説明

吸水性複合体の製造方法

【目的】 経時的な寸法・風合い・色目等の変化が少なく残存モノマーも少ない高品質で安全性の高い吸水性複合体の製造方法を提供する。
【構成】 酸基含有モノマーを必須とするモノマ−成分の水溶液を、pH値が6〜8となる様に調整し、これを発泡体に施した後、該モノマー成分を重合することを特徴とする吸水性複合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は吸水性複合体の製造方法に関するものであり、更に詳しくは経時的な寸法・風合い・色目等の変化が少なく、柔軟でかつ残存モノマーが少ない高品質の吸水性複合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、高吸水能を有する吸水性ポリマーは、衛生用品の紙オムツや生理用ナプキン、食品用の肉・魚介類ドリップ吸収体、農園芸分野における保水剤等でさまざま使用されており、土木材料または建築材料としても利用されるようになってきた。しかしながら、これらの従来用いられている吸水性ポリマーは、高吸水性を有しているものの形状が粉体状であるため取り扱い性に課題があり吸収体内部でポリマーが移動あるいは脱落し吸水性能を低下させるという課題があった。
【0003】これらの課題を解決するためにこれまで吸水性ポリマーと不織布等の基材とが一体となったさまざまな吸水性複合体の製造方法が提案されている。例えば、特開昭62−22810号公報ではアクリル酸またはアクリル酸塩のモノマー水溶液を繊維質基体に施した後、ラジカル重合開始剤を用いて熱重合する吸水性複合体の製造方法が開示されている。又、特開昭63−105044号公報では重合により吸水性ポリマーに転換するアクリル酸とアクリル酸塩の混合水溶液を可撓性シートに付与した後、電子線照射により重合硬化させる吸水性複合体の製造方法が開示されている。
【0004】しかしながら、特にモノマー水溶液を基材に施した後該モノマーを重合して得られる吸水性複合体においては、得られた吸水性複合体が経時的に黄変して色目が変わったり、寸法も収縮し、当初の柔軟な風合いが堅く脆くなり、品質を著しく低下させるという課題があった。例えば、上記特開昭63−105044号公報の実施例では、アクリル酸モノマーとアクリル酸ナトリウムモノマーの混合比がモル比で20:80の混合水溶液(中和率80モル%;モノマー水溶液のpH値5.6)をポリウレタンスポンジに含浸後、電子線を照射して該重合硬化させた吸水性複合体が示されているが、この方法により得られた吸水性複合体は経時的に上記の様な劣化が起こり品質が著しく低下し、種々の用途への適応に際して好ましくないものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記課題を解決をするものである。従って、本発明の目的は、経時的な寸法・風合い・色目等の変化が少なく、柔軟でかつ残存モノマーが少ない高品質の吸水性複合体の製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を解決するための方法について鋭意検討した結果、酸基含有モノマーを必須とするモノマ−成分の水溶液を、特定のpH値となる様に調整し、これを発泡体に施した後、該モノマー成分を重合して得られる吸水性複合体が、前記問題点を解決できることを見出し、本発明に到達した。即ち本発明は、酸基含有モノマーを必須とするモノマ−成分の水溶液を、pH値が6〜8となる様に調整し、これを発泡体に施した後、該モノマー成分を重合することを特徴とする吸水性複合体の製造方法を提供するものである。
【0007】以下、本発明について詳細に説明する。
【0008】本発明の吸水性複合体の製造方法は、酸基含有モノマーを必須とするモノマ−成分の水溶液のpH値を6〜8の範囲にすることを必要とする。pH値が6〜8の範囲に制御された酸基含有モノマーを必須とするモノマ−成分の水溶液を発泡体に施した後、該モノマーを重合することで、経時的に寸法・風合い・色目の変化が少ない柔軟な吸水性複合体が得られるのである。又、モノマー成分の水溶液中に予め重合開始剤を含ませておくことが好ましく、特に酸化性重合開始剤とアゾ系重合開始剤を併用して酸基含有モノマーを必須とするモノマ−成分を重合することで未重合の残存モノマーを著しく低減させることができる。
【0009】本発明に用いられる酸基含有モノマーとしては、重合により吸水性ポリマーに転換し得るものであれば特に制限されない。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸および、それらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩;2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、および、それらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。好ましくはアクリル酸(塩)である。
【0010】また、モノマ−成分の水溶液のpH値が6〜8の範囲にある限り、アクリルアミド等の酸基を有しないモノマ−を全モノマ−成分に対して50モル%以下の量使用することも可能である。
【0011】上記モノマ−中には、架橋剤として、メチレンビスアクリルアミド、ポリエチレングリコ−ルジアクリレ−ト、トリメチロールプロパントリアクリレート等に代表される1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を加えておくことができる。架橋剤の併用は、得られる吸水性複合体の耐久性や保形性を向上できるため好ましい。架橋剤の使用量は、上記モノマーの種類や重合条件により適宜選択することができるが、一般に0.001〜10モル%(対酸基含有モノマー)の範囲であり、好ましくは0.01〜5モル%(対酸基含有モノマー)の範囲である。
【0012】必要に応じて、上記したモノマーの水溶液中に重合開始剤や増粘剤、その他の添加剤が加えられてもよい。その他の添加剤としては紫外線吸収剤、防かび剤、難燃剤、吸湿剤等の添加剤が挙げられ、新たな機能を付与することも可能である。
【0013】本発明において、上記の酸基含有モノマーを必須とするモノマ−成分の水溶液のpH値を6〜8の範囲に調整することが、得られる吸水性複合体の品質を高めるために極めて重要である。
【0014】モノマー成分の水溶液のpH値が6〜8の範囲を離れると、重合時または製品の保存・使用時にスポンジ基材またはポリマーの劣化を促進し、製品の寸法が収縮し、風合いが堅く脆くなり、色目も黄変してしまうので好ましくない。例えばモノマー成分の水溶液のpH値が9を越える場合においては、得られる吸水性複合体は寸法変化が大きく、風合い、色目において、その品質が大きく低下してしまうという問題を有する。本発明の吸水性複合体の製造方法における別の利点としては、使用するモノマー成分の水溶液のpH値が6〜8の範囲であるために、吸水性複合体製造時の酸またはアルカリによる薬傷の危険性をも低下でき、更に得られる吸水性複合体中の残存モノマー量をも低減できるので好ましい。本発明において、酸基含有モノマ−の濃度は、前記酸基含有モノマーを必須とするモノマ−成分の水溶液に対して、通常10重量%〜飽和濃度の範囲が好ましく用いられるが、得られる吸水性複合体の生産性の観点から、より好ましくは30重量%〜飽和水溶液濃度の範囲である。
【0015】本発明において、たとえばモノマー成分として、37重量%のアクリル酸(ナトリウム)水溶液を用いる場合、モノマー水溶液のpH値を6〜8にするためにはモノマーの中和率を約85モル%から99.5モル%までの極めて狭い範囲に調製する必要がある。pH値がこの範囲を離れることは上記理由により好ましくない。尚、本発明においてpH値がこの範囲となるのであれば、くえん酸、燐酸その他のpH調製剤をモノマー水溶液中に添加しておくことも可能である。
【0016】本発明のモノマー成分の水溶液を施す発泡体としては、該モノマー成分の水溶液が付着可能な基材であれば特に制限はされず、軽石等の骨材、発泡スチロ−ルや発泡フェノ−ル等の発泡体、各種スポンジ状基材などが挙げられる。中でも好ましくは、高いクッション性及び広い表面積を持つ連続気泡構造を有するスポンジ状基材である。本発明のスポンジ状基材を構成する素材としては親水性、疎水性の何れも使用できる。例えば、ポリウレタンスポンジ、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ゴムスポンジ、ポリビニルアセタール系スポンジ、ビスコーススポンジが挙げられ、これらの2種以上の複合体も用いることができる。又、着色または難燃化された上記スポンジ状基材も用いることができる。
【0017】本発明の発泡体にモノマー成分の水溶液を施す方法としては特に限定はされないが、例えば水溶液の状態で、発泡体にモノマー成分の水溶液を塗布・印刷したり、噴霧、含浸する方法等によりモノマーを基材に付着できる。又、必要に応じて噴霧・含浸後にローラー等で搾り取り、モノマー付着量をコントロールすることができる。また発泡体に対するモノマー成分の水溶液の付着量としては、固形分換算で発泡体100重量部に対し、モノマー成分1〜1000重量部の範囲が好ましい。
【0018】このようにして発泡体に施されたモノマー成分の水溶液は、公知の手段により重合し、発泡体に吸水性ポリマーが直接固着した本発明の吸水性複合体とすることができる。重合させる方法としては、例えば、熱、光、放射線、紫外線、マイクロ波等を用いる方法を採用できる。中でも重合開始剤を用いた熱重合が、得られる吸水性複合体の特性から好ましく、この場合予めモノマー成分の水溶液に重合開始剤を含ませておくと重合性を更に向上させることができる。重合後、必要により、加熱、常温または減圧乾燥、高湿乾燥、再含水乾燥、電子線、ガンマー線等の放射線照射、酸化性または還元性物質の添加処理等の後処理を行い残存モノマー等をより低減させ更に品質を向上させてもよい。
【0019】本発明のモノマー成分の水溶液に含ませる重合開始剤としては、水溶性または水と混合・分散可能な酸化性またはアゾ系のラジカル性重合開始剤が好適である。例えば、酸化性重合開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素;ジ第3ブチルペルオキシド、アセチルペルオキシド等の有機過酸化物等が挙げられ、アゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’ジメチレンイソブチルアミジン)2塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物を挙げることができる。
【0020】特に、重合開始剤として酸化性重合開始剤とアゾ系重合開始剤とを併用することが、得られた吸水性複合体の残存モノマーを格段に少なくすることができ好ましい。アゾ系重合開始剤と酸化性重合開始剤とを併用することで、重合初期における重合を迅速に開始できると共に重合後期の重合率を著しく高めることができる。
【0021】酸化性重合開始剤およびアゾ系重合開始剤の使用量は各々モノマーに対して0.001〜10g/モルであり、重合性、安全性の観点から各々0.01〜5g/モルが好ましい。重合開始剤量が各々0.001g/モル未満であるとモノマーの重合性が低下し、各々10g/モルを越えると重合後に重合開始剤が残存し安全性に問題が生じる。又、酸化性重合開始剤およびアゾ系重合開始剤を併用する場合の混合比は酸化性重合開始剤量100重量部に対してアゾ系重合開始剤量は100重量部〜1重量部の範囲が好ましく、これよりもアゾ系重合開始剤の割合が多くなると得られる吸水性複合体は吸水時にぬめりが生じ好ましくない。
【0022】又、必要によりこれらの酸化性重合開始剤とアゾ系重合開始剤の併用に加え、更に上記重合開始剤を複数併用したり亜硫酸塩やL−アスコルビン酸等の還元性物質を添加してレドックス重合を行っても良い。
【0023】発泡体は、広い表面積を持つ連続気泡構造内に被吸収液体を迅速に吸収する吸収能及び高断熱性等を持っているが、この発泡体に吸水性ポリマーを重合により直接固着させる本発明の吸水性複合体は吸水性ポリマーの吸水・吸湿特性と共に上記発泡体の特性も合わせ持ったものとなる。特に、発泡体としてスポンジ状基材を用いると、更にクッション性に優れ、柔軟性,風合いの優れた吸水性複合体とすることが可能である。従って、血液等の吸水性ポリマーのみでは吸収し難い液体であっても迅速に多量に吸収でき、衛生材料や食品分野の用途に好適である。その他にもクッション性と吸水性とを要求される液漏れ防止材や包装材としても用いられ、断熱性の観点から窓、押入、コンテナ等の結露防止材としても有効である。
【0024】以上の本発明の製造方法で得られた吸水性複合体は接合剤や溶融接合等によって更に疎水性フィルムや断熱材との複合化や粘着剤層を設けることができ、用途に応じた製品設計を行うことができる。
【0025】
【作用】本発明の製造方法によれば、酸基含有モノマーを必須とするモノマ−成分の水溶液のpH値を6〜8の範囲に調整することで、重合時または製品の保存・使用時に酸またはアルカリによる発泡体またはポリマーの劣化を防ぐことができ経時的に、製品の寸法変化がなく、柔軟な風合を保持し、変色のない保存安定性に優れた高品質の吸水性複合体を得ることができる。
【0026】又、モノマー水溶液を施してなる発泡体は、高いクッション性及び広い表面積を持つ連続気泡構造内に被吸収液体を迅速に吸収する吸収性能及び高断熱性等の特性を持っており、この発泡体と吸水性ポリマーが直接固着し一体となった本発明の吸水性複合体は、吸水性ポリマーの吸水・吸湿特性と共に上記発泡体の特性を合わせ持ったものとなる。特に、発泡体としてスポンジ状基材を用いると、更にクッション性に優れ、柔軟性や風合いの優れた吸水性複合体とすることが可能である。従って、その断熱性と吸収性の効果により、その吸水性複合体は結露防止や血液等の吸水性ポリマーのみでは吸収し難い液体であっても迅速に吸収できるものとなる。
【0027】更に、モノマー水溶液に含ませる重合開始剤として、酸化性重合開始剤とアゾ系重合開始剤とを併用することで、得られた吸水性複合体の残存モノマーを格段に少なくすることができるのみならす、優れた経時安定性を有する吸水性複合体を提供できる。
【0028】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】尚、実施例記載の吸水量、残存モノマー量、寸法変化率を下記の方法で測定した。
【0030】(吸水量)5*5cmに切り取った吸水性複合体の乾燥試料をイオン交換水100mlが入った120mlビーカー内に入れ1時間浸漬した。その後、濾紙上で20秒間吸引し余分な水を取り除き試料重量を測定した。下記の式に従い吸水量を算出した。
【0031】吸水量(g/m2)=(吸水後の重量−初期乾燥重量)/試料サイズ(残存モノマー量)乾燥ポリマー量が0.5gとなる吸水性複合体の試料を細かく細断し1Lのイオン交換水中に分散・攪拌せしめ2時間後分散液をワットマン濾紙で濾過し濾液中の残存モノマー量をHPLCを用い測定した。その測定値により吸水性ポリマー中の残存モノマー量を求めた。
【0032】(寸法変化率)100mm*100mmの吸水性複合体の試料の4辺の寸法を正確に測定し室内で2ヶ月放置した。その後、試料の4辺を測定し下記の式に従って寸法変化を算出した。尚、記載した測定値は4辺各々の寸法変化率を百分率で表した値の平均値である。
【0033】寸法変化率=(初期の寸法−2ヶ月後の寸法)/初期の寸法(実施例1)99モル%が水酸化ナトリウムにより中和された部分中和アクリル酸ナトリウム水溶液にN,N’−メチレンビスアクリルアミド1.0モル%(対アクリル酸ナトリウムモノマー)および過硫酸ナトリウム1.5g/モル(対アクリル酸ナトリウムモノマー)を溶解し36重量%のモノマー水溶液を調製した。このモノマー水溶液のpH値は7.0であった。次にこのモノマー水溶液に、坪量が80g/m2のポリウレタンスポンジを浸漬し、該水溶液を含浸させた後、余分なモノマー水溶液をローラーで絞り取った。この含浸物を加熱しラジカル重合を行って、92g/m2の吸水性ポリマーが基材に直接固着した吸水性複合体(1)を得た。 得られた吸水性複合体の吸水量は3900g/m2で残存モノマー量は900ppmであった。又、吸水性複合体(1)は厚みのある連続気泡構造となっておりその断熱性と吸収効果により結露防止効果に優れ、水溶液、体液、血液等を迅速に吸収できうるものであった。
【0034】次にこの吸水性複合体(1)の寸法変化を調べたところ寸法変化率は0%で全く収縮は起こらなかった。又、風合いについては寸法変化試験前と同じく柔軟な風合い及びクッション性を保持し、色目についてもポリウレタンスポンジ基材自体の変色と同程度の僅かな変色にとどまった。
【0035】(実施例2)実施例1の重合開始剤である過硫酸ナトリウム1.5g/モルを過硫酸ナトリウム1.0g/モル及び2,2’−アゾビス(N,N’ジメチレンイソブチルアミジン)2塩酸塩0.5g/モルに変更して、酸化性重合開始剤とアゾ系重合開始剤とを併用した他は実施例1と同じ条件でモノマー水溶液を調製した(pH値7.0)。次にこのモノマー水溶液に、坪量が80g/m2のポリウレタンスポンジを浸漬し、該水溶液を含浸させた後、余分なモノマー水溶液をローラーで絞り取った。この含浸物を加熱しラジカル重合を行って、95g/m2の吸水性ポリマーが基材に直接固着した吸水性複合体(2)を得た。
【0036】得られた吸水性複合体の吸水量は4000g/m2で残存モノマー量は200ppmであった。重合開始剤として酸化性重合開始剤のみを用いた場合、実施例1と比べアゾ系重合開始剤を併用することにより残存モノマー量の低減が見られた。又、吸水性複合体(2)は厚みのある連続気泡構造となっておりその断熱性と吸収効果により結露防止効果に優れ、水溶液、体液、血液等を迅速に吸収できうるものであった。
【0037】次にこの吸水性複合体(2)の寸法変化を調べたところ寸法変化率は0%で全く収縮は起こらなかった。又、風合いについては寸法変化試験前と同じく柔軟な風合い及びクッション性を保持し、色目についてもポリウレタンスポンジ基材自体の変色と同程度の僅かな変色にとどまった。
【0038】(比較例1)80モル%が水酸化ナトリウムにより中和された部分中和アクリル酸ナトリウム水溶液にN,N’−メチレンビスアクリルアミド1.0モル%(対アクリル酸ナトリウムモノマー)及び過硫酸ナトリウム1.5g/モル(対アクリル酸ナトリウムモノマー)を溶解し37重量%のモノマー水溶液を調製した。このモノマー水溶液のPH値は5.6であった。次にこのモノマー水溶液に、坪量が80g/m2のポリウレタンスポンジを浸漬し、該水溶液を含浸させた後、余分なモノマー水溶液をローラーで絞り取った。この含浸物を加熱しラジカル重合を行って、85g/m2の吸水性ポリマーが基材に直接固着した比較吸水性複合体(1)を得た。得られた比較吸水性複合体(1)の吸水量は3400g/m2で残存モノマー量は1100ppmであった。
【0039】次にこの比較吸水性複合体(1)の寸法変化を調べたところ寸法変化率は3%でかなりの寸法収縮が明らかに認められた。又、風合いについても寸法変化試験前と比べてかなり脆堅くなっており、色目についてもポリウレタンスポンジ自体の変色と比べて黄変の度合が著しかった。又、モノマー取り扱い時に鼻をつく酸臭が認められた。
【0040】(比較例2)60モル%が水酸化ナトリウムにより中和された部分中和アクリル酸ナトリウム水溶液にN,N’−メチレンビスアクリルアミド1.0モル%(対アクリル酸ナトリウムモノマー)及び過硫酸ナトリウム1.5g/モル(対アクリル酸ナトリウムモノマー)を溶解し46重量%のモノマー水溶液を調製した。このモノマー水溶液のpH値は5.1であった。次にこのモノマー水溶液に、坪量が80g/m2のポリウレタンスポンジを浸漬し、該水溶液を含浸させた後、余分なモノマー水溶液をローラーで絞り取った。この含浸物を加熱しラジカル重合を行って、110g/m2の吸水性ポリマーが基材に直接固着した比較吸水性複合体(2)を得た。得られた比較吸水性複合体(2)の吸水量は4500g/m2で残存モノマー量は950ppmであった。
【0041】次にこの比較吸水性複合体(2)の寸法変化を調べたところ寸法変化率は4%でかなりの寸法収縮が明らかに認められた。又、風合いについても寸法変化試験前と比べてかなり脆堅くなっており、色目についてもポリウレタンスポンジ基材自体の変色と比べて黄変の度合が著しかった。又、モノマー取り扱い時に鼻をつく酸臭が認められた。
【0042】(比較例3)100モル%が水酸化ナトリウムにより中和された部分中和アクリル酸ナトリウム水溶液にN,N’−メチレンビスアクリルアミド1.0モル%(対アクリル酸ナトリウムモノマー)及び過硫酸ナトリウム1.5g/モル(対アクリル酸ナトリウムモノマー)を溶解し36重量%のモノマー水溶液を調製した。このモノマー水溶液のpH値は9.1であった。次にこのモノマー水溶液に、坪量が80g/m2のポリウレタンスポンジを浸漬し、該水溶液を含浸させた後、余分なモノマー水溶液をローラーで絞り取った。この含浸物を加熱しラジカル重合を行って、80g/m2の吸水性ポリマーが基材に直接固着した比較吸水性複合体(3)を得た。得られた比較吸水性複合体(3)の吸水量は3200g/m2で残存モノマー量は960ppmであった。
【0043】次にこの比較吸水性複合体(3)の寸法変化を調べたところ寸法変化率は2%でかなりの寸法収縮が明らかに認められた。又、風合いについても寸法変化試験前と比べてかなり脆堅くなっており、色目についてもポリウレタンスポンジ基材自体の変色と比べて黄変の度合が著しかった。
【0044】(実施例3)実施例1の重合開始剤である過硫酸ナトリウム1.5g/モルをアゾ系重合開始剤である2,2’−アゾビス(N,N’ジメチレンイソブチルアミジン)2塩酸塩1.5g/モルに変更した他は実施例1と同じ条件でモノマー水溶液を調製した。次にこのモノマー水溶液(pH値7.0)に、坪量が80g/m2のポリウレタンスポンジを浸漬し、該水溶液を含浸させた後、余分なモノマー水溶液をローラーで絞り取った。この含浸物を加熱しラジカル重合を行って、91g/m2の吸水性ポリマーが基材に直接固着した吸水性複合体(3)を得た。得られた吸水性複合体(3)の吸水量は3800g/m2であり、残存モノマー量は850ppmであった。吸水性複合体(3)の寸法変化率は0%であり、風合いについても寸法変化試験前と同じく柔軟な風合い及びクッション性を保持し、色目についてもポリウレタンスポンジ基材自体の変色と同程度の僅かな変色にとどまった。
【0045】
【発明の効果】本発明の吸水性複合体の製造方法によれば、経時的な寸法・色目の変化が少なく、柔軟性を保持した、残存モノマーも少ない吸水性複合体を得ることができる。
【0046】従って、極めて品質及び安全性の高い吸水性複合体が得られることから本発明の吸水性複合体は衛生用品の紙オムツ、生理用ナプキン等や食品用の肉・魚介類のドリップ吸収体等の吸水剤として用いることができる。その他にも液漏れ防止材や包装材としても好適であり、空調機、窓、押入、コンテナ、建材等の結露防止材や油中水分除去材料、杭引き抜き用潤滑材、蒸発体としても使用できる。
【0047】

【特許請求の範囲】
【請求項1】 酸基含有モノマーを必須とするモノマ−成分の水溶液を、pH値が6〜8となる様に調整し、これを発泡体に施した後、該モノマー成分を重合することを特徴とする吸水性複合体の製造方法。
【請求項2】 酸基含有モノマーがアクリル酸である請求項1記載の吸水性複合体の製造方法。
【請求項3】 酸基含有モノマーを必須とするモノマ−成分の水溶液に重合開始剤を含ませてなる請求項1または2記載の吸水性複合体の製造方法。
【請求項4】 重合開始剤として酸化性重合開始剤とアゾ系重合開始剤とを併用する請求項3記載の吸水性複合体の製造方法。
【請求項5】 酸化性重合開始剤100重量部に対するアゾ系重合開始剤の量が1〜100重量部の範囲である請求項4記載の吸水性複合体の製造方法。

【公開番号】特開平7−278342
【公開日】平成7年(1995)10月24日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−73305
【出願日】平成6年(1994)4月12日
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)