説明

吸着フィルタ材料の破断強度及び/若しくは引裂強度を改善する方法、そのための浮糸の使用及びそれによる吸着フィルタ材料

【課題】縦メリヤス編物の破断強度及び/若しくは引裂強度を改善する方法を提供する。
【解決手段】本願発明に係る方法は、複数の縦目、複数の横目及び/若しくは複数の構造的要素からなる縦メリヤス編物において、構造的要素の一部が、それぞれ複数の縦目にわたって延出するように形成され、縦メリヤス編物に破断応力がかかった場合又は引裂力が作用した場合に、それぞれが複数の縦目にわたって延出する構成的要素が、お互いに押されて束となり、結果として改善された破断又は引裂強度を生じるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的毒及び/若しくは兵器薬剤に対する防護機能を有する吸着フィルタ材料に使用される縦メリヤス編物の破断強度及び/若しくは引裂強度を改良若しくは向上させる方法に関する。さらに、本発明は、縦メリヤス編物の破断強度及び/若しくは引裂強度を改善又は向上させるための浮糸の使用に関する。さらにまた、本発明は、裏地として改善された破断強度及び/若しくは引裂強度を有する縦メリヤス編物を基礎として形成される化学的毒及び/若しくは兵器薬剤に対する防護機能を有する吸着フィルタ材料に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚によって吸着され、深刻な肉体的病毒(損傷)を引き起こす一連の物質がある。例えば、そこには糜爛性マスタードガスイエロークロス(Hd)及び神経ガスサリン等の化学兵器物質が含まれる。そのような毒に接触する可能性のある人々は、適当な防護衣服を着用するか、適当な防護材料によってこれらの毒に対して防護されなければならない。
【0003】
適切な防護服は、身体、特に四肢及び胴体を防護するのに適当である。幅広いいろいろな状況下での長期に渡る配備が意図される化学毒に対する防護服は、着用者に対して熱の蓄積を生じてはならない。それ故に、空気透過性材料が主として使用される。一般的に、空気透過性防護服は、長期間にわたって化学毒を吸着する活性炭を具備する吸着層を所有するので、悪く汚染された衣服から発するものにも着用者には危険がないものである。
【0004】
このような防護服は、使用者の動作の自由を損なうことなく、限定された期間、化学的曝露に対して確実に着用者を防護する。そのような防護服における吸着可能材料は、通常活性炭のような球状の吸着剤であり、この球状の吸着剤は例えば接着剤によって、裏地として設けられる編物シート状材料に接着されてシート状形状となる。織布は、従来の防護服製造において編物裏打ち材料として頻繁に使用される。
【0005】
前記防護服のさらなる重要な要求は、防護服の各部又は裏打ち材料として使用される織布の各部における強度である。これは、防護服又は使用される編物シート状材料への損傷が、必然的に化学的毒及び/若しくは兵器薬剤に対する滲入点を生じ、防護服自体が、ちょっとした損傷によってその防護能力が奪われるからである。そのため、編物裏打ち材料は、それから製造される防護服の安定性に関して重要な役割を演じる。この編物裏打ち材料は、高い力学的安定性を所有し、例えば軍事配備において遭遇する種類の破断及び引裂力のようなさらに厳しい力学的負荷に耐えるべきである。
【0006】
吸着剤のための編物裏打ち材料としての単純な編物からなる従来の防護服は、力学的安定性、特にそれらの破断及び/若しくは引裂作用に関する高い要求に合致することができないので、従来の防護服は、極限状態、例えば兵士又は着用者が戦闘状態にあるとき、防護服が、それが引き裂かれるようなストレス下で損傷を受ける可能性があるので、化学毒及び/若しくは兵器薬剤に対する良好な防護を確保できない。
【0007】
同様に、長い着用期間及び付随する即時の洗濯適性の要求に合致する防護服の必要性は、結果として高い力学的強度を所有する編物裏打ち材料の必要性を生じる。
【0008】
NBC兵器のような化学兵器に対する防護のための軍事配備される防護服と同様に、化学産業もまた大量生産において生じるある種の有害ガスに対して防護するために防護服を使用する。この理由に関して、該当する労働者、消防又は防災管理署員は、それらの展開の間、安全を確保するために特別な防護服を装備する必要があった。このような配備の場合、防護服は、一時的に、汚染のリスクを最小限にするための防護機能の損失なしに耐えなければならない極端な物理的及び力学的な圧力に曝される。
【特許文献1】特開2006−21535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この技術的背景に対して、本願発明の目的は、化学的毒及び/若しくは兵器薬剤に対する防護機能を有し、防護服を製造するのに適当であり、上述した従来技術の不利益的を回避し又は改善する吸着フィルタ材料を提供することにある。
【0010】
また、本願発明の目的は、化学的毒及び/若しくは兵器薬剤に対する防護機能を有する吸着フィルタ材料において編物裏打ち材料として使用される縦メリヤス編物の切断強度及び/若しくは引裂強度を改善する方法を提供することにある。
【0011】
また、発明者は、上述した種類の吸着フィルタ材料のための編物裏打ち材料として使用され、複数の主としてループの縦目(網目縦目)、複数のロープの横目(網目横目)及び複数の構造的要素からなる縦メリヤス編物の力学的又は物理的特性、特に破断強度及び/若しくは引裂強度が、縦メリヤス編物の構造的要素が複数の網目縦目に渡って延出するように形成又は配置されることによって十分に改善されることを発見した。このような縦メリヤス編物の場合及び吸着フィルタ材料及びそれで製造される防護服の場合、破断強度又は引裂強度は、従来技術の材料のそれよりも思いがけず明瞭な量、例えば二倍上昇する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、この発明は、本発明の第1の様相として、特に化学的毒及び/若しくは兵器薬剤に対する防護機能を有する吸着フィルタ材料に使用される縦メリヤス編物の破断強度及び/若しくは引裂強度を改善する方法であって、この方法が、複数の網目縦目と、複数の網目横目と、複数の構造的要素を有する縦メリヤス編物を条件とする方法を提供する。本願発明の方法は、縦メリヤス編物の構造的要素の一部、特に浮糸が、複数の縦目にわたって各々延出するように形成され且つ/又は配置されることを特徴とする。本願発明のこの特別な方法は、縦メリヤス編物及びこれで製造された吸着フィルタ材料の破断強度又は引裂強度に関する力学的特徴を十分に改善する。
【0013】
この発明の目的に関して、縦メリヤス編物又は縦編物は、少なくとも縦編みによる複数の糸によって構成されるメリヤスである。メリヤスは、織布と異なり、直角に交差する2つの糸系(「縦糸及び横糸」)からなり、ループ形成作業によって製造される。メリヤス及び縦メリヤス編物の中央要素又は構造的要素は、編み針ループである。編み針ループは、頭部、2つの手足又は脚部及び2つの足部からなる。メリヤス、特に縦メリヤス編物は、縦方向だけでなく幅方向にも、長さ方向の約60%まで延びることができる。その結果、メリヤスは、適合性があり、少しひだが寄る傾向を有し、さらに、その伸縮性は、身体の動作にそれらを適合させることができ、高い且つ快適な着心地を有する。
【0014】
縦メリヤス編物は、お互いに隣接し、織布のように、そこから上端まで編物の全長にわたって延出し且つ左右横方向に編成される複数の糸又はより糸からなるものである。複数の糸を編成し又は互いに噛み合わせる方法は、編物構造として公知である。
【0015】
縦メリヤス編物は、少なくとも一つの糸、より糸又は縦糸系から従来技術によって製造される。個々の糸は、ガイドバーのガイド編み針によってガイドされる。ガイドバーのガイド編み針は、糸又は所定の縦糸となるべきものを、いわゆるラッチ針、ひげ針又は複合針にかけ目する。かけ目した後、編み針ループは、いわゆる編み針バーの織り込みによって全ての編み針に結合して形成され、ループの網目横目を作る。続いて、ガイドバーは、一つ又は複数の編み針の回りの横向きに変位(揺動)される。糸が再び編み針にかけ目され、さらに横目が形成される。ガイドバーの揺動動作は、糸のかけ目の形を決定する。縦メリヤス編物の製造は、当業者にとっては公知であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0016】
糸のかけ目の異なる形状は、縦メリヤス編物に関して多くの構造を生じさせることができる。これらの構造は、それらが構造用として編み針ループによって唯一構成されるとき、ループ構造と呼ばれる。これらのループ又はループ構造は、以下に述べられるように、お互いに結合され且つインレイ、フィラースレッド、ハンドルループ及び浮糸等の他の構造的要素と結合され、縦メリヤス編物に各々場合で所定の且つ特定の特性を与えることができる。縦メリヤス編物の基本的構造は、ピラー、トリコット、コード、サテン、ベルベット及びアトラスを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の具体例について図面により説明する。
【0018】
図1は、網目縦目及び網目横目に配置された複数の編み針ループからなる本願発明の領域において使用される種類の縦メリヤス編物の構造を示した概略説明図である。図1の1−1方向で示される縦方向に走る直線が、いわゆる縦メリヤス編みの網目縦目であり、2−2方向で示される横方向に走る直線がいわゆる縦メリヤス編みの網目横目である。言い換えると、お互いに横方向に隣り合った配置される縦メリヤス編物のループは、そのままで、横筋又は横目を形成すると共に、お互いに上下に配置されたループは、ループの横筋又は横目を形成する。横目及び縦目は、お互いに直角に配置される。縦メリヤス編物のシート状の性質によれば、縦メリヤス編物は、複数の横目及び縦目を具備する。
【0019】
ここで使用される「構造的要素」という言葉は、置くこと又は巻くことという形によって、前記縦メリヤス編物の糸の配置又は形成を示している。この「構造的要素」という言葉は、例えばインレイ、フィラースレッド、ハンドルループ及び浮糸の構造的要素からなる。
【0020】
「破断又は引裂強度」という言葉は、縦メリヤス編物、特に縦メリヤス編物における切断、引裂、切欠等の引裂特性を示していると共に、それらは、例えば防護服が着用されているときに、過度の力学的負荷の結果として生じる。破断又は引裂強度が高ければ高いほど、切断、引裂等の破断を生じるのに必要な力は大きくなる。
【0021】
ここで使用される「延出する」という言葉は、構造的要素の一部若しくは部分を示し、また複数の横目又は少なくとも一つの横目にわたってそのままで自由であり、しっかりと噛み合うことなしに伸びる縦メリヤス編物の構造的要素を示す。言い換えると、構造的要素の一部、いわゆる対応する糸部分、糸、又は構成要素等の一部が、対応する縦目にその延出領域においてしっかりと接続されていないので、この場所において対応する縦目を横切って自由に伸びていることを示す。
【0022】
本願発明によれば、複数の縦目にわたって延出する構造的要素の一部が、例えば編み針ループを形成することによって、延長の自由領域に隣接する縦目の両側で再噛み合いされ又は固定されることが提供される。隣接する縦目は、複数の縦目にわたって延出する構造的要素の開始点及び終端点を構成する。言い換えると、例えば構造的要素が2つの縦目にわたって延出するならば、縦メリヤス編物の合計4つの縦目が、縦目にわたって延出する構造的要素の形成に必要とされる。これは、同様に、隣接する縦目が、開始点又は終端点として、前記構造的要素の形成に必要とされるからである。
【0023】
この原理は、図2に示すように、この場合3つの縦目にわたって延出する構造的要素部1が、それぞれの場合において縦目によって両側が制限され、それぞれの場合で、先の自由構造的要素の糸が、各々の場合でループを形成することを示している。
【0024】
本願発明の方法に関して、複数の縦目にわたって延出する構造的要素は、少なくとも本質的に縦目方向に又は少なくとも本質的に横目に垂直な方向における縦メリヤス編物の破断又は引裂強度を改善する。言い換えると、本願発明の方法によって製造された縦メリヤス編物は、破断又は引裂力が少なくとも本質的に縦目に平行に作用する時、向上された破断強度又は引裂強度を所有する。
【0025】
このように、本願発明の方法は、縦メリヤス編物が破断又は引裂応力に曝されるか又は破断及び引裂応力が縦メリヤス編物に作用する時に、複数の縦目にわたって延出する構造的要素が、お互いに押し合うか束になるような縦メリヤス編物を生じる。この効果は、いわゆる「ケーブル効果」として写実的に記載される。
【0026】
これは、構造的要素の一部、特に浮糸が、それぞれ上述した意味において、複数の縦目にわたって延出する時に、縦メリヤス編物の破断又は引裂強度が十分に向上されることを、出願人が発見した理由である。ある特定の理論に拘束されることなしに、出願人は、破断又は引裂強度の十分な向上が、上述した「ケーブル効果」によるものであり、いわゆる自由延出し破断又は引裂力の作用下、例えば引張荷重下で、複数の縦目にわたって延出する構造的要素の糸又はより糸が、お互いにスライドし、引裂三角形において束になる糸又はより糸を形成することを発見した。この結果として生じるケーブル効果は、より糸又は糸束が、破断力に耐えることができるように形成されるので、決定的に引裂力を打ち消し、破断又は引裂強度において十分な改善をもたらす。
【0027】
複数の縦目にわたってそれぞれが延出する構造的要素は、特に本願発明による浮糸、ハンドルループ及び/若しくはインレイである。本願発明によれば、複数の縦目にわたって延出する構造的要素は、浮糸であることが好ましい。
【0028】
本願発明による構造的要素「ハンドルループ」は、製造の中で一編みループと共に編み針を切り離すことができ、新しい編み針ループの編み針ループ脚部によって結合され且つ保持される糸の弓形である。同様に、ハンドルループは、本発明によれば、編み針ループから延出し、そこで糸が新しいループに対して編み針を打ち落とし、糸が上述した意味においてしっかりとした噛み合いなしに、複数の縦目にわたってそれぞれの場合結合し且つ保持される。
【0029】
本願発明による「インレイ」は、少なくとも本質的に縦目に対して交差する方向、いわゆる横目に平行又は縦目に垂直に、前記編物に挿入され、他の構造的要素によって保持される糸領域である。このインレイは、前記縦メリヤス編物の全幅方向にわたって延出する全インレイであっても、また前記縦メリヤス編物の全幅方向にわたって延出しない部分インレイであっても良い。このインレイは、上述した意味において、いわゆる縦目にしっかりと噛み合うことなしに、複数の縦目にわたってそれぞれ延出する糸領域からなるように、本発明の範囲内において形成される。
【0030】
本発明によれば、複数の縦目にわたって延出する構造的要素は、すでに述べたように、浮糸である。本発明の目的のために、浮糸は、縦メリヤス編物において本願発明の意味において少なくとも一つの縦目にわたって延出し、且つ横目にわたっても延出する限られた糸、限られた糸領域又は糸部分である。本発明によれば、縦メリヤス編物内の浮糸は、編み針ループ、ハンドルループ又はインレイによって限定される。
【0031】
本発明の方法の範囲において使用されるような浮糸は、図3(a),(b)に例示的に且つ写実的に図示される。図3(a)は、浮糸を得るために糸がラップされるラッピングの概略を示している。点の横目は、例えば製造のために使用される縦編み機の編み針の横目を示している。ループ形成作業の間、編み針の回りをガイドされるガイド編み針の通路は、実線によって示されている。点の横目の下方に示される番号0〜5は、前記編み針の間に位置する編み針通路を示している。図3(a)の図面に向かって右側に示される番号は、編み針通路に沿ったガイド編み針の横目を示している。図3(b)は、結果として生じる編み目構造を示している。図3(b)は、縦メリヤス編物の破断及び引裂強度を向上させるために、本願発明によって使用される浮糸の原理を図示する。図3(b)に示される最も上側の横目と最も下側の横目によって、本願発明の具体例に係る浮糸は、3つの縦目にわたって延出し、また一つの横目の上方に延出する。言い換えると一つの浮糸に関して合計で5つの縦目が含まれる。上から2番目の横目に関して、本願発明のさらなる具体例における浮糸は、2つの縦目にわたってのみ延出し、ここでは一つの横目について変位する。しかしながら、これは、本願発明によって純粋に任意のものである。横目に関する任意の変位は、本願発明によって、縦メリヤス編物に、斜めに又は対角線状に延出するような浮糸を使用することが可能となる。同様に、図3(b)は、本願発明の原理を図示する。これによって、破断又は引裂力が現れる場合、縦目にわたって延出する構造的要素又は浮糸は、それらが編み針ループ又は縦目に接着されておらず、上述したケーブル効果によって束になるため、縦メリヤス編物の安定性を生じるものである。安定化効果、いわゆる破断又は引裂強度の向上は、構造的要素又は浮糸によって「ブリッジ」されるいくつかの縦目によって上昇する。
【0032】
本発明によれば、それぞれが複数の縦目にわたって延出する構造的要素、特に浮糸は、少なくとも2つ、特に少なくとも3つ、好ましくは4つ又はそれ以上の縦目にわたって延出するように形成され又は配置される。これが、構造的要素又は浮糸が延出する縦目の数が上昇するので、破断又は引裂強度が上述したように上昇し、縦メリヤス編物の安定性が向上する理由である。本発明によれば、構造的要素又は浮糸が、縦メリヤス編物の5つの縦目にわたって延出することが提供される。
【0033】
各々が複数の縦目にわたって延出する構造的要素又は浮糸が、図3(b)に示されるように、少なくとも一つの横目にわたって延出するように形成され又は配置されることが、本発明より提供される。しかしながら、縦メリヤス編物の突起の平面において、縦目に関する浮糸の少なくとも本質的な平行配置若しくは横目に関する少なくとも本質的な垂直配置を有することが、本発明によれば好ましい。
【0034】
それぞれが複数の縦目にわたって延出する構造的要素、特に浮糸は、他の構造的要素、例えば、編み針ループ、ハンドルループ、インレイ、フィラースレッド等によって制限される。しかしながら、前記構造的要素又は浮糸は、図3(b)で示すように、編み針ループによって横方向に、好ましくは両横方向に制限される。構造的要素を制限し、複数の縦目にわたって延出する構造的要素、特に浮糸は、この点において、これらの自由構造的要素、特に浮糸の開始点及び終端点を構成する。
【0035】
言い換えると、本発明によれば、それぞれが複数の縦目にわたって延出する構造的要素、特に浮糸が、糸又は自由である糸領域又は糸部によって形成され、且つ/又は連続し、且つ/又は織り交ざることなしに縦メリヤス編物の表面にわたって通されることを提供する。また、本発明によれば、糸の部分又は糸の一部として同義語的に参照される糸領域が、いわゆる縦メリヤス編物にわたって自由に浮いている糸の部分を構成する。自由糸領域を形成しない糸の部分は、縦メリヤス編物において、例えば上述したようなさらなる構造的要素によって、前記縦メリヤス編物に接続される。
【0036】
本発明によれば、それぞれが複数の縦目にわたって延出する構造的要素、特に浮糸を形成する糸は、特に上述したように、例えば縦メリヤス編物の編み針ループを形成することによって、前記縦メリヤス編物の必須の構成要素であることを提供する。また、前記糸が、例えばインレイの形で、独立した又は自立した糸として前記縦メリヤス編物に導入されることも提供する。
【0037】
それぞれが複数の縦目にわたって延出する構造的要素、特に浮糸は、本願発明によれば、前記縦メリヤス編物の材料と同じ材料から形成されることが望ましい。しかしながら、前記構造的要素、特に浮糸が縦メリヤス編物の材料とは別の材料によって形成されることも可能である。例えば、複数の縦目にわたって延出する構造的要素、特に浮糸は、コットン、ポリエステル、ポリアミド又はそれらの混合物からなるか、それらを具備するものでもよい。前記糸は、フラット又は加工されたものであり、加工されたものは、当業者にとって公知である化学的又は物理学的方法を用いることで達成されるものである。
【0038】
本願発明によって製造された縦メリヤス編物の破断又は引裂強度が、付加的な方法、例えば複数の縦目にわたってそれぞれが延出する構図的要素又は浮糸を形成するために特定の糸、20〜160dtexの範囲内、特に40〜140dtexの範囲内、好ましくは60〜120dtexの範囲内、より好ましくは80〜100dtexの範囲内の線密度を有する糸を使用することによって改善又は上昇される。さらに、高い糸強度、特に破断時の高い伸張性を有する糸を使用することが可能である。さらに、高い弾性力を有する糸を使用することができる。縦メリヤス編物の破断又は引裂作用が、織布又は縦メリヤス編物の他の因子又は特色によって付加的に影響を受けることを、本発明者は発見した。例えば、縦メリヤス編物の構造が、引裂抵抗上の効果を有するだけでなく、縦メリヤス編物及び糸構造の完成品が同様に引裂抵抗を変化させる。単位寸法当たりの糸の数が多くなればなるほど、又は糸の良くなればなるほど、引裂強度を減じられる。糸の種類(例えば、スフ糸)及び糸撚りの強さでさえ引裂作用に影響を与える。
【0039】
以上のような縦メリヤス編物は、本願発明によって、所望の縦メリヤス編物となる。本願発明によれば、縦メリヤス編物が、限定されない方法において、変更されたピラー、トリコット、コード、サテン、ベルベット又はそれらの結合物による編み模様を有することが好ましい。有用な結合物の例としては、浮糸若しくはインレイを有するピラー又はアトラス若しくはロックニット縦編みがある。
【0040】
一般的に、糸の特定の敷設又はラッピングは、それらが構造的要素「編み針ループ」からだけで構成されるので、編み針ループ構造としても知られている非常に多くの縦メリヤス構造を製造する。これらの編み針ループ構造は、お互いに且つ他の構造的要素(例えば、インレイ、フィラースレッド、ハンドルループ、浮糸)と結合されることが好ましい。
【0041】
ピラーステッチは、横接続なしの縦目からなる縦編みである。ピラーステッチにおける横接続は、インレイ、浮糸等によって行われる。それは、単に織布を製造する他の構造的要素と前記縦目との結合である。いわゆる「トリコット縦編み」は、本願発明によって、ピラーラッピングのいわゆるアンダーラップが一つの編み針部分によって延ばされるときに得られる。言い換えると、相互に隣接する縦目が、いわゆるジグザグ形状にお互いに接続される。トリコット縦編みは、ショートラップ及びオープン構造により長さ方向及び幅方向に伸張性がある。コード縦編みの場合、それぞれのループ形成縦糸は、一つの縦目をスキップし、一つの縦目を越えて延出する。いわゆる「サテン」縦編みの場合、構造的要素の一部は、2つの縦目にわたって延出する。これらの結合特性は、「サテン」ラッピングに高い横方向の強度を与える。「ベルベット」縦編みは、構造的要素の一部が3つの縦目にわたって延出するように構成される。
【0042】
本願発明の目的にために使用される縦メリヤス編物の上述した例は、純粋に実証的であり、非限定的である。これは、本願発明が、例えば浮糸の方法で複数の縦目にわたって本願発明の意味においてそれぞれが延出する構造的要素を形成するために使用される多くの書類の縦編みを利用することができる理由である。また、これは、ピラー及びサテンの結合により長さ方向及び垂直方向において安定した構造を具備するいわゆる「ピラー/サテン」ラッピングを有する。
【0043】
本発明によれば、縦編みは、オープン及び/若しくはクローズドループを基礎とする縦編みである。使用される縦編みは、例えば、平編み、ゴム編み、又はガータ編み構造である。平編み構造は、一方の側に裏ループを、他方の側に表ループを有する。裏ループ側は、互いに噛み合う下側の点で、ロープ足部が前のループの頭部の上方に、ループ脚部が前のループの頭部の下方にあることを特徴とする。これに対して、表ループ側は、互いに噛み合う下側の点で、ロープ足部が前のループの頭部の下方に、ループ脚部が前のループの頭部の上方にあることを特徴とする。
ゴム編み構造は、編物の両側に表ループを有すると共に、ガータ編み構造は、主に編物の両側に裏ループを有する。
【0044】
縦メリヤス編物は、25〜500g/mの範囲内、特に50〜300g/mの範囲内、好ましくは75〜200g/mの範囲内の単位面積重量を有することが望ましい。当業者は、特定の要求に対して、常に最適な単位面積重量を採用することができる。
【0045】
本願発明の方法は、縦メリヤス編物の破断強度又は引裂強度において十分な向上を提供する。本願発明の方法によって製造され、構造的要素の一部、特に浮糸がそれぞれ例えば2つの縦目にわたって延出する縦メリヤス編物の破断強度又は引裂強度は、構造的要素がそれぞれ一つの縦目にわたって延出する縦メリヤス編物と比較して、少なくとも1.1倍、特には1.3倍、好ましくは1.5倍以上である。さらに、本発明の方法によれば、構造的要素の一部、特に浮糸がそれぞれ3つの縦目にわたって延出する本発明の方法によって製造された縦メリヤス編物の破断強度又は引裂強度は、構造的要素がそれぞれ一つの縦目にわたって延出する縦メリヤス編物と比較して、少なくとも1.6倍、特には少なくとも1.8倍、好ましくは2.0倍以上である。
【0046】
吸着フィルタ材料を構成するために、特に吸着材を有する縦メリヤス編物を提供するために、縦メリヤス編物は、化学的毒及び兵器薬剤のための吸着材を確保することを目的として、接着剤、特に非連続的に、好ましくはドット状に塗布された接着剤を付加的に具備する。塗布される接着剤の量は、100g/mより少なく、特には80g/mより少なく、好ましくは70g/mより少なく、より好ましくは60g/mより少ないことが望ましい。それは、一般的に10g/m〜100g/mの間であり、特には20〜80g/mの間であり、好ましくは塗布される接着剤用量は、約50g/mであることが望ましい。接着剤は、例えば、一定のパターン又はグリッド状に、例えば25メッシュ(113dots/cm)〜40メッシュ(289dots/cm)の点密度で塗布されることが望ましい。例えば、厚く形成されたポリマー分散、ホットメルト接着剤又は他の反応性接着剤、特にポリウレタンベースの一つ又は2液系、例えばジ又は多官能化アミン又はアルコールを介して架橋されたブロックトプレポリマージイソシアネートが使用される。本発明の目的のために使用される接着剤は、例えば硬化状態において通気性がある接着剤であり、例えばポリオレフィンベースの接着剤である。接着剤は、例えばロータリプリントによって編物の裏地に適用されることが望ましい。接着剤は、縦目にわたって延出する構造的要素が、自由に浮き、破断応力下において束になるというそれらの能力にはっきりと影響しないように適用されるべきである。
【0047】
本発明による吸着フィルタ材料を構成するために、縦メリヤス編物は、付加的に化学的毒又は兵器薬剤のための吸着剤、特に活性炭に基づく吸着剤を具備することが望ましい。吸着剤は、特に上述したような接着剤、特に非連続的及び好ましくはドット状に適用された接着剤を使用することによって前記縦メリヤス編物に固定される。
【0048】
有効な吸着能力のために、編物の少なくとも50%、特には少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%に、毒及び/若しくは兵器薬剤のための吸着剤、特に活性炭を有することが望ましい。毒及び/若しくは兵器薬剤のための吸着剤は、吸着されるべき毒及び/若しくは兵器薬剤に対して、少なくとも50%、特には少なくとも60%、好ましくは70%が自由に接触可能であることが好ましい。言い換えると、接着剤に完全に押し込まれるべきではない。
【0049】
毒及び/若しくは兵器薬剤のための吸着剤として使用される活性炭は、例えば、好ましくは細粒形状(粒状カーボン)又は球形形状(球状カーボン)の活性炭の独立した粒子からなることが好ましい。この場合、活性炭粒子の平均直径は、特に1.0mmより小さく、好ましくは0.8mmより小さく、より好ましくは0.6mmより小さいものであり、一般的に少なくとも0.1mmである。この具体例によれば、活性炭粒子は、5〜500g/mの範囲内、特には10〜400g/mの範囲内、好ましくは20〜300g/mの範囲内、より好ましくは25〜250g/mの範囲内、さらに好ましくは50〜150g/mの範囲内、最も好ましくは50〜100g/mの範囲内である充填量において、前記縦メリヤス編物に適用されることが好ましい。適当な活性炭粒子は、少なくとも800m/g、特には少なくとも900m/g、より好ましくは少なくとも1000m/g、好ましくは800〜2500m/gの範囲内の内側面積(BET)を有することが好ましい。粒状カーボン、特に球状カーボンは、耐摩耗特性に関して非常に重要である大きな耐摩耗性を有し且つたいへん強いという決定的な利点を有する。活性炭の個々の粒子、特に細粒又は小球は、少なくとも5ニュートン、特には10ニュートンから20ニュートンまでの破裂圧力を有することが好ましい。
【0050】
別の具体例において、縦メリヤス編物は、特に活性炭繊維織物の形の活性炭繊維を有することが好ましい。活性炭織布は、例えば10〜300g/mの範囲内、特に20〜200g/mの範囲内、好ましくは30〜150g/mの範囲内の単位面積重量を有することが好ましい。活性炭繊維織物は、例えば活性炭繊維の織布、メリヤス、レイドファブリック、混成ファブリックであり、特に炭化され活性化されたセルロースに基づく又は炭化され活性化されたアクリロニトリルに基づく活性炭繊維織物である。活性炭繊維織物は、縦メリヤス編物の破断又は引裂強度を付加的に向上させるように形成されることが好ましい。例えば、特に横目の長さ方向の破断又は引裂強度を安定化させることが提供される。
【0051】
吸着効果又は性能を向上させるために、吸着剤、特に活性炭に、当業者にとって公知の方法で、少なくとも一つの触媒を具備させ又含浸させることが可能である。本発明の目的のために使用される触媒は、たとえb、酵素及び/若しくは金属、好ましくは銅、銀、カドミウム、プラチナ、パラジウム、ロジウム、亜鉛及び/若しくは水銀、特にそれらのイオン及び/若しくは塩である。触媒の量は、広い範囲で変えることが可能であるが、一般的に、吸着剤の重量に対して、0.05重量%〜12重量%の範囲内、好ましくは1重量%〜10重量%の範囲内、より好ましくは2重量%〜8重量%の範囲内である。触媒の付加的な使用は、活性炭の負荷の一部を担う。
【0052】
化学的毒及び/若しくは兵器薬剤に対する吸着剤、特に活性炭に基づく材料は、空気透過性織物材料、特にカバー層としてのバット芯材、ランダムバット芯材の形の織布で、縦メリヤス編物から離れた側に設けられ、又は離れた側を覆うことが、本発明によって提供される。バット芯材、好ましくはランダムバット芯材は、縦メリヤス編物の縦目の方向に向いているので、縦メリヤス編物の破断強度又は引裂強度は、少なくとも本質的に横目方法において、及び/若しくは少なくとも本質的に縦目方向に垂直な方向において、付加的に改善される。これによって、縦目方向のバット芯材の指向性は、破断強度においてさらなる改善を生じ、且つ縦目の長さ方向において、上述した方法から結果として生じる向上された破断若しくは引裂強度を補うものである。指向性のあるバット芯材と本発明の方法によって製造された縦メリヤス編物の間の相乗作用によって、極端に高い破断若しくは引裂強度が、本発明に係る吸着フィルタ材料にとって、総合的に達成される。
【0053】
吸着材を有し、さらにカバーリング織布、特にバット芯材を有する縦メリヤス編物の外層によって、サンドイッチ構造又は合成物は、いわば吸着フィルタ材料となり、例えば防護服に加工される。
【0054】
図4は、本願発明の吸着フィルタ材料1の構造を示すものであり、合成物2として形成されることが好ましい。この例において、縦メリヤス編物3は、小球形状の活性炭粒子4が適用される非連続の好ましくはドット状の接着剤5を付加的に有する。本発明の吸着フィルタ材料1は、さらに、縦メリヤス編物から離れた側の吸着剤4の側面に、カバー層としての例えばバット芯材からなる空気透過織物材料6を具備する。
【0055】
吸着剤のカバー材料として働く空気透過織物材料は、バット芯材だけでなく、織布、ループ形成メリヤス、ループ引きメリヤス、レイドファブリック、接着織布又は他の不織布であっても良いものである。カバー層として使用される空気透過織物材料は、前記メリヤス編物よりも低い単位面積重量を有し、例えば、5〜75g/mの範囲内の単位面積重量、特に10〜50g/mの範囲内の単位面積重量、好ましくは15〜30g/mの範囲内の単位面積重量を有する。
【0056】
特に、本願発明は、特に化学的毒及び/若しくは兵器薬剤に対する防護機能を有する吸着フィルタ材料における使用される縦メリヤス編物の破断強度若しくは引裂強度を改善する上述した方法に関し、複数の縦目、複数の横目及び複数の構造的要素を有する縦メリヤス編物を提供することからなり、構造的要素の一部が、浮糸として形成され、これら浮糸の少なくとも一部が、浮糸のそれぞれが複数の縦目、特に少なくとも2つの縦目にわたって延出するように形成される方法に関する。
【0057】
さらに本発明は、本発明の第2の様相において、特に化学的毒及び/若しくは兵器薬剤に対する防護機能を有する吸着フィルタ材料に使用されるための、複数の縦目及び複数の横目を具備する縦メリヤス編物の破断強度若しくは引裂強度を改善する浮糸の使用を提供する。本発明の浮糸の使用は、浮糸の少なくとも一部が、それぞれ少なくとも複数の、特に少なくとも2つの縦目にわたって延出するように形成され及び/若しくは配置されることを特徴とする。本発明に係る使用に関するさらになる詳細及び所見について、ここでは、本願発明の方法に関する上記所見を参照し、適当な変更を加えて適用する。
【0058】
本願発明は、本発明の第3の様相において、化学的毒及び/若しくは兵器薬剤、特にNBC兵器薬剤に対する防護機能を有し、シート状、特に二次元織物裏打ち材料を具備する吸着フィルタ材料を提供する。また前記織物裏打ち材料は、化学的毒及び/若しくは兵器薬剤、特にNBC兵器薬剤に対する吸着剤、特に活性炭ベースの吸着剤を有する。前記織物裏打ち材料が、縦メリヤス編物として形成され、縦メリヤス編物が、破断強度又は引裂強度を改善するために、複数の縦目、複数の横目及び/若しくは複数の構造的要素を具備することは、本発明に係る吸着フィルタ材料の特色である。
【0059】
構造的要素の一部がそれぞれ複数の縦目にわたって延出するように形成され又は配置されることが、本願発明によって提供されるので、縦メリヤス編物の破断強度又は引裂強度は、少なくとも本質的に縦目の方向において、又は少なくとも本質的に横目に垂直な方向において改善される。特に、縦メリヤス編物に破断応力がかかった場合、又は破断力が作用した場合、それぞれが複数の縦目にわたって延出する構造的要素、特に浮糸がお互いに押し合い又は束となるので、実質的な安定化が、上述した「ケーブル効果」によって、結果として生じるものである。
【0060】
本願発見栄の係る好ましい例において、複数の縦目にわたって延出する構造的要素は、浮糸、ハンドルループ及び/若しくはインレイである。それらは、本願発明によれば浮糸であることが好ましい。
【0061】
本願発明によれば、複数の縦糸にわたって延出する前記構造的要素、特に浮糸が、少なくとも2つ、特には少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つ、又はそれ以上の縦目に延出することが好ましい。
【0062】
本願発明による吸着フィルタ材料に関するさらなる詳細及び所見について、必要な変更を加えた本願発明の方法に関する上記所見を参照してもらいたい。
【0063】
本願発明に係る吸着フィルタ材料の空気透過性は、DIN53887で計測した場合、一秒当たり200リットル/m以上、好ましくは300リットル/m以上、より好ましくは400リットル/m以上、更に好ましくは600リットル/m以上、最も好ましくは800リットル/m以上であるべきである。高い空気透過性は、高い着心地性を確保するために有益である。
【0064】
同様に、本願発明に係る吸着フィルタ材料の水蒸気透過性は、高い着心地性を生じる。この高い着心地性を確保するために、本願発明の吸着フィルタ材料は、25℃で、24時間当たり少なくとも15リットル/m、特に24時間当たり少なくとも20リットル/m、好ましくは24時間当たり少なくとも25リットル/m、より好ましくは24時間当たり少なくとも30リットル/m、又はそれ以上の水蒸気透過度を有することが好ましい(25℃でのSATM E96の「インバーティドカップ法」による)(水蒸気透過度[WVTR]の測定に関するさらなる詳細については、McCullough et al.「繊維の水蒸気浸透性を測定するための標準方法の比較」[測定科学及び技術]14,1402−1408,2003年8月を参照)。この結果として、発汗が効果的に排除されるので、高い着心地性が確保される。
【0065】
高い着心地性を確保するために、本願発明の吸着フィルタ材料は、1994年2月のDIN EN 31 092:1993(「織物−生理学的効果、定常条件下における熱及び/若しくは水蒸気透過抵抗の測定(発汗保護-ホットプレートテスト)」)によって、又は同等の国際規格ISO11092によって、35℃で測定された約20(m2・pascal)/watt、特には約15(m2・pascal)/watt、好ましくは10(m2・pascal)/watt、より好ましくは5(m2・pascal)/wattの水蒸気透過抵抗RTを有する。
【0066】
このように、本願発明の吸着フィルタ材料の特別な形成は、本願発明に係る吸着フィルタ材料が気体状の毒又は有害物質の通過を防止し、又は少なくとも遅らせるので、高い着心地性と同様に、毒及び有害物質に対する優れた防護機能を確保する。さらに、力学的安定性、特に破断強度若しくは引裂強度を十分に改善する。
【0067】
高い着心地性と、毒性又は有害物質に対する良好な防護効果とを結合した本願発明の吸着フィルタ材料は、化学兵器薬剤、特にビス[2−クロロエチル]硫化物(同義語的に、マスタードガス、Hd、イエロークロスとして知られている)に関して、CRDEC−SP−84010、方法2.2によって測定された24時間当たり4μg/cm以下、特には24時間当たり3.5μg/cm以下、好ましくは24時間当たり3.0μg/cm以下、より好ましくは24時間当たり2.5μg/cm以下の通過を許容する浸透抵抗を提供する。これは、有毒又は兵器薬剤に対する極端に高い防護機能を達成させる。
【0068】
また、本願発明の吸着フィルタ材料は、極端に高い破断又は引裂強度を所有することに大きな利点を有し、これによって、高い応力、特に力学的応力に耐えることができるので、軍事配備に使用される例えば防護服等に使用されるのに適している。さらに、本願発明の吸着材料は、空気透過性材料として形成されるので、化学毒及び/若しくは兵器薬剤に対する高い防護性能及び力学的安定性と共に、高い着心地性を達成するので、特に極端な物理的応力下における軍事配備において相当の利点を有する。
【0069】
本願発明のさらなる利点、詳細、改良、変形及び/若しくは特性は、本発明の領域から外れることなしにこの明細書を読み込んだ後当業者によってはっきりとされ且つ認識されると思われる。
【0070】
本発明に係る方法の利点、本発明に係る使用の利点、及び本発明に係る吸着フィルタ材料の利点は、下記する実施例を参照することで説明される。
【実施例】
【0071】
本発明の利点、特に破断又は引裂強度の十分な改善は、引裂試験、引裂貫通テスト及び/若しくは破裂試験を利用することによって示される。引裂試験は、例えば織物シートを作成する過程において、切り込みの引裂作用を査定することで実行される。それらは、工業的織物だけでなく、衣類の使用に関しても、特に重要である。この引裂試験において、軸方向の引っ張り応力が、切り込みの縁に加えられる時の切り込みの抵抗が測定される。
【0072】
一般的に、吸着フィルタ材料又は縦メリヤス編物は、製造のために発売される前に、種々のテストに合格する必要がある。後の負荷に関する同様な模擬試験は、意味のあるテスト結果を得るために重要である。本願発明の特性、特に高い破断又は引裂強度は、種々の実験的方法を使用して測定される。これらの方法を、下記に簡単に説明する。
【0073】
DIN EN ISO 13937−2:2000によるズボン型テスト試料の引裂力の測定(単純引裂法)
【0074】
ズボン型試料引裂テストは、主に織布の場合に使用される。しかし、それは、切り込みが実質的に糸に沿った力方向に直線状に広がる他の一つ又は複数積層され、本願発明によって使用される縦メリヤス編物又は本願発明のよる吸着フィルタ材料を有する場合の織布において実行される。
【0075】
切り込みは、2つの脚部を形成する直角テスト試料の狭い縁部に形成される。前記脚部は、記録手段を有する伸張引張試験機の一定の割合の掴み具に、2つの脚部の切り込みの縁が直線を形成するようにクランプされる。それから、それらは、切り込みがテスト試料にわたって広がるように前記切り込みの方向に別個に引っ張られる。引裂力は、所定の引裂跡にわたって記録される。前記引裂力は、記録された線図の力のスパイク値から測定されるか、コンピュータによって測定される。統計学的な音値を測定するために、2セットの試料、特に縦目の方向(同義語的に「縦糸方向」又は「縦糸」として示される)において1セット、横目の方向(同義語的に「横糸方向」又は「横糸」として示される)においてもう1セットが、それぞれのサンプルから取られる。表2において報告される値は、個々の試料に関してそれぞれの場合において測定された引裂力の値の平均値である。引裂力は、ニュートンの単位において、「縦糸方向」及び「横糸方向」によって別々に報告される。
【0076】
尚、下記する測定された結果について、「縦糸」又は縦目の糸が破断されるときに、これは「縦糸に垂直な」又は「縦目の垂直な」引裂力として示される。これに対応して、「横糸」又は横目の糸が破断されるときには、これは「横糸に垂直な」又は「横目に垂直な」ものとして示される。
【0077】
DIN EN ISO13937−1:2000による弾道振子法(エルメンドルフ)を使用する引裂力の測定
【0078】
この方法は、最初は樹脂加工綿織物の脆化をテストするために特に発展したものである。引裂テスト法と対比して、この方法は、引裂力ではなく、引裂貫通力として、「予め作られた切り込みに織布を引き裂くために要求される力学的負荷を測定する。
【0079】
織布に予め作られた切り込みを広げるために要求される力は、所定の引裂跡にわたる織布の引裂力に含まれるエネルギーを測定することによって決定される。試験機は、同一平面に位置する掴み具を備えた振子と、振子が最大位置エネルギーの引き上げられた開始点にある時に固定される掴み具とを有する。テスト試料は、2つの掴み具の間にクランプされ、切り込みが入れられる。引き上げられた振子が離され、測定されるサンプルは、可動掴み具が固定掴み具から離れて移動する時に引き裂かれる。この引裂力が測定される。
【0080】
特に、この方法は、下記するように実行される。取られたサンプルは、上述したようになされる。テストされるサンプルは、ひだ、しわ、縁又は織布について典型的部分でない流域を有してはならない。落下する振子具が、テストを実行するために使用される。落下する振子具は、堅固なフレーム、振子、第1の揺れの最も大きな振子揺れのための振子力学的又は電気的表示手段、可動可能であり振子の一部である掴み具、前記フレームの一部である固定掴み具を具備し、さらに2つの掴み具の間のテスト試料に20±0.5mmの深さの切り込みを作ることのできる鋭い刃を具備する。前記装置は、さらに、打ち抜き器又はステンシルのようなテスト試料を切り離すための手段を具備する。縦メリヤス編物又は吸着フィルタ材料は、そこから2セットの試料、「縦糸方向」又は縦目方向における1セット及び「横糸方向」又は横目方向におけるもう1セットが取られる。テスト試料の短い側は、切りさき方向が切り込みの反対側のノッチに走るように、正確に「縦糸方向」若しくは「横糸方向」に平行に、又は縦目方向若しくは横目方向に平行に配置される。テスト試料は、織物の端から少なくとも150mmの距離をとる必要がある。テスト試料は、前記2つの掴み具の間に保持される。可動可能な掴み具は自由落下する振子に固定される。テスト試料は、振子をこする音なしに引き裂かれなければならない。テストは、最初に、読み込みがそれぞれの測定範囲の15%〜85%の間であるように振子の質量を選択することによって実行される。振子具のゼロ設定が、チェックされなければならない。振子は開始点に持ち上げられる。試料は、その長手方向の縁が、上側掴み具の縁に平行となるように掴み具に導入される。それは、中央部分でクランプされ、テスト試料の下側縁は、下側の掴み具の端部に対して注意深く直線となるように配置される。テスト試料は、43±0.5mmの引裂ニットを残すように、20±0.5mmの深さにノッチの反対側で、前記刃で切り込みが入れられる。前記振子は、振子停止器を押し下げることによって離される。その戻り振れにおいて、振子は、その指針位置が変化しないように停止される。ニュートン単位の引裂力は、最も近いスケール目盛を測定手段又はディジタル表示で読み取られる。その結果が、使用される測定範囲の15%〜85%の間に実際にあるか否かをチェックする。そのテストは、各々の方法について複数のテスト試料で繰り返される。切り込みが力方向に広がったかどうか、糸が織布から引き出される代わりに破断したかどうかが、観察される必要がある。測定は、a)織布から引き出された糸がない場合、b)掴み具において滑りが生じていない場合、c)テスト試料が引き裂かれ且つ15mm幅のノッチの領域において引き裂かれた場合に、有効である。他の測定は、放棄される。
【0081】
弾道振子は、試料を引き裂くために必要とされるエネルギーの直接的な測定を提供する。理想的にニュートン単位によって直接的に読み込むことができる試料を引き裂くために必要とされるエネルギーを報告することが一般的に好ましい。
【0082】
DIN EN ISO 13938−2:1999による破裂圧力及び破裂膨張について測定する圧気法
【0083】
パラシュート織物と同様に、工業的領域において使用され、膨張応力による又は破裂圧力原理による近い用途及び用途特定試験を受けるべきである多くの他の織物がある。破裂テストが、メリヤス編物に使用され、ほとんど排他的にそれらの強度を測定するという事実は、多くの他のテスト方法が失敗する理由である。
【0084】
破裂強度を測定する圧気法の原理は、テスト試料が、環状クランプリングを使用して伸張巻くにわたってしっかりと伸びることである。テスト試料から離れて面する側面は、膜及び織布を膨張させるために、それに加えられる連続的に上昇する空気圧を有する。圧力はテスト試料が破裂するまで、一定の割合で上げられる。破裂圧力及び破裂膨張が測定される。
【0085】
特に、この方法は、第1にテスト試料をテスト以前の標準状態に対して、ゆるんだ状態に釣り合わせることによって実行される。その器具は、50cmのテスト領域にセットされる。テスト器具のコントロールバルブは、平均破裂時間が20±5秒以内となるように調節される。破裂時間は、膨張の開始とテスト試料の破裂の間の時間差である。テスト試料は、膜上に、前引っ張りなしに且つ変形なしに平らに配置される。テスト試料は、テスト中にそれがスリップしないように円形ホルダにしっかりとクランプされ、それがその場所にクランプされると共にテスト試料への損傷を避けるように注意を払う必要がある。膨張測定装置は、測定位置にもたらされ、ゼロ設定がなされる。安全カバーが前記器具要求によって固定される。圧力は、織布が破裂するまでテスト試料に加えられる。破裂測定圧及び破裂高さが記録される。掴み具の縁に近接するテスト試料の破裂が注目され、クランプラインの2mm以内でのクランプの破損は、排除される。このテストは、織布の異なる場所で数回繰り返される。
【0086】
膜修正を行うために、テスト試料なしの膜が、テスト試料の平均破裂高さと等しい量で膨張されると共に、同一テスト領域において維持され、上記テストと同じようにコントロールバルブが設定される。この膜膨張時の圧力が、「膜圧」として示される。
【0087】
その結果は、KPa単位での破裂測定圧力の相加平均値を演算することによって算定され且つ報告される。KPa単位の膜圧は、それから減算される。その結果が、破裂圧力となる。
【0088】
結果
【0089】
引裂強度に関して得られるそれに続く結果は、上述した方法を使用する種々の試料に関して実行される。以下に示される表1及び2において報告される実験による列は、引裂強度の織布構造の影響を測定するように意図された。それらの構造において異なるラッピング動作によって相違する4つのポリエステル縦メリヤスが、この目的のために、単純な引裂でのズボン型試料の引裂テスト、例えば破裂圧力及び破裂膨張の測定に関する弾道振子(エルメンドルフ)及び振子法を使用して調整される。4つのポリエステル縦メリヤスの間の重量差異は、それらの異なる構造による。テストされる試料は、ポリエステル縦メリヤスに基づく織物(裏打ち)材料からなる。それらは、「インレイ」の長さ、又は複数の縦目にわたって延出する構造的要素の形成若しくは長さによって構造的に相違する。したがって、構造的要素が延出する縦目の数は、特にテスト試料Ia,Ib,II及びIII(表1)において異なっている。この「インレイ」の異なる形成は、ガイドバー2の設定(試料I:10/23=かなり短いラッピング(1縦目にわたる延出、「コード」);試料II:10/34=すこし長いラッピング(2縦目にわたる延出、「サテン」);試料III:10/45=長いラッピング(3縦目にわたる延出、「ベルベット」)によって、縦メリヤス編物の製造に起因する。試料Ia及びIb(「コード」)は、単位面積重量において異なっている。
【0090】
表1は、調査される試料−いわゆる縦メリヤス編物(試料A:機おろしのままの材料)、接着剤を有し活性炭が担持する所定の外層を有する縦メリヤス編物(試料B:中間材料)及び接着剤、活性炭及び芯材を有する付加的な外層を有する縦メリヤス編物(試料C:製品化された材料)を明細に記す。
【0091】
【表1】

【0092】
表2は、上述した方法を使用して、試料の破断又は引裂作用に関して得られた結果を示す。特に縦目「横糸に垂直」方向おいて、言い換えると縦目に沿った若しくは横糸方向に垂直な破断又は引裂強度が、十分に向上されることは、機おろし材料(試料A)に関して明白な証拠である。しかし、そのような効果は、中間材料(試料B)に関しても注目すべきである。製品材料(試料C)に関して、横目「縦糸に垂直」方向、言い換えると横目に沿った若しくは「縦糸方向」に垂直な破断若しくは引裂強度の十分な向上があり、付加的な芯材による製品材料の付加的な安定化を指摘する。
【0093】
【表2】

【0094】
表2に報告される値は、テスト試料の引裂、さらに引裂貫通及び破裂のそれぞれのテストの過程において測定された最も高い負荷である。
【0095】
いずれか一つの方法に制限されることなしに、改善された破断若しくは引裂強度が、下記のように説明される。本発明の方法によって使用される縦メリヤスにおいて、例えば引張荷重(例えば、ズボン型試料の引裂テストにおいて)を受ける個々のより糸若しくは糸が、糸束(「ケーブル効果」)を形成するために、引裂三角形に置き換えられる。ケーブル効果は、引裂に対して明白に作用し、改善された引裂強度を生じる。
【0096】
破裂圧力の結果を参照すると、機おろし材料(試料A)から中間材料(試料B)に至る間に観察される変化がほとんどないことがわかる。これは、時々、塗布された接着剤、単に非連続的に塗布された接着剤による繊維重量損失を受けず、十分に「ケーブル効果」に影響しない疎水性ポリエステル繊維の使用によるものである。
【0097】
単純な引裂によるズボン型試料の引裂テストの結果は、最上の結果が、機おろし材料(AIII、「ベルベット」)、中間材料(BIII、「ベルベット」)及び製品材料(CIII、「ベルベット」)に関して測定されたことを示す。お互いに構築された材料及び機おろし材料(AIII、「ベルベット」)は、その構造によって最上の引裂強度を有する。これは、横糸に垂直な値に関して、特に明白である。
【0098】
3つの縦目にわたって延出する試料AIII、BIII及びCIIIの長いラッピングは、例えば糸束を形成する伸張荷重下において引裂三角形におけるより糸の置換を増進する。その結果生じる「ケーブル効果」は、引裂に対して決定的に作用し、良好な結果をもたらす。結果的に中間材料及び製品材料もまたこの現象から利益を得ている。ドット状に適用される接着剤は、疎水性ポリエステル糸の強度に特に影響を与えない。ランダム芯材を有する積層物のみが、「縦糸値」において又は横目方向において実質的な上昇をもたらす。これに関する理由は、縦目(「縦糸」)に垂直な引裂強度における改善を生じる芯材に関して選択された「縦糸配向性」、いわゆる縦目に沿った配向性である。さらに、3つの縦目にわたる長いラッピングは、「横糸」に高い引裂強度を与える。この理由は、「ケーブル効果」である。縦目配向性芯材を有する後の積層物は、付加的に「縦糸」を強化し、バランスのとれた織物フィルタ材料が得られる。
【0099】
他の機おろし材料AIa(「コード」)、AIb(「コード」)及びAII(「サテン」)を考慮した場合、AIa及びAIbの結果がほとんど同一であるように思われる。この2つの縦メリヤスは、単位面積重量においてのみ異なり、ラッピングにおいて異ならない。これは、単位面積重量が、裂けやすさにあまり影響を与えないが、主に、糸強度、糸密度、構造、仕上げ及び結合及び単位長さ当たりの交錯点の数に影響することを示すものである。中間にある機おりし材料AII(「サテン」)の結果として、ラッピングは、重要な要素として減じられる。これは、それが、AIa(「コード」)及びAIb(「コード」)の場合よりも長いが、AIII(「ベルベット」)の場合よりも短い理由である。
【0100】
弾道振子(エルメンドルフ)の結果を考慮すると、機おろし材料AIII、中間材料BIII及び製品材料CIIIが、最上の「横糸値」を提供することが明白である。製品材料の場合の良好な「縦糸値」は、上述されたように、芯材の適用によって達成される。
【0101】
「横糸ラッピング」が長いほど、言い換えると構造的要素、特に浮糸が延出する縦目の数が大きいほど、圧縮され又は束になる糸の数が大きくなるので、破断又は引裂強度が向上する。
【0102】
ラッピング長さと上昇した引裂強度の相関関係は、ガイドバー2に関して表1で報告された数字の値から、また表2の「横糸値」及び破裂値からも容易に理解することができる。
【0103】
ガイドバー1は、「縦糸ラッピング」、言い換えると縦目のラッピングを示し、ガイドバー2は、「横糸ラッピング」の長さ、言い換えると横目のラッピングを示している。「横糸ラッピング」が長いほど、構造的要素、特に浮糸が延出する縦目の数が大きいほど、引裂強度はより良くなる。
【0104】
縦目にわたって延出する構造的要素、特に浮糸のラッピング及び形成は、縦メリヤス編物の製造において、製品材料の引裂力値に、決定的な影響を与える。既に述べたように、これについての理由は、引裂力テストにおける重要な要素が、常に、引裂を受ける特定のユニットがどれくらい強いかということである。引裂を受けるユニットは、個々のより糸若しくは糸、又は他の繊維束である。ラッピングによって束にされる可能性のある繊維の数が大きいほど、引裂力は高くなる。
【0105】
繊維の集束は、複数の繊維又は糸が、お互いに平行に走る時に、とりわけ高くなる。縦メリヤス編物の引裂力の比率は、縦メリヤス編物のデザインによって最適化される。ラッピング及び繊維の線密度は重要である。
【0106】
出願人は、典型的なコード(試料Ia及びIb)、サテン(試料II)及びベルベット(試料III)のラッピング又はステッチ模様が、このオーダーにおいて、機おろし材料(試料A)だけでなく、中間材料(試料B)及び製品材料(試料C)に関してもまた、横目の垂直方向、言い換えると縦目の長さ方向において、上昇した引裂力の値を生じることを測定した。
【0107】
長さ方向及び垂直方向において、特定の引裂力の値の比率を最適化することによって且つカバー材料特性(「芯材」)及びその配向性を考慮することによって、試料Cにより、製品材料、言い換えると吸着フィルタ材料(いわゆる織物裏打ち材料として縦メリヤス、接着剤、活性炭及びカバー芯材を有する外層)の引裂力の値において改善を達成することができる。
【0108】
本願発明によって、これは、縦目方向においてだけでなく、横目方向においても、優れた破断又は引裂作用を有する吸着フィルタ材料において生じる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本願発明に用いられる縦メリヤス編物の構造を示した概略説明図である。
【図2】構造的要素、特に浮糸についての説明図である。
【図3】(a)は、構造的要素、特に浮糸の一例を示した説明図であり、(b)は構造的要素、特に浮糸の別の例を示した説明図である。
【図4】本願発明の吸着フィルタ材料の一例を示した説明図である。
【符号の説明】
【0110】
1 吸着フィルタ材料
2 合成物
3 縦メリヤス編物
4 吸着材
5 接着剤
6 空気透過織物材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学的毒及び/若しくは兵器薬剤に対する防護機能を有する吸着フィルタ材料に特に使用される縦メリヤス編物の破断強度及び/若しくは引裂強度を改善する方法であって、前記縦メリヤス編物が複数の縦目、複数の横目及び複数の構造的要素を具備し、該構造的要素の一部が、それぞれ複数の縦目にわたって延出するように形成され及び/若しくは配置されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記縦メリヤス編物の破断強度及び/若しくは引裂強度が、少なくとも本質的に縦目方向において及び/若しくは横目の垂直方向において改善され、且つ/又は、前記縦メリヤス編物に、破断応力がかかった場合及び/若しくは破断力が加えられた場合、それぞれが複数の縦目にわたって延出する構造的要素がお互いに押され及び/若しくは束になることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
それぞれが複数の縦目にわたって延出する前記構造的要素は、浮糸、ハンドルループ及び/若しくはインレイであり、特に浮糸であることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
化学的毒及び/若しくは兵器薬剤に対する防護機能を有する吸着フィルタ材料に特に使用される縦メリヤス編物の破断強度及び/若しくは引裂強度を改善する方法であって、前記縦メリヤス編物が複数の縦目、複数の横目及び複数の構造的要素を具備し、該構造的要素の一部が、浮糸として形成され、且つこれら浮糸の少なくとも一部が、それぞれ複数の縦目、特に少なくとも2つの縦目にわたって延出するように形成され及び/若しくは配置されることを特徴とする方法。
【請求項5】
複数の縦目及び複数の横目を具備する縦メリヤス編物の破断強度及び/若しくは引裂強度を改善し、特に化学的毒及び/若しくは兵器薬剤に対する防護機能を有する吸着フィルタ材料における使用のための浮糸の使用において、前記浮糸の少なくとも一部が、それぞれが複数の縦目、特に2つの縦目にわたって延出するように形成され及び/若しくは配置されることを特徴とする浮糸の使用。
【請求項6】
化学毒及び/若しくは兵器薬剤、特にNBC兵器薬剤に対する防護機能を有し、シート状で、二次元的な織物裏打ち材料を具備し、該織物裏打ち材料が、化学毒及び/若しくは兵器薬剤、特にNBC兵器薬剤に対する吸着材を有し、時に該吸着材が活性炭に基づくものである吸着フィルタ材料において、前記織物裏打ち材料が、縦メリヤス編物として形成され、且つ前記縦メリヤス編物が複数の縦目、複数の横目及び/若しくは複数の構造的要素を具備し、破断強度及び/若しくは引裂強度を向上させることを特徴とする吸着フィルタ材料。
【請求項7】
前記構造的要素の一部、特に浮糸が、前記縦メリヤス編物の破断強度及び/若しくは引裂強度が、少なくとも本質的に縦目方向において且つ少なくとも本質的に横目に垂直な方向において改善されるように、それぞれが複数の縦目にわたって延出し、且つ/又は、特に縦メリヤス編物に破断応力がかかった場合及び/若しくは破断力が作用した場合、それぞれが複数の縦目にわたって延出する構造的要素が、お互いに押され及び/若しくは束になることを特徴とする請求項6記載の吸着フィルタ材料。
【請求項8】
それぞれが複数の縦目にわたって延出する前記構造的要素は、浮糸、ハンドルループ及び/若しくはインレイであり、特に浮糸であり、且つ/又はそれぞれが複数の縦目にわたって延出する構造的要素、特に浮糸が、少なくとも2つ、特には少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つ若しくはそれ以上の縦目にわたって延出することを特徴とする請求項6又は7記載の吸着フィルタ材料。
【請求項9】
それぞれが複数の縦目にわたって延出する構造的要素、特に浮糸は、フリーであり及び/若しくは連続し及び/若しくは縦メリヤス編物の表面を絡み合うことなしに横切る糸又は糸部によって形成され、且つ使用される縦メリヤス編物が、オープン及び/若しくはクローズドループに基づいた縦メリヤスであり、且つ/又は、使用される前記縦メリヤス編物は、平織物、ゴム編物若しくはガーター編物であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一つに記載の吸着フィルタ材料。
【請求項10】
前記メリヤス編物は、付加的に接着剤を具備し、該接着剤が、100g/mより少ない接着剤量で、ドット状に非連続的に適用され、化学的毒及び/若しくは兵器薬剤に対する吸着材が、該接着剤を介して前記メリヤス編物に付着されることを特徴とする請求項6〜9のいずれか一つに記載の吸着フィルタ材料。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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