説明

吸着したポリペプチド含有分子を有する微粒子

界面活性剤を使用せずに形成された吸着ポリペプチド含有分子を有する微粒子、そのような微粒子組成物を生成する方法、およびその使用が、開示される、この微粒子は、ポリマー(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリシアノアクリレートなど)である。好ましいポリマーは、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)であり、より好ましくは、40:60〜60:40の範囲にあるラクチド/グリコリドモル比を有しかつ20,000ダルトン〜70,000ダルトンの範囲にある分子量を有するポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)である。好ましいポリペプチド含有分子は、細菌抗原およびウイルス抗原である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の陳述)
本願は、2002年2月20日出願の米国仮特許出願番号60/358,315号(発明の名称「吸着したポリペプチド含有分子を有する微粒子」)に対する優先権を請求する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、一般に、薬学的組成物に関する。特に、本発明は、界面活性剤を使用せずに形成される吸着したポリペプチド含有分子を有する生分解性微粒子に関し、そのような微粒子を調製するための方法に関し、そしてそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
粒子状キャリアは、十分な免疫応答を惹起する試みにおいて、吸着した抗原または捕捉した抗原とともに使用されている。そのようなキャリアは、複数のコピーの選択抗原を免疫系に提示し、局所リンパ節における抗原の捕捉および保持を促進する。これらの粒子は、マクロファージにより食菌され得、そしてサイトカイン放出を介して抗原提示を増強し得る。
【0004】
例えば、共有に係る国際特許出願WO98/33487(PCT/US98/01738)および同時係属中の米国特許出願番号09/015,652号(1998年1月29日出願)は、免疫応答(細胞媒介性免疫応答を含む)を刺激するための抗原吸着微粒子および抗原カプセル化微粒子の使用、ならびにそれらの微粒子の生成方法を記載する。それらの微粒子を形成するために使用されるポリマーとしては、ポリ(ラクチド)およびポリ(ラクチド−co−グリコリド)(本明細書中で「PLG」とも呼ばれる)が挙げられる。
【0005】
共有に係る国際特許出願WO00/06123(PCT/US99/17308)および同時係属中の米国特許出願番号09/715,902号は、吸着した微粒子(ポリヌクレオチドおよびポリペプチド抗原を含む)を有する微粒子の生成方法を開示する。その微粒子は、例えば、ポリマー(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)(例えば、PLG、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物など))を包含し、例えば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、または非イオン性界面活性剤を使用して形成される。アニオン性界面活性剤を含む微粒子(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含むPLG微粒子)が、正荷電高分子(例えば、ポリペプチド)の使用のために提唱される。カチオン性界面活性剤を含む微粒子(例えば、CTAB(セトリミドまたはセチルトリメチルアンモニウムブロミドとしても公知)を含むPLG微粒子)が、負荷電高分子(例えば、DNA)の使用のために提唱される。免疫応答(細胞媒介性免疫応答を含む)を刺激するためのそのような微粒子の使用もまた、開示される。
【0006】
しかし、上記の参考文献の各々において、高分子吸着微粒子の調製の間に、1種以上の界面活性剤が使用される。不幸なことに、界面活性剤の使用は、数ある結果のうちでも製品登録の間にさらなる規制精査をもたらす、毒物学的問題を引き起こし得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明者らは、吸着したポリペプチド含有分子を有する微粒子が、界面活性剤の非存在下で形成され得ることを、思いもかけずに見出した。
【0008】
例えば、本発明の第1局面によると、(a)ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、およびポリシアノアクリレートからなる群より選択されるポリマーを含む、微粒子と、(b)その微粒子に吸着したポリペプチド含有分子とを含む、生理活性微粒子組成物が提供される。この微粒子組成物は、アニオン性界面活性剤の非存在下で形成され、好ましくは、すべての界面活性剤(アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および両性界面活性剤を含む)の非存在下で形成される。
【0009】
好ましいポリマーは、ポリ(α−ヒドロキシ酸)であり、より好ましくは、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)、およびポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリドからなる群より選択されるポリ(α−ヒドロキシ酸)である。より好ましいのは、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)ポリマーである。好ましいポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)ポリマーは、25:75〜75:25(より好ましくは、40:60〜60:40)の範囲にあるラクチド/グリコリドモル比を有し、かつ10,000ダルトン〜100,000ダルトン(より好ましくは、30,000ダルトン〜70,000ダルトン)の範囲にある分子量を有する、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)ポリマーである。
【0010】
好ましい生理活性ポリペプチド含有分子としては、細菌抗原およびウイルス抗原が挙げられる。HIV抗原(例えば、gp41抗原、gp120抗原、gp140抗原、p24gag抗原、およびp55gag抗原)、髄膜炎B群抗原(例えば、髄膜炎B群抗原組換えタンパク質287抗原)、鎖球菌抗原(例えば、B群連鎖球菌抗原)、およびインフルエンザA型赤血球凝集素抗原が、特に好ましい。
【0011】
いくつかの実施形態において、さらなる生理活性高分子を備えた微粒子組成物が、提供され、そのさらなる生理活性高分子は、この微粒子に結合されていても結合されていなくてもよく、かつポリマー内に捕捉さえされてもよい。例えば、この微粒子組成物は、アジュバント(特に、Th1刺激アジュバント)を備えて提供され得る。好ましいアジュバントとしては、CpGオリゴヌクレオチド、LTK63、LTR72、MPL、アミノアルキルグルコサミニドアミノアルキルグルコサミド4−リン酸(AGP)、イミダゾキノリンアジュバント、リポ多糖模倣アジュバント、QS21、二本鎖RNA(dsRNA)およびアルミニウム塩(リン酸アルミニウムを含む)が挙げられる。
【0012】
本発明の別の局面によると、薬学的に受容可能な賦形剤が、上記の微粒子組成物に添加される。
【0013】
本発明の別の局面は、脊椎動物被検体にポリペプチド含有分子を送達する方法に関し、この方法は、上記微粒子組成物を、その脊椎動物被検体に投与する工程を包含する。
【0014】
本発明の他の局面において、上記微粒子組成物は、疾患の診断において、疾患の処置において、ワクチンにおいて、そして/または免疫応答の惹起において、使用される。
【0015】
例えば、さらなる局面において、本発明は、脊椎動物被検体において細胞性免疫応答および/または体液性免疫応答を惹起するための方法に関し、この方法は、治療有効量の上記微粒子組成物を脊椎動物被検体に投与する工程を包含する。
【0016】
本発明の別の局面は、免疫方法に関し、この方法は、治療有効量の上記微粒子組成物を脊椎動物被検体に投与する工程を包含する。
【0017】
本発明のなお他の局面は、微粒子の生成方法に関する。一般に、これらの方法は、(a)(i)ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクタム、ポリオルトエステル、ポリ無水物、およびポリシアノアクリレートからなる群より選択されるポリマーと、(ii)有機溶媒と、(iii)水とを含むエマルジョンを形成する工程;ならびにその後、(b)上記有機溶媒の除去を包含する。この方法は、アニオン性界面活性剤を含まない組成物を使用して実行され、好ましくは、すべての界面活性剤(アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および両性界面活性剤を含む)を含まない。
【0018】
好ましくは、このエマルジョンは、水中油中水エマルジョンであり、この水中油中水エマルジョンは、(a)ポリマーと有機溶媒とを含む有機相を、水を含む第1水相を用いて乳化して、油中水エマルジョンを形成する工程;ならびに(b)水を含む第2水相を、上記工程(a)において形成されたエマルジョンを用いて乳化して、水中油中水エマルジョンを形成する工程、を包含するプロセスによって形成される。一般に、これらの微粒子組成物は、その後、生理活性ポリペプチド含有分子(例えば、上記に考察される生理活性ポリペプチド含有分子)と混合されて、生理活性組成物を生成する。
【0019】
上記のような二重乳化技術が好ましいが、一重乳化技術もまた、本発明の微粒子組成物を形成するために使用され得る。
【0020】
本発明のなお他の局面は、微粒子組成物を生成する方法に関し、この方法は、(1)乳化プロセスにおいて微粒子を形成する工程であって、この微粒子は、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクタム、ポリオルトエステル、ポリ無水物、およびポリシアノアクリレートからなる群より選択されるポリマーを含む、工程;ならびに(2)生理活性ポリペプチド含有分子をその微粒子表面上に吸着させる工程、を包含する。この方法は、アニオン性界面活性剤を含まない組成物を使用して実行され、好ましくは、すべての界面活性剤(アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および両性界面活性剤を含む)を含まない。
【0021】
本発明の利点は、ヒト投与のための微粒子組成物(特に、吸着したポリペプチド含有分子を含む、ヒト投与のための微粒子組成物)が、界面活性剤を使用することなく形成され得ることである。界面活性剤がないことは、有益である。それは、とりわけ、界面活性剤の添加が毒性の問題を惹起し、この問題は、本発明の微粒子組成物により克服されるからである。
【0022】
本発明のこれらおよび他の実施形態、局面、および利点は、本明細書中の開示を考慮して、当業者に心に容易に浮かぶ。
【0023】
(発明の詳細な説明)
本発明の粒子は、他に記載されない場合、当該分野の技術内で、化学、重合科学、生化学、分子生物学、免疫学および薬学の従来の方法を使用する。このような技術は、文献内で十分に説明されている。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版(Easton,Pennsylvania:Mack Publishing Company,1990);Methods In Enzymology(S.ColowickおよびN.Kaplan編,Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology,Vols.I−IV(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編,1986,Blackwell Scientific Publications);Sambrookら,Molecular Cloning.A Laboratory Manual(第2版,1989);Handbook of Surface and Colloidal Chemistry(Birdi,K.S.編,CRC Press,1997)およびSeymour/Carrahef’s Polymer Chemistry(第4版,Marcel Dekker Inc.,1996)を参照のこと。
【0024】
本明細書中(上述または下述のいずれか)に引用される、全ての出版物、特許および特許出願は、それらの全体が、参考として本明細書により援用される。
【0025】
本明細書中で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、内容が他に明確に記載しない限り、複数の参照を含む。従って、例えば、用語「微粒子」とは、1つ以上の微粒子を言うなど。
【0026】
(A.定義)
本発明の記載において、以下の用語が利用され、そして以下に指示されるように定義されることが意図される。
【0027】
他に記載されない限り、本明細書中の全てのパーセントおよび割合は、重量基準で示される。
【0028】
本明細書中で使用される場合、用語「微粒子」とは、約10nm〜約150μmの直径、より好ましくは、約200nm〜約30μmの直径、そして最も好ましくは、約500nm〜約10μmの直径の粒子を言う。好ましくは、微粒子は、針およびキャピラリーを塞ぐことなく、非経口投与または粘膜投与を可能にする直径である。微粒子のサイズは、当該技術で周知の技術(例えば、光子相関分光法、レーザー回折法および/または走査型電子顕微鏡)によって、容易に決定される。用語「粒子」はまた、本明細書中で規定されるような微粒子を示すために使用され得る。
【0029】
本明細書中での使用のためのポリマー微粒子としては、滅菌可能、非毒性、および生分解性である材料から形成される。このような材料としては、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、PACA、およびポリシアノアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明とともに使用するための微粒子としては、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、特にポリ(ラクチド)(「PLA」)またはD,L−ラクチドおよびグリコリドのコポリマーまたはグリコール酸(例えば、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)(「PLG」)、またはD,L−ラクチドおよびカプロラクトンのコポリマーから誘導されるポリマー微粒子である。ポリマー微粒子は、種々の分子量および、コポリマー(例えば、PLG)の場合、種々のラクチド:グリコリドの比を有する任意の種々のポリマー出発材料に由来し得、これらの選択は、大部分は、同時投与されるポリペプチド含有分子に一部依存する、選択の問題である。これらのパラメータは、以下により十分に考察される。
【0030】
本明細書中で使用される場合、用語「界面活性剤」としては、洗浄剤、分散剤、懸濁剤、および乳化安定剤が挙げられる。微粒子処方物における使用のために、過去に提唱されたアニオン性界面活性剤としては、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、SLS(ラウリル硫酸ナトリウム)、DSS(ジスルホスクシナート)、硫酸化脂肪アルコールなどが挙げられるが、これらに限定されない。提唱されるカチオン性界面活性剤は、セトリミド(セチルトリメチル臭化アンモニウム、すなわち「CTAB」)、塩化ベンザルコニウム、DDA(ジメチルジオクトデシル臭化アンモニウム)、DOTAP(ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン)などが挙げられるが、これらに限定されない。提唱される非イオン性表面活性剤としては、PVA、ポビドン(ポリビニルピロリドンすなわちPVPとしてもまた知られる)、ソルビタンエステル、ポリソルビタン、ポリオキシエチル化グリコールモノエーテル、ポリオキシエチル化アルキルフェノール、ポリオキサマーなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書中で使用される場合、組成物が、わずかな量の界面活性剤のみ、または不純物量の界面活性剤のみを含む場合、組成物は「界面活性剤が無い」または組成物内に「界面活性剤の非存在」である。本明細書中で使用される場合、界面活性剤の「わずかな」量とは、組成物が、0.00001:1未満の界面活性剤:ポリマー比(重量:重量)を含有することを意味する。
【0032】
本明細書中で使用される場合、用語「高分子」とは、医薬品、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、ポリペプチド含有分子、ホルモン、酵素、転写メディエータまたは翻訳メディエータ、代謝経路における中間体、免疫調節薬、抗原、アジュバント、またはそれらの組み合わせを言うが、これらに限定されない。
【0033】
用語「医薬品」とは、以下により詳細に考察される、生物学的に活性な化合物(例えば、抗生物質、抗ウイルス剤、増殖因子、ホルモンなど)を言う。
【0034】
用語「アジュバント」とは、医薬品の活性を補助または改変する任意の物質を言い、免疫学的アジュバント(抗原に対する免疫応答を増加または多様化する)が挙げられるが、これに限定されない。
【0035】
「ポリヌクレオチド」は、核酸ポリマーであり、この核酸ポリマーは、代表的に、生物学的に活性な(例えば、免疫原性または治療的)タンパク質またはポリペプチドをコードする。ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの性質に依存して、ポリヌクレオチドは、少なくとも10ヌクレオチド(例えば、ここで、ポリヌクレオチドは、抗原をコードする)を含み得る。さらに、「ポリヌクレオチド」は、2本鎖配列と1本鎖配列の両方を含み得、そしてウイルス、原核生物のmRNAまたは真核生物に由来するcDNA、ウイルス(例えば、RNAウイルスおよびDNAウイルスならびにレトロウイルス)または原核生物DNA由来のゲノムRNA配列およびゲノムDNA配列、および特に合成DNA配列が挙げられるが、これらに限定されない。この用語はまた、任意のDNAおよびRNAの公知の塩基アナログを含む配列を表現する。この用語はさらに、天然配列に対して、好ましくは核酸分子が治療タンパク質または抗原性タンパク質をコードするような、改変(例えば、欠失、付加および置換(一般的に天然で保存的))を含む。これらの改変は、部位特異的突然変異誘発を介するように検討され得るか、または偶発的(例えば、抗原を生成する宿主の変異を介して)であり得る。
【0036】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」とは、アミノ酸残基のポリマーを言い、そして産物の最小の長さに限定されない。従って、ペプチド、オリゴペプチド、ダイマー、マルチマーなどは、定義内に含まれる。全長タンパク質およびそのフラグメントの両方は、定義により含まれる。この用語はまた、ネイティブ配列に対して、好ましくはタンパク質が、免疫応答を誘発する能力を維持するか、またはこのタンパク質が投与される被験体において治療的効果を有するような、改変(例えば、欠失、付加および置換(一般的に天然で保存的))を含む。
「抗原」は、抗原が本発明に従って提示される場合の細胞性抗原特異的免疫応答、または体液性抗体応答を成すための宿主の免疫システムを刺激し得る、1つ以上のエピトープを含む分子を意味する。抗原は、それ自身によってか、または別の分子と組み合わせて存在する場合、細胞性応答または体液性応答を誘発し得る。正常に、エピトープは、約3〜15アミノ酸、一般的には約5〜15アミノ酸の間を含む。所定のタンパク質のエピトープは、当該分野で周知である、任意の数のエピトープマッピング技術を用いて同定され得る。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology,Vol.66(Glenn E.Morris編,1996)Humana Press,Totowa,New Jerseyを参照のこと。例えば、線状エピトープは、例えば、固体支持体上の多くのペプチド、そのタンパク質分子の部分に対応するペプチドを同時合成し、そしてペプチドが支持体になお接着されている間、ペプチドを抗体と反応させることにより、決定され得る。このような技術は、当該分野で公知であり、そして例えば、米国特許第4,708,871号;Geysenら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3998−4002;Geysenら(1986)Molec.Immunol.23:709−715(全てそれらの全体が、参考として本明細書中に援用される)において記載される。同様に、コンフォメーショナルエピトープは、例えば、X線結晶学および2次元核磁気共鳴を用いて、アミノ酸の特異的なコンフォメーションを決定することによって、容易に同定され得る。例えば、Epitope Mapping Protocols(上述)を参照のこと。
【0037】
本明細書中で使用される場合、用語「抗原」は、両方のサブユニット抗原(すなわち、抗原が天然で結合される全生物体、ならびに殺傷した、弱毒化した、また非活性化した細菌、ウイルス、寄生虫または他の微生物から分離された抗原)を示す。抗体(例えば、抗イディオタイプ抗体、またはそれらのフラグメント)および合成ペプチドミモトープ(抗原または抗原決定基を模倣し得る)はまた、本明細書中で使用される場合、抗原の定義において、表現され得る。同様に、治療タンパク質または免疫原タンパク質を発現するオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド、あるいはインビボ(例えば、遺伝子治療および核酸免疫化適用)の抗原決定基はまた、本明細書中で、抗原の定義中に含まれる。
【0038】
さらに、本発明の目的のために、抗原は、任意の種々の公知のウイルス、細菌、寄生虫および真菌、ならびに任意の種々の腫瘍抗原に由来し得る。さらに、本発明の目的のために、「抗原」とは、そのタンパク質が免疫学的応答を誘発する能力を維持する限り、天然配列に対する改変(例えば、欠失、付加および置換(一般的に天然で保存的))を含むタンパク質をいう。これらの改変は、部位特異的突然変異誘発を介するとして検討され得るか、または偶発的(例えば、抗原を生成する宿主の変異を介して)であり得る。
【0039】
抗原または組成物に対する「免疫学的応答」は、目的の組成物中に存在する分子に対する体液性免疫応答および/または細胞性免疫応答の、被験体における発生である。本発明の目的のために、「体液性免疫応答」とは、抗体分子により媒介される免疫応答を言い、一方「細胞性免疫応答」とは、T−リンパ球および/または他の白血球細胞により媒介される免疫応答である。細胞性免疫の1つの重要な局面は、細胞溶解性T細胞(「CTL」)による、抗原特異的な応答を含む。CTLは、主要組織適合性複合体(MHC)によりコードされ、そして細胞の表面上で発現される、タンパク質と関連して提示されるペプチド抗原に対して特異性を有する。CTLは、細胞内微生物の細胞内破壊、またはこのような微生物に感染した細胞の溶解を助け、誘導し、そして促進する。細胞性免疫の別の局面は、ヘルパーT細胞による抗原特異的応答を含む。ヘルパーT細胞は、この機能を刺激することを補助するように作用し、そしてそれらの表面上のMHC分子と結合して、ペプチド抗原を示す細胞に対して、非特異的エフェクター細胞の活性を集中する。「細胞性免疫応答」はまた、サイトカイン、ケモカインならびに、活性化T細胞および/または他のこのような白血球(CD4+およびCD8+T細胞に由来する白血球を含む)により生成される他の分子の産生を言う。
【0040】
細胞性免疫応答を誘発する、組成物(例えば、免疫原性組成物)またはワクチンは、細胞表面でMHC分子結合する抗原の提示により、脊椎動物被験体を感作するようにはたらき得る。細胞性媒介免疫応答は、それらの表面で、抗原を提示する細胞に、またはその近くに指向される。さらに、抗原特異的Tリンパ球が、生成され、免疫化宿主の将来の保護を可能にし得る。
【0041】
細胞性媒介免疫学的応答を刺激するような、特定の抗原または組成物の能力は、感作された被験体中の抗原に特異的なTリンパ球をアッセイするか、または、抗原での再刺激に応じたT細胞によるサイトカイン産生の測定による、多くのアッセイ(例えば、リンパ球増殖(リンパ球活性化)アッセイ、CTL細胞傷害性細胞アッセイ)によって決定され得る。このようなアッセイは、当該分野で周知である。例えば、Ericksonら,J.Immunol.(1993)151:4189−4199;Doeら,Eur.J.Immunol.(1994)24:2369−2376を参照のこと。
【0042】
従って、本明細書で使用されるように、免疫応答は、CTLの産生、および/またはヘルパーT細胞の産生もしくは活性化を刺激するものであり得る。目的の抗原もまた、抗体媒介性の免疫応答を誘発し得る。従って、免疫応答は、1つ以上の以下の効果を含み得る:B細胞による抗体の産生;ならびに/あるいは抑制T細胞および/または目的の組成物またはワクチン中に存在する抗原(1つまたは複数)に特異的に指向されるγδ T細胞の活性化。これらの応答は、感染性を中和し、そして/あるいは抗体−補体、または抗体依存性の細胞毒性(ADCC)を媒介し、免疫化された宿主に対する保護を提供する役割を果たし得る。このような応答は、当該分野で周知の標準的な免疫学的検定および中和アッセイを用いて決定され得る。
【0043】
微粒子に吸着した選択された抗原を含む組成物は、微粒子と共に送達されない場合の当量の抗原によって誘発される免疫応答よりも、より大きな免疫応答を誘発する能力を有する場合、「高められた免疫原性」を示す。従って、組成物は、微粒子への吸着の効力によってより強く免疫原性であるか、またはより低い用量の抗原が、投与された被検体における免疫応答を達成するのに必要とされるので、「高められた免疫原性」を示し得る。このような高められた免疫原性は、動物に対する微粒子/抗原組成物および抗原コントロールを投与し、そして、例えば、当該分野で周知の標準アッセイ(例えば、放射免疫測定およびELISA)を用いて、これらの2つに対する抗体力価を比較することによって、決定され得る。
【0044】
本明細書で提供される組成物の「有効量」、「治療的有効量」または「薬学的有効量」との用語は、目的の状態を処置または診断するのに十分な組成物の量をいう。例えば、これらの発現は、所望の応答(例えば、免疫応答)および対応する予防効果または治療効果を提供するのに十分な量、あるいは治療タンパク質の送達の場合、以下に既定されるように、被検体の処置に影響を与えるのに十分な量をいい得る。以下に指摘されるように、必要とされる正確な量は、被検体の種、年齢、および全身状態、ならびに処置される状態の重篤度、目的の特定のポリペプチド、投与の様式などによって、被検体ごとに変動する。任意の個体の場合における適切な「有効」量は、当業者によって、日常的な実験を用いて決定され得る。
【0045】
「脊椎動物被験体」とは、亜門網(subphylum cordata)の任意のメンバーを意味し、これらのメンバーとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:哺乳動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウマ、およびヒト);家畜(例えば、イヌおよびネコ);ならびに飼い馴らされた鳥、野鳥および狩猟鳥含むトリ(例えば、ヒヨコを含む雄鶏および雌鶏、七面鳥ならびに他の家禽のトリ)。この用語は、特定の年齢を意味しない。従って、成熟動物および新生仔動物が対象とされることを意図する。
【0046】
「薬学的に受容可能」または「薬理学的に受容可能」とは、生物学的でないかさもなければ所望でない物質を意味する。例えば、「薬学的に受容可能な」物質は、個体において任意の所望でない生物学的影響引き起こすことも、組成物中に含まれる任意の成分と有害な相互作用を起こすこともなく、微粒子処方物と共に個体に投与され得る。
【0047】
「賦形剤」との用語は、完成された投薬形態で一般に提供される物質をいい、ビヒクル、結合剤、崩壊剤、充填剤(希釈剤)、潤滑剤(lubricant)、潤滑剤(glidant)(流動促進剤)、圧縮補助剤、色素、甘味料、保存料、懸濁/分散剤、フィルム形成剤/コーティング剤、香料および印刷用インクが挙げられる。
【0048】
「生理的pH」または「生理的範囲のpH」とは、約7.2〜8.0を含む範囲のpHを意味し、より代表的には、約7.2〜7.6を含む範囲のpHを意味する。
【0049】
本明細書中で使用される場合、「処置」(そのバリエーション、例えば、「処置する」または「処置した」を含む)とは、(i)従来のワクチンにおいて見られるような、感染または再感染の予防、(ii)症状の低減または排除、および(iii)問題の病原体または障害の実質的な排除または完全な排除、のいずれかをいう。処置は、予防的に(感染前に)または治療的に(感染後に)影響を及ぼし得る。
【0050】
本明細書中で使用される場合、「核酸」との句は、DNA、RNA、またはそれらから形成されるキメラをいう。
【0051】
本明細書中で使用される場合、句「少なくとも1つのCpGモチーフを含むオリゴヌクレオチド」とは、少なくとも1つのCpGジヌクレオチドを含むポリヌクレオチドをいう。少なくとも1つのCpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドは、複数のCpGモチーフを含み得る。これらのオリゴヌクレオチドはまた、当該分野で「CpGオリゴヌクレオチド」としても公知である。本明細書中で使用される場合、「CpGモチーフ」との句は、グアニンヌクレオチドが後に続くシトシンヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドのジヌクレオチド部分をいう。5−メチルシトシンもまた、シトシンの代わりに使用され得る。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態に従って、ウイルス感染、真菌感染、マイコプラズマ感染、細菌感染、または原生動物感染、ならびに腫瘍に対して宿主動物を処置する(予防的におよび/または治療的に免疫することを含む)組成物および方法が提供される。本発明の方法は、哺乳動物、好ましくはヒトに、予防的および/または治療的に免疫を与えるのに有用である。本発明の方法はまた、ヒト以外の哺乳動物(生物医学的研究用途を含む)に対しても行われ得る。
【0053】
(B.一般的な方法)
驚くべきことに、本発明者らは、微粒子が形成され得、そして、この微粒子へのポリペプチド含有分子の良好な吸着が、界面活性剤を用いることなく達成され得ることを見出した。結果として、広範種々の疾患の予防的または治療的な処置および/または診断のために、本発明の微粒子/ポリペプチド含有分子組成物を送達システムとして用いて、生物学的に活性なポリペプチド含有分子を被験体に送達し得る。理論に束縛されることは望まないが、本発明と組み合わせて使用されるポリマー物質(例えば、PLG)は、代表的に、負に荷電した基を有し、この基が本発明の微粒子に正味の負の電荷を与えると考えられる。この純粋な負の電荷が、微粒子内の反発をもたらし、微粒子の形成時に、微粒子を安定化させる。さらに、この電荷はまた、ポリペプチド含有分子の正に荷電した領域を引き付け、ポリペプチド含有分子の微粒子への吸着を改善する。
【0054】
本願内の多くの例示的な実施形態は、吸着されたポリペプチド含有分子を有する微粒子を含有する組成物に関する。
【0055】
本発明は、広範種々の高分子の送達と組み合わせて使用され得、これらの高分子としては、医薬品(例えば、抗生物質および抗ウイルス剤、非ステロイド性抗炎症薬、鎮痛剤、血管拡張剤、心血管薬、向神経薬、神経遮断薬、抗うつ剤、抗パーキンソン薬、βブロッカー、カルシウムチャネルブロッカー、ブラジキニンインヒビター、ACEインヒビター、血管拡張剤、プロラクチンインヒビター、ステロイド、ホルモンアンタゴニスト、抗ヒスタミン剤、セロトニンアンタゴニスト、ヘパリン、化学治療剤、抗血管新生剤および増殖因子(PDGF、EGF、KGF、IGF−1およびIGF−2が挙げられるがこれらに限定されない)、FGF、治療的タンパク質または免疫原性タンパク質をコードするポリヌクレオチド、ワクチンにおける使用のための免疫原性タンパク質およびそのエピトープ、ホルモン(ペプチドホルモン(例えば、インスリン、プロインスリン)、成長ホルモン(例えば、HRH、LHRH、EGF、ソマトスタチン、SNX−111、BNP)、インスリン分泌トロピン(ANP、FSH、LH、PSHおよびhCG)、性腺刺激ホルモン(アンドロゲン、エストロゲンおよびプロゲステロン)、甲状腺刺激ホルモン(インヒビン、コレシストキニン、ACTH、CRF、ダイノルフィン、エンドルフィン、エンドセリン、フィブロネクチンフラグメント、ガラニン、ガストリン、インスリン分泌トロピン、グルカゴン、GTP結合タンパク質フラグメント、グアニリン、ロイコキニン、マガイニン(magainin)、マストパラン、デルマセプチン(dermaseptin)、システミン、ニューロメディン、ニューロテンシン、膵臓スタチン、膵臓ポリペプチド、サブスタンスP、セレクチン、サイモシンなど)、酵素、転写媒介物質または翻訳媒介物質、代謝経路における中間体、免疫調節因子(例えば、種々の任意のサイトカイン(インターロイキン−1、インターロイキン−2、インターロイキン−3、インターロイキン−4、およびγ−インターフェロンを含む)、抗原およびアジュバントが挙げられる))。
【0056】
本発明は、被験体へのポリペプチド含有分子の送達に、特によく適する。いくつかの特定の好ましい実施形態において、このポリペプチド含有分子は、ポリペプチド抗原分子である。吸着されたポリペプチド抗原分子を有する微粒子の1つの利点は、それらの示される、脊椎動物の被験体において細胞媒介性の免疫応答を生じる能力である。従って、従来の抗体応答に加え、本明細書中に記載されるシステムが、例えば、発現される抗原とMHCクラスI分子との会合を提供し得、その結果、CTLの産生を刺激して、抗原の将来の認識を可能にする、目的の抗原へのインビボ細胞性免疫応答が増加され得る。さらに、この方法は、ヘルパーT細胞による抗原特異的な応答を誘発し得る。従って、本発明の方法は、細胞性および/または体液性免疫応答が所望される任意のポリペプチド含有分子(好ましくは、抗体、ヘルパーT細胞エピトープおよび細胞障害性T細胞エピトープを誘導し得る、ウイルス病原体および細菌病原体由来の抗原)による使用を見出す。このような抗原としては、ヒトおよび動物のウイルスによりコードされるものが挙げられるがこれらに限定されず、そして、構造的タンパク質または非構造的タンパク質のいずれかに対応し得る。
【0057】
従って、本発明の抗原/微粒子の、選択された抗原に対する細胞媒介性の免疫応答を誘発する能力は、広範種々の病原体による感染に対する強力なツールを提供する。従って、本発明の抗原/微粒子組成物は、ワクチン組成物に組み込まれ得る。
【0058】
本発明の微粒子は、通常、乏しい免疫応答を誘発する細胞内ウイルスに対する免疫に、特に有用である。例えば、本発明は、疱疹ウイルスファミリー由来の広範な種々のポリペプチドに対する免疫応答を刺激する使用を見出し、これらのポリペプチドとしては、以下が挙げられる:単純疱疹ウイルス(HSV)1型および2型(例えば、HSV−1およびHSV−2)由来のタンパク質、糖タンパク質gB、gDおよびgH;水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、Epstein−Barrウイルス(EBV)およびサイトメガロウイルス(CMV)(CMV gBおよびCMV gHを含む)由来の抗原;ならびに他のヒト疱疹ウイルス(例えば、HHV6およびHHV7)由来の抗原。(例えば、サイトメガロウイルスの内容をコードするタンパク質の総説については、Cheeら、Cytomegalovirus(J.K.McDougall編、Springer−Verlag 1990)pp.125−169;種々のHSV−1コードタンパク質の考察については、McGeochら、J.Gen.Virol.(1988)69:1531−1574;HSV−1およびHSV−2 gBおよびHSV−2 gDのタンパク質ならびにそれらをコードする遺伝子の考察については、米国特許5,171,568号;EBVゲノムにおけるタンパク質コード配列の同定については、Baerら、Nature(1984)310:207−211;ならびに、VZVの総説については、DavisonおよびScott、J.Gen.Virol.(1986)67:1759−1816を参照のこと)。
【0059】
肝炎ウイルスファミリー(A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、δ肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)およびG型肝炎ウイルス(HGV)を含む)由来の抗原はまた、本明細書中に記載される技術において簡便に使用され得る。例として、配列を得るための方法として、HCVのウイルスゲノム配列が公知である。例えば、国際公開番号WO 89/04669;WO 90/11089;およびWO 90/14436を参照のこと。HCVゲノムは、いくつかのウイルスタンパク質(E1(Eとしても公知)およびE2(E2/NSIとしても公知)ならびにN−末端ヌクレオカプシドタンパク質(「コア」と称される)が挙げられる)をコードする。(HCVタンパク質(E1およびE2を含む)の考察については、Houghtonら、Hepatology(1991)14:381−388を参照のこと)。これらのタンパク質の各々ならびにその抗原性フラグメントは、本発明の組成物および方法において使用を見出す。
【0060】
同様に、HDV由来のδ抗原の配列は既知であり(例えば、米国特許第号5,378,814を参照のこと)、そしてこの抗原はまた、本発明の組成物および方法において簡便に使用され得る。さらに、HBV由来の抗原(例えば、コア抗原、表面抗原、sAg)、ならびに前表面(presurface)配列(pre−S1およびpre−S2(以前にpre−Sと呼ばれる))、ならびに上記の組み合せ(例えば、sAg/pre−S1、sAg/pre−S2、sAg/pre−Sl/pre−S2およびpre−Sl/pre−S2)は、本明細書中における使用を見出す。例えば、HBV構造の考察については「HBV Vaccines from the laboratory to license:a case study」、Mackett,M.およびWilliamson,J.D.、Human Vaccines and Vaccination,pp.159−176;ならびに米国特許第4,722,840号、同第5,098,704号、同第5,324,513号(その全体が本明細書中に参考として援用される);Beamesら、J.Virol.(1995)69:6833−6838、Birnbaumら、J Virol.(1990)64:3319−3330;ならびにZhouら、J.Virol.(1991)65:5457−5464を参照のこと。
【0061】
他のウイルス由来の抗原もまた、本発明の組成物および方法において使用を見出す:例えば、限定されないが、とりわけ、以下のファミリーのメンバー由来のタンパク質である:Picornaviridae(例えば、ポリオウイルスなど);Caliciviridae;Togaviridae(例えば、風疹ウイルス、デング熱ウイルスなど);Flaviviridae;Coronaviridae;Reoviridae;Birnaviridae;Rhabodoviridae(例えば、狂犬病ウイルスなど);Filoviridae;Paramyxoviridae(例えば、耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、RSウイルスなど);Orthomyxoviridae(例えば、インフルエンザウイルスA型、B型およびC型など);Bunyaviridae;Arenaviridae;Retroviradae(例えば、HTLV−I;HTLV−II;HIV−1(HTLV−III、LAV、ARV、hTLRなどとしてもまた公知))(これらとしては以下が挙げられるがこれらに限定されない:単離体HIVIIIb、HIVSF2、HIVLAV、HIVLAI、HlVMN由来の抗原);HIV−ICM235、HIV−1US4;HIV−2;サル免疫不全ウイルス(SIV))。さらに、抗原はまた、ヒトパピローマウイルス(HPV)およびダニ媒介性脳炎ウイルス由来であり得る。例えば、これらのウイルスおよび他のウイルスの説明について、Virology、第3版(W.K.Joklik編、1988);Fundamental Virology、第2版(B.N.FieldsおよびD.M.Knipe編、1991)を参照のこと。
【0062】
より具体的には、上記のHIV単離体(HIVの種々の遺伝的サブタイプのメンバーを含む)のいずれか由来のgp120エンベロープタンパク質またはgp140エンベロープタンパク質は公知であり、かつ報告されており(種々のHIV単離体のエンベロープ配列の比較については、例えば、Myersら、Los Alamos Database,Los Alamos National Laboratory,Los Alamos,New Mexico(1992);Myersら、Human Retrovirus and Aids,1990,Los Alamos,New Mexico:Los Alamos National Laboratory;およびModrowら、J Virol.(1987)61:570−578を参照のこと)、そして、これらの単離体のいずれか由来の抗原が、本発明の方法における使用を見出す。さらに、本発明は、種々のエンベロープタンパク質(例えば、gp160およびgp41)、gag抗原(例えば、p24gagおよびp55gag)ならびにpol領域およびtat領域由来のタンパク質のいずれかを含む、種々のHIV単離体のいずれか由来の他の免疫原性タンパク質に、等しく適用可能である。
【0063】
インフルエンザウイルスは、本発明が特に有用であるウイルスの別の例である。特に、インフルエンザAのエンベロープ糖タンパク質HAおよびNAは、免疫応答を惹起するために特に目的とするものである。インフルエンザAの多数のHAサブタイプが同定されている(Kawaokaら、Virology(1990)179:759−767;Websterら、「Antigenic variation among type A influenza viruses」、p.127−168:P.PaleseおよびD.W.Kingsbury(編)、Genetics of influenza viruses.Springer−Verlag,New York)。従って、これらの単離体のいずれか由来のタンパク質はまた、本明細書中に記載される組成物および方法において使用され得る。
【0064】
本明細書中に記載される組成物および方法はまた、多数の細菌抗原(例えば、ジフテリア、コレラ、結核、破傷風、百日咳、髄膜炎および他の病理的状態(限定することなく、Bordetella pertussis、Neisseria meningitides(A、B、C、Y)、Neisseria gonorrhoeae、Helicobacter pyloriおよびHaemophilus iyafluenza、Hemophilus influenza B型(HIB)、Helicobacter pylori)ならびにこれらの組み合せを引き起こす生物由来の抗原)を伴う使用を見出す。Neisseria meningitides B由来の抗原の例は、以下の共有に係る特許出願に開示される:PCT/US99/09346;PCT IB98/01665;およびPCT IB99/00103。寄生虫抗原の例としては、マラリアおよびライム病を引き起こす生物由来の抗原が挙げられる。
【0065】
本願のいずれかに列挙される抗原を必ずしも排除しない、さらなる抗原としては以下が挙げられる:
− N.meningitidis血清型B由来のタンパク質抗原(例えば、以下の参考文献1〜7におけるもの)。
− N.meningitidis血清型B由来の外膜小胞(OMV)調製物(例えば、以下の参考文献8、9、10、11などに開示されるもの)。
− N.meningitidis血清型A、C、W135および/またはY由来の糖類抗原(例えば、血清型C由来の、以下の参考文献12に開示されるオリゴ糖類(参考文献13もまた参照のこと))。
− Streptococcus pneumoniae由来の糖類抗原(例えば、参考文献14、15、16)。
− N.gonorrhoeae由来の抗原(例えば、参考文献1、2、3)。
− Chlamydia pneumoniae由来の抗原(例えば、参考文献17、18、19、20、21、22、23)。
− Chlafnydia trachomatis由来の抗原(例えば、参考文献24)。
− 不活化ウイルスのようなA型肝炎ウイルス由来の抗原(例えば、参考文献25、26)。
− 表面抗原および/またはコア抗原のようなB型肝炎ウイルス由来の抗原(例えば、参考文献26、27)。
− C型肝炎ウイルス由来の抗原(例えば、参考文献28)。
− Bordetella perutussis由来の抗原(例えば、B.perutussis由来の百日咳全毒素(holotoxin)(PT)および線維状赤血球凝集素(FHA))これらはまた、必要に応じて、ペルタクチンおよび/または凝集原2および3と組み合される(例えば、参考文献29および30)。
− ジフテリアトキソイドのようなジフテリア抗原(例えば、参考文献31の第3章)(例えば、CRM197変異体(例えば、参考文献32))。
− 破傷風トキソイドのような破傷風抗原(例えば、参考文献31の第4章)。
− Helicobacter pylori由来のタンパク質抗原(例えば、CagA(例えば、参考文献33)、VacA(例えば、参考文献33)、NAP(例えば、参考文献34)、HopX(例えば、参考文献35)、HopY(例えば、参考文献35)および/またはウレア−ゼ)。
− Haeniophilus influenzae B由来の糖類抗原(例えば、参考文献13)。
− Porphyramonas gingivalis由来の抗原(例えば、参考文献36)。
− IPVまたはOPVのようなポリオ抗原(例えば、参考文献37、38)。
− 狂犬病抗原(例えば、参考文献39)(例えば、凍結乾燥して不活化したウイルス(例えば、参考文献40、RabavertTM)。
− 麻疹、おたふくかぜおよび/または風疹抗原(例えば、参考文献31の第9、10および11章)。
− 赤血球凝集素および/またはノイラミニダーゼ表面タンパク質のようなインフルエンザ抗原(例えば、参考文献31の第19章)。
− Moraxella catarrhalis由来の抗原(例えば、参考文献41)。
− Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌)由来の抗原(例えば、参考文献42、43)。
− Streptococcus pyogenes(A群連鎖球菌)由来の抗原(例えば、参考文献43、44、45)。
− Staphylococcus aureus由来の抗原(例えば、参考文献46)。
− 1つ以上のこれらの抗原を含有する組成物。
【0066】
糖類抗原または炭水化物抗原が使用される場合、免疫原性を増強するために、好ましくはキャリアタンパク質と結合体化される(例えば、参考文献47〜56)。好ましいキャリアタンパク質は、細菌毒素またはトキソイド(例えば、ジフテリアトキソイドまたは破傷風トキソイド)である。CRM197ジフテリアトキソイドが特に好ましい。他の適切なキャリアタンパク質としては、N.meningitidis外膜タンパク質(例えば、参考文献57)、合成ペプチド(例えば、参考文献58、59)、熱ショックタンパク質(例えば、参考文献60)、百日咳タンパク質(例えば、参考文献61、62)、H.Influenzae由来のタンパク質D(例えば、参考文献63)、C.difficile由来の毒素Aまたは毒素B(例えば、参考文献64)などが挙げられる。混合物が血清型Aおよび血清型Cの両方由来の莢膜糖類を含む場合、MenA糖類:MenC糖類の割合(w/w)は、1より大きいことが好ましい(例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1またはそれ以上)。N.meningitidisの異なる血清型由来の糖類は、同じかまたは異なるキャリアタンパク質に結合体化され得る。
【0067】
必要に応じて、任意の適切なリンカーとの任意の適切な結合体化反応が、使用され得る。
【0068】
毒素タンパク質抗原は、必要な場合、解毒され得る(例えば、化学物質および/または手段による百日咳毒素の解毒(参考文献30))。
【0069】
以下を参照のこと:国際特許出願99/24578 (参考文献1);国際特許出願WO99/36544(参考文献2);国際特許出願WO99/57280(参考文献3);国際特許出願WO00/22430(参考文献4);Tettelinら(2000)Science 287:1809−1815(参考文献5);国際特許出願WO96/29412(参考文献6);Pizzaら(2000)Science 287:1816−1820(参考文献7);国際特許出願PCT/IBO1/00166(参考文献8);Bjuneら(1991)Lancet 338(8775):1093−1096(参考文献9);Fukasawaら(1990)Vaccine 17:2951−2958(参考文献10);Rosenqvistら(1998)Dev.Biol.Stand.92:323−333(参考文献11);Costantinoら(1992)Vaccine 10:691−698(参考文献12);Costantinoら(1999)Vaccine 17:1251−1263(参考文献13);Watson(2000)Padiatr Infect Dis J 19:331−332(参考文献14);Rubin(2000)Pediatr Clin North Am 47:269−285,v(参考文献15);Jedrzejas(2001)Microbiol Mol Biol Rev 65:187−207(参考文献16);GB−0016363.4の優先権を主張し、2001年7月3日に出願された国際特許出願(参考文献17);Kalmanら(1999)Nature Genetics 21:385−389(参考文献18);Readら(2000)Nucleic Acids Res 28:1397−406(参考文献19);Shiraiら(2000)J.Infect.Dis.181(補遺3):S524−S527(参考文献20);国際特許出願WO99/27105(参考文献21);国際特許出願WO00/27994(参考文献22);国際特許出願WO00/37494(参考文献23);国際特許出願WO99/28475(参考文献24);Bell(2000)Pediatr Infect Dis J 19:1187−1188(参考文献25);Iwarson(1995)APMIS 103:321−326(参考文献26);Gerlichら(1990)Vaccine 8 補遺:S63−68および79−80(参考文献27);Hsuら(1999)Clin Liver Dis 3:901−915(参考文献28);Gustafssonら(1996)N.Engl.J.Med.334:349−355(参考文献29);Rappuoliら(1991)TIBTECH 9:232−238(参考文献30);Vaccines(1988)PlotkinおよびMortimer編、ISBN 0−7216−1946−0(参考文献31);Del Guidiceら(1998)Molecular Aspects of Medicine 19:1−70(参考文献32);国際特許出願WO93/18150(参考文献33);国際特許出願WO99/53310(参考文献34);国際特許出願WO98/04702(参考文献35);Rossら(2001)Vaccine 19:4135−4142(参考文献36);Sutterら(2000)Pediatr Clin North Am 47:287−308(参考文献37);ZimmermanおよびSpann(1999)Am Fam Physician 59:113−118、125−126(参考文献38);Dreesen(1997)Vaccine 15 補遺:S2−6(参考文献39);MMWR Morb Mortal Wkly Rep(1998年1月16日);47(1):12,19(参考文献40);McMichael(2000)Vaccine 19 補遺1:S101−107(参考文献41);Schuchat(1999)Lancet 353(9146):51−6(参考文献42);英国特許出願第0026333.5号、同第0028727.6号および同第0105640.7号(参考文献43);Dale(1999)Infect Dis Clin North Am 13:227−43,viii(参考文献44);Ferrettiら(2001)PNAS USA 98:4658−4663(参考文献45);Kurodaら(2001)Lancet 357(9264):1225−1240;1218−1219頁(参考文献46)もまた参照のこと;Ramsayら(2001)Lancet 357(9251):195−196(参考文献47);Lindberg(1999)Vaccine 17補遺2:S28−36(参考文献48);ButteryおよびMoxon(2000)J R Coll Physicians London 34:163−168(参考文献49);AhmadおよびChapnick(1999)Infect Dis Clin North Am 13:113−133,vii(参考文献50);Goldblatt(1998)J.Med.Microbiol.47:563−567(参考文献51);欧州特許第0 477 508号(参考文献52);米国特許第5,306,492号(参考文献53);国際特許出願WO98/42721(参考文献54);Conjugate Vaccines(Cruseら編)ISBN 3805549326(特に、第10巻:48−114)(参考文献55);Hermanson(1996)Bioconjugate Techniques ISBN:0123423368および012342335X(参考文献56);欧州特許出願第0372501号(参考文献57);欧州特許出願第0378881号(参考文献58);欧州特許出願第0427347号(参考文献59);国際特許出願WO93/17712(参考文献60);国際特許出願WO98/58668(参考文献61);欧州特許出願第0471177号(参考文献62);国際特許出願WO/56360(参考文献63);国際特許出願WO00/61761(参考文献64)。
【0070】
ジフテリア抗原が組成物中に含有される場合、破傷風抗原および百日咳抗原を含有することもまた好ましい。同様に、破傷風抗原が含有される場合、ジフテリア抗原および百日咳抗原を含有することもまた好ましい。同様に、百日咳抗原が含有される場合、ジフテリア抗原および破傷風抗原を含有することもまた好ましい。
【0071】
本発明を用いて、多様なポリペプチド含有効分子を送達し得、従って、多くの疾患を処置および/または診断し得ることは、容易に明らかである。いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチド含有分子/微粒子組成物は、部位特異的な標的化送達に使用され得る。例えば、ポリペプチド含有分子/微粒子組成物の静脈内投与は、肺、肝臓、脾臓、血液循環または骨髄の標的化に使用され得る。
【0072】
吸着性微粒子の表面へのポリペプチド含有分子の吸着は、任意の結合相互作用機構(イオン結合、水素結合、共有結合、ファンデルワールス結合および親水性/疎水性相互作用を介する結合が挙げられるがこれらに限定されない)を介して生じる。
【0073】
本発明とともに使用する微粒子を製造するための生分解性のポリマーは、例えば、Boehringer Ingelheim(Germany)およびBirmingham Polymers,Inc.(Birmingham,AL)から市販されている。例えば、本明細書中の微粒子を形成するために有用なポリマーとしては、以下由来のホモポリマー、コポリマーおよびポリマーブレンドが挙げられる:ポリヒドロキシ酪酸(ポリヒドロキシブチレートとしても公知);ポリヒドロキシ吉草酸(ポリヒドロキシバレレートとしても公知);ポリグリコール酸(PGA)(ポリグリコリドとしても公知):ポリ乳酸(PLA)(ポリラクチドとしても公知);ポリジオキサノン;ポリカプロラクトン;ポリオルトエステル;およびポリ無水物。ポリ(α−ヒドロキシ酸)(例えば、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)(両方とも、本明細書中で「PLA」として公知)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、D,L−ラクチドおよびグリコリドのコポリマー(例えば、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)(本明細書中で「PLG」と示す)または、D,L−ラクチドおよびカプロラクトンのコポリマーがより好ましい。本明細書中において使用するための特に好ましいポリマーは、PLAポリマーおよびPLGポリマーである。これらのポリマーは、種々の分子量で利用可能であり、そして、所定の使用のための適切な分子量は、当業者によって容易に決定される。従って、例えば、PLAについて、適切な分子量は、約2000〜5000のオーダーである。PLGについての適切な分子量は、一般に、約10,000〜約200,000、好ましくは約15,000〜約150,000の範囲である。
【0074】
PLGのようなコポリマーを用いて微粒子を形成する場合、種々のラクチド:グリコール分子比が、本明細書中における使用に見出され、そしてこの比は、同時に投与されるポリペプチド含有分子および所望の分解速度に部分的に依存して、主に選択の問題である。例えば、50%D,L−ラクチドおよび50%グリコリドを含有する50:50のPLGポリマーは、急速再吸収コポリマーを提供するが、ラクチド含量の増加に起因して、75:25 PLGは、よりゆっくり分解し、そして85:15および90:10は、なおよりゆっくり分解する。ラクチド:グリコリドの適切な比が、例えば、抗原の性質および問題の障害に基づいて、当業者によって容易に決定されることは明らかである。本発明の微粒子の分解速度はまた、ポリマー分子量およびポリマー結晶化度などの因子によって制御され得る。可動するラクチド:グリコリド比および分子量を有するPLGコポリマーは、多くの供給元(Boehringer Ingelheim(Germany)およびBirmingham Polymers,Inc.(Birmingham,AL)を含む)から市販されている。いくつかの例示的なPLGコポリマーとしては、以下が挙げられる:(a)RG 502(50:50のラクチド/グリコリド分子比および12,000Daの分子量を有するPLG);(b)RG 503(50:50のラクチド/グリコリド分子比および34,000Daの分子量を有するPLG);(c)RG 504(50:50 ラクチド/グリコリド分子比および48,000Daの分子量を有するPLG)、(d)RG 752(75:25のラクチド/グリコリド分子比および22,000Daの分子量を有するPLG);ならびに(e)RG 755(75:25のラクチド/グリコリド分子比および68,000Daの分子量を有するPLG)。PLGポリマーはまた、当該分野で周知の技術(例えば、Tabataら、J.Biomed.Mater.Res.(1988)22:837−858に記載される技術)を用いて、乳酸成分の単純な重縮合により合成され得る。現在、好ましいPLGコポリマーは、25:75〜75:25、より好ましくは40:60〜60:40の範囲の分子ラクチド/グリコリド比を有し、10,000〜100,000ダルトン,より好ましくは20,000ダルトン〜70,000ダルトンの範囲の分子量を有するPLGコポリマーである。
【0075】
微粒子は、当該分野で周知のいくつかの方法のうちのいずれかを用いて調製される。例えば、いくつかの実施形態において、二重エマルジョン/溶媒蒸発技術(例えば、米国特許第3,523,907号およびOgawaら、Chem.Pharm.Bull.(1988)36:1095−1103に記載される技術)を本明細書中で用いて、微粒子を製造し得る。これらの技術は、ポリマー溶液の液滴からなる第1のエマルジョンの形成を包含し、この第1のエマルジョンは、続いて粒子安定化剤/界面活性剤を含有する連続した水相と混合される。
【0076】
他の実施形態において、微粒子はまた、以下の技術を用いて形成され得る:例えば、ThomasinらJ.Controlled Release(1996)41:131;米国特許第2,800,457号;Masters,K.(1976)Spray Drying 第2版、Wiley,New Yorkに記載されるようなスプレー乾燥およびコアセルベーション;エアサスペンションコーティング技術(例えば、Hallら(1980)The「Wurster Process」in Controlled Release Technologies.Methods,Tlieory,and Applications(A.F.Kydonieus編)、第2巻、pp.133−154(CRC Press,Boca Raton,Florida)およびDeasy,P.B.,Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.(1988)S(2):99−139によって記載されるようなパンコーティングおよびWursterコーティング;ならびに、例えば、Limら、Science(1980)210:908−910によって記載されるようなイオン性のゲル化)。
【0077】
好ましい実施形態において、改変された水中油中水(w/o/w)溶媒蒸発技術を用いて微粒子を形成し得る。この型の技術は、例えば、O’Haganら、Vaccine(1993)11:965−969、PCT/US99/17308(WO 00/06123)(O’Haganら)およびJefferyら、Pharm.Res.(1993)10:362に記載されている。しかし、これらの技術は、本発明と組み合せて使用するために改変される。特に、これらの技術とは異なり、本発明のw/o/wエマルジョンは、好ましくは界面活性剤(洗浄剤、分散剤、懸濁剤および乳化安定剤を含む)の非存在下で形成される。
【0078】
より詳細には、PLGのような目的の粒子ポリマーは、酢酸エチル、ジメチルクロライド(塩化メチレンおよびジクロロメタンとも呼ばれる)、アセトニトリル、アセトン、クロロホルムなどのような有機溶媒中に溶解される。このポリマーは、代表的には、有機溶媒中、約1〜30%、好ましくは約2〜15%、より好ましくは約3〜10%、および最も好ましくは約4〜6%の溶液で提供される。次いで、このポリマー溶液は、水溶液の第1の容量と合わせられ、そして乳化され、o/wエマルジョンを形成する。この水溶液は、例えば、脱イオン水、正常生理食塩水、またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)のような緩衝溶液もしくはクエン酸ナトリウム/エチレンジアミン四酢酸(クエン酸ナトリウム/ETDA)緩衝溶液であり得る。後者の溶液が、(a)正常な生理学的流体と本質的に同じである張性(すなわち、重量オスモル濃度)を提供し得、かつ(b)正常な生理学的条件と適合するpHを維持し得る。あるいは、本発明の組成物の張性および/またはpH特性は、微粒子形成後および投与前に調節され得る。
【0079】
好ましくは、ポリマー溶液 対 水溶液の容量比は、約5:1〜約20:1の範囲であり、そしてより好ましくは、約10:1である。乳化は、好ましくは、この仕事に適切であり、代表的には、例えば、ホモジナイザーのような高剪断デバイスである、任意の装置を使用して行われる。
【0080】
次いで、ある容量のo/wエマルジョンは、好ましくは、より大容量の第2の水溶液(これは、例えば、脱イオン水、正常生理食塩水、または緩衝溶液でもあり得る)と合わせられる。第2の容量の水溶液とo/wエマルジョンの容量との比は、代表的には、約2:1〜10:1の範囲であり、そしてより代表的には、約4:1である。次いで、混合物は、ホモジナイズされて、w/o/wダブルエマルジョンを生成する。次いで、有機溶媒は、蒸発される。
【0081】
この処方パラメータは、操作され、0.2μm(200nm)のオーダーである小さい微粒子〜50μmまたはよりそれ以上でさえある、より大きい微粒子の調製を可能にする。例えば、Jefferyら、Pharm.Res.(1993)10:362−368;McGeeら、J.Microencap.(1996)を参照のこと。例えば、撹拌を減少することにより、内相の容量が増加し、かつポリマー濃度が増加するので、より大きい微粒子が生じる。小さい粒子は、撹拌の増加ならびに低い水相容量および低ポリマー濃度によって生成される。
【0082】
上記の工程を実施するために好ましい装置の1つが、図1に概略的に示されている。ここで、図1を参照すると、操作タンクアセンブリ(一般的に、数字102で表される)が示される。このタンクアセンブリ102は、「閉鎖系」であるように設計されているので、処理の間、無菌環境が維持される。装置の全ての部品および部分は、好ましくは、定置洗浄(clean−in−place)およびオートクレーブであるように選択される。104a〜104dのフィルターは全て、好ましくは、Super−CheminertTMのようなフルオロポリマーフィルターであり、全てのフルオロポリマーフィルターは、Pall Corporation製である。最初に、脱イオン水106のような水溶液および塩化メチレン中のPLG溶液108のような有機ポリマー溶液を、濾過し、タンク110中に供給し、タンク110においてこれらをミキサー112を用いて連続的に混合する。次いで、この混合物を、インラインホモジナイザー114(例えば、Kinematica MT5000のような、高速、高剪断でオートクレーブ可能であるインラインホモジナイザー)を介して供給し、o/wエマルジョンを形成する。このエマルジョンを、インラインホモジナイザー114からエマージングした後に、例えば、水冷コンデンサ116によって冷却し、その後、タンク110に戻す。内容量が所望の程度まで乳化された後、さらなる水溶液(例えば、脱イオン水106)をタンク110に加え、その後、インラインミキサー114を介して内容量を再び供給することによって、w/o/wエマルジョンを形成する。得られたw/o/wエマルジョンを、ディストリビュータ119を介して窒素と共にパージし、有機溶媒を除去する。この窒素含有(nitrogen−laden)溶媒蒸気を濾過し、コンデンサ120内で冷却し、容器122内にこの溶媒を捕捉する。容器122内において、このエマルジョンは、いくらか不安定であり、インライン混合によって同時に溶媒を除去することが所望され得る。
【0083】
粒子サイズは、例えば、ヘリウム−ネオンレーザーを組み込んだ分光計を使用して、例えば、レーザー光散乱によって決定され得る。一般的には、粒子サイズは室温で決定され、問題のサンプルの複数回分析(例えば、5〜10回)によってその粒子直径の平均値を得る。粒子サイズはまた、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、容易に決定される。
【0084】
調製後、微粒子を、更なる使用のためにそのまま保存し得るかまたは凍結乾燥し得る。微粒子にポリペプチド含有分子を吸着させるために、微粒子調製物を目的のポリペプチド含有分子と単に混合し得、そして得られた処方物を使用前に再び凍結乾燥し得る。
【0085】
代表的には、ポリペプチド含有分子を微粒子に加え、ポリペプチド含有分子を吸着した微粒子を得、この微粒子は、約0.0001:1〜0.25:1、より代表的には、0.001:1〜0.1:1、なおより代表的には0.05:1〜0.01:1であるポリペプチド含有分子 対 微粒子の重量 対 重量比を有する。この微粒子のポリペプチド含有分子含量は、標準的な技術を使用して決定され得る。
【0086】
ポリペプチド含有分子を吸着した微粒子に加え、本発明の組成物はまた、種々の他の高分子(さらなるポリペプチド含有分子、医薬品、ポリヌクレオチド、ホルモン、酵素、翻訳もしくは転写のメディエータ、代謝経路中間体、免疫調節物質、抗原、アジュバントあるいはこれらの組み合わせが挙げられる)を含み得る。例えば、本発明の微粒子は、その中に包埋またはカプセル化されるか、微粒子の表面に吸着されるか、あるいは溶液中または懸濁液中に含まれる追加高分子を有し得る。特に好ましい追加高分子は、アジュバントである。
【0087】
一旦、吸着ポリペプチド含有分子を有する微粒子が生成されると、それらは、上記のような、広範な種々の障害を処置および/または診断するための、薬学的組成物(ワクチンを含む)へと処方される。この組成物は、一般には、1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤を含む。例えば、ビヒクル(例えば、水、生理食塩水、グリセロール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、エタノールなど)が、使用され得る。他の賦形剤(例えば、湿潤剤または乳化剤、生物学的緩衝物質など)が、このようなビヒクル中に存在し得る。生物学的緩衝剤は、薬理学的に受容可能でありかつその処方物に望ましいpH(すなわち、生理的範囲にあるpH)を提供する、事実上任意の物質であり得る。緩衝溶液の例としては、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、Tris緩衝化生理食塩水、ハンクス緩衝化生理食塩水などが挙げられる。当該分野で公知の他の賦形剤もまた、最終投与形態(結合剤、崩壊剤、充填剤(希釈剤)、滑沢剤、流動促進剤(glidant)(流動増強剤(enhancer))、着色料、圧縮助剤、甘味剤、保存剤、懸濁剤/分散剤、フィルム形成剤/コーティング剤、矯味矯臭剤(flavor)および印刷インクを含む)へと導入され得る。
【0088】
アジュバントは、薬学的組成物の有効性を増強するために使用され得る。このアジュバントは、本発明の微粒子と同時に(例えば、同じ組成物中でか、または別の組成物中で)投与され得る。あるいは、このアジュバントは、本発明の微粒子組成物の前または後に投与され得る。いくつかの実施形態において、このアジュバント(例えば、免疫学的アジュバント)は、この微粒子中にカプセル化され得る。アジュバント(任意の高分子)は、当該分野で公知のいくつかの方法のうちのいずれかを使用して、この微粒子内にカプセル化され得る。例えば、米国特許第3,523,907号;Ogawaら、Chem.Pharm.Bull.(1988)36:1095〜1103;O’Haganら、Vaccine(1993)11:965〜969、およびJeffereyら、Pharm.Res.(1993)10:362を参照のこと。あるいは、いくつかのアジュバント(特に、ポリペプチド含有アジュバント)は、上記のように微粒子上に吸着され得る。
【0089】
免疫学的アジュバントとしては、(1)アルミニウム塩(ミョウバン)(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなど);(2)他の水中油エマルジョン処方物(他の特定の免疫刺激剤(例えば、ムラミルペプチド(下記参照)または細菌細胞壁成分)を含むかまたは含まない)(例えば、(a)MF59(国際公開番号WO90/14837;Vaccine design:the subunit an adjuvant approach,第10章,PowellおよびNewman編、Plenum Press,1995)(Model 110Yマイクロフルイダイザー(Microfluidics,Newton,MA)のようなマイクロフルイダイザーを使用してμm未満の粒子へと処方された、5% Squalene,0.5% Tween 80および0.5% Span 85(必要に応じて種々の量のMTP−PE(下記を参照のこと)を含むが、必要というわけではない)を含む)、(b)SAF(μm未満のエマルジョンへとマイクロフルイダイズされたかまたはより大きな粒径のエマルジョンを生じるようにボルテックスされた、10% Squalane,0.4% Tween 80、5%プルロニックブロックポリマーL121、およびthr−MDP(下記を参照のこと)を含む)、ならびに(c)RibiTMアジュバントシステム(RAS)(Ribi Immunochem,Hamilton,MT)(2% Squalene,0.2% Tween 80、および1種以上の細菌細胞壁成分(モノホスホリルリピドA(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)(好ましくは、MPL+CWS(DetoxTM)からなる群由来を含む)(本明細書における使用のために適切なμm未満の水中油エマルジョンのさらなる考察について、1998年1月29日出願の共有に係る米国特許出願番号09/015,736号を参照のこと);(3)サポニンアジュバント(例えば、Quil AもしくはQS21(例えば、StimulonTM(Cambridge Bioscience,Worcester,MA))が、ISCOM(免疫刺激複合体)のようなそれらから生じる粒子のために使用され得、このISCOMは、さらなる界面活性剤を回避し得る(例えば、WO00/07621));(4)完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA);(5)サイトカイン(例えば、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12(WO99/44636)など)、インターフェロン(例えば、γインターフェロン)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)など;(6)モノホスホリルリピドA(MPL)もしくは3−O−デアシル化MPL(3dMPL)(例えば、GB−2220221、EP−A−0689454)(肺炎球菌糖質とともに使用した場合には、必要に応じてミョウバンの実質的不在下)(例えば、WO00/56358);(7)3dMPLと、例えば、QS21および/または水中油エマルジョンとの組み合わせ(例えば、EP−A−0835318、EP−A−0735898、EP−A−0761231);(8)CpGモチーフ(すなわち、少なくとも1つのCGジヌクレオチドを含み、5メチルシトシンが、シトシンの代わりに必要に応じて使用される)を含むオリゴヌクレオチド(Romanら、Nat.Med.1997,3,849〜854;Weinerら、PNAS USA、1997,94,10833〜10837;Davisら、J.Immunol.1988,160,870〜876;Chuら、J.Exp.Med.1997,186,1623〜1631;Lipfordら、Eur.J.Immunol.1997,27,2340〜2344;Moldoveanuら、Vaccine,1988,16,1216〜1224;Kriegら、Nature、1995,374,546〜549;Klinmanら、PNAS USA,1996,93,2879〜2883;Ballasら、J.Immunol.1996,157,1840〜1845;Cowderyら、J.Immunol.1996,156,4570〜4575;Halpemら、Cell.Immunol.1996,167,72〜78;Yamamotoら、Jpn.J.Cancer Res.,1988,79,866〜873;Staceyら、J.Immunol.1996,157,2116〜2122;Messinaら、J.Immunol.1991,147,1759〜1764;Yiら、J.Immunol.1996,157,4918〜4925;Yiら、J.Immunol.1996,157,5394〜5402;Yiら、J.Immunol.1998,160,4755〜4761;およびYiら、J.Immunol.1998,160,5898〜5906;国際特許出願WO96/02555、WO98/16247、WO98/18810、WO98/40100、WO98/55495、WO98/37919およびWO98/52581);(9)ポリオキシエチレンエーテルまたはポリオキシエチレンエステル(例えば、WO99/52549);(10)オクトキシノールと組み合わせたポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(WO01/21207)、または少なくとも1つのさらなる非イオン性界面活性剤(例えば、オクトキシノール)と組み合わせたポリオキシエチレンアルキルエーテル界面活性剤もしくはポリオキシエチレンアルキルエステル界面活性剤(WO01/21152);(11)サポニンおよび免疫刺激オリゴヌクレオチド(例えば、CpGオリゴヌクレオチド(WO00/62800);(12)免疫刺激剤および金属塩粒子(例えば、WO00/231−5);(13)サポニンおよび水中油エマルジョン(例えば、WO99/11241);(14)サポニン(例えば、QS21)+3dMPL+IL−12(必要に応じて+ステロール)(例えば、WO98/57659);(15)細菌ADP−リボシル化毒素の解毒化変異体(例えば、コレラ毒素(CT)、破傷風毒素(PT)もしくはE.coli易熱性毒素(LT)(特に、LT−K63(野生型アミノ酸63位がリジンで置換されている)、LT−R72(野生型アミノ酸72位がアルギニンで置換されている)、CT−S109(野生型アミノ酸109位がセリンで置換されている)、およびPT−K9/G129(野生型アミノ酸9位がリジンで置換され、129位がグリシンで置換されている)(例えば、国際特許公開番号WO93/13202およびWO92/19265を参照のこと);(16)アミノアルキルグルコサミニド4−リン酸(AGP)(例えば、Johnson,D.A.ら;Bioorg,Med.Chem.Lett.1999 Aug 2;9(15):2273〜8を参照のこと)、(17)イミダゾキノリン(例えば、イミキモド(imiquimod)(R−837)およびレシキモド(resiquimod)(R−848))(例えば、Vasilakos,J.P.ら、Cell.Immunol.2000 Aug 25;204(1):64〜74を参照のこと)、(18)リポ多糖模倣物(Hawkins,L.D.ら;J.Pharmacol.Exp.Ther.2002 Feb.300(2):655〜61に記載される非糖リン脂質(例えば、二糖を欠く簡易化(simplified)リピドAアナログ)、ならびに(19)この組成物の有効性を増強するための免疫刺激剤として作用する他の物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
ムラミルペプチドとしては、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)などが挙げられる。
【0091】
アジュバントのさらなる例について、Vaccine Design,The Subunit and the adjuvant Approach,Powell,M.F.およびNewman,M.J.編、Plenum Press,1995を参照のこと。
【0092】
この組成物は、「治療有効量」の目的のポリペプチド含有分子(ならびに他の任意の高分子)を含む。すなわち、十分量のこのポリペプチド含有分子が、目的の状態を処置または診断するために含められる。必要な正確な量は、例えば、とりわけ、処置される被検体;処置される被検体の年齢および全身状態;処置される状態の重篤度;免疫応答の場合は、その被検体の免疫系が抗体を合成する能力;望ましい防御の程度および選択される特定のポリペプチド含有分子およびその投与様式に依存して、変化する。適切な有効量は、当業者により容易に決定され得る。従って、「治療有効量」は、代表的には、慣用的試験を介して決定され得る比較的広範な範囲内にある。例えば、その高分子がポリペプチド抗原である場合、有効用量は、代表的には、1回の投与について送達される、約1μg〜約100mg、好ましくは、約5μg〜約1mg、より好ましくは約5μg〜約100μg、および最も好ましくは、約5μg〜約50μgの抗原である。
【0093】
一旦処方されると、本発明の組成物は、(例えば、注射により)非経口投与され得る。この組成物は、皮下、腹腔内、静脈内、または筋肉内のいずれかで注射され得る。他の投与様式としては、鼻投与、直腸投与、膣投与、経口投与および肺投与、坐剤、および経皮(transdermalまたはtranscutaneous)適用が挙げられる。
【0094】
投与処置は、単回投与スケジュールまたは多回投与スケジュールに沿ってであり得る。多回投与スケジュールは、一次投与治療単位が、1〜10の別個の投与であり、その後、他の投与が、治療応答を維持および/または強化するように選択されたそれに続く時間間隔(例えば、2回目の投与について1〜4ヶ月、必要な場合は、数ヶ月後にその後の投与)で与えられ得る。その投与レジメンはまた、少なくとも一部、被検体の必要性により決定され得、実施者の判断に依存し得る。
【0095】
さらに、予防処置(例えば、ワクチン中)が望ましい場合、本発明の組成物が、一般的には、目的の病原体に一次感染する前に投与される。治療処置(例えば、症状または再発の減少)が望ましい場合、本発明の組成物は、一般には、一次感染の後に投与される。
【0096】
(C.実験)
下記にあるのは、本発明を実行するための特定の実施形態の例である。これらの実施例は、例示目的のためのみに提供され、本発明の範囲を限定することはいかなるようにも意図されない。使用した数字(例えば、量、温度など)に関して、精度を確保する努力を行ったが、いくらかの実験誤差および偏差が、当然、許容されるべきである。
【実施例】
【0097】
(実施例1:界面活性剤を有さないPLG粒子の調製)
IKAホモジナイザー(Germany)の小プローブを使用して、2.5mlのPBSをジメチルクロライド中、6%のRG503(ラクチド/グリコリドのモル比が50:50であり、34,000ダルトンの分子量を有するPLGポリマー、Boehringer Ingelheimから市販されている)10mlと共に23,000rpmで2分間、ホモジナイズする。この最初のo/wエマルジョンを50mlの脱イオン水に加え、次いで、Ommiベンチトップホモジナイザー(Lab Tek Inc、US)の10mmプローブを使用して、15,000rpmで30分間、氷浴でホモジナイズする。ホモジナイズしている間に溶媒が蒸発するのを防ぐために、容器を液体中に挿入したホモジナイザーと共に、Teflonテープを用いて封をする。Teflonテープを取り外し、そしてこの2番目のw/o/wエマルジョンを、溶媒が蒸発するように、一晩中攪拌し続ける。翌日、Malvern Master Sizerを使用して、粒子サイズを測定する。サイズの範囲は、代表的には0.5〜1ミクロンである。
【0098】
(実施例2:PLGに対して0.05%wt:wtおよび0.5%wt:wtのDSSを有するPLG粒子の調製)
IKAホモジナイザー(Germany)の小プローブを使用して、2.5mlのPBSをジメチルクロライド中、6%のRG503(ラクチド/グリコリドのモル比が50:50であり、34,000ダルトンの分子量を有するPLGポリマー、Boehringer Ingelheimから市販されている)10mlと共に23,000rpmで2分間、ホモジナイズする。この最初のo/wエマルジョンを6μg/mlまたは60μg/mlのいずれかのDSSを含む(それぞれ0.05%および0.5%となる)脱イオン水(50ml)に加える。次いで、これをOmmiベンチトップホモジナイザー(Lab Tek Inc、US)の10mmプローブを使用して、15,000rpmで30分間、氷浴でホモジナイズする。ホモジナイズしている間に溶媒が蒸発するのを防ぐために、容器を液体中に挿入したホモジナイザーと共に、Teflonテープを用いて封をする。Teflonテープを取り外し、そしてこの2番目のw/o/wエマルジョンを、溶媒が蒸発するように、一晩中攪拌し続ける。翌日、Malvern Master Sizerを使用して、粒子サイズを測定する。サイズの範囲は、代表的には0.5〜1ミクロンである。
【0099】
(実施例3:PLG粒子(従来の処方物)の調製)
IKAホモジナイザー(Germany)の小プローブを使用して、2.5mlのPBSをジメチルクロライド中、6%のRG503(ラクチド/グリコリドのモル比が50:50であり、34,000ダルトンの分子量を有するPLGポリマー、Boehringer Ingelheimから市販されている)10mlと共に23,000rpmで2分間、ホモジナイズする。この最初のo/wエマルジョンを1%wt:volのDSSを含む脱イオン水(50ml)に加える。次いで、これをOmmiベンチトップホモジナイザー(Lab Tek Inc、US)の10mmプローブを使用して、10,000rpmで3分間、室温でホモジナイズする。この2番目のw/o/wエマルジョンを、溶媒が蒸発するように、一晩中攪拌し続ける。翌日、Malvern Master Sizerを使用して、粒子サイズを測定する。サイズの範囲は、代表的には0.5〜1ミクロンである。
【0100】
(実施例4:PLG処方物へのタンパク質の吸着)
0%wt:wt、0.05%wt:wt、および0.5%wt:wtのDSSを有するように作製したPLG粒子(上の実施例1および2に由来)に、以下のようにして、髄膜炎B 287タンパク質(Chiron protein purification group、Siena、Italy.Science第287巻、1816(2000))を吸着させた:
0%、0.05%、および0.5%のDSSを有するPLG粒子への直接的な結合:
1− 実施例1および2のそれぞれの処方物の懸濁液容量を測定し、PLGの開始重量を総容量で割ることにより、PLG含量を測定した。
2− それぞれの処方物について、200mgのPLGを含む特定の容量を30mlの遠心分離チューブに移し、そして2mgの287タンパク質を加えた。
3− 1mlの100mMクエン酸(pH4.75)を加えることで、緩衝液を10mMのクエン酸に調整し、総容量をDI水で10mlまで増やした。
4− チューブを、4℃で一晩中、ラボロッカー上で揺らし続けた。
5− 翌日、2mlのアリコートを分析用に採取し、残りの懸濁液をバイアル中に分注した。それぞれ、1用量あたりのPLG上のタンパク質が1μgまたは10μgのいずれかである12回分の投与量を含んでいた。
6− 凍結乾燥させる前に、水中25%wt:volのマンニトール溶液(216μl)を各バイアルに加えた。
【0101】
(実施例5:従来の方法によって作製したPLG/DSS処方物へのタンパク質の吸着)
1− 実施例3の懸濁液を、250mlの水を使用して、遠心分離によって、2回洗浄した。
2− ペレットを15mlのDI水に再懸濁し、水浴ソニケーターで2分間、超音波処理した。
3− 5mlの懸濁液(200mgのPLGを含む)を30mlの遠心分離チューブに移し、そして2mgの287タンパク質を加えた。
4− 1mlの10×PBSを加えることで緩衝液を調整し、DI水で容量を10mlまで増やした。
5− 懸濁液を4℃で一晩中、ラブロッカー上で揺らし続けた。
6− 翌日、1mlのアリコートを分析用に採取し、残りの懸濁液を12Mwt.〜14Mwt.のカットオフ透析チューブに移し、1回につき4LのDI水を4回交換して透析した。
7− 総容量を測定し、1mlのアリコートを分析用に採取した。残りの懸濁液をバイアルに分注した。それぞれ、PLG上のタンパク質を1μgまたは10μgのいずれかの量を含んでいた。
8− 凍結乾燥させる前に、DI水中25%のマンニトール溶液(216μl)を各バイアルに加えた。
【0102】
(実施例6:特徴付け)
1− 各懸濁液(実施例4の工程5由来)の1mlを、12Mwt〜14Mwt.のカットオフ透析チューブ中で1回につき4Lの水を2回交換して、一晩透析し、凍結乾燥した。
2− 各懸濁液(実施例4の工程5由来)の残りの1mlおよび実施例5の工程6由来のアリコートを、30mlの水を使用して、遠心分離によって洗浄し、凍結乾燥した。
3− 実施例5の工程7由来の1mlのアリコートを凍結乾燥した。
4− 上記の工程1、工程2、および工程3の凍結乾燥された処方物(各5mg)を、各1mlの0.2N NaOH/5% SDSによって加水分解し、Micro BCAアッセイ(Pierce、USA製)によって、タンパク質含量を測定した。
5− 各10mgの未洗浄の粒子(上記の工程1および工程3由来)を1mlのPBSに再懸濁し、37℃で1時間、揺らし続けた。そして、Micro BCAアッセイ(Pierce、USA製)によって上清中のタンパク質を測定することによって、バーストリリース(burst release)を決定した。
【0103】
【表1】

(実施例7:インビボのデータ)
実施例4の工程5および実施例5の工程7由来のPLG粒子上に吸着されたタンパク質を10μgまたは1μgのいずれか含む100μlによって、10匹のCD1マウスの群をそれぞれ、0週間、3週間、および5週間間隔で筋肉内注射により免疫し、5週目および7週目に血清を収集した。
【0104】
MenB特異的抗体を測定するために設計された酵素連結イムノソルベントアッセイを、5週目と7週目のマウスの血清に対して行った。Nunc Maxisorp U底プレート(Nalgene Nunc International)を精製した287タンパク質(1μg/ml)でコートした。血清を1:100希釈および1:400希釈(その後、連続して3倍希釈される)で試験した。西洋ワサビペルオキシダーゼと結合体化した抗マウスIgGヤギ抗体(1:40,000に希釈されたCALTAG)を二次抗体として使用した。37℃で1時間のインキュベーションの後で、プレートを洗浄して、未結合の抗体を取り除いた。TMB(Kirkegaard and Perry Laboratories、KPL)基質を使用してプレートを発色させ、2N HClを加えることにより、発色反応を15分後に止めた。報告する力価(幾何平均力価(GMT)および標準誤差(STE))は、450nmで最適な光学濃度である0.5 ELISA吸収単位を示す血清の希釈率の逆数である。
【0105】
【表2】

本発明の好ましい実施形態をいくらか詳細に記載したが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、明らかな変更がなされ得ることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】図1は、本発明の微粒子組成物の生成に適切な装置の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子組成物であって、
(a)ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、およびポリシアノアクリレートからなる群より選択されるポリマーを含む、微粒子と、
(b)該微粒子に吸着したポリペプチド含有分子と、
を含み、該微粒子組成物は、界面活性剤の非存在下で形成される、微粒子組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の微粒子組成物であって、前記ポリマーは、ポリ(α−ヒドロキシ酸)を含む、微粒子組成物。
【請求項3】
請求項2に微粒子組成物であって、前記ポリ(α−ヒドロキシ酸)が、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)、およびポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)からなる群より選択される、微粒子組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の微粒子組成物であって、前記ポリマーが、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)を含む、微粒子組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の微粒子組成物であって、前記ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)が、25:75〜75:25の範囲にあるラクチド/グリコリドモル比を有し、かつ10,000ダルトン〜100,000ダルトンの範囲にある分子量を有する、微粒子組成物。
【請求項6】
請求項4に記載の微粒子組成物であって、前記ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)が、40:60〜60:40の範囲にあるラクチド/グリコリドモル比を有し、かつ20,000ダルトン〜70,000ダルトンの範囲にある分子量を有する、微粒子組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の微粒子組成物であって、前記ポリペプチド含有分子が、抗原である、微粒子組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の微粒子組成物であって、前記抗原が、HIV抗原、髄膜炎B群抗原、連鎖球菌抗原、B型肝炎ウイルス抗原、C型肝炎ウイルス抗原、Haemophilus influenza B型抗原、百日咳抗原、ジフテリア抗原、破傷風抗原、Helicobater pylori抗原、およびインフルエンザA型赤血球凝集素抗原から選択される、微粒子組成物。
【請求項9】
請求項7に記載の微粒子組成物であって、前記抗原が、HIV gp41抗原、HIV gp120抗原、HIV gp140抗原、HIV p24gag抗原、HIV p55gag抗原、髄膜炎B群組換えタンパク質287抗原、およびB群連鎖球菌抗原からなる群より選択される、微粒子組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のうちのいずれか1項に記載の微粒子組成物であって、薬学的に受容可能な賦形剤をさらに含む、微粒子組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の微粒子組成物であって、さらなる生理活性高分子をさらに含み、該さらなる生理活性高分子は、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオシド、医薬品、ホルモン、酵素、転写媒介因子もしくは翻訳媒介因子、代謝経路中間体、免疫調節因子、およびアジュバントからなる群より選択される、微粒子組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の微粒子組成物であって、前記さらなる生理活性高分子がアジュバントである、微粒子組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の微粒子組成物であって、前記アジュバントが、CpGオリゴヌクレオチド、二本鎖RNAアジュバント、アミノアルキルグルコサミド4−リン酸アジュバント、イミダゾキノリンアジュバント、リポ多糖模倣アジュバント、サポニンアジュバント、E.coli易熱性毒素アジュバント、モノホスホリルリピドAアジュバント、およびアルミニウム塩からなる群より選択される構成要素である、微粒子組成物。
【請求項14】
請求項12に記載の微粒子組成物であって、前記アジュバントがリン酸アルミニウムである、微粒子組成物。
【請求項15】
疾患診断のための、請求項10〜14のうちのいずれか1項に記載の微粒子組成物の使用。
【請求項16】
疾患処置のための、請求項10〜14のうちのいずれか1項に記載の微粒子組成物の使用。
【請求項17】
ワクチンのための、請求項10〜14のうちのいずれか1項に記載の微粒子組成物の使用。
【請求項18】
免疫応答を惹起するための、請求項10〜14のうちのいずれか1項に記載の微粒子組成物の使用。
【請求項19】
脊椎動物被検体に治療有効量のポリペプチド含有分子を送達する方法であって、該方法は、
請求項10〜14のうちのいずれか1項に記載の微粒子組成物を、該脊椎動物被検体に投与する工程
を包含する、方法。
【請求項20】
請求項7に記載の微粒子組成物であって、前記抗原が、ポリペプチドに結合体化した多糖を含む、微粒子組成物。
【請求項21】
請求項17に記載の使用であって、前記ワクチンが非経口ワクチンである、使用。
【請求項22】
微粒子組成物を生成するための方法であって、該方法は、
(a)界面活性剤を用いない乳化プロセスにより微粒子を形成する工程であって、該微粒子は、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクタム、ポリオルトエステル、ポリ無水物、およびポリシアノアクリレートからなる群より選択されるポリマーを含む、工程;ならびに
(b)ポリペプチド含有分子を該微粒子表面上に吸着させて、該微粒子組成物を形成する工程、
を包含する、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、前記乳化プロセスは、
(a)有機溶媒、水、および前記ポリマーを含むエマルジョンを形成する工程;ならびに
(b)該エマルジョンから該有機溶媒を除去して、微粒子を形成する工程、
を包含する、方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、前記エマルジョンが、水中油中水エマルジョンであり、該水中油中水エマルジョンは、
(a)前記ポリマーと前記有機溶媒とを含む有機相を、水を含む第1水相を用いて乳化して、油中水エマルジョンを形成する工程;ならびに
(b)水を含む第2水相を、該工程(a)において形成されたエマルジョンを用いて乳化して、水中油中水エマルジョンを形成する工程、
を包含するプロセスによって形成される、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、前記乳化工程が、高剪断ホモジナイザーにて実行される、方法。
【請求項26】
請求項22〜25のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記ポリマーが、ポリ(α−ヒドロキシ酸)である、方法。
【請求項27】
請求項22〜25のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記ポリマーが、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)である、方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、前記ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)が、25:75〜75:25の範囲にあるラクチド/グリコリドモル比を有し、かつ10,000ダルトン〜100,000ダルトンの範囲にある分子量を有する、方法。
【請求項29】
請求項27に記載の方法であって、前記ポリマーが、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)であり、該ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)は、40:60〜60:40の範囲にあるラクチド/グリコリドモル比を有し、かつ20,000ダルトン〜70,000ダルトンの範囲にある分子量を有する、方法。
【請求項30】
請求項22〜29のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記ポリペプチド含有分子が抗原である、方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、前記抗原が、HIV抗原、髄膜炎B群抗原、連鎖球菌抗原、B型肝炎ウイルス抗原、C型肝炎ウイルス抗原、Haemophilus influenza B型抗原、百日咳抗原、ジフテリア抗原、破傷風抗原、Helicobater pylori抗原、およびインフルエンザA型赤血球凝集素抗原から選択される、方法。
【請求項32】
請求項30に記載の方法であって、前記抗原が、HIV gp41抗原、HIV gp120抗原、HIV gp140抗原、HIV p24gag抗原、HIV p55gag抗原、髄膜炎B群組換えタンパク質287抗原、およびB群連鎖球菌抗原からなる群より選択される、方法。
【請求項33】
請求項22〜32のうちのいずれか1項に記載のプロセスにより形成される、微粒子組成物。
【請求項34】
請求項22〜32のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記吸着したポリペプチド含有分子と前記ポリマーとの重量対重量比が、0.001:1と0.1:1との間の範囲にある、方法。
【請求項35】
請求項1〜14、20および33のうちのいずれか1項に記載の微粒子組成物であって、前記吸着したポリペプチド含有分子と前記ポリマーとの重量対重量比が、0.01:1と0.05:1との間の範囲にある、微粒子組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2006−507213(P2006−507213A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−569802(P2003−569802)
【出願日】平成15年2月20日(2003.2.20)
【国際出願番号】PCT/US2003/005017
【国際公開番号】WO2003/070909
【国際公開日】平成15年8月28日(2003.8.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
TEFLON
【出願人】(591076811)カイロン コーポレイション (265)
【Fターム(参考)】