説明

吸液体及び衛生用品

【課題】鮮やか、かつ均一に変色することにより、使用後において検査結果が明確に判別可能であるとともに、美観に優れ、安価かつ容易に製造することが可能となる吸液体を提供する。
【解決手段】保水材料17と、吸水性樹脂材料18と、排泄物検査用材料19とを含み、前記排泄物検査用材料は、吸着率20重量%以上であり、微細孔を有する多孔質吸着剤と、前記多孔質吸着剤の前記微細孔に吸着されている排泄物検査用指示薬を含み、前記排泄物検査用指示薬の添加量は、前記保水材料と前記吸水性樹脂材料の合計量に対して、0.03重量%を超えて0.5重量%以下の範囲内である吸液体とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排尿等の液体を吸液する吸液体及び当該吸液体を使用した衛生用品に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、室内での愛玩動物等の飼育が非常に盛んになってきており、排泄物の処理を効果的に行うためのペット用の吸液シートが提案されている。
ところで、人間同様に、愛玩動物の健康状態を留意する飼主も多くなってきているが、外形的状態を観察することにより健康状態の変化を調べることには限界があるため、手軽かつ早期にかかる状態の変化を発見したいというニーズが存在する。そのため、従来は、中性からアルカリ性になると変色するpH指示薬を含有するホットメルト接着剤が吸収体側面に塗布されることにより、表示部がトップシートに設けられている、衛生用品(紙おむつ等)が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−055004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記衛生用品では、愛玩動物が直接に変色面に触れること等から、pH指示薬の種類によっては、時間の経過により排尿等の液体が乾燥してpH指示薬の変色が退色してしまい、鮮やか、かつ均一に変色している変色状態の継続時間(以下、「退色時間」という。)が短くなり、ある程度の時間が経過した後は、変色状態が判別できなくなってしまい、健康状態の適切な判断が難しくなってしまうという問題点を有していた。
また、近時、排尿等の液体の検査機能を有するpH指示薬を含有する吸収性物品であっても美観を有すること(着色等を施すことにより、保存場所・使用場所等に調和する外観を呈するように形成すること)が要求されているが、一般的に用いられている色素を混入して着色等したときには、当該色素が検査を阻害してしまう場合があるという問題が存在していた。さらに、上記吸収性物品は、使用後は廃棄せざるを得ないものであるが、排尿等の液体の検査機能を有するpH指示薬は高価であるため、可能な限り安価に製造することが求められていた。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、鮮やか、かつ均一に変色することにより、使用後において検査結果が明確に判別可能であるとともに、美観に優れ、安価かつ容易に製造することが可能となる吸液体及び当該吸液体を使用した衛生用品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の吸液体は、保水材料と、吸水性樹脂材料と、排泄物検査用材料とを含み、上記排泄物検査用材料は、吸着率20重量%(好ましくは25重量%)以上であり、微細孔を有する多孔質吸着剤と、上記多孔質吸着剤の上記微細孔に吸着されている排泄物検査用指示薬(以下、「検査用指示薬」という。)を含み、上記検査用指示薬の添加量は、上記保水材料と上記吸水性樹脂材料の合計量に対して、0.03重量%を超えて0.5重量%以下の範囲内であることを特徴としている。
【0007】
ここで、保水材料とは、一定量の液体を自身の有する間隙等に保持することが可能となる保液性能又は吸液性能を有する材料であり、検査を阻害することがない限り、従来用いられている各種の有機質材料、無機質材料等を用いることができる。
【0008】
また、吸水性樹脂材料とは、多量の液体を吸収してゲル化し、当該液体を保持する機能を有する高分子材料である。
【0009】
また、上記検査用指示薬は、多孔質吸着剤に吸着させる必要があり、吸着させる方法は問わないものであるが、当該検査用指示薬を溶媒に溶解させた状態で定着させる(特に、インク組成物として定着させる)ことが好適である。
また、検査用指示薬は、尿等の排泄物と反応して変色することで、健康状態等の変化を認識できる各種の試薬であり、尿のpH値を検出する尿pH値の検出用指示薬(以下「尿pH値検査用指示薬」という。)、尿ブドウ糖検出用指示薬、尿蛋白検出用指示薬、尿潜血検出用指示薬又は尿ウロビリノーゲン検出用指示薬等の公知の指示薬を使用することができる。
【0010】
本発明の吸液体によれば、検査用指示薬を直接に添加するのではなく、当該検査用指示薬を多孔質吸着剤に吸着させている。多孔質吸着剤は間隙部に検査用指示薬を吸着させているため、色素により着色した場合であっても、色素が検査用指示薬に対する反応を阻害することがなく、使用後において検査結果が明確に判別可能であるため、効果的に検査を行うことができる。
【0011】
さらに、透液性能を有する表面シートと、不透液性能を有する裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に介装されている上記吸液体とを備える構成とすることにより、上記の各種効果を有する衛生用品を提供することができる。
【0012】
この衛生用品としては、複数枚のシート材の間に吸液体を備える構成であればいかなる製品であってもよく、吸水シート、紙製おむつ、排尿パッドなど、種々の製品に応用することができる。
【0013】
本発明の衛生用品によれば、表面シートと裏面シートの間に本吸液体が介装されているため、従来品である検査用指示薬が表面層のみに印刷されたシート材と比較して、液体分を保持した状態を長期にわたって継続することができることから、変色反応が継続している時間をより延ばすことができ、長時間にわたって、その性状に応じた健康状態を調べることができる。したがって、排尿時に注視していなくても、所定時間以内に変色状況を確認することにより、簡易に健康状態を調べることができる。
【0014】
また、上記衛生用品において、上記吸液体は、上下の二層から構成されており、上記上層には、少なくとも上記排泄物検査用材料と上記保水材料が含まれ、上記下層には、上記保水材料と上記吸水性樹脂材料が含まれていること、すなわち、上記上層のみに上記排泄物検査用材料が含まれており、上記下層に上記排泄物検査用材料が含まれていない構成とすれば、高価な排泄物検査用材料を少なくすることができるため、製造費用を低減させることができるため好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、鮮やか、かつ均一に変色することにより、使用後において検査結果が明確に判別可能であり、美観に優れ、安価かつ容易に製造することが可能である吸液体及び当該吸液体を使用した衛生用品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の吸液シート(第1実施形態)を示す断面図である。
【図2】本発明の吸液シート(第2実施形態)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための一形態(以下、「実施形態」という。)について、まず、吸液体(以下、「本吸液体」という。)について説明し、続いて、当該吸液体を使用した吸液シート(以下、「本吸液シート」という。)を例として、図面を参照して詳細に説明する。
また、検査用指示薬は、尿pH値検査用指示薬を例として説明する。
【0018】
(1)吸液体
本吸液体は、保水材料と、吸水性樹脂材料と、排泄物検査用材料とを含む構成材料から形成されている。
【0019】
<保水材料>
保水材料は、一定程度の吸液性能又は保液性能を有しており、排泄物の検査にあたり、その検査を阻害する物質(例えば、排泄物のpH値の変動を観察する場合には、その変動を与えない)を含まなければ、その材質等に制限はない。
例えば、pH値の検査を阻害しない紙由来の有機物廃材であるバージンパルプ、綿状に形成されているパルプ廃材(以下、「綿状パルプ」という。)、トイレットペーパー廃材、ティッシュペーパー廃材、化粧紙廃材、ちり紙廃材、紙タオル廃材、不織布廃材、プラスチック廃材の粉砕物、木材料の粉砕物(例えば、廃木材の粉砕物、ヒバ油又はヒノキチオール含有の木材粉砕物)等の中の1種類又は複数種類の混合物を用いることができる。これらの材料は、吸液等が可能となるように、何れも、0.5ミリメートル以下、好ましくは、0.3ミリメートル以下の粒度の粒状物に粉砕されて使用されることになる。
【0020】
また、保水材料には、ベントナイト、ゼオライト、酸化チタン等の無機質材料等を用いることもできる。
なお、脱臭材料、消臭材料、防虫作用・殺菌作用を有する物質、着色物質、吸水性能を阻害することなく、他の効果を奏することが可能となるような物質を配合することもできる。
【0021】
<吸水性樹脂材料>
吸水性樹脂は、多量の液体を吸収してゲル化し、当該液体を保持する機能を有する高分子材料(ポリマー)であり、排泄物の検査にあたり、その検査を阻害しない公知の物質を用いることができる。例えば、上記吸水性樹脂材料としては、CMC(カルボキシメチルセルロース)、ポリビニルアルコール(PVA)、澱粉(T−α化澱粉、デキストリン、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉)などの吸水性能を備える材料を使用することができる。
【0022】
<排泄物検査用材料>
排泄物検査用材料は、検査用指示薬を含有したインク組成物(以下、「検査用指示薬含有インク組成物」という)を多孔質吸着剤に吸着させたものである。
【0023】
(検査用指示薬含有インク組成物)
検査用指示薬含有インク組成物は、検査用指示薬をインク組成物に定着させたものである。
【0024】
◎検査用指示薬
排泄物のpH値の測定は、当該尿のpH値を検出して、例えば持続性の酸性尿又はアルカリ性尿の検出を行い、結石症やその他疾病の必要性を判断することを目的としている。犬や猫などの肉食動物の尿のpH値は、健康時で、4.3乃至7.0であるところから、通常時(健康時)のpH値4.3乃至7.0と、疾病時のpH値4.3未満又は疾病時のpH値7.0を超えたpH値を変色により判別することが可能となる、すなわち、pH値4.3又は7.0を閾値として変色する尿pH値検査用指示薬を使用することにより、その判別を行うことができる。
【0025】
また、人の尿のpH値は、健康時に通常の食事を摂っているときで、4.6乃至7.5であるところから、疾病時のpH値4.6未満又は疾病時のpH値7.6を超えたpH値を変色により判別することが可能となる、すなわち、pH値4.6又は7.5を閾値として変色する尿pH値検査用指示薬を使用することにより、その判別を行うことができる。
【0026】
このようなpH値、即ち、4.1乃至7.7のpH域に変色域を有する尿pH値検査用指示薬としては、チモールブルー、フェノールフタレイン、トロペオリンOOO、クレゾールレッド、フェノールレッド、ニュートラルレッド、ブロモチモールブルー、ブロモクレゾールパープル、ブロモフェノールレッド、p−ニトロフェノール、メチルレッド、ブロモクレゾールグリーン、テトラブロモフェノールブルー、クロロフェノールレッド、メチルオレンジ、エチルオレンジ、ブロモフェノールブルー、ブリリアントイエロー、コンゴーレッド又はブロモクレゾールブルー等が存在するため、検出の目的に応じて、上記の指示薬を単体で、あるいは、2種類以上の指示薬を組み合わせて使用することができる。
なお、適切な2種類以上の指示薬を組み合わせる場合には、所望の変色域の設定が可能となるとともに、所望の変色を行うことが可能となるため好適である。
また、この他に全pH域でpH値の測定を行うことができるユニバーサル指示薬を使用することもできる。
【0027】
例えば、変色時のpH値の閾値が4.3である場合には、ブロムフェノールブルー又はメチルオレンジとブロモクレゾールグリーンをエタノールに溶解させたものを使用すること、変色時のpH値の閾値が7.0である場合には、ブロムチモールブルーを使用することができる。
【0028】
◎インク組成物
上記検査用指示薬含有インク組成物は、検査用指示薬及び結合剤を公知のインク組成物に定着させたものであり、本実施形態では、上記尿pH値検査用指示薬を、例えば、セルロース及び該セルロースの誘導体の少なくとも一種類(以下、「セルロース等」という。)を有機溶媒中で分散、または、溶解させることにより作成することができる。具体的には、セルロース等の一種であるワニス、ヒドロキシプロピルセルロース等を加え、メタノール、エタノール等のアルコール類、トルエン等の芳香族炭化水素類、酢酸プロピル等のエステルなどの有機溶媒中で分散、又は、溶解して検査用指示薬含有インク組成物を形成するものである。
セルロース等については、セロール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が、濡れ性及び目視による判定がし易いなどの点から好ましい。またこの場合、溶剤としては、上記検査用指示薬及び結合剤としての樹脂を安定して溶解できる、又は分散できる溶剤を選ぶことが好ましい。
【0029】
結合剤は、排泄物の検査に影響を及ぼすことなく、検査用指示薬の変色を妨げず、また変色した色を安定化させる水溶性高分子化合物(天然親水性高分子化合物、半合成親水性高分子化合物)、並びに、排泄物の検査に影響を及ぼすことなく、また、検査用指示薬の変色を妨げることがないもので、被膜形成機能を有する水不溶性高分子化合物があるが、これら両者を組み合わせて形成するのが好ましい。
【0030】
上記天然親水性高分子化合物としては、甘薯澱粉、馬鈴薯澱粉、蒟蒻粉、布海苔、アルギン酸ナトリウム、トロロアオイ、トンガロゴム、アラビアゴム、デキストラン、レバン、ニカワ、ゼラチン、カゼイン及びコラーゲン等を使用することができる。
上記半合成親水性高分子化合物としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びカルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、並びにジアルデヒド澱粉誘導体等を使用することができる。
【0031】
また、上記被膜形成機能を有する水不溶性高分子化合物としては、ニトロセルロース、酢酸セルロース、エチルセルロース、酢酪酸セルロース等のセルロース樹脂を使用することができ、また、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル共重合体樹脂、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニルエマルション、酢酸ビニルコポリマー(酢酸ビニル−アクリル酸エステル等)エマルション、アクリル酸エステル共重合体エマルション、エポキシ樹脂エマルション及び合成ゴムラテックス等を使用することができる。これらの被膜形成機能を有する高分子化合物中で、特にウレタン樹脂及びポリビニルブチラールは、検査用指示薬の変色及びpH値の測定に悪影響を及ぼさないため好ましい。
【0032】
さらに、上記検査用指示薬含有インク組成物には、結合剤、安定剤或いは均一な試薬層を形成できるように界面活性剤など(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤又はポリエチレングリコールなど)の公知の添加剤を加えることができる。
【0033】
一般に、検査用指示薬含有のインク組成物の構成物質及びその配合割合は、検査用指示薬及び結合材1重量%乃至10重量%、セルロース等1重量%乃至15重量%、糊剤10重量%以下であり、残余は溶剤から構成されている。
【0034】
(多孔質吸着剤)
多孔質吸着剤は、微細孔(微細空隙)を多く含み、表面積が大きく、吸着率が20重量%以上(好ましくは25重量%以上)である吸着剤を用いることが必要であり、シリカゲル(いわゆる、A型シリカゲル及びB型シリカゲル)(二酸化珪素)、ゼオライト(アルミノ珪酸塩)等の公知の物質を用いることができる。特に、B型シリカゲルは、平均吸着表面積約450(m/g)、平均微細孔径約60Å、微細孔容積約0.75(ml/g))と、A型シリカゲル(A型シリカゲルは平均吸着表面積約700(m/g)、平均微細孔径約24Å、微細孔容積約0.46(ml/g))と比較して、微細孔径及び微細孔容積が大きいため、検査用指示薬含有インク組成物を吸着させる場合には高い吸着性能を発揮することになり、非常に好適である。
【0035】
また、浸透剤又は膨潤剤を添加することも可能である。浸透剤としては、各種の界面活性剤など公知の物質を用いることができ、膨潤剤としては、セルロース系の膨潤剤など公知の物質を使用することができる。
【0036】
そして、上記排泄物検査用材料における検査用指示薬の添加量は、保水材料と吸水性樹脂材料の合計量に対して、0.03重量%を超え0.5重量%以下(好ましくは、0.1重量%乃至0.3重量%)の範囲内となることが必要となる。そのため、検査用指示薬をインク組成物に定着させる場合には、検査用指示薬量が上記範囲内となるように溶媒等の量を調節するとともに、多孔質吸着剤の種類に応じてその量を定める必要がある。
【0037】
本吸液体は使用前における美観を保つために、予め所望の明度及び彩度(特に、明度が重要である)に発色させておく必要があるが、上記排泄物検査用材料における検査用指示薬の添加量は、少なすぎると使用前に発色しないことになる。一方、多孔質吸着剤は間隙率に応じて吸着可能な検査用指示薬の量が定まるものであり、当該検査用指示薬を必要以上に多量に添加しても使用前後において、変色の程度(明度)が変化しないことになる。そのため、発明者は鋭意実験を重ねることにより、上記の好適な添加量を見出したものである。
【0038】
[製造方法]
続いて、本吸液体の製造方法について、説明する。
まず、公知の方法により製造された検査用指示薬含有インク組成物を、微細粉末とした多孔質吸着剤に少量ずつ、滴下し、混合することにより、検査用指示薬を多孔質吸着剤に吸着させて排泄物検査用材料を調合する。
【0039】
検査用指示薬と多孔質吸着剤の構成割合は、多孔質吸着剤の吸着率に依存して定められることになる。しかし、多孔質吸着剤の添加量を所定量より多くすると、多孔質吸着剤の粒子が表層から顕出してしまい、当該顕出した部分が表層から突起状に突出することになる。そして、袋詰時や運搬時において、吸液体同士が接触することにより、当該突出部が基端部から分離し、表層が破損するなどの状態が生じるため好ましくない。
【0040】
また、検査用指示薬の添加量は、保水材料と吸水性樹脂材料の合計量に対して、0.03重量%を超え0.50重量%以下の範囲内であることが必要となるが、検査用指示薬をインク組成物に定着させる場合には、検査用指示薬量が上記範囲内となるように溶剤等の量を調節することになる。
ところで、多孔質吸着剤の最大吸着率はその物質により決まっているため、必要となる検査用指示薬を吸着させるための多孔質吸着剤に関する最低必要量が決定されることになり、それにより定められた量の多孔質吸着剤に検査用指示薬含有インク組成物を吸着させることになる。
【0041】
続いて、パルプ廃材等の保水材料を破砕機で所定の大きさに粉砕する。そして、当該粉砕された保水材料と、排泄物検査用材料及び吸水性樹脂材料を所定の割合となるようにミキサーに投入して混ぜ合わせる。これにより、本吸液体が製造される。
【0042】
[作用効果]
本吸液体によれば、検査用指示薬を一旦溶媒に溶解させ検査用指示薬含有インク組成物とし、その後、多孔質吸着剤に吸着させている。このように、検査用指示薬を直接に添加するのではなく、当該検査用指示薬を多孔質吸着剤の間隙部に吸着させているため、色素により着色した場合であっても、色素が検査用指示薬に対する反応を阻害することがなく、使用後において検査結果が明確に判別可能であるため、効果的に検査を行うことができる。
【0043】
また、上記のような製造工程により製造される本吸液体は、安価かつ容易に製造することができる。
【0044】
以上、本吸液体について、好適な実施形態についての一例を説明したが、本発明は当該実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
上記実施形態では、本吸液体に関して、特段、形状の限定をしていない粉体物として説明しているが、用途に応じて、単粒状構造、複層粒状構造はもちろん、粉体状構造など任意の形状に形成することもできる。
【0045】
また、検査用指示薬として、尿pH値検出用指示薬を例として説明したが、検査用指示薬はそれに限定されるものではなく、尿ブドウ糖検出用指示薬、尿蛋白検出用指示薬、尿潜血検出用指示薬又は尿ウロビリノーゲン検出用指示薬等、各種の指示薬を使用することができる。
さらに、種類の異なる複数の検査用指示薬を溶媒に溶解させ、多孔質吸着剤に吸着させて添加することとすれば、一度に複数の検査結果の判別を行うことができる。
できる。
【0046】
(2)吸液シート
[第1実施形態]
続いて、上記の本吸液体16を使用した衛生用品として、猫や犬等の愛玩動物用の排泄物を処理するための吸液シート10(以下、「本吸液シート」という。)を例として、説明する。
【0047】
図1に示すように、本吸液シート10は、表面シート11と、裏面シート12と、両シート11,12の間に充填されている本吸液体16と、本吸液体16を包容する保持シート13と、から構成されている。
【0048】
表面シート11は、透水性能(透液性能)を有している不織布から形成されている所定の厚さのシート材であり、矩形形状に形成されている。この不織布は、ポリプロピレンやレーヨンなどのセルロース系繊維で形成されたスパンレース不織布、上記セルロース系繊維と親水処理された合成樹脂繊維とで形成されたスパンレース不織布等の公知の材料を用いることができる。
また、表面シート11は、その上部から本吸液体16の発色を確認できるように透視可能となるように形成されている。
【0049】
裏面シート12は、尿漏れ及び臭気の発散を防止するために設けられており、所定の遮水性能(遮液性能)及び気密性能を有する公知の材料であるポリエチレン、ポリエチレン(PE)ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルム等を材料とするものである。
【0050】
保持シート13は、さらに、上面シート14と包持シート15とから形成されている。
上面シート14は、透水性能(透液性能)を有している不織布から形成されている所定の厚さのシート材であり、矩形形状に形成されている(材料は、表面シート11と同様)。この不織布は、ポリプロピレンやレーヨンなどのセルロース系繊維で形成されたスパンレース不織布、上記セルロース系繊維と親水処理された合成樹脂繊維とで形成されたスパンレース不織布等の公知の材料を用いることができる。
【0051】
また、包持シート15も透水性能(透液性能)を有している不織布から形成されている所定の厚さのシート材であり、矩形形状に形成されている(材料は、表面シート11と同様)。但し、包持シート15は、排尿が外部に漏れないように、非透水性能(非透液性能)を有する材料で形成されているものであってもよいものである。
【0052】
包持シート15は、裏面シート12の上に敷設、接着され、上方向に所定の厚さが確保された状態で、その四周が一定幅を有するように水平内側方向に折り曲げられており、本吸液体16が設けられるための内部空間が確保されている。そして、上面シート14の上面における四周の周縁部が、平面視で口字形状である包持シート15の上縁部15aの下面に接するように、当該包持シート15の内部空間に設けられているとともに、表面シート11の下面における四周の周縁部が、包持シート15の上縁部15aの上面に接するように圧着されている。
【0053】
そして、保水材料17(例えば、綿状パルプ)と吸水性樹脂18(例えば,CMC)と排泄物検査用材料19とから形成される本吸液体16が、表面シート11と裏面シート12の間に形成された包持シート15の内部空間に、所定の厚さとなるように積層された状態で充填されている。
【0054】
なお、本吸液体16は、吸液シート10の用途に応じて、粉体状、或いは、複数の粒状にすることもできる。また、本吸液体16は、予め形成された透水性能を有する袋体の中に充填した状態で、表面シート11と裏面シート12の間に設けられるものであってもよいものである。
【0055】
<製造方法>
本吸液シート10は、通常のシート材の製造方法と同様の方法で製造することができる。
【0056】
<作用効果>
本吸液シート10によれば、本吸液体16の有する効果を奏する他、以下の独自の効果を有するものである。
すなわち、本吸液シート10によれば、表面シート11と裏面シート12の間に本吸液体16が介装されているため、従来品である検査用指示薬が表面層のみに印刷されたシート材と比較して、液体分を保持した状態を長期にわたって継続することができることから、発色反応が継続している時間をより延ばすことができ、長時間にわたって、その性状に応じた健康状態を調べることができる。したがって、排尿時に注視していなくても、所定時間以内に変色状況を確認することにより、簡易に健康状態を調べることができる。
【0057】
<第2実施形態>
本吸液シート20の第2実施形態について、図2を参照して説明する。
本吸液シート20は、表面シート21と、裏面シート22と、本吸液体26と、本吸液体26を収容するための袋体23とを備えている。
【0058】
袋体23は、透視可能であり、透水性能(透液性能)を有している不織布から形成されており、当該袋体23の内部に本吸液体26を包含することができるようになっている。
袋体23の内部は、吸水性能及び透水性能を有する不織布から形成されている中間シート24が介装されることにより、上下の二層に分かれている。そして、袋体23の上面と中間シート24との間に形成される上層には、保水材料27と排泄物検査用材料29とが充填されており、吸水性樹脂28は含まれていない構造となっている。また、中間シート24と袋体23の下面との間に形成される下層には、保水材料27と吸水性樹脂28とが充填されており、排泄物検査用材料29は含まれていない構造となっている。
【0059】
このような構造とすることにより、袋体23の内部に保水材料27、吸水性樹脂28及び排泄物検査用材料29が含まれることになり、当該袋体23の全体が一体となって吸液体26を構成することになる。
【0060】
但し、上記実施形態において、下層に排泄物検査用材料29が含まれなければ、上層に吸水性樹脂28が含まれている構成としてもよい。また、上層と下層が分離されているのであれば、必ずしも中間シート24が設けられている必要はない。
【0061】
裏面シート22は、所定の遮水性能(遮液性能)及び気密性能を有しており、矩形形状に形成されている。また、裏面シート22は、袋体23の下面の全面と、当該袋体23の側面と、当該袋体23の上面の所定幅の口字形状の四周部とを覆うように設けられている。
そして、表面シート21が、袋体23の上面及び裏面シート22の上面の四周部22aを含む)を覆うように布設されている。この表面シート21の下面と、裏面シート22の上面の四周部22aは強固に圧着されており、当該表面シート21及び裏面シート22とが一体となり、袋体23の内部に多量の排尿処理材26を包含することができるようになっている。
【0062】
このような吸液シート20とすることにより、より発色を確認し易い上層のみに排泄物検査用材料29を設けることで、尿検査に必要最小限となる量を混入させることができる。排泄物検査用材料は高価であるため、その量を削減することにより安価に製造することができる。
また、飛散等しやすい吸液体26が袋体23の中に設けられているため、吸液シート20の製造を容易に行うことができる。
【0063】
以上、本発明の衛生用品の一例としてシート材に適用した場合を説明したが、同様の構成を有するのであれば、使い捨ての紙おむつや、排尿パット等に適用することもできる。
【実施例】
【0064】
本発明の吸水処理材の性能を調べるために、下記製造方法で上記第1実施形態の本吸液シートのサンプルを作成し、発色試験を行った。
【0065】
<構成材料>
以下の試験で使用した各サンプルは、上記吸液シートの製造方法により製造されたものであり、表面シートと、裏面シートと、保持シートと、本吸液体とから構成されている。
【0066】
表面シートはポリプロピレンを主原料とする不織布シート、裏面シートはポリエチレンを主原料とするフィルムシート、保持シートはバージンパルプシートから形成されている。
【0067】
本吸液体は、再生パルプ(保水材料)38gと、カルボキシルメチルセルロース6g(吸水性樹脂材料)と、排泄物検査用材料とから形成されている。
【0068】
排泄物検査用材料は、検査用指示薬含有インク組成物と多孔質吸着剤から構成されている。
検査用指示薬含有インク組成物は、ブロモチモールブルー(検査用指示薬)(アドバンテック東洋株式会社製)とセルロース樹脂を有機溶媒(工業用エチルアルコール及びメチルアルコールの混合液)に溶解させたものを使用した(いずれも、東洋インキ製造株式会社製)。
上記材料の配合割合は、セルロース樹脂10重量%、糊剤8重量%とし、検査用指示薬の添加量を変化させ、残余を有機溶媒とした。
また、多孔質吸着剤として、シリカゲル(B型)の微粉末(ハイモ株式会社製)を使用した。
【0069】
<サンプル>
上記排泄物検査用材料の配合割合の範囲内で、検査用指示薬を、再生パルプとカルボキシルメチルセルロースの合計量(以下、「パルプCMC合計量」という。)44gに対して、インク組成物の配合量をそれぞれ0.02重量%、0.03重量%、0.031重量%、0.04重量%、0.05重量%、0.10重量%、0.15重量%、0.20重量%、0.25重量%、0.30重量%、0.35重量%、0.40重量%、0.45重量%、0.49重量%、0.50重量%、0.51重量%、0.52重量%ずつ変化させた配合比率の異なる合計17のサンプルを作成した。
【0070】
<観察結果>
上記の各サンプルに関し、それぞれ使用前、及び、pHが6.8となるように調整した適量の生理食塩水(塩化ナトリウム濃度0.9重量%)の滴下後(使用後に相当)における被覆層部の発色の程度を目視により観察し、マンセルカラーシステムによる明度を測定した(表1)。
【0071】
(1)パルプCMC合計量に対する検査用指示薬の添加量を0.02重量%及び0.03重量%としたサンプル1,2に関しては、使用前において被覆層部の発色が視認されないという不適切な結果となった。
【0072】
【表1】

【0073】
(2)一方、パルプCMC合計量に対する検査用指示薬の添加量を0.031重量〜0.50重量%としたサンプル3〜15に関しては、使用前において所定明度である緑色の発色が生じた。そして、上記と同様な生理食塩水を滴下した場合(使用後に相当)には、それぞれ明度が向上し、使用後の状況を確認することができるという良好な結果が得られた。特に、使用前後の明度の変化を視認しやすかったのは、検査用指示薬の添加量を0.10重量〜0.30重量%としたサンプル6〜サンプル10であった。
なお、各サンプルに対して、pHが8.0となるように調整した適量の生理食塩水(塩化ナトリウム濃度0.9重量%)を滴下したところ、同一の明度である青色に変色したことが確認された。
【0074】
(3)パルプCMC合計量に対する検査用指示薬の添加量を0.51重量%以上としたサンプル16及び17に関しては、使用前後において緑色の発色がなされたが明度が変化せず、使用後の状況を確認することができないという不適切な結果となった。
【0075】
以上のように発色試験の結果、検査用指示薬の添加量は、パルプCMC合計量に対して、0.03重量%を超え0.5重量%以下の範囲内(特に、好ましくは、0.10重量%乃至0.30重量%)とすることが好適であることが明らかになった。
【符号の説明】
【0076】
10,20 吸液シート
11,21 表面シート
12,22 裏面シート
13 保持シート
23 袋体
16,26 吸液体
17,27 保水材料
18,28 吸水性樹脂
19,29 排泄物検査用材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保水材料と、吸水性樹脂材料と、排泄物検査用材料とを含み、
前記排泄物検査用材料は、吸着率20重量%以上であり、微細孔を有する多孔質吸着剤と、前記多孔質吸着剤の前記微細孔に吸着されている排泄物検査用指示薬を含み、
前記排泄物検査用指示薬の添加量は、前記保水材料と前記吸水性樹脂材料の合計量に対して、0.03重量%を超えて0.50重量%以下の範囲内であることを特徴とする吸液体。
【請求項2】
前記排泄物検査用指示薬は、インク組成物に定着させられていることを特徴とする請求項1に記載の吸液体。
【請求項3】
透液性能を有する表面シートと、不透液性能を有する裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に介装されている請求項1又は請求項2に記載の吸液体とを備えることを特徴とする衛生用品。
【請求項4】
前記吸液体は、上下の二層から構成されており、
上層には、少なくとも前記排泄物検査用材料と前記保水材料が含まれ、
下層には、前記保水材料と前記吸水性樹脂材料が含まれていることを特徴とする請求項3に記載の衛生用品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−223179(P2012−223179A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122563(P2011−122563)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000148977)株式会社大貴 (43)
【Fターム(参考)】