説明

吸着パッド洗浄装置および吸着パッドを備えたチャックテーブル

【課題】吸着パッドに詰まったスラッジを確実に排出する。
【解決手段】支持部材(53a)に支持されていて被加工物(20)を吸着する吸着パッド(51a)を洗浄する吸着パッド洗浄装置は、吸着パッドの内部から吸着パッドの吸着面(52a)に向かって洗浄液を供給する洗浄液供給手段(58)と、吸着パッドの吸着面において吸着パッドの内側領域を該内側領域周りの外側領域から封止可能に被覆する内側領域被覆部(30)とを含む。また、チャックテーブル(12a)は、被加工物を吸着する吸着パッドと、吸着パッドを支持する支持部材(53a、57)と、支持部材に形成されていて吸着パッドの内側領域周りに在る外側領域まで延びる外側領域通路(71)と、洗浄液を外側領域通路に通して吸着パッドの吸着面に向かって供給する洗浄液供給手段と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハを吸着する吸着パッドを洗浄する吸着パッド洗浄装置および吸着パッドを備えたチャックテーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野においてはウェーハが年々大型化する傾向にあり、また、実装密度を高めるためにウェーハの薄膜化が進んでいる。ウェーハを薄膜化するために、半導体ウェーハの裏面を研削するいわゆる裏面研削(バックグラインド)が行われる。例えば特許文献1には、真空の吸引力を利用したチャックにウェーハを吸着保持させてウェーハの裏面を研削する技術が開示されている。
【0003】
図9は特許文献1に開示されるような従来技術におけるウェーハ研削装置の略図である。ウェーハの裏面を研削するときには、ウェーハ20の表面21には表面保護フィルム11が貼付けられる。この表面保護フィルム11は、表面21に形成された回路パターン(図示しない)を保護する役目を果たす。また、従来技術におけるウェーハ研削装置の部分断面図である図10から分かるように、ウェーハ20の縁部には面取部25が形成されている。このため、表面保護フィルム11はウェーハ20の縁部において面取部25に沿って貼付けられる。
【0004】
図10に示されるように、ウェーハ20はその裏面22が上方を向くように、吸着パッド510に吸着保持される。吸着パッド510は通常は多孔質材料から形成されており、図示しない真空手段により真空を吸着面520に適用することでウェーハ20が吸着パッド510に吸着保持される。そして、図9に実線矢印で示されるように、互いに回転する研削砥石280とウェーハ20との接点に研削水が供給され、研削砥石280により、ウェーハ20の裏面22が研削されるようになる。
【特許文献1】特開2000−21952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、表面保護フィルム11はウェーハ20の面取部25に沿って貼付けられているので、ウェーハ20の縁部においては隙間Gが表面保護フィルム11と吸着パッド510との間に形成される。研削の進行により生じた研削屑は、研削水と共にスラッジSとして隙間Gを通じて吸着パッド510内に流入し、スラッジSが吸着パッド510内部で詰まるようになる。
【0006】
一つのウェーハ20の研削が終了すると、吸着パッド510の吸引作用を解除してウェーハ20を吸着パッド510から取外す。そして、従来技術における吸着パッドの部分断面図である図11に示されるように、吸着パッド510の中心における底面側から吸着面520に向かって洗浄液を供給する。これにより、洗浄液は半径方向に広がって吸着パッド510の吸着面520全体からから流出する。そして、洗浄液を供給しつつ、洗浄装置の回転砥石(図9、図10および図11には示さない)により吸着パッド510の吸着面520を微量だけ研削することにより吸着パッド510が洗浄される。
【0007】
しかしながら、図11における矢印の寸法から分かるように、洗浄液の流量は吸着パッド510の中心領域において大きいものの、吸着パッド510の外側領域においては小さくなる。また、前述したように吸着パッド510の外側領域にはスラッジSが詰まっているので、洗浄液は吸着パッド510の外側領域には到達し難い場合もある。また、洗浄液の供給のみによってスラッジSを吸着パッド510から完全に排出するためには、洗浄液の流量をかなり大きくする必要があり、経済的でない。
【0008】
さらに、回転砥石は吸着パッド510の吸着面520に堆積したスラッジSを除去できるものの、吸着パッド510内部に詰まったスラッジSを除去することはできない。また、吸着パッド510の研削時には、回転砥石がスラッジSを吸着パッド510内部に押込む場合があり、このような場合には、スラッジにより吸着パッド510が却って詰まることになる。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、吸着パッドに詰まったスラッジを確実に排出することのできる吸着パッド洗浄装置およびチャックテーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために1番目の発明によれば、支持部材に支持されていて被加工物を吸着する吸着パッドを洗浄する吸着パッド洗浄装置において、前記吸着パッドの内部から前記吸着パッドの吸着面に向かって洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、前記吸着面における前記吸着パッドの内側領域を該内側領域周りの外側領域から封止可能に被覆する内側領域被覆部とを具備する、吸着パッド洗浄装置が提供される。
【0011】
すなわち1番目の発明においては、内側領域被覆部が吸着パッドの内側領域を閉鎖しているので、洗浄液は吸着パッドの外側領域においてのみ流出する。このため、洗浄液は吸着パッドの外側領域に詰まったスラッジを確実に排出できる。なお、内側領域被覆部と吸着パッドの吸着面との間に隙間があってもよい。
【0012】
2番目の発明によれば、1番目の発明において、さらに、前記内側領域被覆部から前記吸着パッドの吸着面に向かって気体を供給する気体供給手段とを具備する。
すなわち2番目の発明においては、吸着パッドの内側領域に供給された洗浄液を気体が押出すことにより、吸着パッドの外側領域に供給される洗浄液の流量を増加させられる。従って、吸着パッドの外側領域に詰まったスラッジをさらに確実に排出できる。
【0013】
3番目の発明によれば、支持部材に支持されていて被加工物を吸着する吸着パッドを洗浄する吸着パッド洗浄装置において、前記吸着パッドの内部から前記吸着パッドの吸着面に向かって洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、前記吸着面における前記吸着パッドの外側領域を該外側領域に囲まれる内側領域から封止可能に被覆する外側領域被覆部と、前記外側領域被覆部により被覆された前記吸着パッドの前記外側領域に真空を適用する真空手段とを具備する、吸着パッド洗浄装置が提供される。
【0014】
すなわち3番目の発明においては、真空手段によって洗浄液は吸着パッドの外側領域を通って吸引される。このため、洗浄液は吸着パッドの外側領域に詰まったスラッジを確実に排出できる。
【0015】
4番目の発明によれば、3番目の発明において、さらに、前記吸着面における前記吸着パッドの前記内側領域を前記外側領域から封止可能に被覆する内側領域被覆部を具備する。
すなわち4番目の発明においては、内側領域被覆部が吸着パッドの内側領域を閉鎖しているので、真空手段による吸引の効果をさらに高めることができる。
【0016】
5番目の発明によれば、支持部材に支持されていて被加工物を吸着する吸着パッドを洗浄する吸着パッド洗浄装置において、前記吸着面における前記吸着パッドの前記内側領域を該内側領域周りの外側領域から封止可能に被覆する内側領域被覆部と、前記内側領域被覆部から前記吸着パッドの吸着面に向かって気体を供給する気体供給手段とを具備する、吸着パッド洗浄装置が提供される。
【0017】
すなわち5番目の発明においては、気体供給手段から供給された気体は吸着パッドの内側領域を通って外側領域から流出するようになる。このため、気体は吸着パッドの外側領域に詰まったスラッジを確実に排出できる。なお、内側領域被覆部と吸着パッドの吸着面との間に隙間があってもよい。また、気体の代わりに、洗浄液を内側領域被覆部から供給するようにしてもよい。
【0018】
6番目の発明によれば、5番目の発明において、さらに、前記吸着パッドの内部から前記吸着パッドの吸着面に向かって洗浄液を供給する洗浄液供給手段を具備する。
すなわち6番目の発明においては、洗浄液が気体と一緒に吸着パッドの外側領域から流出する。このため、吸着パッドの外側領域に詰まったスラッジをさらに確実に排出できる。
【0019】
7番目の発明によれば、5番目または6番目の発明において、さらに、前記吸着面における前記吸着パッドの前記外側領域を前記内側領域から封止可能に被覆する外側領域被覆部と、前記外側領域被覆手段により被覆された前記外側領域に真空を適用する真空手段とを具備する。
すなわち7番目の発明においては、真空手段により気体および/または洗浄液が吸引されるので、吸着パッドの外側領域に詰まったスラッジをさらに確実に排出できる。
【0020】
8番目の発明によれば、被加工物を吸着する吸着パッドと、該吸着パッドを支持する支持部材と、該支持部材に形成されていて前記吸着パッドの内側領域周りに位置する外側領域まで延びる外側領域通路と、洗浄液を前記外側領域通路に通して前記外側領域における前記吸着パッドの吸着面に向かって供給する洗浄液供給手段と、を具備するチャックテーブルが提供される。
【0021】
すなわち8番目の発明においては、洗浄液を吸着パッドの外側領域に直接的に供給しているので、吸着パッドの外側領域に詰まったスラッジを確実に排出できる。
【0022】
9番目の発明によれば、8番目の発明において、さらに、前記支持部材に形成されていて前記吸着パッドの前記内側領域まで延びる内側領域通路を具備し、前記洗浄液供給手段は、洗浄液を前記外側領域通路および前記内側領域通路に通して前記吸着パッドの吸着面に向かって供給する。
すなわち9番目の発明においては、吸着パッドの内側領域に供給される洗浄液の量が不足するのを避けられる。また、洗浄液供給手段が外側領域通路における洗浄液の流量を内側領域通路における流量よりも大きくし、それにより、吸着パッドの外側領域に詰まったスラッジをより確実に排出できる。
【0023】
10番目の発明によれば、9番目の発明において、さらに、前記吸着パッドの前記外側領域と前記内側領域とを仕切る仕切手段を具備する。
すなわち10番目の発明においては、吸着パッドの外側領域における洗浄液の流量が低下するのを避けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の図面において同様の部材には同様の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これら図面は縮尺を適宜変更している。
図1は本発明の第一の実施形態に基づく吸着パッド洗浄装置を含むウェーハ処理装置の頂面図である。ウェーハ処理装置10には、複数の回路パターン(図示しない)が形成された表面21が表面保護フィルム11により保護されている複数のウェーハ20がカセット11aにより供給されるものとする。
【0025】
図1に示されるウェーハ処理装置10は、四つのチャックテーブル12a〜12dを備えていて矢印A方向にインデックス回転するターンテーブル13と、チャックテーブル12a〜12dのそれぞれの吸着パッド51a〜51dを洗浄する吸着パッド洗浄装置18と、ウェーハ20を搬送する搬送ロボット15とを主に含んでいる。
【0026】
さらに、図1に示されるように、ウェーハ処理装置10においては、粗研削ユニット41、仕上研削ユニット42および研磨ユニット43がターンテーブル13の回転方向Aに沿って順番に配置されている。なお、粗研削ユニット41は粗研削砥石(図示しない)によりウェーハ20の裏面22を粗研削し、仕上研削ユニット42は仕上研削砥石(図示しない)により裏面22を仕上研削し、研磨ユニット43は研磨布を備えた研磨ヘッド(図示しない)により裏面22を研磨する。
【0027】
図2(a)および図2(b)はそれぞれ図1に示される吸着パッド洗浄装置の頂面図および側断面図である。これら図面には、チャックテーブル12aが代表して示されているが、他のチャックテーブル12b〜12dも同様の構成である。図2(b)に示されるように、チャックテーブル12aは、凹部を備えた枠体53aと、枠体53aの凹部に嵌込まれて支持される吸着パッド51aとを主に含んでいる。
【0028】
図2(b)に示されるように、吸着パッド51aの吸着面52aは枠体53aの上面と同一平面になっており、吸着パッド51aの下面と枠体53aとの間には隙間55aが形成されている。図2(b)に示されるように、吸着パッド51aはその中心を含む内側領域Z1と、内側領域Z1周りに環状に広がる外側領域Z2とを含んでいる。内側領域Z1の半径は、吸着パッド51aの半径の約50%から90%であるものとする。
【0029】
なお、吸着パッド51aの内側領域Z1および外側領域Z2は多孔質材料、例えば多孔性のアルミナから形成されている。枠体53aは中実材料、例えば緻密なアルミナから形成されている。
【0030】
また、図2(b)に示されるように、中心通路56aが枠体53aの中心から隙間55aまで延びている。中心通路56aは第一真空手段59に接続されており、第一真空手段59が起動すると、吸着パッド51aの吸着面52aに真空が適用されるようになる。
【0031】
図2(b)に示されるように、中心通路56aは、洗浄液を供給する洗浄液供給手段58にも接続されている。後述するように、中心通路56aは洗浄液供給手段58から洗浄液を吸着面52aに供給するときにも使用される。
【0032】
図2(a)および図2(b)においては、吸着パッド洗浄装置18は、吸着パッド51aの内側領域Z1を封止可能に被覆する内側領域被覆部30を含んでいる。図示されるように、内側領域被覆部30は、枠体53aの外形に概ね等しい外形を有する蓋部31と、蓋部31の中心から上方に延びる連結部32を含む。連結部32は吸着パッド洗浄装置18の本体に連結されていて、内側領域被覆部30は所望の位置まで水平方向および鉛直方向に移動される。
【0033】
蓋部31の下面には、枠体53aの上面に載置する複数、例えば三つの脚部33が設けられている。図2(b)に示されるように、脚部33が枠体53aに載置されると、蓋部31と枠体53aとの間には、脚部33の高さに応じた隙間が形成される。なお、脚部33の数は限定されるものではなく脚部33が一つのみであってもよい。しかしながら、そのような場合であっても、蓋部31と枠体53aとの間に隙間が形成されることが必要とされる。
【0034】
さらに、蓋部31の下面には、封止部材35が内側領域Z1と外側領域Z2との間の環状の境界線に沿って延びている。封止部材35は、弾性体、例えばエラストマから形成されている。また、封止部材35は脚部33よりもわずかながら高く形成されている。従って、図2(b)に示されるように脚部33が枠体53aに載置されると、封止部材35は吸着パッド51aの吸着面52aに接触し、封止部材35により囲まれた領域(内側領域Z1に対応する)を外部から封止するようになる。
【0035】
また、封止部材35は弾性体から形成されているので、封止部材35が吸着面52aを損傷させることはない。この目的のために、図2(b)に示されるように封止部材35の断面は三角形であるのが好ましい。
【0036】
以下、図1、図2(a)および図2(b)を参照しつつ、本発明のウェーハ処理装置10の動作について説明する。はじめに、搬送ロボット15によって、カセット11aから一つのウェーハ20が取出されて、チャックテーブル12aまで搬送される。
【0037】
次いで、第一真空手段59を起動させて、チャックテーブル12aの吸着パッド51aに真空が適用される。そして、ウェーハ20はその裏面22が上方を向いた状態でチャックテーブル12aに吸引保持される。次いで、ターンテーブル13がインデックス回転し、チャックテーブル12aは粗研削ユニット41まで移動される。このとき、別のチャックテーブル12dには別のウェーハ20が搬送ロボット15により搬送され、同様な処理が順次行われる。しかしながら、このことは公知であるので説明を省略する。
【0038】
粗研削ユニット41においてはウェーハ20の裏面22が粗研削砥石(図示しない)により公知の手法で粗研削される。次いで、ターンテーブル13がインデックス回転して、チャックテーブル12aは粗研削ユニット41から仕上研削ユニット42まで移動される。仕上研削ユニット42においては、ウェーハ20の裏面22は仕上研削砥石(図示しない)により公知の手法で仕上研削される。
【0039】
次いで、研磨ユニット43においては、研磨布からスラリーを吐出しつつ、ウェーハ20の裏面22に対してウェットポリッシュが行われる。ウェットポリッシュの終了後には、第一真空手段59は停止され、それにより、チャックテーブル12aの保持作用が解除される。そして、搬送ロボット15によってウェーハ20がチャックテーブル12aからカセット11bまで搬送される。
【0040】
前述した一連の工程が終了すると、ターンテーブル13がさらにインデックス回転して、チャックテーブル12aは図1に示される位置まで帰還する。図1に示されるこの位置においては、前述した研削作用および研磨作用により生じたスラッジが隙間Gを通じて吸着パッド51a内に進入し、吸着パッド51aの外側領域に部分的に詰まっている(図10を参照されたい)。
【0041】
本発明においては、新たなウェーハ20が載置される前に、チャックテーブル12aの吸着パッド51aは、第一の実施形態における吸着パッド洗浄装置18によって洗浄される。吸着パッド洗浄装置18による洗浄作用は他の吸着パッド51b〜51dでも同様であるが、以下においては、吸着パッド洗浄装置18による吸着パッド51aの洗浄作用を代表して説明する。
【0042】
吸着パッド51aを洗浄するときには、吸着パッド洗浄装置18を起動して、蓋部31を吸着パッド51a上に位置決めする。これにより、脚部33および封止部材35がそれぞれ枠体53aおよび吸着面52a上に載置され、従って、吸着パッド51aの内側領域Z1が蓋部31により閉鎖されるようになる。その結果、内側領域Z1に対応する吸着面52aと蓋部31との間には空間A1が形成される。
【0043】
次いで、洗浄液供給手段58から洗浄液を中心通路56aに供給する。これにより、洗浄液は吸着パッド51aの隙間55aを通って吸着パッド51aの半径方向に広がり、次いで吸着パッド51aの吸着面52a全体から流出する。前述したように、吸着パッド51aの外側領域Z2にはスラッジが詰まっているものの、そのようなスラッジは外側領域Z2を通過する洗浄液によって吸着面52aから押出され、蓋部31と枠体53aとの間を通って排出される。
【0044】
また、洗浄液の一部は、内側領域Z1において吸着面52aから流出する。しかしながら、蓋部31と吸着面52aとの間の空間A1が蓋部31および封止部材35により閉鎖されているので、空間A1に流出した洗浄液およびスラッジは、空間A1と吸着パッド51aとの間で循環し、最終的には蓋部31と枠体53aとの間を通って排出される。つまり、一旦、空間A1に流出した洗浄液も最終的には吸着パッド51aの外側領域Z2におけるスラッジを排出するのに寄与する。このような構成であるので、本発明においては、吸着パッド51aの外側領域Z2に詰まったスラッジを確実に排出できるのが分かるであろう。
【0045】
図3(a)および図3(b)は本発明の第二の実施形態に基づく吸着パッド洗浄装置のそれぞれ頂面図および側断面図である。これら図面に示されるように、第二の実施形態においては、貫通孔36が封止部材35の内側において蓋部31に形成されている。図3(a)から分かるように、貫通孔36はチャックテーブル12aの中心通路56aから偏心した位置に形成されている。そして、貫通孔36は、気体、例えば不活性ガスを供給する気体供給手段39に接続されている。
【0046】
第二の実施形態および後述する実施形態における吸着パッド洗浄装置18は第一の実施形態の場合と同じタイミングで使用される。このとき、気体が気体供給手段39から空間A1に供給される。なお、このときには、洗浄液供給手段58および第一真空手段59は動作していない。
【0047】
次いで、空間A1内の気体は吸着面52aから吸着パッド51aの内側領域Z1内に進入し、半径方向外側に広がる。そして、気体は外側領域Z2に対応する吸着面52aから流出し、蓋部31と枠体53aとの間を通って排出される。従って、前述した実施形態と同様に、吸着パッドの外側領域に詰まったスラッジを確実に排出できるのが分かるであろう。なお、内側領域被覆部30が吸着面52aに概ね接触していて空間A1が存在しない場合でも、第二の実施形態の内側領域被覆部30を適用することが可能である。
【0048】
また、気体供給手段39に加えて、洗浄液供給手段58を起動してもよい。このような場合には、気体が吸着面52aに吹付けけられるので、洗浄液は内側領域Z1の吸着面52aから空間A1に進入し難くなる。そして、このことによって低下した吸着パッド51aの内側領域Z1に供給される洗浄液の流量は、外側領域Z2に供給される洗浄液の流量に加算される。すなわち吸着パッド51aの外側領域Z2に供給される洗浄液の流量が増すので、吸着パッドの外側領域に詰まったスラッジをより確実に排出できる。
【0049】
さらに、洗浄液供給手段58の駆動時には、洗浄液供給手段58からの洗浄液は吸着面52aの中心部分において最も多量に流出する。この点に関し、図3(a)および図3(b)から分かるように、第二の実施形態においては貫通孔36が中心通路56aから偏心している。このため、洗浄液供給手段58からの洗浄液と気体供給手段39からの気体とが空間A1内で直接的に衝突することはない。このような構成であるので、より効率的にスラッジが排出されるのが分かるであろう。なお、図3(a)および図3(b)においては単一の貫通孔36が示されているが、気体供給手段39に接続された複数の貫通孔36を備える構成であってもよい。
【0050】
図4(a)および図4(b)は本発明の第三の実施形態に基づく吸着パッド洗浄装置のそれぞれ頂面図および側断面図である。第三の実施形態においては、吸着パッド洗浄装置18は吸着パッド51aの外側領域Z2(図2(a)を参照されたい)を封止可能に被覆する外側領域被覆部60を含んでいる。
【0051】
図4(a)および図4(b)に示されるように、外側領域被覆部60は断面L字形状の環状部材62と、この環状部材62に挿入された筒体61とから主に構成されている。筒体61の直径は、前述した吸着パッド51aの内側領域Z1の直径に概ね等しい。図示されるように、これら筒体61および環状部材62の底端面には、弾性体、例えばエラストマから形成された環状の封止部材65、66がそれぞれ取付けられている。
【0052】
図4(b)から分かるように、外側領域被覆部60をチャックテーブル12a上に配置すると、環状部材62の封止部材66が枠体53aの頂面に載置されると共に、筒体61の封止部材65が吸着パッド51aの吸着面52a上に載置される。これにより、吸着パッド51aの外側領域Z2は外側領域被覆部60によって被覆される。そして、筒体61と環状部材62との間には外側領域Z2に対応した環状空間A2が形成される。
【0053】
さらに、図4(a)に示されるように、環状部材62の頂面には複数の貫通孔64が等間隔で周方向に形成されている。図示されるように、貫通孔64は第二真空手段69に接続されており、第二真空手段69が起動すると、筒体61と環状部材62との間の環状空間A2に真空が適用されるようになる。
【0054】
第三の実施形態において吸着パッド51aを洗浄するときには、洗浄液が洗浄液供給手段58から吸着パッド51aに供給されると共に第二真空手段69によって真空が環状空間A2に適用される。なお、第一真空手段59は動作していない。
【0055】
洗浄液供給手段58からの洗浄液は吸着パッド51aの隙間55aを通って吸着パッド51aの半径方向に広がる。次いで、洗浄液は外側領域Z2において吸着面52aから環状空間A2を通って第二真空手段69に吸引される。このように、洗浄液が吸着パッド51aの外側領域Z2を通過するので、前述した実施形態と同様に、吸着パッドの外側領域に詰まったスラッジを確実に排出できるのが分かるであろう。
【0056】
なお、第三の実施形態においては、洗浄液の一部が内側領域Z1における吸着面52aから流出して、筒体61内にわずかながら蓄積するのが好ましい。これにより、内側領域Z1における吸着面52aも洗浄することができる。この目的のために、洗浄液供給手段58による洗浄液の供給作用は、第二真空手段69による洗浄液およびスラッジの吸引作用よりも強力にするのが好ましい。
【0057】
図5(a)および図5(b)は本発明の第四の実施形態に基づく洗浄装置のそれぞれ頂面図および側断面図である。これら図面に示されるように、第四の実施形態は筒体61の底端部に蓋部67が設けられている点において、第三の実施形態とは異なる。このような構成であるので、第四の実施形態においては、内側領域Z1に対応する空間A3が蓋部67と吸着面52aとの間に形成される。図5(b)から分かるように、空間A3の高さは封止部材65の高さに概ね等しい。
【0058】
内側領域Z1における吸着面52aは露出しておらず、また、封止部材65が筒体61の底端部に取付けられているので、蓋部67により形成される閉鎖空間A3はかなり小さい。従って、第二真空手段69による吸引の効果を高められ、その結果、吸着パッド51aの外側領域Z2に詰まったスラッジをより確実に排出することが可能となる。
【0059】
さらに、図6(a)および図6(b)は本発明の第五の実施形態に基づく洗浄装置のそれぞれ頂面図および側断面図である。これら図面に示されるように、第五の実施形態は蓋部67に貫通孔68が形成されていると共に、貫通孔68が気体供給手段39に接続されている点において、第四の実施形態とは異なる。
【0060】
第五の実施形態においては、吸着パッド51aの洗浄時に、気体、例えば不活性ガスが気体供給手段39から空間A3に供給される。これにより、洗浄液供給手段58から空間A3に流出した洗浄液が気体によって吸着パッド51a内部に押戻され、半径方向に広がって環状空間A2を通って吸引される。第五の実施形態においては、吸着パッド51aの内側領域Z1に供給された洗浄液を気体が押出すことにより、吸着パッド51aの外側領域Z2に供給される洗浄液の流量を増加させられる。それゆえ、より効率的にスラッジが排出されるのが分かるであろう。
【0061】
なお、図6(a)および図6(b)においては単一の貫通孔68が示されているが、気体供給手段39に接続された複数の貫通孔68を備える構成であってもよい。また、第五の実施形態において気体供給手段39のみを起動してもよい。この場合には、第二の実施形態と同様な効果が得られる。
【0062】
ところで、前述した第一から第五の実施形態においては、吸着パッド洗浄装置18の内側領域被覆部30または外側領域被覆部60等を準備して、既存のチャックテーブル12a〜12dに単に配置すればよい。言い換えれば、これら第一から第五の実施形態においてはチャックテーブル12a〜12dを新たに作成する必要はなく、従って、製造費用を抑えることが可能となる。
【0063】
ただし、本発明の他の実施形態においては、新たな構成のチャックテーブル12a〜12dを用いて、吸着パッドに詰まったスラッジを排出するようにしてもよい。図7は本発明の他の実施形態に基づくチャックテーブルの側断面図である。図7および後述する図8には、チャックテーブル12aを代表して示しているが、他のチャックテーブル12c〜12dも同様の構成である。
【0064】
図7に示されるチャックテーブル12aの枠体53aはテーブルベース57上に載置されている。テーブルベース57の下面には中心通路70が形成されており、洗浄液供給手段58および第一真空手段59に接続されている。図示されるように、中心通路70は、テーブルベース57内において半径方向外側に延びる複数の外側領域通路71に分岐している。
【0065】
これら外側領域通路71は、吸着パッド51aの外側領域Z2に対応する部分において枠体53aの隙間55aに接続する。図7においては外側領域通路71は吸着パッド51aの外周面近傍まで延びているが、外側領域通路71は外側領域Z2に対応する部分であれば、隙間55aのどの部分に接続されていてもよい。
【0066】
図7に示される実施形態において吸着パッド51aを洗浄するときには、第一真空手段59を停止させつつ、洗浄液供給手段58を起動する。洗浄液供給手段58からの洗浄液は外側領域通路71を通って半径方向外側に流れ、次いで、外側領域Z2における吸着面52aから流出する。さらに、一部の洗浄液は、隙間55aを通って半径方向内側に流れつつ、内側領域Z1における吸着面52aから流出する。
【0067】
本発明の他の実施形態においては、洗浄液を外側領域通路71に通して吸着パッド51aの外側領域Z2に直接的に供給している。従って、図7における矢印の寸法から分かるように、吸着面52aから流出する洗浄液の流量は、吸着パッド51aの外周面近傍で最も大きく、吸着パッド51aの中心付近において最も小さい。このように洗浄液の流量が吸着パッド51aの外側領域Z2おいて最大となるので、吸着パッド51aの外側領域Z2に詰まったスラッジを確実に排出することが可能となる。
【0068】
さらに、図8は本発明のさらに他の実施形態に基づくチャックテーブルの側断面図である。図8に示されるテーブルベース57には、半径方向外側に延びる複数の外側領域通路71に分岐する中心通路70が形成されている。さらに、テーブルベース57には、内側領域Z1に対応する隙間55aに接続する内側領域通路72が、中心通路70に隣接して形成されている。これら中心通路70および内側領域通路72は、洗浄液供給手段58および第一真空手段59の両方に接続されている。
【0069】
図8に示される実施形態において吸着パッド51aを洗浄するときには、第一真空手段59を停止させつつ、洗浄液供給手段58を起動する。洗浄液供給手段58からの洗浄液は中心通路70および外側領域通路71を通って吸着パッド51aの外側領域Z2に供給されると共に、内側領域通路72を通って吸着パッド51aの内側領域Z1に供給される。従って、吸着パッド52aの内側領域Z1に供給される洗浄液の量が不足することはない。それゆえ、スラッジが吸着パッド51aの内側領域Z1に詰まっている場合であっても、そのようなスラッジを排出することが可能になる。
【0070】
また、吸着パッド51aの外側領域Z2に詰まったスラッジを排出するのが困難である場合には、洗浄液供給手段58によって外側領域通路71に供給される洗浄液の流量を内側領域通路72に供給される流量よりも増大させることも可能である。このような構成であるので吸着パッド51aの外側領域Z2に詰まったスラッジを確実に排出できるのが分かるであろう。
【0071】
さらに、図8に示されるように、環状突起75が内側領域Z1と外側領域Z2との間の境界線に沿って延びている。この環状突起75は、吸着パッド51a内部において内側領域Z1と外側領域Z2とを仕切る。図示されるように、環状突起75の先端は吸着パッド51aの吸着面52aよりもわずかながら低い。また、環状突起75は中実材料、例えば緻密なアルミナから形成されている。
【0072】
このような環状突起75が備えられている場合には、吸着パッド51aの外側領域Z2に供給された洗浄液は、内側領域Z1にほとんど流れることなしに、外側領域Z2における吸着面52aから流出する。言い換えれば、この場合には、吸着パッド51aの外側領域Z2における洗浄液の流量が低下することはなく、従って、吸着パッド51aの外側領域Z2に詰まったスラッジをより確実に排出できる。
【0073】
なお、複数の実施形態について説明したが、前述した実施形態のいくつかを適宜組み合わせることは本発明の範囲に含まれる。また、気体供給手段39から気体の代わりに、液体、例えば洗浄液を供給してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第一の実施形態に基づく吸着パッド洗浄装置を含むウェーハ処理装置の頂面図である。
【図2】(a)図1に示される吸着パッド洗浄装置の頂面図である。(b)図1に示される吸着パッド洗浄装置の側断面図である。
【図3】(a)本発明の第二の実施形態に基づく洗浄装置の頂面図である。(b)図3(a)に示される吸着パッド洗浄装置の側断面図である。
【図4】(a)本発明の第三の実施形態に基づく洗浄装置の頂面図である。(b)図4(a)に示される吸着パッド洗浄装置の側断面図である。
【図5】(a)本発明の第四の実施形態に基づく洗浄装置の頂面図である。(b)図5(a)に示される吸着パッド洗浄装置の側断面図である。
【図6】(a)本発明の第五の実施形態に基づく洗浄装置の頂面図である。(b)図6(a)に示される吸着パッド洗浄装置の側断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に基づくチャックテーブルの側断面図である。
【図8】本発明のさらに他の実施形態に基づくチャックテーブルの側断面図である。
【図9】従来技術におけるウェーハ研削装置の略図である。
【図10】従来技術におけるウェーハ研削装置の部分断面図である。
【図11】従来技術における吸着パッドの部分断面図である。
【符号の説明】
【0075】
10 ウェーハ処理装置
11 表面保護フィルム
11a、11b カセット
12a〜12d チャックテーブル
13 ターンテーブル
15 搬送ロボット
18 吸着パッド洗浄装置
20 ウェーハ
30 内側領域被覆部
31 蓋部
32 連結部
33 脚部
35 封止部材
36 貫通孔
39 気体供給手段
41 粗研削ユニット
42 仕上研削ユニット
43 研磨ユニット
51a〜51d 吸着パッド
52a 吸着面
53a 枠体(支持手段)
55a 隙間
56a 中心通路
57 テーブルベース(支持手段)
58 洗浄液供給手段
59 第一真空手段
60 外側領域被覆部
61 筒体
62 環状部材
64 貫通孔
65、66 封止部材
67 蓋部
68 貫通孔
69 第二真空手段
70 中心通路
71 外側領域通路
72 内側領域通路
75 環状突起(仕切手段)
Z1 内側領域
Z2 外側領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材に支持されていて被加工物を吸着する吸着パッドを洗浄する吸着パッド洗浄装置において、
前記吸着パッドの内部から前記吸着パッドの吸着面に向かって洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、
前記吸着面における前記吸着パッドの内側領域を該内側領域周りの外側領域から封止可能に被覆する内側領域被覆部とを具備する、吸着パッド洗浄装置。
【請求項2】
さらに、前記内側領域被覆部から前記吸着パッドの吸着面に向かって気体を供給する気体供給手段とを具備する、請求項1に記載の吸着パッド洗浄装置。
【請求項3】
支持部材に支持されていて被加工物を吸着する吸着パッドを洗浄する吸着パッド洗浄装置において、
前記吸着パッドの内部から前記吸着パッドの吸着面に向かって洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、
前記吸着面における前記吸着パッドの外側領域を該外側領域に囲まれる内側領域から封止可能に被覆する外側領域被覆部と、
前記外側領域被覆部により被覆された前記吸着パッドの前記外側領域に真空を適用する真空手段とを具備する、吸着パッド洗浄装置。
【請求項4】
さらに、前記吸着面における前記吸着パッドの前記内側領域を前記外側領域から封止可能に被覆する内側領域被覆部を具備する、請求項3に記載の吸着パッド洗浄装置。
【請求項5】
支持部材に支持されていて被加工物を吸着する吸着パッドを洗浄する吸着パッド洗浄装置において、
前記吸着面における前記吸着パッドの前記内側領域を該内側領域周りの外側領域から封止可能に被覆する内側領域被覆部と、
前記内側領域被覆部から前記吸着パッドの吸着面に向かって気体を供給する気体供給手段とを具備する、吸着パッド洗浄装置。
【請求項6】
さらに、前記吸着パッドの内部から前記吸着パッドの吸着面に向かって洗浄液を供給する洗浄液供給手段を具備する、請求項5に記載の吸着パッド洗浄装置。
【請求項7】
さらに、前記吸着面における前記吸着パッドの前記外側領域を前記内側領域から封止可能に被覆する外側領域被覆部と、
前記外側領域被覆手段により被覆された前記外側領域に真空を適用する真空手段とを具備する、請求項5または6に記載の吸着パッド洗浄装置。
【請求項8】
被加工物を吸着する吸着パッドと、
該吸着パッドを支持する支持部材と、
該支持部材に形成されていて前記吸着パッドの内側領域周りに位置する外側領域まで延びる外側領域通路と、
洗浄液を前記外側領域通路に通して前記外側領域における前記吸着パッドの吸着面に向かって供給する洗浄液供給手段と、を具備するチャックテーブル。
【請求項9】
さらに、前記支持部材に形成されていて前記吸着パッドの前記内側領域まで延びる内側領域通路を具備し、
前記洗浄液供給手段は、洗浄液を前記外側領域通路および前記内側領域通路に通して前記吸着パッドの吸着面に向かって供給する、請求項8に記載のチャックテーブル。
【請求項10】
さらに、前記吸着パッドの前記外側領域と前記内側領域とを仕切る仕切手段を具備する、請求項9に記載のチャックテーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−114394(P2010−114394A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288175(P2008−288175)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】