説明

吸着分離装置

【課題】排水中に含まれる金属や重金属物質等の被吸着物質の吸着分離を確実にできる吸着分離装置を提供する。
【解決手段】底部2bに分級脚3を有すると共に上部に担体の供給管路8を接続した縦型の容器2内の中心部に、該容器2内の原水を該容器2の内周面に沿って旋回流を生じさせる回転翼手段6を設けると共に、前記容器2内の底面の中心部に、前記原水を前記容器2の中心部において上方に流動させる液流方向変更手段7を設け、前記分級脚3に、前記原水中の被吸着物質を吸着した担体Pの排出管路11を接続すると共に、前記容器2の上方部に、処理水の排出管路10を接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水中に含まれる金属や重金属物質等の被吸着物質を吸着分離するのに好適な吸着分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の排水中の懸濁物質等を凝集、沈殿、分離する装置として、凝集槽において、流入口より流入する原水と投入口より投入される微生物フロックを攪拌機により撹拌し、原水中の懸濁粒子と微生物フロックが接触し、吸着と架橋作用により凝集フロックが形成され、凝集槽内の凝集フロックを含む水は沈殿槽に送られ、該沈殿槽において、凝集フロックを含む水中の凝集フロックは重力により沈降してホッパー状の底部に集積すると共に、分離した上澄み水は処理水として越流せきから放流するようにした装置が知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
又、排水中の重金属物質や放射性物質を除去するために、これら物質をカセット状の容器に入れられたゼオライト、顔料等の吸着物質で吸着させ、容器ごとに交換する装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007―307534公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来の前者の装置によれば、撹拌槽において、撹拌機により微生物フロックを含む原水を単に円周方向に流動させながら撹拌しているので、原水と微生物フロックとの吸着により成長した凝集フロックの形成が得られにくく、その後、沈殿槽において、不十分な成長の凝集フロックは重力による沈殿が充分に行われず、かくて、凝集フロックと上澄み水との分離を確実に達成出来ない問題点があった。
【0006】
又、従来の後者の装置によれば、ゼオライト、顔料等の吸着物質は連続的に吸着後に分離できない問題点があった。
【0007】
本発明はこれらの問題点を解消し、排水中に含まれる金属や重金属物質等の被吸着物質の吸着分離を確実にでき、又、懸濁物質の凝集分離にも応用可能な吸着分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこの目的を達成すべく、底部に分級脚を有すると共に上部に担体の供給管路を接続した縦型の容器内の中心部に、該容器内の原水を該容器の内周面に沿って旋回流を生じさせる回転翼手段を設けると共に、前記容器内の底面の中心部に、前記原水を前記容器の中心部において上方に流動させる液流方向変更手段を設け、前記分級脚に、前記原水中の被吸着物質を吸着した担体の排出管路を接続すると共に、前記容器の上方部に、処理水の排出管路を接続したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、排水中に含まれる金属や重金属物質等の被吸着物質の吸着分離を確実にできる吸着分離装置を提供する効果を有し、又、凝集分離にも応用可能である効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1の吸着分離装置の縦断面説明図である。
【図2】図1のI−I線截断面図である。
【図3】本発明の実施例2の吸着分離装置の縦断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態の実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0012】
本発明の実施例1を図1及び図2により説明する。
【0013】
図1は本発明の実施例1の吸着分離装置の縦断面説明図、図2は図1のI−I線截断面図である。
【0014】
1は本実施例の吸着分離装置、2は該吸着分離装置1の容器を示し、該容器2は縦型の有底円筒状でその上端に蓋体2aを結着して構成されている。そして、該容器2の底部2bは下方に向かって湾曲状に形成され、該底部2bの中心部に透孔2cが形成されていると共に該底部2bの下面に分級脚3を固定し、前記透孔2cを介して該分級脚3の内部が前記容器2の内部に連通するようにした。
【0015】
4は回転軸を示し、該回転軸4は前記蓋体2aの中心部に固定の軸受部5に回転自在に支持されて前記容器2内の中心部に垂下され、該回転軸4の下端部に回転翼手段である平羽根型の撹拌翼6を固定すると共に、該回転軸4の上端部を回転駆動源(図示せず)に連結し、該回転駆動源の駆動により前記撹拌翼6が回転するようにした。
【0016】
7は液流方向変更手段を示し、該液流方向変更手段7は前記底部2bの内面に放射状に固定されている複数枚例えば4枚の直線状の帯状板のバッフル7aからなり、これら各バッフル7aは図2に示す如く前記撹拌翼6の回転方向の後方で前記底部2bの中心を通る半径線Rから間隔dの位置に平行に固定されていると共に、各バッフル7aの内方端は前記透孔2cの周縁に一致するようにした。
【0017】
8は前記蓋体2aに接続した担体の供給管路である第1供給管路、9は前記容器2の側壁の中間部に接続した原水の供給管路である第2供給管路、10は該側壁の上方部に接続した処理水の排出管路である第1排出管路、11は前記分級脚3の側壁に接続した担体の排出管路である第2排出管路、12は該分級脚3の下端部に接続した処理水の流入管路を示し、前記第1排出管路10から分岐したリターン管路13は前記流入管路12に連通接続し、該リターン管路13にポンプ14を介在した。
【0018】
次に本実施例1の吸着分離装置1の作用と効果を説明する。
【0019】
金属や重金属物質の被吸着物質を含む排水の原水を前記第2供給管路9より前記容器2内に所定のレベルまで満たしてから、前記回転駆動源を駆動して前記撹拌翼6を回転すると、原水は、前記容器2の内周面に沿って旋回しながら下方に移動する流れFaを生じさせ、該流れFaが前記底部2bの近傍に至ると、各バッフル7aが前記撹拌翼6の回転方向の後方で前記半径方向線Rから間隔dを有しているため、前記バッフル7aに当たった原水は前記容器2の中心部を旋回しながら上昇する流れFbとなり、これらFaとFbの流れにより循環流となる。このような流れによる撹拌混合部15において、ゼオライト、顔料等の多孔質物質や化学的吸着物質の担体Pを前記第1供給管路8より前記容器2内に供給されると、原水中の被吸着物質は担体Pに効率的に吸着されて重い担体Paとなって前記分級脚部3内に流下し、該分級脚部3において分離した重い担体Paは前記第2排出管路11より排出される。
【0020】
他方、原水中から被吸着物質が吸着により除去された処理水は前記第1排出管路10より排出される。そして、該第1排出管路10より排出される処理水の一部は前記ポンプ14によりリターン管路13を経て前記流入管路12より前記分級脚3内に流入し、該分級脚3内における閉塞を防止し流れを良くする。
【実施例2】
【0021】
本発明の実施例2を図3により説明する。
【0022】
図3は本発明の実施例2の吸着分離装置の縦断面説明図である。
【0023】
本実施例2においては、3個の吸着分離装置、即ち、第1吸着分離装置1Aと第2吸着分離装置1Bと第3吸着分離装置1Cを並置した例を示しており、該第1吸着分離装置1Aの処理水の排出管路10Aの先端部が該第2吸着分離装置1Bの容器2Bの側壁の中間部に接続していると共に、該第2吸着分離装置1Bの処理水の排出管路10Bの先端部が前記第3吸着分離装置1Cの容器2Cの側壁の中間部に接続しており、又、該第3吸着分離装置1Cの容器2Cの側壁の上方部に接続した処理水の排出管路10Cから分岐したリターン管路13Cは、前記第1吸着分離装置1Aの第1分級脚3Aに接続した処理水の流入管路12Aと、前記第2吸着分離装置1Bの第2分級脚3Bに接続した処理水の流入管路12Bと、前記第3吸着分離装置1Cの第3分級脚3Cに接続した処理水の流入管路12Cとに分岐して接続している。
【0024】
8A、8B、8Cは前記第1吸着分離装置1A、前記第2吸着分離装置1B、前記第3吸着分離装置1Cの容器2A、2B、2Cの蓋体2aにそれぞれ接続した担体Pの供給管路、11A、11B、11Cは前記第1分級脚3A、前記第2分級脚3B、前記第3分級脚3Cにそれぞれ接続した担体Paの第2排出管路を示す。
【0025】
次に本実施例2の吸着分離装置1A、1B、1Cの作用と効果を説明する。
【0026】
前記第1吸着分離装置1Aにおいて、前記実施例1の如く原水中から担体Pにより金属や重金属物質の被吸着物質が吸着除去された処理水は前記排出管路10Aより排出されると共に、原水中の被吸着物質は担体Pに効率的に吸着されて重い担体Paとなって前記分級脚部3A内に流下し、該分級脚部3Aにおいて分離した重い担体Paは前記排出管路11Aより排出される。更に、前記第2吸着分離装置1Bにおいて、前記排出管路10Aより流入した処理水から担体Pにより更に残る金属や重金属物質の吸着物質が除去され、このように除去された処理水は前記排出管路10Bより排出されると共に処理水の残る金属や重金属物質の被吸着物質は担体Pに効率的に吸着されて重い担体Paが前述の如く前記排出管路11Bより排出され、更に、前記第3吸着分離装置1Cにおいて、更に前述の如く吸着分離が行われて、被吸着物質が残ってない処理水が前記排出管路10Cより排出され、その一部がリターン管路13Cをへて各分級脚3A、3B、3Cに流入する。
【0027】
このように、本実施例2においては、吸着分離が完全におこなわれる。
【0028】
前記実施例2においては、3個の吸着分離装置の例を示したが、必要に応じて、2個又は4個以上の吸着分離装置を設置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の吸着分離装置は、排水処理・洗浄水処理及び化学品関係、医療品関係、食品関係等における吸着分離に利用される。
【符号の説明】
【0030】
1 吸着分離装置
1A 吸着分離装置
1B 吸着分離装置
1C 吸着分離装置
2 容器
2b 底部
2A 容器
2B 容器
2C 容器
3 分級脚
3A 分級脚
3B 分級脚
3C 分級脚
6 回転翼手段
7 液流方向変更換手段
7a バッフル
8 担体の供給管路
9 原水の供給管路
10 処理水の排出管路
11 担体の排出管路
12 処理水の流入管路
13 リターン管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に分級脚を有すると共に上部に担体の供給管路を接続した縦型の容器内の中心部に、該容器内の原水を該容器の内周面に沿って旋回流を生じさせる回転翼手段を設けると共に、前記容器内の底面の中心部に、前記原水を前記容器の中心部において上方に流動させる液流方向変更手段を設け、前記分級脚に、前記原水中の被吸着物質を吸着した担体の排出管路を接続すると共に、前記容器の上方部に、処理水の排出管路を接続した吸着分離装置。
【請求項2】
前記分級脚に処理水の流入管路を接続した請求項1に記載の吸着分離装置。
【請求項3】
前記液流方向変更手段は前記底面に放射状に設けたバッフルからなる請求項1又は請求項2に記載の吸着分離装置。
【請求項4】
前記バッフルは、前記回転翼手段の回転方向の後方で前記底面の中心の半径線から所定の間隔を存して配設した帯状板からなる請求項3に記載の吸着分離装置。
【請求項5】
前記容器を複数並設し、前段の容器の処理水の排出管路を、後段の容器に接続すると共に、最終段の容器の処理水の排出管路から分岐したリターン管路を、その前段の容器の分級脚の前記処理水の流入管路に接続した請求項2乃至請求項4のいずれか1に記載の吸着分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−86055(P2013−86055A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230754(P2011−230754)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000171919)佐竹化学機械工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】