説明

吸着装置

【課題】回転軸の軸面に対向する供給面から供給される被吸着物を、回転軸を中心として回転する吸着部にて確実に吸着する。
【解決手段】回転軸30から一定の距離を保持しながら回転軸30を中心として回転する吸着部10を有し、回転軸30の軸面に対向する供給面から供給されるインレットを吸着部10に吸着する構成において、吸着部10は、回転軸30を中心とした回転によって供給面に対向してインレットを吸着する吸着面12を有し、吸着面12は、回転軸30を中心とした回転方向に所定の幅Wを具備し、回転方向先端側端部と回転軸30との距離が回転軸30と供給面との距離以下であり、かつ、回転方向中央部と回転軸30との距離が回転軸30と供給面との距離以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被吸着物が供給される供給面に吸着面が対向して被吸着物を吸着する吸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触状態にて情報の書き込みや読み出しを行うことが可能なICが搭載された非接触型ICカードや非接触型ICラベル等のRF−IDメディアがその優れた利便性から急速な普及が進みつつある。このようなRF−IDメディアにおいては、非接触状態にて情報の書き込みや読み出しが可能なICチップやアンテナを有するインレットが、カード基材やラベル基材に搭載されて製造される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は、RF−IDメディア製造装置の一例を示す図であり、(a)は全体の構成を示す図、(b)は(a)に示した吸着部110の詳細な構成を示す図である。
【0004】
本例におけるRF−IDメディア製造装置は図5(a)に示すように、回転軸130から3つのアーム部120が伸び、その3つのアーム部120の先端にそれぞれ吸着部110が取り付けられてなる吸着装置101と、インレットシート102を供給、搬送するための2つのローラ103a,103bと、ラベル基材となる連続シート104を供給、搬送するための2つのローラ103c,103dとから構成されている。そして、吸着部110は図5(b)に示すように、支持部11と吸着面112とから構成されており、吸着面112の中央部がローラ103bと接するようになっている。
【0005】
上記のように構成されたRF−IDメディア製造装置においては、ローラ103aに巻き付けられた連続状のインレットシート102がローラ103bの回転によって引き出されると、ローラ103bの回転面において単片状に断裁され、その後、ローラ103bと吸着面112とが対向する領域において、吸着面112に吸着される。その後、アーム部120が回転軸130を中心として回転することにより、吸着面112に吸着されたインレットが搬送されていく。また、インレットが搬送されていく領域には、ローラ103aに巻き付けられた連続シート104がローラ103bの回転によって引き出されており、吸着面112に吸着されて搬送されたインレットは、ラベル基材となる連続シート104上に搭載されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−194798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図6は、図5に示した吸着装置101にて生じる問題点を説明するための図である。
【0008】
図5に示した吸着装置101においては、上述したように、吸着面112の中央部がローラ103bと接するようになっているため、アーム部120が回転して吸着面112がローラ103bと対向する領域にくると、吸着面112の中央部と回転方向先端部の端部とで回転軸130からの距離が互いに異なることから、図6(a)に示すように、吸着面112の回転方向先端側の端部がローラ103bに食い込むような相対位置となる。そのため、図6(b)に示すように、吸着面112の回転方向先端側の端部がローラ103b側に折れ曲がるように変形し、それにより、インレットが吸着面112に吸着できなくなってしまうという問題点がある。
【0009】
また、これを回避するために、吸着面112の回転方向先端側の端部がローラ103bと接するような構成とすることが考えられるが、その場合、吸着面112がローラ103bに対向した際に吸着面112の中央部がローラ103bに当接しなくなり、それにより、インレットが脱落してしまうこととなる。
【0010】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、回転軸の軸面に対向する供給面から供給される被吸着物を、回転軸を中心として回転する吸着部にて確実に吸着することができる吸着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、
回転軸から一定の距離を保持しながら前記回転軸を中心として回転する吸着部を有し、前記回転軸の軸面に対向する供給面から供給される被吸着物を前記吸着部に吸着する吸着装置であって、
前記吸着部は、前記回転軸を中心とした回転によって前記供給面に対向して前記被吸着物を吸着する吸着面を有し、該吸着面は、前記回転軸を中心とした回転方向に所定の幅を具備し、回転方向先端側端部と前記回転軸との距離が前記回転軸と前記供給面との距離以下であり、かつ、回転方向中央部と前記回転軸との距離が前記回転軸と前記供給面との距離以上である。
【0012】
上記のように構成された本発明においては、吸着部が回転軸から一定の距離を保持しながら回転軸を中心として回転することによって、吸着面が回転軸の軸面に対向する供給面に対向し、それにより、供給面から供給される被吸着物が吸着面に吸着されていく。ここで、吸着面は回転軸を中心とした回転による回転方向に所定の幅を具備するものであるため、回転方向にて互いに異なる位置においては回転軸との距離が互いに異なっている。そのため、被吸着物を吸着面にて確実に吸着するために吸着面の回転方向中央部が供給面と接するようにすると、上述したような回転軸との距離の違いによって吸着面の回転方向先端側端部が供給面に食い込むようになり、折れ曲がるように変形してしまう。そこで、吸着面について、回転方向先端側端部と回転軸との距離を回転軸と供給面との距離以下とすることにより、吸着面の回転方向先端側端部が供給面に食い込むような状態にはならなくなる。それにより、吸着面の回転方向先端側端部が折れ曲がるように変形することなく、供給面から供給された被吸着物が吸着面に吸着されていく。その後、吸着面の回転方向中央部が供給面に対向すると、吸着面の回転方向中央部と回転軸との距離が回転軸と供給面との距離以上となっていることから、吸着面の回転方向中央部が供給面に当接しないことがなくなり、また、吸着面と回転軸との距離が回転軸と供給面との距離を超えるものとなっても、吸着面が供給面に押し付けられるような状態となることにより、被吸着物の吸着に影響が及ぶことなく吸着面に被吸着物が吸着されていく。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明においては、回転軸の軸面に対向する供給面から供給される被吸着物を、回転軸を中心として回転する吸着部にて吸着する構成において、被吸着物を吸着する吸着面が、回転方向に所定の幅を具備しているものの、回転方向先端側端部と回転軸との距離が回転軸と供給面との距離以下であり、かつ、吸着面の回転方向中央部と回転軸との距離が回転軸と供給面との距離以上となっているため、吸着面の回転方向先端側端部が折れ曲がるように変形することがなく、かつ、吸着面の回転方向中央部が供給面に当接しないことがなくなり、また、吸着面と回転軸との距離が回転軸と供給面との距離を超えるものとなっても、吸着面が供給面に押し付けられるような状態となることにより、被吸着物の吸着に影響が及ぶことなく吸着面に被吸着物が吸着されていき、供給面から供給される被吸着物を確実に吸着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の吸着装置の実施の一形態を用いたRF−IDメディア製造装置の一例を示す図であり、(a)は全体の構成を示す図、(b)は(a)に示した吸着部の構成を示す斜視図、(c)は(a)に示した吸着部のアーム部への取り付け角度を説明するための図である。
【図2】図1に示した吸着装置における吸着面の所定の位置から回転軸までの距離を説明するための図である。
【図3】図1及び図2に示した吸着装置による作用を説明するための図である。
【図4】図1に示したRF−IDメディア製造装置において吸着面に吸着されたインレットが連続シート上に搭載される状態を示す図である。
【図5】RF−IDメディア製造装置の一例を示す図であり、(a)は全体の構成を示す図、(b)は(a)に示した吸着部の詳細な構成を示す図である。
【図6】図5に示した吸着装置にて生じる問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の吸着装置の実施の一形態を用いたRF−IDメディア製造装置の一例を示す図であり、(a)は全体の構成を示す図、(b)は(a)に示した吸着部10の構成を示す斜視図、(c)は(a)に示した吸着部10のアーム部20への取り付け角度を説明するための図である。
【0017】
本例におけるRF−IDメディア製造装置は図1(a)に示すように、本発明の実施の一形態となる吸着装置1と、インレットシート2を供給、搬送するための2つのローラ3a,3bと、ラベル基材となる連続シート4を供給、搬送するための2つのローラ3c,3dとから構成されている。
【0018】
吸着装置1は図1(a)に示すように、回転軸30から回転軸30の軸面の法線方向に伸びた3つのアーム部20と、3つのアーム部20の先端にそれぞれ取り付けられた3つの吸着部10とから構成されており、アーム部20が回転軸30を中心として回転することにより、吸着部10が、回転軸30から一定の距離を保持しながら回転軸30を中心として回転する。
【0019】
吸着部10は、ゴムや樹脂等の可逆的に変形可能な材料から構成されており、図1(b)に示すように、吸着部10をアーム部20に支持する支持部11と、ローラ3bと対向することにより、インレットシート2が単片状に断裁された被吸着物となるインレットを吸着する吸着面12とから構成されている。また、吸着面12には、吸着面12にインレットを吸着する際に吸着面12とインレットとの間の空気を逃がす通気孔13が設けられている。また、吸着部10は図1(c)に示すように、アーム部20が伸びる方向に対して吸着面12の法線がなす角度θが3°となるように傾いてアーム部20に取り付けられている。また、吸着面12の回転方向の幅Wは15mm、回転軸30からローラ3bまでの距離は88mmとなっている。
【0020】
本形態の吸着装置1においては、上述したように吸着部10を傾けてアーム部20に取り付けることによって、吸着面12の回転方向の所定の位置から回転軸30までの距離を設定している。
【0021】
図2は、図1に示した吸着装置1における吸着面12の所定の位置から回転軸30までの距離を説明するための図である。
【0022】
図2に示すように、ローラ3bには、その円周上に、アーム部20の回転によって回転してきた吸着面12が対向する供給面5が存在し、この供給面5に搬送されてきたインレットが吸着面12に吸着されることになる。そして、吸着面12の回転方向先端側端部と回転軸30の軸面との距離D1は、回転軸30の軸面と供給面5との距離D0となっており、また、吸着面12の回転方向中央部と回転軸30の軸面との距離D2も、回転軸30の軸面と供給面5との距離D0となっている。そして、これにより、吸着面12の回転方向後端側端部と回転軸30の軸面との距離D3は、回転軸30の軸面と供給面5との距離D0よりも長くなっている。
【0023】
以下に、上記のように構成されたRF−IDメディア製造装置の動作について説明する。
【0024】
上記のように構成されたRF−IDメディア製造装置においては、ローラ3aに巻き付けられた連続状のインレットシート2がローラ3bの回転によって引き出されると、ローラ3bの回転面において断裁され、ローラ3bに吸引されながら単片状のインレットとして供給面5に搬送されてくる。
【0025】
また、吸着装置1においては、アーム部20が回転軸30を中心として回転することによって吸着部10が回転軸30を中心として回転し、吸着面12が供給面5と対向するようになる。
【0026】
図3は、図1及び図2に示した吸着装置1による作用を説明するための図である。
【0027】
吸着部10が供給面5と対向する領域に回転してくると、まず、吸着面12のうち回転方向先端側端部が供給面5に対向する。すると、上述したように、吸着面12の回転方向先端側端部と回転軸30の軸面との距離D1が、回転軸30の軸面と供給面5との距離D0となっていることにより、図3(a)に示すように、吸着面12の回転方向先端側端部がローラ3bの供給面5に接するようになる。それにより、吸着面12の回転方向先端側端部が折れ曲がるように変形することなく、供給面5から供給されたインレット2aが吸着面12に吸着されていく。またこの際、インレット2aのローラ3bにおける搬送方向先端側端部が、吸着面12の回転方向先端側端部と重なるようにインレット2aが吸着面12に吸着される。
【0028】
その後、ローラ3bが回転するとともに、吸着部10がアーム部20の回転によって回転すると、吸着面12のうち回転方向中央部が供給面5に対向する。すると、上述したように、吸着面12の回転方向中央部と回転軸30の軸面との距離D2が、回転軸30の軸面と供給面5との距離D0となっていることにより、図3(b)に示すように、吸着面12の回転方向中央部がローラ3bの供給面5に接するようになる。それにより、吸着面12の回転方向中央部が供給面5に当接しないことによってインレット2aが脱落してしまうことが回避される。
【0029】
そして、ローラ3bがさらに回転するとともに、吸着部10がアーム部20の回転によってさらに回転すると、吸着面12のうち回転方向後端側端部が供給面5に対向する。すると、上述したように、吸着面12の回転方向後端側端部と回転軸30の軸面との距離D3が、回転軸30の軸面と供給面5との距離D0よりも長いものとなっているが、図3(c)に示すように、吸着面12が供給面5に押し付けられるような状態となることにより、吸着面12が折れ曲がるように変形することなく吸着面12にインレット2aが吸着されていく。この際、吸着部10は、上述したようにゴムや樹脂等の可逆的に変形可能な材料から構成されているため変形することになるが、吸着面12が供給面5に沿うように変形することになるため、インレット2aの吸着に影響が及ぶことがない。
【0030】
このようにして、ローラ3bの供給面5から供給されるインレット2aを吸着する吸着面12が、その回転方向先端側端部が折れ曲がったり、回転方向中央部が供給面5に当接しなくなったりすることなく、インレット2aが吸着面12に吸着されていくため、供給面5から供給されるインレット2を確実に吸着することができる。
【0031】
その後、アーム部20が回転軸30を中心として回転することにより、吸着面12に吸着されたインレット2aが搬送されていく。また、インレット2aが搬送されていく領域には、ローラ3aに巻き付けられたラベル基材となる連続シート4がローラ3bの回転によって引き出されており、吸着面12に吸着されて搬送されたインレット2aは連続シート4上に搭載されることになる。この際、連続シート4のインレット2の搭載面に粘着剤が塗工されていない場合等において、通気部13を介して空気を吹き出すことによってインレット2aを連続シート4上に搭載する構成としてもよい。
【0032】
図4は、図1に示したRF−IDメディア製造装置において吸着面12に吸着されたインレット2aが連続シート4上に搭載される状態を示す図である。
【0033】
図1に示したRF−IDメディア製造装置においては、吸着面12の回転方向先端側端部と回転軸30の軸面との距離が、回転軸30の軸面と連続シート4との距離となっており、また、上述したように、インレット2aのローラ3bにおける搬送方向先端側端部が、吸着面12の回転方向先端側端部と重なるようにインレット2aが吸着面12に吸着されていることにより、図4に示すように、吸着面12に吸着されたインレット2aは、吸着装置1による搬送方向先端側端部が連続シート4と接するような状態となり、それにより、インレット2aが折れ曲がったりすることなく確実に連続シート4上に搭載されることになる。また、上述したように、通気部13を介して空気を吹き出すことによってインレット2aを連続シート4上に搭載する構成とすれば、吸着面12の回転方向先端側端部と回転軸30の軸面との距離が、回転軸30の軸面と連続シート4との距離よりも短くてもよい。
【0034】
なお、本形態においては、吸着面12の回転方向中央部と回転軸30の軸面との距離D2が、回転軸30の軸面と供給面5との距離D0となっているが、吸着面12の回転方向中央部を供給面5に当接させるために、吸着面12の回転方向中央部と回転軸30の軸面との距離D2は、回転軸30の軸面と供給面5との距離D0以上となっていればよい。また、吸着面12の回転方向先端側端部と回転軸30の軸面との距離D1が、回転軸30の軸面と供給面5との距離D0となっているが、吸着面12の回転方向中央部と回転軸30の軸面との距離D2が回転軸30の軸面と供給面5との距離D0以上となっていれば、吸着面12の回転方向先端側端部と回転軸30の軸面との距離D1は、回転軸30の軸面と供給面5との距離D0よりも短くてもよい。
【0035】
また、本形態においては、吸着部10を傾けてアーム部20に取り付けることにより、吸着面12の回転方向の所定の位置から回転軸30までの距離を設定しているが、吸着面12のみを傾けた構成によって、吸着面12の回転方向の所定の位置から回転軸30までの距離を設定してもよい。
【0036】
また、吸着部10を回転軸30を中心として回転させるための構成は、上述したようなアーム部20を用いたものに限らない。例えば、回転軸30を中心としてアーム部20の長さと同等の半径を有する回転体の円周面に吸着部10を取り付けた構成としてもよい。
【0037】
また、インレット2aが供給される供給面5は、ローラ3bの円周上のような曲面でなくてもよく、回転軸30の軸面に対向するものであれば平面であってもよい。
【0038】
また、本発明の吸着装置は、上述したようなRF−IDメディア製造装置に用いられるものに限らない。よって、吸着面12に吸着される被吸着物も、上述したようなインレット2aに限らない。
【符号の説明】
【0039】
1 吸着装置
2 インレットシート
2a インレット
3a〜3d ローラ
4 連続シート
5 供給面
10 吸着部
11 吸着面
12 支持部
13 通気孔
20 アーム部
30 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸から一定の距離を保持しながら前記回転軸を中心として回転する吸着部を有し、前記回転軸の軸面に対向する供給面から供給される被吸着物を前記吸着部に吸着する吸着装置であって、
前記吸着部は、前記回転軸を中心とした回転によって前記供給面に対向して前記被吸着物を吸着する吸着面を有し、該吸着面は、前記回転軸を中心とした回転方向に所定の幅を具備し、回転方向先端側端部と前記回転軸との距離が前記回転軸と前記供給面との距離以下であり、かつ、回転方向中央部と前記回転軸との距離が前記回転軸と前記供給面との距離以上である吸着装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−86962(P2013−86962A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231931(P2011−231931)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】