説明

吸着強化圧縮空気エネルギー蓄積

本開示の一実施態様において、エネルギー蓄積装置が提示される。このエネルギー蓄積装置は、空気を吸着する多孔質材料および圧縮機を含む。圧縮機は機械エネルギーを圧縮空気および熱に変換し、および、圧縮空気は冷却されて、多孔質材料によって吸着される。このエネルギー蓄積装置はさらに、圧縮されて吸着された空気を蓄積するのに用いられるタンクおよびモータを含む。モータを駆動している間、空気が脱着して膨張するのを可能にすることによって圧縮されて吸着された空気として蓄積されるエネルギーを回収するように、モータが駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
この特許出願はTimothy F.Havelによって、2008年3月14日に米特許商標局に出願された(特許文献1)に対する優先権を主張し、その全ての内容を全体として本願明細書に引用したものとする。
【0002】
本開示は、エネルギー蓄積の分野に関する。特に、本開示は空気を吸着する多孔質材料を含む圧力チャンバを含むエネルギー蓄積装置を目的とする。
【背景技術】
【0003】
圧縮空気エネルギー蓄積は一般にその頭字語「CAES」によって公知である。いくつかのCAES装置において、空気圧縮機が電気モータによって駆動され、続いて電磁発電機に接続される空気圧モータまたはタービンを駆動するのに用いられ、それによって電気化学バッテリの機能的同等物を形成する。充電−放電サイクルがおよそ等温であるように十分にゆっくり実施される場合、意味することは、圧縮によって生成される熱は、圧縮中に認めうるほどに空気の温度を上昇させることなく消散し、および周囲から吸い込まれる熱が、同様に空気が膨張中に認めうるほどに冷却しないようにし、この形態の電力蓄積が、良い効率を有することができるということである。
【0004】
CAESシステムは、また、化学バッテリよりも、より高い信頼性、より少ないメンテナンスおよびより長い動作寿命を有するように設計されることができ、および圧縮空気を蓄積する安価な手段が利用できるならば、それらのコストはバッテリに基づくシステムに匹敵することができる。残念なことに、スチールタンクのような、空気を蓄積する製造された圧力容器の高コスト、重量および大きいサイズは、CAES装置がそれらの通常の用途の全てでバッテリと競争するのを妨げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国仮出願番号第61/036587号
【特許文献2】米国特許商標庁公開番号第2006/0230930号
【特許文献3】米国特許番号第7,152,932号
【特許文献4】米国特許番号第6,820,441号
【特許文献5】米国特許商標庁公開番号第2008/023957 A1号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Russ.J.Chem. 81、246、2007
【非特許文献2】G.W.Miller,AIChE Symp. Ser.83, 28,1987
【非特許文献3】A.Hauer、「持続可能なエネルギー使用のための熱エネルギー蓄積」pp.409−27、NATO Sci.Ser.II:Math.,Phys. and Chem.,vol.234,H.O.Paksoy,ed.,Springer,2007
【非特許文献4】G.Storch,G.Reichenauer,F.SchefflerおよびA.Hauer、Adsorption 14,275,2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在までのところ、CAESが3つの商業目的のために使われてきた。第1のおよび最も広範囲にわたる用途はそれ自体ではエネルギー蓄積の手段としてではなく、商店および工場での圧縮空気工具および機械に動力を供給することである。圧縮空気工具は電気で動く工具より高い出力対重量比率を有し、および、この種の工具内の小型電気モータは空気圧縮機を駆動するより大きいモータと比較して効率が悪い傾向がある。圧縮空気は、バッファとして役立って、かつシステム内の圧力が一定のままであることを確実にするために十分に大きなタンク内に蓄積される。それらが圧縮熱を廃棄して、その急速な膨張中に空気を再加熱しない事実によって、これらのシステムの総合効率は制限される。この非効率性は通常10気圧未満の、適度の圧力を用いて限定され、それはまた、この種のCAESシステムの資本費用を減少させる。
【0008】
CAESの第2の用途は、例えばコンピュータデータセンタまたは病院において停電の場合には、必須の機械を動作させ続けるために一時的なバックアップ電力のためにある。そのような場合、床面積はプレミアムであり、比較的高いエネルギー密度を達成するために100気圧以上の圧力の使用を必要とするが、しかし、圧縮空気用の高圧スチール蓄積タンクのコストは、システムの高信頼性およびそれが停電の場合には直ちに供給することができる高出力によって正当化される。その後、ディーゼル発電機のようなより長期のバックアップシステムが、必要とあらばオンラインにもたらすことができる。同じ機能が電気化学的バッテリから得られることができるとはいえ、十分な出力を供給することができるバッテリシステムはまた、長期バックアップシステムがオンラインになるのを待つ間に必要になるであろうより、より多くのエネルギーを蓄積しなければならず、バッテリを比較的高価な解決策にするであろう。CAESシステムはさらに、より少ないメンテナンスを必要として、より長い寿命を有して、環境に有害な化学薬品に伴う処分費を有しない。他のこの種の短期のバックアップ電力解決策は超コンデンサおよびフライホイールを含むが、それは同様に比較的高価である。
【0009】
CAESが置かれた第3の商用利用は、公益会社によって電力を発電しておよび/または配電するコストを低下させることである。これは、いくつかの方法で実行されることができ、その最も一般的なものは、中央発電容量を強化することである。石炭および原子力発電のような大きい中央発電プラントは、ストップおよびスタートが高価であるが、一方、ガス燃料タービンのようなより小型のプラントは容易にオン/オフされるが、動作させるのに比較的高価である。それゆえに、大きいプラントからのエネルギーが、需用が低いときに蓄積され、かつ需用が高いときに電気を発電するのに用いられることができる場合、小さな先頭負荷プラントを設置して動作させる必要性を低下させられ、それによってまた、電気を発電する平均または「共通基準」コストを減少させる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一実施態様において、エネルギー蓄積装置が提示される。このエネルギー蓄積装置は、空気を吸着する多孔質材料および圧縮機を含む。圧縮機は機械エネルギーを圧縮空気および熱に変換し、および、圧縮空気は冷却されて、多孔質材料によって吸着される。このエネルギー蓄積装置はさらに、圧縮されて吸着された空気を蓄積するのに用いられるタンクおよびモータを含む。モータを駆動している間、空気が脱着して膨張するのを可能にすることによって圧縮されて吸着された空気として蓄積されるエネルギーを回収するように、モータが駆動される。
【0011】
本開示の別の実施態様において、別のエネルギー蓄積装置が提示される。このエネルギー蓄積装置は、適切な流動体が吸着された多孔質材料を含む。この装置はさらに、機械エネルギーを圧縮空気および熱に変換する圧縮機および障壁を含む。圧縮空気は、熱が障壁を通して流れることができることによって冷却され、熱は流動体が吸着された多孔質材料へ運ばれ、およびこの熱が多孔質材料の温度を上昇させ、流動体にそれから脱着させる。
【0012】
さらに別の実施態様において、別のエネルギー蓄積装置が提示される。このエネルギー蓄積装置は、空気を吸着する多孔質材料および熱を蓄積する熱エネルギー蓄積システムを含む。この装置は、機械エネルギーを圧縮空気および熱に変換する圧縮機を更に含む。圧縮空気は冷却されて、多孔質材料によって吸着され、および、多孔質材料および周囲の空気の温度は熱が圧縮されて吸着された空気が逃げるのを妨げる障壁を通して流れることができることによって制御される。熱は、熱エネルギーシステムに導かれて、そこで蓄積される。更に、この装置は圧縮されて吸着された空気を蓄積するタンクを含み、および、空気が脱着して膨張することができることによって、必要なときにそれが含むエネルギーが回収される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の例示的な一実施態様およびこの実施態様が基づく外挿された実験データが、図1ないし11に例示される。
【0014】
【図1】空気の主要な成分に対する吸着等温線をプロットする。
【図2】酸素圧力に対する窒素の比率が4.0の固定値を有するところでの、窒素圧対酸素分子の数に対する窒素の数の比率をプロットする。
【図3】吸着強化圧縮空気エネルギー蓄積実施態様内の質量およびエネルギー流の模式図であり、充填過程の前半中のこれらのフローを示す。
【図4】吸着強化圧縮空気エネルギー蓄積実施態様内の質量およびエネルギー流の模式図であり、充填過程の後半中のこれらのフローを示す。
【図5】吸着強化圧縮空気エネルギー蓄積実施態様内の質量およびエネルギー流の模式図であり、排出過程の前半中のこれらのフローを示す。
【図6】吸着強化圧縮空気エネルギー蓄積実施態様内の質量およびエネルギー流の模式図であり、排出過程の後半中のこれらのフローを示す。
【図7】吸着強化圧縮空気エネルギー蓄積実施態様が充填過程の前半中に動作する方法をより詳細に例示する工程系統図である。
【図8】吸着強化圧縮空気エネルギー蓄積実施態様が排出過程の後半中に動作する方法をより詳細に例示する工程系統図である。
【図9】温度制御チャンバ内の空気吸着シリンダの配列の三次元図面である。
【図10】それぞれ、充填過程の前半および排出過程の後半中に蓄積された熱を満たし、アップグレードするのに用いられる吸着ヒートポンプの三次元図面である。および
【図11】排出過程中に圧縮空気、吸着された空気および熱として蓄積されるエネルギーを回収するのに用いられるミキサー−エジェクタ空気タービンの三次元図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、多孔質材料内の吸着の物理的なプロセスのための2つの新奇な用途を提供し、その両方ともが、圧縮空気エネルギー蓄積(CAES)の経済的な側面を大いに改善する。更に本開示は、圧縮空気の形態でエネルギーを蓄積する、および、また、顕熱または潜熱の形態でエネルギーの一部を蓄積することができる装置に対して、いくつかの改良を提供する。
【0016】
中央発電容量のためのCAESの使用を費用効率が高いものにするために、圧縮空気は現在、製造されたタンク内によりむしろ天然帯水層のような地下地質学的リザーバまたは人工の枯渇したガスまたは油井内に蓄積される。この経済的な側面は、ガス燃焼タービンをターボで過給する圧縮空気を用いてさらに改善され、それによってタービンは空気それ自体を圧縮するエネルギーを使い果たさなければならないことをしないで済む。これによって、同時に天然ガスから付加エネルギーを生成すると共に、圧縮空気内に蓄積されるエネルギーが回収されることができる。ターボ過給のために必要な圧力が、50気圧くらいのオーダーの、かなり高いとはいえ、ターボで過給することによって、蓄積エネルギーが高出力レベルで供給されて、約70%の総合効率で回収されることができる。
【0017】
まだ商業的に展開されていない公益事業目的のためにCAESを使用することへの幾分異なるアプローチは、「先端断熱CAES」として公知である。AA−CAESでは、それが空気圧モータまたはタービンを動かすにつれて、圧縮中に空気から抽出される熱が蓄積されて、膨張中に空気を再加熱するのに用いられる。原則として、これによって熱として蓄積されるエネルギーと、圧縮空気として蓄積されるエネルギーの両方が回収されることができるので、AA−CAESの効率は概ね100%に接近することができる。実際問題として、圧縮熱を、特に高出力レベルで多大な損失を伴わずに蓄積して回収することは、困難である。全てのAA−CAESの提案された実施態様において現在までのところ、空気は再び高圧で地下リザーバ内に蓄積されるべきであり、および、熱は通常200℃をかなり超える温度で、潜在的な形態よりむしろ顕在的な形態で蓄積されるべきである。
【0018】
エネルギー蓄積は同様にいくつかの他の方法で電気公益事業の運転費を減少させる潜在力を有するが、どれもこれまでに普及にいたっていない。これらは、送電容量繰り延べおよび混雑軽減、さまざまな補助サービス、大量電力価格裁定取引およびエンドユーザレベルでの負荷移動または平準化を含む。しかしながら、将来、最も重要なこの種のサービスは再生可能な能力安定化でありそうである。風および太陽エネルギーのような再生可能なエネルギー源は間欠的な傾向があり、その結果、それらの能力はそのうち変化して、しばしば電気のための需用を満たすのに十分でない。エネルギーが、能力が需用を上回る時に蓄積され、かつ需用が能力を上回るときに電気を発電するために使われることができる場合、これらの再生可能なエネルギー源はずっと費用効率が高くなる。
【0019】
中央能力発電用の既存のCAESシステムの主要な欠点は、適切な地下リザーバが一般的でもなく移動可能でもないということである。どこでも組み立てられることができて、発電プラントのサイズに拡大・縮小されることができるモジュラーシステムは、費用効率が高いならば、中央発電容量ならびに再生可能な能力安定化に非常により役立つであろう。加えて、それが、サブステーションまたはエンドユーザにより近い、電力網上の精選された位置に安価な、自己内蔵型CAESシステムを供給することが可能な場合、CAESは前述した他の経費節減サービスのいくつかまたは全てを提供することができる。この種のCAESシステムが、現在費用効率が高くない主要な理由は、再び、圧縮空気用の製造された蓄積タンクの高コストである。留意する必要があるのは、第1次近似の限りでは、圧力を上昇させることによってタンクがより小さくされることができるが、その壁が比例してより厚くなる必要があり、および、逆もまた同じなので、タンクのコストが、空気が蓄積される圧力に無関係である、ということである。
【0020】
CAESシステムをより経済的にするための1つのアプローチは、それは多くの注目を受けなかったが、空気の圧縮および膨張が熱を1つの場所からもう一方に汲み出す安易な手段である事実を活用することである。これは、CAESシステムがエンドユーザに組み合わせられた暖房、冷房および電力を提供するために容易に開発されることができることを意味する。例えば、時刻電気価格設定が利用できる家庭または企業内に、この種のCAESシステムが設置された場合、それは電気が比較的安価である夜中に充電されることができ、それと共に同時に、建物に暖房を供給し、および、それが発電した電気が、ピーク昼間時間中に使われるかまたは電力網に売り戻され、それと共に空調もまた供給する。冬の間に冷房が必要でないときに、受動太陽熱収集器が水を加熱するのに用いられ、および、この熱水が膨張中に空気に対して熱を供給するのに用いられることができ、コストの適度の増加だけで動力出力を非常に増大させる。この種のシステムの経済的な側面は、公益事業料金、優勢な気候およびもちろん空気蓄積タンクのコストを含む多くの要因に依存するであろう。
【0021】
ガス、および、熱の蓄積が活性炭、シリカゲルまたはゼオライトのような適切な多孔質材料での吸着によって達成されることができることは十分に公知である。吸着位相が遊離ガスより非常に高密度であるので、ガスはこの種の材料の存在下でより容易に蓄積され、したがって所定の圧力でガスの所定の質量を蓄積するのに必要なタンクの容積または同等に、所定の容積で必要な圧力を減少させる。加えて、脱着のプロセスが熱を消費するので、熱が吸着材料を使用して潜在的な形態で蓄積されることができることは、周知である。熱は、被吸着剤(例えば水蒸気)が吸着剤によって再吸着されることができることによってその後再生されることができる。加えて、脱着された蒸気の凝縮の際に放出される熱は、顕在的な形態で蓄積されることができて、および、凝縮液の蒸発を促進するためにそれを用いて、そして次に、得られる蒸気が再吸着することができるようにすることによって回収されることができる。この種の装置は、一般に吸着冷凍機またはヒートポンプとして公知である。それにもかかわらず、CAESシステムをより高価でなく、より効率的にまたは移動可能に、組み合わせられた熱および電力の用途によりよく適しているように、および/または展開するのにより安全にする、これらの方法のいずれかで吸着のプロセスを用いる何の試みも、なされていなかった。
【0022】
本発明は、4つの相互関係のある方法で圧縮空気エネルギー蓄積の経済的な側面を改善する。第一は、圧縮空気の形で所定の量のエネルギーを蓄積するために必要な容器内の圧力および/またはその容積を減少させるために空気用の吸着剤の使用である。第二は、AA−CAESをより経済的にするために圧縮熱を蓄積する手段として、おそらく、それによって生じる蒸気の凝縮の際に放出される低品位顕熱の蓄積と組み合わせられる、水またはなんらかの他の適切な流動体の脱着である。第三は、おそらく、それが膨張するにつれて、吸着材料および/または圧縮空気の温度を上昇させる、圧縮熱とともに空気の吸着によって生成される熱を蓄積して、それを用いて後の時間でこのエネルギーを回収することである。第四は、CAES用の新しい熱力学のサイクルであり、圧縮空気の温度が蓄積された空気の圧力を充填/排出サイクルにわたっておよそ一定に保つために変化させられる。上述のように、空気用の吸着剤が活用されるときに、この「温度−振幅」サイクルは特に有利であり、およびそれはまた、圧縮熱および/または吸着熱が、例えば水またはなんらかの他の適切な流動体のための吸着剤を用いて、以降の使用のために蓄積される場合に適用可能である。吸着に基づくガス分離プロセスでの温度−振幅サイクルの使用は、定着している(例えば
【特許文献6】を参照のこと)。
【0023】
エネルギーが空気以外のガスを圧縮することによって蓄積されることができること、および、このプロセスを強化するために、吸着材料を活用する回生制動システムが提案されたこと((特許文献3))に留意する必要がある。これは、他のガスがより圧縮可能であるうえに空気より一般の吸着剤によってより強く取られることができる利点を有し、作動流体として空気を使用するときになされることができるより、エネルギーがより高密度に蓄積されることを可能にする。この種のシステムとここで考慮中のものとの間の主要な相違は、空気以外の任意の流動体の使用が、流動体が再循環されて、再利用されることができるクローズドシステムを必要とするということである。対照的に、空気は自由に周囲環境から取り出されることができて、環境影響力なしで再び放出されることができる。これは、エンドユーザ、電力サブステーションまたは発電プラントレベルで大規模なエネルギー蓄積のためにずっと経済的な開放型システムに至る。本発明は、大規模な、静止エネルギー蓄積用途での空気用の吸着剤の使用、空気の圧縮熱および/または吸着熱を蓄積する手段としての水またはなんらかの他の適切な流動体の脱着、および温度−振幅サイクルを使用するCAESシステムだけを考慮する。これらのプロセスのいずれも、回生制動のような小規模の、可搬式の用途に適していない。
【0024】
空気の窒素および酸素成分を若干の程度に吸着する数種類の多孔質材料が公知であるとはいえ、本発明の吸着強化CAES実施態様はこのためにゼオライト材料を活用する。適度の圧力および周囲温度で、ゼオライトは酸素より強く窒素を吸着し、したがって、産業および医療目的のために空気の酸素および窒素成分を分離するために、広範囲に活用されてきた。それにもかかわらず、CAESに関連する比較的高い圧力でのゼオライトまたは他の多孔質材料への空気の吸着の詳細な研究はほとんどなかった。特に、ゼオライト内の空気が液化する温度−圧力境界はいかなる詳細にも調査されなかった。毛管凝縮とも呼ばれている、このプロセスは、吸着剤ガスの臨界点、または空気の場合約−140°Cを十分超える温度では通常観測されない。この種の低温は、費用効率が高い吸着強化CAES装置で達成するのが困難であろう。
【0025】
毛管凝縮が非常により高い温度で生じる、新しい多孔質材料が発見されるかまたは開発されることができたならば、おそらく全ての空気用の現在周知の吸着剤におけるような物理吸着よりむしろ化学吸着のプロセスを通して、それは、本発明における多孔質材料の第1の新しい使用法を大いに強化することができる。この種の装置の動作は、毛管凝縮に伴う遅い運動力学およびヒステリシスによって幾分複雑になるであろうが、しかし、得られるAE−CAESシステムは非常により高いエネルギー密度を有するであろうし、必要な材料の量もまた、蓄積される単位エネルギーあたりコストの対応する減少によって大いに減少させられるであろう。この目的に適していると証明されることができる現在開発中の多孔質材料のクラスは、メソ多孔性有機シリカおよび金属有機フレームワークを含む。
【0026】
したがって、本開示によって提供される多孔質材料の吸着の新しい使用法は、所定の圧力および温度で所定の質量の空気を蓄積するために必要なタンクの容積を減少させるか、または、代わりとして所定の容積内におよび所定の温度で所定の質量の空気を蓄積するために必要な圧力を減少させることによって、タンクの壁の厚さまたはそれが作られる材料の強度を減少させる、手段としてある。これらの2つの代案のいずれもが、適切な多孔質材料を、圧縮空気を保持する圧力チャンバに入れることによって達成されることができ、ここで「適切な」によって意味するのは、この多孔質材料が、材料自体がチャンバ内に圧縮空気の温度および圧力で占めるより、より大きな体積の空気を吸着する、ということである。この種の多孔質材料は、適切な値で固定する温度および圧力と平衡状態で、吸着された状態の空気分子が、それらのまわりのガス状の空気内のそれらより大いに減少した流動度および非常により高い密度を有するという、事実のおかげで存在する。
【0027】
同様に、多孔質材料の吸着の別の新しい使用法が、空気を圧縮するプロセスによって生成される熱および/または上記の第1の新しい使用法に記載の空気の吸着のプロセスによって生成される熱を蓄積する手段としてある。この第2の新しい使用法は、水またはなんらかの他の適切な流動体が吸着される多孔質材料を空気圧縮機および/または圧力チャンバと熱的に接触するがその外側に、配置することによって達成される。第2の新しい使用法の多孔質材料は、第1の新しい使用法のそれと同じ種類の材料である必要はない。熱は、この多孔質材料の温度を上昇させて、そのようにそれからの水または他の流動体の脱着を促進する。分子レベルで、このプロセスは運動エネルギーを位置エネルギーに変換し、それは次いで、脱着によって生成される蒸気を、多孔質材料と接触して戻って、再吸着されることから妨げることによって無期限に蓄積されることができる。これは、熱が潜在的な形態で蓄積されたと言うことによって記述されることができる。圧縮空気からの第2の新しい使用法の多孔質材料への熱の移動は、圧縮空気の温度を低下させ、それによってまた、更にそれを圧縮するために必要な仕事、同じくそれが蓄積されるタンクのサイズまたは強度を減少させる。同様に、それから吸着熱を伝導する際に付随する第1の新しい使用法の多孔質材料の冷却は、それが任意の所定の圧力で吸着する空気の量を増大する。
【0028】
蓄積された潜熱を顕在的な形態で回収するために、必要なときに、流動体の脱着によって生成される蒸気が再吸着に利用できなければならない。残念なことに、蒸気によって占められる大きい容積はその形態で蓄積することを困難にし、および、それを圧縮するかまたは凝縮することは顕熱の形態でより小さいがなお有意な量のエネルギーを放出する。この顕熱を蓄積して、その後この熱を収穫して、そのように蒸気を再生させるために蒸気の膨張または液体の蒸発のプロセスを使用することは、それにもかかわらず可能である。顕在的な形態で直接空気の圧縮および/または吸着によって生成される熱を蓄積する代わりに、こうする利点は、前者の場合、顕熱が損失に対してより容易に断熱されることができるより低い温度で、材料内に含まれるという事実に存在する。この種の低品位熱が通常獲得する、すなわち、それが必要であるところに伝達する、のが困難であるとはいえ、膨張または蒸発のプロセスは、別の方法でなされることができるよりずっと迅速にかつ能率的に、この材料を冷凍してそのように熱をそれから汲み出す役目をする。これはまた、原則として、冷却剤として圧縮空気を用いて直接実行されることができるが、しかし、固体または液体材料から大量の低品位熱を膨張する空気に伝導すること、および、同時に、生成される機械エネルギーを収集することは、困難である。低品位熱を、急速な膨張を容易にしておよび/または空気の脱着を促進するために必要な高品位熱に変換するのにエネルギーを必要とする。
【0029】
必要とされる蒸気が得られる方法に関係なく、潜熱は、圧縮されたおよび/または吸着された空気として蓄積されるエネルギーとともに、空気圧モータまたはタービンと熱的に接触するように第2の新しい使用法の多孔質材料を配置して、同時に、水または他の流体蒸気がそれに再吸着することができるようにすることによって機械的形態で、回収されることができる。水または他の流動体が再吸着するにつれて生成される顕熱が伝導されるか、またはさもなければ、それが空気圧モータまたはタービン内に膨張するにつれて、圧縮空気へ伝達され、それがより役立つ仕事をするように、その温度および圧力を上昇させる。同時に、熱のこの伝達は第2の新しい使用法の多孔質材料を冷却して、そのように更に水またはなんらかの他の適切な流動体のそれへの自然発生的な再吸着を促進する。同様に、この多孔質材料からの第1の新しい使用法の多孔質材料への熱の伝達はチャンバ内の圧力でそれからの空気の脱着を促進し、および、この圧縮空気は次いで上述のような空気圧モータまたはタービン経由で機械エネルギーへ戻って変換されることができる。
【0030】
多孔質材料がこれらの2つの新しい使用法のどちらかのためのCAES装置に組み込まれるときに、得られるプロセスを吸着強化CAESまたはAE−CAESと、およびエネルギー蓄積装置自体をAE−CAES装置またはAE−CAESシステムと称する。
【0031】
本発明は、ガスの混合を分離する手段として広く使用されている、温度−振幅吸着の工業プロセスのための新しい使用法を更に提供する。多孔質材料が吸着の物理的なプロセスの第1の新しい使用法に対してCAES装置に組み込まれたのであるにせよ、この新しい使用法は実際に適用可能である。このプロセスにおいて、空気のおよび空気が吸着される多孔質材料の温度は、この装置が第1の新しい使用法のための多孔質材料を組み込む場合、エネルギーによってCAES装置を充填するときに、低下され、およびそれを排出する時再び上昇させられ、その間中、圧縮空気の圧力をその中でおよそ一定に保つ速度で圧力チャンバ内に空気をポンピングするかまたはそれから空気が逃げるのを可能にする。
【0032】
一定の空気圧は任意のCAES装置の構造および作動を単純化するが、しかし、本発明の目的にとってより重要なのは、温度−振幅プロセスが、第1の新しい使用法におけるように、任意の所定の量の多孔質材料によって蓄積されて放出される空気の量を増大する便利な手段であるという事実である。大部分の周知の多孔質材料によって吸着されるガスの量が、その温度が上昇させられるにつれて減少し、および、逆もまた同じなので、それはこれをする。従って、AE−CAES装置がその充填状態にある時達成される最低温度が、多孔質材料が装置の作動圧力で空気によって主として飽和されるのを確実にするのに十分に低く、一方、AE−CAES装置がその排出された状態にある時達成される最高温度が、空気の大部分が装置の作動圧力で材料から脱着されることを確実にするのに十分に高いならば、その時、少なくとも、大気中より低い圧力へ行く高価なおよびエネルギーを消費する間に合わせの方法なしで、圧力−振幅サイクルが活用された場合より、第1の新しい使用法の選択された多孔質材料からより大きな恩恵を得るであろう、ということになる。これは、一定温度を伴う、または排出された状態でのその最低温度および充填状態でその最大値に到達する圧力−振幅サイクルの自然発生的な温度変化を伴う、圧力−振幅サイクルを含む。
【0033】
それがAE−CAESで提供する恩恵によって、この温度−振幅サイクルが動機を与えられたとはいえ、これまで実践になる全てのCAES装置によって使われた圧力−振幅サイクルにわたって、それはその利点を有する。これを示すために、次に空気用の吸着剤の不在における温度−振幅CAESによって達成されることができる最大エネルギー密度を見積もる。更に、温度振幅を実現するために圧縮空気から取り出される圧縮熱または付加熱が蓄積される方法を特定しないが、しかし、簡単さのために、それが完全に蓄積されて、システムの全体的な容積に対して無視してよい追加だけで完全に回収されたと仮定する。同様に、エネルギー密度に関して最も単純な可能な上限を推定する意図に従って、圧縮機、空気圧モータまたはタービンおよび全ての残りの外部機器によって必要とされる容積を無視する。CAES装置はそれで、以下のパラメータによって特徴づけられることができる:
・ Vsys:システム内の空気の体積。
・ Psys:その温度を制御することによってシステム内に空気を維持する圧力。
・ Tdis:それがその排出された(最小限のエネルギー)状態にあるシステム内の空気の温度。
・ Tchg:それがその充填状態にあるシステム内の空気の温度(Tchg<Tdis)。
・ Patm:排出される間にシステムが仕事をするのに対する圧力(ここでは100,000パスカル、およそ1気圧であるとする)。
【0034】
更にndisおよびnchgをその排出および充填状態でのシステム内の空気のモル数(すなわち空気分子のアボガドロ定数の倍数)とし、Vatmを、システムを充填するために必要とされる圧力Patmでの空気の体積とし、および、VをPatmでの空気のモル比容(=Patm=100,000バールおよび300Kで24.8リットル)とする。理想的な気体法則およびモル比容の定義は、それでこれらの変数の間で以下の関係を持つことを意味する:
syssys=ndisRTdis
syssys=nchgRTchg
atm=(nchg−ndis)V
(ここでR=8.314472J/(モルK)は、ケルビンあたり(モルあたりジュール)の単位の理想的なガス定数)。3番目からndisおよびnchgを除去するのにこれらの式の最初の二つを使用して、以下を得る:
atm=Psyssys(1/Tchg−1/Tdis)V/R
最後に、充填中にシステムに実行される「注入」作業は、:
sys=(Psys−Patm)Vatm
共に、これらの最後の2つの式はエネルギー密度が充填状態と排出状態の間の逆絶対温度の差と比例しており、および、それがその作動圧力Psysによって二次に増大することを示す。Psys=10xPatm、Tchg=300KおよびTdis=500Kの特定の場合に対して、以下を得る:
atm=3.975xVsys[M=立方メートル]
sys=3.578xVsys[MJ=メガジュール]
これは、994ワット時/M(立方メートルあたりワット時)を導き出し、Psys=20xPatm、Tchg=300KおよびTdis=500Kに対する対応する数値は、4196ワット時/Mで、作動圧力Psysに関しておよそ二次依存と一致する。空気が特に圧縮される時正確に理想気体のようにふるまわない事実は、全てのこれらの数が概算だけであることを意味するが、この二次スケーリング関係は、実際問題としてそれでもやはり保つ。
【0035】
対照的に、完全な熱回収によって一定温度で通常の圧力−振幅サイクルに基づく先端断熱CAESに対するエネルギー密度は:
sys=((Psys/Patmγ−1−1)Patmatm/(γ−1)
(ここでγ=1.4は空気の断熱指数である)。これは、Psys=10xPatmに対して1050WHr/MおよびPsys=20xPatmに対して3214WHr/Mを得るが、それは、より高い圧力で温度−振幅CAESによって得られる作動圧力に関する二次依存がエネルギー密度に関して圧力−振幅CAESを凌ぐ潜在力をそれに与えることを示す。
【0036】
上で与えられる吸着の物理的なプロセスの2つの新しい使用法の各々に対して、種々の多孔質材料が利用でき、それによって本発明の役立つ実施態様が構成されることができる。次に詳述する1つのAE−CAES実施態様において、第1の新しい使用法がNaXとして公知のゼオライトによって実現される。これはナトリウムイオンを含む広く入手可能なホージャサイト型ゼオライトであり、それは13Xの市販名の下で一般に販売されている。
【0037】
乾燥空気は、モル分率で約78%窒素、21%酸素および1%アルゴンである。ほとんどの自然におよび/または商業的に入手可能なゼオライトの様に、NaXは酸素またはアルゴンより強く窒素を吸着する、すなわち、モルベースで、所定の圧力および温度でこれらの純粋なガスの下に配置されるときに、それは、−−酸素または窒素の不純物を取り除く目的で通常考慮される少なくとも比較的低い圧力で、酸素またはアルゴンより多くの窒素を吸着する。さらに、酸素およびアルゴンは主としてNaX細孔壁上の化学的に同一の場所で吸着されて、更に類似した吸着等温線を有し、一方、窒素は主として酸素およびアルゴンのそれらと重複しない異なった場所で吸着される。これらの事実のため、あたかもそれが、1つのAE−CAES実施態様が例証することを目的とする原理を無効にするのに十分に大きいいかなる過誤もなすことなく、以下で酸素であるかのように、空気のアルゴン割合を処理することによって分析を単純化することができる。さらに、E.A.Ustinovによって発表された実験データ((非特許文献1))と共に上記の観察は、吸着される窒素の量が吸着される酸素(およびアルゴン)の量に無関係であり、および、逆もまた同じであるとみなすことができることを示している。
【0038】
NaXへの窒素、酸素(およびアルゴン)吸着に対する完全な等温線が、約4気圧までの圧力で、および、−70℃と50℃との間の4つの広く分離された温度で測定された((非特許文献2)を参照)。これらのデータをフィッティングさせることによって定まる、SipsおよびLangmuir等温線式のパラメータの値は、またその論文((非特許文献2))内に与えられており、これらの測定値をより高い圧力に外挿するのに用いられることができる。
【0039】
図1は、4つの異なる温度で、および、最高20気圧の圧力で、NaXまたは13Xとして広く公知の市販のゼオライトによる空気の主要な成分、すなわち、窒素および酸素に対する吸着等温線をプロットする。Sips等温線公式から得られる窒素に対する等温線が、実線でプロットされ、一方、酸素に対するものがLangmuir等温線、Sipsの特例、から得られて、破線でプロットされる。示されるプロットは、したがって、Millerのデータを費用効率が高い吸着強化圧縮空気エネルギー蓄積装置のために必要とされるより高い圧力に外挿する。
【0040】
図2は、図1に記載の同じ4つの温度で圧力に対して、NaXに吸着される酸素分子の数に対する窒素分子の数の比率をプロットし、ここでプロット上の各ポイントの酸素の圧力は窒素のそれの25%であり、したがって、窒素圧の125%での空気内の酸素分圧にほぼ等しい。これらの比率は、図1内に示される外挿された等温線を使用して算出される。破線の水平線はこの比率が値4.0を有するところを示し、それで、吸着される比率は空気内の窒素および酸素の分圧の比率にほぼ等しい。破線の垂直線によって示唆される−40℃の温度の対応する圧力は、−40℃の最低温度による温度−振幅サイクルに基づく吸着強化圧縮空気エネルギー蓄積の一実施態様に対する合理的に費用効率が高い窒素分圧であると期待される。これは、より高い圧力またはより低い温度へ行くことが、より低い圧力およびより高い温度で達成されるより、より低い速度で吸着される空気の量を増大するであろうからであり、そのため、NaX吸着剤の使用から得られる費用と便益の比率はより有利にならないであろう。
【0041】
図3ないし8は、全部のAE−CAES(吸着強化圧縮空気エネルギー蓄積)実施態様の模式図を示す。これらの図は周知の工程系統図の図解版および、エンジニアリングコミュニティによって広く使われている、化学製品および材料処理システムの一般の機械、流体および電気構成部品に対する関連シンボルである。工程系統図は特定の設計のための青写真を意図せず、むしろ化学製品および材料処理の当業者がこの種の標準部品を使用して特定のプロセスを再生することができるシステムを設計するのを可能にするためである。この図はしたがって、CAESシステムが、特定の装置または設計よりむしろ多孔質材料での吸着を使用して強化されることができるプロセスを提供する、本発明を記述する適切な手段を提供する。使用される構成部品が完全に標準でない実施態様のそれらの部分では、より詳細な図面が与えられ、および、これらは図9ないし11内に拡大されている。
【0042】
図3ないし6は、その充填−排出サイクル内の4ポイントでAE−CAESシステムの例示的な一実施態様を通して主質量およびエネルギー束の高レベル図を与える。図3は、充填過程の開始でのこれらの束を示し、その時加圧されたNaXベッド1は100℃に近く、したがって、それに吸着される最小限の量の空気を有し、、一方、加圧されないNaXベッド41が主として水で飽和される。図4は、どのようにこの束が充填過程のおよそ途中で変更されるかについて示し、その時加圧されたNaXベッド1の温度は、優勢な周囲温度まで落ち、および加圧されないNaXベッド41はその水の大部分を失う。図5は、排出過程の開始での束を示し、その時加圧されたNaXベッド1は−40℃で、したがって、それに吸着される最大限の量の空気を有し、一方加圧されないNaXベッド41はまだ熱くて乾燥している。図6は、どのようにこれらの束が排出過程のおよそ途中で変更されるかについて示し、その時加圧されたNaXベッド1の温度は、周囲温度に接近しており、および水蒸気が次に完全な排出のために必要とされる熱を生成するために加圧されないNaXベッド41に運び込まれている。
【0043】
図7は、エネルギーで充填される過程の開始での、1つのAE−CAES実施態様(図3参照)のより詳細な図を示し、その時吸着ヒートポンプの加圧されないNaXベッド41は、吸着水を排除するために加熱されている。図8は、排出過程の途中のポイントに続く同じ実施態様(図6参照)を示し、その時水蒸気は、完全な排出のために必要とされる高温を生成するために加圧されないNaXベッド41を通過している。図9は圧縮空気蓄積モジュールの切欠拡大を示し、それは、温度を制御するのに用いられる凝縮/蒸発チャンバ4内で、ゼオライトペレット1を詰められたシリンダ2を含む。図10は、空気の圧縮および吸着によって生成される熱を蓄積するのに使用されるゼオライトベッド41を含む吸着ヒートポンプ40の拡大を示し、充填中それから水蒸気を運び出す大気が、最高効率のために、排出中に水蒸気をそれに運び込む、空気のフローをおよそ逆転させる、のを確実にするのに用いられるバッフル42を含む。図11は、排出過程中に圧力として、および、熱として蓄積されるエネルギーの両方を機械エネルギーに戻って効率的に変換するのに用いられる、53、54および55とラベルをつけられる構成部品を含む、ミキサー/エジェクタ空気タービンの拡大を示す。
【0044】
図1内にグラフで示される外挿と共に、上記の前提条件は、−40℃および10気圧で、吸着される酸素に対する窒素の量の比率は約4であることを意味する(図2)。これがまた、およそ空気内の酸素に対する窒素の分圧の比率であり、および、NaXが主としてこの温度および8気圧で窒素によって飽和されるので、吸着される空気の量はより高い圧力またはより低い温度で大いに増大するはずではない。1つのAE−CAES実施態様は、したがって、10気圧の作動圧力および装置がエネルギーで完全に充填される時得られる−40℃の最低温度を活用する。
【0045】
同様に、図1内に示される近似および外挿は、10気圧および24℃で、−40℃で吸着された窒素の約34.5%および74.5%酸素が脱着され、一方50℃ではこれらのパーセンテージがそれぞれ53.5%および82.5%である、ことを意味する。したがって、10気圧で100℃まで上がる場合、窒素および基本的に酸素の全ての少なくとも75%が脱着される。これは次に、−40℃で吸着された全空気の少なくとも80%が、100℃で脱着されることを意味する。100℃を越えることは装置をより複雑で高価にするであろうので、1つのAE−CAES実施態様は、装置が完全に排出されるときに達成される、100℃の最高温度を活用し、ちょうど論じられたように、それは1つのAE−CAES実施態様での少なくとも80%の負荷サイクルを意味する。
【0046】
−40℃および10気圧の乾燥空気の下で、近似化および外挿された等温線は、NaXが、無水結晶NaXのキログラムあたり、それぞれ4.24および1.14のモルの窒素および酸素を吸着することを更に示唆する。24.8リットルの周囲空気に対するモル比容および1.53Kgr/L(Kgr/L=キログラム/リットル)の結晶NaXに対する密度によって、これは約204Lの周囲空気がこれらの条件の下でNaXのリットルあたり吸着されることを意味する。これは、−40℃および1気圧で、約160Lの空気またはこの温度および10気圧で、空気で16.0Lである。
【0047】
微結晶粉末で作用するよりはむしろ、しかしながら、また、ベッドを通しての急速な熱伝導を可能にする熱的に伝導性の結合剤を用いて、NaXを、空気が装置で使用されるゼオライトベッドを通して容易に流れることができるペレットに形成する必要がある。一般的に、これらのペレットは結合剤の約20容量%であって、約80容量%の密度で詰められることができ、従って、NaXペレットのリットルあたり約0.8x16.0=10.25Lまでこの作動圧力および最低温度で吸着される空気の容積を減少させる。20%ボイド率を考慮に入れて、平衡状態で、NaXペレットのベッドを詰められて、−40℃および10気圧で空気を満たされたタンク内の空気の全量は、したがって、同じ温度および圧力で同じタンク内に蓄積されることができる量の10.45倍である。上で保守的に見積もられた80%負荷サイクルと共に、これは1つのAE−CAES実施態様の作動圧力および最低温度で蓄積することができて、所定の量の空気を放出することができるタンクを作るために必要な構造材料の量の、8.35倍の減少を与える。
【0048】
NaXが空気を吸着するのに用いられるときに、蓄積される単位エネルギーあたりコストの改善は、しかしながらかなり大きい。上記の計算は完全に充填されたときに、1つのAE−CAES実施態様でNaXペレットベッドの各立方メートルが約133立方メートルの周囲空気を蓄積することを示す。温度−振幅サイクルの以前の分析において、装置を動作させる間、熱を完全に蓄積して、回収することを実行したように想定して、しかし、80%負荷サイクルを再び想定すると、この多量の空気を10気圧に圧縮するために必要な注入仕事は、ベッドの各立方メートルで94.8MJ/Mまたは26.6キロワット時になる。以前に、27℃と227℃の温度との間で、10気圧で動作させる100%効率温度−振幅CAESが立方メートルあたり994ワット時のエネルギー密度を達成することを見いだし、および、類似した計算が−40℃と100℃との間で同じ圧力で動作させられるときに、それが立方メートルあたり1201ワット時を得ることを示す。これらの数は、次に大気圧から10気圧まで100%効率等温圧力−振幅AA−CAESによって達成されるであろうことに匹敵する。1つのAE−CAES実施態様でのゼオライトペレットベッドの体積エネルギー密度は、実際典型的鉛蓄電池のそれの約半分である。このエネルギーが実際問題として回収されることができる効率が、以下で論じられる。
【0049】
吸着材料の使用が、それがそれ自体でタンクのコストを減少させるより、3倍をこえて蓄積される単位エネルギーあたりコストを改善する理由は、排出中に吸着剤の温度を上昇させることによって、同じ量の空気が単により大きなタンク内に蓄積され、およびその温度が存在する何の吸着剤もなしで同じ量だけ上昇させられた場合におけるであろうよりも、非常により大きい割合の放出されるべき空気が生じるからである。実際に、同じ温度範囲にわたって、および、同じ圧力で、しかし、存在する何の吸着剤もなしで、動作させられる温度−振幅CAES装置に対する負荷サイクルは、1つのAE−CAES実施態様に対して上で保守的に見積もった80%の代わりにわずか32.5%だけである。一旦NaXによって吸着される空気の量の詳細な測定が経済的に実行可能な温度および圧力の全範囲にわたってなされると、装置の費用と便益の比率が完全に最適化されることができるので、蓄積される単位エネルギーあたりコストがかなり更に改善されることがありそうである。
【0050】
1つのAE−CAES実施態様の残りを論ずるために進む前に、NaXベッドへの空気の吸着によって放出される熱、同じく140℃だけその温度を単に低下させるためにそれから取り出されなければならない熱量を見積もる。Miller(上記引用文中に)は一実施態様で活用されるさまざまな負荷にわたってNaXへの窒素の吸着熱が18.87KJ/(モルK)であり、その一方で、酸素のそれが約13.09KJ/(モルK)であると見積もった。従って4.24モルの窒素および1.14モルの酸素を吸着することで放出されるエネルギーが94.9KJ(KJ=キロジュール)であることになる。NaXペレットの充填床の使用による減少を考慮に入れて、および前の通り80%負荷サイクルを想定して、これは約48.6MJ(メガ−ジュール)または13.5キロワット時/M(立方メートルあたりキロワット時)になる。これは、立方メートルあたり蓄積されて回収されることができるエネルギー量の約半分であり、および(これから見ていくように)空気を圧縮することによって生成される熱をかなり上回る。E.A.Ustinov(上記引用文中に)がわずかにより低いNaXへの酸素吸着熱、更にはいくつかが10気圧で窒素のそれで落ちることを見いだしたとはいえ、吸着熱のほとんどが、AE−CAESの任意の合理的な効率的な実施態様において蓄積され回収されなければならないことは明らかである。
【0051】
吸着熱は、しかしながら、140℃温度振幅にわたって、NaXベッド自体を冷却して再加熱するために必要な顕熱よりかなり少ない。ベッドの比熱容量は、ペレットが用意される方法によって、および、ある程度は温度によって変化するがしかし、一般的に1KJ/(KgrK)のオーダーであり、それはペレットの充填密度に関する上記の前提条件と共に、約1MJ/(MK)の体積熱容量を意味する。これに140を掛けて、キロワット時に変換すると38.9を与え、それは、立方メートルあたり蓄積されて回収されるべきエネルギーより約50%大きい。幸いにも、これから見ていくように、周囲温度から100℃までNaXベッドの温度を上昇させるために必要な比較的高品位の熱は容易に回収され、および、一旦空気が圧力チャンバから取り除かれ、および、それに導くバルブが閉じられるならば、もちろん温度を高く保つ必要はない。同様に、ベッドの温度を周囲温度から−40℃まで下げるために取り除かれなければならない比較的低品位の熱は、装置を排出する間、その熱が容易に周囲環境から得られることができるので、蓄積されて、回収される必要はない。次に上記のタスクの全てを達成するために1つのAE−CAES実施態様内に使用される機構に目を向ける。
【0052】
次に図7および8内に示される模式図を参照して、最初に図を2つに切る空白によって分割される平行した破線が、この装置の縮尺が幾分任意であることを示唆するはずであり、それがその場所に運ばれて、活用される方法によって、主として実際には決定されると指摘する。単に考察のために、しかしながら、以降で、モジュールあたり蓄積されるエネルギー量として、しばしば1メガワット時を使用する。これは、約40MのNaXペレット(図内の水平垂直クロスハッチング)を必要とするであろうし、それはパッケージングおよび温度制御装置によって、およそ2つの標準67.5M輸送容器を満たすであろう圧縮空気蓄積システムに至るであろう。
【0053】
図9の図面内に見られるように、各シリンダのボトムの穴部からずっとシリンダの他端まで延びる穿孔された中空管3を、1つのAE−CAES実施態様のNaXゼオライトペレット1はシリンダ2内に詰められている。このAE−CAES装置を充填するときに、このチューブによって圧縮空気(図内の右上方へ傾斜するハッチング)がその全長を通してシリンダのボトムで通気孔から迅速に通過し、および、それを排出する時再び後退することができる。結果として、シリンダの長さは決定的でないが、しかし、それらの直径はシリンダ2の表面にNaXベッド1を通してチューブ3内の穴部から空気の急速な拡散を可能にし、同じく、空気が吸着されるにつれて、熱の急速な拡散が発生する、ように十分に小さくなければならない。
【0054】
主な理由は、1つのAE−CAES実施態様がCoca Cola(登録商標)のような飲料が一般に詰められるアルミニウム缶と同様であるがより長いシリンダを使用して、それらが大量生産されてしたがって低コストに利用できるからである。アルミニウムはスチールより高価であるが、より容易にこの種のシリンダに形成されて、より耐腐食性が高く、より高い熱伝導度を有する。但し、典型的アルミニウム缶のそれらよりわずかにより厚い壁が10気圧の圧力を封じ込めるために必要である。そのようなものとして、一実施態様のシリンダ2の直径は6.0センチメートルであり、一方、それらの中央の下の穿孔されたチューブ3は内径で0.5センチメートルを超えない必要があり、詰められたシリンダに構造上の支持を形成するためにスチールで作られる。空気および熱がシリンダの表面に到達するために拡散しなければならない距離は、したがって、約2.75センチメートルだけである。もちろん、NaXまたは他の多孔質材料のペレットのベッドを含有する圧力容器のためのシリンダの正確な寸法も、それらが作られる材料も、円筒形の形状さえも、本発明にとって必須ではない。
【0055】
シリンダ2は次に、適度の圧力に耐えることができて、1つのAE−CAES実施態様の温度振幅にわたって排出されることができる断熱された壁を備えたチャンバ4内に含まれる。このチャンバは熱伝達流体を含む役目をして、それは次にシリンダ2内部の圧縮空気およびNaXベッド1の温度を制御して、活用される温度−振幅サイクルをそのように実現するのに用いられる。シリンダ2がそれの中で配置されるチャンバの幾何学形状も方法も、決定的でないが、効率のためにパッキングはできる限り高密度にするとともに熱伝達流体がシリンダのまわりを自由に流れることができるようにすべきである。図9内に、直径1.25Mの温度制御チャンバが示され、それは、各々長さ1.0Mの108本のシリンダを含み、および、チャンバあたり合計約0.25MのNaXベッドに対して0.1M間隔で、そのポイントを正方形格子上に配列される。160個のこの種のチャンバが、1メガワット時のエネルギーを蓄積するために必要であろう。
【0056】
1つのAE−CAES実施態様において、壁を備えたチャンバ4へ/から熱を運ぶ流動体は、メタノールである。これは大気圧および−4O℃、温度−振幅サイクルにわたって到達される最低温度で液体であり、一方、それは大気圧および100℃、到達される最高温度でガスである。それはまた高気化熱、この温度範囲にわたって平均算出約36kJ/モルを有し、および、その正確な沸点は壁を備えたチャンバ4内の圧力を制御することによって−40℃と100℃との間の任意の値に設定されることができる。具体的には、1気圧の圧力でのメタノールの沸点は、64.7℃であり、および、その気化熱が圧力に依存しないと仮定する場合、その沸点が3.6気圧で100℃、および、231.5パスカル(1気圧の約0.2%)で−40℃であることを示すClausius−Clapyron式を用いることができる。これらの適度の温度および圧力によってチャンバの壁4が、なんらかの不可欠の断熱もまた与える、耐熱フェノール樹脂またはエポキシから形成される安価なガラス繊維複合材から作られることができる。もちろん、メタノール以外の流動体が熱を伝達するために活用される、および/または、その他の材料がチャンバの壁4に対して使われる、他の実施態様が可能である。
【0057】
1つのAE−CAES実施態様を充填するときに、液体メタノール(より濃い左下方へ傾斜するハッチング)が制御バルブ10を通して密閉して密封されおよび断熱されたタンク15から吸引されて、図7に示す壁4を備えたチャンバ4の最上部内のノズル8からプログラムされた速度で噴霧される。このメタノールの一部は、ノズルによって点在する通気孔9を通して蒸発して、チャンバを出て、一方、残っている液体メタノールは、その時チャンバ内の圧力に対するその沸点で、シリンダ2の側の下に流れて、および、それがそのようにするにつれてそれらから沸騰し、それによってそれらが含むNaXベッド1とともにそれらを冷やす。このプロセスによって生成される付加メタノール蒸気(より薄い左下方へ傾斜するハッチング)が上昇して、前の通り通気孔9を通してチャンバを出て、一方チャンバのボトムにまで達するいかなる液体メタノールもボトム内のドレイン6に、および、それから戻って再使用のための小さい密封保持タンク7に流れる。
【0058】
対照的に、1つのAE−CAES実施態様を排出するときに、バルブ10が閉じ、別の制御バルブ11が開けられ、および、蓄積タンク15内のメタノールがタンク内部で熱交換器16を通して熱水の通過(図内のより濃い斜めのクロスハッチング)によって加熱される。結果として生じるメタノール蒸気は、その最上部内の通気孔14を通してタンク15を出て、壁を備えたチャンバ4のボトムで穿孔されたチューブ5のネットワークに至るパイプを通して流れる。メタノール蒸気は次いで上昇して、シリンダ2の表面上で凝縮して、チャンバ内の優勢な圧力によって決定される温度でそれらにその気化熱を伝達する。これは次に、NaXベッド1の温度をその目標値の方へ上昇させ、一方、凝縮された液体メタノールがドレイン6を通して、および、保持タンク7内にチャンバから再び流れる。単純な容積型ポンプ12が次いで、図8に示す再使用のためのその時開いているバルブ13経由でタンク15にそれを返す。
【0059】
1つのAE−CAES実施態様を充填する間、壁を備えたチャンバ4内の圧力はメタノール蒸気が図7に示すバルブ18を通して通気孔9から流れる圧縮機19経由で減少させられる。それは、高圧力および温度で圧縮機19を出て、断熱されたタンク20内の熱交換器21に流れ込み、そこでそれが大気圧で水のストリームによって約100℃の温度に冷やされる。メタノール蒸気は次いで、減圧バルブ24を通過し、それによって、それが膨張し、更に冷却し、および、大規模に凝縮し、および、そこから再使用のための蓄積タンク15に開放バルブ17を通して戻ることができる。このようにして、NaXベッド1への空気の吸着によって生成される熱は、タンク20中を通過する水または蒸気(図内の斜めのクロスハッチング)へ伝達される。以下の技術的な考慮に従って経済的な根拠で主に決定される正確な選択によって、多くの種類の圧縮機が19に対して使われることができる。
【0060】
熱湯に対する効率的な熱伝導のために、圧縮されたメタノール蒸気は十分にそれより上の温度、例えば150℃を有しなければならない。1.3のメタノールに対する断熱指数によって、充填過程の初めに、メタノール蒸気が3.6気圧の圧力および100℃の温度で圧縮機19に入るときに、それが約1.7倍にまたは6.2気圧に圧力を増大することを必要とするだけのことになる。充填過程の後半に、しかしながら壁を備えたチャンバ4内の圧力および温度がそれぞれ、231.5パスカル、および、−40℃に落ちるにつれて、それは、ほぼ13.3倍にメタノール蒸気圧を増大することを必要とするであろうが、それでも0.03気圧だけである圧力に結びつく。この冷却システムの動作係数に関するカルノー限界は、壁を備えたチャンバ4内の温度が100℃である開始で無限であるが、しかし、それが−40℃に落ちる充填過程の終わりでわずか1.66である。また、充填中にNaXベッド1から取り除かれなければならない大量の顕熱に関する以前の考察に従って、一旦、NaXベッド温度が7℃に達すると起こる、理論的な動作係数が約3より下に落ちるならば、その後高温を生成するのに用いられることができる形態で、この熱または吸着によって放出されるより少しの熱量を蓄積しようとすることは、もはや有利でない。この問題は、ほどなく再び取り上げられる(図3および4参照)。
【0061】
熱が次にどこに行くかについて記述する前に、まず1つのAE−CAES実施態様を充填するときに空気が10気圧に圧縮され、および同時に、圧縮熱の多くがそれから取り除かれる、プロセスを考慮する。それらの高効率のために、このAE−CAES実施態様において、これは連合して2つの標準の遠心圧縮機26および28によってなされ、その各々が3.16(10の平方根)倍に空気の圧力を増大する。エアーフィルタおよびデシケータ25が、第1の圧縮機26に入る前に空気から粒状物質および水蒸気を取り除くのに用いられる。1.4の空気に対する断熱指数を使用して、それは各圧縮段階が周囲温度から始まって、1.39倍にまたは約141℃まで空気の絶対温度を増大することを示されることができる。20.77J/(モルK)の空気に対する一定の容積の熱容量によって、2つの段階にわたる圧縮熱は、したがって、10気圧に圧縮される周囲空気の立方メートルあたり54ワット時、または蓄積されるべき全エネルギーの21.6%である。
【0062】
空気は、それが2つの圧縮機26および28の各々を出るにつれて、冷却される。これは、それぞれ、圧縮機26および28の出口の向流熱交換器27および29を通して冷水のストリームを駆動するポンプ39を使用してなされる。このようにして、圧縮熱は水を予熱し、それは次に、パイプを通してノズル22に導かれ、そこで、充填過程の前半中に(図3を参照)、前述したように、それが圧縮されたメタノール蒸気によって沸騰する。充填過程後半に、すなわち、一旦メタノールヒートポンプの理論的な動作係数が3ほどより下に落ちるならば、メタノール蒸気が最大100℃まで上昇させられるように、圧縮機19の圧縮比が低下される。同時に、空気圧縮機26および28を通して流れる水の速度が、それがそれ程予熱されないように増大され、その時、水は沸騰されず、その代わりに単に加熱され、再循環されるという最終結果を伴う(図4に示す)。圧縮空気自体は、図7に示すNaXベッド1に開放バルブ30を通して導かれる。それの中に残っている残留圧縮熱は、その後NaXベッド1を冷却する間に取り除かれて、同様にタンク20を出る蒸気または水に終わる。この蒸気または水は、したがって、空気の圧縮の、および、吸着の熱の大部分、同じくそれらを冷却するためにNaXベッド1から取り除かれる顕熱を含む。
【0063】
充填過程の前半(図3)中に、タンク20を出る蒸気内に含まれる高品位熱が、その吸着剤−被吸着剤ペアとしてNaX−水を使用する吸着ヒートポンプを満たすのに用いられる。この開放型吸着システムは、ドイツ連邦共和国のAndreas Hauerによって最近実証されたものにならって作られ、ここで、それが夜にNaXから水を脱着して、暖房の需用がより大きい日中に、廃熱をアップグレードするために水蒸気の再吸着を使用することによって建物を暖めるコストを減少させるのに用いられた((非特許文献3)の第25章のセクション2を参照)。この開放型吸着ヒートポンプは単純に、前の通り耐熱ガラス繊維複合材から一実施態様で造られた断熱されたタンク40であり、それは空気を吸着するのに用いられるものに、形態において類似しているが、必ずしも同一でないNaXペレット41によって充填されている。
【0064】
したがって、1つのAE−CAES実施態様もまた本発明の多孔質材料のNaXゼオライトを吸着の第2の新しい使用法のために活用する。シリカゲルのような、多数の他の多孔質材料が利用でき、また、水または実際にその他の適切な流動体の吸着経由で熱を汲み出すのに用いられることができるとそれでもやはり強調しなければならない。空気−NaXペアの様に、被吸着剤が安価で環境的に良性であるので、ここで使用される水−NaX被吸着剤−吸着剤ペアが選択され、一方、吸着剤は、繰り返された使用によって品質低下の傾向がないことが良く分かっており(適切な結合剤がペレットのために使われる時、(非特許文献4)を参照)、および、商業的に入手可能である。水−NaXシステムの更なる利点が、NaXへの水蒸気の微分吸着熱が、水の蒸発熱のそれの近い値または44KJ/モルから、NaXに吸着される水量が30から0重量%まで落ちるにつれて、その値の約二倍に増大する事実に存在する。これは、熱をより高い温度にアップグレードする手段を供給することに加えて、排出中に水を蒸発させるために必要な熱を減らした後にさえ、ヒートポンプのNaXベッド41がまた、潜在的な(同じく顕在的な)形態で多大な熱量を蓄積することを意味する。NaXへの水蒸気の吸着熱がNaXへの空気の吸着熱より非常により大きいので、この吸着ヒートポンプのために必要とされるNaXの量は空気自体を吸着するのに必要なものの4分の1未満である。
【0065】
再び充填過程の前半(図3)中に、タンク20からの蒸気は、その最上部内の通気孔23を通して別の圧縮機31まで通過し、それは蒸気の圧力を2.8倍に、および水の断熱指数がまた、約1.3であるので、その温度を約200℃まで上昇させる。それは次いで、開放バルブ32経由で熱交換器36に移り、そこで、ファン37によって熱交換器の上に吹きつけられる大気の逆流ストリームによって、蒸気が冷やされ、その過程で空気を約150℃の温度まで加熱する。このヒートポンプに対する動作係数上のカルノー限界は7.5であり、それは充填過程の前半にわたるメタノール圧縮機19の平均動作係数と同等のはずである。圧縮機19および31によって必要とされるエネルギーはまた蓄積された熱として終わり、およびその後回収され、それによってシステム内の他の場所での損失を埋め合わせることができる点に留意する必要がある。ファン37を走らせるために必要なエネルギーは、比較的に多大でない。
【0066】
熱交換器36からの熱風は断熱されたタンク40に、および、NaXゼオライトペレット41の加圧されないベッドを通して流れ込み、それは初めにそれらに吸着される水のそれらの重さの約30%を有する(図10を参照)。熱風は、NaXペレット41の温度を上昇させ、この水に水蒸気の形態でそれらから脱着させて、このプロセスの中で空気を冷やす。この水蒸気は、NaX−ペレットを詰められたコンテナ40を通して空気によって運ばれて、約40℃の温度で湿り空気の形態でその他端から出る。NaXベッド41に入る空気を加熱するのに用いられる蒸気は、減圧バルブ38を通して熱交換器36から出て、そこで、それはさらに、水の標準沸点より十分下に冷却して、大規模に凝縮する。何の熱伝導も完了していないので、この水はまだ、熱交換器に入るそれが含んだ熱の一部を保持する。この顕熱内に含まれるエネルギーは、それが生じたリザーバ43の表面に水を戻すことによって蓄積される。
【0067】
同様に、NaXベッド41から出る暖かい湿り空気は、コンデンサ47上を通過しそれを通して水がポンプ44の作用を経て通過する。この水は、コンデンサ47を通してリザーバ43の冷たいボトムから、および、開放バルブ50を通して戻ってリザーバ43の暖かい表面に流れる。凝縮熱は、それによって同様にリザーバの表面水へ伝達される。効率の目的のために凝縮熱を使用する必要性はA.Hauerによって強調された(上記引用文中に)、および、リザーバ内にそれを蓄積するオプションもまた、より最近の特許((特許文献4))において請求された。凝縮水自体は鉢49内に集まり、および一旦1つのAE−CAES実施態様が完全に充填されるならば、廃棄されるかまたはリザーバ43に加えられることができる。
【0068】
対照的に、充填期間の後半(図4)中に、ファン37は停止され、および、コンテナ40はそれが含むNaXベッド41に、湿気が時期尚早に再吸着することができないように封止される。200℃の蒸気の代わりに、その沸点より十分に下の熱水が、直接にタンク20から、そこで、それは熱い圧縮されたメタノール蒸気から熱を拾い、その時受動的な圧縮機31をバイパスするその時開いているバルブ35を通して、および更なる冷却なしでリザーバ43の表面に流れる。このようにして、充填期間の後半中に、空気の圧縮および吸着によって生成される熱、同じくNaXベッド1内に残留する顕熱もまた、リザーバ43に終わる。この熱がその後どのように回収されるか、以下に記載する。
【0069】
一旦1つのAE−CAES実施態様が完全に充填されると、それに置かれる機械エネルギーの大部分がシリンダ2内でNaXペレットベッド1内に吸着された空気の形態で主として蓄積される。上記したように、このエネルギーの約21.6%がまた、主に貯水槽43内に熱として蓄積される。同時に、蓄積エネルギーの約二倍に等しい量のエネルギーが、熱の形でNaXベッド1から取り出され、その大半が空気の吸着によって生成される熱からのより小さい、しかし、多大な寄与を伴う顕熱であった。この熱の大部分は貯水槽43内に顕熱として同様に蓄積される。但し、顕著な量がまた、吸着ヒートポンプのNaXベッド41内に潜熱および顕熱の両方として蓄積される。
【0070】
バルブ30および56が圧縮されて吸着された空気を捕捉するために閉じるように保たれる限り、基本的に、この形態で蓄積されるエネルギーのいずれも排出の前に失われない。同様に、コンテナ40が湿気から封止するように保たれる限り、NaXベッド41内に潜熱として蓄積されるエネルギーのいずれも排出の前にそれから漏れない。上記のように、かなりより大きい熱量が貯水槽43内に顕熱として蓄積されるが、しかし、この熱が貯水槽から漏れる速度は、水と貯水槽の環境との間の温度差が大きくないので(寒天でさえ十分に100℃より下)、大きくない。別の、より直接でない形の損失が、壁を備えたチャンバ4に漏れる熱からあり、NaXベッド1の温度をその中で上昇させ、および、シリンダ2が耐えることが可能であるそれを越えて圧力が上昇しないようにいくらかの圧縮空気の放出を強制するであろう。再び、しかしながら、このAE−CAES実施態様はこれらの温度差を通常の周囲温度の上下約70°Cに対称的に置かれる最低および最高温度を用いて低く保つよう努める。この種の適度の温度勾配に対して、ポリウレタンフォームのような標準の低コストの断熱材が、1日以下の予想された蓄積期間にわたって受け入れられるレベルに、顕熱漏れによる損失の全てを抑えるはずである。
【0071】
1つのAE−CAES実施態様において蓄積される機械エネルギーを回収する時が来ると、リザーバの表面からの温水がバルブ50を閉じて、バルブ51を開けることによって熱交換器16を通して導かれる。同時に、ファン37が吸着ヒートポンプのNaXベッド41を通して周囲空気を吹きつけるのに用いられ、そこで、それが再吸着する多くの湿気を含まないので、それは潜熱の多くでなく顕熱をベッドから拾う。この熱のいくらかはそれが熱交換器16に続く出口で、熱交換器47を通して流れる水に伝達されるが、しかし、大部分の熱はなお高い温度で出口チャンバ48に空気とともに運ばれる。この温風は空気タービンにダクト52経由で導かれ、それは図7および8内に図式的に示唆されるように、出口チャンバ48内に邪魔板を再配置することによって、構成部品53、54および55を含む。それが、ほどなく記述されるように膨張する圧縮空気を冷却から遠ざけるためにそこで使われる。
【0072】
一方、熱交換器16を通して流れる温水は蓄積タンク15内のメタノールを沸騰させ、それは初めに1気圧の一部分の圧力未満である。得られたメタノール蒸気は、次いで、前述したように、空気が吸着されるNaXペレットベッド1を含むシリンダ2を加熱するのに用いられる。これは、メタノール蒸気が壁を備えたチャンバ4に入る速度を制御することによって制御される速度で、吸着された空気を圧縮空気に変換する。図8に示すように、それが構成部品53、54および55を備えた空気タービンにその時開いているバルブ56を通して脱着によって生成されるにつれて、この圧縮空気はまた、導かれる。排出過程のこの前半中の質量およびエネルギー束は、図5内に例示される。
【0073】
一旦蓄積エネルギーの約半分が回収され、および、加圧されたNaXベッド1の温度が周囲温度に接近していると、バルブ45はリザーバ43の表面から温水を、ベーパライザ46を通過させるために開けられ、それは熱交換器36を介してミストとしてそれを出す。同時に、リザーバ43からの温水が開放バルブ34経由で熱交換器36を通してポンプ39によって駆動されて、蒸発水がそれ周辺で空気を冷やさないようにするために、バルブ32、33および35を閉じることによって空気圧縮機26および28に着くことから妨げられる。このようにして、ファン37からの空気は加圧されないNaXベッド41に入る前に水蒸気で飽和して、それが加圧されないNaXベッドを通過するにつれて、水蒸気の吸着のプロセスによって加熱される。排出過程のこの後半中の質量およびエネルギー束が、図6内に例示される。もちろん、46のような単純なベーパライザの使用は本発明にとって重要でなくて、最適ならば、インペラまたは超音波給湿器によって容易に置換されることができる。
【0074】
A.Hauer(上記引用文中に)は、空気が100℃を超える温度で吸着ヒートポンプコンテナ40の最遠端部を出ることを示した。それがそのようにするので、それが含む熱の一部がリザーバ43の表面から温水の逆流ストリームまで熱交換器47経由で伝達されて、排出過程が進行するにつれて100℃の方へ徐々にそれを加熱する。これは、タンク15内に生成されるメタノール蒸気の温度および圧力をより高いレベルに上昇させ、それによって排出過程の終わりで100℃までシリンダ2内のNaXベッド1を加熱する。同時に、熱交換器36中を通過する水が冷却されて、装置が充填される次のとき、使用されるべきリザーバ43のボトムに戻される。
【0075】
AE−CAES実施態様の効率は、また、熱風が充填中に加圧されないNaXベッドから湿気を脱着するためにそれを通して通過した方向のおよそ逆転で、加圧されないNaXペレットベッド41を通して排出中に空気を通すことによって改善される。これは効率を向上する、さもなければ排出過程の前半中にベッドに入る空気によって取り上げられるか、または後半中に空気から湿気の吸着によって生成される、顕熱のいくらかは、それが最遠端部に達する前に、より冷たいおよび/またはより乾燥していないNaXベッドから取り去られるからである。フローのこのおよその逆転は、図面内に濃い実線によって表される内部バッフル42のシステムによって達成され、それは、充填中に空気がベッドのセンターを通して近い端に入るが、外縁周辺で最遠端部を出るように配置され、それから、排出中に、図7および8(また、図10を参照)内に図式的に示唆されるように、空気が、近い端上の外縁に入るが、最遠端部上のセンターを通して出るように再配置される。もちろん、他の実施態様が、最遠端部が第2のファンを含むことが可能であり、空気がNaXベッド41を通して戻って正確に反対側の経路をとることを可能にすると共に装置を排出する間、熱交換器36および47の役割が交換される。
【0076】
最後に、出口チャンバ48に入って、ダクト52経由で通過する温風がどのようにNaXベッド1からの膨張する圧縮空気を加熱して、それによって排出プロセスの前後半の全体にわたって圧縮熱を回収するのに用いられるかについて記述する。図7および8内に53、54および55とラベルをつけられる構成部品を含むこの空気タービンが、それに入る圧縮空気のストリームがその全長に沿って平行に走るねじれたベーンを伸張して、ベンチュリ管を通して加速するように、設計される(図11を参照)。これはそれの背後に真空を発生させる渦を作り出して、それが次にブレード53のわずかに風上の静的ブレード54の直径が大きい環を通してダクト52から温風を吸う。温風のこの第2の渦は、ブレード53からの低温膨張空気の渦を統合して、このプロセスによってそれと迅速にかつ十分に混合される。このタービンの背後の原理は、実は(特許文献5)内に最近開示されたミキサー−エジェクタ風力タービン設計のそれらと類似しており、それから着想を引き出したものである。ここで迅速に動く空気渦は、空気タービンロータ55のブレードを打って、それによって圧縮空気内に蓄積されるエネルギーおよび熱として蓄積されるエネルギーの一部を外部使用のための機械的形態に変換する。もちろん、レシプロ式空気圧モータのような、多くの他の装置が利用でき、それによって熱および圧縮空気は、さまざまな代替実施態様で機械エネルギーに変換されることができるが、但し、これらは、概ね、今説明したミキサー−エジェクタ空気タービンほど効率的でないであろう。
【0077】
このAE−CAES実施態様が6時間の期間にわたって定速で1メガワット時のエネルギーを放出し、および、圧縮空気がこのプロセスで周囲温度へ戻って加熱されるとするなら、圧縮空気は、周囲温度および圧力で測定して毎時約700Mの流量で放出されなければならない。圧縮空気の実際の温度は−40℃で始まり、および、徐々に、6時間の期間にわたって100℃近くまで上昇し、および、−40℃の空気は任意の所定の圧力で100℃の空気より1.6倍密度が高い。従って10気圧の空気が排出期間の初めに毎時54Mの速度で、および終わりに毎時86Mで放出されなければならないことになる。断熱状態の下で、この空気が、それが膨張するにつれて、始めに−152℃、および、排出期間の終わりに−80℃まで冷却するであろうし、それは次に、圧縮空気の放出のために流量をそれぞれ毎時283および454Mに減少させるであろう。それらの温度の空気を周囲温度に戻すために、それは、ダクト52を通して空気タービンに入るおおよその空気の温度、45℃の温度で約8.87および5.25掛ける同じ質量の空気と混合されなければならない。ダクトを通して45℃空気の必要な流量は、したがって、6時間の排出期間にわたって毎時6628から3920Mまで変化する。
【0078】
7000キログラムのNaXペレットベッドを使用して、A.Hauer(上記引用文中に)は毎時6000Mの空気流を、また6時間の期間にわたって、120℃および100℃の間にまで加熱することが可能だったが、それは、約120キロワットの熱に相当する。エネルギーの21.6%だけが熱として蓄積されるので、約0.216x1000/6=36キロワットの熱が1メガワット時に対して想定された6時間の排出期間中にタービンによって必要なことになる。排出過程の初めにメタノールをあまり加熱する必要はなく、それでNaXペレットベッド41を通して非加湿の空気流の速度が比較的高く保たれることができ、および、水が高速で熱交換器47を通して汲み出されることができる。得られた空気は、上で想定された45℃より幾分下の温度でダクト52に入るが、しかし、タービンへのその流量は、また、45℃で、上で見いだされた毎時6628Mより大きい。排出が進行するにつれて、排出期間の終りまでに熱交換器47を出る水の温度が、それを超える空気のそれ、または100℃に接近するように、ポンプ44は遅くなる。同時に、NaXペレットベッド41を通して加湿された空気流の速度は、徐々に遅くなり、それで排出プロセスの終わりの近くでダクト52を通してタービンに入る空気の温度は、45℃より幾分大きいが一方、その流量がまた45℃で、上で見積もった毎時3920Mより少ない。
【0079】
AE−CAES実施態様の構成部品の全てが公表された工学技術文献内にすでに実証されたことは、それらがここで使用されるそれらときわめて異なる目的のためとはいえ、明らかに理解されなければならない。これらの構成部品は、水−NaX吸着ヒートポンプ、吸着された形態で圧縮空気を蓄積するNaXゼオライトベッドおよびミキサー−エジェクタ原理に基づく先端空気タービンを含む。使用可能なAE−CAES装置に共にこれらの構成部品を入れるために必要な唯一の有意な追加的な工学技術は、上で概説されたように、同期性で共にそれらに動作させるのに必要な制御システムを開発することである。特に、充填および排出中に壁を備えたチャンバ4内の圧力およびメタノールがそれに入る速度が、圧縮空気が、それが圧縮機26および28によって生成されるかまたはそれぞれ、53、54および55とラベルをつけられる構成部品を含むタービンに供給され、それによってシリンダ2内のガス状の空気の圧力を全体にわたっておよそ一定に保つ、同じ速度で吸着された空気へ/から変換されるように調整されなければならない。些細でないにもかかわらず、このタスクはそれでもやはりその技術の当業者によって達成されることができる化学プロセス工学における完全に標準のシステムインテグレーション問題である。
【0080】
AE−CAES実施態様の機械および流体構成部品に対する、同じく、それが使用する材料に対する、多数の代替品があることは、機械および化学工学の当業者に明白であり、その全てが、相補温度−振幅サイクルとともに、圧縮空気および熱の蓄積を容易にするために吸着剤の使用を通して得られる利点を例示するためにのみ選択された。ポンプおよび圧縮機を動かすために必要なエネルギーがAE−CAES装置の総合効率を算出する際に放出されるエネルギーから減じられなければならないので、一実施態様に対する適度の改良がこの種の置換によって達成されることができることは十分にあり得る。但し、それらはそれでも上で与えられるカルノー限界に従わなければならない。特に、圧縮機19、26、28および31を駆動する原動力はどこから来るのか、または、構成部品53、54および55を含む空気タービンによって発生される機械力が何のために使用されるかについて述べるのを控えたことに留意されたい。通常、圧縮機は電気モータによって駆動されるが、石炭または原子力発電プラントで、例えば発電プラントの蒸気タービンから、油圧システム経由でそれがタービンからの機械エネルギーを電気に、および次いで、圧縮機内の機械エネルギーへ戻って変換するためにそうするであろうより、直接それらを駆動することがより経済的であろう。同じことは、もちろん、風力タービン農場で設置されるAE−CAES装置にとって真実である。同様に、いくつかの状況の下で、電気を発電するよりむしろ、圧縮空気工具または機械を動かすためにAE−CAES装置を排出すると共に、放出される圧縮空気を使用することが、より経済的でありえる。
【0081】
AE−CAES装置および/または温度−振幅CAES装置がまた、発明者の意図から具体的に逸脱することなく種々の他の確立した化学プロセスを使用することができることは、先端断熱CAESまたはさらに一般的にいえば熱エネルギー蓄積の当業者に更に明白である。例えば、一実施態様の水−NaXヒートポンプ40および41は、他の被吸着剤−吸着剤ペア、液体培地内のガスの吸着に基づくことができるかまたは、潜在的な形態で熱を蓄積することもできる多種多様な固−液相変化材料によって、置換されさえすることができる。種々の方法で廃熱回収または熱エネルギー収穫によって蓄熱サブシステムを補充するかまたは完全に置換することが、さらに可能である。例えば、石炭または原子力発電プラントのような、副産物として熱を生成する発電プラントに、AE−CAES装置が設置される場合、この熱は膨張空気および/または空気用の吸着剤を再加熱するのに用いられることができる。代わりとして、受動的な太陽熱コレクタがまた、例えば風力タービン農場に設置されたAE−CAES装置を排出するときに必要とされる適度の温度を容易に発生させることができる。要点は、排出中にAE−CAES装置の任意の構成部品によって活用される熱が、それに充填する間、逆プロセスによって生成される必要がなかったということである。
【0082】
熱の適切な安価な供給源を前提として、蓄積または排出期間中に吸着剤冷凍システムを再生させるのにそれを用いることもまた可能であろうし、それが充填期間中に空気を吸着する間、それがNaXベッドを冷却するために一実施態様の蒸気−圧縮冷凍システムの代わりに活用されることができる。この種の環境加熱源が、それらが必要な時に常に利用できない場合には、熱は装置を充填する間、生成される熱とともに、顕在的なまたは潜在的な形態で利用できるときに蓄積されることができ、および不完全な熱伝導によるエネルギー損失を埋め合わせるのに用いられることができる。高負荷サイクルに必要とされる温度振幅のサイズ、およびしたがって、空気用の吸着剤から取り出され、およびそれに戻されなければならない熱量、を減少させることもまた、上記のAE−CAES実施態様に記載の純粋な温度振幅の代わりに温度および圧力振幅のいくつかの組合せを用いて、可能なはずである。本発明者は、これらの変形例の全てがその多様な可能な用途の多くにおいてAE−CAES装置を構築しておよび/または動作させる経済的な側面を有意に改善することができることを十分に理解している。
【符号の説明】
【0083】
1 加圧されたNaXベッド ゼオライトペレット
2 シリンダ
4 凝縮/蒸発チャンバ 壁
5 チューブ
6 ドレイン
7 保持タンク
9、14 通気孔
10、11 制御バルブ
12 容積型ポンプ
13、18、33、35、45、51、56 バルブ
15 蓄積タンク
16、21、36、47 熱交換器
17、30、32、34、50 開放バルブ
19、31 圧縮機
20 タンク
22 ノズル
24 減圧バルブ
25 エアーフィルタおよびデシケータ
26、28 遠心圧縮機
27、29 向流熱交換器
37 ファン
38 減圧バルブ
39、44 ポンプ
40 吸着ヒートポンプ タンク コンテナ
41 加圧されないNaXペレットベッド ゼオライトペレット
42 バッフル
43 リザーバ
46 ベーパライザ
47 コンデンサ 熱交換器
48 出口チャンバ
49 鉢
52 ダクト
53、54 ブレード
55 タービンロータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー蓄積装置であって、以下、すなわち、
空気を吸着する多孔質材料と、
圧縮機であって、前記圧縮機が、機械エネルギーを圧縮空気および熱に変換し、前記圧縮空気が冷却されて、かつ前記多孔質材料によって吸着される、圧縮機と、
前記圧縮されて吸着された空気を蓄積するのに使用されるタンクと、
モータであって、前記モータを駆動する間、前記空気が脱着して、かつ膨張することができるようにすることによって圧縮されて吸着された空気として蓄積される前記エネルギーを回収するために駆動される、モータと、を備えるエネルギー蓄積装置。
【請求項2】
請求項1のエネルギー蓄積装置であって、前記圧縮空気が冷却され、および、この冷却された空気が前記多孔質材料によって吸着される、ことを特徴とするエネルギー蓄積装置。
【請求項3】
請求項1のエネルギー蓄積装置であって、前記多孔質材料による前記圧縮空気の前記吸着が、熱を発生させ、それと共に、前記多孔質材料および周囲の空気の温度が、前記吸着プロセス中に前記圧力が実質的に一定のままであるように制御される、ことを特徴とするエネルギー蓄積装置。
【請求項4】
請求項1のエネルギー蓄積装置であって、前記空気のための吸着剤の温度がその最小限の値に達する時、前記エネルギー蓄積装置内に圧縮されて吸着された空気として蓄積されるエネルギー量が最大化される、ことを特徴とするエネルギー蓄積装置。
【請求項5】
請求項1のエネルギー蓄積装置であって、前記空気のための吸着剤の温度がその最大値に達する時、前記エネルギー蓄積装置内に圧縮されて吸着された空気として蓄積されるエネルギー量がその最小限の値に達する、ことを特徴とするエネルギー蓄積装置。
【請求項6】
請求項1のエネルギー蓄積装置であって、前記モータが、タービンである、ことを特徴とするエネルギー蓄積装置。
【請求項7】
エネルギー蓄積装置であって、以下、すなわち、
適切な流動体が吸着された多孔質材料と、
機械エネルギーを圧縮空気および熱に変換する圧縮機と、
障壁であって、前記圧縮空気が、前記熱が前記障壁を通して流れることができることによって冷却される、障壁と、を備え、
前記熱が、流動体がそれに吸着された前記多孔質材料に運ばれ、
前記熱が、前記多孔質材料の前記温度を上昇させ、前記流動体にそれから脱着させる、ことを特徴とするエネルギー蓄積装置。
【請求項8】
請求項7のエネルギー蓄積装置であって、得られる蒸気が放出されるときに、前記熱が潜在的な形態で蓄積された、ことを特徴とするエネルギー蓄積装置。
【請求項9】
請求項7のエネルギー蓄積装置であって、前記蒸気の凝縮の際に放出される前記熱が、ヒートシンク内に蓄積されて、かつ前記適切な流動体を蒸発させるようにそれを用いて回収される、ことを特徴とするエネルギー蓄積装置。
【請求項10】
請求項8のエネルギー蓄積装置であって、前記得られる蒸気が、前記多孔質材料との接触に戻されて、かつそれによって再吸着され、前記潜熱が、顕在的な形態に戻されて、かつ前記障壁を通して戻って運ばれ、そこでそれが前記膨張する空気が更に冷却しないようにする、ことを特徴とするエネルギー蓄積装置。
【請求項11】
請求項7のエネルギー蓄積装置であって、前記熱が、より高い空気圧に変換され、およびモータを用いて、前記圧縮空気内の前記エネルギーが回収される、ことを特徴とするエネルギー蓄積装置。
【請求項12】
請求項11のエネルギー蓄積装置であって、前記モータが、ミキサー−エジェクタ原理に基づく空気タービンである、ことを特徴とするエネルギー蓄積装置。
【請求項13】
エネルギー蓄積装置であって、以下、すなわち、
空気を吸着する多孔質材料と、
熱を蓄積する熱エネルギー蓄積システムと、
機械エネルギーを圧縮空気および熱に変換する圧縮機であって、前記圧縮空気が冷却されて、かつ前記多孔質材料によって吸着される、圧縮機と、
前記多孔質材料および周囲の空気の温度が、前記熱が前記圧縮されて吸着された空気が逃げるのを防止する障壁を通して流れることができることによって制御され、
熱エネルギー蓄積システムであって、前記熱が前記熱エネルギーシステムに導かれて、かつそこで蓄積される、システムと、
前記圧縮されて吸着された空気を蓄積するタンクであって、およびそれが含む前記エネルギーが、前記空気が脱着して、かつ膨張することができることによって必要なときに回収される、タンクと、を備えることを特徴とするエネルギー蓄積装置。
【請求項14】
請求項13のエネルギー蓄積装置であって、前記熱が、顕在的な形態で蓄積される、ことを特徴とするエネルギー蓄積装置。
【請求項15】
請求項13のエネルギー蓄積装置であって、前記熱が、潜在的な形態で蓄積される、ことを特徴とするエネルギー蓄積装置。
【請求項16】
請求項13のエネルギー蓄積装置であって、脱着および膨張が、前記空気および前記多孔質材料を冷却し、前記障壁を通って戻り前記熱エネルギー蓄積システムから顕熱を流れさせる、ことを特徴とするエネルギー蓄積装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公表番号】特表2011−518270(P2011−518270A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−550706(P2010−550706)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/001655
【国際公開番号】WO2009/114205
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(510227702)エナジー コンプレッション エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】