説明

吸湿性不織布

【課題】ポリオレフィン系合成パルプと吸湿性粉体とを組合わせ、エアレイド法を用いることにより、粉体脱落が少なく、柔軟性に富み、各種の用途に応用することが可能な吸湿性不織布を提供する。
【解決手段】繊度が1〜4dtexの熱接着性繊維を60重量%以上含み、熱処理により繊維間結合された目付が10〜100g/mの不織布からなる基材シート上に、ポリオレフィン系パルプと吸湿性粉体とが90/10〜10/90重量%の比率で混合された成分からなり、目付が20〜1,500g/mのウェブ層をエアレイド法により形成し、積層一体化させてなる吸湿性不織布であり、ウェブ層の上にはさらに基材シートと同様の不織布からなる上層シートを積層してもよく、さらに基材シート層とウェブ層との間、および/または、ウェブ層と上層シートとの間に接着性不織布を介在させてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い吸湿性を有する不織布に関する。本発明の吸湿性不織布は、湿度調節や結露防止の機能を有する上に、吸湿性粉体の脱落がなく、柔軟性にも富むので各種の建築材料、衛生材料、生活用材料、医薬・食品用部材、電機電子部品、電線材料などの広い範囲の用途に適用できる。
【背景技術】
【0002】
従来より、不織布は、土木資材や衛生資材などに広く用いられており、不織布と無機充填材とを組み合わせた不織布複合体が提案されている。
例えば、特許文献1(特開昭62−104956号公報)には、合成パルプ、天然パルプと、シリカ、アルミナ、ケイソウ土などの無機充填剤との乾式抄造(Air Lay)からなるシートが示されている。しかしながら、この用途は、自動車内装材などの熱プレス成型に用いるシートに係わるものであって、本発明が意図する吸湿性シートとは全く異なる用途であり、また、本発明の目的である吸湿性シートにとって重要な構成要件である、表裏層を形成する不織布の複合についても全く言及も示唆もない。
【0003】
また、特許文献2(特開2003−113580号公報)には、吸湿性微粒子と短繊維を混合した状態でネットに気流で吹き付けてウェブ化する高吸湿性不織布複合体を得る方法が示されており、無機微粒子を繊維に固着するため、不織布に熱融着繊維を含有させたり、片面または両面に繊維シートなどの保護層を設けることもできる、との記載がある。同特許文献の実施例2には、目付60g/m、厚み0.3mmのポリエステルスパンボンド不織布上に、多孔質シリカ微粒子と熱融着性の芯鞘ポリエステル短繊維とを混合して気流にて吹き付け積層し、熱プレスした例が開示されている。しかしながら、不織布を構成する繊維径の平均値は、好ましくは0.1〜1,000μmとあるのみで、本発明の重要な構成要件である、多分岐繊維構造の合成パルプを粉体と混合することによって粉体の脱落防止や、粉体の均一な分散を改良する技術については、なんら触れられていない。
【0004】
さらに、特許文献3(特開2003−340231号公報)に記載された発明は、吸湿性粉体と極細短繊維との混合物を、多孔性支持体上に噴出させて、吸湿性シートを形成するものであり、片面または両面に不織布を積層することも開示されている。そして、特許文献3には、上記極細短繊維が絡んだ状態にあると、圧縮気体の作用によっても、極細短繊維を個々の極細短繊維に解繊し、均一に分散させるのが困難になるとの記載があり(同特許文献の段落「0047」)、吸湿性粉体とフラッシュ紡糸法により得られた多分岐繊維構造のポリオレフィン系合成パルプとを組合わせることにより、粉体脱落が少なく、柔軟性に富み、各種の用途に応用することが可能な吸湿性シートが得られるという本発明の技術思想とは合い入れない考え方が示されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭62−104956号公報
【特許文献2】特開2003−113580号公報
【特許文献3】特開2003−340231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ポリオレフィン系合成パルプと吸湿性粉体とを組合わせ、エアレイド法を用いることにより、粉体脱落が少なく、柔軟性に富み、各種の用途に応用することが可能な吸湿性シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、繊度が1〜4dtexの熱接着性繊維を60重量%以上含み、熱処理により繊維間結合された目付が10〜100g/mの不織布からなる基材シート上に、ポリオレフィン系合成パルプと吸湿性粉体とが90/10〜10/90重量%の比率で混合された成分からなり、目付が20〜1,500g/mのウェブ層をエアレイド法により形成し、積層一体化させてなる吸湿性不織布に関する。
本発明では、ポリオレフィン系合成パルプと吸湿性粉体とからなるウェブ層の上に、さらに、繊度が1〜4dtexの熱接着性繊維を60重量%以上含み、熱処理により繊維間結合された目付が10〜100g/mの不織布からなる上層シートを積層してもよい。
また、上記基材シートとウェブ層との間および/またはウェブ層と上層シートとの間に、さらに熱接着性複合繊維からなる不織布を介在させてもよい。
本発明の吸湿性不織布は、熱処理されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、ポリオレフィン系合成パルプと吸湿性粉体とからウェブを形成させるに際し、エアレイド法を採用しているので、気流中でポリオレフィン系合成パルプと吸湿性粉体とが絡み合って、オレフィン系合成パルプ中に吸湿性粉体が絡合して、形成されるウェブからの吸湿性粉体の脱落が少なく、また、あらかじめ基材シート(キャリアシート)を用い、この上にエアレイド法により、オレフィン系合成パルプと吸湿性粉体とからなるウェブを積層させるので、仮に吸湿性粉体が生成ウェブから脱落しても、この基材シートに捕集されて、系外に脱落することもない。また、得られる吸湿性不織布は、柔軟性に富み、吸湿性に優れる。
また、上層を積層させた吸湿性不織布は、表裏ともに、吸湿性粉体の脱落がない。
さらに、基材シート層とウェブ層および/またはウェブ層と上層との間に、さらに熱接着性複合繊維からなる不織布を介在させると、得られる吸湿性不織布の層間剥離や吸湿性粉体の脱落をさらに抑制することができる。
また、本発明の吸湿性不織布は、熱風処理あるいは熱ロールによるカレンダー加工などの熱処理により、さらに層間剥離や吸湿性粉体の脱落を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
基材シート:
本発明に用いられる基材シートは、繊度が1〜4dtexの熱接着性繊維を60重量%以上含み、熱処理により繊維間結合された、目付が10〜100g/mの不織布から構成される。なお、この基材シートは、あらかじめ熱処理により繊維間結合されていなくてもよく、例えば、本発明の吸湿性不織布製造工程の最終段階で、上記ウェブ層や上層シートとともに熱処理されて繊維間結合されたものであってもよい。
この基材シートは、カード法、スパンボンド法、メルトブロー法、エアレイド法、または湿式抄造法のいずれで作成されたものでもよいが、好ましくはエアレイド法である。
【0010】
基材シートに用いられる熱接着性繊維としては、熱接着性複合繊維が好適である。例えば、低融点成分を鞘成分とし、高融点成分を芯成分とする芯鞘型、一方が低融点、他方が高融点成分であるサイドバイサイド型などが挙げられる。これらの複合繊維の両方の成分の組み合わせとしては、PP〔ポリプロピレン〕/PE(ポリエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)/PE、PP/低融点共重合PP、PET/低融点共重合ポリエステルなどが挙げられる。ここで、上記低融点共重合ポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどを基本骨格として、イソフタル酸、5−金属スルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバチン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの脂肪族多価アルコールなどとの変性共重合などが挙げられる。
【0011】
低融点成分である熱接着成分の融点は、通常、110〜160℃、好ましくは120〜155℃である。110℃未満の場合、不織布としての耐熱性が低いので実用性に欠ける。一方、160℃を超えると、不織布製造工程における熱処理温度を高くする必要が生じ、生産性が落ち、実用的でないばかりか、後述するエアレイド繊維層との熱圧一体化における接着効果も期待できなくなる。
【0012】
熱接着性繊維の繊度は、1〜4dtex、好ましくは1.1〜3dtexである。1dtex未満の場合は、細い繊維どうしが絡まり易くなり、他の繊維との混合も難しくなって、地合いの不均一性や塊状欠点発生のリスクが大になる。一方、4dtexを超えた太い繊維の場合は、同一混合率でも繊維本数がダウンする結果となるので、吸湿性粉体脱落防止、強度付与、ヒートシール性付与などの効果が薄れる。
なお、基材シートの製法がエアレイド法の場合は、熱接着性繊維は、繊維長が2〜15mmであることが好ましく、さらに好ましくは3〜10mmである。繊維長が2mm未満の場合は、強度アップなどの効果が十分で無く、一方、15mmを超えると、繊維どうしが絡まり易くなり、工程性や地合いの悪化につながりやすい。
【0013】
なお、熱接着性繊維は捲縮していても、していなくてもよく、またストランドチョップであってもよい。捲縮している場合、ジグザグ型の二次元捲縮繊維およびスパイラル型やオーム型などの三次元(立体)捲縮繊維の何れも使用できる。
【0014】
また、これらの熱接着性繊維以外の繊維としては、例えばPP繊維、PET繊維、PBT繊維、ナイロン6繊維、ナイロン6,6繊維、芳香族ポリアミド繊維、アクリル繊維、合成パルプ(例えば、三井化学(株)製SWPのような、PEやPPを素材とする多分岐フィブリル状繊維)、木材パルプ、麻、レーヨン、ビスコース繊維などを本発明の趣旨、効果を阻害しない範囲で混合しておいても良い。この場合、他の繊維の比率は50重量%未満に留めるのが好ましい。50重量%以上であると、不織布強力やヒートシール性に影響が出るばかりか、熱接着性のない繊維は実使用中に脱落し易くなる。
【0015】
基材シートの目付は、10〜100g/m、好ましくは12〜80g/mである。10g/m未満の場合は、ウェブ層に存在する吸湿性粉体が基材シートで捕捉されずに脱落したり、不織布強力も低くなるので実使用で破壊などのトラブルを引き起こし易い。一方、100g/mを超えると、エアレイド法の基材として必要な通気度2秒以下の要件を確保できなくなる傾向が生じるばかりか、低通気性であるがために本発明の意図する吸湿性に悪影響が出る。
なお、基材シートの通気度は、2秒以下であることが好ましい。エアレイド法は、通気性材料の上部から繊維と空気の混合体を噴出させ、下部からサクションで空気を引きつつ、通気性材料上に繊維層を形成する方法なので、基材となる基材シートの通気度は重要な要件となる。2秒を超えた通気性の悪い場合は、エアレイド繊維層が不均一になり易く、且つ生産性も悪化する。通気度は、好ましくは0.5〜2秒である。
【0016】
なお、基材シートは、ウェブ層との積層に際し、同時に作成してもよいが、例えば、あらかじめエアレイド法で作製、熱処理された基材シートを用いることがエアレイド法による製造工程を簡略化できる点で好ましい。
【0017】
エアレイド不織布製造法によるウェブ層の形成と積層一体化:
次に、上記基材シートの上にエアレイド法で、ポリオレフィン系合成パルプと吸湿性粉体からなるウェブ層を形成する。すなわち、多孔質ネットコンベアー上に位置する単台または多数台の噴き出し部から、ポリオレフィン系合成パルプと吸湿性粉体との混合物を噴出し、ネットコンベアー下面に配置した空気サクション部で吸引しながらネットコンベアー上にウェブ層を形成するものである。このとき、ネットコンベア上に上記基材である基材シートをあらかじめ敷いて置くことにより、一挙に積層体が得られる。その後、積層体に熱風処理、および/または熱圧カレンダー処理を加えてエアレイド層の繊維間結合、および基材との熱接着を形成して不織布シートとして一体化させる。
さらに、ウェブ層には、熱接着性繊維を併せて混合しておいても良い。この場合、粉体の固定・脱落防止、層間剥離強力の向上、などの効果が期待できる。ウェブ層に熱接着性繊維を併用すると、特に本発明のシートの端面からの粉体脱落防止には効果が大きい。熱接着性繊維としては、上記した熱接着性複合繊維が特に好適である。混合率は、ウェブ層全体の60重量%以下であることが好ましい。60重量%を超えると、熱処理後のシートの柔軟性が失われてくるばかりか、吸湿性粉体の周囲を多くの熱接着性繊維で覆う状態となり、吸湿性に悪影響を及ぼす。
繊維量、噴き出し条件、空気サクション条件、熱処理条件などを調節することにより必要な特性をコントロールすることができる。
【0018】
ここで、ポリオレフィン系合成パルプは、例えば、高温、高圧状態にあるポリオレフィン、水の沸点よりも低い沸点を有する脂肪酸炭化水素および脂環族炭化水素から選ばれるポリマー用溶媒、および水よりなる分散液であって、減圧領域中に急速に放出したときに、実質的にすべての溶媒が蒸発し、かつ水の実質的蒸発を起こさない温度にある分散液を、沈殿ノズルを通して減圧領域中に放出して、ポリオレフィンを水中に分散した繊維状物質として回収し、この水中に分散した繊維状物質を、直ちに、50℃以上の初期温度にある状態で、界面活性剤の叩解またはリファイニングすることによって得られる。このポリオレフィン系合成パルプの製造方法は、例えば、特公昭52−47049号公報の第1欄の特許請求の範囲、第3欄第5行〜第19欄第25行に詳述されているが、本発明の趣旨、すなわち吸湿性粉体の捕捉作用を有するフィブリル状繊維からなるポリオレフィン系合成パルプの製法であれば、必ずしもこれらにこだわるものでは無い。
ポリオレフィン系合成パルプは、平均繊維長が0.5〜3mm、平均繊維径が1〜100μmのものが好適に使用できる。
また、このポリオレフィン系合成パルプの市販品としては、三井化学(株)製のSWP E790,E400,EST−8,E620,UL410,NL490,AU690,Y600,ESS−5,ESS−2,E380,E780,E90,UL415などが挙げられる。
【0019】
これらのポリオレフィン系合成パルプは、多分岐繊維構造(フィブリル化して、多分岐、高比表面積を有する)なので、吸湿性粉体の捕捉性に優れる特徴を有する。また、エアレイド法により上記基材シートに吹き付けると、気流中でポリオレフィン系合成パルプと吸湿性粉体とが一体となったウェブ層が、該シート上に均一に載置されることになる。
【0020】
一方、ウェブ層を形成する他方の吸湿性粉体としては、吸湿性を有する粉体であればいかなるものでもよいが、好ましくはゼオライト、シリカ系粒子、アルミナゲル、アルミナ系粒子、シリカアルミナ系乾燥剤、けい藻土、木炭、竹炭、活性炭、モレキュラシーブス、ポリ(メタ)アクリル酸もしくはポリビニルピロリドンまたはこれらのアルカリ金属塩、などである。
これらの吸湿性粉体の平均粒径は、通常、0.01〜2mm、好ましくは0.1〜1mmである。
【0021】
ウェブ層を形成するポリオレフィン系合成パルプと吸湿性粉体との混合比は、90/10〜10/90重量%、好ましくは80/20〜20/80重量%、さらに好ましくは70/30〜20/80重量%である。ポリオレフィン系合成パルプが10重量%未満では、吸湿性粉体の捕捉機能が充分でなくなり、粉体脱落しやすくなる。一方、吸湿性粉体が10重量%未満では、得られる吸湿性不織布の吸湿性が乏しく、本発明の意図するものでなくなる。
【0022】
なお、エアレイド法で形成するウェブ層は、通常、目付が20〜1,500g/m、好ましくは40〜1,000g/mである。20g/m未満の場合、吸湿性、不織布強力、ヒートシール強力が低くなり、実用に適さない。一方、1,500g/mを超えると、厚過ぎて柔軟性が乏しくなり、またエアレイド法で均一なウェブを形成するのが困難となり好ましくない。
本発明のウェブ層を作製するエアレイド法は、カード法などの既存の乾式不織布製造法に較べて、空気流によって容易に単繊維に解繊され易い、長さの短い繊維が使用できるので、極めて地合いの良好な、つまり均一性の良好な不織布が得られるという大きな特徴を有する。吸湿性の用途において、粉体漏れが少なく、かつ吸湿性が良いという性能に、均一性は重要な要件であり、既存のカード法不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布では得られ難い。また、本製造法によれば、タテ/ヨコの強力比率がほぼ1/1に近いというメリットも有する。
【0023】
上層シート:
本発明の吸湿性不織布は、上記ウェブ層に存在する吸湿性粉体の脱落を一層防止し、また表面耐磨耗性などの機能を強化するために、このポリオレフィン系合成パルプと吸湿性粉体とからなるウェブ層の上に、さらに、繊度が1〜4dtexの熱接着性繊維を60重量%以上含み、熱処理により繊維間結合された目付が10〜100g/mの不織布からなる上層シートを積層することが好ましい。
この上層シートとしては、上記基材シートと同様のものを挙げることができる。
【0024】
熱接着性複合繊維からなる接着性不織布:
本発明の吸湿性不織布は、基シートとウェブ層との間、あるいは、ウェブ層と上層シートとの間の接合を確かなものとするために、これらの層間に、熱接着性複合繊維からなる接着性不織布を介在させることが好ましい。
接着性不織布を介在させるには、基材である上記基材シート上、および/または、ウェブ層の上に、エアレイド法で接着性不織布層を形成する。すなわち、多孔質ネットコンベアー上に位置する単台または多数台の噴き出し部から、接着成分の融点が110〜160℃の熱接着性複合繊維を空気流と共に噴出し、ネットコンベアー下面に配置した空気サクション部で吸引しながらネットコンベアー上に繊維層を形成するものである。このとき、ネットコンベア上に上記基材シート層、あるいは、基材シート層およびウェブ層をあらかじめ敷いて置くことにより、一挙に積層体が得られる。その後、積層体に熱風処理、および熱圧カレンダー処理を加えてエアレイド層の繊維間結合、および基材シート層との熱接着を形成して不織布シートとして一体化させる。
繊維量、噴き出し条件、空気サクション条件、熱処理条件などを調節することにより必要な特性をコントロールすることができる。
【0025】
接着性不織布に用いられる熱接着性複合繊維としては、基材シートに用いられる熱接着性複合繊維と同様のものが用いられる。
接着性不織布の目付は、通常、2〜50g/m、好ましくは4〜30g/mであり、2g/m未満では、基材シートとウェブ層、あるいは、ウェブ層と上層シートとの接着が不充分となる。一方、50g/mを超えると厚すぎて吸湿性能に悪い影響を及ぼし易い。
【0026】
熱処理:
本発明の吸湿性不織布は、以上のようにして得られる不織布積層体を熱処理することが好ましい。熱処理としては、熱風処理および/または熱圧処理が挙げられる。
このうち、繊維間結合を形成するための熱風処理としては、熱接着性複合繊維の低融点成分の融点以上の温度が必要である。しかしながら、低融点成分の融点よりも30℃以上高い場合、あるいは高融点成分(芯鞘型複合繊維の芯成分、あるいはサイドバイサイド型複合繊維の高融点成分)の融点以上の場合は、繊維の熱収縮が大きくなり易く、地合いの悪化を招いたり、はなはだしい場合は繊維の劣化を生じるので好ましくない。
熱風処理温度は、通常、110〜190℃、好ましくは120〜175℃である。
【0027】
また、熱風処理したのち熱圧処理、具体的には熱圧カレンダー処理を加えても良い。カレンダー処理に用いるローラーとしては、全体に均一な熱圧を加えるため、平滑表面の一対の金属ローラー、または金属ローラーと弾性ローラーの組み合わせを用いることが好ましいが、多段ローラーであっても良い。また、本発明の趣旨を損なわない範囲であれば、凸凹表面のエンボスローラーであっても良い。
【0028】
カレンダー処理の場合、単に厚さ調整のためであれば常温(非加熱)〜高温度の任意の温度で加圧すれば良い。圧力は希望する厚さになるよう適宜選択することができる。熱圧カレンダーにより繊維間の熱結合を補強し、強度、表面耐摩耗性、層間剥離防止などを向上するためであれば、ローラー表面の温度は、熱接着性複合繊維の低融点成分の融点以上の温度が必要である。しかしながら、低融点成分の融点よりも30℃以上高い場合、あるいは高融点成分(芯鞘型複合繊維の芯成分、あるいはサイドバイサイド型複合繊維の高融点成分)の融点以上の場合は、繊維の熱収縮が大きくなり易いばかりか、ローラー表面への粘着が発生し、工程性に欠ける。融点未満の場合は、当然のことながら繊維間結合の補強が充分でなくなる。
繊維間結合を補強する場合の熱処理温度は、通常、110〜190℃、好ましくは120〜175℃である。
【0029】
また、カレンダー処理の線圧は、幅方向で均一な接圧になるよう設定すれば、任意の圧力を選択することができる。高圧の場合は密度・不織布強力・層間強力がアップし、厚さがダウンする。低圧の場合は勿論これに反する影響が出る。不織布強力を重視するのであれば極力高圧のほうが好ましい。柔軟性を重視するのであれば低圧の方が好ましい。カレンダー処理の線圧は、通常、10〜100kgf/cmの範囲で任意に選択できる。
【0030】
なお、得られる本発明の吸湿性不織布の厚さは、通常、0.3〜30mm、好ましくは0.5〜20mmであるが、ウェブ層の目付け(20〜1,500g/m)に応じ、且つ用途に応じて設定することができる。
また、本発明の吸湿性不織布の総目付けは、通常、40〜1,800g/m、好ましくは50〜1,500g/mである。
【実施例】
【0031】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
実施例1
まず、PET(ポリエチレンテレフタレート)/PE(ポリエチレン)系複合繊維2.2dt×5mm(帝人ファイバー(株)、F6)を原料繊維として用い、エアレイド法によってシート化した。目付けは12g/mに調整し、熱オーブン温度136℃で熱処理した。このシートの通気度は0.8秒であった。次に、このシートを基材シート(キャリアシート)として、その上にポリエチレン系合成パルプ(三井化学(株)、SWP・E795)20重量%と、粉砕B型シリカゲル(新越化成工業(株)、GB(W)30メッシュパス)80重量%との混合物を180g/mとなるようエアレイド法でウェブ層として形成した。さらに、この上部に、上記12g/mのシートを上層シートとして載置して、これら複層シートを重ねたままで136℃の熱オーブンで熱風処理したのちに表面フラットな一対の金属ローラーで80℃、10kgf/cmで熱圧処理した。得られた目付け204g/mの積層一体化不織布は、柔軟で粉漏れも無く、実用に耐える強度、耐表面摩耗性などを有し、吸湿性にも優れ、かつ一度吸湿させた後に低湿度の環境下で放湿する性質も示し、吸放湿性不織布として有用であった。
【0033】
比較例1
ウェブ層をすべてポリエチレン系合成パルプで構成し、その他は実施例1と同様にした。得られた積層一体化不織布は吸湿性に欠けるものであった。
【0034】
比較例2
ウェブ層の組成中、ポリエチレン系合成パルプをPET/PE系複合繊維2.2dt×5mm(帝人ファイバー(株)、F6)に置き換えた以外は、すべて実施例1と同様にした。得られた積層一体化不織布は吸湿性を有するものの粉漏れが激しく、実用性に欠けるものであった。
【0035】
実施例2
まず、PP(ポリプロピレン)/PE系複合繊維2.2dt×51mm(チッソ(株)、ESC)を原料繊維として用い、カード法によって目付け16g/mのウェブとし、136℃のエアスルータイプの熱オーブンで熱処理してシート化した。このシートの通気度は0.9秒であった。次に、このシートを基材シートとして、その上にポリエチレン系合成パルプ(三井化学(株)、SWP・E795)15重量%と、粉砕B型シリカゲル(新越化成工業(株)GB(W)30メッシュパス)70重量%と、さらにPP/PE系複合繊維1.7dt×3mm(チッソ(株)、インタック)15重量%の混合物を100g/mとなるようエアレイド法でウェブ層として形成した。さらにこの上部に、上記16g/mのエアスルー不織布シートを上層シートとして載置して、これら複層シートを重ねたままで136℃の熱オーブンで熱風処理したのちに表面フラットな一対の金属ローラーで100℃、20kgf/cmで熱圧処理した。得られた目付け132g/mの積層一体化不織布は、柔軟で粉漏れも無く、実用に耐える強度、表面耐摩耗性などを有し、吸湿性不織布として有用であった。
【0036】
実施例3
目付け30g/m、通気度1.4秒のPPスパンボンド(三井化学(株)、シンテックス)を基材シートとして、まずこの上に、PP/PE系複合繊維1.7dt×3(チッソ(株)、インタック)を10g/mとなるようエアレイド法でウェブを形成し、接着性不織布の層とした。次に、この上に、ポリエチレン系合成パルプ(三井化学(株)、SWP・E795)10重量%と、粉砕B型シリカゲル(新越化成工業(株)、GB(W)30メッシュパス)80重量%と、さらにPP/PE系複合繊維1.7dt×3mm(チッソ(株)、インタック)10重量%の混合物を320g/mとなるようエアレイド法でウェブ層として形成した。さらに、この上部に、PP/PE系複合繊維1.7dt×3(チッソ(株)、インタック)を10g/mとなるようエアレイド法でウェブを形成し、接着性不織布の層とした。さらに、この上部に上記30g/mのPPスパンボンドを上層シートとして載置して、これら複層シートを重ねたままで138℃の熱オーブンで熱風処理したのちに表面フラットな一対の金属ローラーで60℃、10kgf/cmでカレンダー処理した。得られた目付け400g/mの積層一体化不織布は、柔軟で粉漏れも無く、実用に耐える強度、表面耐摩耗性などを有し、吸湿性不織布として有用であった。





【0037】
【表1】

【0038】
<注>
(1)通気度; JIS P8117ガーレ試験機を使用する透気度(秒)で表す。
(2)厚さ; 40g/cmの荷重によった。
(3)吸湿試験; 検体10cm×10cm。予備乾燥90℃×24hののちデシケーター中で2h室温放冷し、その後所定温湿度のデシケーター中に24時間放置。重量変化を測定し、g/mに換算した。
(4)放湿試験; 高湿度RH90%×24hの条件で吸湿させたのち、低湿度RH20%のデシケーター中に24時間放置して放湿、重量変化を測定して残存吸湿量をg/mに換算した。
(5)粉漏れ; 10cm×10cmの検体をポリ袋に入れ、10秒間激しく振ったあとに袋内の粉体を観察した。「極く微量」とは1重量%以下、「極めて多い」とは10重量%超、を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の吸湿性不織布は湿度調節や結露防止の機能を有する上に、吸湿性粉体の脱落がなく、柔軟性にも富むので、例えば脱酸素剤、乾燥剤、発熱剤、吸湿 剤、脱臭剤、防虫剤、除湿剤、芳香剤を収納した包装体等の商品に応用できる。さらに各種の建築材料、衛生材料、生活用材料、医薬・食品用部材、電機電子部品、電線材料などの広い範囲の用途に適用できる。
建築材料用途の具体例としては、壁内材、壁紙、屋根材、屋根下敷材、外装材、床材、カーペット部品、押入れシート、カーテン、ロールカーテン、仕切材などであり、衛生材料の具体例としては乳児用、大人用のおむつ部品、生理用品、メディカルガウン、手術用品、介護用シート、医療部材、介護用品物品などであり、生活用品としては押し入れ、タンスなどの除湿剤、医薬部材としては医薬品包装の除湿剤、食品部材としてはお菓子などの包装内部の除湿剤などがあげられる。
また、湿度を嫌う電機電子部品の包装ばかりでなく、複写機、映像機器などの電機電子機器の内部に取り付けて吸湿・湿度調節の機能を発揮することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊度が1〜4dtexの熱接着性繊維を60重量%以上含み、熱処理により繊維間結合された目付が10〜100g/mの不織布からなる基材シート上に、ポリオレフィン系合成パルプと吸湿性粉体が90/10〜10/90重量%の混合成分からなり、目付が20〜1,500g/mのウェブ層をエアレイド法により形成し、積層一体化させてなる吸湿性不織布。
【請求項2】
基材シートを構成する不織布が、カード法、スパンボンド法、メルトブロー法、エアレイド法、または湿式抄造法で得られたものである請求項1記載の吸湿性不織布。
【請求項3】
ポリオレフィン系合成パルプがフラッシュ法により得られた多分岐繊維構造のポリオレフィン系合成パルプである請求項1または2記載の吸湿性不織布。
【請求項4】
吸湿性粉体が、ゼオライト、シリカ系粒子、アルミナゲル、アルミナ系粒子、シリカアルミナ系乾燥剤、けい藻土、木炭、竹炭、活性炭、モレキュラシーブス、ポリ(メタ)アクリル酸もしくはポリビニルピロリドン、およびこれらのアルカリ金属塩の群から選ばれた少なくとも1種である請求項1〜3いずれかに記載の吸湿性不織布。
【請求項5】
ポリオレフィン系合成パルプと吸湿性粉体とからなるウェブ層の上に、さらに、繊度が1〜4dtexの熱接着性繊維を60重量%以上含み、熱処理により繊維間結合された目付が10〜100g/mの不織布からなる上層シートを積層してなる請求項1〜4いずれかに記載の吸湿性不織布。
【請求項6】
基材シートとウェブ層との間、および/または、ウェブ層と上層シートとの間に、さらに熱接着性複合繊維からなる接着性不織布を介在させてなる請求項1〜5いずれかに記載の吸湿性不織布。
【請求項7】
熱処理されてなる請求項1〜6いずれかに記載の吸湿性不織布。

【公開番号】特開2006−291404(P2006−291404A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115208(P2005−115208)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(591196315)金星製紙株式会社 (36)
【Fターム(参考)】