説明

吸着濾過材料、吸着濾過材料を用いた防護用品、及び前記吸着濾過材料の使用

【課題】この発明の目的は、上述した従来技術の不利益点を少なくとも本質的に避けることのでき、防護服、防護手袋、防護靴、防護カバーなどのNBC防護用品の製造に特に有益である吸着濾過材料又は防護材料を提供することにある。
【解決手段】この発明は、化学的毒、特に化学兵器及び化学的有害物に対する防護を提供し、複数層構造(2)を有する吸着濾過材料(1)であって、前記複数層構造(2)は、少なくとも一つのシート状の対向する側面(3’,3”)を有する支持層(3)と、前記支持層(3)に保持され化学毒を吸着する能力を有する材料に基づく吸着層(4)とを具備するものにおいて、前記支持層(3)の2つの側面(3’,3”)の少なくとも一つの面には、プラズマ処理が施されることにある。特に、表面特性、特に表面の仕上がり及び表面反応性は、プラズマ処理によって適用に合致するように調整され且つ最適化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吸着濾過材料に使用されるプラズマ処理された織物表面に関する。
【0002】
さらに、本願発明は、請求項1の前段に記載されたような化学毒、特に化学兵器及び化学的毒に対する防護機能を有する吸着濾過材料に関し、特にNBC配備のための防護服、防護手袋、防護靴、防護カバー(例えば、負傷者の運搬用)等のような防護用品の製造、及びこの吸着濾過材料を使用して製造された防護用品に関する。
【背景技術】
【0003】
皮膚によって吸収され、深刻な肉体的損傷に導く一連の物質が存在する。例えば、糜爛性物質Hd(イエロークロス)及び神経ガスサリンである。そのような毒に接触する可能性のある人は、防護服を着用するか、適当な防護材料によってこれらの毒に対する防護されなければならない。
【0004】
原則として、3つのタイプの防護服がある:化学毒に対して不浸透であるゴム層を備え、急激に熱の上昇を導く空気及び水蒸気不浸透性の防護服;高い着心地を提供する空気及び水蒸気浸透性の防護服;及び水蒸気は透過させるが上述した毒は透過させない薄膜を備えた防護服である。NBC防護衣服は、伝統的に完全な不浸透性システム(例えばブチルゴムからできた服)又は透過性の活性炭(微粉状、繊維状又は球形形状)からなる吸着濾過システムのいずれかによって製造される。
【0005】
いろいろな条件下で長時間使用されることを意図した化学兵器物質に対する防護服は、着用者のために熱の上昇を導くものであってはならない。そのため、空気透過材料が、主として使用される。空気透過の浸透性防護服は、一般的に、永続的に化学毒を捕獲する活性炭からなる吸着層を保有するので、ひどく汚染された衣服ですら、着用者に何ら危険をもたらさない。このシステムの大きな利点は、活性炭が外部と同様に内部にも利用可能であるので、損害を受け、さもなければ非防護状態の場所への浸透に成功した毒素を素早く吸着することができる。しかしながら、極端な条件下、例えば、濃縮された毒の滴が、著しく高いところから、外側材料の開口場所のどこかに突き当たり、活性炭を貫通することができる時、活性炭層は、部分的に短い時間でその仕事を完了することができない。
【特許文献1】特開平8−502560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえに、この発明の目的は、上述した従来技術の不利益点を少なくとも本質的に避けることのでき、防護服、防護手袋、防護靴、防護カバーなどのNBC防護用品の製造に特に有益である吸着濾過材料又は防護材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、本発明の範囲において、請求項1に係る吸着濾過材料によって達成される。さらに本願発明に係る吸着濾過材料の利益的な改良点は、従属請求項(請求項2−29)の目的である。
【0008】
さらに、本願発明は、ある種の防護用品を製造するために、特にNBC配備のための防護服、防護手袋、防護靴及び防護カバーを製造するために本願発明の吸着濾過材料の使用を提供することにあり(請求項32)、さらに、上述した防護用品を提供することにある(請求項30及び31)。
【0009】
したがって、本願発明の第1の様相によれば、化学毒、特に化学兵器物質及び化学的有害物に対する防護を提供し、2つの対向する側面を有する少なくとも一つのシート状(例えば平坦形状)の支持層及び該支持層に支持され、化学毒を吸着することのできる材料からなる吸着層を具備する複数層構造を有する吸着濾過材料を提供するものであり、前記支持層の2つの側面の少なくとも一つの側面が、プラズマ処理によって変性されるものである。
【0010】
これは、この種のフィルタ濾過材料に慣例的に存在する支持層が、プラズマ処理によってその表面で変性されるときに、吸着濾過材料の特性、特に防護又は吸着性能が、決定的に影響を受け且つ改善されることを、出願人が見出したことによる。プラズマ処理は、表面構成(例えば、粗さ)及び表面反応性(例えば、一方で親水性又は疎水性、又は他方で疎油性)等の表面特性を調整する方法を提供する。
【0011】
このように、本願発明の基本的な概念は、複数層構造を有する吸着濾過材料に、化学毒、特に化学兵器物質及び化学的有害物に対する高められた防護機能を、この種の吸着濾過材料に慣例的に存在する支持材料又は支持層の表面特性がプラズマ処理によって変性されることによって付与することであり、これによって、特別な応用要求に対して適切に適応され又は最適化することができる。
【0012】
本願発明のさらなる利点、特色、様相及び特徴は、図面によって描かれる好ましい例についての下記する説明からはっきりと理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施例について図面により説明する。
【実施例】
【0014】
図1(a),(b)は、それぞれ本願発明の吸着濾過材料1の層構造2を示す概略図である。化学毒、特に化学兵器物質及び化学的有害物に対する防護機能を備えた本願発明の吸着濾過材料1は、2つの対向する側面3’,3”を有する少なくとも一つのシート状の(第1の)支持層3と、この支持層3に支持され、化学毒を吸着するための能力を有する材料からなる吸着層4とを具備する複数層構造2からなる。前記支持層3の2つの側面3’,3”の少なくとも一つの面には、プラズマ処理が施される。支持層又は材料3は、これによって、特に変性可能であり、又は調整可能である。
【0015】
図1(a),(b)においてわかるように、本願発明の吸着濾過材料1は、2つの対向する側面5’,5”を有する少なくとも一つのシート状の(第2の)支持層5を具備する。一般的に、第2の支持層5は、第1の支持層3の反対側に位置する吸着層4の側面に配置される。第2の支持層5の2つの側面5’,5”の少なくとも一つの面には、同様にプラズマ処理が施される。
【0016】
ここで使用される「プラズマ処理」は、本発明の範囲において適当であるプラズマ処理される支持層又は支持材料、特に織物支持層又は支持材料のための全ての通常の方法を具備する。
【0017】
プラズマは、通常物質の第4の状態として示される。個体物質にエネルギーが供給されると、液体となり、さらにエネルギーが供給されると液体は気体となる。さらに正しい種類のエネルギーが導入されたならば、気体は電離しプラズマになる。プラズマは、多重度の現象において存在する。大変高いエネルギーと温度のプラズマは、工業的に用いることが不可能であり、特に支持層の表面の処理には向かない。それゆえに、本願発明によって企図されるプラズマ処理は、特に低圧又は真空工程において使用されるので、プラズマの温度は、環境温度を最小限超える程度である(いわゆる低温又は冷気プラズマ)。これは、適当なエネルギー種類及び適当な気体環境の選択を用いることによって達成され、且つこれはその技術分野における通常の知識を有する者の専門技術の範囲内である。
【0018】
特別な理論によって結合されるということを求めることなしに、プラズマ処理は、第1の支持層又は材料3及び/若しくは第2の支持層又は材料5の表面を変性することのできるいろいろな相互に競争する分子過程又は反応、いわゆる第1に除去(場合によってはエッチング又はプラズマエッチングの同義語によって参照される蒸発による表面物質の除去)、第2の架橋(2つ又はそれ以上の重合体鎖の化学的接着)及び第3に活性化(プラズマからの化学的基によって表面の原子の再配置)を伴うことが信じられている。これら3つの上述した反応は、プラズマ処理システムにおける気体化学及び操作的変数(圧力、温度、エネルギー入力、処理時間等)によって影響を受け且つ制御される。
【0019】
本発明によって使用されるプラズマは、60℃以下の温度、好ましくは50℃以下の温度を有し、変性されるべき表面を損傷又は破壊することない低温プラズマ、特に冷気プラズマである。そのような低温を達成するために、通常、減圧又は真空で、特に0.0001〜100Torr、好ましくは0.001〜10Torrの圧力で操作される。有効なプラズマ形成ガスは、無機的及び/若しくは有機的ガス又はガス混合物、例えば窒素酸化物、炭素酸化物、貴ガス、窒素、酸素、オゾン及び/若しくは塩素ガスからなる。これは、当業者には既に知られている。
【0020】
変性されるべき表面をプラズマ処理するために、表面は、要求された表面特性を得るために十分な時間、プラズマに曝される。これは、例えば、支持層3,5を適当なプラズマ真空室に導き、変性されるべき対応する表面に十分な時間プラズマを作用させることによって達成される。当業者については既に公知である適当な操作パラメータ(圧力、温度、エネルギー入力、処理時間、ガスの選択等)を選択することによって、前記表面は、要求された状態に変性されるものである。
【0021】
プラズマを発生するために、プラズマ形成ガスは、一般的に高周波エネルギー(例えば40KHz〜3GHzの範囲内)に曝され、プラズマ形成ガスは、それに続いて変性されるべき表面に作用するプラズマに電離する。その圧力状態、処理時間、温度、ガスの選択及びエネルギー周波数は、実行される変性に関して特別に調整し又は選択する当業者の専門知識に基づいて可能となる相互に関連した変数である。
【0022】
一般的に、プラズマ処理は、第1及び第2の支持層3,5の表面3’,3”,5’,5”のいずれかの表面に直接実行される。しかし、同様にプラズマ処理は、第1及び第2の支持層3,5の表面3’,3”,5’,5”に高分子の又は高分子化された薄膜を最初に設け、プラズマ処理によって高分子の又は高分子化された薄膜を架橋又は硬化させることによって間接的に実行することもできる。本願発明に関して用いられる高分子の又は高分子化された薄膜は、例えばシリコン膜、特にシリコンオイル、又はオルガノポリシロキサンを含むものである。
【0023】
プラズマ処理は、特に第1及び第2の支持層3,5の表面特性、例えば表明構成(例えば粗さ)又は表面反応性を調整することを可能にする。例えば、粗さを向上させることによって、第1又は第2の支持層3,5に吸着層4を固定するための接着剤の接着力を向上させることが可能となる。表面反応性を増加又は減少させることによって、表面の親水性/疎水性又は親油性/疎油性を達成し、化学毒、例えば有機化学物に関する忌避性、水−湿潤性の良好又は悪化を得ることができる。例えば、上昇した表面反応性は、水湿潤性、言い換えると液体、特に、表面への広がり、表面への浸透など水に関する能力に関して極端に特徴付けをすることができる。水湿潤性は、液体、特に水と表面の間の接触角に関して、
知られた特性を有する基準液体を使用することによって測定される。接触角と表面エネルギー/表面反応性の間の関係は、直接的であり、言い換えると接触角は表面エネルギー/反応性に伴って減少する。
【0024】
本願発明の吸着濾過材料1が、例えばNBC防護服などのNBC防護用品に使用されるとき、前記プラズマ処理は、一方で第1の支持層3の2つの側面3’,3”の少なくとも一つの側面の表面反応性、他方で反対の特性を有する第2の支持層5の2つの側面5’,5”の少なくとも一つの側面の表面反応性を変性するために使用される。前記プラズマ処理は、第1の支持層3の2つの側面3’,3”の少なくとも一つの側面の表面反応性を向上させ、第2の支持層5の2つの側面5’,5”の少なくとも一つの側面の表面反応性を減少させるために使用される。また、その逆の場合もある。例えば、前記プラズマ処理は、第1及び第2の支持層3,5の表面を、親水性若しくは疎水性、又は親油性若しくは疎油性にするために使用される。同様に、第1及び第2の支持層3,5のプラズマ処理された表面は、酸性又はアルカリ性にされる。
【0025】
本願発明の吸着濾過材料1が、例えばNBC防護用品、特にNBC防護服に使用されるとき、吸着濾過材料1の使用状態において、外側に面する第1の支持層3の表面3’は疎油性にされて有機化学物質が拒絶することができ、使用状態において身体側に面する第2の支持層3の2つの側面5’,5”の少なくとも一つの面は、親水性にされて、汗がより良く吸収され、身体から離れた外側方向へ効果的に放出されるものである。
【0026】
第1及び第2の支持層3,5は、空気透過織物材料であることが好ましい。その例としては、ある種の織物シート状構造であり、それらは、織布、メリヤス織物、不織スクリム、織物複合物、芯材及び不織布である。
【0027】
前記第1及び第2の支持層3,5は、一般的に、高分子/合成繊維、好ましくは熱可塑性繊維からなる空気透過織物材料から形成されることが好ましい。これは、表面が直接的にプラズマ処理によって変性されるために必要である。高分子/合成繊維織物繊維の例としては、ポリアクリル系(PAN)、ナイロン6及びナイロン66のようなポリアミド(PA)、ポリエステル(PES)、ポリオレフィン、特にポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVAI)、ポリ塩化ビニル(CLF)、ポリ塩化ビニリデン(CLF)、アセテート(CA)、トリアセテート(CTA)、アラミド(AR)、エラステイン(EL)、エラストジエン(ED)、フルオロ系(PTFE)、ゴム(LA)、カーボン(CF)、ビスコース(CV)及び上述した繊維物質の混合物である。括弧内の略語は、ドイツ標準規格DIN60001−4:1991−08において定義されたコードである。前記第1及び第2の支持層3,5は、上述した高分子/合成繊維材料からなり、また所定比率でこれらを配合したものからなる(例えば、天然繊維からなる材料と、高分子/合成織物繊維とを配合した場合の例である)。純天然織物繊維からなる織物材料の場合、プラズマ変性は、上述したように、高分子又は高分子化された薄膜を適用することによって可能となる。
【0028】
本発明の吸着濾過材料1の特別に好ましい例において、第1及び第2の支持層3,5の少なくとも一つは、PA−PES織物シート構造、特にPA−PES芯材であり、又は、PES繊維を含むシート状構造であり、且つ、特にPES−セルロース織物シート状構造である。
【0029】
好ましい例において、吸着濾過材料1の使用状態において、毒素源に面する第1又は第2の支持層3,5は、毒素源と面するその側面3’,5’がプラズマ処理によって疎油性に変性され、有機化学物質の滴がより効果的にはねつけられ、使用状態において毒素源から離れた側に面する第2又は第1の支持層5,3は、毒素源から離れた側に面するその側面5’,3’がプラズマ処理によって親水性に変性され、水分(例えば汗)が効果的に放出される。
【0030】
このように、プラズマ処理は、第1及び第2の支持層3,5の表面特性を、特別に変性/変化させることができるものである。上記に詳細に説明されたように、前記表面は、これによって、例えば親水性又は疎水性、親油性又は疎油性、酸性又はアルカリ性、粗面又は平坦面等に変性される。特に、本願発明の吸着濾過材料1の織物合成物の両面が、異なるプラズマ処理に曝され、その両面に異なる表面特性が達成されることを可能にする。例えば、一方の側面が親水性となり、他方が疎水性となる。
【0031】
吸着層4は、一般的に、独立した層として形成される。しかしながら、前記吸着層4を第1及び/若しくは第2の支持層3,5と一体にすることも可能であり、前記吸着層4が、第1及び/若しくは第2の支持層3,5の一部とすることもできる(活性炭を含有したPU発泡体の場合など)。しかしながら、一般的に、独立した吸着層4が好ましい。
【0032】
上述したように、吸着層4は、化学毒、特に化学兵器物質及び/若しくは化学的有害物を吸着することのできる材料からなる。それは、特に活性炭に基づく吸着濾過材料である。しかしながら、例えば、分子ふるい、イオン交換体、ゼオライト、シリカゲル等の他の吸着材料も使用することができる。しかし、活性炭が本願発明の目的には、特に好ましい。前記吸着層4は、第1及び/若しくは第2の支持層3,5に、特に永続的に(例えば、接着剤、ステイプル、縫合、溶接等によって)固定されることが好ましく、特に接着剤(例えば、熱可塑性接着剤、特に水分架橋ポリウレタン反応接着剤)によって固定されことが好ましい。この場合、接着剤は、第1及び/若しくは第2の支持層3,5に、単に不連続に、好ましくはドット状に塗布されることが望ましい。
【0033】
図1(a)に示されるように、前記吸着層4は、不連続である。この場合、前記吸着層4は、化学毒を吸着することができ、活性炭粒子及び/若しくは活性炭繊維の形の活性炭からなる独立した吸着部分を具備する。前記吸着層4は、好ましくは、粒状形状(粒状カーボン)又は球形形状(球形カーボン)の活性炭の個々の粒子からなり、活性炭粒子の平均直径は、1.0mm以下であり、特に0.5mm以下であり、好ましくは0.4mm以下であるが、少なくとも0.1mmである。前記活性炭粒子は、5〜500g/m、特には10〜400g/m、好ましくは20〜300g/m、より好ましくは25〜250g/mの量で存在する。活性炭粒子の内部表面積(BET)は、少なくとも800m/g、特には少なくとも900m/g、好ましくは1,000m/gであり、特に好ましくは800〜1500m/gの範囲内である。特に良好な圧縮強度を得るために、活性炭粒子は、個々の活性炭粒子毎に、特には活性炭細粒又は小球毎に、少なくとも5N、特には少なくとも10Nの破裂圧力を有することが有益であり、且つ前記破裂圧力は、20N以上の上限を有することが望ましい。
【0034】
図1(b)に示される別の実施例において、前記吸着層4は、特には活性炭シート状構造の形の活性炭繊維からなる。適当な活性炭シート状構造は、20〜200g/m、特には30〜150g/m、好ましくは50〜120g/mの基礎重量を有する。前記活性炭シート状構造は、炭化され活性化されたセルロースからなり及び/若しくは炭化され活性化されたアクリロニトリルからなる、特に織布、メリヤス編物、不織スクリム又は合成した活性炭繊維である。
【0035】
吸着効果及び性能を向上させるために、吸着層4の吸着剤、特に活性炭粒子及び/若しくは活性炭繊維は、付加的に少なくとも一つの触媒がしみ込んでいる。本発明に使用される触媒は、例えば酵素且つ/又は金属イオン、好ましくは銅イオン、銀イオン、カドミウムイオン、白金イオン、パラジウムイオン、亜鉛イオン及び/若しくは水銀イオンを含んでいる。触媒の量は、それぞれの場合で大きく変化するが、一般的に、吸着層4の重量に基づいて、0.05重量%〜12重量%の範囲、好ましくは1〜10重量%の範囲内、より好ましくは2重量%〜8重量%の範囲内である。
【0036】
さらに、本願発明に係る吸着濾過材料1は、化学毒の浸透を抑制し又は化学毒に対して少なくとも本質的に不浸透性である少なくとも一つの薄膜層6を備えることができる。この薄膜層6は、少なくとも本質的に水及び空気不浸透性であるが、水蒸気浸透性である。
【0037】
前記薄膜層6は、前記第1の支持層3及び前記吸着層4の間、又は前記第2の支持層5及び前記吸着層4の間に配される。前記薄膜層6は、本願発明の吸着濾過材料1の使用状態において、吸着層4の上流側に配置されることに利点があり、それによって化学毒は、最初に薄膜層6に遭遇することになる。
【0038】
前記薄膜層6は、一般的に連続的で、特に一体となったマイクロポーラスな薄膜である。
【0039】
前記薄膜層6は、例えば1〜500μmの厚さ、特には1〜250μmの厚さ、好ましくは1〜100μmの厚さ、より好ましくは1〜50μmの厚さ、さらに好ましくは2.5〜30μmの厚さ、最も好ましくは5〜25μmの厚さの薄膜であり、プラスチック又はポリマーからなる薄膜である。前記プラスチック又はポリマーは、ポリウレタン、ポリエーテルアミド、ポリエステルアミド、ポリテトラフルオロエチレン及びセルロースからなるポリマー及び上述した合成物の誘導体からなる群から選択される。
【0040】
特別な例において、前記薄膜層6は、多層の薄膜積層物又は多層の薄膜複合物であり、前記薄膜積層物又は複合物は、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの相互に接着された層からなることが好ましい。例えば、前記薄膜積層物又は複合物は、セルルースに基づくポリマーからなるコア層と、このコア層に接着され、特にポリウレタン、ポリエーテルアミド、及び/若しくはポリエステルアミドからなる2つの外側層とを具備し、この場合、セルロースに基づくポリマーからなるコア層は、1〜100μmの厚さ、特には5〜50μmの厚さ、好ましくは10〜20μmの厚さの薄膜として形成され、前記コア層に接着される2つの外側層は、1〜100μm、特には、5〜50μm、好ましくは5〜10μmの間の薄膜として形成される。薄膜積層物又は複合物としての薄膜層6の特別な形成は、それぞれ異なる特性、特に異なる水蒸気透過度及び/若しくは化学毒に対する浸透抵抗を有するいろいろな薄膜材料をお互いに結合させることを可能にし、薄膜層6の特性を最適化することができる。例えば、セルロース及びセルロース誘導体は、特に学的毒又は有害物質、例えば化学兵器物質(Hd等)に対する優れたバリヤ層材料であり、これらの毒によって侵食又は溶解されない。一方、ポリウレタンを基礎とする材料は、セルロース層に存在する可塑剤の移動又は拡散を抑制し、使用時又は着用時に発生する(セルロースによる)衣擦れの音を弱めることができる。これは、この特別な例において、薄膜積層物又は複合物の場合、コア層が、セルロースを基礎とするポリマーに基づいて形成され、薄膜層6の2つの外側層がポリウレタン層によって形成されることが好ましい理由である。
【0041】
本願発明の吸着濾過材料1の使用状態において、吸着層4の上流側に配される薄膜層6の存在は、第1及び第2の支持層3,5を介して浸透することに成功した例えば化学兵器物質又は化学的毒素のような化学的毒が、さらに浸透することができず、特に少なくとも吸着層4まで届くことができないので、吸着層4の吸着能力をある意味で消耗することのないままにすることができる。一方で、吸着濾過材料1がNBC防護服として使用されるとき、薄膜層6の存在は、吸着濾過材料1の着用者又はNBC防護服の着用者に関してさらなる防護性能を提供するので、結果として吸着濾過材料1は、化学毒に対していわば2倍の防護機能を有することなる(言い換えると、一方で薄膜層6のブロック効果により、他方で吸着層4の吸着効果による)。本願発明の吸着濾過材料に化学毒の通過を抑制するか、化学毒に対して不浸透性である特別な薄膜層を装着することによって、良好な汚染除去能力及び再利用性が、同時にこの発明の吸着濾過材料1に関して達成される。これは、第1及び第2の支持層3,5への浸透に成功し、薄膜層6に存在する毒が、適当な処理工程を介して、例えばこれらの目的のために当業者には公知である適当な汚染除去溶液で洗い流すことによって、容易に薄膜層から除去することができる理由である。
【0042】
前記薄膜層6及びこれによる吸着濾過材料1は、前記薄膜層6又は吸着濾過材料1が、化学兵器物質、特にビス[2−クロロエチル]硫化物(マスタードガス、Hd、イエロークロス)に関するバリヤ効果を有するように構成され、薄膜層6の厚さが50μmの時に、CRDEC−SP−84010、方法2.2に従って測定された24時間当たり約4μg/cm、特には24時間当たり約3.5μg/cm、好ましくは24時間当たり約3.0μg/cm、より好ましくは24時間当たり2.5μg/cmの浸透性を有する。
【0043】
着心地、特に通気性を向上させるために、前記薄膜層6は、(25℃でASTME96の逆カップ法によって測定された)25℃且つ厚さ50μmの時に、24時間当たり少なくとも12.5リットル/m、特に少なくとも17.5リットル/m、好ましくは少なくとも20リットル/mの高い水蒸気透過度を有する。さらに、水蒸気透過度(WVTR)の測定に関する詳細は、マクカロー他「繊維の水蒸気浸透率に関する標準法の比較」Meas.Sci.テクノロジー[Measurements Science and Technology]14,1402−1408,2003年8月に示される。これは、特に高い着心地を確保する。複数層構造2の複数の層3,4,5,6によれば、吸着濾過材料1の水蒸気透過度は、全体として薄膜層6のみの場合と比較して、少し低くなる。しかしながら、全体として前記吸着濾過材料1の水蒸気透過度は大変高く、薄膜層6の厚さが50μm(25℃)の時に、24時間当たり10リットル/m、特には24時間当たり15リットル/m、好ましくは24時間当たり17.5リットル/mである。
【0044】
通気性の理由は、前記薄膜層6が、定常状態条件下において、低い水蒸気透過抵抗Retを有し−1994年2月 DIN EN 31 092:1993(「織物−生理学的効果、定常条件下における熱及び水蒸気透過抵抗の測定[結露防止−ホットプレートテスト]」又は適当な国際規格ISO11092)によって測定された−35℃で、薄膜層6の厚さが50μmの時に、約25(m2・pascal)/watt、特には約20(m2・pascal)/watt、好ましくは13(m2・pascal)/wattの水蒸気透過抵抗Retを有する。前記複数層構造2の複数の層3,4,5,6によれば、全体としての吸着濾過材料1の水蒸気透過抵抗Retは、薄膜層6のみの場合と比較して少し高めであり、一般的に全体としての吸着濾過材料1の水蒸気透過抵抗Retは、薄膜層6の厚さが50μmの時に、約30(m2・pascal)/watt、特には約25(m2・pascal)/watt、好ましくは20(m2・pascal)/wattである。
【0045】
前記薄膜層6は、最小限の水分吸収/膨張能力を有するべきであり、この最小限の水分吸収/膨張能力は着心地を向上させる。特に、薄膜層6の膨張能力/水分吸収性は、薄膜層6の固有重量に基づいて、約35%、特には25%、好ましくは20%であるべきである。さらに、前記薄膜層6は、少なくと本質的に液体、特に水に対して及び/若しくはエアゾールに対して不浸透性であり、少なくともそれらの透過を抑制する。ほんの少しの膨張能力を達成するために、前記薄膜層6は、親水性群を持たないか、本質的にほとんど持たないようにするべきである。しかしながら、最小の膨張をえるために、前記薄膜層6は、弱い親水性群(例えばポリエーテル群)を具備するか、少量の強い親水性群を具備することが望ましい。
【0046】
薄いフィルム状/又は薄片の形のいわゆる通気性の良い薄膜層6、特に水蒸気透過性で液体不透過性の薄膜層6の使用は、NBC防護衣服に関して、吸着層4がいわゆる薄膜層6の後に、言い換えると使用状態又は着用状態において薄膜層6の下流側に配されるとき、驚きの進歩を達成することを可能にする。
【0047】
本願発明の特別な例において、前記薄膜層6は、自己接着能力、特に熱粘着性を有するので、前記薄膜層6は、前記吸着層4の固定のための接着層として働く。
【0048】
図2は、本願発明の特別な改良による本願発明の吸着濾過材料1を示す。図2に示す吸着濾過材料1は、ドット状に塗布/プリントされた接着剤7が支持層3,5に固定される活性炭繊維シート状(いわゆるフラット形状の)構造4に基づくシート状(いわゆるフラット形状の)吸着層がその間に配される2つの支持材料/層3,5を具備する。2つの支持層3,5の一つは、PA−PES芯材であると同時に他方の支持層は、PES−セルロース織物シート状(いわゆるフラット形状)構造である。
それぞれの支持層3,5の側面3’,3”,5’,5”の一つ又は複数は、特別に意図された適用に従ったプラズマ処理によって変性(例えば、親水性にすること又は疎水性にすること、親油性にすること又は疎油性にすること、粗くすること、酸性又はアルカリ性にすること)される。そのような材料は、例えばNBC防護衣服の製造において使用可能である。
【0049】
前記複数層構造2の個々の層3,4,5,6は、各々お互いに接着される。それから前記複数層構造2は、複合物/積層物を形成する。しかしながら、これに代えて、複数層構造2の個々の層3,4,5,6は、それらの少なくともいくつかは、その間を接着することなしに単にお互いに重ね合わされるように配置されるものであっても良い。これは、それぞれの場合において、本願発明の吸着濾過材料1に関して意図される応用に依存する。
【0050】
全体として、本願発明の吸着濾過材料1の製造は、通常の方法において達成される。これは、吸着濾過材料1を製造する当業者にとって公知であるので、さらに詳細な説明は行わない。
【0051】
第1及び/若しくは第2の支持層3,5の少なくとも一つの側面3’,3”,5’,5”へのプラズマ変性は、結果としてプラズマ処理によって特別に調整された表面特性を有する高い性能の吸着濾過材料1を生じる。例えば、親水性への変性は、改善された水吸収性を提供し、疎油性化は、有機化学毒、特に科学兵器物質又は有害物に関して改善された忌避性(例えば化学毒の濃縮された滴が、第1及び第2の支持層3,5に衝突する時の)を確保する。例えば、酸性又はアルカリ性表面変性は、所定の毒素の中和化を達成する特別な方法である。
【0052】
このように、プラズマ処理によって第1及び第2の支持層3,5の表面を変性することは、広い範囲に渡って本願発明の吸着濾過材料1の第1及び第2の支持層3,5の表面特性を特別に調整するためのわかりやすい方法を提供する。例えば、表面反応性(例えば、親水性又は疎水性、親油性又は疎油性、等)、表面粗さ、酸性又はアルカリ性特性等は、特に特別な適用要求に対して調整され/採用される。これは、本願発明の吸着濾過材料1の防護効率を決定的に改善する。
【0053】
特に、織物複合物、言い換えると本願発明による吸着濾過材料1の2つの側面には、異なるプラズマ処理が施され、2つの側面に異なる表面特性を達成する。例えば、ひとつの側面は親水性化がなされ、他方の側面は、疎水性化がなされる。接着剤又は他のコーティングがなされる支持材料の織物表面は、親水性化処理が行われる。この材料は、広範囲コーティング又はドット状コーティングに使用可能である。これは、接着剤のコーティング又はドットが、織物表面を最適に湿らせるので、良好な接着が達成され、接着剤が最小限しみ通ることと、コーティングのドットが材料上の所定の位置にしっかりと残ることを結合させる。この方法において、コーティング及び付加される接着剤の必要量は、経済的に最適化させる。製品は、ポリウレタン(いわゆる直接コーティング)による織物コーティングでり、薄膜による積層物及び通気性のある薄膜層及び活性炭を有する吸着フィルタであり、各々の場合において、コーティングされる表面は、プラズマ処理を用いて変性される。原則として、プラズマ処理は、全ての種類の織物複合物の製造に有益である。使用される接着剤の例としては、水分架橋ポリウレタン反応性接着剤、High Solid(商標)及びポリウレタンコーティングである。コーティングされる織物基体は、身体に面するライナー側として、織物において着用されるとき、内側表面が親水性処理されることは、着心地の見地から気の利いたものであり、皮膚からの汗の良好な移動を達成することができる。ポリアミド又はポリエステルからなる織物基体を使用することは、このような関係において好ましい。本願発明に関する有益なプラズマ処理方法は、例えば上述された空電プラズマ又は高真空プラズマによる処理を含むこともできるが、稀な例である。
【0054】
上述したように、本願発明の吸着濾過材料は、ある種の防護材料、特に防護服、防護手袋、防護靴、防護カバーを製造するのに利用可能である。このように、本願発明は、上述した防護用品のための本願発明の吸着濾過材料の使用も、本願発明の吸着濾過材料を使用して製造された防護用品自体、特にNBC配置のための防護服、防護手袋、防護靴、防護カバーを提供するものである。
【0055】
本願発明のさらなる改良、改善及び変更は、本願発明の範囲から離れることなしに、本明細書を読んだ後、当業者に対して明確となり、当業者によって認識可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】(a)は、吸着層が吸着剤の不連続な部分によって形成されたことを示す本願発明の好ましい実施例に係る吸着濾過材料の層構造を示した概略図であり、(b)は、吸着層が活性炭繊維によるシート状織物の連続した層として形成されること示す別の実施例に係る吸着濾過材料の層構造示した概略図である。
【図2】さらに別の実施例に係る吸着濾過材料の層構造を示す概略図である。
【符号の説明】
【0057】
1 吸着濾過材料
2 複数層構造
3 第1の支持層
3’,3” (第1の支持層の)側面
4 吸着層
5 第2の支持層
5’,5” (第2の支持層の)側面
6 薄膜層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学的毒、特に化学兵器及び化学的有害物に対する防護を提供し、複数層構造(2)を有する吸着濾過材料(1)であって、前記複数層構造(2)は、少なくとも一つのシート状の対向する側面(3’,3”)を有する支持層(3)と、前記支持層(3)に保持され化学毒を吸着する能力を有する材料に基づく吸着層(4)とを具備するものにおいて、前記支持層(3)の2つの側面(3’,3”)の少なくとも一つの面には、プラズマ処理が施されることを特徴とする吸着濾過材料。
【請求項2】
前記吸着濾過材料(1)は、さらに、2つの対向する側面(5’,5”)を有する少なくとも一つのシート状の第2の支持層(5)を有し、該第2の支持層(5)は、前記第1の支持層(3)の反対側の吸着層(4)の側面に設けられ、前記第2の支持層(5)の2つの側面(5’,5”)の少なくとも一つの面には、プラズマ処理が施されることを特徴とする請求項1記載の吸着濾過材料。
【請求項3】
前記プラズマ処理は、低温プラズマ、60℃以下、好ましくは50℃以下の温度の冷ガスプラズマによって、真空下、特に0.0001〜100Torr、好ましくは0.001〜10Torrの圧力で実行され、且つ/又はプラズマ形成ガスとしては、特に窒素酸化物、炭素酸化物、貴ガス、窒素、酸素、オゾン及び/若しくは塩素ガスの群から選択された少なくとも一つの無機若しくは有機ガス又は無機及び/若しくは有機ガスの混合気を使用することを特徴とする請求項1又は2記載の吸着濾過材料。
【請求項4】
前記プラズマ処理は、前記支持層(3,5)の表面(3’,3”,5’,5”)に直接実行されること、又は、前記プラズマ処理は、処理されるべき表面に高分子又は重合された薄膜を付加した後に、前記支持層(3,5)の表面(3’,3”,5’,5”)に間接的に実行されて、その薄膜がプラズマ処理によって架橋され及び/若しくは硬化され、使用された高分子又は重合された薄膜が、シリコン、シリコンオイル、又はオルガノポリシロキサンから成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の吸着濾過材料。
【請求項5】
前記プラズマ処理が、前記第1の支持層(3)の2つの側面(3’,3”)の少なくとも一つの表面及び/若しくは前記第2の支持層(5)の2つの側面(5’,5”)の少なくとも一つの表面の表面特性、特に表面反応性及び若しくは表面構成を改善したこと、且つ/又は前記プラズマ処理が、前記第1の支持層(3)の2つの側面(3’,3”)の少なくとも一つの表面及び/若しくは前記第2の支持層(5)の2つの側面(5’,5”)の少なくとも一つの表面の表面反応性の改善を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の吸着濾過材料。
【請求項6】
前記プラズマ処理が、一方で支持層(3)の2つの側面(3’,3”)の少なくとも一つの側面の表面反応性を改善し、他方で支持層(5)の2つの側面(5’,5”)の少なくとも一つの側面の表面反応性を反対特性に改善するので、支持層(3)の2つの表面(3’,3”)の少なくとも一つの側面の表面反応性は向上され、及び/若しくは支持層(5)の2つの表面(5’,5”)の少なくとも一つの側面の表面反応性が減じられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の吸着濾過材料。
【請求項7】
前記プラズマ処理は、支持層(3,5)のプラズマ処理された表面を、親水性又は疎水性にし、且つ/又は、前記プラズマ処理は、支持層(3,5)のプラズマ処理された表面を、親油性又は疎油性にし、且つ/又は、前記プラズマ処理は、支持層(3,5)のプラズマ処理された表面を、酸性又はアルカリ性にすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の吸着濾過材料。
【請求項8】
前記支持層(3,5)の少なくとも一つは、プラズマ処理によって疎油性にされた少なくとも一つの面を有し、且つ/又は、前記支持層(5,3)の少なくとも一つは、プラズマ処理によって親水性にされた少なくとも一つの面を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の吸着濾過材料。
【請求項9】
前記プラズマ処理は、第1の支持層(3)の2つの側面(3’,3”)の少なくとも一つの面、特に吸着層(4)から離れた側の前記第1の支持層(3)の外側面(3’)を疎油性にすると同時に、前記第2の支持層(5)の2つの側面(5’,5”)の少なくとも一つの面、特に吸着層(4)から離れた側の前記第2の支持層(5)の外側面(5’)を親水性にし、又は反対に、前記プラズマ処理は、第1の支持層(3)の2つの側面(3’,3”)の少なくとも一つの面、特に吸着層(4)から離れた側の前記第1の支持層(3)の外側面(3’)を親水性にすると同時に、前記第2の支持層(5)の2つの側面(5’,5”)の少なくとも一つの面、特に吸着層(4)から離れた側の前記第2の支持層(5)の外側面(5’)を疎油性にしたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の吸着濾過材料。
【請求項10】
前記吸着濾過材料の使用状態において毒素源に対面する位置にある第1又は第2の支持層は、毒素源と対面する位置にある側面が、プラズマ処理によって疎油性にされ、且つ/又は、吸着濾過材料の使用状態において毒素源から離れた位置にある第2又は第1の支持層は、毒素源から離れた位置にある側面が、プラズマ処理によって親水性にされることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の吸着濾過材料。
【請求項11】
第1の支持層(3)及び/若しくは第2の支持層(5)は、特に織布、メリアス編物、不織スクリム、織物複合物、芯材及び不織布の織物シート状構造から選択された空気透過性織物材料であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載の吸着濾過材料。
【請求項12】
第1の支持層(3)及び/若しくは第2の支持層(5)は、高分子及び/若しくは合成繊維、好ましくは熱可塑性繊維からなり、特に高分子及び/若しくは合成繊維は、ポリアクリル系(PAN)、ナイロン6及びナイロン66等のポリアミド(PA)、ポリエステル(PES)、ポリオレフィン、特にポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVAL)、ポリ塩化ビニル(CLF)、ポリ塩化ビニリデン(CLF)、アセテート(CA)、トリアセテート(CTA)、アラミド(AR)、エラステイン(EL)、エラストジエン(ED),フルオロ系(PTFE)、ゴム(LA),カーボン(CF),ビスコース(CV)及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の吸着濾過材料。
【請求項13】
前記第1及び第2の支持層(3,5)の少なくとも一つは、天然繊維と合成/高分子繊維の混合物に基づく織物シート状構造であり、且つ/又は、前記第1及び第2の支持層(3,5)の少なくとも一つは、PA−PAS芯材であるPA−PES織物シート状構造であり、且つ/又は、前記第1及び第2の支持層(3’,5’)の少なくとも一つは、PESファイバーを有する織物シート状構造であり、特にPESセルロース織物シート状構造であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一つに記載の吸着濾過材料。
【請求項14】
前記吸着層(4)は、前記第1の支持層(3)及び/若しくは第2の支持層(5)と一体であり、且つ/又は、前記吸着層(4)は、前記第1の支持層(3)及び/若しくは第2の支持層(5)の一部であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一つに記載の吸着濾過材料。
【請求項15】
前記吸着層(4)は、前記第1の支持層(3)及び/若しくは第2の支持層(5)に、接着材、ステイプル、縫合、溶接によって、特に好ましくは熱可塑性樹脂接着剤で、より好ましくは水架橋ポリウレタン反応接着剤での接着によって永続的に固定され、前記接着剤が、前記第1の支持層(3)及び/若しくは第2の支持層(5)に対して単に不連続に、好ましくはドット状に塗布されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一つに記載の吸着濾過材料。
【請求項16】
前記吸着層(4)は、不連続であり、且つ/又は、前記吸着層(4)は、特に活性炭に基づく化学毒吸着能力を有する不連続の吸着片からなり、且つ/又は、前記吸着層(4)は、特に活性炭に基づき、活性炭粒子及び/若しくは活性炭繊維の形の化学毒吸着能力を有する吸着材からなることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一つに記載の吸着濾過材料。
【請求項17】
前記吸着層(4)は、粒状(粒状カーボン)又は球形(球状カーボン)の形の不連続な活性炭粒子からなること特徴とする請求項1〜16のいずれか一つに記載の吸着濾過材料。
【請求項18】
前記吸着層(4)は、特に活性炭シート状構造の形での活性炭繊維からなることを特徴とする請求項1〜17のいずれか一つに記載の吸着濾過材料。
【請求項19】
前記吸着層(4)は、付加的に少なくとも一つの触媒がしみ込んでおり、そこで使用される触媒は、酵素且つ/又は、銅イオン、銀イオン、カドミウムイオン、白金イオン、パラジウムイオン、亜鉛イオン及び/若しくは水銀イオンである金属イオンであり、前記触媒の量は、吸着層(4)の重量を基礎として、0.05重量%〜12重量%の範囲内、好ましくは1重量%〜10重量%の範囲内、より好ましくは2重量%〜8重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1〜18のいずれか一つに記載の吸着濾過材料。
【請求項20】
前記吸着濾過材料(1)は、さらに、化学毒の通過を抑制するか、少なくとも本質的に化学毒に対して不浸透性である少なくとも一つの薄膜層(6)を具備することを特徴とする請求項1〜19のいずれか一つに記載の吸着濾過材料。
【請求項21】
前記薄膜層(6)は、前記第1の支持層(3)と前記吸着層(6)の間、又は第2の支持層(5)と吸着層(4)の間に配されることを特徴とする請求項20記載の吸着濾過材料。
【請求項22】
前記薄膜層(6)は、少なくとも水及び空気不浸透性であるが水蒸気浸透性であり、且つ/又は、前記薄膜層(6)は連続的で一体であり、又はマイクロポーラスな薄膜であり、且つ/又は、薄膜層の厚さは、1〜500μmの範囲内、好ましくは1〜250μmの範囲内、より好ましくは1〜100μmの範囲内、さらには1〜50μmの範囲内、さらに好ましくは2.5〜30μmの範囲内、最も好ましくは5〜25μmの範囲内であることを特徴とする請求項20又は21記載の吸着濾過材料。
【請求項23】
前記薄膜層(6)は、自己接着性、特に熱粘着性を有し、且つ/又は、前記薄膜層(6)は、前記吸着層(5)を固定するための接着層として働くことをと気宇町とする請求項20〜22のいずれか一つに記載の吸着濾過材料。
【請求項24】
前記薄膜層(6)は、25℃で、厚さ50μmの時に、24時間当たり少なくとも12.5リットル/m、特には24時間当たり少なくとも17.5リットル/m、好ましくは24時間当たり少なくとも20リットル/mの透過度を有し、且つ/又は、吸着濾過材料(1)は、25℃で、厚さ50μmの時に、24時間当たり少なくとも10リットル/m、特には24時間当たり少なくとも15リットル/m、好ましくは24時間当たり少なくとも17.5リットル/mの透過度を有し、且つ/又は、前記薄膜層(6)は、35℃で且つ50μmの厚さで、DIN EN 31 092:1993(1994年2月)及び国際基準ISO11092に従って測定された約25(m・pascal)/watt、特に約20(m・pascal)/watt、好ましくは約13(m・pascal)/wattの水蒸気浸透抵抗Retを有し、且つ/又は、前記吸着濾過材料(1)は、35℃で且つ50μmの厚さで、DIN EN 31 092:1993(1994年2月)及び国際基準ISO11092に従って測定された約30(m・pascal)/watt、特に約25(m・pascal)/watt、好ましくは約20(m・pascal)/wattの水蒸気浸透抵抗Retを有することを特徴とする請求項20〜23のいずれか一つに記載の吸着濾過材料。
【請求項25】
前記薄膜層(6)は、少なくとも本質的に液体、特に水に対して及び/若しくはエアゾールに対して不浸透性であり、又は少なくともそれぞれの通過を抑制し、且つ/又は、前記薄膜層(6)は、プラスチック及び/若しくはポリマーからなり、前記プラスチック及び/若しくはポリマーは、ポリウレタン、ポリエーテルアミド、ポリエステルアミド、ポリテトラフルオロエチレン及び/若しくはセルロースを基礎とするポリマー及び/若しくはそれらの誘導体からなる群から選択されるものであり、特に前記薄膜層(6)は、ポリウレタンを基礎とする薄膜、若しくはポリテトラフルオロエチレンを基礎とする発泡したマイクロポーラスな薄膜であることを特徴とする請求項20〜24のいずれか一つに記載の吸着濾過材料。
【請求項26】
前記薄膜層(6)は、多層の薄膜積層物として及び/若しくは多層の薄膜複合物として構成され、前記薄膜積層物及び/若しくは薄膜複合物は、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの相互に接着された層からなり、及び/若しくは、は、前記薄膜積層物若しくは薄膜複合物は、セルロースを基礎とするポリマーからなるコア層及びコア層に接着され、ポリウレタン、ポリエーテルアミド及び/若しくはポリエステルアミドを基礎とする2つの外側層からなり、セルロースを基礎とするポリマーからなるコア層は、1〜100μm、特には5〜50μm、好ましくは10〜20μmの厚さの薄膜として構成され、且つ/又は、前記コア層に接着される2つの外側層は、1〜100μm、特には5〜50μm、好ましくは5〜10μmの厚さの薄膜として構成されることを特徴とする請求項20〜25のいずれか一つに記載の吸着濾過材料。
【請求項27】
前記吸着濾過材料(1)及び/若しくは前記薄膜層(6)は、化学物質、特にビス(2−クロロエチル)硫化物(マスタードガス、Hd、イエロークロス)に関するバリヤ効果を有し、CRDEC−SP−84010方法2.2に従って測定された厚さ50μmの時の24時間当たり4μg/cm、好ましくは24時間当たり3.5μg/cm、より好ましくは2.5μg/cmの許容浸透率を有することを特徴とする請求項20〜26のいずれか一つに記載の吸着濾過材料。
【請求項28】
吸着濾過材料の使用状態において、前記第1の支持層(3)は、最も外側に配置され、及び/若しくは、化学毒を放出する毒素源に面し、前記第2の支持層(5)は、最も内側に配置され、及び/若しくは化学毒を放出する毒素源から離れて側に面し、且つ、前記薄膜層(6)は、前記第1の支持層(3)と前記吸着層(4)との間の内側に配置され、特に吸着層(4)に関して上流側に配置されることを特徴とする請求項1〜27のいずれか一つに記載の吸着濾過材料。
【請求項29】
前記複数層構造(2)の個々の層(3,4,5,6)は、各々がお互いに接着され、若しくはこれに代えて、少なくとも部分的に相互に重なる非接着部分を有して接着され、且つ/又は、前記複数層構造(2)の個々の層(3,4,5,6)は、複合物を形成することを特徴とする請求項1〜27のいずれか一つに記載の吸着濾過材料。
【請求項30】
請求項1〜29のいずれか一つに記載の吸着濾過材料(1)を使用して製造される、且つ/又は請求項1〜29のいずれか一つに記載の吸着濾過材料(1)からなる防護服、防護手袋、防護靴及び防護カバーである防護用品。
【請求項31】
吸着濾過材料(1)の使用状態において、前記第1の支持層(3)は、最も外側に配置されて、化学毒を放出する毒素源に面し、且つ/又は、防護用品が防護服、特にNBC防護服である場合に、その使用状態において、前記第2の支持層(5)は、最も内側に配置されて、化学毒を放出する毒素源から離れた側で、身体に面する側に配置されることを特徴とする請求項30記載の防護用品。
【請求項32】
好ましくはNBC配備のための防護服、防具手袋、防護靴及び防護カバー等の防護用品を製造するための請求項1〜29のいずれか一つに記載の吸着濾過材料(1)の使用。
【請求項33】
吸着濾過材料(1)の使用状態において、前記第1の支持層(3)は最も外側に配置され、及び/若しくは、吸着濾過材料(1)の使用状態において、前記第1の支持層(3)は、化学毒を放出する毒素源に面する側に位置することを特徴とする請求項32記載の吸着濾過材料(1)の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−521943(P2007−521943A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541807(P2006−541807)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010036
【国際公開番号】WO2005/053838
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(505065467)ブリュッヒャー ゲーエムベーハー (27)
【Fターム(参考)】