吸着装置
【課題】 例え基板が薄い場合でも、ハンドリング時等に容易に破損するのを抑制できる吸着装置を提供する。
【解決手段】 半導体ウェーハWを保持する吸着治具1を吸着パッド10に取り外し可能に支持させ、吸着治具1を、板体2と、板体2に形成される凹み穴3と、凹み穴3を被覆して半導体ウェーハWを保持する変形可能な保持層5と、板体2に設けられて保持層5に被覆された凹み穴3の空気を排気する排気孔6とから構成して凹み穴3に、保持層5用の複数の支持突起4を設ける。また、吸着パッド10を、吸着治具1の板体裏面に重なるパッド11と、パッド11から伸びるアーム14から構成してパッド11に、吸着治具1の板体裏面に対向する対向溝穴12と、吸着治具1の排気孔6に連通する連通溝穴13をそれぞれ設け、パッド11とアーム14には、パッド11の対向溝穴12に連通する給排路15、及びパッド11の連通溝穴13に連通する排出路16を設ける。
【解決手段】 半導体ウェーハWを保持する吸着治具1を吸着パッド10に取り外し可能に支持させ、吸着治具1を、板体2と、板体2に形成される凹み穴3と、凹み穴3を被覆して半導体ウェーハWを保持する変形可能な保持層5と、板体2に設けられて保持層5に被覆された凹み穴3の空気を排気する排気孔6とから構成して凹み穴3に、保持層5用の複数の支持突起4を設ける。また、吸着パッド10を、吸着治具1の板体裏面に重なるパッド11と、パッド11から伸びるアーム14から構成してパッド11に、吸着治具1の板体裏面に対向する対向溝穴12と、吸着治具1の排気孔6に連通する連通溝穴13をそれぞれ設け、パッド11とアーム14には、パッド11の対向溝穴12に連通する給排路15、及びパッド11の連通溝穴13に連通する排出路16を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハのバックグラインド工程やダイシング工程等で使用される吸着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハは、半導体製造の前工程では反らないように厚いことが好ましいが、そのままの厚さでは薄化、小型化、軽量化が要求される近年の半導体パッケージには適さないので、バックグラインド工程と呼ばれる工程でグラインダ装置により裏面が削られ、薄くされた後、次工程に移される(特許文献1参照)。
【0003】
半導体ウェーハをバックグラインド工程で薄くして次工程に移す場合には、先ず、750μm程度の厚さを有する半導体ウェーハWのパターン形成面に保護シート60を粘着して好ましい大きさにカット(図15参照)し、半導体ウェーハWをストッカーである基板収納カセット20Aに収納して図16に示すグラインダ装置61に搬送する。
【0004】
基板収納カセット20Aをグラインダ装置61に搬送したら、このグラインダ装置61のチャックテーブル62に半導体ウェーハWをセットし、チャックテーブル62を回転させて半導体ウェーハWの裏面に粗研削と仕上げ研削とを回転砥石により順次施し、その後、バックグラインドにより50μm程度に薄化された半導体ウェーハWを基板収納カセット20Aに収納したり、洗浄装置63で洗浄する。
【0005】
そして、薄化された半導体ウェーハWをグラインダ装置61から下流にインラインされたストレスリリーフ装置64に搬送ラインで搬送し、半導体ウェーハWの強度が低下した裏面のダメージ層をエッチング液又はポリッシュにより除去して抗折強度を向上させた後、基板収納カセット20Aに半導体ウェーハWを収納すれば、薄化された半導体ウェーハWを基板収納カセット20Aにより次工程に移すことができる(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005‐223359号公報
【特許文献2】特開2000‐100924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来における半導体ウェーハWは、以上のように薄化されて基板収納カセット20Aに単に収納されるが、非常に薄く(例えば、50μm以下の薄さ)、撓みやすく、割れやすいので、ハンドリング等の作業中に簡単に破損してしまうという大きな問題がある。また、弓なりに反ることが少なくないので、以後の作業でハンドリングすることができないという問題もある。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、例え基板が薄い場合でも、ハンドリング時等に容易に破損するのを抑制することのできる吸着装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記課題を解決するため、基板を保持する吸着治具を吸着パッドに取り外し可能に支持させたものであって、
吸着治具は、剛性を有する板体と、この板体の表面に形成される凹部と、この凹部を被覆して基板を着脱自在に粘着保持する変形可能な保持層と、板体に設けられて保持層に被覆された凹部の気体を外部に排気する排気孔とを含み、凹部には、保持層を支持する複数の支持突起を設け、
吸着パッドは、吸着治具の板体裏面に重なるパッドと、このパッドから伸びるアームとを含み、パッドには、吸着治具の板体裏面に対向する対向穴と、吸着治具の排気孔に連通(気体の流れる状態に連なり通す)する連通穴とをそれぞれ設け、パッドとアームのうち少なくともアームには、パッドの対向穴に連通する給排路、及びパッドの連通穴に連通する排出路を設けたことを特徴としている。
【0009】
なお、吸着治具の凹部に保持層の一部を変形させて取り付け、この保持層の変形した一部から板体にかけて吸着パッドの対向穴に連通する貫通部を設けることができる。
また、吸着治具の凹部に保持層の一部を変形させて取り付け、この保持層の変形した一部から板体にかけて吸着パッドの対向穴に連通する貫通部を設け、この貫通部には通気筒を嵌め入れることができる。
また、吸着パッドの給排路を給排装置に接続し、吸着パッドの排出路を負圧源に接続することができる。
【0010】
また、本発明においては上記課題を解決するため、基板収納カセットと、この基板収納カセットに収納可能に構成されるとともに、吸着パッドに支持され、基板を保持する吸着治具とを備えたものであって、
基板収納カセットは、複数の対向壁の間に架設(架け渡して設ける)される棚板と、この棚板に形成される凹部と、この凹部を被覆して基板あるいは吸着治具を着脱自在に粘着保持する可撓性の保持層と、この保持層に被覆された凹部内の気体を外部に排気する排気通路とを含んでなることを特徴としても良い。
【0011】
なお、棚板の凹部に、保持層を支持する複数の突起を間隔をおいて並べ設けることができる。
また、排気通路を負圧源に取り外し可能に接続し、この負圧源を駆動して保持層を変形させることができる。
【0012】
さらに、本発明においては上記課題を解決するため、基板収納カセットと、この基板収納カセットに収納可能に構成されるとともに、吸着パッドに支持され、基板を保持する吸着治具とを備えたものであって、
基板収納カセットは、複数の対向壁の間に架設されて基板あるいは吸着治具を搭載する棚板と、この棚板に形成されて基板あるいは吸着治具に被覆される凹部と、負圧源の駆動に基づき、被覆された凹部内から外部に気体を排気する排気通路とを含み、凹部には、基板あるいは吸着治具を支持する複数の突起を設けたことを特徴としても良い。
【0013】
ここで、特許請求の範囲における基板は、バックグラインドされた厚さ300μm以下の薄い半導体ウェーハ(例えば、口径200mmや300mmのシリコンウェーハ等)が主ではあるが、何らこれに限定されるものではない。例えば、厚い半導体ウェーハでも良いし、1mm以下の薄さが要求されるガラス基板、100μm以下の薄さが要望される可撓性の高密度フレキシブル配線板、液晶セル、あるいはプリント配線板等でも良い。
【0014】
吸着治具や吸着パッドのパッドは、基板と略同じ大きさ、基板よりも僅かに大きい大きさ、あるいは基板よりも僅かに小さい大きさに形成されることが好ましい。吸着治具の板体や凹部は、平面視で円形や多角形等に形成することができる。保持層は、単数のエラストマーからなるものでも良いし、性質(材料、硬度、弾性、粘度等)の異なる積層した複数のエラストマー等とすることもできる。
【0015】
複数の支持突起は、凹部に規則的に配列されるものでも良いし、不規則に配列されるものでも良く、凹部と一体構造あるいは別体として設けることができる。各支持突起は、円錐台形、角柱形、角錐台形等に形成することができ、保持層に接着していても良いし、そうでなくても良い。
【0016】
対向穴と連通穴とは、単数複数を特に問うものではなく、丸穴、楕円形の穴、円弧形の穴、矩形の穴、直線の複数の溝穴が一列に並んだり、X字形に配列された溝穴等でも良い。給排装置には、少なくとも負圧源の他、圧縮機やファン等が含まれる。さらに、負圧源は、例えば各種の真空ポンプや真空ブロワー等からなり、エジェクタ取り付けの有無を特に問うものではない。
【0017】
本発明によれば、吸着装置により基板を保持する場合には、基板の被吸着面に吸着パッドに支持された吸着治具の保持層を重ねて接触させれば、保持層の粘着力により基板を略平らに保持することができる。
また、吸着治具の保持層から基板を取り外したい場合には、凹部内の気体を排気孔により凹部の外に排気すれば良い。すると、気体の排気に伴い、凹部の底方向に保持層が変形して基板との間に隙間を形成し、保持層と基板との接触部分が減少する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、例え半導体ウェーハ等の基板が薄い場合でも、ハンドリング時等に容易に破損することのないような吸着装置を提供することができるという効果がある。また、吸着装置の吸着治具を吸着パッドから取り外すことが可能なので、基板収納カセット、容器、あるいは治具等に基板、吸着治具、又は基板を搭載した吸着治具を適宜収納することができ、これにより、基板の搬送、ハンドリング、保管等の便宜を図ることができる。
【0019】
また、吸着治具の凹部に保持層の一部を変形させて取り付け、この保持層の変形した一部から板体にかけて吸着パッドの対向穴に連通する貫通部を設ければ、基板と保持層の変形した一部との隙間に気体を給排して基板に対する保持力や解除力を高めることができ、これにより、基板の取り付け取り外しを容易にすることができる。
【0020】
また、吸着パッドの給排路を給排装置に接続すれば、吸着治具を吸着パッドに真空吸着したり、取り外すことができる。さらに、吸着パッドの排出路を負圧源に接続すれば、凹部の気体を排気して保持層を変形させ、保持層に粘着した基板を取り外すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における吸着装置は、図1ないし図16に示すように、バックグラインドにより薄化された半導体ウェーハW用の吸着治具1を吸着パッド10に取り外し可能に支持させ、この吸着パッド10により吸着治具1を、半導体製造装置であるグラインダ装置61から基板収納カセット20、洗浄装置63、あるいは次工程であるダイシング工程等に適宜搬送するようにしている。
【0022】
半導体ウェーハWは、図1、図2、図6、図7、図10に示すように、例えば口径300mmのシリコンウェーハからなり、周縁部に結晶方向の判別や整列を容易にするノッチが平面略半楕円形に切り欠かれる。
【0023】
吸着治具1は、図1や図2に示すように、剛性を有する薄い板体2と、この板体2に形成される凹み穴3と、この凹み穴3を被覆して半導体ウェーハWを着脱自在に粘着保持する弾性変形可能な保持層5と、この保持層5に被覆された凹み穴3の空気を排気する排気孔6とを備え、凹み穴3内には、保持層5を支持する複数の支持突起4が並設される。
【0024】
板体2は、所定の材料を使用して半導体ウェーハWと略同じか、あるいは僅かに大きい円板形に形成され、半導体ウェーハWを粘着保持した状態、あるいは粘着保持しない状態で基板収納カセット20に水平に収納される。この板体2の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば板体2に半導体ウェーハWが搭載された場合の撓み量を5mm以下に抑制可能なPC、PP、PE、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、アルミニウム合金、マグネシウム合金、ガラス、ステンレス等があげられる。
【0025】
凹み穴3は、図1ないし図5等に示すように、板体2の表面における周縁部を除く大部分に浅く凹み形成され、半導体ウェーハWよりも僅かに小さい円形に形成される。この凹み穴3の底面には、保持層5を接着支持する複数の支持突起4が隙間をおいて規則的に配列され、各支持突起4が凹み穴3の深さと略同じ長さ・高さの円柱形に形成される。複数の支持突起4は、例えば凹み穴3の底面に成形法、サンドブラスト法、エッチング法等により一体形成される。
【0026】
保持層5は、図1や図2に示すように、可撓性、粘着性、弾性の材料を使用して半導体ウェーハWと略同じか、あるいは僅かに大きい平面円形の柔軟な薄膜に成形され、板体2の表面周縁部に積層して接着されるとともに、各支持突起4の平坦な表面に接着されており、凹み穴3を被覆してその底面との間に空気流通用の空間を区画する。
【0027】
保持層5の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば耐熱性、耐候性、耐水性、剥離性、経時安定性等に優れるシリコーン系、ウレタン系、オレフィン系、フッ素系のエラストマーが使用される。この保持層5には、半導体ウェーハWの保護シート面側又は裏面側が選択的に保持される。
【0028】
排気孔6は、同図に示すように、板体2の外側厚さ方向に丸く穿孔され、保持層5に被覆された凹み穴3内の空気を排気するとともに、この空気の排気により平坦な保持層5を凹み穴3の底面方向に変形させ、保持層5と半導体ウェーハWとの界面に空気流入用の隙間を形成して粘着した半導体ウェーハWの剥離を容易化するよう機能する。
【0029】
吸着パッド10は、同図に示すように、吸着治具1の裏面に接離可能に積層するパッド11と、このパッド11の後部から後方に直線的に伸びる長板形のアーム14とを備え、これらパッド11とアーム14とが所定の成形材料により透明に一体成形されており、アーム14が図示しないロボットに取付具を介しXYZ方向に移動可能、そして回転可能に支持される。
【0030】
パッド11は、半導体ウェーハWや吸着治具1よりも僅かに小さい円板形に形成され、吸着治具1の板体裏面に重なる表面の中心部には、吸着治具1の板体裏面中心部に対向する拡径の対向溝穴12が浅く穿孔されており、表面の周縁部には、吸着治具1の排気孔6に重なって連通する連通溝穴13が深く穿孔される。
【0031】
パッド11からアーム14の内部後方にかけては、パッド11の対向溝穴12に上流端部が連通する給排路15と、パッド11の連通溝穴13に上流端部が連通する排出路16とが互いに交差しないように並べて設けられ、アーム14の後部裏面から露出した給排路15の下流端部が真空ポンプからなる給排装置17に接続されており、アーム14の後部裏面から露出した排出路16の下流端部が真空ポンプからなる負圧源18に接続される。
【0032】
給排装置17は、対向溝穴12内の空気を排気してパッド11やその対向溝穴12に吸着治具1の裏面を真空吸着するよう機能する。また、負圧源18は、半導体ウェーハWの着脱に応じて駆動し、凹み穴3の空間の空気を排気孔6と連通溝穴13を介し外部に排気して保持層5を凹み穴3の底面方向に凹凸に変形させ、保持層5と半導体ウェーハWとの界面に空気流入用の隙間を形成して半導体ウェーハWの剥離を容易化する。
【0033】
基板収納カセット20は、フロントオープンボックスタイプのカセットケース21に内蔵して並べられる複数の棚板31と、各棚板31に形成される凹部である窪み穴32と、この窪み穴32を被覆して半導体ウェーハW又は吸着治具1を着脱自在に粘着保持する弾性変形可能な密着保持層34と、この密着保持層34に被覆された窪み穴32の空気を排気する複数の排気通路35とを備え、バックグラインド工程からその後の工程にかけて使用されるグラインダ装置61等からなる半導体製造装置やそのオープナ50に位置決め搭載される。
【0034】
カセットケース21は、図6ないし図9に示すように、半導体ウェーハW又は吸着治具1の収納に十分な隙間をおいて相対向する左右一対の側壁22を備え、この一対の側壁22の下部間には底板23が水平に架設されるとともに、上端部間には天板24が水平に架設され、開口した背面には縦長の背面壁25が装着されており、正面が開口して薄化された半導体ウェーハWや吸着治具1の出し入れ口として機能する。
【0035】
カセットケース21の側壁22、底板23、天板24、及び背面壁25は、例えば耐衝撃性、耐熱性、耐水性等に優れる透明のPCやPEEK等の成形材料を使用して別々に成形され、ビスやナット等を介して組み立てられる。
【0036】
カセットケース21の側壁22は上下方向に伸びる縦長の板に形成され、底板23の裏面における前部両側と後部中央とには、複数の位置決め具26が底面視で三角形を描くよう配設される。各位置決め具26は、平面略トラック形のブロックに形成され、オープナ50のステージから突出した位置決めピン51に摺接するV溝27が長手方向に切り欠かれており、このV溝27がオープナ50の位置決めピン51に上方から嵌合することにより、基板収納カセット20を高精度に位置決めするよう機能する。
【0037】
カセットケース21の天板24には、RFIDシステムを構築するICタグ28が貼着されるとともに、把持用のハンドル29が着脱自在に装着され、背面壁25には、半導体ウェーハWや密着保持層34の視認を可能とする縦長の観察窓30が選択的に形成される。
【0038】
複数の棚板31は、図6や図7に示すように、カセットケース21の内部上下方向に所定のピッチで配列され、棚板31と棚板31との間には、半導体ウェーハWや吸着治具1の出し入れに支障を来たさない空間が確保される。各棚板31は、所定の材料を使用して半導体ウェーハW、吸着治具1、密着保持層34よりも大きい平面矩形に形成され、カセットケース21の両側壁間にビスやナット等を介し水平に架設される。
【0039】
棚板31の材料としては、特に限定されるものではないが、例えばPES、PAI、PET、PBT、PEN、PEI、PEEK、PPS、ポリアリレート、アルミニウム、マグネシウム、銅、ニッケル、ガラス、セラミックス等があげられる。
【0040】
窪み穴32は、図7や図10に示すように、各棚板31の表面に浅く凹み形成され、半導体ウェーハWや吸着治具1よりも大きい平面矩形を呈する。この窪み穴32の底面には、密着保持層34を下方から支持する複数の突起33が間隔をおき規則的に並設され、各突起33が窪み穴32の深さと略同じ長さ・高さの円柱形に形成される。
【0041】
密着保持層34は、図6、図7、図10に示すように、可撓性、粘着性、弾性の材料を使用して半導体ウェーハWや吸着治具1よりも大きい平面矩形で柔軟な薄膜に成形され、各棚板31の表面に積層して接着されるとともに、各突起33の表面に接着されており、窪み穴32を被覆してその底面との間に空気流通用の空間を区画する。この密着保持層34の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば耐熱性、耐候性、耐水性、剥離性、経時安定性等に優れるシリコーン系、ウレタン系、オレフィン系、フッ素系のエラストマーが使用される。
【0042】
複数の排気通路35は、同図に示すように、棚板31や密着保持層34の数に応じて基板収納カセット20の内部に間隔をおいて形成され、この基板収納カセット20がオープナ50に高精度に位置決め搭載されることにより、オープナ50に内蔵された真空ユニット38に自動的に接続される。
【0043】
各排気通路35は、棚板31の内部に屈曲形成されて窪み穴32に下方から上流端部が連通する第一の通路36と、一の側壁22の内部上下方向に形成されて第一の通路36の棚板側面に開口した下流端部に連通する第二の通路37とを備え、この第二の通路37の下流端部が側壁22の底面に開口して真空ユニット38の接続ノズル39にOリング等を介し着脱自在に接続される。
【0044】
真空ユニット38は、図7に示すように、例えばオープナ50のステージに接続ノズル39を起立状態に露出させた真空ポンプ40やその付属タンク等からなり、吸着パッド10の吸着に応じて駆動し、窪み穴32の空間の空気を外部に排気して平坦な密着保持層34を窪み穴32の底面方向に凹凸に変形させ、密着保持層34と半導体ウェーハW等との界面に空気流入用の隙間を形成して粘着した半導体ウェーハWや吸着治具1の剥離を容易化する。その他の部分については、従来例と同様であるので説明を省略する。
【0045】
上記において、グラインダ装置61によりバックグラインドされ、薄化された半導体ウェーハWを基板収納カセット20の棚板31に移す場合には、先ず、チャックテーブル62に吸着された半導体ウェーハWの裏面からなる被吸着面の略全てに吸着装置の吸着治具1を上方から対向させ、この吸着治具1を降下押圧して保持層5に半導体ウェーハWを粘着保持(図1、図3、図4参照)し、チャックテーブル62の吸着を解除して半導体ウェーハWを吸着装置により基板収納カセット20に搬送する(図5、図6参照)。
【0046】
半導体ウェーハWを基板収納カセット20に搬送したら、密着保持層34の表面上に半導体ウェーハWを僅かな力で押圧して重ね、密着保持層34の粘着力により半導体ウェーハWを安定した平坦な姿勢で密着し、その後、吸着装置の負圧源18を駆動する。すると、凹み穴3の空間の空気が外部に排気され、平坦な保持層5が複数の支持突起4に沿い凹凸に変形し、保持層5と半導体ウェーハWとの界面に空気流入用の隙間が多数形成されて半導体ウェーハWを吸着治具1から取り外すことができる(図2、図7参照)。
【0047】
上記構成によれば、吸着治具1の保持層5が有する粘着力により半導体ウェーハWを隙間なく略平坦に密着支持することができるので、半導体ウェーハWがバックグラインドにより50μm以下に薄化され、脆くなっていても、搬送時やハンドリング時等に簡単に破損することがない。
【0048】
また、薄化された半導体ウェーハWの周縁部がばたついて弓なりに変形したり、湾曲した半導体ウェーハWの周縁部が周囲に干渉するのを防止することができるので、基板収納カセット20に半導体ウェーハWを円滑かつ確実に収納したり、以後の作業におけるハンドリング性を著しく向上させたり、工程間のハンドリングの安全性に大いに資することができる。また、保持層5の粘着力のみにより半導体ウェーハWを長時間密着支持することができるので、半導体ウェーハWを平坦に保持するための専用真空装置等を省略することができ、装置の簡素化や大幅なコスト削減を図ることができる。
【0049】
また、凹み穴3の底面に、保持層5を接着支持する複数の支持突起4を配列するので、保持層5が広範囲に亘って過剰に大きく凹んだり、保持層5の半導体ウェーハWの姿勢が崩れて傾斜したり、位置ずれして脱落するのを確実に防止することができる。また、吸着治具1と吸着パッド10とが固定ではなく、真空吸着により取り外し可能であるので、基板収納カセット20や従来の基板収納カセット20Aに半導体ウェーハWの他、吸着治具1や半導体ウェーハWを搭載した吸着治具1を適宜収納することができ、これにより、半導体ウェーハWの搬送、ハンドリング、又は保管等の便宜を大いに図ることができる。
【0050】
また、基板収納カセット20の密着保持層34が有する粘着力により半導体ウェーハWを隙間なく略平坦に密着支持することができるので、半導体ウェーハWがバックグラインドにより50μm以下に薄化され、脆くても、搬送時やハンドリング時等に簡単に破損するのを防止することが可能になる。
【0051】
また、上記基板収納カセット20によれば、薄化された半導体ウェーハWの周縁部がばたついて弓なりに変形したり、湾曲した半導体ウェーハWの周縁部が周囲に干渉するのを防止することができるので、基板収納カセット20に半導体ウェーハWを円滑かつ確実に収納したり、以後の作業におけるハンドリング性を向上させたり、工程間のハンドリングの安全性に寄与することが可能になる。
【0052】
また、基板収納カセット20の密着保持層34の粘着力のみにより半導体ウェーハWを長時間密着支持することができるので、半導体ウェーハWを保持する専用真空装置等を省略することができ、装置の簡素化やコスト削減を図ることが可能になる。また、窪み穴32の底面に、密着保持層34を接着支持する複数の突起33を配列するので、密着保持層34が広範囲に亘って大きく凹んだり、密着保持層34の半導体ウェーハWの姿勢が崩れたり、位置ずれして脱落するのを防止することが可能になる。
【0053】
さらに、カセットケース21にICタグ28を貼着するので、半導体ウェーハWや基板収納カセット20を非接触で明瞭に識別することができ、しかも、ICタグ28とRFIDシステムのリーダ/ライタとの間に金属以外の障害物(例えば、水や合成樹脂等)が介在しても、確実に交信することが期待できる。
【0054】
次に、図11、図12は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、吸着治具1の凹み穴3の中心部に保持層5の中心部を断面略漏斗形に凹ませて接着し、この保持層5の凹んだ中心部から板体2の中心部厚さ方向にかけて吸着パッド10の対向溝穴12に連通する丸い貫通孔41を穿孔し、給排路15の下流端部を真空ポンプとブロワーからなる給排装置17に接続して空気を排気したり、圧送するようにしている。
【0055】
上記において、グラインダ装置61によりバックグラインドされ、薄化された半導体ウェーハWを基板収納カセット20の棚板31に移す場合には、先ず、チャックテーブル62に吸着された半導体ウェーハWの裏面からなる被吸着面の略全てに吸着装置の吸着治具1を上方から押圧して半導体ウェーハWを粘着保持するとともに、給排装置17を駆動して半導体ウェーハWと保持層5の中心部の間から空気を貫通孔41、対向溝穴12、給排路15を介し外部に排気することにより半導体ウェーハWを吸着保持し、チャックテーブル62の吸着を解除して半導体ウェーハWを基板収納カセット20に搬送する(図11参照)。
【0056】
半導体ウェーハWを基板収納カセット20に搬送したら、密着保持層34の表面上に半導体ウェーハWを僅かな力で押圧して重ね、密着保持層34の粘着力により半導体ウェーハWを安定した平坦な姿勢で密着し、吸着装置の給排装置17と負圧源18とをそれぞれ駆動する。すると、空気が給排装置17から給排路15、対向溝穴12、貫通孔41を順次経由して半導体ウェーハWと保持層5の中心部の間に供給され、これらの間に空気が流入して半導体ウェーハWを吸着治具1から速やかに取り外すことができる(図12参照)。
【0057】
また、凹み穴3の空間の空気が外部に排気され、平坦な保持層5が複数の支持突起4に沿い凹凸に変形し、保持層5と半導体ウェーハWとの界面に空気流入用の隙間が形成されて半導体ウェーハWを吸着治具1から取り外すことができる。これらの際、給排装置17の空気供給力が負圧源18の空気排気力よりも大きいと、吸着パッド10に吸着治具1を真空吸着することが困難になるので、給排装置17の空気供給力を負圧源18の空気排気力未満とすることが好ましい。すなわち、排気孔6の表面積×排出路16の真空圧>対向溝穴12の表面積×給排路15のエア圧であることが好ましい。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0058】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、半導体ウェーハWと保持層5の大きく凹んだ中心部との間で空気を吸引したり、供給するので、半導体ウェーハWの脱着をさらに容易化することができるのは明らかである。
【0059】
次に、図13は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、基板収納カセット20のカセットケース21から背面壁25を省略し、密着保持層34を省略して複数の突起33に半導体ウェーハWや吸着治具1を直接支持させるようにしている。
この場合、カセットケース21に、排気通路35の下流端部に接続した真空ポンプ等の別の負圧源を装着し、この負圧源の駆動に基づき、半導体ウェーハWや吸着治具1を真空吸着するようにしても良い。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0060】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、基板収納カセット20の構成の多様化の他、背面壁25や密着保持層34を省略できるので、部品点数の大幅な削減を図ることができるのは明らかである。
【0061】
次に、図14は本発明の第4の実施形態を示すもので、この場合には、棚板31の表面に、窪み穴32の周面に連通する第一の通路36を略溝形に切り欠くとともに、この第一の通路36を棚板31の側面まで伸ばして側壁22に形成された第二の通路37の上流端部に接続可能とし、第一の通路36を拡大した密着保持層34に被覆させるようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、排気通路35の構成の多様化を図ることができるのは明白である。
【0062】
なお、上記実施形態では吸着パッド10を透明に形成したが、何らこれに限定されるものではなく、例えば不透明や半透明に形成したり、パッド11を平面略多角形等に形成して円板形のプレートを取り付け、このプレートを板体2の裏面に重ねて姿勢を安定化させるようにしても良い。また、基板収納カセット20のカセットケース正面に、着脱自在の蓋体や開閉可能な扉を設けても良いし、カセットケース21の両側壁に、作業者が握持するためのハンドルやフランジをそれぞれ装着しても良い。
【0063】
また、カセットケース21を、棚板31を並べ備えた周知の構成としたり、カセットケース21の両側壁内面に、半導体ウェーハWを支持する左右一対のティースを複数配設して棚板31を省略しても良い。また、窪み穴32の周面に密着保持層34の周縁部を接着支持させ、窪み穴32の底面と密着保持層34との間に空間を区画することもできる。また、排気通路35を、棚板31の内部に形成されて窪み穴32に連通する第一の通路36と、側壁22と底板23の内部に形成されて第一の通路36の下流端部に連通する第二の通路37とから形成し、この第二の通路37の下流端部を底板23の裏面に開口することもできる。
【0064】
また、オープナ50のステージに対して真空ポンプ40のシール付きの接続ノズル39をエアシリンダ等のアクチュエータにより昇降させ、位置決めされた基板収納カセット20の排気通路35の下流端部に真空ポンプ40を接続することもできる。また、基板収納カセット20をバックグラインド工程におけるバックグラインド作業の直後のみに使用しても良い。
【0065】
さらに、バックグラインド工程に、半導体ウェーハWの裏面にダイシング工程で必要なUVテープを貼着する作業や半導体ウェーハWのパターン形成面から保護シート60を剥離する作業が含まれる場合には、その際に使用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る吸着装置の実施形態における半導体ウェーハの粘着保持状態を模式的に示す断面説明図である。
【図2】本発明に係る吸着装置の実施形態における半導体ウェーハの取り外し状態を模式的に示す断面説明図である。
【図3】本発明に係る吸着装置の実施形態における半導体ウェーハ上に吸着装置の吸着治具を対向させた状態を模式的に示す説明図である。
【図4】図3の半導体ウェーハに吸着治具の保持層を密着させた状態を模式的に示す説明図である。
【図5】図4のチャックテーブルの吸着を解除して半導体ウェーハを搬送する状態を模式的に示す説明図である。
【図6】本発明に係る吸着装置の実施形態における基板収納カセット等を模式的に示す一部分解斜視説明図である。
【図7】本発明に係る吸着装置の実施形態における基板収納カセットを模式的に示す断面説明図である。
【図8】図7の基板収納カセットの底面図である。
【図9】図7の基板収納カセットの背面図である。
【図10】本発明に係る吸着装置の実施形態における基板収納カセットの棚板や保持層等を模式的に示す断面説明図である。
【図11】本発明に係る吸着装置の第2の実施形態における半導体ウェーハの粘着保持状態を模式的に示す断面説明図である。
【図12】本発明に係る吸着装置の第2の実施形態における半導体ウェーハの取り外し状態を模式的に示す断面説明図である。
【図13】本発明に係る吸着装置の第3の実施形態における基板収納カセットを模式的に示す断面説明図である。
【図14】本発明に係る吸着装置の第4の実施形態における基板収納カセットの棚板や保持層等を模式的に示す断面説明図である。
【図15】半導体ウェーハのパターン形成面に保護シートを粘着してカットする状態を示す説明図である。
【図16】グラインダ装置等を示す平面説明図である。
【符号の説明】
【0067】
1 吸着治具
2 板体
3 凹み穴(凹部)
4 支持突起
5 保持層
6 排気孔
10 吸着パッド
11 パッド
12 対向溝穴(対向穴)
13 連通溝穴(連通穴)
14 アーム
15 給排路
16 排出路
17 給排装置
18 負圧源
20 基板収納カセット
21 カセットケース
41 貫通孔(貫通部)
61 グラインダ装置
62 チャックテーブル
W 半導体ウェーハ(基板)
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハのバックグラインド工程やダイシング工程等で使用される吸着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハは、半導体製造の前工程では反らないように厚いことが好ましいが、そのままの厚さでは薄化、小型化、軽量化が要求される近年の半導体パッケージには適さないので、バックグラインド工程と呼ばれる工程でグラインダ装置により裏面が削られ、薄くされた後、次工程に移される(特許文献1参照)。
【0003】
半導体ウェーハをバックグラインド工程で薄くして次工程に移す場合には、先ず、750μm程度の厚さを有する半導体ウェーハWのパターン形成面に保護シート60を粘着して好ましい大きさにカット(図15参照)し、半導体ウェーハWをストッカーである基板収納カセット20Aに収納して図16に示すグラインダ装置61に搬送する。
【0004】
基板収納カセット20Aをグラインダ装置61に搬送したら、このグラインダ装置61のチャックテーブル62に半導体ウェーハWをセットし、チャックテーブル62を回転させて半導体ウェーハWの裏面に粗研削と仕上げ研削とを回転砥石により順次施し、その後、バックグラインドにより50μm程度に薄化された半導体ウェーハWを基板収納カセット20Aに収納したり、洗浄装置63で洗浄する。
【0005】
そして、薄化された半導体ウェーハWをグラインダ装置61から下流にインラインされたストレスリリーフ装置64に搬送ラインで搬送し、半導体ウェーハWの強度が低下した裏面のダメージ層をエッチング液又はポリッシュにより除去して抗折強度を向上させた後、基板収納カセット20Aに半導体ウェーハWを収納すれば、薄化された半導体ウェーハWを基板収納カセット20Aにより次工程に移すことができる(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005‐223359号公報
【特許文献2】特開2000‐100924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来における半導体ウェーハWは、以上のように薄化されて基板収納カセット20Aに単に収納されるが、非常に薄く(例えば、50μm以下の薄さ)、撓みやすく、割れやすいので、ハンドリング等の作業中に簡単に破損してしまうという大きな問題がある。また、弓なりに反ることが少なくないので、以後の作業でハンドリングすることができないという問題もある。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、例え基板が薄い場合でも、ハンドリング時等に容易に破損するのを抑制することのできる吸着装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記課題を解決するため、基板を保持する吸着治具を吸着パッドに取り外し可能に支持させたものであって、
吸着治具は、剛性を有する板体と、この板体の表面に形成される凹部と、この凹部を被覆して基板を着脱自在に粘着保持する変形可能な保持層と、板体に設けられて保持層に被覆された凹部の気体を外部に排気する排気孔とを含み、凹部には、保持層を支持する複数の支持突起を設け、
吸着パッドは、吸着治具の板体裏面に重なるパッドと、このパッドから伸びるアームとを含み、パッドには、吸着治具の板体裏面に対向する対向穴と、吸着治具の排気孔に連通(気体の流れる状態に連なり通す)する連通穴とをそれぞれ設け、パッドとアームのうち少なくともアームには、パッドの対向穴に連通する給排路、及びパッドの連通穴に連通する排出路を設けたことを特徴としている。
【0009】
なお、吸着治具の凹部に保持層の一部を変形させて取り付け、この保持層の変形した一部から板体にかけて吸着パッドの対向穴に連通する貫通部を設けることができる。
また、吸着治具の凹部に保持層の一部を変形させて取り付け、この保持層の変形した一部から板体にかけて吸着パッドの対向穴に連通する貫通部を設け、この貫通部には通気筒を嵌め入れることができる。
また、吸着パッドの給排路を給排装置に接続し、吸着パッドの排出路を負圧源に接続することができる。
【0010】
また、本発明においては上記課題を解決するため、基板収納カセットと、この基板収納カセットに収納可能に構成されるとともに、吸着パッドに支持され、基板を保持する吸着治具とを備えたものであって、
基板収納カセットは、複数の対向壁の間に架設(架け渡して設ける)される棚板と、この棚板に形成される凹部と、この凹部を被覆して基板あるいは吸着治具を着脱自在に粘着保持する可撓性の保持層と、この保持層に被覆された凹部内の気体を外部に排気する排気通路とを含んでなることを特徴としても良い。
【0011】
なお、棚板の凹部に、保持層を支持する複数の突起を間隔をおいて並べ設けることができる。
また、排気通路を負圧源に取り外し可能に接続し、この負圧源を駆動して保持層を変形させることができる。
【0012】
さらに、本発明においては上記課題を解決するため、基板収納カセットと、この基板収納カセットに収納可能に構成されるとともに、吸着パッドに支持され、基板を保持する吸着治具とを備えたものであって、
基板収納カセットは、複数の対向壁の間に架設されて基板あるいは吸着治具を搭載する棚板と、この棚板に形成されて基板あるいは吸着治具に被覆される凹部と、負圧源の駆動に基づき、被覆された凹部内から外部に気体を排気する排気通路とを含み、凹部には、基板あるいは吸着治具を支持する複数の突起を設けたことを特徴としても良い。
【0013】
ここで、特許請求の範囲における基板は、バックグラインドされた厚さ300μm以下の薄い半導体ウェーハ(例えば、口径200mmや300mmのシリコンウェーハ等)が主ではあるが、何らこれに限定されるものではない。例えば、厚い半導体ウェーハでも良いし、1mm以下の薄さが要求されるガラス基板、100μm以下の薄さが要望される可撓性の高密度フレキシブル配線板、液晶セル、あるいはプリント配線板等でも良い。
【0014】
吸着治具や吸着パッドのパッドは、基板と略同じ大きさ、基板よりも僅かに大きい大きさ、あるいは基板よりも僅かに小さい大きさに形成されることが好ましい。吸着治具の板体や凹部は、平面視で円形や多角形等に形成することができる。保持層は、単数のエラストマーからなるものでも良いし、性質(材料、硬度、弾性、粘度等)の異なる積層した複数のエラストマー等とすることもできる。
【0015】
複数の支持突起は、凹部に規則的に配列されるものでも良いし、不規則に配列されるものでも良く、凹部と一体構造あるいは別体として設けることができる。各支持突起は、円錐台形、角柱形、角錐台形等に形成することができ、保持層に接着していても良いし、そうでなくても良い。
【0016】
対向穴と連通穴とは、単数複数を特に問うものではなく、丸穴、楕円形の穴、円弧形の穴、矩形の穴、直線の複数の溝穴が一列に並んだり、X字形に配列された溝穴等でも良い。給排装置には、少なくとも負圧源の他、圧縮機やファン等が含まれる。さらに、負圧源は、例えば各種の真空ポンプや真空ブロワー等からなり、エジェクタ取り付けの有無を特に問うものではない。
【0017】
本発明によれば、吸着装置により基板を保持する場合には、基板の被吸着面に吸着パッドに支持された吸着治具の保持層を重ねて接触させれば、保持層の粘着力により基板を略平らに保持することができる。
また、吸着治具の保持層から基板を取り外したい場合には、凹部内の気体を排気孔により凹部の外に排気すれば良い。すると、気体の排気に伴い、凹部の底方向に保持層が変形して基板との間に隙間を形成し、保持層と基板との接触部分が減少する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、例え半導体ウェーハ等の基板が薄い場合でも、ハンドリング時等に容易に破損することのないような吸着装置を提供することができるという効果がある。また、吸着装置の吸着治具を吸着パッドから取り外すことが可能なので、基板収納カセット、容器、あるいは治具等に基板、吸着治具、又は基板を搭載した吸着治具を適宜収納することができ、これにより、基板の搬送、ハンドリング、保管等の便宜を図ることができる。
【0019】
また、吸着治具の凹部に保持層の一部を変形させて取り付け、この保持層の変形した一部から板体にかけて吸着パッドの対向穴に連通する貫通部を設ければ、基板と保持層の変形した一部との隙間に気体を給排して基板に対する保持力や解除力を高めることができ、これにより、基板の取り付け取り外しを容易にすることができる。
【0020】
また、吸着パッドの給排路を給排装置に接続すれば、吸着治具を吸着パッドに真空吸着したり、取り外すことができる。さらに、吸着パッドの排出路を負圧源に接続すれば、凹部の気体を排気して保持層を変形させ、保持層に粘着した基板を取り外すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における吸着装置は、図1ないし図16に示すように、バックグラインドにより薄化された半導体ウェーハW用の吸着治具1を吸着パッド10に取り外し可能に支持させ、この吸着パッド10により吸着治具1を、半導体製造装置であるグラインダ装置61から基板収納カセット20、洗浄装置63、あるいは次工程であるダイシング工程等に適宜搬送するようにしている。
【0022】
半導体ウェーハWは、図1、図2、図6、図7、図10に示すように、例えば口径300mmのシリコンウェーハからなり、周縁部に結晶方向の判別や整列を容易にするノッチが平面略半楕円形に切り欠かれる。
【0023】
吸着治具1は、図1や図2に示すように、剛性を有する薄い板体2と、この板体2に形成される凹み穴3と、この凹み穴3を被覆して半導体ウェーハWを着脱自在に粘着保持する弾性変形可能な保持層5と、この保持層5に被覆された凹み穴3の空気を排気する排気孔6とを備え、凹み穴3内には、保持層5を支持する複数の支持突起4が並設される。
【0024】
板体2は、所定の材料を使用して半導体ウェーハWと略同じか、あるいは僅かに大きい円板形に形成され、半導体ウェーハWを粘着保持した状態、あるいは粘着保持しない状態で基板収納カセット20に水平に収納される。この板体2の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば板体2に半導体ウェーハWが搭載された場合の撓み量を5mm以下に抑制可能なPC、PP、PE、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、アルミニウム合金、マグネシウム合金、ガラス、ステンレス等があげられる。
【0025】
凹み穴3は、図1ないし図5等に示すように、板体2の表面における周縁部を除く大部分に浅く凹み形成され、半導体ウェーハWよりも僅かに小さい円形に形成される。この凹み穴3の底面には、保持層5を接着支持する複数の支持突起4が隙間をおいて規則的に配列され、各支持突起4が凹み穴3の深さと略同じ長さ・高さの円柱形に形成される。複数の支持突起4は、例えば凹み穴3の底面に成形法、サンドブラスト法、エッチング法等により一体形成される。
【0026】
保持層5は、図1や図2に示すように、可撓性、粘着性、弾性の材料を使用して半導体ウェーハWと略同じか、あるいは僅かに大きい平面円形の柔軟な薄膜に成形され、板体2の表面周縁部に積層して接着されるとともに、各支持突起4の平坦な表面に接着されており、凹み穴3を被覆してその底面との間に空気流通用の空間を区画する。
【0027】
保持層5の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば耐熱性、耐候性、耐水性、剥離性、経時安定性等に優れるシリコーン系、ウレタン系、オレフィン系、フッ素系のエラストマーが使用される。この保持層5には、半導体ウェーハWの保護シート面側又は裏面側が選択的に保持される。
【0028】
排気孔6は、同図に示すように、板体2の外側厚さ方向に丸く穿孔され、保持層5に被覆された凹み穴3内の空気を排気するとともに、この空気の排気により平坦な保持層5を凹み穴3の底面方向に変形させ、保持層5と半導体ウェーハWとの界面に空気流入用の隙間を形成して粘着した半導体ウェーハWの剥離を容易化するよう機能する。
【0029】
吸着パッド10は、同図に示すように、吸着治具1の裏面に接離可能に積層するパッド11と、このパッド11の後部から後方に直線的に伸びる長板形のアーム14とを備え、これらパッド11とアーム14とが所定の成形材料により透明に一体成形されており、アーム14が図示しないロボットに取付具を介しXYZ方向に移動可能、そして回転可能に支持される。
【0030】
パッド11は、半導体ウェーハWや吸着治具1よりも僅かに小さい円板形に形成され、吸着治具1の板体裏面に重なる表面の中心部には、吸着治具1の板体裏面中心部に対向する拡径の対向溝穴12が浅く穿孔されており、表面の周縁部には、吸着治具1の排気孔6に重なって連通する連通溝穴13が深く穿孔される。
【0031】
パッド11からアーム14の内部後方にかけては、パッド11の対向溝穴12に上流端部が連通する給排路15と、パッド11の連通溝穴13に上流端部が連通する排出路16とが互いに交差しないように並べて設けられ、アーム14の後部裏面から露出した給排路15の下流端部が真空ポンプからなる給排装置17に接続されており、アーム14の後部裏面から露出した排出路16の下流端部が真空ポンプからなる負圧源18に接続される。
【0032】
給排装置17は、対向溝穴12内の空気を排気してパッド11やその対向溝穴12に吸着治具1の裏面を真空吸着するよう機能する。また、負圧源18は、半導体ウェーハWの着脱に応じて駆動し、凹み穴3の空間の空気を排気孔6と連通溝穴13を介し外部に排気して保持層5を凹み穴3の底面方向に凹凸に変形させ、保持層5と半導体ウェーハWとの界面に空気流入用の隙間を形成して半導体ウェーハWの剥離を容易化する。
【0033】
基板収納カセット20は、フロントオープンボックスタイプのカセットケース21に内蔵して並べられる複数の棚板31と、各棚板31に形成される凹部である窪み穴32と、この窪み穴32を被覆して半導体ウェーハW又は吸着治具1を着脱自在に粘着保持する弾性変形可能な密着保持層34と、この密着保持層34に被覆された窪み穴32の空気を排気する複数の排気通路35とを備え、バックグラインド工程からその後の工程にかけて使用されるグラインダ装置61等からなる半導体製造装置やそのオープナ50に位置決め搭載される。
【0034】
カセットケース21は、図6ないし図9に示すように、半導体ウェーハW又は吸着治具1の収納に十分な隙間をおいて相対向する左右一対の側壁22を備え、この一対の側壁22の下部間には底板23が水平に架設されるとともに、上端部間には天板24が水平に架設され、開口した背面には縦長の背面壁25が装着されており、正面が開口して薄化された半導体ウェーハWや吸着治具1の出し入れ口として機能する。
【0035】
カセットケース21の側壁22、底板23、天板24、及び背面壁25は、例えば耐衝撃性、耐熱性、耐水性等に優れる透明のPCやPEEK等の成形材料を使用して別々に成形され、ビスやナット等を介して組み立てられる。
【0036】
カセットケース21の側壁22は上下方向に伸びる縦長の板に形成され、底板23の裏面における前部両側と後部中央とには、複数の位置決め具26が底面視で三角形を描くよう配設される。各位置決め具26は、平面略トラック形のブロックに形成され、オープナ50のステージから突出した位置決めピン51に摺接するV溝27が長手方向に切り欠かれており、このV溝27がオープナ50の位置決めピン51に上方から嵌合することにより、基板収納カセット20を高精度に位置決めするよう機能する。
【0037】
カセットケース21の天板24には、RFIDシステムを構築するICタグ28が貼着されるとともに、把持用のハンドル29が着脱自在に装着され、背面壁25には、半導体ウェーハWや密着保持層34の視認を可能とする縦長の観察窓30が選択的に形成される。
【0038】
複数の棚板31は、図6や図7に示すように、カセットケース21の内部上下方向に所定のピッチで配列され、棚板31と棚板31との間には、半導体ウェーハWや吸着治具1の出し入れに支障を来たさない空間が確保される。各棚板31は、所定の材料を使用して半導体ウェーハW、吸着治具1、密着保持層34よりも大きい平面矩形に形成され、カセットケース21の両側壁間にビスやナット等を介し水平に架設される。
【0039】
棚板31の材料としては、特に限定されるものではないが、例えばPES、PAI、PET、PBT、PEN、PEI、PEEK、PPS、ポリアリレート、アルミニウム、マグネシウム、銅、ニッケル、ガラス、セラミックス等があげられる。
【0040】
窪み穴32は、図7や図10に示すように、各棚板31の表面に浅く凹み形成され、半導体ウェーハWや吸着治具1よりも大きい平面矩形を呈する。この窪み穴32の底面には、密着保持層34を下方から支持する複数の突起33が間隔をおき規則的に並設され、各突起33が窪み穴32の深さと略同じ長さ・高さの円柱形に形成される。
【0041】
密着保持層34は、図6、図7、図10に示すように、可撓性、粘着性、弾性の材料を使用して半導体ウェーハWや吸着治具1よりも大きい平面矩形で柔軟な薄膜に成形され、各棚板31の表面に積層して接着されるとともに、各突起33の表面に接着されており、窪み穴32を被覆してその底面との間に空気流通用の空間を区画する。この密着保持層34の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば耐熱性、耐候性、耐水性、剥離性、経時安定性等に優れるシリコーン系、ウレタン系、オレフィン系、フッ素系のエラストマーが使用される。
【0042】
複数の排気通路35は、同図に示すように、棚板31や密着保持層34の数に応じて基板収納カセット20の内部に間隔をおいて形成され、この基板収納カセット20がオープナ50に高精度に位置決め搭載されることにより、オープナ50に内蔵された真空ユニット38に自動的に接続される。
【0043】
各排気通路35は、棚板31の内部に屈曲形成されて窪み穴32に下方から上流端部が連通する第一の通路36と、一の側壁22の内部上下方向に形成されて第一の通路36の棚板側面に開口した下流端部に連通する第二の通路37とを備え、この第二の通路37の下流端部が側壁22の底面に開口して真空ユニット38の接続ノズル39にOリング等を介し着脱自在に接続される。
【0044】
真空ユニット38は、図7に示すように、例えばオープナ50のステージに接続ノズル39を起立状態に露出させた真空ポンプ40やその付属タンク等からなり、吸着パッド10の吸着に応じて駆動し、窪み穴32の空間の空気を外部に排気して平坦な密着保持層34を窪み穴32の底面方向に凹凸に変形させ、密着保持層34と半導体ウェーハW等との界面に空気流入用の隙間を形成して粘着した半導体ウェーハWや吸着治具1の剥離を容易化する。その他の部分については、従来例と同様であるので説明を省略する。
【0045】
上記において、グラインダ装置61によりバックグラインドされ、薄化された半導体ウェーハWを基板収納カセット20の棚板31に移す場合には、先ず、チャックテーブル62に吸着された半導体ウェーハWの裏面からなる被吸着面の略全てに吸着装置の吸着治具1を上方から対向させ、この吸着治具1を降下押圧して保持層5に半導体ウェーハWを粘着保持(図1、図3、図4参照)し、チャックテーブル62の吸着を解除して半導体ウェーハWを吸着装置により基板収納カセット20に搬送する(図5、図6参照)。
【0046】
半導体ウェーハWを基板収納カセット20に搬送したら、密着保持層34の表面上に半導体ウェーハWを僅かな力で押圧して重ね、密着保持層34の粘着力により半導体ウェーハWを安定した平坦な姿勢で密着し、その後、吸着装置の負圧源18を駆動する。すると、凹み穴3の空間の空気が外部に排気され、平坦な保持層5が複数の支持突起4に沿い凹凸に変形し、保持層5と半導体ウェーハWとの界面に空気流入用の隙間が多数形成されて半導体ウェーハWを吸着治具1から取り外すことができる(図2、図7参照)。
【0047】
上記構成によれば、吸着治具1の保持層5が有する粘着力により半導体ウェーハWを隙間なく略平坦に密着支持することができるので、半導体ウェーハWがバックグラインドにより50μm以下に薄化され、脆くなっていても、搬送時やハンドリング時等に簡単に破損することがない。
【0048】
また、薄化された半導体ウェーハWの周縁部がばたついて弓なりに変形したり、湾曲した半導体ウェーハWの周縁部が周囲に干渉するのを防止することができるので、基板収納カセット20に半導体ウェーハWを円滑かつ確実に収納したり、以後の作業におけるハンドリング性を著しく向上させたり、工程間のハンドリングの安全性に大いに資することができる。また、保持層5の粘着力のみにより半導体ウェーハWを長時間密着支持することができるので、半導体ウェーハWを平坦に保持するための専用真空装置等を省略することができ、装置の簡素化や大幅なコスト削減を図ることができる。
【0049】
また、凹み穴3の底面に、保持層5を接着支持する複数の支持突起4を配列するので、保持層5が広範囲に亘って過剰に大きく凹んだり、保持層5の半導体ウェーハWの姿勢が崩れて傾斜したり、位置ずれして脱落するのを確実に防止することができる。また、吸着治具1と吸着パッド10とが固定ではなく、真空吸着により取り外し可能であるので、基板収納カセット20や従来の基板収納カセット20Aに半導体ウェーハWの他、吸着治具1や半導体ウェーハWを搭載した吸着治具1を適宜収納することができ、これにより、半導体ウェーハWの搬送、ハンドリング、又は保管等の便宜を大いに図ることができる。
【0050】
また、基板収納カセット20の密着保持層34が有する粘着力により半導体ウェーハWを隙間なく略平坦に密着支持することができるので、半導体ウェーハWがバックグラインドにより50μm以下に薄化され、脆くても、搬送時やハンドリング時等に簡単に破損するのを防止することが可能になる。
【0051】
また、上記基板収納カセット20によれば、薄化された半導体ウェーハWの周縁部がばたついて弓なりに変形したり、湾曲した半導体ウェーハWの周縁部が周囲に干渉するのを防止することができるので、基板収納カセット20に半導体ウェーハWを円滑かつ確実に収納したり、以後の作業におけるハンドリング性を向上させたり、工程間のハンドリングの安全性に寄与することが可能になる。
【0052】
また、基板収納カセット20の密着保持層34の粘着力のみにより半導体ウェーハWを長時間密着支持することができるので、半導体ウェーハWを保持する専用真空装置等を省略することができ、装置の簡素化やコスト削減を図ることが可能になる。また、窪み穴32の底面に、密着保持層34を接着支持する複数の突起33を配列するので、密着保持層34が広範囲に亘って大きく凹んだり、密着保持層34の半導体ウェーハWの姿勢が崩れたり、位置ずれして脱落するのを防止することが可能になる。
【0053】
さらに、カセットケース21にICタグ28を貼着するので、半導体ウェーハWや基板収納カセット20を非接触で明瞭に識別することができ、しかも、ICタグ28とRFIDシステムのリーダ/ライタとの間に金属以外の障害物(例えば、水や合成樹脂等)が介在しても、確実に交信することが期待できる。
【0054】
次に、図11、図12は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、吸着治具1の凹み穴3の中心部に保持層5の中心部を断面略漏斗形に凹ませて接着し、この保持層5の凹んだ中心部から板体2の中心部厚さ方向にかけて吸着パッド10の対向溝穴12に連通する丸い貫通孔41を穿孔し、給排路15の下流端部を真空ポンプとブロワーからなる給排装置17に接続して空気を排気したり、圧送するようにしている。
【0055】
上記において、グラインダ装置61によりバックグラインドされ、薄化された半導体ウェーハWを基板収納カセット20の棚板31に移す場合には、先ず、チャックテーブル62に吸着された半導体ウェーハWの裏面からなる被吸着面の略全てに吸着装置の吸着治具1を上方から押圧して半導体ウェーハWを粘着保持するとともに、給排装置17を駆動して半導体ウェーハWと保持層5の中心部の間から空気を貫通孔41、対向溝穴12、給排路15を介し外部に排気することにより半導体ウェーハWを吸着保持し、チャックテーブル62の吸着を解除して半導体ウェーハWを基板収納カセット20に搬送する(図11参照)。
【0056】
半導体ウェーハWを基板収納カセット20に搬送したら、密着保持層34の表面上に半導体ウェーハWを僅かな力で押圧して重ね、密着保持層34の粘着力により半導体ウェーハWを安定した平坦な姿勢で密着し、吸着装置の給排装置17と負圧源18とをそれぞれ駆動する。すると、空気が給排装置17から給排路15、対向溝穴12、貫通孔41を順次経由して半導体ウェーハWと保持層5の中心部の間に供給され、これらの間に空気が流入して半導体ウェーハWを吸着治具1から速やかに取り外すことができる(図12参照)。
【0057】
また、凹み穴3の空間の空気が外部に排気され、平坦な保持層5が複数の支持突起4に沿い凹凸に変形し、保持層5と半導体ウェーハWとの界面に空気流入用の隙間が形成されて半導体ウェーハWを吸着治具1から取り外すことができる。これらの際、給排装置17の空気供給力が負圧源18の空気排気力よりも大きいと、吸着パッド10に吸着治具1を真空吸着することが困難になるので、給排装置17の空気供給力を負圧源18の空気排気力未満とすることが好ましい。すなわち、排気孔6の表面積×排出路16の真空圧>対向溝穴12の表面積×給排路15のエア圧であることが好ましい。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0058】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、半導体ウェーハWと保持層5の大きく凹んだ中心部との間で空気を吸引したり、供給するので、半導体ウェーハWの脱着をさらに容易化することができるのは明らかである。
【0059】
次に、図13は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、基板収納カセット20のカセットケース21から背面壁25を省略し、密着保持層34を省略して複数の突起33に半導体ウェーハWや吸着治具1を直接支持させるようにしている。
この場合、カセットケース21に、排気通路35の下流端部に接続した真空ポンプ等の別の負圧源を装着し、この負圧源の駆動に基づき、半導体ウェーハWや吸着治具1を真空吸着するようにしても良い。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0060】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、基板収納カセット20の構成の多様化の他、背面壁25や密着保持層34を省略できるので、部品点数の大幅な削減を図ることができるのは明らかである。
【0061】
次に、図14は本発明の第4の実施形態を示すもので、この場合には、棚板31の表面に、窪み穴32の周面に連通する第一の通路36を略溝形に切り欠くとともに、この第一の通路36を棚板31の側面まで伸ばして側壁22に形成された第二の通路37の上流端部に接続可能とし、第一の通路36を拡大した密着保持層34に被覆させるようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、排気通路35の構成の多様化を図ることができるのは明白である。
【0062】
なお、上記実施形態では吸着パッド10を透明に形成したが、何らこれに限定されるものではなく、例えば不透明や半透明に形成したり、パッド11を平面略多角形等に形成して円板形のプレートを取り付け、このプレートを板体2の裏面に重ねて姿勢を安定化させるようにしても良い。また、基板収納カセット20のカセットケース正面に、着脱自在の蓋体や開閉可能な扉を設けても良いし、カセットケース21の両側壁に、作業者が握持するためのハンドルやフランジをそれぞれ装着しても良い。
【0063】
また、カセットケース21を、棚板31を並べ備えた周知の構成としたり、カセットケース21の両側壁内面に、半導体ウェーハWを支持する左右一対のティースを複数配設して棚板31を省略しても良い。また、窪み穴32の周面に密着保持層34の周縁部を接着支持させ、窪み穴32の底面と密着保持層34との間に空間を区画することもできる。また、排気通路35を、棚板31の内部に形成されて窪み穴32に連通する第一の通路36と、側壁22と底板23の内部に形成されて第一の通路36の下流端部に連通する第二の通路37とから形成し、この第二の通路37の下流端部を底板23の裏面に開口することもできる。
【0064】
また、オープナ50のステージに対して真空ポンプ40のシール付きの接続ノズル39をエアシリンダ等のアクチュエータにより昇降させ、位置決めされた基板収納カセット20の排気通路35の下流端部に真空ポンプ40を接続することもできる。また、基板収納カセット20をバックグラインド工程におけるバックグラインド作業の直後のみに使用しても良い。
【0065】
さらに、バックグラインド工程に、半導体ウェーハWの裏面にダイシング工程で必要なUVテープを貼着する作業や半導体ウェーハWのパターン形成面から保護シート60を剥離する作業が含まれる場合には、その際に使用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る吸着装置の実施形態における半導体ウェーハの粘着保持状態を模式的に示す断面説明図である。
【図2】本発明に係る吸着装置の実施形態における半導体ウェーハの取り外し状態を模式的に示す断面説明図である。
【図3】本発明に係る吸着装置の実施形態における半導体ウェーハ上に吸着装置の吸着治具を対向させた状態を模式的に示す説明図である。
【図4】図3の半導体ウェーハに吸着治具の保持層を密着させた状態を模式的に示す説明図である。
【図5】図4のチャックテーブルの吸着を解除して半導体ウェーハを搬送する状態を模式的に示す説明図である。
【図6】本発明に係る吸着装置の実施形態における基板収納カセット等を模式的に示す一部分解斜視説明図である。
【図7】本発明に係る吸着装置の実施形態における基板収納カセットを模式的に示す断面説明図である。
【図8】図7の基板収納カセットの底面図である。
【図9】図7の基板収納カセットの背面図である。
【図10】本発明に係る吸着装置の実施形態における基板収納カセットの棚板や保持層等を模式的に示す断面説明図である。
【図11】本発明に係る吸着装置の第2の実施形態における半導体ウェーハの粘着保持状態を模式的に示す断面説明図である。
【図12】本発明に係る吸着装置の第2の実施形態における半導体ウェーハの取り外し状態を模式的に示す断面説明図である。
【図13】本発明に係る吸着装置の第3の実施形態における基板収納カセットを模式的に示す断面説明図である。
【図14】本発明に係る吸着装置の第4の実施形態における基板収納カセットの棚板や保持層等を模式的に示す断面説明図である。
【図15】半導体ウェーハのパターン形成面に保護シートを粘着してカットする状態を示す説明図である。
【図16】グラインダ装置等を示す平面説明図である。
【符号の説明】
【0067】
1 吸着治具
2 板体
3 凹み穴(凹部)
4 支持突起
5 保持層
6 排気孔
10 吸着パッド
11 パッド
12 対向溝穴(対向穴)
13 連通溝穴(連通穴)
14 アーム
15 給排路
16 排出路
17 給排装置
18 負圧源
20 基板収納カセット
21 カセットケース
41 貫通孔(貫通部)
61 グラインダ装置
62 チャックテーブル
W 半導体ウェーハ(基板)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する吸着治具を吸着パッドに取り外し可能に支持させた吸着装置であって、
吸着治具は、剛性を有する板体と、この板体の表面に形成される凹部と、この凹部を被覆して基板を着脱自在に粘着保持する変形可能な保持層と、板体に設けられて保持層に被覆された凹部の気体を外部に排気する排気孔とを含み、凹部には、保持層を支持する複数の支持突起を設け、
吸着パッドは、吸着治具の板体裏面に重なるパッドと、このパッドから伸びるアームとを含み、パッドには、吸着治具の板体裏面に対向する対向穴と、吸着治具の排気孔に連通する連通穴とをそれぞれ設け、パッドとアームのうち少なくともアームには、パッドの対向穴に連通する給排路、及びパッドの連通穴に連通する排出路を設けたことを特徴とする吸着装置。
【請求項2】
吸着治具の凹部に保持層の一部を変形させて取り付け、この保持層の変形した一部から板体にかけて吸着パッドの対向穴に連通する貫通部を設けた請求項1記載の吸着装置。
【請求項3】
吸着パッドの給排路を給排装置に接続し、吸着パッドの排出路を負圧源に接続した請求項1又は2記載の吸着装置。
【請求項1】
基板を保持する吸着治具を吸着パッドに取り外し可能に支持させた吸着装置であって、
吸着治具は、剛性を有する板体と、この板体の表面に形成される凹部と、この凹部を被覆して基板を着脱自在に粘着保持する変形可能な保持層と、板体に設けられて保持層に被覆された凹部の気体を外部に排気する排気孔とを含み、凹部には、保持層を支持する複数の支持突起を設け、
吸着パッドは、吸着治具の板体裏面に重なるパッドと、このパッドから伸びるアームとを含み、パッドには、吸着治具の板体裏面に対向する対向穴と、吸着治具の排気孔に連通する連通穴とをそれぞれ設け、パッドとアームのうち少なくともアームには、パッドの対向穴に連通する給排路、及びパッドの連通穴に連通する排出路を設けたことを特徴とする吸着装置。
【請求項2】
吸着治具の凹部に保持層の一部を変形させて取り付け、この保持層の変形した一部から板体にかけて吸着パッドの対向穴に連通する貫通部を設けた請求項1記載の吸着装置。
【請求項3】
吸着パッドの給排路を給排装置に接続し、吸着パッドの排出路を負圧源に接続した請求項1又は2記載の吸着装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−157847(P2007−157847A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348266(P2005−348266)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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