説明

吸着シート及び吸着シートの製造方法

【課題】 必要十分な吸着力を有し、吸着対象から容易に剥離させることができ、剥離させた際、吸着対象への高分子樹脂の残留を防止できる吸着シート及び吸着シートの製造方法を提供する。
【解決手段】 不織布10の裏面10aに、裏面10a全面を被覆する吸着層ではなく、面方向に互いに離隔配置してある複数の吸着部11,12,…による平編模様状のパターン100が形成してあり、吸着部11,12,…夫々のフォーム密度は0.23g/cm3 、厚みは1.5mm、吸着部11,12,…による裏面10aの占有面積は、裏面10aの面積の35%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一面に吸着部が形成してある織布又は不織布を用いてなる吸着シート、及び該吸着シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
便座シート、バスマット等、織布又は不織布を用いてなる吸着シートが、例えば一般住宅で使用されている。吸着シートが便座、床面等の吸着対象に吸着するために、織布又は不織布の一面には、高分子樹脂を発泡させてなるフォーム状の吸着層が形成されている。吸着層は、吸着層の表面に開口する気泡による真空吸着で吸着対象に吸着する(特許文献1参照)。
【0003】
従来、吸着層は、織布又は不織布の一面全面に略均一に高分子樹脂を塗布することによって形成していた。
【特許文献1】特開2001−258801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の吸着シートは、吸着層が織布又は不織布の一面全面に形成されているため、吸着力が強すぎて、吸着対象から剥離させ難いという問題があった。また、吸着力が強すぎるため、吸着シートを吸着対象から剥離させた場合に、吸着層を形成する高分子樹脂が吸着対象に付着して残留するという問題もあった。
【0005】
以上のような問題を解決するために、織布又は不織布の一面全面に塗布した高分子樹脂の表面に、一方向に並置された複数条の浅い溝を形成すべく筋引き加工を施してなる吸着層を備える吸着シートが提案されている。このような吸着層は、溝が形成されていない吸着層よりも吸着力が弱い。
【0006】
しかしながら、このような吸着シートは、複数条の溝が形成されていても、吸着層と吸着対象とが接触する面積が十分に広く、このため吸着力が十分に強い。この結果、このような吸着シートも、吸着対象から剥離させ難いという問題、及び、剥離の際、吸着層を形成する高分子樹脂が吸着対象に付着して残留するという問題が十分に解決されているとはいえなかった。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、織布又は不織布の一面に、面方向に互いに離隔配置してある複数の吸着部によるパターンを形成することにより、吸着対象から容易に剥離させることができ、剥離の際、吸着対象への高分子樹脂の残留を防止することができる吸着シート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の他の目的は、その厚みが0.5〜3mmの吸着部を備えることにより、必要十分な吸着力を有し、しかも経済性を向上させることができる吸着シートを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、そのフォーム密度が0.1〜0.5g/cm3 の吸着部を備えることにより、必要十分な吸着力及び強度を有する吸着シートを提供することにある。
【0010】
本発明の更に他の目的は、織布又は不織布の一面に対する面積占有率が5〜80%である複数の吸着部を備えることにより、必要十分な吸着力を有する吸着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係る吸着シートは、織布又は不織布の一面に、高分子樹脂を発泡させてなるフォーム状の吸着部を備え、該吸着部の表面に開口する気泡を有する吸着シートであって、前記一面に、面方向に互いに離隔配置してある複数の前記吸着部によるパターンが形成してあることを特徴とする。
【0012】
第2発明に係る吸着シートは、各吸着部の厚みは0.5mm以上3mm以下であることを特徴とする。
【0013】
第3発明に係る吸着シートは、各吸着部のフォーム密度は0.1g/cm3 以上0.5g/cm3 以下であることを特徴とする。
【0014】
第4発明に係る吸着シートは、前記複数の吸着部が前記一面を覆う面積は、前記一面の面積の5%以上80%以下であることを特徴とする。
【0015】
第5発明に係る吸着シートの製造方法は、織布又は不織布の一面に、複数の吸着部によるパターンが形成してある吸着シートの製造方法であって、気泡を有する高分子樹脂を、面方向に互いに離隔して前記一面に複数転写することによって、前記パターンを形成することを特徴とする。
【0016】
第1発明及び第5発明にあっては、織布又は不織布の一面に複数の吸着部がパターンとして離隔形成してある。つまり、織布又は不織布の一面には、複数の吸着部と、吸着部が形成されておらず織布又は不織布自体が露出した部分とが混在している。吸着部は、高分子樹脂(合成樹脂)を発泡させてなるフォーム状であり、離隔形成された吸着部と吸着対象とが接触した場合、各吸着部が、気泡による真空吸着で吸着対象に吸着することによって、吸着シートが吸着対象に固定される。
【0017】
第2発明にあっては、織布又は不織布に形成してある各吸着部の厚みが0.5mm以上3mm以下である。吸着部の密度が等しい場合、厚みが0.5mm未満の吸着部は、厚みが0.5mm以上3mm以下の吸着部に比べて、気泡の数が少なくなり、必要十分な吸着力が得られない。
【0018】
一方、各吸着部の厚みが3mm超過であるとき、厚い吸着部を複数形成するために、多量の高分子樹脂が必要とされ、経済性が悪化する。即ち、0.5mm以上3mm以下の厚みが好適である。
【0019】
第3発明にあっては、織布又は不織布に形成してある各吸着部のフォーム密度が0.1g/cm3 以上0.5g/cm3 以下である。各吸着部のフォーム密度が0.1g/cm3未満である場合、吸着部の強度が低下し、また、吸着力が過剰になる。このため、吸着シートが吸着対象から剥離させ難くなり、吸着シートを吸着対象から剥離させた場合に、吸着部を形成する高分子樹脂が吸着対象に付着して残留することがある。
【0020】
一方、各吸着部のフォーム密度が0.5g/cm3 超過である場合、吸着部の強度は向上するが、吸着性能が低下する。即ち、0.1g/cm3以上0.5g/cm3 以下のフォーム密度が好適である。
【0021】
第4発明にあっては、織布又は不織布に形成してある複数の吸着部が織布又は不織布の一面を覆う面積、即ち吸着部全体による織布又は不織布の一面の占有面積が、織布又は不織布の一面の面積の5%以上80%以下である。占有面積が5%未満である場合、織布又は不織布の一面の吸着部と吸着対象とが接触する面積が狭すぎるため、十分な吸着力が得られない。一方、占有面積が80%超過である場合、織布又は不織布の一面の吸着部と吸着対象とが接触する面積が広すぎるため、吸着力が過剰となる。即ち、5%以上80%以下の占有面積が好適である。
【発明の効果】
【0022】
第1発明の吸着シート及び第5発明の吸着シートの製造方法によれば、織布又は不織布の一面には、複数の吸着部と、吸着部が形成されておらず織布又は不織布自体が露出した部分とが混在している。織布又は不織布の一面に離隔形成されている吸着部は、織布又は不織布の一面全面に形成されている吸着層に比べて、吸着対象に対する接触面積が狭いため、吸着対象に対する吸着力が強すぎず、吸着対象から吸着シートを容易に剥離させることができる。また、吸着力が強すぎないため、吸着対象に吸着していた吸着シートを吸着対象から剥離させた場合に、吸着対象への高分子樹脂の残留を防止することができる。
【0023】
更に、吸着部が織布又は不織布の一面全面を被覆していないため、吸着シートは通気性に優れており、この結果、吸着シートの消臭性を向上させることができ、更に、織布又は不織布が吸水した場合でも容易に乾燥させることができる。
【0024】
第2発明の吸着シートによれば、各吸着部の厚みが、厚すぎも薄すぎもしない厚みである。このため、吸着シートの経済性を向上させることができ、しかも吸着シートが、吸着対象に対する必要十分な吸着力を得ることができる。この結果、吸着シートの吸着対象からの脱離を防止でき、吸着対象に吸着させた吸着シートの剥離が更に容易になり、吸着シートの剥離の際、吸着対象への高分子樹脂の残留を更に防止することができる。
【0025】
第3発明の吸着シートによれば、各吸着部のフォーム密度が、高すぎも低すぎもしないフォーム密度である。このため、吸着シートは、必要十分な強度を有し、更に、吸着対象に対する必要十分な吸着力を得ることができる。この結果、吸着シートの吸着対象からの脱離を防止でき、吸着対象に吸着させた吸着シートの剥離が更に容易になり、吸着シートの剥離の際、吸着対象への高分子樹脂の残留を更に防止することができる。
【0026】
第4発明の吸着シートによれば、織布又は不織布の一面の吸着部と吸着対象とが接触する面積が広すぎも狭すぎもしない面積である。このため、吸着シートは、吸着対象に対する必要十分な吸着力を得ることができる。この結果、吸着シートの吸着対象からの脱離を防止でき、吸着対象に吸着させた吸着シートの剥離が更に容易になり、吸着シートの剥離の際、吸着対象への高分子樹脂の残留を更に防止することができる等、本発明は優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を、その実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0028】
図1及び図2は、便座シートに適用した場合の本発明に係る吸着シート1の構成を示す平面図及び断面図であり、図2は、図1におけるII−II線の断面図である。本実施の形態の吸着シート1は、2枚一組でC型又はO型の便座の便座シートとして用いるために、C型の便座の略半分を被覆可能な面積を有する三日月状に形成してある。なお、吸着シート1は、バスマット、自動車のダッシュボードシート、便所マット等として用いるために、平面視矩形状、便器の形状に応じた形状等に形成してあっても良い。
【0029】
図中10は不織布であり、不織布10は、約1mmの起毛部も含めて約3mmの厚さを有する。不織布10は、例えばポリエステルのような第1の熱可塑性繊維に、第1の熱可塑性繊維よりも低融点で溶融する第2の熱可塑性繊維が混入された繊維を互いにからませて集合してなる比較的薄肉のシート状のウェブを形成し、このシートウェブを重ねて比較的厚肉のラップウェブを成形し、このラップウェブを第1のニードルパンチ加工によりフェルト状とし、このフェルトウェブの片面を第2のニードルパンチ加工により起毛させて形成する。このように形成された不織布10は、適度の撓み性を有する。なお、不織布10の代わりに織布を用いても良い。また、第1及び第2の熱可塑性繊維は、例えばアンモニア臭に対する消臭作用を有する消臭性の繊維でも良く、非消臭性の繊維でも良い。
【0030】
不織布10の裏面10aは、ニードルパンチ加工によって起毛されておらず、また、裏面10aには、高分子樹脂(合成樹脂)を発泡させてなるフォーム状の吸着部11,11,…,12,12,…によるパターン100が形成してある。一方、不織布10の表面10bは、ニードルパンチ加工により起毛されており、また、表面10bには吸着部11,12,…が形成されていない。このような裏面10a/表面10bは、吸着シート1の裏面/表面である。図1では裏面10aを表側にし、不織布10の端部を折り返して表面10bを見せてある。
【0031】
パターン100は、面方向に互いに離隔している複数の吸着部11,12,…が規則正しく並置されてなる平編模様状である。吸着部11,12,…の夫々は、平面視が、長さ約17mm、幅が約6mmの長円形状であり、裏面10aに1.5mmの厚みで形成されており、また、最も近接している吸着部11,12の離隔距離は約3mmである。
【0032】
吸着部11,11,…は、吸着部11,11,…の長手方向が略同一方向になるよう、互いに略平行な略一直線の列を複数形成している。吸着部12,12,…もまた、吸着部12,12,…の長手方向が略同一方向になるよう、互いに略平行な略一直線の列を複数形成しており、吸着部11,11,…の長手方向と吸着部12,12,…の長手方向とは略直交している。また、吸着部11(吸着部12)の長手方向の延長線に、吸着部12(吸着部11)が交差している。
【0033】
以上のように、不織布10の裏面10aには、吸着部11,12,…と、吸着部11,12,…が形成されておらず不織布10自体が露出した部分とが混在している。
【0034】
吸着部11,12,…の夫々は、後述するようにアクリルを含む高分子樹脂からなり、高分子樹脂による弾力性及び柔軟性を有し、更にまた、吸着部11,12,…夫々の内部に含まれる微小気泡及び吸着部11,12,…夫々の表面に開口する微小気泡を有する。
【0035】
吸着シート1は、各吸着部11,12,…のフォーム密度が0.1g/cm3 以上0.5g/cm3 以下、吸着部11,12,…の占有面積が不織布の一面の面積の5%以上80%以下、及び各吸着部11,12,…の厚みが0.5mm以上3mm以下であるときに、好適な吸着力を有する。ここで、好適な吸着力とは、吸着対象に吸着させた吸着シート1が吸着対象上で位置ずれを起こすこと、吸着対象から脱離すること等の不具合が生じない程度の強い吸着力、かつ、吸着シート1を吸着対象から剥離させ難いこと、吸着シート1の剥離後に吸着部11,12,…を形成する高分子樹脂が吸着対象に付着して残留すること等の不具合が生じない程度の強すぎない吸着力である。
【0036】
更に、吸着シート1は、各吸着部11,12,…のフォーム密度が0.23g/cm3 、吸着部11,12,…全体による占有面積が不織布の一面の面積の35%、及び各吸着部11,12,…の厚みが1.5mmであるときに、最適な吸着力を有する。このため、吸着部11,12,…夫々のフォーム密度は0.23g/cm3に、吸着部11,12,…全体による裏面10aの占有面積は裏面10aの面積の35%に、吸着部11,12,…夫々の厚みは1.5mmにしてある。
【0037】
吸着部11,12,…は、夫々の厚み及びフォーム密度が適切であるため、吸着部11,12,…の表面に開口する微小気泡の数が適切となり、必要十分な吸着力が得られる。また、占有面積、ひいては吸着部11,12,…と吸着対象とが接触する面積が、適切な広さとなるため、必要十分な吸着力が得られる。以上の結果、吸着シート1の吸着対象からの脱離を防止でき、吸着対象に吸着させた吸着シート1の剥離が更に容易になり、吸着シート1の剥離の際、吸着対象への高分子樹脂の残留を更に防止することができる。
【0038】
吸着シート1の出荷時、裏面10aは、裏面10aと略同一サイズの保護フィルム3によって被覆されている。保護フィルム3は無色透明の薄膜であり、吸着部11,12,…との吸着力が弱い高分子樹脂を用いてなる。
【0039】
図3は、吸着シート1の製造方法の説明図であり、図4は、吸着シート1を製造するための樹脂転写部2の説明図である。吸着部11,12,…を形成すべく、本実施の形態では、アクリル酸エステル共重合体100%のエマルジョンに、架橋剤、充填剤、発泡剤、増粘剤、撥水剤等の助剤を配合してなる高分子樹脂材料が用いられる。また、架橋剤としてはエポキシ樹脂、充填剤としては水酸化アルミニウム、発泡剤としてはステアリン酸アンモン、増粘剤としてはポリアクリル酸ソーダ系、撥水剤としてはフッ素系界面活性剤が使用される。
【0040】
図3中40は高分子樹脂を発泡させる樹脂発泡部であり、樹脂発泡部40は、気泡を含み粘着性を有する高分子樹脂を生成する。具体的には、樹脂発泡部40には、上述した高分子樹脂材料の溶液をポンプ401によって送り出す送出路402の中間に、空気源403に連通する発泡機404が設けてある。樹脂発泡部40においては、発泡機404に供給された高分子樹脂材料の溶液に、更に樹脂強度を高めるための架橋剤を添加して、発泡機404に空気を吹き込みつつ撹拌することによって高分子樹脂材料の溶液を泡立たせてなる吸着剤が生成される。生成された吸着剤は、気泡を含み、粘性及び粘着性を有し、乾燥後にも微小気泡を有する。また、生成された吸着剤は、送出路402の出口から樹脂転写部2に供給される。
【0041】
図3中41は原反供給部であり、原反供給部41は、吸着シート1となるべき不織布10を樹脂転写部2に供給する。この場合、原反供給部41は、ロール状に巻き取られている矩形の不織布10を、複数の供給ローラの回転によって引き出して、平面状の不織布10となして樹脂転写部2に供給する。
【0042】
樹脂転写部2は、ロータリー式スクリーンコーティング機で構成されており、図3及び図4に示すように、転写ローラ20と転写ローラ20に対向配置された対向ローラ200とを備える。樹脂転写部2に供給された平面状の不織布10は、起毛部が設けられていない裏面10aを転写ローラ20側に向けて転写ローラ20と対向ローラ200との間に供給され、ローラ20,200の回転によって転写ローラ20と対向ローラ200との間を通過して、後述する樹脂乾燥部43に供給される。
【0043】
転写ローラ20は中空であり、周面には樹脂出口21,21,…,22,22,…が互いに離隔して規則的に配置されて形成されている。樹脂出口21,22,…は転写ローラ20の周面に打ち抜かれた孔部であり、樹脂出口21,21,…の形成位置は吸着シート1の吸着部11,11,…の配置に対応し、樹脂出口22,22,…の形成位置は吸着シート1の吸着部12,12,…の配置に対応する。
【0044】
樹脂発泡部40から供給された吸着剤は転写ローラ20の内部に供給され、先に転写ローラ20の内部に供給された吸着剤が、後から転写ローラ20の内部に供給された吸着剤に押し出されるようにして、樹脂出口21,22,…から露出する。露出した吸着剤は、転写ローラ20と対向ローラ200との間を通過する不織布10の裏面10aに転写される。つまり、不織布10には、転写ローラ20と対向ローラ200との間を通過する際に、樹脂発泡部40から供給された吸着剤が、面方向に互いに離隔して不織布10の裏面10aに複数転写される。
【0045】
不織布10に転写された吸着剤110,120,…は、図示しないドクターブレードによって均される。ただし、ドクターブレードで均されることによって、転写された吸着剤110,120,…同士が接触することはない。
【0046】
この後、吸着剤110,120,…が転写された不織布10は、図3に示す樹脂乾燥部43に供給される。樹脂乾燥部43にて、不織布10に転写された吸着剤110,120,…は、約160℃の乾燥室内で3〜5分の間乾燥されて吸着剤110,120,…に含まれている水分が蒸発し、乾燥室から取り出されて冷却されることによって、複数の微小気泡を有する状態で硬化する。硬化した吸着剤110,120,…は、即ち吸着部11,12,…である。
【0047】
吸着部11,12,…を形成する際の熱乾燥によって、不織布10の第2の熱可塑性繊維が溶融し、この第2の熱可塑性繊維によって不織布10の第1の熱可塑性繊維が互いに結合する。また、裏面10aに転写された吸着剤110,120,…の一部は不織布10に浸透し、吸着部11,12,…と不織布10との結合強度が高められる。
【0048】
更にまた、吸着部11,12,…を形成する際の熱乾燥によって吸着剤110,120,…のアクリル酸エステル共重合体及び架橋剤が化学反応して分子間に橋かけ結合が生じ、また、吸着剤110,120,…に含まれる気泡が微小気泡となる。この微小気泡は吸着部11,12,…の表面にも生ずるため、吸着部11,12,…を吸着対象に押し付けることによって、吸着部11,12,…の表面に露出する複数の微小気泡の夫々が内部空気を排出し、真空吸着作用をなし、この真空吸着作用が吸着部11,12,…の吸着力を高めている。
【0049】
図3中42は原反巻取部であり、原反巻取部42は、樹脂乾燥部43から供給された平面状の不織布10をロール状に巻き取る。図3中44は薄膜供給部であり、薄膜供給部44は、原反巻取部42でロール状に巻き取られる不織布10の裏面10a側に保護フィルム3を供給する。供給された保護フィルム3は、保護フィルム3供給用のローラによって吸着部11,12,…に密着されて、不織布10と共にロール状に巻き取られる。
【0050】
以上のようにして形成された保護フィルム3付きの不織布10が、適宜の面積及び形状に裁断されることによって、吸着シート1が形成される。
【0051】
吸着シート1を用いる場合、吸着シート1のユーザは、予め2枚の吸着シート1を準備しておき、各吸着シート1に関し、まず保護フィルム3を剥がし、次に裏面10aを吸着対象である便座に向けて、吸着部11,12,…と吸着対象とを接触させ、最後に、表面10b側から吸着シート1を全体的に吸着対象に軽く押し付ける。吸着シート1が押し付けられた場合、裏面10aの吸着部11,12,…が、微小気泡による真空吸着で吸着対象に吸着する。このため吸着シート1は吸着対象に固定され、吸着シート1の位置ずれが防止される。
【0052】
吸着シート1の固定位置を変更する場合、吸着シート1が汚損した場合等、吸着シート1を吸着対象から剥離させる場合、ユーザが吸着シート1の端部を掴んで持ち上げることによって、吸着シート1は容易に吸着対象から剥離される。また、汚損した吸着シート1は洗濯可能である。
【0053】
さて、吸着部11,12,…は多孔質であり、しかも裏面10a全面を被覆していない。このため、吸着シート1は通気性に優れている。この結果、吸着シート1は悪臭の発生を抑制し、更に、不織布10が吸水した場合でも容易に乾燥する。
【0054】
更にまた、不織布10が撓み性を有し、更に、吸着部11,12,…は弾力性及び柔軟性を有し、しかも、吸着部11,12,…が裏面10a全面を被覆していないため、吸着シート1は撓み性が向上されており、例えば、吸着シート1を折り曲げて保存する場合に有利である。
【0055】
ここで、吸着部11,12,…の厚みが厚すぎる場合、吸着対象に吸着させた吸着シート1に大きな凹凸が生じ、この結果、美観が損なわれることがあり、また、吸着対象に吸着させた吸着シート1に触れたユーザが吸着部11,12,…の存在を強く感じて、便座シート、バスマット等としての使用感が損なわれることがある。一方、本実施の形態の吸着シート1は、適切な厚さの吸着部11,12,…が適切な離間距離で点在しており、しかもパターン100が平織模様であるため、裏面10aの美観が向上し、また、表面10b側からは視覚的及び触覚的に吸着部11,12,…の存在がユーザに認識され難いため使用感が向上する。
【0056】
更にまた、吸着部11,12,…夫々が適宜の厚みを有するため、吸着剤の転写によって吸着部11,12,…を形成する場合、薄すぎる吸着部を形成するよりも吸着部11,12,…の形成が容易であり、しかも、多量の高分子樹脂を必要としないため、経済性が向上する。また、吸着部11,12,…のフォーム密度が適切なフォーム密度であるため、吸着シート1は、必要十分な強度を有することができる。
【0057】
なお、吸着部11,12,…は、アクリルを含む高分子樹脂製に限らず、ウレタンを含む高分子樹脂製でも良い。また、不織布10の両面に吸着部11,12,…が形成してあっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る吸着シートの構成を示す平面図である。
【図2】本発明に係る吸着シートの構成を示す断面図である。
【図3】本発明に係る吸着シートの製造方法の説明図である。
【図4】本発明に係る吸着シートを製造するための樹脂転写部の説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1 吸着シート
10 不織布
10a 裏面(一面)
100 パターン
11,12 吸着部
2 樹脂転写部
20 転写ローラ
21,22 樹脂出口
3 保護フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織布又は不織布の一面に、高分子樹脂を発泡させてなるフォーム状の吸着部を備え、該吸着部の表面に開口する気泡を有する吸着シートであって、
前記一面に、面方向に互いに離隔配置してある複数の前記吸着部によるパターンが形成してあることを特徴とする吸着シート。
【請求項2】
各吸着部の厚みは0.5mm以上3mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の吸着シート。
【請求項3】
各吸着部のフォーム密度は0.1g/cm3 以上0.5g/cm3 以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸着シート。
【請求項4】
前記複数の吸着部が前記一面を覆う面積は、前記一面の面積の5%以上80%以下であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の吸着シート。
【請求項5】
織布又は不織布の一面に、複数の吸着部によるパターンが形成してある吸着シートの製造方法であって、
気泡を有する高分子樹脂を、面方向に互いに離隔して前記一面に複数転写することによって、前記パターンを形成することを特徴とする吸着シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−137112(P2006−137112A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−329386(P2004−329386)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(596060594)株式会社サンコー (65)
【出願人】(000106254)サンケミカル株式会社 (6)
【Fターム(参考)】