説明

吸水蒸散シート

【課題】湿潤時の吸水性,水蒸散性ならびに形態保持性に優れ、機械特性の良好な吸水蒸散シートを提供する・
【解決手段】スパンボンド不織布あるいは熱接着性複合短繊維を主体とした不織布からなる基材1の両側に内層として水流加工された不織布2を、更に、その両外側に外層として異形断面の短繊維のウエブ3を積層してニードル加工を施し一体化して後、アクリル系のバインダーで樹脂加工してなる積層体不織布において、その目付質量が200〜600g/m2の範囲で、揚水能が160mm以上、湿潤時2.5%引張応力が50〜150N/5cm、湿潤剛軟度が120〜300mmである各特性を具備せしめた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷蔵庫のドレーンや加湿器の保水,水蒸散,調湿等に利用される吸水蒸散部材としての吸水蒸散シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫のドレーンや加湿器の保水,水蒸散,調湿等に利用される吸水蒸散部材として、吸水蒸散シートが種々検討され、例えば基材として吸水性に優れた素材を使用する、あるいは吸水剤を添着させる、強度の優れた素材を使用する等の改良が施されて来た。
【0003】
しかし、これらは吸水性に優れた素材を使用すれば強度が低下し、強度の優れた素材を利用すれば吸水性が不十分になるという一長一短があった。また、吸水剤を添着した場合には却って多くの吸水剤を添着する必要が生じて、そのための強度のある基材を得ることが難しいという問題があった。
【0004】
そこで、これらの問題に対処すべく検討が加えられ、例えば吸水性基材Aと吸水性基材Bの間に吸水剤を封入すること(例えば特許文献1参照)や、吸水性樹脂を含む樹脂層と、該樹脂層に保持された水分を吸収し、外気中に蒸散させる放湿層を具えた吸放湿性の積層体(例えば特許文献2参照)や、液化繊維と硬化したバインダー樹脂からなる多孔性複合シートに特定の微粒子を添着することで親水性,力学特性を改良する技術(例えば特許文献3参照)などが提案されて来た。
【特許文献1】特開2002−103533号公報
【特許文献2】特開平10−85596号公報
【特許文献3】特開平1−283129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記各提案に係る吸水シートは、蒸散部材として使用するには十分な性能を有するとは云えず、特に湿潤時の機能として吸水、水蒸散を確保できて、かつ形態保持が十分でなければならないという吸水蒸散シートとしての要件を欠如する点で蒸散部材に使用するには十分なものとは云えなかった。
【0006】
本発明は叙上の如き実状に対処し、特に上記吸水,水蒸散の性能がよく、湿潤時の形態を保持するためには基材を用いることが好ましいことに着目して吸水性能を有する不織布を内層に用い、外層に水蒸散性能を有する不織布を配することを見出すと共に、使用上、好適な機能特性を見出すことにより湿潤時の吸水性,水蒸散性ならびに形態保持性に優れ、機械特性の良好な吸水蒸散シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、上記目的に適合する本発明の特徴は、スパンボンド不織布あるいは熱接着性複合短繊維を主体とした不織布からなる基材の両側に内層として水流加工された不織布を、更にその両外側に外層として異形断面の短繊維ウエブを積層してニードル加工を施し一体化して後、アクリル系のバインダーで樹脂加工してなる積層体不織布であって、その目付質量が200〜600g/m2の範囲で、揚水能が160mm以上、湿潤時2.5%引張応力が50〜150N/5cm、湿潤剛軟度が120〜300mmである各特性を有する吸水蒸散シートにある。
【0008】
請求項2〜5は上記吸水蒸散シートの好ましい実施態様であり、請求項2はスパンボンド不織布(SB)あるいは熱接着性複合短繊維を主体とした不織布(TB)からなる基材の目付質量は30〜100g/m2が好ましいこと、請求項3は水流加工された不織布(WP)の目付質量は30〜200g/m2が好ましいこと、また、請求項4は異形断面の短繊維からなるウエブ(WB)の目付質量は50〜300g/m2が好ましいこと、請求項5は樹脂加工に用いるアクリル系のバインダーには防臭、防カビ剤を添加して積層体不織布に付与する量は50〜150g/m2が好ましいことを夫々特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記本発明吸水蒸散シートは、吸水性能を有する不織布が内層にあり、その外層に水蒸散性能を有する不織布が存在するため、湿潤時において吸水,水蒸散の性能を頗る良好とすることができると共に、芯部に基材を配しているため湿潤時においても形崩れがなく、形態を良好に保持することができる。
【0010】
そして、上記構成に加え、揚水能が160mm以上で、湿潤時2.5%引張応力が50〜150N/5cm,湿潤剛軟度が120〜300mmである特性を有することから、上記湿潤特性の良好な効果をより確実に発揮することが可能となり、冷蔵庫のドレーンや加湿器の保水,水蒸散,調湿等の吸水蒸散部材として極めて優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、更に添付図面を参照し、本発明吸水蒸散シートの具体的な態様を説明する。図1は本発明吸水蒸散シートの基本的な構成を示し、図において1はスパンボンド不織布(SB)あるいは熱接着性複合短繊維を主体とした不織布(TB)よりなる基材であり、2は上記基材1の両側に内層として積層された水流加工、即ち、水交絡された短繊維による不織布(WP)、3は更にその外側で外層として積層された異形断面の短繊維ウエブ(WB)、で、これら基材1と内層2と外層3とは積層後、ニードル加工により一体化された後、その全体に対しアクリル系のバインダーで樹脂加工することによって基本構成をなす積層体不織布として形成される。
【0012】
上記本発明不織布は使用上、好ましくは目付質量が200〜600g/m2の範囲であり、より好ましくは230〜550g/m2の範囲で、200g/m2未満では吸水、水蒸散性能が十分に発揮することができず、また不織布の目付質量が600g/m2を超えると、上記性能は十分に発揮することができるが、過剰性能となり、またコストの面でも高くなるので好ましくない。以下、上記基本構成をなす積層体不織布の各層の構成について詳述する。
(a)基材
基材としてはスパンボンド不織布(SB)あるいは熱接着性複合繊維を主体とした不織布(TB)が用いられ、目付質量は30〜100g/m2が好ましい。目付質量が30g/m2未満であると積層体不織布の目標の湿潤剛軟度や湿潤2.5%伸張時応力を得ることが難しくなるので好ましくない。目付質量が100g/m2を超えると積層体不織布の目標の湿潤剛軟度や湿潤時2.5%伸張応力は十分に達成できるが、硬すぎて湿潤前の加工性に乏しくなるので好ましくない。
【0013】
スパンボンド不織布はポリエステル系,ポリアミド系あるいはポリオレフィン系樹脂からなる繊維が挙げられ、繊度範囲としては0.8〜6.0デシテックスが好ましいが、湿潤強度が安定すれば特に限定されるものではない。
【0014】
一方、熱接着性複合短繊維を主体とした不織布(TB)を形成する熱接着性複合繊維は高融点成分を芯とし、低融点性分を鞘とする芯鞘型が好ましく、サイドバイサイド型は接着面が半分の接着面となるので好ましくない。また、熱接着性繊維100%では接着の交点の柱がなくなるので好ましくない。
【0015】
複合短繊維の芯を形成する上記高融点成分は融点が低融点成分の融点より50℃以上高いこと、また、低融点成分の融点は90℃〜160℃の範囲にあることが好ましい。高融点成分の融点が低融点成分の融点より50℃未満であると単繊維間の接着時に高融点繊維側も軟化して所望の通気度を得ることが出来ない。低融点成分の融点が90℃未満であると繊維間の接着を実施する処理条件が難しく、耐熱性の点から好ましくない。逆に低融点成分の融点が160℃を超えると高融点繊維の熱特性に影響し接着を実施することで通気度特性が変動するので好ましくない。
【0016】
上記熱接着性複合短繊維を構成するポリマーは例えば、ポリエステル系樹脂,ポリエチレン系樹脂,ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂のいずれかの熱可塑性樹脂の高融点成分と低融点成分である。具体例としては、高融点ポリエステル繊維(融点250℃〜270℃程度)と低融点ポリエステル繊維(融点90℃〜160℃程度)の複合繊維、エステル/ナイロン複合繊維、ポリエステル/ポリエチレン複合繊維、ポリプロピレン/ポリエチレン複合繊維などが挙げられ、特に高融点ポリエステルと、低融点ポリエステルとの複合は最も実用的である。
【0017】
そして、不織布を構成する短繊維は通常の熱可塑性繊維と上記熱接着性複合繊維が混繊したものであってもよく、また熱接着性複合繊維が100%であってもよい。不織布を構成する短繊維が通常の熱可塑性繊維と熱接着性複合繊維の混繊である場合、通常の熱可塑性繊維と熱接着性複合繊維の混繊比率は0/100〜20/80がよく、通常の熱可塑性繊維が20を超えると接着繊維が少ないので短繊維間の接着点が少なくなるために湿潤剛軟度が低くなり、基材の役目を損なうので好ましくない。なお、混繊される通常の熱可塑性繊維としては上記熱接着性複合繊維の高融点成分繊維と同じものが好適である。
(b)内層
次に前記基材の両側に内層として積層される不織布は内層が水供給能を有する必要があることから水流加工された不織布が用いられる。それは水流加工によって処理される繊維の表面が水で洗われるために不要なもの、例えばカード開繊を改善するために付与された油剤等が水の交絡処理で洗浄除去され繊維表面が水との馴染みを良くすると共に、不織布内に水のパスが形成されるので水供給能が付与されることになるからである。
【0018】
この水流加工された不織布は目付質量が30〜200g/m2が好適である。もし目付質量が30g/m2未満であると積層体の不織布の吸水性能が劣り、目付質量が200g/m2を超えると積層体不織布の吸水性能が十分であるが過剰性能となるので好ましくない。水流加工された不織布としてはポリエステル系あるいはポリオレフィン系樹脂からなる繊維が好ましく、レーヨン,ナイロン等の湿潤性のある繊維や吸水繊維等は好ましくない。繊度範囲としては0.8〜6.0デシテックスが好ましいが、吸水性能が安定すれば特に限定されない。
(c)外層
外層は水蒸散能を有する必要があり、それには不織布を構成する繊維の表面積が大きい程、水の蒸散面が多くなるので好適である。その点、異形断面繊維は丸断面の繊維より表面積が大きいので好ましい。そしてこの異形断面の短繊維からなるウエブの目付質量は50〜300g/m2の範囲が好適である。目付質量が50g/m2未満であると積層体の不織布の水蒸散能が劣るので好ましくなく、また、目付質量が300g/m2を超えると積層体不織布の水蒸散性能は十分であるが、内層から送り込んでくる水を表面に送り込めず、水蒸散の能力が低下するので好ましくない。
【0019】
異形断面繊維は形成繊維としてポリエステル系あるいはポリオレフィン系樹脂からなる繊維が好ましく、レーヨン、ナイロン等、湿潤性のある繊維や吸水繊維等は好ましくない。これはポリエステル系あるいはポリオレフィン系樹脂からなる繊維と混繊して使用しても好ましくない。なお、繊度範囲としては1.0〜6.0デシテックスが好ましいが、水蒸散能が安定すれば特に限定されない。繊維の断面形状は表面積を大きく出来るものであれば特に限定されない。例えば三角断面、五角断面、六角断面、八画断面等が挙げられる。
(d)積層体の加工
上記のスパンボンド不織布(SB)あるいは熱接着性複合短繊維を主体とした不織布(TB)からなる基材の両側に内層として水流加工された不織布(WP)を、更にその両外側に外層として異形断面の短繊維のウエブ(WB)を積層した後は、この積層体に対し次に一体化処理を行うが、この一体化処理はニードルパンチ加工が交絡処理や厚さ調整が容易であるので好ましい。水交絡処理による積層体の一体化処理は好ましくない。
(e)バインダー加工
かくしてニードルパンチ加工によって上記積層一体化処理された積層体は更にその後、樹脂加工されることによって吸水蒸散シートに形成される。使用用途によっては長時間水に曝される場合があるため細菌、カビ等が発生し易く、異臭や変色が生じることがある。そのために樹脂加工においてバインダー溶液に防カビ剤、抗菌剤、また親水剤、顔料等を添加して不織布に付与することが好ましい。
【0020】
樹脂加工に用いる樹脂はアクリル系のバインダーが好ましく、バインダー溶液に親水剤,防臭、防カビ剤,顔料等を添加しても良い。しかし、樹脂としてエステル系のバインダーは硬くなり過ぎるので好ましくない。バインダー付与量は50〜150g/m2がよく、付与量が50g/m2未満では付与量が少ないために樹脂接着の効果が十分に出ず、逆に付与量が150g/m2を超えると樹脂接着の効果が出すぎて硬いものとなるので好ましくない。
【0021】
かくして得られた目付質量が200〜600g/m2の積層体不織布は吸水蒸散シートの目的を達成するにあたり、上記目付質量の範囲において下記の特性、即ち、揚水能が160mm以上で湿潤時、2.5%引張応力が50〜150N/5cm,湿潤剛軟度が120〜300mmの特性を具備せしめることが必要である。
【0022】
揚水能は上記160mm以上が好ましく、揚水能が160mm未満では水供給能と放水能があっても垂直の揚水能力が欠けるので水の大気への蒸発量が少なくなるので好ましくない。なお、水を大気に蒸発する水蒸発能は1.8g/2hrs以上で、水供給能が7.0g/2hrs以上を有することが好ましい。湿潤時2.5%引張応力は上記50〜150N/5cmの範囲がよく、湿潤時2.5%引張応力が50N/5cm未満では湿潤剛軟度が所定の範囲にあっても張りのない状態で湿潤時に形態が悪くなるので好ましくない。
【0023】
一方、湿潤時2.5%引張応力が150N/5cmを超えると湿潤剛軟度が所定の範囲にあっても硬すぎて変形追従性が悪くなる。また、湿潤剛軟度は120〜300mmの範囲であり、湿潤剛軟度が120mm未満では使用時の形態保持性が劣るので経時的に性能が低下する。逆に湿潤剛軟度が300mmを超えると積層体不織布が硬いために湿潤時の取り扱いで折れ曲がったり歪が残ってしまい性能の低下を招くので好ましくない。
【0024】
以上のように本発明吸水蒸散シートは前述した基本構成の積層体不織布と共に上記の各特性を具備することによって所期の目的を達成して効果を奏することができる。以下、更に本発明の実施例を比較例と共に説明する。
【実施例1】
【0025】
平均繊度2.2デシテックスからなるポリエステルスパンボンド不織布(SB)の目付質量50g/m2の基材の両側に繊度1.3デシテックス、繊維長51mmからなるポリエステル水交絡処理された不織布(WP)の目付質量23g/m2をそれぞれ配し、その外側に三角断面形状の繊度2.2デシテックス、繊維長51mmからなるポリエステル短繊維ウエブ(WB)の目付質量76g/m2をそれぞれ配した積層体の片側(A)面から針深さ8mm、打ち込み本数115本/cm2、反対側(B)面から針深さ16mm、打ち込み本数115本/cm2、更に針深さ7mm、打ち込み本数115本/cm2、更に片側(A)面に深さ13mm、打ち込み本数115本/cm2のそれぞれニードルパンチ加工処理を施した。得られたニードルパンチ加工処理された積層体をアクリル樹脂バインダー溶液に浸漬し、マングルローラを通して絞り、溶液含有量を調整し、熱処理機にて乾燥してバインダー付与量74g/m2とした吸水蒸散シートを得た。得られた吸水蒸散シートの目付質量は322g/m2、厚さ1.00mmであった。
【実施例2】
【0026】
繊度22.0デシテックス、繊維長64mmのポリエステル/低融点ポリエステル複合繊維(低融点ポリエステルの融点:110℃)75重量%と、繊度33.0デシテックス、繊維長76mmのポリエステル繊維(融点:260℃)10重量%、繊度4.4デシテックス、繊維長51mmのポリエステル/低融点ポリエステル複合繊維(低融点ポリエステルの融点:110℃)15重量%からなる目付質量65g/m2の基材の両側に1.3デシテックス、繊維長51mmからなるポリエステル水交絡処理された不織布の目付質量25g/m2をそれぞれ配し、更にその外側に三角断面形状の繊度2.2デシテックス、繊維長51mmからなるポリエステル短繊維ウエブの目付質量80g/m2をそれぞれ配した積層体の片側(A)面から針深さ8mm、打ち込み本数115本/cm2、反対側(B)面から針深さ16mm、打ち込み本数115本/cm2、更に針深さ7mm、打ち込み本数115本/cm2の、更に片側(A)面に針深さ13mm、打ち込み本数115本/cm2のそれぞれニードルパンチ処理を施した。得られたニードルパンチされた積層体をアクリル樹脂バインダー溶液に浸漬し、マングルローラを通し絞って溶液含有量を調整し、熱処理機にて乾燥して、バインダー付与量80g/m2とした吸水蒸散シートを得た。得られた吸水蒸散シートの目付質量は355g/m2、厚さ0.8mmであった。
【実施例3】
【0027】
繊度2.2デシテックスからなるポリエステルスパンボンド不織布の目付質量50g/m2の基材の両側に繊度1.3デシテックス、繊維長51mmからなるポリエステル水交絡処理された不織布の目付質量25g/m2をそれぞれ配し、更にその外側に三角断面形状の繊度2.2デシテックス、繊維長51mmからなるポリエステル短繊維ウエブの目付質量50g/m2をそれぞれ配した積層体の片側(A)面から針深さ8mm、打ち込み本数115本/cm2の、反対側(B)面から針深さ16mm、打ち込み本数115本/cm2、更に針深さ7mm、打ち込み本数115本/cm2の、更に片側(A)面に深さ13mm、打ち込み本数115本/cm2のそれぞれニードルパンチ加工処理を施した。得られたニードル加工処理された積層体をアクリル樹脂バインダー溶液に浸漬し、マングルローラを通して絞り、溶液含有量を調整し、熱処理機にて乾燥してバインダー付与量60g/m2とした吸水蒸散シートを得た。得られた吸水蒸散シートの目付質量は260g/m2、厚さ0.60mmであった。
【実施例4】
【0028】
繊度2.2デシテックスからなるポリエステルスパンボンド不織布の目付質量100g/m2の基材の両側に繊度1.3デシテックス、繊維長51mmからなるポリエステル水交絡処理された不織布の目付質量75g/m2をそれぞれ配し、更にその外側に三角断面形状の繊度2.2デシテックス、繊維長51mmからなるポリエステル短繊維ウエブの目付質量120g/m2をそれぞれ配した積層体の片側(A)面から針深さ8mm、打ち込み本数115本/cm2の、反対側(B)面から針深さ16mm、打ち込み本数115本/cm2、更に針深さ7mm、打ち込み本数115本/cm2の、更に片側(A)面に針深さ13mm、打ち込み本数115本/cm2のニードルパンチ加工処理を施した。得られたニードルパンチ加工処理された積層体をアクリル樹脂バインダー溶液に浸漬し、マングルローラを通して絞り、溶液含有量を調整し、熱処理機にて乾燥してバインダー付与量80g/m2とした吸水蒸散シートを得た。得られた吸水蒸散シートの目付質量は570g/m2、厚さ1.5mmであった。
【0029】
比較例1
繊度1.3デシテックス、繊維長51mmからなるポリエステル水交絡処理された不織布の目付質量65g/m2をそれぞれ配し、その外側に丸断面形状の繊度2.2デシテックスからなるポリエステル短繊維ウエブの目付質量70g/m2をそれぞれ配した積層体の片側(A)面から針深さ8mm、打ち込み本数115本/cm2の、反対側(B)面から針深さ16mm、打ち込み本数115本/cm2、更に針深さ7mm、打ち込み本数115本/cm2の、更に片側(A)面に針深さ13mm、打ち込み本数115本/cm2のそれぞれニードルパンチ加工処理を施した。得られたニードルパンチ加工処理された積層体をアクリル樹脂バインダー溶液に浸漬し、マングルローラを通して絞り溶液含有量を調整し、熱処理機にて乾燥してバインダー付与量69g/m2とした吸水蒸散シートを得た。得られた吸水蒸散シートの目付質量%は339g/m2、厚さ1.25mmであった。
【0030】
比較例2
繊度1.3デシテックス、繊維長51mmからなるポリエステル水交絡処理された不織布の目付質量25g/m2をそれぞれ配し、その外側に三角断面形状の繊度2.2デシテックス、繊維長51mmからなるポリエステル短繊維ウエブの目付質量76g/m2をそれぞれ配した積層体の片側(A)面から針深さ8mm、打ち込み本数115本/cm2の、反対側(B)面から針深さ16mm、打ち込み本数115本/cm2、更に針深さ7mm、打ち込み本数115本/cm2の、更に片側(A)面と針深さ13mm、打ち込み本数115本/cm2のニードルパンチ加工処理を施した。得られたニードルパンチ加工処理された積層体をエステル樹脂バインダー溶液に浸漬し、マングルローラを通して絞り、溶液含有量を調整し、熱処理機にて乾燥してバインダー付与量80g/m2とした吸水蒸散シートを得た。得られた吸水蒸散シートの目付質量は282g/m2、厚さ0.9mmであった。
【0031】
比較例3
平均繊度2.2デシテックスからなるポリエステルスパンボンド不織布の目付質量50g/m2の基材の両側に繊度1.3デシテックス、繊維長51mmからなるポリエステル水交絡処理された不織布の目付質量25g/m2をそれぞれ配し、その外側に三角断面形状の繊度2.2デシテックス、繊維長51mmからなるポリエステル短繊維ウエブの目付質量80g/m2をそれぞれ配した積層体の片側(A)面から針深さ8mm、打ち込み本数115本/cm2の、反対側(B)面から針深さ16mm、打ち込み本数115本/cm2、更に針深さ7mm、打ち込み本数115本/cm2の、更に片側(A)面から深さ13mm、打ち込み本数115本/cm2のニードルパンチ加工処理を施し、吸水蒸散シートを得た。得られた吸水蒸シートの目付質量は260g/m2、厚さ0.8mmであった。
【0032】
比較例4
平均繊度2.2デシテックスからなるポリエステルスパンボンド不織布の目付質量50g/m2の基材の両側に繊度1.3デシテックス、繊維長51mmからなるポリエステル水交絡処理された不織布の目付質量25g/m2をそれぞれ配し、その外側に三角断面形状の繊度2.2デシテックス、繊維長51mmからなるポリエステル短繊維80重量%と、繊度3.3デシテックス、繊維長51mmのレイヨン短繊維20重量%からなるウエブの目付質量80g/m2をそれぞれ配した積層体の片側(A)面から針深さ8mm、打ち込み本数115本/cm2の、反対側(B)面から針深さ16mm、打ち込み本数115本/cm2、更に針深さ7mm、打ち込み本数115本/cm2の、更に片側(A)面に深さ13mm、打ち込み本数115本/cm2のニードルパンチ加工処理を施した。得られたニードルパンチ加工処理された積層体をアクリル樹脂バインダー溶液に浸漬し、マングルローラを通して絞り、液含有量を調整し、熱処理機にて乾燥してバインダー付与量80g/m2とした吸水蒸散シートを得た。得られた吸水蒸散シートの目付質量は340g/m2、厚さ1.00mmであった。
【0033】
次に上記実施例,比較例より得られた各吸水蒸散シートについて、その効果を確認するため対比した。その結果を各実施例,比較例の基材,水流加工された不織布吸水層及び異形断面,短繊維ウェブならびにバインダーの各種類をまとめた表1と共に表2に示す。なお、表2中の各項目については下記にもとづいて算出あるいは評価した。
目付質量:g/m2
20cm×20cmの大きさを切り出し、その時の重さを測定し、1m2当たりの重量に換算する。
厚さ:mm
20cm×20cmの大きさを切り出し、初荷重0.05g/m2をかけて、4隅の高さを測定し、その平均値で示す。
湿潤剛軟度:mm
5cm×30cmの試料を2時間蒸留水に浸漬し、取り出して軽く水きり後、カンチレバーで剛軟度を測定した。
揚水能:mm
JIS 1907 バイレツク法に準じた。
【0034】
5cm×30cmの試料を下端が3cm蒸留水に浸るようにセットし、2時間後の水の高さを測定した。
湿潤時2.5%伸張応力:N/5cm/2.5%
強伸度測定
東洋ボールドイン社製500Kgテンシロンを用い、下記条件で測定した。
【0035】
試料:200mm (試料巾 15mm)
測定試長:150mm (試料巾15mm)
引張り速度:200mm/min
n=5(5回測定し、その平均とした。)
湿潤時2.5%伸張応力:N/5cm/2.5%
試料を20℃の蒸留水に2時間浸漬し、試料を取り出し1分以内に軽く水切りし、伸張−応力曲線から2.5%伸張時の応力を算出した応力で示す。
水供給能:g/2hrs
25mm×200mmの試料を2時間蒸留水に浸漬し、取りだして軽く水切り後、両端5cmを直角に折り曲げて片方の端5cmを蒸留水に浸漬し、他の片方を試験管に差し込んで2時間後に試験管に溜まった水の量で示す。
水蒸散能:g/2hrs
25mm×200mmの試料を2時間蒸留水に浸漬し、取り出して軽く水きり後、重量%を測定し20℃、60%の湿度の室内に2時間放置後の重量を測定し、水の減量で示す。
形態保持性:
5cm×30cmの試料を2時間蒸留水に浸漬し、取り出して軽く水きり後、試料を折り曲げ、捻って試料の状態を評価した。
【0036】
試料を折り曲げ、捻っても折り目、変形歪がない。 ○
試料を折り曲げ、捻ると折り目はないがやや変形歪がある。 △
試料を折り曲げ、捻ると張りがないか、あるいは硬く折り皺、捻れ皺が残る。 ×
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

上記表2の結果よりみて本発明吸水蒸散シートは比較例に示す各シートに比較し、湿潤時の機能として吸水,水蒸散能を確保し、形態保持性を有する点において総合的に優れていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明吸水蒸散シートの断面を示す概要図である。
【符号の説明】
【0040】
1:基材
2:内層(水流加工された不織布)
3:外層(異形断面短繊維ウエブ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパンボンド不織布あるいは熱接着性複合短繊維を主体とした不織布からなる基材の両側に内層として水流加工された不織布を、更に、その両外側に外層として異形断面の短繊維のウエブを積層してニードル加工を施し一体化して後、アクリル系のバインダーで樹脂加工してなる積層体不織布であって、その目付質量が200〜600g/m2の範囲で、揚水能が160mm以上、湿潤時2.5%引張応力が50〜150N/5cm、湿潤剛軟度が120〜300mmである各特性を有することを特徴とする吸水蒸散シート。
【請求項2】
スパンボンド不織布あるいは熱接着性複合短繊維を主体とした不織布からなる基材の目付質量が30〜100g/m2である請求項1記載の吸水蒸散シート。
【請求項3】
水流加工された不織布の目付質量が30〜200g/m2である請求項1または2に記載の吸水蒸散シート。
【請求項4】
異形断面の短繊維からなるウエブの目付質量が50〜300g/m2である請求項1,2または3記載の吸水蒸散シート。
【請求項5】
樹脂加工に用いるアクリル系のバインダーには防臭,防カビ材が添加されて積層体不織布に付与する量が50〜150g/m2である請求項1,2,3または4記載の吸水蒸散シート。

【図1】
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【公開番号】特開2009−235649(P2009−235649A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85958(P2008−85958)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(391021570)呉羽テック株式会社 (57)
【Fターム(参考)】