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吸着装置
説明

吸着装置

【課題】凹凸を有する対象物に対しても吸着可能な吸着装置を提供する。
【解決手段】吸着装置100は、複数の吸着部10を有する。弾性中空体12は、その内部空間14がポンプと連通される。弾性中空体12は、(1)外部からの圧力に応じて変形可能であり、かつ(2)内部空間14に負圧が供給された状態において、弾性中空体12の複数の吸着部10それぞれに対応する吸着部分16が内側に変形し、各吸着部分16を囲む部分18が実質的に内側に変形しないように拘束されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物体(ワーク)を運搬する運搬機構や、物体を壁面などに固定させる用途に、吸着装置が利用される。吸着装置としては、磁石を用いたもの、粘性を用いたものの他、特許文献1や2に記載される真空吸着パッドを用いたものが知られている。
【0003】
真空吸着パッドを用いた吸着装置は、円錐形状の弾性体で形成される吸着パッドを有し、吸着パッドを対象物と接触させた状態で変形させることにより、吸着パッドと対象物との間に生ずる空間を膨張させることにより減圧し、それにより吸着パッドと対象物の間に吸着力を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−94370号公報
【特許文献2】特開2003−191191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうした従来の真空吸着パッドは、平坦な対象物に対しては有効であるが、凹凸を有する対象物に対する吸着力が弱いという問題がある。
【0006】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、凹凸を有する対象物に対しても吸着可能な吸着装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、複数の吸着部を有する吸着装置に関する。吸着装置は、その内部空間がポンプと連通された弾性中空体を備える。弾性中空体は、(1)外部からの圧力に応じて変形可能であり、かつ(2)内部空間に負圧が供給された状態において、弾性中空体の複数の吸着部それぞれに対応する吸着部分が内側に変形し、各吸着部分を囲む部分が実質的に内側に変形しないように拘束されている。
【0008】
この態様によれば、弾性中空体を、凹凸を有する対象物に対して押しつけることにより、弾性中空体は対象物の表面形状に沿うように変形し、接触面積が増加する。この状態で、弾性中空体の内部空間に負圧を与えることにより、対象物と接触・近接する少なくともひとつの吸着部が内側に変形し、吸着部と対象物の間の空間の体積を膨張させ、吸着力を発生させることができる。その結果、対象物の表面に接触もしくは近接する吸着部の数を増やすことができ、吸着力を高めることができる。
【0009】
ある態様の吸着装置は、弾性中空体の内壁に固着され、弾性中空体を拘束する拘束部材をさらに備えてもよい。
拘束部材は、複数の吸着部ごとに設けられ、それぞれの底部が弾性中空体の内壁に固着された、複数の環状部材を含んでもよい。
【0010】
ある態様において、吸着装置は、内部空間に充填された複数の粒体をさらに備えてもよい。
弾性中空体が対象物に適合して変形した際に、粒体によって、弾性体の復元力に対する抗力を発生させることができ、弾性中空体が変形後の形状を維持しやすくなり、吸着力を高めることができる。
【0011】
弾性中空体の表面は、粘着性を有してもよい。これにより、弾性中空体が対象物と接触した際に、粘着力により仮吸着させることができる。さらに仮吸着によって、内部空間に負圧を供給する前段階において、弾性中空体の変形後の形状を維持することができる。
【0012】
弾性中空体は、熱可塑性エラストマーで形成されてもよい。熱可塑性エラストマー(TPE)は、粘着性と弾性を併せ持つため、弾性中空体の材料として好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のある態様に係る吸着装置によれば、凹凸を有する対象物に対する吸着力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1(a)は、実施の形態に係る吸着装置の外観を示す図であり、図1(b)は、吸着装置の基本的な構成を示す断面図である。
【図2】図2(a)〜(d)は、吸着装置の吸着動作を示す図である。
【図3】図3(a)は、吸着装置の断面図であり、図3(b)は、吸着装置の弾性中空体の内壁を示す図である。
【図4】吸着装置を利用した投擲式吸着装置を示す図である。
【図5】変形例に係る拘束部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
図1(a)は、実施の形態に係る吸着装置100の外観を示す図であり、図1(b)は、吸着装置100の基本的な構成を示す断面図である。
はじめに図1(a)を参照して吸着装置100の機能を説明する。吸着装置100は、その表面に複数の吸着部10を有する。吸着装置100は、基本的には球体形状を有し、吸着の対象物の形状に適合するように変形自在となっている。吸着装置100は、吸着部10において、対象物との間に吸着力を発生させる。吸着部10による吸着を、「本吸着」という。弾性中空体12の個数や大きさは特に限定されず、吸着装置100の用途に応じて設計すればよい。
【0017】
好ましくは、吸着装置100の表面は粘着性を有することが好ましい。この場合、吸着装置100は、その表面の粘着力によっても、対象物との間に吸着力を発生させることができる。これを「仮吸着」という。
【0018】
続いて、図1(b)を参照し、吸着装置100の基本的な構成を説明する。
吸着装置100は、その内部に内部空間14を有する弾性中空体12を備える。弾性中空体12の内部空間14は、チューブ30を介して外部のポンプ(不図示)と連通され、圧力が制御可能となっている。弾性中空体12には、内部空間14とチューブ30を接続するためのジョイント部32が設けられる。
【0019】
弾性中空体12の材料としては、熱可塑性エラストマー(TPE:Thermoplastic Elastomer)やウレタンゲルが好適である。TPEやウレタンゲルは、コンクリート、ガラス、アルミニウム等に対して高い粘着性を有するとともに、対象物の形状に適合するように自在に変形可能である。
【0020】
弾性中空体12は、(1)外部からの圧力に応じて変形可能であるという性質を有する。また弾性中空体12は、(2)外部ポンプによって内部空間14に負圧が供給された状態において、弾性中空体12の複数の吸着部10それぞれに対応する部分16(ハッチングで示す、吸着部分ともいう)が内側に変形し、少なくとも吸着部分16を囲む部分18(白抜きで示す、非変形部分ともいう)が実質的に内側に変形しないように拘束されている。
【0021】
以上が吸着装置100の基本構成である。続いてその動作原理を説明する。
【0022】
図2(a)〜(d)は、吸着装置100の吸着動作を示す図である。ここでは吸着の対象物102は、直角に折れ曲がった形状を有する場合を説明する。図2(a)は、吸着前の状態を示す。吸着装置100を、対象物102に接触させて圧力を加えると、図2(b)に示すように、弾性中空体12が、対象物102の形状に沿うように変形し、弾性中空体12と対象物102の接触面積が増加する。図2(b)には、吸着装置100に設けられた複数の吸着部10のうち、3つの吸着部10a〜10cが対象物102と接触している状態を示す。この状態では、吸着装置100の表面の粘着力によって、吸着装置100と対象物102は仮吸着している。
【0023】
吸着装置100が対象物102と接触して仮吸着した直後に、本吸着を行うために、内部空間14に負圧が供給される。本吸着について各吸着部10に着目するして説明する。図2(c)、(d)には、ひとつの吸着部10が拡大して示される。
【0024】
図2(c)に示すように、負圧供給前においては、弾性中空体12の吸着部10に対応する吸着部分16と対象物102との間には、わずかな空間40が生じている。外部真空ポンプのバルブを開き、内部空間14に負圧を供給すると、図2(d)に示すように、非変形部分18は上述の拘束によって実質的に変形せず、弾性中空体12の吸着部分16のみが内側に変形し、吸着部分16と対象物102の間の空間40の体積が膨張する。これにより空間40が減圧され、吸着部分16と対象物102とが大気圧で押しつけられることになり、吸着装置100と対象物102の間に、吸着力が発生する。
【0025】
以上が吸着装置100の動作である。
このように、実施の形態に係る吸着装置100によれば、弾性中空体12を利用することにより、凹凸を有する対象物102と接触したときの接触面積を増加させることができる。その結果、対象物102との間で吸着力を発揮できる吸着部10の個数を増やすことができ、凹凸形状を有する対象物102に対する吸着力を高めることができる。
【0026】
また粘着性にともなう仮吸着によって、内部空間14に負圧を供給する前段階において、弾性中空体12の対象物102に適合した形状を維持することができるという利点が得られる。
【0027】
続いて図3(a)、(b)を参照し、吸着装置100の具体的な構成例を説明する。図3(a)は、吸着装置100の断面図であり、図3(b)は、吸着装置100の弾性中空体12の内壁を示す図である。
【0028】
吸着装置100は、弾性中空体12の内壁に固着された拘束部材20を備える。拘束部材20は、弾性中空体12を(2)内部空間14に負圧が供給された状態において、弾性中空体12の複数の吸着部分16が内側に変形し、非変形部分18が実質的に内側に変形しないように、拘束する。
【0029】
図3(a)、(b)に示すように、拘束部材20は、複数の吸着部10ごとに設けられた複数の環状部材22を含む。図3(b)に示すように、好ましくは環状部材22は円筒形状を有する。環状部材22は、真空ポンプによる加減圧によって変形しない程度の剛性を有している。各環状部材22の底部は、弾性中空体12の吸着部分16を囲むようにして、弾性中空体12の内壁に固着されている。環状部材22の上面には、気体を通す一方、後述の粒体26を通さないフィルタ24が貼られている。フィルタ24は布などが利用できる。この構成によって、吸着部分16は、環状部材22の内側壁およびフィルタ24で囲まれた空間内において変形可能となる。また弾性中空体12が環状部材22の底面と接触する部分は、負圧を与えても変形しない非変形部分18となる。すなわち環状部材22によって、弾性中空体12を好適に拘束できる。
【0030】
弾性中空体12の内部空間14には、複数の粒体26が密に充填されている。粒体26の材料は特に限定されず、市販されるビーズなどを用いてもよい。
弾性中空体12が対象物102に適合して変形した際に、変形に応じて粒体26の配置が変化する。弾性中空体12は、それ自身の変形に対する復元力を有するところ、粒体26はその復元力に対する抗力を発生させる。すなわち、粒体26を充填することにより、弾性中空体12が変形後の形状を維持しやすくなり、吸着力を高めることができる。
【0031】
エネルギーの利用効率の観点から、理想的には負圧供給時に、吸着部分16のみが内側に変形し、それ以外の部分は変形しないことが好ましい。なぜなら吸着部分16以外の部分(図1(b)の符号19の部分)が変形すると、ポンプからの負圧が、吸着部分16のみでなく、吸着力に寄与しないその他の部分19にも作用するからである。この点において、複数の粒体26は負圧供給時に、弾性中空体12のうち吸着部10以外の部分19が内側に変形しようとするのを妨げるように機能するため、効率を高めることができる。
【0032】
図3(a)、(b)の吸着装置100によれば、凹凸を有する対象物102に対しても、高い吸着力を発揮できる。
【0033】
続いて、吸着装置100の用途を説明する。
図4は、吸着装置100を利用した投擲式吸着装置200を示す図である。
【0034】
投擲式吸着装置200は、吸着装置100、投擲装置42、ロープ44、チューブ30、真空ポンプ48を備える。吸着装置100と投擲装置42は、ロープ44を介して接続される。投擲装置42は、吸着装置100を対象物102に対して投擲する発射装置である。吸着装置100と真空ポンプ48は、ロープ44に沿ったチューブ30およびバルブ50を介して接続される。
【0035】
以上が投擲式吸着装置200の構成である。
投擲式吸着装置200は、たとえば危険建物内などにおいて、人命探索等に利用できる。レスキュー隊員は、投擲装置42から建物の壁面やガラス窓などを対象物102として、吸着装置100を発射する。
【0036】
吸着装置100は、対象物102との衝突によって圧力を受け、対象物102の表面形状に沿った形に変形し、表面の粘着性によって仮吸着される。衝突の直後、バルブ50が開けられると、吸着装置100の内部空間14に負圧が供給され、吸着装置100が対象物102に本吸着する。吸着装置100には、衝突を検知するセンサが設けられており、センサの出力に応じてバルブ50が制御されるようにしてもよい。この場合、バルブ50は吸着装置100側に設けてもよい。
【0037】
レスキュー隊員は、たとえばロープ44に沿って、カメラを移動させることにより、レスキュー隊員自身が進入できない建物の内部の様子を知ることができる。あるいは、ロープ44に沿ってゴンドラを移動させることにより、必要な物資をロープ44に沿って運搬することが可能となる。
【0038】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0039】
図3(a)、(b)の構成例では、環状部材22によって弾性中空体12を拘束する場合を説明したが、本発明はそれに限定されない。すなわち拘束部材20の形状は特に限定されず、別の部材を用いてもよい。図5は、変形例に係る拘束部材20aを示す図である。拘束部材20aは格子形状を有する。このような拘束部材20aを弾性中空体12の内壁に固着することにより、格子形状に沿って非変形部分18が形成され、すべての、あるいは一部の開口部分を吸着部分16として変形自在とすることができる。図2(b)に示すように、拘束部材20aに厚みを持たせ、その上面をフィルタ24で覆ってもよい。
【0040】
あるいは弾性中空体12を拘束するために、拘束部材20を設けるのではなく、弾性中空体12自体の材料を、吸着部分16と非変形部分18において異ならしめてもよい。
【0041】
実施の形態では、弾性中空体12が、単一の内部空間14を有する場合を説明したが、弾性中空体12の内部は、隔壁によって複数の空間に分割されてもよい。
【0042】
実施の形態では、弾性中空体12の表面が粘着性を有する場合を説明したが、粘着性を有しなくてもよい。内部空間14に対して負圧を供給するタイミングを、高精度で制御可能な場合、すなわち弾性中空体12が対象物102に適合するように変形した後、直ちに負圧を供給できる場合には、仮吸着を経ずに本吸着を行ってもよい。
【0043】
実施の形態では、吸着装置100の用途として投擲式吸着装置を説明したが、その用途は特に限定されない。たとえば吸着装置100は、ガラス基板をはじめとする種々のワークを運搬するハンドラにも好適に利用することができる。
【0044】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0045】
100…吸着装置、10…吸着部、12…弾性中空体、14…内部空間、16…吸着部分、18…非変形部分、20…拘束部材、22…環状部材、24…フィルタ、26…粒体、30…チューブ、32…ジョイント部、34…真空ポンプ、40…空間、102…対象物、42…投擲装置、44…ロープ、46…チューブ、48…真空ポンプ、200…投擲式吸着装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吸着部を有する吸着装置であって、
その内部空間がポンプと連通された弾性中空体を備え、
前記弾性中空体は、(1)外部からの圧力に応じて変形可能であり、かつ(2)前記内部空間に負圧が供給された状態において、前記弾性中空体の前記複数の吸着部それぞれに対応する吸着部分が内側に変形し、各吸着部分を囲む部分が実質的に内側に変形しないように拘束されていることを特徴とする吸着装置。
【請求項2】
前記弾性中空体の内壁に固着され、前記弾性中空体を拘束する拘束部材をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の吸着装置。
【請求項3】
前記拘束部材は、前記複数の吸着部ごとに設けられ、それぞれの底部が前記弾性中空体の内壁に固着された、複数の環状部材を含むことを特徴とする請求項2に記載の吸着装置。
【請求項4】
前記内部空間に充填された複数の粒体をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の吸着装置。
【請求項5】
前記弾性中空体の表面は、粘着性を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の吸着装置。
【請求項6】
前記弾性中空体は、熱可塑性エラストマーで形成されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の吸着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−241832(P2012−241832A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113877(P2011−113877)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】