分であるが、流通過程や使用過程において吸湿した吸水性樹脂製品については乾燥によってその含水率を一定の含水率(180℃で3時間乾燥の場合の含水率で規定され、好ましくは1〜8質量%、より好ましくは3〜6質量%)にしてから測定することが好ましい。
【0078】
本発明にかかる吸水性樹脂製品は、分析点数n=3で測定した無加圧下吸収倍率の平均値が25g/g以上であるが、かかる平均値は、好ましくは28〜65g/gであり、より好ましくは30〜60g/gであり、さらに好ましくは32〜58g/g、さらにより好ましくは34〜56g/g、特に好ましくは36〜54g/gの範囲である。
本発明にかかる吸水性樹脂製品は、分析点数n=3で測定した無加圧下吸収倍率の標準偏差が0〜0.50であるが、かかる標準偏差は、好ましくは0〜0.40、より好ましくは0〜0.30、さらに好ましくは0〜0.20、特に好ましくは0〜0.10である。
【0079】
本発明にかかる吸水性樹脂製品は、分析点数n=3で測定した1.9kPaまたは4.9kPaでの加圧下吸収倍率の平均値が20g/g以上であるが、かかる平均値は、好ましくは23g/g以上であり、より好ましくは25g/g以上、特に好ましくは27g/g以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは50g/g以下である。
本発明にかかる吸水性樹脂製品は、分析点数n=3で測定した1.9kPaまたは4.9kPaでの加圧下吸収倍率の標準偏差が0〜0.35であるが、かかる標準偏差は、好ましくは0〜0.30、より好ましくは0〜0.20、さらに好ましくは0〜0.10である。
【0080】
本発明にかかる吸水性樹脂製品は、分析点数n=3で測定した150μm未満の微粉量の平均値が5.0質量%未満であるが、かかる平均値は、好ましくは3.0質量%未満であり、より好ましくは1.0質量%未満である。
本発明にかかる吸水性樹脂製品は、分析点数n=3で測定した150μm未満の微粉量の標準偏差が0〜0.50であるが、好ましくは0〜0.40、より好ましくは0〜0.30、さらに好ましくは0〜0.20、特に好ましくは0〜0.10である。
本発明にかかる吸水性樹脂製品は、好ましくは、分析点数n=3で測定した通液性の平均値が240秒以下であり、より好ましくは1〜180秒であり、さらに好ましくは2〜120秒、特に好ましくは3〜60秒である。また、好ましくは、分析点数n=3で測定した通液性の標準偏差が0〜10であり、より好ましくは0〜5、さらに好ましくは0〜3である。
【0081】
本発明にかかる吸水性樹脂製品は、好ましくは、前記のpH、かさ比重、質量平均粒子径、残存モノマーを有し、これらの諸物性において分析点数n=3で測定したpHの標準偏差が好ましくは0〜0.01であり、分析点数n=3で測定したかさ比重の標準偏差が好ましくは0〜0.01であり、分析点数n=3で測定した質量平均粒子径の標準偏差が好ましくは0〜20、より好ましくは0〜10であり、分析点数n=3で測定した残存モノマーの標準偏差が好ましくは0〜20、より好ましくは0〜10である。
本発明において、標準偏差は、分析点数nにおける各種物性値のばらつきを表し、標準偏差が上記範囲となることによって、安定した品質の吸水性樹脂製品となる。分析点数nの数は、好ましくは前記範囲である。
【0082】
CRC、AAP、通液性、粒度などの標準偏差は下記式(1)で規定され、例えば、市販の計算ソフト(例えば、マイクロソフト社のエクセルのSTDEV)などでも計算できる。
標準偏差=分析点数nにおける諸物性の標準偏差 (1)
また、本発明によれば、吸水性樹脂製品の他の物性も同様に制御可能である。例えば、850μm以上の粗大粒子の含有量は標準偏差で好ましくは0〜1.00、より好ましくは0〜0.50、さらに好ましくは0〜0.20の範囲に制御可能である。また、添加剤の含有量や、残存モノマー、着色、pH、水可溶分など諸物性も安定的に制御できる。
【0083】
本発明においては好ましい実施形態の一つとして、表面改質工程において、従来は物性の制御が困難であった脱水反応性架橋剤を用い、より好ましくは脱水エステル化を行い、さらに好ましくは、多価アルコールを用いる。すなわち、本発明は、好ましくは、かかる表面架橋剤で吸水性樹脂製品に物性安定(上記の標準偏差)を与える新規な製造方法である。なお、吸水性樹脂製品の好ましい粒子径、水可溶分、残存モノマー、着色などは上記の範囲であり、重合工程での好ましい単量体はアクリル酸および/またはその塩を主成分とする。
〔吸水性樹脂製品の用途〕
本発明によれば、連続製造の際の品質にばらつきがなく安定した物性に優れた吸水性樹脂製品を簡便に製造することができる。異なる吸水性樹脂を混合することで、目的とする任意の物性の吸水性樹脂を得ることができる。本発明により得られる吸水性樹脂製品は、農園芸保水剤、工業用保水剤、吸湿剤、除湿剤、建材などで広く用いられるが、特に好ましくは、紙おむつ、生理用ナプキンなどに代表される、糞、尿ないし血液の吸収用衛生材料に用いられる。
【0084】
すなわち、本発明により得られる吸水性樹脂製品は各種物性がバランスよく優れ安定しているため、吸収用衛生材料としては、吸水性樹脂の濃度(吸水性樹脂および繊維基材の合計に対する吸水性樹脂の質量比(重量比))が高濃度、好ましくは30〜100質量%、より好ましくは40〜100質量%の範囲、さらに好ましくは50〜95質量%で使用可能である。また、衛生材料中の吸水体(吸収コア)の構造は、一般の吸水性物品に用いられる構造であれば特に制限はなく、例えば、シート状に成形した親水性繊維材料の間に吸水性樹脂を配する、いわゆるサンドイッチ構造の吸水体や、親水性繊維材料と吸水性樹脂を混合したものを成形した、いわゆるブレンド構造の吸水体が挙げられる。
【実施例】
【0085】
以下に、実施例と比較例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下では、便宜上、「質量部」を単に「部」と記すことがある。また、「質量%」を単に「%」と記すことがある。
(1)CRCによる無加圧下吸収倍率
欧州特許1153656号に準じて以下に測定した。すなわち、吸水性樹脂0.200gを不織布製の袋(60mm×60mm)に均一に入れ、室温で0.9質量%生理食塩水中に浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機を用いて250Gで3分間水切りを行った後、袋の質量W1(g)を測定した。また、同様の操作を吸水性樹脂を用いずに行い、その時の質量W0(g)を測定した。そして、これらW1、W0から次式に従って、CRCによる無加圧下吸収倍率(g/g)を算出した。
【0086】
CRCによる無加圧下吸収倍率(g/g)=(W1(g)−W0(g))/吸水性樹脂の質量(g)
(2)AAPによる加圧下吸収倍率
米国特許5140076号に準じて以下に測定した。すなわち、内径60mmのプラスチックの支持円筒の底に、ステンレス製金網(目の大きさ38μm)を融着させ、該網上に吸水性樹脂0.900gを均一に散布した。その上に、吸水性樹脂に対して4.9kPaの荷重を均一に加えることができるよう調整された、外径が60mmよりわずかに小さく支持円筒の内壁面との間に隙間が生じず、かつ上下の動きが妨げられないピストンと荷重とをこの順に載置し、この測定装置一式の質量Wa(g)を測定した。直径150mmのペトリ皿の内側に直径90mmのガラスフィルターを置き、0.90質量%生理食塩水(25℃)をガラスフィルターと同じレベルになるように加えた。その上に、直径90mmの濾紙を載せ、表面が全て濡れるようにし、かつ過剰の液を除いた。上記測定装置一式を前記湿った濾紙上に載せ、液を荷重下で吸収させた。1時間後、測定装置一式を持ち上げ、その質量Wb(g)を測定した。そして、Wa、Wbから、次式に従ってAAPによる加圧下吸収倍率(g/g)を算出した。
【0087】
AAPによる加圧下吸収倍率(g/g)
=(Wa(g)−Wb(g))/吸水性樹脂の質量((0.9)g)
(3)水可溶性分(可溶分とも略すことがある)
吸水性樹脂500mgを1000mlの室温の脱イオン水に分散し、40mmのマグネテックスターラーで16時間攪拌後、濾紙(TOYO、No.6)で膨潤ゲルを分離し、ろ過した。次いで、吸水性樹脂から溶出した濾液中の水溶性ポリマーをコロイド滴定することで、吸水性樹脂中の水可溶性分の質量%(対吸水性樹脂)を求めた。
(4)残存モノマー
上記(3)において、別途、調製した2時間攪拌後の濾液を液体クロマトクラフィーでUV分析することで、吸水性樹脂の残存モノマー量(ppm/対吸水性樹脂)も分析した。
【0088】
(5)粒度および質量平均粒子径
連続測定する際、吸水性樹脂の粒度分布は赤外線半導体レーザー(波長690nm、AC100V)を用いて吸水性樹脂粉末の自由落下型乾式測定を行なった。
また、別法として吸水性樹脂10.0gを室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で、目開き850μm、600μm、500μm、300μm、150μmのJIS標準ふるい(THE IIDA TESTING SIEVE:径8cm)に仕込み、振動分級器(IIDA SIEVE SHAKER、TYPE:ES−65型、SER.No.0501)により、10分間分級を行った。残留百分率Rを対数確率紙にプロットし、これにより、質量平均粒子径(D50)を読み取った。
【0089】
(6)吸水性樹脂の着色評価(ハンター白度)
欧州特許942014号および同1108745号に準じた。すなわち、吸水性樹脂粉末の着色評価は、日本電色工業株式会社製の分光式色差計SZ−Σ80 COLOR MEASURING SYSTEMを用いた。設定条件(反射測定/付属の粉末・ペースト試料台(内径30mm)/標準として粉末・ペースト用標準丸白板No.2/30mmΦ投光パイプ)で、備え付けの試料台に約6gの吸水性樹脂を充填し(備え付け試料台の約6割程度の充填)、室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で上記分光式色差計にて表面色(ハンター白度(WB)およびYI(Yellow Index))を測定した。なお、WBは大きいほど、YIは小さいほど、低着色で実質白色に近づくことを示す。
【0090】
(7)pH
米国特許6444744号に準じて、100gの生理食塩水中での100mgの吸水性樹脂の分散液(23±2℃)のpHを測定した。
(8)加圧下通液性(通液速度)
米国特許5985944号に従い、吸水性樹脂0.5gを用いて荷重24.5g/cm2での生理食塩水(約25ml)に対する通液性を測定した。なお、加圧下通液性が高いほど、通液速度(秒)は短くなって好ましい。
(9)レーザー回析散乱法における体積−質量の換算
後述の製造例1において得られた表面架橋された吸水性樹脂粉末(1)の粒度分布を、バッチごとにレーザー回析散乱法を用いて体積で測定するとともに、別途、100点の粒度分布を篩分級によって質量で測定して、両者(体積−質量)の換算式を得た。得られた換算式を用いて、レーザー回析散乱法で測定された体積粒度を質量粒度(篩粒度)に換算した。
【0091】
〔製造例1〕
定量ポンプ、ベルト重合機、ゲル粉砕機、ベルト乾燥機、粉末粉砕機、分級機、加湿機(表面架橋剤の混合機)、加熱処理機からなる装置を搬送機で連結することで、図1のフロー図で示したように、重合工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、表面改質工程、輸送工程、および貯蔵工程を含む吸水性樹脂製品の連続製造方法により、吸水性樹脂製品を連続的に製造した。その生産量は300Kg/hrであった。詳細は以下の通りである。
(重合工程)
濃度41質量%で酸基の71モル%が中和されたアクリル酸ナトリウム水溶液で、且つ内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数n=9)を0.05モル%(対単量体)含むものを単量体(1)として準備した。該単量体(1)を20℃に保ち窒素で連続脱気後、過硫酸ナトリウムを0.12g/単量体モル、L−アスコルビン酸を0.005g/単量体モル、それぞれ水溶液で連続混合したのち瞬時に、定量ポンプで窒素シールされたエンドレスベルト上に厚み20mmとなるように連続フィードした。重合は約1分で開始し、約20分で移動ベルトの末端から含水ゲル状架橋重合体(1)を連続排出した。
【0092】
(乾燥工程)
次いで、該架橋重合体(1)を連結されたミートチョッパーで約1mmの粒子状に連続粗砕した後、これをバンド乾燥機の多孔板上に厚み3〜5cmで載せ、露点60℃で温度170℃の熱風を上下に通気させて30分間連続熱風乾燥したところ、乾燥機出口でブロック状の乾燥重合体(1)が得られた。
(粉砕工程および分級工程)
この乾燥重合体(1)を取り出したと同時に解砕し、得られた粒子状乾燥物を300kg/hrで3段ロールグラニュレーター(ロールギャップが上から1.0mm/0.55mm/0.42mm)に連続供給することで粉砕した。得られた約60℃の粒子状吸水性樹脂の粉末をJIS850μm標準篩で連続分級し、90質量%以上が850μm未満で150μm以上のサイズの吸水性樹脂ベースポリマー(1)を得た。
【0093】
(表面改質工程)
さらに、吸水性樹脂ベースポリマー(1)を、高速連続混合機(タービュライザー/1000rpm)に連続供給して、1,4−ブタンジオール/プロピレングリコール/水/24%水酸化ナトリウム水溶液=0.39/0.62/3.39/0.3(質量%/対ベースポリマー)からなる表面架橋剤水溶液を、平均約200μmの液滴になるスプレーで噴霧し混合した。次いで、得られた混合物(1)を195℃で40分間、パドルドライヤーにより連続的に加熱処理し、さらに、網目開き850μmのふるい網を有する篩い分け装置で分級(第2の分級工程)した後に貯蔵することで、表面架橋された吸水性樹脂粉末(1)を得た。
【0094】
〔製造例2〕
製造例1の重合工程において単量体(1)に代えて、濃度38質量%で酸基の75モル%が中和されたアクリル酸ナトリウム水溶液で、且つ内部架橋剤としてトリメチロールプロパントリアクリレートを0.02モル%(対単量体)含むものを単量体(2)として用いることで、含水ゲル状架橋重合体(2)を得て、以下、同様に乾燥、粉砕および分級することで吸水性樹脂ベースポリマー(2)を得た。
吸水性樹脂ベースポリマー(2)に対して、高速連続混合機(タービュライザー/1000rpm)で連続供給して、エチレンングリコールジグリシジルエーテル/プロピレングリコール/水/イソプロパノール=0.1/0.9/3.0/0.5(質量%/対ベースポリマー)からなる表面架橋剤水溶液を、平均約200μmの液滴になるスプレーで噴霧し混合した。次いで、得られた混合物(2)を195℃で40分間、パドルドライヤーにより連続的に加熱処理し、さらに、網目開き850μmのふるい網を有する篩い分け装置で分級(第2の分級工程)した後に貯蔵することで、表面架橋された吸水性樹脂粉末(2)を得た。
【0095】
〔製造例3〕
製造例2の連続製造において以下の条件変更を行い、吸水性樹脂粉末(3)を得た。
すなわち、吸水性樹脂ベースポリマー(2)に混合する表面架橋剤水溶液を、プロピレングリコール/水/イソプロパノール=0.5/2.0/0.5(質量%/対ベースポリマー)に変更し、得られた混合物(3)を210℃で30分加熱処理した。さらに同様に分級および貯蔵することで、表面架橋された吸水性樹脂粉末(3)を得た。
〔比較例1〕
製造例1において、上記工程を24時間運転で2週間連続で行い、1tごと(約3.3時間ごと)に吸水性樹脂の物性を測定し、そのLotごとの物性値の平均値と標準偏差を求めた(分析点数n:約100)。結果を表1に示した。
【0096】
〔比較例2〕
製造例2において、上記工程を24時間運転で2週間連続で行い、1tごと(約3.3時間ごと)に吸水性樹脂の物性を測定し、そのLotごとの物性値の平均値と標準偏差を求めた(分析点数n:約100)。結果を表1に示した。
〔実施例1〕
比較例1で得られた吸水性樹脂のLotでAAP値の上位および下位10%のみをバッチ式で分離して、分離された上位および下位10%の吸水性樹脂を表面架橋後で第2の分級工程前の吸水性樹脂に20%づつ乾式混合したのち、そのLotごとの物性値の平均値と標準偏差を求めた。結果を表1に示した。
【0097】
〔実施例2〕
比較例1で得られた吸水性樹脂のLotでAAP値の下位10%のみをバッチ式で分離して、分離された下位10%の吸水性樹脂を表面架橋後で第2の分級工程前の吸水性樹脂に10%づつ乾式混合したのち、そのLotごとの物性値の平均値と標準偏差を求めた。結果を表1に示した。
〔実施例3〕
比較例2で吸水性樹脂の粒度を最終貯蔵工程前のラインから自由落下する吸水性樹脂の粒度分布を赤外線半導体レーザー(波長690nm)で連続乾式測定して、微粉量が2質量%を超える場合、自動的に2又に分離する第2ラインに分離した。こうして分離された吸水性樹脂を表面架橋後で第2の分級工程前の吸水性樹脂に乾式混合したのち、そのLotごとの物性値の平均値と標準偏差を求めた。結果を表1に示した。
【0098】
〔実施例4〕
比較例2で得られた吸水性樹脂のLotで加圧下通液性の下位1%のみをバッチ式で分離して、分離された下位1%の吸水性樹脂を表面架橋後で第2の分級工程前の吸水性樹脂に1%づつ乾式混合したのち、そのLotごとの物性値の平均値と標準偏差を求めた。結果を表1に示した。
〔比較例3〕
製造例3において、上記工程を24時間運転で2週間連続で行い、1tごと(約3.3時間ごと)に吸水性樹脂の物性を測定し、そのLotごとの物性値の平均値と標準偏差を求めた(分析点数n:約100)。結果を表1に示した。
【0099】
〔実施例5〕
比較例3で得られた吸水性樹脂のLotで加圧下通液性の下位1%のみをバッチ式で分離して、分離された下位1%の吸水性樹脂を表面架橋後で第2の分級工程前の吸水性樹脂に1%づつ乾式混合したのち、そのLotごとの物性値の平均値と標準偏差を求めた。結果を表1に示した。
〔実施例6〕
比較例3で得られた吸水性樹脂のLotでCRC値の下位2%のみをバッチ式で分離して、分離された下位2%の吸水性樹脂を表面架橋後で第2の分級工程前の吸水性樹脂に1%づつ乾式混合したのち、そのLotごとの物性値の平均値と標準偏差を求めた。結果を表1に示した。
【0100】
【表1】
【0101】
実施例1〜6および比較例1〜3の結果を表1に示すが、本発明の方法では諸物性の標準偏差(s)が非常に小さい。従来のように物性制御のために生産性(コスト)を犠牲にしなくとも、本発明では巨大なスケールでの連続製造や多品種生産でも物性を非常に安定化できる。また本発明によれば、生産性がむしろ向上する場合もある。また、本発明で得られる吸水性樹脂製品を用いた衛生材料(おむつなどの吸収物品)の吸水特性も非常に安定化できる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明によれば、連続製造の際の品質にばらつきがなく安定した物性に優れた吸水性樹脂製品を簡便に製造することができ、本発明により得られる吸水性樹脂製品は、農園芸保水剤、工業用保水剤、吸湿剤、除湿剤、建材などで広く用いられ、特に好ましくは、紙おむつ、生理用ナプキンなどに代表される、糞、尿ないし血液の吸収用衛生材料に用いられる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高物性の吸水性樹脂製品の連続製造方法に関し、高物性の吸水性樹脂製品を安定した一定の品質で簡便に安価に得る連続製造方法に関する。また、高物性かつ品質の安定した吸水性樹脂製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙おむつや生理用ナプキン、いわゆる失禁パットなどの衛生材料には、その構成材として、体液を吸水させることを目的とした吸水性樹脂が幅広く使用されている。吸水性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、澱粉−アクリル酸グラフト重合体の加水分解物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ケン化物、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、及びカチオン性モノマーの架橋重合体等が知られている。
このような吸水性樹脂は、体液などの水性液体に接した際に優れた吸液量や吸水速度、ゲル強度、ゲル通液性、水性液体を含んだ基材から水を吸い上げる吸引力などに優れた物性を備えることが要求されている。さらに、近年は、非常に粒度分布が狭い吸水性樹脂粉末や、吸収倍率が高く水可溶分が少ない吸水性樹脂粉末が求められ、加圧下吸収倍率や加圧下通液性などが高いことが必須に求められるようになっている。
【0003】
これら吸水性樹脂の諸物性を規定した多くのパラメーターや測定法が下記特許文献などに開示されている。
例えば、ゲル強度、可溶分、吸水倍率に優れた吸水性樹脂が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、無加圧下通液性、吸水速度、吸水倍率に優れた吸水性樹脂が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。さらに、特定の粒度分布を規定した技術も提案されている(例えば、特許文献3参照。この他に、米国特許5051259号、米国特許5419956号、欧州特許629441号など。)。
また、各種荷重での加圧下吸水倍率に優れた吸水性樹脂やその測定法も多く提案され、加圧下吸水倍率単独ないし他の物性との組み合わせた吸水性樹脂が提案されている(例えば、特許文献4参照。この他に、欧州特許0707603号,欧州特許0712659号,欧州特許1029886号、米国特許5462972号、米国特許5453323号、米国特許5797893号、米国特許6127454号、米国特許6184433号、米国再発行特許Re37021号など。)。
【0004】
また、耐衝撃性に優れた吸水性樹脂が提案されている(例えば、特許文献5参照。この他に、米国特許5140076号など。)。さらに、粉塵量を規定した吸水性樹脂が提案され(例えば、特許文献6参照。)、着色の少ない吸水性樹脂が提案されている(例えば、特許文献7参照)。耐尿性についてL−アスコルビン酸水溶液などへのゲル耐久性や吸水能に優れた吸水性樹脂が提案され(例えば、特許文献8参照。この他に、欧州特許0940148号など。)、通気性に優れた吸水性樹脂が提案されている(例えば、特許文献9参照。)。また、残存モノマーの少ない吸水性樹脂が提案されている(例えば、特許文献10参照。)。
【0005】
さらに特定の物性を持った吸水性樹脂が特定物性や構成ないしポリマー濃度の吸水性物品(おむつ)に好適であることが提案されている(例えば、特許文献11参照。この他に、米国特許5147343号、米国特許5149335号、欧州特許532002号、米国特許5601452号、米国特許5562646号、米国特許5669894号、国際公開WO02/053198号など。)。
近年、吸水性樹脂の製造量が増加するにつれて、重合や表面処理など、その製造の各工程が連続化されている(例えば、特許文献12参照。)。吸水性樹脂を連続生産する場合、すべてが同じ高物性を有することが望まれるが、実際には、連続的に製造される吸水性樹脂のロット間などで物性のばらつきが生じることがあり、目的物性を大きく超えたり下回ったりする吸水性樹脂が混入する(例えば、特許文献13、14参照)。そして、高物性が求められるほど、製造工程が長く連続化されるほど、製造スケールが大きくなるほど、各工程での物性の僅かなばらつきが最終の吸水性樹脂製品の物性に大きなばらつきを与える。また、後述の表面架橋、特に脱水エステル化によっても、最終の吸水性樹脂製品における物性のばらつきに影響を与える。そして、かかる物性のばらつきを抑えようとすると、従来は、生産性の低下を伴うことが多かった。さらに、ユーザーの要求に応じた多品種の吸水性樹脂が求められ、その結果、品番(タイプ)変更時には物性の安定に長時間かかるという問題や、製造工程が複雑になるという問題を有していた。
【0006】
近年、紙おむつに代表される、糞、尿ないし血液の吸収用衛生材料(別称;吸収性物品)では吸水性樹脂の濃度(使用量)が増加しており、かかる吸水性樹脂製品の物性の僅かなばらつきは、最終の吸水性物品に大きな影響を与えると言う問題を有した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国再発行特許発明第32649号明細書
【特許文献2】英国特許第2267094号明細書
【特許文献3】米国特許第6087002号明細書
【特許文献4】米国特許第6297335号明細書
【特許文献5】米国特許第6414214号明細書
【特許文献6】米国特許第5994440号明細書
【特許文献7】米国特許第6444744号明細書
【特許文献8】米国特許第6194531号明細書
【特許文献9】欧州特許第1153656号明細書
【特許文献10】欧州特許第0605215号明細書
【特許文献11】米国特許第6150582号明細書
【特許文献12】欧州特許第0937739号明細書
【特許文献13】国際公開第2002/10451号パンフレット
【特許文献14】特開平11−349625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の解決しようとする課題は、高物性の吸水性樹脂製品を安定した一定の品質で簡便に安価に連続製造できる、品質の安定した吸水性樹脂製品の連続製造方法を提供することである。また、高物性かつ品質の安定した吸水性樹脂製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂について、所定物性および/または所定成分量、例えば、無加圧下吸収倍率、加圧下吸収倍率、通液性、粒度などを測定し、所定物性および/または所定成分量が一定以上および/または一定以下の値を示す吸水性樹脂を分離して、同一の製造ラインまたは別の製造ラインにおいて分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂と混合することにより最終製品とすれば良いことを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明にかかる吸水性樹脂製品の連続製造方法は、分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂について、所定物性および/または所定成分量を測定する工程(A)と、前記測定結果に従い、所定物性および/または所定成分量が一定以上および/または一定以下の値を示す吸水性樹脂(a)を、連続的に生産されてくる吸水性樹脂から所定量分離する工程(B)と、前記分離した所定量の吸水性樹脂(a)の少なくとも一部を、同一の製造ラインまたは別の製造ラインにおいて分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂と混合する工程(C)とを含む。
【0010】
また、本発明にかかる吸水性樹脂製品の連続製造方法は、分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂について所定物性および/または所定成分量を測定する工程(A)を含み、且つ、前記測定結果に従い、製造条件を変更する。
さらに、本発明にかかる吸水性樹脂製品の連続製造方法は、分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂の粒度を測定する工程を含み、吸水性樹脂製品を連続的に製造する方法において、前記吸水性樹脂の粒度をレーザー回析散乱法で測定することを特徴とする。
本発明にかかる吸水性樹脂製品は、アクリル酸および/またはその塩を含む単量体を架橋重合した後、脱水反応性架橋剤を用いて表面架橋することによって得られる吸水性樹脂製品であって、(1)質量平均粒子径が300〜600μm、(2)残存モノマー量が500ppm以下、(3)分析点数n=3で測定した無加圧下吸収倍率の平均値が25g/g以上、標準偏差が0〜0.50、(4)分析点数n=3で測定した1.9kPaまたは4.9kPaでの加圧下吸収倍率の平均値が20g/g以上、標準偏差が0〜0.35、(5)分析点数n=3で測定した150μm未満の微粉量の平均値が5.0質量%未満、標準偏差が0〜0.50、であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、高物性の吸水性樹脂製品を安定した一定の品質で簡便に安価に連続製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の製造方法の実施形態の一例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
〔吸水性樹脂製品の連続的製造〕
本発明にかかる吸水性樹脂製品の製造方法は、重合工程で得られた含水ゲル状架橋重合体を乾燥工程で乾燥した後、必要に応じて粉砕工程にて粉砕を行い、その後に、分級工程および/または表面改質工程を経て、連続的に吸水性樹脂製品を製造する方法である。また、必要に応じて、輸送工程や貯蔵工程を含む。
【0014】
なお、本発明で「連続的に製造」とはすべての工程が連続工程である必要はなく、重合や表面処理などバッチ工程が含まれても実質的にそれらが連結され一連の連続フローであれば、連続的に製造とする。本発明でバッチ工程を含む場合、必要により、これらの連結のために中間に貯蔵ホッパーなどを適宜設ければよい。
本発明にかかる吸水性樹脂製品の連続製造方法は、工業的生産でプラント規模の吸水性樹脂製品の連続生産に好適に使用され、好ましくは、吸水性樹脂製品の生産量が1ラインで5t(metric ton)/日以上、さらに好ましくは10t/日以上、特に好ましくは20t/日以上という、巨大規模の連続生産に適用されることが好ましい。また、生産量の上限は特に制限はないが、通常、1000t/日以下が好ましく、500t/日以下がより好ましい。なお、以下、特に断りのない限り、重量ないし質量でtはmetric tonを意味し、重量と質量とは同義とする。
【0015】
(重合工程)
本発明において、吸水性樹脂とは水膨潤性かつ実質水不溶性の架橋重合体で、アニオン性、ノニオン性、またはカチオン性の実質水不溶性ヒドロゲルを形成する従来公知の水膨潤性架橋重合体のことである。本発明で「水膨潤性」とはイオン交換水中において必須に自重の5倍以上、好ましくは50倍から1000倍という多量の水を吸収することを指す。また、本発明で「実質水不溶性」とは吸水性樹脂中の水可溶性成分(水溶性高分子)が0〜50質量%、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下のことを指す。
【0016】
本発明において、吸水性樹脂は1種または混合物で用いられるが、これらの中でも、酸基含有の吸水性樹脂が好ましく、カルボン酸またはその塩であるカルボキシル基含有の吸水性樹脂の1種またはその混合物がさらに好ましい。典型的には、アクリル酸および/またはその塩(中和物)を主成分とする単量体を架橋重合することにより得られる架橋重合体、例えば、必要によりグラフト成分を含むポリアクリル酸塩架橋重合体を主成分とすることが好ましい。
本発明において、吸水性樹脂は、その構成単位としてアクリル酸0〜50モル%およびアクリル酸塩100〜50モル%(但し、両者の合計量は100モル%以下とする)の範囲にあるものが好ましく、アクリル酸10〜40モル%およびアクリル酸塩90〜60モル%(但し、両者の合計量は100モル%以下とする)の範囲にあるものがより好ましい。なお、この酸と塩とのモル比(酸と塩の合計モル量に対する塩の割合)を中和率と呼ぶ。
【0017】
上記塩を形成させるための吸水性樹脂の中和は重合前に単量体の状態で行っても良いし、あるいは重合途中や重合後に重合体の状態で行っても良いし、それらを併用してもよい。中和の塩としては、(ポリ)アクリル酸のナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩及びアミン塩等を例示することができる。
また、本発明で用いることができるアクリル酸は、物性の安定化、残存モノマーの低減、重合促進や低着色の面から、p−メトキシフェノール(別称、ヒドロキノンモノメチルエーテル)を含有することが好ましい。その含有量はアクリル酸に対して200質量ppm以下が好ましく、より好ましくは10〜160質量ppm、さらに好ましくは20〜140質量ppm、さらに好ましくは30〜120質量ppm、さらに好ましくは40〜100質量ppm、さらに好ましくは50〜90質量ppmである。また、本発明で用いることができるアクリル酸中のプロトアネモニンおよび/またはフルフラールの含有量は0〜20質量ppmであることが好ましく、さらに好ましくは0〜10質量ppm、特に好ましくは0〜5質量ppmである。
【0018】
本発明における吸水性樹脂を得るための単量体は実質アクリル酸(塩)のみでもよいし、上記アクリル酸(塩)以外の不飽和単量体を用いて吸水性樹脂を得てもよいし、また、他の不飽和単量体をアクリル酸(塩)と併用して吸水性樹脂を得てもよい。アクリル酸(塩)以外の単量体としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、メタクリル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸等のアニオン性不飽和単量体およびその塩;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン、N−ビニルアセトアミド等のノニオン性の親水基含有不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、およびこれらの四級塩等のカチオン性不飽和単量体等が挙げられる。これら単量体は、単独で用いてもよく、適宜2種類以上を混合して用いてもよい。
【0019】
本発明においては、物性面から、主成分として用いるアクリル酸およびその塩を用いて、さらに必要により、全単量体中において通常好ましくは0〜30モル%、より好ましくは0〜10モル%でその他の単量体を併用すればよい。
本発明における吸水性樹脂を得るために上述の単量体を重合するに際しては、バルク重合や沈殿重合を行うことが可能であるが、性能面や重合の制御の容易さ、さらに膨潤ゲルの吸収特性の観点から、上記単量体を水溶液とすることによる水溶液重合や逆相懸濁重合を行うことが好ましく、連続重合に適した水溶液重合を行うことがより好ましい。なお、上記単量体を水溶液とする場合の該水溶液(以下、単量体水溶液と称する)中の単量体の濃度は、水溶液の温度や単量体の種類によって決まり、特に限定されるものではないが、10〜70質量%の範囲内が好ましく、20〜60質量%の範囲内がさらに好ましい。また、上記水溶液重合を行う際には、水以外の溶媒を必要に応じて併用してもよく、併用して用いられる溶媒の種類は、特に限定されるものではない。
【0020】
水溶液重合の方法としては特に限定されないが、例えば、一軸型または多軸型(好ましくは双腕型)などのニーダー中で単量体水溶液を、得られる含水ゲル状架橋重合体を砕きながら重合する方法(ニーダー重合)や、所定の容器中や駆動するベルト上に単量体水溶液を供給して重合し(ベルト重合)、得られたゲルをミートチョッパー等で粉砕する方法等が挙げられる。本発明の効果を最も発揮する上で、かかるニーダー重合およびベルト重合が好ましく適用でき、特にこれらの連続重合が最も好適に使用される。
上記の重合を開始させる際には、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤や、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシル フェニル ケトン等の光重合開始剤を用いることができる。さらに、これら重合開始剤の分解を促進する還元剤を併用し、両者を組み合わせることによりレドックス系開始剤としてもよい。上記の還元剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の(重)亜硫酸(塩)、L−アスコルビン酸(塩)、第一鉄塩等の還元性金属(塩)、アミン類等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら重合開始剤の使用量は、残存モノマーや吸水特性などの物性面から、好ましくは0.001〜2モル%(対単量体)、より好ましくは0.01〜0.1モル%(対単量体)である。
【0021】
また、反応系に放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより重合反応の開始を行ってもよいし、さらに、上記重合開始剤を併用してもよい。なお、上記重合反応における反応温度は、特に限定されるものではないが、重合反応の最低温度から最高温度(ピーク温度)までの温度範囲が15〜130℃の範囲内にあることが好ましく、20〜120℃の範囲内にあることがより好ましい。また、反応時間や重合圧力も特に限定されるものではなく、単量体や重合開始剤の種類、反応温度等に応じて適宜設定すればよい。
本発明における吸水性樹脂は、その内部に架橋構造を有する(いわゆる内部架橋)。
【0022】
前記内部架橋は、架橋剤を使用しないで形成させたもの(自己架橋型)であってもよいが、一分子中に2個以上の重合性不飽和基や2個以上の反応性基を有する架橋剤(内部架橋剤)を共重合又は反応させて形成させたものがさらに好ましい。
これら内部架橋剤の具体例としては、例えば、N,N´−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる
これら内部架橋剤は、単独で用いてもよく、適宜2種類以上を混合して用いてもよい。また、これら内部架橋剤は、反応系に一括添加してもよく、分割添加してもよい。少なくとも1種または2種類以上の内部架橋剤を使用する場合には、最終的に得られる吸水性樹脂製品の吸収特性等を考慮して、2個以上の重合性不飽和基を有する化合物を重合時に必須に用いることが好ましい。
【0023】
これら内部架橋剤の使用量は、物性面から前記単量体(架橋剤を除く)に対して、好ましくは0.001〜2モル%、より好ましくは0.005〜0.5モル%、さらに好ましくは0.01〜0.2モル%、特に好ましくは0.03〜0.15モル%の範囲内とされる。
上記内部架橋剤を用いて架橋構造を吸水性樹脂内部に導入する場合には、上記内部架橋剤を、上記単量体の重合前あるいは重合途中、あるいは重合後、または中和後に反応系に添加するようにすればよい。
なお、上記重合に際しては、反応系に、0〜50質量%(対単量体)の、澱粉・セルロース、澱粉・セルロースの誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子や、その他、0〜10質量%(対単量体)の、炭酸(水素)塩、二酸化炭素、アゾ化合物、不活性有機溶媒等の各種発泡剤;各種界面活性剤;キレート剤;次亜燐酸(塩)等の連鎖移動剤などを添加してもよい。
【0024】
本発明においては、吸水性樹脂は逆相懸濁重合または水溶液重合で製造することが好ましく、特に水溶液重合で製造することが好ましい。なお、逆相懸濁重合とは、単量体水溶液を疎水性有機溶媒に懸濁させる重合法であり、例えば、米国特許4093776号、同4367323号、同4446261号、同4683274号、同5244735号などの米国特許に記載されている。水溶液重合は分散溶媒を用いずに単量体水溶液を重合する方法であり、例えば、米国特許4625001号、同4873299号、同4286082号、同4973632号、同4985518号、同5124416号、同5250640号、同5264495号、同5145906号、同5380808号などの米国特許や、欧州特許0811636号、同0955086号,同0922717号などの欧州特許、WO01/16197号などの国際公開に記載されている。また、従来技術の説明で用いた前述の特許文献等に記載の重合条件も、本発明に好適に適用できる。
【0025】
(乾燥工程)
上記重合工程において得られた含水ゲル状架橋重合体は、乾燥工程により、目的とする含水率を有する吸水性樹脂とする。着色低減や残存モノマー低減の面から、乾燥は重合終了後(重合機から排出後)、好ましくは2時間以内、より好ましくは1時間以内、さらに好ましくは0.5時間以内、特に好ましくは0.2時間以内に開始(乾燥機に投入)される。
乾燥は通常60〜250℃、好ましくは100℃〜220℃、さらに好ましくは120〜200℃の温度範囲で行われる。乾燥時間は重合体の表面積、含水率、乾燥機の種類などに依存し、目的とする含水率になるよう選択されるが、残存モノマー低減などの物性面から、好ましくは水蒸気を含有し且つ露点50〜100℃の熱風、さらに好ましくは水蒸気を含有し且つ露点60〜90℃の熱風にて、好ましくは0.1〜5時間で熱風乾燥を行う。
【0026】
本発明における吸水性樹脂の含水率(吸水性樹脂中に含まれる水分量で規定/180℃で3時間の乾燥減量で測定)は特に限定されないが、得られる吸水性樹脂製品の物性面から、室温でも流動性を示す粉末であることが好ましく、より好ましくは0.2〜30質量%、さらに好ましくは0.3〜15質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%の粉末状態である。
(粉砕工程)
本発明にかかる製造方法は、重合工程により得られた含水ゲル状架橋重合体を上記乾燥工程において乾燥した後、必要に応じて、粉砕機で粉砕して粒子状吸水性樹脂にする粉砕工程を含んでもよい。特に、重合工程において水溶液重合を行う場合には、粉砕工程を含むことが好ましい。
【0027】
この粉砕工程で用いられる粉砕機としては、たとえば、ローラーミル、ナイフミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等であり、粉砕機自体の内壁面を加熱する手段を備えていてもよい。
粉砕を行うことなしに得られるゲル状物や粉砕を行うことなしに得られるゲル状物を乾燥したもの、すなわち、質量平均粒径が1000μmを超えるようなものも使用できる場合があるが、重合工程において水溶液重合を行う場合には、一般には粉砕工程によって粉末状とすることが好ましい。
このようにして得られた吸水性樹脂の粒子形状は、球状、破砕状、不定形状等特に限定されるものではないが、粉砕工程を経て得られた不定形破砕状のものが好ましく使用できる。
【0028】
(分級工程)
本発明においては、好ましくは、さらに分級工程によって分級を行うことにより目的に応じた粉末粒径に調整される。分級工程は、好ましくは乾燥工程の後、より好ましくは粉砕工程の後に設けられる。また、表面改質工程を含む場合には、その前に設けられることが好ましく、表面改質工程の後にも第2の分級工程が設けられることがより好ましい。
本発明において得られる吸水性樹脂の粒径としては、分級後または最終製品として、質量平均粒子径が好ましくは200〜700μmの範囲、さらに好ましくは300〜600μmの範囲、特に好ましくは400〜500μmの範囲である。
【0029】
本発明において得られる吸水性樹脂は、分級後または最終製品として、850〜150μm(850μm標準篩を通過して且つ150μm標準篩の非通過物/標準篩はJISまたはその相当品)である吸水性樹脂粉末を95〜100質量%含むものが好ましい。本発明において得られる吸水性樹脂は、微粉末(例えば、好ましくは100μm未満、より好ましくは150μm未満)の割合が少ない方が好ましく、具体的には5.0質量%未満、さらには3.0質量%未満、特に1.0質量%未満である。また、本発明において得られる吸水性樹脂は、粗大粒子(例えば、好ましくは実質1000μm篩以上、より好ましくは850μm篩以上)の割合が少ない方が好ましく、具体的には5.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましい。
【0030】
(表面改質工程)
本発明においては、好ましくは、さらに表面改質工程によって表面改質を行う。
吸水性樹脂の表面改質としては、(i)表面架橋剤による表面架橋、(ii)水不溶性微粒子での表面被覆、(iii)界面活性剤での表面被覆、(iv)親水性ないし疎水性高分子での表面被覆、(v)抗菌剤ないし消臭剤での表面被覆、(vi)親水性ないし疎水性の有機化合物での表面被覆、などが挙げられ、これらの中の1種または2種以上が適用されるが、好ましくは、(i)の表面架橋剤による表面架橋、および/または、(ii)の水不溶性微粒子での表面被覆であり、最も好ましくは(i)と(ii)を併せて適用することである。
【0031】
物性面から考慮すると、表面改質剤(表面架橋剤や水不溶性微粒子など)の使用量は、吸水性樹脂100質量部(好ましくは、乾燥体である吸水性樹脂100質量部)に対して、好ましくは0.001〜10質量部の範囲、より好ましくは0.01〜8質量部の範囲、さらに好ましくは0.05〜5質量部、最も好ましくは0.1〜2質量部の範囲である。
表面架橋は、吸水性樹脂の表面近傍の架橋密度を粒子内部より高めて諸物性の改良を行う操作であり、内部架橋とは別途に、種々の表面架橋剤(内部架橋剤に対しては第2架橋剤となる)を吸水性樹脂に加えて表面ないし表面層のみ架橋する。
【0032】
表面架橋剤としては、特に限定されないが、カルボキシル基と反応する架橋剤、なかでも、脱水反応性架橋剤が好ましく用いられる。ここに、脱水反応性とは、吸水性樹脂の官能基(特に表面近傍の官能基)と架橋剤とが脱水反応すること、好ましくは脱水エステル化および/または脱水アミド化すること、さらに好ましくは脱水エステル化することである。脱水エステル化により表面架橋された吸水性樹脂は高物性であるが、連続生産での反応の制御が困難であった。この問題点を解消して物性の安定化を図るために、本発明が好適に適用される。
このような脱水反応性架橋剤としては、具体的には例えば、吸水性樹脂がカルボキシル基を含有する場合は、多価アルコールなどのヒドロキシル基含有の架橋剤;多価アミンなどのアミノ基含有の架橋剤;アルキレンカーボネートやモノ、ジまたはポリのオキサゾリジノン化合物、3−メチル−3−オキセタンメタノール等のオキセタン化合物などの環状架橋剤であって、その環状架橋剤の開環反応に伴ってヒドロキシル基やアミノ基を生成し該ヒドロキシル基やアミノ基が架橋反応を行う環状架橋剤;などが例示される。
【0033】
脱水反応性架橋剤をより一層具体的に述べると、例えば、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、グリセリン、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールなどの多価アルコール化合物;1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキソラン2−オンのアルキレンカーボネート化合物;3−メチル−3−オキセタンメタノール等のオキセタン化合物ならびに多価オキセタン化合物などであり、これらの中でも、本発明の効果を最大限に発揮するため、多価アルコール、アルキレンカーボネート、オキサゾリジノン化合物、(多価)オキセタン化合物から選ばれる脱水反応性架橋剤の1種以上が好ましく、多価アルコールを必須に用いることが特に好ましい。
【0034】
表面架橋剤としては、これら脱水反応性架橋剤のほかに、非脱水反応性架橋剤、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシ化合物;2,4−トリレンジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等の多価オキサゾリン化合物;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤;2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]などの多価アジリジン化合物;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、鉄、クロム、マンガン、チタン、ジルコニウムなどの多価金属;などが例示される。
【0035】
吸水性樹脂に表面架橋剤を混合する際には、水および/または親水性有機溶媒を用いてもよい。
水の使用量は吸水性樹脂100質量部(好ましくは、乾燥体である吸水性樹脂100質量部)に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜8質量部、さらに好ましくは1〜5質量部の範囲である。
親水性有機溶媒としては、例えば、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;アセトン等のケトン類;ジオキサン、アルコキシ(ポリ)エチレングリコール、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ε−カプロラクタムのアミド類;ジメチルスルホキサイド等のスルホキサイド類;などが挙げられ、その使用量は、吸水性樹脂100質量部に対して、0〜10質量部の範囲が好ましく、より好ましくは0〜5質量部の範囲、さらに好ましくは0〜3質量部の範囲である。
【0036】
表面架橋剤の混合方法は特に限定されるものではない。したがって、水や親水性有機溶媒、無機粉末などを、吸水性樹脂に対して別々に混合してもよいし、一括で混合してもよいし、数回に分けて混合してもよいが、好ましくは、これらの全てを予め混合した後に、この混合物を吸水性樹脂に添加し、その際、水溶液化しておくことがより好ましい。
混合に際し、本発明の効果を妨げない範囲、例えば0〜10質量部(対吸水性樹脂)の範囲で、水不溶性微粒子粉末や界面活性剤を共存させてもよい。
上記種々の混合方法の中では、表面架橋剤と必要により水および/または親水性有機溶媒とを吸水性樹脂に滴下混合する方法が好ましく、噴霧する方法がより好ましい。噴霧される液滴の大きさは、平均粒子径で0.1〜300μmが好ましく、平均粒子径で0.1〜200μmがより好ましい。この際の水溶液の温度は、混合性や安定性の面から、0℃〜沸点が好ましく、より好ましくは5〜50℃、さらに好ましくは10〜30℃である。混合前の吸水性樹脂粉末の温度は、混合性の面からみて、好ましくは0〜80℃、より好ましくは40〜70℃である。
【0037】
前記混合に用いられる好適な混合装置は、均一な混合を確実にするため大きな混合力を生み出せる装置である。このような混合装置としては、例えば、円筒型混合機、二重壁円錐型混合機、高速攪拌型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、流動型炉ロータリーディスク型混合機、気流型混合機、双腕型ニーダー、内部混合機、粉砕型ニーダー、回転式混合機、スクリュー型押出機等であり、好ましくは、高速攪拌型混合機中で3分以内の混合が行われる。特に、混合は連続混合が好ましい。
この工程において、加熱処理を行う場合、処理時間は1〜180分が好ましく、3〜120分がより好ましく、5〜100分が特に好ましい。加熱処理温度(熱媒温度ないし材料温度で規定)は100〜250℃の範囲が好ましく、140〜220℃の範囲がより好ましく、150〜220℃の範囲がさらに好ましく、160〜220℃の範囲が特に好ましい。
【0038】
加熱処理は、通常の乾燥機または加熱炉を用いて行うことができ、溝型混合乾燥機、ロータリー乾燥機、ディスク乾燥機、流動層乾燥機、気流型乾燥機、および赤外線乾燥機が例示される。
本発明にかかる製造方法において好ましく含まれる表面改質工程では、表面架橋に加えて、あるいは、表面架橋は起さないで実質的には吸水性樹脂に反応しないという意味での不活性な界面活性剤、不活性な消臭剤や不活性な無機微粒子粉末などを用いてもよい。この場合に用いられる界面活性剤や不活性無機微粒子粉末としては、好ましくは、後述の超微粒子、無機微粒子などが使用され、その際には、表面架橋も同時または別途に行うことが好ましい。
【0039】
本発明において、吸水性樹脂の表面改質に用いられる添加剤としてのカチオン性高分子化合物は、衛生材料への固定性などを向上でき、好ましくは質量平均分子量が2000以上で、さらに好ましくは5000以上、最も好ましくは10000以上である。なお、質量平均分子量の上限は特に限定されないが、物性面から、好ましくは1000万以下、より好ましくは100万以下である。その使用量は、吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部、さらに好ましくは0.1〜3質量部である。カチオン性高分子化合物の混合は、単独あるいは溶液(水溶液)で添加され、好ましくは、表面架橋後に添加される。カチオン性高分子化合物の具体例としては、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリアミドアミンとエピクロルヒドリンの縮合物、ポリアミジン、ポリ(N−ビニルホルムアルデヒド)の部分加水分解物またはこれらの塩などが例示される。
【0040】
本発明においては、添加剤として水不溶性微粒子を用いると、吸水性樹脂の通液性や吸湿時の耐ブロッキング性などを改善することができる。水不溶性微粒子としては、質量平均粒子径が好ましくは10μm以下、さらに好ましくは1μm以下、特に好ましくは0.1μm以下の無機または有機の水不溶性微粒子が用いられ、質量平均粒子径の下限は特に限定されないが、通常は0.1nm以上が好ましい。具体的には、酸化珪素(例えば、商品名:Aerosil、日本アエロジル社製)、酸化チタン、酸化アルミ、などが用いられる。混合は粉末混合(Dry−Blend)やスラリー混合で行われるが、その際の使用量は、吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは0.001〜5質量部、さらに好ましくは0.01〜2質量部である。
【0041】
なお、これらの表面架橋方法は、欧州特許0349240号、同0605150号、同0450923号、同0812873号、同0450924号、同0668080号などの各種欧州特許や、米国特許5409771号、同5597873号、同5385983号、同5610220号、同5633316号、同5674633号、同5462972号などの各種米国特許、WO99/42494号、WO99/43720号、WO99/42496号などの国際公開にも記載されており、これらの表面架橋方法も本発明に適用できる。
本発明においては、表面処理としての表面架橋とは別に、必要に応じてさらに添加剤を加えてもよい。すなわち、消臭剤、抗菌剤、香料、発泡剤、顔料、染料、親水性短繊維、可塑剤、粘着剤、界面活性剤、肥料、酸化剤、還元剤、水、塩類、キレート剤、殺菌剤、ポリエチレングリコールなどの親水性高分子、パラフィン、疎水性高分子、ポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂、ポリエステル樹脂やユリア樹脂などの熱硬化性樹脂等を添加する等、吸水性樹脂に種々の機能を付与するための添加工程、好ましくは表面への添加工程を含んでいてもよい。
【0042】
これらの添加剤の使用量は、吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは0〜30質量部の範囲、より好ましくは0〜10質量部の範囲、さらに好ましくは0〜1質量部の範囲である。なお、吸水性樹脂への表面架橋後および/または添加剤添加後も、吸水性樹脂を主成分とし且つ実質一体化されている範囲で、本発明では吸水性樹脂と総称する。そして、これら添加剤の含有量は、本発明における所定物性および/または所定成分量を測定する工程(A)における測定対象として適用される。
(輸送工程)
本発明にかかる製造方法において必要に応じて含まれる輸送工程は、重合工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、表面改質工程などの各工程を連結するものであり、各工程の連結にすべて輸送工程が必要とは限らないが、少なくとも乾燥した粒子状吸水性樹脂を輸送機で輸送する工程を含むことが好ましい。
【0043】
輸送工程において、輸送は連続またはバッチ式で行われるが、好ましくは連続で行われる。輸送工程で用いられる輸送機としては、例えば、ベルトコンベヤー、スクリューコンベヤー、チェーンコンベヤー、振動コンベヤー、ニューマチックコンベヤー等が挙げられ、その内壁面を外側から加熱する手段および/または保温する手段を備えたものを挙げることができる。これらの輸送機のうちでも、チェーンコンベヤーまたはニューマチックコンベヤーが好ましい。
輸送工程においては、当該工程の少なくとも一部を空気輸送で行うことが好ましい。乾燥物粉末である高物性の吸水性樹脂粉末の輸送による損傷を低減するためにも、また、金属性異物の混入を抑えるためにも、輸送工程の少なくとも一部が空気輸送でなされることが好ましい。
【0044】
この輸送工程では、輸送機の内壁面を外側から加熱した状態および/または保温した状態にすることが好ましい。輸送機での凝集を有効に防止することができる傾向があるからである。
(貯蔵工程)
本発明にかかる製造方法は、上記乾燥した粒子状吸水性樹脂を貯槽に貯蔵する貯蔵工程を含んでいてもよい。
この貯蔵工程で用いられる貯槽としては、例えば、サイロ、ホッパー等が挙げられ、その内壁面を加熱する手段を備えたものを好ましく挙げることができる。粒子状吸水性樹脂では、粒子状吸水性樹脂の摩耗性と帯電性の点から、金属性の内面、例えば鉄製、ステンレス製の内面を有する貯槽が好ましい。また、最終製品の貯蔵とは別に、各工程の中間に貯蔵工程(中間ホッパー)を別途設けてもよく、連続製造のために緩衝ホッパーおよび定量供給ホッパーで各工程を連結してもよい。
【0045】
(その他の工程)
得られる吸水性樹脂、特に最終の吸水性樹脂製品に磁力線を照射することも好ましい。かかる磁力線の照射でゲル劣化が防止され、耐久性に優れた且つ金属異物を実質まったく含まない吸水性樹脂が得られる。用いられる磁力線の磁束密度としては、好ましくは0.05Wb/m2(500gauss)以上、さらに好ましくは0.5Wb/m2以上、特に好ましくは1.0Wb/m2以上であり、好ましくは永久磁石および/または電磁石が用いられ、より好適には、磁石を格子状に配置して格子間に吸水性樹脂を通過させればよい。
【0046】
〔吸水性樹脂製品の品質安定化〕
本発明にかかる吸水性樹脂製品の連続製造方法においては、分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂について、所定物性および/または所定成分量を測定する工程(A)と、前記測定結果に従い、所定物性および/または所定成分量が一定以上および/または一定以下の値を示す吸水性樹脂(a)を、連続的に生産されてくる吸水性樹脂から所定量分離する工程(B)と、前記分離した所定量の吸水性樹脂(a)の少なくとも一部を、同一の製造ラインまたは別の製造ラインにおいて分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂と混合する工程(C)とを含む、ことを特徴とする。
【0047】
以下、これら工程(A)〜(C)について説明する。
(工程(A))
本発明にかかる吸水性樹脂製品の連続製造方法においては、分級工程および/または表面改質工程、好ましくは表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂について、所定物性および/または所定成分量を測定する。
上記分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂とは、分級工程および/または表面改質工程が行われた後の吸水性樹脂であれば特に限定されず、具体的には、分級工程および/または表面改質工程が行われる装置や反応器から分級および/または表面改質された吸水性樹脂が排出される出口以降の製造ライン中に存在する吸水性樹脂あるいは最終的に得られる吸水性樹脂製品を意味する。
【0048】
すなわち、前記所定物性を測定する吸水性樹脂は、分級工程および/または表面改質工程が行われる装置や反応器から分級および/または表面改質された吸水性樹脂が排出される出口以降の製造ライン中に存在する吸水性樹脂であってもよいし、最終的に得られる吸水性樹脂製品であってもよいが、測定のし易さの面などから、連続製造ラインの最終貯蔵工程および/またはその直前および/または周辺に存在する最終的に得られる吸水性樹脂製品であることが好ましい。なお、分級工程および/または表面改質工程が行われる装置や反応器から分級および/または表面改質された吸水性樹脂が排出される出口以降の製造ライン中に存在する吸水性樹脂について前記所定物性を測定する場合は、その測定箇所は特に限定されず、分級工程および/または表面改質工程が行われる装置や反応器から分級および/または表面改質された吸水性樹脂が排出される出口に近い箇所でもよいし、製造ラインの末端(製品としての排出口)に近い箇所でもよい。
【0049】
前記所定物性および/または所定成分量の測定は、連続測定であってもよいし、所定生産高および/または所定時間ごとに一定抜き取りで行っても良い。ここに、所定生産高ごとにとは、例えば、ロット(Lot)ごとにであっても良いし、ロット内での生産高ごとに抜き取り検査するようであってもよい。なお、より具体的には、例えば、所定量ごとに最終製品を袋詰め(ドラム詰めやコンテナ詰め)する場合には、所定生産高および/または所定時間ごとに該当する製品袋について抜き取り検査を行うか、そのロットに対するラインフローでサンプリングする。なお、ロットの大きさや定義は後述する。
前記所定物性および/または所定成分量は、吸水性樹脂製品の品質に影響を与える物性や成分量であれば特に限定されないが、例えば、無加圧下吸収倍率、加圧下吸収倍率、通液性(通液量)、含水率、pH、残存モノマー、嵩比重、各種成分(添加剤など)の含有量、ゲル強度、水可溶成分量、通気性、ゲル耐久性(耐光性、耐熱性、耐尿性、耐L−A性)、消臭能、抗菌能、物体色などを含めて公知または新規の諸物性や成分量が例示される。これらの測定法は、前述の各種特許やEDNA(European Disposable And Nonwoven Association)やJIS(Japanese Industrial Standard)でも知られている。これらの中でも、好ましくは、物性の安定性や与える影響の大きさから、微粉量に代表される粒度、CRCに代表される無加圧下吸収倍率、AAPないしAULに代表される加圧下吸収倍率、ゲル強度、および通液性(通液量)、から選ばれる少なくとも1つの物性であり、より好ましくは2つ以上の物性、さらに好ましくは3つ以上の物性、特に好ましくは4つ以上の物性である。
【0050】
なお、本発明で測定される物性や成分量は本願実施例に記載の方法に限定されず、公知の物性を公知の測定方法で測定してもよく、また、これら公知の物性測定法の改良でもよく、まったく新規な測定法でもよく、まったく新規な物性や成分量であってもよい。
粒度の測定法としては、篩分級、気流分級、湿式分級、乾式分級など特に限定されず、重量(質量)で測定してもよいし、体積をレーザーなどで測定してもよい。特に、粒度をレーザー回析散乱法で測定することは、本発明における好ましい態様の一つである。
すなわち、本発明は、分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂の粒度を測定する工程を含み、吸水性樹脂製品を連続的に製造する方法において、前記吸水性樹脂の粒度をレーザー回析散乱法で測定することを特徴とする、吸水性樹脂製品の連続製造方法をも提供する。
【0051】
レーザー回析散乱法とは、光散乱原理を利用して、液体に懸濁している粒子(湿式)または乾燥した粉末状の粒子(乾式)から散乱した光のパターンから粒度分布を測定する方法である。粒子のサンプル濃度は適宜決定されるが、好ましくは1〜90質量%、より好ましくは2〜70質量%である。測定原理としては、ミー散乱法、フラウンホーファー解析法、偏光差動散乱法(PIDS)から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。湿式で測定する場合、透明で低粘度であり、且つ、吸水性樹脂に不活性な非吸収性溶媒(非水系溶媒)が適宜選択され、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコール;ヘキサンなどの炭化水素;等が分散溶媒として用いられる。乾式で測定する場合、分散方式としては、例えば、自由落下が好ましく挙げられ、トルネード方式が特に好ましい。
【0052】
粒度をレーザー回析散乱法で測定する場合の好ましいレーザーとして、シングルウェーブまたはマルチウェーブが挙げられ、好ましくは50〜3000nmの波長、より好ましくは100〜1000nm、さらに好ましくは350〜900nmの波長、例えば、ダイオードレーザ(750nm)、タングステンハロゲンランプ(450nm、600nm、900nm)、赤色半導体レーザー(例えば690nm)が挙げられる。なお、粒度のレーザー回析散乱は吸水性樹脂の一部サンプリングによるバッチ測定でもよいし、製造ラインの途中にレーザー回析散乱装置をつけて連続的に測定してもよい。また、測定は湿式測定と乾式測定のいずれでもよいし、乾式測定では吸水性樹脂粉末を自由落下させてもよいし、噴射型でもよい。吸水性樹脂に対する精度面や本発明への適用面から、好ましくは乾式測定である。測定は、好ましくは、温度0〜100℃、より好ましくは10〜60℃の条件下であって、好ましくは、相対湿度10〜100%、より好ましくは10〜60%の条件下で行われる。なお、レーザー回折散乱法で粒度を測定する場合は、体積(%)で粒度を求めることが一般的であるが、適宜、篩分級と比較して質量(重量)%に換算してもよい。体積(%)で表された粒度を質量(重量)%に換算するためには、目的とする物性や成分量を有する吸水性樹脂の標準サンプルを用いて粒度を比較し、その結果に基づいて一定比率で換算すればよい。
【0053】
レーザー回析散乱法で測定される粒度は、好ましくは最終製品としての吸水性樹脂製品の粒度であり、その物性や成分量(無加圧下吸収倍率、加圧下吸収倍率、通液性、粒度など)は後述のように高く且つ制御されており、例えば、質量平均粒子径が300〜600μmの範囲内にあって、且つ、850〜150μm(850μm標準篩を通過して且つ150μm標準篩の非通過物/標準篩はJISまたはその相当品)である吸水性樹脂粉末を95〜100質量%含む、表面架橋された吸水性樹脂粉末が好ましい。また、レーザー回析散乱法で測定された吸水性樹脂の粒度(体積(%)で表された粒度でもよいし、篩換算によって質量(重量)%で表された粒度でもよい)やその他の物性および/または成分量は、本発明における所定物性および/または所定成分量の測定対象であるとともに、最終製品としての吸水性樹脂製品の性能を示す試験結果やカタログ記載事項として使用してもよい。
【0054】
レーザー回析散乱法による粒度の測定以外の測定として、無加圧下吸収倍率、加圧下吸収倍率、通液性の測定においては、粒度(吸水性樹脂の全体あるいは特定粒度で規定)、測定温度、測定時間や吸収液は適宜選ばれる。吸収液としては、例えば、イオン交換水、生理食塩水に限らず、各種濃度の食塩水、人工あるいは天然の尿、血液、排水、廃水、海水、さらには有機溶媒/水との混合水などが例示され、目的に応じて使用される。また測定温度も凝固点を超えて沸点以下の範囲で適宜選ばれるが、好ましくは0〜50℃の範囲、さらには10〜44℃の範囲、さらには20〜40℃の範囲でなるべく狭く制御される。また、測定時間も連続式で瞬時に測定してもよいし、また、測定時間が好ましくは16時間以内、より好ましくは3時間以内、さらに好ましくは1時間以内のバッチ式測定で行ってもよい。
【0055】
測定時間は必ずしも平衡ないし飽和に達する必要はなく、1秒〜10分程度のごく短時間で測定することで、過去の経験値より飽和値や1時間値などを類推してもよいし、また、短時間値で管理してもよい。かかる短時間の測定を用いて、吸水性樹脂の製造フローの途中で連続的に所定物性および/または所定成分量を測定して、吸水性樹脂の分離(例えば、ライン上での分離)を行ってもよい。
本発明における無加圧下吸収倍率は、大過剰の被吸収液中で吸水性樹脂を自由膨潤される方法であり、たとえば、CRC(Centrifuge Retention Capacity)やブルーデキストラン法、TB法(Tea Bag)などが知られている。
【0056】
本発明における加圧下吸収倍率の測定法は、各種荷重や測定濃度などにより、AAP(Absorbency against Pressure)やAUL(Absorbency under load)、デマンド法などが知られている。
なお、所定物性および/または所定成分量が一定以上および/または一定以下の値を示す吸水性樹脂(a)を決定するにあたって、その所定物性値および/または所定成分量値の値は、目標とする吸水性樹脂の物性から適宜決定すればよい。
前記所定物性値および/または所定成分量値を決定する方法は特に限定されないが、例えば、最終的に得たい吸水性樹脂製品の目標物性値や目標成分値から所定値外れた値を、所定物性値や所定成分量値として採用する方法が挙げられる。
【0057】
また、生産された所定数のLotそれぞれについて所定物性および/または所定成分量を測定しておき、測定値の高いLot(上位Lot)を測定値の高いものから順に所定数を分離したり、測定値の低いLot(下位Lot)を測定値の低いものから順に所定数を分離したりする方法もある。上位と下位の両方を分離してもよいし、いずれか一方のみを分離してもよい。より好ましくは下位のみの分離である。また、この方法の場合、分離する量としては、生産された所定数Lotの総量の好ましくは上位および/または下位30〜0.0001質量%、より好ましくは20〜0.001質量%、さらに好ましくは10〜0.01質量%、特に好ましくは5〜0.05質量%の範囲である。
【0058】
具体的には、例えば、無加圧下吸収倍率、加圧下吸収倍率、通液性、粒度などが所定範囲にある吸水性樹脂を製造することを目的とする場合、その目標とする所定物性値および/または所定成分量値から所定値外れる無加圧下吸収倍率、加圧下吸収倍率、通液性、粒度を予め決定しておくか、上位または下位の一定量を予め決定しておいて、その所定物性値および/または所定成分量値を基準としてそれ以下あるいは以上の吸水性樹脂を工程(B)に送ればよい。
かかる吸水性樹脂製品の目標物性値を基準として、その目標物性値から一定値外れたものを工程(B)で分離することが好ましい。
【0059】
工程(B)における分離の基準の具体例としては、目的とする吸水性樹脂製品に合わせて適宜決定されるために一概には言えないが、例えば、CRCについては、好ましくは10〜50g/gの範囲から外れたもの、より好ましくは25〜48g/gの範囲から外れたもの、さらに好ましくは28〜45g/gの範囲から外れたものを分離する。1.9kPaでのAAPについては、好ましくは20〜40g/gの範囲から外れたもの、より好ましくは30〜38g/gの範囲から外れたもの、さらに好ましくは33〜37g/gの範囲から外れたものを分離する。4.9kPaでのAAPについては、好ましくは10〜30g/gの範囲から外れたもの、より好ましくは20〜28g/gの範囲から外れたもの、さらに好ましくは23〜27g/gの範囲から外れたものを分離する。通液性については、好ましくは360秒以下の範囲から外れたもの、より好ましくは240秒以下の範囲から外れたもの、さらに好ましくは1〜180秒の範囲から外れたもの、さらに好ましくは2〜120秒の範囲から外れたものを分離する。粒度については、質量平均粒子径が300〜600μmであり且つ850〜150μm(850μm標準篩通過で150μm非通過)である吸水性樹脂粉末の含有量が、好ましくは90〜100質量%の範囲から外れたもの、より好ましくは95〜100質量%の範囲から外れたもの、さらに好ましくは98〜100質量%の範囲から外れたものを分離する。粒度については、また、150μm未満の微粉量が、好ましくは10質量%未満の範囲から外れたもの、より好ましくは5質量%未満の範囲から外れたもの、さらに好ましくは2質量%未満の範囲から外れたものを分離する。
【0060】
なお、これらの物性は、他の測定法で測定してもよく、例えば、CRC=50g/gという物性を与える吸水性樹脂製品は、他の測定法で測定する場合にはCRC=50g/gに相当する値を与える。
なお、本発明において、無加圧下吸水倍率についてのCRC値、加圧下吸水倍率についてのAAP値は、他の測定法で物性を管理してもよいが、結果的に、無加圧下吸水倍率、加圧下吸水倍率の諸物性が本発明でいうCRC、AAPの範囲を含む概念である。
工程(B)での分離量が多すぎる場合、生産性の低下をまねき、また、コストの割に物性安定への寄与が少ない。また、工程(B)での分離量が少なすぎる場合、物性安定への寄与が少ない。したがって、本発明の製造方法においては、工程(B)での分離量が多すぎたり少なすぎたりならないように、工程(B)における吸水性樹脂(a)を決定するにあたって必要な所定物性値および/または所定成分量値を決定することが必要である。
【0061】
また、本発明は、分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂について所定物性および/または所定成分量を測定する工程(A)を含み、且つ、前記測定結果に従い、製造条件を変更する、吸水性樹脂製品の連続製造方法をも提供する。
本発明においては、好ましくは、解析された粒度にあわせて製造条件を変更する。また、好ましくは、粒度などの所定物性および/または所定成分量の測定は自動的に連続で行なわれ、その測定結果に合わせて、プログラムされた製造条件の変更、例えば、工程(B)や工程(C)の条件変更を行えばよい。従来、吸水性樹脂の製造において、温度や流量を測定することは行なわれていたが、本発明では吸水性樹脂の所定物性および/または所定成分量を測定することで、より高物性の吸水性樹脂製品をより安定的に安定した品質で製造することができる。
【0062】
かかる製造条件の変更の好適な一例が、後述する工程(B)の分離および工程(C)の混合である。例えば、本発明にかかる製造方法が吸水性樹脂の粒度をレーザー回析散乱法で測定する工程を含む場合、従来の篩分級のようなバッチ式分析で且つ数10分の分級時間を必要とせず、瞬時に自動的に連続に粒度が判明するため、製造ラインの途中でモニターリングして、その粒度分布に応じて自動的ないし人間が製造条件を随時変更できる。よって、上記の粒度のレーザー回析散乱に合わせて変更する製造条件としては粒度に依存ないし関するものであればよく、粒度分布の調整や粒度に依存する表面改質の条件変更(例、温度、量)など、粉砕、分級、表面処理など各工程で適用できる。製造ラインの途中や最終でモニターリングする方法としては、例えば、自動あるいは手動でバッチ式にサンプリングする方法や連続的に測定する方法が挙げられる。
【0063】
(工程(B))
本発明にかかる吸水性樹脂製品の製造方法においては、前記工程(A)における測定結果に従い、所定物性および/または所定成分量が一定以上および/または一定以下の値を示す吸水性樹脂(a)を、連続的に生産されてくる吸水性樹脂から所定量分離する工程(B)を含む。
具体的な形態としては、例えば、最終的に得られる吸水性樹脂製品について所定物性および/または所定成分量を測定する場合には、所定物性および/または所定成分量が一定以上および/または一定以下の値を示す吸水性樹脂(a)を、連続的に生産されてくる吸水性樹脂製品そのものから所定量分離する。
【0064】
また、分級工程および/または表面改質工程が行われる装置や反応器から分級および/または表面改質された吸水性樹脂が排出される出口以降の製造ライン中に存在する吸水性樹脂について所定物性および/または所定成分量を測定する場合には、そのフローの途中から直接分離するか、または製造ラインの輸送スピード等から、かかる所定物性および/または所定成分量が一定以上および/または一定以下の値を示す吸水性樹脂製品が製造ラインの末端(製品としての排出口)から出てくる時間を予想し、該当する時間に得られる吸水性樹脂製品を分離する。分離はLot毎などの最終製品として袋やタンクに貯蔵された容器ごとのバッチ式でおこなってもよいし、下記に示される連続自動測定などで、連続フロー後に2又ラインで一方に流して分離してもよい。
【0065】
すなわち、連続生産において連続的に各工程ないし最終製品へのフローする吸水性樹脂について連続的に物性や粒度を測定して、2又のラインなどから一定基準以上のみをラインに流し続け、その際、一定基準未満の吸水性樹脂をラインから分離するようにしてもよい。また、バッチ式で分離を行う場合は、貯蔵された容器のまま、または、容器から取り出して、分離を行えばよい。
好ましい方法として、連続フローする吸水性樹脂の粒度をレーザーで湿式ないし乾式、好ましくは乾式で連続的に測定して、一定未満の粒度(例えば、微粉量の多い吸水性樹脂や粒度分布のブロードな吸水性樹脂)をラインから自動的に分離するシークエンスとすればよい。具体的には、レーザー回析散乱法によって粒度を測定し、その測定結果と連動させて自動的に分離する形態が好ましい。
【0066】
(工程(C))
本発明にかかる吸水性樹脂製品の製造方法においては、前記工程(B)において分離した所定量の吸水性樹脂(a)の少なくとも一部を、同一の製造ラインまたは別の製造ラインにおいて分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂と混合する工程(C)とを含む。
すなわち、前記工程(B)において分離した所定量の吸水性樹脂(a)の全量または少なくとも一部(好ましくは分離量の50〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、特に好ましくは95〜100質量%)を、同一の製造ラインまたは別の製造ラインにおいて分級工程および/または表面改質工程が行われる装置や反応器から分級および/または表面改質された吸水性樹脂が排出される出口以降の製造ライン中に存在する吸水性樹脂あるいは最終的に得られる吸水性樹脂製品に混合する。なお、工程(B)と(C)は、必要時に行われるものであるから、バッチ式でもよいし、連続でもよい。工程(B)と(C)における吸水性樹脂の輸送は、前述の輸送機で連結してもよいし、バッチ式の場合は、容器や袋ごとに行ってもよい。なお、工程(B)と(C)における吸水性樹脂は、その工程の間において、特に変性(例えば、表面処理や造粒)されることなくそのまま混合されることが好ましく、そのまま乾式混合(粉体どうしの混合)されることがより好ましい。
【0067】
工程(C)における混合は、製造ラインの途中で行うことがより好ましく、さらに好ましくは粉砕工程以降で行う。なお、製造ラインの途中とは、実質的に工程(C)のために新たに混合装置を設けることなく、連続生産の通常のフロー中(分級や輸送)に吸水性樹脂(a)を混合することを示す。
同一の製造ラインまたは別の製造ラインにおいて分級工程および/または表面改質工程が行われる装置や反応器から分級および/または表面改質された吸水性樹脂が排出される出口以降の製造ライン中に存在する吸水性樹脂に混合する場合は、かかる製造ラインの任意の箇所において導入すればよく、例えば、同一の製造ラインまたは別の製造ラインにおいて分級工程および/または表面改質工程が行われる装置や反応器から分級および/または表面改質された吸水性樹脂が排出される出口に近い箇所でもよいし、製造ラインの末端(製品としての排出口)に近い箇所でもよい。
【0068】
最終的に得られる吸水性樹脂製品に混合する場合は、吸水性樹脂製品に混合する。
工程(C)における混合の形態は特に限定されないが、品質の安定化を高めるためには、前記工程(B)において分離した所定物性および/または所定成分量が一定以上および/または一定以下の値を示す吸水性樹脂(a)を少量ずつ連続的あるいは間欠的に添加混合するのがよい。吸水性樹脂(a)を添加混合する場合、その添加混合量は、全体の10質量%以下が好ましく、0.01〜5質量%の範囲がより好ましい。
両者の混合は湿式混合または乾式混合で行うことが好ましく、より好ましくは乾式混合で行われ、前述に例示した各種の混合機が使用されるが、その他、混合機を使用せず、吸水性樹脂の製造フローの途中で、好ましくは表面処理後に混合して、各種輸送工程や分級工程における粉体の流動を混合機の代わりに利用して混合することも好ましい。
【0069】
すなわち、高物性の吸水性樹脂製品を安定した一定の品質で簡便に安価に連続製造するため、工程(C)における混合は、分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂の製造ラインの途中で行われることが好ましい。
本発明において、連続生産とは1ラインで24時間以上、若しくは5t(metric ton)/日で1日以上、連続して吸水性樹脂製品を生産することを示す。生産時間は好ましくは10日以上、さらに好ましくは100日以上、ラインあたりの生産量は好ましくは20t/日以上、さらに好ましくは50t/日以上である。また、吸水性樹脂製品の製造方法の基本工程である、重合、乾燥、粉砕、表面改質等は、連続生産系においては、各工程は連続式またはバッチ式を問わないが(例えば、重合工程においては連続重合とバッチ重合など)、各工程の間隔は24時間以下が好ましく、より好ましくは12時間以下、さらに好ましくは6時間以下、特に好ましくは3時間以下で行うものとする。
【0070】
〔品質の安定した吸水性樹脂製品〕
本発明にかかる製造方法によれば、無加圧下吸収倍率、加圧下吸収倍率、通液性、粒度などの諸物性に優れ、品質の安定した吸水性樹脂製品が連続的に高生産性で得られる。また、複数の吸水性樹脂を混合(好ましくは製造ライン途中で乾式混合)することで、目的とする任意の物性に調整することもできる。
本発明で得られる吸水性樹脂製品の有する物性は、無加圧下吸収倍率についてはCRC値として好ましくは25.0g/g以上、加圧下吸収倍率については1.9kPaまたは4.9kPaでのAAP値として好ましくは20.0g/g以上、通液性については、好ましくは240秒以下である。また、粒度については、好ましくは、質量平均粒子径が300〜600μmであり且つ850〜150μm(850μm標準篩通過で150μm非通過)である吸水性樹脂粉末の含有量が95〜100質量%、あるいは、150μm未満の微粉量が5質量%未満である。(なお、以下の説明において、物性値について、25.0は25のように少数点一桁がゼロの場合は省略する。)
なお、CRC、1.9kPaまたは4.9kPaでのAAPは、それぞれ無加圧下吸収倍率、加圧下吸収倍率の測定法の代表例であって、本願発明では必ずしもその測定法で測定される必要はなく、別の無加圧下吸収倍率(例えば、TB法、デキストラン法、濾過法)、別の加圧下吸収倍率(例えば、AUL,APUP)でもよい。
【0071】
本発明で得られる吸水性樹脂製品のCRCは、より好ましくは28〜65g/gであり、さらに好ましくは30〜60g/gであり、さらに好ましくは32〜58g/g、さらにより好ましくは34〜56g/g、特に好ましくは36〜54g/gの範囲である。
本発明で得られる吸水性樹脂製品の1.9kPaまたは4.9kPaでのAAPは、より好ましくは23g/g以上であり、さらに好ましくは25g/g以上、特に好ましくは27g/g以上である。本発明で得られる吸水性樹脂製品の1.9kPaまたは4.9kPaでのAAPの上限は特に限定されないが、好ましくは50g/g以下である。
本発明で得られる吸水性樹脂製品の通液性は、より好ましくは1〜180秒であり、さらに好ましくは2〜120秒、特に好ましくは3〜60秒である。
【0072】
本発明で得られる吸水性樹脂製品のかさ比重は、好ましくは0.30〜0.90、より好ましくは0.50〜0.80、さらに好ましくは0.60〜0.75である。
本発明で得られる吸水性樹脂製品の粒度は、質量平均粒子径が300〜600μmであり、且つ850〜150μm(850μm標準篩通過で150μm非通過)である吸水性樹脂粉末を、より好ましくは97〜100質量%含む粒度であり、さらに好ましくは99〜100質量%含む粒度である。また、本発明で得られる吸水性樹脂製品の粒度は、150μm未満の微粉量が、より好ましくは3質量%未満であり、さらに好ましくは1質量%未満である。(なお、粒度をレーザー回析散乱法によって体積で測定する場合は、必要により適宜、質量(重量)%に換算すればよい。)
また、後述の実施例や前述の本発明の課題に示すように、本発明で得られる吸水性樹脂製品は低着色(黄ばみもなく)、且つ残存モノマーも少ない。具体的には、着色状態がYI値(Yellow Index/欧州特許0942014号および同1108745号参照)で好ましくは0〜15、より好ましくは0〜13、さらに好ましくは0〜10、最も好ましくは0〜5を示し、殆ど黄ばみもない。さらに、残存モノマーは、好ましくは500ppm以下、より好ましくは400ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下を示し、その標準偏差は、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下である。
【0073】
また、pHは、好ましくは4.0〜9.0の範囲、より好ましくは5.0〜8.0の範囲である。
従来、吸水性樹脂の物性を高く且つ安定させようとすると、慎重な生産が必要であり、生産性を犠牲にする必要があったが、本発明は、物性が高く且つ安定した従来にない吸水性樹脂製品を、高い生産性で与える。また、前述の通り、表面架橋において脱水反応性架橋剤を用いると高物性が発現できるとともに安全性も高いが、反応の制御が困難となり、吸水性樹脂製品の物性を安定させることが困難であったが、本発明によれば、高物性のまま物性を安定させることができ、生産性にも影響を与えないか、あるいはむしろ向上する。なお、本発明において脱水反応性架橋剤を用いる場合、架橋剤として作用させずに溶媒(例えば、他の架橋剤の溶媒)として作用させてもよいが、通常、160〜220℃で加熱処理させて表面架橋させる際の表面架橋剤として作用させることが好ましい。
【0074】
すなわち、本発明は、高物性で且つ品質の安定した新規な吸水性樹脂製品を与える。
本発明にかかる吸水性樹脂製品は、アクリル酸および/またはその塩を主成分とする単量体を架橋重合した後、脱水反応性架橋剤を用いて表面架橋することによって得られる吸水性樹脂製品であって、
(1)質量平均粒子径が300〜600μm、
(2)残存モノマー量が500ppm以下、
(3)分析点数n=3で測定した無加圧下吸収倍率の平均値が25g/g以上、標準偏差が0〜0.50、
(4)分析点数n=3で測定した1.9kPaまたは4.9kPaでの加圧下吸収倍率の平均値が20g/g以上、標準偏差が0〜0.35、
(5)分析点数n=3で測定した150μm未満の微粉量の平均値が5.0質量%未満、標準偏差が0〜0.50、
であることを特徴とする。
【0075】
さらに、前記脱水反応性架橋剤が多価アルコールであることが好ましい。
本発明にかかる吸水性樹脂製品は、分析点数n=3において物性のふれがほとんどなく、しかも高物性であるため、実使用(例えば、実際のおむつとしての使用など)においても従来にない非常に優れた性能を与える。
ここで、分析点数nとは、吸水性樹脂製品について、任意にn点のサンプルを抽出して各種物性を測定することを意味する。分析点数nは大きければ大きいほど、物性のふれをより正確に認識することができる。nは3以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、20以上が特に好ましい。nの上限値は特に限定されないが、通常は5000以下が好ましく、1000以下がより好ましく、500以下がさらに好ましく、100以下が特に好ましい。
【0076】
分析点数nの1点の量は、吸水性樹脂製品の形態によって左右されるために特に限定されないが、例えば、吸水性樹脂製造プラントにおける製造物の場合には、例えば1ロットとして、1kg以上が好ましく、10kg以上がより好ましく、20kg以上がさらに好ましく、100kg以上がさらに好ましく、500kg以上が特に好ましい。上限値は特に限定されないが、通常は500t以下が好ましく、100t以下がより好ましく、50t以下がさらに好ましく、25t以下が特に好ましい。
n点の分析点数を抽出する形態としては、特に限定されず、例えば、吸水性樹脂製造プラントにおける製造物の場合には、製造Lotごとにn点のLotを抽出する形態、1つのLot中からn個のサンプルを抽出する形態、などが挙げられる。市販品については、吸水性樹脂製品の形態で市販されている場合には、製造Lotごとにn点の市販品を抽出する形態、同一Lotの市販品の中からn個のサンプルを抽出する形態、などが挙げられる。おむつ等の最終製品の場合には、製造Lotごとにn点の最終製品から吸水性樹脂製品を取り出す形態、同一Lotの最終製品から取り出した吸水性樹脂製品の中からn個のサンプルを抽出する形態、などが挙げられる。これら市販品においてLotが不明な場合には、例えば販売単位ごとに同一のLotであると考え、n点を抽出すればよい。なお、n点の分析点数の抽出は、最終製品の出荷容器(例えば、袋)単位でも良いし、生産のバッチ、時間、日などを単位としても良い。
【0077】
なお、おむつ等の最終製品から吸水性樹脂製品を取り出して各種物性を測定する場合には、最終製品から吸水性樹脂製品を取り出した後にダメージを与えない程度に乾燥(例えば、50℃以下で減圧乾燥)してから測定することが好ましい。吸水性樹脂製品の吸水特性は、その含水率に依存するため、製造直後の吸水性樹脂製品は固有の含水率を有している状態なのでそのまま測定すれば十分であるが、流通過程や使用過程において吸湿した吸水性樹脂製品については乾燥によってその含水率を一定の含水率(180℃で3時間乾燥の場合の含水率で規定され、好ましくは1〜8質量%、より好ましくは3〜6質量%)にしてから測定することが好ましい。
【0078】
本発明にかかる吸水性樹脂製品は、分析点数n=3で測定した無加圧下吸収倍率の平均値が25g/g以上であるが、かかる平均値は、好ましくは28〜65g/gであり、より好ましくは30〜60g/gであり、さらに好ましくは32〜58g/g、さらにより好ましくは34〜56g/g、特に好ましくは36〜54g/gの範囲である。
本発明にかかる吸水性樹脂製品は、分析点数n=3で測定した無加圧下吸収倍率の標準偏差が0〜0.50であるが、かかる標準偏差は、好ましくは0〜0.40、より好ましくは0〜0.30、さらに好ましくは0〜0.20、特に好ましくは0〜0.10である。
【0079】
本発明にかかる吸水性樹脂製品は、分析点数n=3で測定した1.9kPaまたは4.9kPaでの加圧下吸収倍率の平均値が20g/g以上であるが、かかる平均値は、好ましくは23g/g以上であり、より好ましくは25g/g以上、特に好ましくは27g/g以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは50g/g以下である。
本発明にかかる吸水性樹脂製品は、分析点数n=3で測定した1.9kPaまたは4.9kPaでの加圧下吸収倍率の標準偏差が0〜0.35であるが、かかる標準偏差は、好ましくは0〜0.30、より好ましくは0〜0.20、さらに好ましくは0〜0.10である。
【0080】
本発明にかかる吸水性樹脂製品は、分析点数n=3で測定した150μm未満の微粉量の平均値が5.0質量%未満であるが、かかる平均値は、好ましくは3.0質量%未満であり、より好ましくは1.0質量%未満である。
本発明にかかる吸水性樹脂製品は、分析点数n=3で測定した150μm未満の微粉量の標準偏差が0〜0.50であるが、好ましくは0〜0.40、より好ましくは0〜0.30、さらに好ましくは0〜0.20、特に好ましくは0〜0.10である。
本発明にかかる吸水性樹脂製品は、好ましくは、分析点数n=3で測定した通液性の平均値が240秒以下であり、より好ましくは1〜180秒であり、さらに好ましくは2〜120秒、特に好ましくは3〜60秒である。また、好ましくは、分析点数n=3で測定した通液性の標準偏差が0〜10であり、より好ましくは0〜5、さらに好ましくは0〜3である。
【0081】
本発明にかかる吸水性樹脂製品は、好ましくは、前記のpH、かさ比重、質量平均粒子径、残存モノマーを有し、これらの諸物性において分析点数n=3で測定したpHの標準偏差が好ましくは0〜0.01であり、分析点数n=3で測定したかさ比重の標準偏差が好ましくは0〜0.01であり、分析点数n=3で測定した質量平均粒子径の標準偏差が好ましくは0〜20、より好ましくは0〜10であり、分析点数n=3で測定した残存モノマーの標準偏差が好ましくは0〜20、より好ましくは0〜10である。
本発明において、標準偏差は、分析点数nにおける各種物性値のばらつきを表し、標準偏差が上記範囲となることによって、安定した品質の吸水性樹脂製品となる。分析点数nの数は、好ましくは前記範囲である。
【0082】
CRC、AAP、通液性、粒度などの標準偏差は下記式(1)で規定され、例えば、市販の計算ソフト(例えば、マイクロソフト社のエクセルのSTDEV)などでも計算できる。
標準偏差=分析点数nにおける諸物性の標準偏差 (1)
また、本発明によれば、吸水性樹脂製品の他の物性も同様に制御可能である。例えば、850μm以上の粗大粒子の含有量は標準偏差で好ましくは0〜1.00、より好ましくは0〜0.50、さらに好ましくは0〜0.20の範囲に制御可能である。また、添加剤の含有量や、残存モノマー、着色、pH、水可溶分など諸物性も安定的に制御できる。
【0083】
本発明においては好ましい実施形態の一つとして、表面改質工程において、従来は物性の制御が困難であった脱水反応性架橋剤を用い、より好ましくは脱水エステル化を行い、さらに好ましくは、多価アルコールを用いる。すなわち、本発明は、好ましくは、かかる表面架橋剤で吸水性樹脂製品に物性安定(上記の標準偏差)を与える新規な製造方法である。なお、吸水性樹脂製品の好ましい粒子径、水可溶分、残存モノマー、着色などは上記の範囲であり、重合工程での好ましい単量体はアクリル酸および/またはその塩を主成分とする。
〔吸水性樹脂製品の用途〕
本発明によれば、連続製造の際の品質にばらつきがなく安定した物性に優れた吸水性樹脂製品を簡便に製造することができる。異なる吸水性樹脂を混合することで、目的とする任意の物性の吸水性樹脂を得ることができる。本発明により得られる吸水性樹脂製品は、農園芸保水剤、工業用保水剤、吸湿剤、除湿剤、建材などで広く用いられるが、特に好ましくは、紙おむつ、生理用ナプキンなどに代表される、糞、尿ないし血液の吸収用衛生材料に用いられる。
【0084】
すなわち、本発明により得られる吸水性樹脂製品は各種物性がバランスよく優れ安定しているため、吸収用衛生材料としては、吸水性樹脂の濃度(吸水性樹脂および繊維基材の合計に対する吸水性樹脂の質量比(重量比))が高濃度、好ましくは30〜100質量%、より好ましくは40〜100質量%の範囲、さらに好ましくは50〜95質量%で使用可能である。また、衛生材料中の吸水体(吸収コア)の構造は、一般の吸水性物品に用いられる構造であれば特に制限はなく、例えば、シート状に成形した親水性繊維材料の間に吸水性樹脂を配する、いわゆるサンドイッチ構造の吸水体や、親水性繊維材料と吸水性樹脂を混合したものを成形した、いわゆるブレンド構造の吸水体が挙げられる。
【実施例】
【0085】
以下に、実施例と比較例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下では、便宜上、「質量部」を単に「部」と記すことがある。また、「質量%」を単に「%」と記すことがある。
(1)CRCによる無加圧下吸収倍率
欧州特許1153656号に準じて以下に測定した。すなわち、吸水性樹脂0.200gを不織布製の袋(60mm×60mm)に均一に入れ、室温で0.9質量%生理食塩水中に浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機を用いて250Gで3分間水切りを行った後、袋の質量W1(g)を測定した。また、同様の操作を吸水性樹脂を用いずに行い、その時の質量W0(g)を測定した。そして、これらW1、W0から次式に従って、CRCによる無加圧下吸収倍率(g/g)を算出した。
【0086】
CRCによる無加圧下吸収倍率(g/g)=(W1(g)−W0(g))/吸水性樹脂の質量(g)
(2)AAPによる加圧下吸収倍率
米国特許5140076号に準じて以下に測定した。すなわち、内径60mmのプラスチックの支持円筒の底に、ステンレス製金網(目の大きさ38μm)を融着させ、該網上に吸水性樹脂0.900gを均一に散布した。その上に、吸水性樹脂に対して4.9kPaの荷重を均一に加えることができるよう調整された、外径が60mmよりわずかに小さく支持円筒の内壁面との間に隙間が生じず、かつ上下の動きが妨げられないピストンと荷重とをこの順に載置し、この測定装置一式の質量Wa(g)を測定した。直径150mmのペトリ皿の内側に直径90mmのガラスフィルターを置き、0.90質量%生理食塩水(25℃)をガラスフィルターと同じレベルになるように加えた。その上に、直径90mmの濾紙を載せ、表面が全て濡れるようにし、かつ過剰の液を除いた。上記測定装置一式を前記湿った濾紙上に載せ、液を荷重下で吸収させた。1時間後、測定装置一式を持ち上げ、その質量Wb(g)を測定した。そして、Wa、Wbから、次式に従ってAAPによる加圧下吸収倍率(g/g)を算出した。
【0087】
AAPによる加圧下吸収倍率(g/g)
=(Wa(g)−Wb(g))/吸水性樹脂の質量((0.9)g)
(3)水可溶性分(可溶分とも略すことがある)
吸水性樹脂500mgを1000mlの室温の脱イオン水に分散し、40mmのマグネテックスターラーで16時間攪拌後、濾紙(TOYO、No.6)で膨潤ゲルを分離し、ろ過した。次いで、吸水性樹脂から溶出した濾液中の水溶性ポリマーをコロイド滴定することで、吸水性樹脂中の水可溶性分の質量%(対吸水性樹脂)を求めた。
(4)残存モノマー
上記(3)において、別途、調製した2時間攪拌後の濾液を液体クロマトクラフィーでUV分析することで、吸水性樹脂の残存モノマー量(ppm/対吸水性樹脂)も分析した。
【0088】
(5)粒度および質量平均粒子径
連続測定する際、吸水性樹脂の粒度分布は赤外線半導体レーザー(波長690nm、AC100V)を用いて吸水性樹脂粉末の自由落下型乾式測定を行なった。
また、別法として吸水性樹脂10.0gを室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で、目開き850μm、600μm、500μm、300μm、150μmのJIS標準ふるい(THE IIDA TESTING SIEVE:径8cm)に仕込み、振動分級器(IIDA SIEVE SHAKER、TYPE:ES−65型、SER.No.0501)により、10分間分級を行った。残留百分率Rを対数確率紙にプロットし、これにより、質量平均粒子径(D50)を読み取った。
【0089】
(6)吸水性樹脂の着色評価(ハンター白度)
欧州特許942014号および同1108745号に準じた。すなわち、吸水性樹脂粉末の着色評価は、日本電色工業株式会社製の分光式色差計SZ−Σ80 COLOR MEASURING SYSTEMを用いた。設定条件(反射測定/付属の粉末・ペースト試料台(内径30mm)/標準として粉末・ペースト用標準丸白板No.2/30mmΦ投光パイプ)で、備え付けの試料台に約6gの吸水性樹脂を充填し(備え付け試料台の約6割程度の充填)、室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で上記分光式色差計にて表面色(ハンター白度(WB)およびYI(Yellow Index))を測定した。なお、WBは大きいほど、YIは小さいほど、低着色で実質白色に近づくことを示す。
【0090】
(7)pH
米国特許6444744号に準じて、100gの生理食塩水中での100mgの吸水性樹脂の分散液(23±2℃)のpHを測定した。
(8)加圧下通液性(通液速度)
米国特許5985944号に従い、吸水性樹脂0.5gを用いて荷重24.5g/cm2での生理食塩水(約25ml)に対する通液性を測定した。なお、加圧下通液性が高いほど、通液速度(秒)は短くなって好ましい。
(9)レーザー回析散乱法における体積−質量の換算
後述の製造例1において得られた表面架橋された吸水性樹脂粉末(1)の粒度分布を、バッチごとにレーザー回析散乱法を用いて体積で測定するとともに、別途、100点の粒度分布を篩分級によって質量で測定して、両者(体積−質量)の換算式を得た。得られた換算式を用いて、レーザー回析散乱法で測定された体積粒度を質量粒度(篩粒度)に換算した。
【0091】
〔製造例1〕
定量ポンプ、ベルト重合機、ゲル粉砕機、ベルト乾燥機、粉末粉砕機、分級機、加湿機(表面架橋剤の混合機)、加熱処理機からなる装置を搬送機で連結することで、図1のフロー図で示したように、重合工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、表面改質工程、輸送工程、および貯蔵工程を含む吸水性樹脂製品の連続製造方法により、吸水性樹脂製品を連続的に製造した。その生産量は300Kg/hrであった。詳細は以下の通りである。
(重合工程)
濃度41質量%で酸基の71モル%が中和されたアクリル酸ナトリウム水溶液で、且つ内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数n=9)を0.05モル%(対単量体)含むものを単量体(1)として準備した。該単量体(1)を20℃に保ち窒素で連続脱気後、過硫酸ナトリウムを0.12g/単量体モル、L−アスコルビン酸を0.005g/単量体モル、それぞれ水溶液で連続混合したのち瞬時に、定量ポンプで窒素シールされたエンドレスベルト上に厚み20mmとなるように連続フィードした。重合は約1分で開始し、約20分で移動ベルトの末端から含水ゲル状架橋重合体(1)を連続排出した。
【0092】
(乾燥工程)
次いで、該架橋重合体(1)を連結されたミートチョッパーで約1mmの粒子状に連続粗砕した後、これをバンド乾燥機の多孔板上に厚み3〜5cmで載せ、露点60℃で温度170℃の熱風を上下に通気させて30分間連続熱風乾燥したところ、乾燥機出口でブロック状の乾燥重合体(1)が得られた。
(粉砕工程および分級工程)
この乾燥重合体(1)を取り出したと同時に解砕し、得られた粒子状乾燥物を300kg/hrで3段ロールグラニュレーター(ロールギャップが上から1.0mm/0.55mm/0.42mm)に連続供給することで粉砕した。得られた約60℃の粒子状吸水性樹脂の粉末をJIS850μm標準篩で連続分級し、90質量%以上が850μm未満で150μm以上のサイズの吸水性樹脂ベースポリマー(1)を得た。
【0093】
(表面改質工程)
さらに、吸水性樹脂ベースポリマー(1)を、高速連続混合機(タービュライザー/1000rpm)に連続供給して、1,4−ブタンジオール/プロピレングリコール/水/24%水酸化ナトリウム水溶液=0.39/0.62/3.39/0.3(質量%/対ベースポリマー)からなる表面架橋剤水溶液を、平均約200μmの液滴になるスプレーで噴霧し混合した。次いで、得られた混合物(1)を195℃で40分間、パドルドライヤーにより連続的に加熱処理し、さらに、網目開き850μmのふるい網を有する篩い分け装置で分級(第2の分級工程)した後に貯蔵することで、表面架橋された吸水性樹脂粉末(1)を得た。
【0094】
〔製造例2〕
製造例1の重合工程において単量体(1)に代えて、濃度38質量%で酸基の75モル%が中和されたアクリル酸ナトリウム水溶液で、且つ内部架橋剤としてトリメチロールプロパントリアクリレートを0.02モル%(対単量体)含むものを単量体(2)として用いることで、含水ゲル状架橋重合体(2)を得て、以下、同様に乾燥、粉砕および分級することで吸水性樹脂ベースポリマー(2)を得た。
吸水性樹脂ベースポリマー(2)に対して、高速連続混合機(タービュライザー/1000rpm)で連続供給して、エチレンングリコールジグリシジルエーテル/プロピレングリコール/水/イソプロパノール=0.1/0.9/3.0/0.5(質量%/対ベースポリマー)からなる表面架橋剤水溶液を、平均約200μmの液滴になるスプレーで噴霧し混合した。次いで、得られた混合物(2)を195℃で40分間、パドルドライヤーにより連続的に加熱処理し、さらに、網目開き850μmのふるい網を有する篩い分け装置で分級(第2の分級工程)した後に貯蔵することで、表面架橋された吸水性樹脂粉末(2)を得た。
【0095】
〔製造例3〕
製造例2の連続製造において以下の条件変更を行い、吸水性樹脂粉末(3)を得た。
すなわち、吸水性樹脂ベースポリマー(2)に混合する表面架橋剤水溶液を、プロピレングリコール/水/イソプロパノール=0.5/2.0/0.5(質量%/対ベースポリマー)に変更し、得られた混合物(3)を210℃で30分加熱処理した。さらに同様に分級および貯蔵することで、表面架橋された吸水性樹脂粉末(3)を得た。
〔比較例1〕
製造例1において、上記工程を24時間運転で2週間連続で行い、1tごと(約3.3時間ごと)に吸水性樹脂の物性を測定し、そのLotごとの物性値の平均値と標準偏差を求めた(分析点数n:約100)。結果を表1に示した。
【0096】
〔比較例2〕
製造例2において、上記工程を24時間運転で2週間連続で行い、1tごと(約3.3時間ごと)に吸水性樹脂の物性を測定し、そのLotごとの物性値の平均値と標準偏差を求めた(分析点数n:約100)。結果を表1に示した。
〔実施例1〕
比較例1で得られた吸水性樹脂のLotでAAP値の上位および下位10%のみをバッチ式で分離して、分離された上位および下位10%の吸水性樹脂を表面架橋後で第2の分級工程前の吸水性樹脂に20%づつ乾式混合したのち、そのLotごとの物性値の平均値と標準偏差を求めた。結果を表1に示した。
【0097】
〔実施例2〕
比較例1で得られた吸水性樹脂のLotでAAP値の下位10%のみをバッチ式で分離して、分離された下位10%の吸水性樹脂を表面架橋後で第2の分級工程前の吸水性樹脂に10%づつ乾式混合したのち、そのLotごとの物性値の平均値と標準偏差を求めた。結果を表1に示した。
〔実施例3〕
比較例2で吸水性樹脂の粒度を最終貯蔵工程前のラインから自由落下する吸水性樹脂の粒度分布を赤外線半導体レーザー(波長690nm)で連続乾式測定して、微粉量が2質量%を超える場合、自動的に2又に分離する第2ラインに分離した。こうして分離された吸水性樹脂を表面架橋後で第2の分級工程前の吸水性樹脂に乾式混合したのち、そのLotごとの物性値の平均値と標準偏差を求めた。結果を表1に示した。
【0098】
〔実施例4〕
比較例2で得られた吸水性樹脂のLotで加圧下通液性の下位1%のみをバッチ式で分離して、分離された下位1%の吸水性樹脂を表面架橋後で第2の分級工程前の吸水性樹脂に1%づつ乾式混合したのち、そのLotごとの物性値の平均値と標準偏差を求めた。結果を表1に示した。
〔比較例3〕
製造例3において、上記工程を24時間運転で2週間連続で行い、1tごと(約3.3時間ごと)に吸水性樹脂の物性を測定し、そのLotごとの物性値の平均値と標準偏差を求めた(分析点数n:約100)。結果を表1に示した。
【0099】
〔実施例5〕
比較例3で得られた吸水性樹脂のLotで加圧下通液性の下位1%のみをバッチ式で分離して、分離された下位1%の吸水性樹脂を表面架橋後で第2の分級工程前の吸水性樹脂に1%づつ乾式混合したのち、そのLotごとの物性値の平均値と標準偏差を求めた。結果を表1に示した。
〔実施例6〕
比較例3で得られた吸水性樹脂のLotでCRC値の下位2%のみをバッチ式で分離して、分離された下位2%の吸水性樹脂を表面架橋後で第2の分級工程前の吸水性樹脂に1%づつ乾式混合したのち、そのLotごとの物性値の平均値と標準偏差を求めた。結果を表1に示した。
【0100】
【表1】
【0101】
実施例1〜6および比較例1〜3の結果を表1に示すが、本発明の方法では諸物性の標準偏差(s)が非常に小さい。従来のように物性制御のために生産性(コスト)を犠牲にしなくとも、本発明では巨大なスケールでの連続製造や多品種生産でも物性を非常に安定化できる。また本発明によれば、生産性がむしろ向上する場合もある。また、本発明で得られる吸水性樹脂製品を用いた衛生材料(おむつなどの吸収物品)の吸水特性も非常に安定化できる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明によれば、連続製造の際の品質にばらつきがなく安定した物性に優れた吸水性樹脂製品を簡便に製造することができ、本発明により得られる吸水性樹脂製品は、農園芸保水剤、工業用保水剤、吸湿剤、除湿剤、建材などで広く用いられ、特に好ましくは、紙おむつ、生理用ナプキンなどに代表される、糞、尿ないし血液の吸収用衛生材料に用いられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂について、所定物性および/または所定成分量を測定する工程(A)と、
前記測定結果に従い、所定物性および/または所定成分量が一定以上および/または一定以下の値を示す吸水性樹脂(a)を、連続的に生産されてくる吸水性樹脂から所定量分離する工程(B)と、
前記分離した所定量の吸水性樹脂(a)の少なくとも一部を、同一の製造ラインまたは別の製造ラインにおいて分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂と混合する工程(C)とを含む、
吸水性樹脂製品の連続製造方法。
【請求項2】
前記工程(C)における混合を製造ラインの途中で行う、請求項1に記載の吸水性樹脂製品の連続製造方法。
【請求項3】
分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂について所定物性および/または所定成分量を測定する工程(A)を含み、
且つ、前記測定結果に従い、製造条件を変更する、
吸水性樹脂製品の連続製造方法。
【請求項4】
前記所定物性および/または所定成分量を測定する吸水性樹脂が表面改質工程を経て最終的に得られる吸水性樹脂製品である、請求項1から3までのいずれかに記載の吸水性樹脂製品の連続製造方法。
【請求項5】
前記所定物性および/または所定成分量が、無加圧下吸収倍率、加圧下吸収倍率、通液性、および粒度から選ばれる少なくとも1つである、請求項1から4までのいずれかに記載の吸水性樹脂製品の連続製造方法。
【請求項6】
前記粒度をレーザー回析散乱法で測定する、請求項5に記載の吸水性樹脂製品の連続製造方法。
【請求項7】
分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂の粒度を測定する工程を含み、吸水性樹脂製品を連続的に製造する方法において、
前記吸水性樹脂の粒度をレーザー回析散乱法で測定することを特徴とする、
吸水性樹脂製品の連続製造方法。
【請求項8】
解析された粒度にあわせて製造条件を変更する、請求項7に記載の吸水性樹脂製品の連続製造方法。
【請求項9】
アクリル酸および/またはその塩を含む単量体を架橋重合した後、脱水反応性架橋剤を用いて表面架橋することによって得られる吸水性樹脂製品であって、
(1)質量平均粒子径が300〜600μm、
(2)残存モノマー量が500ppm以下、
(3)分析点数n=3で測定した無加圧下吸収倍率の平均値が25g/g以上、標準偏差が0〜0.50、
(4)分析点数n=3で測定した1.9kPaまたは4.9kPaでの加圧下吸収倍率の平均値が20g/g以上、標準偏差が0〜0.35、
(5)分析点数n=3で測定した150μm未満の微粉量の平均値が5.0質量%未満、標準偏差が0〜0.50、
であることを特徴とする、吸水性樹脂製品。
【請求項10】
前記脱水反応性架橋剤が多価アルコールである、請求項9に記載の吸水性樹脂製品。
【請求項1】
分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂について、所定物性および/または所定成分量を測定する工程(A)と、
前記測定結果に従い、所定物性および/または所定成分量が一定以上および/または一定以下の値を示す吸水性樹脂(a)を、連続的に生産されてくる吸水性樹脂から所定量分離する工程(B)と、
前記分離した所定量の吸水性樹脂(a)の少なくとも一部を、同一の製造ラインまたは別の製造ラインにおいて分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂と混合する工程(C)とを含む、
吸水性樹脂製品の連続製造方法。
【請求項2】
前記工程(C)における混合を製造ラインの途中で行う、請求項1に記載の吸水性樹脂製品の連続製造方法。
【請求項3】
分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂について所定物性および/または所定成分量を測定する工程(A)を含み、
且つ、前記測定結果に従い、製造条件を変更する、
吸水性樹脂製品の連続製造方法。
【請求項4】
前記所定物性および/または所定成分量を測定する吸水性樹脂が表面改質工程を経て最終的に得られる吸水性樹脂製品である、請求項1から3までのいずれかに記載の吸水性樹脂製品の連続製造方法。
【請求項5】
前記所定物性および/または所定成分量が、無加圧下吸収倍率、加圧下吸収倍率、通液性、および粒度から選ばれる少なくとも1つである、請求項1から4までのいずれかに記載の吸水性樹脂製品の連続製造方法。
【請求項6】
前記粒度をレーザー回析散乱法で測定する、請求項5に記載の吸水性樹脂製品の連続製造方法。
【請求項7】
分級工程および/または表面改質工程を経て連続的に生産されてくる吸水性樹脂の粒度を測定する工程を含み、吸水性樹脂製品を連続的に製造する方法において、
前記吸水性樹脂の粒度をレーザー回析散乱法で測定することを特徴とする、
吸水性樹脂製品の連続製造方法。
【請求項8】
解析された粒度にあわせて製造条件を変更する、請求項7に記載の吸水性樹脂製品の連続製造方法。
【請求項9】
アクリル酸および/またはその塩を含む単量体を架橋重合した後、脱水反応性架橋剤を用いて表面架橋することによって得られる吸水性樹脂製品であって、
(1)質量平均粒子径が300〜600μm、
(2)残存モノマー量が500ppm以下、
(3)分析点数n=3で測定した無加圧下吸収倍率の平均値が25g/g以上、標準偏差が0〜0.50、
(4)分析点数n=3で測定した1.9kPaまたは4.9kPaでの加圧下吸収倍率の平均値が20g/g以上、標準偏差が0〜0.35、
(5)分析点数n=3で測定した150μm未満の微粉量の平均値が5.0質量%未満、標準偏差が0〜0.50、
であることを特徴とする、吸水性樹脂製品。
【請求項10】
前記脱水反応性架橋剤が多価アルコールである、請求項9に記載の吸水性樹脂製品。
【図1】
【公開番号】特開2009−256687(P2009−256687A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185177(P2009−185177)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【分割の表示】特願2003−405253(P2003−405253)の分割
【原出願日】平成15年12月3日(2003.12.3)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【分割の表示】特願2003−405253(P2003−405253)の分割
【原出願日】平成15年12月3日(2003.12.3)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】
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