説明

吸着剤

【課題】悪臭物質を効率よく長時間にわたり吸着除去し、かつ耐久性、耐熱性に優れた吸着剤、および当該吸着剤を含む、高温下における製造時においても消臭性能の維持された車両用内装表皮材を提供することを目的とする。
【解決手段】1級または2級アミン化合物および、ヨウ素原子またはヨウ素化合物を多孔質担体に担持させること、その中でも特に、特定の式(1)で表される化合物と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のヨウ化物とを多孔質担体に担持させること、または、特定の式(2)で表される化合物を多孔質担体に担持させることにより、悪臭物質を、常温下ではもとより、高温下においても効率よく長時間にわたり吸着除去する吸着剤が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、悪臭物質の吸着能に優れた吸着剤、および当該吸着剤を含む車両用内装表皮材に関する。本発明の吸着剤は、長期間にわたる吸着能力保持に優れ、また、加熱時においても優れた吸着能を有する。また、本発明の車両用内装表皮材は、高温下における車両用内装表皮材製造時においても、その消臭性能を維持することができる。
【背景技術】
【0002】
悪臭物質の吸着剤としては、活性炭、活性白土、シリカゲル、活性アルミナ、粘土鉱物等が知られており、なかでも活性炭が多く用いられてきた。しかしながら、活性炭をはじめとするこれらの吸着剤自体は、その特性上、悪臭物質に対する吸着量が小さく、また寿命が短いという欠点がある。この改善策として、前記の吸着剤に悪臭物質と反応性を有する1種又は2種以上の化合物を担持させることによって、吸着効果を高めることが行われている。
【0003】
例えば、飽和環状第二アミンとアルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物を活性炭等に担持させた吸着剤(特許文献1)、飽和環状第二アミンとリン酸などの不揮発性酸、そしてヨウ化カリウムなどのアルカリ金属塩を担持させた吸着剤(特許文献2)、表面処理を施した活性炭に環状飽和第二級アミンとアルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物を担持させてなる吸着剤(特許文献3)などがある。
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の吸着剤は、その吸着性能が長期間にわたり維持されることは確認されておらず、また、高温下における使用についても開示されていない。特許文献2記載の吸着剤は、耐熱性を向上させるためにアルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物を担持させることが好ましいとされているものの、具体的にどの程度の高温まで吸着能を維持できるのか、その耐熱性は確認されていなかった。また、特許文献3に記載の吸着剤は、耐熱性に優れているというものの、その温度は80℃に留まっており、樹脂や布帛に添加して加工する際、100℃を超える高い加工温度に曝されても、吸着性を維持できる吸着剤の開発が望まれていた。
【0005】
また、悪臭物質の吸着剤を、車両用内装表皮材に混合することによって、消臭性能を有する車両用内装表皮材を得ることも知られている。
【0006】
例えば、表皮層と目止め層とバッキング層からなり、その目止め層にヒドラジン誘導体と無機物質からなる消臭剤と抗菌剤が担持されてなる消臭・抗菌カーペット(特許文献4)がある。
【0007】
特許文献4記載のカーペットは、自動車等の車両の室内に用いることで、車内における空気中の悪臭を吸着除去できることが開示されている。しかしながら、当該カーペットの製造時、表皮層に目止め層となるラテックス材を塗布して乾燥させ、その後目止め層にポリエステル材からなるバッキング層を添着させて車両室内形状に賦形して製造しており、この目止め層の乾燥温度、バッキング層の賦形温度が高温(160〜180℃)であるために、無機物質への担持される消臭剤のリン酸と、目止め層を形成するラテックスに含まれる難燃剤の水酸化アルミニウムが化学反応を起こして中和され、消臭剤が無機物質に担持されなくなり、消臭性能が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平04−358536号公報
【特許文献2】特開2001−000524号公報
【特許文献3】特開2000−084406号公報
【特許文献4】特開2008−206802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、悪臭物質を効率よく長時間にわたり吸着除去し、かつ耐久性、耐熱性に優れた吸着剤、および当該吸着剤を含む、高温下における製造時においても消臭性能の維持された車両用内装表皮材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前記の点に鑑み、鋭意検討した結果、1級または2級アミン化合物および、ヨウ素原子またはヨウ素化合物を多孔質担体に担持させること、その中でも特に、特定の式(1)で表される化合物と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のヨウ化物とを多孔質担体に担持させること、または、特定の式(2)で表される化合物を多孔質担体に担持させることにより、悪臭物質を、常温下ではもとより、高温下においても効率よく長時間にわたり除去し、安定かつ安価な吸着剤が得られることを知見し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。さらに、当該吸着剤を含む車両用内装表皮材は、高温下における製造時においても消臭性能が維持されることを見出した。すなわち、本発明は、
(1)1級または2級アミン化合物および、ヨウ素原子またはヨウ素化合物を、多孔質担体に担持してなる吸着剤、
(2)下記(I)または(II)からなる、前記(1)に記載の吸着剤、
(I)下記式(1)で表される化合物(a)および、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のヨウ化物(b)を、多孔質担体に担持してなる吸着剤
R(NHR’)n(NHR”)m・(HX) (1)(R、R’、R”は同一または異なり、Rは炭化水素基を表し、R’とR”は水素または炭化水素基を表す。X=F、Cl、Brから選ばれ、nとmは、0または正の整数を表す。但しn+m>0とする。lは正の数であり(整数でなくてもよい)、0<l≦n+mとする。)
(II)下記式(2)で表される化合物(c)を、多孔質担体に担持してなる吸着剤
R(NHR’)n(NHR”)m・(HI) (2)(R、R’、R”は同一または異なり、Rは炭化水素基を表し、R’とR”は水素または炭化水素基を表す。nとmは、0または正の整数を表す。但しn+m>0とする。lは正の数であり(整数でなくてもよい)、0<l≦n+mとする。)
(3)前記化合物(a)が、モノアルキルアミン塩酸塩、ジアルキルアミン塩酸塩、アルキルジアミン二塩酸塩から選ばれる、前記(2)に記載の吸着剤、
(4)前記ヨウ化物(b)が、アルカリ金属のヨウ化物である、前記(2)または(3)に記載の吸着剤、
(5)多孔質担体が活性炭である前記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の吸着剤、
(6)さらに、酸(d)を併用担持してなる前記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の吸着剤、
(7)(I)からなる吸着剤であって、多孔質担体100重量部に対し、前記化合物(a)が1〜30重量部、前記ヨウ化物(b)が1〜60重量部、前記酸(d)が0〜40重量部担持されている、前記(2)〜(6)のいずれか1つに記載の吸着剤、
(8)(II)からなる吸着剤であって、多孔質担体100重量部に対し、前記化合物(c)が1〜50重量部、前記酸(d)が0〜40重量部担持されている、前記(2)〜(6)のいずれか1つに記載の吸着剤、
(9)前記(1)〜(8)のいずれか1つに記載の吸着剤により、悪臭物質を吸着する脱臭方法、
(10)表皮層と目止め層を含む車両用内装表皮材であって、その目止め層に前記(1)〜(8)のいずれか1つに記載の吸着剤を含有する車両用内装表皮材、
(11)前記目止め層全体を100質量%とした場合に、吸着剤を10〜90質量%含むことを特徴とする前記(10)に記載の車両用内装表皮材、
(12)さらに、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を多孔質担体に担持してなる第二の吸着剤を含む、前記(10)または(11)に記載の車両用内装表皮材、
(13)前記(1)〜(7)のいずれか1つに記載の吸着剤と、前記第二の吸着剤の混合比が、30:70〜70:30である、前記(12)に記載の車両用内装表皮材、
(14)表皮層と目止め層とを含む車両用内装表皮材の製造方法であって、
表皮層の裏面に、前記(1)〜(8)のいずれか1つに記載の吸着剤、および必要に応じてアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を多孔質担体に担持してなる第二の吸着剤を含有した、目止め層となる樹脂成分を塗布する工程と、
目止め層を乾燥する工程とを含む、
車両用内装表皮材の製造方法、である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の吸着剤は、常温から200℃という高温までの幅広い範囲において、効率よく、そして長時間にわたり、悪臭物質を吸着除去することができる。また、多孔質担体に表面処理を施す必要もないので、簡便な方法で優れた吸着剤を得ることができる。さらに、車両用内装表皮材に含有させた場合、高温下における車両用内装表皮材製造時においても、その消臭性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1〜6および比較例1〜3で得られた未加熱の吸着剤について、アルデヒド吸着能を示したグラフである。
【図2】実施例4および6で得られた吸着剤を、160℃で30分加熱して得られた吸着剤について、アルデヒド吸着能を示したグラフである。
【図3】実施例7〜11で得られた未加熱の吸着剤について、アルデヒド吸着能を示したグラフである。
【図4】実施例7〜11で得られた吸着剤を、160℃で30分加熱して得られた吸着剤について、アルデヒド吸着能を示したグラフである。
【図5】実施例11、比較例4および5で得られた未加熱の吸着剤について、アルデヒド吸着能を示したグラフである。
【図6】実施例12〜14で得られた未加熱の吸着剤について、アルデヒド吸着能を示したグラフである。
【図7】実施例12〜14で得られた吸着剤を、160℃で30分加熱して得られた吸着剤について、アルデヒド吸着能を示したグラフである。
【図8】実施例15〜16で得られた未加熱の吸着剤について、アルデヒド吸着能を示したグラフである。
【図9】実施例17および実施例12で得られた未加熱の吸着剤について、アルデヒド吸着能を示したグラフである。
【図10】実施例18〜21で得られた未加熱の吸着剤およびそれを160℃で30分加熱して得られた吸着剤について、アルデヒド吸着能を示したグラフである。
【図11】比較例9〜12および実施例22で得られた未加熱の吸着剤について、アルデヒド吸着能を示したグラフである。
【図12】比較例9〜12および実施例22で得られた吸着剤を、160℃で30分加熱して得られた吸着剤について、アルデヒド吸着能を示したグラフである。
【図13】表皮材の断面図である。
【図14】表皮材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(吸着剤について)
・多孔質担体
本発明において用いられる多孔質担体としては、例えば、活性炭、活性白土、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ、粘土鉱物などの種々の多孔性吸着材料が挙げられるが、中でも活性炭が好適に用いられる。
【0014】
活性炭原料としては、通常活性炭原料として用いられる炭素源であれば特に限定されるものではなく、たとえば、木材、木粉、ヤシ殻、パルプ製造時の副産物、バカス、廃糖蜜、泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭、石油蒸留残渣成分、石油ピッチ、コークス、コールタールなどの植物系原料や化石系原料、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂、セルロイド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂などの各種合成樹脂、ポリブチレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレンなどの合成ゴム、その他合成木材、合成パルプなどがあげられる。これらの活性炭原料の中では、ヤシ殻が好適に使用される。
【0015】
活性炭原料の炭化、賦活方法としては、たとえば固定床方式、移動床方式、流動床方式、ロータリーキルン方式などのこれまで知られている活性炭の製造方式が挙げられる。炭化方法としては窒素ガス、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ネオン、一酸化炭素、燃焼排ガスなどの不活性ガスおよびこれらの不活性ガスを主成分とした他のガスとの混合ガスを使用して焼成する方法が挙げられる。炭化の温度条件としては、通常500〜900℃、好ましくは600〜800℃である。
【0016】
賦活化方法としては、水蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素、酸素、塩化水素、アンモニア、燃焼ガスなどを用いるガス賦活法や、塩化カルシウム、硫化カルシウム、リン酸、硫酸、塩化亜鉛などの存在下に、活性炭原料を賦活する薬品賦活法が挙げられる。好ましくは水蒸気賦活である。賦活の温度条件としては、通常750〜1200℃、好ましくは800〜1100℃である。賦活後は必要に応じて、炭素中の無機質(灰分)を希塩酸やアルカリ水溶液などで洗浄脱灰し、さらに水洗を繰り返して精製後、乾燥、篩い分けする。なお、用途に応じて、賦活後、洗浄後の活性炭を高温下で再活性化したり高温度で還元処理を行い、活性炭表面の改質を行ってもよい。
【0017】
本発明に用いられる活性炭としては、−196℃での窒素吸着法により測定した(Micromeritics製 ASAP2405)細孔特性として、比表面積が、通常60
0〜2500m2/g、好ましくは1000〜1600m2/g、平均細孔直径が通常1.6〜3.5nm、好ましくは1.7〜2.0nm、細孔容積が0.25〜1.5ml/g、好ましくは0.3〜1.0ml/gのものが好ましい。
【0018】
また、JIS K1474試験法により測定した一般物性値としては、乾燥減量が0.
0〜5.0質量分率%、好ましくは0.0〜3.0質量分率%であり、強熱残分が0.0〜5.0質量分率%、好ましくは0.0〜3.0質量分率%であり、充てん密度が0.25〜0.85g/ml、好ましくは0.35〜0.60g/mlであり、pHが4.0〜12.0、好ましくは5.0〜11.0であり、アセトン吸着性能が14.0〜41.0質量分率%、好ましくは25.0〜39.0質量分率%であり、ヨウ素吸着性能が600〜2600mg/g、好ましくは900〜1600mg/gであり、硬さが90.0〜100.0質量分率%、好ましくは95.0〜100.0質量分率%のものが好ましい。
【0019】
また、活性白土は、酸性白土あるいはフラースアースと呼ばれる粘土を硫酸処理して得られる吸着材料であり、モンモリロナイトを主成分とする。また、ゼオライトは、一般に含水アルミノケイ酸塩をいい、ケイ酸ナトリウムなどをシリカ源、水酸化アルミニウム等
をアルミナ源として用い、これらと水酸化ナトリウム水溶液から作られるゲルを乾燥して得られる吸着材料であり、分子篩い作用と極性分子に選択性を有する。
【0020】
また、シリカゲルは、ケイ酸ナトリウム水溶液を硫酸で処理してゲル化し、硫酸ナトリウムを水洗除去して得られる吸着材料で、極性分子に選択性を有する。活性アルミナはアルミナ三水和物を加熱脱水して得られる吸着材料で、極性分子に選択性を有する。
【0021】
また、活性白土の粒子径は通常0.01〜15mm、好ましくは0.1〜10mmであり、活性白土は液体窒素温度条件下の窒素吸着によるBET比表面積が50〜500m/g、好ましくは100〜350m/gのものである。また、その細孔容積は通常0.5〜1.0ml/g、好ましくは0.6〜0.8ml/gであり、その平均細孔直径は通常5.0〜50.0nm、好ましくは8.0〜30.0nmである。
【0022】
また、ゼオライトの粒子径は通常0.01〜15mm、好ましくは0.1〜10mmであり、ゼオライトは液体窒素温度条件下の窒素吸着によるBET比表面積が300〜1,000m/g、好ましくは400〜750m/gのものである。また、その細孔容積は通常0.2〜1.0ml/g、好ましくは0.4〜0.6ml/gであり、その平均細孔直径は通常0.2〜2.0nm、好ましくは0.4〜1.2nmである。
【0023】
また、シリカゲルの粒子径は通常0.01〜15mm、好ましくは0.1〜10mmであり、シリカゲルは液体窒素温度条件下の窒素吸着によるBET比表面積が100〜1,000m/g、好ましくは300〜800m/gのものである。また、その細孔容積は通常0.1〜1.5ml/g、好ましくは0.3〜1.2ml/gであり、その平均細孔直径は通常0.5〜20.0nm、好ましくは1.0〜15.0nmである。
【0024】
また、活性アルミナの粒子径は通常0.01〜15mm、好ましくは0.1〜10mmであり、活性アルミナは液体窒素温度条件下の窒素吸着によるBET比表面積が50〜500m/g、好ましくは100〜350m/gのものである。また、その細孔容積は通常0.1〜1.0ml/g、好ましくは0.3〜0.8ml/gであり、その平均細孔直径は通常1.0〜15.0nm、好ましくは4.0〜12.0nmである。
【0025】
また、多孔質担体の形状は、例えば、粉末状、破砕状、繊維状あるいは円柱状、球状、ハニカム状等に成型されたものであってもよい。多孔質担体の形状がハニカムである場合、そのセル数は好ましくは10〜1,500個/inch、より好ましくは25〜750個/inchであり、厚みは好ましくは5mm以上/個、より好ましくは7.5mm以上/個である。このようなセル数のハニカムは通気抵抗が小さいため、これらを複数個組み合わせても使用することも可能である。
【0026】
・担持成分
(1級または2級アミン化合物)
多孔質担体に、ヨウ素原子またはヨウ素化合物と共に担持されて吸着剤を形成する1級または2級アミン化合物は、脂肪族アミン化合物でも芳香族アミン化合物でもよく、ポリアミン類、ポリエチレンアミン類、環状アミン等も含まれる。
【0027】
例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、t−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジn−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジsec−ブチルアミン、ジt−ブチルアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、アリルアミン、ジアリルアミン、3,3’−イミノビス(プロピルアミン)、2−エチルヘキシルアミン、3−(
2−エチルヘキシルオキシプロピルアミン)、3−エトキシプロピルアミン、3−(ジエチルアミノ)プロピルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、ジ−ジチルアミン、3−(ジブチルアミノ)プロピルアミン、3−(メチルアミノ)プロピルアミン、3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン、N−メチル−3,3−イミノビス(プロピルアミン)、3−メトキシプロピルアミン、スペルミン、スペルミジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンヘキサミン、2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリアミノ−5−ニトロソピリジン、1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、1,2,5−ペンタントリアミン、アニリン、アミルアミン、アリルアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、イミダゾール、N−エチルエタノールアミン、2−エチルヘキシルアミン、N−エチルモルホリン、ε−カプロラクタム、ジアミルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジフェニルアミン、テトラエチレンペンタミン、テトラメチル尿素、o−トルイジン、ヒドラジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、2−ピロリドン、N−ブチルアニリン、N−ブチルエタノールアミン、へプチルアミン、N−メチルアニリン、モノエタノールアミン、モノエチルアミン、モルホリン等が挙げられる。
【0028】
(ヨウ素原子またはヨウ素化合物)
多孔質担体に、1級または2級アミン化合物と共に担持されて吸着剤を形成するヨウ素化合物としては、ヨウ素、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化鉄、ヨウ化亜鉛、ヨウ化錫、ヨウ化マンガン、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化銅、ヨウ化銀、ヨウ化アンモニウム、ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ素酸カリウム、ヨウ素酸マグネシウム、ヨウ素酸カルシウム、ヨウ素酸鉄、ヨウ素酸亜鉛、ヨウ素酸錫、ヨウ素酸マンガン、ヨウ素酸アルミニウム、ヨウ素酸銅、ヨウ素酸銀、ヨウ素酸アンモニウム、塩化ヨウ素、三ヨウ化ナトリウム、三ヨウ化カリウム、三ヨウ化マグネシウム、三ヨウ化カルシウム、三ヨウ化アンモニウム、ヨードメタン、ジヨードメタン、ヨードホルム、ヨウ化エチル等が挙げられる。
【0029】
なかでも、本発明の1級または2級アミン化合物、およびヨウ素原子またはヨウ素化合物を、多孔質担体に担持してなる吸着剤としては、下記(I)または(II)からなるものが好ましい。
(I)下記式(1)で表される化合物(a)および、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のヨウ化物(b)を、多孔質担体に担持してなる吸着剤。
R(NHR’)n(NHR”)m・(HX) (1)(R、R’、R”は同一または異なり、Rは炭化水素基を表し、R’とR”は水素または炭化水素基を表す。X=F、Cl、Brから選ばれ、nとmは、0または正の整数を表す。但しn+m>0とする。lは正の数であり(整数でなくてもよい)、0<l≦n+mとする。)
(II)下記式(2)で表される化合物(c)を、多孔質担体に担持してなる吸着剤。
R(NHR’)n(NHR”)m・(HI) (2)(R、R’、R”は同一または異なり、Rは炭化水素基を表し、R’とR”は水素または炭化水素基を表す。nとmは、0または正の整数を表す。但しn+m>0とする。lは正の数であり(整数でなくてもよい)、0<l≦n+mとする。)
【0030】
・担持成分(a)
上記(I)からなる吸着剤において担持させる化合物(a)としては、式(1)で表される化合物が好ましい。
R(NHR’)n(NHR”)m・(HX) (1)
(R、R’、R”は同一または異なり、Rは炭化水素基を表し、R’とR”は水素または炭化水素基を表す。X=F、Cl、Brから選ばれ、nとmは、0または正の整数を表す
。但しn+m>0とする。lは正の数であり(整数でなくてもよい)、0<l≦n+mとする。)
【0031】
R、R’ 、R”で表される炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖の
脂肪族または芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0032】
Xはフッ素、塩素、臭素から選ばれるハロゲン原子であるが、特に塩素が好ましい。
【0033】
化合物(a)は、予め式(1)で表される化合物を使用してもよいが、式(3)のよう
に、アミン化合物(又はその水溶液)とハロゲン化水素(又はその水溶液)の反応により、式(1)の化合物を生成させてもよい。
l R(NHR’)n(NHR”)m+lHX→
〔R(NHR’)n(NHR”)m・(HX)(3)
【0034】
さらに好ましくは、化合物(a)の中でも、n=lで1または2であり、m=0であり、Rが炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基であり、R’が水素または炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基のものである。
【0035】
R及びR’で表される1価の脂肪族炭化水素基のなかでも、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、等が挙げられる。好ましいのは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基である。
【0036】
R及びR’で表される2価の脂肪族炭化水素基のなかでも、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基が好ましい。例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、t−ブチレン基、等が挙げられる。好ましいのは、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基である。
【0037】
Xはフッ素、塩素、臭素から選ばれるハロゲン原子であるが、特に塩素が好ましい。
【0038】
前記式(1)における化合物(a)としては、n=l=1であり、m=0であり、Xがフッ素、塩素、臭素であり、Rが炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、R’が水素であるモノアルキルアミンハロゲン化物、n=l=1であり、m=0であり、Xがフッ素、塩素、臭素であり、R、R’が同一または異なる炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であるジアルキルアミンハロゲン化物、およびn=l=2であり、m=0であり、Xがフッ素、塩素、臭素であり、Rが炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、R’が水素であるジアミンハロゲン化物が好ましい。なかでも、Xとして塩素を用いた、モノアルキルアミン塩酸塩、ジアルキルアミン塩酸塩、ジアミン二塩酸塩から選ばれるアミン塩酸塩が好ましい。
【0039】
モノアルキルアミン塩酸塩としては、例えば塩酸メチルアミン、塩酸エチルアミン、塩酸n−プロピルアミン、塩酸イソプロピルアミン、塩酸n−ブチルアミン、塩酸イソブチルアミン、塩酸sec−ブチルアミン、塩酸t−ブチルアミン等が用いられる。また、ジアルキルアミン塩酸塩としては、例えば塩酸ジメチルアミン、塩酸ジエチルアミン、塩酸ジn−プロピルアミン、塩酸ジイソプロピルアミン、塩酸ジn−ブチルアミン、塩酸ジイソブチルアミン、塩酸ジsec−ブチルアミン、塩酸ジt−ブチルアミン等が用いられる。さらに、ジアミン二塩酸塩としては、エチレンジアミン二塩酸塩、トリメチレンジアミン二塩酸塩、テトラメチレンジアミン二塩酸塩等が用いられる。特に塩酸メチルアミンが好ましい。
【0040】
多孔質担体に対する式(1)で表される化合物(a)の量は、多孔質担体100重量部(乾燥品基準)に対し1〜30重量部、好ましくは5〜20重量部である。多孔質担体としては、活性炭が好ましい。
【0041】
・担持成分(b)
本発明で用いられるヨウ化物を形成するアルカリ金属またはアルカリ土類金属としては、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。アルカリ金属を用いるのが好ましく、中でも、カリウムを用いるのが好ましい。
【0042】
多孔質担体に対する該ハロゲン化物の量としては、多孔質担体100重量部(乾燥品基準)に対し1〜60重量部が好ましく、更に好ましくは10〜30重量部である。多孔質担体としては、活性炭が好ましい。
【0043】
また、多孔質担体に担持させる、本願特定の化合物(a)と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のヨウ化物(b)との比率は、モル比で10:1〜1:2であり、好ましくは、2:1〜1:2である。上記(b)は、上記(a)中のハロゲン原子と等モル用いることが好ましい。
【0044】
・担持成分(c)
上記(II)からなる吸着剤において担持させる化合物(c)としては、式(2)で表される化合物が好ましい。
R(NHR’)n(NHR”)m・(HI) (2)
(R、R’、R”は同一または異なり、Rは炭化水素基を表し、R’とR”は水素または炭化水素基を表す。nとmは、0または正の整数を表す。但しn+m>0とする。lは正の数であり(整数でなくてもよい)、0<l≦n+mとする。)
【0045】
R、R’ 、R”で表される炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖の
脂肪族または芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0046】
化合物(c)は、予め式(2)で表される化合物を使用しても良いが、式(4)のよう
に、アミン化合物(又はその水溶液)とヨウ化水素(又はヨウ化水素酸)の反応により、式(2)の化合物を生成させても良い。
【0047】
l R(NHR’)n(NHR”)m+l HI→
〔R(NHR’)n(NHR”)m・(HI)(4)
【0048】
さらに好ましくは、化合物(c)の中でも、n=lで1または2であり、m=0であり、Rが炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基であり、R’が水素または炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基のものである。
【0049】
R及びR’で表される1価の脂肪族炭化水素基のなかでも、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、等が挙げられる。好ましいのは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基である。
【0050】
R及びR’で表される2価の脂肪族炭化水素基のなかでも、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基が好ましい。例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、t−ブチレン基、等が挙げられる。好ましいのは、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基で
ある。
【0051】
前記式(2)における化合物(c)としては、n=l=1であり、m=0であり、R(またはR’)が炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、R’(またはR)が水素であるヨウ化水素酸モノアルキルアミン、n=l=1であり、m=0であり、R、R’が同一または異なる炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であるヨウ化水素酸ジアルキルアミン、およびn=l=2であり、m=0であり、R(またはR’)が炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、R’(またはR)が水素であるジアミン二ヨウ化水素酸塩、が好ましい。なかでも、ヨウ化水素酸モノアルキルアミンが好ましい。
【0052】
ヨウ化水素酸モノアルキルアミンとしては、例えばヨウ化水素酸メチルアミン、ヨウ化水素酸エチルアミン、ヨウ化水素酸n−プロピルアミン、ヨウ化水素酸イソプロピルアミン、ヨウ化水素酸n-ブチルアミン、ヨウ化水素酸イソブチルアミン、ヨウ化水素酸sec-
ブチルアミン、ヨウ化水素酸t-ブチルアミン等が用いられる。また、ヨウ化水素酸ジアルキルアミンとしては、例えばヨウ化水素酸ジメチルアミン、ヨウ化水素酸ジエチルアミン、ヨウ化水素酸ジn−プロピルアミン、ヨウ化水素酸ジイソプロピルアミン、ヨウ化水素酸n-ブチルアミン、ヨウ化水素酸イソブチルアミン、ヨウ化水素酸sec-ブチルアミン、ヨウ化水素酸t-ブチルアミン等が用いられる。さらに、ジアミン二ヨウ化水素酸塩としては、エチレンジアミン二ヨウ化水素酸塩、トリメチレンジアミン二ヨウ化水素酸塩、テトラメチレンジアミン二ヨウ化水素酸塩等が用いられる。特にヨウ化水素酸メチルアミンが好ましい。
【0053】
多孔質担体に対する式(2)で表される化合物(c)の量は、多孔質担体で100重量部(乾燥品基準)に対し1〜50重量部、好ましくは10〜40重量部である。多孔質担体としては、活性炭が好ましい。
【0054】
・担持成分(d)
本発明において、多孔質担体に併用担持できる酸(d)は、有機酸及び/又は無機酸のいずれであってもよい。前記酸(d)を併用担持することにより、得られる吸着剤の耐熱性が向上し、また、経時劣化が抑制される。
【0055】
有機酸には、例えば、フマル酸、マレイン酸などの多価カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、グルタル酸やヒドロキシカルボン酸などが含まれ、無機酸には、例えば、リン酸、硫酸、硝酸、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、ホウ酸などが含まれる。これらの酸は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0056】
好ましい酸としては、100℃以上の沸点を有する非揮発性酸、例えば、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸などの有機酸(特にヒドロキシカルボン酸)、リン酸、硫酸などの無機酸が挙げられる。特に好ましい酸は、非揮発性無機酸、なかでもリン酸である。リン酸を用いると、担体として活性炭を用いても発火温度を高めることができ、難燃性を付与できるという利点もある。リン酸は、三塩基酸であるオルトリン酸とその縮合物、例えば、オルトリン酸、メタリン酸、ポリリン酸であってもよく、通常、オルトリン酸を用いる場合が多い。
【0057】
多孔質担体に対する上記酸(d)の量としては、多孔質担体100重量部(乾燥品基準)に対し1〜40重量部が好ましく、更に好ましくは1〜20重量部である。多孔質担体としては、活性炭が好ましい。
【0058】
・担持方法
本発明の1級または2級アミン化合物、およびヨウ素原子またはヨウ素化合物を、多孔質担体に担持させる方法としては、前記1級または2級アミン化合物および前記ヨウ素原子またはヨウ素化合物を溶媒に溶解してなる溶液を、多孔質担体に接触させる方法が挙げられる。
【0059】
また、本願特定の化合物(a)と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のヨウ化物(b)とを、多孔質担体に担持させる方法としては、前記化合物(a)および前記ヨウ化物(b)を溶媒に溶解してなる溶液を、多孔質担体に接触させる方法が挙げられる。例えば、(1)多孔質担体を撹拌混合しながら、前記化合物(a)およびヨウ化物(b)の混合溶液を噴霧・散布する方法、(2)前記化合物(a)と前記ヨウ化物(b)とを、予め溶媒に溶解させ、多孔質担体をこの溶媒に浸漬する方法、(3)粉末状の多孔質担体と、前記化合物(a)およびヨウ化物(b)の溶解した溶媒を混合し、必要に応じてバインダーを添加して造粒、成型する方法等が挙げられる。前記担持方法において、必要に応じて用いられるバインダーとしては、例えばカルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アラビヤゴム等があり、使用量は少ないほど望ましい。前記化合物(a)およびヨウ化物(b)を溶解する溶媒は、当該(a)および(b)が溶解するものであればよく、例えば、水、アルコール系溶剤等が挙げられる。アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノ-ル、イソプロパノール等が挙げられる。その他、セロソルブ系溶
剤、カルビトール系溶剤なども使用可能である。セロソルブ系溶剤としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。カルビトール系溶剤としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。また、上記以外の有機溶剤も溶解性、作業性に支障を来たさない範囲で使用可能であり、この有機溶剤として、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤などを挙げることができる。水を必須として含み、他の溶媒を混合することもできる。好ましくは水である。前記化合物(a)およびヨウ化物(b)の溶媒への溶解順序は、どちらが先でもよい。
【0060】
また、本願特定の化合物(c)を、多孔質担体に担持させる方法としては、前記化合物(c)を溶媒に溶解してなる溶液を、多孔質担体に接触させる方法が挙げられる。上記本願特定の化合物(a)と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のヨウ化物(b)とを、多孔質担体に担持させる(1)〜(3)の方法いずれをも適用することができる。
【0061】
さらに、酸(d)を併用する場合、前記化合物(a)および前記ヨウ化物(b)を溶媒に溶解してなる溶液に、酸(d)を加えてなる溶液を、多孔質担体に接触させる。
【0062】
あるいは、前記化合物(c)を溶媒に溶解してなる溶液に、酸(d)を加えてなる溶液を、多孔質担体に接触させる。
【0063】
このようにして得られた本発明の吸着剤は、pHが2.0〜11.0である。
【0064】
さらに、前記溶液を多孔質担体に担持して得られた吸着剤を、加熱乾燥させることもできる。一般的な加熱方法が用いられる。115℃程度の静置式乾燥機内にバットや網状容器上に拡げて1〜3時間乾燥させる方法が挙げられる。
【0065】
このようにして得られた吸着剤は、固定床、移動床あるいは流動床などの吸着装置に充填し、これに悪臭ガスを通気処理することにより、悪臭物質除去に使用される。また例えば不織布、ウレタンフォーム、紙、加工ボード、壁などに混合するか粉末状、顆粒状、ペレット状、ハニカム状等の種々の形態で、悪臭物質が充満しやすい自動車内、喫茶店、会
議室、作業場あるいは家庭の居室等に設置または載置することにより、空気の浄化が達成される。また空気清浄器用フィルターに使用すると、空気中の有害・刺激成分を効率よく除去することができる。悪臭物質としては、例えば、低級アルデヒド類が挙げられ、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドが代表的であるが、沸点が約100℃以下であるプロピオンアルデヒド、アクロレイン、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、3−メチル−ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド等も悪臭対策上、それらに対して有効な吸着剤が必要とされており、本発明の吸着剤はこれらのアルデヒド類の除去に対しても有効である。なかでも、本発明の吸着剤はアセトアルデヒドの吸着に特に有効である。
【0066】
本願発明の吸着剤は、100℃以上の高温に曝されても、その吸着能力を保持できるため、加工温度の高い車両内装用表皮材に含有させることができる。車両内装用表皮材として用いることにより、悪臭物質が充満しやすい自動車内などにおいて、悪臭物質除去を効果的に行うことができる。
【0067】
(車両用内装表皮材について)
本発明の車両用内装表皮材1は、目止め層3と目止め層の一面側に積層された表皮層2とを備えた表皮材であって、その目止め層3に、吸着剤を含有するものである。
【0068】
車両室内で表皮材を用いる内装部品としては特に限定されないが、フロアカーペット、用品マット、天井、シート表皮、インパネ用表皮、ドアトリム用表皮、パッケージトレイ表皮、トノカバー表皮などが挙げられる。
【0069】
・表皮層
前記「表皮層2」は、本表皮材の表皮部を構成する層であり、通常、その表面に起毛状態を形成できる繊維層である。この表皮層2の構成は特に限定されないが、例えば、タフト布(図13の符号2参照)、不織布(図14の符号2参照)、織物及び編物等を用いることができる。
【0070】
このうちタフト布は、図13に例示されるように、基布2aにパイル糸2bをタフティングしてなる布であり、上記内装部品のうち、主にカーペット、用品マットに用いられるものである。
【0071】
タフト布を構成する基布2aの種類は特に限定されず、各種不織布及び各種織布を用いることができるが、不織布が好ましく、更には、スパンボンドが好ましい。更に、基布の材質も特に限定されず、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられるが、ポリエステルが好ましい。即ち、基布111としては、ポリエステル製スパンボンド不織布が好ましい。基布111がスパンボンドである場合の目付は特に限定されないが、50〜150g/cmが好ましく、更には80〜120g/cmが好ましい。
【0072】
一方、パイル糸としては、先端がループ状のループパイル、先端が切断されたカットパイル等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。更に、このパイル糸の反表皮側の先端部は、図13に例示されるように、目止め層3側にU字状に突出していることが好ましい。これにより、目止め層3によって確実に目止めされてパイル糸の脱落を効果的に防止できる。また、パイル糸の材質は特に限定されず、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられるが、ポリアミドが好ましい。目付は特に限定されないが、100〜1000g/cmが好ましい。
【0073】
また、上記内装部品のうち、主にフロアカーペット、用品マット、パッケージトレイ表
皮、トノカバー表皮などに用いる場合、前記表皮層2を不織布で構成することができる。
【0074】
その場合、不織布として、どのような不織布を用いてもよい。また、不織布をニードルでパンチングすることでより効果的な起毛状態(例えば、ベロア調等)を形成して用いることができる。更に、その材質も特に限定されず、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられるが、ポリエステルが好ましい。即ち、ポリエステル製ニードルパンチ不織布が好ましい。更に、二枚の不織布を積層してニードルパンチを施したツインニードルパンチ不織布等を用いることもできる。基布2aが不織布である場合、この不織布の構成繊維の繊度は特に限定されないが、2.2〜17デシテックス(特に、6.6〜11デシテックス)であることが好ましい。目付は特に限定されないが、100〜500g/cmが好ましい。
【0075】
更に、表皮層2を構成するものとして、フックカーペット、段通カーペット等を用いることもできる。
【0076】
また、上記内装部品のうち、シート表皮、ドアトリム表皮、インパネ表皮として用いる場合には、表皮層2として、織物、編物、不織布などを用いることができる。更に、その材質も特に限定されず、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられるが、ポリエステルが好ましい。目付は特に限定されないが、100〜1000g/cmが好ましい。
【0077】
その他、表皮層2を構成するものとして、本革、合成皮革、塩ビレザー等を用いることもできる。
【0078】
・目止め層
目止め層3は、表皮層2の表面に位置する繊維が摩擦により剥離、脱離するのを防ぐために、表皮層2の裏面に固着させる層である。樹脂成分3aからなり、ここに本発明の吸着剤3bを含有させる。
【0079】
樹脂成分3aは、有機高分子成分であり特に限定されないが、例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの樹脂、SBR、NBR、MBR、天然ゴムなどのゴム成分が挙げられる。中でもアクリル樹脂が好ましく、また、2種以上を混合してもよい。
【0080】
これらの有機高分子成分はどのような形態で目止め層3内に含有されていても良いが、より消臭性能を効果的に発揮させるには適度な通気性を持たせることが好ましい。通気性の付与方法は特に限定されないが、例えば発泡状態とすると連泡構造が得られ、目止め機能を十分に発揮するとともに、含有させる吸着剤への通気を得ることができるため、消臭効果を高めることができる。
【0081】
目止め層3に含有される本発明の吸着剤の含有量は特に限定されないが、目止め層全体を100質量%とした場合、本発明の吸着剤3bを10〜90質量%とすることができ、20〜80質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましく、30〜50質量%が特に好ましい。
【0082】
目止め層3には、本発明の吸着剤3bに加え、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を多孔質担体に担持してなる第二の吸着剤3cも含有させることができる。当該アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を加えることで、酢酸低減性能を保持するとともに、高温での酢酸の再放出が低減できる。
【0083】
第二の吸着剤3cに用いられる多孔質担体としては、本発明の吸着剤3bに用いられる多孔質担体と同様のものが挙げられる。好ましくは、活性炭であり、特にヤシ殻を原料とした活性炭である。
【0084】
アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなど)、炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなど)、炭酸水素塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウムなど)などが挙げられる。なかでも、炭酸カリウムが好ましい。
【0085】
多孔質担体に担持させるアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の量としては、多孔質担体100重量部(乾燥品基準)に対し1〜40重量部であり、好ましくは5〜25重量部である。多孔質担体としては、活性炭が好ましい。
【0086】
また、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の多孔質担体への担持方法としては、上述の化合物(a)とヨウ化物(b)の担持方法(1)〜(3)と同様に、アルカリ金属塩又はアルカリ金属塩を溶媒に溶解してなる溶液に接触させる方法が挙げられる。(1)〜(3)の方法何れをも適用することができる。
【0087】
こうして得られた第二の吸着剤3cを本発明の吸着剤3bと併用する場合、本発明の吸着剤3bと、当該第二の吸着剤3cの混合比は、10:90〜90:10であり、好ましくは30:70〜70:30であり、さらに好ましくは40:60〜60:40である。
【0088】
目止め層3に含有させる吸着剤の粒径は、1〜300μmが好ましく、特に10〜100μmが好ましい。粒径がこの範囲であると、当該吸着剤を良好に樹脂成分中に分散させることができる。
【0089】
また、目止め層3に含有させる吸着剤のpHは6〜9が好ましい。pHが大きく変動する場合には、pH調整を施すことができる。酸性側へpHを調整する場合には、クエン酸、リン酸、硫酸、塩酸などを用いることができ、これらは1種類のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。塩基性側へpH調整を行うには水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、アンモニアなどを用いることができる。これらは1種類のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
・その他の構造
また、本発明における車両用内装表皮材1は、表皮層2と目止め層3との積層物の目止め層側に、バッキング層4を有していても良い。バッキング層4は、音を遮音、吸音する層として機能し、さらには保形性を向上させたりすることができる。
【0091】
バッキング層4の材質は特に限定されないが、樹脂、エラストマー、及びゴムなどが挙げられる。樹脂としては、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂のいずれも用いることができるが、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、およびポリ塩化ビニル系樹脂などが挙げられる。これらを1種で用いても、2種以上で用いてもよい。中でも、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましく、さらにポリエチレン系樹脂が好ましく、特に好ましくは低密度ポリエチレンである。
【0092】
バッキング層4は通気性を有していてもいなくてもよいが、通気性を有さない層とすることが好ましい。これにより、優れた遮音特性、防水特性、防錆効果を発揮することができる。
【0093】
・車両用内装表皮材の製造方法
表皮層2への目止め層3の形成方法は特に限定されないが、通常、目止め層3となる樹脂成分3aを水に分散させてラテックスとし、そこに吸着剤3b(および必要に応じて3c)を混合したものを、表皮層2に塗布し、乾燥することにより形成される。必要に応じて、ラテックスとの分散性を向上させるため、pH調整を実施することもできる。
【0094】
塗布方法は特に限定されないが、ロールコーター、バーコーター、スプレー塗布及びディッピングなどの各種方法で形成することができる。塗工量は特に限定されないが、分散体のうちの固形分のみによる換算で5〜200g/mが好ましく、特に好ましくは50〜100g/mである。吸着剤の分散媒は特に限定されず、有機分散媒、水系分散媒のいずれも用いることが可能であるが、水系分散媒が好ましい。
【0095】
目止め層3は通気性を有することが好ましいことから、有機高分子成分と吸着剤とを含む分散体を発泡させ、ムース状にして塗布することが好ましい。
【0096】
また、上記分散体には、有機高分子成分、吸着剤、分散媒の他に従来公知の種々の発泡剤を用いることが好ましい。発泡倍率は特に限定されないが、通常2倍以上が好ましく、4〜9倍が特に好ましい。
【0097】
また、分散体の粘度を調整するために、従来公知の種々の増粘剤を加えることもできる。さらに、吸着剤の沈降を防止するために沈降防止剤を加えることもできる。また、吸着剤の分散性を向上させるために従来公知の種々の分散剤を加えることもできる。
【0098】
また、上記分散体には、難燃剤を加えることもできる。難燃剤成分は特に限定されないが、ハロゲン系難燃剤、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、無機系難燃剤などが挙げられ、この中でも、難燃性能、環境への影響からリン系難燃剤、無機系難燃剤が好ましく、リン系難燃剤ではリン酸エステルが好ましく、無機系難燃剤では、金属水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなど)が好ましい。
【0099】
バッキング層4の形成方法としては、特に限定されないが、表皮層2と目止め層3よりなる積層物の目止め層側に、Tダイ溶融押出し機を用いてバッキング層4となる樹脂をフ
ィルム状に直接押出し、ロール圧着したのち冷却し非通気のバッキング層4を形成する。目付けは特に限定されないが100g/m〜500g/mが好ましい。
【0100】
このようにして得られた車両用内装表皮材1は、表皮の乾燥加熱や成形時の加熱などの高温での加熱においても、消臭性能の劣化が少なく、高い消臭効果を維持している。特に、アルデヒドの吸着能力に優れており、車室内で優れた消臭効果を発揮することができるため、車両用内装材として好適である。また、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を多孔質担体に担持してなる第二の吸着剤3cも併用した場合、酢酸低減性能を保持するとともに、高温での酢酸の再放出が低減できる。
【実施例】
【0101】
以下に実施例と比較例を示して、本発明をより具体的に説明する。
【0102】
(多孔質担体)
実施例および比較例において、下記の活性炭を用いた。
日本エンバイロケミカルズ(株)製粒状白鷺WH2c20/48L
粒度が0.850〜0.300mmであるヤシ殻破砕状の水蒸気賦活活性炭
比表面積:1509m/g、細孔容積:0.68mL/g、平均細孔直径:1.8nm
(−196℃での窒素吸着法(Micromeritics製 ASAP2405)に
より測定)
【0103】
(吸着剤)
実施例1
ヨウ化カリウム4.0gを水30.0gに溶解し、次いで塩酸メチルアミン10.0gを溶解して、添着溶液を調製した。
【0104】
次に、0.850〜0.300mmの粒度のヤシ殻破砕状の水蒸気賦活活性炭(日本エンバイロケミカルズ(株)製粒状白鷺WH2c20/48L)100.0gを添着容器に入れ、50rpmで回転させながら上述の添着溶液の全量を均一に噴霧して、添着活性炭を得た(添着時間20分間)。得られた添着活性炭を乾燥せずに、実施例1の吸着剤とした。
【0105】
実施例2〜実施例16、比較例1〜比較例8
表1〜表10の組成に従い、実施例1と同様にして、吸着剤を得た。
【0106】
また、実施例4、6〜14については、下記の方法により加熱したサンプルも得た。
内径20mmのガラスカラムに実施例4、6〜14で得られた添着活性炭の23.5mlを充てんし、1L/minの空気を通気しながら160℃の電気乾燥機の中に設置した。3
0分後、乾燥機から取り出して、デシケータ中で冷却して加熱後の吸着剤とした。
【0107】
【表1】

【0108】
【表2】

*活性炭・水以外の処方のモル数(mmol/g・原料活性炭)
【0109】
【表3】

【0110】
【表4】

*活性炭・水以外の処方のモル数(mmol/g・原料活性炭)
【0111】
【表5】

【0112】
【表6】

*活性炭・水以外の処方のモル数(mmol/g・原料活性炭)
【0113】
【表7】

【0114】
【表8】

*活性炭・水以外の処方のモル数(mmol/g・原料活性炭)
【0115】
【表9】

【0116】
【表10】

*活性炭・水以外の処方のモル数(mmol/g・原料活性炭)
【0117】
実施例17
57%ヨウ化水素酸100gを水50gに溶解し、次いで40%メチルアミン水溶液34.6gを徐々に加えて、44%ヨウ化水素酸メチルアミン水溶液を調製した。その溶液の53.7gを採取し、さらに水30gを加えて添着溶液を調製した。
【0118】
次に、0.850〜0.300mmの粒度のヤシ殻破砕状の水蒸気賦活活性炭(日本エンバイロケミカルズ(株)製粒状白鷺WH2c20/48L)100.0gを添着容器に入れ、50rpmで回転させながら上述の添着溶液83.7gを均一に噴霧して、添着活性炭を得た(添着時間20分間)。得られた添着活性炭を乾燥せずに、実施例17の吸着剤とした。
【0119】
【表11】

【0120】
【表12】

*活性炭・水以外の処方のモル数(mmol/g・原料活性炭)
【0121】
実施例18
表13および14の組成に従い、実施例1と同様にして、吸着剤を得た。
【0122】
実施例19
ヨウ化カリウム20.3gを水45.0gに溶解し、次いで塩酸エチルアミン10.0gを溶解した後、さらにリン酸2.4gを加え、添着溶液を調製した。
【0123】
当該添着溶液を、実施例1と同様に活性炭に添着させ、塩酸エチルアミン、ヨウ化カリウムおよびリン酸を担持した吸着剤を得た。
【0124】
実施例20、21
表13および14の組成に従い、実施例19と同様にして、吸着剤を得た。
また、実施例18〜21について、実施例4、6〜14と同様にして加熱したサンプルも得た。
【0125】
【表13】

【0126】
【表14】

*活性炭・水以外の処方のモル数(mmol/g・原料活性炭)
【0127】
比較例9
表15および16の組成に従い、実施例1と同様にして、吸着剤を得た。
【0128】
比較例10〜12、実施例22
表15および16の組成に従い、実施例19と同様にして、吸着剤を得た。
また、比較例9〜12、実施例22について、実施例4、6〜14と同様にして加熱したサンプルも得た。
【0129】
【表15】

【0130】
【表16】

*活性炭・水以外の処方のモル数(mmol/g・原料活性炭)
【0131】
試験例1
(吸着能評価)
得られた吸着剤の吸着能を、下記の条件で測定した。
・アセトアルデヒド流通テスト方法
内径20mmのガラスカラムに、得られた吸着剤を5.6ml充填し、25℃で25ppmのアセトアルデヒド含有空気を2L/minの流量で通気した。一定時間毎にガラスカラムの入口と出口のアセトアルデヒドガス濃度をガスクロマトグラフィーによって分析した。破過率は次式により算出した。
【0132】
破過率(%)=C/C×100
:入口アセトアルデヒド濃度(ppm)
C :出口アセトアルデヒド濃度(ppm)
表1〜16に記載された実施例および比較例についての結果を、それぞれ図1〜図11に示した。
【0133】
図1より、本願特定の化合物(a)および(b)を担持した実施例1〜6の吸着剤は、アルデヒドを長時間にわたり除去することができる。一方、化合物(a)のみを担持した比較例1〜3の吸着剤は、吸着能力に乏しい。
【0134】
また、実施例2、4〜6に示されるとおり、成分(b)の量を増加させ、成分(a)の量と等モルに近づけることにより、吸着能力も向上する。
【0135】
図2より、本願特定の化合物(a)および(b)を担持した実施例4および6の吸着剤は、160℃で30分加熱しても、その吸着能力を保持しており、アルデヒドを長時間にわたり除去することができる。
【0136】
図3より、成分(a)と(b)のモル比を同量にして添着量を変化させた実施例8〜10の吸着剤は、薬品含量の増加に伴い、悪臭除去性能の向上が確認された。
【0137】
図4より、実施例7〜11の吸着剤は、160℃で30分加熱することにより、その活性は低下するものの、吸着性能を保持している。
【0138】
図5より、本願特定のヨウ化物(b)であるヨウ化カリウムに代えて、塩化カリウム、臭化カリウムを担持した吸着剤については、ヨウ化カリウムのような活性はないことを確認した。
【0139】
図6より、実施例12〜14の未加熱の吸着剤では、メチル≦エチル≒プロピルと炭素数による性能差はほとんど見られなかった。
【0140】
図7より、実施例12〜14の吸着剤を160℃で30分加熱したものについては、エチル>メチル>プロピルという性能差が見られた。
【0141】
図8より、本願特定の化合物(a)について、一級および二級アミンでは活性があるが、三級アミンでは活性がないことが確認された。また、ヨウ化カリウム(成分(b))のみを添着した場合には、無添着炭に比べてごくわずかに活性が上がるものの、一級および二級アミン類の活性と比べて極めて小さい。
【0142】
図9より、ヨウ化水素酸とメチルアミン溶液を混合して、ヨウ化水素酸メチルアミンとし、活性炭に添着したものは、メチルアミン塩酸塩とヨウ化カリウムを混合して添着したものよりも性能が高い。
【0143】
図10より、リン酸を添加することで未加熱時の性能は低下する。一方、加熱による性能低下の程度は、リン酸量が多くなる程、少なくなる。即ち、リン酸添加によって加熱時の性能低下が抑制できる。
【0144】
図11および図12より、比較例9(特開平4-358536のもの)、比較例10および比較
例11(比較例9にリン酸を添着し、更に耐熱性の向上を計ったもの)に比べると、実施例22は初期性能では同等レベルであるが、加熱後の性能低下が少なく、優位性を有する

【0145】
(表皮材)
実施例、比較例および参考例に用いる吸着剤の多孔質担体として、下記の活性炭を用いた。
【0146】
日本エンバイロケミカルズ(株)製白鷺PHC-5
ヤシ殻粉末状の水蒸気賦活活性炭
メジアン径:27.4μnm ((株)堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布測定
装置 LA−300により測定)
比表面積:1228m/g、細孔容積:0.548mL/g、平均細孔直径:1.78nm
(−196℃での窒素吸着法(Micromeritics製 ASAP2405)に
より測定)
【0147】
比較例13、14および実施例23
表9の組成に従い、実施例19と同様にして、吸着剤を得た。
【0148】
参考例1
炭酸カリウム11.0gを水55.0gに溶解して添着溶液を調製した。
次に、ヤシ殻粉末状の水蒸気賦活活性炭(日本エンバイロケミカルズ(株)製白鷺PHC−5)100.0gを添着容器に入れ、50rpmで回転させながら上述の添着溶液の全量を均一に噴霧して、添着活性炭を得た(添着時間20分間)。得られた添着活性炭を乾燥せずに、参考例1の吸着剤とした。
【0149】
比較例15
ヤシ殻粉末状の水蒸気賦活活性炭(日本エンバイロケミカルズ(株)製白鷺PHC−5)100.0gを添着容器に入れ、50rpmで回転させながら水44.0gを均一に噴霧して、含水活性炭を得た(添着時間20分間)。得られた含水活性炭を乾燥せずに、比較例15の吸着剤とした。
【0150】
【表17】

【0151】
【表18】

*活性炭・水以外の処方のモル数(mmol/g・原料活性炭)
【0152】
(試験サンプル)
ラテックス(水酸化アルミニウムを50%含有したアクリル樹脂水系エマルジョン、固形分濃度50wt%)と、表19の組成に従い、比較例13〜15、実施例23および参考例1の各々を添加し混合して水分散体を調製した。各吸着剤混合物とラテックスとの配合は、吸着剤混合物とラテックスの固形分との合計量を100質量%として、吸着剤混合物が40質量%、ラテックスの固形分が60質量%となるようにした。
【0153】
表皮層としては目付け350g/mのポリエステル製ニードルパンチ不織布を用いた。発泡剤を混合し、さらに空気と混合することで発泡させた上記の吸着剤混合の発泡ラテックスをロールコーターで固形分質量換算100g/mの塗工量で塗工した。その後、温度170℃で5分間乾燥させて目止め層を形成し、表皮層の裏面側に目止め層が積層された積層物を得た。この積層物の目止め層側にTダイ溶融押出機を用いてポリエチレンをフィルム状に直接押出してロール圧着した後、冷却して、非通気のバッキング層を形成した。さらに成形時の加熱を模擬し、180℃のオーブンにて2分間加熱し比較例16、17、実施例24、25の表皮材試験サンプルを得た。
【0154】
【表19】

【0155】
試験例2
(アセトアルデヒド吸着性能評価)
アミン系薬剤変更による性能差を評価するため、前記で得られた比較例16、17、実施例25の各表皮材を100×80mmに裁断して各試験片とした。次いで容積4Lのガスバッグ(ジーエルサイエンス株式会社)内に前記各試験片を投入し、アセトアルデヒドガスを4Lずつ注入し、注入直後の濃度と、注入してから1時間、2時間、4時間後のガス濃度を、検知管式測定器(株式会社ガステック製)を用いて測定した。ガスの測定にはアセトアルデヒド用検知管 品番92M(株式会社ガステック製)を用いて測定した。こ
の結果を表20に示す。
【0156】
また、加熱による再放出を評価する為、前記の消臭試験の後、ガスバック内の全ての気体を抜いた後、4リットルの窒素ガスを注入した。ついで、80℃で2時間維持した後、各試験ガスの濃度を、検知管式測定器(株式会社ガステック製)を用いて測定した。ガスの測定にはアセトアルデヒド用検知管 品番92L(株式会社ガステック製)を用いて測定した。
【0157】
【表20】

【0158】
表20の結果より、本発明による吸着剤を用いた表皮材サンプルは、高温での加工の後も従来の吸着剤を用いた表皮材サンプルと比較し、優れたアセトアルデヒドの低減性能を発現することがわかった。
【0159】
試験例3
(酢酸吸着性能評価)
アルカリ金属塩による酢酸の吸着性能を評価するため、前記で得られた実施例24、実施例25の各表皮材を100×80mmに裁断して各試験片とした。次いで容積4Lのガスバッグ(ジーエルサイエンス株式会社)内に前記各試験片を投入し酢酸ガスを4Lずつ注入し、注入直後の濃度と、注入してから1時間、2時間、4時間後のガス濃度を、検知管式測定器(株式会社ガステック製)を用いて測定した。ガスの測定には酢酸用検知管
品番81Lを用いて測定した。この結果を以下の表21に示す。
【0160】
また、加熱による再放出を評価する為、前記の消臭試験の後、ガスバック内の全ての気体を抜いた後、4リットルの窒素ガスを注入した。ついで、80℃で2時間維持した後、各試験ガスの濃度を、検知管式測定器(株式会社ガステック製)を用いて測定した。ガスの測定には酢酸用検知管 品番81Lを用いて測定した。
【0161】
【表21】

【0162】
表21の結果より、本発明による吸着剤を用いた表皮材サンプルは、酢酸低減性能も有することがわかった。さらに、アルカリ金属塩を担持した第二の吸着剤を加えることで、高温での酢酸の再放出が低減できることがわかった。
【0163】
尚、本発明においては、上記の実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
【符号の説明】
【0164】
1 車両用内装表皮材
2 表皮層
2a 基布
2b パイル糸
3 目止め層
3a 樹脂成分
3b 本発明の吸着剤
3c 第二の吸着剤
4 バッキング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1級または2級アミン化合物、およびヨウ素原子またはヨウ素化合物を、多孔質担体に担持してなる吸着剤。
【請求項2】
下記(I)または(II)からなる、請求項1に記載の吸着剤。
(I)下記式(1)で表される化合物(a)および、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のヨウ化物(b)を、前記多孔質担体に担持してなる吸着剤。
R(NHR’)n(NHR”)m・(HX) (1)
(R、R’、R”は同一または異なり、Rは炭化水素基を表し、R’とR”は水素または炭化水素基を表す。X=F、Cl、Brから選ばれ、nとmは、0または正の整数を表す。但しn+m>0とする。lは正の数であり(整数でなくてもよい)、0<l≦n+mとする。)
(II)下記式(2)で表される化合物(c)を、前記多孔質担体に担持してなる吸着剤。
R(NHR’)n(NHR”)m・(HI) (2)
(R、R’、R”は同一または異なり、Rは炭化水素基を表し、R’とR”は水素または炭化水素基を表す。nとmは、0または正の整数を表す。但しn+m>0とする。lは正の数であり(整数でなくてもよい)、0<l≦n+mとする。)
【請求項3】
前記化合物(a)が、モノアルキルアミン塩酸塩、ジアルキルアミン塩酸塩、アルキルジアミン二塩酸塩から選ばれる、請求項2に記載の吸着剤。
【請求項4】
前記ヨウ化物(b)が、アルカリ金属のヨウ化物である、請求項2または3に記載の吸着剤。
【請求項5】
前記多孔質担体が活性炭である請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸着剤。
【請求項6】
さらに、酸(d)を併用担持してなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸着剤。
【請求項7】
前記(I)からなる吸着剤であって、前記多孔質担体100重量部に対し、前記化合物(a)が1〜30重量部、前記ヨウ化物(b)が1〜60重量部、前記酸(d)が0〜40重量部担持されている、請求項2〜6のいずれか1項に記載の吸着剤。
【請求項8】
前記(II)からなる吸着剤であって、前記多孔質担体100重量部に対し、前記化合物(c)が1〜50重量部、前記酸(d)が0〜40重量部担持されている、請求項2〜6のいずれか1項に記載の吸着剤。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の吸着剤により、悪臭物質を吸着する脱臭方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−92939(P2011−92939A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284060(P2010−284060)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【分割の表示】特願2009−252372(P2009−252372)の分割
【原出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(503140056)日本エンバイロケミカルズ株式会社 (95)
【Fターム(参考)】