説明

吸湿性の改善された飲食品用組成物

【課題】吸湿性粉末原料の吸湿性が改善された、該吸湿性粉末原料を含む飲食品用組成物及び該組成物を含有する飲食品の提供を目的とする。
【解決手段】吸湿性粉末原料及びセサミン類を含む飲食品用組成物、より特定すれば、吸湿性粉末原料及びセサミン類を混合して含む飲食品用粉末組成物であって、前記の吸湿性粉末原料の吸湿性が改善された、前記の組成物、並びに上記の組成物を含有する飲食品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿性粉末原料及びセサミン類を含有する飲食品用組成物に関し、さらに詳細には、吸湿性粉末原料及びセサミン類を混合して含むことにより、前記の吸湿性粉末原料の吸湿性が改善された、飲食品用粉末組成物及び該組成物を含有する飲食品に関する。
【従来の技術】
【0002】
粉末原料について、しばしば製造中及び/又は貯蔵中の吸湿が問題になることがある。吸湿性の程度は、原料により差異があるが、最も重度の場合、粉末が液状化するまで水を吸収(潮解)する。吸湿が製造中に発生すると、流動特性の変化、粘着性の増加、凝集の発生、離型性の低下という問題が生じ、取扱いが困難になるばかりか、化学的安定性が低下して原料や製品の組成が変動することもある。また、吸湿が貯蔵中に発生すると、外観の劣化だけでなく、含有活性成分の化学的安定性の低下や結晶形態の変化による溶解特性の変化等の問題が生じることがある。このように製造時や使用時の取扱いが難しい吸湿性粉末原料、例えば、有機酸又は無機酸の塩類、無機塩類及び薬剤等に用いられる化合物原料等について、その吸湿性や潮解性を解決するための方法が種々提案されている。
【0003】
例えば、粉状物に粉末状の油脂及び炭酸カルシウムを添加して潮解や固結を防止する方法(特許文献1)、ショ糖脂肪酸エステルを添加して固結を防止する方法(特許文献2)、吸着性物質に潮解性物質を吸着させ潮解を防止する方法(特許文献3)、吸湿性を有する粉末原料を腸溶性皮膜剤で被覆した粉末改良品(特許文献4)、結晶形態を変化させることにより潮解性を遅くさせる方法(特許文献5)等が開示されている。
【0004】
ところで、天然に存在するL-カルニチンは、特殊なアミノ酸の一種で、体内の脂肪を燃焼しエネルギーに変えるための必要不可欠な栄養素として知られ、余分な脂肪の消費による、生活習慣予防、疲労回復やスタミナアップ、スポーツや日常生活におけるパフォーマンス向上、基礎代謝アップなどの効果が期待されている。体内に存在するL-カルニチン量は、20歳代をピークに年齢を重ねるとともに減少して不足することから、L-カルニチンを適切に摂取することを目的として、近年は栄養補助食品、食事療法用製品、健康食品等の飲食品又は飲食品用組成物に使用されている。しかし、L-カルニチン及びその誘導体は極めて高い吸湿性を有し、次式:
【0005】
【化1】

【0006】
(式中、RはH又はC1〜C5の低級アルカノイルである。)
で表されるような分子内塩(又はベタイン類)を形成しているときは極めて安定性が低いことが知られる。
【0007】
L-カルニチンが吸湿すると、ペースト状又は糊状に変化し、また化学的安定性の低下からトリメチルアミンが遊離し、不快な魚臭がするようになる。これらの理由から、L-カルニチン若しくはその塩又はその誘導体について、吸湿性を低下させる方法が提案されている。例えば、吸湿性の低いオロチン酸カルニチンの製造法(特許文献6)、L(-)カルニチンのマレイン酸及びフマル酸塩の使用(特許文献7)、L(-)カルニチンの硫酸塩及びシュウ酸塩(特許文献8)、L(-)カルニチンL(+)酒石酸(2:1)の使用(特許文献9)等が開示されている。
【特許文献1】特開2001−224319号公報
【特許文献2】特開2004−121175号公報
【特許文献3】特開2003−95980号公報
【特許文献4】特開2004−35505号公報
【特許文献5】特開2000−342902号公報
【特許文献6】特許第303067号
【特許文献7】米国特許第4602039号
【特許文献8】フランス特許第2 529 545号(出願番号FR 82 11626)
【特許文献9】ヨーロッパ特許第0434088号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のとおり、L-カルニチンを始めとする種々の吸湿性粉末原料について、その吸湿性及び潮解性を改善する方法が提案されている。しかし、容易に適用でき、しかも吸湿性を防止又は抑制する満足な方法は存在していなかった。また、添加剤により吸湿性を改善する場合、該添加剤の安全性及び副作用、並びに飲食物として使用する場合の香味等の問題もあった。さらに、結晶形態や塩の形態を変えて吸湿性を改善する場合、煩雑な製造方法を必要とするなどの製造上の問題を含むものも多くあった。例えば、上記特許文献9に記載の組成物の場合、90%エタノール水中でL(+)酒石酸を煮沸し、これにL-カルニチン分子内塩を添加するため、高温、減圧下で多量のカルニチン塩含有溶液を濃縮する必要があり、顕著なエネルギーの浪費を伴うばかりか、有機溶媒を用いた場合にはコストの増加、溶媒のリサイクル、環境汚染及び有毒廃棄物の廃棄処理等の深刻な問題を伴っていた。
【0009】
従って、本発明の課題は、工業的適用が容易で、かつ生産コストも低い方法により、吸湿性粉末原料、特にカルニチン若しくはその塩又はその誘導体の吸湿性が改善された、吸湿性粉末原料含有飲食品用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題解決のために鋭意研究を重ねた結果、吸湿性粉末原料に粉末のセサミン類を混合することで、前記吸湿性粉末原料の吸湿性が改善されること、特に、吸湿性粉末原料がカルニチン若しくはその塩又はその誘導体である場合に、その吸湿性が著しく改善されることを見出した。そして、粉末状のセサミン類が無味無臭であるため、飲食品に適用しやすいことを確認し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、吸湿性粉末原料及びセサミン類、好ましくは粉末セサミン類、を含む、飲食品用組成物、好ましくは飲食品用粉末組成物を提供する。
【0012】
本発明はまた、吸湿性粉末原料及びセサミン類を混合して含む飲食品用粉末組成物であって、前記の吸湿性粉末原料の吸湿性が改善された、前記の組成物を提供する。
【0013】
本発明はまた、前記吸湿性粉末原料が、カルニチン若しくはその塩又はその誘導体である、前記の組成物を提供する。本発明はまた、前記セサミン類が、セサミン及び/又はエピセサミン、より特定すれば、セサミン及びエピセサミンである、前記の組成物を提供する。
【0014】
さらに本発明は、前記の組成物を含有する、飲食品を提供する。
【発明の実施するための最良の形態】
【0015】
本明細書中において、「吸湿性」とは、対象物が空気中にさらされている場合に大気中の水蒸気を捉える性質をいい、特に、潮解性と呼ばれる、大気中の水蒸気を捕らえてその水に溶解する性質も、本明細書中における「吸湿性」に含まれる。また、吸湿性粉末原料の「吸湿性が改善」するとは、未処理の吸湿性粉末原料と比べて、吸湿性が低下すること、潮解及び/又は固結が防止されること、あるいは潮解及び/又は固結が抑制されることをいう。
【0016】
吸湿性は、例えば、後述の実施例に記載のような、当業者に公知の手法を用いて、測定及び/又は評価することができる。具体的には、計量した原料を、室温や高温高湿度下等の一定条件下、適当な時間放置した後、変化を目視観察(原料表面の水分の確認、固体の消失の確認、粉末の流動性や固結化の程度の確認、変色の確認等)や、重量増加分(吸湿水量)の計量により検討する等の手法を用いることができる。
【0017】
本明細書中において、「吸湿性粉末原料」とは、所望の製品の製造中及び/又は保存中等に、上記の吸湿性が問題となる、飲食品用又は医薬用として許容される物質であれば制限されない。本明細書中において、「吸湿性が問題となる」原料は、例えば本明細書中の吸湿性に関する記載を参考に、当業者であれば容易に判断でき、具体的には製造上や製品の貯蔵中に発生する吸湿に関する。特に、製品の貯蔵安定性を測定するための加速試験に用いられる温度40℃、相対湿度75%の条件下で吸湿(又は潮解)を示す原料が挙げられる。吸湿性粉末原料の具体例としては、メタリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、酢酸ナトリウム、アンモニア明礬などの有機酸又は無機酸の塩類、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどの無機塩類、キシロオリゴ糖等の糖類、さらには、バルプロ酸ナトリウム、トシル酸スプラタスト、コリンの塩、リバスチグミン、臭化ピリドスチグミン、バカンピシリン、L-カルニチン及びその誘導体、モリシジン塩酸塩、及びウロジロガシエキス等の生薬エキス等、薬剤で使用される活性成分が挙げられる。
【0018】
本発明の吸湿性粉末原料は、飲食品用組成物に含まれるため、同様の生理活性を有する原料であれば、香味的な問題の少ない吸湿性原料を用いることが好ましい。例えば、吸湿性原料がカルニチン若しくはその塩又はその誘導体である場合、酸味の強いL-カルニチン酒石酸塩を用いるよりも、無味無臭のL-カルニチンを用いることが好ましい。
【0019】
本明細書中において、カルニチン若しくはその塩又はその誘導体とは、カルニチン[(CH3)3N+CH2CH(OH)CH2COO-、γ-トリメチルアンモニウム-β-ヒドロキシ酪酸]、その異性体、その塩、並びにカルニチン、その異性体及びその塩の誘導体(例えば生体内でカルニチンに変換される誘導体)も含む。例えば、カルニチン、L-カルニチン、塩化カルニチン(DL-体、L-体)、L-カルニチン酒石酸塩、L-カルニチンマレイン酸塩、L-カルニチンフマル酸塩、L-カルニチン硫酸塩、L-カルニチンシュウ酸塩、L-カルニチンマグネシウム塩、アシル-L-カルニチン、アセチル-L-カルニチン、プロピオニル-L-カルニチン、オロチン酸カルニチン、等が含まれる。これらはその製造方法になんら限定されず、天然抽出品、微生物発酵品、合成品のいずれでもよいが、好ましくは、天然に存在するL-カルニチン若しくはその塩又はその誘導体であり、例えば、次式:
【0020】
【化2】

【0021】
(式中、RはH又はC1〜C5の低級アルカノイルである。)
で表される。なお、本明細書中のカルニチンについての説明は、カルニチンの塩、カルニチン又はその塩の誘導体についてもあてはまる。
【0022】
本明細書中において、「セサミン類」は、セサミン及びその類縁体を含み、具体例としては、セサミン、セサミノール、エピセサミノール、セサモリン、エピセサミン、ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体(例えば特開平4−9331号公報に記載)等が挙げられる。なかでも、本発明においては、セサミン及びエピセサミンが好ましい。さらに、「セサミン類」は、セサミン及びその類縁体の配糖体並びにこれらの代謝体を含み、本発明の飲食品用組成物の提供に適する限り、そのいずれを本発明の飲食品用組成物に含ませてもよい。
【0023】
本発明に用いるセサミン類は、固体状であれば、製造方法等によって何ら制限されるものではない。例えば、セサミン類としてセサミン及び/又はエピセサミンを用いる場合、通常、ごま油から公知の方法(例えば、ごま油に熱メタノールを加えて抽出し、メタノールを除去後、残渣にアセトンを加えて抽出する方法(特開平4−9331号公報に記載))によって抽出したセサミン(セサミン抽出物又はセサミン精製物とも言う)を用いることができる。原料となるごま油は特に制限されないが、本発明の飲食品用組成物に含ませる際に、ごま油特有の風味が官能的に好ましくないと評価されることもあることから、無味無臭のごま油から抽出されたセサミン抽出物又はセサミン精製物を用いることが好ましい。また、精製度の低いセサミン類を用いた場合、後述の好ましい量のセサミンを配合しようとすると、得られる飲食品用組成物又は飲食品の体積が大きくなり過ぎ、摂取に不都合が生じることがある。特に、経口投与用に製剤化した場合、製剤(錠剤、カプセルなど)が大きくなり摂取に支障が生じる。従って、摂取量が少なくてよいという観点からセサミン精製物を用いることが好ましい。
【0024】
本発明のセサミン類は、吸湿性粉末原料の吸湿性改善に関するという観点からは、好ましくは粉末セサミン類である。該粉末セサミン類の粒径は、吸湿性粉末原料との混合方法(均質性)にもよるが、通常、JIS標準篩10〜250メッシュ、好ましくは60〜200メッシュの範囲であり得る。
【0025】
本発明の飲食品用組成物にセサミン類とともに含まれる吸湿性粉末原料が健康増進等の作用を有する場合、上記セサミン類が、特にセサミン及び/又はエピセサミンであることが好ましい。これらのセサミン類の、種々の生理作用が、前記吸湿性原料の作用と、相加的又は相乗的に発揮され得ると考えられるためである。例えば、吸湿性粉末原料がカルニチンである場合に、カルニチンのエネルギー代謝向上作用、運動性能向上作用が、セサミン及びエピセサミンの持つ生理作用の1つである、エネルギー代謝向上(Biosci. Biotechnol. Biochem., 69, 179-188, 2005)や、運動能向上作用(Int. J. Sports Med., 24, 530-534, 2003、Biofactors, 21, 191-196, 2004)と、相加的又は相乗的に発揮されうると考えられ、優れた健康食品の提供が可能となる。
【0026】
本発明の飲食品用組成物は、吸湿性粉末原料及びセサミン類を含み、吸湿性粉末原料及びセサミン類並びに所望により他の添加剤を混合して得ることができる。混合の手法は何ら制限されず、均質に混合されるのであればどのような手法を用いてもよい。一般的に知られている混合機、例えば、水平円筒型混合機、V型混合機、二重円錐型混合機、立方体型混合機、スクリュー型混合機、リボン型混合機、媒体攪拌型ミル、高速回転摩砕・衝撃ミル、ジェットミル等の空気力学的粉砕器等を用いた混合、乳鉢やボールミル等での粉砕混合、ポリエチレン(PE)製、ナイロン製あるいはそれに準じる性質からなる袋を利用した攪拌混合等を用いることができる。操作が容易で特別な機械を要しないという観点から、好ましくは、袋を利用した攪拌混合を用いることができる。吸湿性粉末原料及びセサミン類の混合の度合が高い場合、より高い吸湿性改善効果が得られる。
【0027】
本発明の飲食品用組成物において、セサミン類の配合量は、ともに含まれる吸湿性原料の種類や他の添加剤の有無等により異なるが、吸湿性原料100に対し、重量比として、セサミン類0.001〜100、好ましくは0.01〜10程度が適当である。
【0028】
本発明の飲食品用組成物は、そのまま、後述する飲食品として用いることもできるし、当業者に公知の手法を用いて該飲食品に適宜含有させて用いることもできる。本発明の飲食品用組成物は、吸湿性粉末原料を、その吸湿性が改善された状態で含むため、化学的に安定であり、貯蔵や飲食品の製造等に適する。
【0029】
本明細書において、飲食品とは、調味料、栄養補助食品、健康食品、食事療法用食品、総合健康食品、サプリメント及び飲料並びに経口投与の医薬品を含む。本発明の飲食品は、固形状(例えば、結晶、カプセル、タブレット、粉末)、半固形状(例えば、ゲル、ペースト)、液状(例えばミネラルウォーター、清涼飲料水、果実飲料、スポーツドリンク、酒類)とすることができる。好ましくは、本発明の飲食品は、タブレット、顆粒品、飲食の直前に液体に溶解するタブレット又は顆粒品である。
【0030】
本発明の飲食品は、当業者に公知の手法を用いて、本発明の飲食品用組成物を含有させて、製造することができる。本発明の飲食品は、吸湿性粉末原料及びセサミンの所望の効果を、安定的に期待し得る。
【0031】
本発明の飲食品中における吸湿性粉末原料及びセサミンの配合量は、特に限定されないが、これらの好ましい一日摂取量を参考に、当業者であれば、該飲食品の摂取形態に応じて、配合量を適宜設定することができる。
【0032】
本発明の飲食品用組成物は、必要に応じて、上記吸湿性粉末原料とセサミン類の他に、任意の添加剤を含むことができる。また、本発明の飲食品は、上記の本発明の飲食品用組成物の他に、通常の飲食品に用いられる任意の成分を含有することができる。これらの添加剤及び/又は成分の例としては、ビタミンE、ビタミンC等のビタミン類、糖類、賦形剤、崩壊剤、結合剤、潤沢剤、乳化剤、緊張化剤(等張化剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、抗酸化剤、着色剤、矯味剤、香料、凝固剤、pH調整剤、増粘剤、エキス粉末、生薬、無機塩等が挙げられる。
【0033】
なお、本発明の飲食品用組成物又は飲食品には、その具体的な用途(例えば、栄養補助のため、健康維持のため、脂肪燃焼のため、肥満予防のため、痩身後の体型維持のため等)及び/又はその具体的な用い方(例えば、摂取量、摂取回数、摂取方法等)を表示することができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
実施例1 カルニチンの吸湿性改善
吸湿性原料として、カルニチンを用い、セサミン類を混合することによるカルニチンの吸湿性改善について検討した。
【0036】
実験材料
吸湿性粉末原料として、L-カルニチン結晶性粉末(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社、L-カルニチン結晶性粉末)を用いた。セサミン類としては、精製された粉末状の、セサミンとエピセサミンの混合物(セサミン:エピセサミン=51.1:48.2(重量比))を用いた。
また、比較例として、セサミン類の代わりに、以下の、製剤化において頻繁に用いられる添加剤を用い、カルニチンの吸湿性改善について検討した。
比較例1:シクロデキストリン類(α-CD / β-CD / γ-CD)(塩水港精製株式会社、デキシーパールα-100 / β-100 / γ-100)
比較例2:SiO2(富士シリシア化学株式会社、サイロページ)
比較例3:デンプン(日澱化学株式会社、パーフィラー102)
比較例4:水溶性食物繊維(太陽化学株式会社、サンファイバー)
比較例5:ショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬株式会社、DKエステルF-10)。
【0037】
実験方法
1.シャーレ(40φ)に、カルニチンあるいはカルニチンとセサミン類とを1:1の割合で混合(PE製ポリ袋を用いた粉体混合)した粉末を200mgずつ秤量した。
2.シャーレに蓋をした状態で、(A)室温(20℃)、(B)インキュベーター(40℃、75%RH)に静置し、12時間後の性状の変化を目視観察した。
3.セサミン類の代わりに比較例1〜5の粉末をそれぞれ用い、同様に検討を行った。
【0038】
結果
図1に、カルニチンにセサミン類を混合した場合の、カルニチン吸湿性改善の結果を示す。カルニチン単独では吸湿性が高く、高温高湿度下(40℃、75%RH)のみならず、室温下でも潮解(吸湿)が生じた(図1中(b)(c))。これに対し、セサミン類とカルニチンとを等量混合した場合、室温下、高温高湿度下ともに、混合物は粉末状態のままであった(図1中(e)(f))。これにより、セサミン類は、吸湿性原料の吸湿性(潮解性)改善作用があることが明らかとなった。また、カルニチン及びセサミンの混合条件を変化させた場合、混合の度合が高いものの方が、吸湿性改善効果が高いことが明らかになった(実験結果表示せず)。
【0039】
図2に、カルニチンに比較例1〜5の各添加剤を混合した場合の、カルニチン吸湿性改善の結果を示す。シクロデキストリン類(比較例1、図2中(1α)、(1β)、(1γ))、SiO2(比較例2、図2中(2))では、吸湿性改善作用は認められなかった。デンプン(比較例3、図2中(3))、水溶性食物繊維(比較例4、図2中(4))では、部分的に潮解が認められた。ショ糖脂肪酸エステル(比較例5、図2中(5))では、吸湿性改善が認められた。
【0040】
以上の結果から、セサミン類又はショ糖脂肪酸エステルが、カルニチンの吸湿性改善に有効であることが示唆された。セサミン類は、無味無臭であり、特に使用が好ましいと考えられた。
【0041】
実施例2 各種吸湿性粉末原料の吸湿性改善
吸湿性粉末原料として、L-カルニチンL-酒石酸塩(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社、L-カルニチンL-酒石酸塩 S、L-カルニチンより吸湿性は改善しているが、吸湿性有り)、MgCl2(富田製薬株式会社、塩化マグネシウム S)、キシロオリゴ糖(サントリー株式会社、キシロオリゴ95P)を用いた。実施例1と同様の手順で、これらの吸湿性粉末原料に対するセサミン類の吸湿性改善作用を検討した。その結果、いずれの吸湿性粉末原料についても、吸湿性が改善されることが確認できた。
【0042】
実施例3 製剤例
以下の製造例において、セサミン類及びカルニチンは、実施例1に記載のものを用いる。
【0043】
(製剤例1) 顆粒剤
セサミン類 0.01 g
カルニチン 100 g
酢酸トコフェロール 0.25 g
無水ケイ酸 20.5 g
トウモロコシデンプン 79.0 g
以上の粉体を均一に混合した後に10%ヒドロキシプロピルセルロース・エタノール溶液100mlを加え、常法通り練和し、押し出し、乾燥して顆粒剤を得る。
【0044】
(製剤例2) 錠剤
セサミン類 0.01 g
カルニチン 100 g
デンプン 172 g
ショ糖脂肪酸エステル 9.0 g
酸化ケイ素 9.0 g
これらを混合し、単発式打錠機にて打錠して直径9mm、重量300mgの錠剤を製造する。
【0045】
(製剤例3) カプセル剤
ゼラチン 60.0 %
グリセリン 30.0 %
パラオキシ安息香酸メチル 0.15 %
パラオキシ安息香酸プロピル 0.51 %
水 適量
上記成分からなるソフトカプセル剤皮の中に、以下に示す組成物を常法により充填し、1粒200mgのソフトカプセルを得る。
セサミン類 10.0 mg
カルニチン 100 mg
グリセリン脂肪酸エステル 15.0 mg
ミツロウ 15.0 mg
小麦胚芽油 160 mg
【0046】
(製剤例4) ドリンク剤
呈味: DL-酒石酸ナトリウム 0.1 g
コハク酸 0.009g
甘味: 液糖 800 g
酸味: クエン酸 12 g
ビタミン:ビタミンC 10 g
セサミン類 1 g
カルニチン 10 g
ビタミンE 30 g
シクロデキストリン 5 g
香料 15 ml
塩化カリウム 1 g
硫酸マグネシウム 0.5 g
上記成分を配合し、水を加えて10Lとする。このドリンク剤は、1回あたり約100mlを飲用する。
【0047】
(製剤例5) 錠剤
L-カルニチン誘導体を配合した、健康維持及び/又は痩身後の体型維持を目的とした健康食品(錠剤)を調製した。L-カルニチン誘導体としてL-カルニチンL-酒石酸塩(ロンザジャパン株式会社)を用い、その他の機能性成分としてセサミン類(竹本油脂株式会社)、荷葉エキス末(松浦薬業株式会社)、カプサイシン(日本新薬株式会社)、カフェイン(白鳥製薬株式会社)、バナバ葉エキス末(株式会社常盤植物化学研究所)及びビタミンB1(田辺製薬株式会社)を、以下に示す含量(一粒あたり)で配合した。また、賦型剤として、ショ糖脂肪酸エステル、セルロース、二酸化ケイ素、デンプン、乳糖を混合し、打錠機にて、一粒あたり、直径8mm、重さ250mgの錠剤を製造した。製造中における吸湿や潮解の問題はなく、また調製された錠剤の貯蔵中における吸湿や潮解の問題は生じないことを確認した。
L-カルニチンL-酒石酸塩 74.3 mg
セサミン類 1.7 mg
荷葉エキス末 16.7 mg
カプサイシン 4.2 mg
カフェイン 16.7 mg
バナバ葉エキス末 16.7 mg
ビタミンB1 0.18 mg
【0048】
実施例4 香味試験
以下の製造例において、セサミン類及びカルニチンは、実施例1に記載のものを、L-カルニチンL-酒石酸塩は、実施例2に記載のものを用いた。13人のパネラーに、セサミン類とカルニチンとを等量混合したもの(P)、及びL-カルニチンL-酒石酸塩(Q)を、粉末の状態で舐めてもらい、(1)甘み、(2)刺激、(3)後味、(4)食べにくさ、(5)どちらを好むか、の5つの質問を行った。なお、(1)〜(4)の質問に対しては、1.強く感じる、2.やや感じる、3.特に感じないの3つの回答から当てはまるものを、(5)に対しては、P、Qの二者選択で選んでもらった。
【0049】
その結果、表1に示すように、QよりもPの方を好む人が多いことが判明した(表1中の数字は、P、Qそれぞれについて、横軸の各回答を選んだ人数を記載)。すなわち、従来の手法によってカルニチンの吸湿性を改善させたカルニチン誘導体であるL-カルニチンL-酒石酸塩(Q)よりも、セサミン類とカルニチンとを等量混合した本発明の組成物(P)の方が、(1)やや甘味があり、(2)刺激が弱く、(3)後味を感じず、(4)食べやすく、(5)好まれることが確認でき、本発明の組成物が、飲食品用組成物として、香味の面でも優れたものであることが判明した。
【0050】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、実施例1において、カルニチンにセサミン類を混合した場合の、カルニチン吸湿性改善の結果を示す図である。
【図2】図2は、実施例1において、カルニチンに各種添加剤を混合した場合の、カルニチン吸湿性改善の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿性粉末原料及びセサミン類を含む、飲食品用組成物。
【請求項2】
前記吸湿性粉末原料が、カルニチン若しくはその塩又はその誘導体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記セサミン類が、セサミン及び/又はエピセサミンである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
吸湿性粉末原料及びセサミン類を混合して含む飲食品用粉末組成物であって、前記の吸湿性粉末原料の吸湿性が改善された、前記の組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物を含有する、飲食品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−244270(P2007−244270A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71026(P2006−71026)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】