説明

吸着剤

【課題】浄水器中の活性炭層の細菌増殖を防止するために、活性炭に銀または銀化合物を添着する方法が提案されていが、実際の使用に当たっては処理水中への銀溶出量を通水ごく初期から適切に調整することが不可能であった。本発明は、水道水中の残留塩素、トリハロメタン等の揮発性有機化合物、重金属類を効率よく除去できるのみならず、銀イオンを徐々に水中に溶出させる吸着剤、特に浄水器へ適用し、通水のごく初期から長期間にわたり、安定して銀イオンを徐放させることが可能な活性炭ベースの吸着剤を提供することを課題としている。
【解決手段】活性炭を塩酸で処理して塩化物イオンを活性炭に対し0.1〜2質量分率%吸着させ、ついで銀又は銀化合物含有液と混合して銀または銀化合物を添着し、この銀添着活性炭と銀無添着活性炭を混合した吸着剤が前記の課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀イオンを徐々に水中に溶出させ、安定した抗菌効果を発揮する水処理用吸着剤及びその製法に関する。特に浄水器へ適用し、残留塩素、トリハロメタン等の揮発性有機化合物、重金属イオン等を吸着除去するとともに、通水のごく初期から長期間にわたり、安定した濃度で銀イオンを水中に徐放させ、持続した抗菌効果を発揮する水処理用吸着剤およびその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭を吸着剤とする浄水器中に長期間水を滞留させていると、活性炭により残留塩素が分解されるために、浄水器中に細菌類が増殖することがある。これを抑止するために、活性炭に銀または銀化合物を添着することが知られている。
例えば、通常の活性炭に銀または銀化合物を添着する方法が提案されている(特許文献1)が、吸着剤として通常の活性炭を使用したのでは、活性炭により銀又は銀化合物の添着量や、結合状態が一定せず、処理水中への銀イオン溶出量を調整することができない。
また、活性炭の製造過程で銀または銀化合物を添加する方法も提案されている(特許文献2)が、製造工程が煩雑であるうえ、この文献も処理水中での銀イオン溶出状況や溶出量の調整については言及されていないし、その考慮もされていない。
さらに、塩化物イオンを活性炭に吸着させた活性炭に銀を添着して、活性炭における銀の添着量を高め、銀の水中への溶出期間を延長させるという試みもなされている(特許文献3)。
【0003】
【特許文献1】特開昭49−61950号公報
【特許文献2】特開平10−99678号公報
【特許文献3】特開2005−279494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の文献に記載の吸着剤はいずれも通水の初期に高濃度の銀イオンが水中に放出されてしまって放出が長続きしない。そして、銀イオンの放出が止まると、吸着剤や浄水器内の滞留水は、細菌に汚染されやすくなる。
また、これらの銀添着活性炭に通水すると、ごく初期には、高い濃度の銀が溶出することがあり、安全上懸念があるばかりでなく、容器にそのような高い銀濃度の水を入れた際、銀が容器の成分と反応して容器を変色させるといった問題が起きることもあった。
本発明の課題は、水中特に水道水中の残留塩素、トリハロメタンなどの揮発性有機化合物を効率よく除去するのみならず、通水のごく初期から適量の銀イオンを安定的且つ極めて長期に亘り溶出させ、安定した抗菌効果を発揮する吸着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
活性炭に銀または銀化合物を添着した場合、活性炭表面上の銀あるいは銀化合物は微細な固体として活性炭の外表面や細孔表面に存在し、通水によって、これらの銀または銀化合物から銀イオンが徐々に放出される。ところが、本発明者らの研究により、銀又は銀化合物の添着前の活性炭に含まれている塩化物イオンの含有量が銀又は銀化合物の溶出量に影響を与えることが判明した。すなわち、銀又は銀化合物の添着前に活性炭中に含まれている塩化物イオンの濃度が高ければ高いほど銀を活性炭に多量に添着した場合でも、通水の際に銀イオンが安定的に溶出させることができる。しかし前述の通り通水初期には高い濃度の銀イオンが水中に溶出することが明らかになった。
【0006】
そこで、活性炭に、銀または銀化合物と反応するに充分な塩化物イオンをあらかじめ吸着させておいて、銀又は銀化合物を添着し、得られた銀添着炭と銀無添着炭を適当な割合で混合して吸着剤とすると、通水初期に高濃度の銀イオンが放出されることなく、終始適当な濃度の銀イオンを予想外に長期に亘り水中に放出させることができることを知見し、その知見を基に更に研究を重ねた結果、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)塩化物イオンを活性炭に対し0.1〜2質量分率%吸着させた活性炭に銀又は銀化合物を添着した活性炭と銀無添着活性炭を質量比1:0.5〜1:19の割合で混合してなる水処理用吸着剤、
(2)銀又は銀化合物を添着した活性炭の銀含有量が0.1〜5質量分率%で、水処理用吸着剤全量に対する銀の含有量が0.05〜2質量分率%である(1)記載の水処理用吸着剤、
(3)浄水器のろ材である(1)〜(2)記載の水処理用吸着剤、
(4)間欠的に通水される浄水器のろ材である(1)〜(2)記載の水処理用吸着剤、
(5)活性炭を塩酸で処理して塩化物イオンを活性炭に対し0.1〜2質量分率%吸着させ、ついで銀または銀化合物含有液と混合して銀または銀化合物を添着し、これに銀無添着活性炭を質量比1:0.5〜1:19の割合で混合する(1)〜(4)のいずれかに記載の水処理用吸着剤の製造方法、
である。
【0008】
本発明の、塩化物イオンを吸着した活性炭に銀又は銀化合物を添着し、さらに無添着活性炭を質量比1:0.5〜1:19の割合で混合して得られた吸着剤は、まず原料活性炭を塩酸水溶液と接触させることで塩化物イオンを吸着した活性炭とし、得られた活性炭にコロイド銀または水溶性銀化合物の水溶液を添加し、さらに銀無添着活性炭を混合することにより製造することができる。
【0009】
ここに、塩化物とは、塩素が陰性元素として、より陽性の他の元素と化合している化合物をいう。塩化物中の塩素の酸化数は、常に−1で陽性の高い金属元素との化合物中では、塩素は塩化物イオンClとなってイオン結合を形成している。単に塩化ナトリウム等の塩化物を活性炭に噴霧あるいは塩化物溶液に活性炭を含浸したのでは本発明に言う塩化物イオンの吸着とはならない。すなわち、例えば塩化ナトリウム等に含まれる塩化物は塩化物イオンとして活性炭に吸着されるのではなく、塩化ナトリウムの結晶として活性炭上に付着するのみであり、その表面の一部に塩化銀が形成されたとしても摩耗等で容易に剥離し、あるいは通水初期に未反応の塩化物とともに流出してしまうからである。
【0010】
したがって、本発明では、活性炭を塩酸と接触させることによりに活性炭に塩化物イオンを吸着させることができる。この場合は、塩化物イオンは結晶状態ではなく単独のイオンの状態で活性炭の全表面に存在するので、銀又は銀化合物を添着させた場合銀は活性炭面全体に亘って、微細な塩化銀として多量の銀を添着させることができる。この銀又は銀化合物を添着させた活性炭に通水した場合、塩化銀の溶解度平衡によって銀イオンは比較的長期に亘り処理水中に放出されるが、活性炭の表面に添着した銀イオンは、通水初期に高い濃度で処理水中に溶出し、前述のような不具合を起こす。
【0011】
しかしながら、銀添着炭に銀無添着炭を同時に存在させておくと、過剰に溶出した銀イオンが銀無担持活性炭に一時的に吸着され、高濃度の銀イオンの処理水中への溶出を阻止する。そして銀無担持活性炭に吸着された銀イオンもやがては処理水中に溶出してゆく。このため、通水初期、100μg/Lを超えるような高い濃度で銀が溶出することはない。しかも、この銀無担持活性炭の混合使用により、抗菌効果を発揮するのに適当な濃度の銀イオン溶出期間が著しく延長される。
【0012】
本発明方法で使用される活性炭の原料は、ヤシ殻、石炭、コークス、木粉、おが屑、天然繊維(例、麻、綿等)、合成繊維(例、レーヨン、ポリエステル等)、合成樹脂(例、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール)など一般的に用いられるものであればいずれでも良い。特にヤシ殻が好ましい。
これらの原料を炭化、賦活して活性炭とするが、その賦活方法も特に限定されることはない。たとえば「活性炭工業」、重化学工業通信社(1974)、p.23〜p.37に記載されているように、水蒸気、酸素、炭酸ガスなどの活性ガスでの賦活炭や、リン酸、塩化亜鉛などを用いた薬品賦活炭など、ハロゲンガスで賦活した以外の活性炭であればどの様なものでも用いることができる。
賦活された活性炭のBET比表面積は、通常状00〜2000m/g、好ましくは700〜1800m/gである。
粒度は特に限定されないが、通常0.075〜5mm、好ましくは0.1〜3mmである。
平均粒径は、0.075〜5mmが好ましく、0.075〜1.0mmのものがさらに好ましい。
【0013】
活性炭に塩化物イオンを吸着させるには、活性炭を塩酸と接触させ、次いで、必要により水洗して、活性炭のpH値を7.0以下、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.0以下とすることにより、行うことができる。該接触は、活性炭を適当な濃度と量の塩酸水溶液に浸漬、あるいは該水溶液を活性炭に流通するなどして塩化物イオンの所望量を活性炭に吸着させることができる。
【0014】
接触させる塩酸の濃度は特に限定されることはないが、0.1〜15%の塩酸が好ましい。このとき、活性炭は賦活したままの状態であってもよいし、あらかじめ水洗して、水溶性無機成分を除去しておいてもよい。
該活性炭と塩酸との接触は、通常5〜80℃、好ましくは5〜35℃で行う。接触時間は通常10分〜6時間が好ましいが、塩酸の濃度を適宜変更することで15分〜2時間程度とすることもできる。
塩酸との接触の後、活性炭を水洗いしてもよい。水洗いは、バッチ式、連続式のいずれの方法でもよく、この水洗いによって吸着されなかった塩酸を除去することができる。
このようにして活性炭に塩化物イオンを吸着させた後、公知の方法で水を切り、乾燥する。
【0015】
塩化物イオンの吸着量は、活性炭に対し、通常0.1〜2質量分率%、好ましくは、0.1〜1質量分率%、さらに好ましくは0.1〜0.5質量分率%である。
塩化物イオンの吸着量は次の方法によって測定することができる。
塩化物イオン吸着量測定方法
活性炭3gを三角フラスコ200mlにはかり取り、硫酸ナトリウム水溶液(硫酸イオンを400ppm含有する)100mlを加え、穏やかに加熱し5分間沸騰を続け、冷却した後、孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過したろ液中の塩化物イオン濃度を測定し、活性炭中の全塩化物イオン含有量を求める。別に、JIS K1474の方法に従って活性炭中の塩化物イオンを求め、先に求めた全塩化物イオン含有量からそれを差し引き、塩化物イオン吸着量を計算する。
【0016】
銀または銀化合物の活性炭への添着は、コロイド銀または水溶性銀化合物を含む液と塩化物イオンを吸着させた活性炭とを混合し、次いで例えば80〜250℃、好ましくは100〜200℃で、通常0.1〜20時間、好ましくは0.5〜10時間加熱乾燥することにより行うことができる。液は通常水であるが、水と混和しうる有機溶媒を含んでいてもよい。
また、乾燥時間をたとえば、5時間以上と長く取ることによって塩化水素を揮発させ、活性炭のpH値を上昇させることもできる。
銀または銀化合物の含有量は、活性炭の質量に対し、銀に換算して0.1〜5質量分率%、好ましくは0.1〜3質量分率%、最も好ましくは0.1〜2.0質量分率%である。
上記の銀化合物としては、例えば、硝酸銀、硫酸銀、酢酸銀などの水溶性銀化合物が挙げられる。
【0017】
ここで得られた銀添着活性炭に無添着活性炭を混合する。銀添着活性炭と無添着活性炭の混合は、銀添着品を乾燥する前に、無添着品を混合機に投入して混合してもよいし、乾燥した銀添着炭と無添着炭を混合してもよい。この銀添着炭と無添着炭との混合は、水処理用吸着剤全量に対する銀の含有量が0.05〜2、好ましくは0.05〜1質量分率%となるように混合する。銀添着活性炭と無添着活性炭の具体的な混合割合は、質量比で1:0.5〜1:19が好ましく、1:2〜1:19がより好ましく、1:3〜1:19がさらに好ましい。
【0018】
また、鉛除去性能を付与するため、吸着剤に、さらに、イオン交換体を混合する、あるいは、吸着剤の表面に固定化させることもできる。
イオン交換体としては、ゼオライト、イオン交換樹脂など公知のものを用いることができる。
【0019】
上記ゼオライトの例としては、菱沸石、エリオナイト、モルデナイト、クリノプチロライトなどの天然ゼオライトおよび合成ゼオライトのナトリウム置換型が挙げられる。合成ゼオライトとしては、たとえば「ゼオライトの最新応用技術」、(株)シーエムシー、p.11〜p.13に示されている、合成A型、X型、Y型ゼオライトを用いることができ、A型としては、4A型、5A型、X型として13X型が好ましい。特に13X型がより好ましい。このように、ゼオライトとしては天然ゼオライト、合成ゼオライトのいずれも使用することができるが、天然ゼオライトは合成ゼオライトよりイオン交換容量が低いため、より多い量を使用する必要がある。また微粉砕したものが好ましい。これらのゼオライトを、異なる種類のものの混合として用いることもできる。
用いられるゼオライトの粒径は、混合して使用する場合は、活性炭の粒径と同等にすればよく、表面に固定化させる場合は、通常45μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは5μm以下である。
イオン交換樹脂としては、例えば、「公害防止の技術と法則」、p.245(社)産業環境管理協会(1995)に記載されているイミノ二酢酸形、アルドキシム形、アミノリン酸形などのキレート樹脂等が挙げられる。
イオン交換体の吸着剤への使用割合は、吸着剤の全重量に対して、通常5〜40質量分率%、好ましくは10〜30質量分率%、更に好ましくは15〜25質量分率%である。
【0020】
イオン交換体の活性炭への固定化は、好ましくは、バインダーを用いて、行われる。バインダーとしては、人体に害を及ぼさず、活性炭の細孔を閉塞せず、かつ加熱などの物理的手段でゼオライトを活性炭表面に固定化しうるものを用いればよい。
具体的にはポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニルなどのラテックス系樹脂といった有機系バインダーや水ガラス(ケイ酸ナトリウム)、シリカアルミナセラミックスなどといった無機系バインダーが挙げられる。
水ガラスやシリカ、アルミナはバインダーの役目を果たすとともに、ゼオライトとの親和性が高いので特に好ましい。またバインダーは、1種類でもよいし、2種類以上の混合物を使用してもよい。
【0021】
使用するバインダー溶液の濃度は、通常1〜15質量分率%、好ましくは、3〜10質量分率%である。また、バインダーの使用量(質量)は、ゼオライトと活性炭の合計質量に対して、0.5〜25質量分率%、好ましくは1〜15質量分率%である。
ゼオライトを活性炭表面に被覆する方法は特に限定されず、公知の方法が用いられる。例えば、ゼオライト粉末を含有するバインダー溶液に活性炭を浸し、その後乾燥する方法(含浸法)、ゼオライト粉末を含有するバインダー溶液を活性炭表面に噴霧し乾燥する方法(噴霧法)、または活性炭を流動させた状態で、ゼオライト粉末を含有するバインダー溶液を加えて乾燥する方法(流動法)などが挙げられる。
【0022】
本発明の吸着剤は、通常、カートリッジに充てんして使用される。通水量は、通常SV=1〜4000hr−1程度であるが、100〜4000hr−1の条件が一般的であり、300〜2000hr−1の条件がより一般的である。また、浄水器として蛇口ないし配管に直結して通水するのが一般的であるが、ろ過フィルターとして間欠的な通水に供してもよい。この場合、活性炭は、カートリッジに充てんされ、浄水器本体に注がれた水がカートリッジを通過して、ろ過水が浄水器下部の容器に貯まるようになっており、SV=50〜500hr−1程度になる。また、カートリッジの一部は、満水状態では、容器内の水に漬かったままになっているのが一般的である。
本吸着材は、浄水器のろ剤としても用いられるので、その場合は、水道水に対して使用される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の吸着剤は、水中、特に水道水中の残留塩素、トリハロメタン、重金属類を効率よく除去できるのみならず、銀イオンを通水ごく初期から安定した濃度で徐々に水中に溶出させることができ、浄水器へろ材として適用した場合、長期間にわたり銀イオンを徐放させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に実施例および試験例をあげて、本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0025】
市販のヤシ殻活性炭(破砕炭)を、篩にかけ0.250〜0.106mmに粒径を揃えた。この活性炭100gを1000mlのビーカーに入れ、塩酸(試薬特級、和光純薬工業製)7mlを水道水500mlに溶解して調製した塩酸水溶液を加え、20℃の室内で1時間攪拌したのち上澄み水を捨て、さらに水500mlを加え、1時間撹拌した。水切りをし、115±5℃に保った電気乾燥機中で3時間乾燥した。この活性炭のpH値は5.0、塩化物イオン吸着量は0.28質量分率%、BET比表面積は1080m/gであった。
この活性炭を撹拌しながら蒸留水70mlに硝酸銀0.314g(銀として0.2g)を溶解した硝酸銀水溶液を噴霧し、115±5℃に保った電気乾燥機中で3時間乾燥した。ここで得られた銀添着活性炭と、銀添着前活性炭を別途乾燥したものを質量比1:1で混合して、銀添着吸着剤No.1を得た
【実施例2】
【0026】
硝酸銀の質量を0.471g(銀として0.3g)、銀添着活性炭と無添着乾燥品との混合割合を、質量比1:2とした以外は実施例1と同様にして銀添着吸着剤No.2を得た。
【実施例3】
【0027】
硝酸銀の質量を0.785g(銀として0.5g)、銀添着活性炭と無添着乾燥品との混合割合を、質量比1:4とした以外は実施例1と同様にして銀添着吸着剤No.3を得た。
【実施例4】
【0028】
硝酸銀の質量を1.57g(銀として1.0g)、銀添着活性炭と無添着乾燥品との混合割合を、質量比1:9とした以外は実施例1と同様にして銀添着吸着剤No.4を得た。
【実施例5】
【0029】
硝酸銀の質量を3.14g(銀として2.0g)、銀添着活性炭と無添着乾燥品との混合割合を、質量比1:19とした以外は実施例1と同様にして銀添着吸着剤No.5を得た。
【実施例6】
【0030】
硝酸銀の質量を0.785g(銀として0.5g)、銀添着活性炭と無添着乾燥品との混合割合を、質量比1:3とし、さらにあらかじめカルシウム置換し、粒径を0.250〜0.106mmにそろえたゼオライト13Xを全体の20質量分率%になるように混合した以外は実施例1と同様にして銀添着吸着剤No.6を得た。
【実施例7】
【0031】
硝酸銀の質量を4.71g(銀として3.0g)、銀添着活性炭と無添着乾燥品との混合割合を、質量比1:2とした以外は実施例1と同様にして銀添着吸着剤No.7を得た。
【実施例8】
【0032】
硝酸銀の質量を4.71g(銀として3.0g)、銀添着活性炭と無添着乾燥品との混合割合を、質量比1:9とした以外は実施例1と同様にして銀添着吸着剤No.8を得た。
【実施例9】
【0033】
硝酸銀の質量を7.85g(銀として5.0g)、銀添着活性炭と無添着乾燥品との混合割合を、質量比1:2とした以外は実施例1と同様にして銀添着吸着剤No.9を得た。
【実施例10】
【0034】
洗浄に用いる塩酸を9mlとし、添着に用いる硝酸銀の質量を0.785g(銀として0.5g)、銀添着活性炭と無添着乾燥品との混合割合を、質量比1:4とした以外は実施例1と同様にして銀添着吸着剤No.10を得た。
【実施例11】
【0035】
洗浄に用いる塩酸を11mlとし、添着に用いる硝酸銀の質量を1.57g(銀として1.0g)、銀添着活性炭と無添着乾燥品との混合割合を、質量比1:4とした以外は実施例1と同様にして銀添着吸着剤No.11を得た。
【実施例12】
【0036】
銀添着活性炭と無添着乾燥品との混合割合を、質量比1:9とした以外は実施例11と同様にして銀添着吸着剤No.12を得た。
〔比較例1〕
【0037】
硝酸銀の質量を0.157g(銀として0.1g)、銀添着活性炭と無添着乾燥品との混合割合を、質量比1:0(混合しない)とした以外は実施例1と同様にして銀添着吸着剤No.13を得た。
〔試験例1〕
【0038】
内容積60mlの浄水器カートリッジに銀添着吸着剤No.1〜13を充てんし、SV=500hr−1で通水した時の通過水中の銀濃度を所定時間毎に測定した。通水開始2分後の銀溶出量、および通過水中の銀濃度が5μg/Lになるまでの通水量を表1に示した。
【0039】
【表1】

【0040】
表1から明らかなように、実施例1から12の吸着剤を使用した場合は、通水2分後の銀濃度が100μg/L以下に抑えられていたのに対し、比較例1の活性炭(混合なし)では116μg/Lと高い濃度で銀が溶出していた。
また、実施例1から12の吸着剤を使用した場合、銀濃度が5μg/Lになるまでの通水量が、比較例1の活性炭よりも大幅に増大していた。これは全く予想外の効果であった。
〔試験例2〕
【0041】
SV=2000hr−1とした以外は、通水実験1と同様にして銀溶出量を測定した。通水開始2分後の銀溶出量、および通過水中の銀濃度が5μg/Lになるまでの通水量を表2に示した。
【0042】
【表2】

【0043】
表2から明らかなように、異なるSV条件においても、本発明の実施例1〜12の吸着材は、通水2分後の銀濃度が100μg/L以下に抑えられていたのに対し、比較例1の活性炭(混合なし)では135μg/Lと高い濃度で銀が溶出していた。
また、実施例1〜12の吸着剤を使用した場合、銀濃度が5μg/Lになるまでの通水量が、比較例1の活性炭よりも大幅に増大していた。
〔試験例3〕
【0044】
温度を調整した空気恒温槽に設置した、吸着剤充てん容積120mlのポット型浄水器カートリッジに銀添着吸着剤No.1〜13を充てんし、あらかじめ空気恒温槽の温度と同じ温度に調整した種々の組成の水を1L浄水器本体に注ぎ入れ、ろ過水を得た。ろ過水を捨て、再度同じ組成に調製した水を注ぎ入れ、ろ過水を得た。再度ろ過水を捨て、同じ組成に調製した水を注ぎ入れ、3L目のろ過水を得た。このろ過水を採取し、銀濃度を測定した。また、同様の操作を繰り返し、10L目ごとに水を採取し銀濃度を測定し、10μg/Lを下回るまでの水量を求めた。銀濃度測定結果を表3に示した。
【0045】
【表3】

【0046】
表3から明らかなように、間欠的な通水においても、本発明の実施例1〜12の吸着材は、3L目のろ過水中の銀濃度が100μg/L以下に抑えられていたのに対し、比較例1の活性炭(混合なし)では210μg/Lと高い濃度で銀が溶出していた。
また、実施例1〜12の吸着剤を使用した場合、銀濃度が10μg/L以下になるまでの通水量が、比較例1の活性炭よりも大幅に増大していた。連続して通水する場合と異なり、このような浄水器では、活性炭と水との接触時間が長いばかりか、活性炭カートリッジはろ過終了後も水と接触しつづけていることを考慮すると、この結果は全く予想外であり、驚くべきものであった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、水道水中の残留塩素、トリハロメタン等の揮発性有機化合物、重金属類を効率よく除去できるのみならず、銀イオンを徐々に水中に溶出させる吸着剤、特に浄水器へ適用し、通水のごく初期から長期間にわたり、安定して銀を徐放させることが可能な活性炭ベースの吸着剤を提供することができる。また、間欠的に通水する場合でも安定して銀を徐放させることが可能であるので、特に水道水の浄水器のろ材として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化物イオンを活性炭に対し0.1〜2質量分率%吸着させた活性炭に銀又は銀化合物を添着した活性炭と銀無添着活性炭を質量比1:0.5〜1:19の割合で混合してなる水処理用吸着剤。
【請求項2】
銀又は銀化合物を添着した活性炭の銀含有量が0.1〜5質量分率%で、水処理用吸着剤全量に対する銀の含有量が0.05〜2質量分率%である請求項1記載の水処理用吸着剤。
【請求項3】
浄水器の材である請求項1〜2記載の水処理用吸着剤。
【請求項4】
間欠的に通水される浄水器のろ材である請求項1〜2記載の水処理用吸着剤
【請求項5】
活性炭を塩酸で処理して塩化物イオンを活性炭に対し0.1〜2質量分率%吸着させ、ついで銀又は銀化合物含有液と混合して銀または銀化合物を添着し、これに銀無添着活性炭を質量比1:0.5〜1:19の割合で混合する請求項1〜4のいずれかに記載の水処理用吸着剤の製造方法。

【公開番号】特開2007−216215(P2007−216215A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8951(P2007−8951)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(503140056)日本エンバイロケミカルズ株式会社 (95)
【Fターム(参考)】