吸着剤製造方法、該方法により得られる吸着剤、及び吸着剤の飼料添加物及び医薬としての使用
本発明は、種子殻の破砕工程、水溶性バラスト物質の抽出液を用いた酸加水分解工程、及びリグニン、セルロース及びメラニンから成る目的組成物の生成工程、及び水洗乾燥工程から構成される吸着剤の製造方法であって、
前記酸加水分解は0.1〜36%の酸溶液を用いて0.3〜4.5時間をかけて0.1〜0.7MPaの圧力下沸騰方式で実施され、及び前記水洗を水及び又は0.1〜1.0%アルカリ溶液を用いて、さらに軟水を用いて実施した後に生成物を乾燥させることを特徴とする前記製造方法に関する。本発明吸着剤はリグニン、セルロース及びメラニンを基材とする有孔多平面マトリックスから成る。本発明は、吸着剤及び、中毒症、フリーラジカル病、環境毒素に起因する下痢症候群、ウイルス及び細菌感染症の予防及び治療、及びマイコトキシン、農薬、質の悪い(高過酸化物価を与える)飼料に起因するあらゆる動物における動物疾患の予防及び治療のための前記吸着剤の使用についても開示している。
前記酸加水分解は0.1〜36%の酸溶液を用いて0.3〜4.5時間をかけて0.1〜0.7MPaの圧力下沸騰方式で実施され、及び前記水洗を水及び又は0.1〜1.0%アルカリ溶液を用いて、さらに軟水を用いて実施した後に生成物を乾燥させることを特徴とする前記製造方法に関する。本発明吸着剤はリグニン、セルロース及びメラニンを基材とする有孔多平面マトリックスから成る。本発明は、吸着剤及び、中毒症、フリーラジカル病、環境毒素に起因する下痢症候群、ウイルス及び細菌感染症の予防及び治療、及びマイコトキシン、農薬、質の悪い(高過酸化物価を与える)飼料に起因するあらゆる動物における動物疾患の予防及び治療のための前記吸着剤の使用についても開示している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸着剤の製造方法、該方法により得られる吸着剤、及び該吸着剤の飼料添加物及び医薬、特に獣医科用の治療及び予防医薬としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
吸着剤として数種のものがそれらの製造方法と共に公知である。吸着剤としては、農産物のリグノセルロース原料の廃物、例えばビート根ケーキ、藁、籾殻、種々木材のおがくず、小麦ふすま等から製造される有機物、あるいは無機物が用いられる。これら吸収材料を、生物組織体からのマイコトキシン、重金属、有機化合物等の環境毒素の結合や排除のために適用することは公知である。しかしながら、公知の吸着剤にはいくつかの欠点がある。
【0003】
無機質吸着剤(クレー;珪酸アルミニウム−例えばハメトックス、ベントナイト、バーミキュライト等)は作用スペクトラムが狭く、動物性飼料濃度を低下させ、それら無機物の発生場所によって異なるが、それらの多様な化学構造及び有害不純物の不可避的存在ゆえに胃腸管活性の部分的低下がひき起こされる。
【0004】
RU2253510C1には、有機吸着剤、及びオイルケーキ、すなわちカボチャ種子加工廃物からの吸着剤の製造方法が提案されている。この方法によれば、廃物ケーキは水洗され、15〜20分間コンディショニングされ、次いで水切りされ、さらに再度新鮮な水を加えられ、混合され、コンディショニングされ、再度水切りされ、そして洗浄水の着色がなくなるまでこのような処理工程が反復される。次いで、残渣が100〜150℃で不変重量となるまで乾燥され、次いで破砕され、分散され、粒径0.2〜2.0mmのものだけが選抜される。得られた吸着剤のバルク重量は0.4〜0.6g/cm3であり、ケルダール法によれば少なくとも4.5質量%の窒素、及び少なくとも4質量%の繊維が含まれる。この方法の欠点は、吸着剤の作用対象が農薬、マイコトキシン及び類似の潜在的危険物質及び有害物質に限られているにも拘わらず、技術的にかなり複雑なことである。
【0005】
さらにRU2062647C1には、多糖類を原料とした吸着剤及びその製造方法が記載されている。この方法によれば、多糖類原料−植物廃物または微生物バイオマス(小麦ふすま、Aspergillus foetidus M-45のバイオマス、Trichoderma viride 13/10等)−が粒径3mm以下まで破砕され、次いで水対固形分比率10:20でpH3.5〜11.0の懸濁液(濃度5〜10%)が生成され、気圧1〜1.5の過剰圧力下(大気圧以上)で0.5〜4.0時間スチーム処理される。生成された固形塊は洗浄され、乾燥される。得られた吸着剤は飲用水の工業的精製、放射性核種及び重金属の除去、及び医療目的に利用される。この方法の不利な点は、吸着剤の収率が低いこと、水の消費が多いこと、最初の原料のスチーム処理により工程でのエネルギー要求が高いことである。この方法によって得られる吸着剤の吸収性能は低く、適用範囲も狭い。
【0006】
ひまわり種子殻から生成される食品吸着剤及びその製造方法もRU2255803C1から公知である。この製造方法には、温度45〜55℃で30〜100分間の溶媒抽出によってひまわり種子殻からバラスト物質を除去する工程が含まれている。この抽出に用いるガソリン、石油エーテル及びネフラスはひまわり種子殻との混合比で1:5〜1:20の範囲内で溶媒として使用でき、後続の工程で溶媒中に殻を安定させることによって、バラスト物質溶液からひまわり種子の殻が分離される。分離された種子殻固形相は水で希釈され、得られた混合液は10〜60分間コンディショニングされ、次いで−4〜−20℃で30〜240分間凍結及びコンディショニングされ、さらに25〜100℃で解凍される。次いで生成物を100〜200℃で乾燥することにより暗色状態のベジタブルオイルを精製するための吸着剤が得られる。しかし、この吸着剤は製造工程が複雑であること、及び適用範囲が限定されることが欠点となっている。
【0007】
植物由来活性炭等の他の有機吸着剤(例:Bio-Mos, Mycosorb, Mycofix Plus)は概して高価であり、また活性スペクトルも限定されている。
【0008】
急性中毒の治療に用いられる炭素血液吸着剤KAUが、「炭素血液吸着剤KAU」、開発者:ウクライナ科学アカデミー吸収生態学吸収問題研究所、252142 Kiev, Palladin pr., 32/34.振興資料, 1992から公知である。この吸着剤は破砕種子あるいは堅果殻から得られる活性炭を基材として製造され、中・高分子量の有毒物質の吸収を保証する多量の大形孔によって生ずる流体力学特性及び運動特性を特徴としている。血液吸着剤KAUは、工業的及び家内工業的毒物、医薬品、フングス毒素、農薬、及び他毒素による急性中毒において組織内血液の体外解毒剤として処方される。
【0009】
しかしながら、この吸着剤には低吸収性及び低選択性の欠点がある。
【0010】
特許RU2060818C1に記載された吸着剤は、水道水からのCa2+イオンの除去に効果的である。この方法において、水中の開始時カルシウムイオン含量が(21±4)・10-4m-3であった場合、吸着剤を含んだカラム通過後におけるカルシウムイオン濃度は、ArsenazoIIIで測定した場合、(0.8±0.1)・10-4m-3である。ここで吸着剤は、炭素、水素、窒素、硫黄及び酸素を特定の比率で含む天然の水溶性ポリマーから成るものである。この吸着剤によれば一連の重金属、放射性核種も吸収可能であり、また本吸着剤はpH2〜8.5の範囲内で有効に作用する。本吸着剤によって結合された粗製油は界面活性剤を必要とせずに長時間水面上に保持される。この吸着剤は食品産業、環境浄化、特に溶液からの放射性核種の除去、石油製品の汚染除去のためのエコロジー、さらに動物器官からの重金属の排出において利用可能である。本方法により得られた吸着剤の欠点は、その吸収活性に限界があること、また1種のみの生物活性成分、すなわちその実用的用途を実質的に限定するメラニンしか含んでいないことである。
【0011】
RU2060818C1において吸着剤の製造方法は、ひまわり種子殻(外皮)を破砕して粉状化する工程と、9〜12規定の塩酸溶液を用いて酸加水分解を20℃で35〜45日間行う工程と、加水分解性生物を水洗及び乾燥する工程から構成される。
【0012】
加水分解には濃度35〜50%の硫酸が使用可能である。硫酸による酸加水分解は温度100℃では3〜6時間で実施可能である。前記破砕は粉体が得られるまで継続され、次いで30〜50%酸を用いて重量比1:8〜10で処理される。得られた加水分解生成物はまず標準条件で蒸留水を用いて濯がれ、次いで80℃の熱蒸留水で流水中にSO42−が検出されなくなるまで濯がれる。乾燥前に生成物はさらにエタノールを用いて濯がれ、乾燥され、そして最終的に植物性吸着剤が得られる。
【0013】
この公知の植物性吸着剤の製造方法の欠点は、長い加水分解工程を経るために、濃縮酸、濯ぎ水、及び電力の大量消費が必要とされ、そのため本方法の生産性が低いことである。また、本方法の不利な点として、高濃度の鉱酸が必要とされること、酸の選択幅が狭いこと、そして各酸種ごとに特定の加水分解方法を取る必要があること(この点から本方法の技術的有効性が減じられている)も挙げられる。本方法は生産性が低く、20℃では35〜45日間を要し、100℃でも3〜6時間を要する。また、熱蒸留水も含めて大量の蒸留水を必要とするため電力消費も増大する。濯ぎにアルコールを用いれば本方法に要するコストがかなり上昇し、また潜在する有用な生物活性物質の流出を起こすことにもなりかねない。最終生産物量が低下すれば、植物性原料の最適利用ができなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記欠点のない吸着剤の製造方法を提供すること、及び用途範囲の広い吸着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち、本発明は、種子殻を破砕する工程、酸加水分解を行って水溶性バラスト物質を抽出し、リグニン、セルロース及びメラニンから成る目的組成物を生成する工程、及び水洗及び乾燥工程から成る吸着剤製造方法であって、前記酸加水分解は、0.1〜36%酸溶液、好ましくは 1〜36%、より好ましくは1〜10%、最も好ましくは1〜5%酸溶液を用いて、0.1〜0.7MPa(1〜7気圧)、好ましくは混合液飽和蒸気圧〜3.0気圧の下の沸騰状態で0.3〜4.5時間、好ましくは1.5〜4.5時間行われ、前記水洗は水あるいは0.1〜1.0%アルカリ溶液、次いで軟化水(脱塩水)を用いて行われ、及び前記生成物は次いで乾燥されて、吸着剤には全体としての有孔度が0.04〜50μであるリグニン、セルロース及びメラニンを基材とする有孔多平面マトリックスが含まれることを特徴とする、前記吸着剤製造方法を提案するものである。
【0016】
特許請求の範囲に記載された方法では、操作モードの最適化により、また開始原料、すなわち種子殻、特にひまわり種子殻、そば種子殻、豆莢、他の有色種子殻、プラム、サクランボ、ブルーベリー、暗色系ブドウ、ブラックカラント等の果皮などの種々ベリーの暗色系果皮を処理する処理剤の選択によってプロセスサイクルが軽減されている。
【0017】
原料に対して基本的に必要とすることは色素メラニンが存在することである。このように得られる吸着剤は、広範囲に亘る危険性のあり得る化学物質や微生物よりも均質な吸収特性をもつものである。例えば、農薬、マイコトキシン、ポリ塩素化ビフェニル、ウイルス、病原性細菌、及び複合炭化水素等の有害化学物質を吸収することが可能である。
【0018】
前記吸着剤には多形態をした孔(微小孔、中間孔、大形孔)が分散され、表面上に化学的に活性な中心部分と、種々大きさ、幾何学的形状、化学的性質をもつ分子を吸収する生物活性成分を有する有孔多平面構造をしている。
【0019】
酸加水分解には硫酸、塩酸、あるいはオルトリン酸が使用可能である。
【0020】
生成物の洗浄は水または水酸化アンモニウム溶液、水酸化ナトリウム溶液、あるいは水酸化カリ溶液を用いて洗浄液のpHが3.5〜4.5になるまで実施可能である。
【0021】
加水分解生成物をアルカリ溶液で洗浄する前に、さらに水洗浄を沸騰方式で10〜15分間追加実施することも可能である。
【0022】
軟水を用いて中性化された加水分解性生物の濯ぎは、濯ぎ水のpH値が4.5〜6.4に達するまで継続される。もしくは、飲用水、蒸留(凝縮)水、あるいは脱イオン水を生成物の濯ぎに用いることも可能である。
【0023】
本製造方法によって吸着剤の長期保存を可能とする無菌生成物が得られることに注意しなければならない。好ましい実施態様においては、本発明方法にはさらに、吸着剤に銀イオンを含浸させる工程、及び又はプロバイオテックバクテリアの細菌バイオマスを固定させる工程が含まれる。
【0024】
本発明吸着剤は、その濯ぎ後あるいは乾燥後に有利な条件で直接含浸させ、あるいは固定させることが可能である。
【0025】
銀イオンを用いた含浸は好ましくは静状態にある製品を水溶性銀塩、例えば硝酸銀を用いて銀イオンの平衡濃度で処理することによって実施され、イオン収着値はフレンドリッヒ式;
r=K・Cn
式中、rは収着値(mmol/g)、K,n(1,2)は定数、及びCは平衡濃度(g/l)を示す、に従って限定される。
【0026】
あるいは、吸着剤をプロバイオテックバクテリアの培養液、例えばバチルス属(Bacillus), ラクトバチルス属(Lactobacillus), ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、あるいはそれら細菌の混合物の少なくとも濃度108CFU(コロニー形成単位)と共に培養して固定させることも可能である。前記固定操作は好ましい実施態様によって固体/液体相率1:10で少なくとも1時間実施され、次いで固体相の抽出及び乾燥が実施される。この乾燥は好ましくは温度+37℃で24時間実施される。
【0027】
本発明の別の観点によれば、有孔多平面マトリックスに構造化されたリグニン、セルロース、メラニンを含む種子殻の加水分解によって得られる含炭素ヘテロ重合体から成る吸着剤も提案される。
【0028】
好ましい実施態様によれば、この吸着剤には下記物質が下記含量範囲内で含まれる。
リグニン 25〜70重量%
セルロース 20〜65重量%
メラニン 1〜10重量%
さらに別の好ましい実施態様によれば、この吸着剤には下記物質が下記含量範囲内で含まれる。
リグニン 39.9〜58.8重量%
セルロース 40.6〜50.9重量%
メラニン 1.0〜8.0重量%
【0029】
前記吸着剤にはさらに、バイオフラボノイド類、多糖類(グルコース、フルクトース、サッカライド)、ペクチン類、ロイコアントシアン類、カテキン類、フェノールカルボン酸類、タンニン類、及びこれらの混合物から選択される生物活性炭素含有物質を含ませることが可能である。
【0030】
これらの物質は下記含量範囲内で前記吸着剤中に存在可能である。
バイオフラボノイド類: 142.6〜615.5 mg/%
多糖類(グルコース、フルクトース、サッカライド):0.195〜0.444%
ペクチン類: 0.499〜1.912%
ロイコアントシアン類: 0.1〜2.76%
カテキン類: 0.2〜146.6 mg/%
フェノールカルボン酸類: 212.5〜697.9 mg/%、及び
タンニン類: 0.58〜0.83%
但し、上記において1 mg/% = 10 ppmである。
【0031】
前記有孔多平面マトリックスは、好ましくは孔径が0.1〜15μmの帯状螺旋形リグニン粒子、幅方向に延びた形状をした孔径5〜50μmのセルロース繊維、及び長さ5μm以下の管形状の粒子から成る大きさが400μm以下のメラニン凝集体が物理的かつ化学的に結合した下位構造から成るものである。
【0032】
前記吸着剤にはさらに銀イオンの形態を取る表面改質剤が含まれていてもよく、またプロバイオテックバクテリアの細菌塊から成るものであってもよい。
【0033】
銀イオンは、K=(2.5−2.11)104M−1において間隔n1=(0.013−0.019)mmol/gで強結合定数、及びK=(1.8−2.0)103M−1において間隔n2=(0.064−0.074)mmol/gで弱結合定数をもつ活性結合中心の形態で吸着剤上に存在可能である。
【0034】
プロバイオテックバクテリアの細菌塊には、Bacillus subtilius、Lactobacillus、またはBifidobacterium等の細菌が吸着剤当たり(0.181〜2.26)109CFU/gの量で含まれる。
【0035】
本発明の別の観点によれば、本発明は吸着剤の医薬品、特に獣医科用医薬品としての使用に関し、中毒症、フリーラジカル病、環境有毒物に基因する下痢症候群、ウイルス及び細菌性感染症の予防及び治療、及びあらゆる種類の動物におけるマイコトキシ、農薬、質の悪い飼料(過酸化物の数が多い)によって引き起こされる動物疾患の予防及び治療のための吸着剤の使用を目的とする。
【0036】
環境有毒物及び悪質な飼料による中毒の予防のために、吸着剤は、飼料の汚染状態によって異なるが、飼料塊に対し0.15〜2.0%の割合で飼料塊へ混ぜて投与される。
【0037】
Salmonella属、Escherichia属、Clostridia属、Pasteurella属、Campillobacteria属、Staphylococci属、Streptococci属の細菌、及びニューカッスル病ウイルスによって引き起こされる感染症、感染性気管支炎、感染性滑液包病(ガムボロ病)、腸内ウイルス、及び感染性咽頭気管炎の予防及び複合治療のためには、吸着剤は飼料と共に体重kg当たり0.2〜1.5gの割合で1日に1〜2回、病気の症状が無くなるまで、5〜14日の期間消化管中へ投与される。
【0038】
吸着剤の抗微生物活性は、銀濃度が(9.7x10-4〜0.97)g/lである銀硝酸塩溶液から銀を吸収して導入することにより、あるいは吸着剤1g当たり108CFU(コロニー形成単位)以上のプロバイオテックバクテリアを導入することにより、さらに増大させることが可能である。Bacillus、Lactobacillus、あるいはBifidobacterium属細菌はプロバイオテックバクテリアとして使用可能である。
【0039】
前記吸着剤は、原料を処理することにより植物性繊維濃度が98%まで増加するため、飼料添加物として飼料の繊維含量を増加させるためにも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】リグニンの微細構造を示した写真である。
【図2】セルロースの微細構造を示した写真である。
【図3】メラニンの微細構造を示した写真である。
【図4】腸吸着剤の表面形態を示した写真(9000倍)である。
【図5】リグニン(1)、セルロース(2)、メラニン(3)によるベンゾールの吸収等温線である。
【図6】リグニン(1)、セルロース(2)、メラニン(3)によるメタノールの吸収等温線である。
【図7】リグニン(1)、セルロース(2)、メラニン(3)による水の吸収等温線である。
【図8】銀濃度に対する吸収等温線及び銀抽出比を示した図である。図中、Cは銀平衡濃度(μmol/l)、rは銀吸収(μmol/g・吸着剤)、及びwは銀抽出比(%)を表す。
【図9】腸吸着剤の表面形態を示した写真(5000倍)である。
【図10】腸吸着剤の表面形態を示した写真(1000倍)である。
【図11】プロバイオテックバクテリアの菌塊によって改質された腸吸着剤の表面形態を示した写真(1000倍)である。
【図12】アスコルビン酸塩の存在においてFe2+イオンによって誘導される内部光レセプタ部分の過酸化比に対する吸着剤の阻害活性を比較したチャートである。
【図13】鶏肝臓中のリンデンの残留量の動態を示したグラフである。
【図14】鶏筋肉中のリンデンの残留量の動態を示したグラフである。
【図15】吸収された農薬のクロマトグラムである。
【図16】吸収された農薬のクロマトグラムである。
【図17】吸着剤によるルミノール化学ルミネセンスの消滅を示すしたグラフである。
【図18】空腸の粘膜中のα-アミラーゼ活性を示したグラフである。
【図19】鶏血清中のマロンジアルデヒド含量を示したグラフである。
【図20】鶏血清中のヒドロペルオキシド含量を示したグラフである。
【図21】実験30日後における脂肪の酸価を示したグラフである。
【図22】30日後の脳中のMDA含量を示したグラフである。
【0041】
次に添付図面1〜22を参照しながら本発明について説明する。
【0042】
本発明に係る製造方法の実施例として、以下において、吸着剤のみならず、その使用方法についても説明する。
【0043】
提案された製造方法によれば、破砕段階において、細胞殻が確実に破壊され、化学物質にとってアクセスし易い微粒子が生成される。破砕された原料の加水分解は、過剰圧(0.1〜0.7MPa(1〜7気圧)の範囲内)下で沸騰方式で濃度(0.1〜36)%の酸(硫酸、あるいは塩酸、あるいはオルトリン酸)を用いて実施される。前記加水分解処理時間は本質的に0.3〜4.5時間まで短縮されており、また酸の消費も低減されている。同時に、リグノセルロースの効率的な分解、セルロースの部分的重合、及び酸素存在下で強酸、カルボキシル基、フェノール基、カルボニル基、水酸基、及び他の表面基の生成も観察される。濯ぎ液のpHが3.5〜4.5になるまで水酸化アンモニウム、あるいは水酸化ナトリウム、あるいは水酸化カリの0.1〜1.0%溶液を用いて加水分解生成物を濯ぐ作業を行うことにより、残存酸を効率的に中性化することができ、好ましくは下記組成、ビオフラボノイド(142.6〜615.5)mg%、多糖類(グルコース、フルクトース、サッカロース)(0.195〜0.444)%、ペクチン類(0.499〜1.912)%、ロイコアントシアン類(0.1〜2.76)%、カテキン類(0.2〜146.6)mg%、フェノール・カルボン酸(212.5〜697.9)mg%、及びタンニン類(0.58〜0.83)%から成る最適なバランスのある生物活性炭素含有物質を生成することが可能となる。このようなアルカリによる濯ぎによれば、後続における加水分解生成物の水での濯ぎの水消費量を大幅に減らすことができ、この方法での全体としての出力消費が低減される。
【0044】
前記濯ぎの効率を高めるため、アルカリ液を用いた処理前に、加水分解生成物を沸騰方式でさらに水で10〜15分間濯ぐことにより残存酸の中性化に要するアルカリ消費量を減らすことができる。
【0045】
リグニン、セルロース及びメラニンを基材とする総有孔度が0.04〜50μmである有孔多平面マトリックスを図1〜3、4、9及び10に示す。吸着剤のマトリックスは、多形態をした孔が広く分散した下位構造から成る不規則構造をしたヘテロ重合体を呈する。前記下位構造は互いに物理的かつ化学的に結合し、孔の寸法が0.04〜15μmである帯状螺旋形状のリグニン粒子(図1)、孔の寸法が5〜50μmである長手方向伸長セルロース繊維、及び長さ5μm以下の分離形管形状をした粒子から成る寸法400μm以下のメラニン凝集体(図3)から構成される。中形及び大形の移動孔の存在、及びヘテロ重合体マトリックス内面の化学的性質の上記特性によって、高い医学生物学的活性を与える吸着剤の吸収特性(図4、6及び12)及び高い抗有毒物活性及び抗ラジカル活性の双方が確保されていると考えられる。
【0046】
吸着剤のヘテロ重合体マトリックス内面の化学的性質の特徴として、プロトン生成(カルボキシル及びヒドロキシ)イオン交換基の存在があり、この存在によって吸着剤は弱酸性カチオン交換体として作用する。
【0047】
ヘテロ重合体化学成分、すなわち効率的な吸収及び構造特性をもち、かつ有孔多平面マトリックスに構造化されたリグニン、セルロース及びメラニンと、酸性の性質をもつ基(ヒドロキシ、カルボニル、カルボキシル、その他)の双方が吸着剤表面上に存在することにより、種々の金属微量元素、例えば銀、あるいはプロバイオテックバクテリアの拮抗活性のある菌塊を用いて吸着剤を容易に改質することが可能である。
【0048】
従って、上述したように、銀イオンを含浸させることにより吸着剤を改質させることが可能である。
【0049】
プロバイオテックバクテリアの拮抗活性バイオマスを固定させることによる改質は、多平面マトリックス構造中におけるバイオマスの供給場所によって異なるが、それらバイオマスの吸着剤孔への侵入能、孔内部での再生能、及び種々形状及び寸法のプロバイオテック塊の形成能を考慮すれば好ましい方法である。前記固定化は、Bacillus、あるいはLactobacillus、あるいはBifidobacterium等のプロバイオテックバクテリアの菌液と共に吸着剤を培養することによって達成される。空気乾燥条件まで乾燥を行った後に得られる吸着剤は、複合抗細菌性製品、すなわち一定範囲の病原性微生物に対して高い拮抗活性をもつヘテロ重合組成物である。本方法によって得られる吸着剤の利点は消化管(GIT)中における長期有効性であり、本吸着剤は乾燥後その有効性を長期間保ち、またGIT全体に亘って長く活性を確保するものである。
【発明を実施するための手段】
【0050】
下記表に本発明の実施態様の一例と、得られた吸着剤についての検討結果を示す。
【実施例】
【0051】
実施例1(表1第2欄)
最初の原料であるひまわり種子殻を0.5〜3.5mmサイズまで破砕し、塩酸36%溶液を用いて固体/液体比1:7で3気圧の沸騰方式下で2.0時間処理する。次いで、加水分解生成物を沸騰水で10分間濯ぎ、固体相を水酸化アンモニウム1%溶液を用いて、そのpH値が4.5に達するまで抽出及び濯ぎを行い、次いで固体相を再度抽出して、濯ぎ流水中のpHが6.2〜6.4になるまで軟水を用いて濯ぎを継続する。
【0052】
実施例2(表1第3欄)
実施例1と同様にして破砕された最初の原料を硫酸28%溶液を用いて固体/液体比1:7で3気圧下の沸騰方式で1.5時間処理し、続いて加圧下で沸騰水を用いて15分間濯ぎ、次いで固体相を水酸化カリ0.5%溶液を用いてpH値が4.0となるまで抽出及び濯ぎを行い、濯ぎ流水中のpHが5.8〜6.3になるまで軟水を用いて濯ぎを継続する。得られた生成物は湿度が12.5%となるまで乾燥され、最後に吸着剤は対照試験に供される。表1に得られた吸着剤に関する試験結果を示す(第3欄)。
【0053】
実施例3(表1第4欄)
破砕された最初の原料は硫酸20%溶液により固体/液体比1:6で2気圧の沸騰方式下で1.5時間加水分解処理され、固体相は水酸化カリ0.1%溶液を用いてpH値が4.5になるまで抽出及び濯ぎ処理され、次いでpHが5.2になるまで軟水で濯ぎ処理され、湿度が7.8%となるまで乾燥され、得られた吸着剤は試験に供される。多平面マトリックス表面の典型的微細構造の電子顕微鏡写真(1000倍)を図10に示す。
【0054】
実施例4(表1第5欄)
最初の原料は塩酸16%溶液により固体/液体比1:7で1気圧下の沸騰方式で1.5時間加水分解処理され、固体相は分離され、水酸化アンモニウム1%溶液でpH値が3.5になるまで濯ぎ処理され、次いでpH値が4.9になるまで軟水で濯ぎ処理される。得られた物質は湿度が10.4%となるまで乾燥され、得られた吸着剤は試験に供される。
【0055】
実施例5(表1第6欄)
最初の原料をオルトリン酸5%溶液を用いて固体/液体比1:3で1.5気圧下沸騰方式で4.5時間加水分解処理し、固体相を分離してpH値が4.5になるまで水酸化カリ0.1%溶液を用いて濯ぎ処理を行い、次いで軟水を用いてpH値が5.0になるまで濯ぎ処理を行い、湿度が8.5%になるまで乾燥処理する。得られた吸着剤は表1に示したパラメータを有する。
【0056】
実施例6(表1第7欄)
最初の原料を硫酸0.3%溶液を用いて固体/液体比1:8で2.5気圧下沸騰方式で4.5時間加水分解処理し、固体相を分離してpH値が4.2になるまで水酸化ナトリウム0.5%溶液を用いて濯ぎ処理を行い、次いで軟水を用いてpH値が5.8になるまで濯ぎ処理を行い、湿度が0.8%になるまで乾燥処理して対照試験を実施する。得られた吸着剤は表1に示したパラメータを有する。
【0057】
実施例7(表1第8欄)
最初の原料を硫酸10%溶液を用いて固体/液体比1:8で2気圧下沸騰方式で0.5時間加水分解処理し、固体相を分離してpH値が4.2になるまで水酸化アンモニウム0.1%溶液を用いて濯ぎ処理を行い、次いで軟水を用いてpH値が5.9になるまで濯ぎ処理を行い、湿度が19.8%になるまで乾燥処理して対照試験を実施する。得られた吸着剤は表1に示したパラメータを有する。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例8:銀改質型腸内吸着剤の調製
実施例1〜7のいずれかによって得られた吸着剤へ下記方法により銀イオンを含浸させることが可能である。実施例3によって100g/l濃度、pH6.3の懸濁液状態で得られた吸着剤を銀イオン濃度Cが0.057g/lのAgNO3溶液中へ入れる。次いでこの混合液を混和して、平衡濃度に達するまで30〜40分間静止状態に保持する。イオン吸収値はフレンドリッヒ式;
r=K・Cn
(式中、rは吸収値mmol/gを表し、K及びn(1,2)は定数、Cは銀イオン濃度M−1を表す)に従って設定される。次いで、液体相を濾過により分離して、固体残渣を蒸留水あるいは軟水で濯いでから100℃で乾燥する。これにより得られた吸着剤には下記特性が備えられる。
水分含量、質量% 19.1
比容積g/l 240
抽出物酸度pH 2.35
灰残分% 0.6
メチレンブルー吸収能(pH7.0)mg/g 56.0
強結合定数n1(K=2.5・10−4M−1)mmol/gをもつ活性結合中心のある銀イオン数 0.013〜0.019
強結合定数n2(K=1.8・10−3M−1)mmol/gをもつ活性結合中心のある銀イオン数 0.064〜0.074
【0060】
実施例9:プロバイオテックバクテリアのバイオマスを用いた吸着剤の改質
実施例4の吸着剤を乾燥キャビネット中において+80℃で2時間加熱する。プロバイオテックバクテリアの懸濁液を調製し、この目的のため、細菌、Bacillus subtilius、Lactobacillus、あるいはBifidobacteriumの各系統の1日生長分を生理食塩水中に取り出し、光学的濁り標準に従って10億(108)コロニー形成単位(CFU)/mlに調製した。次いで、吸着剤を得られた細菌懸濁液と共に固体/液体比1:10で混合して1時間培養した。選定したパラメータに基づき、吸着剤1gには、細菌懸濁液から細菌が100%吸収されたと仮定すれば1回の治療及び予防投与量に当たる約109CFUのプロバイオテックバクテリアが含まれる。次いで固体相を液体相から分離し、+37℃で乾燥する。最終的に得られた吸着剤を吸収試験に供し、吸収された細菌の活性を標準法に従って調整する。
実施例3、8及び4、9によって得られる腸内吸着剤の吸収及び構造特性を表2、3にそれぞれ示す。
【0061】
【表2】
表中、am、mmol/gは単層容積、
Q1−λ、KJ/molは純吸収熱、
A、m2/gは比表面積、
V、cm3/gは全孔容積、及び
Vmi、cm3/gは微細孔容積を表す。
【0062】
【表3】
表中、CはBET式の定数である。
【0063】
開発された吸着剤及びその製造方法はパイロット製造条件において試験されている。本発明に係る新規な吸着剤は、農薬、マイコトキシン、質の悪い飼料による家禽の急性及び慢性中毒に対し、また細菌やウイルスによる感染症に対しても、家畜飼料への有効な治療的及び予防的飼料添加物となることが確認されている。生体外試験及び生体内試験により、最適な生物活性投与量及び吸着剤の医薬製剤としての投与方法が決定されている。
以下に本発明における実施例を示す。
【0064】
実施例10:生体外条件でのマイコトキシンの吸収効率
表4に本発明吸着剤による種々マイコトキシンの結合効率を獣医によって実用されている公知製剤である「マイコソーブ(Mycosorb)」と比較して示す(マイコトキシン吸収%)。
表4から理解されるように、本発明吸着剤の吸収活性は、広範に使用されているマイコトキシン吸着剤である「マイコソーブ」よりも高い。
【0065】
【表4】
【0066】
実施例11:生体外条件における吸着剤の抗細菌活性
【0067】
【表5】
【0068】
表5から理解されるように、銀イオンを伴う吸着剤によって、Staph. aureus系統"Covan I"、E. coli系統"A-M"、及びPast. multocida系統"K MIEV-26"それぞれの細菌培養コロニーの成長は最初の30分間の暴露によって有効に抑制される。この効果は、銀を含む吸着剤の生物活性体の腸内細菌の細菌酵素、タンパク質及び膜構造に対する生化学的作用及び触媒作用の複合作用によって生ずると考えられる。
【0069】
吸着剤の作用に対する感受性を見た場合、検討された微生物において、Pasteurella multocida、Escherichia coli、Staphylococcus aureusの順となる。同時に、グラム陽性ミクロフローラはグラム陰性ミクロフローラよりも吸着剤の作用に対してより感受性であると判別される。
【0070】
本発明吸着剤の微生物細胞に対する吸収能を、獣医科において実用されている類似製品と比較して下記表に示す。
【0071】
【表6】
【0072】
表6から理解されるように、本発明吸着剤の微生物細胞に対する吸収能は、「マイクロソーブ」よりも3.3〜3.4倍高く、また「リグナソーブ」よりも2.1〜2.2倍高い(両者とも市販製品である)。
【0073】
実施例12:生体外条件における本発明吸着剤の抗ウイルス活性
本発明吸着剤の、鶏に広範に認められるウイルス病であるニューカッスル病(ND)、感染性滑液包病(IBD)、ガンボロ病、及び感染性気管支炎(IB)に対して実験によって確認された活性を表7、8、9に示す。
本発明吸着剤の保護作用は、移植可能な種々系統の細胞培養、FL(ヒト羊膜)、SPEV(ブタ胎児腎臓)、MDVK(ウシ腎臓)、FRHK−4x(ミドリキヌザル胎児腎臓)、及び初期トリプシン22細胞株、FEK(鶏胎児繊維芽細胞)において見出されている。
ニューカッスル病(ラ・ソタ系統)、感染性気管支炎(系統H−120)、及び感染性滑液包病(系統KMIEV−13)のそれぞれに対する生理食塩水中に溶解された生乾燥ワクチンを感染材料として用いた。ウイルスの感染投与量は上記細胞培養の培養液の滴定を行って決定する。
表7に本発明吸着剤濃度の細胞培養FL及びSPEV中におけるIBD及びIBウイルスの力価に対する効果についての結果を示す。
【0074】
【表7】
【0075】
表7から理解されるように、本発明吸着剤によって細胞培養FL及びSPEVはIBDウイルス及びIBウイルスの増殖から有効に保護される。本発明吸着剤の作用により、前記ウイルスの力価は、対照との比較における実験において0.5〜3.75lgTCD50/ml(1ml中の組織細胞病原性の対数)まで減じられる。
本発明吸着剤によるIBDウイルス及びIBウイルスの感染活性の抑制はSPEV細胞単層に対する吸着剤の処理時間によって異なり、この抑制効果は表8に示した通りである。
【0076】
【表8】
【0077】
表8から理解されるように、本発明吸着剤でウイルス懸濁液を処理することによりIBウイルスの感染活性の抑制が行われるが、この抑制は処理期間に左右される。暴露30分あるいは60分後に細胞単層上においてウイルス懸濁液と吸着剤を混合することによりIBウイルスの感染活性は完全に抑制されるが、このことは対照区との比較試験において、CPE(細胞病原性)の欠如によることが示されている。対照区では細胞単層の100%衰退が観察された。
表9に、鶏のニューカッスル病ウイルスの力価に対する本発明吸着剤の影響に関するデータを示す。
【0078】
【表9】
【0079】
吸着剤を加えない場合のNDウイルス力価は8.0log2である。吸着剤を1.25mg/ml及び2.5mg/ml濃度で添加したウイルス含有液とした後においても、ウイルスにHAR(血球凝集反応)は認められない。濃度0.325mg/ml及び0.65mg/mlではウイルスの存在は目立たなかったが、対照区と比較して力価は劣った。
従って、本発明吸着剤は、生体外において、感染性滑液包病(ガンボロ病)ウイルス及び感染性気管支炎ウイルスの感染を受ける細胞培養FL及びSPEVに対し高い保護作用をもつことが分かる。この保護作用は、対照区との比較において、感染性滑液包病に関してはウイルス力価が3.0〜3.25lgTCD50/mlまで低下し、また感染性気管支炎に関してはウイルス力価が3.25〜3.75ljTCD50/mlまで低下することによって示される。
【0080】
実施例13:生体外条件における本発明吸着剤の抗酸化活性
本発明吸着剤(リン酸緩衝液懸濁液)の抗酸化活性(AOA)を、ルミノールの発光消滅法によって調べる。反応媒体(全容積3.0ml)には、50mM K−リン酸緩衝液(pH7.4)、100μMヒトヘモグロビン、90μMルミノール、及び種々濃度の本発明吸着剤を含ませた。対照区には本発明吸着剤に代えて0.1M K−リン酸緩衝液を用いた。反応媒体中へ130μM過酸化水素を加えて化学ルミネセンスを開始させた。本発明吸着剤によるルミノール化学ルミネセンス消滅の典型的画像を図17に示す(リン酸緩衝液への均質吸着剤懸濁液の濃度170、250、410、810μg/mlそれぞれへの添加後におけるルミノール消滅度を曲線2〜6にそれぞれ示し、及び対照区におけるそれを曲線1に示す)。本発明吸着剤がAOAを示し、その効果は吸着剤濃度に依存して異なることが理解できる。
既知の抗酸化剤であるアスコルビン酸に対して本発明吸着剤のAOAを計算すると下記結果が得られる。すなわち、本発明吸着剤の抗酸化活性は、吸着剤乾燥重量g当たりアルコルビン酸0.04±0.01mmolに相当する。
【0081】
実施例14:生体外条件における本発明吸着剤の農薬吸収活性
生体外条件における本発明吸着剤の種々農薬に対する結合効率を図15及び図16に示す。図15は2,4−DBEのクロマトグラムを示したグラフである。(a)はpH7以下での本発明吸着剤による吸収前、及び(b)は吸収後を示すグラフであり、抽出容積は2ml、農薬添加量は吸着剤g当たり10μgである。グラフ(b)は縮尺1:16であり、2,4−DBEの場合リテンション・タイム12.88分でのピークは16である。図16は農薬混合物CLP−260の吸着剤における吸収を示すクロマトグラムであり、(a)はpH7以下、抽出容積2ml、吸着剤g当たり農薬添加量10μgにおける吸着剤への吸収前、及び(b)は吸収後を示す。グラフ(b)の縮尺は1:10であり、リテンション・タイムごとのピークの中で、1〜3分は抽出剤(ヘキサン)中の不純物、5〜7分は農薬分解物、11.44分はγ−へキサクロルシクロヘキサン(リンデン)、12.28分はヘプタクロル、13.29分はアルドリン、17.88分はディルドリン、18.59分はエンドリン、20.05分はDDD(DDT分解物)、及び20.67分はDDTによる吸収を示す。
この実験から、本発明吸着剤によって環境上極めて有害な農薬が効率的に吸収されると結論することが可能である。
【0082】
実施例:マイコトキシン中毒症の予防
試験計画に従ってブロイラー種の鶏に対して試験を実施した。鶏を3つのグループ(各グループは25羽で構成)に分けて同一微気象条件下で飼育器中に収容した。試験は鶏が日令45日になるまで30日間継続実施した。全試験期間中、グループ1の鶏には飼料kg当たり100μg量のマイコトキシンT−2と62μg量のオクラトキシンAを含む飼料を与えた。グループ2の鶏にも同様な飼料を与え、この場合本発明吸着剤は有害物が含まれる飼料中へ飼料質量の1%相当量を添加した。グループ3の鶏にはマイコトキシンも吸着剤も含まれない純粋な飼料を与えた。すべての飼料について脂肪過酸化価は標準であり、ヨウ素の0.1%を超えなかった。鶏は臨床的なフレがあるため毎日観察を行い、15日毎に鶏の体重を測り、血液学的及び生化学的パラメータを調べるため血液サンプルを腋血管から採取した。実験終了後、鶏を屠殺し、死後肝臓及び腎臓のサンプルを摘出して毒物学的検査を行った。心臓、肝臓、膵臓、ファブリキウス嚢及び胃も摘出して重量測定及び組織学的研究に供した。検査に供した鶏の肝臓及び腎臓の毒性及び生物的指標を表10に示す。
【0083】
【表10】
【0084】
表10から、グループ1から得た肝臓及び腎臓サンプルによって毒性が十分示され、生成物に低度の生物活性があることが観察される(生物活性値はそれぞれ69.9%及び70.1%)。吸着剤を摂食したグループ2の鶏から得られた臓器サンプルでは、これら指標値はさらに高く(それぞれ98.9%及び89.1%)、グループ3の指標値に近く、グループ2の臓器には毒性は認められないか、あるいはあっても僅かである。体重変化の動態をみると、吸着剤を受けたグループ2の鶏では平均日ごと獲得体重が対照グループの鶏よりも11.2%高いことが示された。
【0085】
ゼアラレノンによって引き起こされるマイコトキシン中毒症に対する本発明吸着剤の予防効果を類似の方法によって測定した。この研究は初期の吠え期にある若い豚に対して実施した。
【0086】
臨床的に健康な子豚(年齢:1.5ヶ月)5頭から成るグループを3グループ設けた。試験実施前、マイコトキシン中毒症期間中の腸内消化過程における腸内容量を調べるため、各グループから3頭に手術を行って空腸上へ瘻孔を取り付けた。
【0087】
グループ1の子豚は、ゼアラレノン・マイコトキシンを飼料重量当たり0.38〜0.40mg濃度で添加し、脂肪過酸化価がヨウ素の0.1〜0.25%である飼料を与えて3週間に亘って飼育した。飼料の毒性は毎週チェックした。グループ2の子豚にはゼアラレノン・マイコトキシンが添加され、かつ飼料1kg当たり吸着剤が1.5g添加された飼料を与えた。グループ3の子豚は対照区とし、これらの子豚には良質な飼料を与えた。
【0088】
試験の全期間に亘って子豚の完全な臨床検査を行い、試験開始時、及び7日目、14日目、及び21日目(試験終了日)に血液サンプルを採取して血液学的及び生化学的分析を行った。血液は環状静脈洞から採取した。試験開始時及び21日目に、子豚の体重を測定して平均各日体重増加量を調べた。
【0089】
空腸内容物が瘻孔を通して得られたものかを調べるため、空腸消化についてもプローブを用いて同時に調査した。腸内消化の特徴はα−アミラーゼ活性から判定される。α−アミラーゼは腸内内容物の液部分中、粘膜表面上のバイオプテート上、3つの脱着部分中、及び粘膜組織中に見出される。
【0090】
試験対象とされた子豚は、器官及び組織の形態学的及び組織学的研究、及び食肉及び内臓の獣医衛生検査のため21日目に屠殺された。
【0091】
ゼアラレノンを高含量(飼料kg当たり0.38〜0.40mg)含む質の悪い飼料を摂食したことにより病的経過が引き起こされ、その病的経過は肝臓の急性炎症及び炎症性ジストロフィーの拡がりによって特徴付けられる。さらに、このような経過は急性状態で推移し、進行性腎臓不全症状が発現されてくる。グループ2の子豚について吸着剤を飼料kg当たり1.5g添加することにより著しい保護効果が生じ、これにより、
この病的経過に特有な症状の強さが減じられ、病状が慢性型へと変化し、腎臓不全の徴候も見られなくなる、
小腸内消化過程の抑制を減じ、ついで回復させる、
飼料と共に器官中へ入った場合には、肝臓及び腎臓の重大な機能不全をひき起し、これらの器官の相対生物活性値に影響を与えるゼアラレノンの生物活性値を改善する。マイコトキシンで汚染された飼料への吸着剤添加後における影響対象器官の生物活性値は、(マイコトキシン量が多い場合、実質的に最大濃度限界より高い場合には、)健康な動物と比較して僅かしか減少しなかった。
【0092】
従って、α-アミラーゼ活性から推定される空腸における消化過程が減じられ、また図18に示されているように吸着剤によって消化過程抑制の防止が促進される。肝臓及び腎臓の機能状態にも重大な影響が及ぶが、吸着剤を投与することによって病気の動物に比較して生物活性値の維持が促進される。
【0093】
実施例16:鶏下痢症候群の治療
治療効果を調べるため、日令10日のヒヨコを3グループ設けた(各グループ10頭、2グループは試験用、1グループは対照区)。試験開始前に、すべてのグループのヒヨコの体重測定を行った。グループ1のヒヨコに吸着剤/プロバイオテック混合物(SPC)を1%w/w添加した飼料を5日間摂食させ、グループ2のヒヨコには塩基性プロバイオテック類似物−「バチルス・サブチリス調製品BPS−44(Bacillus subtilis BPS-44の調製品、ウクライナ製)」を10ml(0.02g)添加した飼料を摂食させ、さらにグループ3(対照区)のヒヨコには医薬物質が添加されていない通常飼料を摂食させた。次いで全グループのヒヨコの体重を測定し、細菌Escherichia coli(鳥病原性系統SM)の濃度2.5億CFU(感染量−3億CFU)の懸濁液1.2mlを用いて経口感染させた。次の5日間では感染したヒヨコの観察及び同一条件での吸着剤の投与を行った。異なる試験ステージにおけるヒヨコの取得体重の変化を表11に示す。
【0094】
【表11】
【0095】
観察全期間を通して最初の2つのグループのヒヨコは病気にならず、臨床的に健康で活発に飼料及び水を摂食した。対照区のヒヨコにはふさぎ症状、食欲低下、水消費量の低下が認められ、2羽は下痢を起こし、1羽は感染4日後に死亡した。表11から理解されるように、SPCにはその基礎物質であるBPS−44を上回る効率的成長刺激作用がある。予防及び治療期間中に新複合物SPCを投与することにより、ヒヨコの体重が前記基礎物質よりも2.8〜3.4%増加する。表11は微生物バイオマスが吸着剤表面にある状態を示した写真である(1000倍)。
【0096】
実施例17:子豚の下痢症候群に対する吸着剤・プロバイオテック複合体(SPC)の治療効果及び予防効果試験
子豚の下痢症候群期間中における吸着剤・プロバイオテック複合体(SPC)の治療及び予防効果について調べるため、生後1.5月の子豚で7グループ(各グループ7頭)を構成した。Sal. cholerae Suisの培養液を動物体重kg当たり2・109CFUの細菌量で与えることにより試験対象となる子豚のすべてに下痢症候群が引き起こされた。この培養液は動物感染用に選抜されたものである。何故なら、サルモネラ菌はヒトの急性食中毒や動物の下痢症候群をひき起こす最も危険な有毒伝染細菌であるからである。
【0097】
サルモネラ症状の発現及び進行後、グループ1の子豚には抗生物質「コバクタン」の筋肉注射を体重10kg当たり0.5mlの薬量で、また抗毒素血清を1頭当たり30mlの投与量で与えた。グループ2の子豚には抗生物質「コバクタン」の筋肉注射を体重10kg当たり0.5mlの薬量で、また吸着剤を体重kg当たり1gの投与量で経口投与した。グループ3の子豚には抗生物質「コバクタン」の筋肉注射を体重10kg当たり0.5mlの薬量で、またSPCを体重kg当たり1gの投与量で経口投与した。グループ4の子豚には吸着剤を体重kg当たり1gの投与量で与えた。グループ5の子豚には抗生物質「コバクタン」を体重10kg当たり0.5mlの薬量で与えた。グループ6の子豚にはSPCを体重kg当たり1gの投与量で経口投与した。さらに、グループ6の子豚には感染前の5日間吸着剤・プロバイオテック複合物を体重kg当たり1gの投与量で経口投与した。
吸着剤は5日間の期間中毎日一回接触させた。
対照区であるグループ7の子豚には何も処理は行っていない。
【0098】
全試験期間を通して動物の完全臨床検査を実施し、血液サンプルは試験開始時、4日目、及び10日目(試験終了)に血液学及び生化学的研究のために採取した。子豚は試験10日目に器官及び組織の生態学的、組織学的、細菌学的分析を目的として屠殺され、また肉及び内臓の獣医・衛生技術熟練に供した。
【0099】
分析により以下のことが判明した。
サルモネラ症における子豚の治療中に「コバクタン」及び抗毒素血清の投与(グループ1)、「コバクタン」及び吸着剤の投与(グループ2)、あるいは「コバクタン」及び吸着剤・プロバイオテック複合物(SPC)の投与(グループ3)を行うことによって、病気の臨床症状の急速な(5日目)消失、感染、炎症経過の抑制及び中毒状態の抑制、肝臓機能の回復が速められた。
SPCを予防目的で投与された子豚(グループ6)に関しては、全試験期間を通して感染及び炎症経過の進行を示す確信に足る変化を記録できなかった。
試験に用いた動物の死体の肉及び内臓を用いた獣医・衛生技術熟練作業において以下のことが示された。
屠殺された動物の筋肉組織の化学構造に対する試験に用いた吸着剤投与の影響は皆無であった。
すべてのグループの子豚の物理化学的数値に有意な差異はなく、通常の範囲内であった。しかしながら、グループ6の動物の肉のpH値が他のグループの動物のpH値よりも多少低かった。これは肉の成熟及び貯蔵にとって良好な結果である。
試験グループ及び対照区の動物の肉の生物的数値の表示値には重要な差異はなかった。試験を行ったサンプルのいずれにも毒性は示されなかった。
動物の実質的器官、すなわち肝臓及び腎臓の生物的数値及び食物安全性の明僚化において重要なずれが検出された。グループ4及び5の産出物の生物的数値に幾分の低下が観察された。これらグループからは僅かに目立つ毒性が検出されたが、これは浸滴虫の繁殖速度の10%減少、形態変化、及び死虫の存在を生ずる程度のものであった。
【0100】
【表12】
【0101】
上述した指標の変化はグループ1、2、3及び6のサンプルについては観察されなかった。肉の毒性パラメータ及び生物的パラメータを表12に、また肝臓の毒性及び生物的パラメータを表13に示す。
【0102】
【表13】
【0103】
実施例18:鶏のニューカッスル病(NB)ウイルス、感染性咽頭気管炎ウイルス(ILT)、及び感染性気管支炎ウイルス(IB)感染中における吸着剤の生体内治療及び予防作用
ニューカッスル病ウイルスに対する吸着剤の効果を調べるため、日令12日のFPF種ヒヨコを2グループ(各グループを10羽で構成)設けた。グループ1(試験グループ)のヒヨコには吸着剤を飼料へ1%量加えてニューカッスル病ウイルス感染前の5日間及び感染後の10日間摂食させた。グループ2(対照区)のヒヨコには吸着剤を含まない飼料を摂食させた。全グループのヒヨコへの感染はニューカッスル病ウイルスの基準毒性系統”T−53”を1000ELD50ml/0.2ml濃度で筋肉注射して実施した。感染後10日間の期間観察を実施した。
【0104】
感染4日目に特徴的な臨床徴候、すなわち低度の麻痺、頭部の震えを示しているグループ2(対照区)のヒヨコ2羽の病状を記録した。これら2羽は死亡した。5日目、グループ1(試験区)のヒヨコ1羽が特徴的臨床徴候を伴う病状を示した。グループ2(対照区)のヒヨコ3羽が発病し、死亡した。6日目、対照区において、さらにヒヨコ2羽の発病及び死亡が記録された。感染後7日目、各グループにおいてヒヨコがそれぞれ2羽発病し死亡した。8日目、グループ1のヒヨコ1羽が発病・死亡し、グループ2のヒヨコ1羽(最終個体)が発病し、感染後9日目に死亡した。グループ1に関し、さらに5日間観察を続けたが発病・死亡は記録されなかった。表14にヒヨコの発病及び脂肪に関するデータを示す。
表から理解されるように、グループ2では100%の発病率及び脂肪率が観察されたのに対し、グループ1ではヒヨコの60%が発病に至らなかった。
【0105】
【表14】
【0106】
死亡したヒヨコはすべて解剖し死後検査を実施した。死亡したすべてのヒヨコの十二指腸に粘膜上壊死病巣を伴った出血性炎症が記録され、さらにグループ2のヒヨコ3羽において筋肉と腺性心室の移行部分に出血が記録された。
【0107】
感染性気管支炎ウイルスに対する吸着剤の効果を調べるため、FPF種のヒヨコ日令12日を各10羽ずつ2グループに構成した。グループ1(試験区)のヒヨコには吸着剤を飼料へ1%量混入させて感染性気管支炎ウイルスの感染前5日間と感染後10日間の期間摂食させた。グループ2(対照区)のヒヨコには吸着剤の含まれない飼料を与えた。このグループのヒヨコに対する感染は感染性気管支炎ウイルスの基準毒性系統”Chapaevsky"を濃度1000ELD50`ml/0.2mlで鼻孔経由によって接種して実施した。感染後10日間観察を実施した。ヒヨコの体重測定は試験前(基礎体重)、試験5日後(感染)、及び試験15日後(試験終了日)に実施した。
【0108】
観察期間中、試験区ではヒヨコ5羽が発病し、対照区ではヒヨコ8羽が発病したが死亡したヒヨコはなかった。病気は呼吸症状(結膜炎、鼻炎)を伴い激しくない状況で進行した。感染10日後、両グループのヒヨコを屠殺して死後検査を実施した。病気のヒヨコの気管中に重篤なカタル性滲出液が記録された。ELISA(酵素連関免疫吸着検定)法による感染後10日目の血液検査により、特定抗体の欠如が試験区では30%、及び対照区では10%の割合で示された。
感染10日後における平均取得体重は、試験区では355.9g、また対照区では302.3gであった(表15参照)。
【0109】
【表15】
【0110】
感染性咽頭気管炎ウイルスに対する吸着剤の効果を調べるため、FPF種のヒヨコ(日令25日、各グループ10羽)を2グループ構成した。グループ1(試験区)のヒヨコには吸着剤を飼料へ1%量混入させて感染性咽頭気管炎ウイルスの感染前5日間と感染後10日間の期間摂食させた。グループ2(対照区)のヒヨコには吸着剤の全く含まれない飼料を与えた。これら両グループのヒヨコに対する感染は感染性咽頭気管炎ウイルスの基準毒性系統”Bogatischevsky"を濃度10000EID50`ml/0.2mlで経気管投与による接種にて実施した。感染後10日間観察を実施した。ヒヨコの体重測定は感染前、及び感染10日後(試験終了日)に実施した。
【0111】
観察期間中、試験区のヒヨコ6羽が発病し、他方対照区ではヒヨコ8羽が発病したが、死亡したヒヨコはいなかった。この病気は結合炎症をともって軽い症状で進行した。感染10日目に両グループのヒヨコを屠殺して死後検査を実施した。病気のヒヨコに繊維性の結合炎症が記録された。ELISA法による感染後10日目の血清検査により、特定抗体の欠如が試験区では20%、及び対照区では10%の割合で示された。
【0112】
【表16】
【0113】
感染後10日間における平均取得体重は試験区で785.6g、対照区で764.4gであった(表16参照)。
従って、ニューカッスル病ウイルスによる感染において、試験区で60%、対照区で0%と吸着剤の高い治療及び予防効果が示された。一定のウイルスに対する吸着剤の高い効果は、小腸及び大腸における基本的局在性に関連するものである。
ヒヨコの感染性気管支炎ウイルス及び感染性咽頭気管炎ウイルス感染中に吸着剤の効果低減が記録されたが、これは明らかに呼吸器官中におけるウイルスの主要局在位置に関連したものである。
【0114】
実施例19:子豚の中毒性肝栄養失調症の治療
中毒性肝栄養失調症に罹患した子豚の2グループ(各グループ15頭)に対して治療を実施した。グループ1(試験区)の子豚には、吸着剤を治療及び予防の主剤として子豚体重kg当たり0.5gの投与量で飼料と共に回復まで毎日投与した。グループ2(対照区)の子豚は同一飼育及び維持条件に置いて、標準物質である抗生物質ゲオミシンを用いて治療を行った。
治療期間中においては、全試験動物の臨床状態について測定した。治療1日目、3日目、6日目、及び9日目、各グループから5頭の血液を採取して生化学的分析を行った。治療の結果による脂肪、色素、タンパク質交換等の指標の変化(M±m,P)について表17に示す。
これらの結果から理解できるように、試験区の動物において肝臓の抗毒素機能の回復、脂肪及び色素交換の最適化が治療後3日目には始まり、9日目になっても猶認められる。前記物質による治療後に肝臓構造の修繕再生が記録されているが、これは肝細胞の類壊死病巣数の減少、肝臓ガーダー破壊の減少、及び増殖細胞の僅かな量で示されるものである。
【0115】
【表17】
【0116】
実施例20:過酸化脂質(POL)高含有飼料飼育中における6グループから成るブロイラー種ヒヨコの器官抗毒素タンパク質系に対する吸着剤の影響(供試ブロイラー種、日令:15日)
試験期間は30日間とした。飼料へ大豆油を飼料100g当たり4mlの割合で加えた[飼料の酸価は26〜30.0mgKOHの範囲内、過酸化価は全試験期間を通してヨウ素の0.45%〜0.59%の範囲内である(通常は20.0mgKOH以下、かつヨウ素の0.3%以下)]。グループ1、2、3及び4のヒヨコに脂肪分解物を含む飼料を摂食させた。吸着剤と飼料を、グループ1に関しては飼料質量に対して0.5%、グループ2に関しては1%、グループ3に関しては1.5%、グループ4に関しては2%の割合で混合した。グループ5のヒヨコには、脂肪の過酸化価及び酸価(脂肪酸価20.0mgKOH、脂肪過酸化価:ヨウ素の0.06%)が正常である通常のブロイラー用飼料(レシート5B)を与えた。グループ6のヒヨコには、グループ1〜4における過酸化物パラメータと同様の大豆油を添加した飼料を与えた。
【0117】
試験期間中、観察はすべてのグループのヒヨコについて実施した。ヒヨコの臨床状態、すなわちそれらの行動及び飼料消費状況について考慮を払った。試験開始前(基礎数値)、試験15日目、及び試験30日目にヒヨコの体重測定及び血液採取(全血及び血清用)を実施した。この血液試験には、脂肪過酸化物酸化(POL)、すなわちマロンジアルデヒド(MDA)、脂質ヒドロペルオキシド、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性を含めた。
試験終了時、ヒヨコを屠殺して体内脂肪及び脳のサンプルを採取した。体内脂肪の酸価及び過酸化価を測定した。脳中のMDA濃度も測定した。
【0118】
試験30日目、グループ2〜4のヒヨコにグループ6のヒヨコと比較してかなり低いが、グループ5(正常な脂肪を含む飼料)の数値を超えないSOD活性が観察された。これは試験区において対照区に比べてPOL経過が低下していることの証拠である。吸着剤の保護作用は試験30日目における試験区におけるヒドロペルオキシドの顕著な減少、及び試験15日目及び30日目におけるマロンジアルデヒド濃度によっても確認される。
【0119】
他の生化学的パラメータ及び血液学的パラメータの検討により、生体内条件において、吸着剤に過酸化物酸化生成物含量が増加された飼料の負作用に対する顕著な保護作用があることが示された。実際、試験区のヒヨコ血液中のMDA濃度は16〜18%低く、SOD活性は10〜12.5%低く、またヒドロペルオキシド含量は吸着剤を含まない酸化飼料が与えられたヒヨコに比べて28〜35%低い。試験区のヒヨコにおけるこれらの数値は正常飼料を与えられたグループのヒヨコの数値に近いものである。吸着剤を種々投与量で与えられたヒヨコの体内脂肪の酸価は26〜30%低く、正常飼料を与えられたヒヨコの酸価と大きく異ならない。試験区のヒヨコの脳中MDA濃度は、吸着剤を含まない酸化飼料を与えられたヒヨコに比べて42〜56%低く、このことは図19、20、21、22、7、8、9、10に示した通りである。
従って、吸着剤の適用には脂質過酸化物酸化の主パラメータに対する正常化作用がある。吸着剤は、酸化程度の高い脂質を含む飼料が与えられる全期間に亘って投与されるべきである。
【0120】
実施例21:農薬による急性及び慢性中毒における吸着剤の治療効果
除草剤2,4−D及び殺虫剤リンデン(1,2,3,4,5,6−ヘキサクロルシクロヘキサン)による急性中毒期間中に下記方法において試験を実施した。日令30日のブロイラー種ヒヨコから2グループ(各グループ25羽)を編成し、このような2グループをさらに編成して2群とした。各群において、一組のヒヨコには吸着剤を飼料へ飼料質量の1%相当量混入して摂食させた。グループ2には吸着剤を全く含まない飼料を与えた。試験開始後2日目に、プローブを用いて2,4−Dを飼料中へ取り込み、第一群のヒヨコへ体重kg当たり500mgを一回投与して中毒させ、また第二群のヒヨコにはリンデンを体重kg当たり15mg与えて中毒させた。すべてのヒヨコについて毎日臨床状態を考慮しながら観察した。農薬の投与後1日目、2日目、3日目、4日目、及び5日目に、各グループからヒヨコ5羽を屠殺して筋肉及び肝臓組織を採取して農薬の残留量を定量した。
除草剤2,4−D及びリンデンの残留量の変化を図に示し(図13及び14)、農薬によるヒヨコの急性中毒期間中における吸着剤の効果を示す。4日目にはヒヨコの肝臓からほぼ完全に除草剤2,4−Dが、また5日目にはリンデンが除去され、同時に、吸着剤を投与を受けていない対照区のヒヨコよりもよりも臨床中毒症状が緩和されて記録された。
除草剤2,4−D及びリンデンによる慢性中毒中における吸着剤適用の効果を表18及び19にそれぞれ示す。このれら表には吸着剤の投与を受けたヒヨコの体重変化も示されている。
【0121】
日令30日のブロイラー種を4グループに編成し、このような4グループをさらに設けて2群とした。第1群のグループ1、グループ2、グループ3のヒヨコに除草剤2,4−Dを体重kg当たり200mgの投与量で与えた。第2群においては、殺虫剤であるリンデンを体重kg当たり5mgの薬量でプローブを用いて20日の期間毎日素嚢中へ投与した。両群ともにグループ4は対照区とした。グループ1のヒヨコには、各群とも、吸着剤を飼料中に1%量含ませて与えた。グループ2のヒヨコには植物性吸着剤を飼料中へ2%量含ませて与えた。グループ3及び4のヒヨコは、吸着剤を含まない通常飼料を用いて飼育した。両群のすべてのグループの鶏について臨床症状を考慮した観察を毎日実施した。体重測定、生化学的検査及び血液学的検査のための血液採取を下記条件で試験開始時、10日目、及び20日目に行った。
【0122】
【表18】
【0123】
【表19】
【0124】
農薬による慢性中毒状態において飼料中に吸着剤が1%量、及び2%量含まれた飼料を与えられたヒヨコの体重取得変化、血液学的パラメータ及び生化学的パラメータに関しては、正常飼料を与えられた対照区のヒヨコと比較しても大きな相違は認められなかった。農薬による慢性中毒状態にあって吸着剤を与えられなかったヒヨコの成長及び発育は、対照区グループのヒヨコに比較して遅延した。血液学的パラメータ及び生化学的パラメータにおける対照区のヒヨコとの偏差も記録した。従って、吸着剤の投与によって急性中毒中の農薬除去が早められ、臨床状態が正常化され、慢性中毒期間中に経過が入れ替わることが分かる。
【0125】
実施例22:飼育中における雌鶏の産卵生産性、及び養鶏製品の品質に対する吸着剤の影響
各グループが25羽から成る4グループの産卵鶏(日令160日、品種Hisex white)の卵の品質に対する吸着剤の影響を調べた。試験期間は30日間とした。グループ1の鶏は標準の良質混合飼料PK1Bで飼育した。グループ2の鶏には、脂肪過酸化価がヨウ素の0.4〜0.5%である酸化大豆油を飼料質量に対して1%相当量添加した類似混合飼料を与えた。グループ3の鶏にはグループ2と同様に酸化大豆油が混合されているが、さらに吸着剤が飼料重量に対して1%相当量添加された飼料を与えた。グループ4は対照区であり、このグループの鶏には良質大豆油を飼料重量に対して2%添加した混合飼料PK1Bを与えた。試験期間中、雌鶏の産卵品質を毎日調査し、卵黄の酸価測定値、ビタミンA及びカロチノイド類の含量、さらに形態的パラメータ(指標として、形状、重量、卵殻厚、等)を記録した。卵黄中のHAIR(血球凝集阻害反応)でのニューカッスル病ウイルス抗体の存在、及びDPR(拡散沈降反応)での感染性咽頭炎ウイルス抗体の存在を判定した。雌鶏へのこれら病気に対するワクチン接種は日令120日の時に実施した。
産卵品質、卵黄酸価変化、標準的指標に従った卵品質、及び卵黄中の経卵抗体レベルに対する吸着剤の影響を示すパラメータを表20、21、22及び23に示す。
表20によれば、グループ3に最も高い産卵能力が認められるが、このグループの雌鶏には吸着剤を含む準標準的飼料が与えられ、グループ4の雌鶏には良質油が添加された飼料が与えられている。最も質の劣る産卵がグループ2で記録されているが、このグループの雌鶏には吸着剤を含まない質の悪い飼料が与えられている。
【0126】
【表20】
【0127】
【表21】
【0128】
【表22】
【0129】
表21に基づいて、グループ3の鶏から得られた卵黄の酸価はグループ2のそれよりもかなり少なく、このことより脂肪の酸化度の高い質の悪い飼料を摂食している期間中において卵品質の本パラメータに対し吸着剤が有益な影響を与えることが確認できる。
表22によれば、すべてのグループの鶏についての卵品質パラメータは正常範囲内である。しかしながら、ビタミンA含量、カロチノイド類含量、及び卵平均重量等の主要パメータはグループ3ではかなり高くなっている。グループ2との比較において、ビタミンAでは4.6%、カロチノイド類では21.8%、平均卵重量では1.6%などの大きな差異が生じている。
表23によれば、質の悪い混合資料を与えた鶏(グループ2)から得られた卵黄中のNDウイルス及びIBD(ガンボロ病)ウイルスに対する経卵抗体の力価は他のグループの力価よりもずっと低かった。
【0130】
【表23】
【0131】
従って、鶏の基本飼料へ吸着剤を添加(飼料重量の1%量)することにより、質の悪い飼料によって影響される産卵能力及び卵品質パラメータが正常化され、また同時に経卵免疫反応も正常化される。
本吸着剤は動物疾病の予防及び治療に必要な試験に合格しており、動物及び養鶏用の医薬分野において多分野への使用が推奨可能である。本吸着剤の使用は、完全混合飼料へ配合して、産業に起因する不変的あるいは一時的汚染地域における環境毒物による動物組織に対する負の影響を除去するために、また動物の疾病及び中毒状態の流行地域において抗生物質あるいは他の安全とは言えない解毒物質の使用必要性を減じ、あるいは排除するための予防物質として特に有用である。
【0132】
本発明に係る新規吸着剤の本質的利点は、その高い製造生産性と使用効率、広範な作用性、及び既存の類似品に比較しての安価性にある。
【技術分野】
【0001】
本発明は吸着剤の製造方法、該方法により得られる吸着剤、及び該吸着剤の飼料添加物及び医薬、特に獣医科用の治療及び予防医薬としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
吸着剤として数種のものがそれらの製造方法と共に公知である。吸着剤としては、農産物のリグノセルロース原料の廃物、例えばビート根ケーキ、藁、籾殻、種々木材のおがくず、小麦ふすま等から製造される有機物、あるいは無機物が用いられる。これら吸収材料を、生物組織体からのマイコトキシン、重金属、有機化合物等の環境毒素の結合や排除のために適用することは公知である。しかしながら、公知の吸着剤にはいくつかの欠点がある。
【0003】
無機質吸着剤(クレー;珪酸アルミニウム−例えばハメトックス、ベントナイト、バーミキュライト等)は作用スペクトラムが狭く、動物性飼料濃度を低下させ、それら無機物の発生場所によって異なるが、それらの多様な化学構造及び有害不純物の不可避的存在ゆえに胃腸管活性の部分的低下がひき起こされる。
【0004】
RU2253510C1には、有機吸着剤、及びオイルケーキ、すなわちカボチャ種子加工廃物からの吸着剤の製造方法が提案されている。この方法によれば、廃物ケーキは水洗され、15〜20分間コンディショニングされ、次いで水切りされ、さらに再度新鮮な水を加えられ、混合され、コンディショニングされ、再度水切りされ、そして洗浄水の着色がなくなるまでこのような処理工程が反復される。次いで、残渣が100〜150℃で不変重量となるまで乾燥され、次いで破砕され、分散され、粒径0.2〜2.0mmのものだけが選抜される。得られた吸着剤のバルク重量は0.4〜0.6g/cm3であり、ケルダール法によれば少なくとも4.5質量%の窒素、及び少なくとも4質量%の繊維が含まれる。この方法の欠点は、吸着剤の作用対象が農薬、マイコトキシン及び類似の潜在的危険物質及び有害物質に限られているにも拘わらず、技術的にかなり複雑なことである。
【0005】
さらにRU2062647C1には、多糖類を原料とした吸着剤及びその製造方法が記載されている。この方法によれば、多糖類原料−植物廃物または微生物バイオマス(小麦ふすま、Aspergillus foetidus M-45のバイオマス、Trichoderma viride 13/10等)−が粒径3mm以下まで破砕され、次いで水対固形分比率10:20でpH3.5〜11.0の懸濁液(濃度5〜10%)が生成され、気圧1〜1.5の過剰圧力下(大気圧以上)で0.5〜4.0時間スチーム処理される。生成された固形塊は洗浄され、乾燥される。得られた吸着剤は飲用水の工業的精製、放射性核種及び重金属の除去、及び医療目的に利用される。この方法の不利な点は、吸着剤の収率が低いこと、水の消費が多いこと、最初の原料のスチーム処理により工程でのエネルギー要求が高いことである。この方法によって得られる吸着剤の吸収性能は低く、適用範囲も狭い。
【0006】
ひまわり種子殻から生成される食品吸着剤及びその製造方法もRU2255803C1から公知である。この製造方法には、温度45〜55℃で30〜100分間の溶媒抽出によってひまわり種子殻からバラスト物質を除去する工程が含まれている。この抽出に用いるガソリン、石油エーテル及びネフラスはひまわり種子殻との混合比で1:5〜1:20の範囲内で溶媒として使用でき、後続の工程で溶媒中に殻を安定させることによって、バラスト物質溶液からひまわり種子の殻が分離される。分離された種子殻固形相は水で希釈され、得られた混合液は10〜60分間コンディショニングされ、次いで−4〜−20℃で30〜240分間凍結及びコンディショニングされ、さらに25〜100℃で解凍される。次いで生成物を100〜200℃で乾燥することにより暗色状態のベジタブルオイルを精製するための吸着剤が得られる。しかし、この吸着剤は製造工程が複雑であること、及び適用範囲が限定されることが欠点となっている。
【0007】
植物由来活性炭等の他の有機吸着剤(例:Bio-Mos, Mycosorb, Mycofix Plus)は概して高価であり、また活性スペクトルも限定されている。
【0008】
急性中毒の治療に用いられる炭素血液吸着剤KAUが、「炭素血液吸着剤KAU」、開発者:ウクライナ科学アカデミー吸収生態学吸収問題研究所、252142 Kiev, Palladin pr., 32/34.振興資料, 1992から公知である。この吸着剤は破砕種子あるいは堅果殻から得られる活性炭を基材として製造され、中・高分子量の有毒物質の吸収を保証する多量の大形孔によって生ずる流体力学特性及び運動特性を特徴としている。血液吸着剤KAUは、工業的及び家内工業的毒物、医薬品、フングス毒素、農薬、及び他毒素による急性中毒において組織内血液の体外解毒剤として処方される。
【0009】
しかしながら、この吸着剤には低吸収性及び低選択性の欠点がある。
【0010】
特許RU2060818C1に記載された吸着剤は、水道水からのCa2+イオンの除去に効果的である。この方法において、水中の開始時カルシウムイオン含量が(21±4)・10-4m-3であった場合、吸着剤を含んだカラム通過後におけるカルシウムイオン濃度は、ArsenazoIIIで測定した場合、(0.8±0.1)・10-4m-3である。ここで吸着剤は、炭素、水素、窒素、硫黄及び酸素を特定の比率で含む天然の水溶性ポリマーから成るものである。この吸着剤によれば一連の重金属、放射性核種も吸収可能であり、また本吸着剤はpH2〜8.5の範囲内で有効に作用する。本吸着剤によって結合された粗製油は界面活性剤を必要とせずに長時間水面上に保持される。この吸着剤は食品産業、環境浄化、特に溶液からの放射性核種の除去、石油製品の汚染除去のためのエコロジー、さらに動物器官からの重金属の排出において利用可能である。本方法により得られた吸着剤の欠点は、その吸収活性に限界があること、また1種のみの生物活性成分、すなわちその実用的用途を実質的に限定するメラニンしか含んでいないことである。
【0011】
RU2060818C1において吸着剤の製造方法は、ひまわり種子殻(外皮)を破砕して粉状化する工程と、9〜12規定の塩酸溶液を用いて酸加水分解を20℃で35〜45日間行う工程と、加水分解性生物を水洗及び乾燥する工程から構成される。
【0012】
加水分解には濃度35〜50%の硫酸が使用可能である。硫酸による酸加水分解は温度100℃では3〜6時間で実施可能である。前記破砕は粉体が得られるまで継続され、次いで30〜50%酸を用いて重量比1:8〜10で処理される。得られた加水分解生成物はまず標準条件で蒸留水を用いて濯がれ、次いで80℃の熱蒸留水で流水中にSO42−が検出されなくなるまで濯がれる。乾燥前に生成物はさらにエタノールを用いて濯がれ、乾燥され、そして最終的に植物性吸着剤が得られる。
【0013】
この公知の植物性吸着剤の製造方法の欠点は、長い加水分解工程を経るために、濃縮酸、濯ぎ水、及び電力の大量消費が必要とされ、そのため本方法の生産性が低いことである。また、本方法の不利な点として、高濃度の鉱酸が必要とされること、酸の選択幅が狭いこと、そして各酸種ごとに特定の加水分解方法を取る必要があること(この点から本方法の技術的有効性が減じられている)も挙げられる。本方法は生産性が低く、20℃では35〜45日間を要し、100℃でも3〜6時間を要する。また、熱蒸留水も含めて大量の蒸留水を必要とするため電力消費も増大する。濯ぎにアルコールを用いれば本方法に要するコストがかなり上昇し、また潜在する有用な生物活性物質の流出を起こすことにもなりかねない。最終生産物量が低下すれば、植物性原料の最適利用ができなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記欠点のない吸着剤の製造方法を提供すること、及び用途範囲の広い吸着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち、本発明は、種子殻を破砕する工程、酸加水分解を行って水溶性バラスト物質を抽出し、リグニン、セルロース及びメラニンから成る目的組成物を生成する工程、及び水洗及び乾燥工程から成る吸着剤製造方法であって、前記酸加水分解は、0.1〜36%酸溶液、好ましくは 1〜36%、より好ましくは1〜10%、最も好ましくは1〜5%酸溶液を用いて、0.1〜0.7MPa(1〜7気圧)、好ましくは混合液飽和蒸気圧〜3.0気圧の下の沸騰状態で0.3〜4.5時間、好ましくは1.5〜4.5時間行われ、前記水洗は水あるいは0.1〜1.0%アルカリ溶液、次いで軟化水(脱塩水)を用いて行われ、及び前記生成物は次いで乾燥されて、吸着剤には全体としての有孔度が0.04〜50μであるリグニン、セルロース及びメラニンを基材とする有孔多平面マトリックスが含まれることを特徴とする、前記吸着剤製造方法を提案するものである。
【0016】
特許請求の範囲に記載された方法では、操作モードの最適化により、また開始原料、すなわち種子殻、特にひまわり種子殻、そば種子殻、豆莢、他の有色種子殻、プラム、サクランボ、ブルーベリー、暗色系ブドウ、ブラックカラント等の果皮などの種々ベリーの暗色系果皮を処理する処理剤の選択によってプロセスサイクルが軽減されている。
【0017】
原料に対して基本的に必要とすることは色素メラニンが存在することである。このように得られる吸着剤は、広範囲に亘る危険性のあり得る化学物質や微生物よりも均質な吸収特性をもつものである。例えば、農薬、マイコトキシン、ポリ塩素化ビフェニル、ウイルス、病原性細菌、及び複合炭化水素等の有害化学物質を吸収することが可能である。
【0018】
前記吸着剤には多形態をした孔(微小孔、中間孔、大形孔)が分散され、表面上に化学的に活性な中心部分と、種々大きさ、幾何学的形状、化学的性質をもつ分子を吸収する生物活性成分を有する有孔多平面構造をしている。
【0019】
酸加水分解には硫酸、塩酸、あるいはオルトリン酸が使用可能である。
【0020】
生成物の洗浄は水または水酸化アンモニウム溶液、水酸化ナトリウム溶液、あるいは水酸化カリ溶液を用いて洗浄液のpHが3.5〜4.5になるまで実施可能である。
【0021】
加水分解生成物をアルカリ溶液で洗浄する前に、さらに水洗浄を沸騰方式で10〜15分間追加実施することも可能である。
【0022】
軟水を用いて中性化された加水分解性生物の濯ぎは、濯ぎ水のpH値が4.5〜6.4に達するまで継続される。もしくは、飲用水、蒸留(凝縮)水、あるいは脱イオン水を生成物の濯ぎに用いることも可能である。
【0023】
本製造方法によって吸着剤の長期保存を可能とする無菌生成物が得られることに注意しなければならない。好ましい実施態様においては、本発明方法にはさらに、吸着剤に銀イオンを含浸させる工程、及び又はプロバイオテックバクテリアの細菌バイオマスを固定させる工程が含まれる。
【0024】
本発明吸着剤は、その濯ぎ後あるいは乾燥後に有利な条件で直接含浸させ、あるいは固定させることが可能である。
【0025】
銀イオンを用いた含浸は好ましくは静状態にある製品を水溶性銀塩、例えば硝酸銀を用いて銀イオンの平衡濃度で処理することによって実施され、イオン収着値はフレンドリッヒ式;
r=K・Cn
式中、rは収着値(mmol/g)、K,n(1,2)は定数、及びCは平衡濃度(g/l)を示す、に従って限定される。
【0026】
あるいは、吸着剤をプロバイオテックバクテリアの培養液、例えばバチルス属(Bacillus), ラクトバチルス属(Lactobacillus), ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、あるいはそれら細菌の混合物の少なくとも濃度108CFU(コロニー形成単位)と共に培養して固定させることも可能である。前記固定操作は好ましい実施態様によって固体/液体相率1:10で少なくとも1時間実施され、次いで固体相の抽出及び乾燥が実施される。この乾燥は好ましくは温度+37℃で24時間実施される。
【0027】
本発明の別の観点によれば、有孔多平面マトリックスに構造化されたリグニン、セルロース、メラニンを含む種子殻の加水分解によって得られる含炭素ヘテロ重合体から成る吸着剤も提案される。
【0028】
好ましい実施態様によれば、この吸着剤には下記物質が下記含量範囲内で含まれる。
リグニン 25〜70重量%
セルロース 20〜65重量%
メラニン 1〜10重量%
さらに別の好ましい実施態様によれば、この吸着剤には下記物質が下記含量範囲内で含まれる。
リグニン 39.9〜58.8重量%
セルロース 40.6〜50.9重量%
メラニン 1.0〜8.0重量%
【0029】
前記吸着剤にはさらに、バイオフラボノイド類、多糖類(グルコース、フルクトース、サッカライド)、ペクチン類、ロイコアントシアン類、カテキン類、フェノールカルボン酸類、タンニン類、及びこれらの混合物から選択される生物活性炭素含有物質を含ませることが可能である。
【0030】
これらの物質は下記含量範囲内で前記吸着剤中に存在可能である。
バイオフラボノイド類: 142.6〜615.5 mg/%
多糖類(グルコース、フルクトース、サッカライド):0.195〜0.444%
ペクチン類: 0.499〜1.912%
ロイコアントシアン類: 0.1〜2.76%
カテキン類: 0.2〜146.6 mg/%
フェノールカルボン酸類: 212.5〜697.9 mg/%、及び
タンニン類: 0.58〜0.83%
但し、上記において1 mg/% = 10 ppmである。
【0031】
前記有孔多平面マトリックスは、好ましくは孔径が0.1〜15μmの帯状螺旋形リグニン粒子、幅方向に延びた形状をした孔径5〜50μmのセルロース繊維、及び長さ5μm以下の管形状の粒子から成る大きさが400μm以下のメラニン凝集体が物理的かつ化学的に結合した下位構造から成るものである。
【0032】
前記吸着剤にはさらに銀イオンの形態を取る表面改質剤が含まれていてもよく、またプロバイオテックバクテリアの細菌塊から成るものであってもよい。
【0033】
銀イオンは、K=(2.5−2.11)104M−1において間隔n1=(0.013−0.019)mmol/gで強結合定数、及びK=(1.8−2.0)103M−1において間隔n2=(0.064−0.074)mmol/gで弱結合定数をもつ活性結合中心の形態で吸着剤上に存在可能である。
【0034】
プロバイオテックバクテリアの細菌塊には、Bacillus subtilius、Lactobacillus、またはBifidobacterium等の細菌が吸着剤当たり(0.181〜2.26)109CFU/gの量で含まれる。
【0035】
本発明の別の観点によれば、本発明は吸着剤の医薬品、特に獣医科用医薬品としての使用に関し、中毒症、フリーラジカル病、環境有毒物に基因する下痢症候群、ウイルス及び細菌性感染症の予防及び治療、及びあらゆる種類の動物におけるマイコトキシ、農薬、質の悪い飼料(過酸化物の数が多い)によって引き起こされる動物疾患の予防及び治療のための吸着剤の使用を目的とする。
【0036】
環境有毒物及び悪質な飼料による中毒の予防のために、吸着剤は、飼料の汚染状態によって異なるが、飼料塊に対し0.15〜2.0%の割合で飼料塊へ混ぜて投与される。
【0037】
Salmonella属、Escherichia属、Clostridia属、Pasteurella属、Campillobacteria属、Staphylococci属、Streptococci属の細菌、及びニューカッスル病ウイルスによって引き起こされる感染症、感染性気管支炎、感染性滑液包病(ガムボロ病)、腸内ウイルス、及び感染性咽頭気管炎の予防及び複合治療のためには、吸着剤は飼料と共に体重kg当たり0.2〜1.5gの割合で1日に1〜2回、病気の症状が無くなるまで、5〜14日の期間消化管中へ投与される。
【0038】
吸着剤の抗微生物活性は、銀濃度が(9.7x10-4〜0.97)g/lである銀硝酸塩溶液から銀を吸収して導入することにより、あるいは吸着剤1g当たり108CFU(コロニー形成単位)以上のプロバイオテックバクテリアを導入することにより、さらに増大させることが可能である。Bacillus、Lactobacillus、あるいはBifidobacterium属細菌はプロバイオテックバクテリアとして使用可能である。
【0039】
前記吸着剤は、原料を処理することにより植物性繊維濃度が98%まで増加するため、飼料添加物として飼料の繊維含量を増加させるためにも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】リグニンの微細構造を示した写真である。
【図2】セルロースの微細構造を示した写真である。
【図3】メラニンの微細構造を示した写真である。
【図4】腸吸着剤の表面形態を示した写真(9000倍)である。
【図5】リグニン(1)、セルロース(2)、メラニン(3)によるベンゾールの吸収等温線である。
【図6】リグニン(1)、セルロース(2)、メラニン(3)によるメタノールの吸収等温線である。
【図7】リグニン(1)、セルロース(2)、メラニン(3)による水の吸収等温線である。
【図8】銀濃度に対する吸収等温線及び銀抽出比を示した図である。図中、Cは銀平衡濃度(μmol/l)、rは銀吸収(μmol/g・吸着剤)、及びwは銀抽出比(%)を表す。
【図9】腸吸着剤の表面形態を示した写真(5000倍)である。
【図10】腸吸着剤の表面形態を示した写真(1000倍)である。
【図11】プロバイオテックバクテリアの菌塊によって改質された腸吸着剤の表面形態を示した写真(1000倍)である。
【図12】アスコルビン酸塩の存在においてFe2+イオンによって誘導される内部光レセプタ部分の過酸化比に対する吸着剤の阻害活性を比較したチャートである。
【図13】鶏肝臓中のリンデンの残留量の動態を示したグラフである。
【図14】鶏筋肉中のリンデンの残留量の動態を示したグラフである。
【図15】吸収された農薬のクロマトグラムである。
【図16】吸収された農薬のクロマトグラムである。
【図17】吸着剤によるルミノール化学ルミネセンスの消滅を示すしたグラフである。
【図18】空腸の粘膜中のα-アミラーゼ活性を示したグラフである。
【図19】鶏血清中のマロンジアルデヒド含量を示したグラフである。
【図20】鶏血清中のヒドロペルオキシド含量を示したグラフである。
【図21】実験30日後における脂肪の酸価を示したグラフである。
【図22】30日後の脳中のMDA含量を示したグラフである。
【0041】
次に添付図面1〜22を参照しながら本発明について説明する。
【0042】
本発明に係る製造方法の実施例として、以下において、吸着剤のみならず、その使用方法についても説明する。
【0043】
提案された製造方法によれば、破砕段階において、細胞殻が確実に破壊され、化学物質にとってアクセスし易い微粒子が生成される。破砕された原料の加水分解は、過剰圧(0.1〜0.7MPa(1〜7気圧)の範囲内)下で沸騰方式で濃度(0.1〜36)%の酸(硫酸、あるいは塩酸、あるいはオルトリン酸)を用いて実施される。前記加水分解処理時間は本質的に0.3〜4.5時間まで短縮されており、また酸の消費も低減されている。同時に、リグノセルロースの効率的な分解、セルロースの部分的重合、及び酸素存在下で強酸、カルボキシル基、フェノール基、カルボニル基、水酸基、及び他の表面基の生成も観察される。濯ぎ液のpHが3.5〜4.5になるまで水酸化アンモニウム、あるいは水酸化ナトリウム、あるいは水酸化カリの0.1〜1.0%溶液を用いて加水分解生成物を濯ぐ作業を行うことにより、残存酸を効率的に中性化することができ、好ましくは下記組成、ビオフラボノイド(142.6〜615.5)mg%、多糖類(グルコース、フルクトース、サッカロース)(0.195〜0.444)%、ペクチン類(0.499〜1.912)%、ロイコアントシアン類(0.1〜2.76)%、カテキン類(0.2〜146.6)mg%、フェノール・カルボン酸(212.5〜697.9)mg%、及びタンニン類(0.58〜0.83)%から成る最適なバランスのある生物活性炭素含有物質を生成することが可能となる。このようなアルカリによる濯ぎによれば、後続における加水分解生成物の水での濯ぎの水消費量を大幅に減らすことができ、この方法での全体としての出力消費が低減される。
【0044】
前記濯ぎの効率を高めるため、アルカリ液を用いた処理前に、加水分解生成物を沸騰方式でさらに水で10〜15分間濯ぐことにより残存酸の中性化に要するアルカリ消費量を減らすことができる。
【0045】
リグニン、セルロース及びメラニンを基材とする総有孔度が0.04〜50μmである有孔多平面マトリックスを図1〜3、4、9及び10に示す。吸着剤のマトリックスは、多形態をした孔が広く分散した下位構造から成る不規則構造をしたヘテロ重合体を呈する。前記下位構造は互いに物理的かつ化学的に結合し、孔の寸法が0.04〜15μmである帯状螺旋形状のリグニン粒子(図1)、孔の寸法が5〜50μmである長手方向伸長セルロース繊維、及び長さ5μm以下の分離形管形状をした粒子から成る寸法400μm以下のメラニン凝集体(図3)から構成される。中形及び大形の移動孔の存在、及びヘテロ重合体マトリックス内面の化学的性質の上記特性によって、高い医学生物学的活性を与える吸着剤の吸収特性(図4、6及び12)及び高い抗有毒物活性及び抗ラジカル活性の双方が確保されていると考えられる。
【0046】
吸着剤のヘテロ重合体マトリックス内面の化学的性質の特徴として、プロトン生成(カルボキシル及びヒドロキシ)イオン交換基の存在があり、この存在によって吸着剤は弱酸性カチオン交換体として作用する。
【0047】
ヘテロ重合体化学成分、すなわち効率的な吸収及び構造特性をもち、かつ有孔多平面マトリックスに構造化されたリグニン、セルロース及びメラニンと、酸性の性質をもつ基(ヒドロキシ、カルボニル、カルボキシル、その他)の双方が吸着剤表面上に存在することにより、種々の金属微量元素、例えば銀、あるいはプロバイオテックバクテリアの拮抗活性のある菌塊を用いて吸着剤を容易に改質することが可能である。
【0048】
従って、上述したように、銀イオンを含浸させることにより吸着剤を改質させることが可能である。
【0049】
プロバイオテックバクテリアの拮抗活性バイオマスを固定させることによる改質は、多平面マトリックス構造中におけるバイオマスの供給場所によって異なるが、それらバイオマスの吸着剤孔への侵入能、孔内部での再生能、及び種々形状及び寸法のプロバイオテック塊の形成能を考慮すれば好ましい方法である。前記固定化は、Bacillus、あるいはLactobacillus、あるいはBifidobacterium等のプロバイオテックバクテリアの菌液と共に吸着剤を培養することによって達成される。空気乾燥条件まで乾燥を行った後に得られる吸着剤は、複合抗細菌性製品、すなわち一定範囲の病原性微生物に対して高い拮抗活性をもつヘテロ重合組成物である。本方法によって得られる吸着剤の利点は消化管(GIT)中における長期有効性であり、本吸着剤は乾燥後その有効性を長期間保ち、またGIT全体に亘って長く活性を確保するものである。
【発明を実施するための手段】
【0050】
下記表に本発明の実施態様の一例と、得られた吸着剤についての検討結果を示す。
【実施例】
【0051】
実施例1(表1第2欄)
最初の原料であるひまわり種子殻を0.5〜3.5mmサイズまで破砕し、塩酸36%溶液を用いて固体/液体比1:7で3気圧の沸騰方式下で2.0時間処理する。次いで、加水分解生成物を沸騰水で10分間濯ぎ、固体相を水酸化アンモニウム1%溶液を用いて、そのpH値が4.5に達するまで抽出及び濯ぎを行い、次いで固体相を再度抽出して、濯ぎ流水中のpHが6.2〜6.4になるまで軟水を用いて濯ぎを継続する。
【0052】
実施例2(表1第3欄)
実施例1と同様にして破砕された最初の原料を硫酸28%溶液を用いて固体/液体比1:7で3気圧下の沸騰方式で1.5時間処理し、続いて加圧下で沸騰水を用いて15分間濯ぎ、次いで固体相を水酸化カリ0.5%溶液を用いてpH値が4.0となるまで抽出及び濯ぎを行い、濯ぎ流水中のpHが5.8〜6.3になるまで軟水を用いて濯ぎを継続する。得られた生成物は湿度が12.5%となるまで乾燥され、最後に吸着剤は対照試験に供される。表1に得られた吸着剤に関する試験結果を示す(第3欄)。
【0053】
実施例3(表1第4欄)
破砕された最初の原料は硫酸20%溶液により固体/液体比1:6で2気圧の沸騰方式下で1.5時間加水分解処理され、固体相は水酸化カリ0.1%溶液を用いてpH値が4.5になるまで抽出及び濯ぎ処理され、次いでpHが5.2になるまで軟水で濯ぎ処理され、湿度が7.8%となるまで乾燥され、得られた吸着剤は試験に供される。多平面マトリックス表面の典型的微細構造の電子顕微鏡写真(1000倍)を図10に示す。
【0054】
実施例4(表1第5欄)
最初の原料は塩酸16%溶液により固体/液体比1:7で1気圧下の沸騰方式で1.5時間加水分解処理され、固体相は分離され、水酸化アンモニウム1%溶液でpH値が3.5になるまで濯ぎ処理され、次いでpH値が4.9になるまで軟水で濯ぎ処理される。得られた物質は湿度が10.4%となるまで乾燥され、得られた吸着剤は試験に供される。
【0055】
実施例5(表1第6欄)
最初の原料をオルトリン酸5%溶液を用いて固体/液体比1:3で1.5気圧下沸騰方式で4.5時間加水分解処理し、固体相を分離してpH値が4.5になるまで水酸化カリ0.1%溶液を用いて濯ぎ処理を行い、次いで軟水を用いてpH値が5.0になるまで濯ぎ処理を行い、湿度が8.5%になるまで乾燥処理する。得られた吸着剤は表1に示したパラメータを有する。
【0056】
実施例6(表1第7欄)
最初の原料を硫酸0.3%溶液を用いて固体/液体比1:8で2.5気圧下沸騰方式で4.5時間加水分解処理し、固体相を分離してpH値が4.2になるまで水酸化ナトリウム0.5%溶液を用いて濯ぎ処理を行い、次いで軟水を用いてpH値が5.8になるまで濯ぎ処理を行い、湿度が0.8%になるまで乾燥処理して対照試験を実施する。得られた吸着剤は表1に示したパラメータを有する。
【0057】
実施例7(表1第8欄)
最初の原料を硫酸10%溶液を用いて固体/液体比1:8で2気圧下沸騰方式で0.5時間加水分解処理し、固体相を分離してpH値が4.2になるまで水酸化アンモニウム0.1%溶液を用いて濯ぎ処理を行い、次いで軟水を用いてpH値が5.9になるまで濯ぎ処理を行い、湿度が19.8%になるまで乾燥処理して対照試験を実施する。得られた吸着剤は表1に示したパラメータを有する。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例8:銀改質型腸内吸着剤の調製
実施例1〜7のいずれかによって得られた吸着剤へ下記方法により銀イオンを含浸させることが可能である。実施例3によって100g/l濃度、pH6.3の懸濁液状態で得られた吸着剤を銀イオン濃度Cが0.057g/lのAgNO3溶液中へ入れる。次いでこの混合液を混和して、平衡濃度に達するまで30〜40分間静止状態に保持する。イオン吸収値はフレンドリッヒ式;
r=K・Cn
(式中、rは吸収値mmol/gを表し、K及びn(1,2)は定数、Cは銀イオン濃度M−1を表す)に従って設定される。次いで、液体相を濾過により分離して、固体残渣を蒸留水あるいは軟水で濯いでから100℃で乾燥する。これにより得られた吸着剤には下記特性が備えられる。
水分含量、質量% 19.1
比容積g/l 240
抽出物酸度pH 2.35
灰残分% 0.6
メチレンブルー吸収能(pH7.0)mg/g 56.0
強結合定数n1(K=2.5・10−4M−1)mmol/gをもつ活性結合中心のある銀イオン数 0.013〜0.019
強結合定数n2(K=1.8・10−3M−1)mmol/gをもつ活性結合中心のある銀イオン数 0.064〜0.074
【0060】
実施例9:プロバイオテックバクテリアのバイオマスを用いた吸着剤の改質
実施例4の吸着剤を乾燥キャビネット中において+80℃で2時間加熱する。プロバイオテックバクテリアの懸濁液を調製し、この目的のため、細菌、Bacillus subtilius、Lactobacillus、あるいはBifidobacteriumの各系統の1日生長分を生理食塩水中に取り出し、光学的濁り標準に従って10億(108)コロニー形成単位(CFU)/mlに調製した。次いで、吸着剤を得られた細菌懸濁液と共に固体/液体比1:10で混合して1時間培養した。選定したパラメータに基づき、吸着剤1gには、細菌懸濁液から細菌が100%吸収されたと仮定すれば1回の治療及び予防投与量に当たる約109CFUのプロバイオテックバクテリアが含まれる。次いで固体相を液体相から分離し、+37℃で乾燥する。最終的に得られた吸着剤を吸収試験に供し、吸収された細菌の活性を標準法に従って調整する。
実施例3、8及び4、9によって得られる腸内吸着剤の吸収及び構造特性を表2、3にそれぞれ示す。
【0061】
【表2】
表中、am、mmol/gは単層容積、
Q1−λ、KJ/molは純吸収熱、
A、m2/gは比表面積、
V、cm3/gは全孔容積、及び
Vmi、cm3/gは微細孔容積を表す。
【0062】
【表3】
表中、CはBET式の定数である。
【0063】
開発された吸着剤及びその製造方法はパイロット製造条件において試験されている。本発明に係る新規な吸着剤は、農薬、マイコトキシン、質の悪い飼料による家禽の急性及び慢性中毒に対し、また細菌やウイルスによる感染症に対しても、家畜飼料への有効な治療的及び予防的飼料添加物となることが確認されている。生体外試験及び生体内試験により、最適な生物活性投与量及び吸着剤の医薬製剤としての投与方法が決定されている。
以下に本発明における実施例を示す。
【0064】
実施例10:生体外条件でのマイコトキシンの吸収効率
表4に本発明吸着剤による種々マイコトキシンの結合効率を獣医によって実用されている公知製剤である「マイコソーブ(Mycosorb)」と比較して示す(マイコトキシン吸収%)。
表4から理解されるように、本発明吸着剤の吸収活性は、広範に使用されているマイコトキシン吸着剤である「マイコソーブ」よりも高い。
【0065】
【表4】
【0066】
実施例11:生体外条件における吸着剤の抗細菌活性
【0067】
【表5】
【0068】
表5から理解されるように、銀イオンを伴う吸着剤によって、Staph. aureus系統"Covan I"、E. coli系統"A-M"、及びPast. multocida系統"K MIEV-26"それぞれの細菌培養コロニーの成長は最初の30分間の暴露によって有効に抑制される。この効果は、銀を含む吸着剤の生物活性体の腸内細菌の細菌酵素、タンパク質及び膜構造に対する生化学的作用及び触媒作用の複合作用によって生ずると考えられる。
【0069】
吸着剤の作用に対する感受性を見た場合、検討された微生物において、Pasteurella multocida、Escherichia coli、Staphylococcus aureusの順となる。同時に、グラム陽性ミクロフローラはグラム陰性ミクロフローラよりも吸着剤の作用に対してより感受性であると判別される。
【0070】
本発明吸着剤の微生物細胞に対する吸収能を、獣医科において実用されている類似製品と比較して下記表に示す。
【0071】
【表6】
【0072】
表6から理解されるように、本発明吸着剤の微生物細胞に対する吸収能は、「マイクロソーブ」よりも3.3〜3.4倍高く、また「リグナソーブ」よりも2.1〜2.2倍高い(両者とも市販製品である)。
【0073】
実施例12:生体外条件における本発明吸着剤の抗ウイルス活性
本発明吸着剤の、鶏に広範に認められるウイルス病であるニューカッスル病(ND)、感染性滑液包病(IBD)、ガンボロ病、及び感染性気管支炎(IB)に対して実験によって確認された活性を表7、8、9に示す。
本発明吸着剤の保護作用は、移植可能な種々系統の細胞培養、FL(ヒト羊膜)、SPEV(ブタ胎児腎臓)、MDVK(ウシ腎臓)、FRHK−4x(ミドリキヌザル胎児腎臓)、及び初期トリプシン22細胞株、FEK(鶏胎児繊維芽細胞)において見出されている。
ニューカッスル病(ラ・ソタ系統)、感染性気管支炎(系統H−120)、及び感染性滑液包病(系統KMIEV−13)のそれぞれに対する生理食塩水中に溶解された生乾燥ワクチンを感染材料として用いた。ウイルスの感染投与量は上記細胞培養の培養液の滴定を行って決定する。
表7に本発明吸着剤濃度の細胞培養FL及びSPEV中におけるIBD及びIBウイルスの力価に対する効果についての結果を示す。
【0074】
【表7】
【0075】
表7から理解されるように、本発明吸着剤によって細胞培養FL及びSPEVはIBDウイルス及びIBウイルスの増殖から有効に保護される。本発明吸着剤の作用により、前記ウイルスの力価は、対照との比較における実験において0.5〜3.75lgTCD50/ml(1ml中の組織細胞病原性の対数)まで減じられる。
本発明吸着剤によるIBDウイルス及びIBウイルスの感染活性の抑制はSPEV細胞単層に対する吸着剤の処理時間によって異なり、この抑制効果は表8に示した通りである。
【0076】
【表8】
【0077】
表8から理解されるように、本発明吸着剤でウイルス懸濁液を処理することによりIBウイルスの感染活性の抑制が行われるが、この抑制は処理期間に左右される。暴露30分あるいは60分後に細胞単層上においてウイルス懸濁液と吸着剤を混合することによりIBウイルスの感染活性は完全に抑制されるが、このことは対照区との比較試験において、CPE(細胞病原性)の欠如によることが示されている。対照区では細胞単層の100%衰退が観察された。
表9に、鶏のニューカッスル病ウイルスの力価に対する本発明吸着剤の影響に関するデータを示す。
【0078】
【表9】
【0079】
吸着剤を加えない場合のNDウイルス力価は8.0log2である。吸着剤を1.25mg/ml及び2.5mg/ml濃度で添加したウイルス含有液とした後においても、ウイルスにHAR(血球凝集反応)は認められない。濃度0.325mg/ml及び0.65mg/mlではウイルスの存在は目立たなかったが、対照区と比較して力価は劣った。
従って、本発明吸着剤は、生体外において、感染性滑液包病(ガンボロ病)ウイルス及び感染性気管支炎ウイルスの感染を受ける細胞培養FL及びSPEVに対し高い保護作用をもつことが分かる。この保護作用は、対照区との比較において、感染性滑液包病に関してはウイルス力価が3.0〜3.25lgTCD50/mlまで低下し、また感染性気管支炎に関してはウイルス力価が3.25〜3.75ljTCD50/mlまで低下することによって示される。
【0080】
実施例13:生体外条件における本発明吸着剤の抗酸化活性
本発明吸着剤(リン酸緩衝液懸濁液)の抗酸化活性(AOA)を、ルミノールの発光消滅法によって調べる。反応媒体(全容積3.0ml)には、50mM K−リン酸緩衝液(pH7.4)、100μMヒトヘモグロビン、90μMルミノール、及び種々濃度の本発明吸着剤を含ませた。対照区には本発明吸着剤に代えて0.1M K−リン酸緩衝液を用いた。反応媒体中へ130μM過酸化水素を加えて化学ルミネセンスを開始させた。本発明吸着剤によるルミノール化学ルミネセンス消滅の典型的画像を図17に示す(リン酸緩衝液への均質吸着剤懸濁液の濃度170、250、410、810μg/mlそれぞれへの添加後におけるルミノール消滅度を曲線2〜6にそれぞれ示し、及び対照区におけるそれを曲線1に示す)。本発明吸着剤がAOAを示し、その効果は吸着剤濃度に依存して異なることが理解できる。
既知の抗酸化剤であるアスコルビン酸に対して本発明吸着剤のAOAを計算すると下記結果が得られる。すなわち、本発明吸着剤の抗酸化活性は、吸着剤乾燥重量g当たりアルコルビン酸0.04±0.01mmolに相当する。
【0081】
実施例14:生体外条件における本発明吸着剤の農薬吸収活性
生体外条件における本発明吸着剤の種々農薬に対する結合効率を図15及び図16に示す。図15は2,4−DBEのクロマトグラムを示したグラフである。(a)はpH7以下での本発明吸着剤による吸収前、及び(b)は吸収後を示すグラフであり、抽出容積は2ml、農薬添加量は吸着剤g当たり10μgである。グラフ(b)は縮尺1:16であり、2,4−DBEの場合リテンション・タイム12.88分でのピークは16である。図16は農薬混合物CLP−260の吸着剤における吸収を示すクロマトグラムであり、(a)はpH7以下、抽出容積2ml、吸着剤g当たり農薬添加量10μgにおける吸着剤への吸収前、及び(b)は吸収後を示す。グラフ(b)の縮尺は1:10であり、リテンション・タイムごとのピークの中で、1〜3分は抽出剤(ヘキサン)中の不純物、5〜7分は農薬分解物、11.44分はγ−へキサクロルシクロヘキサン(リンデン)、12.28分はヘプタクロル、13.29分はアルドリン、17.88分はディルドリン、18.59分はエンドリン、20.05分はDDD(DDT分解物)、及び20.67分はDDTによる吸収を示す。
この実験から、本発明吸着剤によって環境上極めて有害な農薬が効率的に吸収されると結論することが可能である。
【0082】
実施例:マイコトキシン中毒症の予防
試験計画に従ってブロイラー種の鶏に対して試験を実施した。鶏を3つのグループ(各グループは25羽で構成)に分けて同一微気象条件下で飼育器中に収容した。試験は鶏が日令45日になるまで30日間継続実施した。全試験期間中、グループ1の鶏には飼料kg当たり100μg量のマイコトキシンT−2と62μg量のオクラトキシンAを含む飼料を与えた。グループ2の鶏にも同様な飼料を与え、この場合本発明吸着剤は有害物が含まれる飼料中へ飼料質量の1%相当量を添加した。グループ3の鶏にはマイコトキシンも吸着剤も含まれない純粋な飼料を与えた。すべての飼料について脂肪過酸化価は標準であり、ヨウ素の0.1%を超えなかった。鶏は臨床的なフレがあるため毎日観察を行い、15日毎に鶏の体重を測り、血液学的及び生化学的パラメータを調べるため血液サンプルを腋血管から採取した。実験終了後、鶏を屠殺し、死後肝臓及び腎臓のサンプルを摘出して毒物学的検査を行った。心臓、肝臓、膵臓、ファブリキウス嚢及び胃も摘出して重量測定及び組織学的研究に供した。検査に供した鶏の肝臓及び腎臓の毒性及び生物的指標を表10に示す。
【0083】
【表10】
【0084】
表10から、グループ1から得た肝臓及び腎臓サンプルによって毒性が十分示され、生成物に低度の生物活性があることが観察される(生物活性値はそれぞれ69.9%及び70.1%)。吸着剤を摂食したグループ2の鶏から得られた臓器サンプルでは、これら指標値はさらに高く(それぞれ98.9%及び89.1%)、グループ3の指標値に近く、グループ2の臓器には毒性は認められないか、あるいはあっても僅かである。体重変化の動態をみると、吸着剤を受けたグループ2の鶏では平均日ごと獲得体重が対照グループの鶏よりも11.2%高いことが示された。
【0085】
ゼアラレノンによって引き起こされるマイコトキシン中毒症に対する本発明吸着剤の予防効果を類似の方法によって測定した。この研究は初期の吠え期にある若い豚に対して実施した。
【0086】
臨床的に健康な子豚(年齢:1.5ヶ月)5頭から成るグループを3グループ設けた。試験実施前、マイコトキシン中毒症期間中の腸内消化過程における腸内容量を調べるため、各グループから3頭に手術を行って空腸上へ瘻孔を取り付けた。
【0087】
グループ1の子豚は、ゼアラレノン・マイコトキシンを飼料重量当たり0.38〜0.40mg濃度で添加し、脂肪過酸化価がヨウ素の0.1〜0.25%である飼料を与えて3週間に亘って飼育した。飼料の毒性は毎週チェックした。グループ2の子豚にはゼアラレノン・マイコトキシンが添加され、かつ飼料1kg当たり吸着剤が1.5g添加された飼料を与えた。グループ3の子豚は対照区とし、これらの子豚には良質な飼料を与えた。
【0088】
試験の全期間に亘って子豚の完全な臨床検査を行い、試験開始時、及び7日目、14日目、及び21日目(試験終了日)に血液サンプルを採取して血液学的及び生化学的分析を行った。血液は環状静脈洞から採取した。試験開始時及び21日目に、子豚の体重を測定して平均各日体重増加量を調べた。
【0089】
空腸内容物が瘻孔を通して得られたものかを調べるため、空腸消化についてもプローブを用いて同時に調査した。腸内消化の特徴はα−アミラーゼ活性から判定される。α−アミラーゼは腸内内容物の液部分中、粘膜表面上のバイオプテート上、3つの脱着部分中、及び粘膜組織中に見出される。
【0090】
試験対象とされた子豚は、器官及び組織の形態学的及び組織学的研究、及び食肉及び内臓の獣医衛生検査のため21日目に屠殺された。
【0091】
ゼアラレノンを高含量(飼料kg当たり0.38〜0.40mg)含む質の悪い飼料を摂食したことにより病的経過が引き起こされ、その病的経過は肝臓の急性炎症及び炎症性ジストロフィーの拡がりによって特徴付けられる。さらに、このような経過は急性状態で推移し、進行性腎臓不全症状が発現されてくる。グループ2の子豚について吸着剤を飼料kg当たり1.5g添加することにより著しい保護効果が生じ、これにより、
この病的経過に特有な症状の強さが減じられ、病状が慢性型へと変化し、腎臓不全の徴候も見られなくなる、
小腸内消化過程の抑制を減じ、ついで回復させる、
飼料と共に器官中へ入った場合には、肝臓及び腎臓の重大な機能不全をひき起し、これらの器官の相対生物活性値に影響を与えるゼアラレノンの生物活性値を改善する。マイコトキシンで汚染された飼料への吸着剤添加後における影響対象器官の生物活性値は、(マイコトキシン量が多い場合、実質的に最大濃度限界より高い場合には、)健康な動物と比較して僅かしか減少しなかった。
【0092】
従って、α-アミラーゼ活性から推定される空腸における消化過程が減じられ、また図18に示されているように吸着剤によって消化過程抑制の防止が促進される。肝臓及び腎臓の機能状態にも重大な影響が及ぶが、吸着剤を投与することによって病気の動物に比較して生物活性値の維持が促進される。
【0093】
実施例16:鶏下痢症候群の治療
治療効果を調べるため、日令10日のヒヨコを3グループ設けた(各グループ10頭、2グループは試験用、1グループは対照区)。試験開始前に、すべてのグループのヒヨコの体重測定を行った。グループ1のヒヨコに吸着剤/プロバイオテック混合物(SPC)を1%w/w添加した飼料を5日間摂食させ、グループ2のヒヨコには塩基性プロバイオテック類似物−「バチルス・サブチリス調製品BPS−44(Bacillus subtilis BPS-44の調製品、ウクライナ製)」を10ml(0.02g)添加した飼料を摂食させ、さらにグループ3(対照区)のヒヨコには医薬物質が添加されていない通常飼料を摂食させた。次いで全グループのヒヨコの体重を測定し、細菌Escherichia coli(鳥病原性系統SM)の濃度2.5億CFU(感染量−3億CFU)の懸濁液1.2mlを用いて経口感染させた。次の5日間では感染したヒヨコの観察及び同一条件での吸着剤の投与を行った。異なる試験ステージにおけるヒヨコの取得体重の変化を表11に示す。
【0094】
【表11】
【0095】
観察全期間を通して最初の2つのグループのヒヨコは病気にならず、臨床的に健康で活発に飼料及び水を摂食した。対照区のヒヨコにはふさぎ症状、食欲低下、水消費量の低下が認められ、2羽は下痢を起こし、1羽は感染4日後に死亡した。表11から理解されるように、SPCにはその基礎物質であるBPS−44を上回る効率的成長刺激作用がある。予防及び治療期間中に新複合物SPCを投与することにより、ヒヨコの体重が前記基礎物質よりも2.8〜3.4%増加する。表11は微生物バイオマスが吸着剤表面にある状態を示した写真である(1000倍)。
【0096】
実施例17:子豚の下痢症候群に対する吸着剤・プロバイオテック複合体(SPC)の治療効果及び予防効果試験
子豚の下痢症候群期間中における吸着剤・プロバイオテック複合体(SPC)の治療及び予防効果について調べるため、生後1.5月の子豚で7グループ(各グループ7頭)を構成した。Sal. cholerae Suisの培養液を動物体重kg当たり2・109CFUの細菌量で与えることにより試験対象となる子豚のすべてに下痢症候群が引き起こされた。この培養液は動物感染用に選抜されたものである。何故なら、サルモネラ菌はヒトの急性食中毒や動物の下痢症候群をひき起こす最も危険な有毒伝染細菌であるからである。
【0097】
サルモネラ症状の発現及び進行後、グループ1の子豚には抗生物質「コバクタン」の筋肉注射を体重10kg当たり0.5mlの薬量で、また抗毒素血清を1頭当たり30mlの投与量で与えた。グループ2の子豚には抗生物質「コバクタン」の筋肉注射を体重10kg当たり0.5mlの薬量で、また吸着剤を体重kg当たり1gの投与量で経口投与した。グループ3の子豚には抗生物質「コバクタン」の筋肉注射を体重10kg当たり0.5mlの薬量で、またSPCを体重kg当たり1gの投与量で経口投与した。グループ4の子豚には吸着剤を体重kg当たり1gの投与量で与えた。グループ5の子豚には抗生物質「コバクタン」を体重10kg当たり0.5mlの薬量で与えた。グループ6の子豚にはSPCを体重kg当たり1gの投与量で経口投与した。さらに、グループ6の子豚には感染前の5日間吸着剤・プロバイオテック複合物を体重kg当たり1gの投与量で経口投与した。
吸着剤は5日間の期間中毎日一回接触させた。
対照区であるグループ7の子豚には何も処理は行っていない。
【0098】
全試験期間を通して動物の完全臨床検査を実施し、血液サンプルは試験開始時、4日目、及び10日目(試験終了)に血液学及び生化学的研究のために採取した。子豚は試験10日目に器官及び組織の生態学的、組織学的、細菌学的分析を目的として屠殺され、また肉及び内臓の獣医・衛生技術熟練に供した。
【0099】
分析により以下のことが判明した。
サルモネラ症における子豚の治療中に「コバクタン」及び抗毒素血清の投与(グループ1)、「コバクタン」及び吸着剤の投与(グループ2)、あるいは「コバクタン」及び吸着剤・プロバイオテック複合物(SPC)の投与(グループ3)を行うことによって、病気の臨床症状の急速な(5日目)消失、感染、炎症経過の抑制及び中毒状態の抑制、肝臓機能の回復が速められた。
SPCを予防目的で投与された子豚(グループ6)に関しては、全試験期間を通して感染及び炎症経過の進行を示す確信に足る変化を記録できなかった。
試験に用いた動物の死体の肉及び内臓を用いた獣医・衛生技術熟練作業において以下のことが示された。
屠殺された動物の筋肉組織の化学構造に対する試験に用いた吸着剤投与の影響は皆無であった。
すべてのグループの子豚の物理化学的数値に有意な差異はなく、通常の範囲内であった。しかしながら、グループ6の動物の肉のpH値が他のグループの動物のpH値よりも多少低かった。これは肉の成熟及び貯蔵にとって良好な結果である。
試験グループ及び対照区の動物の肉の生物的数値の表示値には重要な差異はなかった。試験を行ったサンプルのいずれにも毒性は示されなかった。
動物の実質的器官、すなわち肝臓及び腎臓の生物的数値及び食物安全性の明僚化において重要なずれが検出された。グループ4及び5の産出物の生物的数値に幾分の低下が観察された。これらグループからは僅かに目立つ毒性が検出されたが、これは浸滴虫の繁殖速度の10%減少、形態変化、及び死虫の存在を生ずる程度のものであった。
【0100】
【表12】
【0101】
上述した指標の変化はグループ1、2、3及び6のサンプルについては観察されなかった。肉の毒性パラメータ及び生物的パラメータを表12に、また肝臓の毒性及び生物的パラメータを表13に示す。
【0102】
【表13】
【0103】
実施例18:鶏のニューカッスル病(NB)ウイルス、感染性咽頭気管炎ウイルス(ILT)、及び感染性気管支炎ウイルス(IB)感染中における吸着剤の生体内治療及び予防作用
ニューカッスル病ウイルスに対する吸着剤の効果を調べるため、日令12日のFPF種ヒヨコを2グループ(各グループを10羽で構成)設けた。グループ1(試験グループ)のヒヨコには吸着剤を飼料へ1%量加えてニューカッスル病ウイルス感染前の5日間及び感染後の10日間摂食させた。グループ2(対照区)のヒヨコには吸着剤を含まない飼料を摂食させた。全グループのヒヨコへの感染はニューカッスル病ウイルスの基準毒性系統”T−53”を1000ELD50ml/0.2ml濃度で筋肉注射して実施した。感染後10日間の期間観察を実施した。
【0104】
感染4日目に特徴的な臨床徴候、すなわち低度の麻痺、頭部の震えを示しているグループ2(対照区)のヒヨコ2羽の病状を記録した。これら2羽は死亡した。5日目、グループ1(試験区)のヒヨコ1羽が特徴的臨床徴候を伴う病状を示した。グループ2(対照区)のヒヨコ3羽が発病し、死亡した。6日目、対照区において、さらにヒヨコ2羽の発病及び死亡が記録された。感染後7日目、各グループにおいてヒヨコがそれぞれ2羽発病し死亡した。8日目、グループ1のヒヨコ1羽が発病・死亡し、グループ2のヒヨコ1羽(最終個体)が発病し、感染後9日目に死亡した。グループ1に関し、さらに5日間観察を続けたが発病・死亡は記録されなかった。表14にヒヨコの発病及び脂肪に関するデータを示す。
表から理解されるように、グループ2では100%の発病率及び脂肪率が観察されたのに対し、グループ1ではヒヨコの60%が発病に至らなかった。
【0105】
【表14】
【0106】
死亡したヒヨコはすべて解剖し死後検査を実施した。死亡したすべてのヒヨコの十二指腸に粘膜上壊死病巣を伴った出血性炎症が記録され、さらにグループ2のヒヨコ3羽において筋肉と腺性心室の移行部分に出血が記録された。
【0107】
感染性気管支炎ウイルスに対する吸着剤の効果を調べるため、FPF種のヒヨコ日令12日を各10羽ずつ2グループに構成した。グループ1(試験区)のヒヨコには吸着剤を飼料へ1%量混入させて感染性気管支炎ウイルスの感染前5日間と感染後10日間の期間摂食させた。グループ2(対照区)のヒヨコには吸着剤の含まれない飼料を与えた。このグループのヒヨコに対する感染は感染性気管支炎ウイルスの基準毒性系統”Chapaevsky"を濃度1000ELD50`ml/0.2mlで鼻孔経由によって接種して実施した。感染後10日間観察を実施した。ヒヨコの体重測定は試験前(基礎体重)、試験5日後(感染)、及び試験15日後(試験終了日)に実施した。
【0108】
観察期間中、試験区ではヒヨコ5羽が発病し、対照区ではヒヨコ8羽が発病したが死亡したヒヨコはなかった。病気は呼吸症状(結膜炎、鼻炎)を伴い激しくない状況で進行した。感染10日後、両グループのヒヨコを屠殺して死後検査を実施した。病気のヒヨコの気管中に重篤なカタル性滲出液が記録された。ELISA(酵素連関免疫吸着検定)法による感染後10日目の血液検査により、特定抗体の欠如が試験区では30%、及び対照区では10%の割合で示された。
感染10日後における平均取得体重は、試験区では355.9g、また対照区では302.3gであった(表15参照)。
【0109】
【表15】
【0110】
感染性咽頭気管炎ウイルスに対する吸着剤の効果を調べるため、FPF種のヒヨコ(日令25日、各グループ10羽)を2グループ構成した。グループ1(試験区)のヒヨコには吸着剤を飼料へ1%量混入させて感染性咽頭気管炎ウイルスの感染前5日間と感染後10日間の期間摂食させた。グループ2(対照区)のヒヨコには吸着剤の全く含まれない飼料を与えた。これら両グループのヒヨコに対する感染は感染性咽頭気管炎ウイルスの基準毒性系統”Bogatischevsky"を濃度10000EID50`ml/0.2mlで経気管投与による接種にて実施した。感染後10日間観察を実施した。ヒヨコの体重測定は感染前、及び感染10日後(試験終了日)に実施した。
【0111】
観察期間中、試験区のヒヨコ6羽が発病し、他方対照区ではヒヨコ8羽が発病したが、死亡したヒヨコはいなかった。この病気は結合炎症をともって軽い症状で進行した。感染10日目に両グループのヒヨコを屠殺して死後検査を実施した。病気のヒヨコに繊維性の結合炎症が記録された。ELISA法による感染後10日目の血清検査により、特定抗体の欠如が試験区では20%、及び対照区では10%の割合で示された。
【0112】
【表16】
【0113】
感染後10日間における平均取得体重は試験区で785.6g、対照区で764.4gであった(表16参照)。
従って、ニューカッスル病ウイルスによる感染において、試験区で60%、対照区で0%と吸着剤の高い治療及び予防効果が示された。一定のウイルスに対する吸着剤の高い効果は、小腸及び大腸における基本的局在性に関連するものである。
ヒヨコの感染性気管支炎ウイルス及び感染性咽頭気管炎ウイルス感染中に吸着剤の効果低減が記録されたが、これは明らかに呼吸器官中におけるウイルスの主要局在位置に関連したものである。
【0114】
実施例19:子豚の中毒性肝栄養失調症の治療
中毒性肝栄養失調症に罹患した子豚の2グループ(各グループ15頭)に対して治療を実施した。グループ1(試験区)の子豚には、吸着剤を治療及び予防の主剤として子豚体重kg当たり0.5gの投与量で飼料と共に回復まで毎日投与した。グループ2(対照区)の子豚は同一飼育及び維持条件に置いて、標準物質である抗生物質ゲオミシンを用いて治療を行った。
治療期間中においては、全試験動物の臨床状態について測定した。治療1日目、3日目、6日目、及び9日目、各グループから5頭の血液を採取して生化学的分析を行った。治療の結果による脂肪、色素、タンパク質交換等の指標の変化(M±m,P)について表17に示す。
これらの結果から理解できるように、試験区の動物において肝臓の抗毒素機能の回復、脂肪及び色素交換の最適化が治療後3日目には始まり、9日目になっても猶認められる。前記物質による治療後に肝臓構造の修繕再生が記録されているが、これは肝細胞の類壊死病巣数の減少、肝臓ガーダー破壊の減少、及び増殖細胞の僅かな量で示されるものである。
【0115】
【表17】
【0116】
実施例20:過酸化脂質(POL)高含有飼料飼育中における6グループから成るブロイラー種ヒヨコの器官抗毒素タンパク質系に対する吸着剤の影響(供試ブロイラー種、日令:15日)
試験期間は30日間とした。飼料へ大豆油を飼料100g当たり4mlの割合で加えた[飼料の酸価は26〜30.0mgKOHの範囲内、過酸化価は全試験期間を通してヨウ素の0.45%〜0.59%の範囲内である(通常は20.0mgKOH以下、かつヨウ素の0.3%以下)]。グループ1、2、3及び4のヒヨコに脂肪分解物を含む飼料を摂食させた。吸着剤と飼料を、グループ1に関しては飼料質量に対して0.5%、グループ2に関しては1%、グループ3に関しては1.5%、グループ4に関しては2%の割合で混合した。グループ5のヒヨコには、脂肪の過酸化価及び酸価(脂肪酸価20.0mgKOH、脂肪過酸化価:ヨウ素の0.06%)が正常である通常のブロイラー用飼料(レシート5B)を与えた。グループ6のヒヨコには、グループ1〜4における過酸化物パラメータと同様の大豆油を添加した飼料を与えた。
【0117】
試験期間中、観察はすべてのグループのヒヨコについて実施した。ヒヨコの臨床状態、すなわちそれらの行動及び飼料消費状況について考慮を払った。試験開始前(基礎数値)、試験15日目、及び試験30日目にヒヨコの体重測定及び血液採取(全血及び血清用)を実施した。この血液試験には、脂肪過酸化物酸化(POL)、すなわちマロンジアルデヒド(MDA)、脂質ヒドロペルオキシド、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性を含めた。
試験終了時、ヒヨコを屠殺して体内脂肪及び脳のサンプルを採取した。体内脂肪の酸価及び過酸化価を測定した。脳中のMDA濃度も測定した。
【0118】
試験30日目、グループ2〜4のヒヨコにグループ6のヒヨコと比較してかなり低いが、グループ5(正常な脂肪を含む飼料)の数値を超えないSOD活性が観察された。これは試験区において対照区に比べてPOL経過が低下していることの証拠である。吸着剤の保護作用は試験30日目における試験区におけるヒドロペルオキシドの顕著な減少、及び試験15日目及び30日目におけるマロンジアルデヒド濃度によっても確認される。
【0119】
他の生化学的パラメータ及び血液学的パラメータの検討により、生体内条件において、吸着剤に過酸化物酸化生成物含量が増加された飼料の負作用に対する顕著な保護作用があることが示された。実際、試験区のヒヨコ血液中のMDA濃度は16〜18%低く、SOD活性は10〜12.5%低く、またヒドロペルオキシド含量は吸着剤を含まない酸化飼料が与えられたヒヨコに比べて28〜35%低い。試験区のヒヨコにおけるこれらの数値は正常飼料を与えられたグループのヒヨコの数値に近いものである。吸着剤を種々投与量で与えられたヒヨコの体内脂肪の酸価は26〜30%低く、正常飼料を与えられたヒヨコの酸価と大きく異ならない。試験区のヒヨコの脳中MDA濃度は、吸着剤を含まない酸化飼料を与えられたヒヨコに比べて42〜56%低く、このことは図19、20、21、22、7、8、9、10に示した通りである。
従って、吸着剤の適用には脂質過酸化物酸化の主パラメータに対する正常化作用がある。吸着剤は、酸化程度の高い脂質を含む飼料が与えられる全期間に亘って投与されるべきである。
【0120】
実施例21:農薬による急性及び慢性中毒における吸着剤の治療効果
除草剤2,4−D及び殺虫剤リンデン(1,2,3,4,5,6−ヘキサクロルシクロヘキサン)による急性中毒期間中に下記方法において試験を実施した。日令30日のブロイラー種ヒヨコから2グループ(各グループ25羽)を編成し、このような2グループをさらに編成して2群とした。各群において、一組のヒヨコには吸着剤を飼料へ飼料質量の1%相当量混入して摂食させた。グループ2には吸着剤を全く含まない飼料を与えた。試験開始後2日目に、プローブを用いて2,4−Dを飼料中へ取り込み、第一群のヒヨコへ体重kg当たり500mgを一回投与して中毒させ、また第二群のヒヨコにはリンデンを体重kg当たり15mg与えて中毒させた。すべてのヒヨコについて毎日臨床状態を考慮しながら観察した。農薬の投与後1日目、2日目、3日目、4日目、及び5日目に、各グループからヒヨコ5羽を屠殺して筋肉及び肝臓組織を採取して農薬の残留量を定量した。
除草剤2,4−D及びリンデンの残留量の変化を図に示し(図13及び14)、農薬によるヒヨコの急性中毒期間中における吸着剤の効果を示す。4日目にはヒヨコの肝臓からほぼ完全に除草剤2,4−Dが、また5日目にはリンデンが除去され、同時に、吸着剤を投与を受けていない対照区のヒヨコよりもよりも臨床中毒症状が緩和されて記録された。
除草剤2,4−D及びリンデンによる慢性中毒中における吸着剤適用の効果を表18及び19にそれぞれ示す。このれら表には吸着剤の投与を受けたヒヨコの体重変化も示されている。
【0121】
日令30日のブロイラー種を4グループに編成し、このような4グループをさらに設けて2群とした。第1群のグループ1、グループ2、グループ3のヒヨコに除草剤2,4−Dを体重kg当たり200mgの投与量で与えた。第2群においては、殺虫剤であるリンデンを体重kg当たり5mgの薬量でプローブを用いて20日の期間毎日素嚢中へ投与した。両群ともにグループ4は対照区とした。グループ1のヒヨコには、各群とも、吸着剤を飼料中に1%量含ませて与えた。グループ2のヒヨコには植物性吸着剤を飼料中へ2%量含ませて与えた。グループ3及び4のヒヨコは、吸着剤を含まない通常飼料を用いて飼育した。両群のすべてのグループの鶏について臨床症状を考慮した観察を毎日実施した。体重測定、生化学的検査及び血液学的検査のための血液採取を下記条件で試験開始時、10日目、及び20日目に行った。
【0122】
【表18】
【0123】
【表19】
【0124】
農薬による慢性中毒状態において飼料中に吸着剤が1%量、及び2%量含まれた飼料を与えられたヒヨコの体重取得変化、血液学的パラメータ及び生化学的パラメータに関しては、正常飼料を与えられた対照区のヒヨコと比較しても大きな相違は認められなかった。農薬による慢性中毒状態にあって吸着剤を与えられなかったヒヨコの成長及び発育は、対照区グループのヒヨコに比較して遅延した。血液学的パラメータ及び生化学的パラメータにおける対照区のヒヨコとの偏差も記録した。従って、吸着剤の投与によって急性中毒中の農薬除去が早められ、臨床状態が正常化され、慢性中毒期間中に経過が入れ替わることが分かる。
【0125】
実施例22:飼育中における雌鶏の産卵生産性、及び養鶏製品の品質に対する吸着剤の影響
各グループが25羽から成る4グループの産卵鶏(日令160日、品種Hisex white)の卵の品質に対する吸着剤の影響を調べた。試験期間は30日間とした。グループ1の鶏は標準の良質混合飼料PK1Bで飼育した。グループ2の鶏には、脂肪過酸化価がヨウ素の0.4〜0.5%である酸化大豆油を飼料質量に対して1%相当量添加した類似混合飼料を与えた。グループ3の鶏にはグループ2と同様に酸化大豆油が混合されているが、さらに吸着剤が飼料重量に対して1%相当量添加された飼料を与えた。グループ4は対照区であり、このグループの鶏には良質大豆油を飼料重量に対して2%添加した混合飼料PK1Bを与えた。試験期間中、雌鶏の産卵品質を毎日調査し、卵黄の酸価測定値、ビタミンA及びカロチノイド類の含量、さらに形態的パラメータ(指標として、形状、重量、卵殻厚、等)を記録した。卵黄中のHAIR(血球凝集阻害反応)でのニューカッスル病ウイルス抗体の存在、及びDPR(拡散沈降反応)での感染性咽頭炎ウイルス抗体の存在を判定した。雌鶏へのこれら病気に対するワクチン接種は日令120日の時に実施した。
産卵品質、卵黄酸価変化、標準的指標に従った卵品質、及び卵黄中の経卵抗体レベルに対する吸着剤の影響を示すパラメータを表20、21、22及び23に示す。
表20によれば、グループ3に最も高い産卵能力が認められるが、このグループの雌鶏には吸着剤を含む準標準的飼料が与えられ、グループ4の雌鶏には良質油が添加された飼料が与えられている。最も質の劣る産卵がグループ2で記録されているが、このグループの雌鶏には吸着剤を含まない質の悪い飼料が与えられている。
【0126】
【表20】
【0127】
【表21】
【0128】
【表22】
【0129】
表21に基づいて、グループ3の鶏から得られた卵黄の酸価はグループ2のそれよりもかなり少なく、このことより脂肪の酸化度の高い質の悪い飼料を摂食している期間中において卵品質の本パラメータに対し吸着剤が有益な影響を与えることが確認できる。
表22によれば、すべてのグループの鶏についての卵品質パラメータは正常範囲内である。しかしながら、ビタミンA含量、カロチノイド類含量、及び卵平均重量等の主要パメータはグループ3ではかなり高くなっている。グループ2との比較において、ビタミンAでは4.6%、カロチノイド類では21.8%、平均卵重量では1.6%などの大きな差異が生じている。
表23によれば、質の悪い混合資料を与えた鶏(グループ2)から得られた卵黄中のNDウイルス及びIBD(ガンボロ病)ウイルスに対する経卵抗体の力価は他のグループの力価よりもずっと低かった。
【0130】
【表23】
【0131】
従って、鶏の基本飼料へ吸着剤を添加(飼料重量の1%量)することにより、質の悪い飼料によって影響される産卵能力及び卵品質パラメータが正常化され、また同時に経卵免疫反応も正常化される。
本吸着剤は動物疾病の予防及び治療に必要な試験に合格しており、動物及び養鶏用の医薬分野において多分野への使用が推奨可能である。本吸着剤の使用は、完全混合飼料へ配合して、産業に起因する不変的あるいは一時的汚染地域における環境毒物による動物組織に対する負の影響を除去するために、また動物の疾病及び中毒状態の流行地域において抗生物質あるいは他の安全とは言えない解毒物質の使用必要性を減じ、あるいは排除するための予防物質として特に有用である。
【0132】
本発明に係る新規吸着剤の本質的利点は、その高い製造生産性と使用効率、広範な作用性、及び既存の類似品に比較しての安価性にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕種子殻の酸加水分解により、水溶性バラスト物質を抽出し、かつ、リグニン、セルロース及びメラニンから成る組成物の生成を行う工程と、
水を用いた濯ぎ及び乾燥を行う工程から構成される吸着剤の製造方法であって、
前記酸加水分解は0.1〜0.7MPaの圧力下沸騰方式で0.3〜2.5時間の間に実施され、前記濯ぎは水及び又は0.1〜1.0%アルカリ溶液を用いて、次いでさらに軟水を用いて実施され、及び全体での有孔度が0.04〜50μの範囲内となる有孔多平面マトリックスから成り、かつマトリックス上に生物活性物質(BAS)から成る複合物が固定状に含まれる吸着剤が生成されることを特徴とする前記方法。
【請求項2】
銀イオンを含浸させる工程、及びプロバイオテックバクテリアの細菌バイオマスを固定させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項1項記載の方法。
【請求項3】
前記含浸が、静止状態にある製品吸着剤に平衡濃度の銀イオンが含まれる水溶性銀塩を処理することによって実施され、及びイオン収着値がフレンドリッヒ式;
r=K・Cn
式中、rは収着値(mmol/g)、
K、n(1,2)は定数、及び
Cは平衡濃度g/lを表す、に基づいて設定されることを特徴とする請求項2項記載の方法。
【請求項4】
製品吸着剤が、濃度が少なくとも108CFU(コロニー形成単位)であるプロバイオテックバクテリア細菌懸濁液を用いて培養され、次いで分離され、さらに等温条件で固体相が乾燥されることにより固定されることを特徴とする請求項2項記載の方法。
【請求項5】
種子殻の酸加水分解によって得られる炭素含有異種重合組成物からなり、
全体として0.04〜50μの範囲内の有孔度をもつリグニン、セルロース及びメラニンから構成される多孔多平面マトリックス、及び
バイオフラボノイド類、ペクチン類、ロイコアントシアン類、カテキン類、フェノール・カルボン酸類、タンニン類及びそれらの混合物から選択される生物活性物質を含んで成る吸着剤。
【請求項6】
下記組成;
リグニン 25〜70重量%
セルロース 20〜65重量%
メラニン 1〜10重量%
及び
バイアフラボノイド類 142.6〜615.5mg/%
ペクチン類 0.499〜1.912%
ロイコアントシアン類 0.1〜2.76%
カテキン類 0.2〜146.6mg/%
フェノール・カルボン酸類 212.5〜697.9mg/%及び
タンニン類 0.58〜0.83%
から成ることを特徴とする請求項5項記載の吸着剤。
【請求項7】
前記有孔多平面マトリックスが、直径0.1〜15μmの単一孔を有する帯状螺旋形状のリグニン粒子から成る化学結合下位構造と、直径5〜50μmの単一孔を有する長手方向伸張形状のセルロース繊維から成る化学結合下位構造と、さらに個々の管が正円筒形状から大きさが5〜400μmの塊状にいたるまでの種々形状のメラニン粒子から成る化学結合下位構造から構成されることを特徴とする請求項5項または6項記載の吸着剤。
【請求項8】
前記吸着剤に、銀イオンあるいはプロバイオテックバクテリアの細菌バイオマスの形態をとる表面改質剤がさらに含まれることを特徴とする請求項5〜7項のいずれかに記載の吸着剤。
【請求項9】
前記銀イオンが、K=(2.5−2.11)・104M−1において間隔n1=(0.013−0.019)mmol/gで強結合定数、及びK=(1.8−2.0)・103M−1において間隔n2=(0.064−0.074)mmol/gで弱結合定数をもつ活性結合中心としての役割を果たすことを特徴とする請求項8項記載の吸着剤。
【請求項10】
前記プロバイオテックバクテリアの細菌バイオマスに、Bacillus, Lactobacillus、あるいはBifidobacteriumのいずれかの細菌が吸着剤1gに対して少なくとも108CFU相当量含まれることを特徴とする請求項8項記載の吸着剤。
【請求項11】
前記吸着剤の医薬としての使用。
【請求項12】
あらゆる動物におけるマイコトキシン、農薬、質の悪い(高過酸化価を与える)飼料に起因した動物疾患の予防及び治療のための、中毒症、フリーラジカル病、環境毒素に起因する下痢症候群、ウイルス及び細菌感染症の予防及び治療のための請求項11項記載の吸着剤の使用。
【請求項13】
質の悪い飼料に起因した環境中毒症及び中毒症の予防及び治療のため、吸着剤を飼料と伴に飼料質量に対して0.15〜2.0%量で投与することを特徴とする請求項11項または12項記載の吸着剤の使用。
【請求項14】
前記吸着剤が、Salmonella属、Escherichia属、Clostridia属、Pasteurella属、Campillobacteria属、Staohylococci属、Streptococci属細菌による感染症、ニューカッスル病ウイルス、感染性気管支炎、感染性滑液包病(ガンボロ病)、腸内ウイルス病、及び感染性咽頭気管炎の治療に用いられることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の吸着剤の使用。
【請求項15】
前記吸着剤を、病気の臨床徴候が消えるまで、5〜14日間1日当たり1〜2回体重1kg当たり0.2〜1.5gの投与量で投与することを特徴とする請求項14項記載の吸着剤の使用。
【請求項16】
飼料用繊維添加物としての吸着剤の使用。
【請求項17】
品質向上のため、及び又は飼料保存のための、請求項16項記載の飼料添加物としての吸着剤の使用。
【請求項18】
抗酸化剤、抗細菌剤、及び抗ウイルス剤として用いる請求項16項記載の飼料添加物としての吸着剤の使用。
【請求項1】
破砕種子殻の酸加水分解により、水溶性バラスト物質を抽出し、かつ、リグニン、セルロース及びメラニンから成る組成物の生成を行う工程と、
水を用いた濯ぎ及び乾燥を行う工程から構成される吸着剤の製造方法であって、
前記酸加水分解は0.1〜0.7MPaの圧力下沸騰方式で0.3〜2.5時間の間に実施され、前記濯ぎは水及び又は0.1〜1.0%アルカリ溶液を用いて、次いでさらに軟水を用いて実施され、及び全体での有孔度が0.04〜50μの範囲内となる有孔多平面マトリックスから成り、かつマトリックス上に生物活性物質(BAS)から成る複合物が固定状に含まれる吸着剤が生成されることを特徴とする前記方法。
【請求項2】
銀イオンを含浸させる工程、及びプロバイオテックバクテリアの細菌バイオマスを固定させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項1項記載の方法。
【請求項3】
前記含浸が、静止状態にある製品吸着剤に平衡濃度の銀イオンが含まれる水溶性銀塩を処理することによって実施され、及びイオン収着値がフレンドリッヒ式;
r=K・Cn
式中、rは収着値(mmol/g)、
K、n(1,2)は定数、及び
Cは平衡濃度g/lを表す、に基づいて設定されることを特徴とする請求項2項記載の方法。
【請求項4】
製品吸着剤が、濃度が少なくとも108CFU(コロニー形成単位)であるプロバイオテックバクテリア細菌懸濁液を用いて培養され、次いで分離され、さらに等温条件で固体相が乾燥されることにより固定されることを特徴とする請求項2項記載の方法。
【請求項5】
種子殻の酸加水分解によって得られる炭素含有異種重合組成物からなり、
全体として0.04〜50μの範囲内の有孔度をもつリグニン、セルロース及びメラニンから構成される多孔多平面マトリックス、及び
バイオフラボノイド類、ペクチン類、ロイコアントシアン類、カテキン類、フェノール・カルボン酸類、タンニン類及びそれらの混合物から選択される生物活性物質を含んで成る吸着剤。
【請求項6】
下記組成;
リグニン 25〜70重量%
セルロース 20〜65重量%
メラニン 1〜10重量%
及び
バイアフラボノイド類 142.6〜615.5mg/%
ペクチン類 0.499〜1.912%
ロイコアントシアン類 0.1〜2.76%
カテキン類 0.2〜146.6mg/%
フェノール・カルボン酸類 212.5〜697.9mg/%及び
タンニン類 0.58〜0.83%
から成ることを特徴とする請求項5項記載の吸着剤。
【請求項7】
前記有孔多平面マトリックスが、直径0.1〜15μmの単一孔を有する帯状螺旋形状のリグニン粒子から成る化学結合下位構造と、直径5〜50μmの単一孔を有する長手方向伸張形状のセルロース繊維から成る化学結合下位構造と、さらに個々の管が正円筒形状から大きさが5〜400μmの塊状にいたるまでの種々形状のメラニン粒子から成る化学結合下位構造から構成されることを特徴とする請求項5項または6項記載の吸着剤。
【請求項8】
前記吸着剤に、銀イオンあるいはプロバイオテックバクテリアの細菌バイオマスの形態をとる表面改質剤がさらに含まれることを特徴とする請求項5〜7項のいずれかに記載の吸着剤。
【請求項9】
前記銀イオンが、K=(2.5−2.11)・104M−1において間隔n1=(0.013−0.019)mmol/gで強結合定数、及びK=(1.8−2.0)・103M−1において間隔n2=(0.064−0.074)mmol/gで弱結合定数をもつ活性結合中心としての役割を果たすことを特徴とする請求項8項記載の吸着剤。
【請求項10】
前記プロバイオテックバクテリアの細菌バイオマスに、Bacillus, Lactobacillus、あるいはBifidobacteriumのいずれかの細菌が吸着剤1gに対して少なくとも108CFU相当量含まれることを特徴とする請求項8項記載の吸着剤。
【請求項11】
前記吸着剤の医薬としての使用。
【請求項12】
あらゆる動物におけるマイコトキシン、農薬、質の悪い(高過酸化価を与える)飼料に起因した動物疾患の予防及び治療のための、中毒症、フリーラジカル病、環境毒素に起因する下痢症候群、ウイルス及び細菌感染症の予防及び治療のための請求項11項記載の吸着剤の使用。
【請求項13】
質の悪い飼料に起因した環境中毒症及び中毒症の予防及び治療のため、吸着剤を飼料と伴に飼料質量に対して0.15〜2.0%量で投与することを特徴とする請求項11項または12項記載の吸着剤の使用。
【請求項14】
前記吸着剤が、Salmonella属、Escherichia属、Clostridia属、Pasteurella属、Campillobacteria属、Staohylococci属、Streptococci属細菌による感染症、ニューカッスル病ウイルス、感染性気管支炎、感染性滑液包病(ガンボロ病)、腸内ウイルス病、及び感染性咽頭気管炎の治療に用いられることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の吸着剤の使用。
【請求項15】
前記吸着剤を、病気の臨床徴候が消えるまで、5〜14日間1日当たり1〜2回体重1kg当たり0.2〜1.5gの投与量で投与することを特徴とする請求項14項記載の吸着剤の使用。
【請求項16】
飼料用繊維添加物としての吸着剤の使用。
【請求項17】
品質向上のため、及び又は飼料保存のための、請求項16項記載の飼料添加物としての吸着剤の使用。
【請求項18】
抗酸化剤、抗細菌剤、及び抗ウイルス剤として用いる請求項16項記載の飼料添加物としての吸着剤の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
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【図19】
【図20】
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【公表番号】特表2009−542434(P2009−542434A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518688(P2009−518688)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【国際出願番号】PCT/BY2007/000001
【国際公開番号】WO2008/006186
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(509011455)ゴスダルストヴェーノエ ナウチノーエ ウチレツデニェ “インスティテュート フィジィキー イム.ビー.アイ:ステパノヴァ”ナショナルノージ アカデミー ナオク ベラルーシ (1)
【氏名又は名称原語表記】GOSUDARSTVENNOE NAUCHNOE UCHREZHDENIE INSTITUT PHYZIKI IM.B.I STEPANOVA NACIONALNOJJ ACADZHEMII NAUK BELARUSI
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【国際出願番号】PCT/BY2007/000001
【国際公開番号】WO2008/006186
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(509011455)ゴスダルストヴェーノエ ナウチノーエ ウチレツデニェ “インスティテュート フィジィキー イム.ビー.アイ:ステパノヴァ”ナショナルノージ アカデミー ナオク ベラルーシ (1)
【氏名又は名称原語表記】GOSUDARSTVENNOE NAUCHNOE UCHREZHDENIE INSTITUT PHYZIKI IM.B.I STEPANOVA NACIONALNOJJ ACADZHEMII NAUK BELARUSI
【Fターム(参考)】
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